説明

オゾン処理によって汚泥を除去するシステム及び方法

廃水処理工程において、オゾン処理によって汚泥を処理及び減量するシステム及び方法が開示される。汚泥処理システム(10)は、活性汚泥処理池(20)に連結され、活性汚泥処理池(20)からバイオソリッドを含む汚泥の液流を受け入れるように適合された汚泥オゾン処理反応器(30)を含む。汚泥処理システム(10)はまた、汚泥オゾン処理反応器(30)又はその上流で反応器に動作可能に連結され、液流にオゾン富化ガスを注入するように適合されたオゾン富化ガスの注入システム(40)を含む。汚泥オゾン処理反応器(30)は、液流中のバイオソリッドを酸化し、細菌細胞の溶解を起こし、それによってバイオソリッドを減量するために、オゾン富化ガスと液流の間の効果的な気体−液体接触を可能にするように構成される。バイオソリッドの減量後、液流は、戻りライン(50)を介して活性汚泥池(20)又は他の放出箇所(23)へ戻される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性汚泥処理(activated sludge treatment)のための方法及びシステムに関し、より詳細には、活性汚泥処理工程におけるバイオソリッドを減量するためのオゾンの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からの廃水処理方法は、活性汚泥処理として知られる好気性又は嫌気性型の工程において、廃水の流れを細菌と接触させることを伴う。こうした細菌は、通常は炭素、窒素、リン、硫黄などを含む有機化合物である、排水に含まれる基質物質又は廃棄物の一部を消費する。一般に、細菌細胞の代謝を促進する又は細菌細胞の生理的機能を維持するために、廃棄物の一部がさらに消費される。さらに廃棄物の一部は、新しい細菌細胞を合成する過程の一部としても消費される。活性汚泥処理工程によって、一定量の汚泥及び付随する固形物が生じるが、活性汚泥処理システムが効果的に機能するのに重要な定常状態の汚泥バランスを維持するには、それらを処理池から連続的に除去しなければならない。
【0003】
処理プラントの廃棄物除去能力を定常状態に維持するためには、活性汚泥処理工程の中で新しい細菌細胞の生成を制御することが重要である。新しい細菌細胞が、定常状態又はその近くでの廃物処理に必要とされる量を上回り過剰に合成されると、そうした新たに合成されたものの必要のない細菌細胞の蓄積に起因する、過剰なバイオソリッドの形成が起こる。活性汚泥処理工程の間、この過剰なバイオソリッドを連続的に除去しなければならない。
【0004】
汚泥の除去に対処する既存の方法には、汚泥を埋め立て式ごみ処理場に移送すること、汚泥を土地応用又は農業上の目的に利用すること、及び汚泥を焼却することが含まれる。ほとんどの汚泥処分操作は、いくつかの汚泥の前処理を必要とするが、1つの工程が、当分野ではソリッドハンドリングとして知られるものである。ソリッドハンドリング工程はしばしば、コスト及び時間のかかる操作であり、一般に、(a)通常はポリマーの使用を必要とする、シックナー内で汚泥を濃縮するステップ、(b)細菌を安定化し、さらに汚泥の体積及び病原体の含有量を減らすために、汚泥を消化するステップ、(c)固型分含有量が約15〜25%に達するまで汚泥を脱水するステップ(汚泥を遠心分離機又は他の固体−液体分離型の装置に通すことを含む)、(d)汚泥を貯蔵するステップ、及び(e)埋め立て、農業者による土地応用、又は他の最終用途のための場所に移送するステップの1つ又は複数を含む。
【0005】
ソリッドハンドリング及び処分工程に伴うコストは、廃水処理の全工程に伴う操業コスト全体の20〜60%になる可能性があると推定される。ソリッドハンドリング及び処分に伴うコスト及び時間のため、廃水処理工程で生成される余剰汚泥の量を最小限に抑えることが有益である。
【0006】
従来の活性汚泥処理のシステム及び方法では、基質物質(すなわち廃棄物)の化学酸化、並びに新しい細胞の合成及び細菌細胞の代謝過程のいずれにも酸素が必要である。汚泥の処理のために、酸素に加えてオゾンを使用することも報告されている。より詳細には、混合の原動力となる機械的な攪拌機及び/又はポンプと組み合わせた、汚泥のオゾン処理が報告されている。汚泥−オゾンの接触は通常、連続撹拌タンク反応(CSTR)方式によって行われ、細胞壁に対するオゾンの強い酸化作用の結果として、細胞溶解(細胞壁の完全性の破壊)が起こる。細胞溶解によって、細菌細胞の基質に富む細胞内容物が放出される。こうして、他の方法では余剰汚泥として放出される固形の細胞を溶解させ、そうすることにより、それらを基質に変え、次いで基質を処理池で細菌によって消費させることが可能になる。
【0007】
細胞内容物は、タンパク質、脂質、多糖及び他の糖、DNA、RNA並びに有機イオンで構成される液体マトリックスである。汚泥とオゾンの接触が連続撹拌反応器方式で行われるときに得られる選択性が低いため、汚泥のオゾン処理に従来の方法を用いると、過量のオゾンが消費される。さらに、これまでに報告されたオゾンの使用法の中には、汚泥の特殊な前処理又は改質を必要とするものがあった。そうした前処理及び改質には、汚泥のpHを調節すること、汚泥の温度を高めること、オゾン処理容器の圧力を高めること、又は汚泥を嫌気性の前消化ステップに通すことを含む。したがって、汚泥処理時のオゾンの従来の使用法は、追加的に、複雑さ、材料、設備、並びにそれらに関連するコストの増加を伴うものであった。
【0008】
反応器システムについては、連続撹拌タンク反応器システム(CSTR)、高選択性プラグ流反応器(PFR)及びバッチ式反応器システム(BRS)の3つの主な方法が知られている。異なる反応器方式の間の主な違いは、基本的に、(i)分子が反応空間内に留まる時間の平均量(滞留時間分布としても知られる)、(ii)反応する「粒子」間の相互作用(例えば、CSTRではかなりの逆混合(back−mixing)が存在するが、PFRは、逆混合が存在する場合にもきわめて限られていることを特徴とする)、及び(iii)得られる収量にある。バッチ式反応器システムは通常、小規模の廃水処理操作に適用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は広義には、廃水処理工程における汚泥を減量する方法として特徴付けることができる。
【0010】
一態様では、汚泥を減量する方法は、(a)活性汚泥池で廃水を処理するステップと、(b)バイオソリッドを含む液流を、活性汚泥池からオゾン処理反応器へ向かわせるステップと、(c)当該液流とオゾン富化ガスの間の効果的な液体−気体接触を促し、当該オゾン処理された流れにおけるバイオソリッドの滞留時間分布を最適化するように制御された形で、当該液流に、当該オゾン処理反応器又はその上流で、オゾン富化ガスを導入するステップと、(d)当該液流中でオゾンとバイオソリッドを反応させて、細菌細胞の溶解を達成しそれによってバイオソリッドの除去を容易にするステップと、(e)オゾン処理された液流を活性汚泥池又は他の放出箇所へ放出するステップとを含む。
【0011】
本発明は、汚泥処理システムとしても特徴付けることができる。この点において汚泥処理システムは、活性汚泥処理池に連結され、バイオソリッドを含む液流を受け入れるように適合されたオゾン処理反応器と、オゾン富化ガスの供給源と、オゾン富化ガスの供給源に連結され、オゾン処理反応器又はその上流で液流にオゾン富化ガスを注入するように適合されたガス注入システムと、オゾン処理された液流を放出箇所に移送するために、オゾン処理反応器に連結された戻り管路とを含む。オゾン処理反応器は、バイオソリッドの滞留時間分布を制御して、バイオソリッドの細胞溶解及び汚泥の全体的な減量を容易にするように適合されたプラグ流反応器などの、高選択性の反応器である。
【0012】
最後に本発明は、バイオソリッドを含む液流を高選択性のオゾン処理反応器に向けて送るステップと、当該液流にオゾン富化ガスを導入して、オゾン処理反応器内でのバイオソリッドとオゾンの相互作用によってバイオソリッドの細胞溶解を引き起こすステップと、引き起こされた細胞溶解によって生じた副生成物を含む当該オゾン処理された液流をバイオリアクタへ放出し、副生成物をさらに生物学的に酸化するステップとを含み、キログラム単位の減量されたバイオソリッドの、キログラム単位のオゾン使用量に対する比が10以上である処理工程として特徴付けることもできる。
【0013】
前述の及び他の本発明の態様、特徴並びに利点は、添付図面と共に示す以下の本発明に関するさらに詳しい説明によって、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本汚泥オゾン処理システム及び工程の一実施形態を組み込んだ、活性汚泥処理システムの概略図である。
【図2】本明細書において開示される実施形態による余剰汚泥の処理工程の動作性能を示すグラフである。
【図3】汚泥オゾン処理反応器内の複数箇所にオゾン富化ガスが導入される、本発明の汚泥オゾン処理システム及び工程の代替的実施形態の概略図である。
【図4】汚泥オゾン処理反応器からの放出ラインが、反応器の下流で他のいくつかの汚泥の後処理工程に連結される、本発明の汚泥オゾン処理システムの他の代替的実施形態の概略図である。
【図5】オゾン富化ガス注入システムが、汚泥オゾン処理反応器に附随するポンプ又はその近くにオゾン富化ガスを注入する、本発明の汚泥オゾン処理システムのさらに他の代替的実施形態の概略図である。
【図6】汚泥オゾン処理反応器の前に汚泥が前処理される、本発明の汚泥オゾン処理システム及び工程のさらに他の実施形態を示す図である。
【図7】汚泥オゾン処理反応器の上流でオゾン富化ガスと液流の間の気体−液体接触が生じる、本発明の汚泥オゾン処理システムのさらに他の代替的実施形態を示す図である。
【図8】処理される液流が活性汚泥池からの混合液流である、本発明の汚泥オゾン処理システムのさらに他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面の複数の表示を通じて、対応する参照番号は対応する構成要素を示している。
【0016】
従来の活性汚泥処理システム及び方法では、基質物質の化学酸化、並びに新しい細胞の合成及び細菌細胞の代謝過程のいずれにも酸素が必要である。処理工程における基質物質の化学酸化に対する酸素の要求量は、しばしば化学的酸素要求量(COD)と呼ばれ、新しい細胞を合成し、細菌細胞の代謝過程を維持するための基質の消費による基質の除去に対する酸素の要求量は、生物学的酸素要求量(BOD)と呼ばれる。
【0017】
図1は、本発明の汚泥オゾン処理システム(12)の一実施形態を組み込んだ、活性汚泥処理システム(10)の概略図を示している。図1に見られるように、典型的な活性汚泥処理システム(10)は、廃水を受け入れるように適合された取水管路(14)と、様々な前処理装置(16)と、活性汚泥池(20)と、蓄積した汚泥から清浄化された液体を分離するように適合された1つ又は複数の浄化槽(22)と、清浄化された液体を放出部(23)に移送するための出力管路(24)と、廃棄活性汚泥ライン(26)と、汚泥を移送し、活性汚泥池(20)へ戻すように適合された返送活性汚泥(RAS)ライン(28)とを含んでいる。消化槽(25)及び脱水装置(27)も示されている。バイオソリッドが廃棄活性汚泥(WAS)の一部として含まれる従来技術のシステムとは異なり、バイオソリッドはまた、RASライン(28)に沿って、浄化槽(22)から活性汚泥池(20)に移送される。その進路の途中で、汚泥及びバイオソリッドを含む所定量の液体が、オゾン処理のために汚泥オゾン処理反応器(30)へ方向転換される。しかし、方向転換された流れは、反応器(30)に入る前に処理又は改質する必要はない。本発明の汚泥オゾン処理システム(12)及び工程は、高選択性の反応方式を実現することができるように設計され、RASライン(28)に動作可能に連結された反応器(30)の使用を伴う。図示した実施形態では、反応器は、RASライン(28)からの支流(32)を受け入れるプラグ流反応器(30)であることが好ましい。
【0018】
プラグ流反応器(30)を通る汚泥の全体積流量(total sludge volume flow rate)は、等価な廃棄活性汚泥(WAS)の体積流量の約1倍から、等価な廃棄活性汚泥(WAS)の体積流量の約40倍の範囲であることが好ましい。この等価な廃棄活性汚泥(WAS)の体積流量の約1〜40倍の間の範囲によって、ある程度(in part)、プラグ流反応器(30)の中で最適な気液比が確立される。好ましくは、気液比を1.0以下にすべきである。汚泥の全体積流量は調節可能であり、所望のバイオソリッドの減量レベルを実現する一方で必要なオゾン供与量を最小化するように、プラグ流反応器内のオゾン富化ガスの流れ、及びオゾン富化ガスの流れにおけるオゾン濃度との関連して制御されることが好ましい。
【0019】
図1に見られるように、方向転換された汚泥の支流(32)はポンプ(34)を通過し、プラグ流反応器(plug flow reactor)(30)として示す汚泥オゾン処理反応器に到る。プラグ流反応器(30)は、流量と共に、オゾンの効果的な溶解及びオゾンとバイオソリッドの反応を保証するのに適当なプラグ流反応器(30)内での汚泥の滞留時間を保証する、十分な長さの管(36)を含む。図示した実施形態は、1つ又は複数のガス注入システム(40)も含み、それを通して、オゾン富化ガスがプラグ流反応器(30)に導入される。好ましいガス注入器システム(40)は、オゾン富化ガスの供給源、及びオゾン富化ガスを汚泥に注入するための1つ又は複数のノズル又はベンチュリ型の装置(42)を含む。オゾン富化ガスの供給源は、酸素ガスの供給源又は供給物(図示せず)に連結されたオゾン発生装置(44)であることが好ましい。或いは、オゾン富化ガスの流れ(46)を、専用の施設内オゾン貯蔵システムから供給することもできる。所望のオゾン濃度が6%以上であることが好ましい。より高いオゾン濃度が好ましく、それは、そうした高い濃度が、汚泥接触器内の気液比を確実に最適範囲内に維持する助けとなるためである。
【0020】
オゾン富化ガスは図示した実施形態に対して、プラグ流反応器(30)の注入装置(42)に近接する部分の範囲内に、公称圧力、及び通常は動作圧力より低い圧力で供給されることが好ましい。こうしてオゾン富化ガスは、注入装置(42)の圧力降下によって生成された真空引きにより注入装置(42)に取り入れられ、注入装置(42)を通過する。しかし当業者は、オゾン富化ガスが、プラグ流反応器(30)又は他の気体−液体接触用の包囲空間内の圧力より高い圧力で供給される実施形態を理解することができる。
【0021】
ガス注入器システム(40)は、オゾン富化ガスの注入速度、タイミング及び体積に関する動作制御を可能にする、適切な制御手段又は機構(図示せず)も含む。オゾン富化ガスのガス注入速度、注入のタイミング及び体積の制御は、効率的な気体−液体接触を可能にし、プラグ流反応器(30)を通って流れる液流へのオゾンの最適な溶解を促すことを目的とするものである。より詳細には、ガス注入システムの制御は、気体の流れと液体の流れの比の所定の範囲内になるように調節されることが好ましく、気体の流れは、注入装置(42)を通る気体の注入速度、タイミング及び体積から確かめられ、液体の流れは、プラグ流反応器(30)を通る汚泥の流れに相当する。気液比の好ましい範囲は、約1.0以下である。この気液比は、気体又はオゾンを液体中に適切に分散させることを保証し、さらに流体混合物の中に過剰な気体が存在しないことを保証する。過度の逆混合及び撹拌(churn)は最小限に抑えられる。さらに重要なことは、前述の気液比が他の関連する流れの特性と共に、過度の逆混合及び撹拌を最小限に抑えるように働き、それぞれの流れの層化を防止することである。
【0022】
プラグ流反応器(30)を通過すると、オゾン処理された汚泥は戻りライン(50)を介してプラントのRASライン(28)へ戻される。或いは、プラグ流反応器(30)を出たオゾン処理された汚泥又は液流を、RASの流れの残りの部分から別のラインによって活性汚泥池(20)へ戻してもよく、又は廃水処理プラントの異なる部分へ戻すこともできる。一般に、主なRASの流れが無酸素また嫌気性池へ向かう場合、オゾン処理された汚泥(高度に酸素処理される)は有酸素又は好気性池へ向かうことが好ましいことがある。そうでない場合には、オゾン処理された汚泥の酸素含有量によって、無酸素又は嫌気性の段階に必要な条件を混乱する(disrupt)可能性がある。
【0023】
RASライン(28)又は戻りライン(50)の末端には、オゾン処理された汚泥を活性汚泥池(20)の表面又は十分な深さのところへ戻し、活性汚泥池(20)の中でオゾン処理された汚泥が大量の液体と適切に混合することを保証するように適合された、任意選択の排出機構、排出装置又は出口ノズル配列(図示せず)が存在する。排出機構又は出口ノズル装置(図示せず)は、酸素が先に示した工程に戻るのを促す働きもする。
【0024】
開示される汚泥オゾン処理システムの背景となる動作原理は、プラグ流反応器においてバイオソリッドと溶解したオゾンが接触することを含み、その中で、酸化剤(溶解したオゾン)とバイオソリッドの一次接触及び反応が生じる。この工程は、液流中でのオゾンの効率的な溶解を促すために、汚泥の液流又は混合液とオゾン富化ガスとの間の効果的な気体−液体接触を必要とする。効率的な気体−液体接触は、適切に設計されたプラグ流反応器及びオゾン富化ガス注入技術によって得られる。
【0025】
プラグ流反応器におけるオゾン富化ガスとバイオソリッドの間の反応では、オゾンによって引き起こされる細菌の細胞壁の化学酸化の結果として、細菌細胞の細胞壁が破られる又は弱められる。この細菌の細胞壁の破損は細胞溶解として認識され、それによって細菌細胞の細胞内容物の放出が起こる。細胞内容物は一般に、タンパク質、脂質、多糖及び他の糖、DNA、RNA並びに有機イオンで構成される液体マトリックスである。細胞溶解の結果として、そうでない場合にはソリッドハンドリング工程で蓄積及び放出されるバイオソリッドの固形の細胞が、基質(COD)成分に変えられ、その後、活性汚泥処理池中で細菌によって消費される。
【0026】
過剰な細菌細胞又はバイオソリッドと溶解したオゾンとの間の接触時間の範囲を狭めることによって細胞溶解反応の高い選択性を得るために、プラグ流反応器が用いられ、その結果、オゾンは、細菌細胞の溶解(「一次反応」)をもたらす酸化工程にのみ、又は主に当該酸化工程に用いられるようになる。理想的には、オゾン供与量及び液体−気体の接触時間は、更に細胞内容物を酸化(「二次反応」)しないように制限される。こうしてオゾンの最も効率的な使用が可能になり、最小のオゾン供与量で最大の汚泥の減量が得られる。好ましい接触時間は、約10〜60秒の間の範囲である。
【0027】
汚泥に取り込まれるオゾン供与量は、ガス流中のオゾン濃度の調節若しくは汚泥に注入されるオゾン富化ガスの流量の調節、又はその両方によって制御することもできる。オゾン供与量の制御は、最小のオゾン使用量で所望の細胞溶解活性を得ることを目的としている。
【0028】
次に図2を見ると、開示される実施形態によるプラグ流反応器内での汚泥のオゾン処理を用いた活性汚泥処理工程の動作性能を、オゾン処理を連続撹拌反応方式でRASの一部に適用し、次いでそれが活性汚泥池へ直接戻される活性汚泥処理工程を含む、従来技術に教示された汚泥減量工程と比較して描いたグラフが示してある。どちらの例にも同じオゾン流量が適用されている。図2に見られるように、本発明のオゾン処理工程に伴うより急なプロファイルの曲線(60)は、細胞溶解工程が生じる速度がより速く、適用されたオゾンの単位量あたりのソリッドの減量又は除去が全体的に増したことを示している。両方のケースに適用されたオゾンの総供与量が同じである場合、従来のオゾン処理工程を用いると、曲線(62)で示されるように約400mg/Lのソリッドが除去されるのに比べて、本発明のオゾン処理工程を用いると、曲線(60)で示されるように最初の40分以内に約1600mg/Lのソリッドが除去される。
【0029】
表1は、前述のオゾン処理工程を用いた廃水処理設備におけるバイオソリッドの生成と、同じ廃水処理設備で本発明の汚泥オゾン処理反応器及び関連工程を用いない場合のバイオソリッドの生成との他の比較を示している。
【0030】
表2も、本明細書において開示される汚泥オゾン処理システム及び工程の汚泥減量性能と、報告されている他の様々な汚泥オゾン処理の例との比較を示している。表2に見られるように、本明細書において開示される汚泥オゾン処理システムの除去率(すなわち、使用されたオゾン1kgあたりの除去された全汚泥のkg数)は、従来技術の文献に開示されたシステムの見かけ上の除去率をはるかに上回っている。
【0031】
表1 バイオソリッドの減量
【表1】

【0032】
表2 汚泥減量システムの比較
【表2】

【0033】
図3〜8は、本発明の汚泥処理工程の代替的実施形態を示している。特に図3は、オゾン富化ガスがプラグ流反応器(30)の又はそれに近接する複数の位置に注入される、或いは他の方法で導入される汚泥処理工程の実施形態を示している。複数箇所の注入は、プラグ流反応器(30)中で行われる必要がある改善された気体−液体接触をより正確に制御する、又は実現するのに有益である可能性がある。
【0034】
図4も、プラグ流反応器(30)からの戻り管路(50)が活性汚泥池(20)に直接戻されるのではなく、消化槽、汚泥安定化ユニット又は二次処理池(70)など、プラグ流反応器(30)の下流の他のいくつかの後処理工程へ向かう、本発明の汚泥処理システム及び工程の他の実施形態を示している。
【0035】
図5は、プラグ流反応器(30)が、ポンプ(34)、及びオゾン富化ガスをポンプ(34)又はその近くに注入するように適合されたオゾン富化ガス注入システム(40)を含む、本発明の汚泥処理システム及び工程の実施形態を示している。
【0036】
図6は、プラグ流反応器(30)内で処理する汚泥を、汚泥用シックナー又はソリッドを濃縮するための他の装置(80)によって前処理する、汚泥オゾン処理システム(12)のさらに他の実施形態を示している。これに代え、プラグ流反応器(30)へ向かわさせる汚泥を水(図示せず)で希釈して、プラグ流反応器(30)に入る、より低いソリッド濃度を有する液流を得ることもできる。
【0037】
開示される本発明の実施形態と共に使用することができるさらに他の前処理、又は前処理技術は、プラグ流反応器へ向かわせる前に、汚泥を消化槽、或いは汚泥の安定化又はソリッドハンドリング用の他の手段に通すことを含む。本発明の汚泥オゾン処理システム及び工程と適合性のあるさらに他の汚泥前処理技術には、汚泥への安定化剤の添加、超音波の応用、均質化、及び他の混合又は撹拌手段が含まれる。また、細菌細胞の溶解を容易にする、又は汚泥を消化する能力を高める化学薬品の使用も可能である。
【0038】
図7は、オゾン富化ガスと液流の間の最初の気体−液体接触が、プラグ流反応器(30)の上流及び/又はRASライン(28)で生じる、本発明の汚泥オゾン処理システム(12)及び方法の実施形態を示している。図示した実施形態では、スパージャー、ディフューザー、ベンチュリ装置、又は高速混合ノズルなどの気体−汚泥の接触器装置(82)が、プラグ流反応器(30)の上流に配設されている。気体−汚泥の接触器装置(82)は混合物をプラグ流反応器(30)へ放出し、そこで細菌細胞の溶解及び他の反応が生じる。
【0039】
最初の気体−液体接触がRASライン(28)又はプラグ流反応器(30)の上流で生じる、本発明の汚泥オゾン処理システム及び工程の実施形態では、オゾン富化ガスを液流より上の上部空間に供給してもよく、又は圧力下において液流に対して所定の向きで所定の混合領域(例えば、機械的に撹拌される気体−汚泥の接触器装置のインペラ領域、又は所定の角度及び距離で液体の表面と向かい合うように配向されたノズル、スパージャー、ディフューザなどの注入装置)に供給することができる。
【0040】
図8は、処理される流体が、浄化槽の底流でなく、他の形でRASから方向転換されたものでもなく、直気池29から管路39を介して取り出される「混合液」の流体である代替的実施形態を示している。
【0041】
膜バイオリアクタの構成を採用する活性汚泥処理システムでは、この別の配置によって浄化槽を使用する必要がなくなり、その代わりに、プラグ流反応器(30)又は他の高選択性のオゾン処理反応器に結合されたポリマー又はセラミックの膜ユニット(図示せず)が用いられる。そうした配置では、プラグ流反応器又は他のオゾン処理反応器は、「混合液」型の液流をオゾンで処理する。
【0042】
前述の実施形態における効率的でコスト効果の高い汚泥のオゾン処理には、(i)主に細胞を溶解する又は破るためにオゾンを使用すること、すなわち細胞溶解反応に対する高い選択性を得ること、(ii)完全に又は部分的に溶解した細胞が、反応器内で余分なオゾンに曝されるのを制限すること(余分なオゾンに曝されると、細胞内容物が反応器内に完全に放出され、その後、放出された基質が活性汚泥池内で細菌細胞によって生物学的酸化を受けるはるかに安価な選択肢によるのではなく、余分なオゾンによって放出された基質がコストのかかる化学酸化を受ける可能性があるため)、及び(iii)反応器内の細菌細胞に対してきわめて狭い範囲の滞留時間分布を実現することの3つの工程条件が存在する必要がある。
【0043】
プラグ流反応の手法を使用することによって、反応器又は接触器の中で、こうした望ましい工程条件すべてを実現することが可能になる。プラグ流反応の手法は、具体的には、汚泥−オゾンの流れが最低限の逆混合によって生じ、且つ接触が主としてほぼ管状構造の中で生じるように設計することによって達成される。とりわけ図示した実施形態では、滞留時間が規定又は制御され、細胞溶解反応の高い選択性が得られる。前述の実施形態では、細胞と溶解したオゾンの間の接触時間の範囲を狭めること(すなわち狭い滞留時間分布)によって細胞溶解反応の高い選択性を得るために、プラグ流反応が用いられ、その結果、オゾンは細胞溶解をもたらす反応(「一次反応」)のみに使用され、オゾン処理が引き続き細胞内容物をさらに酸化すること(「二次反応」)も、一次反応の生成物を酸化すること(「三次反応」)もなくなる。こうして最も効率的なオゾンの使用が可能になり、最小のオゾン供与量で最大のバイオソリッド又は汚泥の減量が得られる。
【0044】
図示した実施形態に関して説明したように、溶解するように供給されるオゾンの速度をバイオソリッドと溶解したオゾンの反応速度に合わせるために、プラグ流反応器の所定の長さに沿って、気体注入箇所のうちの1つ又は複数が使用される。これによってオゾン供給の過不足が回避され、また細胞溶解に対するオゾンの効率的な使用が促されると同時に、細胞内容物の酸化に対するオゾンの使用が回避される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本明細書において開示された本発明の汚泥処理工程の実施形態を利用する際には、システムの設計又はシステムの動作において、選択されたパラメータを制御することが望ましい。溶解するように供給されるオゾンの速度を、プラグ流反応器の長さに沿って、バイオソリッドと溶解したオゾンの反応速度に関連付けることが好ましい。オゾン供給をプラグ流反応器内でのバイオソリッドの反応速度と相互に関係付けることによって、オゾンの過剰供給又は供給不足が回避され、それにより、細菌細胞の溶解に対するオゾンの効率的な使用が促されると同時に、二次反応に対するオゾンの使用が回避される。
【0046】
オゾンの注入を伴うプラグ流反応器は、汚泥がプラグ流反応器をただ一回通過することによって、不要又は過剰な細菌細胞のほぼ完全で十分均一な細胞溶解が得られるように設計され操作される。好ましくは、方向転換され、プラグ流反応器によって処理される汚泥の体積を変えること、滞留時間分布を厳密に管理すること、又はオゾン供与量を変えることによって、減量される汚泥の量を制御することができる。或いは、所望の汚泥の除去を実現するのに反応器を複数回通過することが必要になるように、高選択性の反応器を設計し動作させることもできる。またバッチ式反応器システムで得られる滞留時間はプラグ流反応器と同様の狭い範囲内で制御されるため、プラグ流反応器の代わりにバッチ式反応器を用いて、優れた反応選択性を得ることが可能である。
【0047】
栄養物と微生物(F/M)の比、すなわち1日に活性汚泥池に入る基質物質のグラム数と、活性汚泥池内のグラム単位の細菌細胞の量との比の典型的な値は、利用される活性汚泥工程のタイプに応じて、細菌細胞1グラムにつき1日あたり約0.04〜0.2グラムの基質物質の範囲である。同様に、細菌の基質物質の消費後に新たに合成される細菌細胞の産生量は、消費された基質物質1kgにつきバイオソリッド約0.2〜0.6kgである。したがって、汚泥のオゾン処理に本発明の工程を用いて、プラグ流反応器へ向けられる汚泥の量、滞留時間、及び1日に活性汚泥池に導入される新しい基質物質の平均量(kg単位)に、約0.2〜0.6kgの間の汚泥を減量するのに必要な反応器に注入されるオゾンの量をかけたものがモデル化される、又は経験的に決められる。経済的な観点からは、工程において消費されるオゾンのコストに対して、バイオソリッドの体積に関連付けられるソリッドハンドリングの省略によるコスト削減を算出することができる。
【0048】
先に示したオゾンを用いて汚泥を処理する方法及びシステムは、単独で又は他の汚泥減量技術と共に利用することができる。さらに、本明細書に記載された好ましい工程に含まれる特定の各ステップ、及び好ましいシステム中の各構成要素は、使用される特定の活性汚泥処理システムの特有の設計及び動作要件、並びに所与の活性汚泥処理工程に対して予想される動作環境に適合するように、簡単に変更又は調整される。
【0049】
例えばオゾン発生システムと関連して使用される原料ガスは、空気、酸素を富化した空気、純粋な酸素ガス又はほぼ純粋な酸素ガスを含むことができる。しかし、中心となる活性汚泥処理工程もある基本的な酸素要求量を有するため、原料ガスとしてほぼ純粋な又は純粋な酸素ガスを使用することが好ましい。さらに、純粋な又はほぼ純粋な酸素の原料ガスの使用、及びプラグ流反応器の中又はその近くへのオゾン富化ガスの注入を、活性汚泥池での活性汚泥工程における生物学的処理に対する全酸素要求量のすべて又はかなりの部分が、汚泥オゾン処理システムによって提供されるような形で制御することができる。
【0050】
前述のことから、本発明が、オゾン富化ガスを用いて汚泥を処理する方法及びシステムを提供するものであることを理解すべきである。本明細書において開示した本発明を、特定の実施形態及びそれに関連付けられた工程を用いて説明してきたが、当業者には、特許請求の範囲に示す本発明の範囲から逸脱することなく、又はそのすべての本質的な利点を犠牲にすることなく、本発明に多くの修正及び変更を加えることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性汚泥処理池に流体連結され、該活性汚泥処理池からのバイオソリッドを含む液流を受け入れるように適合されたプラグ流型の(a plug−flow type)オゾン処理反応器と、
オゾン富化ガスの供給源と、
該オゾン富化ガスの供給源に連結され、該オゾン処理反応器内で該液流にオゾン富化ガスを注入するように適合されたガス注入システムと、
バイオソリッドの細胞溶解及び汚泥の減量を容易にするように適合されたオゾン処理反応器と、
該オゾン処理された液流を該活性汚泥処理池に移送するための、該オゾン処理反応器に連結された戻り管路と
を含む、汚泥処理システム。
【請求項2】
前記オゾン富化ガスの供給源が、酸素の供給源に連結されたオゾン発生装置をさらに含み、前記オゾン富化ガスが、オゾンを富化した酸素ガスである、請求項1に記載の活性汚泥処理システム。
【請求項3】
前記オゾン富化ガスの供給源が、周囲空気の供給源に連結されたオゾン発生装置をさらに含み、前記オゾン富化ガスが、オゾンを富化した空気である、請求項1に記載の活性汚泥処理システム。
【請求項4】
前記オゾン富化ガスの供給源が、酸素を富化した空気の供給源に連結されたオゾン発生装置をさらに含み、前記オゾン富化ガスが、オゾンを富化した空気−酸素の混合物である、請求項1に記載の活性汚泥処理システム。
【請求項5】
前記ガス注入システムが、前記オゾン処理反応器内に配設された1つ又は複数のノズルをさらに含む、請求項1に記載の活性汚泥処理システム。
【請求項6】
前記ガス注入システムが、前記オゾン処理反応器内に配設されたベンチュリ装置をさらに含む請求項1に記載の活性汚泥処理システム。
【請求項7】
前記ガス注入システムが、前記オゾン処理反応器に近接して配設された複数の注入装置をさらに含む、請求項1に記載の活性汚泥処理システム。
【請求項8】
汚泥処理システムが、活性汚泥を活性汚泥池へ再循環させるように適合された返送活性汚泥(RAS)ラインをさらに含み、前記オゾン処理反応器がRASラインに連結される、請求項1に記載の活性汚泥処理システム。
【請求項9】
活性汚泥池とオゾン処理反応器の間に置かれた前処理サブシステムをさらに含み、該汚泥前処理サブシステムが、前記液流を調節して前記オゾン処理反応器内の前記バイオソリッドの細胞溶解を最適化するように適合される請求項1に記載の活性汚泥処理システム。
【請求項10】
前記液流が混合液の流れである、請求項1に記載の活性汚泥処理システム。
【請求項11】
前記液流が汚泥の流れである、請求項1に記載の活性汚泥処理システム。
【請求項12】
活性汚泥池で廃水を処理するステップと、
バイオソリッドを含む液流を、該活性汚泥池から高選択性のオゾン処理反応器へ向けるステップと、
該オゾン処理反応器又はその上流で該液流にオゾン富化ガスを導入して、該オゾン処理反応器内での該バイオソリッドとオゾンの相互作用によって該バイオソリッドの細胞溶解を引き起こすステップと、
該細胞溶解によって生じた副生成物を含む該オゾン処理された液流をバイオリアクタへ放出し、前記副生成物をさらに生物学的に酸化するステップと
を含む、汚泥減量方法。
【請求項13】
オゾンを発生させ、該オゾンを気体と混合することによってオゾン富化ガスを生成するステップをさらに含み、オゾンの割合が6〜15体積パーセントである、請求項12に記載の汚泥減量方法。
【請求項14】
オゾンを発生させ、該オゾンを酸素と周囲空気の混合物と混合することによってオゾン富化ガスを生成するステップをさらに含み、オゾンの割合が6〜15体積パーセントである請求項12に記載の汚泥減量方法。
【請求項15】
前記バイオソリッドを含む液流を前処理するステップをさらに含む、請求項12に記載の汚泥減量方法。
【請求項16】
オゾン富化ガスを前記オゾン処理反応器に導入する前記ステップが、該オゾン処理反応器内の複数の位置にオゾン富化ガスを注入することをさらに含む、請求項12に記載の汚泥減量方法。
【請求項17】
オゾン処理された液流を放出する前記ステップが、前記オゾン処理された液流を放出して活性汚泥池へ戻すことをさらに含む、請求項12に記載の汚泥減量方法。
【請求項18】
前記オゾン処理反応器がプラグ流反応器である請求項12に記載の汚泥減量方法。
【請求項19】
廃水処理工程の中で、バイオソリッドを含む液流を高選択性のオゾン処理反応器に向けて送るステップと、
該オゾン処理反応器又はその上流で該液流にオゾン富化ガスを導入して、該オゾン処理反応器内での該バイオソリッドとオゾンの相互作用によって該バイオソリッドの細胞溶解を引き起こすステップと、
該引き起こされた細胞溶解によって生じた副生成物を含む該オゾン処理された液流をバイオリアクタへ放出し、該副生成物をさらに生物学的に酸化するステップと
を含む、汚水処理工程におけるバイオソリッドを減量する方法であって、
キログラム単位の減量されたバイオソリッドの、キログラム単位のオゾン使用量に対する比が10以上である、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−505602(P2010−505602A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530624(P2009−530624)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/079842
【国際公開番号】WO2008/042751
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(392032409)プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】