説明

オキシムエステル化合物及び該化合物を含有する光重合開始剤

【課題】 高感度であり、重合物を着色したり重合物及び装置等を汚染したりするおそれのない、光重合開始剤を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(I)で表されるオキシムエステル化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物に用いられる光重合開始剤として有用な新規なオキシムエステル化合物、該化合物を有効成分とする光重合開始剤、及びエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物に該光重合開始剤を含有させてなる感光性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性組成物は、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物に光重合開始剤を加えたものであり、この感光性組成物に405nmや365nmの光を照射することによって重合硬化させることができるので、光硬化性インキ、感光性印刷版、各種フォトレジスト等に用いられている。短波長の光源に感度を持つ感光性組成物は微細な印刷が可能であるため、特に365nmの光源に優れた感度を有する光重合開始剤が望まれている。
【0003】
この感光性組成物に用いられる光重合開始剤として、下記特許文献1には、オキシムエステル誘導体を用いることが提案されている。また、下記特許文献2〜4にもオキシムエステル化合物が記載されている。しかし、これらの公知のオキシムエステル化合物は、光重合開始剤として用いた場合に、露光時の光により発生する分解物がマスクに付着し、その結果、焼付け時のパターン形状不良を引き起こし、収率の低下を招いていた。また、分解温度が240℃以下であり、現像処理後の熱硬化工程において光重合開始剤が分解することにより感光性組成物の密着性及び耐アルカリ性を低下させていた。そのため、熱分解温度が高く、光照射による開始剤の分解物が揮散して重合物や装置等を汚染したりしない光重合開始剤が望まれていた。
【0004】
また、下記特許文献5〜7には、より高い反応性を有するO−アシルオキシム光開始剤が提案されている。しかし、これらのO−アシルオキシム光重合開始剤も、マスク汚れや耐熱性が不十分で耐アルカリ性を低下させていた。また、特許文献7には、カルバゾリル構造を有するO−アシルオキシム化合物が記載されているが、本発明者らが検討の結果、本発明の化合物に類似のシクロアルキルオキシベンゾイルで置換されたカルバゾリル化合物は、シクロアルキルエーテルが2級水素を持つために合成できなかった。
【0005】
【特許文献1】米国特許第3558309号明細書
【特許文献2】米国特許第4255513号明細書
【特許文献3】米国特許第4590145号明細書
【特許文献4】米国特許第4202697号明細書
【特許文献5】特開2000−80068号公報
【特許文献6】特開2001−233842号公報
【特許文献7】国際公開02/100903号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、上述したように、得られる重合物を着色したり重合物や装置等を汚染したりすることがなく且つ現像性、密着性、耐アルカリ性、感度に優れた光重合開始剤がこれまでなかったということである。
【0007】
本発明の目的は、高感度であり、重合物を着色したり重合物及び装置等を汚染したりするおそれのない、光重合開始剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記一般式(I)で表されるオキシムエステル化合物及び該化合物を有効成分とする光重合開始剤を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
【化1】

【発明の効果】
【0010】
本発明のオキシムエステル化合物は、高感度であり、且つ熱分解温度が高く感光性組成物の密着性、耐アルカリ性を損なうことがなく、更に光照射で発生する分解物がマスクに付着することがない、光重合開始剤として有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のオキシムエステル化合物及び該化合物を有効成分とする光重合開始剤について詳細に説明する。
【0012】
上記一般式(I)中、Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、Xで表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、第三オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ビニル、アリル、ブテニル、エチニル、プロピニル、メトキシエチル、エトキシエチル、プロピロキシエチル、メトキシエトキシエチル、エトキシエトキシエチル、プロピロキシエトキシエチル、メトキシプロピル、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、パーフルオロエチル、2−(ベンゾオキサゾール−2’−イル)エテニル等が挙げられる。
【0013】
R及びR’で表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、第三オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ビニル、アリル、ブテニル、エチニル、プロピニル、メトキシエチル、エトキシエチル、プロピロキシエチル、メトキシエトキシエチル、エトキシエトキシエチル、プロピロキシエトキシエチル、メトキシプロピル、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、パーフルオロエチル、2−(ベンゾオキサゾール−2’−イル)エテニル等が挙げられ、R及びR’で表されるアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、エチルフェニル、クロロフェニル、ナフチル、アンスリル、フェナンスレニル等が挙げられ、R及びR’で表されるアラルキル基としては、例えば、ベンジル、クロロベンジル、α−メチルベンジル、α、α−ジメチルベンジル、フェニルエチル、フェニルエテニル等が挙げられ、R及びR’で表される複素環基としては、例えば、ピリジル、ピリミジル、フリル、チオフェニル等が挙げられ、また、R及びR’が一緒になって形成しうる環としては、例えば、ピペリジン環、モルホリン環等が挙げられる。
【0014】
Aで表されるシクロアルキルアルキル基としては、シクロプロピルメチル、2−シクロプロピルエチル、3−シクロプロピルプロピル、シクロブチルメチル、2−シクロブチルエチル、3−シクロブチルプロピル、シクロペンチルメチル、2−シクロペンチルエチル、3−シクロペンチルプロピル、シクロヘキシルメチル、3−シクロヘキシルプロピル、2−クロロ−3−シクロヘキシルプロピル等が挙げられる。
【0015】
本発明のオキシムエステル化合物の中でも、上記一般式(I)において、Xがアルキル基、特にメチル基であるもの;R1がアルキル基、特にメチル基であるもの;R2がアルキル基、特にメチル基であるもの;R3がアルキル基、特にエチル基であるもの;Aがシクロアルキルアルキル基、特にシクロヘキシルメチル基であるもの;mが1であるものが好ましい。
【0016】
従って、上記一般式(I)で表される本発明のオキシムエステル化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物No.1〜No.3の化合物が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により何ら制限を受けるものではない。
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
上記一般式(I)で表される本発明のオキシムエステル化合物は、一般的に以下の方法により製造することができる。まず、カルバゾール化合物1とカルボン酸クロリド2及びXの1つがハロゲン原子であるカルボン酸クロリド3を同時又は順次に塩化亜鉛の存在下に反応させてアシル化合物4を得る。次いで、アシル化合物4とアルコール化合物5とをカリウム−t−ブトキシドの存在下に反応させてアシル体6を得る。アルコール化合物は、アシル化反応を行う前にカルボン酸クロリドに付加させてもよい。次いで、アシル体6と塩酸ヒドロキシルアミンとをDMFの存在下に反応させてオキシム化合物7を得る。次いで、オキシム化合物7と酸無水物8あるいは酸クロライド8’を反応させて上記一般式(I)で表される本発明のオキシムエステル化合物を得る。例えば、化合物No.1は、下記[化5]の反応式で示される方法によって製造することができる。
【0021】
【化5】

【0022】
本発明のオキシムエステル化合物は、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の光重合開始剤として有用である。
【0023】
次に、本発明の感光性組成物について説明する。
【0024】
エチレン性不飽和結合を有する上記重合性化合物としては、従来、感光性組成物に用いられているものを用いることができる。即ち、エチレン性不飽和結合を有する上記重合性化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、第二ブチル(メタ)アクリレート、第三ブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ(エトキシ)エチル(メタ)アクリレート、プロピルオキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ(プロピルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルエチル)イソシアヌラート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多価アルコールをα,β−不飽和カルボン酸でエステル化して得られる化合物;アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、イソブチルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、ビニルクロリド、ビニリデンクロリド、ジビニルベンゼン、ジビニルスクシナート、ジアリルフタラート、トリアリルホスファート、トリアリルイソシアヌラート等が挙げられる。これらの中でも、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートに、本発明のオキシムエステル化合物を有効成分とする光重合開始剤は好適である。
【0025】
また、エチレン性不飽和結合を有する上記重合性化合物とともに、熱可塑性有機重合体を用いることによって、硬化物の特性を改善することもできる。該熱可塑性有機重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−エチルアクリレート共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸−メチルメタクリレート共重合体、ポリビニルブチラール、セルロースエステル、ポリアクリルアミド、飽和ポリエステル、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの中でも、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸−メチルメタクリレート共重合体、エポキシ樹脂が好ましい。
【0026】
また、本発明の感光性組成物には、光重合開始剤として、本発明のオキシムエステル化合物の他に、必要に応じて他の光重合開始剤を併用することも可能であり、その他の光重合開始剤を併用することによって著しい相乗効果を奏する場合もある。
【0027】
本発明のオキシムエステル化合物と併用できる光重合開始剤としては、従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルシクロヘキサン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、1−ベンジル−1−ジメチルアミノ−1−(4'−モルホリノベンゾイル)プロパン、2−モルホリル−2−(4'−メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、チオキサントン、1−クロル−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチルアントラキノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルスルフィド、ベンゾインブチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−ベンゾイルプロパン、2−ヒドロキシ−2−(4'−イソプロピル)ベンゾイルプロパン、4−ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4−フェノキシベンゾイルジクロロメタン、ベンゾイル蟻酸メチル、1,7−ビス(9'−アクリジニル)ヘプタン、9−n−ブチル−3,6−ビス(2'−モルホリノイソブチロイル)カルバゾール、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1−2’−ビイミダゾール等が挙げられる。
【0028】
また、本発明の感光性組成物には、必要に応じて、p−アニソール、ハイドロキノン、ピロカテコール、第三ブチルカテコール、フェノチアジン等の熱重合抑制剤;可塑剤;接着促進剤;充填剤等の慣用の添加物を加えることができる。
【0029】
本発明の感光性組成物には、通常、必要に応じて前記の各成分(本発明のオキシムエステル化合物及びエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物)を溶解または分散しえる溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、クロロホルム、塩化メチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノールを加えることができる。
【0030】
本発明の感光性組成物は、ロールコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の手段で、金属、紙、プラスチック等の支持基体上に適用される。また、一旦フィルム等の支持基体上に施した後、他の支持基体上に転写することもでき、その適用方法に制限はない。
【0031】
本発明の感光性組成物は、光硬化性塗料、光硬化性インキ、光硬化性接着剤、印刷版、印刷配線板用フォトレジスト等の各種の用途に使用することができ、その用途に特に制限
はない。
【0032】
また、本発明のオキシムエステル化合物を含有する感光性組成物を硬化させる際に用いられる活性光の光源としては、波長300〜450nmの光を発光するものを用いることができ、例えば、超高圧水銀、水銀蒸気アーク、カーボンアーク、キセノンアーク等を用いることができる。
【0033】
尚、本発明の感光性組成物において、光重合開始剤の添加量は特に限定されるものではないが、本発明のオキシムエステル化合物は、エチレン性不飽和結合を有する上記重合性化合物100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは5〜30重量部である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
[実施例1]化合物No.1の製造
<ステップ1>4−フルオロ−2−メチル安息香酸クロリドの製造
下記構造を持つ4−フルオロ−2−メチル安息香酸クロリドを、以下のようにして製造した。
【0036】
【化6】

【0037】
窒素雰囲気下で4−フルオロ−2−メチル安息香酸20.0g(0.13モル)、N,N−ジメチルホルムアミド0.10g(1.3ミリモル)及びトルエン134gを仕込み、室温にて塩化チオニル23.2g(0.20モル)を滴下し、60〜65℃に昇温して1時間攪拌した。溶媒を留去し、減圧下、50℃で乾燥して褐色液体19.7g(収率88%、GC純度99%)を得た。
【0038】
得られた褐色液体のIR測定の結果は次の通りであり、該褐色液体は目的物であることを確認した。
IR測定:(cm-1
2985、2931、1766、1606、1579、1486、1450、1384、1240、1189、1105、964、869、823
【0039】
<ステップ2>アシル体の製造
下記アシル体を、以下のようにして製造した。
【0040】
【化7】

【0041】
モノクロロベンゼン33.1g、N−エチルカルバゾール21.5g(0.11モル)及び塩化亜鉛1.40g(10ミリモル)を混合して80℃まで昇温し、4−フルオロ−2−メチル安息香酸クロリド17.3g(0.10モル)を滴下した。80〜85℃で1時間攪拌後、室温まで冷却した。n−ヘプタン33.1g及び水16.5gを加えて油層を分離し、1%水酸化ナトリウム水溶液8.30gを加えて中和し、さらに水40.0gを2回に分けて加えて油層を洗浄した。油層を分離してn−ヘプタンを留去し、モノクロロベンゼン溶液50.0gを得た。得られたモノクロロベンゼン溶液にモノクロロベンゼン90.0gを滴下し、塩化アルミニウム40.0gを加えて10〜15℃に冷却した。塩化アセチル9.90g(0.13モル)を10〜20℃で滴下し、室温で1時間攪拌した。反応液を、二塩化エタン224g及び氷水134gを混合したものに25〜30℃で滴下した。油層を分離し、5%HCl水溶液40g、水40g、2%NaOH水溶液40gの順に洗浄した。二塩化エタンを留去し、酢酸n−プロピル74.6gから再結晶を行った。ろ過、酢酸n−プロピル/n−ヘプタン混合溶媒による洗浄を経て、淡黄色固体22.4g(収率60%、HPLC純度98%)を得た。
【0042】
得られた淡黄色結晶は、融点175℃で、1H−NMRのケミカルシフト及びIRの測定結果は次の通りであり、目的物であるアシル体であることを確認した。
1H−NMR測定:(ppm)
8.70(s:1H)、8.52(s:1H)、8.17(d:1H)、8.09(d:1H)、7.50(s:1H)、7.48(d:1H)、7.39(d:1H)、7.05(d:1H)、7.00(d:1H)、4.45(d:2H)、2.73(s:3H)、2.37(s:3H)、1.49(t:3H)
IR測定:(cm-1
3448、3054、2064、1662、1625、1589、1567、1484、1386、1305、1245、1153、1124、1022、809
【0043】
<ステップ3>化合物No.1の製造
窒素気流下、シクロヘキサンメタノール57.1g(0.5モル)及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン66.0gを仕込み、30〜40℃でカリウム−t−ブトキシド8.4g(0.075モル)を加えて73〜75℃まで昇温した。続いてステップ2で得られたアシル体の18.7g(0.05モル)を加えて1時間攪拌した。塩酸ヒドロキシルアミン6.3g(0.09モル)を加えて73〜75℃で1時間攪拌後、室温まで冷却した。酢酸n−プロピル48.2g及び4%水酸化カリウム水溶液24.1gを加えて油層を分離し、水75gを2回に分けて加えて油層を洗浄した。油層を分離して脱水後、60〜70℃で無水酢酸6.1g(0.06モル)を加え、80〜90℃で1時間攪拌した。室温まで冷却すると淡黄色固体が析出した。ろ過、酢酸n−プロピル/n−ヘプタンによる洗浄を経て、淡黄色結晶10g(収率38%、HPLC純度99%<)を得た。該淡黄色結晶について分析を行ったところ、該淡黄色結晶は目的物である化合物No.1であることが確認された。分析結果を以下に示す。
【0044】
(分析結果)
(1)融点:148.2℃
(2)1H−NMR測定:(ppm)
8.50(d:1H)、8.44(d:1H)、8.08(dd:1H)、7.98(dd:1H)、7.47(d:1H)、7.45(d:1H)、7.37(d:1H)、6.86(d:1H)、6.78(dd:1H)、4.43(q:2H)、3.84(d:2H)、2.52(s:3H)、2.40(s:3H)、2.30(s:3H)、1.92‐1.71(m:6H)、1.48(t:3H)1.38−1.04(m:5H)
(3)IR測定:(cm‐1
2927、2853、1751、1649、1626、1605、1590、1568、1488、1450、1376、1308、1275、1244、1149、1129、1044、1009、983、941、894、812、772
(4)UVスペクトル測定(アセトニトリル:水=9:1)
λmax=273、299、341nm
(5)分解温度測定(窒素ガス雰囲気下、昇温速度10℃/分、5%重量減少温度)
241.2℃
【0045】
[実施例2]感光性組成物No.1の製造
アクリル系共重合体14gに対し、トリメチロールプロパントリアクリレート 5.9g、実施例1で得られた化合物No.1の2.7g 及びエチルセロソルブ 79gを加えて良く攪拌し、感光性組成物No.1を得た。
尚、上記アクリル系共重合体は、メタクリル酸20質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート15質量部、メチルメタクリレート10質量部及びブチルメタクリレート55質量部をエチルセロソルブ300質量部に溶解し、窒素雰囲気下でアゾビスイソブチルニトリル0.75質量部を加えて70℃で5時間反応させることにより得られたものである。
【0046】
[実施例3]感光性組成物No.2の製造
アクリル系共重合体7.2gに対し、トリメチロールプロパントリアクリレート 4.3g、実施例1で得られた化合物No.1の2.0g 及びエチルセロソルブ 87gを加えて良く攪拌し、感光性組成物No.2を得た。
【0047】
[実施例4]感光性組成物No.3の製造
スチレン−アクリル系感光性共重合体14gに対し、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 6.0g、実施例1で得られた化合物No.1の1.3g 、2,2−ビス(2−クロロフェニル)− 4,5,4',5'−テトラフェニル− 1−2'−ビイミダゾール 1.3g及びエチルセロソルブ83gを加えて良く攪拌し、感光性組成物No.3を得た。
尚、上記スチレン−アクリル系感光性共重合体は、スチレン26.3質量部、2−ヒドロキシメタクリレート43.8質量部、メタクリル酸35質量部及びメタクリル酸エチル70質量部をエチルセロソルブ175質量部に溶解し、窒素雰囲気下でアゾビスイソブチルニトリル0.75質量部を加え90℃で5時間反応させ、次いで、イソシアネートエチルメタクリレート23.5質量部、オクチル酸錫0.11質量部をエチルセロソルブ20質量部で溶解したものを約10分かけて滴下し、滴下後2時間反応させることにより得られたものである。
【0048】
[実施例5]感光性組成物No.4の製造
スチレン−アクリル系感光性共重合体12gに対し、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート 8.1g、実施例1で得られた化合物No.1の2.5g、エチルセロソルブ47g 及びシクロヘキサノン 30gを加えて良く攪拌し、感光性組成物No.4を得た。
【0049】
[実施例6]感光性組成物No.5の製造
アクリル系共重合体20gに対し、トリメチロールプロパントリアクリレート 8.7g、実施例1で得られた化合物No.1の2.2g 、ビスフェノールA型エポキシ樹脂4.6g及びエチルセロソルブ 65gを加えて良く攪拌し、感光性組成物No.5を得た。
【0050】
[比較例1]感光性組成物No.6の製造
実施例2で用いたアクリル系共重合体14gに対して、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート5.9g、比較化合物1(下記[化8])2.1g及びエチルセロソルブ78gを加えてよく攪拌し、感光性組成物No.6を得た。
【0051】
【化8】

【0052】
[比較例2]感光性組成物No.7の製造
アクリル系共重合体の代わりに実施例4で用いたスチレン−アクリル系感光性共重合体を用いた以外は、比較例1と同一の条件で感光性組成物No.7を得た。
【0053】
[比較例3]感光性組成物No.8の製造
実施例2で用いたアクリル系共重合体7.2gに対して、トリメチロールプロパントリアクリレート4.3g、比較化合物2(下記[化9])1.5g及びエチルセロソルブ87gを加えて良く攪拌し、感光性組成物No.8を得た。
【0054】
【化9】

【0055】
[比較例4]感光性組成物No.9の製造
アクリル系共重合体の代わりに、実施例4で用いたスチレン−アクリル系感光性共重合体を用いた以外は、比較例3と同一の条件で感光性組成物No.9を得た。
【0056】
得られた感光性組成物の評価は以下のようにして行った。すなわち、基板上にr−グリシドキシプロピルメチルエトキシシランをスピンコートして良くスピン乾燥させた後、上記感光性組成物No.1〜9をスピンコート(1300r.p.m、50秒間)し乾燥させた。70℃で20分間プリベークを行った後、ポリビニルアルコール5質量%溶液をコートして酸素遮断膜とした。70℃20分間の乾燥後、所定のマスクを用い、光源として超高圧水銀ランプを用いて露光後、2.5%炭酸ナトリウム溶液に25℃で30秒間浸漬して現像し、良く水洗した。水洗乾燥後、230℃で1時間ベークしてパターンを定着させた。尚、露光量は、80mJ/cm2 であった。得られたパターンについて、以下の評価を行った。各感光性組成物に用いた光重合開始剤とその分解温度および各種評価結果を表1に示す。
【0057】
<密着性>
JIS D 0202の試験方法に従い、露光現像した後200℃で30分間加熱した塗膜に基盤目状にクロスカットを入れ、次いでセロハンテープによってピーリングテストを行い、基盤目の剥離の状態を目視により評価した。全く剥離が認められなかったものを○、剥離が認められたものを×とした。
<耐アルカリ性>
現像露光した後、200℃で30分間加熱処理を行った。加熱処理後の塗膜をa)5%NaOHaq.中24時間、b)4%KOHaq.中50℃で10分間、c)1%NaOHaq.中80℃で5分間の条件で浸漬し、浸漬後の外観を目視により評価した。外観変化もなくレジストの剥離も全くなかったものを○、レジストの浮きが見られたものを△、レジストの剥離が認められたものを×とした。
<感度>
露光量を、50mJ/cm2で行った以外は、上記の現像性の試験と同様にして露光部の形状がマスクの形状に一致するものを5、マスクの形状に対して面積で5%以下ではあるが欠落が認められるものを4、面積で5〜20%の欠落があるものを3、面積で20〜50%の欠落があるものを2、面積で50%より欠落が大きいものを1として5段階で評価した。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例1〜6及び比較例1〜4より明らかなように本発明のオキシムエステル化合物を用いた感光性組成物の密着性は公知のオキシムエステル化合物の場合よりも同等又は優れて、耐アルカリ性では優れている。特に比較例1及び2より密着性、耐アルカリ性に優れており、比較化合物1との基本的な性能差であるか、比較化合物1の耐熱性が低いために230℃での熱硬化処理において比較化合物1が分解したために感光性組成物の性能が低下したと考えられる。本発明のオキシムエステル化合物は、分解温度が240℃以上と公知のオキシムエステル化合物より9〜50℃耐熱性に優れ、熱硬化処理温度において安定である。
【0060】
[実施例7]露光処理における昇華性評価
化合物No.1の開始剤0.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gに溶解し、アクリル系重合体(実施例2に同じ)0.5gを加え、混合したものを直径70mmのシャーレに入れて70℃で12時間で乾燥した。シャーレに100×100mmの石英板を蓋になるように乗せて10mJ/cm2で2時間露光した。石英版への附着物の多少により昇華性を評価した。附着物は認められなかった。露光処理前後の石英板の写真を図1及び図2に示す。
【0061】
[比較例5]比較化合物における昇華性評価
化合物No.1を比較化合物2にかえた以外は、実施例7と同様にして附着物を評価した。多数の附着物があった。露光処理前後の石英板の写真を図3及び図4に示す。
【0062】
図1は実施例7に用いた石英板の露光前の写真であり、図2は実施例7に用いた石英板の露光後の写真である。図3は比較例5に用いた石英板の露光前の写真であり、図4は比較例5に用いた石英板の露光後の写真である。図1、図2、図3の石英板には附着物は認められない。図4では無数の結晶状の附着物が認められる。
【0063】
実施例7および比較例5から本発明の化合物は露光後の昇華物がなく、マスク汚れがないと推測できる。一方、公知の光開始剤では昇華物が多量にあり、マスク汚れを起こすと推測できる。よって、本発明の光開始剤を用いた硬化性組成物は連続使用可能であるが、従来の光開始剤を用いた場合はマスクなど装置の洗浄が必要になるので、本発明の光開始剤を用いることにより生産性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は実施例7に用いた石英板の露光前の写真である。
【図2】図2は実施例7に用いた石英板の露光後の写真である。
【図3】図3は比較例5に用いた石英板の露光前の写真である。
【図4】図4は比較例5に用いた石英板の露光後の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるオキシムエステル化合物。
【化1】

【請求項2】
Xがアルキル基であることを特徴とする請求項1記載のオキシムエステル化合物。
【請求項3】
1がアルキル基であることを特徴とする請求項1又は2記載のオキシムエステル化合物。
【請求項4】
2がアルキル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオキシムエステル化合物。
【請求項5】
3がアルキル基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオキシムエステル化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のオキシムエステル化合物を有効成分とする光重合開始剤。
【請求項7】
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物に、請求項6に記載の光重合開始剤を含有させてなる感光性組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−160634(P2006−160634A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351551(P2004−351551)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000000387)旭電化工業株式会社 (987)
【Fターム(参考)】