説明

オキセタン基含有(メタ)アクリラートの製造方法

本発明は、高純度でかつ製造の間での最小の色の増加でのオキセタン基含有(メタ)アクリラートの製造方法に関する。本願発明による方法において、触媒として複数のジルコニウム化合物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキセタン基含有メタクリラートを、高い純度でかつその製造の間に最小の色の増加で製造する方法及びその使用に関する。
【0002】
(メタ)アクリレートは多様な適用分野を有する。(メタ)アクリレートは、重合反応において、例えばポリメタクリレートに変換することができるモノマーである。しかしながら、(メタ)アクリレートポリマーは、着色剤、塗料、被覆等における結合剤又は添加剤としても使用することができる。
【0003】
JP 200063371では、トリメチロールプロパンオキセタン−メタクリラート(3−メタクリルオキシメチル−3−エチルオキセタン)の合成を記載し、スペーサーを含有するモノマーも含まれている。このスペーサーは、例えばアルコキシラート、特にトリエチレングリコールから構成される。前記発明にとって、トリメチロールプロパンオキセタンのより高いエトキシル化度が重要である、それというのもn≧3を有しかつ分布を有するアルコールはポリマーの状態に分類され、従って相応するメタクリラートでもある。この製造は塩基性触媒、アルカリ金属アルコラート及びスズ化合物の存在で行われる。前記触媒の場合に長い反応時間が観察され、トリメチロールプロパンオキセタン−メタクリラートの場合には、高い純度を達成するために蒸留が必要である。
【0004】
J. Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 41 , p. 469 - 475 (2003)及びEP 867443には、(メタ)アクリル酸クロリドを介した3−(メタ)アクリルオキシメチル−3−エチルオキセタンの製造が記載されている。しかしながら、この方法は工業的使用のためには高価すぎ、さらにその収率も低い。
【0005】
JP 47025342は、ナトリウムメタクリラート及び3−エチル−3−クロロメチルオキセタンから出発してアミン触媒の存在でトリメチロールプロパンオキセタンメタクリラートの合成を記載している。この場合でも収率は低い。
【0006】
Polymer Preprints 2004, 45(2), p. 24には、チタナート触媒を用いたエトキシル化されたトリメチロールプロパンオキセタン−アクリラートの製造が記載されている。もちろん、着色の原因となる安定剤が使用され、同様に共沸剤も使用される。さらに、この生成物は精製のために付加的な作業工程で水−エタノール混合物で抽出される。比較例においては、チタナート触媒を用いた変更された方法が取り上げられている。煩雑な作業工程は、この方法の経済性に不利な影響を及ぼす。
【0007】
本発明の課題は、オキセタン基含有(メタ)アクリレートを高純度かつ高収率で製造することであった。
【0008】
前記課題は、ジルコニウム触媒を使用し、引き続き残留モノマーを混合物から蒸留により除去することを特徴とするオキセタン基含有メタクリラートの製造方法により解決される。
【0009】
(メタ)アクリラートという表現は、ここでは、メタクリラート、例えばメチルメタクリラート、エチルメタクリラート等も、アクリラート、例えばメチルアクリラート、エチルアクリラート等も、この両方からなる混合物をも意味する。
【0010】
意外にも、エトキシル化されたトリメチロールプロパンオキセタンを(メタ)アクリラートと、ジルコニウム触媒の存在で反応させる場合に良好な収率を達成できることが見出された。さらに高い純度の生成物を製造できる。
【0011】
意外にも、ジルコニウム触媒の使用により、前記生成物の色数は不利な影響を及ぼされないことが見出された。前記生成物の色数はモノマーの色数に相当する。
【0012】
さらに、生成物中の高沸点の同じ濃度で、低沸点物の濃度を著しく低減できることが見出された。
【0013】
触媒として複数のジルコニウム化合物が使用される。特に、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナートが有利である。
【0014】
この触媒量はアルコールの量に対して0.01〜5%である。
【0015】
オキセタン基含有アルコールは、1箇所置換されるか又は数箇所置換されていてもよく、かつ1つ以上のアルコール性基を有することができる。特に、エトキシル化されたトリメチロールプロパンオキセタンを使用するのが有利である。
【0016】
(メタ)アクリラートとして、全てのメタクリラート、例えばメチルメタクリラート、エチルメタクリラート等を使用することができる。しかしながら、アクリラート、例えばメチルアクリラート、エチルアクリラート等、並びにこれらの混合物も使用することができる特に、メチルメタクリラートが有利である。
【0017】
前記の反応は、有利に塔中で行われる。これらの出発物質を装入し、反応混合物の脱水のために、前記塔の塔頂温度を、使用したモノマー−水−共沸混合物に応じて設定する。前記塔頂温度は、例えばメチルメタクリラートの場合には、約100℃である。
【0018】
短い冷却期間の後に、前記触媒及び留去された水−モノマー共沸混合物に相応する量の(メタ)アクリラートを添加し、引き続きこの反応混合物を再び加熱する。(メタ)アクリラートと、前記(メタ)アクリラートに基づくアルコールとからなる生じた共沸混合物を分離する。この温度を再び高め、この反応を塔頂の閉鎖時に完了させた。
【0019】
反応混合物の処理のために触媒を沈殿させ、濾過により前記触媒を除去し、過剰量のモノマーを留去する。
【0020】
この特に低い色数は、本発明によるオキセタン基含有(メタ)アクリラートの広い利用分野を可能にする。有利に、これは二重硬化(Dual-Cure)の適用において使用することができる。この異なる反応基は、異なる重合技術、例えば熱による重合及びUV重合を用いる調製物の硬化のために適している。前記ポリマーは、調製物の形で、特に塗料、接着剤、高分子電解質、歯科用セメント及びインクジェットとして使用される。
【0021】
次に記載の実施例は、本発明をより良好に説明するためのものであるが、しかしながら本発明をこれに開示された特徴に限定するためには適していない。
【0022】
実施例
実施例1
エトキシル化されたトリメチロールプロパンオキセタン(平均エトキシル化度=3.3) 352.6g(1.35mol)
メチルメタクリラート 770.0g(7.7mol)
ヒドロキノンモノメチルエーテル(HQME) 0.14g(生成物に対して320ppm)
フェノチアジン 0.006g(生成物に対して15ppm)
ジルコニウム(IV)アセチルアセトナート 1.76g(アルコールに対して2%)
このバッチを脱水し、短時間冷却し、次いで触媒及び留去された脱水留出物に相当する量のメチルメタクリラートを添加し、新たに加熱沸騰させる。このメチルメタクリラート/メタノール共沸混合物を分離し、引き続き塔頂温度を徐々に100℃にまで高める。反応の完了後に短時間冷却し、触媒を沈殿させ、撹拌しながら室温に冷却する。濾過後に、過剰量のメチルメタクリラートを回転蒸発器で留去する。
【0023】
比較例1:
エトキシル化されたトリメチロールプロパンオキセタン(平均エトキシル化度=3.3) 352.6g(1.35mol)
メチルメタクリラート 770.0g(7.7mol)
ヒドロキノンモノメチルエーテル(HQME) 0.14g(生成物に対して320ppm)
フェノチアジン 0.006g(生成物に対して15ppm)
イソプロピルチタナート 7.05g(アルコールに対して2%)
このバッチを脱水し、短時間冷却し、次いで触媒及び留去された脱水留出物に相当する量のメチルメタクリラートを添加し、新たに加熱沸騰させる。このメチルメタクリラート/メタノール共沸混合物を分離し、引き続き塔頂温度を徐々に100℃にまで高める。反応の完了後に短時間冷却し、触媒を沈殿させ、撹拌しながら室温に冷却する。濾過後に、過剰量のメチルメタクリラートを回転蒸発器で留去する。
【表1】

【0024】
この原料の色数は49であった。
【0025】
実施例1は、比較例とは反対により高い純度を示し、低沸点不純物の場合に比較的低い割合を示し、前記低沸点不純物は比較例の場合に主に反応時に生成するイソプロピルメタクリラートに起因する。高沸点不純物及び残留アルコールは両方の反応の場合に同等の値を示す。
【0026】
実施例1の場合に、原料と比較して色数の上昇は観察できない。これとは反対に、IPT触媒のもとでの反応条件は、色数の上昇に寄与する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウム触媒を添加し、引き続き残留モノマーを前記混合物から蒸留により除去することを特徴とする、オキセタン基含有(メタ)アクリラートの製造方法。
【請求項2】
複数のジルコニウム触媒を使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
触媒としてジルコニウム(IV)アセチルアセトナートを使用することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
二重硬化の適用での請求項1記載の方法により製造されたオキセタン基含有(メタ)アクリレートの使用。
【請求項5】
接着剤、高分子電解質、歯科用セメント、塗料及びインクジェットにおける請求項1記載の方法により製造されたオキセタン基含有(メタ)アクリラートの使用。

【公表番号】特表2010−501508(P2010−501508A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524973(P2009−524973)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055862
【国際公開番号】WO2008/022824
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】