説明

エンジンの冷却装置

【課題】デポジットの堆積量が最大となる温度よりも吸気弁の温度を高める場合でもエンジン性能の低下を抑制可能なエンジンの冷却装置を提供する。
【解決手段】エンジンの冷却装置は制御弁2と通路部WJ2とECU70Aとを備えており、デポジットの堆積量が最大となる温度よりも温度を高めることが可能な吸気弁52を備えるエンジン50Aに設けられている。エンジンの冷却装置は所定の条件が成立した場合に吸気弁52の温度を低下させる。具体的には所定の条件が成立した場合に通路部WJ2に冷却水を流通させることで、吸気弁52の温度を低下させる。所定の条件はエンジン50Aに対する出力要求の度合いが所定の度合いよりも大きいか否かを判定可能な条件とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンでは、吸気弁や排気弁にデポジットが付着することが知られている。この点、吸気弁や排気弁へのデポジットの付着を抑制する技術を開示している点で、本発明と関連性があると考えられる技術が例えば特許文献1または2で開示されている。このほかオイルや冷却水を利用した冷却の態様上、本発明と関連性があると考えられる技術が例えば特許文献3から6で開示されている。また、温度を考慮して吸気弁のバルブ特性を変化させる点で、本発明と関連性があると考えられる技術が例えば特許文献7または8で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−149501号公報
【特許文献2】特開2006−348867号公報
【特許文献3】特開2007−32306号公報
【特許文献4】特開昭63−108512号公報
【特許文献5】特開2006−242078号公報
【特許文献6】実開平2−19807号公報
【特許文献7】特開2002−235593号公報
【特許文献8】特開2006−283632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9は温度に応じたデポジット堆積量の一例を示す図である。縦軸はデポジットの堆積量、横軸はバルブ傘部の温度を示す。図9に示すように、この例ではデポジットの堆積量が200℃付近で急激に増加し始めるとともに250℃付近で最大となり、その後減少していることがわかる。この点、吸気弁はデポジットの堆積量が最大となる温度付近で使用され得る。このため吸気弁では、デポジットの堆積量が最大となる温度よりも温度を高めることでデポジットの付着を抑制できる。しかしながら、吸気弁の温度上昇は吸気温度の上昇も招くことになる。このため、吸気弁の温度をデポジットの堆積量が最大となる温度よりも高めると、エンジン性能の低下を招く虞がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み、デポジットの堆積量が最大となる温度よりも吸気弁の温度を高める場合でもエンジン性能の低下を抑制可能なエンジンの冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はデポジットの堆積量が最大となる温度よりも温度を高めることが可能な吸気弁を備えるエンジンに設けられ、所定の条件が成立した場合に前記吸気弁の温度を低下させるエンジンの冷却装置である。
【0007】
本発明は前記吸気弁のステムガイドに対応させて設けられ、冷却水を流通させる通路部を備え、前記所定の条件が成立した場合に前記通路部に冷却水を流通させる構成とすることができる。
【0008】
本発明は前記吸気弁が着座するシート部に対応させて設けられ、冷却水を流通させる通路部を備え、前記所定の条件が成立した場合に前記通路部に冷却水を流通させる構成とすることができる。
【0009】
本発明は前記吸気弁のステムガイド或いは前記吸気弁の傘部にオイルを供給可能なオイル供給部を備え、前記所定の条件が成立した場合に前記オイル供給部からオイルを供給する構成とすることができる。
【0010】
本発明は前記吸気弁のリフト量を変更可能な可変動弁機構を備え、前記所定の条件が成立した場合に前記吸気弁のリフト量を増大させる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、デポジットの堆積量が最大となる温度よりも吸気弁の温度を高める場合でもエンジン性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1のエンジンの要部を示す図である。
【図2】吸気弁の傘部を示す図である。
【図3】実施例1の制御動作を示す図である。
【図4】実施例2のエンジンの要部を示す図である。
【図5】実施例3のエンジンの要部を示す図である。
【図6】実施例3の制御動作を示す図である。
【図7】実施例4のエンジンの要部を示す図である。
【図8】実施例4の制御動作を示す図である。
【図9】温度に応じたデポジット堆積量の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1はエンジン50Aの要部を示す図である。エンジン50Aはシリンダヘッド51Aと、吸気弁52と、排気弁53と、ステムガイド54、55と、シート部56、57とを備えている。また、エンジン50Aにはウォータポンプ(以下、W/Pと称す)1と、制御弁2と、ラジエータ3と、ECU70Aとが設けられている。
【0015】
シリンダヘッド51Aは図示しないシリンダブロックおよびピストンとともに燃焼室Eを形成する。シリンダヘッド51Aには吸気ポート51aと排気ポート51bとが形成されている。吸気ポート51aは燃焼室Eに吸気を導入し、排気ポート51bは燃焼室Eからガスを排出する。吸気弁52、排気弁53、ステムガイド54、55およびシート部56、57はシリンダヘッド51Aに設けられている。
【0016】
吸気弁52は吸気ポート51aを開閉し、排気弁53は排気ポート51bを開閉する。ステムガイド54は吸気弁52のステム部に対して、ステムガイド55は排気弁53のステム部に対してそれぞれ設けられている。ステムガイド54、55は対応する吸排気弁52、53をガイドする。シート部56は吸気弁52に対して設けられており、シート部57は排気弁53に対して設けられている。シート部56、57には対応する吸排気弁52、53が閉弁時に当接する。
【0017】
シリンダヘッド51Aには通路部WJ1、WJ2が設けられている。通路部WJ1、WJ2はウォータジャケットであり、冷却水を流通させる。通路部WJ1は図示しない点火プラグに対応させて設けられている。通路部WJ2はステムガイド54に対応させて設けられている。通路部WJ2は具体的にはステムガイド54、55の周囲に設けられている部分を含む通路部となっており、これによりステムガイド54に対応させて設けられている。通路部WJ2は他の通路部である通路部WJ1とは独立して冷却水の流通を制御可能に設けられている。
【0018】
W/P1はエンジン50Aに冷却水を圧送する。W/P1はエンジン50Aの出力で駆動する機械式のW/Pとなっている。W/P1は電動式のW/Pであってもよい。W/P1が圧送する冷却水は制御弁2を介して通路部WJ2に供給される。なお、W/P1が圧送する冷却水は通路部WJ1にも供給される。制御弁2は通路部WJ2における冷却水の流通を許可、禁止する。通路部WJ2に供給された冷却水は通路部WJ2を流通した後、ラジエータ3を介してW/P1に戻る。ラジエータ3は流通する冷却水と空気との間で熱交換を行い、冷却水を冷却する。制御弁2には具体的には例えば流量調節弁や切替弁を適用できる。
【0019】
図2は吸気弁52の傘部52aを示す図である。傘部52aは燃焼室Eに曝される傘裏部を斜面部に応じて凹状に設けることで、斜面部を形成する壁部を薄肉化した形状を備えている。そして、吸気弁52はかかる傘部52aを備えることで、傘部52aの斜面部においてデポジットの堆積量が最大となる温度(例えば250℃)よりも温度を高めることが可能な構造が設けられた吸気弁となっている。また、かかる構造が設けられることで、デポジットの堆積量が最大となる温度よりも温度を高めることが可能な吸気弁となっている。吸気弁52は傘部52aの斜面部においてデポジットの堆積量が最大となる温度よりも温度が高められることで、傘部52aの斜面部へのデポジットの付着を抑制できるようになっている。
【0020】
図1に示すECU70Aは電子制御装置であり、ECU70Aには制御弁2が制御対象として電気的に接続されている。また、エンジン50Aの運転状態を検出するためのセンサ群60が電気的に接続されている。センサ群60は例えばエンジン50Aの排気温を検出可能な排気温センサや、排気空燃比を検出可能な空燃比センサや、エンジン50Aの回転数NEを検出可能なクランク角センサや、エンジン50Aに対する加速要求をするためのアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出可能なアクセル開度センサや、エンジン50Aの冷却水温を検出可能な水温センサを含む。
【0021】
ECU70AではCPUがROMに格納されたプログラムに基づき、必要に応じてRAMの一時記憶領域を利用しつつ処理を実行することで、各種の機能部が実現される。この点、ECU70Aでは例えば以下に示す制御部が機能的に実現される。
【0022】
制御部は所定の条件が成立した場合に吸気弁52の温度を低下させる。所定の条件は排気温が所定値αよりも高いか否かとなっている。但しこれに限られず、所定の条件は例えば燃料噴射量が所定値よりも大きいか否かであったり、排気空燃比が所定値よりも小さいか否かであったり、エンジン50Aの負荷が所定値よりも大きいか否かであったりしてもよい。この点、所定の条件はエンジン50Aに対する出力要求の度合いが所定の度合いよりも大きいか否かを判定可能な条件とすることができる。これにより、高出力が要求される場合に吸気弁52の温度を低下させることができる。
【0023】
制御部は具体的には所定の条件が成立した場合に通路部WJ2に冷却水を流通させる。通路部WJ2に冷却水を流通させるにあたって、制御部は具体的には通路部WJ2における冷却水の流通を許可するように制御弁2を制御する(すなわち、制御弁2を開弁する)。本実施例では制御弁2と通路部WJ2とECU70Aとを備えるエンジンの冷却装置(以下、冷却装置と称す)が実現されている。
【0024】
次にECU70Aによって行われる本実施例の冷却装置の制御動作を図3に示すフローチャートを用いて説明する。ECU70Aはセンサ群60が出力する各種の信号を検出する(ステップS1)。そして、排気温が所定値αよりも高いか否かを判定する(ステップS2)。否定判定であればステップS1に戻る。肯定判定であればECU70Aは制御弁2を開弁する(ステップS3)。そしてこれにより、通路部WJ2に冷却水を流通させる。ステップS3の後にはステップS1に戻る。
【0025】
次に本実施例の冷却装置の作用効果について説明する。本実施例の冷却装置は所定の条件が成立した場合に吸気弁52の温度を低下させる。そしてこれにより、デポジットの堆積量が最大となる温度よりも吸気弁52の温度を高める結果、吸気温度の上昇を招いても、所定の条件が成立した場合には吸気温度を低下させることができる。このため、本実施例の冷却装置はデポジットの堆積量が最大となる温度よりも吸気弁52の温度を高める場合にエンジン性能の低下を抑制できる。
【0026】
本実施例の冷却装置は具体的には所定の条件が成立した場合に通路部WJ2に冷却水を流通させることで、ステムガイド54を介して吸気弁52のステム部の温度を低下させることができる。そしてこれにより、傘部52aからステム部への熱の移動を促進することで、デポジットの付着を抑制するにあたって温度が高められる傘部52aの斜面部の温度も低下させることができる。
【0027】
本実施例の冷却装置は他の通路部とは独立して冷却水の流通を制御可能に通路部WJ2を設けることで、所定の条件が成立した場合に通路部WJ2に個別に冷却水を流通させることを可能にしている。この点、本実施例の冷却装置はエンジン50Aの暖機時には通路部WJ2における冷却水の流通を禁止してもよい。これにより、デポジットの堆積量が最大となる温度よりも吸気弁52の温度を高める場合であっても、燃費向上の観点から早期の完了が望まれるエンジン50Aの暖機時には暖機の促進を優先することもできる。またこの場合には、燃料の霧化を向上させることで未燃HCの排出を低減することもできる。
【実施例2】
【0028】
図4はエンジン50Bの要部を示す図である。エンジン50Bはシリンダヘッド51Aの代わりにシリンダヘッド51Bを備える点以外、エンジン50Aと実質的に同一になっている。シリンダヘッド51Bは通路部WJ2の代わりに通路部WJ3が設けられている点以外、シリンダヘッド51Aと実質的に同一となっている。
【0029】
通路部WJ3は冷却水を流通させるウォータジャケットであり、シート部56に対応させて設けられている。通路部WJ3は具体的にはシリンダヘッド51Bのうち、吸気ポート51aよりもシリンダブロック側の部分でシート部56に近接して設けられることで、シート部56に対応させて設けられている。通路部WJ3は他の通路部である通路部WJ1とは独立して冷却水の流通を制御可能に設けられている。
【0030】
エンジン50BにはW/P1、制御弁2、ラジエータ3およびECU70Bが設けられている。エンジン50Bでは、W/P1が圧送する冷却水が制御弁2を介して通路部WJ3に供給され、通路部WJ3を流通した後、ラジエータ3を介してW/P1に戻るようになっている。したがって、エンジン50Bでは制御弁2が通路部WJ3における冷却水の流通を許可、禁止するように設けられている。
【0031】
ECU70Bは所定の条件が成立した場合に制御部が通路部WJ3に冷却水を流通させるように実現される点以外、ECU70Aと実質的に同一となっている。本実施例では制御弁2と通路部WJ3とECU70Bとを備える冷却装置が実現されている。なお、本実施例の冷却装置の制御動作自体は実施例1の冷却装置の制御動作と同じとなるためここでは省略する。
【0032】
次に本実施例の冷却装置の作用効果について説明する。本実施例の冷却装置は所定の条件が成立した場合に通路部WJ3に冷却水を流通させることで、シート部56を介して吸気弁52の温度を低下させることができる。そしてこれにより吸気温度を低下させることで、デポジットの堆積量が最大となる温度よりも吸気弁52の温度を高める場合にエンジン性能の低下を抑制できる。
【0033】
この点、本実施例の冷却装置はシート部56を介して吸気弁52の温度を低下させることで、傘部52aの斜面部の温度を直接的に低下させることができる。このため、本実施例の冷却装置は傘部52aの斜面部においてデポジットの堆積量が最大となる温度よりも温度を高める場合に好適である。
【実施例3】
【0034】
図5はエンジン50Cの要部を示す図である。エンジン50Cはシリンダヘッド51Aの代わりにシリンダヘッド51Cを備えている点と、オイルジェット58をさらに備えている点以外、エンジン50Aと実質的に同一となっている。シリンダヘッド51Cはオイルジェット58が設けられている点以外、シリンダヘッド51Bと実質的に同一となっている。エンジン50Cには電動ポンプ5とECU70Cとが設けられている。
【0035】
電動ポンプ5はシリンダヘッド51Cに形成されている図示しない油路にオイルを供給する。オイルジェット58は当該油路に接続されており、ステムガイド54に向けてオイルを噴射することで、ステムガイド54にオイルを供給する。オイルジェット58はオイル供給部に相当する。オイル供給部は例えばステムガイド54にオイルを供給可能なシャワーパイプや、吸気弁52の傘部52aにオイルを供給可能な多孔質材料からなるシート部であってもよい。
【0036】
ECU70Cは制御弁2の代わりに電動ポンプ5が制御対象として電気的に接続されている点と、制御部が以下に示すように実現される点以外、ECU70Aと実質的に同一となっている。ECU70Cでは、所定の条件が成立した場合に制御部がオイルジェット58からオイルを供給する。制御部は具体的には電動ポンプ5を作動させることで、オイルジェット58からオイルを供給する。本実施例では電動ポンプ5とオイルジェット58とECU70Cとを備える冷却装置が実現されている。
【0037】
次にECU70Cによって行われる本実施例の冷却装置の制御動作を図6に示すフローチャートを用いて説明する。ECU70Cはセンサ群60が出力する各種の信号を検出する(ステップS11)。そして、排気温が所定値αよりも高いか否かを判定する(ステップS12)。否定判定であればステップS11に戻る。肯定判定であれば、ECU70Cは電動ポンプ5を作動する(ステップS13)。そしてこれにより、オイルジェット58からステムガイド54にオイルを供給する。ステップS13の後にはステップS11に戻る。
【0038】
次に本実施例の冷却装置の作用効果について説明する。本実施例の冷却装置は所定の条件が成立した場合にオイルジェット58からステムガイド54にオイルを供給することで、ステムガイド54を介して吸気弁52の温度を低下させることができる。そしてこれにより吸気温度を低下させることで、デポジットの堆積量が最大となる温度よりも吸気弁52の温度を高める場合にエンジン性能の低下を抑制できる。
【0039】
本実施例の冷却装置はオイルジェット58の代わりに吸気弁52の傘部52aにオイルを供給するオイル供給部を備えることもできる。この場合、傘部52aの斜面部の温度を直接的に低下させることができることから、傘部52aの斜面部においてデポジットの堆積量が最大となる温度よりも温度を高める場合に好適である。
【実施例4】
【0040】
図7はエンジン50Dの要部を示す図である。エンジン50Dは可変動弁機構59をさらに備えている点と、シリンダヘッド51Aの代わりにシリンダヘッド51Dを備える点以外、エンジン50Aと実質的に同一となっている。シリンダヘッド51Dは可変動弁機構59が設けられている点以外、シリンダヘッド51Bと実質的に同一となっている。
【0041】
可変動弁機構59は吸気弁52のバルブ特性を可変にする。可変動弁機構59は具体的には吸気弁52のリフト量を変更可能な可変リフト機構となっている。可変動弁機構59は例えば吸気弁52のバルブタイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構と可変リフト機構とが組み合わされた機構であってもよい。可変バルブタイミング機構は例えば吸気弁52に対して設けられた互いに異なるカムプロフィールを有する複数のカムのうちから、吸気弁52を駆動するカムを選択可能なカムシフト機構とすることができる。
【0042】
エンジン50Dに対してはECU70Dが設けられている。ECU70Dは制御弁2の代わりに可変動弁機構59が制御対象として電気的に接続される点と、制御部が以下に示すように実現される点以外、ECU70Aと実質的に同一となっている。ECU70Dでは所定の条件が成立した場合に制御部が吸気弁52のリフト量を増大させる。制御部は具体的には可変動弁機構59を制御することで、吸気弁52のリフト量を増大させる。本実施例では可変動弁機構59とECU70Dとで冷却装置が実現されている。
【0043】
次にECU70Dによって行われる本実施例の冷却装置の制御動作を図8に示すフローチャートを用いて説明する。ECU70Dはセンサ群60が出力する各種の信号を検出する(ステップS21)。そして、燃料噴射量が所定値βよりも大きいか否かを判定する(ステップS22)。すなわち、本実施例では燃料噴射量が所定値βよりも大きいか否かを所定の条件としている。否定判定であればステップS21に戻る。肯定判定であれば、ECU70Dはリフト量を増大させるように可変動弁機構59を制御する(ステップS23)。ステップS23の後にはステップS21に戻る。
【0044】
次に本実施例の冷却装置の作用効果について説明する。本実施例の冷却装置は所定の条件が成立した場合に吸気弁52のリフト量を増大させる。そしてこれにより、吸気弁52が吸気の流通抵抗になることを抑制することで、吸気弁52からの受熱による吸気温の上昇を抑制できる。このため本実施例の冷却装置はデポジットの堆積量が最大となる温度よりも吸気弁52の温度を高める場合にエンジン性能の低下を抑制できる。
【0045】
可変動弁機構59が可変リフト機構と可変バルブタイミング機構とが組み合わされた機構である場合、冷却装置は所定の条件が成立した場合にエンジン50Dの体積効率が高まるように吸気弁52のバルブタイミングを変更することで、エンジン性能の低下を抑制することもできる。これは、可変動弁機構59が吸気弁52のバルブタイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構である場合でも同様である。
【0046】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0047】
例えば吸気弁はステムガイドを介して発熱体によって加熱されることで、すなわちデポジットの堆積量が最大となる温度よりも温度を高めることが可能な構成が設けられることで、デポジットの堆積量が最大となる温度よりも温度を高めることが可能になっていてもよい。
【符号の説明】
【0048】
W/P 1
制御弁 2
エンジン 50A、50B、50C、50D
吸気弁 52
ステムガイド 54、55
シート部 56、57
オイルジェット 58
可変動弁機構 59
ECU 70A、70B、70C、70D


【特許請求の範囲】
【請求項1】
デポジットの堆積量が最大となる温度よりも温度を高めることが可能な吸気弁を備えるエンジンに設けられ、
所定の条件が成立した場合に前記吸気弁の温度を低下させるエンジンの冷却装置。
【請求項2】
請求項1記載のエンジンの冷却装置であって、
前記吸気弁のステムガイドに対応させて設けられ、冷却水を流通させる通路部を備え、
前記所定の条件が成立した場合に前記通路部に冷却水を流通させるエンジンの冷却装置。
【請求項3】
請求項1記載のエンジンの冷却装置であって、
前記吸気弁が着座するシート部に対応させて設けられ、冷却水を流通させる通路部を備え、
前記所定の条件が成立した場合に前記通路部に冷却水を流通させるエンジンの冷却装置。
【請求項4】
請求項1記載のエンジンの冷却装置であって、
前記吸気弁のステムガイド或いは前記吸気弁の傘部にオイルを供給可能なオイル供給部を備え、
前記所定の条件が成立した場合に前記オイル供給部からオイルを供給するエンジンの冷却装置。
【請求項5】
請求項1記載のエンジンの冷却装置であって、
前記吸気弁のリフト量を変更可能な可変動弁機構を備え、
前記所定の条件が成立した場合に前記吸気弁のリフト量を増大させるエンジンの冷却装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−104410(P2013−104410A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250864(P2011−250864)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】