説明

エンジンの異常検出装置

【課題】減圧弁の閉弁固着をより的確に検出することのできるエンジンの異常検出装置を提供する。
【解決手段】電子制御ユニット8は、エンジン停止後に減圧弁6の開弁を指令するとともに、その開弁指令前の単位時間当りのレール圧の低下量と、その開弁指令後の単位時間当りのレール圧の低下量とを検出し、それらの間に有意な差が認められなければ、減圧弁6の閉弁固着有りと判定することで、減圧弁6の開弁以外の要因によるレール圧の低下の有無に拘わらず、減圧弁6の閉弁固着の有無を的確に判定できるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの燃料系から燃料を排出して同燃料系の燃料圧力を低下させる減圧弁の閉弁固着を異常として検出するエンジンの異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、高圧燃料を蓄圧するコモンレールを備え、このコモンレールを介してエンジンに燃料を噴射供給する蓄圧式ディーゼルエンジンが実用されている。近年、こうした蓄圧式ディーゼルエンジンでは、噴射応答性の向上や噴霧微粒化の促進などを目的として燃料の高圧化が進められている。そして、燃料の高圧化に伴い、コモンレールに蓄圧された燃料の圧力(レール圧)の制御精度を向上が要望されている。レール圧の制御は、燃料を加圧してコモンレールに供給する高圧燃料ポンプの圧送量の制御に加え、コモレールから燃料を排出する減圧弁の制御を通じて行われる。
【0003】
ところで減圧弁には、例えばソレノイドへの通電により発生する電磁吸引力を利用して、コモンレールの内部をリリーフ流路に開放するノーマリークローズ型の弁が採用されている。こうした減圧弁では、ソレノイドへの通電を遮断しても、減圧弁が完全に閉弁しなくなる閉弁動作異常が発生することがある。そして従来、こうした減圧弁の閉弁動作異常を検出するエンジンの異常検出装置として、特許文献1に記載の装置が知られている。同文献に記載の異常検出装置では、減圧弁の燃料逃し量の性能規格の上限値とインジェクターの燃料リーク量の性能規格の上限値との和を判定減圧量として設定し、エンジン停止後に減圧弁を開弁した後のレール圧の低下量がその判定減圧量以上となることをもって減圧弁の閉弁動作異常と判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−257883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、減圧弁の異常には、上述の閉弁動作異常以外にも、弁体の固着などによってソレノイドへの通電を行っても減圧弁が開弁しなくなる、閉弁固着による異常が有る。こうした減圧弁の閉弁固着は、エンジン停止後に減圧弁に開弁を指令しても、レール圧力が低下しないことをもって検出することができる。しかしながら、レール圧の低下量を増大させる要因には、減圧弁の開弁以外にも、インジェクターの弁部への異物の噛み込みや、高圧燃料ポンプのスピル弁への異物の噛み込みによる燃料系からの燃料リークがあり、それらの発生時には減圧弁が開弁せずともレール圧が低下してしまう。そのため、減圧弁の閉弁固着とレール圧低下を増大させる他の異常とが重なったときには、減圧弁の閉弁固着を適切に検出することができなくなってしまう。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、減圧弁の閉弁固着をより的確に検出することのできるエンジンの異常検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果を説明する。
上記課題を解決するため、エンジンの燃料系から燃料を排出して同燃料系の燃料圧力を低下させる減圧弁の閉弁固着を検出するエンジンの異常検出装置としての請求項1に記載の発明は、エンジン停止後に減圧弁の開弁を指令するとともに、その開弁指令前の単位時間当りの燃料圧力の低下量と、その開弁指令後の単位時間当りの燃料圧力の低下量とを検出し、それらの検出結果に基づいて減圧弁の閉弁固着の有無を判定している。
【0008】
インジェクターの弁部への異物の噛み込みや、高圧燃料ポンプのスピル弁への異物の噛み込みによる燃料系からの燃料リークが発生しているときには、減圧弁の開閉弁に拘わらず、燃料系の燃料圧力の低下が生じる。そうした場合、減圧弁の開弁前には、そうした燃料リークによるの燃料圧力の低下が生じ、減圧弁の開弁後には、燃料リークによる燃料圧力の低下と、減圧弁の開弁による燃料圧力の低下とが生じることになる。そのため、減圧弁の開弁以外の要因による燃料圧力の低下が生じているときにも、減圧弁の開弁指令前の単位時間当りの燃料圧力の低下量と、その開弁指令後の単位時間当りの燃料圧力の低下量とを比較すれば、減圧弁の開弁に伴う燃料圧力の低下量の増大が生じたか否かを、すなわち、開弁指令に応じて減圧弁が実際に開弁されたか否かを確認することができる。したがって、上記構成によれば、減圧弁の閉弁固着をより的確に検出することができる。
【0009】
上記課題を解決するため、エンジンの燃料系から燃料を排出して同燃料系の燃料圧力を低下させる減圧弁の閉弁固着を検出するエンジンの異常検出装置としての請求項2に記載の発明は、エンジン停止後に減圧弁開弁を指令するとともに、その開弁指令前の単位時間当りの燃料圧力の低下量と、その開弁指令後の単位時間当りの燃料圧力の低下量とを検出し、検出した単位時間当りの燃料圧力の低下量が減圧弁の開弁指令の前後で変化しないときに減圧弁が閉弁固着していると判定している。
【0010】
インジェクターの弁部への異物の噛み込みや、高圧燃料ポンプのスピル弁への異物の噛み込み等による燃料系からの燃料リークが発生しているときには、減圧弁の開閉弁に拘わらず、燃料系の燃料圧力の低下が生じている。そうした場合にも、指令に応じて減圧弁が実際に開弁されれば、燃料圧力の低下速度は、すなわち単位時間当りの燃料圧力の低下量は増大する筈である。よって、減圧弁の開弁が指令されても、単位時間当りの燃料圧力の低下量が変化しなかったのであれば、開弁指令に拘らず、減圧弁が開弁されなかったと、すなわち減圧弁が閉弁固着していると判断することができる。したがって、上記構成によれば、減圧弁の閉弁固着をより的確に検出することができる。
【0011】
上記課題を解決するため、エンジンの燃料系から燃料を排出して同燃料系の燃料圧力を低下させる減圧弁の閉弁固着を検出するエンジンの異常検出装置としての請求項3に記載の発明は、エンジン停止後に減圧弁の開弁を指令するとともに、その開弁指令前の単位時間当りの燃料圧力の低下量と、その開弁指令後の単位時間当りの燃料圧力の低下量とを検出し、それら検出値の差に基づいて減圧弁の閉弁固着の有無を判定している。
【0012】
インジェクターの弁部への異物の噛み込みや、高圧燃料ポンプのスピル弁への異物の噛み込み等による燃料系からの燃料リークが発生しているときには、減圧弁の開閉弁に拘わらず、燃料系の燃料圧力の低下が生じている。そうした場合にも、指令に応じて減圧弁が実際に開弁されれば、燃料圧力の低下速度は、すなわち単位時間当りの燃料圧力の低下量は、開弁指令の前よりも増大する筈である。よって、開弁指令前の単位時間当りの燃料圧力の低下量と、その開弁指令後の単位時間当りの燃料圧力の低下量の差がほぼ0であれば、開弁指令に拘らず、減圧弁が開弁されなかったと、すなわち減圧弁が閉弁固着していると判断することができる。したがって、上記構成によれば、減圧弁の閉弁固着をより的確に検出することができる。
【0013】
上記課題を解決するため、エンジンの燃料系から燃料を排出して同燃料系の燃料圧力を低下させる減圧弁の閉弁固着を検出するエンジンの異常検出装置としての請求項4に記載の発明は、エンジン停止後に前記減圧弁の開弁を指令するとともに、その開弁指令前の単位時間当りの燃料圧力の低下量と、その開弁指令後の単位時間当りの燃料圧力の低下量とを検出し、それら検出値の比に基づいて減圧弁の閉弁固着の有無を判定している。
【0014】
インジェクターの弁部への異物の噛み込みや、高圧燃料ポンプのスピル弁への異物の噛み込み等による燃料系からの燃料リークが発生しているときには、減圧弁の開閉弁に拘わらず、燃料系の燃料圧力の低下が生じている。そうした場合にも、指令に応じて減圧弁が実際に開弁されれば、燃料圧力の低下量は、開弁指令の前よりも増大する筈である。よって、開弁指令前の単位時間当りの燃料圧力の低下量と、その開弁指令後の単位時間当りの燃料圧力の低下量との比がほぼ1となっていれば、開弁指令に拘らず、減圧弁が開弁されなかったと、すなわち減圧弁が閉弁固着していると判断することができる。したがって、上記構成によれば、減圧弁の閉弁固着をより的確に検出することができる。
【0015】
なお、こうした本発明のエンジンの異常検出装置は、例えば請求項5によるような、蓄圧式ディーゼルエンジンのコモンレールから燃料を排出する弁として減圧弁が構成されたエンジンへの適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のエンジンの異常検出装置の一実施の形態についてその適用対象となる蓄圧式ディーゼルエンジンの燃料系の構成を模式的に示す略図。
【図2】同実施の形態に採用される閉弁固着判定ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図3】燃料リークが無いときの同実施の形態の閉弁固着判定時の制御態様の一例を示すタイムチャート。
【図4】燃料リークが有るときの同実施の形態の閉弁固着判定時の制御態様の一例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のエンジンの異常検出装置を具体化した一実施の形態を、図1〜図4を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態の異常検出装置は、蓄圧式ディーゼルエンジンに適用されるものとなっている。
【0018】
まず、図1を参照して、本実施の形態の異常検出装置の適用対象となる蓄圧式ディーゼルエンジンの燃料系の構成を説明する。
燃料タンク1内の燃料は、高圧燃料ポンプ2によって汲み上げられる。クランクシャフトにより駆動される高圧燃料ポンプ2は、燃料タンク1から汲み上げた燃料を加圧して吐出する。高圧燃料ポンプ2が吐出した高圧燃料は、コモンレール4に圧送される。なお、高圧燃料ポンプ2にはスピル弁が設けられており、そのスピル弁によって余剰した燃料が逆止弁3を介して燃料タンク1に戻されるようになっている。
【0019】
蓄圧配管であるコモンレール4には、その内部の燃料圧力、すなわちレール圧を検出するレール圧センサー5が設けられている。またコモンレール4には、減圧弁6が設置され、その減圧弁6の開弁に応じてコモンレール4内から排出された燃料は、逆止弁3を介して燃料タンク1に戻される。
【0020】
コモンレール4には、各気筒のインジェクター7が接続されており、コモンレール4内に蓄圧された高圧燃料が各気筒のインジェクター7に分配供給される。そしてインジェクター7からは、ディーゼルエンジンの燃焼室に燃料が噴射供給されるようになっている。なお、インジェクター7において余剰した燃料は、逆止弁3を介して燃料タンク1に戻されるようになっている。
【0021】
こうした燃料系を備える蓄圧式ディーゼルエンジンは、エンジン制御用の電子制御ユニット8により制御されている。電子制御ユニット8は、エンジン制御に係る各種演算処理を行う中央演算処理装置(CPU)、エンジン制御用のプログラムやデータが記憶された読込専用メモリー(ROM)、CPUの演算結果やエンジン各部に設けられたセンサーの検出結果等を一時的に記憶するランダムアクセスメモリー(RAM)を備えている。そして電子制御ユニット8は、レール圧センサー5の検出結果に基づいて、高圧燃料ポンプ2の燃料圧送量を調整するとともに、減圧弁6を通じてコモンレール4から排出される燃料量を調整することで、目標値となるようにレール圧を制御する。また電子制御ユニット8は、インジェクター7の電磁弁に指令信号を送ることで、燃料噴射時期と燃料噴射量とを制御する。
【0022】
以上のように構成された蓄圧式ディーゼルエンジンにおいて、電子制御ユニット8は、エンジン停止時に、減圧弁6の閉弁固着の有無の検出を実施する。この検出は、図2に示す閉弁固着判定ルーチンの処理を通じて行われる。なお、同ルーチンの処理は、電子制御ユニット8によって、イグニッションスイッチがオフとされた時点より開始されるものとなっている。なお、イグニッションスイッチがオフとされた時点の減圧弁6は、閉弁されている。
【0023】
さて、本ルーチンの処理が開始されると、まずステップS101において燃料圧力(レール圧)の単位時間当りの低下量、すなわち燃料圧力の低下速度の検出が行われる。そしてその検出が完了すると、ステップS102において、減圧弁6に対して開弁指令が出力される。そしてステップS103において、開弁指令の出力後、再び燃料圧力(レール圧)の単位時間当りの低下量、すなわち低下速度の検出が行われる。
【0024】
こうして開弁指令前後の燃料圧力の低下速度の検出が完了すると、ステップS104において、開弁指令前後の燃料圧力の低下速度に変化が認められたか否かが確認される。開弁指令前後の燃料圧力の低下速度の変化の有無は、例えば開弁指令前後の燃料圧力の低下速度の差が既定の判定値以上であるか否か、あるいは開弁指令前後の燃料圧力の低下速度の比が既定の判定値以上であるか否かによって確認することができる。
【0025】
ここで、開弁指令前後の燃料圧力の低下速度に変化が認められなければ(S104:YES)、ステップS105において減圧弁6の閉弁固着有りとの判定がなされた後、本ルーチンの処理が終了される。一方、開弁指令前後の燃料圧力の低下速度に有意な変化が認められれば(S104:NO)、ステップS106において減圧弁6の閉弁固着無しとの判定がなされた後、本ルーチンの処理が終了される。
【0026】
続いて、以上のように構成された本実施の形態の作用を説明する。
まず、図3を参照して、インジェクター7の電磁弁の弁部への異物の噛み込みや、高圧燃料ポンプ2のスピル弁への異物の噛み込みによる燃料系からの燃料リークが発生していないときの制御態様を説明する。
【0027】
図3の時刻t0において、イグニッションスイッチ(IGスイッチ)がオフとされると、その時点から所定時間TAが経過するまでの燃料圧力(レール圧)の低下量ΔPrefから、単位時間当りの燃料圧力の低下量、すなわち低下速度ΔPref/TAの計測が行われる。イグニッションスイッチがオフとされた時点では、減圧弁6は閉弁されており、燃料リークが無ければ、コモンレール4内の燃料圧力は維持される。したがって、このときの燃料圧力の低下量ΔPref、及び低下速度ΔPref/TAは共に「0」となる。
【0028】
その計測後の時刻t1においては、減圧弁6に対して開弁指令が出力される。そして、その時点から所定時間TBが経過するまでの燃料圧力(レール圧)の低下量ΔPから、単位時間当りの燃料圧力の低下量、すなわち低下速度ΔP/TAの計測が行われる。
【0029】
ここで減圧弁6に異常が無く、上記の開弁指令に対して減圧弁6が開弁されると、コモンレール4内から燃料が排出されてその内部の燃料圧力(レール圧)は、低下していく。したがって、このときには、開弁指令前後の燃料圧力の低下速度に有意な差が生じることになり、その結果、電子制御ユニット8によって減圧弁6の閉弁固着無しとの判定がなされるようになる。
【0030】
一方、減圧弁6に閉弁固着が発生している場合には、開弁指令がなされても、減圧弁6は閉じたままであり、コモンレール4内から燃料が排出されず、その内部の燃料圧力(レール圧)はそのまま維持される。したがって、このときには、開弁指令後も燃料圧力の低下速度は「0」のままとなり、開弁指令前後の燃料圧力の低下速度に有意な差は生じない。そのため、このときには、電子制御ユニット8によって減圧弁6の閉弁固着有りとの判定がなされるようになる。
【0031】
次に、図4を参照して、インジェクター7の電磁弁の弁部への異物の噛み込みや、高圧燃料ポンプ2のスピル弁への異物の噛み込みによる燃料系からの燃料リークが発生しているときの制御態様を説明する。
【0032】
図4の時刻t0において、イグニッションスイッチ(IGスイッチ)がオフとされると、この場合にも、その時点から所定時間TAが経過するまでの燃料圧力(レール圧)の低下量ΔPrefから、単位時間当りの燃料圧力の低下量、すなわち低下速度ΔPref/TAの計測が行われる。この場合には、インジェクター7や高圧燃料ポンプ2での燃料リークのため、コモンレール4内の燃料圧力(レール圧)は、時間と共に低下していく。したがって、このときの燃料圧力の低下速度ΔPref/TAは、正の値を取ることになる。
【0033】
その計測後の時刻t1においては、減圧弁6に対して開弁指令が出力される。そして、その時点から所定時間TBが経過するまでの燃料圧力(レール圧)の低下量ΔPから、単位時間当りの燃料圧力の低下量、すなわち低下速度ΔP/TAの計測が行われる。
【0034】
ここで減圧弁6に異常が無く、上記の開弁指令に対して減圧弁6が開弁されると、コモンレール4内から燃料が排出される。この場合には、インジェクター7や高圧燃料ポンプ2での燃料リークに減圧弁6からの燃料排出が加わるため、燃料圧力の低下速度は、減圧弁6の開弁指令前に比して高くなる。したがって、このときには、開弁指令前後の燃料圧力の低下速度に有意な差が生じることになり、その結果、電子制御ユニット8によって減圧弁6の閉弁固着無しとの判定がなされるようになる。
【0035】
一方、減圧弁6に閉弁固着が発生している場合には、開弁指令がなされても、減圧弁6は閉じたままであり、コモンレール4内からは燃料が排出されないようになる。したがって、この場合には、開弁指令後も、インジェクター7や高圧燃料ポンプ2での燃料リークのみにより、燃料圧力が低下することとなり、開弁指令後も燃料圧力の低下速度は開弁指令前から変化しないことになる。したがって、このときには、開弁指令前後の燃料圧力の低下速度に有意な差が生じることはなく、その結果、電子制御ユニット8によって減圧弁6の閉弁固着有りとの判定がなされるようになる。
【0036】
以上の本実施の形態のエンジンの異常検出装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、エンジン停止後に減圧弁6の開弁を指令するとともに、その開弁指令前の単位時間当りの燃料圧力の低下量と、その開弁指令後の単位時間当りの燃料圧力の低下量とを検出し、それらの検出結果に基づいて減圧弁6の閉弁固着の有無を判定している。より具体的には、開弁指令前の単位時間当りの燃料圧力の低下量と、開弁指令後の単位時間当りの燃料圧力の低下量とを検出し、検出した単位時間当りの燃料圧力の低下量が減圧弁の開弁前後で変化しないときに減圧弁が閉弁固着していると判定している。そのため、インジェクター7の電磁弁の弁部への異物の噛み込みや、高圧燃料ポンプ2のスピル弁への異物の噛み込み等による燃料系からの燃料リークが発生しているか否かに拘わらず、減圧弁6が閉弁固着の有無を的確に判定することができる。したがって、本実施の形態によれば、減圧弁の閉弁固着をより的確に検出することができる。
【0037】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施の形態では、燃料圧力の低下量から燃料圧力の低下速度を算出していたが、開弁指令前後の同じ長さの時間における燃料圧力の低下量を計測すれば、それらの低下量を直接比較することで、減圧弁6の閉弁固着の有無を判定することができる。すなわち、図3、4の時間TA,TBを同じ長さとした場合には、その期間の燃料圧力の低下量をそのまま単位時間当りの燃料圧力の低下量として用いることが可能であり、低下速度の計算を省略することができる。
【0038】
・上記実施の形態では、燃料系の燃料圧力としてレール圧を使用していたが、燃料系の他の部位の燃料圧力、例えばインジェクター7内の燃料圧力などを用いても、減圧弁6の閉弁固着の有無の判定を同様に行うことができる。
【0039】
・上記実施の形態では、蓄圧式ディーゼルエンジンのコモンレール4から燃料を排出する弁として減圧弁6が構成されていたが、燃料系から燃料を排出して同燃料系の燃料圧力を低下させる減圧弁であれば、燃料系のそれ以外の部位に減圧弁が設けられた減圧弁を備えるエンジンにも、本発明の異常検出装置を適用することはできる。
【0040】
・上記実施の形態では、蓄圧式ディーゼルエンジンに本発明の異常検出装置を適用した場合を説明したが、燃料系から燃料を排出して同燃料系の燃料圧力を低下させる減圧弁が設けられた燃料系を備えるエンジンであれば、それ以外のエンジンにも本発明は同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…燃料タンク、2…高圧燃料ポンプ、3…逆止弁、4…コモンレール、5…レール圧センサー、6…減圧弁、7…インジェクター、8…電子制御ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの燃料系から燃料を排出して同燃料系の燃料圧力を低下させる減圧弁の閉弁固着を検出するエンジンの異常検出装置において、
エンジン停止後に前記減圧弁の開弁を指令するとともに、その開弁指令前の単位時間当りの前記燃料圧力の低下量と、その開弁指令後の単位時間当りの前記燃料圧力の低下量とを検出し、それらの検出結果に基づいて前記減圧弁の閉弁固着の有無を判定する
ことを特徴とするエンジンの異常検出装置。
【請求項2】
エンジンの燃料系から燃料を排出して同燃料系の燃料圧力を低下させる減圧弁の閉弁固着を検出するエンジンの異常検出装置において、
エンジン停止後に前記減圧弁の開弁を指令するとともに、その開弁指令前の単位時間当りの前記燃料圧力の低下量と、その開弁指令後の単位時間当りの前記燃料圧力の低下量とを検出し、検出した単位時間当りの燃料圧力の低下量が前記減圧弁の開弁指令の前後で変化しないときに前記減圧弁が閉弁固着していると判定する
ことを特徴とするエンジンの異常検出装置。
【請求項3】
エンジンの燃料系から燃料を排出して同燃料系の燃料圧力を低下させる減圧弁の閉弁固着を検出するエンジンの異常検出装置において、
エンジン停止後に前記減圧弁の開弁を指令するとともに、その開弁指令前の単位時間当りの前記燃料圧力の低下量と、その開弁指令後の単位時間当りの前記燃料圧力の低下量とを検出し、それら検出値の差に基づいて前記減圧弁の閉弁固着の有無を判定する
ことを特徴とするエンジンの異常検出装置。
【請求項4】
エンジンの燃料系から燃料を排出して同燃料系の燃料圧力を低下させる減圧弁の閉弁固着を検出するエンジンの異常検出装置において、
エンジン停止後に前記減圧弁の開弁を指令するとともに、その開弁指令前の前記燃料圧力の単位時間当りの低下量と、その開弁指令後の単位時間当りの前記燃料圧力の低下量とを検出し、それら検出値の比に基づいて前記減圧弁の閉弁固着の有無を判定する
ことを特徴とするエンジンの異常検出装置。
【請求項5】
前記減圧弁は、蓄圧式ディーゼルエンジンのコモンレールから燃料を排出する弁として構成されてなる
請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジンの異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−19311(P2013−19311A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153088(P2011−153088)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】