説明

オキシデーションディッチ及びオキシデーションディッチの改修方法

【課題】円弧流路に整流壁を有するオシキデーションディッチ(OD)であっても、縦軸型曝気撹拌装置によって槽内に効率良く循環撹拌流を形成可能とする。
【解決手段】水槽1内を仕切る仕切壁2により無端状の循環流路が形成されこの循環流路を主要流路5及びこの主要流路5,5の端部同士を接続する平面視略半円状の円弧流路6により構成しこの円弧流路6に平面視円弧状の整流壁7を備えたODにあって、縦軸型曝気撹拌装置3を、そのインペラ9が、円弧流路6の整流壁7の下流側の端部7aよりさらに下流側の主要流路5に位置するように設置し、このインペラ9の回転によって、当該インペラ9より上流側で円弧流路6の整流壁7より内周側流路8a又は外周側流路8bの何れか一方へ向かう噴出流を、インペラ9の側方に位置する逆流防止板13により遮り当該インペラ9より上流側へ向かうことを阻止し、下流側に向かう良好な循環撹拌流を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシデーションディッチ及びオキシデーションディッチの改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水の処理方法として、汚水と活性汚泥の混合液を収容する水槽と、水槽内に無端状の循環流路を形成するように当該水槽内を仕切る仕切壁と、混合液を曝気すると共に循環流路に沿って混合液の循環撹拌流を形成する撹拌羽根を備えた曝気撹拌装置と、を具備し、循環流路は、直線流路と、直線流路の端部同士を接続する平面視略半円状の円弧流路と、を有するオキシデーションディッチが知られている(特許文献1、2参照)。このオシキデーションディッチに用いられる曝気撹拌装置としては、縦軸型、横軸型及び斜軸型等がある。これらのうち、横軸型、斜軸型の曝気撹拌装置が用いられるオキシデーションディッチにあっては、曝気撹拌装置は、その撹拌羽根が直線流路に位置するように設置されると共に、円弧流路には、混合液が円滑に旋回するように平面視円弧状を成す整流壁が設けられるのが一般的である。一方、縦軸型の曝気撹拌装置が用いられるオキシデーションディッチにあっては、曝気撹拌装置は、撹拌羽根であるインペラが円弧流路の混合液に浸漬するように設置される。このようにインペラが円弧流路に設置され、特に仕切壁の端部に近付けて設置されるのは、インペラの回転により発生し上流側に向かう噴出流を仕切壁の端部で遮り上流側へ向かうのを抑制して槽全体に良好な循環撹拌流を形成するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−252681号公報
【特許文献2】特開2002−320994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、横軸型の曝気撹拌装置にあっては撹拌羽根に夾雑物が絡まりやすく、また、斜軸型の曝気撹拌装置にあっては撹拌力が弱く槽当たりの設置台数を増やす必要があるため、既設の横軸型、斜軸型の曝気撹拌装置を例えば老朽化等により新設の曝気撹拌装置に交換する場合には、縦軸型の曝気撹拌装置への交換が望まれるが、上述のように、横軸型、斜軸型の曝気撹拌装置が用いられるオキシデーションディッチにあっては、円弧流路に整流壁が設けられているため、当該整流壁が縦軸型曝気撹拌装置の設置の邪魔になってしまい設置できない。
【0005】
そこで、縦軸型曝気撹拌装置のインペラが直線流路に位置するように設置することになるが、インペラの回転により発生する噴出流は、インペラの下流側だけでなく上流側にも噴出するため、上流側への噴出流が良好な循環撹拌流の形成を妨げ、下水処理性能を低下させるおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、円弧流路に整流壁を有するオシキデーションディッチであっても、縦軸型曝気撹拌装置によって槽内に効率良く循環撹拌流を形成できるオキシデーションディッチを提供することを目的とする。また、円弧流路に整流壁を有するオシキデーションディッチであっても、槽内に効率良く循環撹拌流を形成できる縦軸型曝気撹拌装置を簡易に設置でき、低コストでの改修を可能とするオキシデーションディッチの改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるオキシデーションディッチは、汚水と活性汚泥の混合液を収容する水槽と、水槽内に無端状の循環流路を形成するように当該水槽内を仕切る仕切壁と、混合液を曝気すると共に循環流路に沿って混合液の循環撹拌流を形成する曝気撹拌装置と、を具備し、循環流路は、主要流路と、主要流路の端部同士を接続する平面視略半円状の円弧流路と、を備え、円弧流路には、混合液が円滑に旋回するように平面視円弧状を成す整流壁が設けられたオキシデーションディッチにおいて、曝気撹拌装置は、縦軸に設けられたインペラが混合液に浸漬し縦軸の軸線回りに回転することで曝気及び循環撹拌流の形成を行う縦軸型曝気撹拌装置であり、縦軸型曝気撹拌装置は、インペラが整流壁の下流側の端部より下流側の主要流路に位置するように設置され、インペラの側方に位置し、円弧流路の整流壁より内周側又は外周側の何れか一方の流路へ向かうインペラの回転による噴出流を遮る逆流防止板を備えたことを特徴としている。
【0008】
このようなオキシデーションディッチによれば、水槽内を仕切る仕切壁により無端状の循環流路が形成されこの循環流路を主要流路及びこの主要流路の端部同士を接続する平面視略半円状の円弧流路により構成しこの円弧流路に平面視円弧状の整流壁を備えたオシキデーションディッチにあって、縦軸型曝気撹拌装置は、そのインペラが、円弧流路の整流壁の下流側の端部よりさらに下流側の主要流路に位置するように設置され、このインペラの回転によって、当該インペラより上流側で円弧流路の整流壁より内周側又は外周側の何れか一方の流路へ向かう噴出流は、インペラの側方に位置する逆流防止板により遮られて当該インペラより上流側へ向かうことが阻止され、これにより下流側に向かう良好な循環撹拌流が形成される。従って、円弧流路に整流壁を有するオシキデーションディッチであっても、縦軸型曝気撹拌装置によって槽内に効率良く循環撹拌流を形成できる。
【0009】
ここで、主要流路は、直線流路であると、オキシデーションディッチを代表する例えば平面視長円形や馬蹄形の水槽を有するオキシデーションディッチに対して適用でき、特に好ましい。
【0010】
また、逆流防止板は、円弧流路の整流壁より内周側の流路への噴出流を遮る構成であると、円弧流路の整流壁より外周側の流路に循環撹拌流が流れることになり、循環撹拌流が内周側の流路を流れる場合に比して、混合液が一層円滑に旋回し一層効率良く循環撹拌流を形成することができる。
【0011】
また、縦軸型曝気撹拌装置と逆流防止板は一体のユニットとされ、縦軸型曝気撹拌装置の駆動部を載置する架台を、水槽の外周壁を形成する周囲壁と仕切壁に亘って載置することで、インペラ及び逆流防止板が所定位置に配置される構成であると、設置工事が非常に容易である。
【0012】
また、本発明によるオキシデーションディッチの改修方法は、汚水と活性汚泥の混合液を収容する水槽と、水槽内に無端状の循環流路を形成するように当該水槽内を仕切る仕切壁と、混合液を曝気すると共に循環流路に沿って混合液の循環撹拌流を形成する曝気撹拌装置と、を具備し、循環流路は、主要流路と、主要流路の端部同士を接続する平面視略半円状の円弧流路と、を備え、円弧流路には、混合液が円滑に旋回するように平面視円弧状を成す整流壁が設けられたオキシデーションディッチの改修方法であって、既設の曝気撹拌装置を撤去し、新設の曝気撹拌装置を、縦軸に設けられたインペラが混合液に浸漬し縦軸の軸線回りに回転することで曝気及び循環撹拌流の形成を行う縦軸型曝気撹拌装置とし、縦軸型曝気撹拌装置を、インペラが整流壁の下流側の端部より下流側の主要流路に位置するように設置し、且つ、インペラの側方で、円弧流路の整流壁より内周側又は外周側の何れか一方の流路へ向かうインペラの回転による噴出流を遮る逆流防止板を設置することを特徴としている。
【0013】
このようなオキシデーションディッチの改修方法によれば、水槽内を仕切る仕切壁により無端状の循環流路が形成されこの循環流路を主要流路及びこの主要流路の端部同士を接続する平面視略半円状の円弧流路により構成しこの円弧流路に平面視円弧状の整流壁を備えたオシキデーションディッチにあって、既設の曝気撹拌装置を撤去し、新設の縦軸型曝気撹拌装置を、インペラが整流壁の下流側の端部より下流側の主要流路に位置するように設置するため、このインペラの回転によって、当該インペラより上流側で円弧流路の整流壁より内周側又は外周側の何れか一方の流路へその噴出流が向かうが、この噴出流は、インペラの側方に位置する逆流防止板により遮られて当該インペラより上流側へ向かうことが阻止され、これにより下流側に向かう良好な循環撹拌流が形成される。従って、円弧流路に整流壁を有するオシキデーションディッチであっても、槽内に効率良く循環撹拌流を形成できる縦軸型曝気撹拌装置を簡易に設置でき、低コストでの改修を可能となる。
【発明の効果】
【0014】
このように本発明によるオキシデーションディッチによれば、円弧流路に整流壁を有するオシキデーションディッチであっても、縦軸型曝気撹拌装置によって槽内に効率良く循環撹拌流を形成できる。また、本発明によるオキシデーションディッチの改修方法によれば、円弧流路に整流壁を有するオシキデーションディッチであっても、槽内に効率良く循環撹拌流を形成できる縦軸型曝気撹拌装置を簡易に設置でき、低コストでの改修を可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るオキシデーションディッチの改修方法により改修されたオキシデーションディッチを示す平面図である。
【図2】図1のII-II矢視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るオキシデーションディッチの改修方法を説明するための平面図であり、既設の曝気撹拌装置が横軸型曝気撹拌装置である場合の図である。
【図4】既設の曝気撹拌装置が斜軸型曝気撹拌装置である場合の図である。
【図5】図3、図4に続く改修方法を説明するための平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るオキシデーションディッチの改修方法により改修されたオキシデーションディッチを示す平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るオキシデーションディッチの改修方法を説明するための平面図であり、既設の曝気撹拌装置が横軸型曝気撹拌装置である場合の図である。
【図8】既設の曝気撹拌装置が斜軸型曝気撹拌装置である場合の図である。
【図9】図7、図8に続く改修方法を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明によるオキシデーションディッチ及びオキシデーションディッチの改修方法の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態に係るオキシデーションディッチを示す平面図、図2は、図1のII-II矢視図である。
【0018】
図1に示すように、オキシデーションディッチ100は、汚水と活性汚泥の混合液を収容する水槽1と、この水槽1内に無端状の循環流路を形成するように当該水槽内を仕切る仕切壁2と、混合液を曝気すると共に循環流路に沿って混合液の循環撹拌流を形成する縦軸型曝気撹拌装置3と、を具備している。
【0019】
水槽1は、その外周壁を形成する周囲壁4が平面視長円形を成し、仕切壁2は、長円形内の中央において、当該長円形が延びる横長方向に直線状に延びている。循環流路は、主要流路となる直線状の直線流路5と、この直線流路5,5の端部同士を接続する平面視略半円状の円弧流路6と、を備えている。この円弧流路6には、混合液が円滑に旋回するように平面視円弧状を成す整流壁7が設けられ、円弧流路6の整流壁7より内周側に、曲率が大きい内周側流路8aが形成されると共に、外周側に、これより曲率が小さい外周側流路8bが形成されている。
【0020】
縦軸型曝気撹拌装置3は、図1及び図2に示すように、曝気撹拌を行うための撹拌羽根であるインペラ9と、このインペラ9を下端に有し鉛直方向に延びる縦軸である回転軸10と、この回転軸10を回転駆動しインペラ9を当該回転軸10の軸線回りに回転するための電動機及び減速機等の駆動部11と、を備え、そのインペラ9が整流壁7の下流側の端部7aより下流側の直線流路5に位置し、端部7aの下流側近傍に位置するように配置されている。
【0021】
そして、駆動部11は、平板状の架台12の略中央に載置され、回転軸10は、架台12に設けられた開口を通して下方に延び、インペラ9は、水面付近に浸漬する配置とされている。
【0022】
ここで、円弧流路6にあっては、下流側へ向かう循環撹拌流が外周側流路8bを流れた方が、内周側流路8aを流れるよりも、一層円滑に旋回し一層効率良い循環撹拌流を形成することができるため、ここでは、そのような流れ(矢印参照)となるようにインペラ9は平面視反時計回りに回転する。
【0023】
架台12の上流側の端部には、逆流防止板13が垂下するように固定されている。この逆流防止板13は、円弧流路6の内周側流路8aの出口を塞ぐように設けられている。詳しくは、逆流防止板13は、図2に示すように、上下方向においてインペラ9の側方に位置し、インペラ9の回転により上流側へ向かって発生する噴出流を遮る(堰き止める)ために十分な程度の長さ(高さ)を有するものとされている。従って、当該上流側へ向かう噴出流が及ばない水深部、すなわち逆流防止板13の鉛直下側は、循環撹拌流が通過し得る領域とされている。
【0024】
なお、ここでは、図面理解の容易性を考慮して架台12及び逆流防止板13にはドットを付している。
【0025】
このように縦軸型曝気撹拌装置3は、その駆動部11が架台12に載置されると共に、この架台12に逆流防止板13が設けられて、一体のユニットとされている。そして、架台12を水槽1の周囲壁4と仕切壁2に亘って載置することで、インペラ9及び逆流防止板13が前述した所定位置に配置される。なお、水槽1の上記ユニット(架台12)及びその周辺部を除く部分は、水槽1の天井壁を成すスラブ14により上から覆われている。
【0026】
このような構成を有するオキシデーションディッチ100にあっては、ここでは、タイマー制御により、槽全体が、所定時間は無酸素処理槽とされ、これに続く所定時間は好気処理槽とされ、これを繰り返す構成とされている。
【0027】
具体的には、インペラ9は、例えば特開平11−290885号公報や特開2010−203351号公報等に開示されているように昇降可能とされ、槽全体を好気処理槽とする場合には、インペラ9を図2に示す高さ位置で所定に回転させ曝気撹拌を行うことで好気状態の好気処理槽とし、槽全体を無酸素処理槽とする場合には、インペラ9を曝気位置と同位置でゆっくり低速で回転させ酸素を巻き込まない無酸素撹拌を行うことで無酸素状態の無酸素処理槽とし、若しくは、インペラ9を下降させ完全に水没させて回転させ酸素を巻き込まない無酸素撹拌を行うことで無酸素状態の無酸素処理槽とする。そして、このように無酸素処理を行うことで脱窒を行い、好気処理を行うことで有機物を分解する。
【0028】
次に、このような構成を有する第1実施形態に係るオキシデーションディッチを得るためのオキシデーションディッチの改修方法について説明する。
【0029】
図3は、オキシデーションディッチの改修方法を説明するための平面図であり、既設の曝気撹拌装置が横軸型曝気撹拌装置である場合の図、図4は、既設の曝気撹拌装置が斜軸型曝気撹拌装置である場合の図、図5は、図3、図4に続く改修方法を説明するための平面図である。
【0030】
既設のオキシデーションディッチにあって、曝気撹拌装置として、図3に示すように、各直線流路5の円弧流路6寄りの位置に横軸型曝気撹拌装置90が各々用いられている場合には、当該既設の横軸型曝気撹拌装置90を撤去すると共に、図5に示すように、新設の縦軸型曝気撹拌装置3を設置すべくスラブ14の対応部分を撤去し(ここでは横軸型曝気撹拌装置90の撤去部分より図示左右方向のスラブをさらに撤去し)、架台12を設置するための開口15を各々設ける。なお、図4に示すように、各直線流路5の略中央位置に斜軸型曝気撹拌装置91が各々用いられている場合も同様に、当該既設の斜軸型曝気撹拌装置91を撤去すると共に、図5に示すように、新設の縦軸型曝気撹拌装置3を設置すべくスラブ14の対応部分を撤去し、架台12を設置するための開口15を各々設ける。なお、斜軸型曝気撹拌装置91を撤去した部分に対してはスラブ14により覆う。
【0031】
次いで、図5に示す開口15に対し、前述したように、架台12を水槽1の周囲壁4と仕切壁2に亘って載置する。すると、インペラ9及び逆流防止板13が上記所定位置にセットされ、図1に示すオキシデーションディッチ100が得られる。
【0032】
このようにして得られたオキシデーションディッチ100にあっては、縦軸型曝気撹拌装置3は、そのインペラ9が、円弧流路6の整流壁7の下流側の端部7aよりさらに下流側の直線流路5に位置するように設置されると共に、そのインペラ9が反時計回りに回転するため、インペラ9による上流側への噴出流は、当該インペラ9より上流側の円弧流路6の内周側流路8aへ向かう。
【0033】
このとき、噴出流は逆流防止板13により遮られてインペラ9より上流側へ向かうことが阻止されるため、矢印で示すように円弧流路6の外周側流路8bを通り下流側に向かう良好な循環撹拌流が形成される。従って、円弧流路6に整流壁7を有するオシキデーションディッチ100であっても、縦軸型曝気撹拌装置3によって槽内に効率良く循環撹拌流を形成できる。
【0034】
また、本実施形態のオキシデーションディッチ100にあっては、縦軸型曝気撹拌装置3と逆流防止板13は一体のユニットとされ、縦軸型曝気撹拌装置3の駆動部11を載置する架台12を、周囲壁4と仕切壁2に亘って載置することで、インペラ9及び逆流防止板13が所定位置に配置されるため、設置工事が非常に容易である。
【0035】
また、本実施形態のオキシデーションディッチの改修方法によれば、既設の曝気撹拌装置90(91)を撤去し、新設の縦軸型曝気撹拌装置3を、インペラ9が整流壁7の下流側の端部7aより下流側の直線流路5に位置するように設置すると共に、この設置によって上流側の円弧流路6の内周側流路8aへ向かうインペラ9による噴出流を逆流防止板13により遮り上流側へ向かうことを阻止し、これにより下流側に向かう良好な循環撹拌流を形成できるようにしているため、円弧流路6に整流壁7を有するオシキデーションディッチであっても、槽内に効率良く循環撹拌流を形成できる縦軸型曝気撹拌装置3を簡易に設置でき、低コストで改修できる。
【0036】
図6は、本発明の第2実施形態に係るオキシデーションディッチを示す平面図である。
【0037】
この第2実施形態のオキシデーションディッチ200が第1実施形態のオキシデーションディッチ100と違う点は、平面視馬蹄形の水槽21に対して適用した点である。
【0038】
具体的には、水槽21は、その外周壁を形成する周囲壁24が平面視馬蹄形を成し、仕切壁22は、馬蹄形内において内側の周囲壁(中央で横方向に延びる周囲壁)24aを外側から囲むようにU字状を成し、循環流路は、主要流路となる直線状の直線流路25と、この直線流路25,25の端部同士を接続する平面視略半円状の円弧流路26と、を備えている。この円弧流路26には、混合液が円滑に旋回するように平面視円弧状を成す整流壁27が設けられ(図示左端の円弧流路は除く)、円弧流路26の整流壁27より内周側に、曲率が大きい内周側流路28aが形成されると共に、外周側に、これより曲率が小さい外周側流路28bが形成されている。
【0039】
縦軸型曝気撹拌装置3、架台12及び逆流防止板13の構成は第1実施形態と同様であり、インペラ9は、平面視反時計回りに回転する。これらの縦軸型曝気撹拌装置3、架台12及び逆流防止板13を有するユニットは、ここでは、図示右側上下の円弧流路26寄りに、具体的には、そのインペラ9が、図示右側上下の整流壁27の下流側の端部27aより下流側の直線流路25に位置するように各々配置され、逆流防止板13は、第1実施形態と同様に、インペラ9の側方に位置し円弧流路26の内周側流路28aの出口を塞ぐように配設され、その鉛直下側の領域は開けられて循環撹拌流が流通可能とされている。そして、架台12を水槽21の周囲壁24(24a)と仕切壁22に亘って載置することで、インペラ9及び逆流防止板13が前述した所定位置に配置されている。このようなオキシデーションディッチ200にあっては、第1実施形態と同様に、タイマー制御により、所定時間ごとに槽全体が無酸素処理槽又は好気処理槽とされる。
【0040】
次に、このような構成を有する第2実施形態に係るオキシデーションディッチを得るためのオキシデーションディッチの改修方法について説明する。
【0041】
図7は、オキシデーションディッチの改修方法を説明するための平面図であり、既設の曝気撹拌装置が横軸型曝気撹拌装置である場合の図、図8は、既設の曝気撹拌装置が斜軸型曝気撹拌装置である場合の図、図9は、図7、図8に続く改修方法を説明するための平面図である。
【0042】
既設のオキシデーションディッチにあって、曝気撹拌装置として、図7に示すように、各直線流路25に横軸型曝気撹拌装置90が各々用いられている場合には、当該既設の横軸型曝気撹拌装置90を撤去すると共に、図9に示すように、新設の縦軸型曝気撹拌装置3を設置すべくスラブ14の対応部分を撤去し(ここでは図示右側の上下の横軸型曝気撹拌装置90の撤去部分が対象でこれより図示左右方向のスラブをさらに撤去し)、架台12を設置するための開口15を各々設ける。また、図示左側の上下の横軸型曝気撹拌装置90を撤去した部分に対してはスラブ14により覆う。なお、図8に示すように、各直線流路25の略中央位置に斜軸型曝気撹拌装置91が各々用いられている場合も同様に、当該既設の斜軸型曝気撹拌装置91を撤去すると共に、図9に示すように、新設の縦軸型曝気撹拌装置3を設置すべくスラブ14の対応部分を撤去し、架台12を設置するための開口15を各々設ける。因みに、斜軸型曝気撹拌装置91を撤去した部分に対してはスラブ14により覆う。
【0043】
次いで、図9に示す開口15に対し、第1実施形態と同様に、架台12を水槽21の周囲壁24(24a)と仕切壁22に亘って載置すると、インペラ9及び逆流防止板13が所定位置にセットされ、図6に示すオキシデーションディッチ200が得られる。
【0044】
このようにして得られたオキシデーションディッチ200にあっては、第1実施形態と同様に、インペラ9より上流側の円弧流路26の内周側流路28aへ向かう噴出流は逆流防止板13により遮られてインペラ9より上流側へ向かうことが阻止されるため、矢印で示すように円弧流路26の外周側流路28bを通り下流側に向かう良好な循環撹拌流が形成され、従って、円弧流路26に整流壁27を有するオシキデーションディッチ200であっても、縦軸型曝気撹拌装置3によって槽内に効率良く循環撹拌流を形成できる。
【0045】
また、第1実施形態と同様に、縦軸型曝気撹拌装置3と逆流防止板13は一体のユニットとされ、架台12を周囲壁24(24a)と仕切壁22に亘って載置することで、インペラ9及び逆流防止板13が所定位置に配置されるため、設置工事が非常に容易である。
【0046】
また、本実施形態のオキシデーションディッチの改修方法によれば、第1実施形態と同様に、既設の曝気撹拌装置90(91)を撤去し、新設の縦軸型曝気撹拌装置3を、インペラ9が整流壁27の下流側の端部27aより下流側の直線流路25に位置するように設置すると共に、この設置によって上流側の円弧流路26の内周側流路28aへ向かうインペラ9による噴出流を逆流防止板13により遮り上流側へ向かうことを阻止し、これにより下流側に向かう良好な循環撹拌流を形成できるようにしているため、円弧流路26に整流壁27を有するオシキデーションディッチであっても、槽内に効率良く循環撹拌流を形成できる縦軸型曝気撹拌装置3を簡易に設置でき、低コストで改修できる。
【0047】
さらにまた、本実施形態にあっては、横軸型曝気撹拌装置90、斜軸型曝気撹拌装置91に比して撹拌力が強い縦軸型曝気撹拌装置3を用いているため、その設置台数(位置)は、横軸型曝気撹拌装置90、斜軸型曝気撹拌装置91を用いていた既設の設備の半分以下で済むようになっている。
【0048】
なお、図6に示すように、周囲壁24aの図示左端部に近い内側の円弧流路26の下流側、具体的には、整流壁27の下流側の端部27aより下流側の直線流路25において符号Xで示す位置に、インペラ9が位置するように縦軸型曝気撹拌装置3をさらに設置しても良い。この場合も、外周側流路28bに循環撹拌流が流れるようにするため、位置Xのインペラ9の回転方向は他の位置のインペラ9とは逆の平面視時計回りとなり、逆流防止板13は、他の位置の逆流防止板13と同様に、内周側流路28aを塞ぐように設置される。因みに、この位置Xの縦軸型曝気撹拌装置3の能力を大きくすれば、図6に示した図示右側上下の縦軸型曝気撹拌装置3,3は無くても良い場合がある。
【0049】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好ましいとして、タイマー制御により、所定時間ごとに槽全体を無酸素処理槽又は好気処理槽としているが、槽全体を、全部のインペラ9が上記のように曝気撹拌を行うことにより好気処理槽としても良い。また、上流側のインペラ9から下流側のインペラ9までを、上流側のインペラ9が上記のように無酸素撹拌を行うことにより無酸素領域とし、下流側のインペラ9から上流側のインペラまでを、下流側のインペラ9が上記のように曝気撹拌を行うことにより好気領域としても良い。
【0050】
また、上記実施形態においては、槽をスラブ14により覆うようにしているが、何らかで覆蓋しても良い。
【0051】
また、上記実施形態では、混合液が円滑に旋回し効率良く循環撹拌流を形成できるように、下流側へ向かう循環撹拌流を外周側流路8b,28bに流し、逆流防止板13を内周側流路8a,28aを遮るように設けているが、インペラ9の回転方向を上記とは逆とし、下流側へ向かう循環撹拌流を内周側流路8a,28aに流すと共に、逆流防止板13を外周側流路8b,28bを遮るように設けても良い。
【0052】
また、循環撹拌流の流れる向きが上記実施形態とは逆の場合には、上記インペラは、整流壁の下流側の端部より下流側の主要流路に位置し、その回転方向は上記とは逆となる。具体的には、例えば上記実施形態の平面視長円形の槽にあっては、循環撹拌流の流れる向きを平面視反時計回りとしているが、時計回りの流れの場合には、上記インペラは、整流壁の下流側の端部より下流側の主要流路に位置し、その回転方向は時計回りとなる。そして、その場合、逆流防止板は内周側流路を遮るように設けることになる。また、循環撹拌流の流れる向きを時計回りとしインペラの回転方向を反時計回りとした場合には、逆流防止板は外周側流路を遮るように設けることになる。
【0053】
また、上記実施形態においては、オキシデーションディッチを代表する平面視長円形や馬蹄形の水槽を有するオキシデーションディッチに対する適用を述べているが、直線状の主要流路及び直線状の仕切壁を有せずに曲線状(平面視円弧状;約2/3円)の主要流路及び曲線状(円弧状)の仕切壁を具備し円弧流路に平面視円弧状の整流壁を備えた所謂U字形の水槽を有するオキシデーションディッチに対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1,21…水槽、2,22…仕切壁、3…縦軸型曝気撹拌装置(新設の曝気撹拌装置)、4,24,24a…周囲壁、5,25…直線流路(主要流路)、6,26…円弧流路、7,27…整流壁、7a,27a…整流壁の下流側の端部、8a,28a…内周側流路、8b,28b…外周側流路、9…インペラ、10…回転軸(縦軸)、11…駆動部、12…架台、13…逆流防止板、90,91…既設の曝気撹拌装置、100,200…オキシデーションディッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水と活性汚泥の混合液を収容する水槽と、前記水槽内に無端状の循環流路を形成するように当該水槽内を仕切る仕切壁と、前記混合液を曝気すると共に前記循環流路に沿って前記混合液の循環撹拌流を形成する曝気撹拌装置と、を具備し、前記循環流路は、主要流路と、前記主要流路の端部同士を接続する平面視略半円状の円弧流路と、を備え、前記円弧流路には、前記混合液が円滑に旋回するように平面視円弧状を成す整流壁が設けられたオキシデーションディッチにおいて、
前記曝気撹拌装置は、縦軸に設けられたインペラが前記混合液に浸漬し前記縦軸の軸線回りに回転することで曝気及び循環撹拌流の形成を行う縦軸型曝気撹拌装置であり、
前記縦軸型曝気撹拌装置は、前記インペラが前記整流壁の下流側の端部より下流側の前記主要流路に位置するように設置され、
前記インペラの側方に位置し、前記円弧流路の前記整流壁より内周側又は外周側の何れか一方の流路へ向かう前記インペラの回転による噴出流を遮る逆流防止板を備えたことを特徴とするオキシデーションディッチ。
【請求項2】
前記主要流路は、直線流路であることを特徴とする請求項1記載のオキシデーションディッチ。
【請求項3】
前記逆流防止板は、前記円弧流路の前記整流壁より内周側の流路への前記噴出流を遮ることを特徴とする請求項1又は2記載のオキシデーションディッチ。
【請求項4】
前記縦軸型曝気撹拌装置と前記逆流防止板は一体のユニットとされ、
前記縦軸型曝気撹拌装置の駆動部を載置する架台を、前記水槽の外周壁を形成する周囲壁と前記仕切壁に亘って載置することで、前記インペラ及び前記逆流防止板が所定位置に配置されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のオキシデーションディッチ。
【請求項5】
汚水と活性汚泥の混合液を収容する水槽と、前記水槽内に無端状の循環流路を形成するように当該水槽内を仕切る仕切壁と、前記混合液を曝気すると共に前記循環流路に沿って前記混合液の循環撹拌流を形成する曝気撹拌装置と、を具備し、前記循環流路は、主要流路と、前記主要流路の端部同士を接続する平面視略半円状の円弧流路と、を備え、前記円弧流路には、前記混合液が円滑に旋回するように平面視円弧状を成す整流壁が設けられたオキシデーションディッチの改修方法であって、
既設の前記曝気撹拌装置を撤去し、
新設の曝気撹拌装置を、縦軸に設けられたインペラが前記混合液に浸漬し前記縦軸の軸線回りに回転することで曝気及び循環撹拌流の形成を行う縦軸型曝気撹拌装置とし、
前記縦軸型曝気撹拌装置を、前記インペラが前記整流壁の下流側の端部より下流側の前記主要流路に位置するように設置し、且つ、前記インペラの側方で、前記円弧流路の前記整流壁より内周側又は外周側の何れか一方の流路へ向かうインペラの回転による噴出流を遮る逆流防止板を設置することを特徴とするオキシデーションディッチの改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−210601(P2012−210601A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78273(P2011−78273)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(507036050)住友重機械エンバイロメント株式会社 (88)
【Fターム(参考)】