説明

エンジンカー用送信機

【課題】 従来の送信機にあっては、走行中においてコースを外れたり障害物に当たって後退操作を行うためにトリガを逆方向に操作した場合、ラジオコントロールカーが完全に停止していない状態であるとミッションが前進から後進に切り換えられるためにミッションの歯車が破損したり、エンジンに対して過大を負担をかけて故障するといった問題があった。
【解決手段】 ラジオコントロールカー用送信機において、エンジンのスロットルを制御するためのトリガ64が中立位置でない状態においてミッションの切り換え操作が行われても、前記ミッション切り換え出力の送信が行わないようにしたエンジンカー用送信機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを駆動源とし、かつ、トランスミッションを装備し前進、後退が可能なラジオコントロールカーを操作するための送信機であって、前記ラジオコントロールカーの前進から後退あるいは後退から前進への切り換え時に、前記トランスミッションやエンジンに対して過大な負荷が加わらないようにしたエンジンカー用送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来においてラジオコントロールカーを制御する送信機は、特開2001−62160に開示されているものが使用されている。この送信機は人さし指で操作するトリガを手前に引くことで駆動源(モータ)が前進方向に回転されラジオコントロールカーは前進し、逆方向に操作することで駆動源(モータ)を逆回転させてラジオコントロールカーは後退するものである。
【0003】
前記したラジオコントロールカーの駆動源として電気によるモータを使用している場合には、トリガを前後動する動作を行ってもモータが正逆回転を行うだけであることから、ステアリング制御用とモータの速度制御用と2チャンネルの送信機を利用することで、ラジオコントロールカーの前進と後退を行うことが可能である。しかし、駆動源をエンジンとした場合には構造上、エンジンは一方向にしか回転しないので、トランスミッション(以下、ミッションという)の前後退切り換えを行うための3番目のチャンネルが必要となる。
【0004】
この3チャンネルの送信機の回路構成は図3に示すものである。すなわち、進行方向の操縦を行うためのステアリング制御用のステアリングチャンネル回路1と、走行速度を制御するためにエンジンのスロットル開度を制御するためのスロットルチャンネル回路2と、前進、後退を制御するためにミッションを切り換えるためのミッションチャンネル回路3と、これら3つのチャンネル回路よりの出力を信号化し変調を行い送信する送信部4と、該送信部4よりの電波を送信するアンテナ5とから構成されている。
【0005】
このような送信機によってエンジンを駆動源とするラジオコントロールカーを操作した場合の動作について説明するに、ミッションチャンネル回路3によってミッションが前進状態となっている場合において、トリガを手前に引くとスロットルチャンネル回路2がトリガの操作量に応じた出力を送出し、この出力を受けたラジオコントロールカーの受信機がエンジンへの燃料供給量を制御するサーボを操作して速度制御を行い、また、ステアリング調整用のホイールを操作するとステアリングチャンネル回路1からホイールの操作量に応じた出力を送出し、この出力を受けた受信機がステアリング角度を制御するサーボを操作して進行方向を制御するものである。
【特許文献1】特開2001−62160
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記した送信機にあっては走行中においてコースを外れたり障害物に当たって後退操作を行うためにミッションチャンネル回路3を逆方向に操作してミッションチャンネル回路を後退にした場合、ラジオコントロールカーが完全に停止していない状態であるとミッションが前進から後退に切り換えられるためにミッションの歯車が破損したり、エンジンに対して過大な負担をかけて故障するといった問題があった。
【0007】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、トリガのニュートラル位置、すなわち、スロットルチャンネル回路2より出力が送出されていない状態以外においては、ミッション切り換え操作を行っても送信機からミッションの切り換えを行わせるための出力を送信しないようにして、ミッションのギア破損やエンジンに対して過大な負荷がかからないようにしたエンジンカー用送信機を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエンジンカー用送信機は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、ラジオコントロールカー用送信機において、エンジンのスロットルを制御するためのトリガが中立位置でない状態においてミッションの切り換え操作が行われても、前記ミッション切り換え出力の送信が行わないようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の手段は、エンジンカーを操縦するための送信機であって、ステアリング操作の操作量に応じた出力を送出するステアリングチャンネル回路と、トリガ操作の操作量に応じた出力を送出するスロットルチャンネル回路と、該スロットルチャンネル回路よりの出力がトリガをニュートラル位置にした時の出力である場合に出力を送出するニュートラル位置検出回路と、前進、後退のギアチェンジを行うミッションの切り換え操作を行うと出力を送出するミッションチャンネル回路と、前記ニュートラル位置検出回路よりの出力がある場合に前記ミッションチャンネル回路よりの出力を送出する判断回路と、前記ステアリングチャンネル回路よりの出力と前記ニュートラル位置検出回路を介しての前記スロットルチャンネル回路よりの出力および前記判断回路を介しての前記ミッションチャンネル回路よりの出力を信号化し変調してアンテナより送信する送信部とから構成したものである。
【0010】
請求項3の手段は、前記した請求項2において、前記ミッションチャンネル回路を制御するための操作部材が前進と後退の切り換えが可能なスイッチであることを特徴とする。
【0011】
請求項4は前記した請求項2において、前記ミッションチャンネル回路を制御するための操作部材が前進、後退の切り換えおよびニュートラル位置を有するスイッチであることを特徴とする。
【0012】
請求項5の手段は、前記した請求項1または2において、前記トリガのニュートラル位置を挟んだ1つの方向への操作がスロットルの操作であり、他の方向への操作がエンジンの出力軸に装備されたブレーキ機構の操作であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は前記したように、エンジンのスロットルを制御するためのトリガが中立位置でない状態においてミッションの切り換え操作が行われても、前記ミッション切り換え出力の送信が行わないようにしたので、前進から後退あるいは後退から前進への切り換え時に、ミッションのギア破損やエンジンに対して過大な負荷が加わることがなく、ラジオコントロールカーを長期間にわたって使用することができる。
【0014】
また、ミッションを切り換えるための操作部材が前進、後退の切り換え位置以外にニュートラル位置を設けることにより、操作部材をニュートラル位置とすることでラジオコントロールカーのミッションもニュートラル位置となって、エンジン始動時にラジオコントロールカーに走行力が加わることがないので始動を安全に行うことができ、かつ、エンジンの調子を見るための空ふかしも行える。
【0015】
さらに、トリガのニュートラル位置を挟んだ1つの方向への操作がスロットルの操作となし、他の方向への操作がエンジンの出力軸に装備されたブレーキ機構の操作とすることで、コーナリング時の減速も簡単に行え、かつ、障害物等に当たりそうになった場合にもブレーキ操作で回避することができる等の効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、トリガの位置がニュートラル位置以外においてミッションの切り換え操作を行っても送信機からミッションの切り換えを行わせるための出力を送信しないようにした。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明に係るエンジンカー用送信機の一実施例を図1、図2と共に説明する。なお、図3と同一符号は同一回路を示し説明は省略する。
図2は送信機外観の正面図を示し、ケース6は操作者が把持する把持部61と、使用しない時に安定した状態で載置するための台部62とからなるピストル状の形状に形成された公知のものである。また、ケース6には公知のステアリングを操作するためのホイール63と、エンジンのスロットル開度を制御するためのトリガ64と、電源スイッチ65、アンテナ5等が装備されている。
【0018】
さらに、ケース6にはラジオコントロールカーにおけるミッションの前進、後退の切り換えを行うための操作部材であるスライドスイッチ66が装備されている。このスライドスイッチ66は3段階の切り換えが可能であって、摘みが中央に位置している状態が無操作位置Nと、手前(図において左)側はミッションを前進方向に切り換える前進位置Fと、前方(図において右)側はミッションを後退方向に切り換える後退位置Rとなっている。なお、ミッションの切り換えを行うための前記スライドスイッチに変えて回転式スイッチ等のような切り換え手段を使用することが可能である。
【0019】
そして、前進走行時にはスライドスイッチ66をF側にしておくことによりミッションは前進側に切り換えられており、また、後退走行時にはスライドスイッチ6をR側にしておくことによりミッションは後退側に切り換えられている。さらに、スライドスイッチ6をニュートラル位置であるNにすると、ミッションはニュートラル位置となるので、エンジンを始動する時や空ふかししてエンジンの状態を見る場合に有効な位置である。
【0020】
なお、前記したスライドスイッチ66として、前進、後退およびニュートラル位置を有するものとして説明したが、ニュートラル位置は必ずしも必要ではない。すなわち、ラジオコントロールカーを操縦するのみにあっては前進と後退の動きが行えれば操縦に支障はない。また、前記した説明にあっては、スライドスイッチ66を手前側にスライドすることで前進、前方側にスライドすることで後退する場合について説明したが、これは逆であってもよい。
【0021】
前記したトリガ64は手前(図において左)に引くとラジオコントロールカーにおけるエンジンのスロットル開度を開いて速度(前進、後退時)を速めるための出力をスロットルチャンネル回路2を介して送出し、また、前方(図において右)側に押すとエンジンの出力軸に取付けられているブレーキ機構を操作して制動を掛けるための出力をスロットルチャンネル回路2を介して送出するように構成されている。また、トリガ64のニュートラル位置には前後方向の回動量に対して約16%の不感帯が設けられており、ニュートラル位置を設定し易いようになっている。
【0022】
次に、図1の回路ブロック図について説明するに、7はトリガ64がニュートラル位置にある時、すなわち、トリガ64を操作すると抵抗値が変化するように構成されているので、この抵抗値がニュートラル位置となった時の抵抗値を監視することでニュートラル位置であるか否かを判別するニュートラル位置検出回路である。
【0023】
また、8は前記ニュートラル位置検出回路7がトリガ位置がニュートラル位置であるとの判断をしていない状態において、前記スライドスイッチ66を操作してミッションチャンネル回路3から出力が送出されても、該ミッションチャンネル回路3からの出力を送信部4に送出せず、ニュートラル位置検出回路7がトリガ位置がニュートラル位置であると判断している時のみミッションチャンネル回路3からの出力を送信部4に送出する判断回路である。
【0024】
次に、前記した図1の回路ブロック図と図2の送信機外観正面図とから動作を説明する。
トリガ64を操作してラジオコントロールカーを前進または後退させると共にトリガ64の操作量を変えて速度を調整し、かつ、該走行時においてホイール63を回動してラジオコントロールカーを左あるいは右方向に進行方向を変更する制御は従来と全く異なることがないので説明は省略する。なお、前進時にはスライドスイッチ6はFの位置に、後退時にはRの位置にしておくことは当然のことである。
【0025】
次に、前進時において障害物に当たったり、走行コースを外れたりして後退させる場合の動作を説明する。
先ず、トリガ64をニュートラル位置に戻す。トリガ64がニュートラル位置になるとスロットルチャンネル回路2はニュートラル電圧を検出するので、該ニュートラル電圧検出回路7より判断回路8に出力が送出される。この状態において、スライドスイッチ66をFからNを通過させてR位置にスライドさせると、ミッションチャンネル回路3から判断回路8に対してミッションを後退に切り換える出力が判断回路8に送出される。
【0026】
ここで、判断回路8はニュートラル位置検出回路7よりの出力が入力されていることで、ミッションチャンネル回路3よりの出力を受けて送信部4に対してラジオコントロールカーのミッションを後退側に切り換える出力を送出するように指令するので、送信部4はアンテナ5を介してラジオコントロールカーのミッションを後退側に切り換える出力を送信する。
【0027】
このミッション切り換え出力を受けたラジオコントロールカーに搭載されている受信機はミッション切り換え用のサーボに対して切り換え出力を送出してミッションを後退側に切り換える。このミッション切り換え時にはエンジンの回転数は低い状態となっているので、ミッションのギアが損傷することもなく、また、エンジンに対して過度な負荷を掛けることもない。
【0028】
なお、前記説明では前進状態のラジオコントロールカーを後退させる場合の動作説明であるが、後退状態のラジオコントロールカーを前進させる場合にも前記したと同様な動作を行うことでミッションのギアを損傷したりエンジンに対して過度な負荷を掛けることがなくなる。この切り換え時にスライドスイッチ66の操作はRからF側に切り換えることは当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るエンジンカー用送信機の回路ブロック図である。
【図2】送信機の正面図である。
【図3】従来のエンジンカー用送信機の回路ブロック図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ステアリングチャンネル回路
2 スロットルチャンネル回路
3 ミッションチャンネル回路
4 送信部
5 アンテナ
6 送信機
63 ホイール
64 トリガ
66 スライドスイッチ
7 ニュートラル位置検出回路
8 判断回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジオコントロールカー用送信機において、エンジンのスロットルを制御するためのトリガが中立位置でない状態においてミッションの切り換え操作が行われても、前記ミッション切り換え出力の送信が行わないようにしたことを特徴とするエンジンカー用送信機。
【請求項2】
エンジンカーを操縦するための送信機であって、ステアリング操作の操作量に応じた出力を送出するステアリングチャンネル回路と、トリガ操作の操作量に応じた出力を送出するスロットルチャンネル回路と、該スロットルチャンネル回路よりの出力がトリガをニュートラル位置にした時の出力である場合に出力を送出するニュートラル位置検出回路と、前進、後退のギアチェンジを行うミッションの切り換え操作を行うと出力を送出するミッションチャンネル回路と、前記ニュートラル位置検出回路よりの出力がある場合に前記ミッションチャンネル回路よりの出力を送出する判断回路と、前記ステアリングチャンネル回路よりの出力と前記ニュートラル位置検出回路を介しての前記スロットルチャンネル回路よりの出力および前記判断回路を介しての前記ミッションチャンネル回路よりの出力を信号化し変調してアンテナより送信する送信部とから構成したことを特徴とするエンジンカー用送信機。
【請求項3】
前記ミッションチャンネル回路を制御するための操作部材が前進と後退の切り換えが可能なスイッチであることを特徴とする請求項2記載のエンジンカー用送信機。
【請求項4】
前記ミッションチャンネル回路を制御するための操作部材が前進、後退の切り換えおよびニュートラル位置を有するスイッチであることを特徴とする請求項2記載のエンジンカー用送信機。
【請求項5】
前記トリガのニュートラル位置を挟んだ1つの方向への操作がスロットルの操作であり、他の方向への操作がエンジンの出力軸に装備されたブレーキ機構の操作であることを特徴とする請求項1または2記載のエンジンカー用送信機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−325708(P2006−325708A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150509(P2005−150509)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(390024822)京商株式会社 (15)
【Fターム(参考)】