説明

オキシインドールジオキサン誘導体の合成において適当な中間体である化合物の合成法

本発明は、シナプス後ドーパミンD2受容体でドーパミン自己受容体アゴニストおよび部分アゴニストとして活性を有する式Dで示される化合物の製造方法を提供する。この化合物は、ドーパミン作動性障害、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、パーキンソン病、トゥレット症候群、高プロラクチン血症、および薬物依存症の治療に有用である(式I)。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2006年5月25日に出願した米国仮特許出願番号60/808,394(その全体が出典明示により本明細書の一部を構成する)に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、シナプス後ドーパミンD2受容体でのドーパミン自己受容体アゴニストおよび部分アゴニストとして有用な化合物およびその誘導体の合成方法、ならびにその中間体に関する。
【背景技術】
【0003】
統合失調症の臨床的処置は、長い間、統合失調症が、特に側坐核(中脳辺縁ドーパミン系)のような辺縁脳構造における、ドーパミン作動性神経伝達の機能亢進の結果であるという統合失調症のドーパミン仮説によって定義されてきた。実際に、統合失調症の陽性症状(幻覚、妄想、思考障害)は、ドーパミン受容体を遮断する神経遮断薬で成功裏に処置される。しかしながら、かかる処置は、黒質線条体ドーパミン受容体の遮断に起因する運動障害またはジスキネジア(錐体外路副作用)の発生を伴う。加えて、神経遮断薬は、中脳皮質ドーパミン系における神経伝達の相対的な活動低下に関連し、ドーパミンアゴニストによる処置に反応する統合失調症の陰性症状(引きこもり、無快感症、会話の貧困)を処置しない。
【0004】
ドーパミン自己受容体アゴニストで抗精神病活性を誘発する試みは成功している(非特許文献1;非特許文献2)。最近、ドーパミンD2受容体での固有活性を決定する方法が公表された[非特許文献3]。報告されているように、固有活性は、該受容体の「低親和性アゴニスト」(LowAg)状態および該受容体の「高親和性アゴニスト」(HighAg)状態の比、すなわち、LowAg/HighAgを用いて予想される。これらの比は、化合物の抗精神病作用を発揮する能力を特徴付ける、所定の化合物についてのアゴニスト、部分アゴニスト、およびアンタゴニスト活性と相関する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Corsini et al., Adv. Biochem. Psychopharmacol. 16, 645-648, 1977
【非特許文献2】Tamminga et al., Psychiatry 398-402, 1986
【非特許文献3】Lahti et al., Mol. Pharm. 42, 432-438, (1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ドーパミン自己受容体アゴニストは、ニューロン発火の減少ならびにドーパミン合成および放出の阻害によりドーパミン作動性神経伝達の機能的アンタゴニズムを生じる。ドーパミン自己受容体アゴニストはシナプス後ドーパミン受容体での部分アゴニストであるので、それらは、ジスキネジアの発生を予防するのに十分な残留レベルの刺激をもたらす。実際に、部分アゴニストは、所定の組織または脳領域においてドーパミン作動性刺激のレベルに応じてアゴニストまたはアンタゴニストとして機能する能力を有しており、したがって、統合失調症の陽性症状および陰性症状の両者に対して効果があると考えられる。かくして、新規ドーパミン部分アゴニストは、統合失調症および関連障害の処置にとって重要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載するとおり、本発明は、シナプス後ドーパミンD2受容体でドーパミン自己受容体アゴニストおよび部分アゴニストとして活性を有する化合物の製造方法を提供する。これらの化合物は、統合失調症、統合失調感情障害、パーキンソン病、トゥレット症候群、高プロラクチン血症および薬物依存症のようなドーパミン作動性障害の治療に有用である。かかる化合物としては、式1で示される化合物またはその医薬上許容される塩が挙げられる:
【化1】

(式中、
aは、−(CH2)nフェニルであり;
nは、1または2である)。
【0008】
本発明はまた、かかる化合物の製造に有用な合成中間体を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特定の実施態様の詳細な説明
本発明の方法および中間体は、例えばStack, et alの名における米国特許番号第5,756,532号(その全体が出典明示により本明細書の一部を構成する)に記載されるような化合物の製造に有用である。本発明の合成法は、容易に入手可能な試薬を使用してかかる化合物を大規模に製造するという利点がある。特定の実施態様では、本発明の化合物は、下記スキームIに従って一般的に製造される:
【化2】

【0010】
上記スキームIでは、R1、R2、LG1およびLG2は、各々、以下にて、ならびに、本明細書に記載するようなクラスおよびサブクラスにて定義するとおりである。
【0011】
工程S−1では、4−ニトロカテコールGが式Fで示されるエポキシド(ここで、LG1は、適当な脱離基である)で処理されて、式Eで示される化合物が得られる。適当な脱離基は、当該技術分野で周知であり、例えば、“Advanced Organic Chemistry,” Jerry March, 5th Ed., pp. 445-448, John Wiley and Sons, N.Yを参照。かかる脱離基としては、ハロゲン、スルホニルオキシ、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ、置換されていてもよいアルケニルスルホニルオキシ、置換されていてもよいアリールスルホニルオキシが挙げられるが、これらに限定されるものではない。適当な脱離基の例としては、クロロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、メタンスルホニルオキシ(メシルオキシ)、トシルオキシ、トリフリルオキシ、ニトロフェニルスルホニルオキシ(ノシルオキシ)およびブロモフェニルスルホニルオキシ(ブロシルオキシ)が挙げられる。特定の実施態様では、LG1は、ハロゲンである。他の実施態様では、LG1は、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ、置換されていてもよいアルケニルスルホニルオキシまたは置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基である。特定の実施態様では、LG1は、ハロゲンである。他の実施態様では、LG1は、クロロである。
【0012】
工程S−2における水素のMakosza代償性(vicarious)求核置換反応の使用が、式Eで示される化合物を適当に置換されているアセトニトリル化合物で処理することにより行われて、式Dで示される化合物が得られる。本明細書にて定義されるように、R1基は適当な脱離基である。特定の実施態様では、R1は、フェニル環が1個またはそれ以上の電子求引基によって置換されている−Oフェニルである。他の実施態様では、R1は、フェニル環がクロロによって置換されている−Oフェニルである。別の態様によると、R1は、クロロである。工程S−2での反応は、適当な塩基の存在下で行われる。特定の実施態様では、適当な塩基は強塩基である。かかる塩基としては、金属アルコキシドおよび金属の水素化物が挙げられる。特定の実施態様では、該塩基は、カリウムtert−ブトキシドである。特定の実施態様では、工程S−2では少なくとも1当量の塩基が使用される。他の実施態様では、約2〜約5当量の塩基が使用される。さらに他の実施態様では、約2.3〜約4当量の塩基が使用される。
【0013】
工程S−3では、化合物Dのヒドロキシル基が適当な脱離基LG2へ変換される。このヒドロキシル基の脱離基への変換は当業者に周知であり、Marchに記載されているこれらの方法が挙げられる。かかるLG2基としては、ハロゲン、アルコキシ、スルホニルオキシ、置換されていてもよいアルキルスルホニルオキシ、置換されていてもよいアルケニルスルホニルオキシおよび置換されていてもよいアリールスルホニルオキシ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記の「置換されていてもよい」基について、該基は、例えば、C1-4脂肪族、フルオロ置換C1-4脂肪族、ハロゲン、またはニトロで置換されていてもよい。適当な脱離基の例としては、クロロ、ヨード、ブロモ、メタンスルホニルオキシ(メシルオキシ)、トシルオキシ、トリフリルオキシ、ニトロ−フェニルスルホニルオキシ(ノシルオキシ)、およびブロモ−フェニルスルホニルオキシ(ブロシルオキシ)が挙げられる。本発明の一の態様によると、式Dで示される化合物におけるLG2は、トルエンスルホニルオキシ(トシルオキシ)である。本発明の別の態様によると、式Eで示される化合物をトルエンスルホニルクロリド(トシルクロリド)と反応させて、LG2がトルエンスルホニルオキシ(トシルオキシ)である式Dで示される化合物が得られる。
【0014】
特定の実施態様では、工程S−3は、エーテル溶媒、エステル溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、またはニトリル溶媒中にて行われる。特定の実施態様では、この反応は、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、アセトニトリル、または酢酸イソプロピル中にて行われる。他の実施態様では、該反応は、THF中にて行われる。本発明の一の態様によると、該反応は、適当な塩基の存在下で行われる。代表的な塩基としては、第3アミン、例えば、トリエチルアミン(TEA)、ピリジン、およびDIPEAが挙げられる。特定の実施態様では、該反応は、約−20℃〜約40℃の温度で行われる。他の実施態様では、該反応は、約0℃の温度で行われる。
【0015】
工程S−4では、式DのLG2基がベンジルアミンによって置換されて、化合物Bが得られる。特定の実施態様では、この置換工程は、約1〜約5当量のベンジルアミンを使用して行われる。他の実施態様では、この工程は、約1〜約3.5当量のベンジルアミンを使用して行われる。別の態様によると、S−4は、適当な媒体中にて行われる。
【0016】
適当な媒体は、合わせた化合物と一緒になってそれらの反応の進行を促進することができる溶媒または溶媒混合物である。適当な溶媒は、反応成分のうちの1つまたはそれ以上を可溶化することができるか、または別法として、適当な溶媒は、反応成分のうちの1つまたはそれ以上の懸濁液の撹拌を促進することができる。本発明に有用な適当な溶媒の例としては、プロトン溶媒、ハロゲン化炭化水素、エーテル、エステル、芳香族炭化水素、極性もしくは非極性の非プロトン溶媒、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらまたは他のかかる適当な溶媒は、当該技術分野で周知であり、例えば、“Advanced Organic Chemistry”, Jerry March, 5th edition, John Wiley and Sons, N.Y.を参照。かかる適当な溶媒としては、極性非プロトン溶媒が挙げられる。特定の実施態様では、工程S−4は、DMSO中にて行われる。
【0017】
特定の実施態様では、工程S−4での置換反応は、適当な塩基の存在下で行われてもよい。当業者であれば、アミノ基による脱離基の置換が適当な塩基の存在を伴うかまたは伴わずに行われることが分かるであろう。かかる適当な塩基は、当該技術分野で周知であり、有機塩基および無機塩基が挙げられる。
【0018】
工程S−5では加水分解によって式Bのシアノ基の式Aの−CO22基への変換が行われる。特定の実施態様では、工程S−5は、結果としてR2が対応するエステルを形成する式Aで示される化合物が得られるようなアルコール溶媒中にて行われる。本発明の一の態様によると、工程S−5での加水分解は、式Bで示される化合物をアルコール中にてHClガスで処理することにより行われる。特定の実施態様では、工程S−5での加水分解は、式Bで示される化合物を低級アルキルアルコール中にてHClガスで処理することにより行われる。かかる低級アルキルアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、およびイソプロパノールが挙げられる。
【0019】
工程S−6では、式Aのニトロ基が還元されてアミンが形成される。得られた化合物はそのままで環化して、式Iで示される化合物が得られる。当業者であれば、ニトロ基を対応するアミンに還元する多くの方法があることが分かるであろう。特定の実施態様では、還元/環化工程は、適当な触媒の存在下での水素添加によって行われる。他の実施態様では、適当な触媒は、白金触媒、Fe/HCl、またはSn/HClである。さらに別の実施態様では、適当な触媒は、酸化白金である。
【0020】
工程S−7で、式Iで示される化合物がフマル酸で処理されて、式I−aで示される化合物が得られてもよい。
【0021】
特定の実施態様では、本発明は、式D:
【化3】

で示される化合物の製造方法であって、
(a)式E:
【化4】

で示される化合物を準備する工程;
および
(b)適当な塩基の存在下にて式Eで示される化合物を式:
【化5】

(ここで、R1は、適当な脱離基である)
で示される化合物で処理する工程
を含む方法を提供する。
【0022】
上記にて一般的に定義したように、R1は、適当な脱離基である。脱離基は、当該技術分野で周知であり、Marchに詳細に記載されているものが挙げられる。代表的な脱離基としては、ハロゲン、アルコキシ、およびフェノキシ基(ここで、フェニル環は1個またはそれ以上のハロゲン、ニトロおよびエステル基で置換されていてもよい)が挙げられる。特定の実施態様では、R1は、ハロゲンで置換されているフェノキシ基である。
【0023】
上記したように、工程(b)は、適当な塩基の存在下で行われる。特定の実施態様では、適当な塩基は強塩基である。代表的な強塩基としては、金属アルコキシドおよび金属の水素化物が挙げられる。特定の実施態様では、工程(b)は、金属アルコキシドの存在下で行われる。他の実施態様では、工程(b)は、カリウムtert−ブトキシドの存在下で行われる。
【0024】
他の実施態様では、本発明は、式C:
【化6】

(ここで、LG2は適当な脱離基である)
で示される化合物の製造方法であって、
(a)式D:
【化7】

で示される化合物を準備する工程;
および
(b)式Dで示される化合物の遊離ヒドロキシル基を適当な脱離基に変換して式Cで示される化合物を得る工程
を含む方法を提供する。
【0025】
工程(b)では、化合物Dのヒドロキシル基は、求核置換を受ける脱離基LG2となるように活性化される。「求核置換を受ける」適当な「脱離基」は、所望の次なる求核化学物質で容易に置換される化学基である。本発明の一の態様によると、式Dで示される化合物をトルエンスルホニルクロリド(トシルクロリド)と反応させて、LG2がトルエンスルホニルオキシ(トシルオキシ)である式Cで示される化合物が得られる。
【0026】
特定の実施態様では、この反応は、適当な媒体中にて行われる。特定の実施態様では、適当な媒体は、極性非プロトン溶媒またはハロゲン化炭化水素溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、アセトニトリル、または酢酸イソプロピルである。他の実施態様では、適当な媒体はジクロロメタンである。
【0027】
本発明の一の態様によると、該反応は、適当な塩基の存在下で行われる。特定の実施態様では、適当な塩基は、トリエチルアミン(TEA)である。他の実施態様では、化合物Dの化合物Cへの変換は、触媒量の4−(ジメチルアミノ)ピリジンの存在下で行われる。
【0028】
本発明の別の態様は、式B:
【化8】

で示される化合物の製造方法であって、
(a)式C:
【化9】

(ここで、LG2は適当な脱離基である)
で示される化合物を準備する工程;
および
(b)式Cで示される化合物をベンジルアミンで処理する工程
を含む方法を提供する。
【0029】
特定の実施態様では、置換工程(b)は、約1〜約5当量のベンジルアミンを使用して行われる。他の実施態様では、この工程は、約1〜約3.5当量のベンジルアミンを使用して行われる。別の態様によると、工程(b)は、適当な媒体中にて行われる。
【0030】
適当な媒体は、合わせた化合物と一緒になってそれらの反応の進行を促進することができる溶媒または溶媒混合物である。適当な溶媒は、反応成分のうちの1つまたはそれ以上を可溶化することができるか、または別法として、適当な溶媒は、反応成分のうちの1つまたはそれ以上の懸濁液の撹拌を促進することができる。本発明に有用な適当な溶媒の例は、プロトン溶媒、ハロゲン化炭化水素、エーテル、エステル、芳香族炭化水素、極性もしくは非極性の非プロトン溶媒、またはそれらの混合物である。かかる混合物としては、例えば、ベンゼン/メタノール/水;ベンゼン/水;DME/水、および同類ものもののようなプロトン溶媒および非プロトン溶媒の混合物が挙げられる。他の実施態様では、かかる適当な溶媒としては、極性非プロトン溶媒が挙げられる。特定の実施態様では、工程(b)は、DMSO中にて行われる。
【0031】
これらおよび他のかかる適当な溶媒は、当該技術分野において周知であり、例えば、“Advanced Organic Chemistry”, Jerry March, 5th edition, John Wiley and Sons, N.Y.を参照。
【0032】
特定の実施態様では、工程(b)での置換反応は、適当な塩基の存在下で行われてもよい。当業者には、アミノ基による脱離基の置換が適当な塩基の存在を伴うかまたは伴わずに行われることが分かるであろう。かかる適当な塩基は、当該技術分野において周知であり、有機塩基および無機塩基が挙げられる。
【0033】
特定の実施態様では、本発明は、式A:
【化10】

(ここで、R2は、カルボキシレート保護基である)
で示される化合物の製造方法であって、
(a)化合物B:
【化11】

を準備する工程;
および
(b)該化合物Bのニトリル基を加水分解して式Aで示される化合物を得る工程
を含む方法を提供する。
【0034】
上記のとおり、R2は、適当なカルボキシレート保護基である。保護カルボン酸は、当該技術分野において周知であり、Greene (1999)に詳細に記載されているものが挙げられる。適当な保護カルボン酸としては、さらに、置換されていてもよいC1-6脂肪族エステル、置換されていてもよいアリールエステル、シリルエステル、活性エステル、アミド、ヒドラジド、および同類のものが挙げられるが、これらに限定されるものでない。かかるエステル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ベンジル、およびフェニルエステルが挙げられ、ここで、各基は置換されていてもよい。さらなる適当な保護カルボン酸としては、オキサゾリンおよびオルトエステルが挙げられる。特定の実施態様では、R2は、置換されていてもよいC1-6脂肪族エステルまたは置換されていてもよいアリールエステルである。他の実施態様では、R2は、C1-6脂肪族エステルである。かかるC1-6脂肪族エステルとしては、メチル、エチル、プロピル、およびイソプロピルが挙げられる。
【0035】
工程(b)での加水分解によって式Bのシアノ基の式Aの−CO22基への変換が行われる。特定の実施態様では、工程(b)は、R2が対応するエステルを形成する式Aで示される化合物が形成されるようなアルコール溶媒中にて行われる。本発明の一の態様によると、工程(b)での加水分解は、式Bで示される化合物をアルコール中にてHClガスで処理することにより行われる。特定の実施態様では、工程(b)での加水分解は、式Bで示される化合物を低級アルキルアルコール中にてHClガスで処理することにより行われる。かかる低級アルキルアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、およびイソプロパノールが挙げられる。
【0036】
一の態様では、本発明は、上記スキームIで示される工程に従って式I−aで示されるキラル化合物を製造する方法を提供する。当然のことながら、スキームIは、式I−aで示されるラセミ化合物の製造方法を示しているが、式Fで示される適当なキラルグリシジルエーテルを使用して所望のエナンチオマーが同様に製造される。式I−aで示されるキラル化合物の一般的な製造方法を下記スキームIIに示す。
【0037】
【化12】

【0038】
式E'で示される化合物を製造する別法を下記スキームIIIに示す。
【0039】
【化13】

【実施例】
【0040】
融点は、Buchi B−545融点測定装置にて得られたものであり、未校正である。1H NMRスペクトルは、300MHzでBruker DPX 301にて得られたものであり、13C NMRスペクトルは、75MHzでBruker DPX 301にて得られたものである。化学シフトは、TMS(内部標準)に対してppmで報告される。
【0041】
実施例1
【化14】

(7−ニトロ−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−2−イル)メタノール: DMF(180mL)中の4−ニトロカテコール(30g、0.19mol)、炭酸リチウム(36g、0.49mol)、およびエピクロロヒドリン(38mL、0.49mol)を70〜85℃に47時間加熱した。水を添加し、混合物をEtOAc(3×)で抽出した。合わせたEtOAc抽出物を濃縮し、MeOHから結晶化して、標記化合物の最初の産物5.98g(収率14.7%、融点131.8〜135℃)および次の産物1.64g(収率4%、融点133.1〜136.7℃)を得た(文献による融点131〜134℃)。1H NMR(d6−DMSO)δ 7.78(1H,dd,J=8.9,2.7Hz);7.72(1H,d,J=2.7Hz);7.11(1H,d,J=8.9Hz);5.16(1H,br s);4.48(1H,dd,J=11.4,2.1Hz);4.32−4.23(1H,m);4.17(1H,dd,J=11.4,7.4Hz);3.66(2H,br s)。
【0042】
実施例2
【化15】

2−(3−(ヒドロキシメチル)−6−ニトロ−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−5−イル)アセトニトリル: −5〜0℃にてラセミ(7−ニトロ−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−2−イル)メタノール(1.00g、4.73mmol)および4−クロロフェノキシアセトニトリル(827mg、4.94mmol)のDMF(12mL)中溶液をカリウムtert−ブトキシド(2.12g、18.9mmol)のDMF(20mL)中溶液に滴下した。添加完了後(7分)、反応混合物を−5〜0℃で1時間撹拌した。反応混合物を1N HClで酸性化した後、水(200mL)に浸した。該混合物をEtOAc(3×100mL)で抽出し、合わせた有機層を1N NaOH(3×50mL)で洗浄して、4−クロロフェノールをほとんど除去した。溶媒を除去した後、残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(2:3、1:1、3:2、100:0の酢酸エチル/ヘキサンを使用する勾配溶離)によって精製して、出発物質139mg(回収率14%)および固体としての標記化合物804mg(収率68%)を得た。1H NMR(CDCl3)δ 7.77(1H,d,J=9.12Hz);7.01(1H,d,J=9.12Hz);4.50−4.40(2H,m);4.30−3.91(5H,m);2.25−2.21(1H,m)。13C NMR(CDCl3)δ 148.07、141.71、141.55、119.44、117.07、116.96、115.71、74.36、65.31、61.18、14.89。
【0043】
実施例3
【化16】

4−メチルベンゼンスルホン酸(8−(シアノメチル)−7−ニトロ−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−2−イル)メチル: 実施例2で得た2−(3−(ヒドロキシメチル)−6−ニトロ−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−5−イル)アセトニトリル(721.5mg、2.88mmol)のCH2Cl2(30mL)中溶液をトシルクロリド(604.7mg、3.17mmol)、トリエチルアミン(602μL、4.32mmol)および触媒DMAPで処理した。4時間後、TLC(100%CH2Cl2)によると出発物質はなおも存在しており、さらにトシルクロリド(60mg)を添加した。18時間後、該溶液を10%HCl水溶液、次いで、1N NaOHで洗浄した。濃縮およびCH2Cl2との粉砕により、固体としての標記化合物746mg(収率64%)を得た。1H NMR(d6−DMSO)δ 7.82(2H,d,J=8.31Hz);7.75(1H,d,J=9.09Hz);7.48(2H,d,J=8.13Hz);7.12(1H,d,J=9.12Hz);4.74−4.66(1H,m);4.49−4.42(2H,m);4.30−4.15(2H,m);3.94(2H,ab q,Jab=16.83Hz);2.41(3H,s)。
【0044】
実施例4
【化17】

2−(3−((ベンジルアミノ)メチル)−6−ニトロ−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−5−イル)アセトニトリル: 実施例3で得られたトシラート化合物(700mg、1.73mmol)のDMSO(6mL)中溶液をベンジルアミン(416μL、3.81mmol)で処理した。溶液は、ベンジルアミンの添加後すぐに紫色になった。該混合物を85℃に23時間加熱し、さらにベンジルアミン(200μL)を添加した。85℃でさらに18時間後、該溶液を室温に冷却し、CH2Cl2で希釈し、5%NaHCO3水溶液(3×)で洗浄し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2、次いで、40%EtOAc/CH2Cl2で溶離)により出発物質29.9mgを回収し、標記化合物440mg(収率75%)を得た。1H NMR(CDCl3)δ 7.75(1H,d,J=9.15Hz);7.45−7.18(5H,m);6.97(1H,d,J=9.12Hz);4.43−4.34(2H,m);4.21−4.01(3H,m);3.68(2H,s);3.05−2.93(2H,m);1.85(1H,br s)。
【0045】
実施例5
【化18】

2−(3−((ベンジルアミノ)メチル)−6−ニトロ−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−5−イル)酢酸メチル: 実施例4からのニトリル(374mg、1.10mmol)のMeOH(5mL)中溶液に塩化水素を0℃で1時間通気した。フラスコを密封し、冷蔵庫中にて一夜放置した。該混合物を濃縮し、EtOAcで希釈し、希NaOH水溶液で洗浄した。水性層をEtOAcで1回抽出し、合わせた有機層を濃縮して、黒ずんだ油状物として標記化合物344mg(収率84%)を得た。1H NMR(CDCl3)δ 7.67(1H,d,J=9.09Hz);7.34−7.23(5H,m);6.92(1H,d,J=9.09Hz);4.40−4.30(2H,m);4.17−4.11(1H,m);3.93−3.80(4H,m);3.67(3H,s);2.98−2.89(2H,m)。
【0046】
実施例6
【化19】

2−((ベンジルアミノ)メチル)−2,3−ジヒドロ−7H−[1,4]ジオキシノ[2,3−e]インドール−8(9H)−オン: 実施例5からのメチルエステル(43mg)を酢酸エチル/エタノール(1:1)(10mL)に溶解し、シリンジフィルターで濾過して、不溶物質を除去した。酸化白金(35重量%)を添加し、該混合物を50psiの水素ガス下にてParr振盪器上に一夜置いた。CH2Cl2/MeOH(95:5)を用いるTLC分析は、出発物質が消費されたこと、およびより極性の生成物が形成されたことを示した。該混合物を0.5μmシリンジフィルターで濾過し、EtOAc/EtOH(1:1)で洗浄し、濾液を減圧濃縮して、薄赤−茶色のガラスを得た。該粗物質をエタノール(20mL)に再溶解し、濃HCl 20μLを添加した。該溶液を70℃に加温し、一夜撹拌した。反応混合物のTLC(CH2Cl2/MeOH(96:4))は、新しい生成物が形成されたこと、および出発物質が残存していないことを示した。反応混合物を周囲温度に冷却し、減圧濃縮して、淡い橙色の薄膜を得た。これをシリカゲルクロマトグラフィーに付してCH2Cl2/MeOH(96:4)で溶離した。標記生成物を収率22%で単離した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式D:
【化1】

で示される化合物の製造方法であって、
(a)式E:
【化2】

で示される化合物を準備する工程;
および
(b)適当な塩基の存在下にて該式Eで示される化合物を式:
【化3】

(ここで、R1は、適当な脱離基である)
で示される化合物で処理する工程
を含む方法。
【請求項2】
1がハロゲンまたはフェノキシ基(ここで、フェニル環は、1つまたはそれ以上のハロゲン、ニトロ、またはエステル基で置換されていてもよい)である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1がハロゲンで置換されているフェノキシ基である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程(b)での適当な塩基が強塩基である、請求項1〜3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
強塩基が金属アルコキシドまたは金属の水素化物である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
強塩基がカリウムtert−ブトキシドである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
さらに、式Dで示される化合物の遊離ヒドロキシル基を適当な脱離基に変換して式C:
【化4】

(ここで、LG2は、適当な脱離基である)
で示される化合物を得る工程を含む、請求項1〜6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
LG2がトシルである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
式Dで示される化合物の遊離ヒドロキシル基を適当な脱離基に変換する工程が適当な塩基の存在下で行われる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
適当な塩基がトリエチルアミンである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
さらに、式Cで示される化合物をベンジルアミンで処理して化合物B:
【化5】

を得る工程を含む、請求項7〜10いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
式Cで示される化合物が約1〜約5当量のベンジルアミンで処理される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
さらに、化合物Bのニトリル基を加水分解して式A:
【化6】

(ここで、R2は、カルボキシレート保護基である)
で示される化合物を得る工程を含む、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
2が置換されていてもよいC1-6脂肪族エステルまたは置換されていてもよいアリールエステルである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
2がメチル、エチル、プロピル、またはイソプロピルである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
さらに、式Aで示される化合物のニトロ基を還元して化合物I:
【化7】

を得る工程を含む、請求項13〜15いずれか1項記載の方法。
【請求項17】
還元が適当な触媒の存在下における水素添加によって行われる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
適当な触媒が白金触媒、Fe/HClまたはSn/HClである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
適当な触媒が酸化白金である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
さらに、化合物Iをフマル酸で処理して、化合物I−a:
【化8】

を得る工程を含む、請求項16〜19いずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2009−538324(P2009−538324A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512182(P2009−512182)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/012622
【国際公開番号】WO2007/139998
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】