説明

オゾン石けん

【課題】
オゾン化植物油が,医療用途や除菌などの用途に使用されることは上述の通りであるが,脱臭および脱色の性質も兼ね備える。オゾン化植物油は医療用途において薬の代用としてあるいは薬として使用する場合はその形態として問題はないが,脱臭や脱色あるいは除菌といった他の一般的な幅広い用途に使用するには,そのものが油であることから使用上問題がある。
【解決手段】オゾン化植物油を主原料とするオゾン石けんを提供することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン化植物油の持つ特性を幅広い用途に適用するため,オゾン化植物油を主原料とする脱臭,除菌の効果を有するオゾン石けんに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オゾン化植物油はヨーロッパ諸国では、その抗真菌性及び抗菌性により皮膚疾患患部の殺菌あるいは治療促進などの医療,衛生その他の分野において、殺菌,消毒などに用いられている。具体的にはオゾン化植物油の効果は,乳牛の乳房炎などの炎症回復,床ずれなどの回復など医学上の利用が学会等で発表されている。(例えば,非特許文献1参照)実際にオゾン化植物油は欧州では古くから皮膚疾患やカンジダ症などの治療に使用されている。我が国では,オゾン化植物油による治療は,現在医療実験が各種報告されているが,薬事法では認められておらず,未だに一般的ではない。
【0003】
植物油は,各種の脂肪酸がグリセリンとエステル結合したグリセリンエステル(グリセリド)から構成される。植物油ごとにグリセリドを構成する脂肪酸の種類及び組成は異なる。植物油をなす脂肪酸は炭素原子8個のカブリル酸から24個のリグノセリン酸に至る飽和脂肪酸,とくにパルミチン酸,ステアリン酸が代表的であり,不飽和脂肪酸としてはオレイン酸,リノール酸,リノレン酸などが代表的であるが,いずれも偶数個の炭素原子からなる.
【0004】
オゾン化植物油の製造方法は,オゾン化すべき植物油を収容した容器内底部からオゾンを噴出させて植物油にオゾンを接触させることによりオゾン化植物油を生成させる方法が一般的である。上述の植物油の成分であるグリセリドの構成要素である脂肪酸のうちオレイン酸,リノール酸あるいはリノレン酸のような不飽和脂肪酸にのみオゾンが作用してオゾン化合物が形成される。すなわち不飽和脂肪酸の二重結合の部分にオゾンが結合しオゾニドと呼ばれる複雑な化合物が形成される。有機化学反応のように大量の溶媒中に基質が希薄な状態では,二重結合にオゾンが作用して形成されるオゾニドは非常に不安定な反応中間物質であるが,オゾン化植物油のように溶媒が存在せず直接オゾンを植物油に作用する場合,オゾニドは比較的安定である。オゾン化植物油は,そのもののみを密封しておけば比較的長く保存することが可能である。また,その際冷蔵又は凍結させておけば更に保存性はよい。このことから,オゾン化植物油はオゾンの保存方法の一つと考えることもできる。
【0005】
オゾン化植物油が,医療用途や除菌などの用途に使用されることは上述の通りであるが,オゾン化した植物油をオゾンの貯蔵方式の一つであると考えると,オゾンの別の性質も兼ね備えていると考えられる。その別の性質とは,脱臭および脱色の性質である。オゾン化植物油は医療用途において薬の代用としてあるいは薬として使用する場合は,その形態として問題はない。しかしながら,脱臭や脱色あるいは除菌といった他の一般的な幅広い用途に使用するには,そのものが油であることから使用しづらいことが欠点である。
【0006】
【特許文献1】特開2000−351985
【特許文献2】特開2005−162995
【特許文献3】特開2004−329810
【非特許文献1】「最新のオゾン療法」Renate Vievahn−Haensler著,日本医療・環境オゾン研究会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
オゾンの貯蔵方法の一つとしてのオゾン化植物油の医療用途以外への適用,すなわち脱臭,除菌あるいは脱色といった性質を遺憾なく発揮させるには,植物油としての形態では使用しずらいという欠点がある。本発明の課題は,優れたオゾン貯蔵方法の一つであるオゾン化植物油を容易に,脱臭,除菌及び脱色の用途に使用できる形態で提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のオゾン化植物油の取り扱い上の欠点を解決する方法としては,オゾン化植物油を主原料とする石けんを提供することである。
【発明の効果】
【0009】
オゾン化植物油を石けんとして提供することにより,石けんによる手洗い,あるいは衣類の洗濯ペットの入浴時等石けんの使用できる用途であれば,普通の石けんと同様に使用できる。その結果,例えば魚料理の際に手に付いた魚臭は,本発明のオゾン石けんで手洗いを行えば除菌と同時に魚臭も除去できる。また,犬などのペットを飼育しているとペット臭が気になるが,入浴時に本発明のオゾン石けんを使用して洗ってやれば,ペット臭は脱臭できる。といったように,オゾンの持つ効果を手軽な石けんという形で取り扱うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は,オゾン化植物油を主原料とするオゾン石けんを提供するものである。しかし,オゾン石けんの適用カ所によって適切な形態で提供する必要がある。例えば,洗面所における手洗いにおいては固形石けん,台所においては液状石けん,洗濯用途であれば粉末石けんが適当である。このように,オゾン石けんの供給形態としては,固形石けん,液状石けん及び粉末石けんの3種類の形態で提供することが,最も相応しい。
【実施例1】
【0011】
植物油として全脂肪酸部分に対し74.9%のオレイン酸を含むオリーブ油を用いた。オリーブ油200gを円筒容器に入れ,その中に微小気泡を発生させるノズルを通して,4g/hのオゾン発生能力を有するオゾン発生器からオゾン化酸素ガスを注入した。オリーブ油の温度は,45°C〜50°Cに制御して行った。オリーブ油とオゾンの反応は,20時間で終了した。反応終了後は,密閉容器に移ししばらく放置する。その結果,融点約23°Cの無色透明なグリス状のオゾン化オリーブ油が完成する。その後密閉し,冷蔵庫に保存する。
【0012】
NaOHを8g秤取り25ミリリットルの冷水を加えて,透明な溶液になるまでNaOHと水の混合物をかき混ぜる。一方,250ミリリットルのビーカーに約66gのオゾン化オリーブ油を秤取る。 そしてビーカーをホットプレート上で40°C〜50°Cに温め,オゾン化オリーブ油を溶かす。ホットプレートからオゾン化オリーブ油を下ろし,NaOH水溶液をかき混ぜながら添加する。オゾン化オリーブ油及びNaOH混合物をエマルジョンが形成されるまで連続的にかき混ぜる。その後,その混合物が分離しないエマルジョンが形成されるまで、時折かき混ぜながら混合物を冷却する。この時点で香料やその他の添加剤を加えてもよい。今回は特に添加しなかった。反応を進めるために(反応が完了するのにおよそ24時間かかる)エマルジョンをプラスチックのカップに注ぎ放置する。更にその後およそ2週間熟成させて完成する。この間に、すなわち石けんを乾燥している間に空気中のCOと残余のNaOHが反応すると同時にNaCOの粉末の層が表面に形成されるが,この粉状の層を剥がすことによりオゾン石けんとして使用できる。
【実施例2】
【0013】
使用するオゾン化植物油は,実施例1と同様にオリーブ油から作製したものを使う。
【0014】
250ミリリットルのエルレンマイヤービーカーにて11.4gのオゾン化オリーブ油を秤取る。エタノール50%水溶液を準備する。次にNaOHを10gを秤取りそれに36ミリリットルの50%エタノール水溶液を加え混合し,溶液が透明になるまでかき混ぜる。オゾン化オリーブ油の入ったエルレンマイヤーフラスコにNaOH溶液を注ぎ良く混合する。熱湯浴の中にエルレンマイヤーフラスコを固定し,時折攪拌しながら少なくとも30分間加熱する。混合物が加熱される間、泡が形成される。その際50%エタノール水溶液をわずかに加えることによって、過度の発泡を最小限に押さえる。反応混合物がかき混ぜられた後,油小球が目に見えなくなったとき反応は完了する。例えば500ミリリットルのビーカーに飽和食塩水300ミリリットルと純水50ミリリットルを入れておき,エルレンマイヤーフラスコ内の反応混合物(石けん,グリセリン,過剰NaOH及びエタノールを含むまだ熱い混合物溶液)を食塩水溶液に注ぐ。その混合物をかき混ぜた後,5−10分間そのまま放置する。 石けんはビーカーの塩水表面上に白い層として集合する。この石けんを吸引濾過によって分離した後氷冷水でフィルターの上の石けんを洗浄し,しばらく引き続き吸引して水分を切る。その後,濾し取った石けんを乾いた別の容器に移し,数日間空気乾燥する。乾燥が完了すると粉末石けんが完成する。
【0015】
上述の実施例では,オゾン化植物油としてオリーブ油を使用したが,構成要素である脂肪酸のうち不飽和脂肪酸を多く含有する植物油であればオゾン化処理は可能である。従って,オゾン石けんの原料とすることができる。さらに,ケン化用のアルカリとしてNaOHを用いたが,KOHを使用することも可能であり,更に有機塩基を使用することも可能である。また,上記の実施例においては,アルカリ,エタノール及び水以外の添加物を全く添加していないが,香料,着色料,保湿剤などの従来の石けん製造上適用される添加物を添加することも可能である。
【0016】
上述の実施例1で作製したオゾン石けんを使用して,手洗いの実験を繰り返した。魚調理の際に付いた魚臭は,オゾン石けんによる手洗いで完全に臭わなくなることを確認した。また,カメムシは非常にいやな悪臭を発する昆虫であるが,気付かずにさわってしまったとき手についた悪臭は通常の石けんでは何度洗っても臭いは完全には消えないが,本発明のオゾン石けんによる手洗いにおいては,1回で脱臭できた。
【産業上の利用可能性】
【0017】
オゾン化植物油はヨーロッパ諸国では、医療,衛生その他の分野において広く普及しているが,日本ではほとんど知られていない。しかしながら,本発明のようにオゾン化植物油による石けんを提供することにより,オゾン化植物油の特長を一般に普及させることができる。オゾン石けんによりオゾンあるいはオゾン化植物油のよい性質をいつでも手軽に使用できる形態で提供できる点で産業上価値がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン化植物油を主原料とする石けん。

【公開番号】特開2007−186623(P2007−186623A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6654(P2006−6654)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000229081)日本セラミック株式会社 (129)
【Fターム(参考)】