説明

エンコーダシステム及びストレージ装置

【課題】高精度な情報の記録・読出を実現する。
【解決手段】同期装置51によりハードディスクHDの回転と、エンコーダ171、172のプローブ部191、192におけるビームプローブの駆動信号とを同期させているので、その信号に対応して動作する検出装置501、502において検出されるスピンドルSPDの回転情報、磁気ヘッダHEADの位置情報を含む信号の、ディスクの回転に対する遅れ時間(データエイジ)の変動(ジッタ)が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダシステム及びストレージ装置に係り、さらに詳しくは、パターンを有するスケールと、前記スケールのパターンを読み取り、所定の周期信号で変調された出力信号を出力するプローブとを有するエンコーダシステム及び該エンコーダシステムを備えるディスク型のストレージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、情報処理技術の分野では、データを保管するストレージ装置が必須である。このようなストレージ装置の代表例としては、パーソナルコンピュータ等の外部記憶装置、補助記憶装置として採用されるハードディスクドライブ装置のように、円板状のディスクに対しデータの保管を行うディスク型のストレージ装置がある。
【0003】
ハードディスク装置の磁気ディスクの記録面は、同心円状にトラック、回転方向にセクタと呼ばれる微小領域に分割されており、データの記録・読出をする際には、その記憶・読出を行うべきトラック、セクタ上にヘッダを正確に位置決めする必要がある。この位置決めを実現するため、磁気ディスクの記録面上には、ヘッダのサーボ制御に必要なトラックやセクタのアドレス情報などを含むサーボ情報が予め書き込まれている。このサーボ情報の書き込みには、ヘッダの高精度な位置決めを行うことが要求される。この要求に応えるべく、ディスクの回転情報やヘッダの位置情報を検出するための高分解能なエンコーダが幾つか提案されている(例えば、特許文献1、2等参照)。
【0004】
これらのエンコーダは、スケールとプローブとを備えており、スケールに対するプローブの相対位置を検出するシステムとして構成されている。スケールは、少なくとも1次元方向に規則的に配列されたパターンを有しており、そのパターンの配列方向がステージの移動の基準となる座標軸に一致するようにステージに取り付けられている。また、プローブは、そのスケール上をそのパターンの配列方向に沿って振動可能に設置されている。プローブは、スケールのパターンの配列方向に振動することにより、そのパターンに応じた信号を出力する。その信号は、プローブの振動中心を基準位置としたスケールの相対位置に関する情報を含み、プローブ発振により変調されている。
【0005】
エンコーダは、プローブから出力された信号からスケールとプローブの振動中心との相対位置を検出する検出装置をさらに備えている。この検出装置では、プローブの振動の周期信号の高調波を周波数シンセサイザで発生させ、プローブを振動させる駆動信号と、プローブから出力される信号とを比較することでプローブとスケールとの相対位置を求めている。
【0006】
上述したエンコーダの中には、例えば、0.01nmレベルの分解能を有しているものもあり、このエンコーダをストレージ装置のディスクの回転制御やヘッダなどの位置決めに適用すれば、サーボ情報をディスク上に高精度化に書き込むことができるようになる。
【0007】
このようなエンコーダの検出装置では、コストなどの観点からすると、デジタル回路で上記周波数シンセサイザなどを構成するのが一般的である。このデジタル回路において駆動信号の高調波を不都合なく発生させるためには、その演算周期を、元周波(駆動信号)の周期の整数分の一に設定する必要がある。
【0008】
このエンコーダを用いてディスクの回転情報の検出を行う際には、そのエンコーダから得られる信号の遅れ時間(いわゆるデータエイジ)が変動しないように設定することが重要である。もし、信号の遅れ時間に変動(いわゆるジッタ)が生じると、ディスク上の書き込みビット間隔の変動が生じる可能性があるからである。しかしながら、ディスクの回転周期とエンコーダの周期とが無相関であると、書き込み間隔の周期とエンコーダの位置更新レートとの間でビートを生じ、これがジッタとなって書き込み位置誤差を生じる可能性がある。
【0009】
また、ヘッダの位置を計測するためのエンコーダについても、ディスクの回転に同期して偏心補正などの動作を行う必要があるため、ディスク回転周期とそのエンコーダの周期とが無相関であると、ここでもジッタが発生して、書き込み誤差が生じる可能性がある。
【0010】
【特許文献1】特表2000−511634号公報
【特許文献2】米国特許第6639686号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1の観点からすると、回転軸に取り付けられ、前記回転軸の回転方向に沿って配列されたパターンを有するスケールと、前記スケールのパターンを読み取り、所定の周期信号で変調された出力信号を出力するプローブと、前記プローブから出力される出力信号に基づいて、前記回転軸の回転情報を検出する検出器とを有するエンコーダと;前記回転軸の回転と、前記所定の周期信号とを同期させる同期装置と;を備えることを特徴とするエンコーダシステムである。
【0012】
これによれば、同期装置によりディスクの回転軸の回転と所定の周期信号とを、同期させているので、その周期信号に対応して動作する検出器において検出される回転軸の回転情報を含む信号の遅れ時間(データエイジ)の変動(ジッタ)が低減される。
【0013】
本発明は、第2の観点からすると、ディスクを回転駆動する駆動装置と;前記ディスクに対し所定方向に移動し、前記ディスクに対して情報処理可能なヘッダと;前記ディスクの回転方向に沿って配列されたパターンを第1のプローブを介して読み取り、前記第1のプローブから出力される、第1周期信号で変調された出力された出力信号に基づいて、前記ディスクの回転情報を検出する回転用エンコーダと;前記駆動装置での前記ディスクの回転と、前記回転用エンコーダにおける前記第1周期信号とを同期させる同期装置と;を備えるストレージ装置である。
【0014】
これによれば、駆動装置により回転駆動されるディスクのその回転と、回転用エンコーダにおいてディスクの回転情報の検出タイミングの基準となる第1周期信号とを同期装置により同期させているので、ディスク1回転当たりにおける、第1周期信号を基準として検出されるディスクの回転情報の検出タイミングの遅れ時間の変動を低減することができる。
【0015】
本発明は、第3の観点からすると、ディスクを回転駆動する駆動装置と;前記ディスクに対して所定方向に移動し、前記ディスクに対して情報処理可能なヘッダと;前記ディスクの回転方向に沿って配列されたパターンを第1のプローブを介して読み取り、前記第1のプローブから出力される、第1周期信号で変調された出力信号に基づいて、前記ディスクの回転情報を検出する回転用エンコーダと;前記ヘッダが移動する所定方向に沿って配列されたパターンを第2のプローブを介して読み取り、前記第2のプローブから出力される、第2周期信号で変調された出力信号に基づいて、前記ヘッダの位置情報を検出する位置用エンコーダと;前記回転用エンコーダにおける前記第1周期信号と、前記位置用エンコーダにおける前記第2周期信号とを同期させる同期装置と;を備えるストレージ装置である。
【0016】
これによれば、回転用エンコーダにおいてディスクの回転情報の検出タイミングの基準となる第1周期信号と、位置用エンコーダにおいてヘッダの位置情報の検出タイミングの基準となる第2周期信号とを同期装置により同期させているので、第1周期信号を基準として検出されるディスクの回転情報の検出タイミングと、第2周期信号を基準として検出されるヘッダの位置情報の検出タイミングとを合わせ、ディスクに対するヘッダの正確な位置を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係るストレージ装置としてのハードディスクドライブ装置HDDの構成が概略的に示されている。
【0018】
図1に示されるように、ハードディスクドライブ装置HDDは、スピンドルSPDと、ハードディスクHDと、磁気ヘッダアームARMと、磁気ヘッダHEADと、エンコーダシステム16と、それらの制御系とを備えている。
【0019】
スピンドルSPDは、所定の回転数(例えば、7200rpm、10000rpm、15000rpm)で回転可能である。
【0020】
ハードディスクHDは、例えば2.5インチ、3.5インチの円板状の物体である。ハードディスクHDとしては、例えば、鏡面加工された金属(例えばアルミ)又はガラスの基板の表面上に、磁気記録媒体が蒸着されたものが用いられる。この磁気記録媒体が蒸着された面を以下では記録面と呼ぶ。スピンドルSPDには、図1に示されるように、複数枚(通常は、2枚〜10枚)のハードディスクHDがスピンドルSPDの回転軸方向に所定の間隔を置いて取り付けられている。各ハードディスクHDは、情報の記録及び読出しが行われる際には、スピンドルSPDと一体となって回転している。
【0021】
磁気ヘッダアームARMは、鋏(はさみ)のような形状をしている。磁気ヘッダアームARMは、ハードディスクHDの外側に回転中心Oを有しており、ボイスコイルモータ等のリニアモータなどで、回転中心Oを中心として回転可能である。図1では、図面の錯綜を防止するため、便宜上、磁気ヘッダアームARMを回転駆動するモータを、回転モータMとして示している。この磁気ヘッダアームARMの回転により、磁気ヘッダアームARMの先端部分が、ハードディスクHDの略半径方向を移動可能となっている。
【0022】
磁気ヘッダHEADは、ハードディスクHDの記録面に近接して磁気ヘッダアームARMの先端に配置されている。ハードディスクドライブ装置HDDでは、この磁気ヘッダHEADにより、ハードディスクHDに対する情報処理、すなわちデータの書き込み、読み出しが行われる。
【0023】
エンコーダシステム16は、エンコーダ171、172を備えている。
【0024】
エンコーダ171は、ハードディスクHDの回転方向に延設されたスケール181と、ハードディスクHDの回転方向に振動可能なビームプローブを射出するプローブ部191と、ハードディスクHDの回転量を検出する検出装置501とを備えている。スケール181には、ハードディスクHDの回転方向に規則的に凹凸が形成された反射型の回折格子(図2のグレーティング1)が形成されている。図2に示されるように、この回折格子の面形状は正弦波形状となっており、そのピッチ(周期)は、全区間で同一となっている。
【0025】
図2には、プローブ部191の構成が概略的に示されている。図2に示されるように、プローブ部191は、レーザダイオード3と、コリメータレンズ4と、ビームスプリッタ6と、対物レンズ7と、焦点レンズ8と、光センサ9とを備えている。対物レンズ7は、駆動装置11に接続され、駆動装置11による駆動で、ハードディスクHDの回転方向に振動可能に構成されている。
【0026】
レーザダイオード3から射出されたレーザビームはコリメータレンズ4でコリメートされた後、ビームスプリッタ6を通過して、対物レンズ7によってスケール181上のグレーティング1上に集光される。駆動装置11は、外部から入力された駆動信号Dに従って正弦波電圧を発生させ、内部に備える圧電素子がその正弦波電圧で駆動して対物レンズ7をY軸方向に振動させる。この振動によりビーム偏向が実現され、レーザビームがスケール181上のグレーティング1上でY軸方向に振動するようになる。この正弦波電圧Dの変動を表す関数をr×sinωtとする。rは振動の振幅であり、ωは振動角周波数であり、tは時間である。
【0027】
グレーティング1上で反射したレーザビームは、対物レンズ7を通過して、ビームスプリッタ6で折り曲げられ、焦点レンズ8を経由して、光センサ9で受光される。光センサ9から受光された信号は、後述する検出装置501へ送られる。
【0028】
このように、プローブ部191は、スケール181に向けてレーザビームを出力し、スケール181のグレーティング1で反射したレーザビームを光センサ9で受光し、その受光結果に相当する信号を出力している。プローブ部191は、このレーザビーム(ビームプローブ)をスケール181のグレーティング1上で、ハードディスクHDの円周方向に所定の周波数ωで発振させている。このため、プローブ部191から出力される信号は、スケール181上のグレーティング1の空間角周波数ω’の信号成分と、ビームプローブの振動角周波数ωの信号成分とを含んだ信号となっている。言い換えると、この出力信号は、スケール181上のグレーティング1の空間角周波数ω’の信号成分が、ビームプローブの振動角周波数の信号で変調された変調信号となっている。
【0029】
プローブ部191から出力された信号は、前述のように、対応する検出装置501に送られる。検出装置501の構成としては、様々なものが考えられるが、図3には、検出装置501の一般的な構成を示すブロック図が示されている。この検出装置501は、フィルタ91と、周波数シンセサイザ92と、乗算部931、932と、位相検出部94と、振幅検出部95と、距離同定部96とを備えている。
【0030】
プローブ部191から出力された信号は、フィルタ91に入力される。フィルタ91では、この信号の高調波成分が除去される。一方、周波数シンセサイザ92は、同期装置51から入力された駆動信号Dに基づいて、ビームプローブの発振に対応する周期信号を発生させる。フィルタ91の出力と、周期信号とは、乗算器931、932で掛け合わされ、それぞれ位相検出部94、振幅検出部95に入力される。位相検出部94では、周波数シンセサイザ92から出力された周期信号の周波数に対応するフィルタ91の出力の位相が検出され、振幅検出部95では、その周期信号に対応するフィルタ91の出力の振幅が検出される。距離算出部96では、検出された位相及び振幅に基づいて、スケール181の頂点(峰)からのビームプローブの振動中心の距離が算出される。
【0031】
なお、この検出装置501の構成は、特表2000−511634号公報又は米国特許第6639686号明細書に開示されているので、詳細な説明を省略する。
【0032】
検出装置501の構成は、図3のものには限られない。特に、ビームプローブ発振の振幅rが適切に設定されていれば、その装置構成を簡便なものとすることができる。図4には、検出装置501の構成が概略的に示されている。図4に示されるように、検出装置501は、フィルタ61と、周波数シンセサイザ62と、乗算器631、632と、加算器64と、ループフィルタ65と、積分器66と、加算器671、672と、正弦波関数発生器681、682とを備えている。
【0033】
プローブ部191から出力された信号は、フィルタ61に入力される。フィルタ61では、この信号の高調波成分が除去される。
【0034】
一方、同期回路51から出力された駆動信号Dは、周波数シンセサイザ62に入力されている。周波数シンセサイザ62は、この駆動信号Dに含まれる位相ωtの2倍波の位相信号2ωtと3倍波の位相信号3ωtとを生成して出力する。この2倍波の位相信号2ωtは加算器671に入力され、3倍波の位相信号3ωtは加算器672に入力される。加算器671は、2倍波の位相信号2ωtとそれぞれ後述する推定位置情報ω’X0とを加算して出力し、加算器672は、3倍波の位相信号3ωtとそれぞれ後述する推定位置情報ω’X0とを加算して出力する。
【0035】
加算器671の出力は正弦波発生器681に入力され、加算器672の出力は正弦波発生器682に入力される。正弦波発生器681は、次式で示される信号を生成し、出力する。
【0036】
【数1】

ここで、Jn(rω’)(n=0、1、2、3、…)は、n次の第一種ベッセル関数である。また、X0は、スケール181の峰(凸部の頂点)からプローブの振動中心までの距離を意味する。また、正弦波発生器682は、次式で示される信号を生成し、出力する。
【0037】
【数2】

正弦波発生器681から出力された信号は、乗算器631でフィルタ61の出力と掛け合わせられ、正弦波発生器682から出力された信号は、乗算器632でフィルタ61の出力と掛け合わせられる。乗算器631、632の出力信号は、加算器64で加算された後、ループフィルタ65に入力され、高周波成分が除去される。
【0038】
このループフィルタ65の出力は、スケール181のグレーティング1の峰(凸部の頂点)に対するビームプローブの振動中心の推定相対位置に対応する位相と、その振動中心の実際の相対位置に対応する位相の位相差に応じた値となっている。この値は、積分器66に入力される。これにより、積分器66の出力は、スケール181の峰を基準とするプローブの振動中心の推定位相ω’X0となる。この推定位相ω’X0は、前述のように、加算器671、672によって、2倍高調波の位相信号と、3倍高調波の位相信号に加算されるので、検出装置501内に閉ループが形成され、ビームプローブの振動中心の推定位置における位相と、実際の位置における位相の位相差は0に保たれるようになり、グレーティング1の峰(凸部の頂点)に対するビームプローブの振動中心の推定位相ω’X0が精度良く検出される。この位相差に応じた信号は、変換器70に入力され、推定距離X0に変換される。変換器70は、この推定距離X0と、内部に保持されているカウント値(ビームプローブの振動中心が、スケール181の峰を超えた回数がカウントされている)とに基づいて、ハードディスクHDの回転量を算出する。その回転量は、エンコーダ171の計測値として出力される。
【0039】
エンコーダ172は、スケール182と、プローブ部192とを備えている。スケール181は、磁気ヘッダHEADが取り付けられている側の反対側、すなわち磁気ヘッダアームARMの他端の移動方向に沿ってパターンが配列されるように延設されている。このスケール182上にも、回折格子が形成されており、この回折格子の面形状は、スケール181のそれと同じように正弦波形状となっている。
【0040】
プローブ部192は、スケール182のパターンの配列方向に振動可能なビームプローブを射出する。プローブ部192の構成は、図2のプローブ部191の構成と同じとなっている。プローブ部192は、スケール182のグレーティング1に向けてレーザビーム(ビームプローブ)を出力し、スケール182で反射したビームを光センサ9で受光し、その受光結果に相当する信号を出力している。プローブ部192は、このビームプローブを、スケール182のグレーティング1の配列方向に発振させている。このため、プローブ部192から出力されている信号も、スケール182上のグレーティング1の空間角周波数ω’による信号が、ビームプローブの発振角周波数ωの信号で変調されている。
【0041】
検出装置502の構成は、検出装置501と同等であり、その検出結果を、磁気ヘッダHEADの位置情報として出力する。
【0042】
図1に示されるように、エンコーダシステム16は、前述したエンコーダ171、172に加え、同期回路51を備えている。同期回路51は、スピンドルSPDを駆動するスピンドル駆動装置65に対してスピンドルSPDを回転させる駆動信号を出力している。この駆動信号をω”tとする。この駆動信号の位相ω”tは、スピンドルSPDの回転位相であり、スピンドル駆動装置65は、この駆動信号の位相ω”tに従って、スピンドルSPDを回転駆動する。
【0043】
一方、同期装置51は、ビームプローブを発振させるための位相ωt及び振幅rの駆動信号を、エンコーダ171のプローブ部191及び検出装置501と、エンコーダ172のプローブ部192及び検出装置502とに出力している。
【0044】
プローブ部191、192では、この駆動信号を駆動装置11の圧電素子に印加する。この結果、プローブ部191、192におけるビームプローブの振動角周波数ωは、スピンドルSPDの回転の角周波数ω”の整数倍となる。また、ビームプローブの振動角周波数ωは、プローブ部191、192で同じとなり、その振動の位相差は0となる。
【0045】
検出装置501、502は、サンプル値系の演算処理装置として構成されており、所定の演算周期Δtで、一連のデジタル演算が行われる。図5(A)に示されるように、この演算周期Δtと、ビームプローブの発振周期2π/ωとの比が整数比となるように設定されている。また、ビームプローブの発振周期2π/ωと、スピンドルSPDの回転周期2π/ω”との比も整数比となるように設定されている。
【0046】
ハードディスクHDの記録面上には、ユーザ・データの他に、サーボ・データと呼ばれる信号パターンが放射状に書き込む必要がある。このサーボ・データには、トラック番号を示すトラック・データや、セクタ番号を示すセクタ・データや、トラックの中心とヘッダの位置の相対的な位置を検出するためのバースト・データなどが含まれる。ハードディスクドライブ装置HDDにおいては、ホストコンピュータからユーザ・データの書き込み命令と書き込み先のアドレスを受け取ると、サーボ・データを読み込んで磁気ヘッダHEADの現在位置を検出し、目的のアドレスにヘッダを移動して、そのユーザ・データの記録を行う。ユーザ・データは、サーボ・データと、サーボ・データの間の領域に記録されるようになる。
【0047】
記録面上へのサーボ・データの書き込みは、通常は装置の出荷前に行われる。図1には、上述したハードディスクHDの記録面上へサーボ・データの書き込みを行うためのフィードバック制御系21と、データ入出力装置25とが示されている。フィードバック制御系21は、磁気ヘッダHEADの位置を制御する制御系であり、データ入出力装置25は、ハードディスクHDから読み取ったデータを磁気ヘッダHEADから入力したり、ハードディスクHDに書き込むデータを磁気ヘッダHEADに出力したりする。
【0048】
なお、ハードディスクHDへのサーボ・データの書き込みに先立って、ハードディスクHD上には、サーボ・データを書き込むための仮サーボ情報が予め書き込まれているものとする。この仮サーボ情報は、ハードディスクHDがスピンドルが装着される前に、記録面上に書き込まれたものである。
【0049】
エンコーダ171(検出装置501)で検出されたハードディスクHDの回転情報、エンコーダ172(検出装置502)で検出された磁気ヘッダHEADの位置情報は、フィードバック制御系21、データ入出力装置25に送られている。また、データ入出力装置25は、磁気ヘッダHEADから読み取った仮サーボ情報を、フィードバック制御系21に送っている。
【0050】
フィードバック制御系21は、入力されたハードディスクHDの回転情報、磁気ヘッダHEADの位置情報、データ入出力装置25から送られた仮サーボ情報に基づいて、モータMを駆動して磁気ヘッドアームARMの先端の磁気ヘッダHEADの位置を制御する。
【0051】
図6には、フィードバック制御系21の制御ブロック図の一例が示されている。フィードバック制御系21は、指令出力装置81と、偏心補正装置82と、ヘッダ駆動量作成装置83と、減算器84とを備えている。
【0052】
指令出力装置81は、そのサーボ情報が書き込まれるべき磁気ヘッダHEADの設計上の位置を位置指令として減算器84に出力する。
【0053】
一方、偏心補正装置82は、エンコーダ171から入力されたハードディスクHDの回転情報、エンコーダ172から磁気ヘッダHEADの位置情報、データ入出力装置25から送られた仮サーボ情報を入力している。偏心補正装置82は、これらの情報に基づいて、スピンドルSPDの回転中心に対するハードディスクHDの偏心分だけ補正された磁気ヘッダHEADの実測位置情報を算出して出力する。
【0054】
減算器84は、この位置指令と、検出装置502から出力された磁気ヘッダHEADの実測位置情報との偏差を算出して出力する。ヘッダ駆動量作成装置83は、この偏差に応じて、モータMの駆動量を算出し、その算出結果に基づいてモータMを駆動する。この駆動の結果、磁気ヘッダHEADが、ハードディスクHDの偏心量が補正された位置に位置決めされる。
【0055】
なお、このフィードバック制御系21は、所定のサンプリング周期Δtで動作するサンプル値制御系であり、そのサンプリング周期は、検出装置501、502の演算周期と同一となっている。
【0056】
データ入出力装置25は、入力されたハードディスクHDの回転情報、ヘッダHEADの位置情報、フィードバック制御系21からの指令などに基づいて、書き込みべきサーボデータを磁気ヘッダHEADに出力する。
【0057】
ところで、ハードディスクHDの記録面は、同心円状にトラックと呼ばれる領域に分割されており、さらに、ハードディスクHDの回転方向にセクタと呼ばれる微小領域に分割されている。
ハードディスクHDが複数枚ある場合、トラックは全体として仮想的な円筒状になるのでシリンダとも呼ばれている。ハードディスクHDの記録面上では、複数個の円弧状の領域(セクタ)に、ハードディスクHDの回転方向に時系列にデータ(ユーザ・データ)が記録されるようになる。この記録面の半径方向の記録密度は、1インチあたりのトラック密度TPI(track/inch)で表される。このトラック密度は、上述したようにサーボ・データの書き込みの精度に左右されるようになる。
【0058】
次に、このハードディスクドライブ装置HDDのサーボ・データの書き込み動作について説明する。磁気ヘッダHEADへのサーボ・データの書き込みは、トラックピッチの例えば1/2の送りピッチで磁気ヘッダHEADを送りつつ、その磁気ヘッダHEADの位置を、書き込み位置に追従させた状態で行われる。すなわち、この書き込み位置制御は、エンコーダ171、172の計測値、データ入出力装置25で読み取られた仮サーボ情報に基づくフィードバック制御系21での追従制御により実現される。
【0059】
フィードバック制御系21においては、サンプリング周期Δtごとに、指令出力装置81は、書き込まれようとするサーボ・データの設計上の位置に対応する磁気ヘッダHEADの位置指令を出力する。減算器84で、ハードディスクHDの偏心量をも考慮した磁気ヘッダHEADの実測位置との偏差が算出される。この偏差分だけモータMが駆動されて、磁気ヘッダHEADの位置決めが行われる。
【0060】
本実施形態では、図5(A)に示されるように、ハードディスクHDの回転周期(2π/ω”)と、エンコーダ171のビームプローブの振動の周期(2π/ω)との比を整数倍とし、それらの位相差を0としている。このようにすれば、ハードディスクHDの回転周期(2π/ω”)と、エンコーダ171の検出装置501の演算周期Δtとの比も整数倍となって、それらの位相差も0となり、例えば、エンコーダ171においてハードディスクHDの回転情報が検出された時点から、ハードディスクHDが1回転したときに、エンコーダ171は、ハードディスクHDの回転情報を1回転前と同じタイミングで検出できるようになる。すなわち、本実施形態では、データの書き込み・読み込み間隔の周期とエンコーダ171の検出位置の更新レートとが、完全に同期するようになるので、エンコーダ171から得られる信号の遅れ時間(いわゆるデータエイジ)の変動(ジッタ)が大幅に低減されることになる。
【0061】
このジッタの低減は、フィードバック制御系21に良好な影響を与える。例えば、上記ジッタが大きい場合には、ハードディスクHDが一回転する度に、磁気ヘッダHEADが同一のセクタ内の同一位置を捉えているにも関わらず、エンコーダ171の出力がまちまちとなり、同一位置を捉えていないように認識してしまうようになる。したがって、本実施形態にように、ジッタが低減された検出信号を用いて磁気ヘッダHEADの制御を行うようにすれば、サーボ・データをハードディスクHD上に高精度に書き込むことができるようになる。
【0062】
また、本実施形態では、図5(A)に示されるように、ハードディスクHDの回転と、エンコーダ171のビームプローブの振動の駆動信号との位相差を0としている。このようにすれば、ハードディスクHDの回転に対するエンコーダ171の検出装置501の検出タイミングの遅れが0となり、磁気ヘッダHEADのさらなる高精度な制御が可能となる。
【0063】
同様に、本実施形態では、上述したように、ハードディスクHDの回転周期(2π/ω”)と、エンコーダ172のビームプローブの振動の周期(2π/ω)との比も整数倍ととしている。このようにすれば、ハードディスクHDの回転周期(2π/ω”)と、エンコーダ172の検出装置502の演算周期Δtとの比も整数倍となり、例えば、エンコーダ172においてハードディスクHDの回転情報が検出された時点から、ハードディスクHDが1回転したときに、エンコーダ172は、ハードディスクHDの回転情報を1回転前と同じタイミングで検出できるようになる。すなわち、本実施形態では、データの書き込み・読み込み間隔の周期とエンコーダ172の位置更新レートとが、同期するようになるので、エンコーダ172から得られる信号の遅れ時間(いわゆるデータエイジ)の変動(ジッタ)が大幅に低減されることになる。
【0064】
このジッタの低減も、フィードバック制御系21に良好な影響を与える。フィードバック制御系21では、上述したようにハードディスクHDの偏心位置制御を行っており、その制御は、エンコーダ172の計測値に基づいて行われている。上記ジッタが大きい場合には、ハードディスクHDが1回転する度に、ハードディスクHDの偏心量に追従する磁気ヘッダHEADが同一のトラックを捉えているにも関わらず、エンコーダ172の出力がまちまちとなり、同一トラックを捉えていないように認識してしまう可能性もある。したがって、ジッタが低減された検出信号を用いて磁気ヘッダHEADの制御を行うようにすれば、サーボ・データをハードディスクHD上に高精度に書き込むことができるようになる。すなわち、エンコーダ172の計測値の検出タイミングを、ハードディスクHDの回転と同期させることは、この偏心位置制御の精度の観点から見ても、非常に重要である。
【0065】
また、本実施形態では、図5(A)に示されるように、ハードディスクHDの回転と、エンコーダ172のビームプローブの振動の駆動信号との位相差を0としている。このようにすれば、ハードディスクHDの回転に対するエンコーダ172の検出装置502の検出タイミングの遅れが0となり、磁気ヘッダHEADのさらなる高精度な制御が可能となる。
【0066】
また、本実施形態では、エンコーダ171の計測値の検出タイミングと、エンコーダ172の計測値の検出タイミングとを同一としている。フィードバック制御系21は、サンプル値制御系として構築されており、そのサンプリング周期は、エンコーダ171、172のサンプル出力の周期と同一となっている。これにより、フィードバック制御系21では、エンコーダ171、172の計測値として、同時に検出されたものを常に用いることができ、磁気ヘッダHEADの位置制御を極めて正確なものとすることができる。
【0067】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、同期装置51によりハードディスクHDの回転と、エンコーダ171、172のプローブ部191、192におけるビームプローブの駆動信号とを同期させているので、その信号に対応して動作する検出装置501、502において検出されるスピンドルSPDの回転情報、磁気ヘッダHEADの位置情報を含む信号の、ハードディスクHDの回転に対する遅れ時間(データエイジ)の変動(ジッタ)が低減され、ハードディスクHDに対するデータの良好な書き込み、読み出しが可能となる。
【0068】
また、本実施形態によれば、同期装置51は、スピンドルSPDの回転周期(2π/ω”)と、エンコーダ171の検出装置501の駆動信号の周期(2π/ω)との比を整数比とすることによりその同期を実現している。このようにすれば、ハードディスクHDの回転周期と、エンコーダ171、172の検出装置501、502の演算周期Δtとの比も整数倍となり、ハードディスクHDの回転に対する検出装置501、502の検出信号の遅れ時間の変動が低減されるので、ハードディスクHDに対する高精度な書き込み・読み出しを実現することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、スピンドルSPDの回転と、ハードディスクHDの回転量を検出するエンコーダ171のプローブ部191のビームプローブを発振させる駆動信号との位相差が0に保たれている。このようにすれば、ハードディスクHDの回転に対する検出装置501、502の検出信号の遅れを低減することができるので、ハードディスクHDに対する、より高精度な書き込み・読み出しを実現することができるからである。
【0070】
しかしながら、本発明はこれには限定されず、スピンドルSPDの回転と、ハードディスクHDの回転量を検出するエンコーダ171のプローブ部191のビームプローブを発振させる駆動信号との間には、位相差があってもよい。このような位相差があっても、ハードディスクHDの回転と、エンコーダ171、172の検出装置501、502の演算周期Δtとが同期するようにすれば、ハードディスクHDの回転に対する検出装置501、502の検出信号の遅れ時間の変動が低減されるからである。
【0071】
また、本実施形態に係るエンコーダシステムによれば、プローブ部191は、スケール181に照射するレーザビームをそのグレーティング1の方向に振動させる駆動装置11を有しており、同期装置51は、対物レンズ7を振動させるための駆動信号(位相ωt)と、その整数倍の周期を有するスピンドルSPDの回転の駆動信号(位相ω”t)とを出力している。これにより、スピンドルSPDと、エンコーダ171、172の検出タイミングとを同期させることができるようになる。
【0072】
なお、上記実施形態のエンコーダシステム16では、様々な変形が可能である。例えば、レーザビームの光路中に振動可能なミラーを挿入し、そのミラーの振動によりビームプローブを振動させるようにしてもよい。また、レーザビームの光路中に回折格子を置き、その回折格子を振動させるようにしてもよい。
【0073】
また、図7に示されるように、レーザダイオード3から出力されたレーザビームの光路上に、回折角変更の要因となるアコースティック光学デバイスA/O又は屈折率変更の要因となる電子工学デバイスE/Oを挿入し、A/O、E/Oに正弦波制御信号Dを介して生成された電圧を加え、回折角や屈折率を変更してグレーティング1上のビームプローブを発振させるようにしてもよい。
【0074】
また、図8(A)に示されるような、プローブ部を採用することも可能である。このプローブは、レーザダイオード3と、ビームスプリッタ6との間の光路に、音響光学効果により回折光の角度を任意に設定可能な回折格子5’が挿入されている。回折格子5’の作用により、レーザビームは、0次回折光(メインビーム)と、外側の1次回折光(サブビーム)とに分割され、グレーティング1上に到達する。そして、グレーティング1で反射した各ビームは、ビームスプリッタで反射され、光センサで受光される。グレーティング1を空間周波数をω’とする。
【0075】
この回折格子5’は、例えば音響光学効果又は電気光学効果により、回折光の角度を調整可能な回折格子である。駆動装置11は、入力される駆動信号Dに従って、回折格子5’に対して正弦波信号を入力する。この入力により、グレーティング1上の各1次回折光の角度が正弦波的に変動する。したがって、光センサ9により検出されたサブビームは、ビームプローブの発振によって変調された信号となっており、この信号から、上記実施形態と同様の原理を用いて、グレーティング1の峰に対するビームプローブの振動中心との距離を検出することができる。
【0076】
このようなプローブを採用した場合、光センサ9としては、図8(B)に示されるように、メインビーム検出用の4分割の光センサ93と、サブビーム検出用の2つのセンサ9、92とが用いられる。
【0077】
2つのサブビームの受光結果、光センサ91、92からの検出信号のいずれか一方からは、上記実施形態と同様の原理で、スケールの峰と、ビームプローブの振動中心の相対距離を検出することが可能である。図8(B)に示される検出装置では、光センサ91、92からの信号から検出された振幅/位相の検出値を加算した結果を位置の計測値として検出し、減算した結果をレーザダイオードの位置ドリフトなどによるビームプローブのドリフト量として検出している。
【0078】
4分割の光センサ9の各センサをそれぞれ9A、9B、9C、9Dとし、9A、9B、9C、9Dの出力を、a,b,c,dとする。メインビームの検出結果からは、2つの信号(a+b+c+d、a+c−bーd)を作成することができる。この2つの信号は、90度の位相差を有しているので、この2つの信号は、不図示のフォーカスサーボ回路へ送られ、対物レンズとグレーティング1とのフォーカス制御に用いることができる。
【0079】
また、上記実施形態によれば、ハードディスクHDの回転情報を検出するエンコーダ171におけるビームプローブの発振角周波数と、磁気ヘッダHEADの位置情報を検出するエンコーダ172におけるビームプローブの発振角周波数とをωで同一し、その位相差を0としている。このようにすれば、エンコーダ171の検出装置501の検出タイミングと、エンコーダ172の検出装置502の検出タイミングを合わせることができるので、ハードディスクHDと磁気ヘッダHEADとの相対位置を、常に正確に検出することができるようになる。
【0080】
このような、各エンコーダの検出タイミングを完全に同期させるエンコーダシステム16の構成は、上記実施形態のものには限られない。図9には、エンコーダシステム16の代わりに用いることができるエンコーダシステム16’の構成が概略的に示されている。9に示されるように、エンコーダシステム16’は、レーザダイオード3と、コリメータレンズ4と、分岐装置71と、プローブ部191’、192’を備えている。プローブ部191’、192’は、プローブ部191、192とほぼ同じ構成となっている。
【0081】
レーザダイオード3は、駆動装置11に接続されており、Y軸方向に振動可能となっている。レーザダイオード3から射出された光はコリメータレンズ4で平行光に変換される。
【0082】
分岐装置71は、ハーフミラー74と、ミラー77とを備えている。ハーフミラー74で反射したビームは、ミラー77で反射され、プローブ部191’に入射する。また、ハーフミラー74を透過したビームは、プローブ部192’に入射する。
【0083】
すなわち、分岐装置71は、駆動装置11により振動されたレーザダイオード3から射出されコリメータレンズ4を介したレーザビームをプローブ部191’、192’に供給する。なお、プローブ部192’に入射するレーザビームについては、その振動方向がヘッダの移動方向となるように、分岐装置71の光学系が設定されている。
【0084】
プローブ部191’は、分岐装置71から供給されるレーザビームをY軸方向に振動させた状態で、スケール181のグレーティング1に照射する。プローブ192’は、分岐装置71から供給されるレーザビームをY軸方向に振動させた状態でスケール182のグレーティング1上に照射する。また、プローブ192’は、分岐装置71から供給されるレーザビームを磁気ヘッダHEADの移動方向に振動させた状態でスケール182のグレーティング1上に照射する。
【0085】
このように、各プローブ部で光源を共通化し、かつ光源自体を振動させるようにすれば、各エンコーダから出力される信号は、同じように変調されているため、その検出信号からの位置情報の検出を同じタイミングで行うことができるようになる。このため、各検出装置の演算周期を同一とすることができる。
【0086】
なお、2つのプローブ部191、192のビームプローブの振動周波数を、完全に一致させる必要はなく、同期装置51は、プローブ部191のビームプローブの振動角周波数と、プローブ部191のビームプローブの振動角周波数との比を整数比とすればよい。図5(B)には、プローブ部19Y1のビームプローブの振動角周波数をω1とし、プローブ部19Y2のビームプローブの振動角周波数をω2として、2ω1=ω2の関係がある場合のタイムチャートが示されている。このようにしても、図5(B)に示されるように、検出装置501、502の演算周期をΔtで同一とすることが可能である。すなわちエンコーダ191、192のビームプローブの発振周波数の比を整数としておけば、演算周期Δtを同一に設定することができ、エンコーダ191、192での検出信号の出力タイミングを同期させることが可能である。
【0087】
また、本実施形態によれば、プローブ部191は、スケール181に照射するレーザビームをY軸方向に振動させるために対物レンズ7を駆動する駆動装置11を有し、プローブ部192は、スケール182に照射するレーザビームをY軸方向に振動させるために対物レンズ7を駆動する駆動装置11を有している。そして、プローブ部191を構成する駆動装置11を振動させるための駆動信号と、プローブ部192を構成する駆動装置11を振動させるための駆動信号とを同期装置51から出力された位相信号に基づく位相が完全に一致した信号としている。しかしながら、本発明はこれには限られず、各駆動信号は、一定の位相差を有していても良い。図5(C)には、プローブ部191の駆動信号と、プローブ部192の駆動信号との間に、位相差Δθが生じている場合のタイムチャートが示されている。この場合には、フィードバック制御系21においては、プローブ部192の出力をΔθだけ遅延させた状態で、磁気ヘッダHEADの位置情報を算出すればよい。
【0088】
また、本実施形態によれば、エンコーダ171、172によって検出された位置情報に基づいて、ハードディスクHDに対する磁気ヘッダHEADの相対位置を制御するフィードバック制御系21をさらに備える。このフィードバック制御系21では、エンコーダ171からのハードディスクHDの回転情報、エンコーダ172からの磁気ヘッダHEADの位置情報、データ入出力装置からの仮サーボ情報などに基づいて、磁気ヘッダHEADの位置制御を行う。このフィードバック制御系21では、スピンドルSPDに対するハードディスクHDの偏心を補正するので、ハードディスクHDの偏心によらない高精度な磁気ヘッダHEADの位置決めを実現することができる。
【0089】
なお、上記実施形態では、ハードディスクHDの回転情報を検出するためのエンコーダ171のスケール181をハードディスクHDの中央部に取り付けたが、これには限られない。例えば、このスケールは、ハードディスクHDの外周部に設けられていてもよく、ハードディスクHDの側面に設けられていてもよい。
【0090】
なお、スケール181、182のグレーティング1の面形状は、正弦波形状でなくてもよく、矩形波状であってもよい。また、グレーティング1は、反射率が異なる素子が交互に配列されたものであってもよく、要は、その測定方向に特定のパターンが配列されたものであればよい。
【0091】
また、上記実施形態のエンコーダシステム16には、様々な変形が可能である。
【0092】
グレーティング1上に照射されるビームプローブのビーム断面形状、Y方向に延びた楕円や線形にすることも可能である。また、例えば、エンコーダ171のプローブ部191のビームプローブをハードディスクHDの回転方向の発振周波数より高い周波数で半径方向に振動させるようにして、検出結果を平均化することにより、検出精度を高めるようにすることもできる。
【0093】
また、エンコーダとしては、スケールとして磁気媒体を適用し、プローブとして磁気読み取りヘッダを適用することも可能である。
【0094】
なお、上記実施形態のプローブ部191、192では、対物レンズ7の変位を検出するセンサ、例えば、光ファイバ変位センサ等を設けるようにしてもよい。この場合には、そのセンサの検出信号を、検出装置501、502で発生させる高調波の元周波とすることが可能である。ただし、この場合には、PLL回路などを用いて、同期回路51から発せられる位相信号を用いて、センサの出力信号の位相をロックする必要がある。
【0095】
また、1つのエンコーダにつき複数のビームプローブが用意されていてもよい。例えば、振動周波数が同一で、振動の位相が異なる2つのビームプローブをスケールの周期方向に並べて配置したものを用いることができる。この2つのビームプローブの距離は、そのプローブ発振の位相差とスケールの空間角周波数とに基づく距離となっている。このようにすれば、位置測定に際して基本周波数成分のみを検出すればよく、検出装置に要求されるバンド幅を下げることができるようになる。なお、単一のプローブの場合には、少なくとも基本周波数の2倍のバンド幅が必要となる。
【0096】
また、これらのビームの断面形状を、楕円形や線形に伸ばすことも可能である。
【0097】
なお、プローブは、上記実施形態のようなビームプローブである必要はない。例えば、先端が鋭く尖ったタングステンやPt−Irワイヤ等で構成されるフィジカルプローブを用いたエンコーダであってもよい。この場合には、スケールを導電性のものとし、プローブとスケールとの間にトンネル電流を発生させ、その出力電圧をI−Vコンバータで測定する必要がある。この出力電圧には、プローブの振動の周波数成分と、スケールの振動周波数成分とが含まれており、上記実施形態と同様に、プローブの振動周波数成分による復調で、スケールの峰とプローブの振動中心との相対距離を取得することができる。
【0098】
フィジカルプローブを適用する場合には、その検出方式は、上述したトンネル電流を発生させる方式には限られない。例えば、プローブとスケールとの間の容量を検出する容量式のものであってもよいし、スケール上に周期的に設けられた磁場や電場などを検出するものであってもよい。
【0099】
上記実施形態では、各エンコーダのプローブ部に入力されるビームプローブの駆動装置の駆動信号を、検出装置における変調信号の元周波としてそのまま用いたが、これには限られない。例えば、フィジカルプローブを用いる場合には、各プローブの実際の振動を検出し、元周波として用いる駆動装置の駆動信号の位相を、実際の振動の位相にあわせるようにしてもよい。このようにすれば、プローブの振動の位相シフトが補正されるので、その振動周波数がそのプローブの共振周波数近くであったとしても、エンコーダにおいて安定した位置計測を実現することが可能となる。
【0100】
また、プローブの検出信号から位置情報を検出する検出装置の構成は、上記実施形態のものには限られず、様々な変形例が考えられる。このような検出装置の変形例などについては、米国特許第6639686号明細書に開示されているので詳細な説明を省略する。
【0101】
なお、上記実施形態では、ハードディスクHDにサーボ・データを書き込むための制御系に本発明を適用する場合について説明したが、本発明を、ハードディスクHDに対するユーザ・データの書き込み・読み出しを行うための制御系に適用してもよいことは勿論である。
【0102】
なお、上記実施形態では、ハードディスクドライブ装置に本発明を適用した場合について説明したが、CD系の規格に準拠した光ディスクドライブ装置に本発明を適用するようにしてもよい。また、例えばDVD系の規格に準拠した光ディスクや、波長が約405nmのレーザ光を用いるいわゆる次世代DVDの規格に準拠した光ディスク、及びレーザディスク(LD)の規格に準拠した光ディスクに対応するドライブ装置に本発明を適用することもできる。さらに、規格の異なる複数種類の光ディスクに対応するドライブ装置であっても良い。また、情報記録媒体は、光ディスク以外の媒体であっても良い。要するに、情報の記録、再生及び消去のうちの少なくとも再生に際して、情報記録媒体の回転を伴うものであれば、その他の如何なる種類の情報記録媒体であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上説明したように、本発明のエンコーダシステムは、ディスク型のストレージ装置に適用されるのに適しており、ストレージ装置は、高精度にデータを保管するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の一実施形態に係るハードディスクドライブ装置の概略的な構成を示す斜視図である。
【図2】エンコーダのプローブ部の構成を示す図である。
【図3】検出装置の一般的な構成を示すブロック図である。
【図4】検出装置の詳細な他の構成を示すブロック図である。
【図5】図5(A)は、処理回路の演算周期と、プローブの発振周期との関係を示すタイミングチャートであり、図5(B)は、2つのエンコーダのプローブの発振周期が整数倍の関係にある場合の処理回路の演算周期と、プローブの発振周期との関係を示すタイミングチャートであり、図5(C)は、2つのエンコーダのプローブの振動に位相差があるときの処理回路の演算周期と、プローブの発振周期との関係を示すタイミングチャートである。
【図6】フィードバック制御系の構成を示すブロック図である。
【図7】プローブ部の他の構成例(その1)を示す図である。
【図8】図8(A)は、プローブ部の他の構成例(その1)を示す図であり、図8(B)は、検出装置の他の構成例を示す図である。
【図9】プローブ部の他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0105】
1…グレーティング、3…レーザダイオード、4…コリメータレンズ、5…A/O(E/O)デバイス、6…ビームスプリッタ、7…対物レンズ、8…焦点レンズ、9…光センサ、11…アクチュエータ、16、16’…エンコーダシステム、171,172…エンコーダ、181,182…スケール、191、192…プローブ部、21…フィードバック制御系、25…データ入出力装置、501、502…検出装置、61…フィルタ、62…周波数シンセサイザ、631、632…乗算器、64…加算器、65…ループフィルタ、66…積分器、671、672…加算器、681、682…正弦波関数発生器、71…分岐装置、74…ハーフミラー、77…ミラー、81…指令出力装置、82…偏心補正装置、83…磁気ヘッダ駆動量作成装置、84…減算器、ARM…磁気ヘッダアーム、D…駆動信号、HEAD…磁気ヘッダ、HD…ハードディスク、HDD…ハードディスクドライブ装置、M…モータ、O…回転中心、SPD…スピンドル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に取り付けられ、前記回転軸の回転方向に沿って配列されたパターンを有するスケールと、前記スケールのパターンを読み取り、所定の周期信号で変調された出力信号を出力するプローブと、前記プローブから出力される出力信号に基づいて、前記回転軸の回転情報を検出する検出器とを有するエンコーダと;
前記回転軸の回転と、前記所定の周期信号とを同期させる同期装置と;を備えることを特徴とするエンコーダシステム。
【請求項2】
前記同期装置は、
前記回転軸の回転周期と、前記所定の周期信号の周期との比を整数比とすることを特徴とする請求項1のエンコーダシステム。
【請求項3】
前記同期装置は、
前記回転軸の回転と、前記所定の周期信号との位相差を0に保つことを特徴とする請求項2に記載のエンコーダシステム。
【請求項4】
前記プローブは、前記スケールに照射する光を前記パターンの配列方向に振動させる振動素子を有し、
前記同期装置は、前記振動素子を振動させるための駆動信号と、前記回転軸の回転周期とを同期させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエンコーダシステム。
【請求項5】
ディスクを回転駆動する駆動装置と;
前記ディスクに対し所定方向に移動し、前記ディスクに対して情報処理可能なヘッダと;
前記ディスクの回転方向に沿って配列されたパターンを第1のプローブを介して読み取り、前記第1のプローブから出力される、第1周期信号で変調された出力信号に基づいて、前記ディスクの回転情報を検出する回転用エンコーダと;
前記駆動装置での前記ディスクの回転と、前記回転用エンコーダにおける前記第1周期信号とを同期させる同期装置と;を備えるストレージ装置。
【請求項6】
前記ヘッダに設けられた前記所定方向に配列されたパターンを第2のプローブを介して読み取り、前記第2のプローブから出力される、第2周期信号で変調された出力信号に基づいて、前記ヘッダの位置情報を検出する位置用エンコーダをさらに備え、
前記同期装置は、
前記駆動装置での前記ディスクの回転と、前記位置用エンコーダにおける前記第2周期信号とを同期させることを特徴とする請求項5に記載のストレージ装置。
【請求項7】
前記回転用エンコーダにおける前記第1周期信号の周波数と、前記位置用エンコーダにおける前記第2周期信号の周波数とを同一とすることを特徴とする請求項6に記載のストレージ装置。
【請求項8】
前記回転用エンコーダにおける前記第1周期信号の周波数と、前記位置用エンコーダにおける前記第2周期信号の周波数との位相差を0とすることを特徴とする請求項6に記載のストレージ装置。
【請求項9】
前記回転用エンコーダ及び前記位置用エンコーダによって検出された位置情報に基づいて、前記ディスクに対する前記ヘッダの相対位置を制御する制御装置をさらに備えることを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載のストレージ装置。
【請求項10】
ディスクを回転駆動する駆動装置と;
前記ディスクに対して所定方向に移動し、前記ディスクに対して情報処理可能なヘッダと;
前記ディスクの回転方向に沿って配列されたパターンを第1のプローブを介して読み取り、前記第1のプローブから出力される、第1周期信号で変調された出力信号に基づいて、前記ディスクの回転情報を検出する回転用エンコーダと;
前記ヘッダが移動する所定方向に沿って配列されたパターンを第2のプローブを介して読み取り、前記第2のプローブから出力される、第2周期信号で変調された出力信号に基づいて、前記ヘッダの位置情報を検出する位置用エンコーダと;
前記回転用エンコーダにおける前記第1周期信号と、前記位置用エンコーダにおける前記第2周期信号とを同期させる同期装置と;を備えるストレージ装置。
【請求項11】
前記同期装置は、
前記駆動装置での前記ディスクの回転と、前記回転用エンコーダにおける前記第1周期信号とを同期させることを特徴とする請求項10に記載のストレージ装置。
【請求項12】
前記同期装置は、
前記駆動装置での前記ディスクの回転と、前記位置用エンコーダにおける前記第2周期信号とを同期させることを特徴とする請求項10又は11に記載のストレージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−95237(P2007−95237A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286817(P2005−286817)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】