オイルシール
【課題】シールリップ摺動部に対する潤滑油の供給機能を高めることができ、もってシールリップの耐久性を向上させることが可能なオイルシールを提供する。
【解決手段】ハウジングに取り付けられる環状の取付部と、軸の周面に摺動自在に密接するシールリップとを有するオイルシールにおいて、前記取付部の先端部位に、付着する油を集めて前記軸上へ滴下しまたは前記軸とシールリップとの摺動部へ供給する潤滑油補給部を有する。前記潤滑油補給部は、前記取付部の内周面に円周上複数設けられた突起を有し、前記突起の表面にて油を集める。前記取付部の先端面に、前記取付部の先端面上を円周方向に沿って流下する油を堰き止めて前記突起の方へ案内するための堰部を設ける。
【解決手段】ハウジングに取り付けられる環状の取付部と、軸の周面に摺動自在に密接するシールリップとを有するオイルシールにおいて、前記取付部の先端部位に、付着する油を集めて前記軸上へ滴下しまたは前記軸とシールリップとの摺動部へ供給する潤滑油補給部を有する。前記潤滑油補給部は、前記取付部の内周面に円周上複数設けられた突起を有し、前記突起の表面にて油を集める。前記取付部の先端面に、前記取付部の先端面上を円周方向に沿って流下する油を堰き止めて前記突起の方へ案内するための堰部を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置の一種であるオイルシールに係り、更に詳しくは、シールリップ摺動部に対する潤滑油の供給機能を高めるようにしたオイルシールに関するものである。本発明のオイルシールは例えば、自動車関連分野において用いられ、またはその他の汎用機械等において用いられる。
【背景技術】
【0002】
例えば図12に示すように従来から、ハウジング(図示せず)に取り付けられる環状の取付部52と、前記ハウジングの軸孔内周に挿通した軸(図示せず)の周面に摺動自在に密接するシールリップ53とを一体に有するオイルシール51が広く知られており、この種のオイルシール51においては、所定のゴム状弾性体よりなるシールリップ53の耐久性を向上させるべくその摺動摩耗を低減させるよう、シールリップ摺動部54に潤滑油を供給する必要がある。しかしながら密封対象油が例えばミスト状に存在するような場合には、シールリップ摺動部が貧潤滑状態となりやすく、早期摩耗や発熱等によってシール寿命が著しく短くなる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−282841号公報
【特許文献2】特開2003−056718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上の点に鑑みて、シールリップ摺動部に対する潤滑油の供給機能を高めることができ、もってシールリップの耐久性を向上させることが可能なオイルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のオイルシールは、ハウジングに取り付けられる環状の取付部と、軸の周面に摺動自在に密接するシールリップとを有するオイルシールにおいて、前記取付部の先端部位に、付着する油を集めて前記軸上へ滴下しまたは前記軸とシールリップとの摺動部へ供給する潤滑油補給部を有し、前記潤滑油補給部は、前記取付部の内周面に円周上複数設けられた突起を有し、前記突起の表面にて油を集め、前記取付部の先端面に、前記取付部の先端面上を円周方向に沿って流下する油を堰き止めて前記突起の方へ案内するための堰部を設けたことを特徴とする。
【0006】
上記構成を有する本発明のオイルシールにおいては、当該オイルシールの取付部の先端部位に潤滑油補給部が設けられ、この潤滑油補給部が付着する油を集めて軸上へ滴下させるものとされているために、この滴下される油によってシールリップ摺動部を潤滑することが可能とされている。また本発明のオイルシールにおいては、当該オイルシールの取付部の先端部位に潤滑油補給部が設けられ、この潤滑油補給部が付着する油を集めて軸とシールリップとの摺動部へ供給するものとされているために、この供給される油によってシールリップ摺動部を潤滑することが可能とされている。この「軸上へ滴下」と「軸とシールリップとの摺動部へ供給」は何れもシールリップ摺動部へ潤滑油を補給する点で同じであるが、「軸上へ滴下」では、油は潤滑油補給部から軸上へ滴下され、軸上からシールリップ摺動部へ供給される。これに対して「軸とシールリップとの摺動部へ供給」では、「軸上へ滴下」と同じ供給経路のほかに、油が潤滑油補給部からシールリップを伝ってシールリップ摺動部へ供給される場合が含まれる。
【0007】
潤滑油補給部は、密封対象空間中にミスト状に存在する油を当該補給部の表面に付着させ、これを集めて油滴としてシールリップ摺動部へ供給する。したがって潤滑油補給部の具体的構成としては、油の付着面積を大きく確保するよう取付部の内周面に突起を設け、この突起の表面にて油を集めるのが好ましい。但し、突起はこれをオイルシールの全周に亙って環状に設定すると、集めた油が突起の表面を伝って円周方向へ流れて行ってしまい滴下されないことが懸念されるので、これを防止すべく突起はこれをオイルシールの円周上複数に分割して設けるのが好ましい。この場合、油は突起単位で集められ、複数の突起のうち軸の上方に配置される突起で集められる油が軸上へ滴下されることになる。
【0008】
突起は、所定の体積を有する形状であるので、その表面にて油付着面積を拡大するのに有効な構造である。オイルシールの取付部の内周面に突起を円周上複数設ける場合、突起はそれぞれ一般に軸方向に長い形状とされて軸方向端面(先端面)を有し、この軸方向端面が密封対象空間に面することになるので、この軸方向端面に特に多くの油が付着する。またオイルシールの取付部の軸方向端面に付着する油が突起に伝って来ることがあり、オイルシールを装着するハウジングの形状によってはハウジングの表面に付着する油がオイルシールの取付部を経由して突起に伝って来ることもある。したがって何れにしても少しでも多くの油を集められるよう、以下のような構造を付設するのが好適である。
【0009】
すなわち、取付部の先端面に、この取付部の先端面上を円周方向に沿って流下する油を堰き止めて突起の方へ案内するための堰部を設ける。軸の上方(真上)以外の部位においては、取付部の先端面に付着する油が突起の方へ流れず取付部の先端面上を円周方向に伝って流れていってしまうことが懸念されるが、この流路上に堰部を設けることにより油が取付部から突起へ伝わりやすくなるので、より多くの油を集めることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0011】
すなわち、本発明のオイルシールにおいては上記したように、取付部の先端部位に潤滑油補給部が設けられ、この潤滑油補給部が付着する油を集めて滴下しまたは軸とシールリップとの摺動部へ供給するように構成されているために、この滴下・供給される油をシールリップ摺動部へ供給し、これによりシールリップ摺動部を潤滑することが可能とされている。したがって本発明所期の目的どおり、シールリップ摺動部に対する潤滑油の供給機能を高めることができ、これによりシールリップの耐久性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明のオイルシールにおいては、潤滑油補給部として取付部の内周面に突起が設けられ、この突起の表面にて油を集めるように構成されているために、多くの油を集めて軸上へ滴下または摺動部へ供給することが可能とされている。また、突起が円周上複数設けられているために、軸の上方に配置される突起から軸上または摺動部へと油を確実に滴下・供給することができる。
【0013】
また、本発明のオイルシールにおいては、取付部の先端面に堰部が設けられているために、油が取付部の先端面から突起へと伝わりやすくなり、よってより多くの油を集めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一実施例に係るオイルシールの半裁正面図
【図2】同オイルシールの要部断面図であって図1におけるA−A線拡大断面図
【図3】同オイルシールの要部断面図であって図1におけるB−B線拡大断面図
【図4】同オイルシールにおける潤滑油補給部の斜視図
【図5】本発明の第二実施例に係るオイルシールの断面図
【図6】同オイルシールにおける潤滑油補給部の斜視図
【図7】本発明の第三実施例に係るオイルシールの断面図
【図8】同オイルシールにおける潤滑油補給部の正面図であって図7におけるC方向矢視図
【図9】本発明の第四実施例に係るオイルシールの要部断面図
【図10】(A)は同オイルシールにおける潤滑油補給部の正面図であって図9におけるG方向矢視図、(B)は同図(A)におけるH方向矢視図
【図11】(A)および(B)とも同オイルシールにおける潤滑油補給部の作動説明図
【図12】従来例に係るオイルシールの要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(A)取付筒部が機器のハウジングの内周面に密嵌され、この取付筒部の内周から密封対象空間側へ向けて延在されたシールリップの先端近傍の内周部が、前記ハウジングに挿通された軸の外周面に摺動可能に密接され、軸心が横向きのオイルシールにおいて、前記取付筒部の内周に、液を保持し前記シールリップの先端部の正面に滴下させる集液突起が形成されたことを特徴とするオイルシール。
(B)集液突起が多数のフィンからなり、各フィン間に毛細管現象により液を保持するものであることを特徴とする上記(A)に記載のオイルシール。
(C)集液突起の下面が、液の滴下位置をシールリップの先端部の正面と対応する位置に規定する傾斜面をなすことを特徴とする上記(A)に記載のオイルシール。
(D)集液突起に、液の滴下位置をシールリップの先端部の正面と対応する位置に誘導する案内溝、案内突条又はダム部が形成されたことを特徴とする上記(A)に記載のオイルシール。
(E)シールリップに、集液突起から滴下した液を受けて前記シールリップの先端部の正面へ誘導する液受け突起が形成されたことを特徴とする上記(A)に記載のオイルシール。
【実施例】
【0016】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0017】
第一実施例・・・
図1は、本発明の第一実施例に係るオイルシール1を軸方向一方から見た半裁正面図を示しており、そのA−A線断面図が図2に示されるとともに、B−B線断面図が図3に示されている。図4は潤滑油補給部11の斜視図である。
【0018】
当該実施例に係るオイルシール1は、ハウジング21(図3)に取り付けられる環状の取付部2と、ハウジング21の軸孔22内周に挿通した軸(回転軸)23(図3)の周面に摺動自在に密接するシールリップ4とを有するオイルシール1において、取付部2の先端部位に、付着する油を集めて軸23上へ滴下させる潤滑油補給部11を設けたものであり、また、付着する油を集めて軸23とシールリップ4との摺動部へ供給する潤滑油補給部11を設けたものである。潤滑油補給部11は、取付部2の内周面に円周上複数設けられた突起12よりなり、突起12の表面に油を付着させて油を集めるものとされている。突起12の表面には、付着した油を一時的に貯えるための凹部13が設けられており、また同じく突起12の表面には、付着した油を集中させるための傾斜面(突起12の内周面12b)が設けられている。
【0019】
各部ないし各部品の詳細は、以下のように設定されている。
【0020】
すなわち先ず、当該オイルシール1をハウジング21の軸孔22内周に取り付けるための環状の取付部2が設けられており、この取付部2の内周側に環状の連結部(シールリップ保持部)3を介して、軸23の周面に摺動自在に密接する環状のシールリップ4が設けられている。連結部3から見て、取付部2は軸方向一方(図3における右方であってすなわち機内側)へ向けて設けられ、シールリップ4も同じ軸方向一方へ向けて設けられている。また当該オイルシール1はその構成部品として、金属環5と、この金属環5に被着されたゴム状弾性体6と、このゴム状弾性体6の一部であるシールリップ4に嵌着されたガータースプリング7とを有している。
【0021】
金属環5は、ハウジング21の軸孔22内周に嵌合される筒状部5aと、この筒状部5aの軸方向他方(図3における左方であってすなわち機外側)の端部に径方向内方へ向けて一体成形されたフランジ部5bとを一体に有している。ゴム状弾性体6は、金属環5の筒状部5aの外周面に被着されて金属環5およびハウジング21間をシールする外周面被着部(外周シール部)6aと、筒状部5aの先端面に被着された先端面被着部6bと、筒状部5aの内周面に被着された内周面被着部6cと、フランジ部5bの軸方向一方の端面(内側端面)に被着された内側端面被着部6dと、フランジ部5bの内周端に被着された内周端被着部6eと、フランジ部5bの軸方向他方の端面(外側端面)に被着された外側端面被着部6fとを一体に有し、更に上記シールリップ4とサブリップ8とが一体に成形されている。
【0022】
また、当該オイルシール1には特に、上記取付部2の軸方向先端部位であってその内周側に、当該潤滑油補給部11に付着する油を集めて軸23の周面上へ滴下させるための潤滑油補給部11が設けられている。
【0023】
この潤滑油補給部11は、上記取付部2の内周面に設けられた複数の突起12よりなり、各突起12の表面、特に軸方向先端面12aにミスト状の油を付着させ、付着した油を集め、軸23の上方に配置される突起12において、集めた油を油滴としてその重力落下により軸23の周面上に滴下させるように構成されている。
【0024】
突起12は、複数(当該実施例では図1に示すように4箇所)が等配状に設けられており、突起12間には円周方向の間隔が設定されている。図では突起12は4等配とされているがこれに限らず、4〜16等配程度が好適である。突起12はそれぞれゴム状弾性体6の一部として成形されており、先端面被着部6bおよび内周面被着部6cの内周面に一体成形されている。突起12は径方向内方へ向けて突出形成され、かつ軸方向に長いリブ状に形成されている。
【0025】
突起12の軸方向先端面12aには、付着した油を一時的に貯えるための凹部13が設けられており、また突起12の内周面12bには、付着した油を集中させるための傾斜面が設けられている。後者の傾斜面は、軸23の上方に配置される突起12において、その内周面12bに付着する油やこの内周面12bに流れてきた油を突起12の先端面12aの内周縁に集めるものであって、このため同内周縁へ向けて下り勾配の傾斜面(アンダーカット状の円錐状傾斜面)が設定されている。したがって油は、この傾斜面を伝って先端面12aの内周縁に集められ、先端面12aの方から流れてきた油と合流のうえ、ここから滴下されることになる。潤滑油補給部11の軸方向先端部すなわち突起12の軸方向先端面12aは、油をシールリップ4上ではなく軸23の周面上へ直接滴下させることができるよう、シールリップ4の軸方向先端面4aよりも軸方向一方へ突出して形成されている。
【0026】
上記構成のオイルシール1は、図3に示すようにハウジング21および軸23間に装着されて、機内側の油をシールするものであって、上記構成により以下の作用効果を奏する点に特徴を有している。
【0027】
すなわち、上記構成のオイルシール1においては上記したように、取付部2の先端部位に潤滑油補給部11が設けられ、この潤滑油補給部11が、付着する油を集めて軸23の周面上へ滴下させるように構成されているために、この滴下される油によってシールリップ4の摺動部を潤滑することが可能とされている。したがって、シールリップ4の摺動部に対する潤滑油の供給機能を高めることができ、これによりシールリップ4の耐久性を向上させることができる。
【0028】
また、潤滑油補給部11に突起12および凹部13が設けられているために、突起12で油の集積面積を拡大し、凹部13で、集めた油を一時的に貯えることが可能とされている。したがって、多くの油を集めてこれを軸23の周面上へ滴下させることができる。
【0029】
また、突起12が円周上複数設けられて突起12ごとに凹部13が設けられているために、突起12や凹部13が全周に亙って環状に形成される場合のように油が突起12や凹部13を伝って流れてしまうのを防止することが可能とされている。したがってこの点からも、多くの油を集めてこれを軸23の周面上へ滴下させることができる。
【0030】
また、複数の突起12が円周上等配状に設けられているために、複数の突起12のうちの何れかの突起12は必ず軸23の上方に配置され、油を確実に軸23の周面上へ滴下させることが可能とされている。したがって、オイルシール1の装着につき円周方向の方向性が限定されないために、円周上部分的な突起12を設けることにしてもオイルシール1の装着作業性が低下することはない(突起12を円周上一箇所のみに設けた場合にはこの突起12が軸23の上方に配置されるようオイルシール1の装着につき円周方向の方向性が限定されてしまうが、本発明によれば、複数の突起12が円周上等配状に設けられているために、特に装着の方向に意を介さなくても何れかの突起12を軸23の上方に配することができる。この効果を充分に得るには、突起12は4等配以上の設置数であることが望ましい)
【0031】
尚、図4の斜視図は、凹部13の形状の一例を示しており、この図4において凹部13は円周方向に長い溝状に形成されている。この溝状の凹部13はその円周方向中央が最も深く、円周方向の両側へかけて徐々に浅くなる形状とされている。但し、この形状は単なる一例に過ぎずこれに限定されないものであって、凹部13は例えば以下のようなものであっても良い。
【0032】
第二実施例・・・
図5および図6に示すように、突起12の先端面12aに溝状の凹部13を設けるとともにこれに加えて突起12の先端面12aであって凹部13の内周側の幅方向中央部位に切欠状を呈する油の注ぎ口(凹状注ぎ口)14を設ける。この構成によると、凹部13に貯えられた油が切欠状の注ぎ口14から軸23上へ滴下されることになり、注ぎ口14の切欠の大きさ如何によって、滴下される油滴Uの大きさ等を管理できるメリットがある。尚、この図5および図6の例では、突起12の先端面12aが取付部2の先端面2aと段差なく面一状に設定されていることからも、多くの油を集めることが可能とされている。
【0033】
第三実施例・・・
図7および図8に示すように、突起12を多数(図では11枚)の平行フィン(薄板状突起)15によって形成し、互いに隣り合うフィン15間の間隙(間隙空間)を油貯め用の凹部13として利用する。この場合、フィン15間の間隙すなわち凹部13は軸方向一方に開口するとともに径方向内方にも開口したものとなる。フィン15間の間隙すなわち凹部13の大きさ如何によっては該部に毛細管現象が発生するので、油を多量に貯えられる等のメリットがある。フィン15間の間隙すなわち凹部13の軸方向他方の側には、この方向への油の流れを堰き止めるために奥端壁(軸方向端壁)13aが設けられている。またこの図7および図8の例では、突起12すなわち各フィン15の内周面12bに上記第一実施例と同様の、付着した油を集中させるための傾斜面が設けられていることからも多くの油を集めることが可能とされている。
【0034】
尚、当該実施例のように潤滑油補給部11が多数のフィン15よりなる場合には、フィン15に付着しフィン15間の間隙すなわち凹部13に貯えられた油は当該オイルシール1の円周方向に流れにくいので(フィン15から隣のフィン15へもしくは凹部13から隣の凹部13へと伝うようには流れにくいので)、フィン15はこれをオイルシール1の全周に亙って万遍なく設定することも考えられる。この場合、フィン15はオイルシール1の全周に亙って一定の周方向間隔(ピッチ)で放射状に配置されることになる。
【0035】
また、上記第一ないし第三実施例のほか、突起12の表面に多くの油を集めて油滴として滴下しやすくするには、以下の構造が有効である。
【0036】
第四実施例・・・
図9および図10に示すように、取付部2の先端面2aに、この取付部2の先端面2a上を円周方向に沿って流下する油を堰き止めて突起12の方へ案内するための堰部19を設ける。
【0037】
すなわち、軸の上方(真上)部位においては、取付部2の下方に突起12が配置されるので、取付部2の先端面2aに付着した油は比較的容易に突起12の方へ流れて来るが、軸の上方(真上)以外の部位においては、取付部2の下方ではなく横手または横手近傍に突起12が配置されるので、取付部2の先端面2aに付着した油はこの先端面2a上を円周方向に伝って流れていってしまうことが懸念される。そこで、この流路の途上にこの流路を遮るように堰部19を設けることにより油が取付部2から突起12の方へ伝わりやすくなるので、より多くの油を集めることが可能とされる。このような理由から、当該実施例では、取付部2の先端面2aに突起12ごとに堰部19が設けられており、図では、堰部19は突起12の軸方向突出部12fと両者の先端面が面一状となるよう一体に成形されている。したがってこのような堰部19が設けられると、図11に示すように取付部2の先端面2a上を円周方向に伝って流れて来た油(矢印I)が堰部19により堰き止められて突起12の方へ伝って行くので(矢印J)、突起12により多くの油を集めることができる。尚、この図9および図10の例では、突起12の円周方向側面12g部位にもそれぞれ、付着する油を集中させるための傾斜面が設けられているので、この点からも多くの油を集めることが可能とされている。油はこの傾斜面に沿って突起12の先端面12aの方へ集められることになる(矢印K)。
【符号の説明】
【0038】
1 オイルシール
2 取付部
2a,12a 先端面
3 連結部
4 シールリップ
5 金属環
6 ゴム状弾性体
7 ガータースプリング
8 サブリップ
11 潤滑油補給部
12 突起
12b 内周面
12f 突出部
12g 側面
13 凹部
13a 奥端壁
14 注ぎ口
15 フィン
19 堰部
21 ハウジング
22 軸孔
23 軸
U 油滴
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置の一種であるオイルシールに係り、更に詳しくは、シールリップ摺動部に対する潤滑油の供給機能を高めるようにしたオイルシールに関するものである。本発明のオイルシールは例えば、自動車関連分野において用いられ、またはその他の汎用機械等において用いられる。
【背景技術】
【0002】
例えば図12に示すように従来から、ハウジング(図示せず)に取り付けられる環状の取付部52と、前記ハウジングの軸孔内周に挿通した軸(図示せず)の周面に摺動自在に密接するシールリップ53とを一体に有するオイルシール51が広く知られており、この種のオイルシール51においては、所定のゴム状弾性体よりなるシールリップ53の耐久性を向上させるべくその摺動摩耗を低減させるよう、シールリップ摺動部54に潤滑油を供給する必要がある。しかしながら密封対象油が例えばミスト状に存在するような場合には、シールリップ摺動部が貧潤滑状態となりやすく、早期摩耗や発熱等によってシール寿命が著しく短くなる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−282841号公報
【特許文献2】特開2003−056718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上の点に鑑みて、シールリップ摺動部に対する潤滑油の供給機能を高めることができ、もってシールリップの耐久性を向上させることが可能なオイルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のオイルシールは、ハウジングに取り付けられる環状の取付部と、軸の周面に摺動自在に密接するシールリップとを有するオイルシールにおいて、前記取付部の先端部位に、付着する油を集めて前記軸上へ滴下しまたは前記軸とシールリップとの摺動部へ供給する潤滑油補給部を有し、前記潤滑油補給部は、前記取付部の内周面に円周上複数設けられた突起を有し、前記突起の表面にて油を集め、前記取付部の先端面に、前記取付部の先端面上を円周方向に沿って流下する油を堰き止めて前記突起の方へ案内するための堰部を設けたことを特徴とする。
【0006】
上記構成を有する本発明のオイルシールにおいては、当該オイルシールの取付部の先端部位に潤滑油補給部が設けられ、この潤滑油補給部が付着する油を集めて軸上へ滴下させるものとされているために、この滴下される油によってシールリップ摺動部を潤滑することが可能とされている。また本発明のオイルシールにおいては、当該オイルシールの取付部の先端部位に潤滑油補給部が設けられ、この潤滑油補給部が付着する油を集めて軸とシールリップとの摺動部へ供給するものとされているために、この供給される油によってシールリップ摺動部を潤滑することが可能とされている。この「軸上へ滴下」と「軸とシールリップとの摺動部へ供給」は何れもシールリップ摺動部へ潤滑油を補給する点で同じであるが、「軸上へ滴下」では、油は潤滑油補給部から軸上へ滴下され、軸上からシールリップ摺動部へ供給される。これに対して「軸とシールリップとの摺動部へ供給」では、「軸上へ滴下」と同じ供給経路のほかに、油が潤滑油補給部からシールリップを伝ってシールリップ摺動部へ供給される場合が含まれる。
【0007】
潤滑油補給部は、密封対象空間中にミスト状に存在する油を当該補給部の表面に付着させ、これを集めて油滴としてシールリップ摺動部へ供給する。したがって潤滑油補給部の具体的構成としては、油の付着面積を大きく確保するよう取付部の内周面に突起を設け、この突起の表面にて油を集めるのが好ましい。但し、突起はこれをオイルシールの全周に亙って環状に設定すると、集めた油が突起の表面を伝って円周方向へ流れて行ってしまい滴下されないことが懸念されるので、これを防止すべく突起はこれをオイルシールの円周上複数に分割して設けるのが好ましい。この場合、油は突起単位で集められ、複数の突起のうち軸の上方に配置される突起で集められる油が軸上へ滴下されることになる。
【0008】
突起は、所定の体積を有する形状であるので、その表面にて油付着面積を拡大するのに有効な構造である。オイルシールの取付部の内周面に突起を円周上複数設ける場合、突起はそれぞれ一般に軸方向に長い形状とされて軸方向端面(先端面)を有し、この軸方向端面が密封対象空間に面することになるので、この軸方向端面に特に多くの油が付着する。またオイルシールの取付部の軸方向端面に付着する油が突起に伝って来ることがあり、オイルシールを装着するハウジングの形状によってはハウジングの表面に付着する油がオイルシールの取付部を経由して突起に伝って来ることもある。したがって何れにしても少しでも多くの油を集められるよう、以下のような構造を付設するのが好適である。
【0009】
すなわち、取付部の先端面に、この取付部の先端面上を円周方向に沿って流下する油を堰き止めて突起の方へ案内するための堰部を設ける。軸の上方(真上)以外の部位においては、取付部の先端面に付着する油が突起の方へ流れず取付部の先端面上を円周方向に伝って流れていってしまうことが懸念されるが、この流路上に堰部を設けることにより油が取付部から突起へ伝わりやすくなるので、より多くの油を集めることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0011】
すなわち、本発明のオイルシールにおいては上記したように、取付部の先端部位に潤滑油補給部が設けられ、この潤滑油補給部が付着する油を集めて滴下しまたは軸とシールリップとの摺動部へ供給するように構成されているために、この滴下・供給される油をシールリップ摺動部へ供給し、これによりシールリップ摺動部を潤滑することが可能とされている。したがって本発明所期の目的どおり、シールリップ摺動部に対する潤滑油の供給機能を高めることができ、これによりシールリップの耐久性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明のオイルシールにおいては、潤滑油補給部として取付部の内周面に突起が設けられ、この突起の表面にて油を集めるように構成されているために、多くの油を集めて軸上へ滴下または摺動部へ供給することが可能とされている。また、突起が円周上複数設けられているために、軸の上方に配置される突起から軸上または摺動部へと油を確実に滴下・供給することができる。
【0013】
また、本発明のオイルシールにおいては、取付部の先端面に堰部が設けられているために、油が取付部の先端面から突起へと伝わりやすくなり、よってより多くの油を集めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一実施例に係るオイルシールの半裁正面図
【図2】同オイルシールの要部断面図であって図1におけるA−A線拡大断面図
【図3】同オイルシールの要部断面図であって図1におけるB−B線拡大断面図
【図4】同オイルシールにおける潤滑油補給部の斜視図
【図5】本発明の第二実施例に係るオイルシールの断面図
【図6】同オイルシールにおける潤滑油補給部の斜視図
【図7】本発明の第三実施例に係るオイルシールの断面図
【図8】同オイルシールにおける潤滑油補給部の正面図であって図7におけるC方向矢視図
【図9】本発明の第四実施例に係るオイルシールの要部断面図
【図10】(A)は同オイルシールにおける潤滑油補給部の正面図であって図9におけるG方向矢視図、(B)は同図(A)におけるH方向矢視図
【図11】(A)および(B)とも同オイルシールにおける潤滑油補給部の作動説明図
【図12】従来例に係るオイルシールの要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(A)取付筒部が機器のハウジングの内周面に密嵌され、この取付筒部の内周から密封対象空間側へ向けて延在されたシールリップの先端近傍の内周部が、前記ハウジングに挿通された軸の外周面に摺動可能に密接され、軸心が横向きのオイルシールにおいて、前記取付筒部の内周に、液を保持し前記シールリップの先端部の正面に滴下させる集液突起が形成されたことを特徴とするオイルシール。
(B)集液突起が多数のフィンからなり、各フィン間に毛細管現象により液を保持するものであることを特徴とする上記(A)に記載のオイルシール。
(C)集液突起の下面が、液の滴下位置をシールリップの先端部の正面と対応する位置に規定する傾斜面をなすことを特徴とする上記(A)に記載のオイルシール。
(D)集液突起に、液の滴下位置をシールリップの先端部の正面と対応する位置に誘導する案内溝、案内突条又はダム部が形成されたことを特徴とする上記(A)に記載のオイルシール。
(E)シールリップに、集液突起から滴下した液を受けて前記シールリップの先端部の正面へ誘導する液受け突起が形成されたことを特徴とする上記(A)に記載のオイルシール。
【実施例】
【0016】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0017】
第一実施例・・・
図1は、本発明の第一実施例に係るオイルシール1を軸方向一方から見た半裁正面図を示しており、そのA−A線断面図が図2に示されるとともに、B−B線断面図が図3に示されている。図4は潤滑油補給部11の斜視図である。
【0018】
当該実施例に係るオイルシール1は、ハウジング21(図3)に取り付けられる環状の取付部2と、ハウジング21の軸孔22内周に挿通した軸(回転軸)23(図3)の周面に摺動自在に密接するシールリップ4とを有するオイルシール1において、取付部2の先端部位に、付着する油を集めて軸23上へ滴下させる潤滑油補給部11を設けたものであり、また、付着する油を集めて軸23とシールリップ4との摺動部へ供給する潤滑油補給部11を設けたものである。潤滑油補給部11は、取付部2の内周面に円周上複数設けられた突起12よりなり、突起12の表面に油を付着させて油を集めるものとされている。突起12の表面には、付着した油を一時的に貯えるための凹部13が設けられており、また同じく突起12の表面には、付着した油を集中させるための傾斜面(突起12の内周面12b)が設けられている。
【0019】
各部ないし各部品の詳細は、以下のように設定されている。
【0020】
すなわち先ず、当該オイルシール1をハウジング21の軸孔22内周に取り付けるための環状の取付部2が設けられており、この取付部2の内周側に環状の連結部(シールリップ保持部)3を介して、軸23の周面に摺動自在に密接する環状のシールリップ4が設けられている。連結部3から見て、取付部2は軸方向一方(図3における右方であってすなわち機内側)へ向けて設けられ、シールリップ4も同じ軸方向一方へ向けて設けられている。また当該オイルシール1はその構成部品として、金属環5と、この金属環5に被着されたゴム状弾性体6と、このゴム状弾性体6の一部であるシールリップ4に嵌着されたガータースプリング7とを有している。
【0021】
金属環5は、ハウジング21の軸孔22内周に嵌合される筒状部5aと、この筒状部5aの軸方向他方(図3における左方であってすなわち機外側)の端部に径方向内方へ向けて一体成形されたフランジ部5bとを一体に有している。ゴム状弾性体6は、金属環5の筒状部5aの外周面に被着されて金属環5およびハウジング21間をシールする外周面被着部(外周シール部)6aと、筒状部5aの先端面に被着された先端面被着部6bと、筒状部5aの内周面に被着された内周面被着部6cと、フランジ部5bの軸方向一方の端面(内側端面)に被着された内側端面被着部6dと、フランジ部5bの内周端に被着された内周端被着部6eと、フランジ部5bの軸方向他方の端面(外側端面)に被着された外側端面被着部6fとを一体に有し、更に上記シールリップ4とサブリップ8とが一体に成形されている。
【0022】
また、当該オイルシール1には特に、上記取付部2の軸方向先端部位であってその内周側に、当該潤滑油補給部11に付着する油を集めて軸23の周面上へ滴下させるための潤滑油補給部11が設けられている。
【0023】
この潤滑油補給部11は、上記取付部2の内周面に設けられた複数の突起12よりなり、各突起12の表面、特に軸方向先端面12aにミスト状の油を付着させ、付着した油を集め、軸23の上方に配置される突起12において、集めた油を油滴としてその重力落下により軸23の周面上に滴下させるように構成されている。
【0024】
突起12は、複数(当該実施例では図1に示すように4箇所)が等配状に設けられており、突起12間には円周方向の間隔が設定されている。図では突起12は4等配とされているがこれに限らず、4〜16等配程度が好適である。突起12はそれぞれゴム状弾性体6の一部として成形されており、先端面被着部6bおよび内周面被着部6cの内周面に一体成形されている。突起12は径方向内方へ向けて突出形成され、かつ軸方向に長いリブ状に形成されている。
【0025】
突起12の軸方向先端面12aには、付着した油を一時的に貯えるための凹部13が設けられており、また突起12の内周面12bには、付着した油を集中させるための傾斜面が設けられている。後者の傾斜面は、軸23の上方に配置される突起12において、その内周面12bに付着する油やこの内周面12bに流れてきた油を突起12の先端面12aの内周縁に集めるものであって、このため同内周縁へ向けて下り勾配の傾斜面(アンダーカット状の円錐状傾斜面)が設定されている。したがって油は、この傾斜面を伝って先端面12aの内周縁に集められ、先端面12aの方から流れてきた油と合流のうえ、ここから滴下されることになる。潤滑油補給部11の軸方向先端部すなわち突起12の軸方向先端面12aは、油をシールリップ4上ではなく軸23の周面上へ直接滴下させることができるよう、シールリップ4の軸方向先端面4aよりも軸方向一方へ突出して形成されている。
【0026】
上記構成のオイルシール1は、図3に示すようにハウジング21および軸23間に装着されて、機内側の油をシールするものであって、上記構成により以下の作用効果を奏する点に特徴を有している。
【0027】
すなわち、上記構成のオイルシール1においては上記したように、取付部2の先端部位に潤滑油補給部11が設けられ、この潤滑油補給部11が、付着する油を集めて軸23の周面上へ滴下させるように構成されているために、この滴下される油によってシールリップ4の摺動部を潤滑することが可能とされている。したがって、シールリップ4の摺動部に対する潤滑油の供給機能を高めることができ、これによりシールリップ4の耐久性を向上させることができる。
【0028】
また、潤滑油補給部11に突起12および凹部13が設けられているために、突起12で油の集積面積を拡大し、凹部13で、集めた油を一時的に貯えることが可能とされている。したがって、多くの油を集めてこれを軸23の周面上へ滴下させることができる。
【0029】
また、突起12が円周上複数設けられて突起12ごとに凹部13が設けられているために、突起12や凹部13が全周に亙って環状に形成される場合のように油が突起12や凹部13を伝って流れてしまうのを防止することが可能とされている。したがってこの点からも、多くの油を集めてこれを軸23の周面上へ滴下させることができる。
【0030】
また、複数の突起12が円周上等配状に設けられているために、複数の突起12のうちの何れかの突起12は必ず軸23の上方に配置され、油を確実に軸23の周面上へ滴下させることが可能とされている。したがって、オイルシール1の装着につき円周方向の方向性が限定されないために、円周上部分的な突起12を設けることにしてもオイルシール1の装着作業性が低下することはない(突起12を円周上一箇所のみに設けた場合にはこの突起12が軸23の上方に配置されるようオイルシール1の装着につき円周方向の方向性が限定されてしまうが、本発明によれば、複数の突起12が円周上等配状に設けられているために、特に装着の方向に意を介さなくても何れかの突起12を軸23の上方に配することができる。この効果を充分に得るには、突起12は4等配以上の設置数であることが望ましい)
【0031】
尚、図4の斜視図は、凹部13の形状の一例を示しており、この図4において凹部13は円周方向に長い溝状に形成されている。この溝状の凹部13はその円周方向中央が最も深く、円周方向の両側へかけて徐々に浅くなる形状とされている。但し、この形状は単なる一例に過ぎずこれに限定されないものであって、凹部13は例えば以下のようなものであっても良い。
【0032】
第二実施例・・・
図5および図6に示すように、突起12の先端面12aに溝状の凹部13を設けるとともにこれに加えて突起12の先端面12aであって凹部13の内周側の幅方向中央部位に切欠状を呈する油の注ぎ口(凹状注ぎ口)14を設ける。この構成によると、凹部13に貯えられた油が切欠状の注ぎ口14から軸23上へ滴下されることになり、注ぎ口14の切欠の大きさ如何によって、滴下される油滴Uの大きさ等を管理できるメリットがある。尚、この図5および図6の例では、突起12の先端面12aが取付部2の先端面2aと段差なく面一状に設定されていることからも、多くの油を集めることが可能とされている。
【0033】
第三実施例・・・
図7および図8に示すように、突起12を多数(図では11枚)の平行フィン(薄板状突起)15によって形成し、互いに隣り合うフィン15間の間隙(間隙空間)を油貯め用の凹部13として利用する。この場合、フィン15間の間隙すなわち凹部13は軸方向一方に開口するとともに径方向内方にも開口したものとなる。フィン15間の間隙すなわち凹部13の大きさ如何によっては該部に毛細管現象が発生するので、油を多量に貯えられる等のメリットがある。フィン15間の間隙すなわち凹部13の軸方向他方の側には、この方向への油の流れを堰き止めるために奥端壁(軸方向端壁)13aが設けられている。またこの図7および図8の例では、突起12すなわち各フィン15の内周面12bに上記第一実施例と同様の、付着した油を集中させるための傾斜面が設けられていることからも多くの油を集めることが可能とされている。
【0034】
尚、当該実施例のように潤滑油補給部11が多数のフィン15よりなる場合には、フィン15に付着しフィン15間の間隙すなわち凹部13に貯えられた油は当該オイルシール1の円周方向に流れにくいので(フィン15から隣のフィン15へもしくは凹部13から隣の凹部13へと伝うようには流れにくいので)、フィン15はこれをオイルシール1の全周に亙って万遍なく設定することも考えられる。この場合、フィン15はオイルシール1の全周に亙って一定の周方向間隔(ピッチ)で放射状に配置されることになる。
【0035】
また、上記第一ないし第三実施例のほか、突起12の表面に多くの油を集めて油滴として滴下しやすくするには、以下の構造が有効である。
【0036】
第四実施例・・・
図9および図10に示すように、取付部2の先端面2aに、この取付部2の先端面2a上を円周方向に沿って流下する油を堰き止めて突起12の方へ案内するための堰部19を設ける。
【0037】
すなわち、軸の上方(真上)部位においては、取付部2の下方に突起12が配置されるので、取付部2の先端面2aに付着した油は比較的容易に突起12の方へ流れて来るが、軸の上方(真上)以外の部位においては、取付部2の下方ではなく横手または横手近傍に突起12が配置されるので、取付部2の先端面2aに付着した油はこの先端面2a上を円周方向に伝って流れていってしまうことが懸念される。そこで、この流路の途上にこの流路を遮るように堰部19を設けることにより油が取付部2から突起12の方へ伝わりやすくなるので、より多くの油を集めることが可能とされる。このような理由から、当該実施例では、取付部2の先端面2aに突起12ごとに堰部19が設けられており、図では、堰部19は突起12の軸方向突出部12fと両者の先端面が面一状となるよう一体に成形されている。したがってこのような堰部19が設けられると、図11に示すように取付部2の先端面2a上を円周方向に伝って流れて来た油(矢印I)が堰部19により堰き止められて突起12の方へ伝って行くので(矢印J)、突起12により多くの油を集めることができる。尚、この図9および図10の例では、突起12の円周方向側面12g部位にもそれぞれ、付着する油を集中させるための傾斜面が設けられているので、この点からも多くの油を集めることが可能とされている。油はこの傾斜面に沿って突起12の先端面12aの方へ集められることになる(矢印K)。
【符号の説明】
【0038】
1 オイルシール
2 取付部
2a,12a 先端面
3 連結部
4 シールリップ
5 金属環
6 ゴム状弾性体
7 ガータースプリング
8 サブリップ
11 潤滑油補給部
12 突起
12b 内周面
12f 突出部
12g 側面
13 凹部
13a 奥端壁
14 注ぎ口
15 フィン
19 堰部
21 ハウジング
22 軸孔
23 軸
U 油滴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに取り付けられる環状の取付部と、軸の周面に摺動自在に密接するシールリップとを有するオイルシールにおいて、
前記取付部の先端部位に、付着する油を集めて前記軸上へ滴下しまたは前記軸とシールリップとの摺動部へ供給する潤滑油補給部を有し、
前記潤滑油補給部は、前記取付部の内周面に円周上複数設けられた突起を有し、前記突起の表面にて油を集め、
前記取付部の先端面に、前記取付部の先端面上を円周方向に沿って流下する油を堰き止めて前記突起の方へ案内するための堰部を設けたことを特徴とするオイルシール。
【請求項1】
ハウジングに取り付けられる環状の取付部と、軸の周面に摺動自在に密接するシールリップとを有するオイルシールにおいて、
前記取付部の先端部位に、付着する油を集めて前記軸上へ滴下しまたは前記軸とシールリップとの摺動部へ供給する潤滑油補給部を有し、
前記潤滑油補給部は、前記取付部の内周面に円周上複数設けられた突起を有し、前記突起の表面にて油を集め、
前記取付部の先端面に、前記取付部の先端面上を円周方向に沿って流下する油を堰き止めて前記突起の方へ案内するための堰部を設けたことを特徴とするオイルシール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−159197(P2012−159197A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−97473(P2012−97473)
【出願日】平成24年4月23日(2012.4.23)
【分割の表示】特願2006−229096(P2006−229096)の分割
【原出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月23日(2012.4.23)
【分割の表示】特願2006−229096(P2006−229096)の分割
【原出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】
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