説明

オレキシン受容体アンタゴニストとしてのイミダゾ[1,2−c]ピリミジン−2−イルメチルピペリジン誘導体

本発明は、イミダゾ[1,2−c]ピリミジン−2−イルメチル置換ピペリジン誘導体および医薬としてのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミダゾ[1,2−c]ピリミジン−2−イルメチル置換ピペリジン誘導体および医薬としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの医学上有意な生物学的処理は、Gタンパク質および/またはセカンド・メッセンジャーに関するシグナル伝達経路に関与するタンパク質によって媒介されている。
【0003】
ヒト7回膜貫通型Gタンパク質共役神経ペプチド受容体、オレキシン−1(HFGAN72)をコードするポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、同定されており、EP875565、EP875566およびWO96/34877に開示されている。第2ヒトオレキシン受容体、オレキシン−2(HFGANP)をコードするポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、同定されており、EP893498に開示されている。
【0004】
オレキシン−1受容体に対するリガンド、例えば、オレキシン−A(Lig72A)であるポリペプチドをコードするポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、EP849361に開示されている。
【0005】
オレキシンリガンドおよび受容体系は、その発見以来よく特徴付けられている(例えば、Sakurai, T. et al (1998) Cell, 92 pp 573 to 585; Smart et al (1999) British Journal of Pharmacology 128 pp 1 to 3; Willie et al (2001) Ann. Rev. Neurosciences 24 pp 429 to 458; Sakurai (2007) Nature Reviews Neuroscience 8 pp 171 to 181; Ohno and Sakurai (2008) Front. Neuroendocrinology 29 pp 70 to 87を参照)。これらの研究から、オレキシンおよびオレキシン受容体が哺乳動物において多くの重要な生理的役割を果たし、下記の種々の疾患および障害のための新規の治療的処置の構築の可能性を生み出すことが明らかになっている。
【0006】
リガンドオレキシン−Aの中枢投与が、自由に食事可能なラットにおいて食糧摂取量を4時間刺激することを実験は示している。この増加は、ビヒクルを投与する対照ラットに対して約4倍であった。オレキシン−Aが食欲の内因性調節因子でありうることをこれらのデータは示唆している(Sakurai, T. et al (1998) Cell, 92 pp 573 to 585; Peyron et al (1998) J. Neurosciences 18 pp 9996 to 10015; Willie et al (2001) Ann. Rev. Neurosciences 24 pp 429 to 458)。そのため、オレキシン−A受容体のアンタゴニストは、肥満および糖尿病の治療に有用でありうる。この裏付けとして、オレキシン受容体アンタゴニストSB334867が、ラットの快楽摂食を強く減少させ(White et al (2005) Peptides 26 pp 2231 to 2238)、ラットの高脂肪ペレットの自己投与も弱めることが示されている(Nair et al (2008) British Journal of Pharmacology, published online 28 January 2008)。肥満または他の摂食障害を治療する新規の療法の探索は、重要な挑戦である。WHO定義によれば、39の研究における35%の対象の平均値は体重超過であり、西洋化した社会ではさらに22%が臨床的に肥満体であった。米国の全医療費の5.7%が肥満体の結果であると推測されている。2型糖尿病患者の約85%は肥満体である。食事および運動は、全ての糖尿病患者において価値がある。西洋化した国々における診断された糖尿病の罹患率は、典型的には、5%であり、診断されていない数と同等であると推測される。両疾患の罹患率は、上昇し、有効ではないかまたは心臓血管系作用を含む毒性の危険がありうる最新治療の不十分さを立証している。スルホニルウレア系またはインスリンでの糖尿病の治療は、低血糖を引き起こしうるが一方、メトホルミンはGI副作用を引き起こす。2型糖尿病に対する薬物治療が、糖尿病の長期合併症を減少させることは示されていない。インスリン増感剤は、多くの糖尿病患者に有用であろうが、抗肥満効果を有していない。
【0007】
食糧摂取に関与するのと同様に、オレキシン系はまた、睡眠および覚醒に関与する。オレキシン−A、オレキシン受容体のアゴニストの中枢投与が、正常の睡眠時間の開始時に投与される場合に、逆説睡眠および第2の徐波睡眠を大きく低下させて、用量依存的に覚醒の増大を引き起こすことをラット睡眠/EEG研究は示している。(Hagan et al (1999) Proc.Natl.Acad.Sci. 96 pp 10911 to 10916)。睡眠および覚醒のオレキシン系の役割は、最近になって確立されている(Sakurai (2007) Nature Reviews Neuroscience 8 pp 171 to 181; Ohno and Sakurai (2008) Front. Neuroendocrinology 29 pp 70 to 87; Chemelli et al (1999) Cell 98 pp 437 to 451; Lee et al (2005) J. Neuroscience 25 pp 6716 to 6720; Piper et al (2000) European J Neuroscience 12 pp 726-730 and Smart and Jerman (2002) Pharmacology and Therapeutics 94 pp 51 to 61)。そのため、オレキシン受容体のアンタゴニストは、不眠症を含む睡眠障害の治療に有用でありうる。ラット(例えば、Smith et al (2003) Neuroscience Letters 341 pp 256 to 258を参照)ならびにより最近では、イヌおよびヒト(Brisbare-Roch et al (2007) Nature Medicine 13(2) pp 150 to 155)における、オレキシン受容体アンタゴニスト、例えば、SB334867との研究がこのことをさらに支持する。
【0008】
さらに、最近の研究は、動機付け障害、例えば、報酬探求行動、例えば、薬物嗜癖および物質乱用に関する障害の治療におけるオレキシンアンタゴニストの役割を示唆している(Borgland et al (2006) Neuron 49(4) pp 589-601; Boutrel et al (2005) Proc.Natl.Acad.Sci. 102(52) pp 19168 to 19173; Harris et al (2005) Nature 437 pp 556 to 559)。
【0009】
オレキシン受容体アンタゴニストとして、国際特許出願WO99/09024、WO99/58533、WO00/47577およびWO00/47580は、フェニル尿素誘導体を開示し、WO00/47576は、キノリニルシンナミド誘導体を開示している。オレキシンアンタゴニストとして、WO05/118548は、置換1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン誘導体を開示している。
【0010】
WO01/96302、WO02/44172、WO02/89800、WO03/002559、WO03/002561、WO03/032991、WO03/037847、WO03/041711およびWO08/038251はすべて、環化アミン誘導体を開示している。
【0011】
WO03/002561は、オレキシンアンタゴニストとしてN−アロイル環状アミン誘導体を開示している。WO03/002561に開示の化合物には、2位が二環式ヘテロアリールメチル基で置換されたピペリジン誘導体が含まれる。本発明者らは、最近になって意外にも、2位がイミダゾ[1,2−c]ピリミジン−2−イル基で置換されたいくつかのピペリジン誘導体が、驚くべきことに、例えば、先行技術の化合物に比べて増大した経口バイオアベイラビリティおよび生理的に適当な媒体中で有意に増大した溶解度を含む有益な特性を有することを見出した。かかる特性は、2型(インスリン非依存性)糖尿病患者で観察される肥満を含む、肥満、睡眠障害、不安症、うつ病、統合失調症、薬物依存症または強迫行為の予防または治療に有用でありうる潜在的医薬品としてこれらのイミダゾ[1,2−c]ピリミジン−2−イルメチル置換ピペリジン誘導体を非常に魅力的にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】EP875565
【特許文献2】EP875566
【特許文献3】WO96/34877
【特許文献4】EP893498
【特許文献5】EP849361
【特許文献6】WO99/09024
【特許文献7】WO99/58533
【特許文献8】WO00/47577
【特許文献9】WO00/47580
【特許文献10】WO00/47576
【特許文献11】WO05/118548
【特許文献12】WO01/96302
【特許文献13】WO02/44172
【特許文献14】WO02/89800
【特許文献15】WO03/002559
【特許文献16】WO03/002561
【特許文献17】WO03/032991
【特許文献18】WO03/037847
【特許文献19】WO03/041711
【特許文献20】WO08/038251
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Sakurai, T. et al (1998) Cell, 92 pp 573 to 585
【非特許文献2】Smart et al (1999) British Journal of Pharmacology 128 pp 1 to 3
【非特許文献3】Willie et al (2001) Ann. Rev. Neurosciences 24 pp 429 to 458
【非特許文献4】Sakurai (2007) Nature Reviews Neuroscience 8 pp 171 to 181
【非特許文献5】Ohno and Sakurai (2008) Front. Neuroendocrinology 29 pp 70 to 87
【非特許文献6】Sakurai, T. et al (1998) Cell, 92 pp 573 to 585
【非特許文献7】Peyron et al (1998) J. Neurosciences 18 pp 9996 to 10015
【非特許文献8】Willie et al (2001) Ann. Rev. Neurosciences 24 pp 429 to 458
【非特許文献9】White et al (2005) Peptides 26 pp 2231 to 2238
【非特許文献10】Nair et al (2008) British Journal of Pharmacology, published online 28 January 2008
【非特許文献11】Hagan et al (1999) Proc.Natl.Acad.Sci. 96 pp 10911 to 10916
【非特許文献12】Sakurai (2007) Nature Reviews Neuroscience 8 pp 171 to 181
【非特許文献13】Ohno and Sakurai (2008) Front. Neuroendocrinology 29 pp 70 to 87
【非特許文献14】Chemelli et al (1999) Cell 98 pp 437 to 451
【非特許文献15】Lee et al (2005) J. Neuroscience 25 pp 6716 to 6720
【非特許文献16】Piper et al (2000) European J Neuroscience 12 pp 726-730
【非特許文献17】Smart and Jerman (2002) Pharmacology and Therapeutics 94 pp 51 to 61
【非特許文献18】Smith et al (2003) Neuroscience Letters 341 pp 256 to 258
【非特許文献19】Brisbare-Roch et al (2007) Nature Medicine 13(2) pp 150 to 155
【非特許文献20】Borgland et al (2006) Neuron 49(4) pp 589-601
【非特許文献21】Boutrel et al (2005) Proc.Natl.Acad.Sci. 102(52) pp 19168 to 19173
【非特許文献22】Harris et al (2005) Nature 437 pp 556 to 559
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は、式(I):
【化1】

[式中:
Arは、式:
【化2】

からなる群より選択され;
は、(C1−4)アルキル、ハロ、ハロ(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、ハロ(C1−4)アルコキシ、(C1−4)アルキル−O−(C1−4)アルキル、CN、NRであり、ここで、RはHまたは(C1−4)アルキルであり、RはHまたは(C1−4)アルキルであり;
は、(C1−4)アルキル、ハロ、ハロ(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、ハロ(C1−4)アルコキシ、(C1−4)アルキル−O−(C1−4)アルキル、CN、NRであり、ここで、RはHまたは(C1−4)アルキルであり、RはHまたは(C1−4)アルキルであり;
は、(C1−4)アルキル、ハロ、ハロ(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、ハロ(C1−4)アルコキシ、(C1−4)アルキル−O−(C1−4)アルキル、CN、NRであり、ここで、RはHまたは(C1−4)アルキルであり、RはHまたは(C1−4)アルキルであり;
nは0または1であり;
pは0または1であり;および
qは0または1である;
ただし、pおよびqは両方とも0ではない]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1の実施態様において、Arは式(II)の基である。
【0016】
別の実施態様において、Arは式(III)の基である。
【0017】
1の実施態様において、Arは式(II)の基であり、nは0である。
【0018】
別の実施態様において、Arは式(II)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは0であり、Rはメチルである。
【0019】
1の実施態様において、Arは式(II)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは1であり、RおよびRの一方はハロであり、他方は(C1−4)アルキルである。
【0020】
1の実施態様において、Arは式(II)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは1であり、Rは(C1−4)アルキルであり、Rはハロである。
【0021】
別の実施態様において、Arは式(II)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは1であり、Rはメチルであり、Rはクロロである。
【0022】
1の実施態様において、Arは式(II)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは1であり、Rはハロであり、Rは(C1−4)アルキルである。
【0023】
別の実施態様において、Arは式(II)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは1であり、Rはクロロであり、Rはメチルである。
【0024】
1の実施態様において、Arは式(II)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは1であり、RおよびRの一方は(C1−4)アルコキシであり、他方は(C1−4)アルキルである。
【0025】
1の実施態様において、Arは式(II)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは1であり、Rは(C1−4)アルキルであり、Rは(C1−4)アルコキシである。
【0026】
別の実施態様において、Arは式(II)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは1であり、Rはメチルであり、Rはメチルオキシである。
【0027】
1の実施態様において、Arは式(III)の基であり、nは0である。
【0028】
別の実施態様において、Arは式(III)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは0であり、Rはメチルである。
【0029】
1の実施態様において、Arは式(III)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは1であり、RおよびRの一方はハロであり、他方は(C1−4)アルキルである。
【0030】
1の実施態様において、Arは式(III)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは1であり、Rは(C1−4)アルキルであり、Rはハロである。
【0031】
別の実施態様において、Arは式(III)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは1であり、Rはメチルであり、Rはクロロである。
【0032】
1の実施態様において、Arは式(III)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは1であり、Rはハロであり、Rは(C1−4)アルキルである。
【0033】
別の実施態様において、Arは式(III)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは1であり、Rはクロロであり、Rはメチルである。
【0034】
1の実施態様において、Arは式(III)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは1であり、RおよびRの一方は(C1−4)アルコキシであり、他方は(C1−4)アルキルである。
【0035】
1の実施態様において、Arは式(III)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは1であり、Rは(C1−4)アルキルであり、Rは(C1−4)アルコキシである。
【0036】
別の実施態様において、Arは式(III)の基であり、nは0であり、pは1であり、qは1であり、Rはメチルであり、Rはメチルオキシである。
【0037】
化合物が(C1−4)アルキル基を含有する場合に、単独またはより大きな基、例えば、(C1−4)アルコキシの形成部分に関わらず、アルキル基は、直鎖、分岐鎖もしくは環、またはその組み合わせであってもよい。(C1−4)アルキルの例はメチルまたはエチルである。(C1−4)アルコキシの例はメチルオキシである。
【0038】
ハロ(C1−4)アルキルの例として、トリフルオロメチル(すなわち、−CF)が挙げられる。
【0039】
(C1−4)アルコキシの例として、メチルオキシおよびエチルオキシが挙げられる。
【0040】
ハロ(C1−4)アルコキシの例として、トリフルオロメチルオキシ(すなわち、−OCF)が挙げられる。
【0041】
(C2−4)アルケニルの例として、エテニルが挙げられる。
【0042】
HO(C1−4)アルキルの例として、ヒドロキシメチルが挙げられる。
【0043】
ハロゲンまたは「ハロ」(用いられる場合、例えば、ハロ(C1−4)アルキルで用いられる場合)は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。
【0044】
本発明が、上記の具体的な基および置換基のすべての組み合わせを包含することを理解すべきである。
【0045】
1の実施態様において、本発明は、
7−クロロ−8−メチル−2−({(2S)−1−[(2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−イル)カルボニル]−2−ピペリジニル}メチル)イミダゾ[1,2−c]ピリミジン;
8−メチル−2−({(2S)−1−[(2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−イル)カルボニル]−2−ピペリジニル}メチル)イミダゾ[1,2−c]ピリミジン;
8−クロロ−7−メチル−2−({(2S)−1−[(2−メチル−5−フェニル−1,3−トリアゾール−4−イル)カルボニル]−2−ピペリジニル}メチル)イミダゾ[1,2−c]ピリミジン;
8−メチル−7−(メチルオキシ)−2−({(2S)−1−[(2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−イル)カルボニル]−2−ピペリジニル}メチル)イミダゾ[1,2−c]ピリミジン;および
7,8−ジメチル−2−({(2S)−1−[(2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−イル)カルボニル]−2−ピペリジニル}メチル)イミダゾ[1,2−c]ピリミジンからなる群より選択される式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0046】
医薬として用いるために、式(I)の化合物の塩は医薬上許容されるべきものであることは明らかであろう。適当な医薬上許容される塩は、当業者に明らかであろう。医薬上許容される塩には、Berge, Bighley and Monkhouse J.Pharm.Sci (1977) 66, pp 1-19に記載のものが含まれる。かかる医薬上許容される塩には、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸またはリン酸および有機酸、例えば、コハク酸、マレイン酸、酢酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸と形成される酸付加塩が含まれる。他の塩、例えば、シュウ酸塩またはギ酸塩は、例えば、式(I)の化合物の単離に用いられてもよく、本発明の範囲内に含まれる。
【0047】
式(I)の特定の化合物は、1当量以上の酸と酸付加塩を形成しうる。本発明は、すべての可能な化学量論的および非化学量論的形態をその範囲内に含む。
【0048】
式(I)の化合物は、結晶形態または非結晶形態で調製されてもよく、結晶形であれば、所望により、例えば、水和物として溶媒和されてもよい。本発明は、化学量論的溶媒和物(例えば、水和物)ならびに可変量の溶媒(例えば、水)を含有する化合物をその範囲内に含む。
【0049】
本発明には、式(I)の化合物の医薬上許容される誘導体が含まれることおよびこれらが本発明の範囲内に含まれることが理解されるであろう。
【0050】
本明細書に用いられる「医薬上許容される誘導体」には、レシピエントに投与すると、式(I)の化合物またはその活性代謝物もしくは残渣を(直接的または間接的に)提供しうる、式(I)の化合物の医薬上許容されるエステルまたはかかるエステルの塩が含まれる。
【0051】
式(I)の化合物は、S−エナンチオマーである。付加的なキラル中心が式(I)の化合物に存在する場合、本発明は、すべての可能なエナンチオマーおよびジアステレオ異性体(それらの混合物を含む)をその範囲内に含む。異なる異性体は、慣習的方法によってあるものから他のものに分離または分割されうるか、あるいは所定の異性体は、慣習的合成法によってまたは立体特異的もしくは不斉合成によって得られうる。本発明はまた、任意の互変異性体またはその混合物にまで及ぶ。
【0052】
本発明はまた、1個または複数の原子が自然界で最も一般的に見出された原子量または質量数と異なる原子量または質量数を有する原子で置き換えられた点以外は式(I)に記載のものと同一である、同位体標識化合物を含む。本発明の化合物に組み込まれうる同位体の例として、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ヨウ素および塩素の同位体、例えば、H、11C、14C、18F、123Iまたは125Iが挙げられる。
【0053】
前記同位体および/または他の原子の他の同位体を含有する本発明の化合物および該化合物の医薬上許容される塩は、本発明の範囲内である。本発明の同位体標識化合物、例えば、放射同位体、例えば、Hまたは14Cが組み込まれているものは、薬物および/または基質組織分布アッセイに有用である。それらの調製および検出を容易にするために、トリチウム化、すなわち、H、および炭素−14、すなわち、14C同位体が特に好ましい。11Cおよび18F同位体は、PET(陽電子放出断層撮影法)に特に有用である。
【0054】
式(I)の化合物を医薬組成物中に用いることを意図とするので、それらは、各々所望により、実質上純粋な形態、例えば、少なくとも60%純粋、少なくとも75%純粋および好ましくは、少なくとも85%、特に少なくとも98%純粋(%は、重量/重量に基づく)な形態で提供されることが容易に理解されるであろう。
【0055】
本発明のさらなる態様によれば、式(I)の化合物およびその誘導体の調製方法が提供される。以下の詳細なスキームは、本発明の化合物へのいくつかの合成経路を詳述する。以下のスキームにおいて、反応基は、確立した技法にしたがって保護基で保護され、そして、脱保護されうる。
【0056】
スキーム
本発明のさらなる特徴にしたがって、式(I)の化合物またはその塩の調製方法が提供される。本発明の化合物を合成するために用いられうる合成スキームの例は、以下のとおりである。
【化3】

【0057】
本発明の特定の化合物が、標準的化学法にしたがって本発明の他の化合物に変換されうることを当業者であれば理解するであろう。
【0058】
スキームに用いる出発物質は、商業的に入手可能であるか、文献公知のものであるかまたは既知の方法で調製されうる。5−フェニル−2−メチル−1,3−チアゾール−4−カルボン酸(Ar基)の調製は、例えば、Mamedov et al (1991) Izvestiya Akademii Nauk SSSR, Seriya Khimicheskaya 12 pp2832-2836. Mamedov et al (2004) Russian Journal of Organic Chemistry (Zhurnal Organicheskoi Khimiiの翻訳) 40(4) pp534-542に記載されている。((2S)−1−{[(1,1−ジメチルエチル)オキシ]カルボニル}−2−ピペリジニル)酢酸は、Neosystem Product List(BA19302)から入手可能である。
【0059】
医薬上許容される塩は通常、適当な酸または酸誘導体との反応により調製されうる。
【0060】
本発明は、ヒト医薬または動物医薬に用いる式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0061】
式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩は、ヒトオレキシン受容体のアンタゴニストを要する疾患または障害、例えば、原発性不眠症(307.42)、原発性過眠症(307.44)、ナルコレプシー(347)、呼吸関連睡眠障害(780.59)、概日リズム睡眠障害(307.45)、特定不能の睡眠異常症(307.47)などの睡眠異常症;原発性睡眠障害、例えば、悪夢障害(307.47)、夜驚症(307.46)、夢遊症障害(307.46)および特定不能の錯眠(307.47)などの錯眠;別の精神障害に関連する睡眠障害、例えば、別の精神障害に関連する不眠症(307.42)および別の精神障害に関連する過眠症(307.44);一般的健康状態に起因する睡眠障害、特に、神経学的障害、神経因性疼痛、下肢静止不能症候群、心臓および肺の疾患のような疾患に付随する睡眠障害;ならびに不眠症型サブタイプ、過眠症型サブタイプ、錯眠型サブタイプ、および混合型サブタイプを含む物質誘導性睡眠障害;睡眠時無呼吸および時差ぼけ症候群からなる群より選択される睡眠障害の治療または予防に用いられうる。
【0062】
さらに、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩は、ヒトオレキシン受容体のアンタゴニストを要する疾患または障害、例えば、うつ病ならびに大うつ病エピソード、躁病エピソード、混合エピソードおよび軽躁エピソードを含む気分障害;大うつ病性障害、気分変調性障害(300.4)、特定不能の抑うつ障害(311)を含む抑うつ障害;I型双極性障害、II型双極性障害(軽躁エピソードを伴う再発性大うつ病エピソード)(296.89)、気分循環性障害(301.13)および特定不能の双極性障害(296.80)を含む双極性障害;うつ病性特徴、大うつ病様エピソード、躁病性特徴および混合性特徴を伴うサブタイプを含む一般的健康状態に起因する気分障害(293.83)を含む他の気分障害、物質誘導性気分障害(うつ病性特徴、躁病性特徴および混合性特徴を伴うサブタイプを含む)および特定不能の気分障害(296.90)の治療または予防のために用いられうる。
【0063】
さらに、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩は、ヒトオレキシン受容体のアンタゴニストを要する疾患または障害、例えば、パニック発作;広場恐怖症を伴わないパニック障害(300.01)および広場恐怖症(300.21)を伴うパニック障害を含むパニック障害;広場恐怖症;パニック障害の既往歴のない広場恐怖症(300.22);動物型、自然環境型、血液注入傷害(Blood−Injection−Injury)型、状況型および他の型のサブタイプを含む特定恐怖症(300.29、以前は単一恐怖症)、社会恐怖症(社会不安障害、300.23)、強迫障害(300.3)、外傷後ストレス障害(309.81)、急性ストレス障害(308.3)、全般性不安障害(300.02)、一般的健康状態に起因する不安障害(293.84)、物質誘導性不安障害、分離不安障害(309.21)、不安を伴う適応障害(309.24)および特定不能の不安障害(300.00)を含む不安障害の治療または予防に用いられうる。
【0064】
さらに、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩は、ヒトオレキシン受容体のアンタゴニストを要する疾患または障害、例えば、物質依存、物質渇望および物質乱用などの物質使用障害;物質中毒、物質離脱、物質誘導性せん妄、物質誘導性持続性認知症、物質誘導性持続性健忘障害、物質誘導性精神病性障害、物質誘導性気分障害、物質誘導性不安障害、物質誘導性性的機能不全、物質誘導性睡眠障害および幻覚剤持続性知覚障害(フラッシュバック)などの物質誘導性障害;アルコール依存(303.90)、アルコール乱用(305.00)、アルコール中毒(303.00)、アルコール離脱(291.81)、アルコール中毒せん妄、アルコール離脱せん妄、アルコール誘導性持続性認知症、アルコール誘導性持続性健忘障害、アルコール誘導性精神病性障害、アルコール誘導性気分障害、アルコール誘導性不安障害、アルコール誘導性性的機能不全、アルコール誘導性睡眠障害および特定不能のアルコール関連障害(291.9)などのアルコール関連障害;アンフェタミン依存(304.40)、アンフェタミン乱用(305.70)、アンフェタミン中毒(292.89)、アンフェタミン離脱(292.0)、アンフェタミン中毒せん妄、アンフェタミン誘導性精神病性障害、アンフェタミン誘導性気分障害、アンフェタミン誘導性不安障害、アンフェタミン誘導性性的機能不全、アンフェタミン誘導性睡眠障害および特定不能のアンフェタミン関連障害(292.9)などのアンフェタミン(またはアンフェタミン様)関連障害;カフェイン中毒(305.90)、カフェイン誘導性不安障害、カフェイン誘導性睡眠障害および特定不能のカフェイン関連障害(292.9)などのカフェイン関連障害;大麻依存(304.30)、大麻乱用(305.20)、大麻中毒(292.89)、大麻中毒せん妄、大麻誘導性精神病性障害、大麻誘導性不安障害および特定不能の大麻関連障害(292.9)などの大麻関連障害;コカイン依存(304.20)、コカイン乱用(305.60)、コカイン中毒(292.89)、コカイン離脱(292.0)、コカイン中毒せん妄、コカイン誘導性精神病性障害、コカイン誘導性気分障害、コカイン誘導性不安障害、コカイン誘導性性的機能不全、コカイン誘導性睡眠障害および特定不能のコカイン関連障害(292.9)などのコカイン関連障害;幻覚剤依存(304.50)、幻覚剤乱用(305.30)、幻覚剤中毒(292.89)、幻覚剤持続性知覚障害(フラッシュバック)(292.89)、幻覚剤中毒せん妄、幻覚剤誘導性精神病性障害、幻覚剤誘導性気分障害、幻覚剤誘導性不安障害および特定不能の幻覚剤関連障害(292.9)などの幻覚剤関連障害;吸入剤依存(304.60)、吸入剤乱用(305.90)、吸入剤中毒(292.89)、吸入剤中毒せん妄、吸入剤誘導性持続性認知症、吸入剤誘導性精神病性障害、吸入剤誘導性気分障害、吸入剤誘導性不安障害および特定不能の吸入剤関連障害(292.9)などの吸入剤関連障害;ニコチン依存(305.1)、ニコチン離脱(292.0)および特定不能のニコチン関連障害(292.9)などのニコチン関連障害;オピオイド依存(304.00)、オピオイド乱用(305.50)、オピオイド中毒(292.89)、オピオイド離脱(292.0)、オピオイド中毒せん妄、オピオイド誘導性精神病性障害、オピオイド誘導性気分障害、オピオイド誘導性性的機能不全、オピオイド誘導性睡眠障害および特定不能のオピオイド関連障害(292.9)などのオピオイド関連障害;フェンシクリジン依存(304.60)、フェンシクリジン乱用(305.90)、フェンシクリジン中毒(292.89)、フェンシクリジン中毒せん妄、フェンシクリジン誘導性精神病性障害、フェンシクリジン誘導性気分障害、フェンシクリジン誘導性不安障害および特定不能のフェンシクリジン関連障害(292.9)などのフェンシクリジン(またはフェンシクリジン様)関連障害;鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤依存(304.10)、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤乱用(305.40)、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤中毒(292.89)、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤離脱(292.0)、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤中毒せん妄、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤離脱せん妄、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤持続性認知症、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤持続性健忘障害、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤誘導性精神病性障害、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤誘導性気分障害、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤誘導性不安障害、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤誘導性性的機能不全、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤誘導性睡眠障害および特定不能の鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤関連障害(292.9)などの鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤関連障害;多物質依存(304.80)などの多物質関連障害;およびアナボリックステロイド、硝酸塩吸入剤および亜酸化窒素などの他の(または未知の)物質関連障害を含む物質関連障害の治療または予防のために用いられうる。
【0065】
さらに、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩は、ヒトオレキシン受容体のアンタゴニストを要する疾患または障害、例えば、多食症、過食症、2型(インスリン非依存性)糖尿病患者で観察される肥満を含む、肥満などの摂食障害の治療または予防のために用いられうる。さらに、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩は、ヒトオレキシン受容体のアンタゴニストを要する疾患または障害、例えば、脳卒中、特に虚血性脳卒中または出血性脳卒中の治療または予防ならびに/あるいは嘔吐反応、すなわち、嘔気嘔吐の阻止に用いられうる。
【0066】
列挙した疾患の後ろの括弧内の数字は、DSM−IVにおける分類コードを示す:アメリカ精神病医学会(the American Psychiatric Association)のよって出版された精神障害の診断および統計学的マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)、第4版。本明細書中に記載の障害の種々のサブタイプは、本発明の一部と考えられる。
【0067】
本発明はまた、ヒトオレキシン受容体のアンタゴニストを要する疾患または障害、例えば、上記の疾患および障害の治療方法および予防方法であって、有効量の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩をそれを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0068】
本発明はまた、ヒトオレキシン受容体のアンタゴニストを要する疾患または障害、例えば、上記の疾患および障害の治療または予防に用いる、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0069】
本発明はまた、ヒトオレキシン受容体のアンタゴニストを要する疾患または障害、例えば、上記の疾患および障害の治療または予防のための医薬の製造における、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩の使用を提供する。
【0070】
医薬としての使用について、本発明の化合物は通常、医薬組成物として投与される。本発明はまた、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩および医薬上許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0071】
式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩は、任意の便利な方法によって、例えば、経口、非経口、口腔、舌下、鼻腔、直腸または経皮投与によって投与され、そして、必要に応じて適合した医薬組成物が投与されうる。
【0072】
経口投与される場合に活性である式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩は、液体または固体として、例えば、シロップ、懸濁液、乳液、錠剤、カプセルまたはロゼンジ剤として処方されうる。
【0073】
液体処方は、一般に、適当な液体担体(複数でも可)、例えば、水、エタノールもしくはグリセリンなどの水性溶媒またはポリエチレングリコールもしくは油などの非水性溶媒中の活性成分の懸濁液または溶液からなるであろう。処方はまた、懸濁化剤、保存剤、香味剤および/または着色剤を含有していてもよい。
【0074】
錠剤の形態中の組成物は、固体処方を調製するのに通常用いられる適当な医薬担体(複数でも可)、例えば、ステアリン酸マグネシウム、スターチ、乳糖、ショ糖およびセルロースを用いて調製されうる。
【0075】
カプセルの形態中の組成物は、通常のカプセル化製法を用いて調製されうる、例えば、活性成分を含有するペレットは、標準的担体を用いて調製され、次いで、硬ゼラチンカプセルに充填されうる;あるいは、分散液または懸濁液は、適当な医薬担体(複数でも可)、例えば、水性ゴム、セルロース、ケイ酸塩または油を用いて調製され、次いで、分散液または懸濁液は軟ゼラチンカプセルに充填されうる。
【0076】
典型的な非経口組成物は、滅菌水性担体または非経口的に許容される油、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、レシチン、ラッカセイ油またはゴマ油中の活性成分の溶液または懸濁液からなる。あるいは、溶液は、凍結乾燥され、次いで、投与直前に適当な溶媒で復元されうる。
【0077】
鼻腔投与のための組成物は、都合の良いことには、エアロゾル、滴剤、ゲルおよび粉末として処方されうる。エアロゾル処方は、典型的には、医薬上許容される水性または非水性溶媒中の活性成分の溶液または微粒子懸濁液を含み、通常、カートリッジの形をとりうるかまたは散布デバイスで用いるために補充可能な密封容器中に滅菌形態の単回量または複数回量で存在している。あるいは、密封容器は、計量バルブを取り付けた単回量鼻吸入器またはエアロゾルディスペンサーなどの使い捨て分散デバイスであってもよい。剤形がエアロゾルディスペンサーを含む場合、圧縮気体、例えば、空気、またはフルオロクロロヒドロカーボンもしくはヒドロフルオロカーボンなどの有機推進薬でありうる推進薬を含有するであろう。エアロゾル剤形はまた、ポンプ式噴霧器の形をとりうる。
【0078】
口腔投与または舌下投与に適当な組成物には、活性成分が担体、例えば、砂糖およびアカシア、トラガカント、またはゼラチンおよびグリセリンと処方される錠剤、ロゼンジ剤およびトローチが含まれる。
【0079】
直腸投与のための組成物は、都合の良いことには、ココアバターなどの通常の坐剤基剤を含有する坐剤の形態中にある。
【0080】
経皮投与に適当な組成物には、軟膏、ゲルおよびパッチ剤が含まれる。
【0081】
1の実施態様において、組成物は、錠剤、カプセルまたはアンプルなどの単位量形態中にある。
【0082】
上記の障害または疾患の治療または予防に用いられる、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩の用量は通常、治療を受けている特定の障害または疾患、対象の体重および他の同様の因子で変化しうる。しかしながら、原則として、適当な単位量は0.05〜1000mg、より適当には、0.05〜500mgであってもよい。全1日投与量が約0.01〜100mg/kgの範囲になるように、単位量は、1日1回以上、例えば、1日2または3回投与されうる。かかる療法は、何週間または何ヶ月間に伸びてもよい。医薬上許容される誘導体の場合には、上記の数字は、式(I)の親化合物として計算される。
【0083】
オレキシン−A(Sakurai, T. et al (1998) Cell, 92 pp 573-585)は、オレキシン−1またはオレキシン−2受容体のリガンドの活性化を阻害する化合物のスクリーニング方法に用いられうる。
【0084】
一般には、かかるスクリーニング方法は、表面上にオレキシン−1またはオレキシン−2受容体を発現する適当な細胞を提供することに関与する。かかる細胞には、哺乳動物、酵母、ショウジョウバエまたは大腸菌からの細胞が含まれる。特に、オレキシン−1またはオレキシン−2受容体をコードするポリヌクレオチドは、細胞にトランスフェクトし、受容体を発現させるために用いられる。次いで、発現した受容体は、必要に応じて、試験化合物およびオレキシン−1またはオレキシン−2受容体リガンドと接触させて、機能的反応の阻害を観察する。1つのかかるスクリーニング方法は、WO92/01810に記載されるように、オレキシン−1またはオレキシン−2受容体を発現させるためのトランスフェクトされるメラニン細胞の使用に関与する。
【0085】
別のスクリーニング方法は、一時的に受容体を発現させるためにオレキシン−1またはオレキシン−2をコードするRNAをアフリカツメガエル卵母細胞(Xenopus oocytes)に導入することに関与する。次いで、受容体卵母細胞を、受容体リガンドおよび試験化合物と接触させ、次いで、リガンドによって受容体の活性化を阻害すると考えられている化合物のスクリーニングの場合にはシグナルの阻害を検出する。
【0086】
別の方法は、表面上にオレキシン−1およびオレキシン−2受容体を(必要に応じて)有する細胞への標識オレキシン−1またはオレキシン−2受容体リガンドの結合の阻害を測定することにより受容体の活性化を阻害する化合物のスクリーニングに関与する。該方法は、細胞がその表面上に受容体を発現するようにオレキシン−1またはオレキシン−2をコードするDNAを真核細胞にトランスフェクトし、標識形態のオレキシン−1またはオレキシン−2受容体リガンドの存在下において細胞または細胞膜調製物を化合物と接触させることに関与する。リガンドは放射標識を含有しうる。受容体に結合した標識リガンドの量は、例えば、放射能の測定により測定される。
【0087】
さらに別のスクリーニング方法は、必要に応じてオレキシン−1またはオレキシン−2受容体リガンドとオレキシン−1またはオレキシン−2受容体との相互作用に影響を及ぼすことによって、細胞内カルシウムイオン、または他のイオンの動員を阻害する試験化合物のハイスループットスクリーニングのためのFLIPR装置の使用に関与する。
【0088】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、文脈上他の意味を解すべき場合を除き、「comprise」なる語、ならびに「comprises」および「comprising」などの変化は、既定の整数または工程または整数の群を含むことを意味するものであるが、その他の整数または工程または整数もしくは工程の群を除くことを意味するものではないことは分かるであろう。
【0089】
本明細書で引用される、特許および特許出願を含むがこれらに限定されないすべての刊行物は、個々の刊行物が十分に開示されているかの如く具体的かつ個別的に出典明示により本明細書の一部とすることが明示されているかのように出典明示により本明細書の一部とする。
【0090】
以下の実施例は、特定の式(I)の化合物またはその塩の調製を説明する。記載例1〜10は、式(I)の化合物またはその塩を製造するために用いられる中間体の調製を説明する。
【0091】
以下の製法では、典型的には、各出発物質の後に、記載例が言及される。これは、単に当業化学者を支援するものである。出発物質は、必ずしも記載の実施例から調製されているわけではない。
【0092】
収率は、特に明記しない限り、生成物が純度100%であると仮定して計算された。
【0093】
上記の実施例に記載の化合物はすべて、最初の工程として立体化学的に純粋な((2S)−1−{[(1,1−ジメチルエチル)オキシ]カルボニル}−2−ピペリジニル)酢酸から調製されている。記載例および実施例の化合物の立体化学は、純粋な配置が維持されると仮定して指定されている。
【0094】
化合物は、ACD/Name PRO 6.02化合物命名ソフトウェア(Advanced Chemistry Development Inc.,Toronto,Ontario,M5H2L3,Canada)を用いて命名される。
【0095】
陽子磁気共鳴(NMR)スペクトルは、400、500もしくは600MHzのVarian機器、または400MHzのBruker機器のいずれかで記録された。化学シフトは、内部標準として残存溶媒系を用いてppm(δ)単位で記録される。分裂パターンは、s,シングレット;d,ダブレット;t,トリプレット;q,カルテット;m,マルチプレット;b,ブロードとして図示される。NMRスペクトルは、25〜90℃の範囲の温度にて記録された。1つ以上の配座異性体が検出された場合、最も豊富のものの化学シフトが通常記録される。
【0096】
HPLC(walk−up):rt=x分によって示されるHPLC分析は、Luna 3u C18(2) 100Aカラム(50x2.0mm、粒径3μm)[移動相および勾配:100%(水+0.05%TFA)〜95%(アセトニトリル+0.05%TFA)で8分。カラムT=40℃。流速=1mL/分。UV検出波長=220nm]を用いてAgilent 1100シリーズ機器上で行われた。
【0097】
直接注入質量スペクトル(MS)は、ES(+)およびES(−)イオン化モード[ES(+):質量範囲:100−1000amu。注入溶媒:水+0.1%HCOH/CHCN 50/50。ES(−):質量範囲:100−1000amu。注入溶媒:水+0.05%NHOH/CHCN 50/50]で作動する、Agilent MSD 1100質量分析計上で実行した。
【0098】
全イオン電流(TIC)およびDAD UVクロマトグラフィートレースは、ピークに関するMSおよびUVスペクトルと一緒に、2996 PDA検出を備え、正または負のエレクトロスプレーイオン化モードで作動するWaters Micromass ZQTM質量分析計に連結したUPLC/MS AcquityTMシステム上で得られた[LC/MS−ES(+または−):AcquityTM UPLC BEH C18カラム(50x2.1mm、粒径1.7μm)を用いて行われた分析。移動相:A−水+0.1%HCOH/B−CHCN+0.06%HCOH。勾配:t=0分 3%B、t=0.05分 6%B、t=0.57分 70%B、t=1.06分 0.38分間続く99%B、t=1.45分 3%B、停止時間1.5分。カラムT=40℃。流速=1.0mL/分。質量範囲:ES(+):100−1000amu。ES(−):100−800amu。UV検出範囲:210−350nm。該方法の使用法は、記載された化合物の解析評価において「UPLC」で示される。
【0099】
マイクロ波照射に関する反応について、Personal Chemistry EmrysTM Optimizerを用いた。
【0100】
多くの調製において、Biotage手動フラッシュクロマトグラフィー(Flash+)、Biotage自動フラッシュクロマトグラフィー(Horizon,SP1およびSP4)、Flash Master PersonalまたはVac Masterシステムを用いて精製を行った。
【0101】
シリカゲル230−400メッシュ(Merck AG Darmstadt,Germanyが供給)、Varian Mega Be−Siプレパックカートリッジ、プレパックBiotageシリカカートリッジ(例えば、Biotage SNAPカートリッジ)またはKP−NHプレパックフラッシュカートリッジ上でフラッシュクロマトグラフィーを行った。
【0102】
SPE−SCXカートリッジは、Varianが供給するイオン交換固相抽出カラムである。SPE−SCXカートリッジで用いられる溶出液は、メタノール、次いで、メタノール中2Nアンモニア溶液である。
【0103】
SPE−Siカートリッジは、Varianが供給するシリカ固相抽出カラムである。
【0104】
以下の表は、用いられる略語を記載する:
【表1】

【0105】
記載例
記載例1:(2S)−2−[2−(メチルオキシ)−2−オキソエチル]−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチル(D1)
【化4】

((2S)−1−{[(1,1−ジメチルエチル)オキシ]カルボニル}−2−ピペリジニル)酢酸(1g、4.11mmol)、DIPEA(2.15ml、12.33mmol)およびTBTU(1.98g、6.17mmol)のDMF(25ml)中混合物を、室温にて20分間攪拌し、混合物の色が暗くなった。MeOH(0.25ml、6.17mmol)を加え、得られた反応混合物を室温にて30分間攪拌した。混合物を、ブライン(20ml)を含有する分析漏斗に移し、EtOAc(2x20ml)で抽出した。合した有機層を、水/氷(5x20ml)で洗浄した。有機層を、(NaSO)乾燥し、濾過し、濃縮した。残渣を、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP1、Cy 100〜Cy/EtOAc 85/15)に付して精製した。画分を回収して、無色油として標記化合物D1を得た(1.01g、3.92mmol、収率95%)。H−NMR(400MHz,CDCl) δ(ppm):4.67−4.75(m,1H),3.96−4.05(m,1H),3.67(s,3H),2.79(t,1H),2.61(dd,1H),2.53(dd,1H),1.60−1.70(m,6H),1.46(s,9H)。
【0106】
記載例2:(2S)−2−(3−ブロモ−2−オキソプロピル)−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチル(D2)
【化5】

調製(i)
窒素下室温にて500ml丸底フラスコ中で(2S)−2−[2−(メチルオキシ)−2−オキソエチル]−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチルD1(11.10g、43.10mmol)をTHF(100ml)に溶解し、淡黄色溶液を得た。該溶液を−78℃に冷却し、テッベ試薬(104mlのトルエン中0.5M溶液、51.80mmol)を滴下した。濃縮混合物を、さらに70mlの乾トルエンで希釈した。得られた褐色−橙色混合物を−78℃にて30分間攪拌し、次いで、室温まで徐々に加温し、2時間攪拌し続けた。反応混合物を、滴下漏斗に充填し、次いで、約400mlの氷冷1M NaOH水性溶液を含有する2L丸底フラスコに滴下した。クエンチ後に、得られた灰色懸濁液をEtOAc(250ml)で希釈し、一晩攪拌し続けた。次いで、得られた黄色懸濁液をグーチ(Gooch)漏斗で濾過し、塩をEtOAc(500ml)で洗浄した。次いで、相を分離し、有機層をブラインで洗浄した(2x500ml)。有機相を(NaSO)乾燥し、濾過し、濃縮して、濃橙色油を得た。残渣をEtO(約500ml)で希釈した。いつくかの塩が沈殿し、得られた懸濁液をグーチ漏斗で濾過した。濾液を真空下で濃縮して、橙−褐色原油として12.40gの(2S)−2−[2−(メチルオキシ)−2−プロペン−1−イル]−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチルを得た。物質は、いくつかの残存塩を含有していた(全回収量は理論量より高かった)。該物質をさらに精製することなく次の反応にて用い、88.7重量%の純度であると予測した。窒素下室温にて1L丸底フラスコ中で(2S)−2−[2−(メチルオキシ)−2−プロペン−1−イル]−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチル(12.40g、43.10mmol)をTHF(125ml)および水(35ml)に溶解し、淡黄色溶液を得た。次いで、約100mlのTHFに溶解したNBS(7.67g、43.10mmol)を加えた。得られた灰色混合物を室温にて1時間攪拌した。50mlのTHFに溶解したさらなるNBS(1.50g、0.2当量)を加え、反応混合物を室温にて1時間攪拌した。混合物を真空下で濃縮し、THFを除去し、次いで、EtOAc(約500ml)および水(200ml)で希釈した。相を分離し、水層をEtOAc(250ml)で逆抽出した。合した有機層を(NaSO)乾燥し、濾過し、濃縮して、17.80gの褐色油を得た。該物質をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(Biotage 75L,Cy/EtOAc 100/0〜90/10)に付して精製し、黄色油として標記化合物D2を得た(6.00g、18.70mmol、D1から収率43.5%、2工程)。
UPLC:rt=0.79分、観測ピーク:342(M+Na,100%)および344(M+Na,100%),264(M−tBu,100%)および266(M−tBu,100%)。C1322BrNO理論値319。
H NMR(400MHz,CDCl) δ(ppm):4.72−4.79(m,1H),3.91−4.10(m,3H),2.77−2.97(m,3H),1.49−1.75(m,6H),1.46(s,9H)。
【0107】
別の調製(ii)
((2S)−2−(3−ブロモ−2−オキソプロピル)−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチル)D2への別経路は以下のとおりである:
DIPA(7.84ml、56.00mmol)のTHF(70ml)中攪拌溶液を、0℃に冷却し、n−BuLi(35.70mlのCy中1.6M溶液、57.10mmol)を滴下した。−90℃に冷却したジブロモメタン(3.58ml、51.30mmol)のTHF(70ml)中溶液に、予め調製したLDA溶液を滴下した。5分攪拌した後、(2S)−2−[2−(メチルオキシ)−2−オキソエチル]−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチルD1(6.00g、23.30mmol)のTHF(47ml)中溶液を反応混合物に滴下し、次いで、10分後、n−BuLi(22.20mlのCy中1.6M溶液、35.50mmol)を加えた。5分後、得られた混合物を、カニューレで−78℃に冷却したAcCl(35.00ml、492mmol)の無水EtOH(230ml)中急速攪拌溶液に加えた。反応混合物を攪拌し続け、次いで、EtO(400ml)で希釈した。混合物を分液漏斗に移し、冷10%HSO水性溶液(2x100ml)、5%NaHCO水性溶液(100ml)およびブライン(100ml)で洗浄した。有機相を(NaSO)乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP1 40M、DCM)に付して精製し、標記化合物D2を得た(1.14g、3.56mmol、収率15%)。NMRおよびMSは生成物を確認した。
【0108】
別の調製(iii)
1L丸底フラスコ中で、二塩化チタノセン(60g、0.24mol)を窒素雰囲気下にて乾トルエン(300ml)に懸濁し、0℃まで冷却した。塩化メチルマグネシウム(THF中3M溶液、180ml、0.54mol)を、内部温度を8℃以下に保ちながら(45分かけて)滴下した。得られた混合物を0−5℃にて1.5時間攪拌し、次いで、内部温度を5℃以下に保ちながら、サイフォンで氷冷6重量%NHCl水性溶液(180ml)中に(30分かけて)移した。混合物を0−5℃にて1時間攪拌した。セライト(15g)を加え、混合物を10℃にて15分間攪拌し、次いで、トルエン(20ml)で洗浄濾過した。相を分離した。有機層を水(180ml)およびブライン(180ml)で洗浄し、(NaSO)乾燥し、濾過し、次いで、真空下で200mlまで蒸留した。窒素雰囲気下、ジメチルチタノセンのトルエン中溶液を1L丸底フラスコ中に充填し、(2S)−2−[2−(メチルオキシ)−2−オキソエチル]−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチル(20g、0.078mol)を加えた。得られた混合物を90℃にて3時間攪拌した。トルエン(500ml)およびイソオクタン(500ml)を加え、混合物をセライトパッドで濾過し、無機塩を取り除いた。次いで、最も微細な粒子径固体を取り除くためにCUNO濾過(R55Sカートリッジ)を行った。得られた透明溶液を真空下で濃縮して、橙色油として中間体(2S)−2−{2−[(メチルオキシ)メチル]−2−プロペン−1−イル}−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチルを得た(13.60g、0.053mol、収率68%)。HPLC(walk−up):rt=4.69分。H−NMR(400MHz,CDCl) δ(ppm):4.42−4.58(m,1H),3.94−4.08(m,1H),3.88−3.93(m,2H),3.53(s,3H),2.79(t,1H),2.42(dd,1H),2.27(dd,1H),1.50−1.70(m,6H),1.46(s,9H)。
【0109】
NBS(8.36g、0.047mol)を、(2S)−2−{2−[(メチルオキシ)メチル]−2−プロペン−1−イル}−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチル(10g、0.039mol)のTHF(70ml)およびHO(15ml)中混合物に少しずつ加えた。混合物をTBME(100ml)および水(50ml)で希釈した。
水相をTBME(50ml)で逆抽出した。回収した有機相を、4重量%NaHCO水性溶液で洗浄し(2回)、(NaSO)乾燥し、濾過して、真空下で蒸発させた。残存油を、シリカパッド(20g、トルエン/EtOAc 90/10)で濾過して精製した。シリカパッド(50g、トルエン/TBME 90/10)でさらに濾過して、標記化合物D2を得た(7.80g、0.024mol、収率62%)。
H−NMR(600MHz,DMSO−d) δ(ppm):4.50−4.64(m,1H),4.35(s,2H),3.70−3.88(m,1H),2.86−3.01(m,1H),2.65−2.82(m,2H),1.42−1.60(m,5H),1.35(s,9H),1.14−1.28(m,1H)。
【0110】
記載例3:6−クロロ−5−メチル−4−ピリミジンアミン(D3):
【化6】

4,6−ジクロロ−5−メチルピリミジン(Sigma−Aldrich #595446から入手可能)(5g、30.70mmol)のアンモニア(MeOH中7M溶液、15ml、105mmol)中混合物を、密封バイアル中で140℃にて40分間攪拌し続けた。水(300ml)およびEtOAc(600ml)を得られた白色懸濁液に加え、二層を分離した。水相をEtOAc(3x600ml)で抽出した。回収した有機相を、(NaSO)乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、白色固体として標記化合物D3を得た(3.10g、20.73mmol、収率68%)。UPLC:rt=0.41分、観測ピーク:144(M+1,100%)および146(M+1,33%)。CClN 理論値143。H NMR(400MHz,DMSO−d) δ(ppm):8.06(s,1H),7.09(bs,2H),2.07(s,3H)。
【0111】
記載例4:7−クロロ−8−メチル−2−[(2S)−2−ピペリジニルメチル]イミダゾ[1,2−c]ピリミジン(D4):
【化7】

(2S)−2−(3−ブロモ−2−オキソプロピル)−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチルD2(3g、9.37mmol)のDMF(25ml)中溶液に、6−クロロ−5−メチル−4−ピリミジンアミンD3(1.48g、10.31mmol)を加え、得られた混合物を80℃にて4時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、EtO(300ml)および水(200ml)を残渣に加えた。二層を分離し、有機層をDCM(2x200ml)で逆抽出した。回収した有機相を、(NaSO)乾燥し、減圧下で蒸発させた。残渣を、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP4 40M、DCM 100〜DCM /MeOH 95/5)に付して精製した。画分を回収して、標記化合物D4、対応するN−Boc保護誘導体およびいくつかの残存6−クロロ−5−メチル−4−ピリミジンアミンを含有する粗物質(1g)を得るためにSCXカラムで溶出した固体を得た。[N−Boc誘導体データ。UPLC:rt=0.74分、観測ピーク:365(M+1,100%)および367(M+1,33%)。C1825ClN理論値364]。粗製物をDCM(10ml)に溶解し、得られた溶液を0℃まで冷却した。TFA(2.50ml)を加え、反応物を室温にて4時間攪拌し続けた。揮発物を減圧下で取り除き、残渣をSCXカラム(50g)で溶出し、いくつかの残存6−クロロ−5−メチル−4−ピリミジンアミンが混入した標記化合物D4(0.80g)を得た。HPLC(walk−up):rt=2.44分。UPLC:rt=0.41分、観測ピーク:265(M+1,100%)および267(M+1,33%)。C1317ClN理論値264。
【0112】
記載例5:5−メチル−6−(メチルオキシ)−4−ピリミジンアミン(D5):
【化8】

6−アミノ−5−メチル−4(1H)−ピリミジノン(Chemstep #19148から入手可能)(1g、7.99mmol)のTHF(60ml)中懸濁液に、トリフェニルホスフィン(4.19g、15.98mmol)を加えた。混合物を脱気し(3xポンプ/N)、次いで、MeOH(0.65ml、15.98mmol)を加えた。得られた反応混合物を0℃まで冷却し、DIAD(3.26ml、16.78mmol)を滴下した。混合物を室温まで加温し、30分間攪拌し続け、減圧下で濃縮した。得られた黄色油をSCXカラム(70g)で溶出し、次いで、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP4 40M、DCM 100〜DCM/MeOH 95/5)に付してさらに精製した。画分を回収して、白色固体として標記化合物D5を得た(0.31g、2.22mmol、収率28%)。UPLC:rt=0.33分、観測ピーク:140(M+1)。CO理論値139。H NMR(400MHz,DMSO−d) δ(ppm):7.97(s,1H),6.36(bs,2H),3.79(s,3H),1.83(s,3H)。
【0113】
記載例6:8−メチル−7−(メチルオキシ)−2−[(2S)−2−ピペリジニルメチル]イミダゾ[1,2−c]ピリミジン(D6):
【化9】

(2S)−2−(3−ブロモ−2−オキソプロピル)−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチルD2(0.15g、0.49mmol)のDMF(2ml)中溶液に、5−メチル−6−(メチルオキシ)−4−ピリミジンアミンD5(0.081g、0.59mmol)を加え、反応混合物を80℃にて45分間攪拌した。次いで、混合物をSCXカラム(10g)で溶出した。画分を回収して、標記化合物D6、対応するN−Boc保護誘導体およびいくつかの残存5−メチル−6−(メチルオキシ)−4−ピリミジンアミンを含有する油(0.19g)を得た。[N−Boc誘導体データ。UPLC:rt=0.58分、観測ピーク:361(M+1)。C1928理論値360]。粗製物をDCM(2ml)に溶解し、得られた溶液を0℃まで冷却した。TFA(0.40ml)を滴下し、反応物を1時間攪拌し続けた。揮発物を減圧下で取り除き、残渣をSCXカラム(5g)で溶出して、いくつかの残存5−メチル−6−(メチルオキシ)−4−ピリミジンアミンが混入した標記化合物D6(0.16g)を得た。UPLC:rt=0.34分、観測ピーク:261(M+1)。C1420O理論値260。
【0114】
記載例7:8−クロロ−7−メチル−2−[(2S)−2−ピペリジニルメチル]イミダゾ[1,2−c]ピリミジン(D7):
【化10】

(2S)−2−(3−ブロモ−2−オキソプロピル)−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチルD2(0.10g、0.31mmol)のDMF(1.50ml)中溶液に、5−クロロ−6−メチル−4−ピリミジンアミン(Chemstep #19785から入手可能)(0.049g、0.34mmol)を加え、反応混合物を80℃にて4時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をEtOで溶解した。有機相を水で洗浄し、(NaSO)乾燥し、濾過し、減圧下で蒸発させた。残渣をSCXカラムで溶出し、標記化合物D7、対応するN−Boc保護誘導体およびいくつかの残存5−クロロ−6−メチル−4−ピリミジンアミンを含有する粗物質(0.021g)を得た。[N−Boc誘導体データ。UPLC:rt=0.71分、観測ピーク:365(M+1,100%)および367(M+1,33%)。C1825ClN理論値364]。該粗製物をDCM(1ml)に溶解し、TFA(2ml)を滴下した。反応物を室温にて1時間攪拌し続けた。揮発物を減圧下で取り除き、残渣をSCXカラム(500mg)で溶出して、いくつかの残存5−クロロ−6−メチル−4−ピリミジンアミンが混入した標記化合物D7(0.018g)を得た。UPLC:rt=0.40分、観測ピーク:265(M+1,100%)および267(M+1,33%)。C1317ClN理論値264。
【0115】
記載例8:4−クロロ−5,6−ジメチルピリミジン(D8):
【化11】

4,6−ジクロロ−5−メチルピリミジン(Sigma−Aldrich #595446から入手可能)(0.50g、3.07mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.18g、0.15mmol)のトルエン(6ml)およびDMF(1ml)中混合物に、炭酸セシウム(3g、9.20mmol)を、次いで、メチルボロン酸(0.20g、3.37mmol)を加えた。得られた反応混合物を、マイクロ波照射下140℃にて加熱し(2サイクルx30分)、室温まで冷却し、濾過した。溶媒を減圧下で除去した。残渣をEtOAcで溶解し、飽和NaHCO水性溶液およびブラインで洗浄した。有機相を分離し、(NaSO)乾燥し、濾過し、濃縮して、標記化合物D8を得た(0.18g、1.26mmol、収率41%)。UPLC:rt=0.53分、観測ピーク:143(M+1−HCl,100%)および445(M+1−HCl,33%)。CClN理論値142。H NMR(400MHz,CDCl) δ(ppm):8.70(s,1H),2.57(s,3H),2.39(s,3H)。
【0116】
記載例9:5,6−ジメチル−4−ピリミジンアミン(D9):
【化12】

4−クロロ−5,6−ジメチルピリミジンD8(0.18g、1.26mmol)の乾トルエン(4ml)中溶液に、ナトリウムt−ブトキシド(0.17g、1.77mmol)、Pd(dba)(0.12g、0.13mmol)、BINAP(0.24g、0.38mmol)およびベンゾフェノンイミン(0.25ml、1.51mmol)を加えた。得られた混合物を脱気し(3xポンプ/N)、次いで、80℃に加熱した。1時間攪拌した後、混合物を室温まで冷却し、EtO(100ml)で希釈し、セライトパッドで濾過した。揮発物を蒸発させ、得られた油をTHF(20ml)に溶解し、HCl(3M水性溶液、0.63ml、1.89mmol)を加えた。混合物を室温にて3時間攪拌した。混合物を室温にて3時間攪拌し、減圧下で濃縮し、飽和NaHCO水性溶液で中和し、DCM(50ml)で希釈した。無機層をDCM(2x50ml)で逆抽出した。回収した有機層を、相分離器チューブに通し、蒸発させた。橙色固体残渣を、EtOで数回トリチュレートし、乾燥して、標記化合物D9を得た(0.067g、0.54mmol、収率42%)。H NMR(400MHz,CDCl) δ(ppm):8.38(s,1H),4.78(bs,1H),2.43(s,3H),2.08(s,3H)。
【0117】
記載例10:7,8−ジメチル−2−[(2S)−2−ピペリジニルメチル]イミダゾ[1,2−c]ピリミジン(D10):
【化13】

(2S)−2−(3−ブロモ−2−オキソプロピル)−1−ピペリジンカルボン酸1,1−ジメチルエチルD2(0.10g、0.31mmol)および5,6−ジメチル−4−ピリミジンアミンD9(0.042g、0.34mmol)のDMF(1ml)中溶液を、80℃にて4時間攪拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(DCM 100〜DCM/MeOH 98/2)に付して精製し、次いで、SCXカラムで溶出し、標記化合物D10、対応するN−Boc保護誘導体およびいくつかの残存5,6−ジメチル−4−ピリミジンアミンを含有する粗物質(0.018g)を得た。[N−Boc誘導体データ。UPLC:rt=0.58分、観測ピーク:345(M+1)。C1928理論値344]。該粗製物をDCM(2ml)に溶解した。
TFA(0.50ml)を滴下し、反応物を室温にて1時間攪拌し続けた。揮発物を減圧下で除去し、残渣をSCXカートリッジで溶出し、いつくかの残存5,6−ジメチル−4−ピリミジンアミンが混入した標記化合物D10(0.012g)を得た。UPLC:rt=0.36分、観測ピーク:245(M+1)。C1420理論値244。
【実施例】
【0118】
実施例1:7−クロロ−8−メチル−2−({(2S)−1−[(2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−イル)カルボニル]−2−ピペリジニル}メチル)イミダゾ[1,2−c]ピリミジン(HCl塩)(E1):
【化14】

2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−カルボン酸(0.73g、3.32mmol)のDCM(20ml)中溶液に、塩化オキサリル(0.58ml、6.65mmol)およびDMF(0.050ml)を加え、得られた混合物を室温にて30分間攪拌した。揮発物を減圧下で取り除き、残渣をDCM(15ml)に溶解した。塩化アシル溶液を、0℃にて7−クロロ−8−メチル−2−[(2S)−2−ピペリジニルメチル]イミダゾ[1,2−c]ピリミジンD4(0.80gの記載例4で得られた粗物質)およびTEA(1.26ml、9.07mmol)のDCM(20ml)中混合物に滴下し、混合物を室温にて2時間攪拌した。次いで、反応混合物をDCM(60ml)で希釈し、飽和NaHCO水性溶液(3x80ml)およびブライン(80ml)で洗浄した。有機相を相分離器チューブにより回収して、濃縮した。残渣を、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP1 40M、DCM 100〜DCM/MeOH 97/3)に付して精製した。画分を回収して、標記化合物E1の遊離塩基を得た(1.04g、2.23mmol、D2からの収率24%、3段階工程)。
HPLC(walk−up):rt=4.09分、UPLC:rt=0.70分、観測ピーク:466(M+1,100%)および468(M+1,33%)。C2424ClNOS理論値465。H NMR[生成物は配座異性体の混合物(比率約65/35)として存在し、帰属は主成分を示す](500MHz,DMSO−d) δ(ppm):9.05(s,1H),7.67(s,1H),7.13−7.21(m,3H),7.02−7.09(m,2H),4.45(dd,1H),4.01−4.10(m,1H),3.09−3.26(m,2H),3.04(t,1H),2.47(s,3H),2.21(s,3H),0.80−1.79(m,6H)。遊離塩基(1.04g、2.23mmol)をDCM(10ml)およびEtO(25ml)に溶解し、溶液を0℃まで冷却し、1M HClのEtO中溶液(5ml、5mmol)を滴下した。混合物を室温にて10分間攪拌し続けた。揮発物を減圧下で蒸発させ、残渣を冷EtOで数回トリチュレートして、標記化合物E1を得た(1.12g、2.19mmol、収率98%)。HPLC(walk−up):rt=4.09分。UPLC:rt=0.70分、観測ピーク:466(M+1−HCl,100%)および468(M+1−HCl,33%)。C2425ClOS理論値501。
【0119】
実施例2:8−メチル−2−({(2S)−1−[(2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−イル)カルボニル]−2−ピペリジニル}メチル)イミダゾ[1,2−c]ピリミジン(HCl塩)(E2):
【化15】

7−クロロ−8−メチル−2−({(2S)−1−[(2−メチル−5−フェニル−1,3−トリアゾール−4−イル)カルボニル]−2−ピペリジニル}メチル)イミダゾ[1,2−c]ピリミジン塩酸塩E1(13.50mg、0.027mmol)のMeOH(1ml)中溶液に、Pd/C(1.43mg、0.013mmol)、次いで、ギ酸アンモニウム(5.79mg、0.092mmol)を加えた。反応混合物を室温にて1時間、次いで、40℃にて5時間攪拌し続けた。Pd/C(1当量)およびギ酸アンモニウム(3当量)をさらに加えた後、混合物を80℃にて10時間攪拌し、室温まで冷却し、SCXカラムで溶出した。画分を回収して、物質を得、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(5gカートリッジ、DCM 100〜DCM/MeOH 90/10)に付して精製し、標記化合物E2の遊離塩基を得た(7.50mg、0.017mmol、収率65%)。MS:(ES/+) m/z:432(M+1)。C2425OS理論値431。UPLC:rt=0.58分、観測ピーク:432(M+1)。遊離塩基(6.50mg、0.015mmol)をDCM(0.50ml)およびEtO(0.50ml)に溶解し、2M HClのEtO中溶液(0.30ml、0.600mmol)を加えた。揮発物を減圧下で取り除き、残渣をEtOで数回トリチュレートして、標記化合物E2を得た(5.50mg、0.012mmol、収率78%)。HPLC(walk−up):rt=3.48分。MS:(ES/+) m/z:432(M+1−HCl)。C2426OSCl理論値467。
【0120】
実施例3:8−メチル−7−(メチルオキシ)−2−({(2S)−1−[(2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−イル)カルボニル]−2−ピペリジニル}メチル)イミダゾ[1,2−c]ピリミジン(HCl塩)(E3):
【化16】

2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−カルボン酸(35.20mg、0.16mmol)のDCM(1ml)中溶液に、塩化オキサリル(0.014ml、0.16mmol)およびDMF(0.011ml)を加え、得られた混合物を室温にて30分間攪拌した。揮発物を減圧下で取り除き、残渣をDCM(1ml)に溶解した。塩化アシル溶液を、0℃にて8−メチル−7−(メチルオキシ)−2−[(2S)−2−ピペリジニルメチル]イミダゾ[1,2−c]ピリミジンD6(38mgの記載例6で得られた粗物質)およびTEA(0.061ml、0.44mmol)のDCM(1ml)中混合物に滴下し、混合物を室温にて1時間攪拌した。次いで、反応混合物をDCM(10ml)で希釈し、飽和NaHCO水性溶液(4ml)で洗浄した。有機相を分離し、(NaSO)乾燥し、濾過し、濃縮した。残渣を、NHのフラッシュクロマトグラフィー(Biotage SP4 12M,Cy/EtOAc 95/5〜60/40)に付して精製した。画分を回収して、白色固体として標記化合物E3の遊離塩基を得た(41mg、0.088mmol、D2からの収率75%、3段階工程)。HPLC(walk−up):rt=3.93分。MS:(ES/+) m/z:462(M+1)。C2527S理論値461。H NMR(500MHz,DMSO−d):δ(ppm):8.97(s,1H),7.49(s,1H),7.03−7.12(m,2H),7.13−7.24(m,3H),4.44(dd,1H),4.04−4.11(m,1H),3.86(s,3H),3.10(dd,1H),3.00(t,1H),2.63(dd,1H),2.48(s,3H),2.03(s,3H),1.23−1.72(m,5H),0.82−0.96(m,1H)。遊離塩基(39mg、0.084mmol)をDCM(1ml)に溶解し、溶液を0℃まで冷却し、1M HClのEtO中溶液(0.13ml、0.13mmol)を加えた。混合物を15分間攪拌し続けた。揮発物を減圧下で蒸発させて、白色固体として標記化合物E3を得た(42mg、0.083mmol、収率94%)。HPLC(walk−up):rt=3.98分。MS:(ES/+) m/z:462(M+1−HCl)。C2528ClNS理論値497。
【0121】
実施例4:8−クロロ−7−メチル−2−({(2S)−1−[(2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−イル)カルボニル]−2−ピペリジニル}メチル)イミダゾ[1,2−c]ピリミジン(HCl塩)(E4):
【化17】

2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−カルボン酸(16.58mg、0.076mmol)のDCM(1ml)中溶液に、塩化オキサリル(0.006ml、0.076mmol)およびDMF(0.005ml)を加え、得られた混合物を室温にて30分間攪拌した。揮発物を減圧下で取り除き、残渣をDCM(1ml)に溶解した。塩化アシル溶液を、0℃にて8−クロロ−7−メチル−2−[(2S)−2−ピペリジニルメチル]イミダゾ[1,2−c]ピリミジンD7(18mgの記載例7で得られた粗物質)およびTEA(0.029ml、0.206mmol)のDCM(1ml)中混合物に滴下し、混合物を室温にて1時間攪拌した。次いで、反応混合物をDCM(15ml)で希釈し、飽和NaHCO水性溶液(4ml)で洗浄した。有機相を分取し、(NaSO)乾燥し、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(Biotage 12M、DCM 100〜DCM/MeOH 98/2)に付して精製した。画分を回収して、淡黄色固体として標記化合物E4の遊離塩基を得た(16.20mg、0.027mmol、D2からの収率9%、3段階工程)。
UPLC:rt=0.68分、観測ピーク:466(M+1,100%)および468(M+1,33%)。C2424ClNOS理論値465。H NMR[生成物は、配座異性体の混合物(比率約65/35)として存在する。帰属は主成分を示す](500MHz,DMSO−d):δ(ppm):9.12(s,1H),7.66(s,1H),7.16−7.27(m,2H),7.07−7.15(m,3H),4.44(dd,1H),3.92−4.05(m,1H),3.08−3.25(m,1H),3.04(t,1H),2.61−2.67(m,1H),2.44(s,3H),2.41(s,3H),0.75−1.76(m,6H)。遊離塩基(15mg、0.032mmol)を無水DCM(1ml)に溶解し、溶液を0℃まで冷却し、1M HClのEtO中溶液(0.10ml、0.100mmol)を加えた。混合物を15分間攪拌し続けた。揮発物を減圧下で蒸発させて、淡褐色固体として標記化合物E4を得た(17mg、0.027mmol、定量的収率)。HPLC(walk−up):rt=4.61分。MS:(ES/+) m/z:466(M+1−HCl)。C2525ClOS理論値501。
【0122】
実施例5:7,8−ジメチル−2−({(2S)−1−[(2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−イル)カルボニル]−2−ピペリジニル}メチル)イミダゾ[1,2−c]ピリミジン(HCl塩)(E5):
【化18】

5−フェニル−2−メチル−1,3−チアゾール−4−カルボン酸(16.50mg、0.074mmol)のDMF(2ml)中溶液に、DIPEA(0.051ml、0.29mmol)およびTBTU(26.80mg、0.083mmol)を加え、混合物を室温にて30分間攪拌し続けた。7,8−ジメチル−2−[(2S)−2−ピペリジニルメチル]イミダゾ[1,2−c]ピリミジンD10(0.012gの記載例10で得られた粗物質)のDMF(1ml)中溶液を、0℃にて活性化カルボン酸に加え、反応混合物を2時間攪拌した。混合物をDCMで希釈し、1M NaOH水性溶液およびブラインで洗浄した。有機層を分離し、(NaSO)乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。残渣を、フラッシュクロマトグラフィー(DCM 100〜DCM/MeOH 90/10)に付して精製した。画分を回収して、標記化合物E5の遊離塩基を得た(14mg、0.031mmol、D2から収率10%、三段階)。UPLC:rt=0.57分、観測ピーク:446(M+1)。C2527OS理論値445。遊離塩基(14mg、0.031mmol)をDCM(0.50ml)およびEtO(0.50ml)に溶解し、1M HClのEtO中溶液(0.031ml、0.031mmol)を加えた。混合物を10分間攪拌し続けた。揮発物を減圧下で蒸発させ、残渣をEtOで数回トリチュレートして、標記化合物E5を得た(12.30mg、0.023mmol、収率74%)。UPLC:rt=0.57分、観測ピーク:446(M+1−HCl)。C2528ClNOS 理論値481。H NMR[生成物は配座異性体の混合物(比率約70/30)として存在する。帰属は主成分を示す](500MHz,DMSO−d):δ(ppm):9.42(s,1H),8.02(s,1H),6.71−7.63(m,5H),4.45(dd,1H),3.72−4.35(m,1H),3.64(t,1H),3.04−3.26(m,2H),2.27−2.73(m,3H),0.71−0.80(m,6H)。
【0123】
実施例6:FLIPRを用いるヒトオレキシン−1および2でのアンタゴニストアフィニティーの測定
細胞培養
組み換えヒトオレキシン−1またはヒトオレキシン−2受容体を安定発現する、接着チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞または組み換えラットオレキシン−1またはラットオレキシン−2受容体を安定発現する、ラット好塩基球性白血病細胞(RBL)を、10%非補体化ウシ胎児血清(Life Technologies,cat番号10106−078)および400μg/mLジェネテシン(Geneticin)G418(Calbiochem,cat番号345810)が追加された、アルファ最小必須培地(Gibco/Invitrogen,cat番号;22571−020)の培養液中で維持した。細胞を95%:5% 空気:CO下37℃にて単層として成長させた。
【0124】
該実施例にて用いられるヒトオレキシン1、ヒトオレキシン2、ラットオレキシン1およびラットオレキシン2受容体の配列は、Sakurai et alに報告されるように、用いられるヒトオレキシン1受容体配列が、アミノ酸残基280番目にグリシンではなくアラニンを有していたことを除いては、Sakurai, T. et al (1998) Cell, 92 pp 573〜585に公開されたとおりであった。
【0125】
FLIPR(商標)を用いる[Ca2+の測定
細胞を、上記の培地中ブラック透明底384ウェルプレート(20,000細胞/ウェルの密度)に播種し、一晩維持した(37℃にて95%:5% 空気:CO)。実験日に、培地を廃棄し、細胞をプロベネシド2.5mMとともに加えられる標準バッファー(NaCl,145mM;KCl,5mM;HEPES,20mM;グルコール,5.5mM;MgCl,1mM;CaCl,2mM)で3回洗浄した。次いで、プレートを、1μM FLUO−4AM染料とともに暗所で37℃にて60分間培養して、FLUO−4AMの細胞取り込みを可能にし、その後、細胞内エステラーゼで細胞から遊離できないFLUO−4に変換される。培養後、細胞を標準バッファーで3回洗浄し、細胞外染料を除去し、洗浄後に30μLのバッファーを各ウェルに入れた。
【0126】
本発明の化合物を、1.66x10−5M〜1.58x10−11Mの最終アッセイ濃度範囲で試験した。本発明の化合物は、10mMのストック濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。これらのストック溶液をDMSOで連続希釈し、1μLの各希釈液を384ウェル化合物プレートに移した。化合物を細胞に導入する直前に、バッファー溶液(50μl/ウェル)を該プレートに加えた。細胞のアゴニスト刺激を可能にするために、ヒトオレキシンA(hオレキシンA)の溶液を含有するストックプレートを、使用直前にバッファーで最終濃度に希釈した。hオレキシンAの該最終濃度は、該検定システムにおけるhオレキシンAアゴニスト効力の計算EC80と同等であった。実験の同日に、該値は、濃度反応曲線中のhオレキシンAを検定すること(少なくとも16回反復)によって得られた。
【0127】
次いで、負荷細胞を試験化合物とともに37℃にて10分間培養した。次いで、プレートをFLIPR(商標)(Molecular Devices,UK)に入れて、細胞蛍光をモニターした(λex=488nm、λEM=540nm)(Sullivan E, Tucker EM, Dale IL. Measurement of [Ca2+]i using the fluometric imaging plate reader (FLIPR). In: Lambert DG (ed.), Calcium Signaling Protocols. New Jersey: Humana Press, 1999, 125-136)。基準蛍光測定値を5〜10秒間かけて得、次いで、10μLのEC80 hオレキシンA溶液を加えた。次いで、蛍光を4〜5分間かけて読み取った。
【0128】
データ分析
機能的反応を、FLIPRを用いてピーク蛍光強度−基準蛍光として測定し、同一プレートに対する非阻害性オレキシン−A誘発反応のパーセントとして表した。4パラメータロジスティックモデルおよびマイクロソフト・エクセルを用いて、反復曲線適合およびパラメータ推定を行った(Bowen WP, Jerman JC. Nonlinear regression using spreadsheets. Trends Pharmacol. Sci. 1995; 16: 413-417)。修正チェン−プルソフ(Cheng-Prusoff)補正を用いて、アンタゴニストアフィニティー値(IC50)を機能的pK値に変換した(Cheng YC, Prusoff WH. Relationship between the inhibition constant (Ki) and the concentration of inhibitor which causes 50 percent inhibition (IC50) of an enzymatic reaction. Biochem. Pharmacol. 1973, 22: 3099-3108)。
【数1】

{式中:[アゴニスト]はアゴニスト濃度であり、EC50はアゴニスト用量反応曲線から得られる50%活性化するアゴニストの濃度であり、n=用量反応曲線の傾き}
【0129】
n=1の場合、方程式は、既知のチェン−プルソフ式に崩壊する。
【0130】
実施例1〜5の化合物を、実施例6の方法にしたがって試験した。すべての化合物は、(アミノ酸残基280番目にグリシンではなくアラニンを有する)ヒトクローン化オレキシン−1受容体に対し8.4〜9.2およびヒトクローン化オレキシン−2受容体に対し8.1〜9.1のfpKi値を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中:
Arは、式
【化2】

からなる群より選択され;
は、(C1−4)アルキル、ハロ、ハロ(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、ハロ(C1−4)アルコキシ、(C1−4)アルキル−O−(C1−4)アルキル、CN、NRであり、ここで、RはHまたは(C1−4)アルキルであり、RはHまたは(C1−4)アルキルであり;
は、(C1−4)アルキル、ハロ、ハロ(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、ハロ(C1−4)アルコキシ、(C1−4)アルキル−O−(C1−4)アルキル、CN、NRであり、ここで、RはHまたは(C1−4)アルキルであり、RはHまたは(C1−4)アルキルであり;
は、(C1−4)アルキル、ハロ、ハロ(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、ハロ(C1−4)アルコキシ、(C1−4)アルキル−O−(C1−4)アルキル、CN、NRであり、ここで、RはHまたは(C1−4)アルキルであり、RはHまたは(C1−4)アルキルであり;
nは0または1であり;
pは0または1であり;および
qは0または1である;
ただし、pおよびqは両方とも0ではない]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項2】
Arが式(II)の基である、請求項1記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項3】
Arが式(III)の基である、請求項1記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項4】
nが0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項5】
pが1であり、qが0であり、Rがメチルである、請求項4記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項6】
pが1であり、qが1であり、RおよびRの一方がハロであり、他方が(C1−4)アルキルである、請求項4記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項7】
が(C1−4)アルキルであり、Rがハロである、請求項6記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項8】
がメチルであり、Rがクロロである、請求項7記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項9】
がハロであり、Rが(C1−4)アルキルである、請求項6記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項10】
がクロロであり、Rがメチルである、請求項9記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項11】
7−クロロ−8−メチル−2−({(2S)−1−[(2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−イル)カルボニル]−2−ピペリジニル}メチル)イミダゾ[1,2−c]ピリミジン;
8−メチル−2−({(2S)−1−[(2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−イル)カルボニル]−2−ピペリジニル}メチル)イミダゾ[1,2−c]ピリミジン;
8−クロロ−7−メチル−2−({(2S)−1−[(2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−イル)カルボニル]−2−ピペリジニル}メチル)イミダゾ[1,2−c]ピリミジン;
8−メチル−7−(メチルオキシ)−2−({(2S)−1−[(2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−イル)カルボニル]−2−ピペリジニル}メチル)イミダゾ[1,2−c]ピリミジン;および
7,8−ジメチル−2−({(2S)−1−[(2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−イル)カルボニル]−2−ピペリジニル}メチル)イミダゾ[1,2−c]ピリミジン
からなる群より選択される化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項12】
医薬として用いる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項13】
ヒトオレキシン受容体のアンタゴニストを要する疾患または障害の治療に用いる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項14】
疾患または障害が、睡眠障害、うつ病もしくは気分障害、不安障害、物質関連障害または摂食障害である、請求項13記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項15】
疾患または障害が睡眠障害である、請求項14記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項16】
睡眠障害が、原発性不眠症(307.42)、原発性過眠症(307.44)、ナルコレプシー(347)、呼吸関連睡眠障害(780.59)、概日リズム睡眠障害(307.45)、特定不能の睡眠異常症(307.47)などの睡眠異常症;原発性睡眠障害、例えば、悪夢障害(307.47)、夜驚症(307.46)、夢遊症障害(307.46)および特定不能の錯眠(307.47)などの錯眠;別の精神障害に関連する睡眠障害、例えば、別の精神障害に関連する不眠症(307.42)および別の精神障害に関連する過眠症(307.44);一般的健康状態に起因する睡眠障害、特に、神経学的障害、神経因性疼痛、下肢静止不能症候群、心臓および肺の疾患のような疾患に付随する睡眠障害;ならびに不眠症型サブタイプ、過眠症型サブタイプ、錯眠型サブタイプ、および混合型サブタイプを含む物質誘導性睡眠障害;睡眠時無呼吸および時差ぼけ症候群からなる群より選択される、請求項15記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項17】
ヒトオレキシン受容体のアンタゴニストを要する疾患または障害の治療のための医薬の製造における、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩の使用。
【請求項18】
疾患または障害が、睡眠障害、うつ病もしくは気分障害、不安障害、物質関連障害または摂食障害である、請求項17記載の使用。
【請求項19】
疾患または障害が睡眠障害である、請求項18記載の使用。
【請求項20】
睡眠障害が、原発性不眠症(307.42)、原発性過眠症(307.44)、ナルコレプシー(347)、呼吸関連睡眠障害(780.59)、概日リズム睡眠障害(307.45)、特定不能の睡眠異常症(307.47)などの睡眠異常症;原発性睡眠障害、例えば、悪夢障害(307.47)、夜驚症(307.46)、夢遊症障害(307.46)および特定不能の錯眠(307.47)などの錯眠;別の精神障害に関連する睡眠障害、例えば、別の精神障害に関連する不眠症(307.42)および別の精神障害に関連する過眠症(307.44);一般的健康状態に起因する睡眠障害、特に、神経学的障害、神経因性疼痛、下肢静止不能症候群、心臓および肺の疾患のような疾患に付随する睡眠障害;ならびに不眠症型サブタイプ、過眠症型サブタイプ、錯眠型サブタイプ、および混合型サブタイプを含む物質誘導性睡眠障害;睡眠時無呼吸および時差ぼけ症候群からなる群より選択される、請求項19記載の使用。
【請求項21】
ヒトオレキシン受容体のアンタゴニストを要する疾患または障害の治療または予防方法であって、有効量の請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩をそれを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項22】
疾患または障害が、睡眠障害、うつ病もしくは気分障害、不安障害、物質関連障害または摂食障害である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
疾患または障害が睡眠障害である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
睡眠障害が、原発性不眠症(307.42)、原発性過眠症(307.44)、ナルコレプシー(347)、呼吸関連睡眠障害(780.59)、概日リズム睡眠障害(307.45)、特定不能の睡眠異常症(307.47)などの睡眠異常症;原発性睡眠障害、例えば、悪夢障害(307.47)、夜驚症(307.46)、夢遊症障害(307.46)および特定不能の錯眠(307.47)などの錯眠;別の精神障害に関連する睡眠障害、例えば、別の精神障害に関連する不眠症(307.42)および別の精神障害に関連する過眠症(307.44);一般的健康状態に起因する睡眠障害、特に、神経学的障害、神経因性疼痛、下肢静止不能症候群、心臓および肺の疾患のような疾患に付随する睡眠障害;ならびに不眠症型サブタイプ、過眠症型サブタイプ、錯眠型サブタイプ、および混合型サブタイプを含む物質誘導性睡眠障害;睡眠時無呼吸および時差ぼけ症候群からなる群より選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
a)請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩およびb)医薬上許容される担体を含む医薬組成物。

【公表番号】特表2010−531849(P2010−531849A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513964(P2010−513964)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058428
【国際公開番号】WO2009/003997
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】