説明

オリゴヌクレオチドまたはその機能的相同体、それらを含有する組成物およびB細胞腫瘍を治療するための方法

本発明は、配列番号1の配列を有するオリゴヌクレオチドまたはその機能的相同体、それらを含有する組成物、ならびにオリゴヌクレオチドまたはその機能的相同体あるいはオリゴヌクレオチドを含有する組成物の使用によりB細胞腫瘍を治療する方法を提供する。オリゴヌクレオチドは、B細胞腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、B細胞腫瘍細胞上でCD40をアップレギュレートし、且つB細胞腫瘍細胞からのIL−10の産生を刺激する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配列番号1に示される配列を有するオリゴヌクレオチド、またはその機能的相同体、それらを含有する組成物、ならびにオリゴヌクレオチドを用いてB細胞腫瘍細胞のアポトーシスを誘発し、B細胞腫瘍細胞上でCD40をアップレギュレートし、かつB細胞腫瘍細胞を刺激してIL−10を産生させることによってB細胞腫瘍を治療するための方法を提供する。オリゴヌクレオチドまたはその機能的相同体を単独で使用するかまたは化学療法剤、免疫療法剤および放射線と併用することで、B細胞腫瘍の治療が可能である。
【背景技術】
【0002】
リンパ性悪性疾患は、WHO分類系(American Journal of Surgical Pathology, 1997, 21(1): 114-121)に基づき、B細胞腫瘍、T細胞/ナチュラルキラー(NK)細胞腫瘍およびホジキンリンパ腫という3つの主要なクラスに分類される。
【0003】
B細胞腫瘍は、前駆B細胞腫瘍および末梢B細胞腫瘍という2つのグループにさらに分かれる。前駆B細胞腫瘍は、前駆体B−急性リンパ芽球性白血病(B細胞急性リンパ芽球性白血病、B−ALL)/リンパ芽球性リンパ腫(LBL)を含む。末梢B細胞腫瘍は、B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)、小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫/免疫細胞腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、皮膚の濾胞性リンパ腫、MALT型節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫(+/−単球様B細胞)、脾性辺縁帯リンパ腫(+/−絨毛リンパ球)、ヘアリー細胞白血病、形質細胞腫/形質細胞骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫およびバーキットリンパ腫を含む。
【0004】
B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)およびB細胞急性リンパ芽球性/リンパ性白血病(B−ALL)は、B細胞白血病の2つのタイプである。B−CLL細胞は、CD19、CD5およびCD23を発現する(Nicholas Chiorazzi, M. D., et al. N Engl J Med 2005;352:804-15)。B−ALL細胞は、CD19+CD10+マーカーを発現する。
【0005】
小リンパ球性リンパ腫はB細胞腫瘍である。小リンパ球性リンパ腫におけるB細胞のモノクローナル母集団は、CD19、CD5およびCD23を発現する(Catherine Thieblemont,et al. Blood. 2004; 103:2727-2737)。
【0006】
現行の治療オプションには、診断されたB細胞腫瘍に応じて、化学療法、放射線療法および免疫療法がある。
【0007】
正常Bリンパ球および樹状細胞の細胞表面上に発現されるCD40は、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリーのメンバーである。Tリンパ球上で発現されるCD40L(CD154)は、腫瘍壊死因子ファミリーのメンバーである(Castle BE, et al. J Immunol 1993; 151 : 1777-1788)。CD40LとCD40の相互作用は、Bリンパ球、樹状細胞および単球の増殖、分化および抗原提示を促進する(Ranheim EA, et al. J Exp Med 1993;177: 925-935; Yellin MJ et al. J Immunol 1994; 153: 666-674; Banchereau J, et al. Annu Rev Immunol 1994; 12: 881-922; M.von Bergwelt-Baildon MS, et al. Blood 2002; 99: 3319-3325)。
【0008】
CD40はB細胞腫瘍細胞上でも発現する。CD40の発現を高めることでB細胞腫瘍細胞のアポトーシスが促進されることが実証されている(Peter Chu, et al. PNAS, March 19, 2002, vol. 99, no: 6 3854-3859; Frank Dicker, et al. BLOOD, 15 April 2005 Volume 105, Number 8: 3193-3198)。in vitroとin vivoの双方での実験で、CD40の刺激およびアップレギュレーションによりB細胞腫瘍細胞の成長阻害が誘発されることが示された(Funakoshi et al., Blood 83: 2787-2794,1994; Murphy et al., Blood 86: 1946-1953 ,1995; Eliopoulos, A. G, et al. 1996. Oncogene 13:2243; Hirano, A.,et al. 1999. Blood 93:2999; Tong, A. W., M et al. 2001.Clin. Cancer Res. 7:691)。
【0009】
B細胞腫瘍細胞上でのCD40発現の促進が、B細胞腫瘍細胞の抗原性を増強し、その結果、同細胞に特異的な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の産生を促進することが報告された。CTLはB細胞腫瘍細胞を効率的に殺滅しうる(Dilloo D, et al. Blood. 1997;90: 1927-1933; Kato K, et al. J Clin Invest. 1998;101 :1133-1141 ; Wierda WG, et al. Blood. 2000;96:2917-2924 ; Takahashi S, et al. Hum Gene Ther. 2001;12:659-670; Takahashi S, et al. Cancer Gene Ther.2001 ;8:378-387)。CD40Lの存在下で、CD40を発現するB細胞慢性リンパ性白血病細胞は、CD4細胞傷害性Tリンパ球によって殺滅されうる(Frank Dicker, et al. Blood, 15 April 2005 Vo1 105, Num 8: 3193-3198)。バーキットリンパ腫の細胞上におけるD40LとCD40との相互作用により、細胞における腫瘍抗原の特異的CTLに対する提示の促進が可能となる(Khanna, R.et al. 1997. J. Immunol. 159:5782)。in vivo実験および臨床試験では、CD40の活性化によりB細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)細胞の免疫原性が増強され、その結果、同細胞に特異的なCTLの産生が誘導されうることも実証された(Kato, K.,et al. 1998.J. Clin. Invest. 101 :1133; Wierda, W. G.,et al. 2000. Blood 96: 2917)。
【0010】
これらのデータを併せると、B細胞腫瘍細胞上でのCD40の発現を促進することでB細胞腫瘍に対する抗腫瘍免疫性が刺激されうることが示唆される。抗腫瘍免疫性は、
1.B細胞腫瘍細胞のアポトーシスの促進、
2.B細胞腫瘍細胞の成長の阻害、
3.B細胞腫瘍細胞の免疫原性の増強と、それによる同細胞に特異的なCTLの産生促進
を含むがこれらに限定されない。
【0011】
インターロイキン−10(IL−10)は、特定のT細胞、単球、マクロファージ、およびB細胞、T細胞またはNK細胞から発生した新生細胞の一部によって産生されるホモ二量体サイトカインである(Kitabayashi et at., 1995; Masood et al., 1995; Sjoberg et al., 1996; Beatty et al., 1997; Boulland et al., 1998; Jones et al., 1999)。IL−10活性は、それに特異的な細胞表面受容体によって仲介される。受容体は、抗原提示細胞、リンパ球およびB細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)細胞の上に発現する。外因性IL−10の添加により患者から新たに単離されたB−CLL細胞の増殖が阻害されることが見出された(Jesper Jurlander, Chun-Fai Lai, Jimmy Tan, et al. Characterization of interleukin-10 receptor expression on B-cell chronic lymphocytic leukemia cells. Blood, Vol 89, No 11 (June 1), 1997: pp 4146-4152)。IL−10は、B−CLL細胞の増殖を阻害し、且つB−CLL細胞のアポトーシスを促進することも報告された(Anne-Catherine Fluckiger, lsabelle Durand, and Jacques Banchereau. lnterleukin 10 Induces Apoptotic Cell Death of B-Chronic Lymphocytic Leukemia Cells. J. Exp. Med. Volume 179 January 1994 91-99)。IL−10の免疫刺激性の抗癌特性についてはレビューで論じられており、それからは腫瘍微環境内でのIL−10の過剰発現が癌の免疫拒絶を触媒しうることが推定される(Simone Mocellin, Francesco M. Marincola and Howard A. Young. Interleukin-10 and the immune response against cancer: a counterpoint. Journal of Leukocyte Biology. 2005; 78:1043-1051)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明では、発明者らは、オリゴヌクレオチドおよび本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによるB細胞腫瘍を治療するための方法を提供する。オリゴヌクレオチドは、B細胞腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、B細胞腫瘍細胞上でのCD40の発現を促進し、且つB細胞腫瘍細胞におけるIL−10の産生を刺激し、すべてがB細胞腫瘍の治療に寄与する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の実施形態では、本発明は、5’−TCGTCGACGTCGTTCGTTCTC−3’(オリゴ2として設計または配列番号1として指定)の配列を有するオリゴヌクレオチドまたはその機能的相同体を提供する。オリゴヌクレオチドまたはその機能的相同体は、部分的または完全なホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾であるリン酸塩骨格修飾を有しうる。オリゴヌクレオチドまたはその機能的相同体は、化学修飾を有しうるかまたは微量塩基との置換を有しうる。オリゴヌクレオチドまたはその機能的相同体は、任意の他のオリゴヌクレオチドまたはDNA断片の機能的部分でありうるかあるいはプラスミド、細菌ベクター、ウイルスベクターまたはDNAワクチンにそれぞれクローニングされうる。配列番号1の配列を有するオリゴヌクレオチドは、1つもしくは複数の塩基(好ましくは1〜10個の塩基)をその各末端に付加するかまたはオリゴヌクレオチド内で塩基を変化させることにより修飾されうる。当業者は、本発明の目的を達成するために、当該技術分野で周知の内容および本発明における教示内容に基づいて、配列番号1の配列を有するオリゴヌクレオチドまたはその機能的相同体、配列(配列番号1)を有するオリゴヌクレオチドの1つもしくは複数のコピーを一本鎖または二本鎖のDNA断片の使用することを決定することができる。
【0014】
第2の実施形態では、本発明は、被験者において本発明のオリゴヌクレオチドまたはその機能的相同体またはそれらを含有する組成物を用いて、B細胞腫瘍を治療する方法を提供する。被験者はヒトまたは動物である。B細胞腫瘍は、B細胞白血病、B細胞リンパ腫および骨髄腫を含むがこれらに限定されない。
【0015】
第3の実施形態では、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドまたはその機能的相同体またはそれらを含有する組成物を使用して、B細胞腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することにより、B細胞腫瘍を治療する方法を提供する。
【0016】
第4の実施形態では、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドまたはその機能的相同体またはそれらを含有する組成物を使用して、B細胞腫瘍細胞上でCD40をアップレギュレートすることにより、B細胞腫瘍を治療する方法を提供する。
【0017】
第5の実施形態では、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドまたはその機能的相同体またはそれらを含有する組成物を使用して、B細胞腫瘍細胞におけるIL−10の産生を刺激することにより、B細胞腫瘍を治療する方法を提供する。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、本発明における治療有効量のオリゴヌクレオチドまたはその機能的相同体を単独で含有する、あるいは1種もしくは複数種の医薬的に許容できる担体中に含有する、または当該担体とともに含有する組成物を提供する。組成物を、経腸投与、非経口投与および局所投与するかまたは吸入投与してもよい。
【0019】
さらに別の実施形態では、本発明は、B細胞腫瘍を治療する方法であって、治療有効量の本発明のオリゴヌクレオチドまたはその機能的相同体あるいはそれらを含有する組成物、および化学療法剤、免疫療法剤および放射線療法で使用される作用物質を含む抗−B細胞腫瘍剤の少なくとも1種を含有する組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
定義
本発明では、以下の用語は下記の意味を有するものとする。
【0021】
「オリゴヌクレオチド」は、複数のヌクレオチド(すなわち、リン酸基および交換可能な有機塩基に連結される糖(例えばデオキシリボース)を有する分子)を意味する。シトシン(C)、チミン(T)、アデニン(A)およびグアニン(G)という4種の有機塩基が存在する。オリゴヌクレオチドを、市販されている自動オリゴヌクレオチドシンセサイザで合成するか、または既知の技術を用いて既存の核酸配列から調製してもよい。
【0022】
オリゴヌクレオチドの「骨格修飾」は、オリゴヌクレオチドがホスホロチオエートで修飾されたリン酸塩骨格(すなわちリン酸塩の酸素の少なくとも1つが硫黄と置換される)または他の修飾骨格を有することを意味するものとする。
【0023】
オリゴヌクレオチドの「化学修飾」は、ヌクレオチドの活性基を利用するかまたはヌクレオチド類似体を生成することによる修飾を意味するものとする。修飾はオリゴヌクレオチドの合成の間または合成後に生じうる。合成の間、修飾塩基(チミジン類似体を含むがこれに限定されない)が内部にまたは5’末端側に取り込まれうる。合成後、(アミノ修飾因子、3’もしくは5’水酸基、またはリン酸基を介して)活性基を用いて修飾がなされうる。
【0024】
「B細胞腫瘍」は、Bリンパ球系の細胞の異常な増殖から発生した疾患を意味するものとする。B細胞腫瘍は、B細胞白血病、B細胞リンパ腫および骨髄腫(形質細胞腫/形質細胞骨髄腫)に分類されうる。B細胞白血病は、B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)、前駆B−急性リンパ芽球性白血病(B細胞急性リンパ性白血病、B−ALL)、B細胞前リンパ性白血病およびヘアリー細胞白血病を含む。B細胞リンパ腫は、小リンパ球性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫/免疫細胞腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、皮膚濾胞性リンパ腫、MALT型節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫(+/−単球様B細胞)、脾性辺縁帯リンパ腫(+/−絨毛リンパ球)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫およびバーキットリンパ腫を含む。
【0025】
「被験者」は、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、マウスおよびラットを含む(がこれらに限定されない)哺乳動物を意味するものとする。本発明のオリゴヌクレオチドは、B細胞腫瘍を有する被験者に投与されうる。
【0026】
「抗−B細胞腫瘍剤」は、被験者のB細胞腫瘍を治療するために用いられる作用物質を意味するものとする。作用物質は、本発明のオリゴヌクレオチド、化学療法剤、免疫療法剤および放射線療法で使用される作用物質を含む。本発明のオリゴヌクレオチドを、1種もしくは複数種の他の抗−B細胞腫瘍剤の投与に先立ち、投与と同時にまたは投与後に投与することで、B細胞腫瘍の治療において相乗効果が得られる可能性がある。
【0027】
「化学療法剤」は、本発明のオリゴヌクレオチドと併用してB細胞腫瘍を治療する化学療法剤を意味するものとする。B細胞腫瘍の治療においては、本発明のオリゴヌクレオチドを1種もしくは複数種の化学療法剤と併用してもよい。化学療法剤は、シクロホスファミドまたはクロラムブシル、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、プロカルバジン、メトトレキサート、プレドニゾン、アントラサイクリン、L−アスパラギナーゼ、プリン類似体(例えば、リン酸フルダラビン、2−クロロデオキシアデノシンおよびペントスタチン)、シトシン、アラビノシド、シスプラチン、エトポシドならびにイホスファミドなどのアルキル化剤を含むがこれらに限定されない。化学療法においては、本発明のオリゴヌクレオチドをさらに1種もしくは複数種の化学療法剤と併用してもよい。併用剤として、CVP(シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾン)、CHOP(CVPおよビーズキソルビシン)、C−MOPP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンおよびプロカルバジン)、CAP−BOP(CHOPに加え、プロカルバジンおよびブレオマイシン)、m−BACOD(CHOPに加え、メトトレキサート、ブレオマイシンおよびロイコボリン)、ProMACE−MOPP(プレドニゾン、メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシドおよびロイコボリンに加え、標準MOPP)、ProMACE−CytaBOM(プレドニゾン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、シタラビン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、メトトレキサートおよびロイコボリン)、MACOP−B(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、固定用量のプレドニゾン、ブレオマイシンおよびロイコボリン)、IMVP−16(イホスファミド、メトトレキサートおよびエトポシド)、MIME(メチル−gag、イホスファミド、メトトレキサートおよびエトポシド)、DHAP(デキサメタゾン、高用量のシタラビンおよびシスプラチン)、ESHAP(エトポシド、メチルプレドニゾロン、HDシタラビン、シスプラチン)、CEPP(B)(シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、プレドニゾンおよびブレオマイシン)、CAMP(ロムスチン、ミトキサントロン、シタラビンおよびプレドニゾン)、CHOPに加えてブレオマイシン、メトトレキサート、プロカルバジン、窒素マスタード、シトシンアラビノシドおよびエトポシド、MOPP(メクロレタミン(窒素マスタード)、ビンクリスチン(オンコビン)、プロカルバジンおよびプレドニゾン)、ABVD(例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチンおよびダカルバジン)、ChIVPP(クロラムブシル、ビンブラスチン、プロカルバジンおよびプレドニゾン)、CABS(ロムスチン、ドキソルビシン、ブレオマイシンおよびストレプトゾトシン)、MOPPに加えてABVD、MOPPに加えてABV(ドキソルビシン、ブレオマイシンおよびビンブラスチン)またはBCVPP(カルムスチン、シクロホスファミド、ビンブラスチン、プロカルバジンおよびプレドニゾン)、ならびにCAP(シクロホスファミド、ドキソルビシンおよびプレドニゾン)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0028】
「免疫療法剤」は、本発明のオリゴヌクレオチドと併用してB細胞腫瘍を治療する免疫療法剤を意味するものとする。B細胞腫瘍の治療においては、本発明のオリゴヌクレオチドを1種もしくは複数種の免疫療法剤と併用してもよい。免疫療法剤には抗−CD20抗体が含まれるがこれに限定されない。CD20抗体は、B細胞腫瘍細胞の細胞表面上でCD20タンパク質と特異的に反応する免疫グロブリンおよびその断片を含む。CD20抗体は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体ならびにヒト化抗体でありうる。「CD20」はB細胞膜タンパク質であり(Tedder et al., Immunology Today 15: 450-454 (1994))、正常B細胞および腫瘍B細胞の双方の上で発現される(John C. Byrd,et al. J Clin Oncol 2001 ; 19: 2165-2170; Huhn D, et al. Blood 2001, 98: 1326-1331)。
【0029】
「医薬的に許容できる担体」は、本発明のオリゴヌクレオチドを被験者に投与するのに適する、1種もしくは複数種の固体または液体充填剤、希釈剤またはカプセル化物質を意味する。担体は、有機物、無機物、天然物または合成物でありうる。担体は、あらゆる溶液、希釈剤、溶媒、分散媒、リポソーム、エマルジョン、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、ならびに本発明のオリゴヌクレオチドの投与に適する任意の他の担体を含み、それらの使用は当該技術分野で周知である。
【0030】
本発明のオリゴヌクレオチドの「治療有効量」は、被験者におけるB細胞腫瘍の治療において所望の結果を得るのに用いられる用量を示すものとする。用量は、当業者に周知の標準的な技術によって決定可能であり、かつ被験者の大きさまたは/および健康全般あるいは疾患の重篤度を含む(がこれらに限定されない)因子に応じて変化しうる。本発明のオリゴヌクレオチドの導入は、単回の治療として行っても、一連の複数回の治療にわたって行ってもよい。本発明のオリゴヌクレオチドにおける投与の用量は、1投与当たり約1μg〜100mgの範囲である。しかし、B細胞腫瘍の治療における用量は、上記用量よりも10〜1,000倍高い範囲内で使用されうる。投与計画は、最適な治療効果をもたらすように当業者により調節されうる。
【0031】
本発明のオリゴヌクレオチドを投与する「経路」は、経腸投与、非経口投与および局所投与または吸入を意味するものとする。本明細書で用いられる用語「経腸」は、経口投与、胃内投与、腸内投与および直腸投与を含む。用語「非経口」は、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与または膣投与を含む。用語「局所」は、オリゴヌクレオチドの表皮、口腔ならびに耳、目および鼻への外部からの適用を意味する。
【0032】
「医薬組成物」という用語は、医薬的に許容できる担体を伴うかまたは伴わない、治療有効量のオリゴヌクレオチドを含有する組成物を意味するものとする。組成物は、水溶液または食塩水、粒子、エアロゾル、ペレット、顆粒、粉末、タブレット、被覆タブレット、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ、エマルジョン、懸濁液、クリーム、ドロップおよび種々の薬剤送達系における使用に適する他の医薬組成物を含むがこれらに限定されない。組成物は、注射、経口、口腔、直腸および膣使用、吸入ならびにデポー剤における適用に適する。組成物は、すべての場合に製造および保存の条件下で無菌かつ安定であり、微生物汚染に対して保護されなければならない。注射においては、組成物は、注射可能な溶液または分散液の即時調製のための水溶液または分散液および粉末を含むことになる。本発明における「粉末」は、オリゴヌクレオチドを含有する微細分散した固体粒子を含有する組成物を示す。粉末は、使用前に他の医薬的に許容できる担体(例えば、水、PBS、食塩水および他の医薬的に許容できる緩衝液)と調合されうる。オリゴヌクレオチドを1種もしくは複数種の適切な溶媒および他の必要とされる成分に混和させることで溶液を調製してもよい。オリゴヌクレオチドを分散媒(例えば、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびオイル)および他の必要とされる成分を含有する賦形剤に混和させることで分散液を調製してもよい。経口投与においては、組成物を食用担体と調合することで、タブレット、ピル、ドラジェ、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などが形成されることになる。口腔投与においては、組成物は、従来式のタブレットまたはロゼンジとなる。吸入においては、組成物は、加圧パックからのエアロゾルスプレーまたはネブライザーまたは乾燥粉末となり、当業者により選択可能である。オリゴヌクレオチドはまた、直腸用または膣用およびデポー用の医薬的に許容できる組成物として調合されうる。組成物中においてオリゴヌクレオチドは、単独使用してもよく、あるいは化学療法剤、免疫療法剤、および標的細胞の特異的な受容体もしくは分子によって認識されるリガンドを含む(がこれらに限定されない)1種もしくは複数種の他の作用物質と併用してもよい。別の作用物質と併用するオリゴヌクレオチドは、別々の組成物としてもよく、(1)オリゴヌクレオチドが第2の作用物質と投与前に混合される、(2)オリゴヌクレオチドおよび第2の作用物質が異なる時刻に被験者に投与される、(3)オリゴヌクレオチドおよび第2の作用物質が被験者の異なる部位に投与されるといったような方法で使用可能である。さらに、組成物は、本発明のオリゴヌクレオチドの配列を有する、プラスミド、細菌ベクター、ウイルスベクターおよび核酸ワクチンを含有しうる。
【実施例】
【0033】
以下の実施例は、例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものとしてみなされるべきではない。本明細書においては、例えば合理的な当業者が着想するような理にかなった変形を本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。
【0034】
実施例1:オリゴヌクレオチドの合成
5’−TCGTCGACGTCGTTCGTTCTC−3’の配列(オリゴ2として設計、配列番号1)を有するオリゴヌクレオチドが設計および合成されている。
【0035】
オリゴ2の機能を分析するため、5’−tcgtcgttttgtcgttttgtcgtt−3’(配列番号2)の配列を有する2006、および5’−gggggacgatcgtcgggggg−3’(配列番号3)の配列を有する2216という2つの対照オリゴヌクレオチドも合成した。3つのオリゴヌクレオチドは、サンゴン・バイオテック・カンパニー(Sangon Biotech Company)(上海、中国)にて合成し、リムラス(Limulus)アメーバ様細胞分解産物アッセイ(アソシエイツ・オブ・ケープ・コッド(Associates of Cape Cod,Inc))の利用によりエンドトキシンについて試験し、発熱物質を含有しない試薬中で操作した。2006(J Immunol 2000: 164: 1617)は、正常B細胞を強く活性化させるよく研究されたオリゴヌクレオチドである。2216(Eur J Immunol 2001; 31:2154)は、形質細胞様樹状細胞内で大量のタイプIインターフェロンを誘導するもう一つのよく研究されたオリゴヌクレオチドである。
【0036】
オリゴヌクレオチドを合成するための方法は当業者に周知であり、特に固相合成が一般に用いられている。具体的には、合成のプロセスにおいて用いられる固体支持体は多孔質ガラス(CPG)ビーズである。このビーズは表面に孔およびチャネルを有し、それらの内部に保護されたヌクレオチドが結合する。オリゴヌクレオチド合成は、3’−末端ヌクレオチドで開始し、5’−末端ヌクレオチドが結合するまで繰り返される5つのステップからなる一連のサイクルを通して進行する。これらのステップは、脱保護、活性化、共役、キャッピングおよび安定化である。
【0037】
ステップ1:脱保護
CPG(多孔質ガラス)ビーズに付着した保護ヌクレオシド内の保護基が、反応性の5’−水酸基を残してトリクロロ酢酸(TCA)によって除去される。
【0038】
ステップ2:活性化
このステップでは、テトラゾールが、テトラゾリルホスホラミダイト中間体を形成する共役ホスホラミダイトヌクレオシドを攻撃する。
【0039】
ステップ3:共役
テトラゾリルホスホラミダイト中間体がレシピエントの水酸基と反応し、5’から3’への連結が形成される。テトラゾールが再構成され、プロセスが継続する。
【0040】
ステップ4:キャッピング
このステップでは、無水酢酸およびN−メチルイミダゾールからなるアセチル化試薬を用いることで、オリゴヌクレオチドのその5’−末端上の反応性水酸基が遮断され、共役できない事態が回避される。
【0041】
ステップ5:安定化
一旦キャッピングステップが完了すると、サイクルにおける最終ステップは、伸長するオリゴヌクレオチド鎖と直前に付加された塩基の間のリン酸塩連結を安定化させる酸化ステップである。このステップを、テトラヒドロフラン(THF)および水の中で弱酸化剤のヨウ素の存在下で行う。
【0042】
この最終ステップ後、配列内の各ヌクレオチドについてサイクルを繰り返す。合成の完了後、一本鎖DNA分子をHAP、PAGE、HPLC、C18およびOPCなどの方法によって精製する。
【0043】
実施例2 オリゴ2により誘導されるヒトB−CLL細胞のアポトーシス
1.ヒトB−CLL細胞の調製
未治療のB−CLL(病理学的に同定された)患者(ザ・ファースト・ホスピタル(The First Hospital)、ジリン大学(Jilin University)、中国)由来の血液試料を、承認された書面でのインフォームドコンセントの取得後に採取した。末梢血単核球(PBMC)をフィコール・パック(ファルマシア(Pharmacia))密度勾配遠心分離により単離した。PBMC内のCD5+CD19+CD23+B−CLL細胞をB細胞単離キット(ミルテニー・バイオテク(Miltenyi Biotec)、ベルギッシュグラートバハ(Bergisch Gladbach)、ドイツ)を用いてCD5+CD19+CD23+細胞(B−CLL細胞)が95%を超えるように精製した。細胞調製をミルテニー・バイオテクの使用説明書に従って行った。
【0044】
2.オリゴ2により誘導されるヒトB−CLL細胞のアポトーシス
B−CLL細胞を、オリゴ2、2006または2216(48ウェルプレートで、10細胞/ウェルとし、10%ヒトAB血清RPMI1640培地(ハイクローン(HyClone))内で最終濃度3μg/mlとした)とともにインキュベートした。オリゴ2、2006または2216を無血清RPMI1640培地(ハイクローン)で希釈した。同容量の希釈物(無血清RPMI1640培地(ハイクローン))を対照(培地)として用いた。
【0045】
インキュベーションの3、5および7日後、細胞を計数し、テトラメチル−ローダミンエチルエステル(TMRE)(モレキュラー・プローブス(Molecular Probes lnc))(Lena Thyrell, et al. The Journal of Biological Chemistry Vol. 279, No. 23, Issue of June 4, pp. 24152-24162, 2004)で10分間染色した。TMRE陽性(生存)およびTMRE陰性(アポトーシス)のB−CLL細胞をフローサイトメトリー(B.D.FACSAria)によって測定した。生存B−CLL細胞数は、全細胞数に、TMRE陽性細胞のパーセンテージを各時点で掛けることにより計算した。B−CLL患者由来の10種の血液試料を用いて実験を繰り返し、平均した結果(n=10)は、オリゴ2がB−CLL細胞のアポトーシスを有意に誘導し、オリゴ2によって誘導される作用が2006によって誘導される作用と比べて約2倍強いことを示した(表1)。さらに、B−CLL細胞のアポトーシスに対するオリゴ2および2006の用量作用もまた観察された。結果は、0.1〜10μg/mlの範囲の様々な用量のオリゴ2がB−CLL細胞のアポトーシスを明らかに誘導することを示した(図1)。比較によると、1μg/mlの用量でのオリゴ2のアポトーシス誘導作用は、2006のそれと比べて約3倍強い。総合すると、これらの結果は、オリゴ2を用いることでB−CLL細胞のアポトーシスの誘導によりB−CLLが治療されうることを示している。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例3 オリゴ2によるヒトB−CLL細胞上でのCD40のアップレギュレーション
1.ヒトB−CLL細胞の調製
実施例2に記載の手順を用い、ヒトB−CLL細胞をB−CLL患者から単離した。
【0048】
2.オリゴ2によるヒトB−CLL細胞上でのCD40のアップレギュレーション
B−CLL細胞を、オリゴ2、2006または2216(48ウェルプレートで、10細胞/ウェルとし、10%ヒトAB血清RPMI1640培地(ハイクローン(HyClone))内で最終濃度3μg/mlとした)とともにインキュベートした。オリゴ2、2006または2216を無血清RPMI1640培地(ハイクローン)で希釈した。同容量の希釈物(無血清RPMI1640培地(ハイクローン))を対照(培地)として用いた。
【0049】
インキュベーションの7日後、細胞を計数し、FITC−CD40抗体(ベクトン・ディッキンソン(BectonDickinson))(モレキュラー・プローブス)(Lena Thyrell, et al. The Journal of Biological Chemistry Vol. 279, No. 23, Issue of June 4, pp. 24152-24162, 2004)で10分間染色した。CD40抗体で染色したB−CLL細胞をフローサイトメトリー(B.D.FACS Aria)によって測定した。結果(図2)は、オリゴ2がB−CLL細胞上でのCD40の発現を有意にアップレギュレートすることを示したものであり、これはオリゴ2を使用することで細胞上でのCD40のアップレギュレーションによりB−CLLが治療されうることを示す。CD40のアップレギュレーションは、B−CLL細胞のアポトーシスを促進し、B−CLL細胞の成長阻害を誘発し、かつB−CLL細胞における免疫原性を高めることにより、B−CLL細胞に特異的なCTLの産生を刺激する。B−CLL患者由来の少なくとも10種の血液試料を用いて実験を繰り返し、同様の結果が得られた。
【0050】
実施例4 オリゴ2により誘導されるヒト小リンパ球性リンパ腫細胞のアポトーシス
1.ヒト小リンパ球性リンパ腫細胞の調製
承認された書面でのインフォームドコンセントの取得後、小リンパ球性リンパ腫細胞を、(病理学的に同定された)小リンパ球性リンパ腫を有する患者(ザ・ファースト・ホスピタル、ジリン大学、中国)由来のリンパ節の生検組織から単離した。生検組織を粗表面のスライドグラスで磨り潰し、6cmの培養プレート内の10%のヒトAB血清RPMI1640培地(ハイクローン)5mlに細胞を放出した。放出された細胞を、ステンレス鋼メッシュを通して濾過し、15mlの無血清RPMI1640培地を有する50mlのコニカルチューブ内に回収した。チューブを300×gで10分間遠心し、次いで上清を廃棄した。CD5+CD19+CD23+小リンパ球性リンパ腫細胞を、B細胞単離キット(ミルテニー・バイオテク、ベルギッシュグラートバハ、ドイツ)を用いて、CD5+CD19+CD23+細胞(小リンパ球性リンパ腫細胞)が95%を超えるように精製した。細胞調製をミルテニー・バイオテクの使用説明書に従って行った。
【0051】
2.オリゴ2により誘導される小リンパ球性リンパ腫細胞のアポトーシス
小リンパ球性リンパ腫細胞をオリゴ2、2006または2216(48ウェルプレートで、10細胞/ウェルとし、10%ヒトAB血清RPMI1640培地(ハイクローン)内で、最終濃度を3μg/mlとした)とともにインキュベートした。オリゴ2、2006または2216を無血清RPMI1640培地(ハイクローン)で希釈した。同量の希釈物(無血清RPMI1640培地(ハイクローン))を対照(培地)として用いた。
【0052】
インキュベーションの3、5および7日後、細胞を計数し、テトラメチル−ローダミンエチルエステル(TMRE)(モレキュラー・プローブス)(Lena Thyrell, et al. THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY Vol. 279, No. 23, Issue of June 4, pp. 24152-24162, 2004)で10分間染色した。TMRE陽性(生存)およびTMRE陰性(アポトーシス)の小リンパ球性リンパ腫細胞をフローサイトメトリー(B.D.FACS Aria)によって測定した。生存小リンパ球性リンパ腫細胞数は、全細胞数にTMRE陽性細胞のパーセンテージを各時点で掛けることにより計算した。小リンパ球性リンパ腫を有する患者由来の5種の試料を用いて実験を繰り返し、平均した結果(n=5)は、オリゴ2が小リンパ球性リンパ腫細胞のアポトーシスを有意に誘導することを示したものであり(表2)、これはオリゴ2を使用し、小リンパ球性リンパ腫細胞のアポトーシスを誘導することで小リンパ球性リンパ腫が治療されうることを示す。
【0053】
【表2】

【0054】
実施例5 オリゴ2により誘発される小リンパ球性リンパ腫細胞のCD40のアップレギュレーション
1.ヒト小リンパ球性リンパ腫細胞の調製
実施例4に記載の手順を用い、ヒト小リンパ球性リンパ腫細胞を患者から単離した。
【0055】
2.オリゴ2により誘導される小リンパ球性リンパ腫細胞のCD40のアップレギュレート
小リンパ球性リンパ腫細胞をオリゴ2、2006または2216(48ウェルプレートで、10細胞/ウェルとし、10%ヒトAB血清RPMI1640培地(ハイクローン(HyClone))内で最終濃度3μg/mlとした)とともにインキュベートした。オリゴ2、2006または2216を無血清RPMI1640培地(ハイクローン)で希釈した。同容量の希釈物(無血清RPMI1640培地(ハイクローン))を対照(培地)として用いた。
【0056】
インキュベーションの7日後、細胞を計数し、FITC−CD40抗体(ベクトン・ディッキンソン)(モレキュラー・プローブス)(Lena Thyrell, et al. The Journal of Biological Chemistry Vol. 279, No. 23, Issue of June 4, pp. 24152-24162, 2004)で10分間染色した。CD40抗体で染色した小リンパ球性リンパ腫細胞をフローサイトメトリー(B.D.FACS Aria)によって測定した。結果(図3)は、オリゴ2が小リンパ球性リンパ腫細胞上でのCD40の発現を有意にアップレギュレートすることを示したものであり、これはオリゴ2を用いることで細胞上でのCD40のアップレギュレーションにより小リンパ球性リンパ腫が治療されうることを示す。CD40のアップレギュレーションは、小リンパ球性リンパ腫細胞のアポトーシスを促進し、小リンパ球性リンパ腫細胞の成長阻害を誘導し、かつ小リンパ球性リンパ腫細胞における免疫原性を高めることにより、同細胞に特異的なCTLの産生を刺激する。5種の試料を用いて実験を繰り返し、同様の結果が得られた。
【0057】
実施例6 オリゴ2により誘導されるヒトB細胞急性リンパ芽球性/リンパ性白血病(B−ALL)細胞のアポトーシス
1.ヒトB−ALL細胞の調製
未治療のB−ALL(病理学的に同定された)患者(ザ・ファースト・ホスピタル、ジリン大学、中国)由来の血液試料を、承認された書面でのインフォームドコンセントの取得後、採取した。PBMCをフィコール・パック(ファルマシア)密度勾配遠心分離により単離した。PBMC内のCD19+CD10+B−ALL細胞を、B細胞単離キット(ミルテニー・バイオテク、ベルギッシュグラートバハ、ドイツ)を用いて、CD19+CD10+細胞(B−ALL細胞)が95%を超えるように精製した。細胞調製をミルテニー・バイオテクの使用説明書に従って行った。
【0058】
2.オリゴ2により誘導されるB−ALL細胞のアポトーシス
B−ALL細胞を、オリゴ2または2216(48ウェルプレートで、10細胞/ウェルとし、10%ヒトAB血清RPMI1640培地(ハイクローン)内で、最終濃度3μg/mlとして)とともにインキュベートした。オリゴ2または2216を無血清RPMI1640培地(ハイクローン)で希釈した。同量の希釈物(無血清RPMI1640培地(ハイクローン))を対照(培地)として用いた。
【0059】
インキュベーションの3、5および7日後、細胞を計数し、テトラメチル−ローダミンエチルエステル(TMRE)(モレキュラー・プローブス)(Lena Thyrell, et al. The Journal of Biological Chemistry Vol. 279, No. 23, Issue of June 4, pp. 24152-24162, 2004)で10分間染色した。TMRE陽性(生存)およびTMRE陰性(アポトーシス)のB−ALL細胞をフローサイトメトリー(B.D.FACS Aria)によって測定した。生存B−ALL細胞数を、全細胞数とTMRE陽性細胞百分率を各時点で掛けることにより計算した。結果は、オリゴ2がB−ALL細胞のアポトーシスを有意に誘導することを示したものであり(図4)、これはオリゴ2を用いることでB−ALL細胞のアポトーシスの誘導によりB−ALLが治療されうることを示す。B−ALL患者由来の10種の血液試料を用いて実験を繰り返し、同様の結果が得られた。
【0060】
実施例7 オリゴ2によるB−ALL細胞上でのCD40のアップレギュレーション
1.ヒトB−ALL細胞の調製
実施例6に記載の手順を用い、ヒトB−ALL細胞を患者の血液試料から調製した。
【0061】
B−ALL細胞を、オリゴ2または2216(48ウェルプレートで、10細胞/ウェルとし、10%ヒトAB血清RPMI1640培地(ハイクローン)内で最終濃度3μg/mlとした)とともにインキュベートした。オリゴ2または2216を無血清RPMI1640培地(ハイクローン)で希釈した。同量の希釈物(無血清RPMI1640培地(ハイクローン))を対照(培地)として用いた。
【0062】
インキュベーションの3、5、7日後、細胞を計数し、FITC−CD40抗体(ベクトン・ディッキンソン)(モレキュラー・プローブス)(Lena Thyrell, et al. The Journal of Biological Chemistry Vol. 279, No. 23, Issue of June 4, pp. 24152-24162, 2004)で10分間染色した。CD40抗体で染色したB−ALL細胞をフローサイトメトリー(B.D.FACS Aria)によって測定した。結果(図5)は、オリゴ2がB−ALL細胞上でのCD40の発現を有意にアップレギュレートすることを示したものであり、これはオリゴ2を用いることで細胞上でのCD40のアップレギュレーションによりB−ALLが治療されうることを示す。CD40のアップレギュレーションは、B−ALL細胞のアポトーシスを促進し、B−ALL細胞の成長阻害を誘発し、かつB−ALL細胞における免疫原性を高めることにより、B−ALL細胞に特異的なCTLの産生を刺激する。B−ALL患者由来の10種の試料を用いて実験を繰り返し、同様の結果が得られた。
【0063】
実施例8 オリゴ2により誘導されるB−CLLからのIL−10の産生
1.ヒトB−CLL細胞の調製
実施例2に記載の手順を用い、ヒトB−CLL細胞をB−CLL患者から単離した。
【0064】
2.オリゴ2により誘導されるB−CLLからのIL−10の産生
B−CLL細胞を、オリゴ2(48ウェルプレートで、10細胞/ウェルとし、無血清RPMI1640培地(ハイクローン)内で最終濃度3μg/mlとした)とともに3通りに培養した。オリゴ2を無血清RPMI1640培地(ハイクローン)で希釈した。同容量の希釈物(無血清RPMI1640培地(ハイクローン))を対照(培地)として用いた。72時間後または指定時刻に培養上清を回収し、フルオロカインMAPイムノアッセイ(Fluorokine MAP Immunoarray)(R&Dシステムズ(R&D Systems))システムで、IL−10について評価した。我々のデータは、オリゴ2を誘因としてB−CLL細胞から高レベルのIL−10の産生がもたらされることを示した(図6)。6時間後、IL−10産生の大幅な増加が検出され、24時間後にピークに達し、72時間の培養にわたり高レベルを保持した。さらに、我々のデータは、外因性rh−IL−10(シェリング(Schering Corp))のB−CLL細胞培養物への添加により、IL−10の用量依存的にアポトーシス性B−CLL細胞が誘導され、それは抗−IL−10抗体(R&Dシステムズ)によって特異的に遮断されうることをさらに示した。これらの実験結果は、オリゴ2を用い、B−CLL細胞のアポトーシスを自己分泌的に引き起こすIL−10の産生を誘導することによりB−CLLが治療されうることを示している。実験をB−CLL患者の少なくとも10種の試料を用いて繰り返した。
【0065】
実施例9 ヒト正常PBMCの増殖に対するオリゴ2の作用
ヒトPBMCを、フィコール・ハイパック密度勾配遠心分離(ファルマシア)により健常な供血者(ザ・ブラッド・センター・オブ・ジリン・プロヴィンス(The Blood Center of Jilin Province)、中国)の軟膜から単離した。PBMCの生存度は、トリパンブルー排除による測定によると95〜99%であった。
【0066】
PBMC(6×10/ウェル)を96ウェルU底プレート(コスター(Costar))に播種し、オリゴ2(6μg/ml)とともにあるいはそれを伴わずにトリプリケートで36時間培養後、[H]チミジン(ニューイングランド・ニュークリア(New England Nuclear)、ボストン(Boston)、マサチューセッツ州)で16時間パルスを与えた。細胞をガラス繊維フィルター上に回収し、シンチレーションカウンターで検出した。細胞増殖を(トリプリケートのウェルからの)SI(刺激指数)として表した。5種の正常血液試料からのデータを示す。2006および2216を対照として用いた。結果は、オリゴ2がPBMCの増殖を明らかに刺激しうることを示し(図7)、これはオリゴ2がアポトーシスを誘導することなく正常ヒトPBMCに対して増殖促進性を示し、且つ培養細胞に対して毒性を示さないことを示した。
【0067】
本発明を詳細に説明してきたが、当業者にとっては、好ましい実施形態を参照することにより、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく改良および変形を行えることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】オリゴ2により誘導されるB−CLL細胞のアポトーシス(用量) B−CLL細胞は、様々な量のオリゴ2とともにまたはそれを伴わずに10%ヒトAB血清培地内で培養された。7日目、細胞はTMREで染色された。生存B−CLL細胞数は、TMRE陽性細胞のパーセンテージにより計算された。
【図2】B−CLL細胞上でのCD40のアップレギュレーションに対するオリゴ2の作用 B−CLL細胞は、オリゴ2とともにまたはそれを伴わずに7日間インキュベートされ、次いでフローサイトメトリーを用いてCD40の発現を分析するためにFITC−CD40抗体で染色された。発現レベルはMFI数で示された。
【図3】小リンパ球性リンパ腫細胞上でのCD40のアップレギュレーションに対するオリゴ2の作用 小リンパ球性リンパ腫細胞は、オリゴ2とともにまたはそれを伴わずにインキュベートされた。7日目、細胞は、フローサイトメトリーを用いてCD40の発現を分析するためにFITC−CD40抗体で染色された。発現レベルはMFI数で示された。
【図4】オリゴ2により誘導されるB−ALL細胞のアポトーシス B−ALL細胞は、オリゴ2とともにまたはそれを伴わずにインキュベートされた。インキュベーションの3、5および7日目、細胞はTMREで染色された後、フローサイトメトリーで分析された。生存B−ALL細胞数は、TMRE陽性細胞のパーセンテージにより計算された。
【図5】オリゴ2によるB−ALL細胞上でのCD40のアップレギュレーション B−ALL細胞は、1μg/mlのオリゴ2とともにまたはそれを伴わずに培養された。培養の3、5および7日目、細胞は、フローサイトメトリーを用いてCD40の発現を分析するためにFITCで標識された抗−CD40 mAbで染色された。発現レベルはMFI数で示された。
【図6】オリゴ2により誘導されるB−CLL細胞からのインターロイキン−10の産生 B−CLL細胞は、オリゴ2とともにまたはそれを伴わずに無血清培地内で培養された。上清は、指定時刻で回収され、ELISAキットを用いてIL−10について評価された。
【図7】ヒト正常PBMCの増殖に対するオリゴ2の作用 正常ヒトPBMCは、オリゴ2、2216または2006とともに36時間培養され、次いでそれぞれ細胞の増殖を測定するために[H]チミジンと混和された。5種の血液試料が分析された。細胞の増殖がSIとして表された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で示される配列を有するオリゴヌクレオチドまたはその機能的相同体。
【請求項2】
請求項1に記載のオリゴヌクレオチドを1コピー〜5コピー含むDNA断片またはその機能的相同体。
【請求項3】
請求項1に記載のオリゴヌクレオチドを機能的部分として含むDNA断片またはその機能的相同体。
【請求項4】
配列番号1の配列を有するオリゴヌクレオチドが1〜10個の塩基により隣接されうる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドまたはDNA断片およびそれらの機能的相同体。
【請求項5】
リン酸塩骨格修飾を有しうる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドまたはDNA断片およびそれらの機能的相同体。
【請求項6】
前記リン酸塩骨格修飾がホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾である、請求項5に記載のオリゴヌクレオチドまたはDNA断片およびそれらの機能的相同体。
【請求項7】
前記ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾が部分的または完全である、請求項6に記載のオリゴヌクレオチドまたはDNA断片およびそれらの機能的相同体。
【請求項8】
塩基が化学的に修飾されうるかまたは微量塩基に変化されうる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドまたはDNA断片およびそれらの機能的相同体。
【請求項9】
合成物または単離物でありうる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドまたはDNA断片およびそれらの機能的相同体。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドまたはDNA断片およびそれらの機能的相同体を含むベクター。
【請求項11】
細菌ベクター、プラスミド、ウイルスベクターまたはDNAワクチンでありうる請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドまたはDNA断片およびそれらの機能的相同体を含有する組成物。
【請求項13】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドまたはDNA断片またはそれらの機能的相同体が、単独投与されるか、または少なくとも1種の医薬的に許容できる担体とともにもしくは該担体内で投与されるか、あるいは少なくとも1種の他の抗−B細胞腫瘍剤と併せて投与される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗−B細胞腫瘍剤が化学療法剤、免疫療法剤または放射線療法で使用される作用物質である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記免疫療法剤が抗−CD20抗体を含むがこれに限定されない請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記放射線療法が体外照射または放射性標識抗体治療である請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
被験者内のB細胞腫瘍を治療するための方法であって、治療有効量の請求項1〜3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドまたはDNA断片またはそれらの機能的相同体あるいは請求項12〜16のいずれか一項に記載の組成物を前記被験者に投与するステップを含む、方法。
【請求項18】
前記B細胞腫瘍がB細胞白血病、B細胞リンパ腫または骨髄腫である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記B細胞白血病がB細胞慢性リンパ性白血病またはB細胞急性リンパ性白血病を含むがこれらに限定されず、かつ前記B細胞リンパ腫が小リンパ球性リンパ腫を含むがこれに限定されない請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記被験者がヒトまたは動物である請求項17に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドまたはDNA断片またはそれらの機能的相同体あるいは請求項12〜16のいずれか一項に記載の組成物が、経腸投与、非経口投与または局所投与されるかあるいは吸入投与される請求項17に記載の方法。
【請求項22】
B細胞腫瘍細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドまたはDNA断片またはそれらの機能的相同体あるいは請求項12〜16のいずれか一項に記載の組成物を被験者に投与するステップを含む、方法。
【請求項23】
ヒトB細胞腫瘍細胞上でのCD40の発現を促進するための方法であって、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドまたはDNA断片またはそれらの機能的相同体あるいは請求項12〜16のいずれか一項に記載の組成物を被験者に投与するステップを含む、方法。
【請求項24】
B細胞腫瘍細胞におけるIL−10の産生を誘導するための方法であって、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドまたはDNA断片またはそれらの機能的相同体あるいは請求項12〜16のいずれか一項に記載の組成物を被験者に投与するステップを含む、方法。
【請求項25】
前記B細胞腫瘍細胞がB細胞白血病細胞、B細胞リンパ腫細胞または骨髄腫細胞である請求項22〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
B細胞白血病細胞がB細胞慢性リンパ性白血病細胞またはB細胞急性リンパ性白血病細胞を含むがこれらに限定されず、かつB細胞リンパ腫細胞が小リンパ球性リンパ腫細胞を含むがこれに限定されない請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−539768(P2008−539768A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511532(P2008−511532)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【国際出願番号】PCT/CN2006/000216
【国際公開番号】WO2006/122464
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507379072)チャンチュン ファプ バイオテクノロジー カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】