説明

エンジンのブローバイガス還元装置

【課題】オイルセパレータにおけるオイルミストの分離効率を簡便に向上させることができる、ブローバイガス還元装置を提供する。
【解決手段】ブローバイガス供給配管12を介してブローバイガスを、オイルセパレータ11に供給し、オイルセパレータ11でオイルミストが分離された残部のブローバイガスをエンジン1の吸気管13に戻すブローバイガス還元装置において、ブローバイガス供給配管12をジグザグ又は螺旋状に形成して、ブローバイガスの冷却構造を備えるようにした。前記冷却構造によってブローバイガスの温度が低下して、ブローバイガス中のオイル蒸気の液化が促進され、これによってオイルミストの粒径が大きくなることで、オイルセパレータ11におけるオイルの分離効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローバイガスからオイルを分離するオイルセパレータを含むエンジンのブローバイガス還元装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンから排出されるブローバイガスからオイル(オイルミスト)を分離するオイルセパレータを備え、オイルセパレータでオイルが分離された残部のブローバイガスを吸気管に戻すようにしたブローバイガス還元装置があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−068471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オイルセパレータの方式としては、慣性衝突式、迷路式、サイクロン式などがあるが、いずれの方式でも粒径が小さいオイルミストを分離することが難しいという問題があった。
ここで、ガラス繊維などから形成されるフィルタをオイルセパレータに付加すれば、粒径が小さいオイルミストの分離効率を向上させることが可能であるが、フィルタを付加すると、オイルセパレータの構造が複雑になり、また、フィルタ交換の手間が発生するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、オイルセパレータにおけるオイルミストの分離効率を簡便に向上させることができる、ブローバイガス還元装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明は、エンジンから排出されたブローバイガスを、ブローバイガス供給配管を介してオイルセパレータに供給し、オイルセパレータでオイルが分離された残部のブローバイガスをエンジンの吸気管に戻すエンジンのブローバイガス還元装置において、前記ブローバイガス供給配管が、ブローバイガスの冷却構造を備えるようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブローバイガス供給配管に備えた冷却構造によって、オイルセパレータに供給されるブローバイガスの温度が低下して、ブローバイガス中のオイル蒸気の液化が促進され、これによって、オイルミストの粒径が大きくなることで、オイルセパレータにおけるオイルの分離効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態におけるエンジンのブローバイガス還元装置を示す概略図
【図2】前記第1実施形態においてブローバイガス供給配管をジグザグとした例を示す図
【図3】前記第1実施形態においてブローバイガス供給配管を螺旋状とした例を示す図
【図4】前記第1実施形態においてジグザグに形成した金属製配管と弾性ゴム製配管とを組み合わせたブローバイガス供給配管の例を示す図
【図5】前記第1実施形態において螺旋状に形成した金属製配管と弾性ゴム製配管とを組み合わせたブローバイガス供給配管の例を示す図
【図6】本発明の第2実施形態におけるエンジンのブローバイガス還元装置を示す概略図
【図7】前記第2実施形態における冷却箱の構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本願発明に係るブローバイガス還元装置を備えたエンジン1を示す。
エンジン1のシリンダブロック2の上部には、ピストン3を収容するシリンダ4が複数形成されている。
【0010】
シリンダブロック2のスカート部2aの下部にはオイルパン5が取り付けられ、スカート部2aとオイルパン5とでクランクケース6が構成される。
クランクケース6は、図示省略したクランク軸を収容すると共に、オイル(潤滑油)を貯留する。
【0011】
シリンダブロック2の上部にはシリンダヘッド7が取り付けられ、シリンダヘッド7の上部はヘッドカバー8で覆われ、シリンダヘッド7とヘッドカバー8とでヘッド室9が形成される。
ヘッド室9には、バルブ駆動装置などを潤滑するために、図示省略したオイル循環装置によってクランクケース6から送出されたオイルが供給され、ヘッド室9に供給されたオイルは、ヘッド室9とクランクケース6内とを連通させるオイル通路10を介してクランクケース6の底部のオイル溜まり6aに戻される。
【0012】
また、ブローバイガス還元装置として、ブローバイガスからオイル(オイルミスト)を分離するオイルセパレータ11と、ヘッド室9(シリンダヘッド7)から排出されるブローバイガスをオイルセパレータ11に供給するブローバイガス供給配管12と、オイルセパレータ11でオイルが分離された残部のブローバイガスを、エンジン1の吸気管13に還流させる還流配管14と、オイルセパレータ11で分離したオイルをクランクケース6内に戻すオイル戻し配管15とを備える。
【0013】
オイルセパレータ11は、慣性衝突式、迷路式、サイクロン式などの公知のオイルセパレータを適宜用いることができる。
また、オイルセパレータ11内のオイル戻し経路には、前後差圧に応じて開閉動作し、クランクケース6側からオイルセパレータ11内に向かうオイルの流れを遮断するチェックバルブ(図示省略)を設けてある。
【0014】
また、オイル戻し配管15は、クランクケース6のオイル液面よりも高い位置に開口するように、クランクケース6に対して接続される。
ブローバイガス供給配管12は、配管内を流れるブローバイガスを冷却するための冷却構造を備えている。
【0015】
冷却構造として、ブローバイガス供給配管12の配管長さを、ヘッド室9(シリンダヘッド7)とオイルセパレータ11とを接続するのに要する長さ(余裕分を含む)よりも長くした構造とする。
詳細には、弾性ゴム製のブローバイガス供給配管12を、図2に示すようにジグザグの形状に形成したり、図3に示すように螺旋状に形成したりすることで、略真直ぐな配管を用いる場合よりも管路長が長くなるようにする。
【0016】
尚、ブローバイガス供給配管12の略全域にわたってジグザグ又は螺旋状としても良いし、ブローバイガス供給配管12の一部をジグザグ又は螺旋状とすることができる。
また、図4や図5に示すように、弾性ゴムよりも熱伝導率が大きいアルミニウムなどの金属によってジグザグ又は螺旋状の配管12aを形成し、この金属製配管12aと、ヘッド室9(シリンダヘッド7)及びオイルセパレータ11との接続を、弾性ゴム製配管12bで行わせることができる。
【0017】
上記のように、ブローバイガス供給配管12を、ジグザグ又は螺旋状とすることで、管路長を長くすれば、ブローバイガスが、ブローバイガス供給配管12内を流れる時間が長くなり、その分、オイルセパレータ11に達するまでの間における温度低下が大きくなる。ブローバイガスの温度が低下すれば、ブローバイガスに含まれるオイル蒸気(気化したオイル)の液化が促進され、ブローバイガス中のオイルミストの粒径が大きくなる。
【0018】
そして、ブローバイガス中のオイルミストの粒径が大きくなれば、オイルセパレータ11におけるオイルの分離効率が向上し、エンジン1の吸気管13にブローバイガスと共に還流されるオイルの量を減らすことができる。
また、上記実施形態では、ブローバイガス供給配管12をジグザグ又は螺旋状とすることでオイルの分離効率を向上させるから、簡便に分離効率の向上を実現できる。
【0019】
例えば、オイルセパレータ11にフィルタを追加することによっても、オイルの分離効率を向上させることができるが、フィルタの追加は、コストアップ、構造の複雑化、フィルタ交換の手間などを発生させることになる。これに対し、上記実施形態のようにブローバイガス供給配管12をジグザグ又は螺旋状とすれば、コストアップ及び構造の複雑化を抑制し、かつ、フィルタ交換の手間を生じることなく、オイル分離効率を向上させることができる。
【0020】
尚、ブローバイガス供給配管12の形状及び配置を、図2〜図5に示したものに限定するものではない。例えば、螺旋状に形成したブローバイガス供給配管12を、オイルセパレータ11の外側を囲むように設置したりすることができ、また、ジグザグ形状と螺旋形状とを組み合わせて用いることができ、略真直ぐな配管を用いる場合よりも、配管経路として迂回し、管路長が長くなる形状及び配置を適宜採用できる。
【0021】
また、上記実施形態では、ブローバイガス供給配管12の形状を、ジグザグ又は螺旋状とすることで、管路長を長くし、ブローバイガス供給配管12を流れるブローバイガスの温度を低下させるが、ブローバイガス供給配管12の途中に、空冷式の冷却箱を接続し、この冷却箱でブローバイガスの温度を低下させることができる。
【0022】
図6は、空冷式の冷却箱を用いる第2実施形態を示す。
図6において、弾性ゴム製のブローバイガス供給配管12cの一端を、ヘッド室9(シリンダヘッド7)のブローバイガス出口に接続し、他端を、金属製(アルミニウムなど)の空冷式冷却箱61のブローバイガス入口61aに接続する一方、弾性ゴム製のブローバイガス供給配管12dの一端を、冷却箱61のブローバイガス出口61bに接続し、他端を、オイルセパレータ11のブローバイガス入口に接続している。
【0023】
図7は、冷却箱61の内部構造を示す断面図である。
冷却箱61の内部空間は、2枚の仕切り板61c,61dによって仕切られることで、ジグザグに連なる入口通路61e、中央通路61f、出口通路61gが形成されている。
そして、ブローバイガス入口61aから冷却箱61内に流入したブローバイガスは、入口通路61eをそのまま直進した後、突き当たりの壁61hに衝突することで流れ方向が反転し、入口通路61eと仕切り板61cによって隔てられた中央通路61fを流れる。
【0024】
中央通路61fを流れるブローバイガスは、突き当たりの壁61iに衝突することで流れ方向が反転し、中央通路61fと仕切り板61dによって隔てられた出口通路61gを流れ、ブローバイガス出口61bから流出し、ブローバイガス供給配管12dを介してオイルセパレータ11に供給される。
冷却箱61の外面には、複数の冷却フィン61jが一体的に立設されており、冷却箱61内を流れるブローバイガスの熱は、冷却箱61の外壁及び冷却フィン61jを介して空気中に放熱され、これによって、ブローバイガスの温度低下を促進する。
【0025】
ブローバイガスの温度が低下すれば、ブローバイガスに含まれるオイル蒸気が液化し、ブローバイガス中のオイルミストの粒径が大きくなる。そして、ブローバイガス中のオイルミストの粒径が大きくなれば、オイルセパレータ11におけるオイルミストの分離効率が向上し、エンジン1の吸気管13にブローバイガスと共に還流されるオイルの量を減らすことができる。
また、第2実施形態のように、冷却箱61を用いてブローバイガスの温度を低下させる場合、ブローバイガスが流れる管路長を長くすると共に、冷却フィン61jによって放熱効率を高めることができるので、ブローバイガス供給配管12dをジグザグ又は螺旋状に形成する第1実施形態に比べて、ブローバイガスの温度低下をより大きくすることが可能である。
【0026】
尚、冷却箱61内の通路形状は、図7に示したものに限定されず、また、冷却箱61とヘッド室9(シリンダヘッド7)とを接続するブローバイガス供給配管12c、及び/又は、冷却箱61とオイルセパレータ11とを接続するブローバイガス供給配管12dを、ジグザグ又は螺旋状に形成することが可能である。
また、ヘッド室9(シリンダヘッド7)のブローバイガス出口に冷却箱61を直接接続するか、又は、オイルセパレータ11のブローバイガス入口に冷却箱61を直接接続してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 エンジン
6 クランクケース
7 シリンダヘッド
8 ヘッドカバー
9 ヘッド室
10 オイル通路
11 オイルセパレータ
12 ブローバイガス供給配管
13 吸気管
14 還流配管
15 オイル戻し配管
61 冷却箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出されたブローバイガスを、ブローバイガス供給配管を介してオイルセパレータに供給し、前記オイルセパレータでオイルが分離された残部のブローバイガスを前記エンジンの吸気管に戻すエンジンのブローバイガス還元装置において、
前記ブローバイガス供給配管が、ブローバイガスの冷却構造を備えたことを特徴とするエンジンのブローバイガス還元装置。
【請求項2】
前記冷却構造として、前記ブローバイガス供給配管の少なくとも一部をジグザグ又は螺旋状に形成したことを特徴とする請求項1記載のエンジンのブローバイガス還元装置。
【請求項3】
前記ブローバイガス供給配管のジグザグ又は螺旋状に形成される部分が金属製であり、該金属製配管の両端に弾性ゴム製の配管を接続して前記ブローバイガス供給配管を構成したことを特徴とする請求項2記載のエンジンのブローバイガス還元装置。
【請求項4】
前記冷却構造として、前記ブローバイガス供給配管の途中に、外部に放熱フィンを備え、内部にブローバイガスの通路が形成された空冷式の冷却箱を接続したことを特徴とする請求項1記載のエンジンのブローバイガス還元装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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