説明

エンジン自動停止再始動装置

【課題】エンジン再始動を確実に実行でき、かつ、スタータモータの通電時間を最小の期間に抑制できるエンジン自動停止再始動装置を得る。
【解決手段】再始動開始後、エンジンへ燃料を噴射させ、スタータモータ41の通電を開始するとともに、通電時間の計測を開始し、エンジン回転数と、計測した通電時間に基づいて回転数テーブルから求めたピニオンギア予測回転数の回転数差の絶対値が、ピニオンギアとリングギアが噛み合い可能な回転数差閾値より小さくなると、ソレノイド43の通電を開始し、エンジン回転数がピニオンギア予測回転数より大きい場合に、エンジンが燃料供給のみで自立回転可能な状態になると、エンジンが自己復帰したと判断し、エンジンが自己復帰したと判断した場合には、スタータモータ41の通電を終了し、通電時間の計測を終了するとともに、ソレノイド43の通電を終了するエンジン制御装置100を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、その後、再始動条件が成立するとエンジンを再始動させるエンジン自動停止再始動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車の燃費の改善や環境負荷の低減等を目的として、運転者の操作によりエンジンを停止するための所定の条件(例えば、車両が所定車速以下で、ブレーキペダルの踏み込み操作)が満たされると、自動で燃料をカットしてエンジンを自動的に停止させ、その後、運転者の操作によりエンジンを再始動するための所定の条件(例えば、ブレーキペダルの解除操作、アクセルペダルの踏み込み操作等)が満たされると、燃料噴射を再開してエンジンを自動的に再始動させるようにした、エンジン自動停止再始動装置が開発されている。
【0003】
従来、以下のようなエンジン自働停止再始動装置が提案されている(例えば、2010年2月18日出願の特願2010−033545参照)。すなわち、アイドルストップ後にエンジンの再始動を開始したとき、エンジンの回転数に基づいて、燃料供給の再開により自己復帰(再始動)できる状態にあるか否かを判断し、自己復帰できると判断された場合には、スタータモータを使用せずに燃料の供給のみによってエンジンを再始動する。また、自立的に自己復帰できないと判断された場合には、スタータモータへの通電を開始し、スタータモータの回転数とエンジン回転数を同期させた時点でピニオンギアとリングギアの連結を開始し、スタータモータの回転数(ここでは、ピニオンギア回転数と同義。以下同様)とエンジン回転数が同期した時点でピニオンギアとリングギアの連結を完了し、スタータモータによりエンジンを駆動し、エンジンが自己復帰できると判断された場合には、ピニオンギアとリングギアの連結を解除させる。
【0004】
この先行出願(特願2010−033545)に記載されたエンジン自働停止再始動装置の場合、エンジンの回転が完全に停止した状態になるのを待たずに、ピニオンギアとリングギアの噛み合い状態が実現されるので、迅速なエンジンの再始動が可能となる。また、燃料を供給するのみで自己復帰できると判断された場合には、スタータモータが回転を開始していても、スタータモータの回転を停止し、燃料の供給のみによってエンジンを再始動するようにしているので、スタータモータの使用頻度が少なくなり、エネルギーの消費量を少なくすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の先行出願の装置の場合、図13に示すように、時刻t1でエンジン自動停止後、エンジンの再始動を開始した時刻t2でエンジン回転数が自立復帰できないと判断し、スタータモータへの通電を開始し、時刻t3でピニオンギアとリングギアの連結を開始し、時刻t4でその連結が完了する。その後、時刻t5でエンジンの燃焼によりエンジン回転数が上昇し、エンジン回転数の上昇を燃焼判定カウンタによりカウントする。この燃焼判定カウンタが時刻t6で自己復帰判定閾値以上となると、エンジンが自己復帰したと判断し、ピニオンギアとリングギアの連結状態を解除し、スタータモータへの通電を停止する。しかしながら、エンジンの燃焼が不安定であった場合、エンジンが自己復帰したと判断することにより、ピニオンギアとリングギアの連結状態を解除し、スタータモータへの通電を停止すると、再始動ミスが発生する、すなわち、エンジンが自己復帰していないにもかかわらず、エンジンとスタータモータの連結状態を解除していまいエンストが発生するという課題があった。
【0006】
このため、先行出願では、エンジン回転数が低回転の領域で再始動する場合、エンジンの自己復帰を判定する自己復帰判定閾値を大きくすることで、エンジンの燃焼が不安定であっても、エンジン回転数が自己復帰する回転数までスタータモータを駆動することで、再始動ミスを減らす方法も提案されている。しかしながら、図14に示すように、時刻t1でエンジン自動停止後、エンジンの再始動を開始した時刻t2でエンジン回転数が自立復帰できないと判断し、スタータモータへの通電を開始し、時刻t3でピニオンギアとリングギアの連結を開始し、時刻t4でその連結が完了する。その後、時刻t5でエンジンの燃焼により回転数が上昇し、エンジン回転数の上昇を燃焼判定カウンタによりカウントする。時刻t5以降でエンジンの燃焼が安定し、スタータモータの駆動によらずエンジンが自己復帰していても、自己復帰判定閾値を大きく設定すると、時刻t6で燃焼判定カウンタが自己復帰判定閾値以上となるまで、ピニオンギアとリングギアの連結状態を保持し、スタータモータへの通電を行うため、無駄なエネルギーを消費してしまうという課題があった。
【0007】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、エンジン再始動を確実に実行することができ、かつ、スタータモータの通電時間を最小の期間に抑制することができるエンジン自動停止再始動装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエンジン自動停止再始動装置は、自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、その後、再始動条件が成立するとエンジンを再始動させるエンジン自動停止再始動装置であって、通電されることにより回転するスタータモータと、前記スタータモータの回転軸に設けられたピニオンギアと、前記ピニオンギアを回転軸方向へ押し出してエンジンのクランク軸に設けられたリングギアと噛み合わせるためのプランジャと、通電されることにより前記プランジャを回転軸方向へ移動させるソレノイドと、第1の駆動信号により、電源と前記スタータモータを接続して前記スタータモータへ通電し、第2の駆動信号により、前記電源と前記ソレノイドを接続して前記ソレノイドへ通電する始動制御装置と、エンジンのクランク角を検出してクランク角信号を出力するクランク角センサと、エンジンへ燃料を噴射する燃料噴射装置と、前記スタータモータの通電時間とピニオンギア予測回転数の関係を記述した回転数テーブルと、再始動開始後、前記燃料噴射装置を制御してエンジンへ燃料を噴射させ、前記始動制御装置へ第1の駆動信号を出力して、前記スタータモータの通電を開始するとともに、前記スタータモータの通電時間の計測を開始し、クランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数と、計測した通電時間に基づいて前記回転数テーブルから求めたピニオンギア予測回転数の回転数差の絶対値が、前記ピニオンギアと前記リングギアが噛み合い可能な回転数差閾値より小さくなると、前記始動制御装置へ第2の駆動信号を出力して、前記ソレノイドの通電を開始し、クランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数が、計測した通電時間に基づいて前記回転数テーブルから求めたピニオンギア予測回転数より大きい場合に、エンジンが燃料供給のみで自立回転可能な状態になると、エンジンが自己復帰したと判断し、エンジンが自己復帰したと判断した場合には、前記始動制御装置へ第1の駆動信号を出力せずに、前記スタータモータの通電を終了し、前記スタータモータの通電時間の計測を終了するとともに、前記始動制御装置へ第2の駆動信号を出力せずに、前記ソレノイドの通電を終了するエンジン制御装置とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るエンジン自動停止再始動装置によれば、エンジンが惰性回転中にピニオンギアとリングギアの噛み合わせを実行しなければならない場合に、エンジン再始動を確実に実行することができ、かつ、スタータモータの通電時間を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置におけるエンジン再始動時の燃料噴射を説明する図である。
【図6】スタータモータの通電時間とピニオンギア予測回転数の関係を記述した回転数テーブルを示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の再始動後のエンジンの燃焼が不安定な場合の動作を示すタイミングチャートである。
【図8】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の再始動後のエンジンの燃焼が安定な場合の動作を示すタイミングチャートである。
【図9】この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の再始動後の回転脈動によりエンジンの燃焼が不安定な場合の動作を示すタイミングチャートである。
【図10】この発明の実施の形態2に係るエンジン自動停止再始動装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態2に係るエンジン自動停止再始動装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】この発明の実施の形態2に係るエンジン自動停止再始動装置の再始動後の回転脈動によりエンジンの燃焼が不安定な場合の動作を示すタイミングチャートである。
【図13】従来のエンジン自動停止再始動装置の再始動後のエンジンの燃焼が不安定な場合の動作を示すタイミングチャートである。
【図14】従来のエンジン自動停止再始動装置の再始動後のエンジンの燃焼が安定な場合の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のエンジン自動停止再始動装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0012】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置について図1から図8までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の構成を示すブロック図である。なお、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0013】
図1において、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置は、車両の速度を検出して車速信号を出力する車速センサ11と、ペダルの動作状態を示すブレーキ信号を出力するブレーキペダル12と、アクセル開度を検出してアクセル開度信号を出力するアクセル開度センサ13と、エンジン20と、始動制御装置30と、始動装置40と、エンジン制御装置(ECU:Engine Control Unit)100とが設けられている。
【0014】
エンジン20は、燃料噴射装置21と、エンジンのクランク軸に連結されているリングギア22と、燃料の噴射を行うシリンダを決定するためのクランク角を検出してクランク角信号を出力するクランク角センサ23とが設けられている。
【0015】
始動制御装置30は、エンジン制御装置100から出力される駆動信号S1により、電源とスタータモータ41を接続してスタータモータ41へ通電し、エンジン制御装置100から出力される駆動信号S2により、電源とソレノイド43を接続してソレノイド43へ通電する。また、始動制御装置30は、スタータモータ41への通電と、ソレノイド43への通電を、それぞれ独立して制御することができる。
【0016】
始動装置40は、通電されることにより回転するスタータモータ41と、スタータモータ41の回転軸に設けられたピニオンギア42と、ピニオンギア42を回転軸方向へ押し出してエンジンのクランク軸に設けられたリングギア22と噛み合わせるためのプランジャ44と、通電されることによりプランジャ44を回転軸方向へ移動させるソレノイド43とが設けられている。
【0017】
エンジン制御装置100は、燃料噴射装置21を制御すると共に、自動停止条件あるいは再始動条件を判定して駆動信号S1、S2を始動制御装置30へ出力する。
【0018】
エンジン制御装置(ECU)100は、各種のI/F回路(図示しない)と、マイクロコンピュータ(図示しない)とから構成されている。また、マイクロコンピュータは、各種のセンサの検出信号などのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器(図示しない)と、エンジン自動停止再始動制御プログラムなどの各種の制御プログラムを実行するCPU(図示しない)と、エンジン自動停止再始動制御プログラム、各種の制御プログラムや制御定数、図6の回転数テーブルや各種のテーブル等を記憶するROM(図示しない)と、各種の制御プログラムを実行した際の変数等を記憶するRAM(図示しない)等から構成されている。
【0019】
つぎに、この実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0020】
エンジン制御装置(ECU)100のマイクロコンピュータで実行される処理の内容について、図2、図3及び図4のフローチャートを用いて説明する。図2−図4は、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置の動作を示すフローチャートである。
【0021】
図2−図4は、マイクロコンピュータで実行される処理を表すフローチャートであり、ステップ(図面上では、単に「S」と記す)101−107、ステップ201−208及びステップ301−306の処理は、ROM内のエンジン自動停止再始動制御プログラムによって実行される。
【0022】
図2は自動停止処理、図3は再始動制御処理、図4は自己復帰処理をそれぞれ表す。これらの処理は、例えば、1.25m秒の一定周期で実行される。
【0023】
エンジン制御装置(ECU)100は、車両のイグニッションスイッチがオンされると、電源が供給されて動作を開始する。エンジン制御装置100において、マイクロコンピュータのCPUが、ROM内のエンジン自動停止再始動制御プログラムを実行する。
【0024】
まず、図2のステップ101において、エンジン制御装置(ECU)100のマイクロコンピュータ(以下、単に「エンジン制御装置100」と記す)は、自動停止条件が成立しているか否かを判定する。この自動停止条件は、例えば、車速が5[km/h]以下で、かつ運転者がブレーキペダル12を踏んでいる動作状態等である。この車速は、車速センサ11から出力された車速信号に基づくもので、また、ブレーキペダル12が踏まれている動作状態は、ブレーキペダル12から出力されたブレーキ信号のON状態に基づくものである。自動停止条件が成立している場合(YES)には、次のステップ102へ進み、自動停止条件が成立していない場合(NO)には、ステップ107へ進む。
【0025】
次に、ステップ102において、エンジン制御装置100は、燃料噴射装置21を制御して、エンジン20への燃料供給を停止させる。
【0026】
次に、ステップ103において、エンジン制御装置100は、自動停止中フラグF1を「1」にセットする。
【0027】
次に、ステップ104において、エンジン制御装置100は、再始動条件が成立しているか否かを判定する。この再始動条件は、例えば、運転者がブレーキペダル12を解放している動作状態で、かつ運転者がアクセルペダルを踏んでいる動作状態等である。このブレーキペダル12が解放されている動作状態は、ブレーキペダル12から出力されたブレーキ信号のOFF状態に基づくもので、また、アクセルペダルが踏まれている動作状態は、アクセル開度センサ13から出力されたアクセル開度信号に基づくものである。再始動条件が成立している場合(YES)には、次のステップ105へ進み、再始動条件が成立していない場合(NO)には、本処理を終了する。
【0028】
次に、ステップ105において、エンジン制御装置100は、エンジン20が惰性回転中か否かを判定する。このエンジン20が惰性回転中か否かは、例えば、クランク角センサ23から出力されるクランク角信号の有無により判定する。エンジン20が惰性回転中の場合(YES)には、次のステップ106へ進み、エンジン20が回転していない、つまり完全に停止している場合(NO)には、本処理を終了する。
【0029】
次に、ステップ106において、エンジン制御装置100は、後述する図3に示す再始動制御ルーチンを実行する。
【0030】
ステップ107において、エンジン制御装置100は、自動停止中フラグF1が「1」であるか否かを判定する。自動停止中フラグF1が「1」である場合(YES)には、エンジン20が自動停止中であると判断し、再始動条件の成立を判定すべくステップ104へ進む。一方、自動停止中フラグF1が「0」である場合(NO)には、エンジン20が自動停止中ではないと判断し、本処理を終了する。
【0031】
図3のステップ201において、エンジン制御装置100は、燃料噴射装置21を制御して、エンジン20へ始動用燃料を噴射させる。
【0032】
ここで、エンジン20の再始動時の燃料噴射について説明する。図5は、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置におけるエンジン再始動時の燃料噴射を説明する図である。
【0033】
この図5はエンジン20が4気筒の場合を示し、図中の矢印は点火タイミングを表している。自動停止中は点火が中断され、再始動開始後所定のタイミング(ここでは、圧縮行程気筒のクランク角BTDC5°毎)で点火が再開される。また、図中の網掛け部は燃料噴射タイミングを表している。自動停止中は燃料噴射が中断され、再始動開始後、ほぼ同時に所定の複数気筒(例えば、吸気行程にある♯1気筒と排気行程にある♯3気筒)で燃料噴射が再開され(時刻t1)、それ以後は所定のタイミング(燃焼行程気筒のクランク角BTDC5°毎)で燃料噴射が再開される。
【0034】
エンジン制御装置100は、再始動後の燃料噴射により、エンジン初爆タイミングを決定し、エンジン初爆タイミングになると初爆判定フラグF2を「1」にセットする。例えば、図5の時刻t2で吸気行程にある♯1気筒に噴射された燃料は、時刻t5で点火されて初爆する。なお、エンジン制御装置100は、再度、自動停止条件が成立した時に初爆判定フラグF2を「0」にリセットする。
【0035】
次に、ステップ202において、エンジン制御装置100は、自己復帰判定フラグF3により、エンジン20が自己復帰したか否かを判定する。エンジン20が自己復帰していない場合、すなわち、自己復帰判定フラグF3が「0」の場合(NO)には、次のステップ203へ進む。一方、エンジン20が自己復帰した場合、すなわち、自己復帰判定フラグF3が「1」の場合(YES)には、エンジン20が燃焼により自己復帰したと判断し、ステップ206へ進む。
【0036】
次に、ステップ203において、エンジン制御装置100は、始動制御装置30へ駆動信号S1を出力して、スタータモータ41の通電をONにさせる。また、スタータモータ41の通電時間の計測を開始する。
【0037】
次に、ステップ204において、エンジン制御装置100は、エンジン回転数Nrとピニオンギア予測回転数Nstの回転数差の絶対値Ndiff1が回転数差閾値Ndiffth1未満か否かを判定する。絶対値Ndiff1が回転数差閾値Ndiffth1未満の場合(YES)には、次のステップS205へ進み、絶対値Ndiff1が回転数差閾値Ndiffth1以上の場合(NO)には、ステップ208へ進む。
【0038】
ここで、エンジン制御装置100は、クランク角センサ23から出力されるクランク角信号の周期に基づいてエンジン回転数Nrを演算する。また、エンジン制御装置100は、計測した通電時間に基づいて、例えば、図6に示すような、回転数テーブルからスタータモータ41の通電時間に対応したピニオンギア予測回転数Nstを求める。回転数差閾値Ndiffth1は、ピニオンギア42とリングギア22が噛み合い可能な値で、例えば、100[rpm]である。
【0039】
なお、エンジン回転数Nrは、クランク角センサ23のクランク角信号により演算する代わりに、回転エンコーダやリングギア22の歯に基づくパルスを検出できるパルス発生器からの検出信号をFV(周波数−電圧)変換して、求めても良い。また、通常、ピニオンギア42はリングギア22に比して歯数が少なく、混乱を避けるため、エンジン回転数Nr及びピニオンギア予測回転数Nstは、ピニオンギア42とリングギア22の歯数比を考慮して、リングギア22における回転数に換算した値を用いる。
【0040】
次に、ステップ205において、エンジン制御装置100は、始動制御装置30へ駆動信号S2を出力して、ソレノイド43の通電をONにさせる。
【0041】
ステップ206において、エンジン制御装置100は、自動停止中フラグF1を「0」にリセットする。
【0042】
次に、ステップ207において、エンジン制御装置100は、始動制御装置30へ駆動信号S1を出力せずに、スタータモータ41の通電をOFFにさせる。また、スタータモータ41の通電時間の計測を終了し、リセットする。
【0043】
次に、ステップ208において、エンジン制御装置100は、始動制御装置30へ駆動信号S2を出力せずに、ソレノイド43の通電をOFFにさせる。この場合、ソレノイド43とプランジャ44の間には吸引力が発生しないので、プランジャ44はスタータモータ41の回転軸の軸方向に移動せず、ピニオンギア42をその軸方向へ押し出すことは行われずに、ピニオンギア42とリングギア22が噛み合わない状態となる。
【0044】
まず、ステップ301において、エンジン制御装置100は、初爆判定フラグF2により、エンジン初爆タイミングが過ぎているか否かを判定する。エンジン初爆タイミングが過ぎている場合、すなわち、初爆判定フラグF2が「1」の場合(YES)には、次のステップ302へ進む。一方、エンジン初爆タイミングが過ぎていない場合、すなわち、初爆判定フラグF2が「0」の場合(NO)には、ステップ306へ進む。
【0045】
次に、ステップ302において、エンジン制御装置100は、エンジン回転数Nrがピニオンギア予測回転数Nstより大きいか否かを判定する。エンジン回転数Nrがピニオンギア予測回転数Nstより大きい場合(YES)には、エンジン20が自立的に回転していると判断し、ステップ303へ進む。一方、エンジン回転数Nrがピニオンギア予測回転数Nst以下の場合(NO)には、エンジン20が自立的に回転していないと判断し、ステップ306へ進む。
【0046】
次に、ステップ303において、エンジン制御装置100は、自立回転時間カウンタT1をカウントアップする。
【0047】
次に、ステップ304において、エンジン制御装置100は、自立回転時間カウンタT1が自己復帰判定閾値以上か否かを判定する。自立回転時間カウンタT1が自己復帰判定閾値以上の場合(YES)には、エンジン20が自己復帰したと判断し、ステップ305へ進む。一方、自立回転時間カウンタT1が自己復帰判定閾値未満の場合(NO)には、本処理を終了する。ここで、自己復帰判定閾値は、エンジン20が明らかに自立的に燃焼している時間、例えば、100[ms]である。
【0048】
次に、ステップ305において、エンジン制御装置100は、自己復帰判定フラグF3を「1」にセットして、本処理を終了する。なお、エンジン制御装置100は、自動停止条件が成立した後に、エンジン回転数Nrが所定値、例えば、700[rpm]を超えると、自己復帰判定フラグF3を「0」にリセットする。
【0049】
ステップ306において、エンジン制御装置100は、自立回転時間カウンタT1を「0」にリセットした後、本処理を終了する。
【0050】
続いて、タイミングチャートの時刻に沿って、エンジン自動停止再始動装置の動作を説明する。
【0051】
図7に示すタイミングチャートは、車両走行状態からエンジン自動停止を実施し、エンジン回転中にピニオンギア42とリングギア22を噛みわせ、スタータモータ41のクランキングによりエンジン再始動を行ったときに、エンジン20の燃焼が不安定な場合の動作を示す。
【0052】
図7において、(a)はエンジン回転数(実線)、スタータモータ回転数すなわち、ピニオンギア予測回転数Nst(破線)、及びピニオンギア実回転数(点線)の時間的推移を示す。なお、ピニオンギア実回転数は、比較のため、回転数センサを用いて実験的に求めたものである。(b)は自動停止中フラグF1の状態を示し、エンジン20が自動停止中である場合は「1」にセットされ、エンジン20が自己復帰した場合には「0」にリセットされる。
【0053】
(c)はソレノイド43の通電状態の時間的推移を示す。(d)はスタータモータ41の通電状態の時間的推移を示す。(e)は初爆判定フラグF2の状態を示し、再始動開始後の燃料噴射にあわせ、エンジン初爆タイミングになると「1」にセットされ、エンジン自動停止時に「0」にリセットされる。
【0054】
(f)は自立回転時間カウンタT1の時間的推移を示し、エンジン20が自立回転しているときはカウントアップされ、エンジンが自立回転していないときには「0」にリセットされる。(g)は自己復帰判定フラグF3の状態を示し、エンジンが自己復帰したときは「1」にセットされ、自動停止条件が成立した後に、エンジン回転数Nrが所定値、例えば、700[rpm]を超えたときは、「0」にリセットされる。
【0055】
最初に、車両走行中に自動停止条件が成立した時刻t1において、自動停止中フラグF1が「1」にセットされる(図2のステップ103)。次に、再始動条件が成立した時刻t2において、燃料噴射を再開すると同時に、エンジン20がまだ自己復帰していないため、スタータモータ41が通電されて回転を開始する(図3のステップ201−203)。
【0056】
次に、エンジン回転数Nrとピニオンギア予測回転数Nstの回転数差の絶対値Ndiff1が、ピニオンギア42とリングギア22が噛み合い可能な回転数差閾値Ndiffth1より小さくなる時刻t3において、ソレノイド43が通電されて、ピニオンギア42を押し出し、ピニオンギア42とリングギア22が噛み合わされる(図3のステップ205)。
【0057】
次に、時刻t4において、エンジン回転数Nrと、スタータモータ回転数すなわち、ピニオンギア予測回転数Nstが同期し、ピニオンギア42とリングギア22が完全に噛み合う。ここで明らかなように、時刻t3でピニオンギア42とリングギア22の噛み合わせを開始するためにピニオンギア42が軸方向に移動を開始してから、ピニオンギア42がリングギア22に完全に噛み合いピニオンギア42の移動を完了させるまでには、時刻t3から時刻t4までのタイムラグが生じることになる。
【0058】
次に、時刻t5において、時刻t2で吸気行程の♯1気筒(エンジン20)に噴射された燃料が、燃焼してエンジン20の初爆が発生し、エンジン回転数Nrが上昇する。このとき、初爆判定フラグF2が「1」にセットされ、以後、自己復帰処理が実行される(図4のステップ301)。
【0059】
次に、時刻t5から時刻t6までの間において、エンジン20の燃焼が不安定であった場合、図7に示すように、エンジン回転数Nrはピニオンギア予測回転数Nstと交わりながら上昇するため、自立回転時間カウンタT1が、カウントアップされるが(図4のステップ303)、エンジン回転数Nrがピニオンギア予測回転数Nstより小さくなった時に「0」にリセットされてしまい(図4のステップ306)、エンジン20の自己復帰判定が成立しない(図4のステップ304)。
【0060】
次に、時刻t6以降において、エンジン20の燃焼が安定し、エンジン回転数Nrが自立的に上昇するため、ピニオンギア予測回転数Nstより大きくなり、自立回転時間カウンタT1が、カウントアップされる(図4のステップ303)。
【0061】
次に、時刻t7において、自立回転時間カウンタT1は、自己復帰判定閾値以上となり、エンジン20が燃料供給のみで自立回転可能な状態になったと判定される。そして、自己復帰判定フラグF3が「1」にセットされる(図4のステップ304−305)。
【0062】
その結果、図3の再始動制御ルーチンのステップ202、206−208において、エンジン20が自己復帰したと判定(YES)され、自動停止中フラグF1が「0」にリセットされ、スタータモータ41の通電がOFFにされて回転が停止され、ピニオンギア42とリングギア22の噛み合わせを解除するためにソレノイド43の通電がOFFにされる。
【0063】
図8に示すタイミングチャートは、車両走行状態からエンジン自動停止を実施し、エンジン回転中にピニオンギア42とリングギア22を噛みわせ、スタータモータ41のクランキングによりエンジン再始動を行ったときに、エンジン20の燃焼が安定な場合の動作を示す。
【0064】
図8において、(a)−(g)は、図7の(a)−(g)と同じである。
【0065】
まず、時刻t1から時刻t5までの動作については、図7の時刻t1から時刻t5までの動作と同様である。
【0066】
時刻t5以降において、エンジン20の燃焼が安定であった場合、エンジン回転数Nrが自立的に上昇するため、ピニオンギア予測回転数Nstより大きくなり、自立回転時間カウンタT1が、カウントアップされる(図4のステップ303)。
【0067】
次に、時刻t6において、自立回転時間カウンタT1は、自己復帰判定閾値以上となり、エンジン20が燃料供給のみで自立回転可能な状態になったと判定される。そして、自己復帰判定フラグF3が「1」にセットされる(図4のステップ304−305)。
【0068】
その結果、図3の再始動制御ルーチンのステップ202、206−208において、エンジン20が自己復帰したと判定(YES)され、自動停止中フラグF1が「0」にリセットされ、スタータモータ41の通電がOFFにされて回転が停止され、ピニオンギア42とリングギア22の噛み合わせを解除するためにソレノイド43の通電がOFFにされる。
【0069】
以上のように、この発明の実施の形態1に係るエンジン自動停止再始動装置は、エンジン再始動後、エンジン20の燃焼が不安定であるとしても、エンジン回転数Nrとピニオンギア予測回転数Nstに基づいてエンジン20の自己復帰を判断するため、エンジン再始動を確実に実行することができる。また、エンジン20の燃焼が安定すると、エンジン回転数Nrとピニオンギア予測回転数Nstに基づいてエンジン20の自己復帰を判断するため、スタータモータ41の通電時間を最小の期間に抑制することができる。
【0070】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係るエンジン自動停止再始動装置について図9から図12までを参照しながら説明する。この発明の実施の形態2に係るエンジン自動停止再始動装置の構成は、上記の実施の形態1と同様である。
【0071】
この実施の形態2は、エンジン再始動後、エンジン20の燃焼が安定しても、エンジン回転数Nrの脈動によりエンジン回転数Nrがピニオンギア予測回転数Nstより小さくなった場合に、エンジン20の自己復帰が遅くなっても、スタータモータ41を無駄に駆動することを防止する。
【0072】
上記の実施の形態1のエンジン自動停止再始動装置は、図9に示すように、時刻t1で、エンジン自動停止後、エンジン20が再始動した時刻t2で、エンジン20が自己復帰できないと判断し、スタータモータ41への通電を開始し、時刻t3で、ソレノイド43を通電してピニオンギア42とリングギア22の連結を開始し、時刻t4で、その連結が完了する。なお、図9において、(a)−(h)は、(b)を除いて図7の(a)−(g)と同じである。図9の(b)は、燃焼行程気筒のクランク角度の時間的推移を示す。
【0073】
その後、時刻t5で、エンジン20の燃焼によりエンジン回転数Nrが上昇し、エンジン20が初爆する。時刻t5から時刻t6までの間は、エンジン20の燃焼が不安定なため、エンジン回転数Nrがピニオンギア予測回転数Nstより小さくなると、自立回転時間カウンタT1が「0」にリセットされるため、エンジン20が自己復帰しない。
【0074】
時刻t6以降は、エンジン20の燃焼が安定するが、図9(a)及び(b)に示すように、エンジン回転数Nrはクランク角度に応じて上下に脈動するため、エンジン回転数Nrが僅かでもピニオンギア予測回転数Nstより小さくなると、自立回転時間カウンタT1が、「0」にリセットされる。
【0075】
エンジン回転数Nrがピニオンギア予測回転数Nstより明らかに大きくなる時刻t7以降でなければ、エンジン20が自己復帰しないという問題があった。
【0076】
この実施の形態2は、このようなエンジン回転数Nrの脈動により、エンジン回転数Nrがピニオンギア予測回転数Nstより小さくなっても、エンジン20が自己復帰し、スタータモータ41の通電時間を最小の期間に抑制することを目的としている。
【0077】
つぎに、この実施の形態2に係るエンジン自動停止再始動装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0078】
図10及び図11は、この発明の実施の形態2に係るエンジン自動停止再始動装置の動作を示すフローチャートである。図10の自己復帰処理は、例えば、100−200m秒の一定周期(説明を簡単にするために、クランク角度が0度毎とする)で実行され、図11の自己復帰処理は、例えば、1.25m秒の一定周期で実行される。なお、自己復帰以外の処理は、上記の実施の形態1と同様である。
【0079】
まず、図10のステップ401において、エンジン制御装置100は、エンジン20を再始動するために燃料噴射を再開し、初爆判定フラグF2により、エンジン初爆タイミングが過ぎているか否かを判定する。エンジン初爆タイミングが過ぎている場合、すなわち、初爆判定フラグF2が「1」の場合(YES)には、次のステップ402へ進む。一方、エンジン初爆タイミングが過ぎていない場合、すなわち、初爆判定フラグF2が「0」の場合(NO)には、本処理を終了する。なお、エンジン制御装置100は、再度、自動停止条件が成立した時に初爆判定フラグF2を「0」にリセットする。
【0080】
次に、ステップ402において、エンジン制御装置100は、区間カウンタT2を「1」だけカウントアップする。燃焼行程気筒のクランク角度が新たに区間に入ると、区間カウンタT2がカウントアップされる(例えば、図5の時刻t5)。なお、区間カウンタT2は、エンジン20が自己復帰した時に「0」にリセットされる。
【0081】
次に、ステップ403において、エンジン制御装置100は、エンジン20が自己復帰したか否かを判定する。エンジン20が自己復帰した場合(YES)には、次のステップ404へ進み、エンジン20が自己復帰していない場合(NO)には、本処理を終了する。すなわち、区間カウンタT2が2より大きく、かつ、前回及び今回の区間の燃焼判定フラグF4が共に「1」の場合(YES)には、エンジンが自己復帰したと判断する。一方、前回の区間の燃焼判定フラグF4、または、今回の区間の燃焼判定フラグF4のいずれかが「0」の場合(NO)には、エンジンが自己復帰していないと判断する。
【0082】
次に、ステップ404において、エンジン制御装置100は、自己復帰判定フラグF3を「1」にセットして、本処理を終了する。
【0083】
図11のステップ501において、エンジン制御装置100は、区間カウンタT2が0か否かを判定する。区間カウンタT2が0の場合(YES)には、本処理を終了する。一方、区間カウンタT2が0でない場合(NO)には、次のステップ502へ進む。
【0084】
次に、ステップ502において、エンジン制御装置100は、前回のエンジン回転数と今回のエンジン回転数を比較して、大きい方を、最大値としてRAMの該当区間の該当領域に記憶する。ここで、エンジン制御装置100は、クランク角センサ23から出力されるクランク角信号の周期に基づいてエンジン回転数を演算する。なお、エンジン回転数の最大値の初期値は0[rpm]とし、エンジン自動停止時にRAMの該当領域を初期化しておく。
【0085】
次に、ステップ503において、エンジン制御装置100は、エンジン回転数の最大値を更新したか否かを判定する。エンジン回転数の最大値を更新した場合(YES)には、次のステップ504へ進み、エンジン回転数の最大値を更新しない場合(NO)には、本処理を終了する。
【0086】
次に、ステップ504において、エンジン制御装置100は、エンジン回転数の最大値を更新したときのピニオンギア予測回転数をRAMの該当区間の該当領域に記憶する。ここで、エンジン制御装置100は、計測した通電時間に基づいて、例えば、図6に示すような、回転数テーブルからスタータモータ41の通電時間に対応したピニオンギア予測回転数Nstを求める。なお、エンジン回転数の最大値が更新された場合のピニオンギア予測回転数の初期値は、例えば0[rpm]とし、エンジン自動停止時にRAMの該当領域を初期化しておく。
【0087】
次に、ステップ505において、エンジン制御装置100は、エンジン回転数の最大値と、エンジン回転数の最大値を更新した時のピニオンギア予測回転数Nstの回転数差Ndiff2を求める。なお、この回転数差Ndiff2は、0[rpm]以上とする。
【0088】
次に、ステップ506において、エンジン制御装置100は、回転数差Ndiff2が回転数差閾値Ndiffth2以上か否か、すなわち、エンジン20が自立的に回転しているか否かを判定する。回転数差Ndiff2が回転数差閾値Ndiffth2以上の場合(YES)には、次のステップ507へ進み、回転数差Ndiff2が回転数差閾値Ndiffth2未満の場合(NO)には、ステップ508へ進む。なお、回転数差閾値Ndiffth2は、例えば、50[rpm]である。
【0089】
次に、ステップ507において、エンジン制御装置100は、エンジン20が自立的に回転していると判断して、今回の区間の燃焼判定フラグF4を「1」にセットし、本処理を終了する。
【0090】
そして、ステップ508において、エンジン制御装置100は、今回の区間の燃焼判定フラグF4を「0」にリセットし、本処理を終了する。
【0091】
続いて、タイミングチャートの時刻に沿って、エンジン自動停止再始動装置の動作を説明する。
【0092】
図12に示すタイミングチャートは、車両走行状態からエンジン自動停止を実施し、エンジン回転中にピニオンギア42とリングギア22を噛みわせ、スタータモータ41のクランキングによりエンジン再始動を行ったときに、エンジン20の燃焼が不安定な場合の動作を示す。
【0093】
図12において、(a)−(g)は、(b)を除き図7の(a)−(e)、(g)と同じである。(b)は燃焼行程気筒のクランク角度の時間的推移を示す。(h)は区間カウンタT2の時間的推移を示し、区間(クランク角度が0度)毎にカウントアップされ、エンジン20が自己復帰した場合には「0」にリセットされる。
【0094】
(i1)は区間1におけるエンジン回転数の最大値と、エンジン回転数の最大値が更新された時のピニオンギア予測回転数の時間的推移を示す。(i2)は区間1におけるエンジン回転数の最大値と、エンジン回転数の最大値が更新された時のピニオンギア予測回転数の回転数差Ndiff2の時間的推移を示す。(i3)は区間1における燃焼判定フラグF4の状態を示す。
【0095】
(j1)は区間2におけるエンジン回転数の最大値と、エンジン回転数の最大値が更新された時のピニオンギア予測回転数の時間的推移を示す。(j2)は区間2におけるエンジン回転数の最大値と、エンジン回転数の最大値が更新された時のピニオンギア予測回転数の回転数差Ndiff2の時間的推移を示す。(j3)は区間2における燃焼判定フラグF4の状態を示す。
【0096】
(k1)は区間3におけるエンジン回転数の最大値と、エンジン回転数の最大値が更新された時のピニオンギア予測回転数の時間的推移を示す。(k2)は区間3におけるエンジン回転数の最大値と、エンジン回転数の最大値が更新された時のピニオンギア予測回転数の回転数差Ndiff2の時間的推移を示す。(k3)は区間3における燃焼判定フラグF4の状態を示す。
【0097】
車両走行中に自動停止条件が成立した時刻t1において、自動停止中フラグF1が「1」にセットされる。次に、再始動条件が成立した時刻t2において、燃料噴射を再開すると同時に、スタータモータ41に通電して回転を開始する。
【0098】
次に、エンジン回転数Nrとピニオンギア予測回転数Nstの回転数差の絶対値Ndiff1が噛み合い可能な回転数差閾値Ndiffth1より小さくなる時刻t3では、ソレノイド43に通電して、ピニオンギア42を押し出し、ピニオンギア42とリングギア22を噛み合わせる。
【0099】
次に、時刻t4では、エンジン回転数Nrと、スタータモータ41の回転数、すなわち、ピニオンギア予測回転数Nstが同期し、ピニオンギア42とリングギア22が完全に噛み合う。
【0100】
次に、時刻t5では、時刻t2で吸気行程に噴射された燃料が、燃焼してエンジン20の初爆が発生し、エンジン回転数Nrが上昇する。このとき、初爆判定フラグF2が「1」にセットされる。
【0101】
ここで、時刻t5(クランク角度0度)から時刻t6(クランク角度0度)までの間で、エンジン20の燃焼が不安定であった場合、時刻t5から時刻t6までの間を区間1(区間カウンタT2=1)とすると、区間1におけるエンジン回転数の最大値とピニオンギア予測回転数の回転数差は、回転数差閾値より小さいため、区間1では燃焼判定フラグF4が「1」にセットされない。
【0102】
次に、時刻t6以降は、エンジン20の燃焼が安定し、エンジン回転数が自立的に上昇する時刻t6から時刻t7までの間を区間2(区間カウンタT2=2)とすると、区間2におけるエンジン回転数の最大値とピニオンギア予測回転数の回転数差は回転数差閾値より大きくなり、区間2では燃焼判定フラグF4が「1」にセットされる。ここで、区間2が終了する時刻t7で、区間カウンタT2が2以下であるため、あるいは、区間1の燃焼判定フラグF4が「0」であるため、自己復帰判定フラグF3が「1」にセットされない。
【0103】
次に、時刻t7(クランク角度0度)から時刻t8(クランク角度0度)までの間で、時刻t7から時刻t8までの間を区間3(区間カウンタT2=3)とすると、区間3におけるエンジン回転数の最大値とピニオンギア予測回転数の回転数差は回転数閾値より大きくなり、区間3でも燃焼判定フラグF4が「1」にセットされる。ここで、区間3が終了する時刻t8で、区間カウンタT2が2より大きく、かつ区間2と区間3の燃焼判定フラグF4が共に「1」であるため、自己復帰判定フラグF3が「1」にセットされる。
【0104】
その結果、図3に示す再始動制御ルーチンのステップ202において、エンジン20が自己復帰した判断(YES)され、自動停止中フラグF1が「0」にリセットされ、スタータモータ41の通電がOFFにされて回転が停止され、ピニオンギア42とリングギア22の噛み合わせを解除するためにソレノイド43の通電がOFFにされる。
【0105】
以上のように、この発明の実施の形態2に係るエンジン自動停止再始動装置は、エンジン再始動後、エンジン20の燃焼が不安定であったとしても、エンジン20の所定区間におけるエンジン回転数の最大値とピニオンギア予測回転数の回転数差が、回転数差閾値以上の状態を複数区間連続して検出することで、エンジン20が自己復帰したと判断するため、スタータモータ41の通電時間を最小の期間に抑制することができる。
【符号の説明】
【0106】
11 車速センサ、12 ブレーキペダル、13 アクセル開度センサ、20 エンジン、21 燃料噴射装置、22 リングギア、23 クランク角センサ、30 始動制御装置、40 始動装置、41 スタータモータ、42 ピニオンギア、43 ソレノイド、44 プランジャ、100 エンジン制御装置、F1 自動停止中フラグ、F2 初爆判定フラグ、F3 自己復帰判定フラグ、F4 燃焼判定フラグ、T1 自立回転時間カウンタ、T2 区間カウンタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させ、その後、再始動条件が成立するとエンジンを再始動させるエンジン自動停止再始動装置であって、
通電されることにより回転するスタータモータと、
前記スタータモータの回転軸に設けられたピニオンギアと、
前記ピニオンギアを回転軸方向へ押し出してエンジンのクランク軸に設けられたリングギアと噛み合わせるためのプランジャと、
通電されることにより前記プランジャを回転軸方向へ移動させるソレノイドと、
第1の駆動信号により、電源と前記スタータモータを接続して前記スタータモータへ通電し、第2の駆動信号により、前記電源と前記ソレノイドを接続して前記ソレノイドへ通電する始動制御装置と、
エンジンのクランク角を検出してクランク角信号を出力するクランク角センサと、
エンジンへ燃料を噴射する燃料噴射装置と、
前記スタータモータの通電時間とピニオンギア予測回転数の関係を記述した回転数テーブルと、
再始動開始後、前記燃料噴射装置を制御してエンジンへ燃料を噴射させ、前記始動制御装置へ第1の駆動信号を出力して、前記スタータモータの通電を開始するとともに、前記スタータモータの通電時間の計測を開始し、
クランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数と、計測した通電時間に基づいて前記回転数テーブルから求めたピニオンギア予測回転数の回転数差の絶対値が、前記ピニオンギアと前記リングギアが噛み合い可能な回転数差閾値より小さくなると、前記始動制御装置へ第2の駆動信号を出力して、前記ソレノイドの通電を開始し、
クランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数が、計測した通電時間に基づいて前記回転数テーブルから求めたピニオンギア予測回転数より大きい場合に、エンジンが燃料供給のみで自立回転可能な状態になると、エンジンが自己復帰したと判断し、
エンジンが自己復帰したと判断した場合には、前記始動制御装置へ第1の駆動信号を出力せずに、前記スタータモータの通電を終了し、前記スタータモータの通電時間の計測を終了するとともに、前記始動制御装置へ第2の駆動信号を出力せずに、前記ソレノイドの通電を終了するエンジン制御装置と
を備えたことを特徴とするエンジン自動停止再始動装置。
【請求項2】
前記エンジン制御装置は、
再始動開始後、エンジンへ燃料を噴射させた後、エンジン初爆後の第1の所定区間において、クランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数が、計測した通電時間に基づいて前記回転数テーブルから求めたピニオンギア予測回転数より大きく、かつ、
前記第1の所定区間に続く第2の所定区間において、クランク角信号の周期に基づいて演算したエンジン回転数が、計測した通電時間に基づいて前記回転数テーブルから求めたピニオンギア予測回転数より大きい場合に、
エンジンが自己復帰したと判断する
ことを特徴とする請求項1記載のエンジン自動停止再始動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−92774(P2012−92774A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242259(P2010−242259)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】