説明

エンジンにおける潤滑油の補充装置

【課題】エンジンにおける潤滑油の補充装置において、潤滑油の劣化度合いに応じて適正な潤滑油の供給を可能とする。
【解決手段】オイルパン21のオイルをオイルポンプ23によりオイル供給通路22からオイル供給部12,13,14へ供給可能とする一方、このオイル供給部12,13,14に供給されたオイルをオイル戻し通路25によりオイルパン21に排出可能とし、また、オイルタンク26の良質なオイルを第1オイル補充通路28からオイルパン21へ補充可能とする一方、オイルタンク26の良質なオイルを第2オイル補充通路29からオイル供給通路22へ補充可能とし、制御装置44は、オイル性状判定センサ41,42の劣化判定値が第1判定値以下のときに良質なオイルをオイルパン21へ補充する一方、劣化判定値が第2判定値以下のときに良質なオイルをオイル供給通路22へ補充する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、重油を燃料として使用するディーゼルエンジンにおいて、この潤滑油の性状変化に応じてエンジンに潤滑油を補充する潤滑油の補充装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、船舶に適用されるディーゼルエンジンは、主に燃料として重油が使用される。このディーゼルエンジンに使用される重油は、石油の精製過程で、軽油などの良質な油が精製されたあとに残るものである。近年、この石油精製工程の進歩により石油残渣に近いC重油が取り出され、燃料として使用されるようになってきている。ところが、このC重油は、重油の中でも特に高密度のものであり、ディーゼルエンジンの燃料として使用する場合には、燃焼性がばらついてしまい、燃料の燃焼性が悪化したときには、潤滑油を劣化させてしまう。
【0003】
一般に、ディーゼルエンジンは、回転部分や摺動部分に対して潤滑油としてのオイル供給するオイル通路が設けられており、オイルパンに貯留されているオイルをポンプにより各回転部分や各摺動部分に循環供給することで、各部品の摩耗を防止して円滑な動作を確保している。従来、ディーゼルエンジンに使用されるオイルの性状管理は、化学分析に頼っていたが、オイルのサンプリングを行ってから化学分析結果を得るまでに長時間を要することから、そのオイルの性状管理はタイムリーなものであるとは言い難い。
【0004】
エンジンに使用するオイルの性状を測定するものとしては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載されたオイル劣化検出装置は、オイル流路に2枚の極板を互いに並行して設置し、2枚の極板間に交流電圧を印加したときに流れる電流を電流計で計測し、信号処理部によりこの極板間の電圧を電圧計で計測し、電流計及び電圧計による計測結果に基づいてオイルの導電率及び誘電率を求め、オイルの劣化を判断するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−002693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のオイル劣化検出装置は、より適正なオイル劣化判断を行うことができるものの、オイル劣化からエンジンを保護するためには、良質なオイルの供給が必要となる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、潤滑油の劣化度合いに応じて適正な潤滑油の供給を可能とするエンジンにおける潤滑油の補充装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明のエンジンにおける潤滑油の補充装置は、第1潤滑油貯留部と、該第1潤滑油貯留部の潤滑油をエンジンにおける潤滑油供給部へ供給可能な潤滑油供給通路と、該潤滑油供給通路に設けられる潤滑油供給ポンプと、前記潤滑油供給部に供給された潤滑油を前記第1潤滑油貯留部に戻す潤滑油戻し通路と、良質な潤滑油を貯留可能な第2潤滑油貯留部と、該第2潤滑油貯留部の潤滑油を前記第1潤滑油貯留部に補充可能な第1潤滑油補充装置と、前記第2潤滑油貯留部の潤滑油を前記潤滑油供給通路における前記潤滑油供給ポンプより上流側に補充可能な第2潤滑油補充装置と、前記潤滑油戻し通路を流れる潤滑油の劣化度合いを判定する潤滑油性状判定センサと、該潤滑油性状判定センサが判定した潤滑油の劣化度合いが第1判定値以下のときに前記第1潤滑油補充装置を作動する一方、潤滑油の劣化度合いが第1判定値より低い第2判定値以下のときには前記第2潤滑油補充装置を作動する潤滑油補充通路選択装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
従って、潤滑油供給部から戻る潤滑油の劣化度合いが小さいときには、良質な潤滑油を第1潤滑油貯留部に補充する一方、潤滑油供給部から戻る潤滑油の劣化度合いが大きいときには、良質な潤滑油を潤滑油供給通路に補充することとなる。即ち、潤滑油供給部から戻る潤滑油の劣化度合いが大きいときには、良質な潤滑油を第1潤滑油貯留部の潤滑油と混合させずに潤滑油供給通路から潤滑油供給部に供給することとなる。そのため、潤滑油が大きく劣化するような事象が発生した潤滑油供給部へ、良質な潤滑油を直接供給することとなり、潤滑油供給部での動作の健全性を維持することができる。
【0010】
本発明のエンジンにおける潤滑油の補充装置では、前記潤滑油補充通路選択装置は、潤滑油性状判定センサによる劣化判定値の変化率を算出し、現在の変化率が予め設定された閾値より大きいときに前記第2潤滑油補充装置を作動することを特徴としている。
【0011】
従って、潤滑油供給部から戻る潤滑油の性状が大きく劣化したときに、良質な潤滑油を第1潤滑油貯留部の潤滑油と混合させずに潤滑油供給部に供給することとなり、潤滑油供給部での動作の健全性を維持することができる。
【0012】
本発明のエンジンにおける潤滑油の補充装置では、前記第1潤滑油貯留部における潤滑油を排出する潤滑油排出装置を設け、前記潤滑油補充通路選択装置は、前記第1潤滑油補充装置または前記第2潤滑油補充装置が作動したときに前記潤滑油排出装置を作動することを特徴としている。
【0013】
従って、潤滑油を補充したことで、エンジン内で循環する潤滑油の総量が増加するが、第1潤滑油貯留部における潤滑油を適量だけ排出することで、潤滑油のオーバーフローを防止することができる。
【0014】
本発明のエンジンにおける潤滑油の補充装置では、前記第1潤滑油貯留部における潤滑油を排出する潤滑油排出装置と、前記第1潤滑油貯留部における潤滑油の貯留量を検出する第1潤滑油貯留量検出センサを設け、前記潤滑油補充通路選択装置は、前記第1潤滑油貯留量検出センサの検出結果に基づいて前記潤滑油排出装置を作動することを特徴としている。
【0015】
従って、エンジン内で循環する潤滑油の総量が増加するが、第1潤滑油貯留部における潤滑油の貯留量に応じてこの第1潤滑油貯留部における潤滑油を排出することで、第1潤滑油貯留部における潤滑油の貯留量を適正量に維持することができる。
【0016】
本発明のエンジンにおける潤滑油の補充装置では、前記第2潤滑油貯留部における潤滑油の貯留量を検出する第2潤滑油貯留量検出センサを設け、前記潤滑油補充通路選択装置は、前記第2潤滑油貯留量検出センサの検出結果に基づいてアラームを作動することを特徴としている。
【0017】
従って、第1潤滑油貯留部や潤滑油供給通路への良質な潤滑油の補充により第2潤滑油貯留部における潤滑油の貯留量が減ることから、第2潤滑油貯留部における潤滑油の貯留量が所定量以下になったらアラームを作動することで、第2潤滑油貯留部への良質な潤滑油の補充が可能となり、常時、良質な潤滑油を補充することができる。
【0018】
本発明のエンジンにおける潤滑油の補充装置では、前記第2潤滑油貯留部の潤滑油を前記潤滑油供給部へ直接供給可能な第3潤滑油補充装置を設け、前記潤滑油補充通路選択装置は、前記潤滑油性状判定センサが判定した潤滑油の劣化度合いが第2判定値より低い第3判定値以下のときには前記第3潤滑油補充装置を作動することを特徴としている。
【0019】
従って、潤滑油供給部から戻る潤滑油の性状が著しく劣化したときに、良質な潤滑油を直接潤滑油供給部に供給することで、早期に潤滑油供給部へ良質な潤滑油を供給することが可能となり、潤滑油供給部での動作の健全性を維持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のエンジンにおける潤滑油の補充装置によれば、潤滑油供給部から戻る潤滑油の劣化度合いが小さいときには、良質な潤滑油を第1潤滑油貯留部に補充する一方、潤滑油供給部から戻る潤滑油の劣化度合いが大きいときには、良質な潤滑油を潤滑油供給通路に補充するので、潤滑油の劣化度合いに応じて適正な潤滑油の供給を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係るエンジンにおける潤滑油の補充装置の概略構成図である。
【図2】図2は、実施例1のエンジンにおける潤滑油の補充装置によるオイル供給制御を表すフローチャートである。
【図3】図3は、オイルの劣化度合いに対するオイル供給時期を表すグラフである。
【図4】図4は、本発明の実施例2に係るエンジンにおける潤滑油の補充装置の概略構成図である。
【図5】図5は、本発明の実施例3に係るエンジンにおける潤滑油の補充装置の概略構成図である。
【図6】図6は、実施例3のエンジンにおける潤滑油の補充装置によるオイル供給制御を表すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の実施例4に係るエンジンにおける潤滑油の補充装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るエンジンにおける潤滑油の補充装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の実施例1に係るエンジンにおける潤滑油の補充装置の概略構成図、図2は、実施例1のエンジンにおける潤滑油の補充装置によるオイル供給制御を表すフローチャート、図3は、オイルの劣化度合いに対するオイル供給時期を表すグラフである。
【0024】
実施例1のディーゼルエンジンは、船舶に搭載されて航行用として使用されるものであり、燃料として重油を使用している。実施例1において、図1に示すように、ディーゼルエンジン11は、例えば、3つのオイル供給部(潤滑油供給部)12,13,14が設けられている。
【0025】
ディーゼルエンジン11は、図示しないが、複数のシリンダボアにピストンがそれぞれ上下移動自在に支持されており、燃焼室がエンジン本体とピストンの頂面とにより区画形成されている。この燃焼室は、上部に吸気ポートと排気ポートが連通し、カムシャフトにより作動する吸気弁及び排気弁に開閉可能となっている。また、燃焼室に対して、高圧燃料を噴射可能な高圧インジェクタが設けられている。このようなディーゼルエンジン11では、カムシャフト、ピストン、吸気弁及び排気弁、クランクシャフトなどの回転部分や摺動部分として、磨耗や発熱を防止するために潤滑油(オイル)を供給するべきオイル供給部12,13,14が設定されている。
【0026】
ディーゼルエンジン11は、その下方に所定量のオイルを貯留可能なオイルパン(第1潤滑油貯留部)21が配置されている。このオイルパン21は、図示しない投入口から所定のオイルを充填可能となっている。オイル供給通路(潤滑油供給通路)22は、基端部がオイルパン21に連結される一方、先端部が分岐して各分岐通路22a,22b,22cが各オイル供給部12,13,14に連結されている。そして、このオイル供給通路22におけるオイルパン21側にオイルポンプ(潤滑油供給ポンプ)23とオイルフィルタ24が装着され、このオイルポンプ23によりオイルパン21に貯留されているオイルをオイル供給通路22を通して各オイル供給部12,13,14に供給することができる。
【0027】
オイル戻し通路(潤滑油戻し通路)25は、基端部が各オイル供給部12,13,14に連結される一方、先端部がオイルパン21に連結されている。このオイル戻し通路25は、オイル供給通路22から各オイル供給部12,13,14に供給された後、余剰となったオイルを自由落下により回収する通路である。
【0028】
また、ディーゼルエンジン11は、その下方であって、オイルパン21に隣接して新油などの良質なオイルを貯留可能なオイルタンク(第2潤滑油貯留部)26が配置されている。このオイルタンク26は、図示しない投入口から良質なオイルを充填可能となっている。オイル補充通路27は、基端部がオイルタンク26に連結され、先端部が2つに分岐し、第1オイル補充通路28がオイルパン21に連結される一方、第2オイル補充通路29がオイル供給通路22におけるオイルポンプ23より上流側(オイルパン21側)に連結されている。そして、オイル補充通路27は、分岐部にオイルポンプ30が装着され、第1オイル補充通路28及び第2オイル補充通路29に流量調整弁31,32がそれぞれ装着されている。
【0029】
従って、オイルポンプ30を作動し、第1流量調整弁31を開放して第2流量調整弁32を閉止すると、オイルタンク26に貯留されている良質なオイルをオイル補充通路27、第1オイル補充通路28からオイルパン21に補充することができる。一方、第1流量調整弁31を閉止して第2流量調整弁32を開放すると、オイルタンク26に貯留されている良質なオイルをオイル補充通路27、第2オイル補充通路29からオイル供給通路22に補充することができる。
【0030】
なお、ここで、オイル補充通路27、第1オイル補充通路28、オイルポンプ30、第1流量調整弁31により本発明の第1潤滑油補充装置が構成され、オイル補充通路27、第2オイル補充通路29、オイルポンプ30、第2流量調整弁32により本発明の第2潤滑油補充装置が構成される。
【0031】
劣化オイルタンク33は、オイルパン21の下方に位置し、オイルパン21の底部から劣化オイルタンク33に向けてオイル排出通路34が設けられ、このオイル排出通路34に第3流量調整弁35が装着されている。従って、第3流量調整弁35を開放することで、オイルパン21のオイルをオイル排出通路34から劣化オイルタンク33に排出することができる。ここで、劣化オイルタンク33、オイル排出通路34、第3流量調整弁35が、本発明の潤滑油排出装置として機能する。
【0032】
第1オイル性状判定センサ(潤滑油性状判定センサ)41は、オイルパン21内に配置され、第2オイル性状判定センサ(潤滑油性状判定センサ)42は、オイル戻し通路25に配置されている。このオイル性状判定センサ41,42は、オイルの劣化度合いを判定するものであり、例えば、オイルパン21内やオイル戻し通路25に2枚の極板を互いに並行して設置し、2枚の極板間に交流電圧を印加したときに流れる電流と電圧を計測し、この計測した電流と電圧に基づいてオイルの導電率と誘電率を求め、オイルの劣化を判定している。なお、オイル性状判定センサ41,42は、この形式に限定されるものではない。
【0033】
また、第1オイルレベルセンサ(第1潤滑油貯留量検出センサ)43は、オイルパン21におけるオイルの貯留量を検出するものであり、例えば、オイル内に浮上するフローの位置によりオイルの貯留量を検出する。なお、第1オイルレベルセンサ43は、この形式に限定されるものではない。
【0034】
制御装置44は、オイル性状判定センサ41,42の検出結果が入力されると共に、第1オイルレベルセンサ43の検出結果が入力される。また、制御装置44は、第1流量調整弁31、第2流量調整弁32、第3流量調整弁35の開度を調整可能であると共に、オイルポンプ30を駆動制御可能となっている。なお、オイルポンプ23は、ディーゼルエンジン11に同期して作動するものである。
【0035】
このように構成された実施例1のディーゼルエンジン11にて、潤滑油補充通路選択装置としての制御装置44は、オイル性状判定センサ41,42が判定したオイルの劣化度合いが第1判定値以下のときに、オイルタンク26にある良質なオイルが第1オイル補充通路28からオイルパン21に補充されるように、オイルポンプ30を作動すると共に各流量調整弁31,32を開閉制御する。一方、オイルの劣化度合いが第1判定値より低い第2判定値以下のときに、オイルタンク26にある良質なオイルが第2オイル補充通路29からオイル供給通路22に補充されるように、オイルポンプ30を作動すると共に各流量調整弁31,32を開閉制御する。
【0036】
この場合、オイル性状判定センサ41,42は、オイルの劣化度合いが大きいほど、低い劣化判定値を出力するものであり、制御装置44は、各オイル性状判定センサ41,42による劣化判定値の変化率を算出し、現在の劣化判定値の変化率が予め設定された閾値より大きいときに、オイルタンク26にある良質なオイルを第2オイル補充通路29からオイル供給通路22に補充するようにしている。
【0037】
また、制御装置44は、オイルタンク26にある良質なオイルがオイルパン21やオイル供給通路22に補充されるとき、第3流量調整弁35を開放することで、オイルパン21のオイルをオイル排出通路34から劣化オイルタンク33に排出する。この場合、制御装置44は、オイルレベルセンサ43の検出結果に基づいてオイルパン21内のオイルの貯留量が適正量となるように、第3流量調整弁35の開度を調整する。
【0038】
ここで、実施例1のディーゼルエンジン11における潤滑油の補充装置の作用を、図2のフローチャートに基づいて説明する。
【0039】
実施例1のディーゼルエンジン11における潤滑油の補充装置において、図2に示すように、ステップS11にて、制御装置44は、オイル性状判定センサ41,42の出力、つまり、劣化判定値をチェックする。ステップS12にて、制御装置44は、この劣化判定値が第1判定値以下であるかどうかを判定する。ここで、オイルの劣化判定値が第1判定値以下でないと判定されたら、ステップS20にて、各バルブ(各流量調整弁)31,32を閉止したままでこのルーチンを抜ける。
【0040】
一方、ステップS12にて、オイルの劣化判定値が第1判定値以下であると判定されたら、ステップS13にて、制御装置44は、オイル性状判定センサ41,42による劣化判定値が急激に下降するように変化しているかどうか、つまり、劣化判定値が第2判定値以下であるかどうかを判定する。ここで、オイルの劣化判定値が第2判定値以下でないと判定されたら、ステップS14にて、オイルポンプ30を作動すると共に、通常用バルブ、つまり、第1流量調整弁31を開放する。すると、オイルタンク26に貯留されている良質なオイルがオイル補充通路27及び第1オイル補充通路28を通してオイルパン21に補充される。
【0041】
一方、オイルの劣化判定値が第2判定値以下であると判定されたら、ステップS15にて、オイルポンプ30を作動すると共に、緊急用バルブ、つまり、第2流量調整弁32を開放する。オイルタンク26に貯留されている良質なオイルがオイル補充通路27及び第2オイル補充通路29を通してオイル供給通路22に補充される。
【0042】
なお、ステップS12,S13にて、オイル性状判定センサ41,42によるオイルの劣化判定値と第1判定値及び第2判定値とを比較したが、オイル性状判定センサ41,42によるオイルの劣化判定値とは、2つの出力の平均値としてもよく、また、第2オイル性状判定センサ42による出力としてもよい。また、ステップS12における劣化判定値及び第1判定値は、オイル性状判定センサ41,42の出力とし、ステップS13における劣化判定値及び第2判定値は、オイル性状判定センサ41,42の出力における所定期間あたりの変化量、つまり、変化率とすることが望ましい。
【0043】
即ち、図3に示すように、オイルが徐々に劣化してオイル性状判定センサ41,42の出力が低下し、時間t2にて、劣化下限レベル(第1判定値=出力)A1以下になると、ここで、良質なオイルがオイルパン21に供給され、オイル性状判定センサ41,42の出力が徐々に上昇する。このとき、オイル性状判定センサ41,42の出力の変化量が第2判定値(変化率)以下でないことから、良質なオイルをオイルパン21に供給することとなる。
【0044】
また、オイルが徐々に劣化してオイル性状判定センサ41,42の出力が低下し、時間t1にて、劣化下限レベル(第1判定値=出力)A1以下になり、且つ、オイル性状判定センサ41,42の出力の変化率が第2判定値以下であることから、ここで、良質なオイルがオイル供給通路22に供給され、オイル性状判定センサ41,42の出力が急激に上昇する。なお、劣化上限レベルA2が設定され、オイル性状判定センサ41,42の出力が劣化上限レベルA2を超えたら、上記の制御を終了することとなり、ここにヒステリシスが設定されている。
【0045】
つまり、オイルが徐々に劣化しているときは、良質なオイルをオイルパン21に補充して劣化度合いを抑制し、オイルが急激に劣化しているときは、良質なオイルを直接劣化しているオイル供給部12,13,14に補充し、このオイル供給部12,13,14の健全性を維持する。
【0046】
図2に戻り、ステップS16にて、制御装置44は、第1オイルレベルセンサ43の出力をチェックし、ステップS17にて、制御装置44は、オイルレベルセンサ43の検出結果に基づいてオイルパン21におけるオイル量が過多になっているかどうかを判定する。ここで、オイルパン21内のオイルの貯留量が適正量より多ければ、ステップS18にて、廃油バルブ、つまり、第3流量調整弁35を開放し、オイルパン21のオイルをオイル排出通路34から劣化オイルタンク33に排出する。一方、オイルパン21内のオイルの貯留量が適正量以下であれば、ステップS19にて、廃油バルブ、つまり、第3流量調整弁35を閉止する。
【0047】
このように実施例1のエンジンにおける潤滑油の補充装置にあっては、オイルパン21のオイルをオイルポンプ23によりオイル供給通路22からオイル供給部12,13,14へ供給可能とする一方、このオイル供給部12,13,14に供給されたオイルをオイル戻し通路25によりオイルパン21に排出可能とし、また、オイルタンク26の良質なオイルを第1オイル補充通路28からオイルパン21へ補充可能とする一方、オイルタンク26の良質なオイルを第2オイル補充通路29からオイル供給通路22へ補充可能とし、制御装置44は、オイル性状判定センサ41,42の劣化判定値が第1判定値以下のときに良質なオイルをオイルパン21へ補充する一方、劣化判定値が第2判定値以下のときに良質なオイルをオイル供給通路22へ補充している。
【0048】
従って、オイル供給部12,13,14から戻るオイルの劣化度合いが小さいときには、良質なオイルをオイルパン21に補充する一方、オイル供給部12,13,14から戻るオイルの劣化度合いが大きいときには、良質なオイルをオイル供給通路22に補充することとなる。即ち、オイル供給部12,13,14から戻るオイルの劣化度合いが大きいときには、良質なオイルをオイルパン21のオイルとは混合させずにオイル供給通路22からオイル供給部12,13,14に供給することとなる。そのため、オイルが大きく劣化するような事象が発生したオイル供給部12,13,14へ、良質なオイルを直接供給することとなり、このオイル供給部12,13,14での動作の健全性を維持することができる。
【0049】
また、実施例1のエンジンにおける潤滑油の補充装置では、制御装置44は、オイル性状判定センサ41,42による劣化判定値の変化率を算出し、現在の変化率が予め設定された第2判定値より大きいときに良質なオイルをオイル供給通路22に補充している。従って、オイル供給部12,13,14から戻るオイルの性状が大きく劣化したときに、良質なオイルをオイルパン21のオイルと混合させずにオイル供給部12,13,14に供給することとなり、オイル供給部12,13,14での動作の健全性を維持することができる。
【0050】
また、実施例1のエンジンにおける潤滑油の補充装置では、オイルパン21におけるオイルを排出する劣化オイルタンク33を設け、制御装置44は、オイルパン21またはオイル供給通路22にオイルが補充されたときに、オイルパン21のオイルを劣化オイルタンク33に排出するようにしている。従って、オイルを補充したことで、ディーゼルエンジン11内で循環するオイルの総量が増加するが、オイルパン21またはオイル供給通路22にオイルが補充されると、オイルパン21のオイルを劣化オイルタンク33に排出することで、オイルパン21におけるオイルのオーバーフローを防止することができる。
【0051】
また、実施例1のエンジンにおける潤滑油の補充装置では、オイルパン21に第1オイルレベルセンサ43を設け、制御装置44は、第1オイルレベルセンサ43の検出結果に基づいてオイルパン21から劣化オイルタンク33へのオイルの排出量を制御している。従って、ディーゼルエンジン11内で循環するオイルの総量が増加するが、オイルパン21におけるオイルの貯留量に応じて劣化オイルタンク33へのオイルの排出量を制御することで、オイルパン21におけるオイルの貯留量を適正量に維持することができる。
【実施例2】
【0052】
図4は、本発明の実施例2に係るエンジンにおける潤滑油の補充装置の概略構成図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0053】
実施例2において、図4に示すように、ディーゼルエンジン11は、3つのオイル供給部12,13,14が設けられ、その下方にオイルパン21が配置されており、オイルパン21は、オイル供給通路22及び各分岐通路22a,22b,22cを通して各オイル供給部12,13,14に連結されると共に、オイル戻し通路25を通して各オイル供給部12,13,14に連結されている。そして、オイル供給通路22にオイルポンプ23及びオイルフィルタ24が装着されている。
【0054】
また、ディーゼルエンジン11は、その下方であって、オイルパン21に隣接して良質なオイルを貯留可能なオイルタンク26が配置されており、オイル補充通路27及び第1オイル補充通路28を通してオイルパン21に連結され、オイル補充通路27及び第2オイル補充通路29を通してオイル供給通路22に連結されている。そして、オイル補充通路27は、分岐部にオイルポンプ30が装着され、第1オイル補充通路28及び第2オイル補充通路29に流量調整弁31,32がそれぞれ装着されている。
【0055】
オイルパン21は、下部に補充オイルタンク51が一体に形成され、開閉弁52により連通可能となっている。そして、この補充オイルタンク51は、良質なオイルが充填されており、通常時は、開閉弁52が閉止し、オイルパン21と補充オイルタンク51とが分離された状態となっている。
【0056】
劣化オイルタンク33は、補充オイルタンク51の下方に位置し、補充オイルタンク51の底部から劣化オイルタンク33に向けてオイル排出通路34が設けられ、このオイル排出通路34に第3流量調整弁35が装着されている。従って、第3流量調整弁35を開放することで、オイルパン21及び補充オイルタンク51のオイルをオイル排出通路34から劣化オイルタンク33に排出することができる。
【0057】
第1オイル性状判定センサ41は、オイルパン21内に配置され、第2オイル性状判定センサ42は、オイル戻し通路25に配置され、それぞれオイルの劣化度合いを判定することができる。また、第1オイルレベルセンサ43は、オイルパン21におけるオイルの貯留量を検出することができる。
【0058】
制御装置44は、オイル性状判定センサ41,42が判定したオイルの劣化度合いが第4判定値以下のときに、開閉弁52を開放状態とし、オイルパン21と補充オイルタンク51とを連通状態とする。すると、オイルパン21内に補充オイルタンク51内の良質なオイルが導入され、オイルパン21内のオイルの劣化度合いが抑制される。
【0059】
また、制御装置44は、オイル性状判定センサ41,42が判定したオイルの劣化度合いが第4判定値より高い第1判定値以下のときに、オイルポンプ30を作動すると共に各流量調整弁31,32を開閉制御し、オイルタンク26にある良質なオイルを第1オイル補充通路28からオイルパン21に補充する。一方、オイルの劣化度合いが第4判定値より高くて第1判定値より低い第2判定値以下のときに、オイルポンプ30を作動すると共に各流量調整弁31,32を開閉制御し、オイルタンク26にある良質なオイルを第2オイル補充通路29からオイル供給通路22に補充する。
【0060】
また、制御装置44は、オイルタンク26にある良質なオイルがオイルパン21やオイル供給通路22に補充されるとき、第3流量調整弁35を開放することで、オイルパン21のオイルをオイル排出通路34から劣化オイルタンク33に排出する。この場合、制御装置44は、オイルレベルセンサ43の検出結果に基づいてオイルパン21内のオイルの貯留量が適正量となるように、第3流量調整弁35の開度を調整する。
【0061】
このように実施例2のエンジンにおける潤滑油の補充装置にあっては、オイルパン21の下部に良質なオイルが貯留された補充オイルタンク51を配置し、開閉弁52により連通可能とし、制御装置44は、オイル性状判定センサ41,42の劣化判定値が第4判定値以下のときに開閉弁52を開放し、良質なオイルをオイルパン21へ補充している。
【0062】
従って、オイルパン21のオイルが劣化したときには、補充オイルタンク51にある良質なオイルをオイルパン21に補充することで、オイル供給部12,13,14へ常時良質なオイルを供給することができ、このオイル供給部12,13,14での動作の健全性を維持することができる。
【実施例3】
【0063】
図5は、本発明の実施例3に係るエンジンにおける潤滑油の補充装置の概略構成図、図6は、実施例3のエンジンにおける潤滑油の補充装置によるオイル供給制御を表すフローチャートである。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0064】
実施例3において、図5に示すように、ディーゼルエンジン11は、3つのオイル供給部12,13,14が設けられ、その下方にオイルパン21が配置されており、オイルパン21は、オイル供給通路22及び各分岐通路22a,22b,22cを通して各オイル供給部12,13,14に連結されると共に、オイル戻し通路25を通して各オイル供給部12,13,14に連結されている。そして、オイル供給通路22にオイルポンプ23及びオイルフィルタ24が装着されている。
【0065】
また、ディーゼルエンジン11は、その下方であって、オイルパン21に隣接して良質なオイルを貯留可能なオイルタンク26が配置されており、オイル補充通路27及び第1オイル補充通路28を通してオイルパン21に連結され、オイル補充通路27及び第2オイル補充通路29を通してオイル供給通路22に連結されている。そして、オイル補充通路27は、分岐部にオイルポンプ30が装着され、第1オイル補充通路28及び第2オイル補充通路29に流量調整弁31,32がそれぞれ装着されている。
【0066】
劣化オイルタンク33は、オイルパン21の下方に位置し、オイルパン21の底部から劣化オイルタンク33に向けてオイル排出通路34が設けられ、このオイル排出通路34に第3流量調整弁35が装着されている。従って、第3流量調整弁35を開放することで、オイルパン21のオイルをオイル排出通路34から劣化オイルタンク33に排出することができる。
【0067】
第1オイル性状判定センサ41は、オイルパン21内に配置され、第2オイル性状判定センサ42は、オイル戻し通路25に配置され、それぞれオイルの劣化度合いを判定することができる。また、第1オイルレベルセンサ43は、オイルパン21におけるオイルの貯留量を検出することができる。更に、第2オイルレベルセンサ(第2潤滑油貯留量検出センサ)61は、オイルタンク26におけるオイルの貯留量を検出するものであり、例えば、オイル内に浮上するフローの位置によりオイルの貯留量を検出する。なお、第2オイルレベルセンサ61は、この形式に限定されるものではない。
【0068】
制御装置44は、オイル性状判定センサ41,42が判定したオイルの劣化度合いが第1判定値以下のときに、オイルポンプ30を作動すると共に各流量調整弁31,32を開閉制御し、オイルタンク26にある良質なオイルを第1オイル補充通路28からオイルパン21に補充する。一方、オイルの劣化度合いが第1判定値より低い第2判定値以下のときに、オイルポンプ30を作動すると共に各流量調整弁31,32を開閉制御し、オイルタンク26にある良質なオイルを第2オイル補充通路29からオイル供給通路22に補充する。
【0069】
また、制御装置44は、オイルタンク26にある良質なオイルがオイルパン21やオイル供給通路22に補充されるとき、第1オイルレベルセンサ43の検出結果に基づいて第3流量調整弁35の開度を調整し、オイルパン21内のオイルの貯留量を適正量に維持としている。更に、制御装置44は、オイルタンク26にある良質なオイルがオイルパン21やオイル供給通路22に補充されるとき、第2オイルレベルセンサ61の検出結果に基づいてアラーム62を作動し、オイルタンク26内のオイルが所定量以下まで減少したことを知らせる。この場合、アラーム62は、警告ランプの点灯、警告表示盤の表示、警告音の発令などである。
【0070】
従って、実施例3のディーゼルエンジン11における潤滑油の補充装置において、図6に示すように、ステップS31にて、制御装置44は、オイル性状判定センサ41,42の出力(劣化判定値)をチェックし、ステップS32にて、この劣化判定値が第1判定値以下であるかどうかを判定する。ここで、オイルの劣化判定値が第1判定値以下でないと判定されたら、ステップS40にて、各バルブ(各流量調整弁)31,32を閉止したままでこのルーチンを抜ける。
【0071】
一方、ステップS32にて、オイルの劣化判定値が第1判定値以下であると判定されたら、ステップS33にて、制御装置44は、劣化判定値が急激に下降(変化率が大きい)するように変化しているかどうか、つまり、劣化判定値が第2判定値以下であるかどうかを判定する。ここで、オイルの劣化判定値が第2判定値以下でないと判定されたら、ステップS34にて、オイルポンプ30を作動すると共に、通常用バルブ、つまり、第1流量調整弁31を開放する。すると、オイルタンク26に貯留されている良質なオイルがオイル補充通路27及び第1オイル補充通路28を通してオイルパン21に補充される。
【0072】
一方、オイルの劣化判定値が第2判定値以下であると判定されたら、ステップS35にて、オイルポンプ30を作動すると共に、緊急用バルブ、つまり、第2流量調整弁32を開放する。オイルタンク26に貯留されている良質なオイルがオイル補充通路27及び第2オイル補充通路29を通してオイル供給通路22に補充される。
【0073】
ステップS36にて、制御装置44は、第1オイルレベルセンサ43の出力をチェックし、ステップS37にて、オイルパン21におけるオイル量が過多になっているかどうかを判定する。ここで、オイルパン21内のオイルの貯留量が適正量より多ければ、ステップS38にて、廃油バルブ、つまり、第3流量調整弁35を開放し、オイルパン21のオイルをオイル排出通路34から劣化オイルタンク33に排出する。一方、オイルパン21内のオイルの貯留量が適正量以下であれば、ステップS39にて、廃油バルブ、つまり、第3流量調整弁35を閉止する。
【0074】
また、ステップS34,S35で、第1流量調整弁31を開放してオイルタンク26の良質なオイルがオイルパン21やオイル供給通路22に補充した後、ステップS41にて、制御装置44は、第2オイルレベルセンサ61の出力をチェックし、ステップS42にて、オイルタンク26におけるオイル量(保存用オイル)が所定値以下まで減少しているかどうかを判定する。ここで、オイルタンク26におけるオイル量が所定値以下まで減少していないと判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。一方、オイルタンク26におけるオイル量が所定値以下まで減少していると判定されたら、ステップS43にて、アラーム62を作動させる。
【0075】
このとき、作業者は、アラーム62を作動に応じて、オイルタンク26に良質なオイルを補充する。
【0076】
このように実施例3のエンジンにおける潤滑油の補充装置にあっては、オイル性状判定センサ41,42の劣化判定値が第1判定値以下のときに良質なオイルをオイルパン21へ補充する一方、劣化判定値が第2判定値以下のときに良質なオイルをオイル供給通路22へ補充している。そして、オイルタンク26に貯留する良質なオイルが減少したら、アラーム62を作動させるようにしている。
【0077】
従って、オイル供給部12,13,14から戻るオイルの劣化度合いが小さいときには、良質なオイルをオイルパン21に補充する一方、オイル供給部12,13,14から戻るオイルの劣化度合いが大きいときには、良質なオイルをオイル供給通路22に補充することとなり、オイルの劣化度合いが大きいときには、良質なオイルをオイル供給部12,13,14に供給することができ、オイル供給部12,13,14での動作の健全性を維持することができる。また、オイルタンク26の良質なオイルの量が減少したら、アラーム62を作動させることで、オイルタンク26への良質な潤滑油の補充が可能となり、常時、良質な潤滑油を補充することができる。
【実施例4】
【0078】
図7は、本発明の実施例4に係るエンジンにおける潤滑油の補充装置の概略構成図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0079】
実施例4において、図7に示すように、ディーゼルエンジン11は、3つのオイル供給部12,13,14が設けられ、その下方にオイルパン21が配置されており、オイルパン21は、オイル供給通路22及び各分岐通路22a,22b,22cを通して各オイル供給部12,13,14に連結されると共に、オイル戻し通路25を通して各オイル供給部12,13,14に連結されている。そして、オイル供給通路22にオイルポンプ23及びオイルフィルタ24が装着されている。
【0080】
また、ディーゼルエンジン11は、その下方であって、オイルパン21に隣接して良質なオイルを貯留可能なオイルタンク26が配置されており、オイル補充通路27及び第1オイル補充通路28を通してオイルパン21に連結され、オイル補充通路27及び第2オイル補充通路29を通してオイル供給通路22に連結されている。そして、オイル補充通路27は、分岐部にオイルポンプ30が装着され、第1オイル補充通路28及び第2オイル補充通路29に流量調整弁31,32がそれぞれ装着されている。
【0081】
また、ディーゼルエンジン11は、3つのオイル供給部12,13,14とは別にオイル供給部15が設けられ、オイルパン21は、オイル供給通路22及び分岐通路22dを通してオイル供給部15に連結されると共に、オイル戻し通路25を通してオイル供給部15に連結されている。更に、オイルタンク26は、第3オイル補充通路71を通してオイル供給部15に連結され、第3オイル補充通路71は、オイルポンプ72が装着されている。ここで、第3オイル補充通路71及びオイルポンプ72が、本発明の第3潤滑油補充装置として機能する。
【0082】
劣化オイルタンク33は、オイルパン21の下方に位置し、オイルパン21の底部から劣化オイルタンク33に向けてオイル排出通路34が設けられ、このオイル排出通路34に第3流量調整弁35が装着されている。従って、第3流量調整弁35を開放することで、オイルパン21のオイルをオイル排出通路34から劣化オイルタンク33に排出することができる。
【0083】
第1オイル性状判定センサ41は、オイルパン21内に配置され、第2オイル性状判定センサ42は、オイル戻し通路25に配置され、それぞれオイルの劣化度合いを判定することができる。また、第1オイルレベルセンサ43は、オイルパン21におけるオイルの貯留量を検出することができる。
【0084】
制御装置44は、オイル性状判定センサ41,42が判定したオイルの劣化度合いが第1判定値以下のときに、オイルポンプ30を作動すると共に各流量調整弁31,32を開閉制御し、オイルタンク26にある良質なオイルを第1オイル補充通路28からオイルパン21に補充する。一方、オイルの劣化度合いが第1判定値より低い第2判定値以下のときに、オイルポンプ30を作動すると共に各流量調整弁31,32を開閉制御し、オイルタンク26にある良質なオイルを第2オイル補充通路29からオイル供給通路22に補充する。
【0085】
また、制御装置44は、オイル性状判定センサ41,42が判定したオイルの劣化度合いが第2判定値より低い第3判定値以下のときに、オイルポンプ72を作動し、オイルタンク26にある良質なオイルを第3オイル補充通路71からオイル供給部15に補充する。即ち、オイル供給部15は、オイル供給部12,13,14よりもオイル供給に対して重要度が高い箇所であり、例えば、ピストンの摺動面などである。そのため、ここから戻るオイルが異常に劣化していたときには、オイルパン21やオイル供給通路22ではなく、オイル供給部15に対して早期に直接良質なオイルを供給する。
【0086】
このように実施例4のエンジンにおける潤滑油の補充装置にあっては、オイル性状判定センサ41,42の劣化判定値が第1判定値以下のときに良質なオイルをオイルパン21へ補充する一方、劣化判定値が第2判定値以下のときに良質なオイルをオイル供給通路22へ補充している。また、オイルタンク26を第3オイル補充通路71を通してオイル供給部15に連結し、オイル性状判定センサ41,42が判定したオイルの劣化度合いが第2判定値より低い第3判定値以下のときに、良質なオイルをオイル供給部15に補充している。
【0087】
従って、オイル供給部12,13,14から戻るオイルの劣化度合いが小さいときには、良質なオイルをオイルパン21に補充する一方、オイル供給部12,13,14から戻るオイルの劣化度合いが大きいときには、良質なオイルをオイル供給通路22に補充することとなり、オイルの劣化度合いが大きいときには、良質なオイルをオイル供給部12,13,14に供給することができ、オイル供給部12,13,14での動作の健全性を維持することができる。また、オイル供給部15から戻るオイルの性状が著しく劣化したときには、良質なオイルを直接オイル供給部15に供給することで、早期にこのオイル供給部15へ良質な潤滑油を供給することが可能となり、オイル供給部15での動作の健全性を維持することができる。
【0088】
なお、上述した各実施例では、オイル戻し通路25を1つとして第2オイル性状判定センサ42を設けたが、オイル供給部12,13,14,15ごとにオイル戻し通路を複数設け、各オイル戻し通路にオイル性状判定センサを設けてもよく、この場合、オイル劣化が進行しているオイル供給部12,13,14,15のいずれかに対して良質なオイルを供給することができる。
【0089】
また、上述した各実施例にて、本発明に係るエンジンにおける潤滑油の補充装置を船舶に搭載されて航行用としてのディーゼルエンジンに適用して説明したが、陸用ボイラなどに使用されているディーゼルエンジンに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係るエンジンにおける潤滑油の補充装置は、潤滑油の劣化度合いが大きいときには良質な潤滑油を潤滑油供給通路に補充することで、潤滑油の劣化度合いに応じて適正な潤滑油の供給を可能とするものであり、いずれのエンジンにも適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
11 ディーゼルエンジン
12,13,14 オイル供給部(潤滑油供給部)
21 オイルパン(第1潤滑油貯留部)
22 オイル供給通路(潤滑油供給通路)
23 オイルポンプ(潤滑油供給ポンプ)
25 オイル戻し通路(潤滑油戻し通路)
26 オイルタンク(第2潤滑油貯留部)
27 オイル補充通路(第1潤滑油補充装置、第2潤滑油補充装置)
28 第1オイル補充通路(第1潤滑油補充装置)
29 第2オイル補充通路(第2潤滑油補充装置)
30 オイルポンプ(第1潤滑油補充装置、第2潤滑油補充装置)
31 第1流量調整弁(第1潤滑油補充装置)
32 第2流量調整弁(第2潤滑油補充装置)
33 劣化オイルタンク(潤滑油排出装置)
34 オイル排出通路(潤滑油排出装置)
35 第3流量調整弁(潤滑油排出装置)
41 第1オイル性状判定センサ(潤滑油性状判定センサ)
42 第2オイル性状判定センサ(潤滑油性状判定センサ)
43 第1オイルレベルセンサ(第1潤滑油貯留量検出センサ)
44 制御装置(潤滑油補充通路選択装置)
51 補充オイルタンク
52 開閉弁
61 第2オイルレベルセンサ(第2潤滑油貯留量検出センサ)
62 アラーム
71 第3オイル補充通路(第3潤滑油補充装置)
72 オイルポンプ(第3潤滑油補充装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1潤滑油貯留部と、
該第1潤滑油貯留部の潤滑油をエンジンにおける潤滑油供給部へ供給可能な潤滑油供給通路と、
該潤滑油供給通路に設けられる潤滑油供給ポンプと、
前記潤滑油供給部に供給された潤滑油を前記第1潤滑油貯留部に戻す潤滑油戻し通路と、
良質な潤滑油を貯留可能な第2潤滑油貯留部と、
該第2潤滑油貯留部の潤滑油を前記第1潤滑油貯留部に補充可能な第1潤滑油補充装置と、
前記第2潤滑油貯留部の潤滑油を前記潤滑油供給通路における前記潤滑油供給ポンプより上流側に補充可能な第2潤滑油補充装置と、
前記潤滑油戻し通路を流れる潤滑油の劣化度合いを判定する潤滑油性状判定センサと、
該潤滑油性状判定センサが判定した潤滑油の劣化度合いが第1判定値以下のときに前記第1潤滑油補充装置を作動する一方、潤滑油の劣化度合いが第1判定値より低い第2判定値以下のときには前記第2潤滑油補充装置を作動する潤滑油補充通路選択装置と、
を備えることを特徴とするエンジンにおける潤滑油の補充装置。
【請求項2】
前記潤滑油補充通路選択装置は、潤滑油性状判定センサによる劣化判定値の変化率を算出し、現在の変化率が予め設定された閾値より大きいときに前記第2潤滑油補充装置を作動することを特徴とする請求項1に記載のエンジンにおける潤滑油の補充装置。
【請求項3】
前記第1潤滑油貯留部における潤滑油を排出する潤滑油排出装置を設け、前記潤滑油補充通路選択装置は、前記第1潤滑油補充装置または前記第2潤滑油補充装置が作動したときに前記潤滑油排出装置を作動することを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンにおける潤滑油の補充装置。
【請求項4】
前記第1潤滑油貯留部における潤滑油を排出する潤滑油排出装置と、前記第1潤滑油貯留部における潤滑油の貯留量を検出する第1潤滑油貯留量検出センサを設け、前記潤滑油補充通路選択装置は、前記第1潤滑油貯留量検出センサの検出結果に基づいて前記潤滑油排出装置を作動することを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンにおける潤滑油の補充装置。
【請求項5】
前記第2潤滑油貯留部における潤滑油の貯留量を検出する第2潤滑油貯留量検出センサを設け、前記潤滑油補充通路選択装置は、前記第2潤滑油貯留量検出センサの検出結果に基づいてアラームを作動することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のエンジンにおける潤滑油の補充装置。
【請求項6】
前記第2潤滑油貯留部の潤滑油を前記潤滑油供給部へ直接供給可能な第3潤滑油補充装置を設け、前記潤滑油補充通路選択装置は、前記潤滑油性状判定センサが判定した潤滑油の劣化度合いが第2判定値より低い第3判定値以下のときには前記第3潤滑油補充装置を作動することを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のエンジンにおける潤滑油の補充装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−137055(P2012−137055A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291043(P2010−291043)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】