エンジンカッター
【課題】 エンジンカッターの環境性能を改善する。
【解決手段】 手持式のエンジンカッターであって、円板状の回転刃と、回転刃を駆動する4ストロークエンジンを備えている。4ストロークエンジンを採用することで、未燃焼ガスの排出や燃料の消費を低減することができる。また、エンジンカッターは、エンジンへ供給される空気が通過するフィルタと、フィルタを通過した空気に燃料を混合するキャブレタと、フィルタ及びキャブレタを収容しているケーシングを備えている。フィルタとキャブレタは、それらを空気が通過する方向に沿って、一直線上に配置されている。この構造によると、エンジンカッターを大型化することなく、4ストロークエンジンを採用することができる。
【解決手段】 手持式のエンジンカッターであって、円板状の回転刃と、回転刃を駆動する4ストロークエンジンを備えている。4ストロークエンジンを採用することで、未燃焼ガスの排出や燃料の消費を低減することができる。また、エンジンカッターは、エンジンへ供給される空気が通過するフィルタと、フィルタを通過した空気に燃料を混合するキャブレタと、フィルタ及びキャブレタを収容しているケーシングを備えている。フィルタとキャブレタは、それらを空気が通過する方向に沿って、一直線上に配置されている。この構造によると、エンジンカッターを大型化することなく、4ストロークエンジンを採用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板状の回転刃をエンジンによって駆動するエンジンカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に手持式のエンジンカッター(カットオフソーとも称される)が開示されている。エンジンカッターは、円板状の回転刃と、回転刃を駆動するエンジンを備えており、例えば建築現場においてコンクリートや鉄骨材料の切断に用いられる。
従来のエンジンカッターでは、回転刃を駆動するエンジンとして、2ストローク型のエンジン(以下、2ストロークエンジンと称することがある)が採用されている。2ストロークエンジンは、他の形式のエンジンと比較すると、構造が単純でサイズも小さいという利点を有している。そのことから、手持式のエンジンカッターでは、2ストロークエンジンを採用することで、その小型化や低コスト化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−528792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その一方で、2ストロークエンジンは、例えば未燃焼ガスの排出量が多いといった問題点を有しており、自然環境に与える悪影響が比較的に大きいとされている。手持式のエンジンカッターにおいても、環境性能に対する要求は高まっており、2ストロークエンジンを採用した従来の製品では、要求される環境性能を高いレベルで満足することが難しくなっている。
【0005】
上述の実情を鑑み、本発明は、環境性能に優れたエンジンカッターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエンジンカッターは、手持式のエンジンカッターであって、円板状の回転刃と、その回転刃を駆動する4ストローク型のエンジンを備えている。ここで、4ストロークエンジンは、エンジンオイルが燃料とは別に供給される分離潤滑型のエンジンであることが好ましい。
【0007】
4ストローク型のエンジン(以下、4ストロークエンジンと称することがある)は、吸気ポートと排気ポートが動弁機構によって開閉されることから、当該ポートがピストンによって開閉される2ストローク型のエンジンと比較して、未燃焼ガスの排出が少なく、燃費効率が高いといった利点を持つ。従って、回転刃を駆動するエンジンに、4ストローク型のエンジンを採用することで、エンジンカッターの環境性能を顕著に高めることができる。特に、分離潤滑型のエンジンでは、多くのエンジンオイルがエンジン内で循環利用され、燃料とともに消費されるエンジンオイルの量が極めて少ないので、環境に与える負荷をより小さくすることができる。また、燃料やエンジンオイルの消費量が少なくなることで、ユーザが負担するランニングコストを抑えることもできる。さらに、発生する騒音が小さいなど、4ストロークエンジンの持つ多くの利点をユーザは享受することができる。
【0008】
エンジンカッターは、エンジンへ供給される空気が通過するフィルタと、そのフィルタを通過した空気に燃料を混合するキャブレタと、フィルタ及びキャブレタを収容しているケーシングをさらに備えることが好ましい。この場合、フィルタとキャブレタは、それらを空気が通過する方向に沿って、一直線上に配置されていることが好ましい。
【0009】
2ストロークエンジンでは、吸気ポートがシリンダブロックに設けられており、吸気ポートに接続されるキャブレタが、比較的に下方(クランクケース側)に位置することになる。そのことから、従来の2ストロークエンジンを採用したエンジンカッターでは、キャブレタへ送る空気をろ過するフィルタが、キャブレタの上方に配置されており、それによって、エンジンカッターの小型化が図られている(特許文献1参照)。
【0010】
一方、4ストロークエンジンでは、吸気ポートがシリンダヘッドに設けられており、吸気ポートに接続されるキャブレタが、比較的に上方(シリンダヘッド側)に位置することになる。そのことから、従来のエンジンカッターのように、フィルタをキャブレタの上方に配置する構造を採用すると、エンジンに対してフィルタが上方へ突出する位置関係となり、エンジンカッターの高さ寸法が大きくなってしまう。
そこで、上記したように、フィルタとキャブレタを、それらを空気が通過する方向に沿って、一直線上に配置することが有効となる。それにより、エンジンに対してフィルタが上方へ突出することが防止され、エンジンカッターの高さ寸法の増大が抑制されている。また、大型のフィルタを採用し、フィルタの集塵能力を高めることで、フィルタの目詰まりが起こり難くなる。
【0011】
上記したエンジンカッターは、ユーザが把持するグリップを備えることができる。この場合、フィルタとキャブレタとグリップは、エンジンを挟んで回転刃とは反対側に位置しているとともに、エンジンカッターを水平面に載置したときに、フィルタの少なくとも一部がグリップの上方に位置することが好ましい。
上記したグリップは、従来のエンジンカッターにも設けられており、しばしば後方グリップと称される(リアグリップ、後方ハンドル、リアハンドルとも称される)。従来のエンジンカッターでは、エンジンカッターの本体から後方へ当該グリップが突出しており、当該グリップの上方に大きなデッドスペースが生じていた。それに対し、上記した本技術に係る構造では、フィルタの少なくとも一部を、デッドスペースであったグリップの上方に配置されている。それにより、エンジンカッターの外形寸法を大きくすることなく、より大型のフィルタを搭載することができる。大型のフィルタを搭載することで、フィルタの目詰まりが起こり難くなり、例えばフィルタの清掃頻度を少なくすることができる。
【0012】
上記したエンジンカッターは、プレフィルタをさらに備えることが好ましい。この場合、プレフィルタが、エンジンカッターを水平面に載置したときに、前記したフィルタの上方に位置するとともに、エンジンへ供給される空気が、プレフィルタを通過した後に、その流れ方向を少なくとも180度変化させて、フィルタを通過することが好ましい。
この構造によると、プレフィルタ、フィルタ及びキャブレタを、コンパクトに配置することができる。
【0013】
上記に加え、エンジンカッターを水平面に載置したときに、エンジンが鉛直方向に対してキャブレタ側に傾くように、エンジンが配置されていることが好ましい。
このようなエンジンの配置によると、エンジンに接続されるキャブレタ及びフィルタを、より下方に位置させることが可能となり、エンジンカッターの高さ寸法をさらに小さくすることができる。加えて、4ストロークエンジンは、シリンダヘッドの上部に動弁機構を有し、かつ、クランクケースの下部にオイルパンを有することから、2ストロークエンジンに比して高さ寸法が比較的に大きく、エンジンカッターの大型化を招くおそれがある。この点に関しても、上記のようにエンジンを傾けて配置すれば、4ストロークエンジンを有するエンジンカッターを、小型に設計することが可能となる。
【0014】
エンジンカッターは、フィルタとキャブレタの間に介在し、フィルタを通過した空気をキャブレタに案内するフィルタブラケットをさらに備えることが好ましい。この場合、前記したケーシングは、フィルタブラケットが固定されているケーシング本体と、そのケーシング本体に取り付けられてフィルタブラケット及びフィルタを覆うフィルタカバーを有することが好ましい。そして、フィルタブラケット及びフィルタカバーは、共通の締付部材によって、前記ケーシング本体に固定されていることが好ましい。
この構造によると、ケーシング本体にフィルタブラケットとフィルタカバーを個々に固定する構造に比して、構造の簡素化や部品点数の削減が可能となり、エンジンカッターのさらなる小型化を図ることができる。
【0015】
ケーシングは、キャブレタを挟んでフィルタブラケットが組み付けられたキャブレタマウントをさらに有することが好ましい。この場合、キャブレタマウントは、弾性部材を介してケーシング本体に取り付けられることが好ましい。なお、ここでいう弾性部材は、弾性を有する材料で形成された部材を広く意味する。弾性部材は、ケーシング本体に対してキャブレタマウントを変位可能に支持する部材であり、その形状は特に限定されない。
【0016】
仮に、キャブレタマウントがケーシング本体に一体に形成されているとする。この場合、フィルタブラケット、ケーシング本体、キャブレタマウントに寸法誤差が生じていれば、キャブレタマウントに組み付けたフィルタブラケットを、ケーシング本体に正しく固定することができなくなる。それに対して、キャブレタマウントがケーシング本体に対して変位可能に支持されていれば、フィルタブラケット、ケーシング本体、キャブレタマウントに寸法誤差が生じている場合でも、キャブレタマウントが受動的に変位することによって、フィルタブラケットをケーシング本体に正しく固定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るエンジンカッターによれば、未燃焼ガスの排出量や燃料の消費量を削減することができ、自然環境への負荷を有意に抑制することができる。また、上記した構成部品の配置や構造により、2ストロークエンジンに比してサイズの大きい4ストロークエンジンを採用した場合でも、比較的に小型のエンジンカッターを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例のエンジンカッターを右方(駆動側)から見た図。
【図2】実施例のエンジンカッターを上方から見た図。
【図3】図1中のIII−III線における断面図。
【図4】エンジンカッターの本体を示す部分断面図。
【図5】ケーシング本体とフィルタブラケットとフィルタカバーの組付構造を示す図。
【図6】ケーシング本体とフィルタブラケットとフィルタカバーの組付構造を他の視点から示す図。
【図7】フィルタブラケットとキャブレタとキャブレタマウントの組付構造を示す図。
【図8】キャブレタのアームとキャブレタマウントの凹部との位置関係を示す図。
【図9】フィルタブラケットとキャブレタとキャブレタマウントの接続構造を示す図。
【図10】フィルタブラケットとキャブレタとキャブレタマウントの接続構造を他の視点から示す図。
【図11】オイルセパレートとブリーズ管がシール部材の貫通孔を介して互いに接続された様子を示す図。
【図12】スロットルレバーとスイッチレバーの組付構造を示す図。
【図13】スロットルレバーとスイッチレバーの組付構造を示す分解図。
【図14】ガードを右方から見た図。
【図15】ガードを前方から見た図。
【図16】ガードを下方から見た図。
【図17】図14中のXVII−XVII線における断面図。
【図18】図16中のXVIII−XVIII線における断面図。
【図19】ワークの表面に対してエンジンカッターを最大に傾けた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照し、本発明の実施例であるエンジンカッターについて説明する。図1は、エンジンカッター10の側面図を示しており、図2は、エンジンカッター10の平面図を示している。また、図3は、図1におけるIII−III線断面図を示している。エンジンカッター10は、円板状の回転刃12と、その回転刃12を駆動する本体14を備えている。回転刃12は、石質材料や金属材料を切断可能であり、エンジンカッター10は、例えば建築現場においてコンクリートや鉄骨材料の切断に用いられる。
【0020】
図1、図2に示すように、エンジンカッター10を水平面Hに載置すると、回転刃12は、本体14に対して水平方向の一方側に位置する。以下の説明では、エンジンカッター10を水平面Hに載置した状態を基準とし、本体14に対して回転刃12が位置する水平方向の一方側を前方と称し、その反対方向を後方と称する。また、鉛直上方を単に上方と称し、鉛直下方を単に下方と称する。また、図2に示すように、前後方向に垂直な水平方向の一方側を左方と称し、前後方向に垂直な水平方向の他方側を右方と称する。例えば、回転刃12については、本体14の前方に位置し、その回転軸は左右方向に伸びており、水平面Hの上方において水平面Hに垂直となっている、と表現される。
【0021】
本体14には、前方ハンドル16と後方グリップ28が設けられている。前方ハンドル16は、パイプ材で形成されており、ユーザによって把持されるハンドルであるとともに、本体14の強度を確保するフレームも兼ねている。前方ハンドル16は、本体14の前方部分において、本体14の上方から左方へと伸びている。後方グリップ28は、本体14の後方下部に設けられている。後方グリップ28は、本体14からループ状に伸びている。後方グリップ28には、スロットルレバー30等の操作スイッチが設けられている。また、後方グリップ28の下部には、後方足部38が設けられている。
【0022】
通常、ユーザは、左手によって前方ハンドル16を把持し、右手によって後方グリップ28を把持して、エンジンカッター10を保持する。そして、ワークに対してエンジンカッター10を移動させ、回転刃12によってワークを切断する。このように、本実施例のエンジンカッター10は、ユーザによって保持される手持式のエンジンカッターである。ここで、上記のようにユーザがエンジンカッター10を保持した時、ユーザは本体14の左方に位置することになる。通常、ユーザはエンジンカッター10の左方に位置することから、エンジンカッター10の左方側はユーザ側とも称される。
【0023】
本体14は、回転刃12を駆動するためのエンジン18を備えている。エンジン18は、4ストローク型のレシプロエンジンである。4ストローク型のエンジン(以下、4ストロークエンジンと称することがある)は、吸気ポートと排気ポートが動弁機構によって開閉されることから、当該ポートがピストンによって開閉される2ストローク型のエンジンと比較して、未燃焼ガスの排出が少なく、燃費効率が高い(燃料消費量が少ない)といった利点を持つ。エンジンカッター10では、4ストローク型のエンジン18を採用することで、その環境性能が顕著に高められている。
【0024】
エンジン18は、分離潤滑型の4ストロークエンジンであるため、混合潤滑型の2ストロークエンジンとは異なり、燃料とは別にエンジンオイルを供給する必要がある。また、そのエンジンオイルは、適当な頻度で補充、交換される必要がある。そのため、エンジン18には、エンジンオイルが給油されるオイル給油口18aと、エンジンオイルを排出するオイル排出口18bが設けられている。
【0025】
なお、エンジン18は、分離潤滑型の4ストロークエンジンに限られず、混合潤滑型の4ストロークエンジンであってもよい。ただし、分離潤滑型の4ストロークエンジンは、多くのエンジンオイルがエンジン内で循環利用され、燃料とともに消費される量が極めて少ないので、混合潤滑型の4ストロークエンジンと比較して、環境性能に優れるといった利点を持つ。さらに、エンジンオイルの消費量が少なくなることで、ユーザが負担するランニングコストを抑えることもできる。また、混合潤滑型の4ストロークエンジンを採用すると、エンジンカッター10が長期に亘って使用されなかった場合に、キャブレタ内で燃料が揮発してエンジンオイルのみが残留することになり、キャブレタが詰まってしまうことがある。この点に関して、分離潤滑型の4ストロークエンジンを採用すると、そのような問題が起こりにくいという効果も期待することができる。
【0026】
本体14は、回転刃12が取り付けられたカッターアーム56を備えている。カッターアーム56は、本体14の右方側に設けられており、本体14の前方に向けて伸びている。図3に示すように、カッターアーム56は、エンジン18に固定された第1プレート56bと、第1プレート56bに固定された第2プレート56cを備えており、第2プレート56cには、回転刃12を回転可能に支持する工具シャフト56eが設けられている。
【0027】
また、カッターアーム56は、エンジン18の駆動軸(クランクシャフト)18cに固定された駆動プーリ56aと、工具シャフト56eに固定された従動プーリ56fと、駆動プーリ56aと従動プーリ56fに架け渡された伝達ベルト56dを備えている。それにより、エンジン18の出力するトルクが工具シャフト56eに伝達され、回転刃12がエンジン18によって回転駆動される。このように、カッターアーム56は、エンジン18の出力するトルクを回転刃12へ伝達する伝達機構でもある。そして、伝達機構であるカッターアーム56が設けられた本体14の右方側は、一般に駆動側と称されることがある。ここで、第1プレート56bと第2プレート56cは、互いに固定する位置の調整が可能であり、伝達ベルト56dの張り具合を調整できるようになっている。なお、エンジン18の駆動軸18cと工具シャフト56eは互いに平行であり、共に左右方向に伸びている。また、カッターアーム56には、回転刃12を覆う回転刃カバー58が設けられている。
【0028】
本体14は、ユーザがエンジン18を始動するためのリコイルスタータ44を備えている。リコイルスタータ44は、本体14の右方側に設けられており、カッターアーム56上に設けられている。図3に示すように、エンジン18の駆動軸18cは、駆動プーリ56aを通過して伸びており、リコイルスタータ44は、その駆動軸18cの先端部分に接続されている。リコイルスタータ44には、ユーザが操作するスタータレバー42が設けられている。ユーザがスタータレバー42を引くと、エンジン18の駆動軸18cが回転し、エンジン18が始動する。
【0029】
本体14は、ガード50を備えている。ガード50は、本体14の前方下部に設けられている。本体14の前方下部は、回転刃12からワークの切粉が飛散する位置であり、ガード50は、飛散したワークの切粉を本体14の下方に向けて反射する。それにより、本体14に衝突したワークの切粉が、例えばユーザに向けて反射されることが防止される。また、ガード50には、一対のローラ52と前方足部54が設けられている。一対のローラ52は、前方足部54よりも前方に位置している。ユーザが後方グリップ28を上方へ持ち上げたると、一対のローラ52はワークの表面に当接し、ワークに対してエンジンカッター10を傾動させる支点となる。なお、ガード50の構造については、後段に置いて詳細に説明する。
【0030】
本体14は、ケーシング20を備えている。ケーシング20は、樹脂材料で形成されている。ケーシング20は、ケーシング本体26と、フィルタカバー24と、トップカバー22を備えている。トップカバー22はフィルタカバー24に固定されており、フィルタカバー24はケーシング本体26に固定されている。ケーシング本体26は、その一部がエンジン18の燃料を貯留する燃料タンクとなっており、燃料を給油する燃料給油口40が設けられている。また、ケーシング本体26には、前述した後方グリップ28が一体に形成されており、後方グリップ28の内部空間も燃料タンクの一部となっている。
【0031】
図4は、本体14の右方側を示している。なお、図4では、一部が断面図となっており、ケーシング20内の構造を示している。
図4に示すように、エンジンカッター10では、オイル給油口18aとオイル排出口18bがともに、本体14の右方側に設けられている。このように、オイル給油口18aとオイル排出口18bが本体14の同じ側に設けられていると、ユーザは、エンジンカッター10の向きを変えたり、エンジンカッター10に対して自身が移動することなく、エンジンオイルの交換作業を行うことができる。また、オイル給油口18aとオイル排出口18bを同時に視認することができるので、オイル排出口18bを閉め忘れたまま、オイル給油口18aからエンジンオイルを給油し続けるといったミスを防止することができる。さらに、オイル給油口18aとオイル排出口18bが、本体14の右方側(駆動側)に配置されているので、その反対の左方側(ユーザ側)に位置するユーザにとって、オイル給油口18aやオイル排出口18bの存在が邪魔になることがない。
【0032】
上記に加え、エンジンカッター10では、リコイルスタータ44、そのスタータレバー42、燃料給油口40についても、本体14の右方側(駆動側)に設けられている。従って、その反対の左方側(ユーザ側)に位置するユーザにとって、リコイルスタータ44、そのスタータレバー42、燃料給油口40の存在が邪魔になることがない。
このように、本実施例のエンジンカッター10では、オイル給油口18a、オイル排出口18b、リコイルスタータ44、そのスタータレバー42、燃料給油口40の全てが、カッターアーム56が位置する本体14の右方側(駆動側)に設けられている。従って、図2に示されるように、本体14の左方側(ユーザ側)には、本体14の右方側(駆動側)と比較して、大きな凹凸が存在しない。それにより、ユーザは、本体14の凹凸を気にすることなく、快適に作業を行うことができる。
【0033】
次に、ケーシング20の内部構造について説明する。図4に示すように、ケーシング20内には、図中の矢印Fで示す流路が形成されており、トップカバー22の吸気窓22aから導入された空気が、ケーシング20を通り抜け、吸気接続管62を経て、エンジン18に供給される構造となっている。
ケーシング20の内部には、上記した流路F上に沿って、プレフィルタ68と、メインフィルタ70と、キャブレタ74が設けられている。プレフィルタ68は、トップカバー22とフィルタカバー24の間に位置しており、メインフィルタ70は、フィルタカバー24とケーシング本体26の間に位置している。エンジンカッター10を水平面Hに載置した状態で、プレフィルタ68は、メインフィルタ70の上方に位置することになる。吸気窓22aから導入された空気は、プレフィルタ68とメインフィルタ70を順に通過することで、そこに含まれる粉塵が除去される(即ち、濾過される)。このとき、空気は、プレフィルタ68を下方から上方へ通過した後に、トップカバー22及びフィルタカバー24の内面に沿って流れ、その流れ方向を略270度変化させた後に、メインフィルタ70を通過する。
【0034】
メインフィルタ70を通過した空気は、次いでキャブレタ74を通過する。キャブレタ74は、メインフィルタ70を通過した空気に燃料を混合する。キャブレタ74は、汎用のものであり、スロットル弁、チェック弁、エアベントなどを有している。キャブレタ74で燃料が混合された空気(いわゆる混合気)は、吸気接続管62を通って、エンジン18へ供給される。なお、吸気接続管62は、ケーシング20の外部に位置している。また、図4には、吸気接続管62の上方にブリーズ管64が図示されている。ブリーズ管64は、エンジン18から伸びており、後述するオイルセパレータ82に接続されている。なお、ブリーズ管64は、エンジン18においてロッカーカバー内へ漏出したブローバイガスを除去するための管路であり、エンジン18内のクランクケースを含むエンジンオイルの循環経路に接続されている。
【0035】
本実施例のエンジンカッター10は、4ストローク型のエンジン18を採用している。4ストロークエンジンでは、吸気ポートがシリンダヘッドに設けられており、吸気ポートに接続されるキャブレタ74が、比較的に上方に位置することになる。そのことから、仮にメインフィルタ70をキャブレタ74の上方に配置すると、エンジン18に対してメインフィルタ70が上方へ大きく突出することになり、エンジンカッター10の高さ寸法が大きくなってしまう。そこで、本実施例のエンジンカッター10では、図4に示すように、メインフィルタ70とキャブレタ74が、それらを空気が通過する方向に沿って、一直線上に配置されている。即ち、エンジン18の後方にキャブレタ74が位置し、キャブレタ74の後方にメインフィルタ70が位置している。このような配置構造によると、4ストローク型のエンジン18を採用した場合でも、エンジンカッター10の高さ寸法を比較的に小さくすることができる。
【0036】
図4に示すように、本実施例のエンジンカッター10では、比較的に大型のメインフィルタ70が採用されており、メインフィルタ70の一部が、後方グリップ28の上方へ張り出している。また、その結果、後方グリップ28の上部では、ケーシング20の後面(フィルタカバー24の部分)も凸状に張り出している。このように、メインフィルタ70の一部又は全部を、後方グリップ28の上方まで張り出すように配置すると、大型のメインフィルタ70を搭載することが可能となる。大型のメインフィルタ70を搭載することで、メインフィルタ70の目詰まりが起こり難くなり、ユーザがメインフィルタ70を清掃する頻度を少なくすることができる。なお、後方グリップ28の上部においてケーシング20の後面が凸状に張り出していても、後方グリップ28を把持するユーザの手が干渉することは少ない。また、仮に干渉が問題となる場合は、後方グリップ28の角度を調整することも有効である。
【0037】
なお、従来のエンジンカッターでは、2ストローク型のエンジンが採用されている。2ストロークエンジンでは、吸気ポートがシリンダブロックに設けられており、その吸気ポートに接続されるキャブレタが、比較的に下方に位置することになる。そのことから、従来のエンジンカッターでは、メインフィルタ70がキャブレタ74の上方に配置されており、それによって、エンジンカッターの小型化が図られている(特許文献1参照)。
【0038】
図4に示すように、エンジンカッター10では、エンジンカッター10を水平面Hに載置した時に、エンジン18のシリンダの中心軸Cが、鉛直方向Vに対してキャブレタ74側に傾くように設計されている。このようにエンジン18が配置されていると、エンジン18に接続されるキャブレタ74及びメインフィルタ70を、より下方に配置することができる。その結果、エンジンカッター10の高さ寸法をさらに小さくすることができる。加えて、4ストロークエンジンは、シリンダヘッドの上部に動弁機構を有し、かつ、クランクケースの下部にオイルパンを有することから、2ストロークエンジンに比して高さ寸法が比較的に大きく、エンジンカッター10の大型化を招くおそれがある。この点に関しても、上記のようにエンジン18を傾けて配置すれば、エンジンカッター10を小型に設計することができる。
【0039】
図4、図5に示すように、メインフィルタ70とキャブレタ74の間には、フィルタブラケット72が設けられている。フィルタブラケット72は、メインフィルタ70を通過した空気をキャブレタ74へ案内する。フィルタブラケット72は、ケーシング本体26に固定されており、メインフィルタ70を定位置に保持している。
【0040】
図5、図6に示すように、フィルタブラケット72は、フィルタカバー24とともに、共通のボルト84によってケーシング本体26に固定されている。この構造によると、フィルタブラケット72とフィルタカバー24を個々に固定する構造に比して、構造の簡素化や部品点数の削減が可能となり、エンジンカッター10のさらなる小型化を図ることができる。加えて、エンジンカッター10の組立工程を簡単にすることができる。なお、図4、図5では図示されていないが、後述するように、フィルタブラケット72には予めキャブレタ74、キャブレタマウント66、吸気接続管62などが組み付けられている。また、フィルタカバー24とフィルタブラケット72の組み付け時には、それらの間にメインフィルタ70が配置される。
【0041】
図4に示すように、ケーシング20は、キャブレタ74が固定されたキャブレタマウント66を有している。キャブレタマウント66は、図4、図5に示すケーシング本体26の切欠部26aに取り付けられており、ケーシング20の外壁の一部を構成している。
キャブレタマウント66は、シール部材76を介して、ケーシング本体26に取り付けられている。シール部材76は、弾性を有する材料で形成された弾性部材である。本実施例では、一例ではあるが、シール部材76が高分子材料(詳しくはゴム材料)によって形成されている。キャブレタマウント66は、シール部材76が変形することにより、ケーシング本体26に対して変位することができる。
【0042】
図7は、キャブレタマウント66に組み付けられる部品群を示している。図7に示すように、キャブレタマウント66には、キャブレタ74だけでなく、フィルタブラケット72及び吸気接続管62も組み付けられている。ここで、フィルタブラケット72とキャブレタ74とキャブレタマウント66と吸気接続管62は、共通のボルト80によって互いに組み付けられている。なお、上記した部品群の組み付けを行う際に、フィルタブラケット72とキャブレタ74の間には、ガスケット78が配置され、キャブレタマウント66の周縁には、シール部材76が配置される。
【0043】
図7に示すように、キャブレタマウント66は、キャブレタ74側に突出する二本の支柱部66bを有している。支柱部66bは、キャブレタマウント66にキャブレタ74を挟んでフィルタブラケット72を組み付ける際に、キャブレタ74を下方から支持してキャブレタ74をその組付位置に保持する。支柱部66bがキャブレタ74を保持することで、それらの組み付けを行う作業者は、キャブレタ74を手で支える必要がなく、組み付け作業を容易に行うことができる。
【0044】
図7に示すように、キャブレタマウント66には、凹部66cが形成されている。凹部66cは、キャブレタ74側に位置する面に形成されている。図8に示すように、凹部66cは、キャブレタ74のスロットル弁を開閉するアーム74cに対向しており、当該アーム74cがキャブレタマウント66に接触することを防止する。このように、アーム74cに対向する範囲に凹部66cを形成することで、キャブレタマウント66とフィルタブラケット72の間の間隔を狭く設計することが可能となり、エンジンカッター10の小型化を図ることができる。
【0045】
フィルタブラケット72は、図7に示すようにキャブレタ74を挟んでキャブレタマウント66と固定された後、図5、図6に示すようにケーシング本体26に対して固定される。このとき、キャブレタマウント66は、シール部材76を介して、ケーシング本体26の切欠部26aに取り付けられる。従って、フィルタブラケット72、ケーシング本体26、及びキャブレタマウント66に寸法誤差が生じていても、キャブレタマウント66がケーシング本体26に対して受動的に変位することによって、フィルタブラケット72をケーシング本体26に正しく固定することができる。
【0046】
図9、図10は、フィルタブラケット72、キャブレタ74、キャブレタマウント66、シール部材76の流路に関する接続関係を示している。図9、図10に示すように、キャブレタマウント66にキャブレタ74を挟んでフィルタブラケット72を組み付けると、フィルタブラケット72の開口72aが、キャブレタ74の主通路74aを介して、キャブレタマウント66の開口66aに接続される。
【0047】
図9、図10に示すように、フィルタブラケット72には、オイルセパレータ82が一体に形成されている。また、オイルセパレータ82は、フィルタブラケット72から、キャブレタ74側に突出している。仮にオイルセパレータ82がメインフィルタ70側に突出する構造であると、オイルセパレータ82がメインフィルタ70に干渉することが避けられず、フィルタブラケット72をオイルセパレータ82よりも十分に大きくする必要が生じる。それに対して、オイルセパレータ82がキャブレタ74側に突出する構造であれば、フィルタブラケット72を大型化することなく、キャブレタ74と干渉しない位置へオイルセパレータ82を容易に設けることができる。
【0048】
図9、図10に示すように、シール部材76には、二つの貫通孔76aが形成されている。二つの貫通孔76aの位置は、オイルセパレータ82の二つのニップル部82aの位置に対応している。ここで、オイルセパレータ82のニップル部82aは、管状に突出する接続口であり、シール部材76の貫通孔76aは、そのニップル部82aを受け入れる受入口である。なお、シール部材76の表裏において、貫通孔76aの周囲76b、76cは管状に突出している。上記の構成により、キャブレタマウント66にキャブレタ74を挟んでフィルタブラケット72を組み付けると、図11に示すように、オイルセパレータ82の各々のニップル部82aが、シール部材76の対応する貫通孔76aに、ケーシング20の内側から自動的に連結される。その後、シール部材76の貫通孔76aにケーシング20の外側からブリーズ管64をそれぞれ連結すると、オイルセパレータ82とブリーズ管64が貫通孔76aを介して互いに接続される。このように、本実施例の構造によると、ケーシング20内の限られた空間の中で、オイルセパレータ82にブリーズ管64を接続するという面倒な作業が必要とされない。なお、図11に示すように、ブリーズ管64は、シール部材76の貫通孔76aへ、ジョイント65を介して連結される。ただし、ブリーズ管64は、シール部材76の貫通孔76aへ、ジョイント65を用いることなく、直接的に連結してもよい。
【0049】
図10に示すように、キャブレタ74には、エアベントに接続されたホースニップル74bが設けられている。そのホースニップル74bの先端は、フィルタブラケット72に向けて伸びている。一方、フィルタブラケット72には、ホースニップル74bと対応する位置に、エアベント接続口72bが設けられている。この構造により、キャブレタマウント66にキャブレタ74を挟んでフィルタブラケット72を組み付けると、キャブレタ74のホースニップル74bが、フィルタブラケット72のエアベント接続口72bに自動的に連結される。従って、ケーシング20内の限られた空間の中で、キャブレタ74のホースニップル74bをフィルタブラケット72のエアベント接続口72bに、チューブなどを用いて接続するという面倒な作業が必要とされない。
【0050】
次に、図4、図12、図13を参照して、スロットルレバー30とスイッチレバー32の組付構造について説明する。図4に示すように、スロットルレバー30は、シャフト34によって支持されており、シャフト34を中心に揺動可能となっている。スロットルレバー30は、リンク30aを介して、キャブレタ74のスロットル弁に接続されている。また、同じシャフト34には、スロットルレバー30に加えて、スイッチレバー32も取り付けられている。スイッチレバー32も同様に、シャフト34を中心に揺動可能となっている。スイッチレバー32は、リンク32aを介して、キャブレタ74のチョーク弁に接続されている。
【0051】
図12は、スロットルレバー30及びスイッチレバー32が、ケーシング本体26に組み付けられた状態を示しており、図13は、それらの組み付けを分解した状態を示している。図12、図13に示すように、ケーシング本体26には、シャフト34の軸方向に伸びるシャフト受け溝26bが形成されている。シャフト受け溝26bは、シャフト34をその径方向から保持している。シャフト受け溝26bの上方は開放されているので、シャフト受け溝26bへシャフト34を容易に嵌め込むことができる。特に、スロットルレバー30、ばね部材30b、スイッチレバー32をシャフト34に予め取り付けた状態で、シャフト34をシャフト受け溝26bへ嵌め込むことができる。
【0052】
ここで、ユーザがスロットルレバー30又はスイッチレバー32を操作した時、各レバー30、32はシャフト34に対して下向きに力を加える。それに対して、シャフト受け溝26bは、その開口方向が上方を向いている。このように、シャフト受け溝26bの開口方向と、シャフト34が各レバー30、32から力を受ける方向が互いに異なることから、シャフト34がシャフト受け溝26bにしっかりと保持され、各レバー30、32の挙動が安定する。
【0053】
加えて、本実施例では、シャフト受け溝26bが二つに分断されており、二つのシャフト受け溝26bの間では、シャフト34の周囲に空間が形成される構造となっている。このように、シャフト受け溝26bがシャフト34の一部の長さ範囲のみに設けられ、他の長さ範囲ではシャフト34の周囲に空間が設けられる構造であると、シャフト受け溝26bに取り付けられたシャフト34を、容易に取り外すことも可能となる。
【0054】
図12、図13に示すように、フィルタブラケット72には、二箇所のシャフト抑え部72cが形成されている。シャフト抑え部72cは、シャフト受け溝26bに保持されたシャフト34に、そのシャフト受け溝26bが開口する方向(本実施例では上方)から当接する。この構造によると、シャフト34を抑えるための部材を別に設けることなく、シャフト受け溝26bに保持されたシャフト34が移動したり、シャフト受け溝26bから外れてしまうことを防止することができる。また、ケーシング本体26に固定されたフィルタブラケット72が、同じくケーシング本体26に支持されたシャフト34に当接することで、フィルタブラケット72がケーシング20内で支柱(あるいは梁)としても機能し、ケーシング20の剛性が有意に高められる。
【0055】
図12、図13に示すように、ケーシング本体26には、シャフト34の両端にそれぞれ対向する一対のシャフト位置決め部26cが設けられている。この構造により、サークリップ等の抜け止め部材をシャフト34に設けることなく、シャフト受け溝26bに保持されたシャフト34が、その軸方向に移動してシャフト受け溝26bから外れるようなことを防止することができる。
【0056】
次に、図14から図19を参照して、ガード50の構成について説明する。図14は、ガード50を右方から見た図であり、図15は、ガード50を前方から見た図であり、図16は、ガード50を下方から見た図である。また、図17は、図14中のXVII−XVII線における断面図であり、図18は、図16中のXVIII−XVIII線における断面図である。そして、図19は、エンジンカッター10によってワークWを切断している様子を示している。ここで、図中の直線Sは、回転刃12の回転面を示している。回転面Sは、回転する回転刃12が位置する仮想的な平面であり、回転刃12の回転軸に垂直であって、回転刃12を含む平面である。ただし、回転刃12は有限の厚みを有しているので、回転刃12の一方の端面の位置に合わせて、回転面Sが定められている。また、図19中の矢印Dは、ワークWの切粉が飛散する経路を示している。
【0057】
ガード50は、ガード面90と、一対のローラ52と、前方足部54を備えている。前方足部54は、ユーザがエンジンカッター10を傾けやすいように、その角部54aが曲面状に面取加工されている。一対のローラ52は、回転刃12の回転面Sを挟んで同軸に配置されており、その回転軸は回転刃12の回転軸と平行である。ガード面90は、一対のローラ52の間に設けられている。ガード面90は、ガード50に形成された溝状の曲面であり、回転刃12の回転面Sに沿って伸びている。
【0058】
図18に示すように、ガード面90は、概して、前方の斜め下方を向いた傾斜面となっている。即ち、回転刃12に近い前方の位置ほど、ワークの表面から離れるように傾斜している。ガード面90は、回転刃12から飛散するワークの切粉を、本体14の下方に向けて反射する。それにより、回転刃12から飛散したワークの切粉が、本体14においてユーザに向けて反射されることが防止される。なお、ガード50には、位置決め用の突起50aが複数形成されており、本体14に対して容易に組み付けられる構成となっている。ここで、ガード面90は、ワークの切粉が本体14の下方へスムーズに案内されるように、凹凸のない面か、凹凸の少ない面とすることができる。ただし、ワークの切粉を特定の方向へ案内するために、溝や突起を意図的に設けることもできる。
【0059】
ガード面90は、回転面Sを境界として、左方側(ユーザ側)の範囲90aと、右方側(駆動側)の範囲90bの間で、異なる形状を有している。即ち、ガード面90は、回転面Sを境界として、非対称の形状を有している。その結果、ガード面90は、回転刃12から飛散した切粉を、回転刃12の回転面Sに対して非対称に反射する。
【0060】
特に、本実施例のガード面90では、図17に示すように、左方側(ユーザ側)の範囲90aの全体において、その法線ベクトルNが回転面Sに向かうように、回転面Sに対して傾斜している。別の表現をすると、溝状に形成されたガード面90の左方側(ユーザ側)の範囲90aでは、回転面Sから離れるほどその深さが浅くなっている。従って、左方側(ユーザ側)の範囲90aでは、回転刃12から飛散した切粉が、回転面Sに向けて反射される。即ち、回転刃12から左方側(ユーザ側)に飛散した切粉を、右方側(駆動側)に向けて反射することができる。それにより、回転刃12から飛散した切粉の多くが、本体14の右方側(駆動側)へ反射される。ユーザは、その反対側である左方側(ユーザ側)に位置することで、切粉に阻害されることなく、エンジンカッター10を快適に使用することができる。
【0061】
上記したガード面90の形状は一例であり、ガード面90の形状を限定するものではない。回転刃12から飛散した切粉の過半数を、本体14の右方側(駆動側)へ反射できる形状であればよく、例えば、左方側(ユーザ側)の範囲90aと右方側(駆動側)の範囲90bの間で、ガード面90の角度、深さ、面積を異ならせてもよい。
【0062】
図19に示すように、ユーザは、ワークWの表面に一対のローラ52を当接させ、エンジンカッター10をワークWの表面に対して傾けた状態で、エンジンカッター10をワークWの表面に沿って移動させる。このとき、ワークWの表面に、障害物(例えばワークWの破片やワークWの突起部)が存在しても、ガード面90の傾斜によって障害物を乗り越えることができる。特に、本実施例のエンジンカッター10では、一対のローラ52を支点にし、ワークWの表面に対してエンジンカッター10を最大に傾けた時(図19の状態)でも、ガード面90が、回転刃12に近い位置(前方側)ほど、ワークWの表面から離れるように傾斜する。即ち、ワークWの表面からガード面90までの高さTが、回転刃12に近い位置(前方側)ほど高くなる。この構造によると、ワークWの表面に対してエンジンカッター10を傾けたときの角度にかかわらず、ワークWの表面に存在する障害物を、ガード面90の傾斜によって乗り越えることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0064】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0065】
10:エンジンカッター
12:回転刃
14:本体
18:エンジン
18a:オイル給油口
18b:オイル排出口
18c:駆動軸
20:ケーシング
22:ケーシングのトップカバー
24:ケーシングのフィルタカバー
26:ケーシングのケーシング本体
26b:ケーシング本体のシャフト受け溝
26c:ケーシング本体のシャフト位置決め部
28:後方グリップ
30:スロットルレバー
30a:スロットルレバーのリンク
32:スイッチレバー
32a:スイッチレバーのリンク
34:シャフト
40:燃料給油口
42:スタータレバー
44:リコイルスタータ
50:ガード
52:一対のローラ
56:カッターアーム
64:ブリーズ管
65:ジョイント
66:キャブレタマウント
66b:キャブレタマウントの支柱部
68:プレフィルタ
70:メインフィルタ
72:フィルタブラケット
72b:フィルタブラケットのエアベント接続口
72c:フィルタブラケットのシャフト抑え部
74:キャブレタ
74b:キャブレタのホースニップル
76:シール部材
76a:シール部材の貫通孔
82:オイルセパレータ
82a:オイルセパレータのニップル部
90:ガード面
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板状の回転刃をエンジンによって駆動するエンジンカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に手持式のエンジンカッター(カットオフソーとも称される)が開示されている。エンジンカッターは、円板状の回転刃と、回転刃を駆動するエンジンを備えており、例えば建築現場においてコンクリートや鉄骨材料の切断に用いられる。
従来のエンジンカッターでは、回転刃を駆動するエンジンとして、2ストローク型のエンジン(以下、2ストロークエンジンと称することがある)が採用されている。2ストロークエンジンは、他の形式のエンジンと比較すると、構造が単純でサイズも小さいという利点を有している。そのことから、手持式のエンジンカッターでは、2ストロークエンジンを採用することで、その小型化や低コスト化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−528792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その一方で、2ストロークエンジンは、例えば未燃焼ガスの排出量が多いといった問題点を有しており、自然環境に与える悪影響が比較的に大きいとされている。手持式のエンジンカッターにおいても、環境性能に対する要求は高まっており、2ストロークエンジンを採用した従来の製品では、要求される環境性能を高いレベルで満足することが難しくなっている。
【0005】
上述の実情を鑑み、本発明は、環境性能に優れたエンジンカッターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエンジンカッターは、手持式のエンジンカッターであって、円板状の回転刃と、その回転刃を駆動する4ストローク型のエンジンを備えている。ここで、4ストロークエンジンは、エンジンオイルが燃料とは別に供給される分離潤滑型のエンジンであることが好ましい。
【0007】
4ストローク型のエンジン(以下、4ストロークエンジンと称することがある)は、吸気ポートと排気ポートが動弁機構によって開閉されることから、当該ポートがピストンによって開閉される2ストローク型のエンジンと比較して、未燃焼ガスの排出が少なく、燃費効率が高いといった利点を持つ。従って、回転刃を駆動するエンジンに、4ストローク型のエンジンを採用することで、エンジンカッターの環境性能を顕著に高めることができる。特に、分離潤滑型のエンジンでは、多くのエンジンオイルがエンジン内で循環利用され、燃料とともに消費されるエンジンオイルの量が極めて少ないので、環境に与える負荷をより小さくすることができる。また、燃料やエンジンオイルの消費量が少なくなることで、ユーザが負担するランニングコストを抑えることもできる。さらに、発生する騒音が小さいなど、4ストロークエンジンの持つ多くの利点をユーザは享受することができる。
【0008】
エンジンカッターは、エンジンへ供給される空気が通過するフィルタと、そのフィルタを通過した空気に燃料を混合するキャブレタと、フィルタ及びキャブレタを収容しているケーシングをさらに備えることが好ましい。この場合、フィルタとキャブレタは、それらを空気が通過する方向に沿って、一直線上に配置されていることが好ましい。
【0009】
2ストロークエンジンでは、吸気ポートがシリンダブロックに設けられており、吸気ポートに接続されるキャブレタが、比較的に下方(クランクケース側)に位置することになる。そのことから、従来の2ストロークエンジンを採用したエンジンカッターでは、キャブレタへ送る空気をろ過するフィルタが、キャブレタの上方に配置されており、それによって、エンジンカッターの小型化が図られている(特許文献1参照)。
【0010】
一方、4ストロークエンジンでは、吸気ポートがシリンダヘッドに設けられており、吸気ポートに接続されるキャブレタが、比較的に上方(シリンダヘッド側)に位置することになる。そのことから、従来のエンジンカッターのように、フィルタをキャブレタの上方に配置する構造を採用すると、エンジンに対してフィルタが上方へ突出する位置関係となり、エンジンカッターの高さ寸法が大きくなってしまう。
そこで、上記したように、フィルタとキャブレタを、それらを空気が通過する方向に沿って、一直線上に配置することが有効となる。それにより、エンジンに対してフィルタが上方へ突出することが防止され、エンジンカッターの高さ寸法の増大が抑制されている。また、大型のフィルタを採用し、フィルタの集塵能力を高めることで、フィルタの目詰まりが起こり難くなる。
【0011】
上記したエンジンカッターは、ユーザが把持するグリップを備えることができる。この場合、フィルタとキャブレタとグリップは、エンジンを挟んで回転刃とは反対側に位置しているとともに、エンジンカッターを水平面に載置したときに、フィルタの少なくとも一部がグリップの上方に位置することが好ましい。
上記したグリップは、従来のエンジンカッターにも設けられており、しばしば後方グリップと称される(リアグリップ、後方ハンドル、リアハンドルとも称される)。従来のエンジンカッターでは、エンジンカッターの本体から後方へ当該グリップが突出しており、当該グリップの上方に大きなデッドスペースが生じていた。それに対し、上記した本技術に係る構造では、フィルタの少なくとも一部を、デッドスペースであったグリップの上方に配置されている。それにより、エンジンカッターの外形寸法を大きくすることなく、より大型のフィルタを搭載することができる。大型のフィルタを搭載することで、フィルタの目詰まりが起こり難くなり、例えばフィルタの清掃頻度を少なくすることができる。
【0012】
上記したエンジンカッターは、プレフィルタをさらに備えることが好ましい。この場合、プレフィルタが、エンジンカッターを水平面に載置したときに、前記したフィルタの上方に位置するとともに、エンジンへ供給される空気が、プレフィルタを通過した後に、その流れ方向を少なくとも180度変化させて、フィルタを通過することが好ましい。
この構造によると、プレフィルタ、フィルタ及びキャブレタを、コンパクトに配置することができる。
【0013】
上記に加え、エンジンカッターを水平面に載置したときに、エンジンが鉛直方向に対してキャブレタ側に傾くように、エンジンが配置されていることが好ましい。
このようなエンジンの配置によると、エンジンに接続されるキャブレタ及びフィルタを、より下方に位置させることが可能となり、エンジンカッターの高さ寸法をさらに小さくすることができる。加えて、4ストロークエンジンは、シリンダヘッドの上部に動弁機構を有し、かつ、クランクケースの下部にオイルパンを有することから、2ストロークエンジンに比して高さ寸法が比較的に大きく、エンジンカッターの大型化を招くおそれがある。この点に関しても、上記のようにエンジンを傾けて配置すれば、4ストロークエンジンを有するエンジンカッターを、小型に設計することが可能となる。
【0014】
エンジンカッターは、フィルタとキャブレタの間に介在し、フィルタを通過した空気をキャブレタに案内するフィルタブラケットをさらに備えることが好ましい。この場合、前記したケーシングは、フィルタブラケットが固定されているケーシング本体と、そのケーシング本体に取り付けられてフィルタブラケット及びフィルタを覆うフィルタカバーを有することが好ましい。そして、フィルタブラケット及びフィルタカバーは、共通の締付部材によって、前記ケーシング本体に固定されていることが好ましい。
この構造によると、ケーシング本体にフィルタブラケットとフィルタカバーを個々に固定する構造に比して、構造の簡素化や部品点数の削減が可能となり、エンジンカッターのさらなる小型化を図ることができる。
【0015】
ケーシングは、キャブレタを挟んでフィルタブラケットが組み付けられたキャブレタマウントをさらに有することが好ましい。この場合、キャブレタマウントは、弾性部材を介してケーシング本体に取り付けられることが好ましい。なお、ここでいう弾性部材は、弾性を有する材料で形成された部材を広く意味する。弾性部材は、ケーシング本体に対してキャブレタマウントを変位可能に支持する部材であり、その形状は特に限定されない。
【0016】
仮に、キャブレタマウントがケーシング本体に一体に形成されているとする。この場合、フィルタブラケット、ケーシング本体、キャブレタマウントに寸法誤差が生じていれば、キャブレタマウントに組み付けたフィルタブラケットを、ケーシング本体に正しく固定することができなくなる。それに対して、キャブレタマウントがケーシング本体に対して変位可能に支持されていれば、フィルタブラケット、ケーシング本体、キャブレタマウントに寸法誤差が生じている場合でも、キャブレタマウントが受動的に変位することによって、フィルタブラケットをケーシング本体に正しく固定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るエンジンカッターによれば、未燃焼ガスの排出量や燃料の消費量を削減することができ、自然環境への負荷を有意に抑制することができる。また、上記した構成部品の配置や構造により、2ストロークエンジンに比してサイズの大きい4ストロークエンジンを採用した場合でも、比較的に小型のエンジンカッターを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例のエンジンカッターを右方(駆動側)から見た図。
【図2】実施例のエンジンカッターを上方から見た図。
【図3】図1中のIII−III線における断面図。
【図4】エンジンカッターの本体を示す部分断面図。
【図5】ケーシング本体とフィルタブラケットとフィルタカバーの組付構造を示す図。
【図6】ケーシング本体とフィルタブラケットとフィルタカバーの組付構造を他の視点から示す図。
【図7】フィルタブラケットとキャブレタとキャブレタマウントの組付構造を示す図。
【図8】キャブレタのアームとキャブレタマウントの凹部との位置関係を示す図。
【図9】フィルタブラケットとキャブレタとキャブレタマウントの接続構造を示す図。
【図10】フィルタブラケットとキャブレタとキャブレタマウントの接続構造を他の視点から示す図。
【図11】オイルセパレートとブリーズ管がシール部材の貫通孔を介して互いに接続された様子を示す図。
【図12】スロットルレバーとスイッチレバーの組付構造を示す図。
【図13】スロットルレバーとスイッチレバーの組付構造を示す分解図。
【図14】ガードを右方から見た図。
【図15】ガードを前方から見た図。
【図16】ガードを下方から見た図。
【図17】図14中のXVII−XVII線における断面図。
【図18】図16中のXVIII−XVIII線における断面図。
【図19】ワークの表面に対してエンジンカッターを最大に傾けた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照し、本発明の実施例であるエンジンカッターについて説明する。図1は、エンジンカッター10の側面図を示しており、図2は、エンジンカッター10の平面図を示している。また、図3は、図1におけるIII−III線断面図を示している。エンジンカッター10は、円板状の回転刃12と、その回転刃12を駆動する本体14を備えている。回転刃12は、石質材料や金属材料を切断可能であり、エンジンカッター10は、例えば建築現場においてコンクリートや鉄骨材料の切断に用いられる。
【0020】
図1、図2に示すように、エンジンカッター10を水平面Hに載置すると、回転刃12は、本体14に対して水平方向の一方側に位置する。以下の説明では、エンジンカッター10を水平面Hに載置した状態を基準とし、本体14に対して回転刃12が位置する水平方向の一方側を前方と称し、その反対方向を後方と称する。また、鉛直上方を単に上方と称し、鉛直下方を単に下方と称する。また、図2に示すように、前後方向に垂直な水平方向の一方側を左方と称し、前後方向に垂直な水平方向の他方側を右方と称する。例えば、回転刃12については、本体14の前方に位置し、その回転軸は左右方向に伸びており、水平面Hの上方において水平面Hに垂直となっている、と表現される。
【0021】
本体14には、前方ハンドル16と後方グリップ28が設けられている。前方ハンドル16は、パイプ材で形成されており、ユーザによって把持されるハンドルであるとともに、本体14の強度を確保するフレームも兼ねている。前方ハンドル16は、本体14の前方部分において、本体14の上方から左方へと伸びている。後方グリップ28は、本体14の後方下部に設けられている。後方グリップ28は、本体14からループ状に伸びている。後方グリップ28には、スロットルレバー30等の操作スイッチが設けられている。また、後方グリップ28の下部には、後方足部38が設けられている。
【0022】
通常、ユーザは、左手によって前方ハンドル16を把持し、右手によって後方グリップ28を把持して、エンジンカッター10を保持する。そして、ワークに対してエンジンカッター10を移動させ、回転刃12によってワークを切断する。このように、本実施例のエンジンカッター10は、ユーザによって保持される手持式のエンジンカッターである。ここで、上記のようにユーザがエンジンカッター10を保持した時、ユーザは本体14の左方に位置することになる。通常、ユーザはエンジンカッター10の左方に位置することから、エンジンカッター10の左方側はユーザ側とも称される。
【0023】
本体14は、回転刃12を駆動するためのエンジン18を備えている。エンジン18は、4ストローク型のレシプロエンジンである。4ストローク型のエンジン(以下、4ストロークエンジンと称することがある)は、吸気ポートと排気ポートが動弁機構によって開閉されることから、当該ポートがピストンによって開閉される2ストローク型のエンジンと比較して、未燃焼ガスの排出が少なく、燃費効率が高い(燃料消費量が少ない)といった利点を持つ。エンジンカッター10では、4ストローク型のエンジン18を採用することで、その環境性能が顕著に高められている。
【0024】
エンジン18は、分離潤滑型の4ストロークエンジンであるため、混合潤滑型の2ストロークエンジンとは異なり、燃料とは別にエンジンオイルを供給する必要がある。また、そのエンジンオイルは、適当な頻度で補充、交換される必要がある。そのため、エンジン18には、エンジンオイルが給油されるオイル給油口18aと、エンジンオイルを排出するオイル排出口18bが設けられている。
【0025】
なお、エンジン18は、分離潤滑型の4ストロークエンジンに限られず、混合潤滑型の4ストロークエンジンであってもよい。ただし、分離潤滑型の4ストロークエンジンは、多くのエンジンオイルがエンジン内で循環利用され、燃料とともに消費される量が極めて少ないので、混合潤滑型の4ストロークエンジンと比較して、環境性能に優れるといった利点を持つ。さらに、エンジンオイルの消費量が少なくなることで、ユーザが負担するランニングコストを抑えることもできる。また、混合潤滑型の4ストロークエンジンを採用すると、エンジンカッター10が長期に亘って使用されなかった場合に、キャブレタ内で燃料が揮発してエンジンオイルのみが残留することになり、キャブレタが詰まってしまうことがある。この点に関して、分離潤滑型の4ストロークエンジンを採用すると、そのような問題が起こりにくいという効果も期待することができる。
【0026】
本体14は、回転刃12が取り付けられたカッターアーム56を備えている。カッターアーム56は、本体14の右方側に設けられており、本体14の前方に向けて伸びている。図3に示すように、カッターアーム56は、エンジン18に固定された第1プレート56bと、第1プレート56bに固定された第2プレート56cを備えており、第2プレート56cには、回転刃12を回転可能に支持する工具シャフト56eが設けられている。
【0027】
また、カッターアーム56は、エンジン18の駆動軸(クランクシャフト)18cに固定された駆動プーリ56aと、工具シャフト56eに固定された従動プーリ56fと、駆動プーリ56aと従動プーリ56fに架け渡された伝達ベルト56dを備えている。それにより、エンジン18の出力するトルクが工具シャフト56eに伝達され、回転刃12がエンジン18によって回転駆動される。このように、カッターアーム56は、エンジン18の出力するトルクを回転刃12へ伝達する伝達機構でもある。そして、伝達機構であるカッターアーム56が設けられた本体14の右方側は、一般に駆動側と称されることがある。ここで、第1プレート56bと第2プレート56cは、互いに固定する位置の調整が可能であり、伝達ベルト56dの張り具合を調整できるようになっている。なお、エンジン18の駆動軸18cと工具シャフト56eは互いに平行であり、共に左右方向に伸びている。また、カッターアーム56には、回転刃12を覆う回転刃カバー58が設けられている。
【0028】
本体14は、ユーザがエンジン18を始動するためのリコイルスタータ44を備えている。リコイルスタータ44は、本体14の右方側に設けられており、カッターアーム56上に設けられている。図3に示すように、エンジン18の駆動軸18cは、駆動プーリ56aを通過して伸びており、リコイルスタータ44は、その駆動軸18cの先端部分に接続されている。リコイルスタータ44には、ユーザが操作するスタータレバー42が設けられている。ユーザがスタータレバー42を引くと、エンジン18の駆動軸18cが回転し、エンジン18が始動する。
【0029】
本体14は、ガード50を備えている。ガード50は、本体14の前方下部に設けられている。本体14の前方下部は、回転刃12からワークの切粉が飛散する位置であり、ガード50は、飛散したワークの切粉を本体14の下方に向けて反射する。それにより、本体14に衝突したワークの切粉が、例えばユーザに向けて反射されることが防止される。また、ガード50には、一対のローラ52と前方足部54が設けられている。一対のローラ52は、前方足部54よりも前方に位置している。ユーザが後方グリップ28を上方へ持ち上げたると、一対のローラ52はワークの表面に当接し、ワークに対してエンジンカッター10を傾動させる支点となる。なお、ガード50の構造については、後段に置いて詳細に説明する。
【0030】
本体14は、ケーシング20を備えている。ケーシング20は、樹脂材料で形成されている。ケーシング20は、ケーシング本体26と、フィルタカバー24と、トップカバー22を備えている。トップカバー22はフィルタカバー24に固定されており、フィルタカバー24はケーシング本体26に固定されている。ケーシング本体26は、その一部がエンジン18の燃料を貯留する燃料タンクとなっており、燃料を給油する燃料給油口40が設けられている。また、ケーシング本体26には、前述した後方グリップ28が一体に形成されており、後方グリップ28の内部空間も燃料タンクの一部となっている。
【0031】
図4は、本体14の右方側を示している。なお、図4では、一部が断面図となっており、ケーシング20内の構造を示している。
図4に示すように、エンジンカッター10では、オイル給油口18aとオイル排出口18bがともに、本体14の右方側に設けられている。このように、オイル給油口18aとオイル排出口18bが本体14の同じ側に設けられていると、ユーザは、エンジンカッター10の向きを変えたり、エンジンカッター10に対して自身が移動することなく、エンジンオイルの交換作業を行うことができる。また、オイル給油口18aとオイル排出口18bを同時に視認することができるので、オイル排出口18bを閉め忘れたまま、オイル給油口18aからエンジンオイルを給油し続けるといったミスを防止することができる。さらに、オイル給油口18aとオイル排出口18bが、本体14の右方側(駆動側)に配置されているので、その反対の左方側(ユーザ側)に位置するユーザにとって、オイル給油口18aやオイル排出口18bの存在が邪魔になることがない。
【0032】
上記に加え、エンジンカッター10では、リコイルスタータ44、そのスタータレバー42、燃料給油口40についても、本体14の右方側(駆動側)に設けられている。従って、その反対の左方側(ユーザ側)に位置するユーザにとって、リコイルスタータ44、そのスタータレバー42、燃料給油口40の存在が邪魔になることがない。
このように、本実施例のエンジンカッター10では、オイル給油口18a、オイル排出口18b、リコイルスタータ44、そのスタータレバー42、燃料給油口40の全てが、カッターアーム56が位置する本体14の右方側(駆動側)に設けられている。従って、図2に示されるように、本体14の左方側(ユーザ側)には、本体14の右方側(駆動側)と比較して、大きな凹凸が存在しない。それにより、ユーザは、本体14の凹凸を気にすることなく、快適に作業を行うことができる。
【0033】
次に、ケーシング20の内部構造について説明する。図4に示すように、ケーシング20内には、図中の矢印Fで示す流路が形成されており、トップカバー22の吸気窓22aから導入された空気が、ケーシング20を通り抜け、吸気接続管62を経て、エンジン18に供給される構造となっている。
ケーシング20の内部には、上記した流路F上に沿って、プレフィルタ68と、メインフィルタ70と、キャブレタ74が設けられている。プレフィルタ68は、トップカバー22とフィルタカバー24の間に位置しており、メインフィルタ70は、フィルタカバー24とケーシング本体26の間に位置している。エンジンカッター10を水平面Hに載置した状態で、プレフィルタ68は、メインフィルタ70の上方に位置することになる。吸気窓22aから導入された空気は、プレフィルタ68とメインフィルタ70を順に通過することで、そこに含まれる粉塵が除去される(即ち、濾過される)。このとき、空気は、プレフィルタ68を下方から上方へ通過した後に、トップカバー22及びフィルタカバー24の内面に沿って流れ、その流れ方向を略270度変化させた後に、メインフィルタ70を通過する。
【0034】
メインフィルタ70を通過した空気は、次いでキャブレタ74を通過する。キャブレタ74は、メインフィルタ70を通過した空気に燃料を混合する。キャブレタ74は、汎用のものであり、スロットル弁、チェック弁、エアベントなどを有している。キャブレタ74で燃料が混合された空気(いわゆる混合気)は、吸気接続管62を通って、エンジン18へ供給される。なお、吸気接続管62は、ケーシング20の外部に位置している。また、図4には、吸気接続管62の上方にブリーズ管64が図示されている。ブリーズ管64は、エンジン18から伸びており、後述するオイルセパレータ82に接続されている。なお、ブリーズ管64は、エンジン18においてロッカーカバー内へ漏出したブローバイガスを除去するための管路であり、エンジン18内のクランクケースを含むエンジンオイルの循環経路に接続されている。
【0035】
本実施例のエンジンカッター10は、4ストローク型のエンジン18を採用している。4ストロークエンジンでは、吸気ポートがシリンダヘッドに設けられており、吸気ポートに接続されるキャブレタ74が、比較的に上方に位置することになる。そのことから、仮にメインフィルタ70をキャブレタ74の上方に配置すると、エンジン18に対してメインフィルタ70が上方へ大きく突出することになり、エンジンカッター10の高さ寸法が大きくなってしまう。そこで、本実施例のエンジンカッター10では、図4に示すように、メインフィルタ70とキャブレタ74が、それらを空気が通過する方向に沿って、一直線上に配置されている。即ち、エンジン18の後方にキャブレタ74が位置し、キャブレタ74の後方にメインフィルタ70が位置している。このような配置構造によると、4ストローク型のエンジン18を採用した場合でも、エンジンカッター10の高さ寸法を比較的に小さくすることができる。
【0036】
図4に示すように、本実施例のエンジンカッター10では、比較的に大型のメインフィルタ70が採用されており、メインフィルタ70の一部が、後方グリップ28の上方へ張り出している。また、その結果、後方グリップ28の上部では、ケーシング20の後面(フィルタカバー24の部分)も凸状に張り出している。このように、メインフィルタ70の一部又は全部を、後方グリップ28の上方まで張り出すように配置すると、大型のメインフィルタ70を搭載することが可能となる。大型のメインフィルタ70を搭載することで、メインフィルタ70の目詰まりが起こり難くなり、ユーザがメインフィルタ70を清掃する頻度を少なくすることができる。なお、後方グリップ28の上部においてケーシング20の後面が凸状に張り出していても、後方グリップ28を把持するユーザの手が干渉することは少ない。また、仮に干渉が問題となる場合は、後方グリップ28の角度を調整することも有効である。
【0037】
なお、従来のエンジンカッターでは、2ストローク型のエンジンが採用されている。2ストロークエンジンでは、吸気ポートがシリンダブロックに設けられており、その吸気ポートに接続されるキャブレタが、比較的に下方に位置することになる。そのことから、従来のエンジンカッターでは、メインフィルタ70がキャブレタ74の上方に配置されており、それによって、エンジンカッターの小型化が図られている(特許文献1参照)。
【0038】
図4に示すように、エンジンカッター10では、エンジンカッター10を水平面Hに載置した時に、エンジン18のシリンダの中心軸Cが、鉛直方向Vに対してキャブレタ74側に傾くように設計されている。このようにエンジン18が配置されていると、エンジン18に接続されるキャブレタ74及びメインフィルタ70を、より下方に配置することができる。その結果、エンジンカッター10の高さ寸法をさらに小さくすることができる。加えて、4ストロークエンジンは、シリンダヘッドの上部に動弁機構を有し、かつ、クランクケースの下部にオイルパンを有することから、2ストロークエンジンに比して高さ寸法が比較的に大きく、エンジンカッター10の大型化を招くおそれがある。この点に関しても、上記のようにエンジン18を傾けて配置すれば、エンジンカッター10を小型に設計することができる。
【0039】
図4、図5に示すように、メインフィルタ70とキャブレタ74の間には、フィルタブラケット72が設けられている。フィルタブラケット72は、メインフィルタ70を通過した空気をキャブレタ74へ案内する。フィルタブラケット72は、ケーシング本体26に固定されており、メインフィルタ70を定位置に保持している。
【0040】
図5、図6に示すように、フィルタブラケット72は、フィルタカバー24とともに、共通のボルト84によってケーシング本体26に固定されている。この構造によると、フィルタブラケット72とフィルタカバー24を個々に固定する構造に比して、構造の簡素化や部品点数の削減が可能となり、エンジンカッター10のさらなる小型化を図ることができる。加えて、エンジンカッター10の組立工程を簡単にすることができる。なお、図4、図5では図示されていないが、後述するように、フィルタブラケット72には予めキャブレタ74、キャブレタマウント66、吸気接続管62などが組み付けられている。また、フィルタカバー24とフィルタブラケット72の組み付け時には、それらの間にメインフィルタ70が配置される。
【0041】
図4に示すように、ケーシング20は、キャブレタ74が固定されたキャブレタマウント66を有している。キャブレタマウント66は、図4、図5に示すケーシング本体26の切欠部26aに取り付けられており、ケーシング20の外壁の一部を構成している。
キャブレタマウント66は、シール部材76を介して、ケーシング本体26に取り付けられている。シール部材76は、弾性を有する材料で形成された弾性部材である。本実施例では、一例ではあるが、シール部材76が高分子材料(詳しくはゴム材料)によって形成されている。キャブレタマウント66は、シール部材76が変形することにより、ケーシング本体26に対して変位することができる。
【0042】
図7は、キャブレタマウント66に組み付けられる部品群を示している。図7に示すように、キャブレタマウント66には、キャブレタ74だけでなく、フィルタブラケット72及び吸気接続管62も組み付けられている。ここで、フィルタブラケット72とキャブレタ74とキャブレタマウント66と吸気接続管62は、共通のボルト80によって互いに組み付けられている。なお、上記した部品群の組み付けを行う際に、フィルタブラケット72とキャブレタ74の間には、ガスケット78が配置され、キャブレタマウント66の周縁には、シール部材76が配置される。
【0043】
図7に示すように、キャブレタマウント66は、キャブレタ74側に突出する二本の支柱部66bを有している。支柱部66bは、キャブレタマウント66にキャブレタ74を挟んでフィルタブラケット72を組み付ける際に、キャブレタ74を下方から支持してキャブレタ74をその組付位置に保持する。支柱部66bがキャブレタ74を保持することで、それらの組み付けを行う作業者は、キャブレタ74を手で支える必要がなく、組み付け作業を容易に行うことができる。
【0044】
図7に示すように、キャブレタマウント66には、凹部66cが形成されている。凹部66cは、キャブレタ74側に位置する面に形成されている。図8に示すように、凹部66cは、キャブレタ74のスロットル弁を開閉するアーム74cに対向しており、当該アーム74cがキャブレタマウント66に接触することを防止する。このように、アーム74cに対向する範囲に凹部66cを形成することで、キャブレタマウント66とフィルタブラケット72の間の間隔を狭く設計することが可能となり、エンジンカッター10の小型化を図ることができる。
【0045】
フィルタブラケット72は、図7に示すようにキャブレタ74を挟んでキャブレタマウント66と固定された後、図5、図6に示すようにケーシング本体26に対して固定される。このとき、キャブレタマウント66は、シール部材76を介して、ケーシング本体26の切欠部26aに取り付けられる。従って、フィルタブラケット72、ケーシング本体26、及びキャブレタマウント66に寸法誤差が生じていても、キャブレタマウント66がケーシング本体26に対して受動的に変位することによって、フィルタブラケット72をケーシング本体26に正しく固定することができる。
【0046】
図9、図10は、フィルタブラケット72、キャブレタ74、キャブレタマウント66、シール部材76の流路に関する接続関係を示している。図9、図10に示すように、キャブレタマウント66にキャブレタ74を挟んでフィルタブラケット72を組み付けると、フィルタブラケット72の開口72aが、キャブレタ74の主通路74aを介して、キャブレタマウント66の開口66aに接続される。
【0047】
図9、図10に示すように、フィルタブラケット72には、オイルセパレータ82が一体に形成されている。また、オイルセパレータ82は、フィルタブラケット72から、キャブレタ74側に突出している。仮にオイルセパレータ82がメインフィルタ70側に突出する構造であると、オイルセパレータ82がメインフィルタ70に干渉することが避けられず、フィルタブラケット72をオイルセパレータ82よりも十分に大きくする必要が生じる。それに対して、オイルセパレータ82がキャブレタ74側に突出する構造であれば、フィルタブラケット72を大型化することなく、キャブレタ74と干渉しない位置へオイルセパレータ82を容易に設けることができる。
【0048】
図9、図10に示すように、シール部材76には、二つの貫通孔76aが形成されている。二つの貫通孔76aの位置は、オイルセパレータ82の二つのニップル部82aの位置に対応している。ここで、オイルセパレータ82のニップル部82aは、管状に突出する接続口であり、シール部材76の貫通孔76aは、そのニップル部82aを受け入れる受入口である。なお、シール部材76の表裏において、貫通孔76aの周囲76b、76cは管状に突出している。上記の構成により、キャブレタマウント66にキャブレタ74を挟んでフィルタブラケット72を組み付けると、図11に示すように、オイルセパレータ82の各々のニップル部82aが、シール部材76の対応する貫通孔76aに、ケーシング20の内側から自動的に連結される。その後、シール部材76の貫通孔76aにケーシング20の外側からブリーズ管64をそれぞれ連結すると、オイルセパレータ82とブリーズ管64が貫通孔76aを介して互いに接続される。このように、本実施例の構造によると、ケーシング20内の限られた空間の中で、オイルセパレータ82にブリーズ管64を接続するという面倒な作業が必要とされない。なお、図11に示すように、ブリーズ管64は、シール部材76の貫通孔76aへ、ジョイント65を介して連結される。ただし、ブリーズ管64は、シール部材76の貫通孔76aへ、ジョイント65を用いることなく、直接的に連結してもよい。
【0049】
図10に示すように、キャブレタ74には、エアベントに接続されたホースニップル74bが設けられている。そのホースニップル74bの先端は、フィルタブラケット72に向けて伸びている。一方、フィルタブラケット72には、ホースニップル74bと対応する位置に、エアベント接続口72bが設けられている。この構造により、キャブレタマウント66にキャブレタ74を挟んでフィルタブラケット72を組み付けると、キャブレタ74のホースニップル74bが、フィルタブラケット72のエアベント接続口72bに自動的に連結される。従って、ケーシング20内の限られた空間の中で、キャブレタ74のホースニップル74bをフィルタブラケット72のエアベント接続口72bに、チューブなどを用いて接続するという面倒な作業が必要とされない。
【0050】
次に、図4、図12、図13を参照して、スロットルレバー30とスイッチレバー32の組付構造について説明する。図4に示すように、スロットルレバー30は、シャフト34によって支持されており、シャフト34を中心に揺動可能となっている。スロットルレバー30は、リンク30aを介して、キャブレタ74のスロットル弁に接続されている。また、同じシャフト34には、スロットルレバー30に加えて、スイッチレバー32も取り付けられている。スイッチレバー32も同様に、シャフト34を中心に揺動可能となっている。スイッチレバー32は、リンク32aを介して、キャブレタ74のチョーク弁に接続されている。
【0051】
図12は、スロットルレバー30及びスイッチレバー32が、ケーシング本体26に組み付けられた状態を示しており、図13は、それらの組み付けを分解した状態を示している。図12、図13に示すように、ケーシング本体26には、シャフト34の軸方向に伸びるシャフト受け溝26bが形成されている。シャフト受け溝26bは、シャフト34をその径方向から保持している。シャフト受け溝26bの上方は開放されているので、シャフト受け溝26bへシャフト34を容易に嵌め込むことができる。特に、スロットルレバー30、ばね部材30b、スイッチレバー32をシャフト34に予め取り付けた状態で、シャフト34をシャフト受け溝26bへ嵌め込むことができる。
【0052】
ここで、ユーザがスロットルレバー30又はスイッチレバー32を操作した時、各レバー30、32はシャフト34に対して下向きに力を加える。それに対して、シャフト受け溝26bは、その開口方向が上方を向いている。このように、シャフト受け溝26bの開口方向と、シャフト34が各レバー30、32から力を受ける方向が互いに異なることから、シャフト34がシャフト受け溝26bにしっかりと保持され、各レバー30、32の挙動が安定する。
【0053】
加えて、本実施例では、シャフト受け溝26bが二つに分断されており、二つのシャフト受け溝26bの間では、シャフト34の周囲に空間が形成される構造となっている。このように、シャフト受け溝26bがシャフト34の一部の長さ範囲のみに設けられ、他の長さ範囲ではシャフト34の周囲に空間が設けられる構造であると、シャフト受け溝26bに取り付けられたシャフト34を、容易に取り外すことも可能となる。
【0054】
図12、図13に示すように、フィルタブラケット72には、二箇所のシャフト抑え部72cが形成されている。シャフト抑え部72cは、シャフト受け溝26bに保持されたシャフト34に、そのシャフト受け溝26bが開口する方向(本実施例では上方)から当接する。この構造によると、シャフト34を抑えるための部材を別に設けることなく、シャフト受け溝26bに保持されたシャフト34が移動したり、シャフト受け溝26bから外れてしまうことを防止することができる。また、ケーシング本体26に固定されたフィルタブラケット72が、同じくケーシング本体26に支持されたシャフト34に当接することで、フィルタブラケット72がケーシング20内で支柱(あるいは梁)としても機能し、ケーシング20の剛性が有意に高められる。
【0055】
図12、図13に示すように、ケーシング本体26には、シャフト34の両端にそれぞれ対向する一対のシャフト位置決め部26cが設けられている。この構造により、サークリップ等の抜け止め部材をシャフト34に設けることなく、シャフト受け溝26bに保持されたシャフト34が、その軸方向に移動してシャフト受け溝26bから外れるようなことを防止することができる。
【0056】
次に、図14から図19を参照して、ガード50の構成について説明する。図14は、ガード50を右方から見た図であり、図15は、ガード50を前方から見た図であり、図16は、ガード50を下方から見た図である。また、図17は、図14中のXVII−XVII線における断面図であり、図18は、図16中のXVIII−XVIII線における断面図である。そして、図19は、エンジンカッター10によってワークWを切断している様子を示している。ここで、図中の直線Sは、回転刃12の回転面を示している。回転面Sは、回転する回転刃12が位置する仮想的な平面であり、回転刃12の回転軸に垂直であって、回転刃12を含む平面である。ただし、回転刃12は有限の厚みを有しているので、回転刃12の一方の端面の位置に合わせて、回転面Sが定められている。また、図19中の矢印Dは、ワークWの切粉が飛散する経路を示している。
【0057】
ガード50は、ガード面90と、一対のローラ52と、前方足部54を備えている。前方足部54は、ユーザがエンジンカッター10を傾けやすいように、その角部54aが曲面状に面取加工されている。一対のローラ52は、回転刃12の回転面Sを挟んで同軸に配置されており、その回転軸は回転刃12の回転軸と平行である。ガード面90は、一対のローラ52の間に設けられている。ガード面90は、ガード50に形成された溝状の曲面であり、回転刃12の回転面Sに沿って伸びている。
【0058】
図18に示すように、ガード面90は、概して、前方の斜め下方を向いた傾斜面となっている。即ち、回転刃12に近い前方の位置ほど、ワークの表面から離れるように傾斜している。ガード面90は、回転刃12から飛散するワークの切粉を、本体14の下方に向けて反射する。それにより、回転刃12から飛散したワークの切粉が、本体14においてユーザに向けて反射されることが防止される。なお、ガード50には、位置決め用の突起50aが複数形成されており、本体14に対して容易に組み付けられる構成となっている。ここで、ガード面90は、ワークの切粉が本体14の下方へスムーズに案内されるように、凹凸のない面か、凹凸の少ない面とすることができる。ただし、ワークの切粉を特定の方向へ案内するために、溝や突起を意図的に設けることもできる。
【0059】
ガード面90は、回転面Sを境界として、左方側(ユーザ側)の範囲90aと、右方側(駆動側)の範囲90bの間で、異なる形状を有している。即ち、ガード面90は、回転面Sを境界として、非対称の形状を有している。その結果、ガード面90は、回転刃12から飛散した切粉を、回転刃12の回転面Sに対して非対称に反射する。
【0060】
特に、本実施例のガード面90では、図17に示すように、左方側(ユーザ側)の範囲90aの全体において、その法線ベクトルNが回転面Sに向かうように、回転面Sに対して傾斜している。別の表現をすると、溝状に形成されたガード面90の左方側(ユーザ側)の範囲90aでは、回転面Sから離れるほどその深さが浅くなっている。従って、左方側(ユーザ側)の範囲90aでは、回転刃12から飛散した切粉が、回転面Sに向けて反射される。即ち、回転刃12から左方側(ユーザ側)に飛散した切粉を、右方側(駆動側)に向けて反射することができる。それにより、回転刃12から飛散した切粉の多くが、本体14の右方側(駆動側)へ反射される。ユーザは、その反対側である左方側(ユーザ側)に位置することで、切粉に阻害されることなく、エンジンカッター10を快適に使用することができる。
【0061】
上記したガード面90の形状は一例であり、ガード面90の形状を限定するものではない。回転刃12から飛散した切粉の過半数を、本体14の右方側(駆動側)へ反射できる形状であればよく、例えば、左方側(ユーザ側)の範囲90aと右方側(駆動側)の範囲90bの間で、ガード面90の角度、深さ、面積を異ならせてもよい。
【0062】
図19に示すように、ユーザは、ワークWの表面に一対のローラ52を当接させ、エンジンカッター10をワークWの表面に対して傾けた状態で、エンジンカッター10をワークWの表面に沿って移動させる。このとき、ワークWの表面に、障害物(例えばワークWの破片やワークWの突起部)が存在しても、ガード面90の傾斜によって障害物を乗り越えることができる。特に、本実施例のエンジンカッター10では、一対のローラ52を支点にし、ワークWの表面に対してエンジンカッター10を最大に傾けた時(図19の状態)でも、ガード面90が、回転刃12に近い位置(前方側)ほど、ワークWの表面から離れるように傾斜する。即ち、ワークWの表面からガード面90までの高さTが、回転刃12に近い位置(前方側)ほど高くなる。この構造によると、ワークWの表面に対してエンジンカッター10を傾けたときの角度にかかわらず、ワークWの表面に存在する障害物を、ガード面90の傾斜によって乗り越えることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0064】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0065】
10:エンジンカッター
12:回転刃
14:本体
18:エンジン
18a:オイル給油口
18b:オイル排出口
18c:駆動軸
20:ケーシング
22:ケーシングのトップカバー
24:ケーシングのフィルタカバー
26:ケーシングのケーシング本体
26b:ケーシング本体のシャフト受け溝
26c:ケーシング本体のシャフト位置決め部
28:後方グリップ
30:スロットルレバー
30a:スロットルレバーのリンク
32:スイッチレバー
32a:スイッチレバーのリンク
34:シャフト
40:燃料給油口
42:スタータレバー
44:リコイルスタータ
50:ガード
52:一対のローラ
56:カッターアーム
64:ブリーズ管
65:ジョイント
66:キャブレタマウント
66b:キャブレタマウントの支柱部
68:プレフィルタ
70:メインフィルタ
72:フィルタブラケット
72b:フィルタブラケットのエアベント接続口
72c:フィルタブラケットのシャフト抑え部
74:キャブレタ
74b:キャブレタのホースニップル
76:シール部材
76a:シール部材の貫通孔
82:オイルセパレータ
82a:オイルセパレータのニップル部
90:ガード面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持式のエンジンカッターであって、
円板状の回転刃と、
前記回転刃を駆動する4ストローク型のエンジンと、
を備えるエンジンカッター。
【請求項2】
前記エンジンへ供給される空気が通過するフィルタと、
前記フィルタを通過した空気に燃料を混合するキャブレタと、
前記フィルタ及び前記キャブレタを収容しているケーシングをさらに備え、
前記フィルタと前記キャブレタは、それらを空気が通過する方向に沿って、一直線上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンカッター。
【請求項3】
ユーザが把持するグリップをさらに備え、
前記フィルタと前記キャブレタと前記グリップは、前記エンジンを挟んで前記回転刃とは反対側に位置しており、エンジンカッターを水平面に載置したときに、前記フィルタの少なくとも一部が、前記グリップの上方に位置することを特徴とする請求項2に記載のエンジンカッター。
【請求項4】
エンジンカッターを水平面に載置したときに前記フィルタの上方に位置するプレフィルタをさらに備え、
前記エンジンへ供給される空気は、前記プレフィルタを通過した後に、その流れ方向を少なくとも180度変化させて、前記フィルタを通過することを特徴とする請求項2又は3に記載のエンジンカッター。
【請求項5】
水平面に載置したときに、前記エンジンが鉛直方向に対してキャブレタ側に傾くことを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載のエンジンカッター。
【請求項6】
前記フィルタと前記キャブレタの間に介在し、フィルタを通過した空気をキャブレタに案内するフィルタブラケットをさらに備え、
前記ケーシングは、フィルタブラケットが固定されているケーシング本体と、そのケーシング本体に取り付けられてフィルタブラケット及びフィルタを覆うフィルタカバーを有しており、
前記フィルタブラケット及び前記フィルタカバーは、共通の締付部材によって前記ケーシング本体に固定されている、
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載のエンジンカッター。
【請求項7】
前記ケーシングは、キャブレタを挟んでフィルタブラケットが組み付けられたキャブレタマウントをさらに有し、そのキャブレタマウントは、弾性部材を介してケーシング本体に取り付けられていることを特徴とする請求項6に記載のエンジンカッター。
【請求項1】
手持式のエンジンカッターであって、
円板状の回転刃と、
前記回転刃を駆動する4ストローク型のエンジンと、
を備えるエンジンカッター。
【請求項2】
前記エンジンへ供給される空気が通過するフィルタと、
前記フィルタを通過した空気に燃料を混合するキャブレタと、
前記フィルタ及び前記キャブレタを収容しているケーシングをさらに備え、
前記フィルタと前記キャブレタは、それらを空気が通過する方向に沿って、一直線上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンカッター。
【請求項3】
ユーザが把持するグリップをさらに備え、
前記フィルタと前記キャブレタと前記グリップは、前記エンジンを挟んで前記回転刃とは反対側に位置しており、エンジンカッターを水平面に載置したときに、前記フィルタの少なくとも一部が、前記グリップの上方に位置することを特徴とする請求項2に記載のエンジンカッター。
【請求項4】
エンジンカッターを水平面に載置したときに前記フィルタの上方に位置するプレフィルタをさらに備え、
前記エンジンへ供給される空気は、前記プレフィルタを通過した後に、その流れ方向を少なくとも180度変化させて、前記フィルタを通過することを特徴とする請求項2又は3に記載のエンジンカッター。
【請求項5】
水平面に載置したときに、前記エンジンが鉛直方向に対してキャブレタ側に傾くことを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載のエンジンカッター。
【請求項6】
前記フィルタと前記キャブレタの間に介在し、フィルタを通過した空気をキャブレタに案内するフィルタブラケットをさらに備え、
前記ケーシングは、フィルタブラケットが固定されているケーシング本体と、そのケーシング本体に取り付けられてフィルタブラケット及びフィルタを覆うフィルタカバーを有しており、
前記フィルタブラケット及び前記フィルタカバーは、共通の締付部材によって前記ケーシング本体に固定されている、
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載のエンジンカッター。
【請求項7】
前記ケーシングは、キャブレタを挟んでフィルタブラケットが組み付けられたキャブレタマウントをさらに有し、そのキャブレタマウントは、弾性部材を介してケーシング本体に取り付けられていることを特徴とする請求項6に記載のエンジンカッター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−177864(P2011−177864A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46692(P2010−46692)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】
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