説明

オゾン水の製造方法及び製造装置

【課題】少ない炭酸ガスの使用量で発泡を生じることなく、しかも炭酸ガスを注入した超純水中にオゾンを溶解させる場合よりも安定化されたオゾン水の製造方法及びオゾン水の製造装置を提供する。
【解決手段】オゾンを溶解した炭酸水を超純水に溶解させた下流において、この超純水中に所定量の炭酸ガスをさらに溶解させる。さらに溶解させる炭酸ガスの量は、この溶解点とユースポイント間に超純水の電気伝導度を測定する比抵抗測定器又はpH計からなる炭酸ガス濃度測定装置6を配置して、炭酸ガス濃度測定装置の出力信号により制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通水中のオゾンの分解を抑制したオゾン水の製造方法及び製造装置に係り、さらに詳しくは、電子材料の洗浄において、オゾン濃度が高く、安定した濃度のオゾン水を供給可能なオゾン水の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体用シリコン基板等の電子材料の表面から異物を取り除くためにウエット洗浄が広く行われており、近年洗浄工程の簡略化、省資源化等の要請から強い酸化力を有するオゾン水がウエット洗浄に用いられるようになってきている。
【0003】
このようなオゾン水の製造方法としては、超純水の電解により生成するオゾンを超純水に溶解させる方法が知られている。
【0004】
この方法では、オゾン水中の溶存オゾンは経時的に分解して酸素ガスとなるため長距離配管による移送は困難であり、このため洗浄装置等の近くにオゾン水の製造装置を配設しなければならず洗浄装置等の設計やレイアウトに制約を受ける上に、複数のユースポイントにオゾン水を供給する必要がある場合にはオゾン水の製造装置を複数設置しなければならないという問題がある。
【0005】
オゾンが分解して酸素になるのを抑制する方法として、超純水に予め炭酸ガス(CO2 )を溶解させ、この炭酸ガスの溶解した超純水にオゾンを溶解させる方法が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−37695号公報 この方法では、超純水供給ラインにオゾン溶解装置が設置され、このオゾン溶解装置の前段において炭酸ガスが超純水供給ラインに注入される。なお、このオゾン溶解装置に供給されるオゾンは、超純水供給ラインから超純水の一部を分取ラインで分取し電解装置で電解した後、気液分離装置で分離したものである。なお、気液分離装置の液相と電解装置の電極槽とは配管によって連結されており、電解装置の電極槽で消費されただけの超純水が気液分離装置の液相を介して分取ラインから供給されている。
【0006】
しかしながら、このような従来のオゾン水の製造方法には次のような問題があった。
【0007】
すなわち、超純水の電解装置では、炭酸水を電解しているためオゾンと炭酸ガスを溶解した超純水が生成するが、このときオゾンは酸素との混合物に20%以下、通常は10%程度含まれる成分として生成し、酸素と炭酸ガスも含んだ混合気体の分圧に相当する分だけが超純水中に溶解する。
【0008】
すなわち、超純水の電解において、炭酸ガスの濃度を高くするとオゾンの溶解量が減少し、特に、飽和溶解度の近く(pH3.5近傍)まで溶解させると気泡の発生によるバブリング効果で、さらにオゾンの溶解量の低下が進んでしまうという問題があった。なお、炭酸ガスは、水中でイオンを生成するため正確にヘンリーの法則に従うわけではないが、炭酸ガスの溶解量が多くなると確実にオゾンの溶解量は減少する。
【0009】
一方、オゾンの分解抑制の効果は、炭酸ガス濃度を高くするほど大きくなるが、前述のとおり、炭酸ガスの濃度を高くするとオゾンの分圧が相対的に低下しさらにバブリング効果によりオゾンの溶解量が低下してしまうという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、従来の炭酸水の電解による安定化されたオゾン水の製造方法には、ユースポイントが離れた位置にあると炭酸ガスによるオゾン安定化効果が薄れてオゾン濃度が低下してしまうという問題があった。
【0011】
また、電解時に超純水の炭酸ガス濃度を高くしてもバブリング効果によりオゾンは炭酸ガスとともに気泡となって放出されてしまい、超純水のオゾン濃度を高めることにはならない上に、洗浄時に炭酸ガスが気泡となってウェーハなどの被処理物に付着してしまうという問題があった。
【0012】
なお、炭酸ガスは、オゾンの分解を抑制する作用をする反面、水中で重炭酸イオンや炭酸イオンを生成するため正確にヘンリーの法則に従うわけではないが、多量に存在するとオゾンの分圧を小さくしてオゾンの溶解量を減少させてしまう。
【0013】
本発明者は、このような従来の問題を解決すべく研究をすすめたところ、オゾン水製造用の電解装置に供給する超純水に炭酸ガスを注入して電解し、オゾンガス溶解装置から離れた下流において、炭酸ガスを超純水に追加注入することにより、長い距離にわたって高濃度の安定なオゾン水を供給できることを見出だした。
【0014】
本発明は、かかる従来の問題を解消すべくなされたもので、電解時の炭酸ガス濃度をさほど高くすることなく、しかも炭酸ガスを注入した超純水中にオゾンを溶解させる場合よりも安定化されたオゾン水の製造方法及びオゾン水の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のオゾン水の製造方法は、上記目的を達成するため、 炭酸ガス含有水を電解してオゾンを生成する電解工程と、前記電解工程で生成したオゾンを含む炭酸ガス含有水からオゾンと炭酸ガスを分離する気液分離工程と、前記気液分離工程で超純水から分離されたオゾンと炭酸ガスを実質的に炭酸ガスを含まない超純水供給ラインの超純水中に溶解させるオゾン・炭酸ガス溶解工程と、前記オゾン・炭酸ガス溶解工程を経た超純水中にその下流において所定量の炭酸ガスをさらに溶解させる炭酸ガス濃度調整工程とを有することを特徴としている。
【0016】
より具体的には、本発明のオゾン水の製造方法は、第1の超純水供給ラインを流れる超純水に炭酸ガスを溶解させる炭酸ガス溶解工程と、前記炭酸ガスを溶解させた超純水を電解装置に供給し電解によりオゾンを生成する電解工程と、電解工程で生成したオゾンと炭酸ガスを含む超純水からオゾンと炭酸ガスとを分離する気液分離工程と、前記気液分離工程で超純水から分離されたオゾンと炭酸ガスを第2の超純水供給ラインを流れる実質的に炭酸ガスを含まない超純水中に溶解させるオゾン・炭酸ガス溶解工程と、前記オゾン・炭酸ガス溶解工程を経た超純水中にその下流において所定量の炭酸ガスをさらに溶解させる炭酸ガス濃度調整工程とを有することを特徴としている。
【0017】
本発明のオゾン水の製造方法を遂行するには、炭酸ガスを溶解した超純水を電解してオゾンと炭酸ガスを生成する電解装置と、前記電解装置で生成したオゾンと炭酸ガスを含む超純水から気体成分を分離する気液分離装置と、前記気液分離装置で分離したオゾンと炭酸ガスを前記超純水供給ラインを流れる超純水中に溶解させるオゾン・炭酸ガス溶解装置と、前記超純水供給ラインの前記オゾン・炭酸ガス溶解装置より下流に配置されて前記超純水供給ラインを流れる超純水中にさらに炭酸ガスを溶解させる炭酸ガス溶解装置と、
前記炭酸ガス溶解装置より下流に配置されて前記超純水供給ラインを流れる超純水中の炭酸ガス濃度を測定する炭酸ガス濃度測定装置と、前記炭酸ガス濃度測定装置の出力信号をよって、前記炭酸ガス溶解装置への炭酸ガスの供給量を制御する炭酸ガス濃度制御装置とを有することを特徴とするオゾン水製造装置が用いられる。
【0018】
より具体的には、第1の超純水供給ラインと、第1の超純水供給ラインから分岐した第2の超純水供給ラインと、第2の超純水供給ラインを流れる超純水中に炭酸ガスを溶解させる炭酸ガス溶解手段と、第2の超純水供給ラインから供給される炭酸ガスを溶解した超純水を電解してオゾンと炭酸ガスを生成する電解装置と、前記電解装置で生成したオゾンと炭酸ガスを含む超純水から気体成分を分離する気液分離装置と、前記気液分離装置で分離したオゾンと炭酸ガスを第1の超純水供給ラインの第2の超純水供給ラインとの分岐点より下流において第1の超純水供給ラインを流れる超純水中に溶解させるオゾン・炭酸ガス溶解装置と、第1の超純水供給ラインの前記オゾン・炭酸ガス溶解装置より下流に配置されて第1の超純水供給ラインを流れる超純水中にさらに炭酸ガスを溶解させる炭酸ガス溶解装置と、前記第1の超純水供給ラインの前記炭酸ガス溶解装置より下流に配置されて第1の超純水供給ラインを流れる超純水中の炭酸ガス濃度を測定する炭酸ガス濃度測定装置と、前記炭酸ガス濃度測定装置の出力信号をよって、前記炭酸ガス溶解装置への炭酸ガスの供給量を制御する炭酸ガス濃度制御装置とを有することを特徴とするオゾン水製造装置が有利に用いられる。
【0019】
第1の超純水供給ラインに通水する超純水としては、比抵抗値18.2MΩcm以上、TOC濃度が1ppb以下、金属不純物が10ppt以下、シリカ:0.1ppb以下、微粒子0.05μmサイズで1〜2個/ml程度の純度の高いものが適している。
【0020】
第1の超純水供給ラインに炭酸ガスを溶解させる炭酸ガス溶解手段としては、エジェクタやPTFE製の中空糸膜装置等を使用することができる。
【0021】
本発明に用いられる電解装置としては、例えば株式会社コアテクノロジー社から発売されている電解オゾン水製造装置を用いることができる。この電解オゾン水製造装置は、次の反応により陽極でオゾンと酸素を生成し、14〜20 重量%のオゾン濃度のオゾン水を生成することができるが、実際に超純水に溶解するのは、10重量%どまりで、過剰分はオゾンガス溶解装置から排気される。
【0022】
また、第2の超純水供給ラインにオゾンと炭酸ガスとを溶解させるオゾン・炭酸ガス溶解装置としては、例えばPTFE製の中空糸膜装置が適している。PTFE製の中空糸膜装置は、オゾンと炭酸ガスとを共に超純水に溶解させることができる。このように炭酸ガスとオゾンを同時にPTFE膜を介して溶解させる方式は、炭酸ガスとオゾンとを別個に溶解させる場合よりも効果が大きく、装置の構成も簡単にすることができるので本発明に適している。
【0023】
本発明における炭酸ガスの溶解している超純水の炭酸ガス濃度は、比抵抗測定器又はpH計で測定可能である。
【0024】
ちなみに、超純水の炭酸ガス濃度と比抵抗の値は図2に示すような相関性があり、炭酸ガスを溶解した超純水の比抵抗とpHの値は、図3に示すような関係にある。
【0025】
このように、超純水の炭酸ガス濃度と比抵抗とは相関し、かつ炭酸ガスの飽和溶解度は本発明の対象とする範囲より非常に高いので、たとえば図4に示すような関係から、超純水の流量が一定の場合、超純水の比抵抗を測定し、これを所定の値になるように炭酸ガスの供給量をコントロールすることで、超純水中に一定濃度の炭酸ガスを溶解させることができる。
【0026】
本発明におけるオゾンガスの溶解された超純水の望ましい炭酸ガス濃度はpHで3.8〜4.5、好ましくは4.0〜4.4の範囲であり、これより低いとオゾン分解抑制効果が低下し、高いとオゾンの溶解度が低くなる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ユースポイントがオゾン溶解装置から離れた位置にあっても、途中でオゾン水中に炭酸ガスが追加的に溶解されるので、炭酸ガスによるオゾン安定化効果が持続しオゾン水としての機能を喪失することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施の形態のオゾン水製造装置を示すもので、このオゾン水製造装置は、オゾン水用の実質的に炭酸ガスを含まない超純水を供給する第1の超純水供給ライン1と、オゾン水を製造する電解装置2と、第1の超純水供給ラインから分岐して電解装置2に超純水を供給する第2の超純水供給ライン3と、第2の超純水供給ライン3と下流の第1の超純水供給ライン1に炭酸ガスを供給する第1及び第2の炭酸ガス供給ライン4、5と、第1の超純水供給ライン1の第2の炭酸ガス供給ライン5による炭酸ガス注入ポイント5pより下流で超純水の炭酸ガス濃度をpH又は導電率として測定する炭酸ガス濃度測定装置6と、炭酸ガス濃度測定装置6の出力信号により第1の超純水供給ライン1に対する炭酸ガス注入量をフィードバック制御する炭酸ガス注入量制御装置7とを備えている。
【0030】
第2の超純水供給ライン3を流れる超純水には、第1の炭酸ガス供給ライン4から炭酸ガス溶解装置8を介して所定の量の炭酸ガスが供給・溶解される。炭酸ガス溶解装置8は、膜を介して一方には超純水が、他方には炭酸ガスが供給されて、膜を介して超純水中に炭酸ガスが溶解される。炭酸ガスを溶解した超純水(炭酸水)は、直流電源9により駆動される電解装置2に供給される。
【0031】
電解装置2の電解ガス(オゾン、酸素、水素)発生部には、イオン交換膜2aが配置され、このイオン交換膜2aの両面にはそれぞれ多孔質の陽極物質2bと陰極物質2cが密着配置されて、供給された超純水は、イオン交換膜2aを固体電解質として電解されて、陰極側にはオゾンと酸素の混合ガスを、陰極側には水素ガスを発生させる。
【0032】
陰極側で生成した水素ガスは、気液分離装置10で気体と液体(ミスト)が分離され、水素ガス送気管11を介して排出される。なお、必要に応じて、この水素ガスを燃料電池(図示せず)へ燃料として供給し電力として回収することも可能である。
【0033】
陽極側で生成したオゾンと酸素の混合ガスは、気液分離装置12で気体と液体(ミスト)が分離されて、送気管13によりオゾンガス溶解装置14へ送られる。なお、陽極側で生成したオゾンと酸素の混合ガスには、超純水から放出された炭酸ガスが含有されている。
【0034】
オゾンガス溶解装置14には、第1の超純水供給ライン1から実質的に炭酸ガスを含まない超純水が供給されており、電解装置2で生成したオゾン、酸素、炭酸ガスの混合ガスは、ここで超純水中に溶解され、溶解されなかったオゾンガス、酸素ガスは排気管15から排出される。なお、オゾンガス溶解装置14は、膜を介して、一方には気液分離装置12で分離されたオゾン、酸素、炭酸ガスの混合ガスが、他方には第1の超純水供給ライン1からの超純水が供給されて混合ガスは膜を透過して超純水中に溶解する。
【0035】
オゾン、酸素、炭酸ガスの混合ガスを溶解した第1の超純水供給ライン1の超純水中には、オゾンガス溶解装置14の下流において第2の炭酸ガス供給ライン5から炭酸ガス溶解装置17を介して炭酸ガスが注入・溶解される。
【0036】
炭酸ガス溶解装置16により炭酸ガスの溶解された超純水は、比抵抗測定器又はpH測定器からなる炭酸ガス濃度測定装置6により溶解している炭ガス量が測定され、その出力信号により、第2の炭酸ガス供給ライン5に設けた炭酸ガス流量制御弁17が制御される。すなわち、炭酸ガス量が設定値より高い場合には炭酸ガス流量制御弁17が絞られ、炭酸ガス量が設定値より低い場合には炭酸ガス流量制御弁18が開放されて超純水中の炭酸ガス濃度が一定濃度範囲にあるように制御される。
【0037】
このようにして製造されたオゾンガスと炭酸ガスを溶解した超純水は、オゾン濃度計18でオゾン濃度が測定されて下流のユースポイントに供給される。
【0038】
次に本発明の一実施例について説明する。
(実施例1)
この実施例に使用したオゾン水製造装置は、図1に示した装置を模擬したものであり、使用した超純水及び実験条件は次の通りである。
【0039】
すなわち、超純水としては、比抵抗値18.0MΩcm以上(20℃、TOC濃度:1ppb以下、金属不純物:10ppt以下、シリカ:0.1ppb以下、微粒子:0.05μmサイズ1〜2個/ml)を使用した。この超純水の第2の超純水供給ライン3における流量は10L/min、電解装置2入口での圧力は、0.2kg/cm2である。
【0040】
また、オゾンガス溶解装置14と炭酸ガス溶解装置16間は、50mのPFAチューブ1/2サイズで接続した。
【0041】
なお、電解装置2としては、株式会社コアテクノロジー社製の電解装置を使用し、炭酸ガス溶解装置8、17としては、簡易PTFEエジェクタを、オゾンガス溶解装置14としてはPTFE製中空糸膜装置を使用した。
【0042】
また、オゾン水の減衰状況を見るために、オゾン濃度計19以外に、オゾンガス溶解装置14の出口側にPFAチューブ1/2サイズを50m接続してその先に別のオゾン水濃度計を設置した(図示せず)。
【0043】
次に操作について説明する。
この実施例のオゾン水製造装置において、第1の超純水供給ライン1に超純水0.05L/minで流しながら、炭酸ガスを、炭酸ガス(99.9%以上)供給圧力1.0kg/cm2 (0.8kg/cm2 でも有効)の条件で溶解させ、この炭酸ガスを溶解した超純水を電解装置2に供給した。この炭酸ガスを溶解した超純水は、電解装置2において電解によりオゾンを生成し(オゾン発生量12g/hr)、生成したオゾンと炭酸ガスを溶解する超純水は、気液分離装置12に送られオゾン、炭酸ガス(及び酸素)が分離され、このオゾンと炭酸ガスの混合ガスはオゾンガス溶解装置14に送られ第1の超純水供給ライン1を圧力60kPa、1.5L/minで流れる実質的に炭酸ガスを含まない超純水中に溶解された。なお、第2の超純水供給ライン3の超純水の流量と第1の超純水供給ライン1の超純水の流量比は、0.05:1.5=1:30である。
【0044】
次に、第1の超純水供給ライン(PFAチューブ)1中のオゾンと炭酸ガスが溶解された超純水のオゾン濃度を、オゾンガス溶解装置出口から10m下流で測定した。
【0045】
なお、以下に実施例との対比のために示した各比較例のうち、比較例1は、第1、第2の超純水供給ラインを流れる超純水のいずれにも炭酸ガスを溶解させなかった場合、比較例2は、第2の超純水供給ラインに炭酸ガスを超純水の流量1.5 l/min、供給圧力1.0kg/cm2 の条件で溶解させた場合、比較例3は、第2の超純水供給ラインだけに超純水の流量1.5 l/min以下、炭酸ガスを供給圧力1.0kg/cm2 の条件で溶解させ、その下流で一部を分取して第1の超純水供給ラインに流した場合の例である。
【0046】
比較例1の炭酸添加がない状態では、30mg/Lのオゾン水濃度であるが、装置を出てから、50mの距離を送水すると、3〜8mg/Lの間で値が推移し、減衰率は、81.7±8.3%となった。
【0047】
比較例2の例では、オゾン水濃度が、60mg/Lと飛躍的に向上しており、かつ50m先におけるオゾン水濃度も45〜52mg/Lの間であり、減衰率も19.2±5.8%と非常に安定している。
【0048】
比較例2のオゾン水はpH5であり、図3、図4のグラフからpH5の場合、溶解している炭酸ガスの量は、約10mg/Lであるので、流量が10L/minであるこの例では、炭酸ガスの合計注入量は、100mg/minとなる。
【0049】
ちなみに、実施例1の場合は、測定したpHが4.3なので、そのときの炭酸ガス注入量は約260mg/Lであり、流量が、10L/minであるから、トータルの注入量は、2600mg/minとなる。
【0050】
したがって、比較例2のオゾン水を実施例1のオゾン水と同じオゾン量とするためには、差分である2500mg/Lの炭酸量を注入する必要であり、実際に不足分に相当する炭酸ガス2500mg/分添加したところ、オゾン水濃度は58mg/Lとなった。
【0051】
なお、炭酸ガスの理論飽和溶解度は約1,500mg/Lであるので、実施例1の程度の炭酸ガスの添加では飽和することはない。
【0052】
このように、本発明の実施例によれば、50m先でのオゾン水濃度は53〜57mg/Lの間で推移し、減衰率も6±2.6%であり、比較例1、2と比べて顕著な効果が認められた。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施例の構成を示す構成図。
【図2】超純水中の炭酸ガス濃度と比抵抗との関係を示すグラフ。
【図3】炭酸ガスを溶解した超純水の比抵抗とpHの関係を示すグラフ。
【図4】所定の流量の超純水を一定の比抵抗とするために必要な炭酸ガス溶解量を示すグラフ。
【符号の説明】
【0054】
1……第1の超純水供給ライン
2……電解装置
2a…イオン交換膜
2b…電極の陽極
2c…電極の陰極
3……第2の超純水供給ライン
4……第1の炭酸ガス供給ライン
5……第2の炭酸ガス供給ライ
5P……炭酸ガス注入ポイント
6……炭酸ガス濃度測定装置
7……炭酸ガス注入量制御装置
8……炭酸ガス溶解装置
9……直流電源
10、12……気液分離装置
11……水素ガス排気管
13……送気管
14……オゾンガス溶解装置配管
15……排気管
16……炭酸ガス溶解装置
17……炭酸ガス流量制御弁
18……オゾン水濃度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガス含有水を電解してオゾンを生成する電解工程と、
前記電解工程で生成したオゾンを含む炭酸ガス含有水から気体成分を分離する気液分離工程と、
前記気液分離工程で超純水から分離された気体成分を実質的に炭酸ガスを含まない超純水供給ラインの超純水中に溶解させるオゾン・炭酸ガス溶解工程と、
前記オゾン・炭酸ガス溶解工程を経た超純水中にその下流において所定量の炭酸ガスをさらに溶解させる炭酸ガス濃度調整工程と
を有することを特徴とするオゾン水の製造方法。
【請求項2】
第1の超純水供給ラインから分岐した第2の超純水供給ラインを流れる超純水中に炭酸ガスを溶解させる炭酸ガス溶解工程と、
前記炭酸ガスを溶解し超純水を電解装置に供給し電解してオゾンを生成する電解工程と、
電解工程で生成したオゾンと炭酸ガスを含む超純水から気体成分を分離する気液分離工程と、
前記気液分離工程で超純水から分離されたオゾンと炭酸ガスを第1の超純水供給ラインの前記第2の超純水供給ラインとの分岐点より下流を流れる超純水中に溶解させるオゾン・炭酸ガス溶解工程と、
前記オゾン・炭酸ガス溶解工程を経た超純水中にその下流において所定量の炭酸ガスをさらに溶解させる炭酸ガス濃度調整工程と
を有することを特徴とするオゾン水の製造方法。
【請求項3】
前記炭酸ガス濃度調整工程における炭酸ガスを溶解させるポイントとユースポイント間に炭酸ガス濃度測定装置が配置され、前記炭酸ガス濃度調整工程における炭酸ガスの溶解量は、前記炭酸ガス濃度測定装置の出力信号によって制御されることを特徴とする請求項1又は2記載のオゾン水の製造方法。
【請求項4】
前記炭酸ガス濃度測定装置による炭酸ガス濃度の測定は、測定対象の超純水の電気伝導度又はpHの測定により行なわれることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のオゾン水の製造方法。
【請求項5】
超純水へのオゾン及び/又は炭酸ガスの溶解は、エジェクタ又は膜を用いて行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のオゾン水の製造方法。
【請求項6】
炭酸ガスを溶解した超純水を電解してオゾンと炭酸ガスを生成する電解装置と、
前記電解装置で生成したオゾンと炭酸ガスを含む超純水から気体成分を分離する気液分離装置と、
前記気液分離装置で分離したオゾンと炭酸ガスを前記超純水供給ラインを流れる超純水中に溶解させるオゾン・炭酸ガス溶解装置と、
前記超純水供給ラインの前記オゾン・炭酸ガス溶解装置より下流に配置されて前記超純水供給ラインを流れる超純水中にさらに炭酸ガスを溶解させる炭酸ガス溶解装置と、
前記炭酸ガス溶解装置より下流に配置されて前記超純水供給ラインを流れる超純水中の炭酸ガス濃度を測定する炭酸ガス濃度測定装置と、
前記炭酸ガス濃度測定装置の出力信号をよって、前記炭酸ガス溶解装置への炭酸ガスの供給量を制御する炭酸ガス濃度制御装置と
を有することを特徴とするオゾン水製造装置。
【請求項7】
第1の超純水供給ラインと、
第1の超純水供給ラインから分岐した第2の超純水供給ラインと、
第2の超純水供給ラインを流れる超純水中に炭酸ガスを溶解させる炭酸ガス溶解手段と、
第2の超純水供給ラインから供給される炭酸ガスを溶解した超純水を電解してオゾンと炭酸ガスを生成する電解装置と、
前記電解装置で生成したオゾンと炭酸ガスを含む超純水から気体成分を分離する気液分離装置と、
前記気液分離装置で分離したオゾンと炭酸ガスを第1の超純水供給ラインの第2の超純水供給ラインとの分岐点より下流において第1の超純水供給ラインを流れる超純水中に溶解させるオゾン・炭酸ガス溶解装置と、
第1の超純水供給ラインの前記オゾン・炭酸ガス溶解装置より下流に配置されて第1の超純水供給ラインを流れる超純水中にさらに炭酸ガスを溶解させる炭酸ガス溶解装置と、
前記第1の超純水供給ラインの前記炭酸ガス溶解装置より下流に配置されて第1の超純水供給ラインを流れる超純水中の炭酸ガス濃度を測定する炭酸ガス濃度測定装置と、
前記炭酸ガス濃度測定装置の出力信号をよって、前記炭酸ガス溶解装置への炭酸ガスの供給量を制御する炭酸ガス濃度制御装置と
を有することを特徴とするオゾン水製造装置。
【請求項8】
炭酸ガス濃度測定装置が、比抵抗測定器又はpH計である請求項6又は7記載のオゾン水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−155186(P2008−155186A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350281(P2006−350281)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【出願人】(598066215)株式会社コアテクノロジー (9)
【Fターム(参考)】