説明

オキセタン環含有ビニルエーテル化合物、及び重合性組成物

【課題】硬化速度が速く、透明性や耐熱性に優れた硬化物を形成しうるオキセタン環含有ビニルエーテル化合物を提供する。
【解決手段】分子内に芳香族性又は非芳香族性の炭素環を有するか、又は分子内にビニルエーテル構造を2以上有しているオキセタン環含有ビニルエーテル化合物。下記式(1)


[式中、環Zは非芳香族性炭素環を示し、分子内に存在していてもよく存在していなくてもよい。Rは置換又は無置換ビニル基を示す。Wは置換又は無置換ビニルオキシ基(−OR基)とオキセタン環又は環Zとを連結する連結基であって、単結合又は(m+1)価の有機基を示す。Xはオキセタン環及び環Zの置換基である。mは1あるいは2、pは0〜5の整数、qは1あるいは2を示す。但し、m=q=1の場合は、少なくとも、環Zが存在するか、Xが炭素環を含んでいるか、Wが炭素環を含んでいる]で表される化合物が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光や熱により重合又は硬化する重合性化合物として、医薬品、農薬、コーティング剤、インキ、塗料、接着剤、レジスト、製版材、光導波路、ホログラム、ナノインプリント用材料などの分野で有用なオキセタン環含有ビニルエーテル化合物と、該オキセタン環含有ビニルエーテル化合物を含有する重合性組成物、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
光や熱により重合又は硬化する重合性化合物は、コーティング剤、インキ、塗料、接着剤、レジスト、製版材などのポリマー原料として広く利用されている。従来、このような重合性化合物としてエポキシ系化合物が用いられている。エポキシ系化合物は、耐薬品性、密着性に優れる硬化物が得られるものの、重合反応性(硬化性)が低く、皮膚刺激性や毒性が高いため、取扱性や安全性に難点がある。
【0003】
一方、特開平10−25262号公報や特開2003−73321号公報には、重合性化合物として、いくつかの脂環式ビニルエーテル化合物が開示されている。これらの化合物は、皮膚刺激性が低い点で作業性は改善されるものの、該化合物をコーティングやインキ材料として用いた場合、硬化速度や硬化物の硬度が未だ不十分であり、改善が必要であった。特開平10−316670号公報には、分子内にオキセタン環を有するビニルエーテル化合物が開示されている。しかし、この化合物も、硬化速度や硬化物の透明性、耐熱性等の点で必ずしも充分満足できるものではない。
【0004】
【特許文献1】特開平10−25262号公報
【特許文献2】特開2003−73321号公報
【特許文献3】特開平10−316670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、新規なオキセタン環含有ビニルエーテル化合物、これを含む重合性組成物及びその硬化物を提供することにある。
本発明の他の目的は、硬化速度が速く、硬化により透明性や耐熱性に優れた硬化物を得ることができるオキセタン環含有ビニルエーテル化合物、これを含む重合性組成物、及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、オキセタン環を含有するビニルエーテル化合物であって、分子内にさらに炭素環を有するか、又は分子内にビニルエーテル構造を2以上する化合物は、硬化速度が著しく速く、しかも硬化により透明性や耐熱性に優れた硬化物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、オキセタン環を含有するビニルエーテル化合物であって、分子内にさらに芳香族性又は非芳香族性の炭素環を有するか、又は分子内にビニルエーテル構造を2以上有しているオキセタン環含有ビニルエーテル化合物を提供する。
【0008】
このオキセタン環含有ビニルエーテル化合物には、下記式(1)
【化1】

[式中、環Zはオキセタン環とともにスピロ構造を形成する非芳香族性炭素環を示し、分子内に存在していてもよく、存在していなくてもよい。Rは下記式(2)
【化2】

(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表される置換又は無置換ビニル基を示す。Wは置換又は無置換ビニルオキシ基(−OR基)とオキセタン環又は環Zとを連結する連結基であって、単結合又は(m+1)価の有機基を示す。Xはオキセタン環及び環Zの置換基であって、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、オキソ基、ニトロ基、シアノ基、又は保護基で保護されていてもよいアシル基を示す。mは1あるいは2、pは0〜5の整数、qは1あるいは2を示す。m、p、qが2以上の場合、括弧内の置換基は同一であってもよく、異なっていてもよい。但し、m=q=1の場合は、少なくとも、環Zが存在するか、Xが芳香族性又は非芳香族性の炭素環を含んでいるか、Wが芳香族性又は非芳香族性の炭素環を含んでいる]
で表されるオキセタン環含有ビニルエーテル化合物が含まれる。
【0009】
本発明は、また、前記のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物と重合開始剤を含む重合性組成物を提供する。
【0010】
本発明は、さらに、前記の重合性組成物を重合させて得られる硬化物を提供する。
【0011】
なお、本明細書におけるビニルエーテル化合物、ビニルエステル化合物には、ビニル基の水素原子が置換基で置換された化合物も含まれるものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物は、ポリマーの原料モノマーとして使用した場合、加熱又は光照射による硬化速度が極めて速く、しかも硬化により透明性や耐熱性に優れた硬化物を得ることができる。また、毒性や皮膚刺激性が少ない。このため、コーティング剤、インキ、塗料、接着剤、レジスト、製版材、光導波路、ホログラム、ナノインプリント用材料などの分野で好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物は、オキセタン環を含有するビニルエーテル化合物であって、分子内にさらに芳香族性又は非芳香族性の炭素環を有するか、又は分子内にビニルエーテル構造を2以上有している。このような、オキセタン環を含み、且つ分子内に炭素環を有するか、又は分子内にビニルエーテル構造を2以上有するビニルエーテル化合物は、硬化速度が極めて速いだけでなく、硬化により透明性、耐熱性等の物性に優れた硬化物が得られるという大きな利点を有する。
【0014】
前記芳香族性の炭素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。また、非芳香族性の炭素環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロドデカン環等のシクロアルカン環(3〜15員程度のシクロアルカン環など);デカリン環、アダマンタン環、ノルボルナン環等の炭素数6〜20程度の有橋脂環式環などが挙げられる。芳香族性又は非芳香族性の炭素環は分子内に2以上あってもよい。芳香族性又は非芳香族性の炭素環は、ビニルエーテル構造とオキセタン環とを連結する連結基部位に存在している場合が多い。また、非芳香族性の炭素環はオキセタン環とともにスピロ構造を形成していてもよい。
【0015】
本発明のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物は、芳香族性又は非芳香族性の炭素環を有する場合にはビニルエーテル構造は1つあればよく、ビニルエーテル構造を2以上有する場合には芳香族性又は非芳香族性の炭素環を有していなくてもよいが、芳香族性又は非芳香族性の炭素環を有し且つ分子内に2以上のビニルエーテル構造を有するものであってもよい。
【0016】
本発明のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物には、前記式(1)で表される化合物が含まれる。式(1)において、環Zはオキセタン環とともにスピロ構造を形成する非芳香族性炭素環を示す。環Zは分子内に存在していてもよく、存在していなくてもよい。環Zにおける非芳香族性炭素環としては、前記例示の非芳香族性の炭素環が挙げられる。環Zとしては、シクロペンタン環又はシクロヘキサン環が好ましい。
【0017】
式(1)中、Rは前記式(2)で表される置換又は無置換ビニル基を示す。式(2)中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどの直鎖状C1-4(好ましくはC1-3)アルキル基;イソプロピル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチルなどの分岐鎖状のC1-4(好ましくはC1-3)アルキル基などが挙げられる。R1、R2及びR3としては、それぞれ、特に水素原子又はメチル基が好ましい。式(2)で表される基の代表的な例として、ビニル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1,2−ジメチル−1−プロペニル基などが挙げられる。
【0018】
式(1)中、Wは、置換又は無置換ビニルオキシ基(−OR基)とオキセタン環又は環Zとを連結する連結基であって、単結合又は(m+1)価の有機基を示す。該有機基としては、通常、隣接する酸素原子との結合部位に炭素原子を有する基が用いられる。好ましい有機基として、(i)炭化水素基、(ii)1又は2以上の炭化水素基と、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、カルボニル基(−CO−)及びアミノ基(−NH−)から選択された少なくとも1種の基とからなる基などが挙げられる。
【0019】
前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した炭化水素基が含まれる。
【0020】
炭化水素基としては、2価の炭化水素基を例にとると、メチレン、メチルメチレン(エチリデン)、エチルメチレン(プロピリデン)、ジメチルメチレン(イソプロピリデン)、エチルメチルメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6)程度の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基;プロペニレン基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜6)程度の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基;1,3−シクロペンチレン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキレン基;シクロプロピレン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキリデン基;1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン基などのアリレン基(arylene);ベンジリデン基などが挙げられる。
【0021】
前記炭化水素基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、ハロゲン原子、オキソ基、シアノ基、ニトロ基、複素環式基、炭化水素基、ハロアルキル基などが挙げられる。保護基としては有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
【0022】
前記置換基としての複素環式基としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を含む3〜15員程度の複素環式基(特に、5〜8員複素環式基)が挙げられる。
【0023】
前記置換基としての炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの結合した基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)程度のアルキル基;炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルケニル基;炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルキニル基などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、アダマンチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
【0024】
前記置換基としてのハロアルキル基としては、例えば、クロロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル基などの炭素数1〜10程度のハロアルキル基(特に、C1-3ハロアルキル基)が挙げられる。
【0025】
Wの好ましい例には、例えば、下記式(3)
【化3】

[式中、A1は2価の炭化水素基を示し、Y1は酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、カルボニル基(−CO−)、アミノ基(−NH−)又はこれらが2以上結合した基を示し、A2は単結合又は(m+1)価の炭化水素基を示す。A2が−OR側である。r、sは、それぞれ0又は1であり、tは0〜5の整数を示す]
で表される基が含まれる。
【0026】
1における2価の炭化水素基としては、前記例示のものが挙げられる。なかでも、A1としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソピロピリデン、トリメチレン、テトラメチレン基等の炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。
【0027】
1としては、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、カルボニル基(−CO−)、アミノ基(−NH−)、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−等が好ましい。
【0028】
2における(m+1)価の炭化水素基としては、前記例示のものが挙げられる。なかでも、A2としては、単結合;メチレン、エチレン、プロピレン、イソピロピリデン、トリメチレン、テトラメチレン基等の炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、1,3−シクロペンチレン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン基などの5〜8員のシクロアルキレン基、シクロプロピレン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン基などの5〜8員のシクロアルキリデン基、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン基などのアリレン基(arylene)、又はこれらが2以上結合した基等が挙げられる。
【0029】
Wとしては、特に、単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基や、該アルキレン基と酸素原子又は硫黄原子とが結合した基が好ましい。
【0030】
式(1)中、Xはオキセタン環及び環Zの置換基であって、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、オキソ基、ニトロ基、シアノ基、又は保護基で保護されていてもよいアシル基を示す。前記保護基としては有機合成の分野で慣用の保護基が挙げられる。
【0031】
Xにおけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素原子などが挙げられる。Xにおける「置換基を有していてもよい炭化水素基」の炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル基などの脂肪族炭化水素基(好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-5アルキル基);シクロペンチル、シクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基(好ましくは3〜15員のシクロアルキル基);フェニル、ナフチル基などの芳香族炭化水素基;これらが2以上結合した基などが挙げられる。これらの炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素原子等のハロゲン原子、メチル基などのC1-4アルキル基、トリフルオロメチル基などC1-5ハロアルキル基、ヒドロキシル基、メトキシ基などのC1-4アルコキシ基、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、アセチル基などのアシル基等が挙げられる。
【0032】
Xにおけるアシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基;アセトアセチル基;ベンゾイル基などの芳香族アシル基などが挙げられる。
【0033】
Xが2以上の場合、それらが互いに結合して、式(1)中の環Z又はオキセタン環を構成する炭素原子と共に環を形成していてもよい。このような環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、パーヒドロナフタレン環(デカリン環)などの脂環式炭素環;γ−ブチロラクトン環、δ−バレロラクトン環などのラクトン環などが挙げられる。
【0034】
式(1)において、mは1あるいは2であり、好ましくは1である。pは0〜5の整数であり、好ましくは0〜3の整数である。qは1あるいは2である。m、p、qが2以上の場合、括弧内の置換基は同一であってもよく、異なっていてもよい。なお、m=q=1の場合は、少なくとも、環Zが存在するか、Xが芳香族性又は非芳香族性の炭素環を含んでいるか、Wが芳香族性又は非芳香族性の炭素環を含んでいる。
【0035】
式(1)で表される化合物の中でも、下記式(1a)、(1b)、(1c)又は(1d)で表される化合物が好ましい。
【0036】
【化4】

【0037】
[式中、uは0又は1を示す。R、W、Xは前記に同じ。但し、式(1b)においては、W及びXのうち少なくとも一方は芳香族性又は非芳香族性の炭素環を含んでいる]
【0038】
本発明のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物の代表的な例として、以下の化合物が挙げられる。式中、nは0〜6の整数を示す。
【0039】
【化5】

【0040】
【化6】

【0041】
本発明のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物は、ビニルエーテル化合物の製造法として公知の反応を利用して製造することができる。好ましい態様としては、オキセタン環含有ビニルエーテル化合物に対応するアルコール(ヒドロキシ化合物)とビニルエステル化合物とを遷移元素化合物の存在下で反応させる方法が挙げられる。例えば、前記式(1)で表されるオキセタン環含有ビニルエーテル化合物は、式(1)においてRが水素原子であるアルコール(ヒドロキシ化合物)と、ビニルエステル化合物とを遷移元素化合物の存在下で反応させることにより製造することができる。
【0042】
前記ビニルエステル化合物の代表的な例としては、下記式(4)
【化7】

(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R4は水素原子又は有機基を示す)
で表されるビニルエステル化合物が挙げられる。
【0043】
式(4)で表されるビニルエステル化合物において、R1〜R3は前記と同様である。R4における有機基は上記反応を阻害しない基であればよく、例えば、前記R1等における炭素数1〜4のアルキル基として例示のものを利用できる。式(4)で表されるビニルエステル化合物の代表的な例として、酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル、酢酸1−プロペニル、酢酸2−メチル−1−プロペニル、酢酸1,2−ジメチル1−プロペニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられる。
【0044】
上記の方法では、遷移元素化合物(遷移元素の単体を含む)を触媒として用いるため、温和な条件下で反応を進行できる。遷移元素化合物は単独で又は2以上を組み合わせて使用できる。遷移元素には、IIIA族元素(特にランタノイド元素)、VA族元素、VIA族元素、VIIA族元素、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などのVIII族元素、IB族元素が含まれる。これらの中でもVIII族元素が好ましく、特に白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金)、とりわけイリジウムが好ましい。
【0045】
遷移元素化合物としては、例えば、遷移元素の単体(金属)、酸化物、硫化物、水酸化物、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、硫酸塩、遷移元素を含むオキソ酸又はその塩、無機錯体などの無機化合物;シアン化物、有機酸塩(酢酸塩など)、有機錯体などの有機化合物が挙げられる。これらのなかでも特に有機錯体が好ましい。錯体の配位子には公知の配位子が含まれる。遷移元素化合物における遷移元素の価数は0〜6程度、好ましくは0〜3価であり、特にイリジウム化合物などの場合には1価又は3価が好ましい。遷移元素化合物は、そのままで又は担体に担持した形態で使用できる。
【0046】
遷移元素化合物の使用量は、反応成分として用いるヒドロキシ化合物1モルに対して、例えば0.0001〜1モル、好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.005〜0.1モル程度である。
【0047】
式(4)で表されるビニルエステル化合物と前記ヒドロキシ化合物との反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0048】
式(4)で表されるビニルエステル化合物の使用量は、前記ヒドロキシ化合物1当量に対して、例えば0.8〜10当量、好ましくは1〜8当量、さらに好ましくは1.5〜5当量程度である。式(4)で表されるビニルエステル化合物を大過剰量用いてもよい。
【0049】
反応系に塩基を存在させることにより一般に反応速度が著しく増大する。塩基には無機塩基及び有機塩基が含まれる。無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩などが挙げられる。
【0050】
有機塩基としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウムなどのアルカリ金属有機酸塩(特に、アルカリ金属酢酸塩);酢酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属有機酸塩;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムエトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド(前記酸素原子含有多環式ヒドロキシ化合物に対応するアルカリ金属アルコキシドなど);ナトリウムフェノキシドなどのアルカリ金属フェノキシド;トリエチルアミン、N−メチルピペリジンなどのアミン類(第3級アミンなど);ピリジン、2,2′−ビピリジル、1,10−フェナントロリンなどの含窒素芳香族複素環化合物などが挙げられる。上記の塩基の中でもナトリウムを含む塩基が好ましい。
【0051】
塩基の使用量は、ヒドロキシ化合物1モルに対して、例えば0.001〜3モル、好ましくは0.005〜2モル程度である。
【0052】
反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、20〜200℃、好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃程度である。反応は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。なお、反応時間を調整することによりビニル化反応の進行を制御することができる。例えば、分子内にヒドロキシル基を2つ有するジヒドロキシ化合物は、短時間(例えば2時間程度)の反応では、1つのヒドロキシル基が残存し、1つのビニルオキシが導入されたモノビニル化合物を生成し、より長時間(例えば5時間程度)の反応により、2つのビニルオキシ基が導入されたジビニル化合物を生成することができる。
【0053】
上記反応により、温和な条件下で、対応する式(1)で表されるオキセタン環含有ビニルエーテル化合物が生成する。反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0054】
本発明の重合性組成物は、上記本発明のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物と重合開始剤を含んでいる。前記重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光ラジカル又は光カチオン重合開始剤などのラジカル重合やイオン(カチオン)重合を起こしうるものであれば特に限定されず、公知の重合開始剤、光酸発生剤等を使用できる。例えば、熱重合開始剤として、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、t−ブチルヒドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2−4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどが使用できる。また、光重合開始剤として、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエート、4−ジメチルアミノエチルベンゾエート;トリアリルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のスルホニウム塩、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のヨードニウム塩、テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等のホスホニウム塩、ピリジニウム塩などが使用できる。本発明のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物は、このような重合開始剤を溶解しやすいので、重合性組成物の調製が容易である。
【0055】
重合開始剤は、オキセタン環含有ビニルエーテル化合物に対して、通常0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%用いられる。
【0056】
本発明の重合性組成物は、用途等に応じて、前記本発明のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物以外の硬化性化合物(例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物等の環状エーテル化合物;ビニルエーテル化合物等)、種々の添加剤、例えば、増感剤(アントラセン系増感剤等)、無機又は有機粒子(例えば、ナノスケール粒子等)、フルオロシランなどを含んでいてもよい。重合性組成物中に含まれる硬化性化合物の総量に対する本発明のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物の割合は、例えば20重量%以上、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上であり、実質的に硬化性化合物が本発明のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物のみで構成されていてもよい。
【0057】
本発明の重合性組成物は、本発明のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物を含むので、硬化速度が極めて速いという特性を有している。
【0058】
本発明の硬化物は、本発明のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物と重合開始剤を含む重合性組成物を、電子線若しくは放射線の照射又は加熱に付すことにより得ることができる。こうして得られる硬化物は、透明性や耐熱性に優れる。このため、本発明のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物は、光や熱により重合又は硬化する重合性化合物として、コーティング剤、インキ、塗料、接着剤、レジスト、製版材、光導波路、ホログラム、ナノインプリント組成物用材料などの分野で使用することができる。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0060】
実施例1
炭酸ナトリウム24.9g(0.23mol)とトルエンの混合液280mLを95℃まで昇温し、プロピオン酸1.4gを加え、95℃を維持しながら、酢酸ビニル16gを滴下し、15分後、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]2を1.27g(1.9mmol)添加した。次いで、オキセタン−3,3−ジメタノール40g(0.19mol)を3時間かけて滴下して加え、窒素雰囲気下、反応温度95℃を維持しながら、酢酸ビニル79.8gを滴下して加えながら反応を行った。滴下終了後、1時間撹拌し、反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、下記式(5)で表される3,3−ビス(ビニロキシメチル)オキセタンが90%の収率で、(3−ビニロキシメチルオキセタン−3−イル)メタノールが2%の収率で生成していた。反応液を蒸留精製して、純度99%の3,3−ビス(ビニロキシメチル)オキセタンを31g得た。
[3,3−ビス(ビニロキシメチル)オキセタンのスペクトルデータ]
1H-NMR(CDCl3) δ:6.5(2H, dd), 4.53(4H, s), 4.2(2H, d), 4.05(2H, d), 3.93(4H, s)
【化8】

【0061】
実施例2
3−クロロメチル−3−エチルオキセタン(0.1mol)と1,4−シクロヘキサンジオール(0.5mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(0.01mol)をトルエン(500g)に加え、90℃まで昇温した後に、5N−NaOH水溶液(100g)を滴下して加え、5時間撹拌した。トルエン溶液(トルエン層)を水洗した後、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、純度99%の4−(3−エチルオキセタン−3−イル−メトキシ)シクロヘキサノールを得た。
炭酸ナトリウム(0.06mol)とトルエンの混合液100mLを95℃まで昇温した。95℃を維持しながら、酢酸ビニル4.2gを滴下し、15分後、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]2(0.5mmol)を添加した。次いで、4−(3−エチルオキセタン−3−イル−メトキシ)シクロヘキサノール(0.05mol)を2時間かけて滴下して加え、窒素雰囲気下、反応温度95℃を維持しながら、酢酸ビニル12.6gを滴下して加えながら反応を行った。滴下終了後、1時間撹拌し、反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、下記式(6)で表される3−エチル−3−(4−ビニロキシシクロヘキシルオキシメチル)オキセタンが92%の収率で生成していた。1H-NMR(CDCl3)を測定したところ、実施例1と同様に、6.5ppmと4.2ppm、4.04ppmにビニル基特有のシグナルが観測された。
【化9】

【0062】
実施例3〜7、比較例1〜4
表1に示される種類及び量の(A)ビニルエーテル化合物、(B)環状エーテル化合物、及び(C)カチオン系光酸発生剤を混合溶解して硬化性組成物(重合性組成物)を調製した。
厚み1mm又は200μmのテフロン(登録商標)板をサンプル形状に切り抜き、その片面をテフロン(登録商標)コートしたPETフィルム、続いてガラス板で上下に挟んで積層体(ガラス板/PET/テフロン(登録商標)/PET/ガラス板)を形成した。上記調製した硬化性組成物を、サンプル形状の切り抜き部分に注射器で注入し、次いでコンベアー式紫外線照射装置を用いて下記条件下で紫外線(UV)を照射することにより、用いたテフロン(登録商標)板に対応する厚み1mm又は200μmの硬化物を形成した。
(A)ビニルエーテル化合物、又は(A)ビニルエーテル化合物と(B)環状エーテル化合物の混合物への(C)カチオン系光酸発生剤の溶解性、得られた硬化性組成物の硬化速度、及び得られた硬化物のゲル分率、透過率、耐熱性を下記の方法で測定、評価した。結果を表1に示す。
【0063】
UV硬化条件:
UV照射装置:ウシオ電機製の紫外線照射装置「UVC−02516S1AA02」
メタルハライドランプ
照射条件:160W
コンベアー速度:2m/min
照射回数:1回
【0064】
なお、表1の(A)ビニルエーテル化合物、(B)環状エーテル化合物、及び(C)カチオン系光酸発生剤における各符号は下記の通りである。
(A)ビニルエーテル化合物
(A1):実施例1で得られた3,3−ビス(ビニロキシメチル)オキセタン
(A2):実施例2で得られた3−エチル−3−(4−ビニロキシシクロヘキシルオキシメチル)オキセタン
(A3):1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(アルドリッチ社製)
(A4):テトラエチレングリコールジビニルエーテル(アルドリッチ社製)
(B)環状エーテル化合物
(B1):ダイセル化学工業(株)製、「セロキサイド2021P」
(B2):東亞合成(株)製、「アロンオキセタンOXT−121」
(C)カチオン系光酸発生剤
(C1):チバスペシャルティケミカルズ社製、「Irgacure250」
(C2):Rhodia社製、「PI2074」
【0065】
評価試験
(光酸発生剤溶解性)
(A)ビニルエーテル化合物、又は(A)ビニルエーテル化合物と(B)環状エーテル化合物の混合物に、(C)カチオン系光酸発生剤を所定量(表1記載)添加し、15分間撹拌した後、組成物を目視確認し、以下の基準で光酸発生剤溶解性を評価した。
○:(C)カチオン系光酸発生剤が完全に溶解し、硬化性組成物が透明であった。
×:白濁、又は(C)カチオン系光酸発生剤の沈降物が観察された。
【0066】
(硬化速度)
硬化性組成物を上記ベルトコンベアーにて硬化させ、硬化物の確認を行った。
○:硬化物を得ることができた。
×:増粘状態で、固化していなかった。
【0067】
(ゲル分率)
実施例及び比較例で得た厚み200μmの硬化物をMEK(メチルエチルケトン)溶剤に入れ、抽出前の初期重量と抽出乾燥後の重量を測定し、下記式によりゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(抽出乾燥後の重量)/(抽出前の初期重量)×100
【0068】
(透過率)
実施例及び比較例で得た厚み1mmの硬化直後の硬化物(初期)、及び同硬化物に120℃で1時間加熱処理を施して得られた硬化物(加熱後)について、日立製作所製スペクトルフォトメーター「U−3300」を用いて、波長400nm、550nm、700nm及び850nmの透過率(%)を測定した。これらの結果を表1の「初期透過率」及び「加熱後透過率」の欄に示す。
【0069】
(耐熱性)
透過率測定に用いたサンプルをさらに200℃のオーブンに2時間入れ、その間での重量変化を測定し、以下の基準で耐熱性を評価した。
○:重量変化が5%以下であった。
△:重量変化が5%より大きく、10%以下であった。
×:重量変化が10%より大きかった。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例8
下記組成の体積型ホログラム記録用感光性組成物塗工液を調製し、この塗工液を縦横30×30mm、厚さ1.3mmのガラス板上に滴下し、シクロヘキサノンを乾燥除去後、25μmのPETフィルムをスペーサーとして使用して、もう一枚のガラス板で挟み込み、体積型ホログラム記録用感光性媒体を作製した。
【0072】
ポリスチレン樹脂(和光純薬工業株式会社製、「Styrene,Polymer」、重合度:約2000) 70重量部
(i)(3,3’,4,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシル(ダイセル化学工業社製、「セロキサイド8000」)と(ii)3,3−ビス(ビニロキシメチル)オキセタンの混合物 100重量部
ジアリールヨードニウム塩(Rhodia社製、「PI2074」) 10重量部
532nm用増感色素(林原生物化学研究所製、「NKX1658」) 0.5重量部
シクロヘキサノン 276重量部
【0073】
得られた体積型ホログラム記録用感光性媒体を532nmのレーザー光を用いて物体光、参照光をホログラム乾板に対して共に30°の角度で入射させることにより、体積ホログラムを記録した。次いで、加熱により感光性組成物を固化させ、固定化された体積型ホログラムを得た。得られた体積型ホログラムの0次光と1次回折光の強度から回折効率を算出した。(i)と(ii)を官能基比率(カチオン硬化性官能基の数の比率)で14:3で混合[(i)と(ii)を7:1で混合]したものでは、低硬化エネルギーで比較的明るいホログラムが形成された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキセタン環を含有するビニルエーテル化合物であって、分子内にさらに芳香族性又は非芳香族性の炭素環を有するか、又は分子内にビニルエーテル構造を2以上有しているオキセタン環含有ビニルエーテル化合物。
【請求項2】
下記式(1)
【化1】

[式中、環Zはオキセタン環とともにスピロ構造を形成する非芳香族性炭素環を示し、分子内に存在していてもよく、存在していなくてもよい。Rは下記式(2)
【化2】

(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表される置換又は無置換ビニル基を示す。Wは置換又は無置換ビニルオキシ基(−OR基)とオキセタン環又は環Zとを連結する連結基であって、単結合又は(m+1)価の有機基を示す。Xはオキセタン環及び環Zの置換基であって、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、オキソ基、ニトロ基、シアノ基、又は保護基で保護されていてもよいアシル基を示す。mは1あるいは2、pは0〜5の整数、qは1あるいは2を示す。m、p、qが2以上の場合、括弧内の置換基は同一であってもよく、異なっていてもよい。但し、m=q=1の場合は、少なくとも、環Zが存在するか、Xが芳香族性又は非芳香族性の炭素環を含んでいるか、Wが芳香族性又は非芳香族性の炭素環を含んでいる]
で表される請求項1記載のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物と重合開始剤を含む重合性組成物。
【請求項4】
請求項3記載の重合性組成物を重合させて得られる硬化物。

【公開番号】特開2008−266308(P2008−266308A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70961(P2008−70961)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】