説明

オプトエレクトロニクスデバイスに使用するための有機金属錯体

本発明は、式(I)で表される有機金属錯体を提供する。
【化1】


式中、MはRh、Ir、又はPtから選択される金属であり、YはN又はOを表し、R1は水素、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、C3〜C40芳香族基、C1〜C50脂肪族基、及びC3〜C50環式脂肪族基を表し、R2は水素、C3〜C20芳香族基、C1〜C50脂肪族基、又はC3〜C50環式脂肪族基を表すか、又はR1及びR2は隣接するYと共に環、好ましくは5員若しくは6員の環を形成してもよく、n1は0〜3の値を有し、n2は0〜2の値を有し、m1は1以上の値を有し、m2は1以上の値を有するが、m1+m2は3である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属錯体、当該有機金属錯体を含む組成物、当該有機金属錯体の使用、及び当該錯体を含む有機発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光デバイス(OLED)は、通例、アノード、カソード、及び2つの電極間に挟まれた1以上の有機発光層を含んでいる。OLEDは、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層及び電子輸送層のような追加の層を含んでいてもよい。適当な電圧をOLEDにかけると、注入された正と負の電荷が有機発光層内で再結合して光を発する。
【0003】
有機発光層内に使用される材料は、発光メカニズムに従って、一重項励起子を使用する蛍光物質と三重項励起子を使用する燐光物質に分類される。蛍光物質を発光層形成材料として使用する有機発光デバイスは、ホスト内に形成された三重項励起子が消耗されるという欠点を有するが、燐光物質を発光層形成材料として使用するデバイスは、一重項励起子と三重項励起子の両方を使用することができ、従って内部量子効率が100%に達し得るという利点を有する。従って、燐光物質を有機発光層内に使用すると、燐光物質は蛍光物質を使用する場合より高い発光効率を有することができる。
【0004】
[(C∧N)3Ir(III)]及び[(C∧N)2Ir(III)(LA)]イリジウム(III)錯体のような有機金属錯体[ここで、C∧Nはシクロメタレート型配位子(cyclometallated ligand)であり、LAは補助配位子である]が、その例外的なエレクトロ−及びフォト−ルミネッセント特性の故に分子及びポリマーに基づくOLEDの重要な燐光物質として確認されている。これらのIr(III)錯体をOLED構造中に用いる際の対象利益の多くはこれらが長寿命の励起状態と高い発光効率を有する結果である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/305361号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
極めて効率的な発光性材料に用いられる成分としてIr、Pt、及びRhのような重金属を使用する錯体が報告されているが、これらの錯体を製造するときに室温作業を目指すこと、又は、有機金属錯体若しくは物質が室温で発光することが望ましい。また、室温で、例えば赤色、青色又は緑色光を始めとする可視波長範囲内で発光する有機金属錯体を開発するという要求もある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、本発明は次式(I)で表される有機金属錯体を提供する。
【0008】
【化1】

式中、
Mは、Rh、Ir、又はPtから選択される金属であり、
Yは、N又はOを表し、
1は、水素、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、C3〜C40芳香族基、C1〜C50脂肪族基、及びC3〜C50環式脂肪族基を表し、
2は、水素、C3〜C20芳香族基、C1〜C50脂肪族基、又はC3〜C50環式脂肪族基を表すか、又はR1及びR2は隣接するYと共に環、好ましくは5員又は6員環を形成してもよく、
1は0〜3の値を有し、
2は0〜2の値を有し、
1は1以上の値を有し、
2は1以上の値を有し、但し、m1+m2は3であり、
ここで、次式の配位子は各々独立に同一でも異なってもよいシクロメタレート型配位子である。
【0009】
【化2】

別の実施形態では、本発明は、
アノード、
カソード、及び
アノードとカソードとの間に配置された有機発光層
を含んでなる有機発光デバイス(OLED)を提供するが、上記有機発光層は前記式(I)で表される有機金属錯体を含む。
【0010】
さらに別の実施形態は1種以上の電気活性ホスト材料及び前記式(I)で表される1種以上の有機金属錯体を含む電子燐光性組成物である。
【0011】
本発明の上記及びその他の特徴、局面、及び利点は、以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【0012】
以下、下記実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及びその後の特許請求の範囲では多くの用語を使用するが、以下の意味を有するものとして定義する。
【0014】
単数形態は、文脈から明らかに他の意味を有さない限り複数の場合も包含する。
【0015】
本明細書で使用する場合、「任意の」又は「場合により」という表現は、続いて記載されている事象又は状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、またその記載はその事象が起こる場合と起こらない場合とを包含することを意味する。
【0016】
同じ特性を表す全ての範囲の終点は独立して組み合わせ可能であり、明示された終点を含む。「より大きい」又は「未満(より小さい)」として表現された値は明示された終点を含み、例えば、「3.5より大きい」は3.5の値を包含する。
【0017】
本明細書で使用する場合、用語「芳香族基」は1以上の芳香族基を含むものをいい、ここで1以上の芳香族基は窒素、イオウ、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、又は専ら炭素と水素から構成されていてもよい。芳香族基はフェニル基、チエニル基、フラニル基、ナフチル基、アズレニル基、アントラセニル基などからなる。また、芳香族基は非芳香族成分を含んでいてもよい。例えば、ベンジル基はフェニル環(芳香族基)とメチレン基(非芳香族成分)とからなる芳香族基である。本明細書で使用する場合、用語「芳香族基」には、限定されることはないがフェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニレン、及びビフェニル基が包含される。便宜上、用語「芳香族基」は本明細書中で、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ハロ芳香族基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えばエステル及びアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの置換基を0〜10個、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜4個、最も好ましくは1〜2個包含するものとして定義される。これらの置換基に含まれる用語「アルキル」、「アルケニル」及び「アルケニル」は1〜50個の炭素原子、好ましくは1〜30個の炭素原子、より好ましくは1〜12個の炭素原子、さらにより好ましくは1〜6個の炭素原子を保有する。例えば、芳香族基には、4−トリフルオロメチルフェニル、4−クロロメチルフェン−1−イル、4−(3−ブロモプロプ−1−イル)フェン−1−イル(すなわち、4−BrCH2CH2CH2Ph−)などのハロゲン化された芳香族基が包含される。芳香族基のさらなる例には、4−アリルオキシフェン−1−オキシ、4−アミノフェン−1−イル(すなわち、4−H2NPh−)、3−アミノカルボニルフェン−1−イル(すなわち、NH2COPh−)などが含まれる。好ましくは、芳香族基は3〜40個の炭素原子、好ましくは3〜20個の炭素原子、より好ましくは3〜16個の炭素原子、最も好ましくは3〜14個の炭素原子を含む。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「C3〜C50環式脂肪族基」中の用語「環式脂肪族基」は1以上の原子価を有し、環状であるが芳香族ではない原子列を含む基を指す。本明細書で定義される場合、「環式脂肪族基」は芳香族基を含有しない。「環式脂肪族基」は1以上の非環状成分を含んでいてもよい。環式脂肪族基は窒素、イオウ及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、又は専ら炭素と水素から構成されていてもよい。便宜上、用語「環式脂肪族基」は本明細書中で、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を始めとするハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えばエステル及びアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミノ基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものとして定義される。一実施形態では、環式脂肪族基は3〜50個の炭素原子、好ましくは3〜30個の炭素原子、より好ましくは3〜20個の炭素原子、さらにより好ましくは3〜12個の炭素原子、最も好ましくは3〜6個の炭素原子を有する。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「C1〜C50脂肪族基」の中の用語「脂肪族基」は、環状ではない線状又は枝分かれした原子列からなる1以上の原子価を有する有機基をいう。脂肪族基は1以上の炭素原子を含むものとして定義される。脂肪族基を構成する原子列は窒素、イオウ、ケイ素、セレン及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、又は専ら炭素と水素からなっていてもよい。便宜上、用語「脂肪族基」は本明細書中で、「環状ではない線状又は枝分かれした原子列」の一部として、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えばエステル及びアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものとして定義される。一例として、C1〜C10脂肪族基は1個以上10個以下の炭素原子を含有する。メチル基(すなわち、CH3−)はC1脂肪族基の一例である。デシル基(すなわち、CH3(CH29−)はC10脂肪族基の一例である。一実施形態では、脂肪族基は1〜50個の炭素原子、好ましくは1〜30個の炭素原子、より好ましくは1〜20個の炭素原子、さらにより好ましくは1〜12個の炭素原子、最も好ましくは1〜6個の炭素原子を有する。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「5員又は6員環」は、N、S又はOから選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する飽和、不飽和、芳香族、非芳香族の5員又は6員環をいい、水素、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、C3〜C40芳香族基、C1〜C50脂肪族基、及びC3〜C50環式脂肪族基で置換されていてもよい。ここで、芳香族基、脂肪族基、及び環式脂肪族基は上記のように定義される。
【0021】
本発明者は、広範な研究中に、室温において400nm〜650nmの波長でより良好な燐光を示す新しい種類の有機金属錯体を発見した。
【0022】
有機金属錯体
一実施形態では、本発明は次式(I)で表される有機金属錯体を提供する。
【0023】
【化3】

式中、
Mは、Rh、Ir、又はPtから選択される金属であり、
Yは、N又はOを表し、
1は、水素、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、C3〜C40芳香族基、C1〜C50脂肪族基、及びC3〜C50環式脂肪族基を表し、
2は、水素、C3〜C20芳香族基、C1〜C50脂肪族基、若しくはC3〜C50環式脂肪族基を表すか、又はR1及びR2は隣接するYと共に環、好ましくは5員若しくは6員の環を形成してもよく、
1は0〜3の値を有し、
2は0〜2の値を有し、
1は1以上の値を有し、
2は1以上の値を有し、但し、m1+m2は3であり、
ここで、次式の配位子は、各々独立に同一でも異なってもよいシクロメタレート型配位子である。
【0024】
【化4】

式(I)において、次式で表されるシクロメタレート型配位子の数m1は1でも2でもよく、この配位子の数m1が2である場合シクロメタレート型配位子は互いに同一でも異なってもよい。
【0025】
【化5】

錯体として使用する適切なシクロメタレート型配位子は当技術分野で公知である。数多くのシクロメタレート型配位子が当技術分野で、例えば国際公開第2006/073112号(援用によりその全体が本明細書の内容の一部をなす)に開示されている。当業者は、使用するべきシクロメタレート型配位子を決定することができる。
【0026】
一実施形態では、次式のシクロメタレート型配位子中のC及びNは芳香族基の環形成原子から独立に選択される。
【0027】
【化6】

この芳香族基は上記のように定義される。シクロメタレート型配位子は、式(I)中の金属Mと共に5員〜7員環、好ましくは5員〜6員環を形成する。
【0028】
一実施形態では、シクロメタレート型配位子中のCはC3〜C14芳香族基中の環形成原子であり、シクロメタレート型配位子中のNは窒素を含有する3員〜14員芳香族基中の環形成原子である。用語「窒素を含有する3員〜14員芳香族基」とは、芳香族基内に炭素原子に加えて1以上のN原子を含有する単環式又は縮合芳香族基をいう。例えば、3員〜14員芳香族基は、限定されることはないが、1−イミダゾリル(C322−)、フェニル、ベンジル基(C77−)、スチリル、ナフチル、ピリジニル、インドール及びアントラセニルからなる。
【0029】
例えば、シクロメタレート型配位子は次のものからなる群から選択され得る。
【0030】
【化7】

【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
【化10】

【0034】
【化11】

式(I)において、MはRh、Ir、及びPtから選択される金属原子である。好ましくは、MはIr又はPt、より好ましくはIrである。
【0035】
式(I)には、次式(II)で表される配位子が含まれている。
【0036】
【化12】

式中、YはN又はOを表し、
1は水素、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、C3〜C40芳香族基、C1〜C50脂肪族基、及びC3〜C50環式脂肪族基を表し、
2は水素、C3〜C20芳香族基、C1〜C50脂肪族基、又はC3〜C50環式脂肪族基を表すか、又はR1及びR2は隣接するYと共に環、好ましくは5員若しくは6員の環を形成してもよく、
1は0〜3の値を有し、
2は0〜2の値を有する。
【0037】
式(I)において、式(II)を有する配位子の数m2は1以上、例えば1又は2の値を有し、但し、m1+m2=3である。m2が2であるとき、式(II)を有する配位子は同一又は異なることができる。
【0038】
式(II)を有する例示の配位子は、限定されることはないが、次の化合物から誘導されたものからなる。
【0039】
【化13】

一実施形態では、YはNを表す。その場合、式(II)を有する例示の配位子は、限定されることはないが、次のものからなる。
【0040】
【化14】

YがNを表す場合、本発明の錯体は次式(III)を有する。
【0041】
【化15】

式中、M、R1、R2、n1、n2、m1、及びm2は各々が上記式(I)及び(II)のように定義される。次式の配位子も上記式(I)のように定義される。
【0042】
【化16】

組成物
一実施形態では、本発明は、次式(I)で表される1種以上の有機金属錯体を含む組成物を提供する。
【0043】
【化17】

式中、M、R1、R2、n1、n2、m1、及びm2は各々が上記のように定義される。
【0044】
別の実施形態では、本発明は1種以上の電気活性ホスト材料と、次式(I)で表される1種以上の有機金属錯体を含む電子燐光性組成物を提供する。
【0045】
【化18】

式中、M、R1、R2、n1、n2、m1、及びm2は各々が上記のように定義される。
【0046】
本明細書で使用する場合、電子燐光性組成物は、電圧バイアスの印加の結果形成された三重項励起状態の放射減衰により光を放出する組成物である。
【0047】
一実施形態では、本発明は、電圧バイアスにかけられたとき、主として、ホスト材料から有機金属錯体へのエネルギー移動により形成された有機金属錯体の三重項励起状態から光を放出する電子燐光性組成物を提供する。本発明により提供される有機金属錯体は、ホスト材料の励起状態から有機金属錯体へのエネルギー移動が多くの場合極めて効率的であるので、電子燐光性組成物に使用するのによく適している。
【0048】
本組成物はさらに電気活性ホスト材料を含む。適切な電気活性ホスト材料には電子発光性材料その他の電気活性材料があり、当技術分野で公知である。非ポリマーホスト材料の例としては、限定されることはないが、ケミカルアブストラクト登録番号(CAS No.)と共に表1に例示されるものがある。
【0049】
【表1】

代わりの実施形態では、ホスト材料は電気活性ポリマー材料である。適切な電気活性ポリマー材料には、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリフェニレンビニレン(PPV)、フェニル置換ポリフェニレンビニレン(PhPPV)、及びポリ(9,9−二置換フルオレン)がある。
【0050】
一実施形態では、本発明は1種以上の電気活性ホスト材料と1種以上の有機金属錯体を含む電子燐光性組成物を提供する。
【0051】
一実施形態では、電子燐光性組成物は、青色発光性の電子発光性有機材料、例えばポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)であるホスト材料を含む。
【0052】
一実施形態では、本発明は、電気活性ホスト材料と式(I)の有機金属錯体を含む電子燐光性組成物を提供し、ここで有機金属錯体は電子燐光性組成物の全重量の約0.01パーセント〜約50重量パーセントに相当する量で存在する。別の実施形態では、有機金属錯体は電子燐光性組成物の全重量の約0.1パーセント〜約10重量パーセントに相当する量で存在する。さらに別の実施形態では、有機金属錯体は電子燐光性組成物の全重量の約0.5パーセント〜約5重量パーセントに相当する量で存在する。
【0053】
有機金属錯体の使用
一実施形態では、本発明は、次式(I)で表される有機金属錯体の、電子デバイス、発光性電気化学電池、光検出器、光伝導性セル、光スイッチ、光トランジスター、及び光電管における使用を提供する。
【0054】
【化19】

式中、M、R1、R2、n1、n2、m1、及びm2は各々が上記のように定義される。
【0055】
OLED
一実施形態では、本発明は、本発明により提供される有機金属錯体又は組成物を1種以上含む有機発光デバイスを提供する。有機発光デバイスは、通例、最も簡単な場合、アノード層及び対応するカソード層を、前記アノードと前記カソードとの間に配置された有機電子発光性層と共に含む複数の層からなる。電極を横切って電圧バイアスがかけられると、カソードにより電子が電子発光性層中に注入される一方で、アノードから電子が電子発光性層から除かれる(又は「正孔」が電子発光性層中に「注入される」)。発光は、正孔が電子発光性層内で電子と結合して一重項又は三重項の励起子を形成すると起こる。発光は、一重項励起子が放射減衰によって周囲にエネルギーを移動するときに起こる。一重項励起子とは異なり、三重項励起子は、通例、放射減衰を起こすことができず、従って非常に低い温度でしか光を放出しない。理論的考察により、三重項励起子は一重項励起子の約三倍の頻度で形成されることが示されている。従って、三重項励起子の形成は、通例周囲温度又はその付近で作動する有機発光デバイスの効率の基本的な制限を表す。1つの局面において、本発明により提供される有機金属組成物は、通常は非生産的な三重項励起子が有機イリジウム組成物と遭遇しエネルギーを移動するときに形成される発光性の短寿命励起状態種の前駆体として機能し得る。従って、1つの局面において、本発明は、本発明の有機イリジウム組成物を1種以上含むより効率的な有機発光デバイスを提供する。
【0056】
一実施形態では、本発明は、本発明の錯体又は組成物を1種以上含む電子デバイスを提供する。特に、本発明は、
アノード、
カソード、及び
アノードとカソードの間に位置する有機発光層
を含む有機発光デバイス(OLED)を提供するが、上記有機発光層は、次式(I)で表される有機金属錯体を含む。
【0057】
【化20】

式中、M、R1、R2、n1、n2、m1、及びm2は各々上記のように定義される。
【0058】
一実施形態では、本発明は、本発明の有機金属組成物を含む1以上の電気活性層を含む電子デバイスを提供する。
【0059】
一実施形態では、本発明は、アノード、カソード、及びアノードとカソードの間に配置され、これらに電気的に接続された有機電子発光性層を含む有機発光デバイスを提供するが、上記有機電子発光性層は電子燐光性組成物を含む。
【0060】
本開示において、有機電子発光性層は「二極性放出層」ということもあり、上記で示唆されているように、有機発光デバイス内で、作動中電子と正孔をかなりの濃度で含有し、励起子の形成及び発光の場所を提供する層である。
【0061】
有機発光デバイス中に存在し得るその他の構成要素としては、アノードと接触していて、アノードからOLEDの内部の層への正孔の注入を促進する層として定義される「正孔注入層」、及びカソードと接触していて、カソードからOLEDの内部の層への電子の注入を促進する層として定義される「電子注入層」、カソードから電荷再結合場所への電子の伝導を容易にする層として定義される「電子輸送層」がある。この電子輸送層はカソードと接触している必要はなく、多くの場合電子輸送層は効率的な正孔運搬体ではなく、従ってカソードに向かう正孔の移動を遮断するように機能する。
【0062】
一実施形態では、有機発光デバイスは、
アノード、
正孔注入層、
アノードとカソードの間に配置され、これらに電気的に接続された有機電子発光性層(ここで、この有機電子発光性層は電子燐光性組成物を含む)、
電子輸送層、
電子注入層、及び
カソード
を含んでなる。
【0063】
アノードとして使用するのに適した材料は、四点プローブ法で測定して少なくとも約100Ω/□(オーム/平方)の体積導電率を有する材料によって例示される。通例、酸化インジウムスズ(ITO)が、光の透過に対して実質的に透明であり、従って電気活性有機層から放出された光の脱出が容易になるので、アノードとして使用される。アノード層として利用し得る他の材料としては、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛、酸化亜鉛インジウムスズ、酸化アンチモン、及びこれらの混合物がある。
【0064】
カソードとして使用するのに適した材料は、負の電荷担体(電子)をOLEDの内層中に注入することができるゼロ原子価(valent)の金属によって例示される。カソードとして使用するのに適した様々なゼロ原子価金属としては、K、Li、Na、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、Au、In、Sn、Zn、Zr、Sc、Y、ランタニド系列の元素、これらの合金、及びこれらの混合物がある。カソード層として使用するのに適した合金材料としては、Ag−Mg、Al−Li、In−Mg、Al−Ca、及びAl−Au合金がある。層化非合金構造体、例えばカルシウムのような金属の薄い層、又はアルミニウム若しくは銀のようなゼロ原子価の金属の厚めの層によって被覆されたLiFのような金属フッ化物もカソードとして使用し得る。一実施形態では、カソードは本質的に単一のゼロ原子価金属からなり、例えばカソードは本質的にアルミニウム金属からなる。カソードは、物理的蒸着、化学的蒸着、スパッタリングなどの技術によりその下にある元素の上に付着させることができる。一実施形態では、カソードは透明である。用語「透明」とは10度以下の入射角で可視波長範囲の光の少なくとも50パーセント、一般には少なくとも80パーセント、さらに一般には少なくとも90パーセントが透過できることを意味する。これは、「透明」であると記載されたデバイス又は物品、例えばカソードが、約10度以下の入射角でデバイス又は物品に衝突する可視範囲の光の少なくとも50パーセントを透過させることを意味している。
【0065】
有機金属錯体の効果
本発明の有機金属錯体又は組成物は、通例、そのUV−Vis吸収スペクトルに強い電荷移動バンドを示す。理論に縛られることはないが、かかる吸収バンドは、主として配位子の特徴である分子軌道から、主として金属の特徴である分子軌道への電子の移動、或いは主として金属の特徴である分子軌道から、主として配位子の特徴である分子軌道への電子の移動の結果であると考えられる。かかる電荷移動事象は、配位子−金属電荷移動(LMCT)又は金属−配位子電荷移動(MLCT)のように様々にいわれている。特定の実施形態では、本発明により提供される有機金属組成物は、電圧がかけられたときに生成し得る極めて高い放出性の励起状態によって特徴付けられる。かかる性質を有する材料は電子デバイス、例えば有機発光ダイオード(OLED)の製造に有用である。本発明の有機金属錯体を使用し得る他の応用としては、発光性の電気化学電池、光検出器、光伝導性セル、光スイッチ、光トランジスター、及び光電管がある。
【0066】
これらの有機金属錯体及びこれらの錯体を含むデバイスは室温で発光することができる。
【実施例】
【0067】
以下の実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。以下の実施例は例示の目的のためであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0068】
試験の定義
薄層クロマトグラフィー(TLC)は、シリカゲル60F(Merck 5715−7)で被覆されたガラスプレート上で行った。プレートはUV光を用いて検査した。
【0069】
カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル60(Merck 9358、230−400メッシュ)を用いて行った。
【0070】
1H−及び13C NMRスペクトルは全て、Bruker Advance 500 NMR分光計(それぞれ500MHz及び125MHz)又はBruker 400 NMR分光計(それぞれ400及び100MHz)で記録した。化学シフトは、参照標準として残留溶媒ピークを用いてテトラメチルシランに対して決定した。
【0071】
一般手順
2−メトキシエタノールと水の混合物を含有する、窒素でパージした溶液に、IrCl3・xH2O(Strem Chemicals)を加えた後、シクロメタレート型配位子前駆体(2.5〜3.8当量)を加えた。得られた混合物を15〜48h還流加熱し、真空ろ過により生成物を収集した。以下の実施例で、略語「ppy」、「piq」、「F2ppy」及び「C6」は次の表2に示す構造を有する。アステリスク(*)はシクロメタレート型配位子と金属の結合点を示す。
【0072】
【表2】

【実施例1】
【0073】
{(ppy)2Ir(μ−Cl)}2
2−メトキシエタノールと水(30ml:10mL)の混合物をN2で15分間脱ガスした。この溶媒混合物に、IrCl3・xH2O(0.388g、1.30mmol)を、次いで2−フェニルピリジン(0.766g、4.94mmol)を加え、混合物をN2雰囲気下で24時間還流加熱した。反応混合物を室温に冷却し、黄色の沈殿をろ過により収集し、EtOH(50mL)、アセトン(50mL)で洗浄し、空気中で乾燥した。黄色の沈殿をCH2Cl2に溶解し、ろ過して不溶性物質を除去した。この溶液を濃縮乾固し、ヘキサン中に懸濁した後ろ過した。収率:0.539g、77%。1H−NMR(400MHz、CD2Cl2、25℃)δ5.88(d、2H)、6.60(m、2H)、6.82(m、4H)、7.56(d、2H)、7.80(m、2H)、7.94(d、2H)、9.25(d、2H)。
【実施例2】
【0074】
{(F2ppy)2Ir(m−Cl)}2
2−メトキシエタノールと水(20ml:10mL)の混合物をN2で15分間脱ガスした。この溶媒混合物に、IrCl3・xH2O(0.388g、1.30mmol)、次いで2−(2,4−ジフルオロフェニル)−ピリジン(0.766g、4.94mmol)を加え、混合物をN2雰囲気下で15時間還流加熱した。反応混合物を室温に冷却し、MeOH(200mL)中に注ぎ入れた。黄色の沈殿をろ過により収集し、ろ過洗液が無色になるまでMeOH及びヘキサンで洗浄した。黄色の沈殿をトルエンとヘキサンの混合物で再結晶して黄色の針状物を得た。収率:2.20g、44%。1H−NMR(400MHz、CD2Cl2、25℃)δ5.29(m、4H)、6.38(m、4H)、6.87(m、4H)、7.87(m、4H)、8.33(m、4H)、9.12(m、4H)。
【0075】
2−ピロールカルボン酸のエステル誘導体、[(F2ppy)2Ir(7)](9)及び[(F2ppy)2Ir(8)](10)を、それぞれ対応するピロール配位子7及びピロール配位子8から調製した(化学式1)。
【0076】
【化21】

化学式1.Ir(III)2−ピロールカルボン酸エステル錯体の調製
【実施例3】
【0077】
[(F2ppy)2Ir(7)](9):
ピロール配位子7(57mg、0.32mmol)を含有する撹拌したEtOH溶液(3mL)に(このピロール配位子7、エチル−3,4,5−トリメチル−ピロール−2−カルボキシレートは公知の文献の手順に従って調製した。D.H.Cho,J.Ho Lee,B.H.Kim,J.Org.Chem.,1999,21,8048−8050参照)、固体の水素化ナトリウム(40.0mg、1.67mmol)を−10℃で加えた。この溶液を5分間撹拌した後、[(f2ppy)2Ir(μ−Cl)]2(160mg、0.128mmol)を加え、次に混合物を80℃で2時間加熱した。黄色に着色した反応混合物を室温に冷却し、加熱浴のない回転蒸発器で濃縮した。この冷やした溶液をろ過して生成物を取り出し、生成物をろ過により収集し、MeOHで洗浄し、空気中で乾燥した。収率(170mg、88%)。1H NMR(500MHz、CD2Cl2、25℃)δ1.25(t、3H)、1.38(s、3H)、1.82(s、3H)、2.23(s、3H)、4.19(m、1H)、4.30(m、1H)、5.66(dd、1H)、5.72(dd、1H)、6.40(m、2H)、7.08(t、1H)、7.20(t、1H)、7.63(d、1H)、7.79(m、2H)、8.23(d、2H)、8.45(d、1H)。
【実施例4】
【0078】
エチル−3,5−ジフェニル−ピロール−2−カルボキシレート(ピロール配位子8)を、文献(J.B.Paine,D.Dolphin,J.Org.Chem.,1985,50,5598−5604)に記載された手順の修正版を用いて調製した。1,3−ジフェニルプロパンジオン(2.2g、1.0mmol)とアミノマロン酸ジエチル塩酸塩(2.1g、1.0mmol)を入れたフラスコに、AcOH(2mL)を加えた。この混合物を90℃に1時間加熱した後、2.1g(1mmol)のアミノマロン酸ジエチル塩酸塩を追加して加え、加熱を11時間続けた。反応混合物を撹拌しながら氷水(20mL)中に注ぎ入れた後、10mLのEtOHを加え、1時間撹拌した。沈殿をろ過により収集し、H2Oで洗浄し、空気中で乾燥した(2.7g)。この粗生成物をSiO2のクロマトグラフにかけ、CH2Cl2/ヘキサン(1:1)で溶出した。生成物を含有する合わせた画分から溶媒を除去してオフホワイトの固体を得た。この生成物をCH2Cl2/ヘキサンで再結晶して無色の結晶を得た。収率:1.8g、62%。1H NMR(400MHz、CD2Cl2、25℃)δ1.27(t、3H)、4.25(q、2H)、6.66(d、1H)、7.39(m、6H)、7.62(m、4H)、9.45(bs、1H)。この生成物の1H NMRスペクトルは文献のデータと一致した。A.Fuerstner,H.Weintritt,A.Hupperts,J.Org.Chem.,1995,60,6637−6641参照。
【0079】
[(F2ppy)2Ir(8)](10):
ピロール配位子8(93mg、0.32mmol)を含有する撹拌したEtOH溶液(3mL)に、固体の水素化ナトリウム(40.0mg、1.67mmol)を−10℃で加えた。この溶液を5分間撹拌した後、[(f2ppy)2Ir(μ−Cl)]2(160mg、0.128mmol)を加え、次に混合物を80℃に2時間加熱した。黄色に着色した反応混合物を室温に冷却し、加熱浴のない回転蒸発器で濃縮した。こうして冷やした溶液をろ過して生成物を除き、生成物をろ過により収集し、MeOHで洗浄し、空気中で乾燥した。収率(204mg、92%)。1H NMR(400MHz、CD2Cl2、25℃)δ1.14(t、3H)、4.16(m、1H)、4.29(m、1H)、5.19(dd、1H)、5.56(dd、1H)、6.09(m、1H)、6.31(s、1H)、6.38(m、1H)、6.74(m、2H)、6.85(m、2H)、6.93(m、1H)、7.15(m、1H)、7.25(m、2H)、7.33(m、2H)、7.57(m、2H)、7.64(m、1H)、7.79(m、1H)、7.86(m 1H)、8.24(m、2H)、8.55(m、1H)。
【0080】
固体として、錯体[(F2ppy)2Ir(7)](9)は青緑色の光を放出し、錯体[(F2ppy)2Ir(8)](10)は予想外に黄色の光を放出した。室温で脱ガスした溶液では、錯体9は室温で弱い青緑色の発光を示したが、錯体10は弱い黄色の発光を示した。冷凍したガラス状トルエン中で、錯体9は強い青色発光を示したが、錯体10は強い緑色発光を示した。
【実施例5】
【0081】
N−(フェニルメチル)−1H−ピロール−2−カルボキサミド(ピロール配位子11):
2−ピロールカルボン酸(1.0g、9.0mmol)の懸濁物を含有するトルエン溶液(50mL)を撹拌し、−10℃に維持しながら、塩化オキサリル(1.65mL、18.92mmol)を加えた。冷却浴を取り外し、室温で12時間撹拌した。揮発性の溶媒を除去し、酸塩化物を含有する残りのトルエン溶液(30mL)はさらに精製することなく使用した。酸塩化物(4.5mmol)を含有するトルエン溶液の一部分(15mL)に、Et3N(3mL)とベンジルアミン(1.0mL)を含有するトルエン溶液(5mL)を加え、室温で1.5時間撹拌した。その後、反応混合物をH2O(100mL)、5%HCl(3×100mL)、飽和NaHCO3(1×100mL)、塩水(1×100mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥した。乾燥したトルエン溶液を濃縮して、生成物をオフホワイトの固体として得た。CH2Cl2/ヘキサンで再結晶した。収率:0.47g、52%。1H NMR(500MHz、CD2Cl2、25℃)δ4.60(d、2H)、6.21(m、1H)、6.40(bs、1H)、6.60(m、1H)、6.90(m、1H)、7.27(m、1H)、7.34(d、4H)、10.14(bs、1H)。
【0082】
[(F2ppy)2Ir(11)](13):
撹拌したTHF(無水)溶液(4mL)に、固体の水素化ナトリウム(15.0mg、0.625mmol)を−10℃で加えた。この溶液を10分間撹拌した後、ピロール配位子11(102mg、0.512mmol)を加え、撹拌を10分間続けた。この溶液に、[(f2ppy)2Ir(μ−Cl)]2(160mg、0.128mmol)を加え、混合物を室温で2時間撹拌した。この間に溶液は均一になった。この混合物をMeOH/H2O/NH4Cl(aq)(150ml/25mL/0.3mL)の混合物中に注ぎ入れ、濃縮乾固した。粗生成物をSiO2でクロマトグラフにかけた(CH2Cl2)。ほぼ乾固してガラス状の膜ができるまで溶媒を除去した後、MeOH(15mL)の添加により生成物を結晶化した。生成物をろ過により収集し、70%MeOHで洗浄し、空気中で乾燥した。収率(180mg、91%)。1H NMR(500MHz、CD2Cl2、25℃)δ4.51(dd、1H)、4.61(dd、1H)、5.77(m、2H)、6.13(m、1H)、6.35(m、2H)、6.42(m、2H)、6.69(d、1H)、7.03(m、1H)、7.11(m、3H)、7.25(m 3H)、7.34(d、1H)、7.75(t、1H)、7.80(t、1H)、8.22(d、1H)、8.26(d、1H)、8.41(d、1H)。
【実施例6】
【0083】
N−[(4−メトキシフェニル)メチル]−1H−ピロール−2−カルボキサミド(ピロール配位子12):
2−ピロールカルボン酸(1.0g、9.0mmol)を懸濁させて含有するCH2Cl2溶液(20mL)を−10℃に維持して撹拌しながら、塩化オキサリル(3.0mL)を加えた。冷却浴を取り外し、室温で4時間撹拌した。揮発性の溶媒を除去し、残渣をCH2Cl2(20mL)に再度溶解させた。この酸塩化物を含有するCH2Cl2溶液をEt3N(3mL)と4−メトキシベンジルアミン(1.0mL)の混合物で処理し、室温で3時間撹拌した。その後、反応混合物をH2O(100mL)、5%HCl(3×100mL)、飽和NaHCO3(1×100mL)、塩水(1×100mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥した。粗な固体をEtOAcに溶解し、冷却すると結晶性物質が生成し、ろ過により除去した。母液を濃縮乾固し、EtOAc/ヘキサンで再結晶した。収率:0.57g、28%。1H NMR(500MHz、CD2Cl2、25℃)δ3.78(s、3H)、4.52(d、2H)、6.21(m、1H)、6.31(bs、1H)、6.57(m、1H)、6.87(d、2H)、6.91(m、1H)、7.27(d、2H)、10.02(bs、1H)。
【0084】
[(F2ppy)2Ir(12)](14):
撹拌したTHF(無水)溶液(4mL)に固体の水素化ナトリウム(15.0mg、0.625mmol)を−10℃で加えた。この溶液を10分間撹拌した後、ピロール配位子12(117mg、0.512mmol)を加え、撹拌を10分間続けた。この溶液に[(f2ppy)2Ir(μ−Cl)]2(160mg、0.128mmol)を加え、混合物を室温で2時間撹拌した。この間に溶液が均一になった。混合物をMeOH/H2O/NH4Cl(aq)(150ml/25mL/0.3mL)の混合物中に注ぎ入れ、濃縮乾固した。粗生成物をSiO2でクロマトグラフにかけた(CH2Cl2)。ほぼ乾固するまで溶媒を除去してガラス状の膜を得た後、MeOH(15mL)の添加により生成物を結晶化した。ろ過により生成物を集め、70%MeOHで洗浄し、空気中で乾燥した。収率(194mg、95%)。1H NMR(400MHz、CD2Cl2、25℃)δ3.78(s、3H)、4.42(dd、1H)、4.54(dd、1H)、5.78(m、2H)、6.11(m、1H)、6.29(bt、1H)、6.32(s、1H)、6.42(m、2H)、6.67(d、1H)、6.76(d、2H)、7.03(m、3H)、7.12(t、1H)、7.34(d、1H)、7.77(m、2H)、8.22(d、1H)、8.27(d、1H)、8.42(d、1H)。
【0085】
典型的な実施形態で本開示を例示し説明して来たが、本開示の思想からいかなる意味でも逸脱することなく様々な改変と置換をなすことができるので、示した詳細に限定されるものではない。また、本明細書に開示した本開示の別の改変及び等価物が通常の実験の範囲内で当業者には自明であろう。従って、かかる改変と等価物は全て特許請求の範囲に定義される思想と範囲内に入ると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I)で表される有機金属錯体。
【化1】

式中、
Mは、Rh、Ir、又はPtから選択される金属であり、
Yは、N又はOを表し、
1は、水素、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、C3〜C40芳香族基、C1〜C50脂肪族基、及びC3〜C50環式脂肪族基を表し、
2は、水素、C3〜C20芳香族基、C1〜C50脂肪族基、若しくはC3〜C50環式脂肪族基を表すか、又はR1及びR2は隣接するYと共に環、好ましくは5員若しくは6員の環を形成してもよく、
1は0〜3の値を有し、
2は0〜2の値を有し、
1は1以上の値を有し、
2は1以上の値を有し、但し、m1+m2は3であり、
次式の配位子は各々独立に同一でも異なっていてもよいシクロメタレート型配位子である。
【化2】

【請求項2】
YがNを表す、請求項1記載の錯体。
【請求項3】
1がC3〜C20アラルキル、C3〜C14アリール、C1〜C20アルキル、C1〜C20ハロアルキル、C1〜C20アルケニル、C1〜C20アルキニル、C1〜C20アルケニル、又はC3〜C7シクロアルキルを表す、請求項1記載の錯体。
【請求項4】
2がC3〜C20アラルキル、C3〜C14アリール、C1〜C20アルキル、C1〜C20ハロアルキル、C1〜C20アルケニル、C1〜C20アルキニル、C1〜C20アルケニル、又はC3〜C7シクロアルキルを表す、請求項1記載の錯体。
【請求項5】
2がC7〜C10アラルキル、又はC1〜C6アルキルを表す、請求項1記載の錯体。
【請求項6】
XがCHであり、R1がHを表し、R2がベンジルを表し、n1が0であり、n2が1である、請求項1記載の錯体。
【請求項7】
XがCHであり、R1がHを表し、R2がエチルを表し、n1が0であり、n2が2である、請求項1記載の錯体。
【請求項8】
MがIrである、請求項1記載の錯体。
【請求項9】
次式のシクロメタレート型配位子において、C及びNが各々独立に芳香族基中の環形成原子である、請求項1記載の錯体。
【化3】

【請求項10】
シクロメタレート型配位子において、CがC3〜C14芳香族基の環形成原子であり、Nが窒素を含有するC3〜C14芳香族基の環形成原子である、請求項9記載の錯体。
【請求項11】
次式(I)で表される有機金属錯体を1種以上含む組成物。
【化4】

式中、
Mは、Rh、Ir、又はPtから選択される金属であり、
Yは、N又はOを表し、
1は、水素、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、C3〜C40芳香族基、C1〜C50脂肪族基、及びC3〜C50環式脂肪族基を表し、
2は、水素、C3〜C20芳香族基、C1〜C50脂肪族基、若しくはC3〜C50環式脂肪族基を表すか、又はR1及びR2は隣接するYと共に環、好ましくは5員若しくは6員の環を形成してもよく、
1は0〜3の値を有し、
2は0〜2の値を有し、
1は1以上の値を有し、
2は1以上の値を有し、但し、m1+m2は3であり、
次式の配位子は各々独立に同一でも異なっていてもよいシクロメタレート型配位子である。
【化5】

【請求項12】
1種以上の電気活性ホスト材料及び次式(I)で表される1種以上の有機金属錯体を含む電子燐光性組成物。
【化6】

式中、
Mは、Rh、Ir、又はPtから選択される金属であり、
Yは、N又はOを表し、
1は、水素、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、C3〜C40芳香族基、C1〜C50脂肪族基、及びC3〜C50環式脂肪族基を表し、
2は、水素、C3〜C20芳香族基、C1〜C50脂肪族基、若しくはC3〜C50環式脂肪族基を表すか、又はR1及びR2は隣接するYと共に環、好ましくは5員若しくは6員の環を形成してもよく、
1は0〜3の値を有し、
2は0〜2の値を有し、
1は1以上の値を有し、
2は1以上の値を有し、但し、m1+m2は3であり、
次式の配位子は各々独立に同一でも異なっていてもよいシクロメタレート型配位子である。
【化7】

【請求項13】
アノード、
カソード、及び
アノードとカソードの間に位置する有機発光層
を含む有機発光デバイスであって、
有機発光層が次式(I)で表される有機金属錯体を含む、前記有機発光デバイス。
【化8】

式中、
Mは、Rh、Ir、又はPtから選択される金属であり、
Yは、N又はOを表し、
1は、水素、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、C3〜C40芳香族基、C1〜C50脂肪族基、及びC3〜C50環式脂肪族基を表し、
2は、水素、C3〜C20芳香族基、C1〜C50脂肪族基、若しくはC3〜C50環式脂肪族基を表すか、又はR1及びR2は隣接するYと共に環、好ましくは5員若しくは6員の環を形成してもよく、
1は0〜3の値を有し、
2は0〜2の値を有し、
1は1以上の値を有し、
2は1以上の値を有し、但し、m1+m2は3であり、
次式の配位子は各々独立に同一でも異なっていてもよいシクロメタレート型配位子である。
【化9】

【請求項14】
さらに、正孔注入層、電子注入層、及び電子輸送層から選択される1以上の層を含む、請求項13記載の有機発光デバイス。
【請求項15】
有機発光デバイスが発光性電気化学電池、光検出器、光伝導性セル、光スイッチ、光トランジスター、及び光電管からなる群から選択される、請求項13記載の有機発光デバイス。

【公表番号】特表2012−513392(P2012−513392A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542239(P2011−542239)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/067115
【国際公開番号】WO2010/074957
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】