説明

オゾン発生装置およびオゾン発生方法

【課題】オゾン発生効率を的確に向上でき、クリーンなオゾンガスを発生するオゾン発生装置を得る。
【解決手段】放電領域の誘電体又は電極にバンドギャップ2.0eV〜2.9eVの光触媒物質を設け、電源から交流電圧を印加して上記放電領域に放電電力を注入し、原料ガス供給手段より上記放電領域に酸素ガスを供給し、放電によって発する少なくとも428nm〜620nmの光波長を有する放電光と、上記光触媒物質との相互作用で、上記放電領域を通過する上記酸素ガスを酸素原子に解離させ、かつ上記酸素ガスと上記解離した酸素原子とを結合処理しオゾンガスを発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オゾン発生装置およびオゾン発生方法、特に、高圧電極および低圧電極を有し、この間に交流電圧を印加することで放電を生じさせ、オゾンガスを効率良く生成するオゾン発生装置およびオゾン発生方法に関するものである。特にクリーンなオゾンガスを得るオゾン発生装置およびオゾン発生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術においては、次のように各種技術が展開されている。
特許文献1において、オゾン発生器は、純度99.995%以上の酸素ボンベから所定流量を供給する第1原料供給系、および純度99.99%以上の第2の原料ガス(窒素,ヘリウム,アルゴン,又は二酸化炭素)を所定流量供給する第2原料供給系から原料ガスが供給され、電極間に高電圧の交流電圧が印加され、電極間に誘電体を介した無声放電(誘電体バリヤ放電)を発生させ、原料ガスをオゾンガスに変換させている。オゾン濃度の経時低下現象については、原因不明であるが、発生装置で一旦オゾンガスが生成されたものが、高純度酸素では、経時的低下現象が見られ、その経時的低下を抑制する手段として、高純度酸素に窒素ガス等を添加することが有効であるとされている。
【0003】
特許文献2では、オゾン装置の原料ガスである酸素ガスと窒素ガスとの混合割合を1:0.0002(200ppm)から0.0033(3300ppm)に設定することが示されている。また、特許文献2の第2図で窒素ガスの添加量とオゾン発生装置で得られるオゾン濃度の特性を示しており、十分なオゾン濃度(約100g/m3以上)が得られるための窒素添加量として、混合割合を1:0.0002が設定されている。発生装置からの反応毒である窒素酸化物の発生量を低く抑えるために、混合割合を1:0.0033以下に設定している。窒素添加量が100ppm以下の酸素原料ガスであれば、オゾン濃度が20g/m3(9333ppm)しか得られず、窒素添加率3300ppm時のオゾン濃度120g/m3(56000ppm)に対して1/6以下のオゾン濃度しか得られないことが示されている。また、明細書には窒素ガスの代わりにアルゴンガスを高純度酸素に加えたが、アルゴン混合率に依存せず20g/m3(9333ppm)程度のオゾン濃度しか得られず、アルゴンガスによるオゾン濃度を高められる効果がないことが示されている。
【0004】
また、特許文献3において、オゾン発生装置には、TiO2膜を誘電体の放電面に形成したものがある。高純度窒素ガスの添加の代わりに発生器内の誘電体の放電面に金属元素比率10wt%以上のチタン酸化物をコーティングしている。
【0005】
また、特許文献4において、最大オゾン濃度180g/m3が得られるオゾン装置では、経時的オゾン濃度低下を抑制するために、窒素添加量を0.01%〜0.5%にすることが提案されている。
【0006】
従来技術において、無声放電によってオゾンガスを生成するメカニズムは、下記の反応式で生成されると言われている。
Rl; e+O2 ⇒2O+e (酸素の解離)
R2; O+O2 +M⇒O3 +M
(酸素原子と酸素分子による三体衝突に基づくオゾン生成)
R3; e+O3 ⇒O+O2 +e (電子衝突分解)
R4; O3 +熱T⇒O+O2 (熱分解)
R5; O3 +N ⇒O2 +Nl (不純物によるオゾンの分解)
なお、N1はNと異なるものであることを示す。
【0007】
オゾンガスの生成は、Rlの酸素分子から酸素原子に解離し、R2の酸素原子と酸素分子による三体衝突に基づくオゾン生成である。
生成したオゾンの分解は、R3の電子衝突分解、R4の熱分解、R5の不純物によるオゾンの分解等が考えられる。
【0008】
発生器から取り出せるオゾンガスは上記Rl〜R5の反応式のバランス状態でオゾンガスが得られる。つまり、下記の式でオゾンガスが取り出せる。
取り出せるオゾン=(Rl*R2)−(R3+R4+R5+…)
また、先行技術では上記高純度酸素の場合、上記のオゾン生成機構で生成したオゾンは運転していると、経時的にオゾン濃度が低下するため、原料ガスに窒素ガスを添加もしくは放電電極面に光触媒であるTiO2を塗布することで下記の反応が生じ、経時的にオゾン濃度の低下が防止されるとされている。
3*+N2 ⇒O3
3*+TiO2 ⇒O3
【0009】
特許文献1,特許文献2と特許文献3では、オゾン濃度が比較的低い濃度略120g/m3でのオゾン濃度を安定に得るためのものになっている。
なお、それぞれの従来技術においては、下記のような異なった事象が明記されている。特許文献1では、窒素ガス添加以外のガスとしてヘリウム、アルゴン、又は二酸化炭素のガスも効果があると提示されているが、特許文献2では、高純度酸素の場合、アルゴンガスでは効果が無いことが示されている。
【0010】
特許文献1では、第2原料ガスの添加量を10000ppm〜100000ppmとしているが、特許文献2のものでは、200ppm〜3300ppmと異なっている。
特許文献1では、高純度酸素では1時間程度の運転で濃度低下しているのに対して、特許文献3のものでは、7時間程度の運転後の濃度低下と異なっている。
【0011】
また、特許文献1では、第6欄第49行〜第7欄第2行に運転開始直後のオゾン濃度として、第6図では、含有率0vol%時オゾン濃度は75g/mしか得られていないデータをしめしているが、第5図における高純度酸素での運転開始直後のオゾン濃度は、最大濃度の143.5g/m(第3表参照)を示しており、2つの実験データは全く異なる値、現象を示しており、非常に不明瞭な事実を提示している。
【0012】
以上のように、装置で発生したオゾンを酸素ガスに窒素ガス等を添加することで、オゾン濃度の経時的低下を抑制する従来技術は、条件によって結果と効果においてバラツキがあり、特許文献1,特許文献2と特許文献3について実験的に確かめたが、特許文献1と特許文献3については実証出来なく、窒素以外の希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン等)単独の添加では効果がないことが判明した。
【0013】
特許文献1および特許文献4においては、いずれもオゾン濃度低下は経時的な低下としているが、一旦低下すると、元のオゾン濃度に戻らないことが記載されている。元のオゾン濃度に戻らないということは経時的な低下とは判断出来なく、窒素の添加の役目は不明であった。
【0014】
さらに、窒素添加率が略0.15%(1500ppm)以上を添加すると、無声放電によってオゾンガス以外にN25,N2OのNOX副生ガスが多量に生成される。
25+H2O⇒2HNO3
OH+NO2+M⇒HNO3+M
【0015】
また、多量のNOX 副生物が生成されると、NOX ガス成分と原料ガス中に含まれる水分との反応により硝酸(HNO3)クラスタ(蒸気)が生成され、酸素、オゾンガスとともに微量のNOXガス,硝酸クラスタが混合した状態でオゾン化ガスが取り出せる。この微量の硝酸クラスタ量が数百ppm以上含まれると、オゾンガス出口配管であるステンレス配管の内面に硝酸によって酸化クロム等の錆が析出され、クリーンオゾンガスに金属不純物が混入し、半導体製造装置用反応ガスとして金属不純物が半導体の製造に悪影響を及ぼすとともに、生成した微量の硝酸クラスタが半導体製造装置の「オゾンによるシリコン酸化膜のエッチング処理」や「ウェハ等のオゾン水洗浄」に反応毒として悪影響をもたらす間題点があった。
【0016】
従来技術でのオゾン装置では、取出すオゾン濃度が低く、200g/m3以上の高濃度を取出すために、窒素添加率を増やす方法もしくはガス流量を下げる方法しかなかった。窒素添加率を増やす方法では上述したように、NOXによる副生物ガスが増える問題があった。
また、ガス流量を下げると、オゾン発生量が極端に少なくなり、オゾンを利用する側での生産効率が悪くなるなどの問題点があった。
【0017】
さらに、最新の「オゾンによる酸化膜のエッチング装置」や「ウェハ等のオゾン水洗浄」においては200g/m3以上の高濃度のオゾン濃度が必要とされ、オゾン発生量的にはユーザ側の生産上の採算ベースで数十g/h以上のオゾン容量の持つオゾン装置の要求があり、しかも半導体製造装置においては硝酸等の反応毒物質の少ない装置を必要とされている経緯がある。
【0018】
また、オゾンガスの生成効率をアップさせるために、約1%程度の微量N2ガスを添加しているが、発生器内で放電によってN2ガスがNOX,硝酸クラスタ(蒸気)に変換される。
そのため、放電空間(放電領域)ではガス流速が遅いほど、もしくは放電電力を注入すればするほど、窒素酸化物であるNOx生成量が増えるため、オゾン生成効率が低下して取出すオゾン濃度が低下するなどの問題点があった。
【0019】
次に、高濃度オゾンガスを利用した具体的な主な生産装置および上記生産装置にて得られる製品としては、次のものがある。
【0020】
【表1】

【0021】
図24は、従来の高濃度オゾンガスを用いて薄膜をつくる化学的気相成長装置(即ちCVD装置Chemical Vapor Deposition)またはALD薄膜蒸着装置(AtomicLayer Deposition)の一例を示す。
図24において、600はレーザアブレーションにより金属蒸気を得るCVD装置またはALD蒸着装置、601はレーザ装置、602はレーザビーム絞りレンズ、603はチャンバー、604はビーム取り入れ口、607はビーム取り入れ窓、605aはオゾンガス取り入れ口、605bは希ガス取り入れ口、606はガス排出口、608は被処理材テーブル、610は被処理材(半導体ウェハ等)、612は架台、611は白金、ルテニウム、パラジウム等の貴金属の薄膜用金属ターゲット材、A3000はオゾンガス供給システム、618は真空装置である。なお、10Aは希ガスボンベ、617は真空バルブ、619は排気である。
【0022】
従来のCVD装置またはALD薄膜蒸着装置では、酸素ガスボンベ10から酸素ガスと、窒素ボンベ10Bから酸素ガスに対して約0.01〜1%範囲内の窒素ガスと、を混合させたガスをオゾン発生装置A300に供給して、オゾン発生装置で高濃度オゾンガスを発生させ、この高濃度オゾンガスをCVD装置またはALD薄膜蒸着装置に入れ、オゾンの酸化反応処理をしている。装置の動作は、被処理材テーブル608に被処理材610を装着し、真空装置618によって真空引きし、被処理材610の表面に付着した水分等をとる。続いて、100g/m3程度のオゾンガスをチャンバー603に負圧状態で入れ、被処理材テーブル608内のヒータおよび温調部609で約数百度にアップして、被処理材610の表面に吸着した炭素化合物、水分、水素化合物等をオゾンガスによって加熱反応処理をして被処理材610表面の清浄化処理をする(0.クリーニング工程)。
【0023】
次の工程では、真空に引いたチャンバー603で、外部に装着したレーザ装置601からチャンバー内の薄膜材である薄膜ターゲット材611に焦点を合わせて、強力なエネルギーを有するパルスレーザビーム613を当てることにより、局部的加熱で薄膜ターゲット材611から金属蒸気615をチャンバー内に放出し、低気圧の金属蒸気を充満させ、被処理材テーブル608に装着した被処理材の温度制御で表面にサブミクロンから数ミクロン程度の金属粒子を原子層レベルで堆積させる(1.堆積工程)。被処理材の表面に原子層レベルで堆積した金属を300g/m3程度の高濃度オゾンガスをチャンバー内に負圧状態で入れ、被処理材テーブル608内のヒータおよび温調部609で約数百度にアップして、堆積した金属を酸化金属に変換させる(2.オゾン酸化反応工程)。
【0024】
最後の工程は、チャンバー内を不活性ガスである希ガス等にチャンバー内を置換した状態で、被処理材テーブル608内のヒータおよび温調部609で所定温度に加熱処理して、酸化金属を有効な酸化金属結晶にする(3.アニール工程)。上記の1.堆積工程→2.オゾン酸化反応工程→3.アニール工程を繰り返して堆積薄膜が所望の厚さに達するまで繰り返し、機能的に有効な薄膜を形成する。半導体などの薄膜を形成する工程は、上記の工程以外にドーピング工程やエッチング工程、レジスト剥離工程などの種々の複雑な工程があるが、ここでは省略する。
【0025】
薄膜を利用した製品としては、電気装置の基板に実装するコンデンサ、半導体素子、テレビの表示部であるフラットパネル、太陽電池に利用する太陽電池セル、超伝導薄膜素子、磁気記憶テープがある。
これらの製品で利用する薄膜においては、主に次のような目的で薄膜化が要求されている。
i)高集積化 ii)素子の低価格化
iii)高機能化 iv)低電力化
【0026】
このような目的を達成した製品を実現するために薄膜自身の要求性能は、次のような機能を有するものが望まれている。
(1) 半導体薄膜
(2) 絶縁性薄膜
(3) 酸化物金属薄膜
(4) コンデンサ、半導体用としての強誘電体薄膜
(5) 磁気記録用としての強磁性体薄膜
(6) 光電子デバイス用光学材料としての薄膜
(7) 超伝導薄膜
【0027】
(1)の半導体用薄膜としては、酸化シリコン薄膜がある。(2)の絶縁性薄膜としては、絶縁に勝れているZrO,HfOやLnの薄膜が注目されている。(3)の酸化物金属薄膜としては、白金,銅に代わってRuO、SrRuOがある。(4)の強誘電体薄膜としては、不揮発メモリ用のPb(ZrTi1−x)Oや(BaSr1−x)TiOがある。(5)の強磁性体薄膜としては、YFe12等がある。(6)の光学材料としての薄膜としては、LiNbO等の高速光スイッチング機能が注目されており、導波路としての薄膜も注目されている。(7)の超伝導薄膜としては、YBa2CuO7等の
金属酸化物がある。
【0028】
これらの薄膜は、いずれもIV族、III−V族の遷移金属である貴金属の金属酸化物の特殊な環境における結晶成長によって得られるものであって、これらの金属酸化物を得るには、オゾンガスの高い熱力学的酸化能(等価酸素分圧で1018気圧に相当する高圧力酸素に匹敵する酸化)によってのみ実現される薄膜であり、オゾンガス以外ではほとんど不可能なものである。
【0029】
上記のような高機能を有する金属酸化物薄膜を得るための従来のCVD装置およびALD薄膜蒸着装置は下記のような問題点があった。
i)薄膜の性能品質が悪い。
ii)薄膜の性能がばらつく
iii)薄膜の堆積速度が遅い
【0030】
i)、ii)についての原因としては、装置内での各工程における金属不純物や炭素不純物、窒素不純物、水素、水分が混入することで、薄膜素子の絶縁性、漏れ電流の増大、性能のばらつき、薄膜自身の機械的密着性の劣化などの問題があった。
【0031】
従来の高濃度オゾンガスを用いたオゾンガスの濃縮装置では、オゾン発生器から得られた高濃度オゾンガスを、約−60°Cから−100°Cに冷却したシリカゲル等を充填したタンクに通し、液化オゾンとして、充填したシリカゲルに吸着(吸着工程)させた後、この吸着した液化オゾンを約常温まで加熱して、酸素等のキャリアーガスをシリカゲル等を充填したタンクに流し、液化オゾンを蒸発(脱着工程)させることで、オゾン発生器から得られた高濃度オゾンガスより高い超高濃度オゾンガスを得るものである。このオゾン濃縮装置では、オゾンガスに窒素、窒素酸化物(NOx)等の不純物が含まれると、オゾンガスだけでなく、ガスに含まれるNOxも液化し、脱着工程において吸着したNOxが脱着せず、シリカゲルに蓄積され、濃縮装置の濃縮能力が低下するなどの問題点があった。
【0032】
従来のパルプの漂白には塩素漂白が主流を占めていたが、パルプ漂白の際、有害なダイオキシン等の有機塩素系化合物が排出されるため、環境面から問題になり、漂白力があって、有害物質が排出されないオゾン漂白装置が注目されているが、大規模のオゾン装置は実現が困難であることや、オゾンガスに窒素酸化物が含まれることで、パルプ漂白装置の腐食による配管の破損やパルプ繊維を傷めるなどの問題点が懸念されていた。また、オゾン発生器に窒素ガスを添加しない場合は、十分なオゾン発生量が得られなくなり、オゾン発生装置が大きくなるとともに、消費電力が多くなり、オゾン漂白装置の経済的メリットが無くなるなどの問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特公平6−21010号公報(第1―4頁、第1図)
【特許文献2】特許第2641956号公報(第1―4頁、第2−3図)
【特許文献3】特開平11−21110号公報
【特許文献4】特許第2587860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、窒素ガスを添加しない酸素ガス主体の原料ガスでオゾン発生効率を的確に向上でき、クリーンなオゾンガスを発生するオゾン発生装置及びオゾン発生方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
この発明に係わるオゾン発生装置及びオゾン発生方法は、第1の電極と、上記第1の電極に対向してギャップを有する放電領域を形成する第2の電極と、酸素ガスを原料ガスとして供給する原料ガス供給手段と、上記放電領域の誘電体又は上記電極に設けられ、バンドギャップ2.0eV〜2.9eVの光触媒物質を含んだ触媒物質とを有し、上記第1の電極と上記第2の電極との間に電源から交流電圧を印加して上記放電領域に放電電力を注入し、上記原料ガス供給手段より上記放電領域に酸素ガスを供給し、放電によって発する少なくとも428nm〜620nmの光波長を有する放電光と、上記触媒物質との相互作用で、上記放電領域を通過する上記酸素ガスを酸素原子に解離させ、かつ上記酸素ガスと上記解離した酸素原子とを結合処理しオゾンガスを発生させるようにしたものである。
【0036】
また、上記酸素ガスが通過する上記放電領域のガス圧力を0.1MPa〜0.4MPaにするものである。
【0037】
また、上記ギャップを有する放電領域のギャップ間隔を0.6mm以下にしたものである。
【発明の効果】
【0038】
この発明のオゾン発生装置及びオゾン発生方法によれば、窒素ガスを添加しない酸素ガス主体の原料ガスでオゾン発生効率を的確に向上することができ、NOx等の副生物質を含まない又は避けられない量を含むクリーンなオゾンガスを得ることができる。
なお、窒素ガスを添加しない酸素ガス主体の原料ガスとして、純度99.99%以上の酸素を用いても、具体的には、99.995%高純度酸素を用いても、Nが最大許容量として151×10ppb(即ち15ppm)含まれるように、避けられないNが混入し、避けられないNOx等の副生物質が生成するが、この明細書では、クリーンなオゾンガスの中には、避けられないNOx等の副生物質を含むものとする。
この発明に係わるオゾン発生装置は、酸素ガスが通過する放電領域のガス圧力を0.1MPa〜0.4MPaにするので、解離した酸素原子と他の酸素分子との結合作用を促進させることができる。
【0039】
この発明に係わるオゾン発生装置は、放電領域のギャップ間隔を0.6mm以下としたので、無声放電による428nm〜620nm範囲の光波長の放電光の光強度が高まり、バンドギャップ2.0eV〜2.9eVの光触媒物質の励起を促進させる結果となり、酸素ガスの解離促進と同時にオゾン生成効率も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の実施の形態1におけるガス系統の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1におけるガス系統に酸素ガス以外に希ガス等の補助原料ガスを加えた構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1におけるオゾン濃度特性を示す特性図である。
【図4】実施の形態1における酸素分子と光触媒とによる酸素分子の酸素原子への解離メカニズムを示す模式図である。
【図5】実施の形態1における解離した酸素原子と酸素分子との三体衝突によるオゾンの生成メカニズムを示す模式図である。
【図6】実施の形態1のオゾン発生器断面における酸素ガスからオゾン生成までのメカニズムを示す模式図である。
【0041】
【図7】エネルギーギャップE(eV)と吸収光の波長λ(nm)に対する、窒素ガス又は酸素ガスによる放電光の分布範囲と強さを示す図である。
【図8】実施の形態2に用いるオゾン発生器を説明する断面模式図である。
【図9】実施の形態2における単位誘電体電極面積当たりの放電光が光触媒に接触する表面積を示す模式図である。
【図10】実施の形態2における単位誘電体電極面積当たりの放電光が光触媒に接触する表面積とオゾン生成効率の特性を示す特性図である。
【図11】実施形態3に用いるオゾン発生器を説明する断面模式図である。
【図12】実施の形態4に用いるオゾン発生器を説明する断面模式図である。
【図13】実施の形態4におけるセラミック板の放電光波長に対する光透過率特性を示す図である。
【0042】
【図14】実施の形態4におけるセラミック板内に含有する光触媒の含有比率に対するオゾン生成効率比率の特性を示す図である。
【図15】実施形態5に用いるオゾン発生器を説明する断面模式図である。
【図16】実施の形態5における放電電力に対するオゾン濃度特性を示す図である。
【図17】参考例として示すオゾン発生器の構成図である。
【図18】参考例として、高純度酸素ガスに窒素ガスを添加した場合のオゾン濃度特性を示す特性図である。
【図19】参考例として、光触媒物質を用いないときの高純度酸素ガス、および高純度酸素に希ガス等の補助原料ガスを添加した場合のオゾン濃度特性を示す特性図である。
【図20】参考例として、窒素添加率γに対するオゾン生成効率η(mg/J)の特性を示す図である。
【0043】
【図21】酸素ガスが解離可能となる、光波長と酸素分子のエネルギー吸収係数を示す特性図である。
【図22】実施の形態8における、窒素レスオゾンガスを生成するオゾン発生装置を使用したオゾン濃縮装置を示す構成図である。
【図23】実施の形態9における、窒素レスオゾンガスを生成する大型オゾン発生装置と組合せたパルプ漂白装置を示す構成図である。
【図24】従来のレーザアブレーションにより金属薄膜を堆積させる手法とオゾンガスによって、金属薄膜を酸化金属薄膜に化学反応させるCVD装置またはALD薄膜蒸着装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
実施の形態1.
この発明による実施の形態1を図1ないし図6について説明する。図1は実施の形態1におけるガス系統の構成を示すブロック図である。図2は実施の形態1におけるガス系統に酸素ガス以外に希ガス等の補助原料ガスを加えた構成を示すブロック図である。
【0045】
図3は実施の形態1におけるオゾン濃度特性を示す特性図である。図4は実施の形態1における酸素分子と光触媒とによる酸素分子の酸素原子への解離メカニズムを示す模式図である。
【0046】
図5は実施の形態1における酸素原子と酸素分子との三体衝突によるオゾンの生成メカニズムを示す模式図である。
【0047】
図6は実施の形態1のオゾン発生器断面における酸素ガスからオゾン生成までのメカニズムを示す模式図である。なお、明細書中で各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0048】
この発明のオゾン発生装置は、200g/m3 以上の高濃度オゾンガス、半導体製造装置や洗浄装置等のクリーンなオゾンガス、NOX等の副生物を無くした窒素レスオゾンガス,又はオゾン生成効率のよい装置を必要とするところに有効である。
図1において、純度99.99%以上の酸素(原料ガス)を供給するA種原料供給系100は、高純度酸素ボンベ10,減圧弁13,開閉弁15で構成される。原料ガスのガス量を調整する流量調整器(MFC)19を介して、原料ガス25がオゾン発生器300に供給される。
【0049】
なお、酸素ガスとして、純度99.99%以上の酸素を用いても、具体的には、99.995%高純度酸素を用いても、Nが151×10ppb(即ち15ppm)含まれるように、避けられないNが混入するが、Nの混入がより少ない酸素ガスを使用することが望ましい。
【0050】
図2においては、酸素(原料ガス)を供給するA種原料供給系100に加え、純度99.99%以上の窒素ガスを含まない放電の発光強度を強めるための希ガス等の補助原料ガスを所定流量供給するB種原料供給系200を有している。なお、純度99.99%以上の希ガスでも、上述のように避けられないNが混入するが、Nの混入がより少ない希ガスを使用することが望ましい。
【0051】
B種原料供給系200は高純度アルゴンボンベ20,減圧弁21,開閉弁22で構成され、酸素ガス17に対して補助原料ガス25bを500ppm〜50000ppmの範囲、具体的には、10000ppm程度供給した。第1原料ガスのガス量を調整する流量調整器(MFC)19および補助原料ガス量を調整する流量調整器(MFC)23を介して、原料ガス25がオゾン発生器300に供給される。
【0052】
オゾン発生器300には電極301a,301bおよび両電極の対向側に誘電体302が設けられている。誘電体302および電極301bのガス通路面(放電領域の壁面=反応空間の壁面)にはバンドギャップ2.0eV〜2.9eVの光触媒物質を塗布又は吹付けして固着した構成になっている。図1で、オゾン発生器300はA種原料供給系から原料ガス25が供給され、オゾンガス26に変換して圧力調整器(APC)400を介し外部600に出力するようになっている。
【0053】
あるいは、図2で、オゾン発生器300はA種原料供給系から酸素ガス17とB種原料供給系から500ppm程度の微量の補助原料ガス25bが供給され、オゾンガス26に変換して圧力調整器(APC)400を介し外部600に出力するようになっている。アルゴン,キセノン,ヘリウム等の希ガスである補助原料ガスは放電光の発光強度を強めてオゾン生成反応を促進させるものである。
希ガスを含有させることにより、オゾン生成反応を促進させる。希ガスの放電光(紫外光)により、光触媒物質もバンドギャップが、3.1eVのものまで使用可能になるが、オゾン発生性能の安定性においては、2.9eVのものまでの光触媒物質の方が望ましい。
【0054】
オゾン発生器300にオゾンを発生させるためのオゾン電源500は、主としてコンバータ部501、インバータ部502およびトランス部503で構成されており、オゾン発生器300の電極301a,301b間に高電圧の交流電圧を印加させ、電極間に誘電体を介した無声放電(誘電体バリヤ放電)を発生させる構成になっている。
【0055】
反応空間である0.1mmのギャップ間隔の放電領域に高電圧交流電圧を電極間に印加し、無声放電を発生させ、光波長428〜620nmの強力な放電光と放電面に塗布した光触媒の相互作用で、原料ガスの1部の酸素ガスを酸素原子に解離し、反応空間のガス圧力を略0.1MPa〜略0.4MPa(具体的には、0.1MPa〜0.4MPa)の圧力に維持して、解離した酸素原子と他の酸素分子との結合作用を促進させて、高濃度のオゾンガスに変換させられるようになっている。放電光と放電面に塗布した光触媒との相互作用で、酸素ガスを酸素原子に解離するにあたって、酸素原子へ解離させる量を増やすためには、塗布した光触媒の表面積を増大させることが有効である。
【0056】
また、放電光は放電のガス温度が低い程、放電光の光強度が増し、酸素原子への解離を促進する。そのためオゾン発生器300は放電によって発熱する電極を冷却している。この冷却は水等による冷却手段を有しているが、ここでは冷却手段は省略して図示いる。また、図示した放電セル部は1セルのみを示しているが、実際の装置では、図示の放電セルを多段に積層し、ガス通路を並列的に流せるようにして、複数個の放電セルに放電をさせる構成にしている。
【0057】
実施装置では両面電極を冷却できるタイプで、ギャップ長(ギャップ間隔)0.1mm、放電面積約750cm2 で構成したオゾン発生器300とオゾン電源から放電電力Wを約2000Wまで注入し、オゾン発生器300に注入する原料ガス25として、純度99.99%以上の酸素ガス17、もしくはこれに加えて補助原料ガスボンベ20からアルゴン等の希ガスを添加させたものとした。上記の条件でオゾン濃度特性を測定した。
上記の発生器の設定条件において、装置の許容性能評価基準として、下記の設計基準を定めた。
【0058】
放電電力2kWで、原料ガス10L/minでオゾン濃度Cが200g/m3 (93333ppm)以上のオゾンガスが取り出せること。
つまり、上記の条件でのオゾン発生量Y(g/h)は120g/h以上の発生量が得られること。
そのためには、実際に取り出せるオゾン収率X(g/kWh)は下記値以上必要である。 X=(120g/h)/(2kW)=60g/kWh
オゾン発生器自身のオゾン収率X0 と実際に取り出せるオゾン収率Xとの比を50%とすれば、オゾン発生器自身のオゾン収率X0 は120g/kWh以上必要である。
【0059】
そのためには、オゾン生成効率η(mg/J)は下記のように計算され、
η=(120g/kWh)/(60・60S)/1000
=0.033(mg/J)
0.033mg/J以上のオゾン生成効率ηが必要である。
この値を1つの装置の許容基準として、オゾン発生装置および原料ガスの選定基準にする。
酸素ガスに窒素ガスを添加した従来のオゾン装置においては、オゾン生成効率ηが0.033〜0.035mg/J以上の条件は、図20に示したように窒素添加率γは約1.5%以上必要であった。
【0060】
それに対し、実施装置においては、窒素ガスを添加しない高純度原料ガスのみを装置に供給して、図3に実測点を結ぶ曲線で示すオゾン濃度特性が得られた。この場合のオゾン生成効率は、0.039mg/Jとなり、窒素ガスのみを1%添加した場合のオゾン濃度特性に対して同等もしくはそれ以上のオゾン濃度が取り出せることが分かった。
また、オゾン生成効率ηがアップして200g/m3 以上の高濃度オゾンが得られることが分かった。
【0061】
その結果として、原料ガスに窒素ガスを添加させないため、放電によって副生物としてのN25やNOのNOX生成量をなくすことができ、NOXと水分との結合による硝酸(HNO3)クラスタをなくすことができ、オゾン出口配管部等のステンレス金属面と硝酸による金属不純物の生成量をなくすことができた。
【0062】
これらの実施装置と、原料ガスの放電による化学反応過程と、放電による放電光の波長と光触媒との光化学反応等を調べた結果、新規なオゾン生成機構でオゾンが生成できることが分かった。電極面に塗布した光触媒物質は放電光の強力な光を吸収するによって光触媒物質内の価電子帯から伝導帯へ電子がポンピングされ、光触媒物質自身が励起状態になり、励起した光触媒は価電子帯で正孔(ホール)ができる。この励起した光触媒と酸素分子が接触すると、酸素分子の電子と光触媒の正孔との反応(酸素分子の酸化反応)で酸素分子の解離作用が促進され、解離された酸素原子と酸素分子との結合作用の促進によってオゾンが生成される。
【0063】
この発明である光触媒反応機能におけるオゾン生成メカニズムについて、図4において、酸素(分子)ガスの解離メカニズム、図5において、酸素原子と酸素分子からのオゾン生成メカニズム、および図6において、実施装置の酸素ガスからオゾン生成までのメカニズムを示し、放電によって、酸素ガスからオゾンが生成される動作、作用について説明する。最初に酸素分子は図21のように、紫外光245nm以下の波長で連続スペクトルの光吸収スペクトル(紫外線波長130〜200nm)をもっており、酸素分子が紫外光245nm以下のエキシマ光を吸収することで酸素原子に解離し、この解離した酸素原子と酸素分子と第三物質との三体衝突(反応式R2)でオゾンが生成されることは、紫外線を出すエキシマランプ等で知られている。しかし、オゾン発生器のような、酸素ガスを主体にした1気圧以上の高気圧中の無声放電では紫外光245nm以下のエキシマ光の発光は全くない。そのため、無声放電光による酸素原子の解離およびオゾン生成の反応過程は考えられない。
【0064】
図4は、無声放電中での光触媒の固体電子論(バンドギャップ理論)の固体中の電子配位構造と酸素分子の解離メカニズムを模式的に示している。光触媒物質と放電光による光触媒反応機能の動作と作用について説明する。無声放電空間中の電極等の壁面に光触媒を塗布すると、光触媒のバンドギャップの電子配位構造は図4に示すように、バンドギャップ以上のエネルギーを有する無声放電光を光吸収する。そうすると、光触媒は価電子帯から電子が飛び出し伝導帯へ移動(ポンピング)する。
【0065】
電子が移動した価電子帯では正孔(ホール)が形成される。伝導帯に移動した電子は周囲に移動するか、放電領域に電子放出をするかで寿命が終る。つまり、伝導帯に移動した電子は非常に寿命が短く数十psecである。価電子帯の正孔は伝導帯に移動した電子が再結合で戻ってこない限り、存在続けるため、正孔の寿命は200〜300nsecと長い。この正孔が存在する励起状態の光触媒と酸素分子が量子的に接触すると、酸素分子の共有電子を奪いとり、酸素分子を物理的に解離する(光触媒による酸素の吸着解離現象[酸化反応])。
【0066】
この酸素分子の光触媒による解離(酸化)反応式は下記のようになり、酸素ガスを解離するためには、次の2つの解離反応があります。
【0067】
【化1】

【0068】
光触媒物質の材質によってエネルギー準位バンドは、価電子帯と伝導帯との間(禁止帯)のバンドギャップエネルギーが表2のように異なる。次のSiO,Al,TiO(アナターゼ),TiO(ルチル),WO,Fe,Cr,CuO,In,FeTiO,PbO,V,FeTiO,Bi,Nb,SrTiO,ZnO,BaTiO,CaTiO,SnOのバンドギャップエネルギーを示す。
【0069】
【表2】

【0070】
表2−(a)〜表2−(d)において、アルミナセラミック、石英のバンドギャップは7.0eV、7.8eVであり、この物質を光で励起状態にするための光吸収波長は177nm以下もしくは159nm以下の真空紫外光領域であるため、酸素又は酸素とアルゴンガスとの無声放電では177nm、159nmの光を発光することはできない。そのため、無声放電光では、アルミナ、石英を全く光励起できなく、酸素分子を解離する能力はない。
【0071】
また、バンドギャップ3.0eV〜3.6eVの光触媒では光吸収波長は、413nm〜344nmの紫外光であるため、窒素を含んだ無声放電ではこの紫外領域の光波長を発光(放電)する能力を有するが、酸素又は酸素とアルゴンガスとの無声放電ではこの紫外領域の光波長を発光する能力は弱いことが判明した。窒素を含んだ無声放電においては、バンドギャップ3.0eV〜3.6eVの光触媒は、光励起でき、励起したこの光触媒は、酸素分子を解離する能力によってオゾンガスは生成できる。
【0072】
さらに、バンドギャップ2.0eV〜2.9eVの光触媒では光吸収波長は428nm〜620nmの可視光であるため、窒素を含まない酸素又は酸素とアルゴンガスの無声放電はこの可視光領域の光波長を発光する能力(放電)を有している。そのため、オゾン発生器の電極面(壁面)にバンドギャップ2.0eV〜2.9eVの光触媒を塗布すると、窒素を含まない酸素又は酸素とアルゴンガスの放電光を吸収して、光触媒が励起され、励起された光触媒と酸素ガスの吸着解離作用で酸素が解離できることが判明した。さらに解離した酸素原子と酸素分子の三体衝突で結合作用が促進される働きでオゾンが生成できることが分かった。
【0073】
なお、ここで、光触媒のバンドギャップエネルギー{エネルギーギャップE(eV)}と吸収光の波長λ(nm)の関係は次のとおりである。

吸収光の波長λ(nm)≦ 1240/E(eV)

エネルギーギャップE(eV) 吸収光の波長(nm)
3.6 344
3.5 354
3.4 365
3.3 376
3.2 388
3.1 400
3.0 413
2.9 428
2.8 443
2.7 459
2.6 477
2.5 496
2.4 517
2.3 539
2.2 564
2.1 590
2.0 620
【0074】
また、上記エネルギーギャップE(eV)と吸収光の波長λ(nm)に対する、窒素ガス又は酸素ガスによる放電光の分布範囲と強さを図7に示す。
上記のことからこの発明のオゾン発生装置においては、光触媒物質の材質を選択すると、金属酸化物による光触媒物質のうち、Cu2O,In23,Fe2TiO3,Fe23
Cr23,PbO,V25,FeTiO3,WO3,Bi23のいずれか1つ以上の物質を含んだものが、光吸収波長は428nm〜620nmの可視光(放電光)の光吸収が良く、その結果、窒素ガスを添加させなくても、オゾン生成効率ηが高く、高濃度のオゾンが得られることが判明した。
【0075】
さらに、上記の金属酸化物の光触媒物質以外に、Nb2m6m+4、W2m6m+4、Ta2m6m+4、In2m4m+4、BaTi、MnTi13、TiO、SrTiO、BaTiOである希土類金属イオン錯体と複数の元素からなる光触媒物質においても、光吸収波長範囲は300nm〜500nmの光(放電光)の光吸収が良く、このような光触媒材質においても、窒素ガスを添加させなくても、オゾン生成効率ηが高く、高濃度のオゾンが得られる。なお、希土類金属イオン錯体と複数の元素からなる光触媒物質の中の、m,a,b,cは該当元素の元素数を表すものである。
【0076】
上記の金属酸化物の光触媒物質もしくは希土類金属イオン錯体からなる光触媒物質に、Ru,Ni、Pt,RuO、NiOx、NiOである助触媒となる物質をドーピングさせると、より光触媒の励起能力が促進し、正孔の寿命の増大(蓄積)効果が高まり、よりオゾン生成効率を高め、オゾンが得られる効率が増す。
【0077】
なお、上記光触媒の物質は、放電によって光励起して、価電子帯に正孔(ホール)が形成されると、正孔が電子を奪う作用で酸素分子を解離させるだけでなく、正孔は放電中に解離した酸素原子や酸素分子の負性電荷イオン(例えば、O2−、O2−)等の電子も奪って酸素原子や酸素分子にする作用もある。そのため、この負性酸素イオンが無くなることで、放電のインピーダンスもより高められ、短ギャップ放電による高電界放電場の形成よりもさらに、高い高電界放電場を形成することができ、結果として、より高エネルギーを有した放電光の強度が高まり、オゾン生成効率ηが高まるように働き、高濃度のオゾンが得られる効果がある。
【0078】
図5は解離した酸素原子と酸素分子との結合作用でオゾンが生成されるメカニズムを示す。酸素原子と酸素分子とが結合するには単に酸素原子と酸素分子との衝突では、有効にエネルギー授受できないため、有効に結合作用を促進させることができない。有効に結合作用を促進させるには、図5に示すように酸素原子と酸素分子との衝突と同時にエネルギー授受をするための壁等の第3物質(M)との三体衝突が必要になる。
【0079】
O + O2 + M → O3 + M ----(3)
上記のような三体衝突を有効に促進するには、ガスの圧力を高め、ガス分子密度を高い状態にすることが有効である。実験からガスの圧力を0.1MPa以上にすると、急激に三体衝突が促進され、オゾン生成効率が高められる働きをすることが分かった。反応空間のガス圧力が0.1MPaより低下すると反応が著しく低下する。また反応空間のガス圧力が上昇するに従って、放電電圧が上昇し、0.4MPaを超えると有効放電光が電極の全面に照射できなくなり、不適となる。反応空間のガス圧力は好ましくは略0.2MPa〜略0.3MPaの範囲である。
【0080】
図6は実施装置のオゾン発生器断面における酸素ガスからオゾン生成までのメカニズムを示す模式図である。2枚の電極301a、301bと誘電体302および誘電体面に光触媒303を塗布した構成になっている。この図では誘電体302は両電極301a、301bの対向面にそれぞれ設けており、両誘電体302の対向面にそれぞれ光触媒303を塗布した構成になっている。2枚の電極301a、301b間の放電領域(反応空間)はギャップ間隔が略0.1mm程度で非常に狭いスリット空間になっている。
【0081】
その放電領域に原料ガスである酸素ガス25を供給し、かつ2枚の電極301a、301b間に略数kVの交流電圧を印加すると、放電領域全面に均一な無声放電が生じ、光強度が非常に強い放電光を発する。この強い放電光が光触媒に照射されると、光触媒が、図4で示したように、励起状態になり、光触媒の価電子帯に正孔ができる。この励起状態の光触媒と酸素分子との接触で、光触媒が酸素分子から電子を奪う。そうすると、酸素分子が吸着解離し2個の酸素原子が生成される。生成された酸素原子と酸素分子との三体衝突でオゾンが生成される。生成したオゾンはガスが連続的に流され、オゾン26が取り出せるようになっている。所定流量における取り出せるオゾン量は、放電入力を増大させると放電光の光量が増し、オゾン濃度が増大する。
【0082】
また、我々は、オゾン発生器の電極面(壁面)にバンドギャップ2.0eV〜2.9eVの光触媒を塗布するもので、電極面の表面抵抗が高いほど、オゾン濃度が増大することが確かめられた。
そのため、電極面の表面抵抗が低い場合、無声放電によって、オゾン生成に寄与しているのではないかと疑い、次のような電極面でのオゾン生成の可能性を調べた。
【0083】
(1) バンドギャップが7eV程度の非常に大きい物質で、電極表面抵抗のみを下げた状態で無声放電をさせて、高純度酸素によるオゾン発生を調べたが、ほとんどオゾン発生はできず、数十g/m3しか得られないことが確かめられた。
(2) また、バンドギャップが3.4eVの物質で、電極表面抵抗を下げた状態で無声放電をさせ、高純度酸素によるオゾン発生を調べると、(1)の条件よりはオゾン濃度が高くなるが、100g/m3以下程度しか得られないことが確かめられた。
(3) さらに、バンドギャップが3.4eVの物質で、高純度酸素に0.005%以上の窒素ガスを添加したガスにおいて、無声放電をすると、200g/m3以上のオゾン濃度が得られ、しかも電極表面抵抗が低いほどオゾン発生効率がアップし、高濃度のオゾンが得られることが確かめられた。
【0084】
以上の(1)〜(3)の実験から、電極表面抵抗が直接、放電に寄与してオゾンが生成していないことが確かめられ、電極面に塗布した物質のバンドギャップが所定の範囲(放電光波長を吸収できる範囲)になければ、高濃度のオゾンが生成できないことが分かった。バンドギャップが所定の範囲の物質を塗布すれば、電極表面抵抗が小さいほど、オゾン発生効率が増す事実があることが分かり、電極表面抵抗とオゾン発生効率との関係について、物理的に調べたが、電極面の塗布する物質によって大きく左右されるため、あまり関連性がないことが分かった。
【0085】
そのため、電極表面抵抗が小さいときの電極表面状態を詳細に調べると、電極表面状態が非常に凹凸状態になっており、電極表面積が非常に大きくなっていることが分かった。つまり、光触媒の表面積を大きくすれば、光触媒と放電光との接触面積が増し、光触媒を有効に励起し、酸素と励起した光触媒との吸着解離(量子効率)が増し、オゾン濃度が増大することを発見した。
【0086】
さらに、放電領域中のガス圧力を0.1Mpa以上にすることで、解離した酸素原子と酸素分子との三体衝突頻度が増大して、オゾン濃度が増大する。
なお、放電ギャップdを0.1mm程度の短ギャップ化すると、放電電界強度が高められ、結果として、エネルギーの高い放電光が得られ、より波長の短い光を発することができるため、光触媒をより効率良く励起でき、オゾン濃度も高められる。実験では、ギャップを短ギャップ化及び放電ガス温度を低くするほど、無声放電による428nm〜620nm範囲の光波長の放電光の光強度が高まり、バンドギャップ2.0eV〜2.9eVの光触媒物質の励起を促進させる結果となり、酸素原子の解離促進と同時にオゾン生成効率も高められた。
【0087】
ただ、実施した装置では、ギャップが略0.1mm程度であるが、実験から、ギャップが略0.6mmをこえると、無声放電光の光強度が極端に弱まり、光触媒物質の励起が十分でなくなり、酸素ガスの解離が少なくなって、オゾン生成が少なくなる傾向を示す。実験では、放電空隙が0.6mm以下では、オゾンが生成でき、許容の効率で、100g/m3以上のオゾンが得られることが確かめられた。
【0088】
このように実施の形態1のオゾン発生装置は、窒素を含まない酸素を主体にした原料ガスで、従来の窒素を添加したオゾン装置と同等もしくはそれ以上の高いオゾン効率が得られ、高濃度でNOx等の副生物質を含まない又は避けられない量を含むオゾンガス(クリーンオゾン)が生成でき、かつ、所定のオゾンを得るのに放電電力、放電電圧、電流が少なくでき、オゾン発生器およびオゾン電源がコンパクトになり、ランニングコストが少なくなる効果がある。
【0089】
実施の形態2.
図8は実施の形態2に用いるオゾン発生器を説明する断面模式図である。実施の形態2において、ここで説明する特有の構成および方法以外の構成および方法については、先に説明した実施の形態1における構成および方法と同様の構成および方法を具備し、同様の作用を奏するものである。
【0090】
実施形態1では、主に酸素ガスの放電によりオゾンを生成できるメカニズムを示したが、実際に高濃度のオゾンを効率よく、生成する装置にするためには、単なる光触媒物質の塗布だけでなく、塗布した光触媒物質を放電面に塗布した場合の光触媒物質の表面面積を出来る限り増大させることが不可欠になる。その放電光が当たる表面面積を増大させる手段の1つとして、誘電体302面に塗布又は吹付けた光触媒303は粉末状になっており、粉末粒子径は略0.1μm〜数十μm、具体的には0.1μm〜50μm、好ましくは数μm程度のものである。
【0091】
図8において、窒素を含まない酸素を主体にした原料ガス25がオゾン発生器300に供給される。他の構成は、実施の形態1における図1と同等の構成となっている。
実施の形態2では、誘電体302(又は電極301)の放電面側に数μm程度の光触媒粉末(実施の形態1の光触媒物質の粉末)を塗布又は吹付することにより、放電領域で発する放電光と光触媒粒子との接触表面積を増大させることができる。そのため光触媒物質303による酸素分子の解離作用が促進され、効率良くオゾンが生成され、高濃度のオゾンが生成される。図9は単位誘電体電極面積当たりに光触媒303粉末を塗布した場合の放電光と光触媒303粉末との接触表面積を算出したものである。1cm2の誘電体電極面に光触媒303粉末を塗布すると、放電光が当たる表面積は約4.14cm2に増大し、図8のように電極又は誘電体の両面に光触媒粉末を塗布すると、実放電面の面積に対し8.28倍の表面積が得られる。
【0092】
実施の形態2において、単位誘電体電極面における光触媒と放電光との接触表面積Sとオゾン生成効率ηとの関係は図10のようになった。上記の接触表面積Sが増大するとオゾン生成効率ηが増大する。図10から判るように、接触面積Sの増加と共に、光触媒物質の反応量が増加し、オゾン生成効率ηが増大することは明らかである。図10の特性から、接触面積Sの増加に対して、オゾン濃度が増加する効果的な面積Sを求める。つまり、接触面積Sを増大して到達するオゾン濃度に対して、約80%程度までのオゾン濃度の増大が見込める接触面積Sは、図10の特性から、放電面積に対して約1.5倍であり、これ以上あれば、オゾン生成効率ηを十分確保できる。そのため、単位誘電体電極面における光触媒物質と放電光との接触表面積Sを1.5倍以上にするとオゾン生成効率ηを十分増加させることができる。
図10において特性901は光触媒がバンドギャップ2.9eV以下の場合の特性であり、バンドギャップ2.0eV〜2.9eVの範囲ではほぼ同等の特性を示す。特性902は光触媒のバンドギャップ3.2eV以下の場合の特性、特性903は光触媒のバンドギャップ3.4eV以下の場合の特性である。
【0093】
図10から分かるように、窒素ガスを添加しない原料ガスによる無声放電においては、2.9eVをこえるバンドギャップを有する光触媒物質では有効にオゾン生成ができなく、光触媒の表面積を増やしても十分なオゾン生成が得られない結果となった。
以上のように、実施の形態2では、放電領域の誘電体又は電極の壁面に、粒子径が0.1μm〜50μmの光触媒物質の粉末を固着させたので、実際の電極面積に比べ、放電光が当たる光触媒物質の表面積が数倍にアップし、より光触媒に放電光を当てることができる。そのため活性化された光触媒物質と酸素ガスとの接触によって酸素分子を酸素原子に解離させる作用が促進され、オゾン発生効率を的確により向上できる。結果として、高濃度のオゾンが発生でき、コンパクトで安価な装置でオゾン発生装置を実現できる。
【0094】
実施の形態3.
図11は実施形態3に用いるオゾン発生器を説明する断面模式図である。実施の形態3において、ここで説明する特有の構成および方法以外の構成および方法については、先に説明した実施の形態1における構成および方法と同様の構成および方法を具備し、同様の作用を奏するものである。誘電体電極面に略1μm〜数十μm、具体的に1μm〜50μmの凹凸を形成し、上記凹凸を形成した誘電体電極面に上記光触媒粉末(粉末粒子径は略0.1μm〜50μm)を塗布又は吹付けたものである。
【0095】
この実施の形態3では、誘電体302(又は電極301)の放電面を凹凸にし、凹凸を形成した誘電体電極面に実施の形態1で示した光触媒物質を塗布又は吹付けることにより、放電領域で発する放電光と光触媒粒子との接触表面積が増大され、酸素分子の解離作用が促進され、効率良くオゾンが生成され、高濃度のオゾンが生成される。実施の形態3では片面の誘電体のみ凹凸を形成し、光触媒物質を塗布するようにしたが、両誘電体302又は両電極301ともに形成すれば、より高濃度のオゾンが生成され、オゾン生成効率が増す。
【0096】
以上のように、放電領域の誘電体又は電極の壁面に、1μm〜50μmの凹凸を形成し、上記凹凸を形成した壁面に光触媒物質を設けたので、実際の電極面積に比べ、光触媒物質の表面積が数倍にアップし、より光触媒に放電光を当てることができる。そのため活性化された光触媒物質と酸素ガスとの接触によって酸素分子を酸素原子に解離させる作用が促進され、オゾン発生効率を的確により向上できる。結果として、高濃度のオゾンが発生でき、コンパクトで安価な装置でオゾン発生装置を実現できる。
【0097】
実施の形態4.
図12は実施の形態4に用いるオゾン発生器を説明する断面模式図である。実施の形態4において、ここで説明する特有の構成および方法以外の構成および方法については、先に説明した実施の形態1における構成および方法と同様の構成および方法を具備し、同様の作用を奏するものである。厚み0.725mmのセラミック製の両誘電体302内に実施の形態1の光触媒物質の粉末(粉末粒子径は略0.1μm〜50μm)を体積比で略1%から略10%散りばめ混合させたものである。
【0098】
図13は誘電体302の材質を厚み0.725mmのアルミナセラミック板にした場合の光波長に対する光透過率特性を示す図である。図13で分かるように、アルミナセラミック製の誘電体302は放電領域で発光した300nm〜1000nmの光を透過する。この透過した放電光と光触媒によって光触媒が励起し、励起した光触媒の価電子帯の正孔と酸素分子が誘電体302を介して吸着解離し、オゾンが生成されていることが実験的に確かめられた。
【0099】
この誘電体の透過を利用して誘電体302内に光触媒粉末を散りばめ、放電光が当たる光触媒の表面積を増大させるようにしている。励起した光触媒の価電子帯の正孔と酸素分子が誘電体を介して吸着解離し、オゾンが生成されるようにした。図14は実施の形態4において、誘電体302に光触媒を添加する体積含有比率とオゾン生成効率比率を実験的に調べたものである。その結果、誘電体媒質に対する光触媒粉末の含有率は体積比で略1%から略十%が最もオゾン生成効率がアップすることが分かった。誘電体媒質内の光触媒粉末の含有比率を10%以上にすると、放電光が光散乱によって、有効に光触媒当たらず、放電光が当たる見かけの表面積が少なくなるため、オゾン生成効率がダウンすると解釈される。
【0100】
実施の形態4においては、放電面に直接、光触媒を塗布せずに、光を透過する誘電体媒質を介して塗布しているため、無声放電による光触媒への損傷を与えない利点がある。結果として装置の寿命が長くなる効果がある。また、光触媒の表面積も大きくできるので、オゾン生成効率も高くできる効果がある。実施の形態4においては、誘電体302媒質として厚さ0.725mmのセラミック板を採用したが、石英等のガラス製の誘電体にすれば、より放電光を透過しやすく、有効に光触媒を励起でき、結果としてオゾン効率がアップできる。なお、実施の形態4の光触媒物質粉末を含有させた誘電体に対して、実施の形態2又は実施の形態3を適用すればより効果的である。
【0101】
以上のように、放電領域の誘電体を放電光が透過する誘電体とし、放電光が透過する誘電体に体積比で1%〜10%の光触媒粉末を含有させたので、誘電体物質内に含有する光触媒が放電光に当たる表面積が実際の電極面積に比べアップでき、より光触媒に放電光を当てることができる。そのため活性化された光触媒と酸素ガスとの接触によって酸素分子を酸素原子に解離させる作用が促進され、オゾン発生効率を的確により向上できる。結果として、コンパクトで安価なオゾン発生装置を得ることができるとともに、装置の寿命が伸びる。
【0102】
実施の形態5.
図15は実施形態5に用いるオゾン発生器を説明する断面模式図である。実施の形態5において、ここで説明する特有の構成および方法以外の構成および方法については、先に説明した実施の形態1における構成および方法と同様の構成および方法を具備し、同様の作用を奏するものである。2枚の電極301a、301bと厚み0.725mmのセラミック製の両誘電体302間に数十nmの光触媒物質を塗布又は吹付けたものである。
【0103】
厚み0.725mmのセラミック製の誘電体302は、放電領域で発光した300nm〜1000nmの光を図13のように透過する。この透過した放電光と光触媒303によって光触媒が励起され、励起された光触媒の価電子帯の正孔と酸素分子が誘電体を介して吸着解離され、オゾンが生成されていることが実験的に確かめられた。
【0104】
この実施の形態5においては実施の形態1〜3に比べオゾン生成効率ηは低いが、光触媒を塗布しない電極でのオゾン発生量特性よりもアップすることが確かめられた。図16は実施の形態5におけるオゾン濃度特性(1502)と従来電極のオゾン濃度特性(1501)を示す。実施の形態5においては、放電面に直接、光触媒を塗布せずに、光を透過する誘電体媒質の裏側に塗布しているため、無声放電による光触媒への損傷を与えない利点がある。結果として装置の寿命が長くなる効果がある。
【0105】
実施の形態5においては、誘電体302として厚さ0.725mmのセラミック板を採用したが、石英等のガラス製の誘電体にすれば、より放電光を透過し、有効に光触媒を励起でき、結果としてオゾン効率がアップできる。なお、実施の形態5の誘電体でカバーされた光触媒の固着に対して、実施の形態2,3,又は4を適用すればより効果的である。 以上のように、放電領域の電極に光触媒物質を設け、その光触媒物質の放電領域側を放電光を透過する誘電体で覆うようにしたので、寿命が長く、オゾン生成効率がアップし、高濃度オゾンを得るオゾン装置を実現することができる。
【0106】
実施の形態6.
以上の各実施の形態では窒素ガスを添加させない酸素ガス又は希ガスを添加した酸素ガスを原料ガスとして、オゾンを生成反応させ、NOx等の副生物質を含まないクリーンなオゾンガスを得る手法を説明したが、微量なNOx等の副生物質を含んでも問題でない用途もある。そのため、微量なNOx等の副生物質を含んでもオゾンの生成効率が上がれば、その方が好ましい場合がある。
【0107】
実施の形態6では、実施の形態1〜5のオゾン発生装置で用いた酸素ガス又はそれを主体とするガスに、窒素ガスを微量、具体的には10ppm〜500ppm添加させる。すると、オゾン生成反応が促進され、5〜10%増加した高濃度オゾンが得られることが確認された。またこの程度の窒素ガスの添加であれば、NOx等の副生物質の発生は問題とならない。
【0108】
窒素を含んだ無声放電において、バンドギャップ3.0eV〜3.6eVの光触媒は、光励起でき、励起したこの光触媒は、酸素分子を解離する能力を有し、オゾンガスを生成する。結果として、微量の窒素(抑制した窒素量)を添加することで、放電領域の誘電体又は電極に設けられた光触媒の許容バンドギャップ範囲は、2.0eV〜3.6eVまで可能になり、窒素の放電光(紫外光)を利用してオゾン生成反応を促進させることができる。
【0109】
実施の形態6の場合は、バンドギャップ2.0eV〜2.9eVの光触媒物質を含んだ触媒物質を使用して望ましいが、それに加えて、2.0eV〜3.6eVの光触媒物質は表2で示す、TiO(アナターゼ),TiO(ルチル),Nb,SrTiO,ZnO,BaTiO,CaTiO,SnOも使用可能となる。
【0110】
さらに、実施の形態6の場合においても、光触媒と放電光との接触表面積Sとオゾン生成効率ηとの関係は上述の実施の形態2と同様である。そのため、触媒物質を放電領域の誘電体又は電極の壁面に塗布し、誘電体又は電極の面積に対して、触媒物質と放電光との接触表面積を1.5倍以上大きくさせるようにすることは有効である。
また、触媒物質として、放電領域の誘電体又は電極の壁面に、表面積を増大させるために、粒子径が0.1μm〜50μmの光触媒物質の粉末を固着させることは効果的である。
【0111】
また、放電領域の誘電体又は電極の壁面に、1μm〜50μmの凹凸を形成し、上記凹凸を形成した壁面に触媒物質を設けて、触媒物質の表面積を増大させることも効果的である。
さらに、触媒物質として、放電領域の誘電体を放電光が透過する誘電体とし、放電光が透過する誘電体に体積比で1%〜10%の光触媒物質粉末を含有させることも有効である。 なお、以下に光触媒を用いないオゾン発生装置と比較するために、先行する参考例を示す。
【0112】
検討にあたって、両面電極301を冷却できるタイプで、ギャップ長0.1mm、放電面積約750cm2 で、誘電体302の材質はアルミナ(Al23)とした放電セルを用い、光触媒を塗布しない構成にした図17で示したオゾン発生器300を使用した。オゾン電源500から放電電力Wを約2000Wまで注入し、高純度酸素に窒素添加した場合のオゾン濃度特性も徹底的に実験で調べた。
光触媒を塗布しない構成で、1)窒素添加した場合、2)高純度酸素のみの場合、3)高純度酸素に希ガスを添加した場合のオゾン濃度特性について測定した。その結果の1例を図18,図19に示す。
【0113】
図18は、窒素添加率を0.01%添加した場合1700A、0.1%添加した場合1700B、および1%添加した場合1700Cの放電電力に対するオゾン濃度特性を示す。また、破線1700Dは低電力密度である放電電力密度0.25W/cm2条件を示し、破線1700Eは高電力密度である放電電力密度3W/cm2条件を示す。(なお、図で単位SLMは、standardL/minの意味で、20°CのときのL/mを示す。)
【0114】
図19は高純度酸素ガスのみ2400A、およびアルゴンガス2400C、キセノンガス2400Bを添加した場合の注入電力に対するオゾン濃度特性を示す。図18で得られた2000Wでのオゾン濃度290g/m3に対して、図19においては、いずれの原料ガスにおいても、10g/m3のオゾン濃度しか得られず、アルゴンガス、キセノンガスの単独の添加においてはオゾン濃度、発生量を高められる効果はほとんどなかった。ここではアルゴン、キセノンガスについて示したがヘリウム、ネオン等の希ガスの添加についても同様の結果となった。
【0115】
窒素添加率γとオゾン生成効率ηとの関係について実験特性を求めた結果、図20のようになり、その近似式は下記のとおりになった。
近似式η=0.004310g(γ)+0.033[mg/J]となる。
この結果から窒素添加率γが0%であれば、オゾン生成効率ηはほぼ0mg/Jという驚異的な結果が得られた。
【0116】
上記の一連の結果から窒素酸化物によるオゾン生成に起因する因子は、窒素酸化物ガスの光解離および窒素酸化物の光触媒作用による酸素ガス(O2分子)自身の解離促進作用
による酸素原子の生成であることが解った。
以下により詳細にオゾン生成に関する検討した結果を示す。上記の高純度酸素のみ、および希ガス等単独の添加においては、オゾン生成効率ηが略0mg/Jということは、今までオゾン生成メカニズムが下記の反応式Rl,R2で言われていたが、根底から覆る結果となった。
【0117】
Rl; e+O2 ⇒ 2O+e (酸素の解離)
R2; O+O2+M ⇒O3+M
(酸素原子と酸素分子による三体衝突に基づくオゾン生成)
その結論から、我々は窒素ガスとオゾンの関わりについて詳細に検討し、下記の推測を得た。
・オゾン発生器での露点は−70°C〜−60°C程度であり、原料ガスに含まれる水分は3ppm〜10ppm存在する。
・酸素分子を解離するための吸収光の波長は130から245nmの紫外線の連続スペクトルであり、窒素ガスの励起光は300〜400nmの紫外光であり、酸素分子を直接的に光解離はできない。
【0118】
・窒素添加率によってオゾンガスを生成するメカニズムは窒素ガスの励起光300〜400nmの紫外光以外に考えられない。
そのため、300〜400nmの紫外光でオゾン原子を解離できる窒素化合物を調べた。その結果、下記の(1)放電による紫外光の発光と水蒸気H20、窒素分子の電離メカニズム、(2)NO2によるオゾン生成メカニズムであることを確信得た。また、オゾン生成を抑制する(3)NO2による硝酸の生成メカニズムと、生成したオゾンの(4)オゾン分解のメカニズムがあり、この4つのメカニズムがオゾン発生器の無声放電領域で生じ、取り出せるオゾン濃度が決まる。
【0119】
(1)放電による紫外光の発光と水蒸気H2O、窒素分子の電離メカニズム
2+e⇒N2*+e⇒N2+hν(310,316,337,358nm)
2*;窒素の励起
窒素ガスによる紫外光
2O+e⇒H+OH+e (水蒸気の電離)
2+e⇒2N-+e (窒素分子の電離)
(2―1)NO2 の熱触媒化学反応によるオゾンの生成メカニズム
R6;NO2+hν(295〜400nm)⇒NO+O(3P)
R7; H+O2 + M ⇒HO2 +M
R8; HO2 +NO ⇒OH+NO2
R2;O(3P)+O2 +M ⇒O3 +M
【0120】
二酸化窒素NO2と窒素の励起による300nm付近の紫外光で酸素原子O(3P)ができ(R6の反応)、生成された酸素原子O(3p)が酸素分子O2と三体衝突によりオゾンが生成される(R2の反応)。R6の反応結果で生成した一酸化窒素NOはR7反応で生成したHO2ラジカルと反応して二酸化窒素NO2が再生される(R8の反応)。
つまり、原料ガスが無声放電領域を通過する時間の間、二酸化窒素NO2 はR6→R7→R8→R6の反応サイクルを繰り返し再生される。
【0121】
また、無声放電領域を通過する時間に同時に生成された酸素原子O(3P)は酸素分子と三体衝突(R2)でオゾンガスが生成される。
(2−2)NO2の光触媒反応によるオゾンの生成メカニズム
H1; NO2+hν(295〜400nm)⇒NO2
H2; NO2+ O2 ⇒2O(3P)+ NO2
R2; 2O(3P)+2O2 + M ⇒2O3 +M
【0122】
二酸化窒素NO2 と、アルゴン等の放電光や窒素の放電光による300nm付近の紫外光とで、二酸化窒素NO2が励起状態NO2になる(H1の反応)。励起されたNO2*は酸素分子の解離エネルギー相当のエネルギーを酸素分子に与え酸素原子(3P)に解離し、二酸化窒素自身は基底状態のNO2に戻る。
生成された酸素原子O(3p)が酸素分子O2との三体衝突により、オゾンが生成される(R2の反応)。基底状態のNO2は再び上記放電光による300nm付近の紫外光により再度励起状態NO2*になる。
【0123】
つまり、原料ガスが無声放電領域を通過する時間の間、二酸化窒素NO2はH1→H2→H1の反応サイクルを繰り返し再生される。
また、無声放電領域を通過する時間に同時に生成された酸素原子O(3P)は酸素分子との三体衝突(R2の反応)でオゾンガスが生成される。
(3)NO2による硝酸の生成メカニズム
R9;OH+NO2+M⇒HNO3+M
二酸化窒素NO2はオゾンを生成すると同時に硝酸HNO3も同時に生成され(R9の反応)、酸素原子の生成を抑制し、オゾンの生成効率ηを下げる。
【0124】
(4)オゾン分解のメカニズム
R3; e+O3 ⇒O+O2 +e (電子衝突分解)
R4; O3 +熱T⇒O+O2 (熱分解)
R5; O3 +N ⇒O2 +Nl (不純物によるオゾンの分解)
R2の反応で生成したオゾンは、無声放電領域で電子衝突よる分解(R3の反応),熱によって分解(R4の反応)および水分、NOX 等の不純物等によって分解(R5の反応)する。
【0125】
そのため、発生器から取り出せるオゾンは、オゾン生成効率ηに比べ、飽和する特性になる。
取り出せるオゾン濃度=(オゾン生成量)−(オゾン分解量)
=(R2−R9)−(R3+R4+R5)
R3反応は無声放電の注入電力に対してリニアで増加するが、R9、R4,R5の反応は注入電力の増大によってランプ関数的に増加するため、高濃度のオゾンガスが取り出せなくなる原因になる。
【0126】
取出せるオゾン濃度を高めるためにR3,R4を抑制する手段として、発生器内の放電ギャップ長を短ギャップ(0.1mm以下)にすること、電極面を冷却することで、取出すオゾン濃度を高めることは既に提案されている。
さらに、我々のオゾン発生試験では、上記の発生したオゾンを分解する反応R3,R4を抑制することで、高濃度のオゾンが取り出せると考えられていたことも、実験事実から異なることが分かってきた。
【0127】
つまり、発生器内の放電ギャップ長(ギャップ間隔)を短ギャップ化すること、および電極面を冷却することで、無声放電の放電インピーダンスが高くなり、放電空間の電界が高まり、上記の光hν(295〜400nm)の光強度が高まることで、オゾン生成効率が高められる効果が大きく、反応R3,R4の抑制効果は小さいことが分かってきた。
放電電力を入れるとオゾン濃度特性が飽和する特性についても、放電電力を入れると、放電空間のガス温度が高まることで、オゾンを分解させるよりも、無声放電の放電インピーダンスが下がることで、オゾン生成効率を弱める結果で、オゾン濃度特性が飽和することが明らかになってきた。
【0128】
放電空間中の平均的なガス温度は、ギャップ長が0.1mmという短ギャップ空間では、ほとんど電極冷却温度(20°C)に対して、数度アップするに過ぎず、平均的なガス温度が30°C以下の状態で、生成したオゾンの10%以上のオゾン分解がガス温度でなされているとは考えられないことが分かった。ただ、オゾン濃度が250g/m以上になると、酸素とオゾンの存在比率の平衡の関係から温度に依存した自然分解は少し多くなる。 また、取出せるオゾン濃度を高めるためにR5を抑制する手段については、高純度の原料ガスで、原料ガスの露点の良い(−50°C以下)の原料ガスを使用することはもう既に明らかな事実である。
【0129】
以上の参考例の検討結果においては、窒素ガスもしくは窒素ガスから生成される
NO2ガスがオゾン生成に寄与しており、(光触媒物質を用いない)高純度酸素のみで窒素ガスを添加しなければ、オゾンが生成出来ない。
従来の放電によるオゾン生成メカニズムの説明として、放電の熱力学で、ボルツマン方程式による電子エネルギーの分布(ボルツマン分布)から説明されていることに対して、この発明が異なるものではない。つまり、従来の説明では、放電の電子エネルギーが直接酸素に衝突して酸素を分解すると解釈されていたが、電子の代わりに、光の波長とエネルギーによって光触媒物質を励起し、この励起した光触媒物質の力で酸素分子の電子を奪いとる反応(酸化反応)で酸素原子に解離させたということで、放電によって言われている、ボルツマン分布した電子エネルギーを必要とすることには変わりない。
【0130】
実施の形態7.
実施の形態1のオゾン発生装置は、窒素を含まない酸素を主体にした原料ガスで、高いオゾン効率が得られ、高濃度でNOx等の副生物質を含まないクリーンなオゾンガス(窒素レスオゾンガス)が生成でき、かつ、所定のオゾンを得るのに放電電力、放電電圧、電流が少なくでき、オゾン発生器およびオゾン電源がコンパクトになり、ランニングコストが少なくなるものである。
【0131】
そのため、このオゾン発生装置を、化学的気相成長装置もしくはALD薄膜蒸着装置、オゾン濃縮装置、又はパルプ漂白装置に使用すれば、種々の効果が発揮される。
不揮発メモリ用強誘電体薄膜、高誘電率誘電体薄膜、窒化物金属薄膜、酸化物金属、光学材料薄膜、高密度光磁気記録用薄膜、および高品質コンデンサ薄膜を、製造する半導体製造装置、フラットパネル製造装置、および太陽パネル製造装置等に用いるCVD装置もしくはALD薄膜蒸着装置にとっては、窒素レスオゾンガスにすることで、炭素化合物、水分、や水素が、被処理体に吸着しているものをオゾンガス自身の特有の熱力学的酸化能の高さによって、不純物物質を酸化蒸気化してクリーニングできる。
【0132】
また、半導体チップ、フラットパネル、太陽パネルおよび超伝導薄膜や磁気記憶テープを生産するCVD装置もしくはALD薄膜蒸着装置にとっては、窒素レスオゾンガスにすることで、炭素化合物、水分、や水素が被処理体に吸着しているものをオゾンガス自身の特有の熱力学的酸化能の高さによって、不純物物質を酸化蒸気化してクリーニングできる。
【0133】
窒素レスオゾンガスで、堆積薄膜を原子層レベルで酸化反応させるため、絶縁性の良い絶縁薄膜、漏れ電流少ない半導体膜、絶縁膜、誘電体が形成でき、非常に品質の良い金属酸化薄膜を形成することが可能になった。
また、窒素レスオゾンガスであるため、オゾンガスに含まれるNOx等はほとんどない。そのため、NOx不純物はもちろんのことNOx不純物や硝酸クラスタによって、装置や配管部の金属腐食によって析出される金属、薄膜を形成するためのガス雰囲気の不純物濃度、を極端に少なく出来ることになる。結果として、窒素レスオゾンガスは各薄膜自身の酸化反応にのみ作用し、形成した薄膜の機能品質向上に重要な役目を提供するものである。
【0134】
実施の形態7では、図24に示すレーザアブレーション方式によるCVD装置又はALD薄膜蒸着装置について示したが、電子ビーム装置による電子ビームアブレーションによるCVD装置又はALD薄膜蒸着装置であっても同様の効果を奏する。
さらに、金属蒸気を放出して薄膜を形成するCVD装置又はALD薄膜蒸着装置について示したが、融点の低い金属化合物液体をチャンバー内にシャワー状にして供給し、金属化合物の蒸気化して被処理体に付着させ、オゾンガスで酸化反応させて薄膜を形成するCVD装置又はALD薄膜蒸着装置についても、窒素レスオゾンガスは、品質を高めた薄膜を形成するのに有効である。
【0135】
実施の形態8.
図22は、窒素レスオゾンガスを用いたオゾン濃縮装置の構成図を示す。図において、A300は酸素ガスボンベ10から酸素ガスの供給を受けるオゾン発生装置で、実施の形態1のオゾン発生装置を示す。401a,401bは、吸着制御バルブA,B、402a,402bは、オゾンガス吸着塔である。403a,403bは、オゾンガス吸着塔を冷却するための冷媒入口、404a,404bは、オゾンガス吸着塔を冷却するための冷媒出口である。405a,405bは、オゾンガス脱着制御するバルブ、406は、濃縮した超高濃度オゾンガスである。407a、407bは、濃縮オゾンガスを脱着するためのガスを供給する脱着用バルブA,B、408a,408bは、オゾンガスの吸着工程で吸着した後の残酸素ガスを排出する排ガス用バルブA,B、661は排気ポンプである。A3000はオゾン濃縮装置である。
【0136】
(1) 吸着塔402aのオゾンガスの吸着工程では、吸着制御バルブA401aからオゾンガスを供給し、オゾンガス吸着塔402aは冷却媒質で、約−60°C〜−100°Cに冷却した。シリカゲル剤に液化オゾンを吸着させ、吸着されなかった酸素ガスは、残ガスとして、排ガス用バルブA408aから排出して、所定液化オゾン量が吸着されるまで行う。
(2) 吸着塔402bのオゾンガスの吸着工程では、吸着制御バルブB401bからオゾンガスを供給し、オゾンガス吸着塔402bは冷却媒質で、約−60°C〜−100°Cに冷却した。シリカゲル剤に液化オゾンを吸着させ、吸着されなかった酸素ガスは、残ガスとして、排ガス用バルブB408bから排出して、所定液化オゾン量が吸着されるまで行う。
【0137】
(3) オゾンガス吸着塔402aで、吸着した液化オゾンの脱着工程では、吸着制御バルブA401aを閉じ、冷却したオゾンガス吸着塔402aを約0°C程度まで加熱し、脱着用バルブA407aを開け、キャリアーガスとして、オゾンガス吸着塔402aに供給し、吸着したオゾンを脱着して、脱着制御バルブA405aから超高濃度のオゾンガスを取り出す。
(4) オゾンガス吸着塔402bで、吸着した液化オゾンの脱着工程では、吸着制御バルブA401bを閉じ、冷却したオゾンガス吸着塔402bを約0°C程度まで加熱し、脱着用バルブB407bを開け、キャリアーガスとして、オゾンガス吸着塔402bに供給し、吸着したオゾンを脱着して、脱着制御バルブB405bから超高濃度のオゾンガスを取り出す。
【0138】
2つのオゾンガス吸着塔402a,402bを、上記に示したオゾンガスの吸着工程と脱着工程で交互に繰り返すことで、超高濃度のオゾンガスを取り出せるようになっている。濃縮するオゾンガスが窒素やNOx等の含まない窒素レスオゾンガスを用いると、濃縮装置に不純物ガスの吸着を防止出来、不純物ガスの吸着が蓄積されないため、濃縮装置の性能低下を防止できる。窒素抑制オゾン発生装置を用いても、窒素含有量が十分少ないので、濃縮装置の性能低下をそれだけ防止できる。
【0139】
実施の形態9.
図23は、大気中の空気を圧縮して酸素ガスを製造する酸素PSA装置(Pressure Swing Absorber)と窒素レスオゾンガスを生成する大型オゾン発生装置とを組合せたパルプ漂白装置を示す。
オゾン漂白では、オゾンによる漂白工程だけでなく、多段階漂白連続工程があり、従来の塩素漂白をしていた工程において、オゾンガスを用い、少なくとも塩素を含まない酸素漂白段階(O工程)、過酸化物漂白段階(P工程)、アルカリ抽出段階(E工程)、高温アルカリ抽出段階(HAE工程)、酸性化段階(A工程)と、オゾン漂白段階(Z工程)を組合せで行われる。
【0140】
101は、酸素PSA装置で、酸素中に含まれる窒素ガスはできるだけ少なくして、酸素ガス純度は93%以上で、残りのガスはほとんどアルゴンガスにした酸素PSA装置である。3000は、複数のオゾン発生セルを多段に積層し、ユニット化して、さらにユニット化したオゾン発生ユニット3001を複数個並べ、超大型にしたオゾン発生装置である。501は供給する交流電源を整流するコンバータ部、502は整流した直流を高周波交流に変換するインバータ部、503は高周波交流電圧を昇圧する高電圧変換部である。500Aは、オゾン発生量をコントロールするオゾン制御指令部である。650はオゾン漂白をする前段で酸素漂白するための酸素漂白塔である。
【0141】
651は酸素漂白したパルプを一旦洗浄するパルプ第1洗浄機である。652はパルプを水の希釈と硫酸によって粘性を低くしたパルプ材にするパルプ溶解混合部である。653は溶解したパルプを押し出すパルプ揚出ポンプである。654は押し出されたパルプにオゾンガスを注入するオゾン混合部である。655はオゾンガスを注入したパルプを所定時間滞留することで、パルプのオゾン漂白を促進させるオゾン漂白パルプ滞留タンクである。656は漂白されたパルプと残留オゾンを分離するパルプ−オゾンガス分離タンクである。657は分離された漂白パルプを再び、次工程処理へ押し出すためのパルプ揚出ポンプである。658はオゾン漂白したパルプを洗浄する洗浄機で、これから漂白パルプが抽出される。660a、b、cは、オゾン発生装置からのオゾンガスをパルプ漂白装置に導くための制御バルブである。661は残存オゾンを処理する排オゾン装置である。
【0142】
このようなオゾン漂白装置で、窒素の含有を少なくした窒素レス又は窒素抑制オゾンガスをパルプに注入することで、パルプにオゾンを注入するオゾン混合部654、オゾン漂白パルプ滞留タンク655、パルプ−オゾンガス分離タンク656、排オゾン装置661の窒素酸化物による装置の劣化を抑制し、各装置の寿命を長くさせることができる。また、窒素酸化物や硝酸(HNO)等が含まれると、オゾンが通過する配管を腐食させることが促進されるがこれを抑制できる。また、この装置で生産されたパルプは繊維強度の劣化を抑制できる可能性がある。
【0143】
なお、従来では、酸素分子を解離するためには、紫外光245nm以下のエキシマ光を吸収することでしか酸素原子に解離できなかったが、この発明では、428nm〜620nmの光波長(可視光)を有する放電光とバンドギャップ2.0eV〜2.9eVの光触媒物質を含んだ触媒物質によって、酸素分子の酸化反応で、酸素原子に解離できる方法を示した。
【0144】
酸素分子の代わりに高分子であるアミノ酸、糖やアルコール(対象物質)を無声放電等の放電装置と放電流域に塗布した光触媒物質、半導体物質によって、対象物質の光吸収波長よりも長い光で効果的に低分子に分解や発酵できる可能性があることや、上記放電装置のパワー入力制御により放電光の波長と光強度を制御することや、光触媒物質、半導体物質の選択によって、より有用な分解や発酵できる可能性があることは、当業者は理解しなければならない。
【0145】
さらに、米等の作物からアミノ酸や糖に発酵分解(酸化反応)やアルコールに発酵分解を促進する麹菌、酵母菌、酢酸菌は、高分子で形成した有機半導体(光触媒物質)と考え、この発明の酸素の解離メカニズムのように、麹菌、酵母菌、酢酸菌のバンドギャップが光エネルギーの代わりに、特定温度(約20°C〜30℃範囲)の熱エネルギーを与えることで、麹菌、酵母菌、酢酸菌自身が励起して、この励起したパワーによって米等の作物を発酵させている可能性もあり、この発明は、学問的な面を含めて、いろんな分野に発展、寄与することが期待される。
【産業上の利用可能性】
【0146】
この発明はオゾン発生装置及びオゾン発生方法に適用して好適であると共に、窒素レスオゾンガスで高濃度のオゾンガスが供給できるため、オゾンガスを利用するCVD装置またはALD薄膜蒸着装置に適用して好適である。窒素レス又は窒素抑制オゾンガスで高濃度のオゾンガスが供給できるため、オゾン濃縮装置やパルプ漂白装置等の製品製造分野に好適で、コンパクトな製品や低消費電力な製品および環境を配慮した製品に好適である。
【符号の説明】
【0147】
10 高純度酸素ボンベ 20 アルゴンボンベ
21 減圧弁 22 開閉弁
23 流量調整器 25 原料ガス
26 オゾンガス 100 A種原料供給系
200 B種原料供給系 300 オゾン発生器
400 圧力調整器 301a,301b 電極
302 誘電体 303 光触媒
500 オゾン電源 600 外部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、上記第1の電極に対向してギャップを有する放電領域を形成する第2の電極と、
酸素ガスを原料ガスとして供給する原料ガス供給手段と、
上記放電領域の誘電体又は上記電極に設けられ、バンドギャップ2.0eV〜2.9eVの光触媒物質を含んだ触媒物質とを有し、
上記第1の電極と上記第2の電極との間に電源から交流電圧を印加して上記放電領域に放電電力を注入し、上記原料ガス供給手段より上記放電領域に酸素ガスを供給し、
放電によって発する少なくとも428nm〜620nmの光波長を有する放電光と、上記触媒物質との相互作用で、上記放電領域を通過する上記酸素ガスを酸素原子に解離させ、かつ上記酸素ガスと上記解離した酸素原子とを結合処理しオゾンガスを発生させるようにしたオゾン発生装置。
【請求項2】
上記酸素ガスが通過する上記放電領域のガス圧力を0.1MPa〜0.4MPaにする請求項1記載のオゾン発生装置。
【請求項3】
上記ギャップを有する放電領域のギャップ間隔を0.6mm以下にした請求項1又は請求項2記載のオゾン発生装置。
【請求項4】
上記光触媒物質は、CuO,In,FeTiO,Fe,Cr,PbO,V,FeTiO,WO,Biのいずれか1つ以上の物質を含んだものである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のオゾン発生装置。
【請求項5】
上記光触媒物質として、Nb2m6m+4、W2m6m+4、Ta2m6m+4、In2m4m+4、BaTi、MnTi13、TiO、SrTiO、BaTiOであり、但しm,a,b,cは該当元素の元素数を表す希土類金属イオン錯体と複数の元素からなる物質のいずれか1つ以上を含んだものである請求項1記載のオゾン発生装置。
【請求項6】
上記酸素ガスに補助原料ガスとなる希ガスを上記酸素ガスに対して500ppm〜50000ppm含有させ、オゾン生成反応を促進させるようにした請求項1記載のオゾン発生装置。
【請求項7】
第1の電極と、上記第1の電極に対向してギャップを有する放電領域を形成する第2の電極と、
酸素ガスを原料ガスとして供給する原料ガス供給手段と、
上記放電領域の誘電体又は上記電極に設けられ、バンドギャップ2.0eV〜2.9eVの光触媒物質を含んだ触媒物質とを有し、
上記第1の電極と上記第2の電極との間に電源から交流電圧を印加して上記放電領域に放電電力を注入し、上記原料ガス供給手段より上記放電領域に酸素ガスを供給し、
放電によって発する少なくとも428nm〜620nmの光波長を有する放電光と、上記触媒物質との相互作用で、上記放電領域を通過する上記酸素ガスを酸素原子に解離させ、かつ上記酸素ガスと上記解離した酸素原子とを結合処理しオゾンガスを発生させるようにしたオゾン発生方法。
【請求項8】
上記ギャップを有する放電領域のギャップ間隔を0.6mm以下にした請求項7記載のオゾン発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−98886(P2011−98886A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1198(P2011−1198)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【分割の表示】特願2006−519306(P2006−519306)の分割
【原出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】