説明

エンジニアリング装置

【課題】オブジェクト情報に不適合な情報が含まれている場合でも正常な監視制御を行うことのできる監視システムを構築可能なエンジニアリング装置を提供する。
【解決手段】監視システムの仕様に合わせた適正値を記述した定義ファイルを定義ファイル記憶部22に記憶させておき、プロパティ情報変換部23は、オブジェクトファイルに含まれる不適合なプロパティ情報を特定し、定義ファイル中の適正値に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、制御機器を管理制御する上位コントローラに所定のプロトコルを適用した通信回線を介して接続されるエンジニアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物内の複数のフィールド制御機器の監視・制御を行う監視システムとして、BACnet(Building Automation and Control netwoking protocol)などのオープンネットワークを用いて、空調設備、照明設備、電気設備および防災設備などの異なるメーカのシステムを接続し、監視・制御を行うマルチベンダ対応システムが普及している。
【0003】
このBACnetに対応した監視システムを構築するに当たり、国内では、事前に各ベンダからBACnet仕様に応じた制御機器のオブジェクト情報をカンマ区切りにしたCSV形式のファイルとして入手することが定着している。そして、エンジニアリング装置が入手したCSVファイルに基づいて、監視装置で管理を行う制御機器情報、監視ポイント情報、オブジェクト情報などの管理情報を記録したJOBファイルを作成する。また、エンジニアリング装置は、作成したJOBファイルに基づいて、監視装置で管理を行う上位コントローラを動作させるための動作ファイルを作成し、対応する上位コントローラにダウンロードする。
【0004】
例えば、特許文献1に係るエンジニアリング装置は、BACnetに適合するオブジェクト仕様をCSV形式で記述したCSVファイルを取り込み、このオブジェクト仕様を予め用意されたオブジェクトパラメータを参照することにより、オブジェクト毎のインスタンスを生成し、インスタンスからオブジェクト実装情報を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−358116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のエンジニアリング装置は、適正なCSVファイル(オブジェクト仕様)が準備されていることが前提となっている。
しかしながら、入手したCSVファイルの情報に欠落があったり、監視システムの仕様に適合していない設定の情報が含まれたりすると、正常な監視制御を行えない。そのため、従来は、不適合な情報を手動により特定して修正する必要があり、効率が悪いという課題があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、制御機器のオブジェクト情報が記述されたCSVなどの所定形式のファイルに含まれる不適合な情報を特定して修正するようにして、オブジェクト情報に不適合な情報が含まれている場合でも正常な監視制御を行うことのできる監視システムを構築可能なエンジニアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るエンジニアリング装置は、上位コントローラが管理制御する制御機器のオブジェクト情報の属性を示すプロパティ情報の適正値を記述した定義ファイルを記憶する定義ファイル記憶部と、所定のファイル仕様で作成されたオブジェクト情報をオブジェクトファイルとして記憶するオブジェクトファイル記憶部と、定義ファイル記憶部に記憶されている定義ファイルに基づいて、オブジェクトファイル記憶部に記憶されているオブジェクトファイルのオブジェクト情報に含まれるプロパティ情報を適正値に変換するプロパティ情報変換部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、定義ファイルに基づいて、オブジェクト情報に含まれるプロパティ情報を適正値に変換するようにしたので、CSVなどの所定形式のファイルで作成されたオブジェクト情報に不適合な情報が含まれている場合でも、その情報を特定して修正することのできるエンジニアリング装置を提供することができる。よって、このエンジニアリング装置を用いることで、入手した制御機器のオブジェクト情報にシステム仕様に適合しない情報が含まれていても正常な監視制御を行うことのできる監視システムを構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエンジニアリング装置を適用する監視システムの全体構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係るエンジニアリング装置の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1のオブジェクトファイルについて、BACnetのプロトコルに対応したCSVフォーマットの一例を示す図である。
【図4】実施の形態1に係る上位コントローラの構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態1に係るエンジニアリング装置のオブジェクトファイル作成の動作を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態1に係るエンジニアリング装置が作成したオブジェクトファイルの一例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係るエンジニアリング装置の構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態2に係るエンジニアリング装置のプロパティ情報変換部による変換処理の例を説明する図である。
【図9】実施の形態2に係るエンジニアリング装置のオブジェクトファイル修正の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る監視システムの構成を示す図であり、通信ネットワークとしてBACnetを用いた場合を示している。
監視システムは、図1に示すように、エンジニアリング装置1、監視装置2、表示装置3、複数の上位コントローラ4、複数の下位コントローラ5、および複数のBACnetルータ6(図1では一つを例示する)などから構成されている。
【0012】
エンジニアリング装置1は、BACnetに対応した監視システムを構築するものである。このエンジニアリング装置1は、システムを構築する際に、BACnetの規格に合わせて、監視装置2で監視・制御を行う上位コントローラ4、下位コントローラ5および不図示のフィールド制御装置(制御機器)のオブジェクトの属性情報(詳細は後述する)を記述したCSV形式のオブジェクトファイルを作成し、このオブジェクトファイルに基づいてシステムの構成情報、およびI/O情報などの管理情報を記録したJOBファイルを作成する。また、エンジニアリング装置1は、作成したJOBファイルに基づいて、各上位コントローラ4を動作させるための動作ファイルを作成して、対応する上位コントローラ4にダウンロードする。
【0013】
監視装置2は、BACnetを介して接続される複数の上位コントローラ4を監視・制御するものである。この監視装置2による監視・制御情報は表示装置3に表示される。
【0014】
上位コントローラ4は、監視装置2による制御に従い、下位ネットワークを介して接続される複数の下位コントローラ5を監視・制御するものである。この上位コントローラ4は、エンジニアリング装置1からダウンロードした動作ファイルに基づいて動作する。また、上位コントローラ4は、下位ネットワークに接続されたフィールド制御装置の設定などの情報を含むオブジェクト情報を有する。
なお、上位コントローラ4は、BACnetルータ6を介してBACnetに接続される構成であってもよい。
【0015】
下位コントローラ5は、上位コントローラ4による制御に従い、下位ネットワークを介して接続される複数の不図示のフィールド制御装置を制御するものである。フィールド制御装置は各種センサ、アクチュエータなどを具備し、下位コントローラ5がこれらをオブジェクトとして扱い、制御する。例えばあるオブジェクトが温度センサの温度データを取得するために使用され、下位コントローラ5が取得した温度データは上位コントローラ4へ通知される。通知された情報を基にした動作指示は、上位コントローラ4から下位コントローラ5へ通知され、下位コントローラ5がオブジェクト制御によりフィールド制御装置を動作させる(例えば空調機の発停制御)。
【0016】
次に、エンジニアリング装置1のオブジェクトファイル作成に関する構成について説明する。図2はこの発明の実施の形態1に係るエンジニアリング装置1の構成を示すブロック図である。
エンジニアリング装置1は、図2に示すように、ファイル仕様選択部11、ファイル仕様記憶部12、送受信部13、通信情報設定部14、サービス情報取得部15、オブジェクトID取得部16、プロパティ情報取得部17、プロパティ情報記憶部18、オブジェクトファイル作成部19、オブジェクトファイル記憶部20および入出力部21から構成されている。
【0017】
ファイル仕様選択部11は、作成するオブジェクトファイルのフォーマット(仕様)を選択する。
図3に、BACnetのプロトコルの一つであるIEIEJ−G−0006:2006仕様のCSVフォーマットの一例を示す。図3に示すように、CSVファイルは、一つのオブジェクトについて、カラム1〜38の順に、プロパティ(オブジェクトの属性を表す情報)の項目に対応する情報が記述される。
例えば、ファイルフォーマットが「75,77,79,117,65,69」の場合、会議室に設置された空調機の温度計測値のために使用されるオブジェクトは「12582910,会議室温度,1,62,40.0,10.0」のように記述される。このオブジェクトは、オブジェクトID(プロパティID75)が「12582910」であり、オブジェクト名(77)は「会議室温度」、オブジェクトタイプ(79)は「0(Analog Input)」、単位(117)は「62(℃を表す数字)」、温度データの最大値(65)は「40.0」、最小値(69)は「10.0」であることを示す。
なお、オブジェクトとは、温度センサなどのフィールド制御機器のデータを抽象化し、プロパティの集合として定義したものであり、ANSI/ASHRAE Standard 135−2004に規定されている。本実施の形態中のオブジェクト情報は、このオブジェクトを意味する。
【0018】
図3の例はIEIEJ−G−0006:2006仕様のファイルフォーマットであるが、この他にも、IEIEJ−P−0003:2000仕様、独自仕様などのファイルフォーマットでもよい。ファイル仕様選択部11は、所定のファイルフォーマットを選択するか、入出力部21を通じてユーザの指示するファイルフォーマットを選択するかして、選択したファイルフォーマットをオブジェクトID取得部16に出力する。
ファイルフォーマットは予めファイル仕様記憶部12に与えておけばよい。
なお、BACnetの場合はCSV形式のフォーマットであるが、これに限定されるものではなく、BACnet以外のネットワークの場合にはそれに対応したフォーマットにすればよい。
【0019】
送受信部13は、BACnetを介して、またはBACnetを介しBACnetルータ6を経由して、上位コントローラ4との間でデータの送受信を行う。
通信情報設定部14は、通信相手の上位コントローラ4がBACnetルータ6を経由してBACnetに接続している場合に、このBACnetルータ6に通知する通信情報を設定する。通信情報としては、IP(Internet Protocol)アドレス、プロパティ数/分、プロトコル選択などが含まれる。
サービス情報取得部15は、上位コントローラ4がサポートしているサービス情報(Protocol_Services_Supportedプロパティ)を要求するサービス情報要求メッセージを作成して、通信情報設定部14から入力される通信情報を付与し、送受信部13を介して上位コントローラ4へ送信する。また、サービス情報取得部15は、上位コントローラ4からの返信も送受信部13を介して受け取り、オブジェクトID取得部16に出力する。サービス情報としては、ReadProperty(単一オブジェクトの単一プロパティを参照する)、ReadPropertyMultiple(単一オブジェクトの複数プロパティを参照するか、複数ポイントの複数プロパティを参照する)、セグメンテーションサポートの有無(セグメント化したメッセージの送受信を行うか否か)などが含まれる。
【0020】
オブジェクトID取得部16は、サービス情報取得部15から入力されるサービス情報、およびファイル仕様選択部11から入力されるファイル仕様に基づいて、上位コントローラ4が有するオブジェクト情報を取得するための前段階として、上位コントローラ4が有する全オブジェクトIDを要求するオブジェクトID要求メッセージを作成し、送受信部13を介して上位コントローラ4へ送信する。また、オブジェクトID取得部16は、上位コントローラ4からの返信も送受信部13を介して受け取り、プロパティ情報取得部17に出力する。
【0021】
プロパティ情報取得部17は、オブジェクトID取得部16から入力されるオブジェクトIDおよびサービス情報に基づいて、全てのオブジェクトIDのプロパティ情報を要求するプロパティ情報要求メッセージを作成し、送受信部13を介して上位コントローラ4へ送信する。また、プロパティ情報取得部17は、上位コントローラ4からの返信も送受信部13を介して受け取り、プロパティ情報記憶部18に出力する。
なお、プロパティ情報の取得は、上位コントローラ4毎にサポートする形態に応じて行えばよい。例えば、サポート情報に基づいて、オブジェクトID毎のプロパティ情報要求メッセージを作成してもよいし、全てのオブジェクトID一括のプロパティ情報要求メッセージを作成してもよい。
また、プロパティ情報取得部17は、ファイル仕様選択部11から入力されるファイル仕様に基づいて、オブジェクト毎に必要となるプロパティ情報を選択して、特定のプロパティ情報を要求するプロパティ情報要求メッセージを作成してもよい。
【0022】
オブジェクトファイル作成部19は、ファイル仕様選択部11から入力される指示に基づいて該当するファイル仕様をファイル仕様記憶部12より取得し、このファイル仕様に必要なプロパティ情報をプロパティ情報記憶部18より取得して、オブジェクトファイルを作成する。作成したオブジェクトファイルは、オブジェクトファイル記憶部20に出力し、記憶する。
なお、エンジニアリング装置1において、オブジェクトファイルに含まれる各オブジェクトの情報が、監視装置2の監視する各監視ポイントに関連付けられて、JOBファイルおよび動作ファイルが作成されることになる。
【0023】
入出力部21は、通信情報の設定画面を表示してユーザの入力を受け付けて通信情報設定部14に設定したり、ファイル仕様の選択画面を表示してユーザの指示入力を受け付けてファイル仕様選択部11に出力したり、ファイル仕様の作成画面を表示してユーザが新たに作成したファイル仕様をファイル仕様記憶部12に記憶させたりする。なお、入出力部21として、キーボード(およびマウスなど)とディスプレイのように別体の入力装置と出力(表示)装置を用いてもよいし、タッチパネルのように入力と出力(表示)が一体となった装置を用いてもよい。
【0024】
次に、上位コントローラ4の構成を説明する。図4はこの発明の実施の形態1に係る上位コントローラ4の構成を示すブロック図である。
上位コントローラ4は、図4に示すように、送受信部41、メッセージ解析部42、および情報記憶部43から構成される。
【0025】
送受信部41は、BACnetを介して、またはBACnetを介しBACnetルータ6を経由して、エンジニアリング装置1との間でデータの送受信を行う。
メッセージ解析部42は、送受信部41を介してエンジニアリング装置1から受信したサービス情報要求メッセージ、オブジェクトID要求メッセージ、プロパティ情報要求メッセージを解析し、要求に応じた情報を情報記憶部43より取得し、送受信部41を介して送信する。
情報記憶部43は、この上位コントローラ4がサポートするサービスの一覧、この上位コントローラ4が監視・制御するフィールド制御装置のオブジェクト情報(例えばオブジェクトID、オブジェクト名、オブジェクトタイプといったプロパティ情報)などを記憶している。
【0026】
以下では、監視システム構築時に、CSV形式のオブジェクトファイルを作成する動作を説明する。図5は、この発明の実施の形態1に係るエンジニアリング装置1のオブジェクトファイル作成の動作を示すフローチャートである。
ここでは、図1に示す監視システムのうち、BACnetルータ6に接続された上位コントローラ4と、この上位コントローラ4に接続される不図示の下位コントローラおよびフィールド制御装置とが他社製であるものと仮定する。
【0027】
エンジニアリング装置1において、この監視システムのBACnetのプロトコル(IEIEJ−G−0006:2006、IEIEJ−P−0003:2000など)に合わせたファイル仕様をファイル仕様選択部11が選択し、オブジェクトID取得部16、プロパティ情報取得部17およびオブジェクトファイル作成部19に出力する(ステップST1)。
【0028】
次いで、通信情報設定部14がBACnetルータ6のための通信情報を設定し、サービス情報取得部15に出力する(ステップST2)。サービス情報取得部15は、オブジェクト情報を取得する他社の上位コントローラ4を指定して、この上位コントローラ4宛のサービス情報要求メッセージを作成する(ステップST3)。そして、送受信部13がこのサービス情報要求メッセージを送信する(ステップST4)。
送受信部13は、指定された上位コントローラ4の返信するサービス情報を受信すると(ステップST5“YES”)、サービス情報をサービス情報取得部15に出力する。なお、送受信部13は、一定時間待っても受信できない場合(ステップST5“NO”)、ステップST4に戻ってサービス情報要求メッセージを再送する等してもよい。
【0029】
次いで、オブジェクトID取得部16が、選択されたファイル仕様で定義されたオブジェクトIDの情報およびサービス情報に基づいて、指定された上位コントローラ4宛のオブジェクトID要求メッセージを作成する(ステップST6)。そして、送受信部13がこのオブジェクトID要求メッセージを送信する(ステップST7)。
送受信部13は、指定された上位コントローラ4が監視・制御する全オブジェクトのオブジェクトIDを受信すると(ステップST8“YES”)、全オブジェクトIDをプロパティ情報記憶部18に出力する。なお、上記同様に送受信部13は一定時間待っても受信できない場合にメッセージを再送する等してもよい。
【0030】
次いで、プロパティ情報取得部17が、オブジェクトIDおよびサービス情報に基づいて、指定された上位コントローラ4宛のプロパティ情報要求メッセージを作成する(ステップST9)。そして、送受信部13がこのプロパティ情報要求メッセージを送信する(ステップST10)。
送受信部13は、指定された上位コントローラ4の返信するプロパティ情報を全オブジェクトIDについて受信すると(ステップST11“YES”)、オブジェクトID毎のプロパティ情報をプロパティ情報記憶部18に出力する。なお、送受信部13はオブジェクトID毎にプロパティ情報の取得を繰り返してもよいし、上記同様に一定時間待っても受信できない場合にメッセージを再送する等してもよい。
【0031】
次いで、オブジェクトファイル作成部19が、選択されたファイル仕様をファイル仕様記憶部12から取得して、プロパティ情報記憶部18に記憶されたオブジェクトID毎のプロパティ情報をそのファイル仕様にしたオブジェクトファイルを作成する(ステップST12)。
【0032】
以上の処理を、他社の上位コントローラ4の様にオブジェクトファイル作成が必要な上位コントローラ4に対してそれぞれ実施すればよい。なお、自社の上位コントローラ4からも同様にオブジェクトファイルを作成してもよいし、予めCSV形式で作成されたオブジェクトファイルを外部から取得してオブジェクトファイル記憶部20に記憶させてもよい。
【0033】
なお、図5では、BACnetルータ6を経由して上位コントローラ4との間で通信を行う場合の例を説明したが、BACnetルータ6を経由せず上位コントローラ4との間で通信を行ってもよいことは言うまでもない。その場合にはステップST2のルータ設定を省略してよい。
【0034】
図6に、オブジェクトファイルの一例を示す。このオブジェクトファイルは、オブジェクトタイプがAnalog Inputのオブジェクト一覧であり、CSVフォーマットはオブジェクトID、単位、単位のプロパティID、最小値、最大値、および最小値と最大値から判定した小数点位置からなる。
【0035】
以上より、実施の形態1に係るエンジニアリング装置1を、上位コントローラ4がサポートしているサービス情報を要求するサービス情報要求メッセージを作成して送受信部13からBACnetを介して送信し、上位コントローラ4からサービス情報を取得するサービス情報取得部15と、上位コントローラ4が管理制御するフィールド制御装置のオブジェクトのオブジェクトIDを要求するオブジェクトID要求メッセージを、サービス情報取得部15の取得したサービス情報に基づき上位コントローラ4がサポートしている形態で作成して送受信部13からBACnetを介して送信し、上位コントローラ4からオブジェクトIDを取得するオブジェクトID取得部16と、オブジェクトID取得部16の取得したオブジェクトIDが付与されたオブジェクトの属性を示すプロパティ情報を要求するプロパティ情報要求メッセージを、サービス情報取得部15の取得したサービス情報に基づき上位コントローラ4がサポートしている形態で作成して送受信部13からBACnetを介して送信し、上位コントローラ4からプロパティ情報を取得するプロパティ情報取得部17と、オブジェクトID取得部16の取得したオブジェクトIDおよびプロパティ情報取得部17の取得したプロパティ情報に基づいて、上位コントローラ4の管理制御するオブジェクトの情報を所定のファイル仕様で作成するオブジェクトファイル作成部19とを備えるように構成した。このため、オブジェクトファイルが入手できない場合などでも、上位コントローラ4からオブジェクト情報を取得して、CSVなどの所定形式のオブジェクトファイルを自動で作成することのできるエンジニアリング装置1を提供することができる。よって、監視システム構築の効率を高めることが可能となる。
【0036】
また、実施の形態1によれば、エンジニアリング装置1が、BACnetなどの通信回線のプロトコルに応じてオブジェクトファイルのファイル仕様を選択するファイル仕様選択部11を備え、オブジェクトID取得部16は、そのファイル仕様に対応するオブジェクトIDを要求するオブジェクトID要求メッセージを作成し、プロパティ情報取得部17は、そのファイル仕様に対応するプロパティ情報を要求するプロパティ情報要求メッセージを作成し、オブジェクトファイル作成部19はそのファイル仕様でオブジェクトファイルを作成するようにしたので、通信回線のプロトコル仕様に応じたオブジェクトファイルを適切に作成することができる。
【0037】
実施の形態2.
図7は、この発明の実施の形態2に係るエンジニアリング装置1の構成を示すブロック図であり、図2と同一または相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。また、このエンジニアリング装置1を適用する監視システムは、図1に示す監視システムと図面上では同様の構成であるため、以下では図1を援用する。
本実施の形態2では、上記実施の形態1に係るエンジニアリング装置1において作成されたオブジェクトファイル中に監視システムの仕様に適合しないプロパティ情報が含まれている場合に、その情報を特定して修正する機能を備えたエンジニアリング装置1を説明する。例えば、温度データを扱うAnalog Inputタイプのオブジェクトのプロパティ情報は各ベンダによって異なるが、図1に示す監視システムではこのプロパティ情報として最小値が0℃以上の値であって小数点以下第1位の値、最大値が50℃以下の値であって小数点以下第1位の値を要求するものと仮定する。この場合、例えば最小値「−20.00℃」のように要求範囲外の値は監視システム上で認識できない。
【0038】
定義ファイル記憶部22は、オブジェクトのプロパティ情報の、監視システムの仕様に合わせた適正値を定義した定義ファイルを記憶する。上述の例であれば、定義ファイルは「24,℃,62(検索キー),0,50,1」とする。これは「No,単位,単位のプロパティID,最小値の適正値,最大値の適正値,小数点位置の適正値」を意味する。
最初の「62」は、プロパティID117(単位)が「℃」であることを示す数値であり、後述するプロパティ情報変換部23がこのプロパティID117を検索キーとしてオブジェクトファイルから該当するオブジェクト情報を取得する。
なお、定義ファイルは、入出力部21を介してユーザから入力を受け付けて作成し、定義ファイル記憶部22に記憶させればよい。上記の例はIEIEJ−G−0006:2006仕様のファイルフォーマットの定義ファイルであるが、この他にも、IDIDJ−P−2003:2000仕様、独自仕様などのファイルフォーマットでもよい。
【0039】
プロパティ情報変換部23は、ファイル仕様選択部11から入力される指示に基づいて該当するファイル仕様の定義ファイルを定義ファイル記憶部22より取得し、オブジェクトファイル記憶部20が記憶しているオブジェクトファイルのプロパティ情報を修正する。そして、オブジェクトファイル記憶部20のオブジェクトファイルを修正したものに更新する。
【0040】
ここで、図8を用いて、プロパティ情報変換部23の変換処理の具体例を説明する。プロパティ情報変換部23は、先ず、定義ファイルに定義されたプロパティID117(単位)の値を検索キーに用いて、オブジェクトファイル記憶部20のオブジェクトファイルから同じプロパティID117の値をもつオブジェクト情報を抽出する。ここでは図8(a)〜図8(c)に示すように、プロパティID117「62」をもつオブジェクトID75「1」〜「3」の各オブジェクト情報が抽出される。
【0041】
続いてプロパティ情報変換部23は、定義ファイルと抽出したオブジェクト情報との間でプロパティID65(最大値)およびプロパティID69(最小値)を比較して、下記比較条件(1)〜(4)に従ってプロパティID65,69のプロパティ情報(数値)を定義ファイルの適正値に変換する。
(1)抽出したオブジェクト情報の最小値、最大値が定義ファイルの最小値の適正値以上、かつ、最大値の適正値以下なら、数値はそのまま
(2)抽出したオブジェクト情報の最小値が定義ファイルの最小値の適正値より小さい場合は、この適正値に変換
(3)抽出したオブジェクト情報の最大値が定義ファイルの最大値の適正値より大きい場合は、この適正値に変換
(4)抽出したオブジェクト情報の最大値、最小値の小数点位置は、定義ファイルの小数点位置の適正値に変換
【0042】
図8(a)の場合、抽出したオブジェクト情報の最小値および最大値が定義ファイルの範囲内であるため、プロパティ情報変換部23は変換しない。
図8(b)の場合、抽出したオブジェクト情報の最小値および最大値が定義ファイルの範囲外であるため、プロパティ情報変換部23は最小値、最大値とも定義ファイルの適正値に変換する。
図8(c)の場合、抽出したオブジェクト情報の最小値および最大値が定義ファイルの範囲内であるが、小数点位置が小数点以下第6位で定義ファイルの範囲外であるため、プロパティ情報変換部23は小数点位置を定義ファイルの適正値に変換する。
【0043】
Analog Inputタイプのオブジェクト以外であっても、そのプロパティ情報を修正できることは言うまでもない。例えば、Binary Input,Binary Valueタイプのオブジェクトの場合、プロパティID72(通告タイプ)が「Null」では監視システム上で認識できないので、定義ファイルにより「1(EVENT)」または「0(ALARM)」に変換する。具体的には、プロパティID72(通告タイプ)が「0」でもなく「1」でもなく「Null」の場合、あらかじめ指定されている「1」または「0」に固定的に変換する。また、ポイント名称にあらかじめ定められている文字などが含まれているか否かを判断し、例えば「警報」、「異常」、「故障」、「アラーム」、「ALARM」、「ALM」などが含まれている場合は「0」に変換し、他方、例えば「状態」、「ステータス」、「STATUS」、「STS」などが含まれている場合は「1」に変換するようにしても良い。
【0044】
以下では、監視システム構築時に、CSV形式のオブジェクトファイルを修正する動作を説明する。図9は、この発明の実施の形態2に係るエンジニアリング装置1のオブジェクトファイル修正の動作を示すフローチャートである。
ここでは、定義ファイル記憶部22に複数のファイル仕様で作成された定義ファイルが記憶されているものと仮定する。
【0045】
エンジニアリング装置1において、この監視システムのBACnetのプロトコル(IEIEJ−G−0006:2006、IEIEJ−P−0003:2000など)に合わせたファイル仕様をファイル仕様選択部11が選択し、プロパティ情報変換部23に出力する(ステップST21)。このファイル仕様は、既に記憶されているオブジェクトファイル記憶部20中のオブジェクトファイルのファイル仕様と一致するものである。
【0046】
次いで、プロパティ情報変換部23が、選択されたファイル仕様に対応する定義ファイルを定義ファイル記憶部22から取得し、定義ファイルの検索キーに一致するオブジェクト情報をオブジェクトファイル記憶部20のオブジェクトファイルから抽出する(ステップST22)。プロパティ情報変換部23は、抽出したオブジェクト情報毎にそのプロパティ情報を定義ファイルのプロパティ情報と比較して差分、即ち不適合なプロパティ情報をもつオブジェクト情報を特定する(ステップST23)。
【0047】
プロパティ情報変換部23は、全てのオブジェクト情報について比較し終えると(ステップST24“YES”)、特定したオブジェクト情報のプロパティ情報を定義ファイルに基づいて上述のように変換処理する(ステップST25)。最後に、変換したプロパティ情報をオブジェクトファイル記憶部20に記憶する(ステップST26)。
【0048】
以上より、実施の形態2に係るエンジニアリング装置1を、上位コントローラ4が管理制御するフィールド制御装置のオブジェクトの属性を示すプロパティ情報の適正値を記述した定義ファイルを記憶する定義ファイル記憶部22と、ファイル仕様選択部11の選択したファイル仕様で作成されたオブジェクトファイルを記憶するオブジェクトファイル記憶部20と、定義ファイル記憶部22に記憶されている定義ファイルに基づいて、オブジェクトファイル記憶部20に記憶されているオブジェクト情報に含まれるプロパティ情報を適正値に変換するプロパティ情報変換部23とを備えるように構成した。このため、CSVなどの所定形式のファイルで作成されたオブジェクト情報に不適合な情報が含まれている場合でも、その情報を特定して修正することのできるエンジニアリング装置1を提供することができる。よって、監視システム構築時の作業効率を高めることが可能となる。
さらに、このエンジニアリング装置1を用いて監視システムを構築することで、入手したオブジェクト情報にシステム仕様に適合しない情報が含まれていても正常な監視制御を行うことができる。
【0049】
なお、上記実施の形態2において、プロパティ情報変換部23が修正対象とするオブジェクトファイルは、BACnetを介して上位コントローラ4からオブジェクト情報を取得して生成したファイルであってもよいし、各ベンダから入手したファイルであってもよい。
【0050】
また、上記実施の形態1,2において、監視システムの通信回線にBACnetを適用した例を示したが、BACnet以外の通信回線であってもよく、通信回線の仕様に応じたファイル仕様のオブジェクトファイルを作成および修正すればよい。
【0051】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、上述した実施の形態の構成に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても本発明に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1 エンジニアリング装置
2 監視装置
3 表示装置
4 上位コントローラ
5 下位コントローラ
6 BACnetルータ
11 ファイル仕様選択部
12 ファイル仕様記憶部
13 送受信部
14 通信情報設定部
15 サービス情報取得部
16 オブジェクトID取得部
17 プロパティ情報取得部
18 プロパティ情報記憶部
19 オブジェクトファイル作成部
20 オブジェクトファイル記憶部
21 入出力部
22 定義ファイル記憶部
23 プロパティ情報変換部
41 送受信部
42 メッセージ解析部
43 情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御機器を管理制御する上位コントローラに所定のプロトコルを適用した通信回線を介して接続されるエンジニアリング装置であって、
前記上位コントローラが管理制御する前記制御機器のオブジェクト情報の属性を示すプロパティ情報の適正値を記述した定義ファイルを記憶する定義ファイル記憶部と、
所定のファイル仕様で作成された前記オブジェクト情報をオブジェクトファイルとして記憶するオブジェクトファイル記憶部と、
前記定義ファイル記憶部に記憶されている定義ファイルに基づいて、前記オブジェクトファイル記憶部に記憶されているオブジェクトファイルのオブジェクト情報に含まれるプロパティ情報を適正値に変換するプロパティ情報変換部とを備えることを特徴とするエンジニアリング装置。
【請求項2】
前記プロパティ情報変換部は、
前記オブジェクトファイル記憶部に記憶されているオブジェクト情報に含まれるプロパティ情報の最大値が前記定義ファイル記憶部に記憶されている同じプロパティ情報の最大値の適正値よりも大きい場合、当該適正値に変換し、
前記オブジェクトファイル記憶部に記憶されているオブジェクト情報に含まれるプロパティ情報の最小値が前記定義ファイル記憶部に記憶されている同じプロパティ情報の最小値の適正値よりも小さい場合、当該適正値に変換することを特徴とする請求項1記載のエンジニアリング装置。
【請求項3】
前記プロパティ情報変換部は、
前記オブジェクトファイル記憶部に記憶されているオブジェクト情報に含まれるプロパティ情報の最大値または最小値の小数点位置を、前記定義ファイル記憶部に記憶されている同じプロパティ情報の最大値または最小値の適正値の小数点位置となるように変換することを特徴とする請求項1または請求項2記載のエンジニアリング装置。
【請求項4】
前記プロパティ情報変換部は、
前記オブジェクトファイル記憶部に記憶されているオブジェクト情報に含まれるプロパティ情報の通告タイプが0および1のいずれでもない場合、前記定義ファイル記憶部に記憶されている同じプロパティ情報の通告タイプを0または1に変換することを特徴とする請求項1または請求項2記載のエンジニアリング装置。
【請求項5】
前記上位コントローラが管理制御する前記制御機器のオブジェクト情報のプロパティ情報を前記上位コントローラから前記通信回線を介して取得し、当該オブジェクト情報を所定のファイル仕様で作成するオブジェクトファイル作成部を備え、
前記プロパティ情報変換部は、前記定義ファイル記憶部に記憶されている定義ファイルに基づいて、前記オブジェクトファイル作成部の作成したオブジェクト情報に含まれるプロパティ情報を適正値に変換することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項記載のエンジニアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−216890(P2012−216890A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78911(P2011−78911)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】