説明

オピオイド受容体のアンタゴニストとしての(S)‐2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジニル)プロパン酸及びその塩

新規の3,4‐二置換‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐ピペリジニルプロパン酸化合物及び医薬的に許容される塩を含むそれらの塩、それらの医薬組成物及び使用の方法が開示される。新規化合物は、とりわけオピオイド受容体のアンタゴニストとして、有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、オピオイド受容体系に作用し得る、置換されたピペリジニルプロパン酸化合物に関する。より具体的には、本発明は、3,4‐二置換‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐ピペリジニルプロパノン酸化合物、及びとりわけオピオイド受容体のアンタゴニストとしてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年6月8日付の米国仮特許出願番号第61/184,891号、及び2010年6月7日付の米国特許出願番号第12/795,095号の利益を主張し、その開示は、それらの全体においてここで参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の背景
生物系において、オピオイド剤は、3種の内因性オピオイド受容体(すなわちμ、δ、及びκ受容体)を標的とすることは、よく知られている。多くの鎮静剤、例えば、モルヒネなどは、中枢神経系(CNS)において排他的ではないが、主としてμオピオイド受容体のそれらの活性化により、激しい疼痛の治療のために鎮痛薬としてしばしば用いられる、μオピオイドアゴニストである。オピオイド受容体は、しかしながら、CNSに限定されることなく、体の至るところの他の組織、すなわちCNSの末梢、で見つけられる。オピオイド剤の多数の副作用は、それらの末梢受容体の活性化により引き起こされる。例えば、μオピオイドアゴニストの投与は、しばしば腸壁における多数の受容体による、腸機能障害をもたらす(Wittert, G., Hope, P. and PyIe, D., Biochemical and Biophysical Research Communications 1996, 218, 877-881; Bagnol, D., Mansour, A., Akil, A. and Watson, S. /., Neuroscience 1997, 81, 579-591)。特に、オピオイドは、動物及びヒトにおいて、一般的に、吐き気及び嘔吐、及び正常な推進する胃腸機能の阻害を引き起こすことが知られており(Reisine, T., and Pasternak, G., Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ninth Edition 1996, 521-555)、例えば便秘などの副作用をもたらす。
【0004】
自然に生ずる内因性のオピオイド化合物はまた、胃腸(GI)管における推進活性に影響を及ぼす。脳及び腸の双方において、μ及びδ受容体を活性化するメト−エンケファリンは、GI管で見つけられるいくつかの神経性ペプチドの一つである(Koch, T. R., Carney, J. A., Go, V. L., and Szurszewski, J. H., Digestive Diseases and Sciences 1991, 36, 712-728)。加えて、受容体ノックアウト技術は、μオピオイド受容体を欠損したマウスが、野生型のマウスに比べて、早いGI通過時間を有することを示し、それは、内因性オピオイドペプチドが、正常なマウスにおいてGI通過を持続的に阻害することを示した(Schuller, A. G. P., King, M., Sherwood, A. C, Pintar, J. E., and Pasternak, G. W., Society of Neuroscience Abstracts 1998, 24, 524)。研究は、GI管の至るところに位置するオピオイドペプチド及び受容体が、動物及びヒトの双方において、腸運動、及び液体の粘膜輸送の正常な制御に関与することを示した(Reisine, T., and Pasternak, G., Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ninth Edition 1996, 521-555)。他の研究は、交感神経系が内因性オピオイド及び腸運動の制御に関連することを示した(Bagnol, D., Herbrecht, F., JuIe, Y., Jarry, T., and Cupo, A., Regul. Pept. 1993, 47, 259-273)。GI管に関連する内因性オピオイド化合物の存在は、これらの化合物の異常な生理学的レベルが、腸機能障害を引き起こすことを示す。
【0005】
外科手術、特に腹部の手術を受ける患者にとって、手術後(post- surgical)(又は手術後(post-operative))腸閉塞と呼ばれる、特定の腸機能障害に罹患することは、一般的な問題である。「腸閉塞」とは、本明細書で用いられるとおり、腸(bowel)又は腸(gut)、特に結腸の閉塞を意味する。例えば、Dorland's Illustrated Medical Dictionary, 27th ed., p. 816, (W.B. Saunders Company, Philadelphia, PA, 1988)を参照のこと。腸閉塞は、便秘と区別され、それは、排便における希有性、又は困難性を意味する。例えば、Dorland's Illustrated Medical Dictionary, 27th ed., p. 375, (W. B. Saunders Company, Philadelphia 1988)を参照のこと。腸閉塞は、腸の正常な協調運動の障害により診断され、腸の内容物の推進の不全がもたらされる。例えば、Resnick, J. Am. J. of Gastroenterology 1997, 92, 751 and Resnick, J. Am. J. of Gastroenterology, 1997, 92, 934を参照のこと。いくつかの例では、特に腹部の手術を含む手術後、腸機能障害は、非常に深刻になり、それは、一週間以上続き、GI管の一部分以上に影響を及ぼす。この症状は、しばしば手術後(post- surgical)(又は手術後(post-operative))麻痺腸閉塞として呼ばれ、開腹術後、より頻繁に生じる(Livingston, E. H. and Passaro, Jr., E. D., Digestive Diseases and Sciences 1990, 35, 121を参照のこと)。同様に、分娩後腸閉塞は、分娩後の時期における女性にとって一般的な問題であり、出産ストレスの結果として正常なオピオイドレベルにおける同様の変動により引き起こされると考えられる。
【0006】
手術後腸閉塞に関連する胃腸運動障害は、一般的に、結腸において最も深刻であり、典型的には3〜5日間続く。手術後の患者に対するオピオイド鎮痛薬の投与は、しばしば腸機能障害の一因となり、それ故、正常な腸機能の回復を遅らせる。高比率の患者は、手術、特に大手術後の疼痛の軽減のために、例えばモルヒネ又は他の麻酔薬などオピオイド鎮痛薬の投与を受けるので、現在の手術後の疼痛の治療は、実際は、正常な腸機能の回復を遅くらせ、それは退院の遅延、及び医療費の増加をもたらす。
【0007】
手術後、及び分娩後の腸閉塞はまた、外因性オピオイドアゴニストの不在下で生じる。腸閉塞及び腸機能障害の関連する形態を予防及び/又は治療することができるように、例えば手術及び分娩など生物学的ストレスの期間の間、及び/又は後に、内因性オピオイドの自然な活性を阻害することは、有用である。現在では、腸閉塞の治療は、腸管の機能的刺激、便柔軟剤、下剤、潤滑剤、静脈水分補給、及び経鼻減圧(nasogastric decompression)を含む。これらの従来技術の方法は、例えば、手術後又は分娩後腸閉塞についての特異性に欠くとして、欠点に苦しむ。そして、これらの従来技術の方法は、予防のための方法がないことを表す。腸閉塞を防ぐことができる場合、患者の不快感を最小限にする利益に加えて、入院期間、回復時間及び医療費は、著しく減少する。それ故、腸のオピオイド受容体に選択的に作用する薬剤は、手術後及び分娩後腸閉塞を防ぐ及び/又は治療するための、理想的な候補である。それらのうち、CNSにおいてオピオイド鎮痛薬の効果妨げない薬剤は、それらが、制限された副作用と併せて、疼痛を管理するために、同時に投与されるという点で特に有用である。
【0008】
血液脳関門を越えてCNSに入ることのできない末梢オピオイドアンタゴニストは、文献において知られており、GI管に対するそれらの活性に関して試験がされている。米国特許5,250,542号、5,434,171号、5,159,081号、及び5,270,328号では、末梢に選択的なピペリジン‐N‐アルキルカルボン酸オピオイドアンタゴニストが、突発性便秘、過敏性腸症候群、及びオピオイド誘発性便秘の治療に有用であるとして記述されている。また、米国特許4,176,186号は、鎮痛剤の有効性を減少させることなく、麻薬性鎮痛剤の腸の不動性副作用を防ぐ又は軽減するといわれている、ノルオキシモルフォンの第四級誘導体(すなわち、メチルナルトレキソン)を記載している。米国特許5,972,954号は、オピオイド投与に関連するオピオイドに誘発性副作用を予防する及び/又は治療するための、とりわけ、メチルナルトレキソン、腸溶性コートされたメチルナルトレキソン、又はノルオキシモルホンの他の第四級誘導体の使用を記述する。
【0009】
一般的なオピオイドアンタゴニスト、例えば、ナロキソン、及びナルトレキソンなどはまた、GI管運動障害の治療に有用であるとして意味づけられる。例えば、米国特許4,987,126号、及びKreek, M. J. Schaefer, R. A., Hahn, E. F., Fishman, J. Lancet 1983, 1(8319), 261は、特発性胃腸運動障害の治療のための、ナロキソン、及び他のモルフィナンに基づくオピオイドアンタゴニスト(すなわち、ナルトレキソン)を開示している。加えて、ナロキソンは、非オピオイド誘発性腸閉塞を効率的な治療することが示されており、薬剤が、GI管又は脳内に直接的に作用することを暗示する(Schang, J. C, Devroede, G. Am. J. Gastroenerol. 1985, 80(6), 407)。さらに、それは、ナロキソンが麻痺性腸閉塞のための治療法を提供することを意味づける(Mack, D. J. Fulton, J. D. Br. J. Surg. 1989, 76(10), 1101)。しかしながら、ナロキソンの活性及び関連する薬剤は、末梢系に限定されず、望ましくないことに、オピオイド麻酔薬の鎮痛作用を妨げることがよく知られている。
【0010】
手術後及び分娩後腸閉塞は、医療費を増加させる日常的な疾患であるために、特有の、効果的な治療が必要とされ続けている。現在知られているオピオイドアンタゴニスト療法の大部分は、末梢部に選択的ではなく、CNSへの侵入に由来する望ましくない副作用の可能性を有する。見積られる、毎年2,100万人の入院患者の手術、及び2,600万人の外来患者の手術、並びに手術後腸閉塞が予測される470万人の患者の目算を考慮して、末梢系に特異的なだけでなく腸にも特異的である、オピオイドアゴニストを含む方法が、手術後及び分娩後腸閉塞の治療のために望まれている。
【0011】
具体的には、μオピオイド受容体アンタゴニスト化合物が、とりわけ、μオピオイド受容体により実質的に介在される、外因性オピオイドの慢性投与に関連する望ましくない副作用を改善するための、末梢のμオピオイド受容体を選択的に標的とする、μオピオイド受容体に拮抗するための方法に用いられる、果たされていない化合物の需要が、未だ存在する。これらの望ましくない症状又は疾患が外科手術、特に腹部の手術の結果である、望ましくない症状又は疾患を改善するための、μオピオイド受容体アンタゴニスト化合物についてのさらに果たされていない需要が未だ存在する。本発明は、これら及び他の重要な結果に向けられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
従って、本発明は、一部において、新規3,4‐二置換‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)ピペリジニルプロパン酸化合物に関する。特に、本発明は式I:
【0013】
【化1】

【0014】
の化合物、又はその塩、好ましくは医薬的に許容される塩に関する。
【0015】
好ましい実施形態では、本発明は、式IA:
【0016】
【化2】

【0017】
の化合物、又はその塩、好ましくは医薬的に許容される塩に関する。
【0018】
他の実施形態では、本発明は、医薬的に許容される担体及び式Iの化合物、好ましくは、式IAの化合物、又はその医薬的に許容される塩の有効量を含む医薬組成物に関する。
【0019】
さらに他の実施形態では、本発明は、μ又はκオピオイド受容体又はそれらの組み合わせを含むオピオイド受容体、好ましくはμオピオイド受容体に結合させるための方法に関し、この方法はインビトロ又はインビボにおいて、オピオイド受容体を式Iの化合物、好ましくは式IAの化合物と接触させることを含む。
【0020】
さらに他の実施形態では、本発明は、3,4‐二置換‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)ピペリジニルプロパン酸化合物が、μ又はκオピオイド受容体又はそれらの組み合わせを含む、オピオイド受容体、好ましくはμオピオイド受容体に対して活性を示し、インビトロ又はインビボにおいて、式Iの化合物、好ましくは式IAの化合物と接触することを含む、オピオイド受容体に結合させるための方法に関する。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、患者のオピオイド受容体に結合させるための方法に関し、この方法は、式Iの化合物、好ましくは式IAの化合物、またはその医薬的に許容される塩を患者に投与することを含む。ある好ましい実施形態では、患者は、症状、疾患、又は外科手術、例えば腹部手術など、及び/又は一つ又はそれを超える内因性及び/又は外因性のオピオイドに関連した望ましくない副作用、の治療を必要とする。
【0022】
ある好ましい実施形態では、本発明は、患者における胃腸障害を治療する方法を対象とし、この方法は、式Iの化合物、好ましくは式IAの化合物、又はその医薬的に許容される塩を患者に投与することを含む。胃腸障害の典型的な形態は、例えば、腸閉塞、オピオイド腸機能障害、及びオピオイド誘発性便秘を含む。
【0023】
さらに他の好ましい実施形態では、本発明は、オピオイド鎮痛薬の有効量、及び式Iの化合物、好ましくは式IAの化合物、又はその医薬的に許容される塩の有効量を含む組成物を患者に投与することを含む、疼痛を治療する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、マウスにおける、時間に応じた本発明の化合物及び従来技術の化合物による、モルヒネの抗輸送効果の拮抗作用に関する、実験のグラフ表示である。
【図2】図2は、ラットにおける、時間に応じた本発明の化合物及び従来技術の化合物の全血漿濃度、及びそれらの比較薬物動態学の相対的予測の実験のグラフ表示である。
【図3】図3は、イヌにおける、時間に応じた本発明の化合物及び従来技術の化合物の全血漿濃度、及びそれらの比較薬物動態学の相対的予測の実験のグラフ表示である。
【図4】図4は、サルにおける、時間に応じた本発明の化合物及び従来技術の化合物の全血漿濃度、及びそれらの比較薬物動態学の相対的予測の実験のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施形態の詳細な説明
上記及び本開示を通して用いられるように、他に指示のない限り、下記の用語は下記の意味を有することが理解されるべきである。
【0026】
「立体異性体」とは、同一の化合構造を有しているが、空間における原子又は基の配置に関して異なる化合物を意味する。
【0027】
本明細書で用いられるように、用語「部分立体異性体」とは、二つ又はそれを超えるキラル中心を有する立体異性体であって、少なくとも一つのキラル中心が、定義された立体化学(すなわちR又はS)を有し、少なくとも一つが定義されていない立体化学(すなわちR又はS)を有する、立体異性体を意味する。用語「その部分立体異性体」が本明細書で用いられる場合、それは、定義された立体化学中心を有するキラル中心においてその配置が維持される、記述された属内の任意の化合物を意味し、それぞれの定義されていないキラル中心の配置が独立してR又はSから選択される。例えば、立体異性体が、3つのキラル中心を有し、第一の中心の立体化学的配置が、「S」立体化学を有するとして定義されている場合、用語「又はその部分立体異性体」とは、3つのキラル中心において、SRR、SRS、SSR、又はSSS配置を有する立体異性体、及びその混合を意味する。
【0028】
本発明の好ましい実施形態は、ピペリジン環上のメチル置換基が「トランス」配向性である、式Iの化合物を含む。メチル基が結合されたピペリジン環における炭素原子の絶対的な立体化学はまた、一般的に用いられる「R」及び「S」定義を用いて定義される(Orchin et al, The Vocabulary of Organic Chemistry, John Wiley and Sons, Inc., page 126, その開示は、それらの全体において、ここで参照により本明細書に組み込まれる)。本発明の好ましい化合物は、メチル基を有する双方のピペリジン環の立体中心の配置が「R」である、式Iのそれら及び/又はその塩を含む。
【0029】
本発明は、個々の立体異性体、及び/又は一つ又はそれを超える立体異性体の組み合わせ又は混合、及び/又は部分立体異性体、及びラセミ化合物の混合を意図する。例えば、式Iの化合物は、下記の図においてアスタリスクにより示される、3つの立体中心を有する。立体中心のそれぞれは、R又はS配置を有する。それ故、式Iは、以下の立体化学的配置:RRR、RRS、RSR、SRR、RSS、SRS、SSR、又はSSSの一つをそれぞれ有する、8つの可能性のある立体異性体を包含する。同様に、式Iの化合物の塩はまた、同様の立体異性体の配置を含む、立体異性体の構造を有する。
【0030】
【化3】

【0031】
「医薬的に許容される」とは、健全な医薬判断の範囲内で、合理的な損益リスク比を有する、過度の毒性、炎症、アレルギー反応、又は他の問題、又は相応の合併症をおこさずに、患者に投与するために適した、それらの化合物、物質、組成物、塩、及び/又は投薬形態を意味する。
【0032】
「塩」とは、親化合物がその酸性塩又は塩基性塩を形成することにより修飾される、又は親化合物がその両性イオンの形態である、開示された化合物の誘導体を意味する。例えば、アミン官能性のプロトン化をもたらす酸と接触すると、化合物は、陰イオン、すなわち、酸の対イオンと結合する。例えば、酸官能性の脱プロトン化をもたらす塩基と接触すると、化合物は、陽イオン、すなわち、塩基の対イオンと結合する。塩の例としては、無機物、又は例えば、アミン、アルカリなどの塩基性残基の有機酸塩、又は例えば、カルボン酸などの酸性残基の有機塩基性塩などを含むが、これに限定されない。一度本願を参酌すれば、本発明の化合物の塩の調製に用いられ得る、好適な無機物、又は有機酸又は塩基は、当業者に容易に明らかにされる。
【0033】
ある好ましい実施形態では、塩は、例えば、医薬的に許容される酸又は塩基由来の従来の塩、及び内在的な又は両性イオンの塩を含む、「医薬的に許容される塩」である。そのような医薬的に許容される塩は、例えば、塩酸、臭酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、窒素酸などの無機酸由来の塩;及び例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、ナフチルジスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、又はイセチオン酸などの有機酸から調製される塩を含む。医薬的に許容される塩はまた、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムなどの水酸化アルカリなどの、金属が一価の種であるアルカリ金属塩基、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの、金属が多価の種であるアルカリ土類金属塩基を含む金属塩基、例えばN,N'‐ジベンジルエチレンジアミン、アルギニン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N‐メチルグルカミン)、及びプロカインなどの塩基性アミン、アンモニウム塩基、又はアルコキシド由来の塩を含む。
【0034】
生理学的に許容される塩は、本明細書中で記載されるように、当該技術分野において知られている方法、例えば、遊離のアミン塩基を、水性アルコール中の過剰の酸で溶解する、又は遊離のカルボン酸を金属塩基、好ましくはアルカリ金属塩基、例えば、水酸化物、置換された又は置換されていない水酸化アンモニウム、アルコキシド、又はアミンで中和すること、により調製される。加えて、例えば、塩基性窒素原子及び酸性基の双方を含む化合物では、窒素原子及び酸性官能基は、水媒体がバッファなどの形態であるときに含まれる、例えばそのイオン強度、pH、温度、塩を含む、対象の水媒体の、例えばその特性に応じたそれらの両性イオンの形態と平衡して存在することは、当業者によく知られている。これらの両性イオンの塩は、本質的に、内在的な医薬的に許容される塩であり、本発明の範囲内にあると意図される。
【0035】
用語「アンモニウム塩基」とは、本明細書で用いられるように、水酸化アンモニウム(NH4OH)、及び置換された水酸化アンモニウム、すなわち、R基の一つ、二つ、三つ、又は四つは、独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、又はヘテロシクロアルキルである、NR4OHを意味する。典型的な置換された水酸化アンモニウムは、例えば、水酸化テトラアルキルアンモニウム、例えば水酸化テトラメチルアンモニウムなどを含む。
【0036】
用語「アルコキシド」とは、本明細書で用いられるように、アルキルアルコールと金属との反応からの生成物を意味する。例示的なアルコキシドは、例えば、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、及びナトリウムt‐ブトキシドを含む。
【0037】
本明細書で記述される化合物は、代替形態で用いられ、又は調製されてもよい。例えば、多くのアミノを含む化合物は、酸付加塩として用いられ、又は調製され得る。しばしば、そのような塩は、化合物の単離及び取り扱いの性質を改善する。酸付加塩の形成に用いられる酸は、一般的に限定されない。医薬的に許容される及び医薬的に許容されない酸は、酸付加塩を調製するために用いられてもよい。例えば、試薬、反応条件などに応じて、本明細書で記述されるような化合物は、例えば、それらの塩酸塩、又はトシレート塩として用いられ、又は調製することができる。同様に、本明細書で記述されるような化合物は、例えば、それらのシュウ酸、又はコハク酸塩として用いられ、又は調製され得て、シュウ酸、又はコハク酸塩中の、一つ又は双方、好ましくは一つのカルボン酸基は、式Iの化合物、好ましくは式IAの化合物中の塩基性窒素原子にプロトンを付加する。
【0038】
一般的に言えば、医薬的に許容されない塩は、インビボにおいて、医薬として有用ではない。しかしながら、そのような塩は、特定の場合において、改良された結晶化度を示し、それ故、例えば、式Iの化合物の合成において、例えば、式Iの化合物及び/又はそれに加えて中間体の形成、単離、及び/又は精製に関連して、有用である。これは、例えば、典型的に、医薬的に許容される塩であると考えられない場合がある、塩として本発明の化合物を調製し、及び/又は用いることにより、改良された合成、精製、又は製剤化をもたらすことができる。これらの医薬的に許容されない塩は、典型的に、医薬的に許容されると考えられない酸又は塩基から調製されてもよい。そのような塩の例としては、例えば、トリフルオロ酢酸、過塩素酸、及びテトラフルオロホウ酸から調製される酸付加塩を含む。医薬的に許容されない塩は、例えば、インビボにおけるオピオイド受容体の結合のための方法を含む、本発明の特定の実施形態で用いられてもよい。加えて、必要であれば、そのような医薬的に許容されない塩は、当業者によく知られる技術を用いて、例えば、医薬的に許容されない酸、例えば、トリフルオロ酢酸、過塩素酸、及びテトラフルオロホウ酸を、医薬的に許容される酸、例えば、上述の医薬的に許容される酸と交換することにより、医薬的に許容される塩に変換することができる。
【0039】
本発明の酸付加塩は、例えば、本発明の化合物の1モルあたり、約一又はそれを超える当量の一価の酸を含み、酸の特質、及びプロトン付加が可能な塩基性孤立電子対の数に部分的に依存する。同様に、本発明の酸付加塩は、例えば、本発明の化合物の1モルあたり、約二分の一又はそれを超える当量の二価の酸(例えば、シュウ酸、コハク酸など)、又は約三分の一又はそれを超える当量の三価の酸(例えば、クエン酸など)を含み、酸の特質、及びプロトン付加が可能な塩基性孤立電子対の数に部分的に依存する。一般的に言えば、酸の当量数は、本明細書で記載される化合物の塩基性孤立電子対のおおよそ当量数まで変化させてもよい。
【0040】
金属塩基、又は塩基性アミン由来の本発明の塩は、例えば、本発明の化合物の1モルあたり、約一又はそれを超える当量の一価の金属又はアミンを含み、塩基の特質、及び入手できる酸性プロトン数に部分的に依存する。同様に、本発明の塩は、例えば、約二分の一又はそれを超える当量の二価の塩基(例えば、水酸化マグネシウム、又は水酸化カルシウムなど)を含む。一般的に言えば、塩基の当量数は、本明細書で記載される化合物における酸性プロトンのおおよそ当量数まで変化させでもよい。
【0041】
本明細書で用いられるように、用語「水和物」とは、分子の形態で水と結合している、すなわち、H‐OH結合が分割されていない、本明細書で記述される化合物又は塩を意味し、例えば、式R・H2O(Rは本明細書に記載されるような化合物)により表され得る。任意の化合物又は塩は、例えば一水和物(R・H2O)、又は例えば二水和物(R・2H2O)、三水和物(R・3H2O)などの多水和物(R・nH2O、ここでnは>1の整数)、又は例えばn/2H2O、R・n/3H2O、R・n/4H2O(nは整数)などの半水和物を含む、一を超える水和物を形成することができる。
【0042】
本明細書で用いられるように、用語「溶媒和物」とは、分子の形態において溶媒に結合する、すなわち、溶媒は配位的に結合される、本明細書で記述される化合物、又は塩を意味し、例えば、式R・(溶媒)(Rは本明細書に記載の化合物)により表され得る。任意の化合物又は塩は、例えば一溶媒和物(R・(溶媒))、又は、例えば二溶媒和物(R・2(溶媒))、三溶媒和物(R・3(溶媒))などの多溶媒和物(R・n(溶媒)、ここでnは>1の整数)、又は例えばn/2(溶媒)、R・n/3(溶媒)、R・n/4(溶媒)(nは整数)などの半水和物を含む、一を超える溶媒和物を形成することができる。本明細書では、溶媒は、混合された溶媒、例えば、メタノール/水、を含み、そのようなものとして、溶媒和物は、溶媒和物の中に一つ又はそれを超える溶媒を含んでもよい。
【0043】
本明細書で用いられるように、用語「酸塩水和物」とは、一つ又はそれを越える塩基部分を有する化合物と、一つ又はそれを超える酸部分を有する少なくとも一つの化合物との、会合を通して形成され得る複合体を意味し、その複合体は、水和物を形成するために、水とさらに結合する。
【0044】
「副作用」とは、特に、薬剤の投与により利益を得ることが求められている組織又は臓器系以外の組織又は臓器系に対して、その薬剤によって、生み出される悪影響のような、薬物又は測定の使用による影響以外の結果を意味する。例えば、オピオイドの場合、用語「副作用」とは、例えば、便秘、吐き気、及び/又は嘔吐、及び呼吸抑制などの症状を意味する。
【0045】
「有効量」とは、一つ又はそれを超える疾患、障害、又は副作用の症状を治療するために、治療的に有効であり得る、本明細書に記載されるような化合物の量を意味する。そのような疾患、障害、及び副作用は、オピオイドの投与に関連したそれらの病状(例えば、疼痛の治療に関連して)、ここで、治療は、例えば、細胞、組織、受容体を本発明の化合物と接触させることによる疾患、障害、及び/又は副作用に作用することを含む、を含むが、これに限定されない。それ故、例えば、用語「有効量」とは、オピオイドに関連して用いられるときに、例えば、疼痛の治療に対しては、苦痛を伴う症状の治療を意味する。用語「有効量」とは、オピオイドアンタゴニスト化合物に関連して用いられるときに、例えば、便秘、吐き気、及び/又は嘔吐などの副作用、及びさらに下記で議論される他の副作用などを含む、例えば、オピオイドに典型的に関連した副作用の治療を意味する。用語「有効量」とは、胃腸障害に対して作用する化合物に関連して用いられるときに、例えば、腸閉塞、オピオイドに誘発される腸障害、及び/又はオピオイドに誘発される便秘の緩和及び/又は改善を含む、胃腸障害に典型的に関連する、症状、疾患、障害、及び状況の治療を意味する。
【0046】
「と併用して」、「併用療法」、及び「併用製品」とは、特定の実施形態では、一つ又はそれを超えるオピオイドと併用して、一つ又はそれを超える本発明の化合物又は塩の患者への同時投与を意味する。
【0047】
オピオイド、それら自身は、さらに一つ又はそれを超える従来の鎮咳薬、オピオイドの鎮痛効果を増幅し、及び/又は鎮痛耐性の出現を減少させるように設計された一つ又はそれを超える化合物、及び/又は本明細書で記述された他の治療薬剤を含んでもよい。併用して投与されるとき、それぞれの成分は、同時に、又は異なる時点で任意の順序で続けて、投与することができる。それ故、それぞれの成分は、別々に、しかし所望の治療効果を提供するために十分に近接した時間に、投与することができる。
【0048】
「用量単位」とは、治療される特定の個人のための単位用量として適した物理的に別々の単位を意味する。それぞれの単位は、必要とされる医薬的な担体に結合して、所望の治療効果(単数又は複数)を生み出すために計算された活性化合物(単数又は複数)の所定の量を含むことができる。本発明の用量単位形態の詳細は、(a)活性化合物(単数又は複数)の独自の特性、及び得られる特定の治療効果(単数又は複数)、及び(b)そのような活性化合物(単数又は複数)を組み合わせる当該技術における固有の限界、により決められ得る。
【0049】
「患者」とは、哺乳動物、好ましくはヒトを含む動物を意味する。
【0050】
用語「治療する(treat)」、「治療(treatment)」、又は「治療すること(treating)」は、本明細書で用いられるように、一般的に、緩和的(例えば、治療の)、予防的(preventative)(例えば、予防の(prophylactic))、抑制性の、及び/又は治癒的処置を意味する。好ましくは、用語「治療する」、「治療」、及び/又は「治療すること」は、緩和的、抑制性の、及び/又は治癒的処置を意味し、緩和的及び抑制性の処置はより好ましい。特に好ましい実施形態では、用語「治療する」、「治療」、又は「治療すること」は、緩和的処置を意味する。
【0051】
「疼痛」とは、実際の又は潜在的な組織の損傷に関連して、又はそのような損傷に関して表現される、不快な感覚又は精神的な経験の知覚又は症状を意味する。「疼痛」とは、疼痛の二つの広い分類:急性及び慢性疼痛を含むが、これに限定されない。Buschmann, H.; Christoph, T; Friderichs, E.; Maul, C; Sundermann, B; eds.; Analgesics, Wiley- VCH, Verlag GMbH & Co. KgaA, Weinheim; 2002; Jain, K. K., "A Guide to Drug Evaluation for Chronic Pain"; Emerging Drugs, 5(2), 241-257 (2000)、その開示は、それらの全体において、ここで参照により本明細書に組み込まれる。疼痛の非制限的な例は、例えば、侵害受容性疼痛、炎症性疼痛、内臓痛、体性痛、神経痛、AIDS疼痛、癌疼痛、幻想痛、及び心因性疼痛、及び痛覚過敏症から生じる疼痛、間接リウマチにより引き起こされる疼痛、偏頭痛、胃痛などを含む。
【0052】
用語「胃腸障害」とは、本明細書で用いられるように、胃腸系、特に、胃、並びに小腸及び大腸の疾患を集合的に意味する。胃腸障害の非限定的な例は、例えば、下痢、吐き気、嘔吐、手術後嘔吐、オピオイド誘発性嘔吐、炎症性腸機能障害、オピオイド−腸機能障害オピオイド誘発性便秘、手術後腸閉塞、分娩後腸閉塞、オピオイド誘発性腸閉塞を含む腸閉塞、結腸炎、減少した胃運動性、減少した胃内容排出、小腸の推進力の阻害、大腸の推進力の阻害、増大した非推進的区間収縮の大きさ、オッディ括約筋の狭窄、増加した肛門括約筋の緊張、直腸膨張を伴う損なわれた反射性弛緩、減少した胃の、胆汁の、膵臓の、又は腸の分泌物、増加した腸内容物からの水分吸収、胃−食道の逆流、胃不全麻痺、筋痙攣、腫脹、膨張、腹部又は上腹部の疼痛及び不快、非潰瘍性消化不良、胃炎、便秘、経口投与された医薬又は栄養物質の遅延吸収を含む。
【0053】
本発明は、一部分において、好ましくはオピオイド受容体と結合する及び/又は相互作用する、置換されたピペリジニルプロパン酸化合物に関する。本発明の化合物が、3,4‐二置換‐4‐(3‐カルバモイル‐フェニル)ピペリジニルプロパノン酸化合物である、実施形態が提供される。好ましい形態では、本明細書で記述される化合物は、κ及びδオピオイド受容体に対する相対的に減少したアンタゴニスト活性を有する、オピオイド受容体、特にμオピオイド受容体のアンタゴニストであってもよい。
【0054】
本発明の3,4‐二置換‐4‐(3‐カルバモイル‐フェニル)ピペリジニルプロパノン酸化合物及びその塩は、従来技術の化合物の生物学的活性の性質と比較して、驚くべき及び予期できない、生物学的活性の有利な性質を示す。この点で、オピオイド受容体、特にμオピオイド受容体に対するそれらの所望の親和性のために、本明細書で記述されるような化合物及びその塩は、例えば、そのようなオピオイド受容体に結合させるための方法において有用であり得る。従って、本化合物及びその医薬的に許容される塩は、オピオイド受容体に関連する及び/又は変調される疾患又は障害の治療に有用であり得る。好ましい実施形態では、本発明の化合物及びその医薬的に許容される塩は、外科手術、特に腹部手術により引き起こされる、例えば腸閉塞などの胃腸障害の治療のための方法、並びにオピオイドに関連した疾患又は障害、特に、便秘、吐き気及び嘔吐、及びオピオイド誘発性腸障害を含む、オピオイド投与に関連した副作用の治療のための方法に用いることができる。本発明の化合物は、μオピオイド受容体、特に末梢で発現されるμオピオイド受容体、の強力かつ選択的なアンタゴニストであり、μオピオイド受容体のアンタゴニストとして非常に望ましい有効性を有することができる。加えて、本発明の化合物は、従来技術の化合物と比較して、より予測可能な全身曝露をもたらすインビボでの経口生物学的利用性の非常に有利な増加、及びそれらの薬物動態的性質における減少した変動性を示す場合がある。本発明の化合物における、この非常に望ましい生物学的活性の特性、及び薬物動態的性質は、従来技術の化合物と比較して、驚くべきものであり、予期されるものではなかった。
【0055】
特定の好ましい実施形態では、本発明の化合物、医薬組成物、及び方法は、末梢のオピオイドアンタゴニスト化合物を含んでもよい。用語「末梢の」とは、化合物が、生理系、及び中枢神経系(CNS)の外部の構成要素に作用することを意味する。好ましい形態では、本発明の方法に用いられる末梢のオピオイドアンタゴニスト化合物は、治療に関連のある用量において、減少した、及び好ましくは実質的にない、CNS活性を示す一方で、末梢組織、例えば、胃腸組織などに対して活性の高いレベルを示す。語句「実質的にCNS活性がない」とは、本明細書で用いられるように、CNSにおいて、約20%より低い、本方法に用いられる化合物の生理学的活性が示されること、CNSにおいて、好ましくは約15%より低い、より好ましくは約10%より低い、さらにより好ましくは約5%より低い、最も好ましくは検出できない、僅少な、又は0%の、本方法に用いられる化合物の生理学的活性が示されることを意味する。
【0056】
さらに、化合物がオピオイドの末梢の副作用に拮抗させるために投与される、本発明の実施形態では、化合物が実質的に血液脳関門を通過せず、それ故中枢神経系においてオピオイドの有益な活性を減少させないことは一般的に好ましい。語句「実質的に通過しない」とは、本明細書で用いられるように、治療的に関連のある用量において、約20重量%より低い、本方法に用いられる化合物が血液脳関門を通過すること、好ましくは約15重量%より低い、より好ましくは約10重量%より低い、さらにより好ましくは約5重量%より低い、なおさらに好ましくは検出できない、僅少な、又は0重量%の本方法の化合物が血液脳関門を通過すること、を意味する。選択された化合物は、静脈の、経口、皮下の、又は腹腔内の投与後、血漿及び脳のレベルを測定することにより、CNS通過率を評価された。
【0057】
従って、一つの実施形態では、本発明は、下記の式I:
【0058】
【化4】

【0059】
の化合物を提供する。
【0060】
特定の好ましい実施形態では、式Iの化合物は、塩の形態ではなく、すなわち、化合物は酸又は塩基と接触させず、何らかの陽イオン又は陰イオンと結合せず、両性イオンの形態でもない。特定の他の好ましい実施形態では、式Iの化合物は、塩、好ましくは、医薬的に許容される塩の形態である。例示的な塩は、例えば、
【0061】
(a) 例えば、式I‐S‐1:
【0062】
【化5】

【0063】
[式中、M+は、塩基の一価又は多価の陽イオン、好ましくは、一価の陽イオン、好ましくは、アルカリ金属塩基を含む、医薬的に許容される塩基]
により表されるようなカルボン酸塩;
【0064】
(b) 例えば、式I‐S‐2:
【0065】
【化6】

【0066】
により表されるような両性イオン又は内部塩;又は
【0067】
(c) 例えば、式I‐S‐3:
【0068】
【化7】

【0069】
[式中、A-は、酸の一価又は多価の陰イオン、好ましくは、一価の陰イオン、好ましくは、無機酸又は有機酸を含む、医薬的に許容される酸]
により表されるような酸付加塩を含む。
【0070】
特定の特に好ましい実施形態では、式Iの化合物は、下記の式IA:
【0071】
【化8】

【0072】
の化合物を有する。
【0073】
特定の特に好ましい実施形態では、式IAの化合物は、一またはそれを超える塩、好ましくは、医薬的に許容される塩の形態であり、以下:
【0074】
(a') 式IA‐S‐1:
【0075】
【化9】

【0076】
[式中、M+は、塩基由来の一価又は多価の陽イオン、好ましくは、一価の陽イオン、好ましくは、アルカリ金属塩基を含む、医薬的に許容される塩基]
【0077】
のカルボン酸塩;
【0078】
(b') 式IA‐S‐2:
【0079】
【化10】

【0080】
の両性イオン塩;及び
【0081】
(c') 式IA‐S‐3:
【0082】
【化11】

【0083】
[式中、A-は、酸由来の一価又は多価の陰イオン、好ましくは、無機酸又は有機酸を含む、医薬的に許容される酸]
の酸付加塩、
を含む。
【0084】
本発明、例えば医薬組成物の実施形態に従って、その中に含まれる医薬活性薬物は、式Iの化合物、式I‐S‐1の医薬的に許容される塩、式I‐S‐2の医薬的に許容される塩、又は式I‐S‐3の医薬的に許容される塩、又は式Iの化合物の様々な組み合わせ(及び/又はその特定の立体異性体)、及び/又式I‐S‐1、I‐S‐2、及びI‐S‐3(及び/又はその特定の立体異性体)の一つ又はそれを超える医薬的に許容される塩でもよい。
【0085】
式I‐S‐1の塩はカルボン酸塩である。用語「カルボン酸塩」とは、本明細書で用いられるように、化合物、例えば、プロトンがカルボキシレート(COO-)基を提供するために取り除かれたカルボン酸(COOH)基を含む、式Iの化合物由来の塩を意味する。典型的には、プロトン除去は、カルボン酸化合物を医薬的に許容される塩基、例えば、上述のような、アルカリ金属塩基、アミン塩基、アンモニウム塩基、又はアルコキシド塩基を含む塩基、と接触させることにより行うことができる。カルボン酸基がカルボキシレート基に変換された式Iの化合物は、本発明の特定の実施形態による好ましい塩である。本発明のカルボン酸塩を調製することに用いられる他の塩基は、一度本願における技術に接すれば、当業者に容易に明らかにされる。
【0086】
式I‐S‐1の医薬的に許容される塩に関する実施形態では、例えば、陽イオンM+は、例えば、一価の金属陽イオン、例えば、ナトリウム、カリウム、又はリチウム陽イオンなどを含む、金属陽イオンであり、ナトリウム及びリチウム陽イオンが好ましく、ナトリウム陽イオンはより好ましい。代替の実施形態では、金属陽イオンは、多価の陽イオン、例えば、二価陽イオン、例えば、マグネシウム、又はカルシウム陽イオンなどである。さらに他の代替の実施形態では、陽イオンは、例えば、アンモニウムイオンでもよい。
【0087】
例えば、式I‐S‐3の塩に関する実施形態では、陰イオンA-は、一つ又はそれを超えるプロトンの除去後の無機の又は有機酸の対イオンに相当し、一価又は多価(例えば、二、又は三価など)であってもよい。従って、医薬的に許容される酸、例えば、塩酸、臭酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などの場合では、陰イオンA-は、例えば、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、硫酸(SO4-2)、硫酸水素(HSO4-)、スルファミン(SO3-NH2-)、リン酸(PO4-3)、リン酸二水素(H2PO4-)、リン酸水素(HPO4-2)、硝酸(NO3-)、酢酸(CH3CO2-)、プロピオン酸(CH3CH2CO2-)、コハク酸(C2H4(CO2-)2又はC2H4(CO2H)(CO2-))、3‐カルボキシプロパン酸(C2H4(COOH)(CO2-)、グリコール酸(HOCH2CO2-)、ステアリン酸(CH3(CH2)16CO2-)、乳酸(CH3CH(OH)CO2-)、リンゴ酸(CH(OH)(CO2-)CH2CO2-又はCH(OH)(CO2H)CH2CO2-)、3‐カルボキシ‐2‐ヒドロキシプロパン酸(CH(OH)(CO2-)CH2CO2H)、3‐カルボキシ‐3‐ヒドロキシプロパン酸(CH(OH)(CO2H)CH2CO2-)、酒石酸(-O2CCH(OH)CH(OH)CO2-又はHO2CCH(OH)CH(OH)CO2-)、3‐カルボキシ‐2,3‐ジヒドロキシプロパン酸(HO2CCH(OH)CH(OH)CO2-)、クエン酸(C3H4(OH)(CO2H)2(CO2-)、C3H4(OH)(CO2H)(CO2-)2又はC3H4(OH)(CO2-)3)、2‐(カルボキシメチル)‐2‐ヒドロキシコハク酸(C3H4(OH)(COOH)(CO2-)2又はC3H4(OH)(CO2H)2(CO2-))、3‐カルボキシ‐3‐ヒドロキシペンタンジオエート(C3H4(OH)(CO2H)(CO2-)2)又は C3H4(OH)(CO2H)2(CO2-))、3‐カルボキシ‐2‐(カルボキシメチル)‐2‐ヒドロキシプロパン酸(C3H4(OH)(COOH)2(CO2-))、3,4‐ジカルボキシ‐3‐ヒドロキシブタン酸(C3H4(OH)(COOH)2(CO2-))、アスコルビン酸、パモン酸(C23H14O6-2)、マレイン酸(C2H2(CO2-)2又はHO2CC2H2CO2-)、(Z)‐3‐カルボキシアクリル酸((C2H2(COOH)(CO2-))、フェニル酢酸(C6H5CH2CO2-)、2‐アミノコハク酸(H2NCH(CO2-)CH2CO2-)、アスパラギン酸(H2NCH(CO2-)CH2CO2H)、3‐アミノ‐3‐カルボキシプロパン酸(H2NCH(CO2H)CH2CO2-)、2‐アミノペンタンジオエート(H2NCH(CO2-)(CH2)2CO2-)、グルタミン酸(H2NCH(CO2-)(CH2)2CO2H)、4‐アミノ‐4‐カルボキシブタン酸(H2NCH(CO2H)(CH2)2CO2-)、安息香酸(C6H5CO2-)、サリチル酸(C6H4(OH)CO2-)、スルファニル(H2NC6H4SO3-)、アセトキシ安息香酸(C6H4(‐O‐C(=O)CH3)CO2-)、フマル酸(C2H2(CO2-)2又はC2H2(CO2H)CO2-)、(E)‐3‐カルボキシアクリル酸(C2H2(COOH)CO2-))、トルエンスルホン酸(C6H4(CH3)SO3-)、ナフチルジスルホン酸(C10H6)(SO3-)2)、スルホナフタレン‐スルホン酸(C10H6)(SO3H)(SO3-)、メタンスルホン酸(CH3SO3-)、エタンジスルホン酸(-O3S(CH2)2SO3-)、スルホエタン‐スルホン酸(HO3S(CH2)2SO3-)、シュウ酸((CO2-)2)、カルボキシギ酸HOOC-(CO2-)、又はイセチオン酸(CH2OHCH2SO3-)イオンなどである。特定のより好ましい実施形態では、医薬的に許容される塩は、シュウ酸、又はコハク酸由来の塩を含む。医薬的に許容されない酸、例えば、トリフルオロ酢酸、過塩素酸、及びテトラフルオロホウ酸などの場合では、陰イオンA-は、例えば、トリフルオロ酢酸(CF3CO2-)、過塩素酸(ClO4-)、及びテトラフルオロホウ酸(BF4-)イオンである。医薬的に許容されない酸、及び医薬的に許容される酸を含む、本発明の酸付加塩を調製するのに用いられる、他の酸は、一度本願における技術に接すれば、容易に認識される。
【0088】
本発明の化合物、例えば、式Iの化合物及びその塩などはまた、他の形態、例えば、それらの立体異性体(特に示された場合を除く)、プロドラッグ、水和物、溶媒和物、酸性塩水和物、又はそれらの任意の同形の結晶形態などを含む。
【0089】
本発明の方法及び組成物に用いられる化合物は、プロドラッグの形態で存在してもよい。本明細書で用いられる、「プロドラッグ」とは、そのようなプロドラッグが哺乳動物の対象に投与されたときに、インビボにおいて、活性親薬物、例えば、式I又は他の式の化合物、又は本方法及び組成物に用いられる化合物を放出する、任意の共有結合した担体を含むことを意図とする。用語「プロドラッグ」とはまた、反応の所望の部位に到達する活性種の量を最大化するように特に設計され、且つそれら自身は、所望の活性について、不活性又は最小限の活性である化合物を含むが、しかし、生体内変化を通じて、生物学的に活性な代謝産物に変換される化合物を含む。プロドラッグは、医薬の多数の所望の性質(例えば、溶解性、生物学的利用性、製造性など)を増大することが知られているので、本方法に用いられる化合物は、必要であれば、プロドラッグ形態で送達され得る。それ故、本発明は、プロドラッグを送達する方法を意図する。本発明に用いられる化合物、例えば、式Iの化合物のプロドラッグは、所定の操作又はインビボにおいて、修飾が親化合物へ開裂されるような方法で、化合物中に存在する官能基を修飾することにより、調製されてもよい。
【0090】
従って、プロドラッグは、プロドラッグが哺乳動物の対象に投与されたときに、例えば、遊離のヒドロキシル、遊離のアミノ、又はカルボン酸をそれぞれ形成するために、ヒドロキシ、アミノ、又はカルボキシ基が、開裂する任意の基に結合された、本明細書で記述された化合物を含む。例としては、アルコール及びアミン官能基の酢酸塩、ギ酸塩、及び安息香酸塩誘導体;及びアルキル、カルボサイクリック、アリール、及びアルキルアリールエステル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソ‐プロピル、ブチル、イソブチル、sec‐ブチル、tert‐ブチル、シクロプロピル、フェニル、ベンジル、及びフェネチルエステルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
本方法で用いられる化合物、及び本発明の組成物はまた、例えば重水素、すなわち2Hなどの重い同位体で置き換えられ、又はそれに富んでいてもよい。そのような重水素置換された化合物は、より優れた代謝的安定性、例えば、増加したインビボにおける半減期、又は減少した必要とされる投与量、をもたらす一定の治療的有益性を提供し、従って、特定の状況では、好ましい。同位体標識された式Iの化合物は、下記のスキーム及び/又は実施例に開示された手順を実行することにより、一般的に、容易に入手することのできる同位体標識試薬を、非同位体的標識試薬の代わりに用いることにより、調製することができる。濃縮の程度は、変更することができ、好ましくは、重水素の天然存在度(すなわち、0.015%)より多く、例えば0.5%〜100%(濃縮の範囲の全ての組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びにその中の特定の濃縮値)などである。
【0092】
本発明の化合物は、当業者によく知られる多数の方法で調製されてもよい。前記化合物は、例えば、後述の方法、又は当業者によりその点について認められるようなバリエーションにより、合成され得る。本発明に関連にして開示される全てのプロセスは、ミリグラム、グラム、マルチグラム、キログラム、マルチキログラム、又は商工業的な規模を含む任意の規模で、実行されることが意図される。
【0093】
上記で詳細に論じられたように、本発明の化合物は、一つ又はそれを超える非対称的二置換された炭素原子を含んでもよく、光学活性、又はラセミ体で単離されてもよい。それ故、特定の立体化学又は異性体の形態が特に示されていない限り、任意の所定の構造の全てのキラル、ジアステレオマー、及びラセミ体、及び全ての幾何学的異性体の形態が意図される。そのような光学的に活性な形態を単離する及び調製するための技術は、当該技術分野において、よく知られている。例えば、立体異性体の混合物は、ラセミ体の溶解、順、逆相、及びキラルクロマトグラフィー、優先的塩形成、再結晶などを含むが、これに限定されない標準的な技術により、又はキラル出発物質からのキラル合成により、又は標的キラル中心の計画的合成により、分離され得る。
【0094】
容易に理解されるように、官能基は、合成の過程の間、保護基を含んでもよい。保護基は、それら自体が例えば、ヒドロキシル基、及びカルボキシル基などの官能基に選択的に結合される、及び取り除かれる、化学的官能基として知られている。これらの基は、そのような官能基を、化合物が曝露されるその化学反応条件に対して不活性な状態のままとなるように、化合物中に存在する。任意の様々な保護基は、本発明で用いられることができる。好ましい保護基は、ベンジルオキシカルボニル、及びtert‐ブチルオキシカルボニル基を含む。本発明に従って用いられる他の好ましい保護基は、Greene, T.W. and Wuts, P.G.M., Protective Groups in Organic Synthesis 2d. Ed., Wiley & Sons, 1991; 又はKocienski, P. J., Protecting Groups, 3d. ed., Georg Thieme Verlag:. Stuttgart, 2005に記述され、その開示のそれぞれは、それらの全体において、ここで参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
作用の任意の動作理論(単数又は複数)により束縛されることを意図しないで、オピオイド副作用、例えば、便秘、嘔吐、及び/又は吐き気などが、オピオイドと、末梢のオピオイド受容体、特に末梢のμオピオイド受容体との望ましくない相互作用によりもたらされ得ることが意図される。本発明の一つの態様によれば、本発明の化合物、例えば、式Iの化合物、又はその医薬的に許容される塩、好ましくは、式IAの化合物、又はその医薬的に許容される塩の投与は、オピオイドの末梢受容体との相互作用を遮断し、それ故、好ましくはCNSにおけるオピオイドの治療効果に干渉せずに、一つ又はそれを超える副作用を治療する可能性がある。
【0096】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明の化合物、例えば、式Iの化合物、好ましくは式IAの化合物、又はその医薬的に許容される塩、例えば、式I‐S‐1、I‐S‐2、及び/又はI‐S‐3の医薬的に許容される塩を単独で、又はオピオイド化合物との組み合わせで、患者に投与することを含む方法が提供される。そのような方法及び組成物において、使用のために適したオピオイドの幅広い種類は、利用することができる。一般的に言えば、オピオイドは所望の効果(例えば、疼痛緩和)を提供し、本組成物及び方法(下記で詳細に述べられる)に組み込むことができることのみが、必要とされる。好ましい実施形態では、本方法および組成物は、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジル‐モルヒネ、ベンジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、シクラゾシン、デソモルヒネ、デキストモラミド、デゾシン、ジアンプロミド、ジアモルホン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアンブテン、ジオアフェチルブチレート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レバロルファン、レボロファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、ロペラミド、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルブフィン、ナルセイン、ニコモルフィン、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナロルフィン、ノルモルフィン、ノルピナノン、オピウム、オキシコドン、オキシモルフォン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェノモルファン、ファナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロフェプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロピラム、プロポキシフェン、スルフェンタニル、チリジン、トラマドール、そのジアステレオ異性体、その医薬的に許容される塩、その複合体、又はその混合物から;より好ましくは、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、オキシコドン、オキシモルフォン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、及び/又はトラマドールから選択されるオピオイドを含むことができる。より好ましくは、オピオイドは、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ジヒドロコデイン、プロポキシフェン、フェンタニル、及び/又はトラマドールから選択される。
【0097】
本組成物のオピオイド成分は、鎮痛剤、及び/又は咳‐風邪‐鎮咳薬の併用製品に従来から用いられている一つ又はそれを超える他の活性成分をさらに含む。そのような従来の成分は、例えばアスピリン、アセトアミノフェン、フェニルプロパノールアミン、フェニレフリン、クロルフェニラミン、カフェイン、及び/又はグアイフェネシンを含む。オピオイド成分に含まれ得る、典型的な又は従来の成分は、例えば、Physicians' Desk Reference, 1999に記載されており、その開示は、その全体において、ここで参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
加えて、前記の組成物又はオピオイド成分は、オピオイドの鎮痛効果を増幅するように、及び/又は鎮痛耐性発現を減少するように設計され得る、一つ又はそれを超える成分をさらに含んでもよい。そのような化合物は、例えば、デキストロメトルファン、又は他のNMDAアンタゴニスト(Mao, M. J. et al., Pain 1996, 67, 361)、L‐364,718、及び他のCCKアンタゴニスト(Dourish, CT. et al, Eur J Pharmacol 1988, 147, 469)、NOS阻害剤(Bhargava, H.N. et al, Neuropeptides 1996, 30, 219)、PKC阻害剤(Bilsky, EJ. et al., J Pharmacol Exp Ther 1996, 277, 484)、及びダイノルフィンアンタゴニスト、又は抗血清(Nichols, M. L. et al., Pain 1997, 69, 317)を含む。前述の文書のそれぞれの開示は、それらの全体において、ここで参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
上記で例示されたそれらに加えて、本発明の方法及び組成物に用いられ得る、他のオピオイド、任意の従来のオピオイド成分、及びオピオイドの鎮痛効果を増幅するための及び/又は鎮痛耐性出現を減少させるための任意の化合物は、一度本開示の技術に接すれば、当業者に容易に明らかにされる。
【0100】
本発明の別の実施形態は、医薬的に許容される担体及び本発明の化合物、例えば、式Iの化合物又はその医薬的に許容される塩、好ましくは、式IAの化合物又はその医薬的に許容される塩、例えば、式IA‐S‐1、IA‐S‐2及び/又はIA‐S‐3の医薬的に許容される塩など、の有効量を含む、医薬的に許容される組成物を提供する。
【0101】
本発明のさらに別の実施形態は、本発明の化合物、例えば、式Iの化合物又はその医薬的に許容される塩など、好ましくは、式IAの化合物又はその医薬的に許容される塩、例えば、式IA‐S‐1、IA‐S‐2及び/又はIA‐S‐3の医薬的に許容される塩、の有効量を、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む、胃腸障害を治療するための方法を提供する。
【0102】
本発明の好ましい実施形態は、本発明の化合物、例えば、式Iの化合物又はその医薬的に許容される塩など、好ましくは、式IAの化合物又はその医薬的に許容される塩、例えば、式IA‐S‐1、IA‐S‐2及び/又はIA‐S‐3の医薬的に許容される塩、の有効量を、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む、腸閉塞を治療するための方法を提供する。
【0103】
本発明の別の実施形態は、本発明の化合物、例えば、式Iの化合物又はその医薬的に許容される塩など、好ましくは、式IAの化合物又はその医薬的に許容される塩、例えば、式IA‐S‐1、IA‐S‐2及び/又はIA‐S‐3の医薬的に許容される塩、の有効量を、患者に投与することを含む、オピオイドに関連した一つ又はそれを超える副作用を治療するための方法を提供する。
【0104】
本発明の化合物は、純粋な化学物質として投与されてもよいが、医薬組成物としての活性成分を示すことが好ましい。本発明はそれ故、一つ又はそれを超える医薬的に許容される担体、随意に、他の治療的及び/又は予防的成分と一緒に、式Iの化合物又はその医薬的に許容される塩を含む、医薬組成物をさらに提供する。担体(単数又は複数)は、組成物の他の成分と適合し、その受容者に対して有害でない、という意味で許容されるべきである。
【0105】
本発明の化合物は、医療分野で十分に確立された従来の技術のいずれかにより、有効量で投与されてもよい。例えば、一つ又はそれを超えるオピオイド、及び本発明の化合物、例えば、式Iの化合物又はその医薬的に許容された塩など、を含む本発明の方法に用いられる化合物は、活性薬物と、患者の生体におけるその薬物の作用部位(単数又は複数)との接触をもたらす、任意の手段により投与されてもよい。前記化合物は、調合薬と併用して、又は個別の治療薬として、又は治療薬の組み合わせで、使用可能である任意の従来の手段により、投与してもよい。例えば、それらは、医薬組成物中で唯一の活性成分として投与してもよいし、又はそれらは、他の治療活性成分と併用して用いることができる。
【0106】
化合物は、単独で投与されてもよく、又は選択された投与の経路、及び例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., Easton, PA, 1980)(その開示は、それらの全体において、ここで参照により本明細書に組み込まれる)に記述されるような標準的な薬務、を基に選択される医薬的な担体と組み合わせられてもよい。活性成分及び担体の相対比は、例えば、化合物の可溶性及び化学的性質、選択された投与の経路、及び標準的な薬務によって決定されてもよい。
【0107】
化合物は、本明細書で記述されるように、選択される投与の経路、例えば、経口又は非経口、に適した形態の種類で、哺乳動物の宿主に投与されてもよい。この点において、非経口投与は、以下の経路:静脈、筋肉内、皮下、眼球内、滑液嚢内、経皮を含む経上皮、眼、舌下腺、頬;眼、神秘、眼球、及び直腸を含む局所;送気及び噴霧器を介した鼻孔吸引、による投与を含む。
【0108】
活性化合物(単数又は複数)は、例えば、不活性希釈剤、又は吸収でき、食べることのできる担体と併せて経口で投与されてもよく、又はそれは硬又は軟殻ゼラチンカプセルに封入されてもよく、又はそれは錠剤に圧搾されてもよく、又はそれは食事の食物に直接組み込んでもよい。経口治療薬投与のために、活性化合物は、賦形剤と併せて組み込まれ、摂取可能な錠剤、口腔錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハースなどの形態で用いられ得る。治療的に有用な組成物中の活性化合物(単数又は複数)の量は、好ましくは、そのような好適な投与量が得られるようなものである。本発明による好ましい組成物又は調製物は、経口投与単位形態が、約0.1〜約1000 mgの活性成分、及びその中の活性化合物の範囲の全ての組み合わせ及び部分的組み合わせ、及びその中の特定の量を含むように調製され得る。
【0109】
錠剤、トローチ、ピル、カプセルなどはまた、一つ又はそれを超える以下:トラガカント、アカシア、コーンスターチ、又はゼラチンなどの結合剤;第二リン酸カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;スクロース、ラクトース、またはサッカリンなどの甘味剤;又はペパーミント、ウィンターグリーン油、チェリー香料などの香料を含んでもよい。投与単位形態がカプセルである場合、それは、上述の種類の物質に加えて、液体担体を含んでもよい。様々な他の物質は、コーティング剤として、又は投与単位の物理的形態を別の方法で修飾するために、存在してもよい。例えば、錠剤、ピル、又はカプセルは、シェラック、糖、又は双方でコートされてもよい。シロップ又はエリキシル剤は、活性化合物、甘味料としてスクロース、保存料としてメチル及びプロピルパラベン、色素及び香料、例えばチェリー又はオレンジ香料などを含んでもよい。当然、任意の投与単位形態を調製するのに用いられる任意の物質は、好ましくは、医薬的に純粋且つ、用いられる量において実質的に非毒性である。加えて、活性化合物は、持続放出性調製物及び製剤に組み込まれてもよい。
【0110】
活性化合物はまた、非経口で又は腹腔内で投与され得る。遊離の塩基又は医薬的に許容される塩のような活性化合物の溶液は、例えばヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合されて、水中で調製され得る。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中で、及び油中で調製され得る。保存及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐために保存剤を含むことができる。
【0111】
注入使用に適した医薬的な形態は、例えば、滅菌水溶液、又は分散液、及び滅菌注入溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。全ての場合において、前記形態は、好ましくは、容易な注入可能性(syringability)を提供するために、滅菌されており、流動性を有する。それは、好ましくは、製造及び保存の条件下で安定であり、好ましくは、例えば、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に備えて保存される。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、その好適な混合物、及び植物油を含む、溶媒又は分散媒であってもよい。好適な流動性は、例えば、レクチンなどのコーティング剤の使用により、分散液の場合、必要とされる粒子径の維持により、及び/又は界面活性剤の使用により、維持され得る。微生物の作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの、様々な抗菌剤及び抗真菌剤により、達成される。多くの場合では、例えば、糖又は塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが好ましい。注入組成物の長期的な吸収は、吸収を遅延させる薬物、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、及びゼラチンなどの使用により、達成されてもよい。
【0112】
滅菌された注入溶液は、上記で列挙された様々な他の成分と一緒に、適切な溶媒中で、活性成分を必要とされる量で組み込むことにより調製され、必要であれば、その後、濾過滅菌されてもよい。一般的に、分散液は、基本の分散媒及び上記で列挙されたそれらから必要とされる他の成分を含む滅菌された媒体に、滅菌された活性成分を、組み込むことにより調製される。滅菌注入溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好適な方法は、活性成分の粉末、加えて、前もって滅菌濾過されたその溶液から任意のさらなる所望の成分を生じる、真空乾燥及び/又は凍結乾燥技術を含んでもよい。
【0113】
本発明の化合物の投与量は、様々な因子、例えば、特定の薬剤の薬力学的な性質及びその投与の形態及び経路、受容者の年齢、健康状態、及び体重、症状の性質及び程度、併用療法の種類、治療の頻度、及び所望の効果に応じて変更されてもよい。一般的に、少ない投与量が始めに用いられ、状況下での所望の効果が達成されるまで、必要であれば、わずかな増分により増加される。一般的に言えば、経口投与は、高い投与量を必要とする場合がある。
【0114】
もっとも、本発明の化合物の適切な用量は、一度本開示に接すれば、当業者により容易に解明され、典型的には、本発明の化合物、好ましくは、式Iの化合物及び/又はその医薬的に許容される塩、例えば、式I‐S‐1、I‐S‐2、及び/又はI‐S‐3の医薬的に許容される塩の投与量は、約0.001〜約1000ミリグラムの範囲、及び範囲の全ての組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びにその中の特定の投与量であってもよい。好ましくは、投与量は、約0.01〜約100ミリグラムの本発明の化合物又は医薬的に許容される塩であり、約0.01〜約10ミリグラムであることがより好ましい。
【0115】
本発明の併用製品、例えば、式Iの化合物又はその医薬的に許容される塩、例えば、式I‐S‐1、I‐S‐2、及び/又はI‐S‐3の医薬的に許容される塩などの本発明の化合物との組み合わせで、オピオイド(単数又は複数)を含む医薬組成物など、は例えば本明細書で記述されたそれらなどの任意の投与形態であり、且つ本明細書に記述のように、また様々な方法で投与される。好ましい実施形態では、本発明の併用製品は、単一の投与形態で(つまり、一つのカプセル、錠剤、粉末、又は液体などの中に一緒に組み合わされて)、一緒に製剤化される。併用製品が単一の投与形態で一緒に製剤化されない場合、オピオイド化合物(単数又は複数)、及び本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩は、同時に(つまり、一緒に)、又は任意の順番で、投与されてもよい。同時に投与されない場合、好ましくは、オピオイド、及び本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩の投与は、約8時間未満間隔で、より好ましくは約4時間未満間隔で、より好ましくは、約2時間未満間隔で、より好ましくは約1時間未満間隔で、より好ましくは約30分未満間隔で、さらにより好ましくは約15分未満間隔で、なおさらにより好ましくは約5分未満間隔で、行われる。好ましくは、本発明の併用製品の投与は経口であるが、しかし投与の他の経路は、上述の通り、本発明の範囲内であることが意図される。もっとも、オピオイド(単数又は複数)、及び本発明の化合物又は医薬的に許容されたその塩は、双方ともに同じ方法で(すなわち、例えば、双方ともに経口で)投与され、必要であれば、それらは、異なる方法で(すなわち、例えば、併用製品の第一の成分は、経口で投与され、第二の成分は静脈内に投与されてもよい)、それぞれ投与され得る。本発明の併用製品の投与量は、様々な因子、例えば、特定の薬物の薬力学的な性質、及びその形態、及び投与の形態、受容者の年齢、健康状態、及び体重、症状の性質及び程度、併用療法の種類、治療の頻度、及び所望の効果に応じて変更され得る。
【0116】
もっとも、本発明の併用製品の適切な用量は、一度本開示に接すれば、一般的なガイダンスの方法を通じて、当業者により容易に解明され、オピオイド化合物が、本発明の化合物、例えば、式Iの化合物又はその医薬的に許容される塩などと組み合わされる場合、典型的な投与量は、約0.01〜約100ミリグラムのオピオイド(及び範囲の全ての組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びにその中の特定の投与量)、及び約0.001〜約100ミリグラムの本発明の化合物、例えば、式Iの化合物及び/又はその医薬的に許容される塩など(及び範囲の全ての組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びにその中の特定の投与量)の範囲である。好ましくは、投与量は、約0.1〜約10ミリグラムのオピオイド、及び約0.01〜約10ミリグラムの本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩であってもよい。この種類の併用製品の典型的な投与形態、例えば錠剤など、に関しては、オピオイド化合物(例えば、モルヒネ)は、一般的に約15〜約200ミリグラムの量(及び範囲の全ての組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びにその中の特定の量)で存在し、本発明の化合物又は医薬的に許容される塩は、一般的に約0.1〜約4ミリグラムの量(及び範囲の全ての組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びにその中の特定の量)で存在してもよい。
【0117】
単一の投与形態として提供される場合、組み合わせた活性成分(例えば、オピオイド)と、本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩との間の化学的相互作用についての可能性は、存在する。この理由のために、本併用製品の好ましい投与形態は、活性成分が単一の投与形態で組み合わせられるが、活性成分間の物理的接触は最小限になる(すなわち、減少する)ように製剤化される。
【0118】
接触を最小限にするために、製品が経口で投与される本発明の一つの実施形態は、併用製品であって、一つの活性成分は腸溶コーティングされた併用製品を提供する。一つ又はそれを超える活性成分を腸溶コーティングすることにより、組み合わされた活性成分間の接触を最小限にすることを可能にするだけでなく、また、それらの成分の一つが胃で放出されずに腸で放出されるように、胃腸管においてこれらの成分の一つの放出を制御することも可能にする。
【0119】
経口投与が望まれる、この発明の別の実施形態は、胃腸管を通して持続放出をもたらし、且つ組み合わせた活性成分間での物理的な接触をまた最小限にするために働く、持続的に放出する物質で、一つ又はそれを超える活性成分がコートされた、併用製品を提供する。さらに、持続放出成分(単数又は複数)は、加えて、腸においてのみこの成分の放出が起こるように腸溶コートされ得る。さらに別の手法は、活性成分をさらに分離するために、一つの化合物が、持続する及び/又は腸溶放出のポリマーでコートされ、別の化合物がまた、低粘度グレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又は当該技術分野でよく知られる他の適切な物質などのポリマーでコートされた、併用製品の製剤を含む。ポリマーコーティングは、他の成分の相互作用に対するさらなる障壁を形成するのに役立つ。
【0120】
一つの活性成分が腸溶コートされている、本発明の併用製品の投与形態は、腸溶コートされた成分及び他の活性成分が一緒に混合され、その後錠剤に圧搾されたような、又は腸溶コートされた成分が一つの錠剤層に圧搾され、他の活性成分がさらなる層に圧搾されたような、錠剤の形態であり得る。随意的に、二つの層をさらに分離するために、一つ又はそれを超える偽薬層は、偽薬層が活性成分の層の間にあるように存在してもよい。加えて、本発明の投与形態は、一つの活性成分が錠剤に圧搾されたカプセルの形態、又はその後腸溶コートされる、マイクロ錠剤(microtablet)、粒子、顆粒、又は非ペリル(non‐peril)の多数の形態であり得る。これらの腸溶コートされたマイクロ錠剤(microtablet)、粒子、顆粒、又は非ペリルは、その後、カプセル中に置かれる、又は他の活性成分の顆粒と一緒にカプセルに圧搾される。
【0121】
本発明の併用製品の成分間の接触を最小限にする、これら及び他の方法は、単一の投与形態で投与されるか、又は分離された形態であるが同様の方法により同時に投与されるかに関わらずに、一度本開示に接すれば、当業者に容易に明らかにされる。
【0122】
一つ又はそれを超える滅菌容器に、治療的有効量のオピオイドと、治療的有効量の本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩を一緒に含む、例えば、疼痛の治療に有用な医薬的なキットはまた、本発明の範囲内である。容器の滅菌は、当業者によく知られている従来の滅菌方法を用いて行われ得る。物質の滅菌容器は、要望通りに、UNIVIAL(商標)の二つの部分の容器(Abbott Labs, Chicago, Illinoisから入手可能である)により例示されるような、分離された容器、又は一つ又はそれを超える複数部分の容器を含んでもよい。オピオイド化合物、及び本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩は分離され、又は上述のように、単一の投与形態に組み合わせられ得る。そのようなキットは、必要であれば、一つ又はそれを超える様々な従来の医薬的なキット成分、例えば、一つ又はそれを超える医薬的に許容される担体、成分を混合するためのさらなるバイアルなど、をさらに含み、当業者には容易に明らかである。投与される化合物量を指示する、挿入物として又はラベルとしての使用説明書、投与のためのガイドライン、及び/又は成分の混合のためのガイドラインはまた、キットに含まれる。
【0123】
治療での使用のために必要とされる、化合物、又はその活性塩、又は誘導体の量は、特定の化合物、選択された塩又は誘導体によってのみではなく、投与の経路、治療される病状の性質、患者の年齢及び病状により変更され、最終的には、主治医又は臨床医の裁量によることがさらに認識される。
【0124】
所望の用量は、都合よく、適切な間隔で投与される、一回の用量で又は分割された用量、例えば、一日に二回、三回、四回、又はそれを超えるサブ用量(sub-dose)として、提供され得る。サブ用量自体は、例えば、それぞれが自由に間隔を空けた多数の投与;例えば、吸引器からの複数の吸入、又は眼への多数の滴下の適用に、さらに分割されてもよい。
【0125】
投与量はまた、化合物の制御された放出により、当該技術分野においてよく知られた技術により、例えば、単独の治療又は麻酔薬との併用療法のどちらかとして、提供されてもよい。
【0126】
本発明の化合物は、インビトロ又はインビボで、μ、δ、及びκオピオイド受容体、特にμオピオイド受容体を含むオピオイド受容体に結合する方法に用いることができる。そのような結合は、インビトロ又はインビボで、有効量の本発明の化合物を受容体と接触させることにより達成されてもよい。好ましくは、接触させるステップは、水媒体中で、好ましくは生理学的に適切なイオン強度、pHなどにおいて行われる。インビトロでの結合の方法は、例えば、医薬的に許容される塩、又は医薬的に許容されない塩が含まれ、例えば、オピオイド受容体に対する本発明の化合物の結合親和性を評価するアッセイに、本化合物がアッセイ標準として用いられる、オピオイド受容体に対する他の化合物の結合親和性を評価するアッセイに、用いられてもよい。
【0127】
特定の好ましい実施形態では、本発明の化合物は、μ、δ、又はκオピオイド受容体、又はその組み合わせ、特に、μオピオイド受容体に結合する。オピオイド受容体は、中枢神経系に、又は中枢神経系の末梢に、又は双方に位置され得る。
【0128】
本発明の方法の好ましい実施形態では、本明細書で記述されたような化合物が、オピオイド受容体の活性に拮抗する。特定の好ましい実施形態では、前記化合物は、オピオイド(内因性又は外因性)により引き起こされる症状又は疾患を治療する。本発明の特定の実施形態では、具体的にはオピオイドは外因性である場合、本発明の化合物は好ましくは、血液脳関門を実質的に通過しない。
【0129】
本発明の化合物は、具体的には、望ましくない症状又は疾患が外因性オピオイドの投与することの副作用である場合、μ、δ、又はκオピオイド受容体、又は任意のその組み合わせ、特にμオピオイド受容体に拮抗するための方法に用いられ得る。さらに、本発明の化合物は、オピオイド受容体に結合することにより改善された病状を有する患者を治療するため、又はμ、δ、又はκオピオイド受容体、又は任意のその組み合わせ、特にμオピオイド受容体の一時的な抑制が望ましい、任意の治療に用いられ得る。本発明の化合物はまた、δ及び/又はκオピオイド受容体に著しく拮抗することなく、μオピオイド受容体に拮抗するために用いられ得る。
【0130】
本方法は、掻痒症(痒み)、増加した胆石(biliary tone)、増加した胆石疝痛、尿貯留、腸閉塞、嘔吐、急速なオピオイド末梢の解毒、オピオイド無痛症の増強作用(特に超低及び低用量で)、オピオイド耐性、及び身体的依存性(特に超低及び低用量で)、オピオイド受容体の結合に関連した免疫系及び癌の制御及び/又は好転;及び血圧の制御、を含む、治療に用いられ得る。本明細書で用いられるように、用語「低用量」とは、約100〜約1000マイクログラムの用量レベルを意味する。本明細書で用いられるように、用語「超低用量」とは、約10〜約100マイクログラムの用量レベルを意味する。
【0131】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、過敏性腸症候群、オピオイド‐腸機能障害、結腸炎、手術後及びオピオイド誘発性嘔吐(吐き気及び嘔吐)、減少した胃腸運動性及び排出、小腸及び/又は大腸推進力の阻害、非推進的な区間収縮の増加した大きさ、オッディ括約筋の収縮、上昇した肛門括約筋の緊張、直腸膨張を伴う損なわれた反射性弛緩、減少した胃の、胆汁の、膵臓の、又は腸の分泌物、増加した腸内容物からの水分吸収、胃−食道の逆流、胃不全麻痺、筋痙攣、腫脹、膨張、腹部又は上腹部の疼痛及び不快、便秘、及び経口投与された医薬又は栄養物質の遅延吸収を含むが、これに限定されない、胃腸障害を治療するための方法に用いられ得る。特定の好ましい実施形態では、一つ又はそれを超える前述の症状は、少なくとも部分的に、オピオイド鎮痛薬の投与の結果として、生じることがある。
【0132】
特定の特に好ましい実施形態では、本発明の化合物は、腸閉塞、特に手術後腸閉塞、分娩後腸閉塞、及び/又はオピオイド誘発性腸閉塞を治療するための方法に用いられ得る。
【0133】
他の特に好ましい実施形態では、本発明の化合物は、オピオイド腸機能障害を治療するための方法に用いられ得る。
【0134】
また、特に好ましい実施形態では、本発明の化合物は、オピオイドに誘発された便秘を治療するための方法に用いられ得る。
【0135】
他の好ましい実施形態では、本発明の化合物は、疼痛を治療するための有効量のオピオイドと組み合わせて用いることができる。これらの実施形態では、本発明の化合物は、好ましくは、例えば、オピオイドの投与に関連し得る胃腸障害を含む、末梢のオピオイド副作用を減少する。
【0136】
少なくとも一つのオピオイドの投与に関する実施形態では、本発明の化合物は、オピオイド投与前、投与中、又は投与後に投与することができる。
【0137】
本発明による、3,4‐ジメチル‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)ピペリジニルプロパン酸化合物は、例えば、米国特許第5,250,542号、第5,434,171号、第5,159,081号、及び第5,270,328号に記載された方法を用いて合成することができ、その開示は、それらの全体において、参照によりここで本明細書に組み込まれる。本化合物の合成において出発物質として用いられ得る、光学的に活性である(+)‐4(R)‐(3‐ヒドロキシフェニル)‐3(R),4‐ジメチル‐1‐ピペリジンは、J. Org. Chem., 1991, 56, 1660-1663、米国特許第4,115,400号、及び米国特許第4,891,379号、に記載された一般的な手順により調製することができ、その開示は、これによって、それらの全体において、ここで参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0138】
実施例
本発明は、下記の実施例にさらに記述される。一連のN‐置換(+)‐4(R)‐(3‐置換フェニル)‐3(R),4‐ジメチル‐1‐ピペリジニルプロパン酸化合物は、スキーム1~7で概説される手順に従って調製された。スキーム1〜5及び実施例1〜6は、本発明の化合物及び塩の調製を記述する。スキーム6及び7、並びに比較例C‐1及びC‐2は、従来技術の化合物の調製を記述する。比較例C‐3は、従来技術化合物の代替の塩の形態の調製を記述する。全ての実施例は、実際の例である。これらの実施例は、例証の目的のためのみであり、添付の特許請求の範囲を限定するものとして構成されるべきではない。
【0139】
物質:全ての化学物質は、試薬グレードであり、さらなる精製をすることなく用いられた。分析用薄層クロマトグラフィー(TLC)は、Analtech製のシリカゲルガラスプレート(250ミクロン)上で行われ、UV照射及びヨウ素により可視化された。クロマトグラフィーは、シリカゲル(200〜400メッシュ、60Å、Aldrich製)を用いて行われた。クロマトグラフィーの溶出溶媒系は、容積:容積比として報告されている。LC‐MSデータは、ポジティブモード又はネガティブモードにおいて、LC Thermo Finnigan Surveyor-MS Thermo Finnigan AQAを用いて得られた。溶媒A:10 mM 酢酸アンモニウム、pH 4.5;溶媒B:アセトニトリル;溶媒C:メタノール;溶媒D:水;Waters製 Xterra C18 MS 2.0x50 mmカラム、検出器:PDA λは220〜300 nM。勾配プログラム(ポジティブモード):t=0.00、600μL/分、99%A−1%B;t=0.30、600μL/分、99%A−1%B;t=5.00、600μL/分、1%A−99%B;t=5.30、600μL/分、1%A−99%B。勾配プログラム(ネガティブモード):t=0.00、600μL/分、9%A−1%B−90%D;t=0.30、600μL/分、9%A−1%B−90%D;t=5.00、600μL/分、99%B−1%D;t=5.30、600μL/分、99%B−1%D。
【0140】
実施例1:(S)‐2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸、リチウム塩(4a)の調製
【0141】
【化12】

【0142】
a. (S)‐メチル2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐3,4‐ジメチル‐4‐(3‐(トリフルオロメチル‐スルフォニルオキシ)フェニル)ピペリジン‐1‐イル)プロパン酸(2)の調製
【0143】
【化13】

【0144】
塩化メチレン(70 mL、1 mol)中の(S)‐2‐ベンジル‐3‐[(3R,4R)‐4‐(3‐ヒドロキシフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル]プロパン酸メチルエステル(1) (5.00 g、0.0131 mol) (Werner et al., J.Org.Chem, 1996, 61, 587-597を参照のこと) の溶液に、トリエチルアミン(3.03 mL、0.0218 mol)が添加され、続いて塩化メチレン(70 mL)中のN‐フェニルビス‐(トリフルオロメタンスルホンアミド)(7.02 g、0.0196 mol)が液滴添加された。混合物は、室温で一晩撹拌された。LCMSは反応が完了していることを示した。NaOH(1N)が添加され、混合物は30分間撹拌された。得られる層は分離さら、水層はDCMを用いて抽出された。有機層は、合わせられ、NaOH(1N)で洗浄され、乾燥され(Na2SO4)、濾過され、真空で濃縮された。反応粗生成物は、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製され、無色油状物として、生産物(S)‐メチル2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐3,4‐ジメチル‐4‐(3‐(トリフルオロメチル‐スルフォニルオキシ)フェニル)ピペリジン−1−イル)プロパン酸(2)を得た(5.46 g、81%)。1H NMR (CDCl3), δ0.68 (d, J = 7 Hz, 3H), 1.29 (s, 3H), 1.55 (m, 1H), 1.96 (m, 1H), 2.25 (m, 1H), 2.39 (m, 2H), 2.47 (m, 1H), 2.68 (m, 2H), 2.79 (m, 2H), 2.93 (m, 2H), 3.55 (s, 3H), 7.08 (dd, J = 7 Hz 及び 2 Hz, 1H), 7.15 (m, 4H), 7.21 (m, 1H), 7.28 (m, 2H), 7.38 (t, J = 8 Hz, 1H)。質量スペクトル解析、m/z 514 [M + H]+
【0145】
b. (S)‐メチル2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸(3)の調製
【0146】
【化14】

【0147】
N,N‐ジメチルホルムアミド(70 mL、0.9 mol)中の(S)‐メチル2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐3,4‐ジメチル‐4‐(3‐(トリフルオロメチル‐スルフォニルオキシ)フェニル)ピペリジン−1−イル)プロパン酸(2)(5.46 g、0.0106 mol)、塩化パラジウム(II)(100 mg、0.0006 mol)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(530 mg、0.0013 mol)、及びヘキサメチルジシラザン(8.97 mL、0.0425 mol)の混合物は、5分間、COでパージされ、その後一酸化炭素の雰囲気下で、80℃、1時間、撹拌された。その後、この混合物に、酢酸パラジウム(200 mg、0.001 mol)及び1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(880 mg、0.0021 mol)が添加され、得られた混合物は、10分間、COでパージされ、一酸化炭素の雰囲気下で、90℃で一晩加熱された。LCMSは、完全な反応を示唆した。反応混合物は、1N HCl溶液に注がれ、酢酸エチルで抽出された。有機画分は脇に置かれ、水層は、NaOH (50% w/w)で塩基性にされ、酢酸エチルで抽出された。有機画分は、合わせられ、ブラインで洗浄され、乾燥され(Na2SO4)、濾過され、蒸発させた。コンビフラッシュクロマトグラフィー(40g カラム、ヘキサン中0% EtOAc、0→1分;0→50%、1→21分;50%、21→30分)は、淡黄色(pale yellow)油状物として、(S)‐メチル2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸(3)を与えた(3.27 g、75.3%)。1H NMR (CDCl3), δ0.68 (d, J = 7 Hz, 3H), 1.31 (s, 3H), 1.61 (m, 1H), 2.03 (m, 1H), 2.32 (m, 1H), 2.37 (m, 2H), 2.44 (m, 1H), 2.51 (dd, J = 11 Hz 及び3 Hz, 1H), 2.66 (m, 1H), 2.72 (m, 1H), 2.80 (m, 2H), 2.93 (m, 1H), 3.55 (s, 3H), 5.54 (br s, 1H), 6.04 (br s, 1H), 7.17 (m, 2H), 7.21 (m, 1H), 7.30 (m, 1H), 7.39 (d, J = 7 Hz, 1H), 7.44 (m, 1H), 7.55 (m, 1H), 7.76 (t, J = 2 Hz, 1H), 8.02 (br s, 1H)。質量スペクトル解析、m/z 409 [M + H]+
【0148】
c. (S)‐2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸、リチウム塩(4a)の調製
【0149】
【化15】

【0150】
テトラヒドロフラン(20 mL、0.2 mol)中(S)‐メチル2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸(3) (1.50 g、0.00367 mol)の溶液に、メタノール(32 mL、0.80 mol)、及び水(8 mL、0.4 mol)中水酸化リチウム一水和物(460 mg、0.011 mol)の溶液は、添加された。得られた混合物は、室温で一晩撹拌された。LCMSは、反応が完了していることを示した。溶媒は、蒸発させ、生成物(S)‐2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸リチウム(4a)が、淡黄色(pale yellow)固体として得られた(1.47 g、100%)。1H NMR(DMSO), δ0.70 (d, J= 7 Hz, 3H), 1.25 (s, 3H), 1.58 (d, J = 10 Hz, 1H), 2.04 (m, 1H), 2.18 (t, J= 11 Hz, 2H), 2.23 (dd, J = 13 Hz 及び 11 Hz, 1H), 2.45 (m, 3H), 2.55 (m, 1H), 2.80 (m, 3H), 7.09 (m, 1H), 7.20 (m, 5H), 7.37 (t, J = 8 Hz, 2H), 7.44 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.68 (d, J = 7 Hz, 1H), 7.79 (br s, 1H), 8.02 (br s, 1H)。質量スペクトル解析、m/z 395 [M−Li + 2H]+
【0151】
実施例2:(S)‐2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸、ナトリウム塩(4b)の調製
【0152】
【化16】

【0153】
a. (S)‐メチル2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐3,4‐ジメチル‐4‐(3‐(トリフルオロメチル‐スルフォニルオキシ)フェニル)ピペリジン−1−イル)プロパン酸(2)の調製
【0154】
反応がスケールアップされ、塩化メチレン(560 mL)中40.0 g(0.1 mol)の(S)‐2‐ベンジル‐3‐[(3R,4R)‐4‐(3‐ヒドロキシフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル]プロパン酸メチルエステル(1)、トリエチルアミン(24.25 mL、0.174 mol)、及び塩化メチレン(70 mL)中N‐フェニルビス(トリフルオロメタンスルホンアミド)(56.2 g、0.157 mol)が用いられたことを除いて、実施例1aは繰り返された。50 g(93%)の(S)‐メチル2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐3,4‐ジメチル‐4‐(3‐(トリフルオロメチル‐スルフォニルオキシ)フェニル)ピペリジン−1−イル)プロパン酸(2)が、淡黄色(light yellow)油状物として得られた。1H NMR (CDCl3), δ0.68 (d, J = 7 Hz, 3H), 1.29 (s, 3H), 1.55 (m, 1H), 1.96 (m, 1H), 2.25 (m, 1H), 2.39 (m, 2H), 2.47 (m, 1H), 2.68 (m, 2H), 2.79 (m, 2H), 2.93 (m, 2H), 3.55 (s, 3H), 7.08 (dd, J = 7 Hz 及び2 Hz, 1H), 7.15 (m, 4H), 7.21 (m, 1H), 7.28 (m, 2H), 7.38 (t, J = 8 Hz, 1H)。質量スペクトル解析、m/z 514 [M + H]+
【0155】
b. (S)‐メチル2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸(3)の調製
【0156】
反応がスケールアップされ、N,N‐ジメチルホルムアミド(560 mL)中、43.68 g(0.085 mol)の(S)‐メチル2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐3,4‐ジメチル‐4‐(3‐(トリフルオロメチル‐スルフォニルオキシ)フェニル)ピペリジン−1−イル)プロパン酸(2)、塩化パラジウム(II)(0.8 g、0.004 mol)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(4.24 g、0.0103 mol)、及びヘキサメチルジシラザン(72 mL、0.34 mol)、酢酸パラジウム(1.60 g、0.007 mol)、及び1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(7.04 g、0.017 mol)が用いられたことを除いて、実施例1bは繰り返された。24.9 g(71.6%)の(S)‐メチル2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸(3)は、淡黄色(light yellow)油状物として得られた。1H NMR (CDCl3), δ0.68 (d, J = 7 Hz, 3H), 1.31 (s, 3H), 1.61 (m, 1H), 2.03 (m, 1H), 2.32 (m, 1H), 2.37 (m, 2H), 2.44 (m, 1H), 2.51 (dd, J = 11 Hz 及び3 Hz, 1H), 2.66 (m, 1H), 2.72 (m, 1H), 2.80 (m, 2H), 2.93 (m, 1H), 3.55 (s, 3H), 5.54 (br s, 1H), 6.04 (br s, 1H), 7.17 (m, 2H), 7.21 (m, 1H), 7.30 (m, 1H), 7.39 (d, J = 7 Hz, 1H), 7.44 (m, 1H), 7.55 (m, 1H), 7.76 (t, J= 2 Hz, 1H), 8.02 (br s, 1H)。質量スペクトル解析、m/z 409 [M + H]+
【0157】
c. (S)‐2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸、ナトリウム塩(4b)の調製
【0158】
テトラヒドロフラン(300 mL)中(S)‐メチル2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸(3)(23 g, 0.056 mol)に、メタノール(300 mL)、及び水(100 mL)中水酸化ナトリウム(6.6 g, 0.16 mol)の溶液は添加された。混合物は、室温で一晩撹拌された。LCMSは、反応が完了したことを示した。330 gの充填済みのカラム、及び溶離液としてCH3CN/CH3OH(v/v) (1:1)を用いたカラムクロマトグラフィーは、20 g (82%)の生成物、(S)‐2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸ナトリウム(4b)を白色固体として、与えた。1H NMR (DMSO), δ0.70 (d, J = 7 Hz, 3H), 1.25 (s, 3H), 1.58 (d, J = 10 Hz, 1H), 2.04 (m, 1H), 2.18 (t, J= 11 Hz, 2H), 2.23 (dd, J = 13 Hz 及び11 Hz, 1H), 2.45 (m, 3H), 2.55 (m, 1H), 2.80 (m, 3H), 7.09 (m, 1H), 7.20 (m, 5H), 7.37 (t, J= 8 Hz, 2H), 7.44 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.68 (d, J = 7 Hz, 1H), 7.81 (br s, 1H), 8.07 (br s, 1H)。質量スペクトル解析、m/z 395 [M−Na + H]+
【0159】
実施例3:(S)‐2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸、トリフルオロ酢酸塩(4c)の調製
【0160】
【化17】

【0161】
a. (S)‐tert‐ブチル2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐ヒドロキシフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸(1a)の調製:
【0162】
ジ‐tert‐ブトキシ‐N,N‐ジメチルメタンアミン(30 mL、0.1 mol、4当量)は、(S)‐2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐ヒドロキシフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸(5) (Werner et al., J. Org. Chem. 1996, 61, 587-597を参照のこと)(10.3 g、0.028803 mol、1当量)の懸濁液に、還流トルエン(100 mL)中で、1時間に亘り液滴添加された。混合物は、さらに8時間加熱還流された。混合物は、その後室温まで冷却され、水酸化ナトリウムの1N水溶液に注がれ、抽出された。粗生成物は、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 8:2)により精製され、化合物1a(3.65 g、31%)を得た。1H NMR (DMSO), δ0.65 (d, J = 7 Hz, 3H), 1.20 (s, 3H), 1.23 (s, 9H), 1.48 (d, J = 13 Hz, 1H), 1.92 (dd, J= 7 Hz 及び 4 Hz, 1H), 2.10 (m, 1H), 2.28 (m, 1H), 2.40 (m, 2H), 2.66 (m, 6H), 6.54 (dd, J= 8 Hz及び 1 Hz, 1H), 6.67 (m, 2H), 7.07 (t, J = 8 Hz, 1H), 7.19 (m, 3H), 7.25 (m, 2H), 9.27 (br s, 1H)。質量スペクトル解析:m/z=424.2 [M + H]+
【0163】
b. (S)‐tert‐ブチル2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐3,4‐ジメチル‐4‐(3‐(トリフルオロメチルスルフォニルオキシ)フェニル)ピペリジン−1−イル)プロパン酸塩(2a) の調製:
【0164】
無水ジクロロメタン(60 mL)中、化合物1a(3.65 g、0.00862 mol、1当量)、及びトリエチルアミン(2.9 mL、0.021 mol、2.4当量)の冷却(0℃)懸濁液に、N‐トリフェニルトリフルオロメタンスルホンアミド(3.4 g、0.0095 mol、1.1当量)が添加された。混合物は、室温までゆっくりと暖められ、撹拌は12時間続けられた。混合物は、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液、及びブラインで洗浄された。有機層は、硫酸ナトリウム上で乾燥され、真空下で濃縮され、粗生成物を得た。カラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)による精製は、生成物2a(3.66 g、76%)を与えた。1H NMR (CDCl3), δ0.73 (d, J = 7 Hz, 3H), 1.30 (s, 12H), 1.57 (dd, J = 13 Hz 及び 1 Hz, 1H), 1.97 (m, 1H), 2.24 (dt, J= 17 Hz及び 6 Hz, 1H), 2.33 (dd, J = 12 Hz 及び 5 Hz, 1H), 2.43 (dt, J= 15 Hz及び 3 Hz, 1H), 2.51 (dd, J = 11 Hz及び 3 Hz, 1H), 2.65 (m, 1H), 2.70 (m, 1H), 2.79 (m, 4H), 7.08 (dd, J = 8 Hz及び 3 Hz, 1H), 7.17 (m, 4H), 7.28 (m, 3H), 7.38 (t, J = 8 Hz, 1H)。質量スペクトル解析:m/z=556.2 [M + H]+
【0165】
c. メチル3‐((3R,4R)‐1‐((S)‐2‐ベンジル‐3‐tert‐ブトキシ−3‐オキソプロピル‐3,4‐ジメチルピペリジン−4−イル)安息香酸塩(2b)の調製:
【0166】
メタノール(20 mL)及びジメチルスルホキシド(25 mL)の混合物中、化合物2a(3.66 g、0.00659 mol、1当量)の撹拌された溶液に、トリエチルアミン(2.0 mL、0.014 mol、2.2当量)が添加された。一酸化炭素ガスは、5分間、混合物を通して泡立てられた。混合物に、酢酸パラジウム(II) (0.1 g、0.0006 mol、0.1当量)、続いて1,1'‐ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.7 g、0.001 mol, 0.2当量)が添加された。一酸化炭素ガスは、15分間、混合物を通して泡立てられ、その後、それは一酸化炭素の雰囲気下で撹拌され、65℃で一晩加熱された。混合物は、室温まで冷却され、水に注がれた。混合物は、ジエチルエーテルで抽出され、合わせられた有機抽出物は、硫酸ナトリウム上で乾燥された。真空下での溶媒の蒸発は、カラムクロマトグラフィー(溶離液:増加した極性のヘキサン/酢酸エチル混合物)により精製された油状物を与え、化合物2b(2.23 g、73%)を与えた。質量スペクトル解析:m/z 466.2 [M + H]+
【0167】
d. 3‐((3R,4R)‐1‐((S)‐2‐ベンジル‐3‐tert‐ブトキシ−3‐オキソプロピル‐3,4‐ジメチルピペリジン−4−イル)安息香酸(2c)の調製:
【0168】
水酸化ナトリウムの6N水溶液(1 mL、6当量)は、テトラヒドロフラン(10 mL)、及びメタノール(2 mL)中化合物2b(0.430 g、0.000923 mol、1当量)の溶液に添加された。混合物は、室温で12時間撹拌され、その後、6N溶液の塩酸を用いて、pH約7に中和された。混合物は、減圧下で濃縮された。ジクロロメタン/メタノール(95:5)の溶液は、混合物中に添加され、得られた懸濁液は濾過された。濾液は、減圧下で濃縮され、粗生成物2c(0.340 g、81%)は、さらに精製されることなく、次のステップに用いられた。1H NMR (CDCl3), δ0.73 (d, J = 7 Hz, 3H), 1.29 (s, 9H), 1.30 (s, 3H), 1.64 (q, J = 12 Hz, 1H), 2.05 (m, 1H), 2.32 (m, 1H), 2.39 (m, 1H), 2.45 (m, 1H), 2.55 (dd, J = 11 Hz及び 2 Hz, 1H), 2.68 (m, 1H), 2.73 (t, J= 11 Hz及び 10 Hz, 1H), 2.80 (m, 4H), 7.19 (m, 3H), 7.25 (m, 2H), 7.37 (t, J = 8 Hz, 1H), 7.47 (d, J = 7 Hz, 1H), 7.90 (d, J = 8 Hz, 1H), 8.00 (s, 1H)。質量スペクトル解析:m/z 450.3 [M + H]+
【0169】
e. (S)‐tert‐ブチル2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン−1−イル)プロパン酸(3c)の調製:
【0170】
ジメチルホルムアミド (5 mL)中、生成物2c(0.340 g、0.000753mol、1当量)、トリエチルアミン(0.6 mL、0.004 mol、6当量)、及び塩化アンモニウム(0.2 g、0.004 mol、5当量)の懸濁液に、TBTU(0.36 g、0.0011 mol、1.5当量)が添加された。この混合物は、窒素雰囲気下、室温で12時間撹拌され、ブラインに注がれ、酢酸エチルで抽出された。有機層は分離され、水で洗浄され、乾燥され(硫酸ナトリウム)、濾過され、且つ濃縮された。粗生成物は、カラムクロマトグラフィー(溶離液:増加する極性のヘキサン/酢酸エチル混合物)により精製され、化合物3c(0.230 g、67%)を与えた。1H NMR (CDCl3), δ0.73 (d, J = 7 Hz, 3H), 1.30 (s, 9H), 1.31 (s, 3H), 1.63 (dd, J = 12 Hz 及び 1 Hz, 1H), 2.04 (m, 1H), 2.32 (m, 2H), 2.43 (m, 1H), 2.52 (dd, J = 11 Hz及び3 Hz, 1H), 2.66 (d, J = 11 Hz, 1H), 2.70 (m, 1H), 2.80 (d, 4H), 7.19 (m, 3H), 7.25 (m, 2H), 7.38 (t, J= 8 Hz, 1H), 7.45 (m, 1H), 7.55 (m, 1H), 7.77 (s, 1H)。質量スペクトル解析:m/z 451.2 [M + H]+
【0171】
f. (S)‐2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸、トリフルオロ酢酸塩(4c)の調製
【0172】
トリフルオロ酢酸(1.5 mL、0.019 mol、38当量)は、ジクロロメタン(10 mL)中化合物3c(0.230 g、0.000510 mol、1当量)の溶液に液滴添加された。反応混合物は、室温で12時間撹拌された。混合物は、減圧下で濃縮され、粗生成物は、HPLCにより精製され、TFA塩4c(0.053 g、20%)を与えた。1H NMR (DMSO), δ0.66 (br s, 3H), 1.37 (s, 3H), 1.93 (d, J = 15 Hz, 1H), 2.38 (m, 2H), 2.90 (d, J = 7 Hz, 2H), 3.28 (m, 3H), 3.44 (m, 4H), 7.26 (d, J = 7 Hz, 2H), 7.33 (m, 2H), 7.43 (m, 2H), 7.73 (d, J = 7 Hz, 1H), 7.79 (s, 1H), 8.02 (s, 1H), 8.76 (br s, 0.5H), 13.14 (br s, 0.5H)。質量スペクトル解析:m/z 395.2 [M + H]+
【0173】
実施例4:(S)‐2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸(4d)の調製
【0174】
【化18】

【0175】
陽イオン交換樹脂(BioRad製AG 50W-X8 樹脂、4 g)は、蒸留水(20 mL)中で10分間撹拌され、ガラスカラムに充填された。HCl水溶液(50 mL、1N)は、カラムに通され、その後、カラムは、溶出液が中性pHに近づくまで、水で洗浄された。(S)‐2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸ナトリウム(4b)(200 mg)は、水(15 mL)に溶解され、得られた溶液は、カラムに通された。カラムは蒸留水で洗浄され、溶出液は合わせられた。水性の溶出液の凍結乾燥は、(S)‐2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸(4d)を白色粉末として与えた。1H NMR (DMSO), d 0.62 (d, J = 7 Hz, 3H), 1.27 (s, 3H), 1.63 (d, J = 13 Hz, 1H), 2.10 (d, J = 6 Hz, 1H), 2.24 (m, 1H), 2.40 (m, 2H), 2.57 (m, 2H), 2.68 (m, 3H), 2.79 (m, 1H), 2.92 (m, 1H), 7.21 (m, 3H), 7.29 (m, 2H), 7.37 (m, 2H), 7.44 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.68 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.78 (s, 1H), 7.99 (s, 1H)。質量スペクトル解析:m/z 395 [M + H]+
【0176】
実施例5:(S)‐2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸、シュウ酸塩(4e)の調製
【0177】
【化19】

【0178】
化合物4dはメタノールに溶解された。これに、イソプロピルアルコールに溶解された1当量のシュウ酸が添加された(スキーム5)。混合物は、窒素雰囲気下、室温で一晩撹拌された。溶媒は蒸発され、5:1水/アセトン混合物が添加され、撹拌され、アセトンは除かれ、残った水溶液は、凍結乾燥され、4eを与えた。1H NMR (DMSO), δ0.65 (d, J = 7 Hz, 3H), 1.30 (s, 3H), 1.72 (m, 1H), 2.25 (m, 2H), 2.45 (m, 1H), 2.55 (m, 1H), 2.67 (m, 1H), 2.75 (m, 2H), 2.86 (m, 2H), 2.98 (m, 2H), 7.21 (m, 3H), 7.29 (t, J = 7 Hz, 2H), 7.39 (m, 3H), 7.70 (d, J= 8 Hz, 1H), 7.78 (s, 1H), 7.99 (br s, 1H)。元素分析:(CHN): C26H32N2O7 1.5 H2O。理論値:C 61.04, H 6.90. N 5.48。実測値:C 60.82, H 6.70, N 5.34。
【0179】
実施例6:(S)‐2‐ベンジル‐3‐((3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)プロパン酸、コハク酸塩(4f)の調製
【0180】
化合物4dはメタノールに溶解された。これに、イソプロピルアルコールに溶解された1当量のコハク酸が、添加された(スキーム5)。混合物は、窒素雰囲気下、室温で一晩撹拌された。溶媒は蒸発され、5:1水/アセトン混合物が添加され、撹拌され、アセトンは除かれ、残った水溶液は、4fを得るために凍結乾燥された。1H NMR (DMSO), δ0.62 (d, J = 7 Hz, 3H), 1.27 (s, 3H), 1.63 (m, 1H), 2.12 (m, 2H), 2.25 (m, 1H), 2.45 (m, 1H), 2.66 (m, 1H), 2.70 (m, 2H), 2.78 (m, 2H), 2.80 (m, 2H), 7.17 (m, 3H), 7.26 (t, J = 7 Hz, 2H), 7.43 (m, 3H), 7.67 (d, J= 8 Hz, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.96 (br s, 1H)。元素分析:(CHN): C28H36N2O7 1.0 H2O。理論値:C 63.38, H 7.22. N 5.28。実測値:C 63.38, H 7.07, N 5.22。
【0181】
下記の比較例及び生物学的試験データは、従来技術の化合物と比較して、驚くべきことに及び思いがけないことに改良された、本発明の化合物及びその塩の、生物学的及び薬物導体的特性を示した。特に、下記の比較例及び比較生物学的試験データは、本発明の化合物のμオピオイド受容体に対する望ましい親和性、及びμオピオイド受容体に拮抗するそれらの有利な能力を明示する。本発明の化合物はまた、望ましく有益な予測、及びインビボでの薬物動態的性質における減少した変動性、及び有利に向上した生物学的利用能を実証する。生物学的活性のこの向上した特性を考慮して、本化合物及びその塩は、例えば、胃腸障害、及びオピオイドに関連する副作用を含む、オピオイド受容体に関連する疾患及び不調の治療に特に有用である。従来技術の化合物と比較して、本発明の化合物及び塩の生物学的活性の改良された特性は、驚くべきものであり、予期されていなかった。
【0182】
比較例
比較例C‐1、C‐2、及びC‐3は、従来技術の化合物の調製を記載する。これらの化合物は、スキーム6及び7に概説された手順に従って調製された。
【0183】
パラジウム触媒された2のカルボニル化は、ジエステル10中の二つのメチルエステル保護基の塩基的切断により、ジカルボン酸11(実施例C‐1)に変換される、ジエステル10を与えた(スキーム6を参照のこと)。パラジウム触媒された13のカルボニル化は、アミドエステル14を与えた。酸を用いた中間体14の処理は、15(実施例C‐2)を生じさせた。酸を用いた中間体14の処理に続いて、反応混合物のpHは水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8まで調整され、ナトリウム塩16(実施例C‐3)を与えた(実施例C‐3) (スキーム7を参照のこと)。
【0184】
【化20】

【0185】
実施例C‐1:3‐[1‐(2S‐カルボキシ‐3‐フェニル‐プロピル)‐3R,4R‐ジメチル‐ピペリジン‐4‐イル]‐安息香酸(11)
【0186】
メタノール(15 mL)及びジメチルスルホキシド(20 mL)の混合物中の化合物2(1.72 g、0.0033 mol、1当量)の撹拌された溶液に、トリエチルアミン(1.03 mL、0.0073 mol、2.2当量)は添加された。一酸化炭素ガスは、混合物を通して、5分間泡立てられた。混合物に、酢酸パラジウム(II) (0.075 g、0.00033 mol、0.1当量)、続いて1,1'‐ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.371 g、0.00067 mol、0.2当量)が添加された。一酸化炭素ガスは、混合物を通して、15分間泡立てられ、混合物はその後、一酸化炭素雰囲気下で撹拌され、65℃で一晩加熱された。混合物は室温まで冷却され、水(100 mL)に注がれた。混合物は、酢酸エチル(3 x 50 mL)で抽出された。有機抽出物は、合わせられ、水(100 mL)、ブライン(100 mL)で洗浄され、硫酸ナトリウム上で乾燥された。減圧下での溶媒の蒸発は、油状物を与えた。粗製の油状物生成物は、カラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル 95:5)により精製され、化合物10(0.720 g、51%)を与えた;質量スペクトル解析:m/z 424 [M + H]+
【0187】
2 Nの水酸化ナトリウムの水溶液(2.55 mL、0.00509 mol、6当量)は、冷却した(0℃) テトラヒドロフラン(10 mL)中10の溶液(0.360 g、0.00084 mol、1当量)に、液滴添加された。混合物は、室温まで暖められ、撹拌は5時間続けられた。水(5 mL)中水酸化リチウム一水和物(0.213 g、0.0050 mol、6当量)の溶液は、混合物(メタノール(3 mL)が可溶化のために添加された)に添加され、撹拌は12時間続けられた。12 NのHCl水溶液(0.8 mL)は、真空下で濃縮された混合物を中和するために添加された。沈殿物は、濾過により回収され、ジエチルエーテルで洗浄され、3‐[1‐(2S‐カルボキシ‐3‐フェニル‐プロピル)‐3R,4R‐ジメチル‐ピペリジン‐4‐イル]‐安息香酸(11)を白色固体(0.2 g、64%)として得た:質量分析:m/z 396 [M + H]+
【0188】
カルボキサミド13及び14の調製は、スキーム7に概説される。Wernerらにより記述された手順(J. Org. Chem, 1996, 61, 587-597)に従って酸5から調製された、グリシンtert‐ブチルエステル12は、トリフラート2の調製のための上述の反応条件を用いた、N‐フェニルトリフルオロ‐メタンスルホンアミドを用いて、トリフラート13に変換された。パラジウム触媒された、トリフラート13からのカルボキサミド14の形成は、一酸化炭素及び(TMS)2NHの存在下で行われた。14の酸加水分解は、調製用HPLCにより精製後、そのTFA塩として単離された化合物15(実施例C‐2)を与えた。代わりに、化合物14の酸加水分解後、溶液のpHは、pH8に調整され、凍結乾燥され、化合物16(実施例C‐3)を得た。
【0189】
【化21】

【0190】
実施例C‐2:[[2(R)‐[[4(R)‐(3‐アミドフェニル)‐3(R),4‐ジメチル‐1‐ピペリジニル]メチル]‐1‐オキソ‐3‐フェニルプロピル]アミノ]酢酸、トリフルオロメチル酢酸塩(15)の調製
【0191】
化合物13(0.5 g、0.816 mmol、1当量)、塩化パラジウム(9 mg、6 mol%、48.96μmol)、ジフェニルホスフィノプロパン(39 mg、12 mol%、97.9μmol)、及びHN(TMS)2 (0.69 mL、3.264 mmol、4当量)の撹拌された溶液は、CO(g)で5分間パージされ、その後CO(g)の雰囲気下、80℃で1時間、撹拌された。この時間の後、酢酸パラジウム(18 mg、10 mol%、0.0816 mmol)及び、ジフェニルホスフィノプロパン(65 mg、0.163 mmol)は添加された。この混合物は、CO(g)で10分間パージされ、その後CO(g)の雰囲気下、85〜90℃で4時間、撹拌された。反応混合物は、真空下で濃縮され、ジクロロメタン(50 mL)と水(50 mL)とで分割された。水層は、ジクロロメタン(2x50 mL)で抽出された。有機抽出物は、合わせられ、ブライン(50 mL)で洗浄され、硫酸ナトリウム上で乾燥され濃縮された。粗生成物は、カラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/メタノール 97.5:2.5)により精製され、化合物14を、黄色の泡沫状の固体(foamy solid)(0.170 g、41%);質量スペクトル解析:m/z 508 [M + H]+として与えた。
【0192】
ジオキサン(7.5 mL)中4N HCl中化合物14(0.170 g、0.335 mmol、1当量)の溶液は、室温で、2.5時間撹拌された。溶媒は、真空下で除かれ、黄色結晶性固体を与えた。粗生成物は、調製用HPLC(メタノール/水/TFA)により精製され、[[2(R)‐[[4(R)‐(3‐アミドフェニル)‐3(R),4‐ジメチル‐1‐ピペリジニル]メチル]‐1‐オキソ‐3‐フェニルプロピル]アミノ]酢酸(15)をTFA塩(0.098 g、55%);質量スペクトル解析:m/z 452 [M + H]+として与えた。
【0193】
実施例C‐3:[[2(R)‐[[4(R)‐(3‐アミドフェニル)‐3(R),4‐ジメチル‐1‐ピペリジニル]メチル]‐1‐オキソ‐3‐フェニルプロピル]アミノ]酢酸、ナトリウム塩(16)の調製
【0194】
水中6Mの塩化水素(100 mL、0.7 mol)中、{(S)‐2‐ベンジル‐3‐[(3R,4R)‐4‐(3‐カルバモイルフェニル)‐3,4‐ジメチルピペリジン‐1‐イル)]プロピオニル‐アミノ}酢酸tert‐ブチルエステル(14)(2.08 g、0.00410 mol)は、室温で一晩撹拌された。LCMSは、反応が完了したことを示した。反応混合物のpHは、1M NaOHで、おおよそ中性(〜pH8)に調整された。溶媒は蒸発され、残余物は、シリカゲル(MeOH/酢酸エチル0〜30%)上で、クロマトグラフにかけられた。得られた白色固体は、DCM中10%メタノールに溶解され、沈殿物は濾過により除かれた。溶媒は蒸発され、ナトリウム塩16(850 mg、46%)を与えた。1H NMR (DMSO), δ0.63 (d, J = 7 Hz, 3H), 1.24 (s, 3H), 1.55 (d, J = 10 Hz, 1H), 2.03 (d, 1H), 2.21 (m, 1H), 2.30 (t, J= 6 Hz, 2H), 2.41 (dd, J = 11 Hz 及び 2 Hz, 1H), 2.53 (m, 1H), 2.63 (m, 2H), 2.79 (m, 1H), 2.85 (m, 2H), 3.52 (m, 2H), 7.16 (t, J = 7 Hz, 1H), 7.23 (m, 4H), 7.35 (m, 2H), 7.43 (d, J= 8 Hz, 1H), 7.67 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.78 (s, 1H), 8.00 (br s, 2H);質量スペクトル解析:m/z 452.2 [M + H]+
【0195】
生物学的アッセイ
化合物の有効性は、別々の細胞株で発現される、クローン化されたヒトμ、κ、及びδオピオイド受容体に対する、非選択的オピオイドアンタゴニスト、[3H]ジプレノルフィンの結合を阻害するための、それぞれの化合物の濃度の範囲の能力を試験することにより測定された。IC50値は、Windows(登録商標)用GraphPad Prism(登録商標)バージョン3.00 (GraphPad Software, San Diego)を用いたデータの非線形解析により得られた。Ki値は、IC50値のCheng‐Prusoff 補正により得られた。
【0196】
受容体結合(インビトロアッセイ)
受容体結合方法(DeHaven及びDeHaven-Hudkins, 1998)は、Raynorら(1994)の方法の改良されたものである。バッファAで希釈及び均質化後、250μL中の膜タンパク質(10〜80μg)は、96ウェルのディープウェルポリスチレンタイタープレート(Beckman)中の、250μLのバッファA中で、試験化合物及び[3H]ジプレノルフィン(0.5〜1.0 nM、40,000〜50,000 dpm)を含む混合物に添加された。室温で1時間インキュベーション後、サンプルは、水中0.5%(w/v)ポリエチレンイミン、及び0.1%(w/v)ウシ血清アルブミンの溶液にあらかじめ浸漬されたGF/Bフィルターで濾過された。フィルターは、1 mLの冷却された50 mM Tris HCl、pH 7.8で4回リンスされ、フィルター上に残っている放射能は、シンチレーション分光法により測定された。非特異的結合は、滴定曲線の最小値により測定され、10μMナロキソンを含むそれぞれのアッセイウェルにより確認された。Ki値は、Windows(登録商標)用GraphPad Prism(登録商標)バージョン3.00 (GraphPad Software, San Diego, CA)を用いた12ポイントの滴定曲線の非線形回帰フィッティングに由来するIC50値のCheng‐Prusoff補正により測定された。
【0197】
阻害剤の平衡解離定数(Ki)を測定するために、様々な濃度の試験化合物の存在下での放射性リガンド結合(cpm)は測定された。放射性リガンド結合の半数阻害のを与える濃度(EC50)は、下記の式に対する非線形回帰最良フィッティングから測定された。
【0198】
【数1】

【0199】
[式中、Yは、試験化合物のそれぞれの濃度での放射性リガンドの結合の量であり、ボトムは、試験化合物の無限の濃度の存在下での計算された放射性リガンドの結合の量であり、トップは、試験化合物不在下での計算された放射性リガンドの結合の量であり、Xは、試験化合物の濃度の対数であり、LogEC50は、放射性リガンドの結合の量がトップ及びボトムの間の中間値である試験化合物の濃度の対数である。]
【0200】
非線形回帰フィッティングは、プログラムPrism(登録商標)(GraphPad Software, San Diego, CA)を用いて行われた。Ki値は、その後、下記の式によるEC50値から測定された。
【0201】
【数2】

【0202】
[式中、[リガンド]は、放射性リガンドの濃度であり、Kdは、放射性リガンドの平衡解離定数である。]
【0203】
アンタゴニストの有効性は、クローン化されたヒトμ、κ、又はδオピオイド受容体を含む膜に対して、アゴニストに刺激された[35S]GTPγS結合を阻害するそれらの能力により評価された。アゴニスト受容体に対して用いられるアゴニストは、ロペラミドである。
【0204】
アゴニストに刺激された[35S]GTPγS結合の半数阻害を与える濃度である、IC50値を測定するために、アゴニストの一定の濃度、及びアンタゴニストの様々な濃度の存在下における[35S]GTPγS結合の量は測定された。アゴニストの一定の濃度は、[35S]GTPγS結合の相対的最大刺激の80%を与える濃度である、アゴニストに対するEC80である。IC50値は、下記の式へのデータの非線形回帰最良フィッティングから測定された。
【0205】
【数3】

【0206】
[式中、Yは、アンタゴニストのそれぞれの濃度における[35S]GTPγS結合の量であり、ボトムは、アンタゴニストの無限濃度の存在下における[35S]GTPγS結合の計算された量であり、トップは、添加されるアンタゴニスト不在下における[35S]GTPγSの結合の計算された量であり、Xは、アンタゴニストの濃度の対数であり、LogIC50は、[35S]GTPγSの結合の量がボトム及びトップの間の中間値であるアンタゴニストの濃度の対数である。]
【0207】
非線形回帰フィッティングは、Windows(登録商標)用GraphPad Prism(登録商標)バージョン3.00 (GraphPad Software, San Diego, CA)を用いて行われた。
【0208】
実施例1〜6、C‐1、C‐2、及びC‐3で調製された化合物及びその塩は、μ、κ、及びδオピオイド受容体に対するアンタゴニストとしてのそれらの親和性について、試験された。これらの結合親和性試験の結果は、下記の表Iに要約される。
【0209】
【表1】

【0210】
【表2】

【0211】
「MOR」とは、ミューオピオイド受容体を意味し、「DOR」とは、デルタオピオイド受容体を意味し、「KOR」とは、カッパオピオイド受容体を意味する。
【0212】
μオピオイド受容体の拮抗作用は、オピオイド投与により胃腸通過を減速することにより明らかにされる、例えば、オピオイド誘発性腸管機能障害、又はオピオイド誘発性便秘、及び負傷又は手術により生じる胃腸障害の場合のような、例えば、手術後の腸閉塞、又は分娩後腸閉塞などの腸閉塞の場合のような、胃腸障害を治療するための薬剤の能力の評価基準である。
【0213】
表Iに一覧にされたようにインビトロでの結合試験の結果は、本発明の化合物が、実施例1〜6及び従来技術の化合物の実施例C‐2及びC‐3により表されたように、インビトロで、μ受容体においてIC50s<100 nMで、アゴニストに刺激された[35S]GTPγSの結合を阻害するそれらの能力に基づく、強力なアンタゴニストであることを表す。相対的結合強度に関して、インビトロ結合試験は、従来技術の化合物の実施例C‐2及びC‐3が、μオピオイド受容体のアンタゴニストとして、実施例1〜4より、約4〜7倍より強力であることを示した。
【0214】
従来技術化合物の実施例C‐1は、インビトロ試験において、他の試験化合物と比較して、アゴニストに刺激された[35S]GTPγS結合の著しく減少した阻害を示した。この著しく減少したμオピオイド受容体結合親和性により、実施例C‐1は、インビトロ機能活性又はインビボ有効性について、評価されなかった。
【0215】
マウス胃腸通過(GIT)アッセイ(インビボアッセイ)
Ace Animals (Boyertown, PA)から入手した雌性スイス‐ウェブスター(Swiss-Webster)マウス(25〜30 g)は、全ての実験に用いられた。マウスは、自由に得られる餌及び水を備えたポリカーボネートケージに、4匹/ケージで飼われた。マウスは、午前6:30に明かりがつけられる、12時間の明:暗スケジュールに置かれた。全ての実験は、この明サイクル中に行われた。マウスは、実験の前夜、自由に得ることのできる水と共に、断食した。
【0216】
マウスは、媒体(10%DMSO:20%クレムホール(Cremophor) EL:70%生理食塩水)、又は試験薬物(3 mg/kg)をGITの測定の2又は6時間前に、経口で投与された。化合物は、体重の0.1 ml/10 gの容量で投与された。モルヒネ(3 mg/kg)、又は媒体(0.9%生理食塩水)は、GITの測定の前に、減速したGITを誘発するために、35分、皮下注射で投与された。モルヒネ処理の10分後、マウスは、0.2 mLの活性炭食(charcoal meal)を経口で投与された。活性炭食は、以下の割合(1:2:8、w:w:v)で、活性炭のスラリー、小麦粉、及び水から成る。活性炭食の摂取から25分後、マウスは、CO2で安楽死され、GITは測定された。
【0217】
GITは、下記の式:
【0218】
【数4】

【0219】
により、%GITとして表される。
【0220】
それぞれの試験薬物について、拮抗作用%(%A)の値は、2及び6時間のアンタゴニスト前処理に対して測定される。それぞれの処置群についての平均%GITを用いて、%Aは、下記の式:
【0221】
【数5】

【0222】
を用いて計算された。
【0223】
実施例1及び従来技術化合物の実施例C‐2のアンタゴニスト活性は、GIT(インビボ)試験を用いて評価された。これらの試験の結果は、図1に図で表された。特に、実施例1の3 mg/kgの用量の投与1時間後に行われた分析は、GITのオピオイド前処置有効性のほぼ90%の回復を示した。実施例C‐2の3 mg/kgの用量の投与1時間後に行われた分析は、GITのオピオイド前処置有効性のほぼ50%の回復を示した。実施例C‐2と比較して、実施例1で示されたGIT有効性における改良は、投与された薬剤が、それらのオピオイド受容体に対するそれらの作用を最小限にするために十分に代謝されるまで、8時間の実験の経過を通して観察された。曲線下面積値(AUC値)は、下記の表IIに明記の通り、実施例1及び実施例C‐2について計算された。
【0224】
【表3】

【0225】
表IIに示すように、実施例1の観察されたAUC値は、実施例C‐2のAUC値より2.1倍大きかった。C‐2は、オピオイド受容体結合アッセイ(上記の表Iを参照のこと)において、MORアンタゴニストとして、実施例1より4.3倍より強力であったので、実施例C‐2と比較して、実施例1の有効性のこの倍増は、驚くべきことであり、予期されていなかった。
【0226】
薬物動態データ手順
A. ラットPKプロトコール
頸静脈にカニューレ挿入した(JVC)雌性スプラグ‐ダウレイ(Sprague-Dawley)(SD)ラット(Charles River, Raleigh, NC)は、12時間明暗サイクルを備えた、環境的に制御された部屋において、alpha-dri(登録商標)床材を敷いた、ポリカーボネートケージで個別に飼われた。ラットは、試験の前3〜5日間、順応することが許容された。動物は、薬剤投与の前に一晩断食し、血液採取の4時間後、餌を与えられた。
【0227】
投与溶液の調製
PO投与のために用いられる懸濁液は、0.1%Tween(登録商標)80を含む0.5%メチルセルロース中、2 mg/mLの試験薬物の名目濃度で調製された。
【0228】
薬剤投与及びサンプル回収
3匹のJVCラットの二つの群はそれぞれ、10 mg/kgの一回PO用量を摂取した。PO用量は、5 mL/kgの投与容量で、経口強制飼養により投与された。血液サンプル(0.6 mL)は、頸静脈カニューレを介して、投与前、投与後15、及び30分、及び1、2、4、6、8、及び24時間に、EDTAを含むチューブに回収された。血漿は、3000 rpmで、15分間の遠心分離により得られた。サンプルは分析まで−20℃で保存された。
【0229】
血漿サンプルの調製
血漿の一定分量は、アセトニトリル中で、内部標準液を用いてタンパク除去された。サンプルは、ボルテックスされ、遠心分離され、上清の一定分量は、水と混合された。希釈された一定分量は、その後分析された。
【0230】
サンプルの分析
血漿濃度は、タンパク質沈殿の後、タンデム質量分析検出を備えた、高速液体クロマトグラフィー(LC/MS/MS)により測定された。
【0231】
薬物動態分析
モデル−独立分析は、薬物動態を評価するために行われた。濃度‐時間曲線下面積(AUC)、及び一次モーメント曲線下面積(AUMC)は、無限大外挿を伴う線形台形法を用いて投与後0〜6又は8時間から計算された。最終消失速度定数(kel)及び半減期(t1/2)は、対数変換された濃度時間データの線形最小二乗回帰により計算された。全身血漿クリアランス(CLs)は、用量/AUCから算出された。定常状態での分布容量(Vdss)は、用量・AUMC/AUC2から計算された。WinNonlin(登録商標)プロフェッショナルソフトウェア(Pharsight Corporation)は、全ての薬物動態データを作成するために用いられた。
【0232】
ラットにおける薬物動態試験の結果は、図2に図で表される。図2に示されるように、3匹の試験されたラットにおいて、実施例3は、常に高い血漿薬剤曝露、血漿曝露及び時間経過における低い変動性、及び経口での生物学的利用性において実施例C‐2(F〜1%)と比較して約8倍の向上(F = 8%)を示した。実施例C‐2の薬物動態特性と比較して、実施例3の改良された薬物動態特性は、驚くべきことであり、予期されていなかった。
【0233】
実施例2はまた、ラットにおいて試験され、インビボにおいて同様に改良された薬物動態的性質(F = 11%)を示した。
【0234】
B. イヌPKプロトコール
用量調合物
PO用量調合物は、投与する日に、全化合物(0.5 mg/mL 試験化合物)の0.5526 mg/mLの濃度を得るために、60 mLの滅菌水に33.16 mgの試験物質を溶解することにより、調製された。投与溶液は、均質性及び溶解を確か確実にするために、ボルテックスされた。
【0235】
用量投与
用量調合物は、SOP設備により、経口強制飼養によって投与された。それぞれのイヌは、6 mg/kgの一回PO用量を摂取した。
【0236】
血液回収
全ての血液サンプルは、末梢血管から回収された。約0.3 mLの血液は、それぞれの時点で回収された。全ての血液サンプルは、血漿のための処理が行われるまで、氷上に置かれた。
【0237】
血液/血漿処理
血液サンプルは、約5℃での遠心分離により血漿のための処理が行われた。血漿サンプルは、ポリプロピレンチューブに保存され、ドライアイス上で急速冷凍され、LC/MSMS分析まで、−70±10℃で保存された。
【0238】
サンプル分析
血漿濃度は、タンパク質沈殿後、タンデム質量分析検出を供えた高速クロマトグラフィー(LC/MS/MS)により測定された。
【0239】
データ分析
時間データに対する血漿濃度は、WinNonlin(登録商標)ソフトウェアプログラム(バージョン 5.0.1, Pharsight, Mountain View, CA)を用いた非コンパートメント手法(non-compartmental approach)により分析された。
【0240】
イヌにおける薬物動態試験の結果は図3に図で表わされる。試験された3匹のイヌについて、図3に示されるように、実施例C‐3(F =11%)と比較して、特に1〜6時間の間の時点において(小さなエラーバーにより明らかなように)、実施例1は、常に高い血漿薬剤曝露、明らかに向上した経口生物学的利用性(F = 30%)、及び血漿曝露及び時間経過における低い変動性、を示した。実施例1はまた、実施例C‐3と比較して、高い生物学的利用性を示した(特に、血漿の平均濃度を約3倍増加させた)。それぞれのイヌについての計算されたAUC値は、下記の表IIIに明記される。
【0241】
【表4】

【0242】
表IIIにおけるデータの分析は、実施例C‐3(AUC = 63±16 ng*時間/ml)と比較して、実施例1の平均AUC値(AUC = 259±81 ng*時間/ml)において約4倍の改良があったことを示す。従来技術の化合物C‐3の薬物動態的性質と比較して実施例1の改良された薬物動態的性質は、驚くべきことであり、予期されていなかった。
【0243】
B. 霊長類PKプロトコール
用量調合物
用量調合物は、投与する日に、全化合物(0.5 mg/mL 試験化合物)の0.5526 mg/mLの濃度を得るために、60 mLの滅菌水に33.16 mgの試験物質を溶解することにより、調製された。投与溶液は、均質性及び溶解を確実にするために、ボルテックスされた。
【0244】
用量投与
用量調合物は、SOP設備により、経口強制飼養によって投与された。それぞれのサルは、0.5%MC懸濁液として、1 mg/kgの一回PO用量を摂取した。
【0245】
血液回収
全ての血液サンプルは、末梢血管から回収された。約0.3 mLの血液は、それぞれの時点で回収された。全ての血液サンプルは、血漿のための処理が行われるまで、氷上に置かれた。
【0246】
血液/血漿処理
血液サンプルは、約5℃での遠心分離により血漿のための処理が行われた。血漿サンプルは、ポリプロピレンチューブに保存され、ドライアイス上で急速冷凍され、LC/MSMS分析まで、−70±10℃で保存された。
【0247】
サンプル分析
血漿濃度は、タンパク質沈殿後、タンデム質量分析検出を供えた高速クロマトグラフィー(LC/MS/MS)により測定された。
【0248】
データ分析
時間データに対する血漿濃度は、WinNonlin(登録商標)ソフトウェアプログラム(バージョン 5.0.1, Pharsight, Mountain View, CA)を用いた非コンパートメント手法(non-compartmental approach)により分析された。
【0249】
サルにおける薬物動態試験の結果は図4に図で表わされる。ラット及びイヌにおける薬物動態試験と同様に、実施例1は、3匹の試験されたサルにおいて、実施例C‐3(F=<2%)と比較して、狭いエラーバーにより明らかなように、常に高い血漿薬剤曝露、血漿曝露及び時間経過における低い変動性、及び明らかに向上した経口での生物学的利用性(F = 10%)を示した。(投与された用量において、限られた曝露をもたらす乏しい生物学的利用性のために、C‐3の正確なAUC値は測定されなかったことは注目されるべきである。) 実施例1は、実施例C‐3と比較して、18.3倍高い最大血漿濃度を示した(Cmax)。具体的には、実施例1は、32±12 ng/mgのCmaxを示し、実施例C‐3は、1.75±0.06 ng/mlのCmaxを示した。それぞれのサルについての計算されたAUC値は、下記の表IVに明記される。
【0250】
【表5】

【0251】
【表6】

【0252】
表IVにおけるデータの分析は、実施例1のCmax値は、実施例C‐3のCmax値より、約10〜20倍大きいことを示す。従来技術の化合物C‐3の薬物動態的性質と比較して、実施例1の改良された薬学動態的性質は、驚くべきことであり、予期されていなかった。これらの試験の結果は、霊長類薬物動態の一般的に予測される性質を考慮して、ヒトの薬物動態に関して、特に有益である。
【0253】
範囲が物理的性質について本明細書に用いられるとき、例えば、分子量、又は化学的性質、例えば化学式など、範囲の全ての組み合わせ及び部分的組み合わせ、及びその中の具体的な実施形態は、含まれているものと意図される。
【0254】
それぞれの特許、特許出願、及び引用された又はこの文書に記載された出版物のそれぞれの開示は、それらの全体において、参照によりここで本明細書に組み込まれる。
【0255】
当業者は、多数の変更及び修正が、本発明の好ましい実施形態に行うことができ、そのような変更及び修正は、本発明の趣旨から逸脱することなく行われることを理解するだろう。それ故、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨及び範囲内にあるような全てのそのような同等のバリエーションに及ぶことが意図される。
【0256】
実施形態1:式I:
【0257】
【化22】

【0258】
の化合物又はその塩。
実施形態2:塩でない形態である、実施形態1に記載の化合物。
実施形態3:塩の形態である、実施形態1に記載の化合物。
実施形態4:医薬的に許容されない塩である、実施形態3に記載の塩。
実施形態5:前記塩が医薬的に許容される塩である、実施形態3に記載の塩。
【0259】
実施形態6:式I−S−1、I−S−2、又はI−S−3:
【0260】
【化23】

【0261】
[式中、
M+が塩基の陽イオンであり;且つ
A-が酸の陰イオンである]
を有する、実施形態3に記載の塩。
実施形態7:式I−S−1を有する、実施形態6に記載の塩。
実施形態8:M+が、アンモニウム陽イオン、及び金属陽イオンからなる群から選択される、実施形態7に記載の塩。
実施形態9:M+が金属陽イオンである、実施形態8に記載の塩。
実施形態10:前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオン、及びリチウム陽イオンからなる群から選択される、実施形態9に記載の塩。
【0262】
実施形態11:前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオンである、実施形態10に記載の塩。
実施形態12:式I−S−2を有する、実施形態6に記載の塩。
実施形態13:式IA−S−3を有する、実施形態6に記載の塩。
実施形態14:A-が、トリフルオロ酢酸イオン、コハク酸イオン、又はシュウ酸イオンである、実施形態13に記載の塩。
実施形態15:A-が、トリフルオロ酢酸イオンである、実施形態14に記載の塩。
【0263】
実施形態16:A-が、コハク酸イオンである、実施形態14に記載の塩。
実施形態17:A-が、シュウ酸イオンである、実施形態14に記載の塩。
実施形態18:RRR、RRS、RSR、SRR、RSS、SRS、SSR、及びSSSからなる群から選択される立体化学的配置を有する、実施形態1に記載の化合物又はその塩。
実施形態19:立体化学的配置RRRを有する、実施形態18に記載の化合物又はその塩。
実施形態20:立体化学的配置RRSを有する、実施形態18に記載の化合物又はその塩。
【0264】
実施形態21:立体化学的配置RSRを有する、実施形態18に記載の化合物又はその塩。
実施形態22:立体化学的配置SRRを有する、実施形態18に記載の化合物又はその塩。
実施形態23:立体化学的配置RSSを有する、実施形態18に記載の化合物又はその塩。
実施形態24:立体化学的配置SRSを有する、実施形態18に記載の化合物又はその塩。
実施形態25:立体化学的配置SSRを有する、実施形態18に記載の化合物又はその塩。
【0265】
実施形態26:立体化学的配置SSSを有する、実施形態18に記載の化合物又はその塩。
実施形態27:式Iの化合物が、下記の式IA:
【0266】
【化24】

【0267】
を有する、実施形態1に記載の化合物又はその塩。
実施形態28:塩でない形態である、実施形態27に記載の化合物。
実施形態29:塩の形態である、実施形態27に記載の化合物。
実施形態30:医薬的に許容されない塩である、実施形態29に記載の塩。
【0268】
実施形態31:前記塩が医薬的に許容される塩である、実施形態29に記載の塩。
実施形態32:式IA−S−1、IA−S−2、又はIA−S−3:
【0269】
【化25】

【0270】
[式中、
M+が塩基の陽イオンであり;且つ
A-が酸の陰イオンである]
を有する、実施形態29に記載の塩。
実施形態33:式IA−S−1を有する、実施形態32に記載の塩。
実施形態34:M+がアンモニウム陽イオン、及び金属陽イオンからなる群から選択される、実施形態33に記載の塩。
実施形態35:M+が金属陽イオンである、実施形態34に記載の塩。
【0271】
実施形態36:前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオン、及びリチウム陽イオンからなる群から選択される、実施形態35に記載の塩。
実施形態37:前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオンである、実施形態36に記載の塩。
実施形態38:式IA−S−2を有する、実施形態32に記載の塩。
実施形態39:式IA−S−3を有する、実施形態32に記載の塩。
実施形態40:A-が、トリフルオロ酢酸イオン、コハク酸イオン、又はシュウ酸イオンである、実施形態39に記載の塩。
【0272】
実施形態41:A-が、トリフルオロ酢酸イオンである、実施形態40に記載の塩。
実施形態42:A-が、コハク酸イオンである、実施形態40に記載の塩。
実施形態43:A-が、シュウ酸イオンである、実施形態40に記載の塩。
実施形態44:
医薬的に許容される担体;及び
実施形態1〜3、5〜13、16〜29、31〜39、42、又は43のいずれか一つに記載の化合物又はその医薬的に許容される塩の有効量、
を含む、医薬組成物。
実施形態45:少なくとも一つのオピオイドの有効量をさらに含む、実施形態44に記載の医薬組成物。
【0273】
実施形態46:前記オピオイドが、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、オキシコドン、オキシモルフォン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、トラマドール、及びそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態45に記載の医薬組成物。
【0274】
実施形態47:
オピオイド受容体と、実施形態1〜46のいずれか一つに記載の化合物、又はその塩、又は医薬的組成物の有効量とを接触させること、
を含む、オピオイド受容体に結合させる方法。
【0275】
実施形態48:インビトロで、オピオイド受容体に結合させる方法を含む、実施形態47に記載の方法。
実施形態49:インビボで、オピオイド受容体に結合させる方法を含む、実施形態47に記載の方法。
実施形態50:オピオイド受容体を結合させることを含む実施形態49に記載の方法であって、それを必要とする患者において、
実施形態1〜3、5〜13、16〜29、31〜39、又は42〜46のいずれか一つに記載の化合物、又はその塩、又は医薬的に許容される塩の有効量を前記患者に投与することを含む、方法。
【0276】
実施形態51:前記受容体が、μオピオイド受容体である、実施形態47〜50のいずれか一つに記載の方法。
実施形態52:前記μオピオイド受容体が、中枢神経系に位置する、実施形態49に記載の方法。
実施形態53:前記μオピオイド受容体が、中枢神経系の末梢に位置する、実施形態49に記載の方法。
実施形態54:前記結合が、オピオイド受容体の活性に拮抗する、実施形態47に記載の方法。
実施形態55:前記化合物又はその塩が、オピオイド受容体に対する活性を示す、実施形態49に記載の方法。
【0277】
実施形態56:前記化合物又はその塩が、血液脳関門を実質的に通過しない、実施形態49に記載の方法。
実施形態57:前記患者が、オピオイドにより引き起こされる症状又は疾患の治療を必要とする、実施形態50に記載の方法。
実施形態58:前記オピオイドが内因性である、実施形態57に記載の方法。
実施形態59:前記オピオイドが外因性である、実施形態57に記載の方法。
【0278】
実施形態60:胃腸障害を治療するための方法であって、
実施形態1〜3、5〜13、16〜29、31〜39、又は42〜46のいずれか一つに記載の化合物、又はその塩、又は医薬的に許容される塩の有効量をそのような治療を必要とする患者に投与すること、
を含む、方法。
【0279】
実施形態61:腸閉塞を治療するための方法であって、
実施形態1〜3、5〜13、16〜29、31〜39、又は42〜46のいずれか一つに記載の化合物、又はその塩、又は医薬的に許容される塩の有効量をそのような治療を必要とする患者に投与すること、
を含む、方法。
【0280】
実施形態62:オピオイドに関連する副作用を治療するための方法であって、
実施形態1〜3、5〜13、16〜29、31〜39、又は42〜46のいずれか一つに記載の化合物、又はその塩、又は医薬的に許容される塩の有効量をそのような治療を必要とする患者に投与すること、
を含む、方法。
【0281】
実施形態63:少なくとも一つのオピオイドの有効量を前記患者に投与することをさらに含む、実施形態62に記載の方法。
実施形態64:前記副作用が、便秘、吐気、及び嘔吐からなる群から選択される、実施形態62に記載の方法。
実施形態65:前記の投与が、少なくとも一つのオピオイドの投与前、投与中、投与後に行われる、実施形態62に記載の方法。
【0282】
実施形態66:前記オピオイドが、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、オキシコドン、オキシモルフォン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、トラマドール、及びそれらの混合物、からなる群から選択される、実施形態63又は65に記載の方法。
【0283】
実施形態67:
オピオイドの有効量;及び
実施形態1〜3、5〜13、16〜29、31〜39、又は42〜46のいずれか一つに記載の化合物、又はその塩、又は医薬的に許容される塩の有効量、
を含む組成物を、それを必要とする患者に投与すること、
を含む、疼痛を治療する方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IA:
【化1】

の化合物又はその塩。
【請求項2】
塩でない形態である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
塩の形態である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
医薬的に許容されない塩である、請求項3に記載の塩。
【請求項5】
医薬的に許容される塩である、請求項3に記載の塩。
【請求項6】
式IA−S−1、IA−S−2、又はIA−S−3:
【化2】

[式中、
M+が塩基の陽イオンであり;且つ
A-が酸の陰イオンである]
を有する、請求項3に記載の塩。
【請求項7】
式IA−S−1を有する、請求項6に記載の塩。
【請求項8】
M+がアンモニウム陽イオン、及び金属陽イオンからなる群から選択される、請求項7に記載の塩。
【請求項9】
M+が金属陽イオンである、請求項8に記載の塩。
【請求項10】
前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオン、及びリチウム陽イオンからなる群から選択される、請求項9に記載の塩。
【請求項11】
前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオンである、請求項10に記載の塩。
【請求項12】
式IA−S−2を有する、請求項6に記載の塩。
【請求項13】
式IA−S−3を有する、請求項6に記載の塩。
【請求項14】
A-が、トリフルオロ酢酸イオン、コハク酸イオン、又はシュウ酸イオンである、請求項13に記載の塩。
【請求項15】
A-が、トリフルオロ酢酸イオンである、請求項14に記載の塩。
【請求項16】
A-が、コハク酸イオンである、請求項14に記載の塩。
【請求項17】
A-が、シュウ酸イオンである、請求項14に記載の塩。
【請求項18】
医薬的に許容される担体;及び
下記の式IA:
【化3】

の化合物、又は医薬的に許容されるその塩の有効量、
を含む、医薬組成物。
【請求項19】
前記化合物が、医薬的に許容される塩の形態である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−1、IA−S−2、又はIA−S−3:
【化4】

[式中、
M+が医薬的に許容される塩基の陽イオンであり;且つ
A-が医薬的に許容される酸の陰イオンである]
を有する、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−1を有する、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
M+がアンモニウム陽イオン、及び金属陽イオンからなる群から選択される、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
M+が金属陽イオンである、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオン、及びリチウム陽イオンからなる群から選択される、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオンである、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−2を有する、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−3を有する、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項28】
A-が、コハク酸イオン、又はシュウ酸イオンである、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
A-が、コハク酸イオンである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
A-が、シュウ酸イオンである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項31】
少なくとも一つのオピオイドの有効量をさらに含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記オピオイドが、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、オキシコドン、オキシモルフォン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、トラマドール、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
オピオイド受容体と、請求項1に記載の化合物又はその塩の有効量とを接触させること、
を含む、オピオイド受容体に結合させる方法。
【請求項34】
前記化合物が塩でない形態である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記化合物が塩の形態である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記塩が、医薬的に許容されない塩である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
医薬的に許容される塩である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記受容体が、μオピオイド受容体である、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記結合が、前記オピオイド受容体の活性に拮抗する、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
インビトロで、前記オピオイド受容体に結合させることを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記塩が、式IA−S−1、IA−S−2、又はIA−S−3:
【化5】

[式中、
M+が塩基の陽イオンであり;且つ
A-が酸の陰イオンである]
を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記塩が、式IA−S−1を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
M+がアンモニウム陽イオン、及び金属陽イオンからなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
M+が金属陽イオンである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオン、及びリチウム陽イオンからなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオンである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記塩が、式IA−S−2を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項48】
前記塩が、式IA−S−3を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項49】
A-が、トリフルオロ酢酸イオン、コハク酸イオン、又はシュウ酸イオンである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
A-が、トリフルオロ酢酸イオンである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
A-が、コハク酸イオンである、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
A-が、シュウ酸イオンである、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
インビボで、前記オピオイド受容体に結合させることを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項54】
オピオイド受容体に結合させることを含む請求項53に記載の方法であって、それを必要とする患者において、
有効量の前記化合物、又はその医薬的に許容される塩を、前記患者に投与すること、を含む、方法。
【請求項55】
前記受容体が、μオピオイド受容体である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記μオピオイド受容体が、中枢神経系に位置する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記μオピオイド受容体が、中枢神経系の末梢に位置する、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記結合が、オピオイド受容体の活性に拮抗する、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記化合物又はその医薬的に許容される塩が、オピオイド受容体に対する活性を示す、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
前記化合物又はその医薬的に許容される塩が、血液脳関門を実質的に通過しない、請求項54に記載の方法。
【請求項61】
前記患者が、オピオイドにより引き起こされる症状又は疾患の治療を必要とする、請求項54に記載の方法。
【請求項62】
前記オピオイドが内因性である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記オピオイドが外因性である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記化合物が、塩ではない形態で患者に投与される、請求項54に記載の方法。
【請求項65】
前記化合物が、医薬的に許容される塩の形態で患者に投与される、請求項54に記載の方法。
【請求項66】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−1、IA−S−2、又はIA−S−3:
【化6】

[式中、
M+が医薬的に許容される塩基の陽イオンであり;且つ
A-が医薬的に許容される酸の陰イオンである]
を有する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−1を有する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
M+がアンモニウム陽イオン、及び金属陽イオンからなる群から選択される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
M+が金属陽イオンである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオン、及びリチウム陽イオンからなる群から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオンである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−2を有する、請求項66に記載の方法。
【請求項73】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−3を有する、請求項66に記載の方法。
【請求項74】
A-が、コハク酸イオン、又はシュウ酸イオンである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
A-が、コハク酸イオンである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
A-が、シュウ酸イオンである、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
胃腸障害を治療するための方法であって、
式IA:
【化7】

の化合物又はその医薬的に許容される塩の有効量をそのような治療を必要とする患者に投与すること、
を含む、方法。
【請求項78】
前記化合物が、塩ではない形態で患者に投与される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記化合物が、医薬的に許容される塩の形態で患者に投与される、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−1、IA−S−2、又はIA−S−3:
【化8】

[式中、
M+が医薬的に許容される塩基の陽イオンであり;且つ
A-が医薬的に許容される酸の陰イオンである]
を有する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−1を有する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
M+がアンモニウム陽イオン、及び金属陽イオンからなる群から選択される、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
M+が金属陽イオンである、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオン、及びリチウム陽イオンからなる群から選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−2を有する、請求項80に記載の方法。
【請求項86】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−3を有する、請求項80に記載の方法。
【請求項87】
A-が、コハク酸イオン、又はシュウ酸イオンである、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
A-が、コハク酸イオンである、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
A-が、シュウ酸イオンである、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
腸閉塞を治療するための方法であって、
式IA:
【化9】

の化合物又はその医薬的に許容される塩の有効量をそのような治療を必要とする患者に投与すること、
を含む、方法。
【請求項91】
前記化合物が、塩ではない形態で患者に投与される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記化合物が、医薬的に許容される塩の形態で患者に投与される、請求項90に記載の方法。
【請求項93】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−1、IA−S−2、又はIA−S−3:
【化10】

[式中、
M+が医薬的に許容される塩基の陽イオンであり;且つ
A-が医薬的に許容される酸の陰イオンである]
を有する、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−1を有する、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
M+がアンモニウム陽イオン、及び金属陽イオンからなる群から選択される、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
M+が金属陽イオンである、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオン、及びリチウム陽イオンからなる群から選択される、請求項95に記載の方法。
【請求項98】
前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオンである、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−2を有する、請求項93に記載の方法。
【請求項100】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−3を有する、請求項93に記載の方法。
【請求項101】
A-が、コハク酸イオン、又はシュウ酸イオンである、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
A-が、コハク酸イオンである、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
A-が、シュウ酸イオンである、請求項101に記載の方法。
【請求項104】
オピオイドに関連する副作用を治療するための方法であって、
式IA:
【化11】

の化合物又はその医薬的に許容される塩の有効量をそのような治療を必要とする患者に投与すること、
を含む、方法。
【請求項105】
前記化合物が、塩ではない形態で患者に投与される、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記化合物が、医薬的に許容される塩の形態で患者に投与される、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−1、IA−S−2、又はIA−S−3:
【化12】

[式中、
M+が医薬的に許容される塩基の陽イオンであり;且つ
A-が医薬的に許容される酸の陰イオンである]
を有する、請求項104に記載の方法。
【請求項108】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−1を有する、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
M+がアンモニウム陽イオン、及び金属陽イオンからなる群から選択される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
M+が金属陽イオンである、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオン、及びリチウム陽イオンからなる群から選択される、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオンである、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−2を有する、請求項107に記載の方法。
【請求項114】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−3を有する、請求項107に記載の方法。
【請求項115】
A-が、コハク酸イオン、又はシュウ酸イオンである、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
A-が、コハク酸イオンである、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
A-が、シュウ酸イオンである、請求項115に記載の方法。
【請求項118】
少なくとも一つのオピオイドの有効量を、前記患者に投与することをさらに含む、請求項104に記載の方法。
【請求項119】
前記副作用が、便秘、吐気、及び嘔吐からなる群から選択される、請求項104に記載の方法。
【請求項120】
前記の投与が、少なくとも一つのオピオイドの投与前、投与中、投与後に行われる、請求項104に記載の方法。
【請求項121】
前記オピオイドが、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、オキシコドン、オキシモルフォン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、トラマドール、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項118に記載の方法。
【請求項122】
オピオイドの有効量;及び
式IA:
【化13】

の化合物、又はその医薬的に許容される塩の有効量、
を含む組成物を、それを必要とする患者に投与すること、
を含む、疼痛を治療する方法。
【請求項123】
前記化合物が、塩ではない形態で患者に投与される、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記化合物が、医薬的に許容される塩の形態で患者に投与される、請求項122に記載の方法。
【請求項125】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−1、IA−S−2、又はIA−S−3:
【化14】

[式中、
M+が医薬的に許容される塩基の陽イオンであり;且つ
A-が医薬的に許容される酸の陰イオンである]
を有する、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−1を有する、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
M+がアンモニウム陽イオン、及び金属陽イオンからなる群から選択される、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
M+が金属陽イオンである、請求項126に記載の方法。
【請求項129】
前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオン、及びリチウム陽イオンからなる群から選択される、請求項126に記載の方法。
【請求項130】
前記金属陽イオンが、ナトリウム陽イオンである、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−2を有する、請求項125に記載の方法。
【請求項132】
前記の医薬的に許容される塩が、式IA−S−3を有する、請求項125に記載の方法。
【請求項133】
A-が、コハク酸イオン、又はシュウ酸イオンである、請求項132に記載の方法。
【請求項134】
A-が、コハク酸イオンである、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
A-が、シュウ酸イオンである、請求項133に記載の方法。
【請求項136】
前記オピオイドが、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、オキシコドン、オキシモルフォン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、トラマドール、及びそれらの混合物、からなる群から選択される、請求項120に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−529520(P2012−529520A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515063(P2012−515063)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/037772
【国際公開番号】WO2010/144446
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511298989)アドーラー コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】