説明

エンジンルームの遮音構造

【課題】エンジンルーム内の冷却効率を維持しつつ、かつ、機体外に漏れる騒音を極力減少させる装置を得ようとするものである。
【解決手段】少なくとも、エンジンルーム2を形成する同一板上に2以上の排気口8を形成させ、各排気口8を、複数のルーバ6で鎧戸状に塞ぐとともに、その上部を、排気口8の一端側のみ開口させる蓋状カバー1で覆う作業機械のエンジンルーム2の遮音構造である。エンジンルーム2内の熱風は、蓋状カバー1とルーバ6に遮られつつも、不必要な滞留なしに適度な流れを形成しながら外部に出ていくことになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンルームの遮音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイールローダ、油圧ショベル等の作業機械では、エンジンルーム内にはオイルクーラ及びラジエータといった冷却装置、またそれらを冷却するための冷却用ファンが設置されている。冷却用ファンにより生じた冷却風は、オイルクーラ、ラジエータに接することによって、熱交換され、それら冷却装置の冷却効率を高く維持することができる。冷却風は、エンジンルーム内を循環後、熱風となり、エンジンルーム内の熱を逃がすためエンジンルームに設けられた排気口より排出される。
【0003】
ところで、エンジンルーム内は、エンジンや冷却ファン等の駆動音により騒音が発生しており、上記した熱風が排気口から排出される際、その騒音が熱風とともに機体外部に漏れることになる。そこで、従来は、冷却用ファンによる冷却装置の冷却効率を下げないように考慮しつつ、外に漏れる騒音を軽減するために、エンジンルーム内の排気口周辺に遮音を目的としたガードを設ける種々の対策が採られている(例えば、特許文献1の図2、図4、特許文献2の図2、図4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−353265号公報(図2、図4)
【特許文献2】特開2005−133661号公報(図2、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のガード構造では、いずれの構造も、空気の流れを遮断して騒音を軽減することと、空気の流れによるクーリング効果を向上させることとの双方のバランスが欠けるものとなっていた。
【0006】
この発明は、従来技術の以上のような問題に鑑み創案されたもので、エンジンルーム内の冷却効率を維持しつつ、かつ、機体外に漏れる騒音を極力減少させる装置を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、この発明に係るエンジンルームの遮音構造は、少なくとも、エンジンルームを形成する同一板上に2以上の排気口を形成させ、各排気口を、複数のルーバで鎧戸状に塞ぐとともに、その上部を、排気口の一端側のみ開口させる蓋状カバーで覆ったことを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、排気口をルーバで鎧戸状に塞ぎ、さらにその上部を蓋状カバーで覆っており、排気口を通過する空気は二重に遮られることになる。したがって、その遮蔽効果により、エンジンルーム内からの騒音低減が図られる。その一方、少なくとも、エンジンルームを形成する同一板上に2以上の排気口を形成させるとともに、各排気口に配置される蓋状カバーは一端側が開口され、かつルーバは鎧戸状となっており、エンジンルーム内の熱風は、蓋状カバーとルーバに遮られつつも、不必要な滞留なしに適度な流れを形成しながら外部に出ていくことになる。すなわち、本発明では、二重の遮蔽物による熱風の効率的な遮蔽効果と、その遮蔽の中における空気の適度の流れによるクーリング効果とによって、エンジンルーム内の冷却と、機体外に漏れる騒音の低減の両方のバランスを図っている。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、この発明によれば、エンジンルーム内の冷却効率を維持しつつ、かつ、機体外に漏れる騒音を極力減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る実施形態例を示す図である。図1(a)はホイールローダのエンジンルームの構成概要図、図1(b)はエンジンルーム底板の斜視図である。
【図2】本形態例が適用されるホイールローダを示し、図2(a)は、ホイールローダの全体構成を示す右側面図、図2(b)は、ホイールローダの車体後方を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願に係る発明の具体的実施形態例を図面に基づき説明する。本形態例は、作業機械の代表例であるホイールローダに適用された一例を示す。なお、本願に係る発明が以下の形態例に限定されるものでないことは当然であり、適用される作業機械は、油圧ショベル等の他の車両であってももちろんよい。
【0012】
図2は、本形態例が適用されるホイールローダを示し、同図(a)は、ホイールローダの全体構成を示す右側面図、同図(b)は、ホイールローダの車体後方を示す背面図である。図中、5は底板、6はルーバ、10はホイールローダ、11は車体フードを各示す。ホイールローダ10は、前部車体と後部車体とからなり、後部車体のフード11内に図1(a)に示すエンジンルーム2が配置される。後述するルーバ6は、本形態例においてはエンジンルーム底板5に配置される。
【0013】
図1は本発明に係る実施形態例を示し、同図(a)はホイールローダのエンジンルームの構成概要図、同図(b)はエンジンルーム底板の斜視図である。図中、1は蓋状カバー、2はエンジンルーム、3はエンジン、4は冷却用ファン、5は底板、6はルーバ、7はラジエータ、8は排気口、9は吸気口である。また、矢印は風向きを示している。
【0014】
エンジンルーム2は、天井板に吸気口9が、底板5に排気口8が形成される。また、エンジンルーム2内には、エンジン3の側方に冷却ファン4が取り付けられ、その冷却ファン4に対面するようにラジエータ7が配置される。
【0015】
前記底板5に形成される排気口8は、図示のように2箇所となっている。各排気口8には、複数のルーバ6が斜めに傾きながら並行に配置され、排気口8はそのルーバ6により鎧戸状に塞がれる。また、各排気口8の上部には、蓋状カバー1が配置される。蓋状カバー1は、一端のみ開口を有した蓋状であり、それが各排気口8の上部に配置されることで、排気口8の一端側(図では向かって左側)のみ開口させつつ覆うことになる。また、蓋状カバー1は、その天井部が閉じている側に向かって下っていくテーパ状に形成されている。この天井部のテーパの傾き方向は、前記ルーバ6の傾き方向と一致させている。
【0016】
このような本形態例では、冷却ファン4が駆動することで、天井板の吸気口9から外気が取り入れられ、ラジエータ7及びエンジン3を冷却していく中で、熱風となる。その熱風は、エンジンルーム2内を流れる途中で各排気口8に向かうが、排気口8はルーバ6で鎧戸状に塞がれ、さらにその上部が蓋状カバー1で覆われているので、熱風はそれらに二重に遮られながら、機体外に出て行くことになる。したがって、その遮蔽効果により、エンジンルーム2内からの騒音低減が図られることになる。
【0017】
その一方、排気口8は底板5の2箇所に設けられ、また各排気口8に配置される蓋状カバー1は一端側が開口され、かつルーバ6は鎧戸状となっており、しかもカバー天井部のテーパとルーバ6は同じ傾斜方向となっていて、熱風は蓋状カバー1とルーバ6に遮られつつも、不必要な滞留なしに適度な流れを形成しながら外部に出ていくことになる。すなわち、本形態例は、二重の遮蔽物による熱風の効率的な遮蔽効果と、その遮蔽の中での適度の流れによるクーリング効果とによって、エンジンルーム2内の冷却と、機体外に漏れる騒音の低減の両方のバランスが図られるものとなっている。
【0018】
なお、本発明が以上の形態例に限定されないことはいうまでもなく、例えば排気口8が3以上設けられても、また排気口8が天井板や側板に設けられても、さらには蓋状カバー1やルーバ6の形状に変更があっても、それら態様の変更が、本願の特許請求の範囲に記載した構成に含まれ得る態様であれば、当然にその技術的範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明は、エンジンルームの遮音構造に利用できる技術である。
【符号の説明】
【0020】
1 蓋状カバー
2 エンジンルーム
6 ルーバ
8 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、エンジンルームを形成する同一板上に2以上の排気口を形成させ、各排気口を、複数のルーバで鎧戸状に塞ぐとともに、その上部を、排気口の一端側のみ開口させる蓋状カバーで覆ったエンジンルームの遮音構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate