説明

オレフィンを重合するための溶液方法

ポリマー溶液を揮発分除去工程にかけて未反応のモノマーからポリマーを分離する前か又はこれと同時に、製造されたポリマー溶液を1種類以上の酸化防止剤化合物と接触させることを含む、溶液重合条件下で1種類以上のオレフィンを重合してポリマー溶液を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液相中でα−オレフィンを重合することを含む方法に関する。特に、本発明は、未反応のモノマーをポリオレフィンから除去するために、得られたポリマー溶液を揮発分除去にかけるα−オレフィン溶液重合に関する。
【背景技術】
【0002】
1種類以上のオレフィンの重合を溶液相中で行う場合には、反応媒体中のポリオレフィンの溶液が重合反応器から排出されることは公知である。反応媒体は、液体モノマー、及び場合によっては重合するα−オレフィンによって、不活性の炭化水素溶媒(これは液体媒体中における得られたポリマーの可溶性を促進させるのに用いることができる)を含む。非常に粘稠のポリマー溶液が重合反応器から排出され、その粘度は一般に1000〜100000センチポイズの範囲である。
【0003】
ブテン−1(コ)ポリマーは周知であり、好ましくは、一般にチーグラー・ナッタ触媒と呼ばれる配位触媒の存在下でのブテン−1の溶液重合によって製造される。ブテン−1(コ)ポリマーは、主として、管材のような成形製品、包装フィルム、接着剤の製造において用いられている。溶液重合は、一般に、液体ブテン−1中で、ブテン−1中のポリブテン−1の溶液が重合反応器から排出される条件において行う。重合反応は、1以上の連続撹拌タンク反応器又は静的ミキサー反応器(SMR)内で行うことができる。
【0004】
ポリブテン−1は比較的低い温度においてブテン−1中に溶解するので、ブテン−1のバルク重合、即ち不活性炭化水素溶媒を用いない重合が実現可能である。更に、溶液の2つの成分は、チーグラー・ナッタ又はシングルサイト触媒系の最適運転温度において完全に混合する。モノマー及びポリマーの完全な混和性と共に重合触媒の最も良好な性能を得るためには、工程(a)における重合温度は一般に65〜85℃の範囲の値に保持され、一方、圧力は一般に8〜40barの範囲である。
【0005】
オレフィンの溶液重合は、必然的に得られたポリオレフィンを未反応のモノマーから逐次分離することを必要とする。モノマーの回収は、一般に、約150〜250℃の高い温度が必要な分離工程において行う。したがって、かかる分離工程の前に、モノマーの更なる制御されていない重合及び/又はポリマーの熱分解による最終ポリマーの特性の望ましくない変性を避けるために触媒残渣の失活が必要である。
【0006】
特許出願WO−04/000895においては、1以上の撹拌タンク反応器内でブテン−1の液相重合を行ってブテン−1中のポリブテンの溶液を製造することが記載されている。ポリマー溶液を重合反応器から排出し、好ましくは一連の混合段階を備えた失活装置内で行う触媒残渣の失活工程に送る。少なくともヒドロキシ基、150℃より高い沸点、及び20〜100の範囲の分子量(MW)とヒドロキシ基の数(nOH)との間の比を有する有機化合物である触媒失活剤をポリマー溶液に加える。触媒失活剤は、好ましくは、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、ブタンジオールから選択される。
【0007】
また、WO−05/058979の記載は、ブテン−1の液相重合によって得られるポリマー溶液の触媒失活に関する。この出願は、失活させるポリマー溶液の高い粘度、及びその結果として生じる触媒失活剤と高粘度のポリマー溶液との均一な混合を行うことの困難さに関連する問題に立ち向かっている。この問題は、高い粘度を有する触媒失活剤、特に30℃において50cP(センチポイズ)より高い動粘度を有し、少なくともヒドロキシ又はエポキシ基を有する1種類以上の有機化合物を含む水性混合物を用いることによって解決されている。好ましくは、かかる水性混合物は、式:R−N(CHCHOH)(式中、RはC12〜C18アルキル基である)の1種類以上のアルキルジエタノールアミンを含む。特許出願WO−04/000891においては、溶液重合反応器から得られるブテン−1中のポリブテンの溶液から未反応のブテン−1を除去する方法が記載されている。まず、ポリマー溶液を加熱及び混合条件にかけて、それによってポリブテンの溶融体及び超臨界気体状ブテン−1から構成される2相混合物を形成し、次にかかる2相混合物を、低下する圧力で運転する一連の2つの揮発分除去室に移す。特に、揮発器は両方とも200〜220℃のオーダーの高温において運転し、第2の揮発器は真空下で運転する。この出願の実施例によれば、第2の揮発器から排出されるポリマー溶融体に酸化防止剤化合物(Irganox 1010)を加え、ポリマーの押出を行うために用いる静的ミキサー中に供給する。
【0008】
本出願人は、WO−04/000891に記載されている揮発分除去方法に関して更なる実験研究を行い、揮発分除去室の上流で触媒残渣を失活するにもかかわらず、最終的なポリマーペレットは重合反応器の出口において測定される値と大きく異なるメルトインデックス(MI)、多分散指数(PI)、及び分子量分布(MWD)の値を示し、その結果、得られるポリオレフィンの機械特性が目標の特性と大きく異なる可能性があることを見出した。
【0009】
上記の欠点は、おそらくは2つの揮発室の内部で維持される厳しい運転条件(200〜220℃の温度で3〜4時間の滞留時間)(これによってポリマー鎖の熱分解の現象が引き起こされる可能性がある)のためである。とりわけ、第2の揮発分除去室は真空条件(10〜50mbar)下で運転しているので、この揮発室を完全に密封した状態に維持することは非常に困難である。外部からの空気の侵入によって少量の酸素がポリマー鎖と接触し、その結果、鎖の開裂、並びにポリオレフィンのメルトインデックス、PI、及びMWDの値が変化する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第04/000895号
【特許文献2】国際公開第05/058979号
【特許文献3】国際公開第04/000891号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、ポリオレフィン溶液を揮発分除去にかける際に採用されている厳しい運転条件によって引き起こされる上記の技術的問題点を解決するように、WO−04/000891に記載の方法を改良する必要性が感じられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここで本出願人は、α−オレフィンの溶液重合の下流で酸化防止剤化合物を用いることによって、溶融揮発分除去法にかける際に、得られたポリオレフィンの物理特性を実質的に変化させないで維持することができることを見出した。
【0013】
したがって、本発明の対象は、ポリマー溶液を揮発分除去工程にかけて未反応のモノマーからポリマーを分離する前か又はこれと同時に、製造されたポリマー溶液を1種類以上の酸化防止剤化合物と接触させることを含む、溶液重合条件下で1種類以上のオレフィンを重合してポリマー溶融を製造する方法である。
【0014】
本発明によれば、上記の揮発分除去工程は、一連の第1及び第2の揮発分除去室内で行うことができる。この場合においては、ポリマー溶液を好ましくは、第1の揮発分除去室の内部において1種類以上の酸化防止剤化合物と接触させる。反応器から得られるポリマー溶液は、一般に、ポリマー溶液を触媒失活剤と接触させる失活工程にかけられる。かかる失活工程はポリマー溶液を1種類以上の酸化防止剤化合物と接触させる前に行う。
【0015】
好ましい態様によれば、本発明の溶液法は、
(a)1種類以上のα−オレフィンを、溶液相中において、重合触媒の存在下で重合してポリマー溶液を生成させ;
(b)ポリマー溶液を失活タンクに送り、ここで触媒失活剤をポリマー溶液と混合し;
(c)第1及び第2の揮発分除去室を含む揮発分除去工程によって、製造されたポリオレフィンを未反応のモノマーから分離する;
ことを含み、
1種類以上の酸化防止剤化合物を、揮発分除去工程(c)の上流か又は工程(c)の第1の揮発分除去室の内部でポリマー溶液に加えることを特徴とする。
【0016】
本発明方法は、上記に定義の工程(c)の揮発室の内部の酸素の存在による有害な影響を中和することを目指すものである。
第1の態様によれば、1種類以上の酸化防止剤化合物を、工程(c)の第2の揮発室の内部で直接ポリオレフィンに加える。当業者に公知なように、揮発室は、ポリマーが「ポリマー溶融体」として下方に沈降し、一方、モノマー及び場合によって用いる重合溶媒が揮発室の頂部に上向きに流れるように運転する。「ポリマー溶融体」という用語は、溶融状態のオレフィンポリマーを意味し、その非常に高い粘度(約20×10cP)にもかかわらず、かかるポリマーは未だネジポンプによってポンプ移送することができる。特に、ポリマー溶融体は揮発器の下部に集まり、一方、未反応のモノマーはポリマー溶融体の上表面から放出されて、ポリマー溶融体の内部に高乱流状態が形成される。この高乱流は酸化防止剤化合物がポリオレフィンと均一に混合されるのに寄与して、酸化防止剤化合物とポリオレフィンとの密な接触を促進する。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、1種類以上の酸化防止剤化合物を揮発分除去工程(c)の上流でポリマー溶液に加える。
本発明の第1及び第2の態様のいずれにおいても、本発明のプラスの効果は、これらの酸化防止剤化合物が結果として、工程(c)の揮発室の内部に侵入する酸素と反応することである。かかる反応により、副生成物が形成される。この副生成物は酸素からのものとは異なり、製造されたポリオレフィンのポリマー鎖に干渉せず、これらの物理特性を変化させない。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、酸化防止剤化合物は、失活工程(b)の下流で且つ揮発分除去工程(c)の上流においてポリマー溶液に加える。
本発明の溶液重合において好ましく用いられる酸化防止剤化合物は、立体障害フェノール、ホスファイト、チオエステルの群から選択される。
【0019】
立体障害フェノールのクラスに属する好適な化合物は、
・IRGANOX 1010の商標で販売されているテトラキスメチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)メタン;
・オクタデシル3−(3’,5’−ジ−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(IRGANOX(登録商標) 1076);
・1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(IRGANOX 1030);
・1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(IRGANOX(登録商標) 3114);
・2,6−ビス(α−メチルベンジル)−4−メチルフェノール(Naugard (登録商標)431);
・1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン(CYANOX (登録商標)1790);
・2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(CYANOX(登録商標) 425);
・2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(CYANOX(登録商標) 2246);
である。
【0020】
ホスファイトのクラスに属する好適な化合物は、
・トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos 168);
・ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)ペンタエリトリトールジホスファイト(Ultranox (登録商標)626);
・トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(Alkanox TNPP);
・2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル−2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールホスファイト(ULTRANOX (登録商標)641);
・ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト(Doverphos(登録商標) S-9228);
である。
【0021】
チオエステルのクラスに属する好適な化合物は、
・チオジプロピオン酸のジアルキルエステル(Irganox(登録商標) PS802);
・ジドデシル−3,3’−チオジプロピオネート(Irganox(登録商標) PS800);
である。
【0022】
本発明において用いる特に好ましい酸化防止剤化合物は、IRGANOX(登録商標) 1010及びIRGANOX(登録商標) 1076である。
上記の化合物は、一般に、酸化防止剤化合物が液体状態であるような温度においてポリマーに加える。これらの化合物の殆どに関し、好適な供給温度は50℃〜100℃、好ましくは60℃〜90℃である。
【0023】
酸化防止剤化合物の好適な量は、重合工程(a)において製造されたポリオレフィンに対して300〜2000重量ppm、好ましくは500〜1200ppmの範囲である。
重合工程(a)に関しては、式CH=CHR(式中、Rは水素又はC1〜8炭化水素基である)の1種類以上のα−オレフィンを、溶液相中で重合にかける。重合反応は、1以上の連続撹拌タンク反応器又は静的ミキサー反応器(SMR)内で行うことができる。重合反応器から、反応媒体中におけるポリオレフィンの溶液が得られる。反応媒体は、液体モノマー、及び場合によっては重合するα−オレフィンによって、不活性の炭化水素溶媒(これは液体媒体中での得られたポリマーの可溶性を促進させるのに用いることができる)を含む。重合工程において用いる触媒系は、共触媒としてアルモキサン化合物を含むチーグラー・ナッタ触媒系及び/又はシングルサイト触媒系であってよい。
【0024】
工程(a)において重合するα−オレフィンは、好ましくはブテン−1又はプロピレンである。ブテン−1を重合する場合には、不活性炭化水素溶媒を用いない液体モノマー中でのバルク重合が好ましい方法である。ポリブテン−1は比較的低い温度においてブテン−1中に溶解するので、バルク重合が実現可能である。更に、溶液の2つの成分は、チーグラー・ナッタ又はシングルサイト触媒系の最適運転温度において完全に混合する。ブテン−1とポリブテン−1の完全な混和性と共に重合触媒の最も良好な性能を得るためには、工程(a)における重合温度は一般に65〜85℃の範囲の値に保持し、一方、圧力は一般に8〜40barの範囲である。反応器の内部の液体の滞留時間は、一般に30分間〜4時間、好ましくは2〜3時間の範囲である。
【0025】
プロピレンを重合する場合には、工程(a)は、好ましくは、得られたポリマーの重合媒体中における可溶性を促進する機能を有するパラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系、又は芳香族炭化水素溶媒から選択される重合溶媒と一緒に液体モノマー中で行う。好適な重合溶媒は、例えば、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、イソオクタン、エチルベンゼン、イソペンタン、及びC〜C10炭化水素混合物であるIsoparである。選択された溶媒及び触媒系によって、プロピレンの重合は、一般に、一般に80〜180℃、好ましくは90〜130℃の範囲の高い温度、20〜80bar、好ましくは25〜60barの高い圧力において行なわれる。反応器の内部の液体の滞留時間は、一般に10分間〜90分間、好ましくは20分間〜60分間の範囲である。
【0026】
工程(a)の重合反応器から非常に粘稠性のポリマー溶液が排出される。ポリマー溶液の粘度は、一般に1000〜100000センチポイズの範囲である。
得られたポリマー溶液は、ポリマー溶液中に含まれる触媒成分を失活させることを目的とする本発明の工程(b)に移される。触媒の失活は、直列に配置されている1以上の混合タンク内、或いは一連の更に多くの混合段階を備える単一の失活装置内で行うことができる。チーグラー・ナッタ触媒の存在下で行う重合の場合には、当該技術において公知の任意の失活化合物を用いることができる。好適な失活化合物は、水、或いは150℃より高い沸点及び少なくともヒドロキシ基を有する有機化合物である。好ましい失活化合物の例は、水、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロールであり、より好ましくは水を失活剤として用いる。
【0027】
失活タンクから失活されたポリマー溶液が排出され、これを容積型ポンプによって続く分離工程(c)に送り、ここで未反応のモノマー及び存在する場合には重合溶媒を回収し、工程(a)の重合反応器に再循環する。
【0028】
工程(b)の失活タンクから排出されるポリマー溶液は、容積型ポンプ、好ましくはネジポンプによって分離工程(c)に送られる。工程(c)の溶融揮発分除去技術は、ポリマー溶液を高い温度値において加熱することが必要である。したがって、まずかかるネジポンプによってポリマー溶液を40〜100barの範囲の圧力に加圧し、次にそれを1以上の熱交換器内で加熱して、その温度を150〜300℃の範囲の値(この温度値は、回収する具体的なモノマー及び溶媒の揮発性によって定まる)に昇温する。同じ出願人名の特許出願WO−04/000891に記載されているように、場合によってはそれぞれのチューブの内部に静的混合部材を含む1以上の多管熱交換器をこの目的のために用いることができる。
【0029】
好ましくは、本発明の酸化防止剤化合物を、上記のネジポンプを工程(c)の第1の揮発室へ接続するラインに沿ってポリマー溶液に加える。好ましくは、工程(c)においては、低下する圧力で運転する一連の第1及び第2の揮発器を用いる。第1の揮発器は大気圧よりも高い圧力において運転され、第2のものは真空下で運転される。この方法によって、第2の揮発器の出口においてモノマー及び重合溶媒を実質的に含まないポリマー溶融体が得られる。
【0030】
以下において、発明の範囲の代表的な非限定例であり、特に主モノマーとしてブテン−1を重合する溶液法を示す図1〜2を参照して本発明をより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、酸化防止剤化合物を工程(c)の第1の揮発室に対応してポリオレフィンに加える本発明方法の第1の態様を示す。
【図2】図2は、酸化防止剤化合物を、触媒失活タンクを第1の揮発室に接続するラインに沿ってポリオレフィンに加える本発明方法の第2の態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1に示すプロセス設定によれば、本発明の工程(a)の溶液重合は、連続撹拌タンク反応器撹拌1内で行われる。まず、場合によっては担体上に担持されている遷移金属化合物、アルミニウムアルキル化合物、及び場合によっては電子ドナー化合物を、1以上の予備接触ポット(図示せず)内で予め接触させ、次にライン2を通して連続撹拌タンク反応器1に供給する。
【0033】
液体ブテン−1、及び場合によってはオレフィンコモノマーを含む液体流を、ライン3を通して重合反応器1中に導入する。モノマー回収セクションから得られるオレフィンモノマーを、ライン4を通して反応器1に再循環する。
【0034】
ブテン−1中のポリブテン−1の非常に粘稠な溶液が、ライン5を通して反応器1から排出される。ポリマー溶液の一部はポンプ6によって反応器1に連続的に再循環する。ポンプ6により、ポリマー溶液を熱交換器7中に送り、次に好適な冷却の後、ライン8を通して重合反応器1に再循環する。
【0035】
反応器1から排出されるポリマー溶液の残りの部分を失活タンク9に送り、ここで、ライン10を通してタンク9に好適な量で供給される水のような触媒失活剤と接触させる。触媒失活の後、続く加熱段階における水頭損失を際立たせるためにブテン−1中のポリブテン−1の溶液を加圧する。ポリマー溶液を加圧し、ネジポンプ11によって一連の2つの多管熱交換器12、13に送り、ここでポリマー溶液を、揮発分除去工程(c)を行うのに必要な高温において加熱する。
【0036】
ネジポンプ11によって、ポリマー溶液を第1の熱交換器12の入口にポンプ移送する。熱交換器12は、それぞれのチューブの内部に静的混合部材が挿入されている多管熱交換器である。加熱流体は好ましくは蒸気である。熱交換器12によって、ポリマー溶液の粘度を大きく低下させる目的で、液体モノマーを実質的に蒸発させることなくポリマー溶液の温度をゆっくりと上昇させる。
【0037】
ブテン−1中のポリブテン−1の溶液が熱交換器12から排出され、これを加熱流体としてジアテルミー油を用いる多管熱交換器である第2の熱交換器13に導入する。熱交換器13のチューブに沿った通過中に、熱交換器13の出口において(1)閉じ込められたブテン−1を含むポリブテン溶融体及び(2)超臨界気体状ブテン−1から実質的に構成される2相混合物が得られるような方法でポリマー溶液を加熱する。
【0038】
次に、熱交換器13から得られる2相混合物を、低下する圧力で運転する一連の2つの揮発器内で行う本発明の揮発分除去工程(c)に送る。
熱交換器13から排出されるポリマー流を、ライン14を通して、170〜220℃の温度及び2〜12barの圧力で運転する第1の揮発器15の頂部に導入する。
【0039】
かかる第1の揮発器15内において、蒸発したモノマーをポリマー成分から分離する。ポリマー溶融体は揮発器15の底部において下方に沈降し、一方、蒸発したモノマーはポリマーから放出されて、気体流として上向きに流れる。揮発器15の頂部から排出される気相は、ライン16を通して重合プラントのモノマー回収セクションに送る。モノマー回収セクションは、重質成分を軽質成分から分離するための1以上の蒸留カラム、乾燥ユニット、及び重合反応器への液体モノマーの再循環ラインを含む。
【0040】
図1の態様によれば、液体形態の1種類以上の酸化防止剤化合物を、ライン17Aを通して第1の揮発器15の頂部に供給し、揮発器15の底部を占めるポリマー溶融体の表面上に落下させる。揮発器の内側に存在する高乱流のために、かかる酸化防止剤化合物はポリマー溶融体と密に混合される。本発明の酸化防止剤化合物が添加されたポリマー溶融体は、ネジポンプ18によって第1の揮発器15の底部から排出され、ライン19を通して熱交換器20中に送られ、ポリマー溶融体の温度を第2の揮発器において要求されている値に調節する。熱交換器20から排出されるポリマー溶融体は、ライン21を通して、170〜220℃の温度及び5〜100mbarの圧力で運転する第2の揮発器22の頂部に導入する。かかる圧力値は真空ポンプ23によって維持する。
【0041】
第2の揮発器22内においては、揮発器22の底部において下方に沈降するポリマー溶融体から残留モノマーが放出される。未反応のモノマーは揮発器22に沿って上向きに流れる。この気体流は揮発器22の頂部に集まり、真空ポンプ23によって排出して、ライン16を通してモノマー回収セクションに送る。
【0042】
未反応のモノマーを更に除去したポリマー溶融体を、ネジポンプ24によって第2の揮発器22の底部から排出して、ライン25を通して静的ミキサー26中に送って押出にかける。静的ミキサー26は、ポリマー溶融体を、成核剤、顔料等のような好適な添加剤と混合する機能を有する。ポリオレフィンの配合に用いる添加剤を溶融して互いに混合するために、サイドアーム押出機(図示せず)を用いることができる。次に、静的ミキサー26から排出される配合されたブテン−1(コ)ポリマーを、ライン27を通して水中ペレット化器28に送って、ここで回転ナイフブレードの作用によってペレットに切断する。次に、冷却水によってペレットを冷却する。
【0043】
図2は、本発明方法の第2の他の態様を示し、常に図1に示すようなブテン−1の溶液重合を示す。図2のプロセス設定における唯一の違いは、供給ライン17Bを通して酸化防止剤化合物をポリオレフィン溶液に加えることによるものである。供給ライン17Bは、触媒失活タンク9を第1の揮発室15に接続するライン上に合流している。
【0044】
本発明方法によって重合するオレフィンモノマーは、式:CH=CHR(式中、Rは水素又は1〜12個の炭素原子を有する炭化水素基である)を有する。本発明方法は、特に管材の製造においてうまく用いられるように、得られるポリオレフィンが二峰性を有することを特徴とする場合に、エチレン、プロピレン、及び1−ブテンをベースとするホモポリマー及びコポリマーの製造において用いるのに特に好適である。ここで記載するオレフィンの溶液重合は、任意の特定の種類の重合触媒を用いることに制限されない。本発明は、それが担持又は非担持のいずれであっても、且つそれが予備重合形態であるかどうかに関係なく、任意の触媒を用いる任意の発熱重合反応において有用である。
【0045】
重合反応は、チーグラー・ナッタ触媒、シングルサイト触媒、クロムベースの触媒のような高活性触媒系の存在下で行うことができる。
チーグラー・ナッタ触媒系は、元素周期律表(新表記法)の第4〜10族の遷移金属化合物と、元素周期律表の第1、2、又は13族の有機金属化合物との反応によって得られる触媒を含む。
【0046】
特に、遷移金属化合物は、Ti、V、Zr、Cr、及びHfの化合物の中から選択することができる。好ましい化合物は、式:Ti(OR)y−n(式中、nは0〜yの範囲であり;yはチタンの価数であり;Xはハロゲンであり;Rは、1〜10個の炭素原子を有する炭化水素基、又はCOR基である)のものである。これらの中で、チタンの4ハロゲン化物又はハロゲンアルコラートのような少なくとも1つのTi−ハロゲン結合を有するチタン化合物が特に好ましい。好ましい具体的なチタン化合物は、TiCl、TiCl、Ti(OBu)、Ti(OBu)Cl、Ti(OBu)Cl、Ti(OBu)Clである。
【0047】
好ましい有機金属化合物は、有機−Al化合物、特にAl−アルキル化合物である。アルキル−Al化合物は、好ましくは、例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム化合物の中から選択される。また、アルキルアルミニウムハロゲン化物、アルキルアルミニウム水素化物、又はアルキルアルミニウムセスキクロリド、例えばAlEtCl及びAlEtClを、場合によってはかかるトリアルキルアルミニウム化合物と混合して用いることもできる。
【0048】
特に好適な高収率ZN触媒は、チタン化合物が活性形態のハロゲン化マグネシウム、好ましくは活性形態のMgCl上に担持されているものである。特にCHCHRオレフィン(ここで、RはC〜C10炭化水素基である)の結晶性ポリマーを製造するためには、内部電子ドナー化合物をMgCl上に担持させることができる。通常は、これらは、エステル、エーテル、アミン、及びケトンの中から選択することができる。特に、1,3−ジエーテル、環式エーテル、フタレート、ベンゾエート、アセテート、及びスクシネートに属する化合物を用いることが好ましい。
【0049】
また、固体触媒成分中に存在する電子ドナーの他に、外部電子ドナー(ED)を、アルミニウムアルキル共触媒成分又は重合反応器に加えて用いることもできる。これらの外部電子ドナーは、アルコール、グリコール、エステル、ケトン、アミン、アミド、ニトリル、アルコキシシラン、及びエーテルの中から選択することができる。電子ドナー化合物(ED)は、単独か又は互いに混合して用いることができる。好ましくは、ED化合物は、脂肪族エーテル、エステル、及びアルコキシシランの中から選択される。好ましいエーテルは、C〜C20脂肪族エーテル、及び特に、好ましくは3〜5個の炭素原子を有する環式エーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンである。
【0050】
好ましいエステルは、C〜C20脂肪族カルボン酸のアルキルエステル、特に脂肪族モノカルボン酸のC〜Cアルキルエステル、例えば酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチルである。
【0051】
好ましいアルコキシシランは、式:RSi(OR(式中、a及びbは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、(a+b+c)の合計は4であり;R、R、及びRは、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、又はアリール基である)のものである。aが1であり、bが1であり、cが2であり、R及びRの少なくとも1つが、3〜10個の炭素原子を有する分岐アルキル、シクロアルキル、又はアリール基から選択され、Rが、C〜C10アルキル基、特にメチルであるケイ素化合物が特に好ましい。
【0052】
他の有用な触媒は、フィリップス触媒としても知られている、シリカ上酸化クロムのようなクロム化合物をベースとするものである。
他の好適な触媒は、シングルサイト触媒、例えば、
少なくとも1つのπ結合を含む少なくとも1種類の遷移金属化合物;
少なくとも1種類のアルモキサン、又はアルキルメタロセンカチオンを形成することのできる化合物;及び、
場合によっては有機アルミニウム化合物;
を含むメタロセンベースの触媒系である。
【0053】
少なくとも1つのπ結合を含む金属化合物の好ましいクラスは、次式(I):
Cp(L)AMX (I)
(式中、Mは元素周期律表の第4、5族又はランタニド族若しくはアクチニド族に属する遷移金属であり;好ましくは、Mは、ジルコニウム、チタン、又はハフニウムであり;
置換基Xは、互いに同一か又は異なり、水素、ハロゲン、R、OR、OCOR、SR、NR、及びPRからなる群から選択されるモノアニオン性σリガンドであり、ここで、Rは1〜40個の炭素原子を有する炭化水素基であり;好ましくは、置換基Xは、−Cl、−Br、−Me、−Et、−n−Bu、−sec−Bu、−Ph、−Bz、−CHSiMe、−OEt、−OPr、−OBu、−OBz、及び−NMeからなる群から選択され;
pは、金属Mの酸化状態マイナス2に等しい整数であり;
nは0又は1であり;nが0の場合には橋架Lは存在せず;
Lは、1〜40個の炭素原子を有し、場合によっては5個以下のケイ素原子を有する、CpとAとを橋架する2価の炭化水素基であり、好ましくは、Lは2価の基:(ZRであり;ZはC、Siであり、R基は、互いに同一か又は異なり、水素、又は1〜40個の炭素原子を有する炭化水素基であり;
より好ましくは、Lは、Si(CH、SiPh、SiPhMe、SiMe(SiMe)、CH、(CH、(CH、又はC(CHから選択され;
Cpは、場合によっては1以上の置換又は非置換で飽和又は不飽和又は芳香族の環に縮合している、置換又は非置換のシクロペンタジエニル基であり;
Aは、Cpと同じ意味を有するか、或いは、NR、−O、S基であり、ここで、Rは1〜40個の炭素原子を有する炭化水素基である)
に属するメタロセン化合物である。
【0054】
成分(b)として用いるアルモキサンは、次式:
【0055】
【化1】

【0056】
(式中、置換基Uは、同一か又は異なり、上記に定義した通りである)
のタイプの少なくとも1つの群を含む、線状、分岐、又は環式の化合物と考えられる。
特に、線状化合物の場合には、式:
【0057】
【化2】

【0058】
(式中、nは、0、又は1〜40の整数であり;U置換基は、同一か又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、場合によってはケイ素又はゲルマニウム原子を含む、C〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アルキルアリール、又はC〜C20アリールアルキル基であり、但し、少なくとも1つのUはハロゲンと異なり;jは、0〜1の範囲であり、非整数でもある)
のアルモキサンを用いることができ、或いは、環式化合物の場合には、式:
【0059】
【化3】

【0060】
(式中、nは2〜40の整数であり、U置換基は上記に定義した通りである)
のアルモキサンを用いることができる。
以下の実施例は、発明の範囲の代表的で非限定的な例であると見なすべきである。
【実施例】
【0061】
特性分析:
メルトインデックスE(MIE):ASTM−D1238方法E。
多分散指数(PI):この特性は、試験するポリマーの分子量分布に密に関連する。特に、これは溶融状態のポリマーの耐クリープ性に反比例する。低い弾性率値、則ち500Paにおける弾性率分離と呼ばれるかかる耐性値は、0.1rad/秒から100rad/秒へ増加する振動数で運転するRHEOMETRICS(米国)によって販売されている平行プレート流動計モデルRMS-800を用いることによって、200℃の温度において測定した。
【0062】
弾性率分離値から、等式:
PI=54.6・(弾性率分離)−1.76
(式中、弾性率分離は、
弾性率分離=(G’=500Paにおける振動数)/(G”=500Paにおける振動数)
(ここで、G’は貯蔵弾性率であり、G”は低弾性率値である)
として定義される)
を用いてPIを誘導することができる。
【0063】
固体触媒成分の製造:
窒素でパージした500mLの四つ口丸底フラスコ中に、0℃において225mLのTiClを導入した。撹拌しながら、6.8gの微細球状MgCl・2.7COH(USP−4,399,054の実施例2の記載のようにして、しかしながら10,000に代えて3,000rpmで運転して調製した)を加えた。フラスコを40℃に加熱し、直ぐに4.4ミリモルのジイソブチルフタレートを加えた。温度を100℃に昇温し、2時間保持し、次に撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。
【0064】
200mLの新しいTiClを加え、混合物を120℃において1時間反応させ、次に上澄み液を吸い出し、得られた固体を60℃の無水ヘキサンで6回(6×100mL)洗浄し、次に真空下で乾燥した。触媒成分は、2.8重量%のTi及び12.3重量%のフタレートを含んでいた。
【0065】
実施例1:
重合−工程(a):
直列に配置した2つの連続撹拌タンク反応器(CSTR)内において、
・上記に示すように調製したチタン化合物をベースとする固体触媒成分;
・触媒活性化剤としてトリイソブチルアルミニウム(TIBA);
・立体規則性を制御するためのドナー化合物としてテキシルトリメトキシシラン;
を含むチーグラー・ナッタ重合触媒の存在下でブテン−1の液相重合を行った。
【0066】
触媒は、専ら直列の2つのCSTRタイプの反応器の第1の反応器に供給した。液体ブテン−1を、分子量調整剤としてのHと一緒に重合反応器に連続的に供給した。第1及び第2の反応器内の重合条件、並びにH/Cの供給比を表Aに報告する。
【0067】
【表1】

【0068】
25重量%のポリマー濃度を有するブテン−1中のポリブテンの溶液26t/時を、第2の重合反応器から排出した。得られたポリブテン−1のメルトフローインデックス(MIE)及び多分散指数(PI)を評価するために、第2の反応器の出口においてポリマー溶液の試料を取り出した。MIE=0.35及びPI=7.0が測定された。
【0069】
失活−工程(b):
触媒残渣を失活させるために、PB−1溶液を失活装置に移した。触媒失活剤として2.0kg/時のHOを、26t/時のポリマー溶液と共に失活装置の頂部に連続的に供給した。
【0070】
分離及びモノマー回収−工程(c):
失活させたら、引き続いてネジポンプを用いてポリマー溶液を加圧し、次に一連の2つの多管熱交換器内での加熱にかけた。第1の熱交換器は、それぞれのチューブの内部に混合ロッドを備えており、加熱流体として135℃の温度の蒸気を用いた。第2の熱交換器は、加熱流体として260℃のジアテルミー油(MARLOTHERM N)を用いた。
【0071】
第2の熱交換器の出口において、ポリブテン−1溶融体及び気体状ブテン−1の混合物が得られた。かかる混合物を、210℃の温度及び7barの圧力で運転する第1の揮発分除去室の入口に供給した。ポリブテン−1溶融体は重力によって室の底部に沈降し、一方、気体状ブテン−1は上向きに流れた。
【0072】
本出願の図1に示す態様にしたがって、酸化防止剤化合物を第1の揮発器中に導入した。特に、IRGANOX 1010(70重量%)及びIRGANOX 1076(30重量%)の混合物を第1の揮発器の底部に供給した。かかる混合物は、75℃の温度及び3.25kg/時(ポリマーに対して500重量ppmに相当する)の流速で供給した。
【0073】
その結果、第1の揮発器の底部からPB−1溶融体が排出され、これを、その温度を第2の揮発分除去室中で要求されている値に昇温するために熱交換器中に導入した。
第2の揮発分除去室は、真空下、210℃及び25mbarで運転した。第2の揮発器の出口において、ポリブテン−1溶融体中のブテン−1の含量を測定し、僅か40重量ppmの値が得られた。
【0074】
ポリブテン−1溶融体を押出機中で配合し、最後に、配合されたポリブテン−1溶融体を水中ペレット化器に送ってペレットに切断した。
得られたPB−1ペレットのMIE及びPIの値を表Cに報告する。ここで、MIE(A)及びPI(A)は重合工程(a)の出口におけるポリマーを示し、一方、MIE(B)及びPI(B)はポリマーペレットを示す。本発明方法によって、制限され且つ無視できるMIEのシフト及びPIのシフトが確保されることを観察することができる。
【0075】
実施例2:
実施例1の重合条件によって得られたブテン−1中のPB−1の同じ溶液を、実施例1に記載のように触媒失活にかけた。
【0076】
失活させたら、ネジポンプを用いてポリマー溶液を加圧し、その後、2つの多管熱交換器内での加熱にかけた。
本出願の図2に示す態様にしたがって、酸化防止剤化合物を、失活タンクを第1の揮発室に接続するラインに沿ってポリマー溶液に供給した。特に、IRGANOX 1010(70重量%)及びIRGANOX 1076(30重量%)の混合物を、ネジポンプの下流で第1の熱交換器の上流においてポリマー溶液に供給した。かかる混合物は、75℃の温度及び3.25kg/時(ポリマーに対して500重量ppm)の流速で供給した。
【0077】
第2の熱交換器の出口における温度は210℃であり、ポリブテン−1溶融体及び気体状ブテン−1の混合物が得られた。かかる混合物を、210℃の温度及び7barの圧力で運転する第1の揮発分除去室の入口に供給した。ポリブテン−1溶融体は重力によって室の底部に沈降し、一方、気体状ブテン−1は上向きに流れた。
【0078】
第2の揮発分除去室は、真空下、210℃及び25mbarで運転した。第2の揮発器の出口において、ポリブテン−1溶融体中のブテン−1の含量を測定し、僅か40重量ppmの値が得られた。
【0079】
ポリブテン−1溶融体を押出機中で配合し、最後に、配合されたポリブテン−1溶融体を水中ペレット化器に送ってペレットに切断した。
得られたPB−1ペレットのMIE及びPIの値を表Cに報告する。本発明方法によって、制限され且つ無視できるMIEのシフト及びPIのシフトが確保されることを観察することができる。
【0080】
実施例3(比較例):
実施例1の重合条件によって得られたブテン−1中のPB−1の同じ溶液を、実施例1に記載のように触媒失活にかけた。
【0081】
失活させたら、ネジポンプを用いてポリマー溶液を加圧し、その後、実施例1と同じ多管熱交換器内での加熱にかけた。
第2の熱交換器の出口における温度は210℃であり、ポリブテン−1溶融体及び気体状ブテン−1の混合物が得られた。かかる混合物を、210℃の温度及び7barの圧力で運転する第1の揮発分除去室の入口に供給した。ポリブテン−1溶融体は重力によって室の底部に沈降し、一方、気体状ブテン−1は上向きに流れた。
【0082】
第2の揮発分除去室は、真空下、210℃及び25mbarで運転した。第2の揮発器の出口において、ポリブテン−1溶融体を押出機に送り、ここでIRGANOX 1010(70重量%)及びIRGANOX 1076(30重量%)の混合物を添加した。かかる混合物は3.25kg/時の流速で供給した。
【0083】
最後に、配合されたポリブテン−1溶融体を水中ペレット化器に送ってペレットに切断した。得られたPB−1ペレットのMIE及びPIの値を表Cに報告する。最終ペレットは大きなMIEのシフト及びPIのシフトを示すことを観察することができる。
【0084】
実施例4:
重合−工程(a):
直列に配置した2つの連続撹拌タンク反応器(CSTR)内において、実施例1と同じチーグラー・ナッタ触媒の存在下で、ブテン−1及びエチレンの液相重合を行った。
【0085】
触媒は、専ら直列の2つのCSTRタイプの反応器の第1の反応器に供給した。分子量調整剤としてHを用いた。
第1及び第2の反応器における重合条件、並びにエチレン/ブテン−1及び水素/ブテン−1の供給比を表Bに報告する。
【0086】
【表2】

【0087】
ブテン−1中に溶解しているランダムコポリマーの溶液を、第2の反応器から26t/時の流速で連続的に排出した。ポリマー濃度は21.5重量%であった。得られたランダムコポリマーのメルトフローインデックス(MIE)及び多分散指数(PI)を評価するために、第2の反応器の出口においてポリマー溶液の試料を取り出した。値を表Cに示す。
【0088】
失活−工程(b):
触媒残渣を失活させるために、ポリオレフィン溶液を失活装置に移した。2.0kg/時の量のHOを失活装置の頂部に連続的に供給した。
【0089】
分離及びモノマー回収−工程(c):
失活させたら、引き続いてネジポンプを用いてポリマー溶液を加圧し、次に一連の2つの多管熱交換器内での加熱にかけた。第2の熱交換器の出口における温度は210℃であり、ポリオレフィン溶融体及び気体状モノマーの混合物が得られた。かかる混合物を、210℃の温度及び7barの圧力で運転する第1の揮発分除去室の入口に供給した。ポリブテン−1溶融体は重力によって室の底部に沈降し、一方、気体状モノマーは上向きに流れた。本発明の第1の態様(図1に示す)にしたがって、IRGANOX 1010(50重量%)及びIRGANOX 1076(50重量%)の混合物を第1の揮発器中に導入した。かかる混合物は、T=75℃及び4.47kg/時(ポリマーに対して800重量ppm)の流速で供給した。
【0090】
第2の揮発分除去室は、真空下、210℃及び25mbarで運転した。第2の揮発器の出口において、ポリブテン−1溶融体中のブテン−1の含量を測定し、僅か60重量ppmの値が得られた。
【0091】
ポリブテン−1溶融体を押出機中で配合し、最後に、配合されたポリブテン−1溶融体を水中ペレット化器に送ってペレットに切断した。
得られたPB−1ペレットのMIE及びPIの値を表Cに報告する。
【0092】
実施例5:
実施例4に記載のものと同じ手順にしたがって、実施例4によって得られたブテン−1ランダムコポリマーの同じ溶液を触媒失活にかけた。
【0093】
失活させたら、ネジポンプを用いてポリオレフィン溶液を加圧し、その後、2つの多管熱交換器内での加熱にかけた。
本発明の第2の態様(図2に示す)にしたがって、IRGANOX 1010(50重量%)及びIRGANOX 1076(50重量%)の混合物を、ネジポンプの下流で第1の熱交換器の上流においてポリマー溶液に供給した。かかる混合物は、T=75℃及び4.47kg/時(ポリマーに対して800重量ppm)の流速で供給した。
【0094】
第2の熱交換器の出口における温度は210℃であり、ポリオレフィン溶融体及び気体状ブテン−1の混合物が得られた。かかる混合物を、210℃の温度及び7barの圧力で運転する第1の揮発分除去室の入口に供給した。ポリブテン−1溶融体は重力によって室の底部に沈降し、一方、気体状ブテン−1は上向きに流れた。
【0095】
第2の揮発分除去室は、真空下、210℃及び25mbarで運転した。ポリブテン−1溶融体を押出機中で配合し、最後に、配合されたポリブテン−1溶融体を水中ペレット化器に送ってペレットに切断した。
【0096】
得られたPB−1ペレットのMIE及びPIの値を表Cに報告する。
実施例6(比較例):
実施例4に記載のものと同じ手順にしたがって、実施例4によって得られたブテン−1ランダムコポリマーの同じ溶液を触媒失活にかけた。
【0097】
失活させたら、ネジポンプを用いてポリマー溶液を加圧し、その後、上述の実施例と同じ多管熱交換器内での加熱にかけた。
第2の熱交換器の出口において、ポリブテン−1溶融体及び気体状ブテン−1の混合物が得られた。かかる混合物を、210℃の温度及び7barの圧力で運転する第1の揮発分除去室の入口に供給した。ポリブテン−1溶融体は重力によって室の底部に沈降し、一方、気体状ブテン−1は上向きに流れた。
【0098】
その結果、第1の揮発器の底部からPB−1溶融体が排出され、これは、その温度を第2の揮発分除去室中で要求されている値に昇温するために熱交換器中に導入した。
第2の揮発分除去室は、真空下、210℃及び25mbarで運転した。第2の揮発器の出口において、ポリブテン−1溶融体を押出機に送り、ここでIRGANOX 1010(50重量%)及びIRGANOX 1076(50重量%)の混合物を添加した。かかる混合物はT=165℃及び4.47kg/時の流速で供給した。
【0099】
最後に、配合されたポリブテン−1溶融体を水中ペレット化器に送ってペレットに切断した。
得られたPB−1ペレットのMIE及びPIの値を表Cに報告する。最終ペレットは大きなMIEのシフト及びPIのシフトを示すことを観察することができる。
【0100】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー溶液を揮発分除去工程にかけて未反応のモノマーからポリマーを分離する前か又はこれと同時に、製造されたポリマー溶液を1種類以上の酸化防止剤化合物と接触させることを含む、溶液重合条件下で1種類以上のオレフィンを重合してポリマー溶液を製造する方法。
【請求項2】
揮発分除去工程を一連の第1及び第2の揮発分除去室内で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリマー溶液を第1の揮発分除去室の内部で1種類以上の酸化防止剤化合物と接触させる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ポリマー溶液を、ポリマー溶液を触媒失活剤と接触させる失活工程にかけることを含み、かかる失活工程はポリマー溶液を1種類以上の酸化防止剤化合物と接触させる前に行う、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
(a)1種類以上のα−オレフィンを、溶液相中において、重合触媒の存在下で重合してポリマー溶液を生成させ;
(b)ポリマー溶液を失活タンクに送り、ここで触媒失活剤をポリマー溶液と混合し;
(c)第1及び第2の揮発分除去室を含む揮発分除去工程によって、製造されたポリオレフィンを未反応のモノマーから分離する;
ことを含み、
1種類以上の酸化防止剤化合物を、揮発分除去工程(c)の上流か又は工程(c)の第1の揮発分除去室の内部でポリマー溶液に加えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程(c)において、第1の揮発分除去室を大気圧よりも高い圧力で運転し、一方、第2の揮発分除去室を真空下で運転する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ポリマー溶液を失活タンクから排出し、ネジポンプを用いて分離工程(c)に送る、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
ネジポンプを工程(c)の第1の揮発室に接続するラインに沿って酸化防止剤化合物をポリマーに加える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
酸化防止剤化合物を、重合工程(a)において製造されたポリオレフィンに対して300〜2000重量ppmの量で供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
酸化防止剤化合物を、50℃〜100℃の範囲の供給温度において液体状態のポリマーに加える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
酸化防止剤化合物が立体障害フェノール、ホスファイト、チオエステルの群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
立体障害フェノールが、
・テトラキスメチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)メタン;
・オクタデシル3−(3’,5’−ジ−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート;
・1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;
・1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート;
・2,6−ビス(α−メチルベンジル)−4−メチルフェノール;
・1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン;
・2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール);
・2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール);
から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ホスファイトが、
・トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート;
・ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)ペンタエリトリトールジホスファイト;
・トリス(ノニルフェニル)ホスファイト;
・2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル−2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールホスファイト;
・ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト;
から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
チオエステルがチオジプロピオン酸のジアルキルエステル及びジドデシル−3,3’−チオジプロピオネートである、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−511590(P2012−511590A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537922(P2011−537922)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064976
【国際公開番号】WO2010/060799
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】