説明

エンドペルオキシド架橋含有化合物を使用するヘリコバクター・ピロリ関連疾患の治療のための方法および組成物

本発明は、第一鉄依存性細菌、例えばヘリコバクター・ピロリなど、細胞内の高第一鉄濃度が生存および病原性に必要とされる細菌に関連する病理学的な状態を治療するための方法および組成物に関する。本発明の組成物は、エンドペルオキシド架橋含有化合物を含み、特に、第一鉄依存性細菌の増殖を阻害し、好ましくは当該細胞の根絶を促進する化合物を含む。当該組成物は、典型的にはまた、ヘリコバクター sp 関連胃腸管疾患を治療するための少なくとも1の活性成分、例えば、プロトンポンプ阻害剤、H2ブロッカーまたはビスマス含有化合物なども含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、第一鉄依存性細菌、例えば、ヘリコバクター・ピロリなど、そこにおいて高細胞内第一鉄イオン濃度がそれらの生存および病原性に必要とされる細菌に関連する病態的状態を治療するための方法および組成物に関する。本発明の組成物は、エンドペルオキシド架橋含有化合物(endoperoxide bridge-containing compound)であって、第一鉄依存性細菌の成長を特異的に阻害する、好ましくは当該細菌の根絶を促進する化合物を含有する。当該組成物は、また典型的には、H.ピロリ関連胃腸管疾患を治療するための少なくとも1の活性薬剤、例えば、プロトンポンプ阻害剤、H2ブロッカーまたはビスマス含有化合物なども含む。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヘリコバクター・ピロリ(H.pilori)はグラム陰性、微好気性の細菌であり、ヒト胃粘膜に長期間コロニーを形成する。当該感染は、世界の人口の約半数に関わり、仮に治療をしないならば一生留まるものであり、当該感染は、潰瘍形成の原因を導くものであり、且つ胃腺癌およびリンパ腫の発展のための補助因子である。
【0003】
H.ピロリは、広い範囲の局所的なpH条件に耐性を示し、相対的に酸条件に対して抵抗性である。この抵抗性は、一部分には尿素を切断できるウレア−ゼの産性が原因であると考えられ、胃叢に天然に存在し、それ故に、生物体の周囲の緩衝化されたアンモニア層を形成することを可能にすると考えられている。
【0004】
鉄分代謝に関与する蛋白質は、H.ピロリの主要な病原性の決定を表すことが示唆される。鉄分取り込みにおけるH.ピロリの依存は、ベラヤダハン(Velayudhan et al., Molecular Microbiology, Vol.37p. 274, 2000)に例えば記載される。この出版物から明らかにされる通り、輸送蛋白質FeoBにより媒介される第一鉄取り込みは、H.ピロリのインビボにおける感染の確立に必須である。第一鉄を主な鉄供給源として使用する他の細菌とは対照的に、H.ピロリは,激しく第一鉄に依存しており、ヒト胃の低いpHおよび低酸素濃度により安定化されている。
【0005】
異常な増殖要求と胃部位の組合わせのために、H.ピロリの根絶をすることは非常に困難である。H.ピロリ関連疾患の良好な治療のために適切で理想的な抗微生物薬は、低pH値で安定であり、胃粘膜への浸透が容易に可能であるべきである。これらの望ましい性質の抗微生物薬は容易に達成されず、従って、H.ピロリの抗微生物薬による満足な治療は未だかつて達成されてはいない。
【0006】
現在のH.ピロリ感染の抗菌剤治療は、通常、2種の抗菌剤と付属薬剤との組合せからなり、通常付属薬物は、通常プロトンポンプインヒビター(PPI)またはH2ブロッカーの何れかである。H.ピロリの抗菌剤抵抗性は、罹患率において増加している(Hazell, SL, Eur J Clin Infect Dis(1999)18:83-86)。3重療法薬物投与計画(メトロニダゾール酸およびトリポタシウムジシトラトビスムテート(tripotassium dicitratobismuthate(TDB))と組合わせるテトラサイクリン)またはPPIとの組合わせにおける4重療法は、単剤療法よりもより効果的であることが明らかになってきたが、患者のコンプライアンスおよび薬物耐性が更にその適用性を制限する。
【0007】
U.S.特許第5,196,205号(国際特許出願WO89/03219対応する)は、H.ピロリ感染の治療の方法を記載するものであり、ビスマス化合物、ペニシリンおよびテトラサイクリンの群に属する抗菌剤、および第2の抗菌剤、例えば、メトロニダゾールなどの投与からなる。当該関連する治療は、従って、1日に多数回、3つの薬物の投与からなる。
【0008】
また、H.ピロリの根絶のための単一または多重の治療を記載する他の特許および特許出願、例えば、U.S.特許第5,472,695号、第5,560,912号、第5,582,837号および国際特許出願WO92/11848号およびWO96/02237号も存在する。これらの何れの特許および特許出願も、3剤を1日に複数回投与する必要を克服していない。
【0009】
アルテミシニン(artemisinin)は、中国人の科学者により1972年にアルテミシア・アニュア L(Artemisia annua L.)から単離された抗マラリア薬である。アルテミシニンの当該エンドペルオキシド部分とその類似体は、抗マラリア活性に必要であることが明らかになっており、この基を欠いた類似体は不活性であることが分かっている。ヘムの存在において、当該エンドペルオキシド架橋は、還元的分解を被り、フリーラジカルと求電子的中間体を形成する(Meshnick, Int. J. Parasitology, 32(2002)1655)。最近、アルテミシニンがその抗寄生虫活性を特異的なPタイプATPaseの阻害により有することが提唱されている(Eckstein-Ludwig et al., Nature, Vol.424, 957)。
【0010】
天然物質アルテミシニンの低水溶解性のために、それを多様性な合成誘導体に変換し、それによって医薬的有効性を改善することが試みられている。より高い水溶解性を有するアルテミシニンの公知の類似体は、ジヒドロアルテミシニン、アルテメーテル(artemether)、アルテスネート(artesunate)、アルテエーテル(arteether)、プロピルカルボネート、ジヒドロアルテミシニンおよびアルテリン酸(artelinic acid)である。
【0011】
U.S.特許第4,978,676号は、アルテミシニンまたはアルテミシニン類似体の皮膚状態、例えば、乾癬、水泡状皮膚疾患(blistering skin deseases)、ウイルス性いぼおよび痔核の治療における使用を開示する。U.S特許第4,978,676号は、アルテミシニンとモノカルボン酸、エステルまたはアミドを有するアルテミシニン類似体との組合わせを乾癬を含む丘疹落屑皮膚疾患(papulosquamous skin diseases)、脂漏性およびアトピー性皮膚炎を含む湿疹性皮膚疾患の治療において使用することを開示する。U.S.特許第5,219,880号は、アルテミシニンまたはアルテミシニン類似体のいぼ、伝生成軟属腫(molluscum contagiosum)および痔核の治療における使用を開示する。U.S.特許第5,225,427号は、抗マラリアおよび抗原生動物活性を示すことが疑わしいジヒドロアルテミシニンのある10置換エーテル誘導体を開示する。アルテミシニンは、20〜180μMの範囲でインビトロにおいて癌細胞に対して毒性であることが示されている(Sun et al., "Antitumor Activities of 4 Derivatives of Artemisic Acid and Artemisinin B in vitro" Chung-Kuo-Yao-Li-Hsueh-Pao 13:541-543(1992))。U.S.特許第5,578,537号は、アルテミシニンおよびその類似体などのエンドペルオキシド部分を有する化合物の抗癌活性が、細胞内鉄濃度が高まる条件下で投与された場合において実質的にインビトロおよびインビボの両方において高まることを開示する。
【0012】
WO04071506は、アルテミシニンおよび/またはアルテミシン誘導体の発癌性ウイルスにより誘導された腫瘍の治療、およびウイルス感染の治療、並びにウイルス感染に関連するう頚部の疾患(例えば、子宮頚癌および子宮頚部異形成など)の治療のための使用を開示する。この出版物は更に発癌性ウイルス、例えば、BPV、HTLV-1、ヘルペスウイルス(例えば、EBVまたはCMV)、SV-40様ウイルス、肝炎ウイルスまたはアデノウイルスなどに感染した細胞の死滅または増殖阻害の方法を開示する。
【0013】
WO04041176は、セスキテルペンラクトンエンドペルオキシドのC型肝炎感染、黄熱病、デング熱、ウシウイルス性下痢および古典的なスワン熱の治療への使用を開示する。
【0014】
フォグリオら(Foglio)は、ジヒドロ-エピデオキシアルテアニュインB(dihydro-epideoxyarteannuin B)およびデオキシアルテミシニンが、ラットにおけるエタノールおよびインドメタシンにより作られた潰瘍性病変インデックスを減少することにより胃細胞保護を提供したことを開示する(Planta Med. 2002, 68 515-518)。
【0015】
幾つかの出版物は、アルテミシニンまたはアルテミシニン類似物の抗菌剤としての使用を開示する。U.S.特許第6,127,405号は、α-アルテエーテルが、DNAジャイレース酵素の欠損したE.コリ株の増殖を阻害するのに対して、インタクトなDNAジャイレース遺伝子を有する野生型E.コリは前記α-アルテエーテルに対する感受性がなかったことを開示した。シューブら(Shoeb et al. J.Chemotherapy, 2, 362-367, 1990)は、アルテミシニンが嫌気性細菌に対する抗菌活性を有することを開示した。これらの何れの出版物も、アルテミシニンまたはその類似体が、一般的に微好気性細菌に対する、または感染のために高第一鉄の取り込みを必要とする細菌、例えば、H.ピロリなどに特異的に対する抗細菌剤として使用できると開示するものでも示唆するものでもない。
【0016】
H.ピロリ感染、特に当該技術において存在する抗菌剤に対して抵抗性であるH.ピロリ株などのヘリコバクター sp 感染の有効な治療の開発は、長く切実な必要性を満たすであろう。
【発明の開示】
【0017】
[発明の概要]
本発明の目的は、第一鉄依存性細菌、即ち、それらの生存および病原性のために高い細胞内第一鉄イオン濃度を必要とする細菌の増殖を阻害する、最も好ましくは実質的に根絶するための新規方法を提供することである。
【0018】
もう1つの本発明の目的は、胃粘膜内の第一鉄依存性細菌の増殖を阻害する、および最も好ましくは実質的に根絶するための新規方法を提供することである。
【0019】
更なる本発明の目的は、ヘリコバクター sp 感染、特にH.ピロリ感染に関連する胃における病理学的な状態を治療するための新規方法を提供することである。
【0020】
もう1つの本発明の目的は、当該分野において存在する抗菌剤に対して抵抗性であるH.ピロリ菌の増殖を阻害するための新規方法および組成物を提供することである。
【0021】
本発明は、第一鉄依存性細菌およびそれと共に関連する病原性の阻害および最も好ましくは根絶のための方法および組成物に一般的には方向付けられる。本発明の当該組成物は、細菌性の細胞内第一鉄と反応性のあるエンドペルオキシド部分を有する化合物であって、抗細菌効果を有利に導く化合物を含有する。
【0022】
本発明の組成物は、何れの第一鉄依存性細菌に対しても有効であるが、好ましい細菌は、
高い細胞内第一鉄濃度が胃の酸性条件において感染の確立に必須である胃粘膜内に存在する細菌である。本発明の組成物は、長い期間に亘ってヒトの胃粘膜にコロニーを作っているH.ピロリ菌に対して特に有効である。H.ピロリ輸送蛋白質FeoBによって媒介される第一鉄取り込みは、インビボにおける胃のH.ピロリ感染の確立に必須である。
【0023】
1つの側面において、本発明は、第一鉄依存の細菌の増殖を阻害するための、およびそれに関連する病原性を治療するための方法および組成物を提供する。本発明に従う方法は、それを必要とする対象に対して、当該細菌に高濃度で存在する第一鉄と反応するエンドペルオキシド部分を有する化合物の増殖阻害量を投与することを具備する。本発明の方法は、第一鉄依存性細菌の例であるH.ピロリ菌、即ち、長期間に亘ってヒト胃粘膜にコロニーを維持するために高い細胞内第一鉄を要求するもの、に対して特に有効であることが明らかになった。
【0024】
もう1つの側面において、本発明は、ヘリコバクター sp 感染に関連する病理学的状態を治療する方法および組成物を提供する。本発明に従う方法は、それを必要とする対象に当該細菌内に高濃度で存在する存在する第一鉄と反応するエンドペルオキシド部分を有する化合物の増殖阻害量を投与することを具備する。本発明の方法は特に長期間に亘りヒト胃粘膜にコロニーを形成するために高い細胞内第一鉄を必要とするH.ピロリ細菌に対して有効である。
【0025】
H.ピロリは、微好気性のグラム陰性の細菌であり、複数の胃腸管系の病態、例えば、胃消化性潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎、十二指腸炎、非潰瘍性消化不良、胃癌およびマルトーマ(MALTOMA)などに関連する。従って、本発明の方法は、胃腸管系疾患またはH.ピロリと関連する状態を予防および治療するために使用されてもよい。
【0026】
もう1つの側面において、本発明は、それを必要とする対象における抗菌剤抵抗性のH. ピロリ株の増殖を阻害するための方法を提供する。本発明に従う方法は、当該対象に対して、当該細菌に高濃度で存在する第一鉄と反応し有毒なフリーラジカルを形成すると考えられているエンドペルオキシド部分を有する化合物の増殖阻害量を投与することを具備する。
【0027】
好ましい態様において、本発明の当該エンドペルオキシド関連化合物は、セスキテルペン構造、特に、エンドペルオキシド基を伴う酸素化された三環系のセスキテルペン構造を有し、好ましくは、そのセスキテルペンラクトースまたはアルコール、カルボネート、エステル、エーテルおよびスルホネートであるものを有する。他のエンドペルオキシド関連化合物も本発明のために有用であることは明白であろう。他の適切なエンドペルオキシド関連化合物の例は、例えば、ヒドロキシ、ヒドロペルオキシまたはペルオキシ誘導体のポリ不飽和脂肪酸、トリオキソラン、スピロおよびジスピロ1,2,4-トリオキソラン、ビシクロ(3,2,2)エンドペルオキシド、トリオキサン、3-置換トリオキサン、オゾニド、2,3ビシクロ(3.3.1)ノナン、1,2,4-トリオキサン、1,2,4,5-テトラオキサン、テルペンおよび置換テルペンなどを含む。
【0028】
より好ましい態様において、本発明において使用されるべき当該エンドペルオキシド関連化合物は、式(I)に従うセスキテルペン化合物、またはその薬学的に許容される塩である:
【化4】

【0029】
ここで、Rは-CO-またはRは-CR1-であり、
R1は、水素、ヒドロキシル、アルキル、-OR2、-COR2、-COR2、-COOR2、-CO(CH2)n、-COOH、または-SOOR2であり、
R2はアルキルまたはアリールであり、nは1〜6である。
【0030】
ここで使用されるとき、用語「アルキル」は1〜6の炭素原子、好ましくは1〜4の炭素原子を有する低級アルキルを意味する。本発明のアルキル基は、直鎖または分枝鎖基であってもよく、好ましくは直鎖基であってもよい。用語「アリール」は好ましくはフェニルおよびベンジルをいい、最も好ましくはフェニルをいう。薬学的に許容される塩はアルカリまたはアルカリ金属塩、好ましくはナトリウムまたはカリウムを含み、ナトリウムが最も好ましい。
【0031】
このような好ましい化合物の例は、アルテミシニン(artemisinin);ジヒドロアルテミシニン;ジヒドロアルテミシニンのカルボネート、スルホネート、エステルおよびエーテル誘導体、特にアルテメーテル(artemether)、アルテエーテル(arteether)、アルテフレン(arteflene)、アルテスネート(artesunate)、アルテスネート塩、ジヒドロアルテミシニンプロピルカルボネート、ビスエーテルアルテリン酸(bisether artelinic acid)およびジヒドロキシジヒドロアルテミシニンを含む。
【0032】
都合よくは、第一鉄の存在下で反応するエンドペルオキシド基を有する他の化合物も、首尾よく開示された方法において使用されてもよいのであるが、非制限的な好ましい態様において、当該エンドペルオキシド化合物がここに開示されている。
【0033】
1つの例は、セスキテルペン化合物であり、例えば、アルテミシニン、ここで式(I)のRはC=O、ジヒドロアルテミシニン(R1はOH)、アルテスニン酸(artesunic acid)(R1はOCO(CH2)2CO2H)およびアルテスネート、アルテメーテル(R1はOCH3)およびアルテエーテル(R1はOC2H5)を含む。
【0034】
アルテミシニン分子は、本発明の代表的なエンドペルオキシド化合物として、鉄に触媒され有毒なフリーラジカルを形成することが可能なエンドペルオキシド架橋を含むセスキテルペンラクトンである。本発明は、アルテミシニンのこの性質を利用し、その標的をH.ピロリ菌に向ける。作用におけるこの選択性は、インビボでのH.ピロリ感染の確立のために必要であるH.ピロリ輸送蛋白質FeoBにより媒介される第一鉄取り込みのためである。本発明のセスキテルペン化合物は、エンドペルオキシド架橋構造を有する。ペルオキシドは、非結合性の第一鉄に曝されたときに、フェントンタイプ反応において有毒なフリーラジカルを産生する。従って、当該細菌の内部で増大した第一鉄濃度は、当該セスキテルペン化合物の存在において細胞内フリーラジカル形成と細胞死を導くことが可能である。また、アルテミシニンは、例えばエクステイン−ラドビックら(Eckstein-Ludwig et at、Nature, Vol.424,957))により示唆されたような異なる機序を経てその抗細菌性第一鉄依存活性を獲得することもあり得る。
【0035】
エンドペルオキシド含有化合物に加えて、本発明の組成物は、H.ピロリ関連胃腸管系病態を治療するための1以上の活性薬剤を臨床的な有効性を更に増強する手段として更に具備してもよい。そのような薬剤は、例えば、胃酸分泌阻害剤、プロトンポンプ阻害剤(非可逆的または可逆的プロトンポンプ阻害剤の何れでもよい)、H2ブロッカー、ビスマス塩、抗菌剤、H.ピロリ感染に関連する粘膜における炎症を治療するための抗炎症剤、細胞保護剤、例えばスクラルファートなど、プロスタグランジン類似体、例えば、ミソプロストール(misoprostol)など、または細胞内鉄濃度を上昇するための鉄などである。
【0036】
本発明の化合物は、特に、胃におけるH.ピロリ根絶するために有用である。1態様において、アルテミシニンまたはその活性誘導体は、経口投与に続き胃において局所的に作用するように設計された組成物に製剤化される。アルテミシニンまたはその活性誘導体は、胃液の酸性条件において溶解性でないので、胃におけるその溶解性を保ち、それにより当該活性化合物の局所的な活性を可溶にする必要がある。
【0037】
従って、当該組成物は、胃液において当該エンドペルオキシド関連化合物の溶解性を維持する薬剤を更に具備してもよい。これは、当該エンドペルオキシド関連化合物が胃において当該細菌に対して局所的に作用することを可能にする。そのような薬剤は、好ましくはアルカリ性の薬剤(alkaline agents)または制酸剤であり、胃液に溶解したときに、胃液のpHを少なくとも顕著に、当該エンドペルオキシド関連化合物が当該胃液における溶解性が残る割合のpHに上昇させ得る。
【0038】
多様な態様に従うと、当該組成物は、胃粘膜内での当該細菌に対するエンドペルオキシド関連化合物の有効性を改善する1以上の薬剤を更に含んでいてもよい。そのような薬剤は、例えば、ムコリチックな薬剤(mucolytic agents)などであり、これは胃粘膜の粘度を減少し、それによって当該エンドペルオキシド関連化合物が当該細菌に到達する能力を促進し、全身性循環を介するよりも胃において局所的に作用させるものである。
【0039】
アルテミシニンまたはその活性誘導体の胃における局所的な効果を促進するためには、その胃における保持時間を延長することが推奨される。従って、もう1つの態様において、当該組成物は、更に1以上の胃保持剤(gastric-retiontion agents)を含んでもよい。これらの胃保持剤は、当該活性化合物を胃において局所的に当該細菌の根絶に十分な延長された期間に亘って作用することを可能にする。
【0040】
そのような胃保持剤は、例えば、1以上のポリマーであってもよく、これは、胃液から水分を吸収することを介して胃内で膨張し、それによって、当該粒子のサイズを増加して、当該胃における胃保持を促進する。当該活性成分は、当該粒子からの拡散によって、または胃における当該粒子のゆっくりとした侵食に続いてゆっくりと放出される。
【0041】
もう1つの態様に従うと、本発明の当該組成物は、エンドペルオキシド関連化合物の腸管における全身性吸収が可能になるように製剤化されてもよい。腸における当該エンドペルオキシド関連化合物の吸収を促進するために、当該組成物は、例えば、腸における吸収を増大する液体製剤に適切な植物油などの媒体を含んでもよい。
【0042】
本発明の組成物は、静脈内、非経口、または経口手段により投与されてもよい。何れかの適切な投与経路が本発明に従って受け入れられるが、経口的に当該組成物を投与することが好ましい。当該活性化合物は典型的に薬学的に許容される担体と組合わされて、医薬組成物を形成する。当該薬学的に許容される担体は、生理学的に許容される化合物であって、例えば、当該組成物を安定化する、または当該薬剤の吸収を増大するために作用する化合物などを含んでもよい。
【0043】
当該組成物は、水性環境における当該エンドペルオキシド関連化合物の溶解性および安定性を促進する1以上の薬物を更に含んでもよい。そのような薬剤は、例えば、アルテミシニンまたはその誘導体と複合体を形成し、それにより当該複合体の水性溶解度と水性環境におけるエンドペルオキシド架橋の安定性を改善するシクロデキストリン類似体などである。
【0044】
好ましい態様において、本発明は、第一鉄依存性細菌株の増殖を阻害するための医薬組成物である。この態様において、当該組成物は、好ましくは式(I)に従う薬学的有効量の化合物:
【化5】

【0045】
ここで、Rは-CO-またはRは-CR1-であり、
ここで、R1は、水素、ヒドロキシル、アルキル、-OR2、-COR2、-COR2、-COOR2、-CO(CH2)n、-COOHまたは-SOOR2であり、
ここで、R2はアルキルまたはアリールであり、nは1〜6である:および
H.ピロリ関連胃腸管系病態を治療するための1以上の活性薬剤、例えば、抗菌剤、胃酸分泌阻害剤、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、可逆的プロトンポンプ阻害剤、H2ブロッカー、ビスマス含有化合物細胞保護剤、プロスタグランジン類似体、例えば、ミソプロストールまたは抗炎症剤などを含む。最も好ましくは当該医薬組成物は、ヘリコバクター sp、例えば、ヘリコバクター・ピロリなどの株に対して最も有効であるように設計される。
【0046】
医薬組成物は、好ましくは、一般的には、各活性成分、即ち、エンドペルオキシド含有化合物およびH.ピロリ関連胃腸管病態を治療するための活性薬剤を、単独で投与された場合に当該細菌の増殖が阻害されるに充分な量で含む。好ましい態様において、エンドペルオキシド含有化合物に対するH.ピロリ関連胃腸管系病態を治療するための活性薬剤の割合は、約50:1〜約1:100であり、より好ましくは10:1〜1:50である。もう1つの好ましい態様において、当該エンドペルオキシド含有化合物は、アルテミシニンまたはアルテスネート(artesunate)であり、およびH.ピロリ関連胃腸管系病態を治療するための活性薬剤はPPIである。
【0047】
1つの明確な態様において、本発明は、エンドペルオキシド含有化合物、好ましくはセスキテルペン、より好ましくはアルテミシニンまたはその活性誘導体およびPPIを含む新規の経口製剤に関する。都合よくは、当該経口組成物は、更に抗菌剤を含有してもよい。そのような経口用剤形は、次の一方または両方の薬剤、即ち、即効性または持続性放出形態、例えば胃保持形態などをも含んでよい。
【0048】
経口用剤形は、錠剤、カプセル、トローチ、ロゼンジ(lozenges)、水溶性または油性懸濁液、分散性粉末または顆粒、乳剤、多粒子性剤形、シロップ、エリキシル剤などの形態であってもよい。
【0049】
1態様に従うと、アルテミシニンまたはその活性誘導体およびPPIを含有する当該経口組成物は、単一経口用剤形、好ましくは、二層性錠剤または硬ゼラチンカプセルである。当該併用経口組成物は、更に抗菌剤を含有してもよい。
【0050】
他の態様に従うと、アルテミシニンまたはその活性誘導体、PPIおよび可能であれば抗菌剤を含有する当該経口組成物は、別々の経口用剤形、例えば、錠剤またはカプセルにあってもよい。本発明の種々の態様に従うと、PPIは腸溶性コーティング形態または非腸溶性コーティング形態で投与されてもよい。
【0051】
これらおよび更なる態様が、以下の詳細な説明および例から明らかになるであろう。
【0052】
[発明の詳細な説明]
本発明は一般的に、それらの生存のために高い細胞内第一鉄を必要とする細菌、即ち、第一鉄依存性細菌、例えばヘリコバクター種、例えば、H.ピロリなどの増殖および病原性を阻害するための方法および組成物に関する。好ましい態様において、当該方法および組成物は、実質的に第一鉄依存性細菌を根絶するように設計される。当該用語「実質的根絶」とは、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは75%、最も好ましくは少なくとも95%の第一鉄依存細菌が死滅されることを意味する。
【0053】
本発明の組成物は、当該細菌の細胞内第一鉄と反応して抗細菌効果を導くと考えられているエンドペルオキシド部分を有する化合物を含有する。
【0054】
好ましい態様において、本発明は、エンドペルオキシド含有セスキテルペン化合物、例えばアルテミシニンまたはその活性誘導体などを含む組成物に関する。これらの併用は、インタクトな腸の正常な叢を保持しながら、当該胃におけるH.ピロリの増殖の阻害において効果的且つ選択的である。更に、本発明の組成物は、慣習的な抗菌剤に抵抗性のH.ピロリ株を阻害またはより好ましくは実質的に根絶するために有用である。
【0055】
本発明において使用されるアルテミシニン、好ましくはセスキテルペン化合物は、フリーラジカルの機序を基に酸素および炭素を通じて作用すると示されている。その構造は、エンドペルオキシド架橋を含む。ペルオキシドは、フェントンタイプ反応において、非結合型の第一鉄に対して暴露されたときにフリーラジカルを産生する。アルテミシニンの存在下においては、当該細菌内部の高濃度の第一鉄は、細胞内のフリーラジカル形成と細胞死を導くことが可能である。第一鉄は、細胞内の酸化的代謝により生成されたスーパーオキサイドアニオンの自然発生的な組合わせから生じる過酸化水素からの有毒なヒドロキシルラジカルの産生を触媒する。ヒドロキシラジカルは、高度に破壊的であり、細胞における脂質、蛋白質および核酸を損傷する。ラジカルは、脂質における不飽和結合の形成、膜流動性の減少、および細胞溶解の発生を誘導する。それらはまた、蛋白質のチオール基と反応し、クロスリンクおよび不活性化を引き起こす。ヒドロキシラジカルはまた、水素原子をDNAおよびRNAから抽出し、突然変異またはホスホジエステルバックボーンの切断を引き起こす。
【0056】
また、アルテミシニンは、例えばエクステイン−ラドビックら(Eckstein-Ludwig et at、Nature, Vol.424,957)により示唆されるような異なる機序を介してその抗細菌性第一鉄依存性活性を有する可能性もある。エクステイン−ラドビックらは、アルテミシニンのその抗寄生体活性は特異的なPタイプATPaseの阻害により獲得されたと示唆している。アルテミシニンの当該抗寄生体活性は、第一鉄の存在が必要であり、これに対して、鉄のキレート化は、当該抗寄生体活性を抑制する。
【0057】
本発明の組成物は、特に、胃におけるH.ピロリの根絶に対して有用である。本発明の組成物は、更に、任意の成分として1以上の薬剤、即ち、それらがH.ピロリ関連胃腸管系病態の治療において使用されることが既に公知の薬剤を、臨床的な有効性を追加するために含んでもよい。アルテミシニンまたはアルテミシン誘導体と組合わせて投与されるのに好ましい薬剤は、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、H2ブロッカー、ビスマス塩、またはH.ピロリに対する抗菌性効果であってよい。当該経口組成物は、更に、当該細菌内の細胞内鉄濃度を増加するために鉄を含んでもよく、それによって、エンドペルオキシド含有分子の当該細菌増殖阻害の有効性が増大する。
【0058】
多数のプロトンポンプ阻害剤が当業者に公知である。従って、例えば、U.S.特許第6,093,738号は、プロトンポンプ阻害剤として有効な新規のチアジアゾール化合物を記載する。欧州特許第322133号および404322号は、キナゾリン誘導体を開示し、欧州特許第259174号はキノリン誘導体を開示し、WO91/13337号およびUS特許第5,750,531号はピリミジン誘導体をプロトンポンプ阻害剤として開示する。適切なプロトンポンプ阻害剤はまた、例えば、EP-A1-174726、EP-A1-166287号、GB2 163 747号およびWO90/06925、WO91/19711、WO91/19712、WO94/27988およびWO95/01977などに開示されている。一般的に何れのプロトンポンプ阻害剤、即ち、酸性細管において活性があるもの、H+/K+アデノシントリホスフェート(ATPase)プロトンポンプの活性を阻害するものは、本発明のエンドペルオキシド含有化合物との組合わせにおいて使用してもよい。特に、好ましいPPIには、しかしながらこれらに限定されるものではないが、オメプラゾール、エソメプラゾール(esomeprazole)、ラベプラゾール(rabeprazole)、ランソプラゾール(lansoprazole)、テナトプラゾール(tenatoprazole)およびパントプラゾール(pantoprazole)およびその誘導体または類似体が含まれる。
【0059】
経口組成物は更に、ヘリコバクター sp 感染(例えば、ヘリコバクター・ピロリなど)に関連する潰瘍の治療のために抗菌剤を含んでもよい。そのような抗菌剤は、例えば、アモキシシリン、クラリスロマイシンまたは他のマクロライド、メトロニダゾールおよび関連する抗菌剤、テトラサイクリン、キノロン、リファブチン(rifabutin)またはフラゾリドンなどが含まれる。
【0060】
本発明において使用されるPPIは、中性の形態で使用されても、塩(例えば、アルカリ塩)、例えば、Mg+2、CA+2、NA+、K+またはLi+塩で使用されてもよく、好ましくはMg+2塩である。それ以上の適用は、当該化合物をラセミ体で使用しても、そのエナンチオマーの形態で使用することも、またはラセミ若しくは単一のエナンチオマーの塩で使用することも可能である。
【0061】
本発明の方法において使用される当該活性化合物は、静脈内、非経口、または経口手段により投与されてもよい。本発明の好ましい態様において、当該医薬組成物は、経口で投与される。そのような経口用剤形、即効性または持続性放出形態で活性化合物を含めばよい。
【0062】
当該組成物は更に、エンドペルオキシド関連化合物の胃粘膜内の当該細菌に対する有効性を改善し、それにより当該細菌に対するエンドペルオキシド関連化合物の局所的な活性を可能にする1以上の薬剤を含んでもよい。そのような薬剤は、例えば、胃粘膜の粘度を減少し、それによって当該エンドペルオキシド関連化合物の能力が当該細菌に届くのを促進するムコリチック剤(mucolytic agents)などである。そのようなムコリチック剤は、例えば、還元剤、例えば、N-アセチルシステイン、ジチオスレイトール、クエン酸またはマンニトールなどである。
【0063】
加えて、当該組成物は、更に、胃液におけるエンドペルオキシド関連化合物の溶解性を維持する薬剤を含んでもよい。これは当該エンドペルオキシド関連化合物が胃において当該細菌に対して局所的に作用することを可能にする。そのような薬剤は、好ましくはアルカリ性の薬剤または制酸剤であり、これらは、胃液に溶解した際に、当該胃液のpHを、少なくとも有意な割合のエンドペルオキシド関連化合物が当該胃液における溶解性を維持するpHにまで上昇することが可能なものである。
【0064】
本発明において使用されるべきアルカリ性の薬剤は、例えば、ナトリウム、カリウムバイカルボネート、酸化、水酸化または炭酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、マグネシウムグルコメート(magnesium glucomate)、水酸化アルミニウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウムまたはカリウムのカルボネート、ホスフェートまたはシトレート、ナトリウムカルボネート、ジナトリウムハイドロジェンホスフェート、アルミニウムグリシネートと緩衝剤の混合物、カルシウムヒドロキシド、カルシウムラクテート、カルシウムカルボネート、カルシウムバイカルボネート、および他のカルシウム塩を含む。注意されたいことは、炭酸水素ナトリウムが水に容易に溶解するのに対して、炭酸カルシウムは水不溶性であり、酸性環境においてのみ緩徐に可溶性であることである。従って、炭酸カルシウムは、胃においてアルカリ性の薬剤を持続的に溶解する場合において有用であってよく、望ましい。
【0065】
本発明において使用されるべき制酸剤の例は、以下の1以上を含む:アルミナ、炭酸カルシウムおよび炭酸水素ナトリウム;アルミナおよびマグネシア;アルミナ、マグネシア、炭酸カルシウムおよびシメチコン;アルミナ、アグネシア、および炭酸マグネシウム;アルミナ、マグネシア、炭酸マグネシウムおよびシメチコン:アルミナ、マグネシア、およびシメチコン;アルミナ、アルギン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム;アルミナおよび炭酸マグネシウム;アルミナ、炭酸マグネシウム、およびシメチコン;アルミナ、炭酸マグネシウム、および炭酸水素ナトリウム;アルミナおよび三珪酸マグネシウム;アルミナ、三珪酸マグネシウム、および炭酸水素ナトリウム;アルミナおよびシメチコン;アルミナおよび炭酸水素ナトリウム;炭酸アルミニウム、塩基性(basic);炭酸アルミニウム、塩基性、およびシメチコン;水酸化アルミニウム;炭酸カルシウム;炭酸カルシウムおよびマグネシア;炭酸カルシウム、マグネシアおよびシメチコン;炭酸カルシウムおよびシメチコン;炭酸マグネシウムおよびカルシウム;マガルドレート;マガルドレートおよびシメチコン;炭酸マグネシウムおよび炭酸ナトリウム;水酸化マグネシウム;酸化マグネシウム。
【0066】
エンドペルオキシド関連化合物の胃における局所的な効果を促進するために、その胃保持時間を延長することが推奨される。従って、もう1つの態様において、当該組成物は更に1以上の胃保持剤を含んでよい。これらの胃保持剤は、当該細菌を根絶するために十分な長時間に亘り胃に局所的に当該活性化合物を作用させることを可能にする。
【0067】
そのような胃保持剤は、例えば、1以上のポリマーでよく、それは胃液からの水分を吸収することを介して胃において膨張し、それによって当該粒子のサイズを増大して胃における胃保持率を促進する。当該活性成分は、拡散によって、または当該胃における粒子の緩徐な侵食に続いて当該粒子から緩徐に放出される。
【0068】
胃保持剤として使用するために適切なポリマーは、胃液から水分を吸収する結果として膨張する性質、および時間を掛けて徐々に侵食される性質を有する。当該剤形の表面と液体との相互作用からの結果として生じる胃における当該ポリマーの侵食性は、主に、当該ポリマー分子量と薬物/ポリマーの割合によって決定される。数時間に亘るゆっくりとした侵食を保証するために、当該ポリマーの分子量を約10〜約10グラム/モルの範囲にすることが推奨される。更に、当該活性化合物/ポリマーの割合は、約2:3〜約9:1、好ましくは約3:2〜9:1、最も好ましくは約4:1〜9:1の範囲にすることが推奨される。
【0069】
当該活性化合物は好ましくは当該ポリマー内に均一に分散され、ここにおいて、胃液における当該ポリマーのゆっくりとした侵食が、当該活性化合物の延長された放出を可能にする。胃保持剤として使用されるべき好ましいポリマーは、例えば、合成ポリマー、例えば、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルアセテートフタレート、セラック、その置換された誘導体、前述の何れかの混合物などである。もう1つの態様において、セルロースベースのポリマーが胃保持のために使用されてもよい。そのようなポリマーは、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネート、セルロースアセテートトリメリテート、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタレートまたは、経口用薬物デリバリー系を管理するのための製薬産業において使用されている何れかの他のセルロースベースのポリマーである。水における膨張性を有する他のポリマーが、本発明において使用されてもよい。そのようなポリマーの例は、ポリ(ヒドロキシアルキルメタアシレート)、ポリ(エレクトロライトコンプレックス)、加水分解性の結合とクロスリンクしたポリ(ビニルアセテート)、水膨張性N-ビニルラクタムポリサッカライド、天然ゴム質、寒天、アグロース(agrose)、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、フコイダン(fucoidan)、フルセララン(furcellaran)、ラミナラン(laminaran)、ハイプネア(hypnea)、ユーケウマ(eucheuma)、アラビアゴム、ガッチゴム、カラヤゴム、トラガカントゴム(gum tragacanth)、ローカスト・ビーム・ガム(locust beam gum)、アルビノグラクタン(arbinoglactan)、ペクチン、アミロペプチン、ゼラチン、親水性コロイド、例えば、カルボキシメチルセルロースガム、またはポリオールとクロスリンクしたアルギネートガム、例えば、プロピレングリコールなどである。水における膨張能を有する他のポリマーは、カルボポール(Carbopol)として公知の親水性ヒドロゲル、酸性カルボキシポリマー、シアナマー(Cyanamer)、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、スターチ・グラフト・コポリマー(starch graft copolymers)、アクリレートポリマー(acrylate polymer)、エステル架橋ポリグルカン(ester cross-linked polyglucan)などである。
【0070】
他の遅延性に胃を空にするアプローチが、胃における当該活性化合物の局所的効果を延長するために使用されてもよい。これらは、難消化性ポリマーまたは脂肪酸塩の使用を含み、これらは摂食状態に対する胃の運動パターンを変え、それによって、胃空腹率を低下し、薬物放出の相当な延長を可能にする(例えば、Singh and Kim, J. of Controlled Release 63(2000)235-259に開示される)。
【0071】
経口用剤形は、錠剤、カプセル、トローチ、ロゼンジ、水性または油性懸濁液、分散用粉末または顆粒、乳剤、多粒子製剤、シロップ、エリキシルなどの形態にあってもよい。
【0072】
適切な薬学的に許容される担体は、しかし、これに限定されるものではないが、水、塩溶液、アルコール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゲル化、炭水化物、例えば、ラクトース、アミロースまたはデンプン、ステアリン酸マグネシウムタルク、珪酸、芳香油(perfume oil)、粘性パラフィン、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、ペンタエリスリトール、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが含まれる。製剤の製造は滅菌してもよく、必要であれば、補助剤、例えば、滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝剤、着色剤、調味剤および/または香料物質などと混合してもよい。また、それらは所望のところで他の活性薬剤、例えば抗菌剤などと組合わせることも可能である。経口適用のためには、特に適切であるのは、錠剤、糖衣錠、液体、ドロップ(drops)、坐薬、またはカプセル、キャプレッツ(登録商標)、およびゲルカップ(gelcaps)である。
【0073】
経口使用を意図する組成物は、当該分野で公知の何れの方法に従って、製造してもよく、そのような組成物は、錠剤の製造に適切な、非活性、非毒性の薬学的賦形剤からなる群より選択された1以上の薬剤をふくんでよい。そのような賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えば、ラクトース;造粒剤および崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン;結合剤、例えばデンプン;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム;を含む。当該錠剤は、非コーティングであっても、またはそれらが公知の技術により科学的精密さと簡潔さをもってコーティングされても、または活性成分の放出を遅延するためにコーティングされてもよい。経口使用のための製剤形態は、また、活性成分が不活性希釈剤と混合された硬ゼラチンカプセルとして存在してもよい。
【0074】
本発明の関係において、化合物は、一般的に、有毒なフリーラジカルを形成する第一鉄の存在において反応するエンドペルオキシド基を有するものが使用されてよい。好ましくはエンドペルオキシド化合物は、上記に示すものであるが、ここで特に言及されない他のエンドペルオキシド化合物であっても、第一鉄依存性細菌を阻害する方法において有効であり得ることが本明細書から明白であろう。
【0075】
H.ピロリは、微好気性細菌であり、多数の胃腸病理、例えば、胃消化性潰瘍、十二指腸消化性潰瘍、胃炎、十二指腸炎、非潰瘍性消化不良、胃癌などに関連する。従って、本発明の活性化合物は、H.ピロリに関連する何れの病態に予防および治療に使用されてよい。
【0076】
多くの場合において、胃消化性潰瘍は、H.ピロリによる細菌感染の結果であると考えられており、本発明の組成物は、胃酸分泌およびH.ピロリ感染に関連する臨床的な病気と関連する何れの胃腸の病態の予防および治療のために使用することが可能であり、例えば、非ステロイド性抗炎症性薬剤(NSAID)療法(低用量のアスピリンも含む)中の患者、非潰瘍性消化不良の患者、症候群性の胃食道逆流性疾患(GERD)を煩う患者などの長期のPPI治療を必要とする患者において、急性上部胃腸出血の患者、ストレス性潰瘍の状態の患者において使用することが可能である。更に、本発明の組成物は、ゾリンジャーエリソン症候群(ZES)、ヴェルナー症候群、および全身性肥満細胞症などの状態の治療のために使用されてもよい。
【0077】
本発明のエンドペルオキシド化合物の組成物は、一般的にエンドペルオキシド化合物を当該第一鉄依存性細菌の増殖阻害に十分な量を、薬学的に許容される担体と共に含有する。当該組成物は、典型的にヒトまたはその他の動物対象に対して、胃で、当該細菌増殖の阻害、最も好ましくは実質的に根絶することを容易にするために局所的に十分な量のエンドペルオキシド化合物を投与される。何れの薬学的に許容される担体も、この目的のために一般的に使用されてよく、当該担体は本発明のセスキテルペン化合物の安定性または生物学的利用能に有意に干渉しないで提供される。
【0078】
本発明の組成物は、ヒトおよび他の動物対象を含む定温動物(woom blooded animals)に対して、何れの有効な薬学的に許容される形態で、例えば、経口、坐剤、非経口など、または注入可能な剤形(infusable dosage form)、または標的組織に対して当該薬物をデリバリーするために効果的な何れかの他の様式で投与できる。投与経路は好ましくは、当該標的細胞に対する当該薬物のデリバリーおよび局在性を最適化するように計画されればよいであろう。
【0079】
注射用に設計された組成物は、薬学的に許容される滅菌水または非水溶液性溶液、懸濁液または乳剤を含んでよい。非水系の担体、希釈剤、溶剤、または媒体の適切な例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油および注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルなどを含む。そのような組成物は、また、アジュバント、例えば、保存剤、湿潤剤、乳化剤および予製剤を含んでもよい。それらは、例えば、細菌保持フィルターを介しての濾過、または当該組成物への滅菌剤の取り込みにより滅菌してもよい。それらはまた、投与前に、滅菌水、生理食塩水、または他の注射用媒体に溶解できるような滅菌固体組成物の形態で製造することも可能である。
【0080】
経口投与のための固体剤形は、カプセル、錠剤、丸剤、坐剤、粉末および顆粒を含む。固体剤形において、当該組成物は、少なくとも1の不活性な希釈剤、例えばスクロース、ラクトースまたはデンプンと混合してもよく、更に、滑沢剤、緩衝剤、腸溶コーティングおよび当業者に周知の他の成分を含有させてもよい。
【0081】
本発明の実施において適用されるべき当該製剤におけるエンドペルオキシド含有化合物の濃度は、一般的に最大限に許容される用量までの範囲であるだろうが、当該濃度は、決定的なものではなく、広範に変動してもよい。アルテミシニンおよびその類似体については、しかしながら、最も良好な結果は、1日当り、体重1キログラム当り、約0.1〜約100mg、好ましくは1日当り、体重1キログラム当たり約1〜約90mg、最も好ましくは1日当り、体重1キログラム当り約1〜約75mgのレベルで当該化合物を含む製剤形態を使用すること得られるであろう。治療に携わる医師により使用される正確な量は、勿論のこと、化合物、投与経路、および患者の身体的な状態および他の因子に依存して変動するであろう。一日の投与量は、単回投与用量として投与されてもよく、管理のために複数の投与用量に分割されてもよい。治療のために実際に投与される当該化合物の量は、治療学的に有効な量であり、ここで使用される用語は、実質的に臨床的な改善を生じるために必要な量、または当該対象における当該細菌の増幅を十分に阻害する量を示す。最適な量は、投与方法により変動するであろうし、同様にまたは同様の形態で投与される慣習的な薬物の量に一般的に従うであろう。経口投与は、例えば、典型的には、1日1回〜3回で行われる。
【0082】
当該エンドペルオキシド含有化合物と他の抗菌剤またはプロトンポンプ阻害剤との組合わせは、同じ方法で投与できる。好ましい抗菌剤は、例えば、アモキシシリン、クラリスロマイシン、または他のマクロライド、メトロニダゾールおよび関連する抗菌剤、テトラサイクリン、キノロン、リファブチン(rifabutin)、フラゾリドンなどである。好ましいプロトンポンプ阻害剤は、例えば、オメプラゾール、ラベプラゾール(rabeprazole)、ランソプラゾール、パントプラゾール(pantoprazole)およびその誘導体または類似体などである。
【0083】
当該エンドペルオキシド含有物質は経口であっても非経口的であっても投与されてよく、単独であっても、更なる薬学的利用可能な媒体との組合わせにおいて投与されてもよい。経口投与において、適切な薬学的媒体は、錠剤、粉末、カプセルなどを製造するために使用される不活性な希釈剤または増量剤を含む。これらの薬学的併用は、もし必要であれば、更なる成分、例えば調味剤、結合剤、矯味剤などを含有してもよい。例えば、多様な矯味剤、例えば、クエン酸ナトリウム、それと共に多様な可溶性物質、例えばデンプン、アルギネートおよびある珪酸塩複合物および結合剤、例えば、ポリビニルピロリドン、蔗糖、ゼラチンおよびアラビアゴムを含む錠剤が使用される。加えて、滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクなどは、多くの場合、錠剤の製造に適している。同様な性質の固体組成物はまた、賦形剤として、充填された軟および硬カプセルにおいて使用される。従って、好ましい物質はラクトースおよび高分子量のポリエチレングリコールを含む。
【0084】
以下の例は、本発明のある態様をより十分に説明するために示されるものである。しかしながら、それらが本発明の広い範囲を制限するものと解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲から逸脱せずにここに開示される原理について、容易に多数の変形例および修飾例を工夫することが可能である。
【例】
【0085】
以下の例は本発明の範囲を制限する意図はなく、単に本発明に関わる代表的な可能性を説明するものである。
【0086】
[例1]:アルテミシニンは、H.ピロリに対して強力且つ特異的な抗菌的活性を示す
H.ピロリの増殖におけるアルテミシニンの効果を試験するために、新鮮に準備した細菌を種々の濃度のアルテミシニンに暴露した。細菌は、固定されたインキュベーション時間に亘り増殖し、それらの増殖レベルを分光光度計を使用してモニターした。処理された細菌の増殖を、非処理の細菌の増殖と比較した。表1に示す通り、アルテミシニンのH.ピロリに対する最小発育阻止濃度(MIC)は2.5μMであり、この化合物についての高い抗細菌特性を示唆している。
【0087】
更にアルテミシニンの抗細菌効果を測定するために、種々の濃度のアルテミシニンの存在する中で維持されたH.ピロリを、固形培地に播き、単一コロニーの数をモニターした。表1に示すとおり、125〜250μM以上の濃度のアルテミシニンで処理された細菌は、コロニー形成単位を形成することができなかった。これらの結果から125〜250μMのアルテミシニンが最小殺菌濃度(MBC)であるとみなせると示唆される。従って、アルテミシニンは、H.ピロリに対して高活性である。これらの結果は、H.ピロリにおいて存在する高い細胞内第一鉄蓄積によって恐らく説明できる。
【0088】
アルテミシニンの効果が、H.ピロリに対して特異的であるかどうかを測定するために、E.コリ(E.coli)およびP.アクネス(P.acnes)の増殖を阻害するアルテミシニンの能力を試験した。微好気性細菌であるH.ピロリに対して、Eコリは好気性腸内細菌であり、Pアクネスは、嫌気性真皮性細菌である。これらの細菌を、種々の濃度のアルテミシニンに暴露し、MICおよびMBC値を測定した。E.コリおよびP.アクネスは共に、アルテミシニンのミリモーラー濃度に対して抵抗性であり、その阻害効果がH.ピロリに限定され得ることが示唆された(表1および図1)。
【0089】
腸の正常な叢の一部分であるラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus(L.アシドフィルス))の増殖および生存度におけるアルテミシニンの効果を試験した。L.アシドフィルス菌は種々の濃度のアルテミシニンと共に増殖させ、その効果を測定した。表1および図1に示す通り、アルテミシニンは、5mg/mL以下の使用された何れの濃度においてもL.アシドフィルスの増殖に影響はなかった。これらの結果は、アルテミシニンの利用が腸の正常叢に干渉しない可能性を示している。
【表1】

【0090】
[例2]:クラリスロマイシンとメトロニダゾール抵抗性株のH.ピロリはアルテミシニンに対して感受性である
H.ピロリに感染した患者において不成功に終わった治療法は、たびたびクラリスロマイシンとメトロニダゾール耐性に関連していた。抗菌剤耐性を有するH.ピロリ単離物に対してアルテミシニンを使用することの可能性を評価するために、アルテミシニンの効果を、クラリスロマイシンおよびメトロニダゾールに耐性を示す細菌株を用いて試験した。クラリスロマイシン(CLR)およびメトロニダゾールに対して耐性を示すH.ピロリは、CLRの1mMまたは2.5〜10μMのアルテミシニンの存在において増殖した。細菌培養物を微好気性条件においてインキュベートした。細菌増殖におけるクラリスロマイシンまたはアルテミシニンの効果は3日後に分光光度計を用いて試験した。図2に示すように、当該試験された抵抗性株は、アルテミシニンに対して有意に感受性を有する。この発見は、アルテミシニンが、耐性株のH.ピロリに感染した患者を治療するための優良な候補としてみなすことが可能であることを示す。
【0091】
[例3]:アルテミシニンとオメプラゾールは相乗的にH.ピロリの増殖を阻害する
アルテミシニンとPPIの間の可能な相乗作用を探索するために、アルテミシニン、オメプラゾールまたはその両方の存在下での細菌の増殖を試験した。H.ピロリ菌は、3〜24μg/mLのオメプラゾールまたは0.5〜4μg/mLのアルテミシニンの存在下でも増殖した。細菌培養は、微好気性条件においてインキュベートした。アルテミシニンとオメプラゾールの細菌増殖における併用効果は、分光光度計を使用して3日後に試験した。図3に示すように、3μg/mLのオメプラゾールと0.5μg/mLアルテミシニンとの組合わせての投与は、細菌増殖の著しい減少を得るために十分であった。これらの結果は、当該薬物が単独では効果を示さない濃度で投与されたオメプラゾールとアルテミシニンの組合わせが、H.ピロリの増殖における相乗的な阻害効果を有することを示唆する。
【0092】
[例4]:アルテミシニン誘導体はH.ピロリの増殖を阻害する
H.ピロリの増殖におけるアルテミシニン誘導体の効果を試験するために、新しく準備した細菌を、種々の多様な濃度のアルテミシニン誘導体に対して暴露した。細菌は、固定されたインキュベーション時間に亘り増幅させ、それらの増幅レベルは分光光度計を使用してモニターした。処理された細菌の増殖を、非処理の細菌の増殖と比べた。図4に示された通りに、H.ピロリのためのアルテミシニン誘導体の最小発育阻止濃度(MIC)値のは、以下の通りである:アルテミシニンおよびジヒドロアルテミシニン=1.25〜2.5μM、アルテメーテル=0.3〜0.6μM、アルテエーテル=0.15〜0.3μM。従って、試験された全てのアルテミシニン誘導体が、抗H.ピロリ活性を有する。
【0093】
[例5]:H.ピロリ菌培養物に対するアルテスネート(artesunate)の長時間の暴露は不可逆的な細菌の根絶を結果として生ずる
アルテスネート(0.625または6.25mM)を細菌培養物(0.2 O.D.600)に対して多様な時間点(0.5、1、2、4、6および18時間)で添加した。次に、アルテスネートを、当該細菌の沈殿とPBS中での洗浄によって、当該培養物から洗い流し、その後に細菌を新鮮なアルテスネート非含有培地に再懸濁した。細菌は、アルテスネート非含有培地に更なる36時間維持し、次に細菌の増殖が分光光度計によって測定された。図5に示されたその結果は、H.ピロリ菌培養物のアルテスネートへの長時間の暴露が不可逆的な細胞根絶を生じることを示す。
【0094】
[例6]:アルテスネートはその抗ヘリコバクター活性を低pH状態における長時間のインキュベーション後も保つ
アルテスネート(1mg/mL)を擬似胃液(SGF、pH1.2)または細菌ブロス培地(GBBM、自然のpH)中で37℃で種々の時間(1、2、4、6および24時間)に亘ってプレインキュベーションした。当該プレインキュベーション後、細菌培養物(0.01 O.D.)を36時間に亘り、当該プレインキュベートされたアルテスネートを含有する培地に暴露した。アルテスネートの細菌増殖における効果を次に分光光度計により測定した。図6に示される結果は、アルテスネートの活性が、酸性条件における24時間のプレインキュベーションの後であってさえも保たれることを示した。
【0095】
[例7]:アルテスネートは、プラセボに対して、アルテスネートで処理したH.ピロリ感染マウスにおいてコロニー形成単位の数を効率的に減少する
インビボにおけるH.ピロリ感染に対するアルテスネートの効果を、H.ピロリ感染マウスにおいて試験した。マウスは、109のH.ピロリ菌株SS1の懸濁液を接種(x3/day)することによって感染させた。当該接種の2週間後に、マウスは経口的に50mg/kgのアルテスネートを1日に3回、8日間に亘って処置された。細菌感染のレベルは、当該処置の4および8日目にホモジナイズされた胃に由来するコロニー形成ユニットの数を数えることによって決定した。図7に示すように、アルテスネートは、プラセボに対してアルテスネートを処置したマウスにおけるコロニー形成ユニットの数を効率的に減少し、これはアルテスネートがインビボでのH.ピロリを除去する能力があることを示唆している。
【0096】
[例8]:小型錠剤(mini-tabs)のアルテスネート、腸溶性コーティングオメプラゾールビーズ、および炭酸カルシウムを含有するゼラチン硬カプセル
ゼラチン硬カプセルは、混合された粒子集団を含有する単回用剤形として剤形化される。各カプセルは以下の成分を含む:
腸溶性ビーズとしての40mgのオメプラゾール
250mgのアルテスネート顆粒
550mgの炭酸カルシウム(CaCO3)
ハイドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC) K100M
ポリオックス WSR N60
アルテスネートは、HPMC、ポリオックスおよびCaCO3と組合わされて顆粒化され小型錠剤に加圧された。当該小型錠剤は、胃の胃液と接触して急速に膨張する能力を有し、それによって胃の保持および胃粘膜内でのアルテスネートの局所的活性を付与する。当該胃へのアルテスネートとCaCO3の放出は膨張した小型錠剤の重合体マトリックスの侵食速度によって管理される。アルテスネート小型錠剤とそれと一緒の腸溶性コートされたオメプラゾールビーズは0サイズの硬ゼラチンカプセルに充填され、1カプセル当り40mgのオメプラゾール、250mgのアルテスネートおよび550mgの炭酸カルシウムに相当する量である。
【0097】
[例9]:腸溶性コートされたオメプラゾールとアルテスネートビーズを含む多粒子カプセル
この例は、多粒子硬ゼラチンカプセルの製造に関する工程を説明する。カプセルは、単一剤形として粒子の混合個体群:アルテスネートビーズおよび腸溶性コーティングオメプラゾールビーズ:を含むように剤形化される。各カプセルは以下の成分を含む:
40mgの腸溶性コートオメプラゾールビーズ
250mgのアルテスネート顆粒。
【0098】
[例10]:アルテスネート粉末とオメプラゾール粉末を含む腸溶性コート錠剤
加圧された錠剤は、以下の成分を含む単一剤形として製剤化される:
40mgのオメプラゾール粉末
250mgのアルテスネート粉末。
【0099】
加圧された錠剤は、250mgのアルテスネート粉末と40mgのオメプラゾール粉末を混合し、加圧することにより製造される。最終的な錠剤は腸溶性コーティングで被覆され、腸における活性成分の全身性の吸収を可能にする。もう1つの例は、当該活性成分が二重層錠剤に加圧され、そこにおいて第1の層は250mgのアルテスネートを含み、第2の層は40mgのオメプラゾールパウダーを含む。当該最終錠剤を、次に腸溶性コーティングにより被覆する。
【0100】
当該加圧された錠剤は、1以上の以下の賦形剤を含んでもよい:乳糖、マンニトール、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、微結晶セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、コロイド状シリコン二酸化物、クロスカルメロースナトリウム(croscarmellose sodium sodium)、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸および他の賦形剤、着色料、希釈液、緩衝剤、加湿剤、保存剤、香味剤および薬学的に矛盾のない担体。
【0101】
本明細書において言及された何れかおよび全ての出版物および特許出願は、本発明に属する分野の当業者の技術のレベルを示すものである。全ての出版物および特許出願は参照されることによりその同じ範囲でここに組み込まれ、各個々の出版物または特許出願が特異的に個々に参照によって組み込まれるべきであると示された。
【0102】
本発明は、特に示されているものおよび上に記載されたものにより制限されるものではないことは、当業者によって理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により定義される。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、E.コリ(E.c)、P.アクネス(P.acnes、P.a)、ラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus(L.a))およびH.ピロリ(H.pylori(H.p))についてのアルテミシニンの最小発育阻止濃度値を示すものであり、H.ピロリに対するアルテミシニンの特異性を示す。
【図2】図2は、クラリスロマイシンおよびメトロニダゾール耐性株のH.ピロリがアルテミシニンに対して感受性であることを示す。
【図3】図3は、アルテミシニンおよびオメプラゾールが、H.ピロリの根絶において相乗的な効果を示すことを示す。
【図4】図4は、アルテミシニンとその活性誘導体のH.ピロリに対する最小発育阻止濃度値を示す。
【図5】図5は、H.ピロリ菌培養物に対するアルテスネートの長時間暴露が不可逆的な細菌の根絶に帰着することを示す。
【図6】図6は、アルテスネートが、低いpH条件における長時間のインキュベーションの後でさえも、抗ヘリコバクター活性を維持することを示す。
【図7】図7は、アルテスネートが、プラセボに対してアルテスネートを用いて処理したH.ピロリ感染マウスにおけるコロニー形成ユニットの数を効率的に減少したことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ物を含む対象における第一鉄依存性細菌の成長を阻害する方法であって、それを必要とする当該対象に対して、当該細菌の成長を阻害するために十分な量であるエンドペルオキシド含有化合物を投与することを具備する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、当該エンドペルオキシド含有化合物が以下からなる群より選択される方法:セスキテルペンラクトンおよびアルコール、カルボネート、エステル、エーテル、スルホネートおよび薬学的に許容されるその塩、トリオキソラン、ビシクロエンドペルオキシド、トリオキサン、テトラオキサン、テルペンおよび置換されたテルペン。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、当該エンドペルオキシド含有化合物が式(I)に従う方法:
【化1】

ここで、Rは−CO−、またはRは−CR1−であり
ここで、Rは、水素、ヒドロキシル、アルキル、−OR、―COR、―COR、―COOR、―CO(CH)、−COOHまたは−SOORであり、
ここで、Rはアルキルまたはアリ−ルであり、およびnは1〜6である。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、当該エンドペルオキシド含有化合物が、以下からなる群より選択されるセスキテルペンである方法:アルテミシニン、ジヒドロアルテミシニン、アルテメーテル、アルテエーテル、アルテフレン、アルテスネート、ジヒドロキシジヒドロアルテミシニン、アルテリン酸およびジヒドロアルテミシニンプロピルカルボネート。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、更に、当該対象に対して、以下からなる群より選択される少なくとも1の活性薬剤の治療的有効量を投与することを具備する方法:抗菌剤、胃酸分泌阻害剤、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、可逆的プロトンポンプ阻害剤、H2ブロッカー、ビスマス含有化合物、細胞保護剤、プロスタグランジン類似物および鉄分。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、当該PPIが以下からなる群より選択される方法:ラベプラゾール、オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、レミノプラゾール、テナトプラゾール、その単一鏡像体、そのアルカリ塩、およびその混合物。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、前記抗菌剤が以下からなる群より選択される方法:アモキシシリン、マクロライド、メトロニダゾール、テトラサイクリン、キノロン、リファブチンおよびフラゾリドン。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記第一鉄依存性細菌がヘリコバクター・ピロリ(H.Pylori)である方法。
【請求項9】
そのような治療が必要な対象におけるヘリコバクター sp関連疾患を治療または予防する方法であって、当該対象に、当該疾患を治療または予防するために十分量のエンドペルオキシド含有化合物を投与することを具備する方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、当該エンドペルオキシド含有化合物が以下からなる群より選択される方法:セスキテルペンラクトンおよびアルコール、カルボネート、エステル、エーテル、スルホネートおよび薬学的に許容されるその塩、トリオキソラン、ビシクロエンドペルオキシド、トリオキサン、テトラオキサン、テルペン、および置換されたテルペン。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、当該エンドペルオキシド含有化合物が式(I)に従う方法:
【化2】

ここで、Rは−CO−または、Rは−CR−であり、
ここで、Rは、水素、ヒドロキシル、アルキル、−OR、−COR、−COR、−COOR、−CO(CH)、−COOH、または−SOORであり、
ここで、Rはアルキルまたはアリールであり、nは1〜6である。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、当該エンドペルオキシド含有化合物は、以下からなる群より選択されるセスキテルペンである方法:アルテミシニン、ジヒドロアルテミシニン、アルテメーテル、アルテエーテル、アルテフレン、アルテスネート、ジヒドロオキシジヒドロアルテミシニン、アルテリン酸およびジヒドロアルテミシニンプロピルカルボネート。
【請求項13】
請求項9に記載の方法であって、更に、当該対象に対して、以下からなる群より選択される少なくとも1の活性薬剤の治療学的有効量を投与することを具備する方法:抗菌剤、胃酸分泌阻害剤、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、可逆的プロトンポンプ阻害剤、H2ブロッカー、ビスマス含有化合物、粘膜付着性薬剤、プロスタグランジン類似物、および鉄分。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、PPIが以下からなる群より選択される方法:ラベプラゾール、オメプラゾール、エスオメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、レミノプラゾール、テナトプラゾール、その単一鏡像体、そのアルカリ塩、およびその混合物。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、当該抗菌剤が以下からなる群より選択される方法:アモキシシリン、マクロライド、メトロニダゾール、テトラサイクリン、キノロン、リファブチンおよびフラゾリドン。
【請求項16】
請求項9に記載の方法であって、当該ヘリコバクター sp 関連疾患がヘリコバクター sp 関連胃腸管疾患である方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、当該ヘリコバクター sp 関連胃腸管疾患が以下から選択される方法:胃消化性潰瘍、十二指腸消化性潰瘍、胃炎、十二指腸炎、非潰瘍性消化不良、MALTOMA、胃の腸管異形成および胃癌。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、当該胃腸管疾患に関連するヘリコバクター spがヘリコバクター・ピロリである方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、当該胃腸管疾患に関連するヘリコバクター・ピロリが、クラリストマイシンまたはメトロニダゾール耐性のヘリコバクター・ピロリ株である方法。
【請求項20】
請求項9に記載の方法であって、当該エンドペルオキシド含有化合物が静脈内、非経口または経口手段により投与される方法。
【請求項21】
請求項18に記載の方法であって、当該エンドペルオキシド含有化合物が実質的に当該細菌を根絶する方法。
【請求項22】
ヘリコバクター sp 関連医療管疾患の治療または予防のための、式(I)に従う化合物の薬学的有効量を含有する医薬組成物:
【化3】

ここで、Rは−CO−であり、またはRは−CR−であり、
ここで、R1は水素、ヒドロキシル、アルキル、−OR、−COR、−COR、−COOR、−CO(CH)、−COOH、または−SOORであり、
ここでRは、アルキルまたはアリールであり、nは1〜6であり、更に
ヘリコバクター sp 関連胃腸管疾患を治療するための1以上の活性薬剤が以下からなる群より選択される:抗菌剤、胃酸分泌阻害剤、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、可逆的プロトンポンプ阻害剤、H2ブロッカー、ビスマス含有化合物、粘膜付着性薬剤、プロスタグランジン類似物、および抗炎症剤。
【請求項23】
請求項22に記載の組成物であって、当該ヘリコバクター sp 関連胃腸関係疾患が、ヘリコバクター・ピロリ関連胃腸管疾患である組成物。
【請求項24】
請求項22に記載の組成物であって、更に、以下の少なくとも1を含む組成物;鉄分、1以上のムコ多糖加水分解薬剤、1以上の胃保持薬剤、シクロデキトリン、および1以上のアルカリ性の薬剤。
【請求項25】
請求項22に記載の組成物であって、当該経口組成物が、錠剤、カプセル、溶液、懸濁液のための粉末、分散または乳剤の形態にある組成物。
【請求項26】
請求項22に記載の組成物であって、当該組成物が、以下からなる群より選択されるセスキテルペンである組成物:アルテミシニン、ジヒドロアルテミシニン、アルテメーテル、アルテエーテル、アルテフレン、アルテスネート、ジヒドロキシジヒドロアルテミシニン、アルテリン酸、およびジヒドロアルテミシニンプロピルカルボネート。
【請求項27】
請求項22に記載の組成物であって、当該PPIが以下からなる群より選択される組成物:ラベプラゾール、オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、レミノプラゾール、テナトプラゾール、その単一鏡像体、そのアルカリ塩、およびその混合物。
【請求項28】
請求項22の組成物であって、当該抗菌剤が以下からなる群より選択される組成物:アモキシシリン、マクロライド、メトロニダゾール、テトラサイクリン、キノロン、リファブチンおよびフラゾリドン。
【請求項29】
請求項22に記載の組成物であって、式(I)に従う当該化合物がアルテミシニンまたはアルテスネートであり、当該PPIがオメプラゾールである組成物。
【請求項30】
請求項22に記載の組成物であって、式(I)に従う化合物と、ヘリコバクター sp 関連胃腸管疾を患治療するための活性薬剤とが、約50:1〜約1:100の割合である組成物。
【請求項31】
請求項22に記載の組成物であって、当該ヘリコバクター sp 関連胃腸管疾患が以下から選択される組成物:胃消化性潰瘍、十二指腸消化性潰瘍、胃炎、十二指腸炎、非潰瘍性消化不良、MALTOMA、胃の腸管異形成および胃癌。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−511600(P2007−511600A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540651(P2006−540651)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003759
【国際公開番号】WO2005/048912
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(506068070)ベクタ・リミテッド (6)
【Fターム(参考)】