説明

オレフィン重合方法

ポリオレフィンを製造する方法が開示される。一つの方法は、シングルサイト錯体、凝集金属酸化物/クレー支持体−活性化剤およびイオン性ホウ酸塩を含む触媒系の存在下にオレフィンを重合することを含む。支持体−活性化剤と共にイオン性ホウ酸塩を含むことは、触媒活性の予想外の向上を提供し、分子量が高いと共にコモノマー組み込みが向上したポリオレフィンを与える。本発明のもう一つの方法において、インデノインドリル金属アルキル化錯体および凝集金属酸化物/クレー支持体−活性化剤の存在下にオレフィンが重合される。支持体−活性化剤と共にアルキル化インデノインドリル錯体を使用することは、金属ハロゲン化物と比べて向上した活性を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンの重合に有用な方法に関する。この方法は、凝集金属酸化物/クレー支持体−活性化剤を組み込んだ触媒系を用いる。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン産業は、新規でより優れた触媒系を求め続けている。チーグラー・ナッタが主流であるが、シングルサイト(メタロセンまたは非メタロセン)触媒が進出してきている。他の利点の中でも、シングルサイト触媒は、分子量分布が狭く、低分子量抽出可能成分が少なく、α−オレフィンコモノマーの組み込み量が増加したポリマーを提供することができる。従来のメタロセンは、π電子を中心遷移金属に与える、シクロペンタジエチル(Cp)または、インデニル、フルオレニル等のようなCp−様アニオン性配位子の一以上を組み込んでいる。他の非メタロセンシングルサイト触媒においては、配位子が、2以上の電子供与体原子を介して金属にキレートしていることが多い。
【0003】
シングルサイト錯体は、通常、活性化剤と、特に、メチルアルモキサン(MAO)のようなアルモキサン、トリアリールボラン(例えば、トリフェニルボラン、「F15」)またはイオン性ホウ酸塩(例えば、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、「F20」)と組み合わされて用いられる。アルモキサンはイオン性ホウ酸塩より費用がかからないが、高いアルミニウム:遷移金属モル比(典型的に>1000:1)で用いなくてはならない。シングルサイト錯体は製造に費用がかかることが多いが、触媒系のより費用のかかる部分は、通常、活性化剤である。
【0004】
W.R.グレース社の研究者は、近年、支持体−活性化剤の組合せとして「凝集金属酸化物/クレー」を用いる触媒系を記載している(例えば、米国特許第6,559,090号を参照されたい)。これらの支持体−活性化剤は、オレフィンを重合するために、従来のメタロセンのような遷移金属錯体または制限幾何錯体と組み合わされて用いられる。要約に述べられているように、支持体−活性化剤は「その層間表面上に陰性電荷を有すると共に、オレフィンの重合のために遷移金属化合物を活性化するように充分にルイス酸性である層状材料」である。実施例は、噴霧乾燥クレー単独または噴霧乾燥シリカ単独と比べて、凝集金属酸化物/クレーを用いる利点を示している。
【0005】
’090号特許によれば、シングルサイト錯体をアルキル化することにより「予備活性化」する、すなわち、「支持体−活性化剤によってより容易に置き換えられて金属中心部Zにおける活性化を引き起こす少なくとも一つの電子吸引性のより弱いL基(例えば、アルキル)」で、塩化物のような電子吸引性配位子を置換することにより「予備活性化」することが好ましい(20欄を参照されたい)。「予備活性化により、費用のかかるメチルアルモキサンまたはホウ素含有活性化剤のようなイオン化剤(共触媒)の使用を省くことができる」。支持体−活性化剤以外の活性化剤を用いる実施例は示されていない。
【0006】
インデノインドリル錯体は、シングルサイトオレフィン重合触媒において用いられるよく知られた部類の有機金属錯体である。その幾つかの実施例として、米国特許第6,232,260、6,559,251、6,756,455および6,794,468を参照されたい。これらの錯体は、凝集金属酸化物/クレー支持体−活性化剤と組み合わされた試験はされていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
触媒活性を向上させることは、シングルサイト触媒オレフィン重合の分野で継続的に検討されている。通常、触媒の必要量が少ないと、プロセスコストが低くなると共に最終的ポリマー特性が優れる。分子量が比較的高いポリマーを提供することができる触媒および方法を見つけることも求められている。ポリオレフィンの分子量を、水素または別の連鎖移動剤を加えることにより容易に低下させることができるが、分子量を増加させる方法を見つけることは、より難しい。インデノインドリル配位子骨格の固有の構造的柔軟性を利用する新しい方法も必要とされている。最後に、コモノマーをより効率的に組み込む触媒および方法も常に必要とされている。これにより、仕込むべきコモノマーの量が低下し、回収および再利用する必要があるコモノマーの量も低下する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリオレフィンを製造する方法に関する。一つの方法は、シングルサイト錯体、凝集金属酸化物/クレー支持体−活性化剤およびイオン性ホウ酸塩を含む触媒系の存在下にオレフィンを重合することを含む。支持体−活性化剤と共にイオン性ホウ酸塩を含ませることは、触媒活性を向上させ、ポリオレフィンに高い分子量と向上したコモノマー組み込みを与える。本発明は、錯体がインデノインドリル第3〜10族金属アルキル化錯体であり、補助的活性化剤(例えば、イオン性ホウ酸塩)が用いられない同様の方法を包含する。支持体−活性化剤と共にアルキル化インデノインドリル錯体を用いることは、ハロゲン化金属と比べて、活性を向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一つの方法において、シングルサイト錯体、凝集金属酸化物/クレー支持体−活性化剤およびイオン性ホウ酸塩を含む触媒系の存在下にオレフィンを重合する。
【0010】
使用に適したオレフィンは、少なくとも一つの重合性炭素−炭素二重結合を有する。好ましいオレフィンは、エチレン並びに、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテン等のようなC3〜C20α−オレフィンである。オレフィンの混合物を用いることができる。エチレンおよび、エチレンとC3〜C10α−オレフィンとの混合物が特に好ましい。
【0011】
使用に適したシングルサイト錯体としては、メタロセン錯体と非メタロセン錯体がある。メタロセン錯体は、第3〜10族遷移またはランタニド金属、好ましくは第4〜8族遷移金属と、2つの置換または非置換シクロペンタジエニル型配位子を含み、これらの配位子は同じまたは異なってよく、例えば、シクロペンタジエニル、メチルシクロペンタジエニル、ペンタメチルシクロペンタジエニル、インデニル、2−メチルインデニル、フルオレニルおよびテトラヒドロインデニル等が挙げられる。適当なメタロセン錯体の例については、米国特許第4,791,180号および4,752,597号を参照されたい。
【0012】
非メタロセンシングルサイト錯体は、第3〜10族遷移またはランタニド金属と、最大で1つのCp−様配位子とを組み込んでいる。例えば、米国特許第5,064,802号および6,559,251号に記載のもののような「制限幾何(constrained geometry)」または「開放構造(open architecture)」シングルサイト錯体がある。他の適した非メタロセンシングルサイト錯体としては、例えば、アザボロリニル(米国特許第5,902,866号参照)、ボラアリール(米国特許第5,554,775号参照)、ピリジノキシもしくはキノリノキシ(米国特許第5,637,660号参照)およびイソインドリン(米国特許第6,693,154号参照)等のような1つまたは2つ以上のヘテロ原子を含む配位子がある。
【0013】
シングルサイト錯体は、好ましくは、第3〜10族遷移またはランタニド金属と、少なくとも1つのインデノインドリル配位子とを含む(米国特許第6,232,260号、6,559,251号、6,756,455号または6,794,468号を参照)。これらの錯体中のインデノインドリル配位子は、インデノ環とインドール環との[1,2−b]または[2,1−b]融合を有し得る。(以下の実施例において、錯体CおよびDは[1,2−b]配置を有し、一方、錯体AおよびBは[2,1−b]配置を有する)。インデノインドリル配位子は、非架橋(例えば、以下の錯体EおよびFを参照)でも架橋(例えば、錯体A〜Dを参照)でもよい。錯体は、米国特許第6,559,251号に示されているような「開放構造」でもよい。
【0014】
凝集金属酸化物/クレー支持体−活性化剤が必要である。適当な支持体−活性化剤およびそれらを作る方法が、米国特許第6,399,535号、6,559,090号、6,686,306号および6,734,131号に記載されている。特に、支持体−活性化剤は、金属酸化物成分とクレーとの緊密に組み合わされた凝集体である。金属酸化物は、好ましくは、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、燐酸アルミニウム、チタニア、ジルコニアまたは酸化クロム(III)である。シリカが特に好ましい。
【0015】
クレーは、層の間に隙間を有すると共に、支持体−活性化剤凝集体中に存在する場合はシングルサイト有機金属錯体を活性化するための充分なルイス酸性を有するイオン含有層状材料である。好ましいクレーは、天然または合成のモンモリロナイト、カオリナイト、サポナイト、ヘクトライト、スメクタイト、バーミキュライトおよび雲母等である。クレーを、酸またはアルカリ混合物で予備処理して、未処理クレー中に通常存在するイオンの一部または全てを交換することができる。モンモリロナイトクレーが特に好ましい。
【0016】
便利な手法においては、金属酸化物とクレーとの水性スラリーを噴霧乾燥して、支持体−活性化剤を微粒子凝集体の形態で得る(米国特許第6,559,090号)。支持体−活性化剤は、平均粒径が、好ましくは100ミクロン未満、より好ましくは50ミクロン未満、最も好ましくは20ミクロン未満である。
【0017】
支持体−活性化剤は、金属酸化物:クレー重量比が好ましくは0.25:1〜99:1、より好ましくは0.5:1〜20:1、最も好ましくは1:1〜10:1である。特に好ましい支持体−活性化剤において、シリカとモンモリロナイトが4〜1の重量比範囲で用いられる。
【0018】
支持体−活性化剤とシングルサイト錯体とが任意の適当な方法により組み合わさられてよい。1つの便利な手法において、錯体のエーテルまたは炭化水素溶液を支持体−活性化剤と組み合わせてスラリーを得る。溶媒を除去して、支持(および活性化)された錯体が得られる。インシピエントウエットネス法も用いることができる。
【0019】
本方法は、イオン性ホウ酸塩を用いる。適当なイオン性ホウ酸塩は、当該分野においてよく知られている。それらは、典型的には、通常は同じものでありその各々が陰性電荷を効果的に安定化させることができる4つの基に結合しているホウ素を含む。一例は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンである。非配位カチオン、例えば、トリフェニルカルベニウム(「トリチル」)またはN,N−ジメチルアニリニウムも存在する。好ましくは、イオン性ホウ酸塩はトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(「F20」)である。適当なイオン性ホウ酸塩のさらなる例については、米国特許第5,198,401号および5,153,157号を参照されたい。
【0020】
用いられるイオン性ホウ酸塩の量は重要ではない。ホウ素と遷移金属とのモル比は、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.5〜5、最も好ましくは0.9〜1.2の範囲である。すなわち、用いられる遷移金属の量に対して略化学量論量のホウ酸塩化合物を用いることが最も好ましい。
【0021】
イオン性ホウ酸塩は、任意の所望の方法で他の成分と組み合わせることができる。1つの手法において、支持シングルサイト錯体の導入の直前または後に、イオン性ホウ酸塩を炭化水素溶媒を用いて反応器内に流し込む。しかしながら、好ましくは、重合反応器に加える前に、ホウ酸塩を支持錯体と組み合わせる(支持触媒の調製については、以下の実施例を参照)。
【0022】
イオン性ホウ酸塩を含むことにより、触媒活性が予想外に促進される。好ましくは、触媒活性は、イオン性ホウ酸塩を用いない類似の触媒系の活性の少なくとも2倍である。当該分野の教示によれば、支持体−活性化剤は、MAOまたはホウ酸塩活性化剤の必要性を排除する。実際、我々は、支持体−活性化剤が存在する場合、MAOを加えることが現実には触媒活性を損なうことを観察した(以下の比較例2および3を参照)。しかしながら、これに対して、ホウ酸塩を含むことは逆の効果を奏する(実施例1を参照)。我々の実験では、ホウ酸塩が含まれていると、触媒活性が2〜15倍増加した。
【0023】
支持体−活性化剤と共にイオン性ホウ酸塩を用いることによる活性への影響は、錯体特異的ではなさそうである。我々の実験の大部分ではインデノインドリル遷移金属錯体を用いたが、我々は、一般的なメタロセンであるビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドを用いて活性が著しく14倍も増加したことを観察した(実施例8および比較例9を参照)。
【0024】
本方法は、その密度の低下が反映しているようにコモノマー組み込み量が増加したポリオレフィンを提供する。以下の表1に示すように、同じ量のコモノマー(1−ブテンまたは1−ヘキセン)を用いると、イオン性ホウ酸塩が存在する場合、密度のより低い生成物が得られる。
【0025】
本方法は、分子量が増加したポリオレフィンも与える。好ましくは、このポリオレフィンは、イオン性ホウ酸塩を用いずに同じ方法により製造した同様のポリオレフィンよりも大きな重量平均分子量(Mw)を有する。表1に示すように、ポリオレフィンの重量平均分子量は、イオン性ホウ酸塩が含まれていると、著しく高い。
【0026】
本発明は、インデノインドリル第3〜10族遷移またはランタニド金属アルキル化錯体および凝集金属酸化物/クレー支持体−活性化剤を含む触媒系の存在下にオレフィンを重合することを含んでなる方法を包含する。
【0027】
適当な支持体−活性化剤は、既に説明した。錯体は、少なくとも一つのインデノインドリル配位子を組み込んでいる。そのような錯体も既に説明した。
【0028】
本方法で用いられる錯体はアルキル化されている。「アルキル化」により、我々は、遷移またはランタニド金属に結合している配位子の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つがアルキル基であることを意味する。通常、錯体は、対応するハロゲン化物を、アルキルアルミニウム化合物、グリニア試薬または同様のアルキル化剤で「アルキル化」することにより作られる。以下の実施例は、臭化メチルマグネシウムを用いるアルキル化反応により、対応するジクロロ錯体からジルコニウムジメチル錯体を作る方法を説明している(錯体B、DおよびFの調製を参照されたい)。
【0029】
我々は、インデノインドリル錯体をアルキル化すると、その活性が著しく向上することを発見した。表2に示すように、支持体−活性化剤と組み合わせる前にインデノインドリル錯体をアルキル化すると活性が2〜5倍増加した。
【0030】
以下の実施例は、単に本発明を説明するものである。当業者は、本発明の精神内であり特許請求の範囲内である多くの変形を理解する。
【実施例】
【0031】
有機金属錯体の調製
ジメチルシリル架橋インデノ[2,1−b]インドリルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド錯体(A)の調製
(a)インデノ[2,1−b]インドール1の調製
2−インダノン(51.0g,0.39mol)とp−トリルヒドラジン塩酸塩(61.4g,0.39mol)の混合物を、氷酢酸(525mL)に溶解し、激しく攪拌し、加熱還流する。混合物が赤くなり、2時間加熱する。室温まで冷却瘢、氷水(1L)に注ぎ込む。沈澱を濾過して固形物を得、それを水(約1L)で洗う。固形物を酢酸エチル(1.4L)に溶解し、活性炭を加え、混合物を穏やかに温める。次に、混合物を冷却し、セライトパッドで濾過する。濾液をNa2SO4で乾燥し、次に、450mLまで濃縮し、−30℃に3日間冷却する。結晶性固形物を濾過し、冷たい(−78℃)ヘキサン(2×500mL)で洗う。ベージュ色の固形物を集め、減圧乾燥する(47.1g,56%)。
【0032】
(b)1をN−メチル化して2を得る
NaOH水溶液(42mL,21.5M,903mmol)、C1633NMe3Br(0.36g,0.97mmol)および1(15.0g,68.4mmol)のスラリーを、トルエン(50mL)と組み合わせる。MeI(8.0mL,129mmol)をトルエン(15mL)中に含む溶液を室温で滴下する。混合物を室温で2.5時間攪拌し、次に、1時間還流する。混合物が赤くなり、室温まで冷却し、濾過する。結晶性固形物を、冷たい(−30℃)EtOH(200mL)で洗い、続いて冷たいヘキサン(200mL)で洗って、淡赤色固形物(10.3g,65%)を得る。
【0033】
(c)アニオン生成:3の調製
2(4.94g,21.1mmol)をトルエン(125mL)中に含むスラリーに、n−ブチルリチウム(13.0mL,ヘキサン中2.5M,32.5mmol)を室温で加える。混合物を室温に維持し、淡黄色になる。2時間後に、沈澱が形成する。2時間後、混合物を濾過して淡いベージュ色固形物を得る。固形物をトルエン(60mL)で洗い、続いてヘキサン(30mL)で洗い、次に回収し、減圧下に乾燥する(4.37g,87%)。
【0034】
(d)ジアニオン4の調製
生成物3(4.57g,19.1mmol)をトルエン(100 mL)に懸濁させる。ジエチルエーテル(40mL)を滴下してオレンジ色溶液を得、これを、SiCl2Me2(12.0mL,98.9mmol)をEt2O(100mL)中に含む溶液に、室温で加える。混合物が不透明で濁ったベージュ色になり、3日間攪拌し、濾過して暗赤−オレンジ色溶液を得る。揮発分を減圧下に除去して、油性固形物を得る。その少量を1H NMRにより分析すると、所望の生成物の形成が示され;転化率100%が推定される。油性固形物をEt2O(140mL)に溶解し、NaCp(11.0mL,THF中2.0M,22mmol)を加える。直ちに沈澱が形成され、2日間攪拌する。混合物を水(3×50mL)で洗い、有機相をNa2SO4で乾燥し、濾過する。揮発分を減圧下に除去して油状残渣を得、転化率100%が推定される。残渣を、Et2O(75mL)に溶解し、−78℃に冷却する。n−ブチルリチウム(18.0mL,ヘキサン中2.5M,45.0mmol)を注射器により加え、混合物を室温までゆっくり温める。黄色固形物が一晩で沈澱し、揮発分を減圧下に除去する。粗生成物を、ヘキサン(100mL)で洗い、濾過して黄色粉末を得る。粉末を回収し、減圧下に乾燥する(6.73g, 3%)。
【0035】
(e)錯体Aの調製
四塩化ジルコニウム(3.15g,13.5mmol)をトルエン(100mL)と組み合わせ、Et2O(50mL)に溶解させて、濁った懸濁液を生成した。ジアニオン4(5.02g,13.7mmol)を固形物として30分間かけて少しずつ加える。色が黄色から暗オレンジ色に変わり、沈澱が形成される。混合物を室温で2日間維持し、濾過して濁った黄色の固形物を得る。固形物をトルエン(50mL)およびヘキサン(50mL)で洗う。黄色粉末を集め、減圧下に乾燥する(3.72g,53%)。
【0036】
ジメチルシリル架橋インデノ[2,1−b]インドリルシクロペンタジエニルジルコニウムジメチル錯体(B)の調製
A(2.10g,4.08mmol)をTHF(60mL)中に含むスラリーに、臭化メチルマグネシウム(3.0mL,Et2O中3.0M,9.0mmol)を注射器で室温で加える。直ちに固形分が溶解する。混合物がマゼンタ色になり、一晩貯蔵する。揮発分を減圧下に除去し、残渣をジクロロメタン(30mL)に溶解する。1,4−ジオキサン(0.8mL,9.35mmol)を加えると;直ちに、沈澱が形成される。混合物を10分間攪拌し、セライト濾過助剤を通して濾過する。紫色濾液を−35℃に一晩冷却して、黄色結晶性固形物(0.932g,48%)を得、これを所望のジルコニウムジメチル錯体Bであると確認する。
【0037】
ジメチルシリル架橋インデノ[1,2−b]インドリルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロロ錯体(C)の調製
(a)インデノ[1,2−b]インドール5の調製
1−インダノン(30.6g,232mmol)、EtOH(350mL)中のp−トリルヒドラジン塩酸塩(37.0g,233mmol)、およびHCl水溶液(12N,18mL)の混合物を90分間加熱還流する。混合物を冷却し、濾過し、固形物をEtOH(600mL)で洗い、続いて20%EtOH水溶液(400mL)で洗い、最後にヘキサン(200mL)で洗う。オフホワイト固形物を減圧下に乾燥する(36.5g,72%)。
【0038】
(b)5のN−メチル化
5(36.5g,166mmol)、NaOH水溶液(112mL,20M,2.2mol)、C1633NMe3Br(0.65g,1.78mmol)およびトルエン(112mL)の混合物を、室温で激しく攪拌する。MeI(17.0mL,273mmol)をトルエン(15mL)中に含む溶液を滴下し、混合物を室温で4時間攪拌し、3時間還流する。冷却時に結晶性固形物が形成し、濾過し、冷たい(−78℃)EtOH(300mL)で洗い、続いてヘキサン(100mL)で洗う。層を分離し、水性フラクションを、トルエン(2×100mL)で洗う。有機分を併せ、Na2SO4で乾燥し、濾過する。揮発分を減圧下に除去し、沈澱を乾燥し、結晶性生成物6と組み合わせる(合計収率:25.7g,66%)。
【0039】
(c)アニオン生成:7の調製
6(43.9g,188mmol)をトルエン(560mL)中に含む溶液に、n−ブチルリチウム(120mL,2.5M,1.6mol)を滴下する。1時間後、沈澱が形成される。混合物を、48時間放置し、濾過する。固形物をトルエン(500mL)で洗い、次にヘキサン(500mL)で洗い、減圧下に乾燥する(40.3g,90%)。
【0040】
(d)ジクロロジメチルシランと反応させて8を得る
7(23.3g,97.4mmol)をトルエン(240mL)およびEt2O(160mL)中に含む溶液を、SiCl2Me2(60.0mL,495mmol)をEt2O(170mL)中に含む溶液に加える。混合物が濁り、48時間攪拌し、セライトで濾過する。揮発分を減圧下に除去して、灰色固形物を得る(24.8g,78%)。
【0041】
(e)ジアニオン生成:9の調製
ナトリウムシクロペンタジエニド(16.0mL,2M,32.0mmol)を、8(9.62g,29.5mmol)をEt2O(240mL)中に含む溶液に加える。直ちに、固形物が形成し、混合物を室温で一晩維持する。粗混合物を、H2O(100mL)で洗う。有機相を、Na2SO4で乾燥し、濾過する。蒸発により乾燥させることにより油状物を得る。油状物をEt2O(250mL)に溶解し、−78℃に冷却する。n−ブチルリチウム(28.0mL,2.5M,70.0mmol)を滴下し、混合物を室温までゆっくり温める。24時間攪拌する。黄色固形物が形成し、混合物を濾過し、固形物を減圧下に乾燥する(12.3g,99%)。
【0042】
(f)ジルコニウムジクロライド錯体Cの調製
ジアニオン9(7.94g,21.6mmol)を固形物として、ZrCl4(5.03g,21.6mmol)をトルエン(250mL)およびEt2O(50mL)中に含む溶液に加える。混合物がオレンジ色になり、室温に48時間維持し、次に濾過する。固形物(C)をトルエン(200mL)で洗い、次にヘキサン(50mL)で洗い、減圧下に乾燥する(4.0g,36%)。
【0043】
ジメチルシリル架橋インデノ[1,2−b]インドリルシクロペンタジエニルジルコニウムジメチル錯体(D)の調製
臭化メチルマグネシウム(5.0mL,Et2O中3.0M,15mmol,Aldrich製)を、C(3.5g,6.8mmol)をTHF(80mL)中に含むスラリーに、室温で激しく攪拌しつつ加える。スラリーが3時間後に深オレンジ色にかわる。室温に一晩維持した混合物は黄色になる。揮発分を減圧下に除去し、ジクロロメタン(100mL)を加えて、黄−オレンジ色溶液を得る。1,4−ジオキサン(2.0mL,23.5mmol)を加えて、沈澱を誘発する。混合物を約2時間攪拌し、次に、セライト濾過助剤を通して濾過して、黄−オレンジ色溶液を得る。これを約90mLに濃縮し、−35℃に一晩冷却する。得られる結晶性材料を濾過し、冷たい(−35℃)ジクロロメタン(10mL)で洗い、乾燥してジルコニウムジメチル錯体D(1.99g,62%)を得る。母液から、さらなるDを回収することができる。
【0044】
非架橋インデノ[1,2−b]インドリルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド錯体(E)の調製
攪拌棒を備える250mLフラスコに、7(10.0g,42.0mmol)およびトルエン(95mL)を仕込んでオレンジ色スラリーを作る。ジエチルエーテル(35mL)をゆっくり添加して暗オレンジ色溶液を得る。この溶液を、室温で、激しい攪拌下に、(C55)ZrCl3(11.1g,42.0mmol)をトルエン(190mL)およびEt2O(190mL)中に含むスラリーに15分間かかって加える。混合物が深赤色に変わり、室温で一晩維持する。スラリーを濾過し、赤色固形物(錯体E)を回収し、減圧下に乾燥する(16.5g,78%)。
【0045】
非架橋インデノ[1,2−b]インドリルシクロペンタジエニルジルコニウムジメチル錯体(F)の調製
臭化メチルマグネシウム(4.4mL,Et2O中3.0M,13mmol)の溶液を、室温で、ジクロライド錯体E(3.17g,6.31mmol)をジエチルエーテル(150mL)中に含むスラリーに加える。室温に一晩維持した混合物は緑色になる。混合物をセライト濾過助剤を通して濾過して、オレンジ色溶液を得る。1,4−ジオキサン(1.5mL,17.6mmol)を濾液に加え、それを0.5時間攪拌し、濾過する。黄色溶液を−15℃に一晩冷却して結晶化を誘発させる。得られたジメチル錯体Fを濾過し、減圧下に乾燥する(1.32g,50%)。
【0046】
処理された支持体の調製
一般的手順
凝集したシリカ−クレー支持体−活性化剤(平均粒径:19〜38μm,米国特許第6,559,090号に記載のように調製)を、窒素雰囲気下のグローブボックス中、室温で攪拌下、トリイソブチルアルミニウムTIBAL(ヘプタン中1.0M溶液)またはトリエチルアルミニウムTEAL(トルエン中1.0M溶液)と組み合わせる(表Aを参照)。混合スラリーを、室温で2時間以上攪拌する。室温で減圧乾燥後、処理された支持体−活性化剤を単離する。
【0047】
【表1】

【0048】
支持された触媒の調製
一般的手順
ジルコニウム錯体(A,B,C,D,E,FまたはG;約0.02mmol)をトルエン(3mL)中に含む溶液を、窒素雰囲気下のグローブボックス中、室温で攪拌下、25mLフラスコ中のTIBALまたはTEAL−処理凝集シリカ/クレー支持体−活性化剤(U,V,WまたはX;1.0g)に加える。室温で減圧乾燥後、所望の支持された触媒(A1,D1,F1,G1,C1,D2,B1,A2,C2またはE1)を単離する。表1および2を参照されたい。
【0049】
支持された触媒のホウ酸塩修飾
一般的手順
グローブボックス中、室温で、25mLフラスコ中の支持された触媒(A1,D1,F1,G1,C1またはD2)のサンプル(0.40g)に、磁気攪拌しつつ、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(トルエンン中0.005M溶液1.9mL,B:Zrモル比=1.1)を加える。スラリーを室温でさらに0.5時間攪拌する。室温で減圧乾燥後、ホウ酸塩で修飾された支持された触媒(A1−B,D1−B,F1−B,G1−B,C1−BまたはD2−Bと表す)を単離する。表1および2を参照されたい。
【0050】
支持された触媒のMAO修飾
支持された触媒A1−Mの調製
グローブボックス中、室温で、メチルアルモキサン(トルエン中30重量%溶液0.2mL,4.2M,Albemarle製)をトルエン(4.0mL)で希釈し、次に、錯体A(10.8mg,0.021mmolZr,Al:Zrモル比=40)と室温で約10分間混合する。次に、深赤色溶液を、25mLフラスコ中の処理支持体W(1.0g)に、磁気攪拌しつつ加える。スラリーを室温でさらに0.5時間攪拌する。室温で減圧乾燥後、A1−Mと表される所望のMAO含有支持触媒約1gを得る。
【0051】
エチレン共重合
エチレン/1−ヘキセン共重合
1Lステンレススチールオートクレーブ反応器に、1−ヘキセン(40mL)を仕込む。Stadis(登録商標)425添加剤(ヘプタン0.25mL中1mg,Octel−Starreon製)およびトリイソブチルアルミニウム(TIBAL,ヘプタン中1.0M溶液1.0mL)を、グローブボックス中、インジェクターのサイドアームに予め仕込む。次に、混合物を、イソブタン(500mL)と共に反応器に流し込む。水素は加えない。エチレンを反応器に加え(全反応器圧:320psig)、内容物を80℃で平衡させる。
【0052】
支持触媒(表1または2を参照)約60mgを、グローブボックス中、インジェクターのサイドアームに予め仕込む。次に、混合物を窒素加圧下、イソブタン(50mL)と共に反応器に流し込む。30分間重合を進める。反応器を通気させ、得られるポリマーを集め、減圧乾燥する。触媒活性およびポリマー特性を表1および2に要約する。
【0053】
エチレン/1−ブテン共重合
1Lステンレススチールオートクレーブ反応器に、1−ブテン(5mL)を仕込む。Armostat(登録商標)710脂肪アミン(ヘプタン0.25mL中1mg,AkzoNobel製)およびトリイソブチルアルミニウム(TIBAL,ヘプタン中1.0M溶液0.5mL)を、グローブボックス中、インジェクターのサイドアームに予め仕込む。次に、混合物を、イソブタン(440mL)と共に反応器に流し込む。水素は加えない。エチレンを反応器に加え(全反応器圧:310psig)、内容物を75℃で平衡させる。
【0054】
支持触媒(表1または2を参照)約60mgを、グローブボックス中、インジェクターのサイドアームに予め仕込む。次に、混合物を窒素加圧下、イソブタン(50mL)と共に反応器に流し込む。30分間重合を進める。反応器を通気させ、得られるポリマーを集め、減圧乾燥する。触媒活性およびポリマー特性を表1および2に要約する。
【0055】
表1の結果は、支持体−活性化剤と共にイオン性ホウ酸塩を含むと、触媒活性が向上し、分子量が高いと共にコモノマー組み込みが増加したポリオレフィンが提供されることを示している。興味深いことに、補助活性化剤としてMAOを含むことによっては同様の向上が実現されず(比較例2を参照);実際、MAOを加えると活性が現実に低下する。
【0056】
表2の結果が示すように、支持体−活性化剤と共にアルキル化インデノインドリル錯体を用いると、インデノインドリル金属ハロゲン化物と比較して、活性が向上する。活性の向上は、塩化物錯体から得られるものの約2〜5倍である。
【0057】
先の実施例は単なる説明のためのものである。以下の特許請求の範囲が発明を定義する。
【0058】
【化1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルサイト錯体、凝集金属酸化物/クレー支持体−活性化剤およびイオン性ホウ酸塩を含む触媒系の存在下にオレフィンを重合することを含む方法。
【請求項2】
前記錯体が、第3〜10族遷移またはランタニド金属と少なくとも一つのインデノインドリル配位子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記錯体が、架橋インデノ[1,2−b]インドリル錯体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記錯体が、架橋インデノ[2,1−b]インドリル錯体である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記錯体がアルキル化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記支持体−活性化剤がシリカおよびモンモリロナイトクレーから調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記支持体−活性化剤のシリカ:クレー重量比が0.25:1〜99:1の範囲である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記イオン性ホウ酸塩がトリフェニル−カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(「F20」)である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
触媒活性が、イオン性ホウ酸塩を有さない類似の触媒系の活性の少なくとも2倍である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
得られるポリオレフィンの密度が、イオン性ホウ酸塩を用いずに同様の方法により製造された類似のポリオレフィンのそれより低い、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
得られるポリオレフィンの重量平均分子量が、イオン性ホウ酸塩を用いずに同様の方法により製造された類似のポリオレフィンのそれより大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
インデノインドリル第3〜10族遷移またはランタニド金属アルキル化錯体および凝集金属酸化物/クレー支持体−活性化剤を含む触媒系の存在下にオレフィンを重合することを含む方法。
【請求項13】
前記触媒系がイオン性ホウ酸塩を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記イオン性ホウ酸塩がF20である、請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2009−503231(P2009−503231A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524970(P2008−524970)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/025140
【国際公開番号】WO2007/018804
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(501391331)エクイスター ケミカルズ、 エルピー (30)
【氏名又は名称原語表記】Equistar Chemicals,LP
【Fターム(参考)】