説明

オキサミドエステル基を含有する環状シラザン及び方法

オキサミドエステル基を含む環状シラザン及びこれらの化合物の製造方法を記載する。化合物は、例えば、オキサミドエステル終端シロキサンを製造するために用いることができ、これは、例えばポリジオルガノシロキサンポリオキサミドのような種々のポリマー材料の調製のための前駆体であることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
オキサミドエステル基を含有する環状シラザン並びにこれらの化合物の製造及び使用方法を記載する。
【背景技術】
【0002】
シロキサンポリマーは、シロキサン結合の物理的及び化学的特徴に主として由来する特有の性質を有する。これらの性質としては、低ガラス転移温度、熱安定性及び酸化安定性、紫外線耐性、低表面エネルギー及び低疎水性、多くの気体に対する高透過性、及び生体適合性が挙げられる。しかし、シロキサンポリマーは、多くの場合、引張り強度を欠いている。
【0003】
シロキサンポリマーの低い引張り強さは、ブロックコポリマーを形成することにより改善することができる。いくつかのブロックコポリマーは、「ソフトな」シロキサンポリマーブロック又はセグメント及び任意の種々の「ハードな」ブロック又はセグメントを含有する。代表的なブロックコポリマーとしては、ポリジオルガノシロキサンポリアミド及びポリジオルガノシロキサンポリ尿素が挙げられる。
【0004】
ポリジオルガノシロキサンポリアミドは、アミノ終端処理シリコーンと短鎖ジカルボン酸との縮合反応により調製される。あるいは、これらのコポリマーは、カルボキシ終端処理シリコーンと短鎖ジアミンとの縮合反応により調製される。ポリジオルガノシロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン)及びポリアミドは、多くの場合、溶解度パラメータが著しく異なるために、高重合度の、特にポリジオルガノシロキサンセグメントのより大きな同族体を有するシロキサン系ポリアミドを生成するための反応条件を見出すことは困難となり得る。既知のシロキサン系ポリアミドコポリマーの多くは、30個以下のジオルガノシロキシ(例えば、ジメチルシロキシ)単位を有するセグメントのような、ポリジオルガノシロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン)の比較的短いセグメントを含有するか、又は前記コポリマー内のポリジオルガノシロキサンセグメントの量が比較的少ない。すなわち、得られたコポリマー中のポリジオルガノシロキサンソフトセグメント部分(すなわち、重量に基づく量)は、少なくなる傾向がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
オキサミドエステル基を含有する環状シラザン及びこれらの化合物の製造方法を記載する。この化合物を用いて、例えば、オキサミドエステル終端シロキサンを製造することができ、これは、例えばポリジオルガノシロキサンポリオキサミドのような種々のポリマー材料の調製のための前駆体であることができる。
【0006】
1つの態様では、本開示は式Iの化合物を提供する。
【0007】
【化1】

【0008】
式中、各Rは、独立に、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又は、アルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;Rは、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールであり;各R、R及びRは、独立に、水素又はアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又は、アルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールである。式Iの化合物の製造方法も、本明細書で開示する。
【0009】
別の態様では、本開示はまた、式IIIのポリマー前駆体の製造方法を開示する。
【0010】
【化2】

【0011】
この方法は、反応条件下で、上記式Iの化合物と、式IIのシラノール終端シロキサンとを組み合わせる工程を含む。
【0012】
【化3】

【0013】
式中、各Rは、独立に、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又は、アルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;nは0〜1500の整数である。
【0014】
更に別の態様では、本開示は、式VIIIの少なくとも2つの繰り返し単位を含むポリマー材料の製造方法を提供する。
【0015】
【化4】

【0016】
式中、qは2以上の整数である。この方法は、(i)反応条件下で、上記式Iの化合物と、式IIのシラノール終端シロキサンとを組み合わせて、
【0017】
【化5】

【0018】
式IIIのポリマー前駆体を形成する工程と
【0019】
【化6】

【0020】
(式中、各Rは、独立に、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又は、アルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;Rは、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールであり;各R、R及びRは、独立に、水素又はアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール又は、アルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;nは0〜1500の整数である)、(ii)反応条件下で、形成された式IIIのポリマー前駆体と、平均して式G(NHR(式中、Gは、式G(NHRからr個の−NHR基を引いたものに等しい残りの単位であり;Rは水素又はアルキル(例えば、1〜10、1〜6、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル)であり、又はRはG及び、それらが両方結合している窒素と共に、複素環基を形成し;rは2以上の数である)を有する1つ以上のアミン化合物とを組み合わせる工程と、を含む。
【0021】
本発明に開示するポリマー材料は、例えば、封止剤で、接着剤で、繊維用材料として、プラスチック添加剤として、例えば耐衝撃性改良剤又は難燃剤として、消泡剤製剤用材料として、高性能ポリマーとして(熱可塑性樹脂、可塑性エラストマー、エラストマー)、電子部品用梱包材料として、絶縁材又は遮蔽材で、ケーブルシースで、防汚材で、磨き、洗浄又は研磨製品用添加剤として、ボディーケア組成物用添加剤として、木材、紙及び板用コーティング材料として、離型剤として、コンタクトレンズのような医療用途で生体適合性材料として、織物繊維又は織布用コーティング材料として、皮革及び毛皮のような天然物質用コーティング材料として、例えば、膜用材料として、光活性系用材料として、例えば、リソグラフィー技術、光学データ保護又は光学データ伝送用を含む多くの用途での使用を着想することができる。
【0022】
定義
用語「含む」及びこの変形は、これらの用語が現れる明細書及び特許請求の範囲を制限する意図を有しない。
【0023】
「好ましい」及び「好ましくは」という語は、特定の状況下で特定の利点をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかしながら、同様の又は他の状況において、他の実施形態が好まれる場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示すものではなく、本発明の範囲内から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0024】
用語「a」、「an」、及び「the」は、「少なくとも1つの」と互換的に用いられ、記載された要素の1つ以上を意味する。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「又は」は、その内容に別段の明確な指示がなされていない場合は、一般に「及び/又は」を含む意味で用いられている。
【0026】
用語「及び/又は」は、1つ若しくは全ての列挙した要素、又は2つ以上の列挙した要素のいずれかの組み合わせを意味する。
【0027】
用語「アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を備えた炭化水素であるアルケンのラジカルである1価の基を意味する。アルケニルは、直鎖、分岐鎖、環状、又はこれらの組み合わせであることができ、典型的には、2〜20個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態では、アルケニルは、2〜18個、2〜12個、2〜10個、4〜10個、4〜8個、2〜8個、2〜6個、又は2〜4個の炭素原子を含有する。代表的なアルケニル基としては、エテニル、n−プロペニル、及びn−ブテニルが挙げられる。
【0028】
用語「アルキル」とは、飽和炭化水素であるアルカンのラジカルである1価の基を指す。アルキルは、直鎖、分岐鎖、環状、又はこれらの組み合わせであることができ、典型的には、1〜20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1〜18個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、及びエチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
用語「アルキレン」とは、アルカンのラジカルである2価の基を指す。アルキレンは、直鎖、分岐鎖、環状、又はこれらの組み合わせであることができる。アルキレンは多くの場合、1〜20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレンは、1〜18個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキレンのラジカル中心は、同一炭素原子上に(すなわち、アルキリデン)又は異なる炭素原子上にあることができる。
【0030】
用語「アルコキシ」とは、化学式−ORの1価の基を意味し、式中、Rはアルキル基である。
【0031】
用語「アルコキシカルボニル」とは、式−(CO)ORの1価の基(式中、Rはアルキル基であり、(CO)は、炭素が二重結合にて酸素に結合しているカルボニル基を意味する)を指す。
【0032】
用語「アラルキル」とは、式−R−Ar(式中、Rはアルキレンであり、Arはアリール基である)の1価の基を指す。すなわち、アラルキルは、アリールで置換されたアルキルである。
【0033】
用語「アラルキレン」とは、式−R−Ar(式中、Rはアルキレンであり、Arはアリーレン(すなわち、アルキレンがアリーレンに結合している))の2価の基を指す。
【0034】
用語「アリール」とは、芳香族及び炭素環式である1価の基を指す。アリールは、芳香環に結合又は縮合した1〜5個の環を有することができる。その他の環状構造は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであることができる。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アンスリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナンスリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
用語「アリーレン」とは、炭素環式及び芳香族である2価の基を指す。該基は、結合しているか、縮合しているか、又はこれらの組み合わせである1〜5個の環を有する。その他の環は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであることができる。いくつかの実施形態では、アリーレン基は、5個以下の環、4個以下の環、3個以下の環、2個以下の環、又は1個の芳香環を有する。例えば、アリーレン基は、フェニレンであることができる。
【0036】
用語「アリールオキシ」とは、式−OArの1価の基(式中、Arはアリール基である)を指す。
【0037】
用語「カルボニル」とは、式−(CO)−(式中、炭素原子は二重結合にて酸素原子に結合している)の2価の基を指す。
【0038】
用語「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを指す。
【0039】
用語「ハロアルキル」とは、ハロで置換された少なくとも1つの水素原子を有するアルキルを意味する。いくつかのハロアルキル基は、フルオロアルキル基、クロロアルキル基、又はブロモアルキル基である。
【0040】
用語「ヘテロアルキレン」は、チオ、オキシ、又は−NR−(式中、Rはアルキルである)によって結合された、少なくとも2個のアルキレン基を含む2価の基を指す。ヘテロアルキレンは、直鎖、分岐鎖、環状、又はそれらの組み合わせであることができ、60個以下の炭素原子及び15個以下のヘテロ原子を含むことができる。いくつかの実施形態では、ヘテロアルキレンは、50個以下の炭素原子、40個以下の炭素原子、30個以下の炭素原子、20個以下の炭素原子、又は10個以下の炭素原子を含む。いくつかのヘテロアルキレンは、ポリアルキレンオキシドであり、ここでへテロ原子は酸素である。
【0041】
用語「オキサリル」は、式−(CO)−(CO)−の2価の基(式中、各(CO)はカルボニル基を意味する)を指す。
【0042】
用語「オキサリルアミノ」及び「アミノオキサリル」は、互換的に用いられ、式−(CO)−(CO)−NH−の2価の基(式中、各(CO)はカルボニルを意味する)を指す。
【0043】
用語「アミノオキサリルアミノ」は、式−NH−(CO)−(CO)−NR−(式中、各(CO)はカルボニル基を意味し、Rは水素、アルキル、又はそれら両方が結合した窒素と一緒になった複素環基の一部である)の2価の基を指す。ほとんどの実施形態では、Rは水素又はアルキルである。多くの実施形態では、Rは水素である。
【0044】
用語「多価」は、2超の価数を有する基を指す。
【0045】
用語「ポリマー」及び「ポリマー材料」は、ホモポリマーのような1種のモノマーから調製した物質、又は、コポリマー、ターポリマー等のような、2種若しくはそれ以上のモノマーから調製した物質の両方を指す。同様に、用語「重合させる」とは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー等であり得るポリマー材料の製造プロセスを意味する。用語「コポリマー」及び「共重合材料」とは、少なくとも2種類のモノマーから調製したポリマー材料を指す。
【0046】
用語「ポリジオルガノシロキサン」とは、次式を持つ2価のセグメントを意味し、
【0047】
【化7】

【0048】
式中、各Rは、独立に、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールであり;各Yは、独立に、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせであり;下付記号nは、独立に0〜1500の整数である。
【0049】
用語「室温」及び「周囲温度」は、互換的に用いられ、20℃〜25℃の範囲の温度を意味する。
【0050】
特に指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用される外観の寸法、量、物理的特性を表す全ての数字は、全ての事例において用語「約」により修飾されると理解されたい。したがって、指示がない限り、本明細書の数字は、本明細書で開示される教示を使用する所望の特性によって変化し得る近似値である。
【0051】
本発明の上述の「課題を解決するための手段」は、本発明の開示される各実施形態又は全ての実施を記載することを目的としていない。以下の説明により、代表的な実施形態をより具体的に例示する。明細書全体にわたっていくつかの箇所で、実施例の一覧を通して説明を提供するが、実施例は各種組み合わせにて使用することが可能である。いずれの場合にも、記載した一覧は、代表的な群としてのみ役立つものであり、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0052】
オキサミドエステル基を含む環状シラザン及びこれらの化合物の製造方法を提供する。環状シラザン化合物は、シラノール終端シロキサンのようなヒドロキシ官能分子との開環反応を受ける。したがって、環状シラザンを用いて、例えば、オキサミドエステル終端シロキサンを製造することができ、これは、広範な組成物及び物品を形成するために用いることができる、例えばポリジオルガノシロキサンポリオキサミドのような種々のポリマー材料の調製のための前駆体として用いることがでる。例えば、「分岐鎖ポリジオルガノシロキサンポリアミドコポリマー(BRANCHED POLYDIORGANOSILOXANE POLYAMIDE COPOLYMERS)」と題された米国特許出願第11/821572号、「有機ソフトセグメントを有するポリジオルガノシロキサンポリアミドコポリマー(POLYAMIDE COPOLYMERS HAVING ORGANIC SOFT SEGMENTS)」と題された米国特許出願第11/821575号、「ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分と有機ポリマーとの混合物(MIXTURES OF POLYDIORGANOSILOXANE POLYAMIDE-CONTAINING COMPONENTS AND ORGANIC POLYMERS)」と題された米国特許出願第11/821568号、及び「ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマー(POLYDIORGANOSILOXANE POLYOXAMIDE COPOLYMERS)」と題された米国特許出願第11/821596号(全て本願と同日に出願された)の同時係属出願を参照のこと。
【0053】
環状シラザン及びその製造方法
式Iの環状シラザンを提供する。
【0054】
【化8】

【0055】
この式において、各Rは、独立に、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールである。各Rは、独立に、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ、若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールである。各R、R、及びRは、独立に、水素又はアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール又は、アルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールである。
【0056】
、R、R、及び/又はRに好適なアルキル基は、典型的には、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。例示のアルキル基としては、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、及びイソ−ブチルが挙げられるが、これらに限定されない。R、R、R、及び/又はRに好適なハロアルキル基は、3〜10個の炭素原子を有することが多く、水素原子の一部のみがハロゲンで置換されている。代表的なハロアルキル基としては、1〜3個のハロ原子及び3〜10個の炭素原子を備えたクロロアルキル及びフルオロアルキル基が挙げられる。R、R、R、及び/又はRに好適なアルケニル基は、2〜10個の炭素原子を有することが多い。代表的なアルケニル基は、多くの場合、エテニル、n−プロペニル、及びn−ブテニルのような、2〜10個、2〜6個、又は2〜4個の炭素原子を有する。R、R、R、及び/又はRに好適なアリール基は、6〜12個の炭素原子を有することが多い。フェニルは、代表的なアリール基である。アリール基は、非置換であるか、又はアルキル(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル)、アルコキシ(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ)、又はハロ(例えば、クロロ、ブロモ、又はフルオロ)によって置換されることができる。R、R、R、及び/又はRに好適なアラルキル基は、通常1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基及び6〜12個の炭素原子を有するアリール基を有する。いくつかの代表的なアラルキル基においては、アリール基はフェニルであり、アルキレン基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する(すなわち、アラルキルの構造は、フェニルがアルキレンに結合しているアルキレン−フェニルである)。
【0057】
式Iのいくつかの化合物では、少なくとも1つの、好ましくは両方のRがメチルである。式Iのいくつかの化合物では、R、R、及びRの少なくとも1つは水素であり、好ましくは各R、R、及びRは水素である。
【0058】
のための好適なアルキル基及びハロアルキル基は、多くの場合、1〜10個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有する。3級アルキル(例えば、t−ブチル)及び3級ハロアルキル基を使用することが可能ではあるが、多くの場合、1級又は2級炭素原子が、隣接したオキシ基に直接付着(すなわち、結合)している。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、及びイソブチルが挙げられる。代表的なハロアルキル基としては、クロロアルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられ、ここで、対応するアルキル基上の水素原子のいくつか(全てではない)が、ハロ原子で置換されている。例えば、クロロアルキル基又はフルオロアルキル基は、クロロメチル、2−クロロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、3−クロロプロピル、4−クロロブチル、フルオロメチル、2−フルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル等であることができる。
【0059】
のための好適なアリール基としては、6〜12個の炭素原子を有するもの、例えばフェニル等が挙げられる。アリール基は、非置換であるか、又はアルキル(例えば、メチル、エチル、又はn−プロピルのような、1〜4個の炭素原子を有するアルキル)、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、又はプロポキシのような、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ)ハロ(例えば、クロロ、ブロモ、又はフルオロ)、若しくはアルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、又はプロポキシカルボニルのような、2〜5個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル)で置換されることができる。
【0060】
式Iによる代表的な化合物としては、Rがメチルであり、R、R、及びRが同一(例えば、水素)であるものが挙げられるが、これらに限定されない。Rは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル、1〜4個の炭素原子を有するハロアルキル、フェニル、2〜5個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルで置換されたフェニル、少なくとも1個のハロ基で置換されたフェニル、又は1〜4個の炭素原子を有するアルコキシで置換されたフェニルであることができる。特定の実施形態では、Rはエチルである。
【0061】
式Iの環状シラザンは、例えば、式VIIの化合物の環化により便利に製造できる。
【0062】
【化9】

【0063】
式中、各R、R、R、R、及びRは、式Iの化合物のために上記で定義した通りである。Xは、ハロゲン、好ましくはClを表す。
【0064】
いくつかの実施形態では、塩基、好ましくは有機塩基の存在下で環化が生じる。典型的には、式VIIの化合物は、適切な有機溶媒に溶解することができ、可溶性有機塩基を添加して環化させることができる。広範な有機溶媒を用いることができる。代表的な有機溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、エチルアセテート、ジクロロメタン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
広範な有機塩基を用いることができる。代表的な有機塩基としては、トリエチルアミン(TEA)、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルイミダゾール、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
式VIIの化合物は、例えば、ヒドロシリル化反応により便利に製造することができる。例えば、式VIIの化合物は、式VIの化合物を、
【0067】
【化10】

【0068】
ヒドロシリル化触媒の存在下で、式(RClSiHのヒドロシランと反応させることにより製造することができる。式中、各R、R、R、R、及びRは、式Iの化合物について上記で定義した通りである。ある実施形態では、反応条件は、プラチナ触媒の存在下で、非ヒドロキシ有機溶媒中にて、式VIの化合物と、式(RClSiHのヒドロシランと、を組み合わせることを含む。
【0069】
広範な有機溶媒を用いることができる。代表的な有機溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、エチルアセテート、ジクロロメタン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
典型的なプラチナヒドロシリル化触媒としては、例えば、塩化白金酸及びカースウェル(Carswell)触媒として既知であるビス(ジビニルテトラメチルジソロキサン(divinyltetramethyldisoloxane))プラチナ錯体が挙げられる。反応は、好ましくは、式VIの化合物及びヒドロシランの総重量を基準として、0.05〜1重量%のPt触媒を用いて、過剰なヒドロシラン(例えば、10〜25%モル過剰のヒドロシラン)と共に実施される。いくつかの実施形態では、反応は周囲温度及び圧力で実施できる。いくつかの他の実施形態では、反応は、圧力容器内で、高圧力にて、50℃〜100℃で実施することができる。
【0071】
式VIの化合物は、式IVのシュウ酸エステル
【0072】
【化11】

【0073】
及び式Vのアリルアミンを、
【0074】
【化12】

【0075】
オキサミン酸エステルを形成するために有効な条件下で組み合わせることにより、便利に製造できる。ある実施形態では、有効な反応条件は、過剰な式IVのオキサレートエステル(例えば、式IVのオキサレートエステルの1〜5倍モル過剰)と、式Vのアリルアミンを、希釈せずに又は有機溶媒中で組み合わせることを含む。いくつかの実施形態では、反応は周囲温度及び圧力で実施できる。いくつかの実施形態では、反応は高温で、所望により圧力容器内にて高圧で実施できる。有機溶媒を用いる実施形態では、広範な有機溶媒を用いることができる。代表的な有機溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、トルエンエタノール、エチルアセテート、ジクロロメタン及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
式Iの環状シラザンとシラノール終端シロキサンとの反応
式Iの環状シラザンは、式IIのシラノール終端シロキサンと反応して、
【0077】
【化13】

【0078】
式IIIのポリマー前駆体を生じさせることができる。
【0079】
【化14】

【0080】
式IIのシラノール終端シロキサンでは、各Rは、独立に、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールであり;nは0〜1500の整数である。
【0081】
式IIのいくつかの化合物では、全てのR基は、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールのうちの1つである(例えば、全てのR基がメチルのようなアルキル、又はフェニルのようなアリールである)ことができる。式IIのいくつかの化合物では、R基は、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、及び、任意の比でアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールからなる群から選択される2つ以上の混合物である。したがって、例えば、式Iの特定の化合物では、0%、1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、又は100%のR基がメチルであることができ;100%、99%、98%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%、1%、又は0%のR基がフェニルであることができる。
【0082】
式II及びIIIの各下付記号は、独立に0〜1500の整数である。例えば、下付記号nは、1000以下、500以下、400以下、300以下、200以下、100以下、80以下、60以下、40以下、20以下又は10以下の整数であることができる。nの値は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20又は少なくとも40であることが多い。例えば、下付記号nは、40〜1500、0〜1000、40〜1000、0〜500、1〜500、40〜500、1〜400、1〜300、1〜200、1〜100、1〜80、1〜40、又は1〜20の範囲であることができる。
【0083】
式IIIのポリマー前駆体は、式IIのシラノール終端シロキサンを、シラノール基のモル当量以上の、式Iの環状シラザンの量と組み合わせることにより、調製できる。反応は、25〜100℃の温度で、希釈せずに又は好適な有機溶媒中で実施できる。好適な溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、エチルアセテート、塩化メチレン及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
式IIIのポリマー前駆体は、分子の各端に、式R−O−(CO)−(CO)−NH−の基を有する。つまり、化合物は少なくとも2つのオキサリルアミノ基を有する。各Rは、独立に、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ、若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールである。式RO−(CO)−(CO)−NH−の基は、Rがアルキルであるとき、アルコキシオキサリルアミノ基であり、Rがハロアルキルであるとき、ハロアルコキシオキサリルアミノ基であり、又はRが非置換若しくは置換アリールであるとき、アリールオキシオキサリルアミノ基である。
【0085】
式IIIの化合物は、例えば、米国特許公開第2007−0148474号(レイア(Leir)ら)に記載されているものを含む、種々のポリマー材料(例えば、エラストマー材料)の調製のための前駆体として用いることができる。これらのポリマー材料は、例えば、米国特許公開第2007−0148475号(シャーマン(Sherman))に記載されているような接着剤組成物を含む種々の組成物で用いることができる。これらのポリマー材料は、例えば、米国特許公開第2007−0177273号(ベンソン(Benson)ら)及び同第2007−0177272号(ベンソンら)に記載されているようなフィルム及び多層フィルムを含む、種々の物品で用いることができる。
【0086】
式IIIの化合物は、単独で又は所望により他の前駆体材料(例えば、アミド末端保護(例えばオキサレート化)された有機ソフトセグメントを含むもののような、オキサミドエステル終端セグメントを有する他の前駆体材料)と組み合わせて、1種又はそれ以上のアミン化合物と反応して、直鎖及び/又は分岐ポリマーを形成することができる。
【0087】
例えば、化合物は、平均して式G(NHR(式中、Gは式G(NHRからr個の−NHR基を引いたものに等しい残りの単位であり、rは2以上の数である)を有する1つ以上のアミン化合物と組み合わせたとき、縮合反応を受けて、式VIIIの少なくとも2つの繰り返し単位を有するポリマー材料を生じさせることができる。
【0088】
【化15】

【0089】
式中、qは2以上の整数である。特定の実施形態では、qは、例えば、2、3又は4であることができる。1つ以上のアミン化合物は、典型的には、平均して、式G(NHR(式中rは2以上の数である)である。基Rは、水素又はアルキル(例えば、1〜10個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル)であるか、又はRはG及びそれらが結合している窒素と共に、複素環基を形成する(例えば、RHN−G−NHRはピペラジンである)。ほとんどの実施形態では、Rは水素又はアルキルである。多くの実施形態では、1つ以上のアミン化合物の全てのアミノ基は、一級アミノ基(すなわち、全てのR基が水素である)であり、1つ以上のアミン化合物は式G(NH(例えば、qが2であるとき、式RHN−G−NHRのジアミン)である。ROH副生成物は、典型的には、得られたポリジオルガノシロキサンポリアミドから除去される。
【0090】
特定の実施形態では、1つ以上のアミン化合物は、(i)式RHN−G−NHRのジアミン化合物と、(ii)式G(NHR(式中、qは2超の整数である)のポリアミン化合物との混合物である。このような実施形態では、式G(NHRのポリアミン化合物は、トリアミン化合物(すなわち、q=3)、テトラアミン化合物(すなわち、q=4)及びこれらの組み合わせであってよいが、これらに限定されない。このような化合物では、ジアミン(i)の当量当たりのポリアミン(ii)の当量の数は、好ましくは少なくとも0.001、より好ましくは少なくとも0.005、最も好ましくは少なくとも0.01である。このような実施形態では、ジアミン(i)の当量当たりのポリアミン(ii)の当量の数は、好ましくは最大3、より好ましくは最大2、最も好ましくは最大1である。
【0091】
代表的なトリアミンとしては、トリス(2−アミノエチル)アミン、ジエチレントリアミン、例えばハンツマン(Huntsman)社(ウッドランズ(The Woodlands)、テキサス州)から、商品名ジェファミン(JEFFAMINE)T−3000(すなわち、3000g/モルの平均分子量を有するポリオキシプロピレントリアミン)及びジェファミンT−5000(すなわち、5000g/モルの平均分子量を有するポリオキシプロピレントリアミン)として入手可能であるもののようなポリオキシアルキレントリアミン、アミノ官能性ポリシロキサン、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なテトラアミンとしては、トリエチレンテトラアミンが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なアミノ官能基を有するポリジメチルシロキサンとしては、例えば、ゲレスト(Gelest)社(モリスビル(Morrisville)、ペンシルバニア州)から商品名AMS−132、AMS−152及びAMS−162として入手可能なもののような、アミノプロピルメチルシロキラン単位を有するポリジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
【0092】
1つ以上のアミン化合物がジアミンを含むとき、ジアミンは時に有機ジアミン又は、例えば、アルキレンジアミン、ヘテロアルキレンジアミン、アリーレンジアミン、アラルキレンジアミン、若しくはアルキレン−アラルキレンジアミンから選択されるものを含む有機ジアミンを有するポリジオルガノシロキサンジアミンとして分類される。式II(II−a又はII−b)の前駆体とは反応しない3級アミンが存在する場合もある。更に、ジアミンは、いかなるカルボニルアミノ基も有しない。つまり、ジアミンはアミドではない。
【0093】
代表的なポリオキシアルキレンジアミン(すなわち、Gが、酸素であるへテロ原子を有するヘテロアルキレンである)としては、ハンツマン(Huntsman)社(ウッドランド(The Woodlands)、テキサス州)から、商品名ジェファミン(JEFFAMINE)D−230(すなわち、230g/モルの平均分子量を有するポリオキシプロピレンジアミン)、ジェファミンD−400(すなわち、400g/モルの平均分子量を有するポリオキシプロピレンジアミン)、ジェファミンD−2000(すなわち、2,000g/モルの平均分子量を有するポリオキシプロピレンジアミン)、ジェファミンHK−511(すなわち、オキシエチレン基とオキシプロピレン基の両方を備え、かつ220g/モルの平均分子量を有するポリエーテルジアミン)、ジェファミンED−2003(すなわち、ポリプロピレンオキシドで末端保護した、2,000g/モルの平均分子量を有するポリエチレングリコール)、及びジェファミンEDR−148(すなわち、トリエチレングリコールジアミン)で市販されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
代表的なアルキレンジアミン(すなわち、Gがアルキレンである)としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレン−1,5−ジアミン(すなわち、デュポン(Dupont)社(ウィルミントン(Wilmington)、デラウェア州)からダイテック(DYTEK)Aの商品名で市販されている)、1,3−ペンタンジアミン(デュポン社からダイテックEPの商品名で市販されている)、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン(デュポン社からDHC−99の商品名で市販されている)、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタン、及び3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
代表的なアラルキレンジアミン(すなわち、Gがアルキレン−フェニルのようなアラルキレン)としては、4−アミノメチル−フェニルアミン、3−アミノメチル−フェニルアミン、及び2−アミノメチル−フェニルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なアルキレン−アラルキレンジアミン(すなわち、Gがアルキレン−フェニレン−アルキレンのようなアルキレン−アラルキレン)としては、4−アミノメチル−ベンジルアミン、3−アミノメチル−ベンジルアミン、及び2−アミノメチル−ベンジルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
以下の代表的な実施形態が、本開示により提供される。
【0097】
実施形態1.式Iの化合物
【0098】
【化16】

【0099】
(式中、各Rは、独立にアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;Rは、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールであり;R、R、及びRは、独立に、水素又はアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールである)の化合物。
【0100】
実施形態2.各Rがメチルである、実施形態1に記載の化合物。
【0101】
実施形態3.Rが1〜4個の炭素原子を有するアルキル又は1〜4個の炭素原子を有するハロアルキルであり、アルキル又はハロアルキルが、隣接するオキシ基に結合する1級炭素原子又は2級炭素原子を有する、実施形態1又は2に記載の化合物。
【0102】
実施形態4.Rがエチルである、実施形態1〜3のいずれかに記載の化合物。
【0103】
実施形態5.Rが、フェニル又は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ、ハロ、若しくは2〜5個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルで置換されたフェニルである、実施形態1又は2に記載の化合物。
【0104】
実施形態6.各R、R、及びRが水素である、実施形態1〜5のいずれかに記載の化合物。
【0105】
実施形態7.各R、R、及びRが1〜4個の炭素原子を有するアルキル又は1〜4個の炭素原子を有するハロアルキルである、実施形態1〜5のいずれかに記載の化合物。
【0106】
実施形態8.式IIIのポリマー前駆体を製造する方法であって、
【0107】
【化17】

【0108】
当該方法が、反応条件下で、実施形態1〜7のいずれかに記載の化合物と、式II
【0109】
【化18】

【0110】
(式中、各Rは、独立に、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;nは0〜1500の整数である)のシラノール終端シロキサンとを組み合わせる工程を含む、方法。
【0111】
実施形態9.各Rがメチルである、実施形態8に記載の方法。
【0112】
実施形態10.式VIIIの少なくとも2つの繰り返し単位を含むポリマー材料を製造する方法であって
【0113】
【化19】

【0114】
(式中qは2以上の整数である)、当該方法が、反応条件下で、実施形態1〜7のいずれかに記載の化合物と、式IIのシラノール終端シロキサンとを組み合わせて、
【0115】
【化20】

【0116】
式IIIのポリマー前駆体を形成する工程と
【0117】
【化21】

【0118】
(式中、各Rは、独立に、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;Rは、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールであり;各R、R、及びR、は、独立に、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;nは0〜1500の整数である)、反応条件下で、形成された式IIIのポリマー前駆体を、平均して式G(NHR(式中、Gは、G(NHRからr個の−NHR基を引いたものに等しい残りの単位であり;Rは水素若しくはアルキルであるか、又は、Rは、G及びそれらが結合している窒素と共に複素環基を形成し;rは2以上の数である)を有する1つ以上のアミン化合物と組み合わせる工程と、を含む方法。
【0119】
実施形態11.各Rがメチルである、実施形態10に記載の方法。
【0120】
実施形態12.式Iの化合物を製造する方法であって、当該方法が、式VII
【0121】
【化22】

【0122】
(式中、各Rは、独立に、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;Rは、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールであり;各R、R、及びRは、独立に、水素又はアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;Xはハロゲンである)の化合物を、環化を引き起こすのに有効な条件にさらす工程を含む方法。
【0123】
実施形態13.化を引き起こすのに有効である条件が、有機塩基を提供することを含む、実施形態12に記載の方法。
【0124】
実施形態14.有機塩基が溶媒中で提供される、実施形態13に記載の方法。
【0125】
実施形態15.有機塩基がトリエチルアミンである、実施形態13又は14に記載の方法。
【0126】
実施形態16.各Rがメチルである、実施形態12〜15のいずれかに記載の方法。
【0127】
実施形態17.Rが1〜4個の炭素原子を有するアルキル又は1〜4個の炭素原子を有するハロアルキルであり、アルキル又はハロアルキルが、隣接するオキシ基に結合する1級炭素原子又は2級炭素原子を有する、実施形態12〜16のいずれかに記載の方法。
【0128】
実施形態18.Rがエチルである、実施形態12〜17のいずれかに記載の方法。
【0129】
実施形態19.Rがフェニル又は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ、ハロ、若しくは2〜5個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルで置換されたフェニルである、実施形態12〜16のいずれかに記載の方法。
【0130】
実施形態20.各R、R、及びRが水素である、実施形態12〜19のいずれかに記載の方法。
【0131】
実施形態21.各R、R、及びRが1〜4個の炭素原子を有するアルキル又は1〜4個の炭素原子を有するハロアルキルである、実施形態12〜19のいずれかに記載の方法。
【0132】
実施形態22.XがClである、実施形態12〜21のいずれかに記載の方法。
【0133】
上述の事項は、本発明者らが予測して有効な説明が得られた実施形態の観点から本発明を説明しているが、本発明の想像上の、今のところ予測されていない修正であっても本発明の均等物を表す場合がある、ということも表している。
【実施例】
【0134】
これらの実施例は単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した特許請求の範囲の範囲を限定するものではない。実施例における部、百分率、比等は全て、特に断らない限り、重量基準である。使用する溶媒及びその他の試薬は、特に記載のない限り、シグマ・アルドリッチケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ミルウォーキー(Milwaukee)、ウィスコンシン州)より入手した。
【0135】
予備実施例1:N−アリルアミドエチルオキサレート
ジエチルオキサレート(256.00グラム)を丸底フラスコに充填し、0〜5℃に冷却し、50gのアリルアミンを、攪拌した溶液にゆっくりと添加した。反応物を周囲温度に加温した。一晩混合した後、エタノール及び過剰なジエチルオキサレートを、減圧下で除去した。残留物を真空中で蒸留し、無色透明な液体(沸点72〜76℃、133Pa(1トール))として生成物を回収し、収量は111gであった。
【0136】
予備実施例2:3−(クロロジメチルシリルプロピルアミド)エチルオキサレート
ガラスの圧力容器に22.58gのクロロジメチルシラン、30.00gの予備実施例1として調製したN−アリルアミドエチルオキサレート、及び4滴のビス(ジビニルテトラメチルジシロキサン(divinyltetramethyldisoloxane))プラチナ錯体(すなわち、Ptヒドロシラン化触媒)の2.3%溶液を充填した。容器を密封し、70〜80℃で16時間加熱した。透明な黄色の液体を、周囲温度に冷却し、残留物の圧力をゆっくりと解放し、内容物を攪拌しながら80℃に再加熱して、過剰なクロロジメチルシランを除去した。ガスクロマトグラフィー分析により、ほんの5%程の未反応のN−アリルアミドエチルオキサレート出発物質の存在が明らかになり、収量は49グラムであった。
【0137】
(実施例1):N−エチルオキサリルアザシラシクロペンタン(式R=R=R=H)
予備実施例2の粗生成物を110gのトルエンに溶解した。トリエチルアミン21.10gを、攪拌しながら滴下すると、多量の沈殿物が直ちに形成された。16時間後、混合物を窒素圧下でフリットガラス漏斗を通して濾過し、濾過ケーキを追加のトルエンで洗浄し、溶媒を減圧下でロータリーエバポレーターにより除去した。残留物を真空中で蒸留し、無色透明な液体(沸点84℃、1トール)として環状シラザンを単離した。収量は32.55g(89%)であった。NMR分析により、構造が式IのR=R=R=Hで示す環状シラザンであることを確認した。
【0138】
(実施例2):シラノール終端シリコーンの、N−エチルオキサラミドプロピル終端シリコーンへの変換
4200MWのシラノール終端シリコーン流体(71.68g)を、100℃で10分間真空下で加熱し、次いで窒素下で周囲温度に冷却した。式I、R=R=R=Hであり、実施例1で調製したような環状シラザン(3.86g)を添加し、内容物を50℃で0.5時間攪拌した。ガスクロマトグラフィー分析により、環状シラザンが完全に消失したことが示された。更なる3.86gの式I、R=R=R=Hの環状シラザンを添加し、シラザンがもはや消費されなくなるまで加熱し続けた。生成物を真空下で150℃(133Pa(1トール))にて加熱して、未反応の環状シラザンを完全に除去し、次いで周囲温度に冷却した。NMR分析により、100%のシラノール鎖末端がエチルオキサリルアミドプロピル鎖末端に変換されていることが明らかになった。
【0139】
(実施例3):シリコーンポリオキサミドの調製
実施例2で調製したN−エチルオキサラミドプロピル終端シリコーン(10.0グラム)を、4オンスの広口ジャーに急速に攪拌しながら充填し、エチレンジアミン(0.13グラム)を素早く添加した。およそ30秒後、反応物を泡状の固体に固化した。24時間後、更に24時間にわたって生成物を40mLのTHFに溶解させた。粘稠な溶液を、ガラスのペトリ皿に流し込み、溶媒を蒸発乾燥固させて、シリコーンポリオキサミドの透明で非常に強いエラストマーフィルムを提供した。
【0140】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる代表的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によってのみ限定されると意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

(式中、
各Rは、独立に、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;
は、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ、若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールであり、
各R、R、及びRは、独立に、水素、又はアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールである)の化合物。
【請求項2】
各Rがメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、1〜4個の炭素原子を有するアルキル又は1〜4個の炭素原子を有するハロアルキルであり、該アルキル又はハロアルキルが、隣接するオキシ基に結合する1級炭素原子若しくは2級炭素原子を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
がエチルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、フェニル又は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ、ハロ、若しくは2〜5個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルで置換されたフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
各R、R、及びRが水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
各R、R、及びRが1〜4個の炭素原子を有するアルキル又は1〜4個の炭素原子を有するハロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
式IIIのポリマー前駆体を製造する方法であって、
【化2】

該方法が、反応条件下で、
請求項1に記載の化合物と、
式IIのシラノール終端シロキサン
【化3】

(式中、
各Rは、独立に、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールであり;
nは、0〜1500の整数である)と、を組み合わせる工程を含む、方法。
【請求項9】
各Rがメチルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式VIIIの少なくとも2つの繰り返し単位を含むポリマー材料を製造する方法であって
【化4】

(式中qは2以上の整数である)、該方法が、反応条件下で、
請求項1に記載の化合物と、
式IIのシラノール終端シロキサンとを組み合わせて、
【化5】

式IIIのポリマー前駆体を形成する工程と
【化6】

(式中、
各Rは、独立に、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;
は、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ、若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールであり、
各R、R、及びRは、独立に、水素又はアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;
nは0〜1500の整数である)、
反応条件下で、形成された式IIIのポリマー前駆体を、平均して式G(NHR
(式中、
Gは、G(NHRからr個の−NHR基を引いたものに等しい残りの単位であり;
は、水素若しくはアルキルであるか、又はRはG及びそれら両方が結合した窒素と共に、複素環基を形成し、
rは2以上の数である)を有する1つ以上のアミン化合物とを組み合わせる工程と、を含む方法。
【請求項11】
各Rがメチルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
式Iの化合物を製造する方法であって、該方法が、
式VIIの化合物
【化7】

(式中、
各Rは、独立に、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;
は、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ、若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールであり、
各R、R、及びRは、独立に、水素又はアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;
Xはハロゲンである)を、環化を引き起こすのに有効な条件にさらす工程を含む方法。
【請求項13】
環化を引き起こすのに有効である条件が、有機塩基を提供することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
有機塩基が溶媒中で提供される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
有機塩基がトリエチルアミンである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
各Rがメチルである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
が1〜4個の炭素原子を有するアルキル又は1〜4個の炭素原子を有するハロアルキルであり、該アルキル又はハロアルキルが、隣接するオキシ基に結合する1級炭素原子又は2級炭素原子を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
がエチルである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
が、フェニル又は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ、ハロ、若しくは2〜5個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルで置換されたフェニルである、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
各R、R、及びRが水素である、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
各R、R、及びRが1〜4個の炭素原子を有するアルキル又は1〜4個の炭素原子を有するハロアルキルである、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
XがClである、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2010−530873(P2010−530873A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513315(P2010−513315)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/065641
【国際公開番号】WO2009/002667
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】