説明

オイル供給装置

【課題】簡単な構成で製造コストの増加を伴うことなく、オイルの流動の圧力損失を低減し、各潤滑要素に速やかにオイルを供給することができるオイル供給装置を提供すること。
【解決手段】オイルポンプ12から供給されるオイルを通す第1オイル通路部10aと、第1オイル通路部10aと連結されたオイルフィルタ14と、オイルフィルタ14から供給されるオイルを通す第2オイル通路部10b、10c、10dと、第2オイル通路部10dから供給されたオイルをエンジン1の潤滑要素に供給するオイルギャラリ部15とを備え、第1オイル通路部10aおよびオイルギャラリ部15が、クランクシャフト2の軸線CL方向に沿って配置されるとともに、第1オイル通路部10a、第2オイル通路部10b、10c、10dおよびオイルギャラリ部15が、クランクシャフト2の軸線CLを中心として、一方側に配置されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル供給装置に関し、特に、エンジンを潤滑するオイルをエンジンの潤滑要素に供給するオイル供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンの潤滑要素への潤滑は、エンジンのオイルパン内に貯留されたオイルが、オイルポンプによって圧送されることにより行われている。
オイルパン内のオイルは、オイルポンプによって吸入され、エンジン内のオイル通路に吐出され、オイルをろ過するオイルフィルタを介して、オイルギャラリなどのオイル通路に供給される。そして、このオイルギャラリからクランクシャフトのジャーナル、ピストン、吸気カムシャフト、排気カムシャフトなどの各潤滑要素に供給され、各潤滑要素が供給されたオイルにより潤滑および冷却されている。
【0003】
従来、この種のオイル供給装置として、クランクシャフトの回転力をカムシャフトに伝達する動力伝達機構の一部を覆いエンジン側壁に配置されるカバー部材と、カバー部材の壁部に設けられるオイルポンプと、カバー部材の下面に形成されるオイルポンプの吸込口とシリンダブロックに設けられる潤滑油供給口とを連通するようカバー部材の壁部に形成されるオイル通路と、オイルポンプと潤滑油供給口との間に設けられるオイルフィルタと、カバー部材の下部に配置されて吸込口と連通するオイル導入路を壁部に有するオイルパンとを具備したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このオイル供給装置においては、オイルポンプをカバー部材の壁部に設けることにより、オイルポンプからシリンダブロックまでのオイル供給系統をコンパクトにできるとともに、オイルポンプやオイルフィルタをシリンダブロックに容易に組み付けることができるようにしている。
【0005】
しかしながら、このオイル供給装置においては、オイル通路が入り組んだ構造になっているので、オイルが流れにくくなり圧力損失が高まってしまうおそれがある。すなわち、オイルフィルタから潤滑油供給口に向かうオイル通路が、クランクシャフトの軸線方向に直交するように配置されており、オイルポンプからオイルフィルタまでのオイル通路と、オイルフィルタから潤滑油供給口に向かうオイル通路とがクランクシャフトを挟んで対向するように配置されているので、オイル通路が入り組んでしまっている。
【0006】
このような、オイル供給装置にオイルを冷却するオイルクーラを装着し、オイルの過度な温度上昇を抑制し最適な油温を維持してエンジン好適な潤滑と冷却を図ろうとする場合、オイル通路が入り組んで、より複雑な構造となってしまうという問題がある。
オイル通路が入り組んで、より複雑な構造となると、オイルがより流れにくくなり圧力損失がより高まって、オイルの供給が不十分となり潤滑要素の耐焼付き性能が低下してしまうという問題がある。
【0007】
このようなオイルフィルタおよびオイルクーラを装着した従来のオイル供給装置として、クランク軸の回転に連動して回転するオイルポンプと、オイルポンプから吐出された潤滑油をオイルギャラリに供給する供給路と、潤滑油を機関各所に供給する複数の分岐供給路とを備え、分岐供給路の一つを通じて動弁系への潤滑油の供給路が形成され、この供給路に一体化されたオイルフィルタおよびオイルクーラが設けられたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
このオイル供給装置においては、オイルフィルタおよびオイルクーラが一体化されており、オイルフィルタとオイルクーラとの間のオイル通路の配設がなく、その分オイル供給装置のオイル通路が単純化されている。また、このオイル供給装置においては、動弁系への潤滑油の供給路は、エンジンの運転状態に応じてオイルの供給量が調整されるチェックバルブを介し、オイルギャラリへ向かう供給路のチェックバルブ上流にて分岐されるよう構成されている。この構成により、運転状態に応じてチェックバルブが作動すると、オイルギャラリへのオイル供給よりも動弁系へのオイル供給が優先され、動弁系の最適な潤滑を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−61232号公報
【特許文献2】特開2005−256694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のオイルフィルタおよびオイルクーラが一体化されたオイル供給装置にあっては、オイルフィルタとオイルクーラとの間のオイル通路の配設がなく、その分オイル供給装置のオイル通路が単純化されるものの、全体のオイル通路を単純化することが考慮されていなかった。そのため、全体のオイル通路が複雑な構造となってしまい、オイルがより流れにくくなって圧力損失がより高まって、他の潤滑要素へのオイルの供給が不十分となり、他の潤滑要素の耐焼付き性能が低下してしまうという問題があった。
また、一体化されたオイルフィルタおよびオイルクーラは、内部の構成要素のコストが比較的に高くなり、その製造コストが比較的に高くなってしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、前述の従来の問題を解決するためになされたもので、簡単な構成で製造コストの増加を伴うことなく、オイルの流動の圧力損失を低減し、各潤滑要素に速やかにオイルを供給することができるオイル供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るオイル供給装置は、課題を解決するため、(1)エンジンのクランクシャフトの一方端側に配置されたオイルポンプと、前記オイルポンプから供給されるオイルを通す第1オイル通路部と、前記第1オイル通路部と連結されるとともに前記クランクシャフトの他方端側に配置されたオイルフィルタと、前記オイルフィルタから供給されるオイルを通す第2オイル通路部と、前記第2オイル通路部から供給されたオイルを前記エンジンの潤滑要素に供給するオイルギャラリ部と、を備えたオイル供給装置において、前記第1オイル通路部および前記オイルギャラリ部が、前記クランクシャフトの軸線方向に沿って配置されるとともに、前記第1オイル通路部、前記第2オイル通路部および前記オイルギャラリ部が、前記クランクシャフトの軸線を中心として、一方側に配置されたことを特徴とする。
【0013】
この構成により、本発明に係るオイル供給装置は、オイルをオイルポンプから第1オイル通路部を通ってオイルフィルタに速やかに流通させることができ、オイルフィルタからオイルギャラリ部に速やかに供給することができる。
第1オイル通路部およびオイルギャラリ部が、クランクシャフトの軸線方向に沿って配置されるとともに、第1オイル通路部、第2オイル通路部およびオイルギャラリ部が、クランクシャフトの軸線を中心として、一方側に配置されているので、従来のオイル供給装置のようにオイル通路が、クランクシャフトを直交して横切ることはなく、簡単な構成で、オイルを速やかに流通させることができる。したがって、オイルポンプからオイルフィルタを介してオイルギャラリ部にオイルを速やかに流通させることができる。
【0014】
また、第1オイル通路部、第2オイル通路部、オイルフィルタおよびオイルギャラリ部が、クランクシャフトの軸線を中心として、一方側に配置されているので、複雑な立体的な構造になることを回避することができ、互いに略直交するような曲り部分が少なくなり、オイルの流動に対する抵抗が少なくなる。その結果、オイルの流動の圧力損失を低減することができる。このような簡単な構成で、製造コストの増加を伴うことなくオイルの流通を速やかにすることができる。
【0015】
本発明に係るオイル供給装置は、上記(1)に記載のオイル供給装置において、(2)前記第1オイル通路部に、前記第1オイル通路部内を流通するオイルを冷却するオイルクーラが設けられたことを特徴とする。
【0016】
この構成により、本発明に係るオイル供給装置は、オイルをオイルポンプから第1オイル通路部を通ってオイルクーラおよびオイルフィルタに速やかに流通させることができ、オイルフィルタからオイルギャラリ部に速やかに供給することができる。第1オイル通路部およびオイルギャラリ部が、クランクシャフトの軸線方向に沿って配置されるとともに、第1オイル通路部、第2オイル通路部、オイルギャラリ部およびオイルクーラが、クランクシャフトの軸線を中心として、一方側に配置されているので、従来のオイル供給装置のようにオイル通路が、クランクシャフトを直交して横切ることはなく、簡単な構成で、オイルを速やかに流通させることができる。
【0017】
また、第1オイル通路部、第2オイル通路部、オイルギャラリ部およびオイルクーラが、クランクシャフトの軸線を中心として、一方側に配置されているので、複雑な立体的な構造になることを回避することができ、互いに略直交するような曲り部分が少なくなり、オイルの流動に対する抵抗が少なくなる。その結果、オイルの流動の圧力損失を低減することができる。このような簡単な構成で、製造コストの増加を伴うことなくオイルの流通を速やかにすることができる。
【0018】
本発明に係るオイル供給装置は、上記(1)または(2)に記載のオイル供給装置において、(3)前記第2オイル通路部と、前記クランクシャフトによって駆動され前記クランクシャフトの回転バランスを調整するバランスシャフトとの間に、前記第2オイル通路部内を流通するオイルを前記バランスシャフト内に導入するオイル導入通路部が設けられたことを特徴とする。
【0019】
この構成により、本発明に係るオイル供給装置は、オイルをオイルポンプから第1オイル通路部を通ってオイルクーラおよびオイルフィルタに速やかに流通させることができ、オイルフィルタからオイルギャラリ部に速やかに供給することができる。第1オイル通路部およびオイルギャラリ部が、クランクシャフトの軸線方向に沿って配置されるとともに、第1オイル通路部、第2オイル通路部、オイルギャラリ部およびオイルクーラが、クランクシャフトの軸線を中心として、一方側に配置されているので、従来のオイル供給装置のようにオイル通路が、クランクシャフトを直交して横切ることはなく、簡単な構成で、オイルを速やかに流通させることができる。オイルポンプからオイルフィルタ、オイルクーラおよびバランスシャフトにオイルを速やかに流通させることができる。
【0020】
また、第1オイル通路部、第2オイル通路部、オイルギャラリ部およびオイルクーラが、クランクシャフトの軸線を中心として、一方側に配置されているので、複雑な立体的な構造になることを回避することができ、互いに略直交するような曲り部分が少なくなり、オイルの流動に対する抵抗が少なくなる。その結果、オイルの流動の圧力損失を低減することができる。このような簡単な構成で、製造コストの増加を伴うことなくオイルの流通を速やかにすることができる。特に高速度で回転するバランスシャフトのオイル導入通路に速やかにオイルを供給することができ、バランスシャフトのオイル不足による焼き付きなどの損傷を防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡単な構成で製造コストの増加を伴うことなく、オイルの流動の圧力損失を低減し、各潤滑要素に速やかにオイルを供給することができるオイル供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係るオイル供給装置を適用した車両のエンジンにおけるオイル通路を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るオイル供給装置が適用されるエンジンの平面を模式的に示した模式図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るオイル供給装置が適用されるエンジンの側面を模式的に示した模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るオイル供給装置が適用されるエンジンの上面から見たオイル供給装置内のオイルの流動を模式的に示した模式図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るオイル供給装置が適用されるエンジンの側面から見たオイル供給装置内のオイルの流動を模式的に示した模式図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るオイル供給装置を適用した車両のエンジンにおけるオイル通路を示す概略斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るオイル供給装置が適用されるエンジンの平面を模式的に示した模式図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るオイル供給装置が適用されるエンジンの側面を模式的に示した模式図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るオイル供給装置が適用されるエンジンの上面から見たオイル供給装置内のオイルの流動を模式的に示した模式図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るオイル供給装置が適用されるエンジンの側面から見たオイル供給装置内のオイルの流動を模式的に示した模式図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係るオイル供給装置を適用した車両のエンジンにおけるオイル通路を示す概略斜視図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係るオイル供給装置が適用されるエンジンの平面を模式的に示した模式図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係るオイル供給装置が適用されるエンジンの側面を模式的に示した模式図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係るオイル供給装置が適用されるエンジンの上面から見たオイル供給装置内のオイルの流動を模式的に示した模式図である。
【図15】本発明の第3実施形態に係るオイル供給装置が適用されるエンジンの側面から見たオイル供給装置内のオイルの流動を模式的に示した模式図である。
【図16】本発明の第3実施形態に係る他の構造のオイル供給装置が適用されるエンジンの平面を模式的に示した模式図である。
【図17】本発明の第3実施形態に係る他の構造のオイル供給装置が適用されるエンジンの平面を模式的に示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第1実施形態ないし第3実施形態に係るオイル供給装置について、図面を参照して説明する。
【0024】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るオイル供給装置10は、車両に搭載されたエンジン1に適用され、エンジン1の各潤滑要素にオイルを供給するよう構成されている。
まず、構成を説明する。
【0025】
図1に示すように、エンジン1は、FR(Front engine Rear drive)の車両に搭載され、直列4気筒のエンジン本体1aと、クランクシャフト2と、オイルパン3と、オイル供給装置10とを含んで構成されている。
【0026】
なお、エンジン1は、FF(Front engine Front drive)の車両に搭載されたものであってもよく、MR(Mid-ship engine Rear drive)の車両に搭載されたものであってもよい。
また、直列4気筒以外のエンジンであってもよい。例えば、直列3気筒、直列6気筒やV型エンジンであってもよく、横置きのエンジンであってもよい、
【0027】
エンジン本体1aは、オイル供給装置10から供給されるオイルをクランクシャフト2の図示しないクランクジャーナルやクランクピンに供給するオイル通路5a、5b、5c、5d、5eを有するオイル通路部5と、図示しない各気筒内のピストンにオイルを供給するオイル通路6a、6b、6c、6dを有するオイル通路部6と、カムシャフトなどの潤滑要素7にオイルを供給するオイル通路部8とを含んで構成されている。
【0028】
クランクシャフト2は、クランクジャーナルを介してエンジン本体1aに回転可能に支持されるとともに、図示しないコネクティングロッドを介してピストンに連結されており、ピストンの往復運動が伝達されて回転運動するようになっている。
オイルパン3は、エンジン本体1aの潤滑要素7などの各潤滑要素から還流されたオイルを貯留するとともに、外気により冷却するケースで構成されており、エンジン本体1aの下部に固定されている。潤滑要素7は、例えば、吸気カムシャフト、排気カムシャフト、ロッカーアーム、吸気カムシャフトジャーナルおよび排気カムシャフトジャーナルなどの潤滑が必要な構成要素からなる。
【0029】
オイル供給装置10は、図2および図3に示すように、オイルパン3内に貯留されたオイルをろ過するオイルストレーナ11と、オイルポンプ12と、オイルストレーナ11からオイルポンプ12にオイルを通すオイル通路部13と、オイルポンプ12から供給されるオイルを通す第1オイル通路部10aと、オイルフィルタ14と、オイルフィルタ14から供給されるオイルを通す第2オイル通路部10b、10c、10dと、オイルギャラリ部15とを含んで構成されている。
【0030】
なお、第1実施形態のオイルポンプ12、第1オイル通路部10a、オイルフィルタ14、第2オイル通路部10b、10c、10dおよびオイルギャラリ部15は、本発明に係るオイル供給装置を構成しており、図2に示すように、これらの各構成要素は、エンジン1を上から見たエンジン上面視において、クランクシャフト2の軸線CLの一方側に配置されている。
【0031】
オイルポンプ12は、図1に示すように、ポンプ本体12aと、オイルストレーナ11から吸い込まれたオイルをポンプ本体12aに吸入させる吸入通路部12bと、ポンプ本体12aから吐出されたオイルを第1オイル通路部10a内に吐出させる吐出通路部12cとを含んで構成されている。
【0032】
このオイルポンプ12は、クランクシャフト2の一方端側となるエンジン1の矢印Frで示す前方側に配置されている。
ポンプ本体12aは、例えば、トロコイドポンプ、ギヤポンプなどのオイルを吸入し吐出するポンプからなり、クランクシャフト2に連結されており、クランクシャフト2の回転により駆動されるようになっている。
【0033】
オイルフィルタ14は、流入口および排出口を有するケース部と、ケース部内に収容されオイルをろ過するフィルタエレメントとを含んで構成されている。
このオイルフィルタ14は、クランクシャフト2の他方端側となるエンジン1の後方側に配置され、第1オイル通路部10aと連結されて第1オイル通路部10a内を流通するオイルをろ過するようになっている。
【0034】
オイルギャラリ部15は、オイルフィルタ14によってろ過され、第2オイル通路部10b、10c、10dを通って供給されたオイルを流通させるオイル通路からなり、オイル通路部5、6、8に供給するよう構成されている。オイルギャラリ部15は、エンジン本体1aの図示しないシリンダブロック内に形成された所定の空隙であってもよく、内部に通路を有する配管により形成されたものであってもよい。
【0035】
次に、第1実施形態に係るオイル供給装置10の動作について説明する。
【0036】
エンジン1が始動されると、ピストンの往復運動がクランクシャフト2に伝達されクランクシャフト2が回転する。クランクシャフト2の回転によりオイルポンプ12が駆動され、オイルパン3内に貯留されたオイルがオイルストレーナ11から吸い込まれ、オイル通路部13およびオイルポンプ12の吸入通路部12bを通ってポンプ本体12aに流入する。
ポンプ本体12aに流入したオイルは、図4および図5の矢印で示すように、その圧力(MPa)が高められ、吐出通路部12cから第1オイル通路部10a内に吐出される。
【0037】
そして、オイルは、第1オイル通路部10aからオイルフィルタ14の流入口を通って、内部に流入し、ろ過されて排出口から第2オイル通路部10b内に排出され、第2オイル通路部10c、10dを通ってオイルギャラリ部15に供給される。続いて、オイルギャラリ部15内のオイルは、オイル通路部5のオイル通路5a、5b、5c、5d、5eを通ってクランクジャーナルやクランクピンに供給されて潤滑および冷却が行われる。
また、オイル通路部6のオイル通路6a、6b、6c、6dを通って各気筒内のピストンにオイルが供給されて潤滑および冷却が行われる。
【0038】
また、オイル通路部8を通って潤滑要素7にオイルが供給されて、潤滑要素7内の、吸気カムシャフト、排気カムシャフト、ロッカーアーム、吸気カムシャフトジャーナルと、排気カムシャフトジャーナルなどの各構成要素が潤滑および冷却される。
【0039】
第1実施形態に係るオイル供給装置10においては、エンジン1が比較的低回転の運転状態のときは、クランクシャフト2も比較的低回転となり、オイルポンプ12から吐出されるオイルの量は比較的少ない。他方、エンジン1が比較的高回転の運転状態になると、クランクシャフト2も比較的高回転となり、オイルポンプ12から吐出されるオイルの量は増大し、必要とする適量のオイルが、エンジン1内の各潤滑要素に供給される。
【0040】
第1実施形態に係るオイル供給装置10は、前述のように構成されているので、次のような効果を得ることができる。
【0041】
すなわち、第1実施形態に係るオイル供給装置10は、エンジン1のクランクシャフト2の前方側に配置されたオイルポンプ12と、オイルポンプ12から供給されるオイルを通す第1オイル通路部10aと、第1オイル通路部10aと連結されるとともにクランクシャフト2の後方側に配置されたオイルフィルタ14と、オイルフィルタ14から供給されるオイルを通す第2オイル通路部10b、10c、10dと、第2オイル通路部10dから供給されたオイルをエンジン1の潤滑要素に供給するオイルギャラリ部15とを備えている。
【0042】
そして、第1オイル通路部10aおよびオイルギャラリ部15が、クランクシャフト2の軸線CLに沿って配置されるとともに、第1オイル通路部10a、第2オイル通路部10b、10c、10dおよびオイルギャラリ部15が、エンジン1を上から見たエンジン上面視において、クランクシャフト2の軸線CLを中心として、一方側に配置された構造で構成されている。
【0043】
その結果、オイルをオイルポンプ12から第1オイル通路部10aを通ってオイルフィルタ14に速やかに流通させることができ、オイルフィルタ14からオイルギャラリ部15に速やかに供給することができる。第1オイル通路部10aおよびオイルギャラリ部15が、クランクシャフト2の軸線CLに沿って配置されるとともに、第1オイル通路部10a、第2オイル通路部10b、10c、10dおよびオイルギャラリ部15が、エンジン1を上から見たエンジン上面視において、クランクシャフト2の軸線CLを中心として、一方側に配置されているので、従来のオイル供給装置のようにオイル通路が、クランクシャフト2を直交して横切ることはなく、簡単な構成で、オイルを速やかに流通させることができる。オイルポンプからオイルフィルタにオイルを速やかに流通させることができるという効果が得られる。
【0044】
また、第1オイル通路部10a、第2オイル通路部10b、10c、10d、オイルフィルタ14およびオイルギャラリ部15が、エンジン上面視において、クランクシャフト2の軸線CLを中心として、一方側に配置されているので、複雑な立体的な構造になることを回避することができ、互いに略直交するような曲り部分が少なくなり、オイルの流動に対する抵抗が少なくなる。その結果、オイルの流動の圧力損失を低減することができるという効果が得られる。このような簡単な構成で、製造コストの増加を伴うことなくオイルの流通を速やかにすることができるという効果が得られる。
【0045】
(第2実施形態)
図6ないし図10は、本発明に係るオイル供給装置の第2実施形態を示す図であり、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
第2実施形態におけるオイル供給装置20は、図6に示すように、第1実施形態と同様、車両に搭載されたエンジン52に適用され、エンジン52の各潤滑要素にオイルを供給するよう構成されている。エンジン52は、第1実施形態と同様、エンジン本体52aと、クランクシャフト2と、オイルパン3と、オイル供給装置20とを含んで構成されている。
エンジン本体52aは、第1実施形態と同様、オイル通路5a、5b、5c、5d、5eを有するオイル通路部5と、オイル通路6a、6b、6c、6dを有するオイル通路部6と、潤滑要素7にオイルを供給するオイル通路部8とを含んで構成されている。
【0047】
オイル供給装置20は、図7および図8に示すように、第1実施形態と同様、オイルストレーナ11と、オイルポンプ12と、オイル通路部13と、第1オイル通路部20a、20b、20c、20dと、第1オイル通路部20a内のオイルを冷却するオイルクーラ16と、オイルフィルタ14と、第2オイル通路部20e、20f、20gと、オイルギャラリ部15とを含んで構成されている。
【0048】
なお、第2実施形態のオイルポンプ12、第1オイル通路部20a、20b、20c、20d、オイルフィルタ14、オイルクーラ16、第2オイル通路部20e、20f、20gおよびオイルギャラリ部15は、本発明に係るオイル供給装置を構成しており、図7に示すように、これらの各構成要素は、エンジン1を上から見たエンジン上面視において、クランクシャフト2の軸線CLの一方側に配置されている。
【0049】
オイルクーラ16は、外気とオイルとの間で熱交換する図示しない熱交換部およびオイル流通部を有する空冷構造で構成されており、エンジン本体52aから露出してエンジン本体52aに装着されている。
このオイルクーラ16は、第1オイル通路部20bと第1オイル通路部20cとの間に配置されており、第1オイル通路部20bから流入するオイルが所定油温を超えないよう熱交換部によりオイルを冷却し、冷却したオイルを第1オイル通路部20cから排出するようになっている。
【0050】
なお、このオイルクーラ16は、冷却水が内部を循環し、冷却水とオイルとの間で熱交換する水冷構造で構成されたものであってもよい。
【0051】
また、このオイルクーラ16は、油温に応じてオイル通路を切り替えるサーモバルブを備えたものであってもよい。この場合、油温が所定値に到達するとサーモバルブが開状態となり、第1オイル通路部20bからオイルクーラ16内部にオイルが流入して冷却され、冷却されたオイルが第1オイル通路部20cに排出されることになる。他方、油温が所定値未満のときは、サーモバルブが閉状態となり、オイルクーラ16内部へのオイルの流入が遮断され、オイルクーラ16によるオイルの冷却が阻止され、第1オイル通路部20bから第1オイル通路部20cに直接オイルが流通することになる。オイルの冷却が阻止されると、例えば、エンジン52の始動時などに早期に油温を高める暖機運転に寄与することができる。
【0052】
次に、第2実施形態に係るオイル供給装置20の動作について説明する。
【0053】
エンジン52が始動されると、第1実施形態と同様、ピストンの往復運動がクランクシャフト2に伝達されクランクシャフト2が回転する。クランクシャフト2の回転によりオイルポンプ12が駆動され、オイルパン3内に貯留されたオイルがオイルストレーナ11から吸い込まれ、オイル通路部13およびオイルポンプ12の吸入通路部12bを通ってポンプ本体12aに流入する。
ポンプ本体12aに流入したオイルは、図9および図10の矢印で示すように、その圧力(MPa)が高められ吐出通路部12cから第1オイル通路部20a内に吐出される。
【0054】
そして、オイルは、第1オイル通路部20aを通り、第1オイル通路部20bからオイルクーラ16内に流入し、冷却されて第1オイル通路部20cに排出される。そして、オイルは第1オイル通路部20cからオイルフィルタ14の流入口を通って、オイルフィルタ14の内部に流入し、ろ過されて排出口から第2オイル通路部20e内に排出される。
続いて、オイルは第2オイル通路部20f、20gを通ってオイルギャラリ部15に供給される。オイルギャラリ部15内に供給されたオイルは、オイル通路部5のオイル通路5a、5b、5c、5d、5eを通ってクランクジャーナルやクランクピンに供給されて潤滑および冷却が行われる。
また、オイル通路部6のオイル通路6a、6b、6c、6dを通って各気筒内のピストンにオイルが供給されて潤滑および冷却が行われる。
【0055】
また、オイル通路部8を通って潤滑要素7にオイルが供給されて、潤滑要素7内の、吸気カムシャフト、排気カムシャフト、ロッカーアーム、吸気カムシャフトジャーナルと、排気カムシャフトジャーナルなどの各構成要素が潤滑および冷却される。
【0056】
第2実施形態に係るオイル供給装置20は、前述のように構成されているので、次のような効果を得ることができる。
【0057】
すなわち、第2実施形態に係るオイル供給装置20は、エンジン52のクランクシャフト2の前方側に配置されたオイルポンプ12と、オイルポンプ12から供給されるオイルを通す第1オイル通路部20a、20b、20c、20dと、第1オイル通路部20bと第1オイル通路部20cとの間に配置されたオイルクーラ16と、第1オイル通路部20dと連結されるとともにクランクシャフト2の後方側に配置されたオイルフィルタ14と、オイルフィルタ14から供給されるオイルを通す第2オイル通路部20e、20f、20gと、第2オイル通路部20gから供給されたオイルをエンジン52の潤滑要素に供給するオイルギャラリ部15とを備えている。
【0058】
そして、第1オイル通路部20a、20dおよびオイルギャラリ部15が、クランクシャフト2の軸線CLに沿って配置されるとともに、第1オイル通路部20a、20b、20c、20d、第2オイル通路部20e、20f、20g、オイルギャラリ部15、オイルクーラ16が、エンジン1を上から見たエンジン上面視において、クランクシャフト2の軸線CLを中心として、一方側に配置された構造で構成されている。
【0059】
その結果、オイルをオイルポンプ12から第1オイル通路部20aを通ってオイルクーラ16およびオイルフィルタ14に速やかに流通させることができ、オイルフィルタ14からオイルギャラリ部15に速やかに供給することができる。第1オイル通路部20a、20dおよびオイルギャラリ部15が、クランクシャフト2の軸線CLに沿って配置されるとともに、第1オイル通路部20a、20b、20c、20d、第2オイル通路部20e、20f、20g、オイルギャラリ部15およびオイルクーラ16が、エンジン上面視において、クランクシャフト2の軸線CLを中心として、一方側に配置されているので、従来のオイル供給装置のようにオイル通路が、クランクシャフト2を直交して横切ることはなく、簡単な構成で、オイルを速やかに流通させることができる。オイルポンプからオイルフィルタ14およびオイルクーラ16に速やかに流通させることができるという効果が得られる。
【0060】
また、第1オイル通路部20a、20d、第2オイル通路部20e、20f、20g、オイルギャラリ部15およびオイルクーラ16が、エンジン上面視において、クランクシャフト2の軸線CLを中心として、一方側に配置されているので、複雑な立体的な構造になることを回避することができ、互いに略直交するような曲り部分が少なくなり、オイルの流動に対する抵抗が少なくなる。その結果、オイルの流動の圧力損失を低減することができるという効果が得られる。このような簡単な構成で、製造コストの増加を伴うことなくオイルの流通を速やかにすることができるという効果が得られる。
【0061】
(第3実施形態)
図11ないし図15は、本発明に係るオイル供給装置の第3実施形態を示す図であり、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
第3実施形態におけるオイル供給装置30は、図11に示すように、第1実施形態と同様、車両に搭載されたエンジン53に適用され、エンジン53の各潤滑要素にオイルを供給するよう構成されている。エンジン53は、第1実施形態と同様、エンジン本体53aと、クランクシャフト2と、オイルパン3と、オイル供給装置30とを含んで構成されている。
エンジン本体53aは、第1実施形態と同様、オイル通路5a、5b、5c、5d、5eを有するオイル通路部5と、オイル通路6a、6b、6c、6dを有するオイル通路部6と、潤滑要素7にオイルを供給するオイル通路部8と、バランスシャフト17とを含んで構成されている。
【0063】
バランスシャフト17は、一対のバランスシャフトと、この一対のバランスシャフトを内部に収容し回転自在に支持するハウジングと、ハウジングの内部に形成され、一対のバランスシャフトのジャーナル17a、17b、17c、17dを潤滑するオイルを供給するオイル通路部17eとを有している。
【0064】
また、一対のバランスシャフトは、それぞれ一方の側に偏ったアンバランスウェイトを有するとともに、バランスシャフトに結合されたギアを有している。
一対のバランスシャフトの一方に結合されたギアのみと噛み合うギアが、クランクシャフト2に設けられており、クランクシャフト2の回転がこのギアを介して一方のバランスシャフトに伝達されるようになっている。
【0065】
クランクシャフト2のギアの回転に伴って一対のバランスシャフトの一方に結合されたギアが回転すると、これと噛み合うよう一対のバランスシャフトの他方に結合されたギアは対のバランスシャフトの一方に結合されたギアとは逆方向に回転する。この結果、一対のバランスシャフトは互いに逆回転するようになっている。
【0066】
エンジン52は、4気筒エンジンで構成されているので、4つのピストンを有しており、そのうちの2つが上死点にあるとき他の2つは下死点にあることになる。一方のバランスシャフトに設けられたアンバランスウェイトは、いずれかのピストンが上死点または下死点にあるとき、必ず下方に位置するようになっている。すなわち、クランクシャフト2の1回転に対して、バランスシャフトは2回転するようになっている。
【0067】
このようにクランクシャフト2の1回転に対して、バランスシャフトが2回転することで、クランクシャフト2の回転によって生じる二次慣性力が一対のバランスシャフトによって相殺されクランクシャフト2の回転バランスが調整されるようになっている。
なお、アンバランスウェイトの回転による横方向の慣性力は、一対のバランスシャフト間で相殺されることになる。
【0068】
このバランスシャフト17は、クランクシャフト2よりも高速度で回転するので潤滑および冷却の必要性がより高くなっている。
なお、このバランスシャフト17は、クランクシャフト2に設けられたギヤと直接噛み合う構造で説明したが、それ以外の構造のものであってもよい。例えば、チェーンおよびスプロケットなどの動力伝達機構を介してクランクシャフト2とバランスシャフト17とが献血される構造のものであってもよい。
【0069】
オイル供給装置30は、図12および図13に示すように、第1実施形態と同様、オイルストレーナ11と、オイルポンプ12と、オイル通路部13と、第1オイル通路部30a、30b、30c、30dと、第1オイル通路部30a内のオイルを冷却するオイルクーラ16と、オイルフィルタ14と、第2オイル通路部30e、30f、30gと、オイルギャラリ部15とを含んで構成されている。
オイル供給装置30は、さらに、第2オイル通路部30fから分岐し、オイルをバランスシャフト17のジャーナル17a、17b、17c、17dおよびオイル通路部17eに導入するオイル導入通路部30h、30iとを含んで構成されている。
【0070】
なお、第3実施形態のオイルポンプ12、第1オイル通路部30a、30b、30c、30d、オイルフィルタ14、オイルクーラ16、第2オイル通路部30e、30f、30gおよびオイルギャラリ部15は、本発明に係るオイル供給装置を構成しており、図12に示すように、これらの各構成要素は、エンジン1を上から見たエンジン上面視において、クランクシャフト2の軸線CLの一方側に配置されている。
【0071】
次に、第3実施形態に係るオイル供給装置30の動作について説明する。
【0072】
エンジン53が始動されると、第1実施形態と同様、ピストンの往復運動がクランクシャフト2に伝達されクランクシャフト2が回転する。クランクシャフト2の回転によりオイルポンプ12が駆動され、オイルパン3内に貯留されたオイルがオイルストレーナ11から吸い込まれ、オイル通路部13およびオイルポンプ12の吸入通路部12bを通ってポンプ本体12aに流入する。
ポンプ本体12aに流入したオイルは、図9および図10の矢印で示すように、その圧力(MPa)が高められ吐出通路部12cから第1オイル通路部30a内に吐出される。
【0073】
そして、オイルは、第1オイル通路部30aを通り、第1オイル通路部30bからオイルクーラ16内に流入し、冷却されて第1オイル通路部30cに排出される。そして、オイルは第1オイル通路部30cからオイルフィルタ14の流入口を通って、オイルフィルタ14の内部に流入し、ろ過されて排出口から第2オイル通路部30e内に排出される。
続いて、オイルは第2オイル通路部30f、30gを通ってオイルギャラリ部15に供給される。
【0074】
また、第2オイル通路部30g内のオイルは、オイル導入通路部30h、30iを通ってバランスシャフト17のジャーナル17a、17b、17c、17dおよびオイル通路部17eに導入され、バランスシャフト17内の潤滑要素が潤滑および冷却される。
また、オイルギャラリ部15内に供給されたオイルは、オイル通路部5のオイル通路5a、5b、5c、5d、5eを通ってクランクジャーナルやクランクピンに供給されて潤滑および冷却が行われる。
また、オイル通路部6のオイル通路6a、6b、6c、6dを通って各気筒内のピストンにオイルが供給されて潤滑および冷却が行われる。
【0075】
また、オイル通路部8を通って潤滑要素7にオイルが供給されて、潤滑要素7内の、吸気カムシャフト、排気カムシャフト、ロッカーアーム、吸気カムシャフトジャーナルと、排気カムシャフトジャーナルなどの各構成要素が潤滑および冷却される。
【0076】
第3実施形態に係るオイル供給装置30は、前述のように構成されているので、次のような効果を得ることができる。
【0077】
すなわち、第3実施形態に係るオイル供給装置30は、エンジン53のクランクシャフト2の前方側に配置されたオイルポンプ12と、オイルポンプ12から供給されるオイルを通す第1オイル通路部30a、30b、30c、30dと、第1オイル通路部30bと第1オイル通路部30cとの間に配置されたオイルクーラ16と、第1オイル通路部30dと連結されるとともにクランクシャフト2の後方側に配置されたオイルフィルタ14と、オイルフィルタ14から供給されるオイルを通す第2オイル通路部30e、30f、30gと、第2オイル通路部30fから分岐しバランスシャフト17にオイルを導入するオイル導入通路部30h、30iと、第2オイル通路部30gから供給されたオイルをエンジン53の潤滑要素に供給するオイルギャラリ部15とを備えている。
【0078】
そして、第1オイル通路部30a、30dおよびオイルギャラリ部15が、クランクシャフト2の軸線CLに沿って配置されるとともに、第1オイル通路部30a、30b、30c、30d、第2オイル通路部30e、30f、30g、オイルギャラリ部15、オイルクーラ16が、エンジン上面視において、クランクシャフト2の軸線CLを中心として、一方側に配置された構造で構成されている。
【0079】
その結果、オイルをオイルポンプ12から第1オイル通路部30aを通ってオイルクーラ16およびオイルフィルタ14に速やかに流通させることができ、オイルフィルタ14からオイルギャラリ部15に速やかに供給することができる。第1オイル通路部30a、30dおよびオイルギャラリ部15が、クランクシャフト2の軸線CLに沿って配置されるとともに、第1オイル通路部30a、30b、30c、30d、第2オイル通路部30e、30f、30g、オイルギャラリ部15およびオイルクーラ16が、エンジン上面視において、クランクシャフト2の軸線CLを中心として、一方側に配置されているので、従来のオイル供給装置のようにオイル通路が、クランクシャフト2を直交して横切ることはなく、簡単な構成で、オイルを速やかに流通させることができる。オイルポンプからオイルフィルタ14、オイルクーラ16およびバランスシャフト17にオイルを速やかに流通させることができるという効果が得られる。
【0080】
また、第1オイル通路部30a、30d、第2オイル通路部30e、30f、30g、オイルギャラリ部15およびオイルクーラ16が、エンジン上面視において、クランクシャフト2の軸線CLを中心として、一方側に配置されているので、複雑な立体的な構造になることを回避することができ、互いに略直交するような曲り部分が少なくなり、オイルの流動に対する抵抗が少なくなる。その結果、オイルの流動の圧力損失を低減することができるという効果が得られる。このような簡単な構成で、製造コストの増加を伴うことなくオイルの流通を速やかにすることができるという効果が得られる。特に高速度で回転するバランスシャフト17のオイル導入通路部30h、30iに速やかにオイルを供給することができ、バランスシャフト17のオイル不足による焼き付きなどの損傷を防止することができるという効果が得られる。
【0081】
なお、第3実施形態に係るオイル供給装置30においては、オイルクーラ16を第1オイル通路部30bと第1オイル通路部30cとの間に配置する場合について説明した。すなわち、オイルクーラ16のクランクシャフト2に対向する側面で、第1オイル通路部30bおよび第1オイル通路部30cと連結する連結構造の場合について説明した。
しかしながら、本発明に係るオイル供給装置においては、オイルクーラを第3実施形態における連結構造と異なる連結構造で構成するようにしてもよい。
【0082】
例えば、図16に示すように、オイルクーラ46を、第1オイル通路40aと直交する側面46aに流入口を有するとともに、第1オイル通路40bと直交する側面46bに排出口を有する構造で構成し、直線状に配置された第1オイル通路40aと第1オイル通路40bとの間に直列に連結する連結構造でオイル供給装置40を構成するようにしてもよい。
【0083】
このような直列に連結する連結構造のオイル供給装置40においては、第3実施形態のオイル供給装置30におけるオイルクーラ16の連結構造と比較して、第1オイル通路における通路の曲げ回数が2つだけ減少するので、より速やかに、第1オイル通路40aから第1オイル通路40bを通り、さらに第2オイル通路40c、40d、40eを通ってオイルギャラリ部15にオイルを供給することができ、オイルの流動の圧力損失をより低減することができる。また、第2オイル通路40eから分岐するオイル導入通路40f、40gを通ってバランスシャフト17に、速やかにオイルを供給することができる。
【0084】
また、前述のオイル供給装置40において、オイルポンプ12をクランクシャフト2の回転により直接駆動される構造と異なる構造のオイルポンプ56で構成するようにしてもよい。
この場合、オイルポンプ56は、図17に示すように、クランクシャフト2の回転とは別個の駆動源、例えば、電動機により駆動されるものであってもよい。また、チェーンおよびスプロケットなどの動力伝達機構をオイルポンプ56とクランクシャフト2との間に連結し、クランクシャフト2の回転により動力伝達機構を介して駆動される構造のものであってもよい。
【0085】
以上のように、本発明に係るオイル供給装置は、簡単な構成で製造コストの増大を伴うことなく、オイルの流動の圧力損失を低減し、オイルを各潤滑要素に速やかに供給するオイル供給装置を提供することができるという効果を有し、エンジンの潤滑要素にオイルを供給するオイル供給装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0086】
1、52、53 エンジン
1a、52a、53a エンジン本体
2 クランクシャフト
3 オイルパン
5、6、8、13 オイル通路部
7 潤滑要素
10、20、30、40 オイル供給装置
10a、20a、20b、20c、20d、30a、30b、30c、30d、40a、40b 第1オイル通路部
10b、10c、10d、20e、20f、20g、30e、30f、30g、40c、40d、40e 第2オイル通路部
11 オイルストレーナ
12、56 オイルポンプ
14 オイルフィルタ
15 オイルギャラリ部
16 オイルクーラ
17 バランスシャフト
30h、30i、40f、40g オイル導入通路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのクランクシャフトの一方端側に配置されたオイルポンプと、前記オイルポンプから供給されるオイルを通す第1オイル通路部と、前記第1オイル通路部と連結されるとともに前記クランクシャフトの他方端側に配置されたオイルフィルタと、前記オイルフィルタから供給されるオイルを通す第2オイル通路部と、前記第2オイル通路部から供給されたオイルを前記エンジンの潤滑要素に供給するオイルギャラリ部と、を備えたオイル供給装置において、
前記第1オイル通路部および前記オイルギャラリ部が、前記クランクシャフトの軸線方向に沿って配置されるとともに、前記第1オイル通路部、前記第2オイル通路部および前記オイルギャラリ部が、前記クランクシャフトの軸線を中心として、一方側に配置されたことを特徴とするオイル供給装置。
【請求項2】
前記第1オイル通路部に、前記第1オイル通路部内を流通するオイルを冷却するオイルクーラが設けられたことを特徴とする請求項1に記載のオイル供給装置。
【請求項3】
前記第2オイル通路部と、前記クランクシャフトによって駆動され前記クランクシャフトの回転バランスを調整するバランスシャフトとの間に、前記第2オイル通路部内を流通するオイルを前記バランスシャフト内に導入するオイル導入通路部が設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のオイル供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−236796(P2011−236796A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108318(P2010−108318)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】