説明

エンジンの排気浄化装置

【課題】電力消費による電源の負荷増大等を招くことなく、しかも凍結状態の還元剤をいち早く解凍して同還元剤を早期に使用可能とする。
【解決手段】排気管11にはDPF12とSCR触媒13とが配設され、DPF12とSCR触媒13との間には、尿素水を排気管11内に添加供給するための尿素水添加弁15が設けられている。尿素水供給系の構成として、尿素水タンク21内には所定濃度の尿素水が貯蔵されており、同タンク21内に尿素水ポンプ22が設けられている。尿素水ポンプ22には尿素水供給管23が接続されている。尿素水供給管23は、その一部が二重配管構造により構成されており、それにより形成される2つの通路の一方が尿素水通路、他方がエンジン冷却水通路となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気浄化装置に係り、特に尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムに好適に採用される排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等に適用されるエンジン(特にディーゼルエンジン)において、排気中のNOx(窒素酸化物)を高い浄化率で浄化する排気浄化装置として、尿素SCRシステムの開発が進められており、一部実用化に至っている。尿素SCRシステムとしては次の構成が知られている。
【0003】
すなわち、尿素SCRシステムでは、エンジン本体に接続された排気管にSCR触媒が設けられるとともに、その上流側に、還元剤としての尿素水(尿素水溶液)を排気管内に添加する尿素水添加弁が設けられている。尿素水添加弁には、尿素水供給管を介して尿素水タンクが接続されており、例えば尿素水タンク内に配設されたポンプが吐出駆動されることで、尿素水が、尿素水タンクから尿素水供給管を通じて尿素水添加弁に供給されるようになっている。
【0004】
かかるシステムにおいては、尿素水添加弁により排気管内に添加水が添加されることで、排気と共に尿素水がSCR触媒に供給され、該SCR触媒上でのNOxの還元反応によって排気が浄化される。NOxの還元に際しては、尿素水が排気熱で加水分解されることによりアンモニア(NH3)が生成され、SCR触媒にて選択的に吸着された排気中のNOxに対しアンモニアが添加される。そして、同SCR触媒上で、アンモニアに基づく還元反応が行われることによってNOxが還元、浄化されることになる。
【0005】
ところで、上述した尿素SCRシステムにおいて、還元剤として使用される尿素水は例えば−11℃で凍結し、その凍結に伴い尿素水の使用に支障が生じる。そこで、尿素水の凍結対策として、尿素水供給管に電熱ヒータを付設し、そのヒータで管内の凍結尿素水を解凍する技術が提案されている。例えば、特許文献1では、尿素水供給管の管本体の外周部に設けられる電熱ヒータを、繊維素材で筒形をなすように織り込んだ平織りメッシュにより管本体ごと被覆するようにしている。
【特許文献1】特開2005−325691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1を含め尿素水供給管にヒータを付設した先行技術の場合、例えばエンジン始動の都度、所定時間ヒータが通電され、そのヒータ通電により電力が消費される。かかる場合、電源として車載バッテリを想定すると、そのバッテリにかかる負荷が大きくなるといった不都合が生じる。尿素水解凍の対象となる配管長が長くなる場合、こうした電力消費(バッテリ等の負荷増大)の不都合は顕著になると考えられる。
【0007】
本発明は、電力消費による電源の負荷増大等を招くことなく、しかも凍結状態の還元剤をいち早く解凍して同還元剤を早期に使用可能とすることができるエンジンの排気浄化装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について説明する。
【0009】
本発明におけるエンジンの排気浄化装置では、排気浄化の実施に際し、還元剤容器内の還元剤(尿素水溶液等)が還元剤通路を通じて還元剤添加弁に供給され、その還元剤添加弁によりエンジンの排気通路内に還元剤が添加される。これにより、排気通路内であって還元剤添加弁よりも下流側に設けられた排気浄化用触媒(還元触媒)において還元剤の添加に基づく特定の排気浄化反応が促進される。かかる排気浄化装置において、本発明(請求項1)では特に、還元剤通路を、複数の通路を集合させて設けた通路集合管により構成するとともに、前記複数の通路のうち前記還元剤通路以外の通路を、還元剤を解凍するための解凍用媒体を流通させる媒体流通通路としている。言い加えると、通路集合管は、前記複数の通路を、それら通路間で熱交換可能(熱移動可能)に集合させて設けた多通路配管である。
【0010】
寒冷地では夜間等に気温が低下すると、還元剤通路内の還元剤が凍結することがあり、その凍結により、排気通路の触媒上流部分に対して還元剤が添加できなくなる。この点本発明では、還元剤通路と解凍用媒体を循環させる媒体流通通路とを通路集合管により構成したため、還元剤通路内の還元剤が凍結したとしても、解凍用媒体の流通によりいち早く解凍できる。かかる場合、ヒータ通電により配管内の凍結還元剤を解凍していた従来技術とは異なり、電力消費により電源(バッテリ)の負荷増大等を招くといった不都合が解消される。そして、凍結状態の還元剤がいち早く解凍できることから、同還元剤を早期に使用可能とすることができる。
【0011】
前記通路集合管は、前記複数の通路を内外多重に設けた多重配管であると良い(請求項2)。この場合、還元剤通路と媒体流通通路とが、その一方により他方が囲まれるように設けられるため、凍結状態の還元剤を効率良く解凍できる。
【0012】
ここで、解凍用媒体としては以下の媒体が適用できる。
(1)エンジンを冷却するためのエンジン冷却水を解凍用媒体として用い、そのエンジン冷却水を媒体流通通路に導く構成とする(請求項3)。
(2)エンジンから排出される排気を解凍用媒体として用い、その排気を媒体流通通路に導く構成とする(請求項4)。
(3)空調装置用の冷媒を解凍用媒体として用い、その冷媒を媒体流通通路に導く構成とする(請求項5)。
【0013】
上記のいずれにおいても、解凍用媒体が有する熱により還元剤を早期に解凍することができる。
【0014】
還元剤通路内における還元剤の温度を検出し、該検出した還元剤の温度が、還元剤反応温度に基づき設定した所定の温度域まで上昇した場合に、媒体流通通路における解凍用媒体の流通を停止させると良い(請求項6)。要するに、尿素水等よりなる還元剤は、所定の高温状態になると化学的な反応によりアンモニア等の気体を発生する。この気体が還元剤通路内で生じることで、還元剤添加弁による還元剤の添加に悪影響が及ぶことが懸念される(いわゆる、ベーパロック等)。この点、上記のとおり還元剤の温度に基づいて解凍用媒体の流通を停止することで、還元剤の過剰な温度上昇を防ぐことができ、ひいてはベーパロック等の不都合が回避できる。
【0015】
なお、媒体流通通路における解凍用媒体の流通を停止させるための具体的な構成として、同媒体流通通路の途中に開閉弁を設けておき、この開閉弁を開状態から閉状態に切り替えることで解凍用媒体の流通を停止させるようにすると良い。
【0016】
還元剤添加弁付近であってかつ同添加弁を通じて前記排気通路から排気熱が伝達される排気受熱部位を除く部位について、前記還元剤通路を前記通路集合管により構成すると良い(請求項7)。つまり、還元剤添加弁付近の還元剤通路においては、還元剤添加弁を通じて伝達される排気熱により還元剤(凍結還元剤)が解凍されると考えられる。この点を加味すると、還元剤通路において排気受熱部位については媒体流通通路との集合化(多重配管化)が必須ではなく、排気受熱部位を除く部位についてのみ媒体流通通路との集合化(多重配管化)を行うと良い。本構成とすることで、還元剤通路と媒体流通通路との集合化(多重配管化)によるコスト上昇を努めて抑えることができる。
【0017】
排気受熱部位に相当するか否かは、エンジン始動後における還元剤通路壁(還元剤供給管)の温度上昇量に基づいて判断されれば良い。
【0018】
また、媒体流通経路の実質的な通路長が還元剤通路の通路長よりも長くなるようにして前記通路集合管を構成すると良い(請求項8)。この場合、還元剤通路内の還元剤(凍結還元剤)を効率良く解凍することができる。より具体的には、還元剤通路を内側通路、媒体流通通路を外側通路としてこれら各通路を内外二重に設け、かつ還元剤通路を形成する還元剤供給管の周りに螺旋状に媒体流通通路が形成されるようにして前記通路集合管を構成すると良い(請求項9)。
【0019】
前記通路集合管に、前記複数の通路として1つの還元剤通路と2つの媒体流通通路とを集合させて設け、前記2つの媒体流通通路において前記解凍用媒体の各々の流通方向を互い違いにすると良い(請求項10)。つまり、通路集合管部分における媒体流通通路の入口側と出口側とを比べると、入口側の方が凍結還元剤の解凍が早いと考えられる。この点本構成では、通路集合管部分には双方向から解凍用媒体が流入するため、還元剤通路の全域について早期に還元剤の解凍を行うことができる。
【0020】
前記通路集合管としての多重配管を、3つの通路を有する三重構造とし、該3つの通路のうち最内側通路及び最外側通路を媒体流通通路、それら最内側通路及び最外側通路に挟まれた中間通路を還元剤通路とすると良い(請求項11)。本構成によれば、還元剤通路内の還元剤(凍結還元剤)は、その内側の媒体流通通路内を流れる解凍用媒体と外側の媒体流通通路内を流れる解凍用媒体とにより解凍されるため、その解凍に要する時間の短縮を図ることができる。
【0021】
最内側通路及び最外側通路において前記解凍用媒体の各々の流通方向を互い違いにすると良い(請求項12)。つまり、多重配管部分における媒体流通通路の入口側と出口側とを比べると、入口側の方が凍結還元剤の解凍が早いと考えられる。この点本構成では、多重配管部分には双方向から解凍用媒体が流入するため、還元剤通路の全域について早期に還元剤の解凍を行うことができる。
【0022】
前記解凍用媒体を、前記通路集合管部分以外に、前記還元剤容器にも導く構成とすると良い(請求項13)。これにより、還元剤通路内の還元剤だけでなく、還元剤容器内の還元剤についても早期に凍結状態を解除できる(解凍できる)。故に、システム全体として好適なる構成が実現できる。
【0023】
本排気浄化装置において、前記還元剤は尿素水溶液であり、前記排気浄化用触媒は、尿素水溶液から生成されるアンモニアによりNOxを還元するNOx還元反応を前記排気浄化反応とし、そのNOx還元反応を促進するものであると良い(請求項14)。
【0024】
尿素SCRシステムに代表されるように、尿素水溶液を還元剤として用いるNOx浄化装置は、排気中のNOxを高い浄化率で浄化する排気浄化装置として期待されている。したがって本発明は、尿素SCRシステムに適用して特に有益である。また、例えば自動車の分野でこの排気浄化装置を採用し、ディーゼルエンジン搭載の車両等にこの装置を装着した場合には、燃焼過程でNOxの発生を許容して燃費及びPMを改善することなども可能になり、ひいては自動車の性能向上や排気清浄化に大きく貢献することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る排気浄化装置を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態の排気浄化装置は、選択還元型触媒を用いて排気中のNOxを浄化するものであり、尿素SCRシステムとして構築されている。はじめに、図1を参照してこのシステムの構成について詳述する。図1は、本実施形態に係る尿素SCRシステムの概要を示す構成図である。
【0026】
図1に示すように、本システムは、自動車に搭載されたディーゼルエンジン(図示略)により排出される排気を浄化対象として、大きくは、排気を浄化するための各種アクチュエータ及び各種センサ、並びにECU(電子制御ユニット)40等を有して構築されている。
【0027】
エンジン排気系の構成として具体的には、エンジン本体Eに接続された排気管11が設けられており、その排気管11にはDPF(Diesel Particulate Filter)12と選択還元触媒(以下、SCR触媒という)13とが配設されている。また、排気管11においてDPF12とSCR触媒13との間には、還元剤としての尿素水(尿素水溶液)を排気管11内に添加供給するための尿素水添加弁15が設けられている。
【0028】
排気管11においてSCR触媒13の下流側には、NOx検出部(NOxセンサ)と排気温検出部(排気温センサ)とが共に内蔵された排気センサ16が設けられており、同SCR触媒13の下流側にて、排気中のNOx量(ひいてはSCR触媒13によるNOxの浄化率)、及び排気の温度が検出されるようになっている。排気管11の更に下流には、余剰のアンモニア(NH3)を除去するためのアンモニア除去装置(例えば酸化触媒)や、排気中のアンモニア量を検出するためのアンモニアセンサ等が必要に応じて設けられる。
【0029】
DPF12は、排気中のPM(粒子状物質)を捕集する連続再生式のPM除去用フィルタである。DPF12は白金系の酸化触媒を担持しており、PM成分の1つである可溶性有機成分(SOF)とともに、HCやCOを除去することができるようになっている。ちなみに、DPF12に捕集されたPMは、ディーゼルエンジンにおけるメイン燃料噴射後のポスト噴射等により燃焼除去でき(再生処理に相当)、これによりDPF12の継続使用が可能となっている。
【0030】
SCR触媒13はNOxの還元反応(排気浄化反応)を促進するものであり、例えば、
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O …(式1)
6NO2+8NH3→7N2+12H2O …(式2)
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2O …(式3)
のような反応を促進して排気中のNOxを還元する。そして、これらの反応においてNOxの還元剤となるアンモニア(NH3)を添加供給するものが、同SCR触媒13の上流側に設けられた尿素水添加弁15である。
【0031】
尿素水添加弁15は、既存の燃料噴射弁(インジェクタ)とほぼ同様の構成を有するものであり、公知の構成が採用できるため、ここでは構成を簡単に説明する。尿素水添加弁15は、電磁ソレノイド等からなる駆動部と、先端添加口を開閉するためのニードルを有する弁体部とを備えた電磁式開閉弁として構成されており、ECU40からの駆動信号に基づき開弁又は閉弁する。すなわち、前記駆動信号に基づき電磁ソレノイドが通電されると、該通電に伴いニードルが開弁方向に移動し、そのニードル移動によって先端添加口が開放されて尿素水が添加(噴射)される。
【0032】
尿素水添加弁15に対しては、尿素水タンク21から尿素水が逐次供給されるようになっており、次に、尿素水供給系の構成について説明する。
【0033】
尿素水タンク21は給液キャップ付きの密閉容器にて構成されており、その内部に所定濃度の尿素水が貯蔵されている。尿素水タンク21内には、尿素水に浸漬した状態で尿素水ポンプ22が設けられている。尿素水ポンプ22は、ECU40からの駆動信号により回転駆動される電動式ポンプである。尿素水ポンプ22には尿素水供給管23の一端が接続されており、同尿素水供給管23の他端は尿素水添加弁15に接続されている。尿素水供給管23内には尿素水通路が形成されている。尿素水ポンプ22が回転駆動されることにより、尿素水が汲み上げられ尿素水供給管23を通じて尿素水添加弁15側に吐出される。
【0034】
なお、尿素水ポンプ22には、尿素水の圧力を調整するための圧力調整弁(図示略)が内蔵されており、同ポンプ22の吐出圧力は圧力調整弁によって適宜調整される。また、尿素水ポンプ22の吐出口部分には、尿素水を濾過するためのフィルタ(図示略)が設けられており、逐次吐出される尿素水はフィルタにより異物が除去された後、尿素水供給管23に吐出される。
【0035】
尿素水タンク21には、同タンク21内の尿素水の温度を検出するための第1尿素水温度センサ25が設けられている。また、尿素水供給管23には、同供給管23内の尿素水の温度を検出するための第2尿素水温度センサ26が設けられている。その他、尿素水供給系には、凍結した尿素水を解凍する目的で、エンジン冷却水を利用した尿素水解凍手段が設けられているが、これに関しては後に詳述する。
【0036】
上記システムの中で電子制御ユニットとして主体的に排気浄化に係る制御を行う部分がECU40である。ECU40は、周知のマイクロコンピュータ(図示略)を備え、各種センサの検出値に基づいて所望とされる態様で尿素水添加弁15をはじめとする各種アクチュエータを操作することにより、排気浄化に係る各種の制御を行うものである。具体的には、例えば尿素水添加弁15の通電時間や尿素水ポンプ22の駆動量等を制御することにより、排気管11内に、適切な時期に適正な量の尿素水を添加供給する。
【0037】
本実施形態に係る上記システムでは、エンジン運転時において、尿素水ポンプ22の駆動により尿素水タンク21内の尿素水が尿素水供給管23を通じて尿素水添加弁15に圧送され、尿素水添加弁15により排気管11内に尿素水が添加供給される。すると、排気管11内において排気と共に尿素水がSCR触媒13に供給され、SCR触媒13においてNOxの還元反応が行われることによってその排気が浄化される。NOxの還元に際しては、例えば、
(NH2)2CO+H2O→2NH3+CO2 …(式4)
のような反応をもって、尿素水が排気熱で加水分解されることによりアンモニア(NH3)が生成され、SCR触媒13にて選択的に吸着された排気中のNOxに対し、このアンモニアが添加される。そして、同SCR触媒13上で、そのアンモニアに基づく還元反応(上記反応式(式1)〜(式3))が行われることによって、NOxが還元、浄化されることになる。
【0038】
ところで、還元剤として用いられる尿素水は−11℃で凍結し、その凍結に伴い排気管11の触媒上流部分に対して尿素水が添加供給できなくなる。そこで本実施形態では、凍結した尿素水をいち早く解凍すべく、尿素水供給管23の一部を二重配管構造により構成し、それにより形成される2つの通路の一方を尿素水通路、他方をエンジン冷却水通路としている。この場合、エンジン冷却水は尿素水(還元剤)を解凍するための解凍用媒体に相当する。
【0039】
エンジン冷却水を循環させるための冷却水循環系の構成について以下に説明する。図1に示すように、冷却水循環配管31は、エンジン本体Eにて加熱されたエンジン冷却水を尿素水供給系に循環させるものであり、その一部が尿素水タンク21内に配設されている。尿素水タンク21内に配設された配管部分がタンク加熱部H1であり、当該加熱部H1においては冷却水循環配管31が螺旋状(渦巻き状)に曲げ形成されている。この場合、エンジン本体Eの冷却水通路(いわゆる、ウォータジャケット)から流れ出たエンジン冷却水は、タンク加熱部H1を通過した後にエンジン本体Eに戻るようにして冷却水循環配管31内を循環する。なお、エンジン本体E付近にはエンジン駆動式のウォータポンプWPが設けられており、このウォータポンプWPの駆動によりエンジン冷却水の循環が行われるようになっている。
【0040】
冷却水循環配管31において、エンジン本体Eからタンク加熱部H1に至るまでの中途部分には電磁式の開閉弁32が設けられている。開閉弁32を開くことでタンク加熱部H1へのエンジン冷却水の循環(図1のR1方向の流れ)が許容され、開閉弁32を閉じることでタンク加熱部H1へのエンジン冷却水の循環(図1のR1方向の流れ)が阻止されるようになっている。
【0041】
また、冷却水循環配管31は、タンク加熱部H1を迂回するようにして2点(図のA1,A2)で分岐されており、尿素水タンク21内にエンジン冷却水を導く上記の経路に加え、尿素水供給管23の一部に設けられた二重配管部分にエンジン冷却水を導く経路が設けられている。ここで、尿素水供給管23と冷却水循環配管31とを比べると、後者の方が大径であり、尿素水供給管23を内側配管、冷却水循環配管31を外側配管とすることで二重配管が構成されている(図2参照)。
【0042】
図2に示すように、尿素水供給管23と冷却水循環配管31とは共に円筒管よりなり、冷却水循環配管31の直径は尿素水供給管23の直径の2倍程度となっている。具体的には、例えば、尿素水供給管23の直径は約6.5mm、冷却水循環配管31の直径は約13mmである。その材質はいずれもステンレス材(例えばSUS304)である。上記のように構成される二重配管部分では、尿素水供給管23により形成される尿素水通路34(内側通路)を尿素水が流れ、尿素水供給管23の外周面と冷却水循環配管31の内周面との間に形成される冷却水通路35(外側通路)をエンジン冷却水が流れる。本実施形態の構成では、尿素水の流れの向きとエンジン冷却水の流れの向きとは逆(互い違い)となっている。ただし、それらの流れの向きを同一にすることも可能である。なお、尿素水通路34が「還元剤通路」に相当し、冷却水通路35が「媒体流通通路」に相当する。
【0043】
図1において、二重配管部分が尿素水配管加熱部H2となっている。この場合、エンジン本体Eから流れ出たエンジン冷却水は、尿素水配管加熱部H2を通過した後にエンジン本体Eに戻るようにして冷却水循環配管31内を循環する。
【0044】
冷却水循環配管31において、分岐部(図のA1)から尿素水配管加熱部H2(二重配管部分)に至るまでの中途部分には電磁式の開閉弁36が設けられている。開閉弁36を開くことで冷却水循環配管31の二重配管部分へのエンジン冷却水の循環(図1のR2方向の流れ)が許容され、開閉弁36を閉じることで冷却水循環配管31の二重配管部分へのエンジン冷却水の循環(図1のR2方向の流れ)が阻止されるようになっている。
【0045】
尿素水供給管23は、その全部分(尿素水タンク21〜尿素水添加弁15の全て)が二重配管構造とされているのではなく、部分的に二重配管構造とされている。つまり、尿素水供給管23では、エンジン始動後に凍結尿素水が解凍されやすい部位と解凍されにくい部位とがあり、尿素水添加弁15に近い部位では排気管11からの受熱により凍結尿素水が解凍されやすいと考えられる。そこで本実施形態では、尿素水供給管23において尿素水添加弁15から所定距離(例えば50cm)の部位については二重配管構造とせず、通常の一重配管としている。
【0046】
なお、尿素水供給管23において一重配管構造となっている部位は、尿素水添加弁15を通じて排気管11から排気熱が伝達される排気受熱部位に相当する。ここで、エンジン始動後における尿素水供給管23の温度上昇量(管壁温度上昇量)を、実験等によって尿素水供給管23の複数のポイントであらかじめ求めておき、その温度上昇量に基づいて排気受熱部位に相当するか否かが決められると良い。このとき、尿素水供給管23の温度上昇率(単位時間当たりの温度上昇量)があらかじめ定めた基準値以上となる部位を排気受熱部位とする。
【0047】
ちなみに、冷却水循環配管31において二重配管とならない部位については上記よりも小径の配管材を用いることも可能であり、例えば、タンク加熱部H1、又は同タンク加熱部H1を含む配管部分(図のA1〜A2の部分)について、上記よりも小径(例えば約3mm)の配管材を用いても良い。タンク加熱部H1では、冷却水循環配管31が螺旋状に曲げ形成されることを考慮すると、小径の配管材を用いることで加工性の改善が見込める。上記構成では、エンジン本体Eに冷却水循環配管31を接続したが、これに代えて、ラジエータ(図示略)に冷却水循環配管31を接続することも可能である。かかる場合にはラジエータから冷却水循環配管31にエンジン冷却水が流れ込む構成となる。
【0048】
寒冷地において尿素水タンク21内の尿素水や尿素水供給管23内の尿素水が凍結した場合には、冷却水循環配管31に設けられた開閉弁32,36が共に開放され、エンジン本体Eから冷却水循環配管31に流れ出たエンジン冷却水がタンク加熱部H1及び尿素水配管加熱部H2にそれぞれ給送される。これにより、尿素水タンク21や尿素水供給管23の凍結尿素水がエンジン冷却水の熱により解凍されることとなる。
【0049】
図3は、エンジン始動直後における尿素水の状態変化を説明するためのタイムチャートであり、(a)には、エンジン冷却水の温度変化を一点鎖線で、二重配管部分の尿素水の温度変化を実線で、尿素水タンク21内(ただしポンプ付近)の尿素水の温度変化を二点鎖線でそれぞれ示している。また、(b)には、二重配管部分の尿素解凍割合を実線で、尿素水タンク21(ただしポンプ付近)の尿素解凍割合を二点鎖線でそれぞれ示している。なおここでは、尿素水が凍結した状態からエンジン始動が行われる場合を想定している。エンジン始動時の冷却水温度と尿素水温度とは極低温(例えば、−20℃程度)となっている。
【0050】
図3において、タイミングt0でエンジンが始動されると、エンジン冷却水の温度が上昇し始める。このとき、二重配管部分では、尿素水供給管23(尿素水通路34)と冷却水循環配管31(冷却水通路35)とが内外に設けられているため、エンジン冷却水の温度上昇に追従して、二重配管部分の尿素水温度が上昇する。
【0051】
そして、タイミングt1で尿素水温度が凝固点温度(−11℃)に達すると、その後、タイミングt2になるまで尿素水温度が凝固点温度で保持される。このとき、t1〜t2の期間では、尿素水配管加熱部H2のエンジン冷却水から受ける融解熱により凍結尿素水が解け、全てが解凍されるタイミングt2で尿素水温度が再び上昇し始める。二重配管部分の尿素水について、尿素解凍割合はタイミングt1で0(全て凍結を意味)から上昇し始め、タイミングt2で1(全て解凍を意味)となる。
【0052】
また、尿素水タンク21内の尿素水については、二重配管部分の尿素水よりも温度上昇が遅く、タイミングt3で凝固点温度(−11℃)に達すると、その後、タイミングt4になるまで凝固点温度で保持される。このとき、t3〜t4の期間では、タンク加熱部H1のエンジン冷却水から受ける融解熱により凍結尿素水が解け、全てが解凍されるタイミングt4で尿素水温度が再び上昇し始める。尿素水タンク21内の尿素水(ただしポンプ付近)について、尿素解凍割合はタイミングt3で上昇し始め、タイミングt4で1となる。
【0053】
一方、エンジン運転時において、冷却水循環配管31にエンジン冷却水を循環させた状態を継続すると、尿素水温度の上昇に伴い尿素水タンク21内又は尿素水供給管23内で尿素水の加水分解が生じる。本願発明者らは、尿素水が約60℃まで上昇すると、尿素水の加水分解が生じてアンモニアが生成されることを確認している。尿素水タンク21内又は尿素水供給管23内でアンモニアが生成されると、いわゆるベーパロック状態となり、尿素水添加弁15からの尿素水添加に悪影響が及ぶことが懸念される。そこで、尿素水タンク21内の尿素水の温度と、尿素水供給管23内の尿素水の温度とをそれぞれ逐次モニタし、その結果に応じて冷却水循環配管31の開閉弁32,36を開閉してエンジン冷却水の循環を適宜停止させることとする。
【0054】
図4は、開閉弁32,36の開閉制御に関する処理手順を示すフローチャートであり、本処理は所定の時間周期でECU40により実行される。
【0055】
図4において、ステップS11では、第1尿素水温度センサ25の検出信号により算出した尿素水タンク21内の尿素水温度T1が所定値K(例えば60℃)未満であるか否かを判定する。そして、T1<Kの場合、ステップS12に進んで開閉弁32を開放し、タンク加熱部H1に対してエンジン冷却水を循環させる。T1≧Kの場合、ステップS13に進んで開閉弁32を閉鎖し、タンク加熱部H1に対するエンジン冷却水の循環を停止させる。
【0056】
また、ステップS14では、第2尿素水温度センサ26の検出信号により算出した尿素水供給管23内の尿素水温度T2が所定値K(例えば60℃)未満であるか否かを判定する。そして、T2<Kの場合、ステップS15に進んで開閉弁36を開放し、尿素水配管加熱部H2(二重配管部分)に対してエンジン冷却水を循環させる。T3≧Kの場合、ステップS16に進んで開閉弁36を閉鎖し、尿素水配管加熱部H2に対するエンジン冷却水の循環を停止させる。
【0057】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0058】
尿素水供給管23(尿素水通路34)と冷却水循環配管31(冷却水通路35)とを二重配管構造とし内外二重に設ける構成としたため、尿素水供給管23(尿素水通路34)内の尿素水が凍結したとしてもエンジン冷却水の流通によりいち早く解凍できる。かかる場合、ヒータ通電により配管内の凍結尿素水を解凍していた従来技術とは異なり、電力消費によりバッテリの負荷増大等を招くといった不都合が解消される。そして、凍結状態の尿素水がいち早く解凍できることから、同尿素水を早期に使用可能とすることができる。これにより、排気浄化効果が向上し、排気エミッションの改善を図ることができる。
【0059】
また、尿素水タンク21についてもエンジン冷却水を循環させる構成としたため、尿素水タンク21内の尿素水についても早期に凍結状態を解除できる(解凍できる)。故に、システム全体として好適なる構成が実現できる。
【0060】
一般にエンジン冷却水はエンジン始動後において常時循環されており、その循環を利用して尿素水(凍結尿素水)を解凍させる構成としたため、エンジン始動後においてエンジン冷却水から受ける融解熱により尿素水を早期に解かすことができる。
【0061】
尿素水供給管23内における尿素水温度を検出し、該検出した尿素水温度が約60℃(尿素水反応温度に基づき設定した所定温度)まで上昇した場合に、エンジン冷却水の循環を停止させるようにしたため、還元剤の過剰な温度上昇を防ぐことができ、ひいてはベーパロック等の不都合が回避できる。
【0062】
尿素水供給管23についてその全てではなく一部分を二重配管構造により構成したため、二重配管化によるコスト上昇を努めて抑えることができる。尿素水供給管23において一重配管とした尿素水添加弁15付近の部位については排気熱による解凍が行われる。
【0063】
尿素水添加弁15としてインジェクタタイプの電磁式開閉弁を用いる構成としたため、尿素水添加のON/OFFや尿素水添加量の制御等を任意にかつ高精度に行うことができる。これにより、尿素水の無駄な消費を抑制でき、尿素水消費量の低減を図ることができる。
【0064】
尿素水添加弁15を、DPF11(PM除去用フィルタ)の下流側に設ける構成とした。これにより、尿素水添加弁15の先端添加口がPMにより汚染されるといった不都合が抑制でき、尿素水添加弁15を長期にわたって使用することが可能になる。
【0065】
SCR触媒13に対する還元剤として尿素水を使用し、SCR触媒13が、尿素水から生成されるアンモニアによりNOxを還元するNOx還元反応(上記反応式(式1)〜(式3))を促進する構成とし、このシステムを、ディーゼルエンジン搭載の車両に装着した。これにより、燃焼過程でNOxの発生を許容して燃費及びPMを改善することなども可能になり、ひいては自動車の性能向上や排気クリーン化に大きく貢献することができるようになる。
【0066】
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されても良い。
【0067】
二重配管部分において、冷却水循環配管31内における冷却水通路35の実質的な通路長が、尿素水供給管23内における尿素水通路34の通路長よりも長くなるよう構成する。具体的には、図5に示すように、前記同様、尿素水供給管23(尿素水通路34)を内側に、冷却水循環配管31(冷却水通路35)を外側に設け、かつ尿素水供給管23の周りに螺旋状に冷却水通路35が形成されるようにして多重配管を構成する。この場合、尿素水は尿素水通路34内を直線的に(配管長手方向に沿って)流れるのに対し、エンジン冷却水は尿素水供給管23の周りを螺旋状に旋回しながら流れる。上記構成よれば、尿素水供給管23(尿素水通路34)内の尿素水(凍結尿素水)を効率良く解凍することができる。
【0068】
螺旋状の冷却水通路35を形成するための具体的な構成としては、尿素水供給管23の外周面と冷却水循環配管31の内周面との間に螺旋状の通路壁を設けたり、冷却水循環配管31を径方向に捻ることで同配管31に螺旋状のうねりを設けたりすると良い。
【0069】
上記実施形態では、尿素水供給管23と冷却水循環配管31とを内外二重に設けた二重配管部分において、尿素水供給管23を内側に、冷却水循環配管31を外側にしたが、これを逆にし、尿素水供給管23を外側に、冷却水循環配管31を内側にして構成しても良い。すなわちこの場合、尿素水通路が外側通路、冷却水通路が内側通路となる。
【0070】
上記実施形態では、尿素水供給管23についてその全部分ではなく一部分を二重配管構造により構成したが、これを変更し、尿素水供給管23の全部分を二重配管構造により構成することも可能である。
【0071】
上記実施形態では、尿素水供給管23をステンレス材により構成したが、他の構成に変更しても良い。例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂など、尿素水に対する耐腐食性に優れた樹脂材料を用いて尿素水供給管23を構成しても良い。ただし、伝熱性を考慮すれば、配管材として金属材料を用いるのが望ましいと考えられる。
【0072】
上記実施形態では、尿素水供給管23の一部を二重配管構造により構成したが、これを変更し、三重配管構造により構成しても良い。つまり、図6に示すように、3つの径の異なる円筒管51,52,53を用い、それらを内外3重とする。そして、これら円筒管51〜53により形成される3つの通路のうち、最内側通路及び最外側通路を冷却水通路54,55(媒体流通通路)、それら冷却水通路54,55に挟まれた中間通路を尿素水通路56(還元剤通路)とする。本構成によれば、尿素水通路56内の尿素水(凍結尿素水)は、その内側の冷却水通路54内を流れるエンジン冷却水と外側の冷却水通路55内を流れるエンジン冷却水とにより解凍されるため、その解凍に要する時間の短縮を図ることができる。
【0073】
ここで、図6の三重配管構造において、2つの冷却水通路54,55を流れるエンジン冷却水の向きと尿素水通路56を流れる尿素水の向きとは全て同一でも良いし、エンジン冷却水と尿素水とで異なる方向としても良い。この場合特に、2つの冷却水通路54,55を流れるエンジン冷却水について、同冷却水の流れの向きを逆(互い違い)にすること、換言すれば双方向からエンジン冷却水を流入させるようにすることで、尿素水の解凍を一層早く完了することができる。つまり、三重配管部分における冷却水通路54,55の入口側と出口側とを比べると、入口側の方が凍結尿素水の解凍が早いと考えられる。この点上記のようにエンジン冷却水を双方向で流入させることにより、三重配管部分でその両端部から尿素水を解凍させることができ、配管全体の尿素水についてその解凍を早めることができる。
【0074】
上記実施形態では、複数の通路を集合させて設けた通路集合管構造として、複数の通路を多重に設けた多重配管構造(二重、三重配管構造)を採用したが、これ以外の構造も採用可能である。つまり、図7の(a)に示すように、断面円筒状の配管61内に、内部通路を二つに分割する隔壁62を設け、同配管61内に形成される2つの通路のうち一方を尿素水通路63、他方を冷却水通路64とする。また、図7の(b)に示すように、配管61内に、2つの隔壁62A,62Bを設け、同配管61内に形成される3つの通路のうち1つを尿素水通路63、他の2つを冷却水通路64A,64Bとする。この場合特に、尿素水通路63を2つの冷却水通路64A,64Bで挟み、かつ冷却水通路64A,64Bのエンジン冷却水の流通方向をそれぞれ逆(互い違い)にすると良い。これらの構成であっても、前記同様、尿素水通路63内の尿素水(凍結尿素水)を効率良く解凍することができる。
【0075】
その他、複数の配管(尿素水配管、冷却水配管)を、それら各通路間で熱交換可能となるように束ねる構成であっても良い。なおこの場合、隣り合う配管同士は、互いが面接触するように設けられるのが望ましい。
【0076】
上記実施形態では、解凍用媒体としてエンジン冷却水を用いたが、これを以下のように変更しても良い。エンジンから排出される排気を解凍用媒体として用いる。具体的には、前記同様、尿素水供給管23の一部を二重配管構造により構成し、それにより形成される2つの通路の一方を尿素水通路、他方を排気通路とする。この場合、排気熱により尿素水(凍結尿素水)が解凍される。なお、排気はエンジン冷却水に比べて高温であるため、放熱部を介して二重配管部分に排気を導くようにしても良い。
【0077】
又は、空調装置用の冷媒を解凍用媒体として用いる。具体的には、前記同様、尿素水供給管23の一部を二重配管構造により構成し、それにより形成される2つの通路の一方を尿素水通路、他方を冷媒通路とする。この場合、冷媒の熱により尿素水(凍結尿素水)が解凍される。
【0078】
上述したように、三重配管構造を適用する場合には、媒体流通通路を構成する最内側通路及び最外側通路に、それぞれ異なる解凍用媒体を流通させるようにしても良い。例えば、最内側通路及び最外側通路のうち一方にエンジン冷却水を流通させ、他方に排気を流通させるようにする。
【0079】
上記実施形態では、尿素水供給管23に、同供給管23内の尿素水の温度を検出するための温度センサ(第2尿素水温度センサ26)を設け、その温度センサの検出結果に基づいて開閉弁36の開閉(すなわち、二重配管部分への冷却水循環のON/OFF)を制御したが、これを変更する。尿素水供給管23内の尿素水の温度検出に代えて、冷却水循環配管31内のエンジン冷却水の温度検出を行い、その検出結果に基づいて開閉弁36の開閉を制御する。つまり、エンジンの冷間始動時には、尿素水温度と冷却水温度とはほぼ一致する。そのため、尿素水温度検出手段として、冷却水温度センサを用いることが可能となる。
【0080】
冷却水循環配管31により循環されるエンジン冷却水を尿素水添加弁15に導く構成としても良い。具体的には、冷却水循環配管31の途中に分岐配管を設け、その分岐配管を尿素水添加弁15に接続する。そして、エンジン運転時において、冷却水循環配管31及び分岐配管を通じて尿素水添加弁15に供給されるエンジン冷却水により、尿素水添加弁15の冷却を図ることとする。
【0081】
尿素水タンク21内にヒータを設け、そのヒータにより同タンク21内の尿素水(凍結尿素水)を解凍する構成とすることも可能である。
【0082】
上記実施形態では、尿素水タンク21と尿素水供給管23との両方について、エンジン冷却水等による尿素水解凍手段(タンク加熱部H1、尿素水配管加熱部H2)を設けたが、これを変更し、尿素水供給管23にのみ設ける構成としても実現できる。
【0083】
尿素水添加弁として、エアアシスト式の添加弁を用いることも可能である。具体的には、コンプレッサ(車載コンプレッサ)で圧縮された圧縮空気を尿素水供給系に導き、その圧縮空気により尿素水を微粒化する構成とする。ちなみに、大型トラック等においては、ブレーキ圧を調整するためにエア供給源を搭載しているものもあるため、これをエアアシストのためのエア供給源として利用すると良い。
【0084】
現状においては、車載ディーゼルエンジン用の尿素SCRシステムとしての需要を主に実用化が検討されているが、他のエンジン、例えばガソリンエンジン(火花点火式エンジン)用の尿素SCRシステムとしても実用化は可能である。また、尿素水以外の還元剤を用いる排気浄化システムにおいても本発明を同様に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】発明の実施の形態における尿素SCRシステムの概略を示す構成図。
【図2】二重配管部分の構成を示す斜視図。
【図3】エンジン始動直後における尿素水の状態変化を説明するためのタイムチャート。
【図4】開閉弁の開閉制御に関する処理手順を示すフローチャート。
【図5】別の実施形態において二重配管構造を示す斜視図。
【図6】別の実施形態において三重配管構造を示す斜視図。
【図7】別の実施形態において通路集合管構造を示す斜視図。
【符号の説明】
【0086】
11…排気管、12…DPF、13…SCR触媒(排気浄化用触媒)、15…尿素水添加弁(還元剤添加弁)、21…尿素水タンク(還元剤容器)、22…尿素水ポンプ、23…尿素水供給管(還元剤供給管)、26…第2尿素水温度センサ、31…冷却水循環配管、32…開閉弁、34…尿素水通路(還元剤通路)、35…冷却水通路(媒体流通通路)、36…開閉弁、40…ECU、61…配管、62(62A,62B)…隔壁、63…尿素水通路、64(64A,64B)…冷却水通路、E…エンジン本体、H1…タンク加熱部、H2…尿素水配管加熱部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤容器内に貯えられた液状の還元剤を還元剤通路を通じて還元剤添加弁に供給し、その還元剤添加弁によりエンジンの排気通路内に還元剤を添加することで、当該排気通路内であって還元剤添加弁よりも下流側に設けられた排気浄化用触媒にて還元剤の添加に基づく特定の排気浄化反応を促進させるようにしたエンジンの排気浄化装置において、
前記還元剤通路を、複数の通路を集合させて設けた通路集合管により構成するとともに、前記複数の通路のうち前記還元剤通路以外の通路を、還元剤を解凍するための解凍用媒体を流通させる媒体流通通路としたことを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項2】
前記通路集合管は、前記複数の通路を内外多重に設けた多重配管である請求項1に記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項3】
エンジンを冷却するためのエンジン冷却水を前記解凍用媒体として用い、そのエンジン冷却水を前記媒体流通通路に導く構成とした請求項1又は2に記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項4】
前記エンジンから排出される排気を前記解凍用媒体として用い、その排気を前記媒体流通通路に導く構成とした請求項1又は2に記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項5】
空調装置用の冷媒を前記解凍用媒体として用い、その冷媒を前記媒体流通通路に導く構成とした請求項1又は2に記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項6】
前記還元剤通路内における還元剤の温度を検出する温度検出手段と、
該検出した還元剤の温度が、還元剤反応温度に基づき設定した所定の温度域まで上昇した場合に、前記媒体流通通路における解凍用媒体の流通を停止させる流通停止手段と、
を備えた請求項1乃至5のいずれかに記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項7】
前記還元剤添加弁付近であってかつ同添加弁を通じて前記排気通路から排気熱が伝達される排気受熱部位を除く部位について、前記還元剤通路を前記通路集合管により構成した請求項1乃至6のいずれかに記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項8】
前記媒体流通経路の実質的な通路長が前記還元剤通路の通路長よりも長くなるようにして前記通路集合管を構成した請求項1乃至7のいずれかに記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項9】
前記還元剤通路を内側通路、前記媒体流通通路を外側通路としてこれら各通路を内外二重に設け、かつ前記還元剤通路を形成する還元剤供給管の周りに螺旋状に媒体流通通路が形成されるようにして前記通路集合管を構成した請求項8に記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項10】
前記通路集合管に、前記複数の通路として1つの還元剤通路と2つの媒体流通通路とを集合させて設け、前記2つの媒体流通通路において前記解凍用媒体の各々の流通方向を互い違いにした請求項1乃至9のいずれかに記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項11】
前記通路集合管としての多重配管を、3つの通路を有する三重構造とし、該3つの通路のうち最内側通路及び最外側通路を前記媒体流通通路、それら最内側通路及び最外側通路に挟まれた中間通路を前記還元剤通路とした請求項1乃至9のいずれかに記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項12】
前記最内側通路及び前記最外側通路において前記解凍用媒体の各々の流通方向を互い違いにした請求項11に記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項13】
前記解凍用媒体を、前記通路集合管部分以外に、前記還元剤容器にも導く構成とした請求項1乃至12のいずれかに記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項14】
前記還元剤は尿素水溶液であり、前記排気浄化用触媒は、尿素水溶液から生成されるアンモニアによりNOxを還元するNOx還元反応を前記排気浄化反応とし、そのNOx還元反応を促進するものである請求項1乃至13のいずれかに記載のエンジンの排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−101535(P2008−101535A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284628(P2006−284628)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】