説明

オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法

【課題】立体規則性の高い重合体を与えるオレフィン重合用固体触媒の製造方法の提供。
【解決手段】オレフィン重合用固体触媒成分(A)の製造方法であって、チタン化合物(a)、マグネシウム化合物(b)および以下の式(I)で表される内部電子供与体を互いに接触させる工程を含む方法。


(I)[R1は炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基であり;R2〜R5は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子および炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基から選ばれる。ただし、R2〜R5から選ばれる少なくとも1つは炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基であり;R6はハロゲン原子である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法、オレフィン重合用固体触媒成分を用いるオレフィン重合用固体触媒の製造方法、オレフィン重合用固体触媒を用いるオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オレフィン重合用触媒成分としてチタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子及び内部電子供与体を含有する固体触媒成分が数多く提案されている。これら固体触媒成分を用いて得られる触媒は、該触媒の存在下にオレフィンを重合するとき、低分子量成分や無定形成分の含量が少ない重合体が得られることが望まれる。α−オレフィンの重合においては、重合体中の低分子量成分や無定形成分の含量が少ないことに加えて立体規則性が高いことが好ましい。立体規則性は重合体の結晶性に影響し、立体規則性が高い重合体ほど結晶化度の高い重合体となる。結晶化度の高い重合体を材料とした成形体は優れた剛性や耐熱性を有する。
【0003】
例えば、特許文献1には、有機ケイ素化合物の存在下、4価のチタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られるTi−Mg複合型固体触媒と、助触媒の有機アルミニウム化合物と、有機ケイ素化合物との混合物の存在下、α−オレフィンを重合すると、前記固体触媒が低分子量成分や無定形成分の含量が少ないα−オレフィン重合体が得られることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2,3には、マグネシウム化合物、チタン化合物、ハロゲン含有化合物およびアルコキシエステル化合物を接触させて得られる固体触媒成分や、マグネシウム化合物、チタン化合物、ハロゲン含有化合物を接触させた後、次いでこれらにアルコキシエステル化合物を接触させて得られる固体触媒成分が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−319508号公報
【特許文献2】特開平2−289604号公報
【特許文献3】特開平8−143619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の固体触媒成分を含むオレフィン重合用触媒は、該オレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合して得られるオレフィン重合体の立体規則性の観点から未だ満足できるものではない。本発明は、α−オレフィンを重合した場合に立体規則性の高い重合体を与えるオレフィン重合用固体触媒の製造方法、該オレフィン重合用固体触媒を製造するためのオレフィン重合用固体触媒成分の製造方法、および該オレフィン重合用固体触媒を用いるオレフィン重合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、オレフィン重合用固体触媒成分(A)の製造方法であって、チタン化合物(a)、マグネシウム化合物(b)および以下の式(I)で表される内部電子供与体を互いに接触させる工程を含む方法である。




(I)

[R1は炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基であり;R2〜R5は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子および炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基から選ばれる。ただし、R2〜R5から選ばれる少なくとも1つは炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基であり;R6はハロゲン原子である。]
【0008】
本発明はさらに、オレフィン重合用固体触媒の製造方法であって、上記の方法によって製造されるオレフィン重合用固体触媒成分(A)と、有機アルミニウム化合物(B)とを接触させる工程を含む方法である。
【0009】
本発明はさらにまた、オレフィン重合体の製造方法であって、上記の方法で製造されるオレフィン重合用固体触媒の存在下、オレフィンを重合する工程を含む方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、α−オレフィンを重合した場合に立体規則性の高い重合体を与えるオレフィン重合用固体触媒の製造方法、該オレフィン重合用固体触媒を製造するためのオレフィン重合用固体触媒成分の製造方法、および該オレフィン重合用固体触媒を用いるオレフィン重合体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のオレフィン重合用固体触媒成分(A)の製造方法は、チタン化合物(a)、マグネシウム化合物(b)および以下の式(I)で表される内部電子供与体を互いに接触させる工程を含む。

(I)
[R1は炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基であり;R2〜R5は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子および炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基から選ばれる。ただし、R2〜R5から選ばれる少なくとも1つは炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基であり;R6はハロゲン原子である。]
【0012】
チタン化合物(a)は、チタン原子を含有する化合物であればよく、具体例としては、四塩化チタン、四臭化チタン、および四ヨウ化チタンのようなテトラハロゲン化チタン;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラiso−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラiso−ブトキシチタン、テトラシクロヘキシロキシチタン、およびテトラフェノキシチタンのようなテトラハイドロカルビルオキシチタン;メトキシチタントリクロリド、エトキシチタントリクロリド、n−プロポキシチタントリクロリド、n−ブトキシチタントリクロリド、およびエトキシチタントリブロミドのようなトリハロゲン化モノアルコキシチタン;ジメトキシチタンジクロリド、ジエトキシチタンジクロリド、ジiso−プロポキシチタンジクロリド、ジ−n−プロポキシチタンジクロリド、およびジエトキシチタンジブロミドのようなジハロゲン化ジアルコキシチタン;トリメトキシチタンクロリド、トリエトキシチタンクロリド、トリiso−プロポキシチタンクロリド、トリ−n−プロポキシチタンクロリド、およびトリ−n−ブトキシチタンクロリドのようなモノハロゲン化トリアルコキシチタンなどを挙げられる。チタン化合物(a)として好ましくはテトラハロゲン化チタン、トリハロゲン化モノアルコキシチタンであり、より好ましくテトラハロゲン化チタンであり、更に好ましくは四塩化チタンである。これらのチタン化合物(a)は、それぞれ単独で用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
マグネシウム化合物(b)は、マグネシウム原子を含有する化合物であればよく、下式(i)または(ii)で表される化合物を例示することが出来る。
MgR7a12-a・・・(i)
Mg(OR7a12-a・・・(ii)
(式中、aは0≦a≦2を満足する整数であり;R7は炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基であり;X1はハロゲン原子である。)
【0014】
上記の一般式(i)および(ii)におけるR7としては、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基等が挙げられ、これらの基に含まれる水素原子の一部または全てはハロゲン原子、ハイドロカルビルオキシ基、ニトロ基、スルホニル基、シリル基等で置換されていてもよい。R7のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、およびn−オクチル基のような直鎖状アルキル基;iso−プロピル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、および2−エチルヘキシル基のような分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、およびシクロオクチル基のような環状アルキル基等が挙げられ、好ましくは炭素原子数1〜20の直鎖状または分岐状アルキル基である。R7のアラルキル基としては、ベンジル基、およびフェネチル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数7〜20のアラルキル基である。R7のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、およびトリル基等が挙げられ、好ましくは炭素原子数6〜20のアリール基である。R7のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基、および5−ヘキセニル基のような直鎖状アルケニル基;イソブテニル基、および4−メチル−3−ペンテニル基のような分岐状アルケニル基;2−シクロヘキセニル基、および3−シクロヘキセニル基のような環状アルケニル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数2〜20の直鎖状および分岐状アルケニル基である。複数のR7は同一でも異なってもよい。
【0015】
上記の一般式(i)および(ii)におけるX1としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、およびフッ素原子を挙げることができ、好ましくは塩素原子である。複数のX1は同一でも異なっていてもよい。
【0016】
上記の一般式(i)および(ii)のマグネシウム化合物(b)の具体例としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジiso−プロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジオクチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ジシクロへキシルマグネシウム、およびブチルオクチルマグネシウムのようなジアルキルマグネシウム化合物;ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、ジヘキシロキシマグネシウム、ジオクトキシマグネシウム、およびジシクロヘキシロキシマグネシウムのようなジアルコキシマグネシウム化合物;メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、iso−プロピルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、t−ブチルマグネシウムクロリド、ヘキシルマグネシウムクロリド、iso−ブチルマグネシウムクロリド、ベンジルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、iso−プロピルマグネシウムブロミド、n−ブチルマグネシウムブロミド、t−ブチルマグネシウムブロミド、ヘキシルマグネシウムブロミド、iso−ブチルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムイオダイド、エチルマグネシウムイオダイド、iso−プロピルマグネシウムイオダイド、n−ブチルマグネシウムイオダイド、t−ブチルマグネシウムイオダイド、ヘキシルマグネシウムイオダイド、iso−ブチルマグネシウムイオダイド、ベンジルマグネシウムイオダイドのようなアルキルマグネシウムハライド化合物;メトキシマグネシウムクロライド、エトキシマグネシウムクロライド、イソプロポキシマグネシウムクロライド、ブトキシマグネシウムクロライド、およびヘキシルオキシマグネシウムクロライドのようなアルコキシマグネシウムクロライド;フェニルオキシマグネシウムのようなアリーロキシマグネシウムクロライド;フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、およびヨウ化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウム化合物を挙げることができる。
【0017】
マグネシウム化合物(b)として、好ましくはハロゲン化マグネシウム化合物(b−1)またはジアルコキシマグネシウム化合物(b−2)である。ハロゲン化マグネシウム化合物(b−1)として好ましくは塩化マグネシウムである。ジアルコキシマグネシウム化合物(b−2)として、好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基を持つジアルコキシマグネシウムであり、更に好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基を持つジアルコキシマグネシウムであり、特に好ましくはジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジiso−プロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウムである。マグネシウム化合物(b)はメタノール、エタノール、および2−エチルヘキサノールのようなアルコールまたはトルエン、およびヘキサンのような炭化水素溶媒に、該マグネシウム化合物(b)を溶解した溶液状または固体状として用いることができ、アルコール、エーテル、エステル、二酸化炭素などを含有してもよい。
【0018】
ハロゲン化マグネシウム化合物(b−1)は市販のものをそのまま用いてもよく、市販のものをアルコールに溶解した溶液を炭化水素液体中に滴下することによって生じる沈殿物を、液体と分離して用いてもよい。
ジアルコキシマグネシウム化合物(b−2)の製造方法としては、例えば、金属マグネシウムとアルコールを触媒の存在下接触させる方法を挙げることができる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、およびオクタノールが挙げられる。触媒としては、ヨウ素、塩素、および臭素のようなハロゲン;ヨウ化マグネシウム、および塩化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウムが挙げられ、好ましくはヨウ素である。
【0019】
マグネシウム化合物(b)は、担体物質に担持されていてもよい。担体物質としては、例えば、SiO2、Al23、MgO、TiO2、およびZrO2のような多孔質無機酸化物;ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−エチレングリコールジメタクリル酸共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、アクリル酸メチル−ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−ジビニルベンゼン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、およびポリプロピレンのような有機多孔質ポリマーが挙げられる。これらのうち好ましくは、多孔質無機酸化物であり、特に好ましくは、SiO2である。
【0020】
担体物質として好ましくは、マグネシウム化合物(b)を該担体物質に有効に固定化する観点から、細孔半径20〜200nmである細孔の細孔容量が、0.3cm3/g以上であり、より好ましくは0.4cm3/g以上であり、かつ該範囲の細孔容量は、細孔半径3.5〜7500nmである細孔の細孔容量に対して35%以上であり、より好ましくは40%以上である多孔質の担体物質である。
【0021】
一般式(I)におけるR1のハイドロカルビル基としては、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基等が挙げられ、これらの基に含まれる一部または全ての水素原子はハロゲン原子、ハイドロカルビルオキシ基、ニトロ基、スルホニル基、シリル基等で置換されていてもよい。R1のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、およびn−オクチル基のような直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、および2−エチルヘキシル基のような分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、およびシクロオクチル基のような環状アルキル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基であり、より好ましくは直鎖状もしくは分岐状で炭素原子数1〜20のアルキル基である。R1のアラルキル基としては、ベンジル基、およびフェネチル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数7〜20のアラルキル基である。R1のアリール基としては、フェニル基、トリル基、およびキシリル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数6〜20のアリール基である。R1のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、3−ブテニル、および5−ヘキセニル基のような直鎖状アルケニル基;イソブテニル基、および5−メチル−3−ペンテニル基のような分岐状アルケニル基;2−シクロヘキセニル基、および3−シクロヘキセニル基のような環状アルケニル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基である。
【0022】
一般式(I)におけるR1として好ましくは、炭素原子数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1〜20の直鎖状または分岐状アルキル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基である。
【0023】
一般式(I)におけるR2〜R5のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子または臭素原子である。
【0024】
一般式(I)におけるR2〜R5のハイドロカルビル基としては、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基等が挙げられ、これらの基に含まれる水素原子の一部または全てはハロゲン原子、ハイドロカルビルオキシ基、ニトロ基、スルホニル基、シリル基等で置換されていてもよい。R2〜R5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、およびn−オクチル基のような直鎖状アルキル基;iso−プロピル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1,1−ジメチル−2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−ペンチル基、および1,1−ジメチル−n−ヘキシル基のような分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、およびシクロオクチル基のような環状アルキル基、が挙げられ、好ましくは炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基、である。R2〜R5のアラルキル基としては、ベンジル基、およびフェネチル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数7〜20のアラルキル基である。R2〜R5のアリール基としては、フェニル基、トリル基、およびキシリル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数6〜20のアリール基である。R2〜R5のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、3−ブテニル、および5−ヘキセニル基のような直鎖状アルケニル基;iso−ブテニル基、および5−メチル−3−ペンテニル基のような分岐状アルケニル基;2−シクロヘキセニル基、および3−シクロヘキセニル基のような環状アルケニル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数2〜10のアルケニル基である。
【0025】
一般式(I)におけるR4として好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基であり、より好ましくは炭素原子数3〜20の分岐状または環状アルキル基あるいは炭素原子数6〜20のアリール基であり、更に好ましくはiso−プロピル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1,1−ジメチル−2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−ペンチル基、および1,1−ジメチル−n−ヘキシル基のような分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、およびシクロオクチル基のような環状アルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、o−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、p−エチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,4,6−トリエチルフェニル基、m−ノルマルプロピルフェニル基、m−イソプロピルフェニル基のようなアリール基であり、特に好ましくはイソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1,1−ジメチル−2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−ペンチル基、および1,1−ジメチル−n−ヘキシル基のような分岐状アルキル基;フェニル基のようなアリール基である。
【0026】
一般式(I)におけるR5として好ましくは水素原子または炭素原子数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは水素原子または炭素原子数1〜20の直鎖状または分岐状アルキル基であり、更に好ましくは水素原子またはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、およびn−オクチル基のような直鎖状アルキル基;iso−プロピル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1,1−ジメチル−2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−ペンチル基、および1,1−ジメチル−n−ヘキシル基のような分岐状アルキル基であり、特に好ましくは水素原子またはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、およびn−オクチル基のような炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基であり、最も好ましくは水素原子またはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基である。
【0027】
一般式(I)におけるR2およびR3として好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは水素原子または炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基であり、特に好ましくは水素原子またはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0028】
一般式(I)におけるR6のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子または臭素原子であり、より好ましくは塩素原子である。
【0029】
一般式(I)の具体例としては、3−エトキシ−2−iso−プロピルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−tert−アミルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−シクロヘキシルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−シクロペンチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−アダマンチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−(2,3−ジメチル−2−ブチル)プロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−(2,3,3−トリメチル−2−ブチル)プロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−(2−メチル−2−ヘキシル)プロピオン酸クロライド、3−iso−ブトキシ−2−iso−プロピルプロピオン酸クロライド、3−iso−ブトキシ−2−iso−ブチルプロピオン酸クロライド、3−iso−ブトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−iso−ブトキシ−2−tert−アミルプロピオン酸クロライド、3−iso−ブトキシ−2−シクロヘキシルプロピオン酸クロライド、3−iso−ブトキシ−2−シクロペンチルプロピオン酸クロライド、3−iso−ブトキシ−2−アダマンチルプロピオン酸クロライド、3−iso−ブトキシ−2−フェニルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−iso−プロピルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−iso−ブチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−tert−アミルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−シクロヘキシルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−シクロペンチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−アダマンチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−フェニルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−(2,3−ジメチル−2−ブチル)プロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−(2,3,3−トリメチル−2−ブチル)プロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−(2−メチル−2−ヘキシル)プロピオン酸クロライド、3−エトキシ−3−iso−プロピル−2−iso−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−3−iso−ブチル−2−iso−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−3−iso−ブチル−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2、3−ジtert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−3−iso−ブチル−2−tert−アミルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−3−tert−ブチル−2−tert−アミルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2、3−ジtert−アミルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−3−iso−ブチル−2−シクロヘキシルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2、3−ジシクロヘキシルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−3−iso−ブチル−2−シクロペンチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2、3−ジシクロペンチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2,2−ジiso−プロピルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2,2−ジiso−プロピルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−iso−プロピル−2−iso−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−iso−プロピル−2−iso−ブチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−iso−プロピル−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−iso−プロピル−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−iso−プロピル−2−tert−アミルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−iso−プロピル−2−tert−アミルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−iso−プロピル−2−シクロペンチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−iso−プロピル−2−シクロペンチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−iso−プロピル−2−シクロヘキシルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−iso−プロピル−2−シクロヘキシルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−iso−プロピル−2−フェニルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−iso−プロピル−2−フェニルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2,2−ジiso−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2,2−ジiso−ブチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−iso−ブチル−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−iso−ブチル−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−iso−ブチル−2−tert−アミルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−iso−ブチル−2−tert−アミルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−iso−ブチル−2−シクロペンチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−iso−ブチル−2−シクロペンチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−iso−ブチル−2−シクロヘキシルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−iso−ブチル−2−シクロヘキシルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−iso−ブチル−2−フェニルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−iso−ブチル−2−フェニルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2,2−ジtert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2,2−ジtert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−tert−ブチル−2−メチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−tert−ブチル−2−メチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−tert−ブチル−2−エチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−tert−ブチル−2−エチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−tert−ブチル−2−n−プロピルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−tert−ブチル−2−n−プロピルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−tert−ブチル−2−n−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−tert−ブチル−2−n−ブチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−tert‐ブチル−2−n−ペンチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−tert−ブチル−2−n−ペンチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−tert‐ブチル−2−フェニルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−tert−ブチル−2−フェニルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2,2−ジシクロヘキシルプロピオン酸クロライド、が挙げられる。
【0030】
中でも、3−エトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−シクロヘキシルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−シクロペンチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−フェニルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−(2,3−ジメチル−2−ブチル)プロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−(2,3,3−トリメチル−2−ブチル)プロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−(2−メチル−2−ヘキシル)プロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−3−iso−ブチル−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2、3−ジtert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−3−tert−ブチル−2−tert−アミルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−iso−プロピル−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−iso−プロピル−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−iso−ブチル−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−iso−ブチル−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2,2−ジtert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2,2−ジtert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−tert−ブチル−2−メチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−tert−ブチル−2−メチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−tert−ブチル−2−エチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−tert−ブチル−2−エチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−tert−ブチル−2−n−プロピルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−tert−ブチル−2−n−プロピルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−tert−ブチル−2−n−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−tert−ブチル−2−n−ブチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−tert‐ブチル−2−n−ペンチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−tert−ブチル−2−n−ペンチルプロピオン酸クロライド、が好ましく、3−エトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−(2,3−ジメチル−2−ブチル)プロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−(2,3,3−トリメチル−2−ブチル)プロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−(2−メチル−2−ヘキシル)プロピオン酸クロライド、3−エトキシ−3−iso−ブチル−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−3−tert−ブチル−2−tert−アミルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−iso−プロピル−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−iso−ブチル−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−tert−ブチル−2−メチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−tert−ブチル−2−エチルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−tert−ブチル−2−n−プロピルプロピオン酸クロライド、3−エトキシ−2−tert−ブチル−2−n−ブチルプロピオン酸クロライド、3−メトキシ−2−tert‐ブチル−2−n−ペンチルプロピオン酸クロライド、が特に好ましい。
【0031】
本発明において、チタン化合物(a)の使用量は、使用されるマグネシウム化合物(b)中の総マグネシウム原子1molあたり、通常0.01mol〜100mol、好ましくは0.03mol〜50mol、特に好ましくは0.05mol〜30molである。チタン化合物(a)は、一度に、又は任意の複数回に分けて使用される。
【0032】
本発明において、一般式(I)で表される内部電子供与体の使用量は、使用されるマグネシウム化合物(b)1gあたり、通常0.01ml〜100ml、好ましくは0.03ml〜50ml、特に好ましくは0.05ml〜3mlである。一般式(I)で表される内部電子供与体は、一度に、又は任意の複数回に分けて使用される。
【0033】
本発明において、チタン化合物(a)、マグネシウム化合物(b)および一般式(I)で表される内部電子供与体(以下、内部電子供与体(I)と称することもある)の接触は全て、通常、窒素ガスおよびアルゴンガスのような不活性気体雰囲気下で行われる。これらを接触させてオレフィン重合用固体触媒成分(A)を製造する方法として、以下を例示することができる;
(1−1)マグネシウム化合物に、チタン化合物および内部電子供与体(I)を任意の順序で加えて固体成分を製造する方法;
(1−2)マグネシウム化合物に、チタン化合物および内部電子供与体(I)の混合物を加えて固体成分を製造する方法
(1−3)マグネシウム化合物に内部電子供与体(I)を加え固体成分を得た後、次いで該固体成分にチタン化合物を加えて固体成分を製造する方法;
(1−4)マグネシウム化合物に内部電子供与体(I)を加え固体成分を得た後、次いで該固体成分にチタン化合物および内部電子供与体(I)を任意の順序で加えて固体成分を製造する方法;
(1−5)マグネシウム化合物に内部電子供与体(I)を加え固体成分を得た後、次いで該固体成分にチタン化合物および内部電子供与体(I)の混合物を加えて固体成分を製造する方法;
(1−6)チタン化合物に、マグネシウム化合物および内部電子供与体(I)を任意の順序で加えて固体成分を製造する方法;
(1−7)チタン化合物に、マグネシウム化合物および内部電子供与体(I)の混合物を加えて固体成分を製造する方法;
【0034】
上記方法(1−1)〜(1−7)の方法で得られる固体成分は、オレフィン重合用固体触媒成分(A)として使用することができ、方法(1−1)または方法(1−2)が好ましい。
また、上記方法(1−1)〜(1−7)の方法で得られる固体成分に、チタン化合物を1回以上加えて得られる固体成分や、該固体成分にチタン化合物と内部電子供与体(I)あるいは以下の式(II)で表されるアルコキシエステル化合物とを任意の順序、あるいは混合物で1回以上加えて得られる固体成分も、オレフィン重合用固体触媒成分(A)として使用できる。


(II)
[R1およびRは炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基であり;R2〜R5は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子および炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基から選ばれる。ただし、R2〜R5から選ばれる少なくとも1つは炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基である。]
アルコキシエステル化合物としては、3−エトキシ−2−iso−プロピルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−iso−ブチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−tert−アミルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−シクロヘキシルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−シクロペンチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2−iso−プロピルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2−iso−ブチルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2−tert−アミルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2−シクロヘキシルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2−シクロペンチルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−iso−プロピルプロピオン酸メチル、3−エトキシ−2−iso−ブチルプロピオン酸メチル、3−エトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸メチル、3−エトキシ−2−tert−アミルプロピオン酸メチル、3−エトキシ−2−シクロヘキシルプロピオン酸メチル、3−エトキシ−2−シクロペンチルプロピオン酸メチル、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸メチル、3−メトキシ−2−iso−プロピルプロピオン酸メチル、3−メトキシ−2−iso−ブチルプロピオン酸メチル、3−メトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸メチル、3−メトキシ−2−tert−アミルプロピオン酸メチル、3−メトキシ−2−シクロヘキシルプロピオン酸メチル、3−メトキシ−2−シクロペンチルプロピオン酸メチル、3−メトキシ−2−フェニルプロピオン酸メチル、3−メトキシ−2,2−ジiso−プロピルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2,2−ジiso−プロピルプロピオン酸メチル、3−エトキシ−2,2−ジiso−プロピルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2,2−ジiso−プロピルプロピオン酸メチル、3−エトキシ−2、2−ジフェニルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2、2−ジフェニルプロピオン酸メチル、3−メトキシ−2,2−ジiso−ブチルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2,2−ジiso−ブチルプロピオン酸メチル、3−エトキシ−2,2−ジiso−ブチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2,2−ジiso−ブチルプロピオン酸メチル、3−メトキシ−2,2−ジtert−ブチルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2,2−ジtert−ブチルプロピオン酸メチル、3−エトキシ−2,2−ジtert−ブチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2,2−ジtert−ブチルプロピオン酸メチル、3−エトキシ−2,2−ジシクロヘキシルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2,2−ジシクロペンチルプロピオン酸エチルが好ましい。
【0035】
中でも、好ましくは、下記の方法が挙げられる。
方法(1−1)〜方法(1−7)で得られる固体成分に、チタン化合物と、内部電子供与体(I)あるいは内部電子供与体(II)とを加えて固体成分を製造する方法、
方法(1−1)〜方法(1−7)で得られる固体成分に、チタン化合物と、内部電子供与体(I)あるいは内部電子供与体(II)の混合物を加えて固体成分を製造する方法。
一般式(II)で表されるアルコキシエステルの使用量は、使用されるマグネシウム化合物(b)1gあたり、通常0.01ml〜100ml、好ましくは0.03ml〜50ml、特に好ましくは0.05ml〜3mlである。一般式(II)で表されるアルコキシエステルは、一度に、又は任意の複数回に分けて使用される。
より好ましくは、方法(1−1)または方法(1−2)で得られる固体成分に、チタン化合物と、内部電子供与体(II)の混合物を加えて固体成分を製造する方法である。
【0036】
各成分を互いに接触させる方法は特に限定されない。該方法として、スラリー法や機械的粉砕法(例えばボールミルを用いてこれらを粉砕する方法)のような公知の方法を例示することができる。
【0037】
上記のスラリー法におけるスラリー濃度は、通常0.05〜0.7g固体/ml溶媒、特に好ましくは0.1〜0.5g固体/ml溶媒である。接触の温度は、通常30℃〜150℃、好ましくは45℃〜135℃、特に好ましくは60℃〜120℃である。接触の時間は、通常30分から6時間程度が好適である。
【0038】
上記の機械的粉砕法は、得られるオレフィン重合用固体触媒成分(A)の微粉含有量やその粒度分布の広がりを抑制するために、好ましくは溶媒の存在下で行われる。溶媒として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、およびオクタンのような脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエンおよびキシレンのような芳香族炭化水素;シクロヘキサンおよびシクロペンタンのような脂環式炭化水素;ならびに1,2−ジクロルエタンおよびモノクロルベンゼンのようなハロゲン化炭化水素を例示することができる。中でも、芳香族炭化水素またはハロゲン化炭化水素が好ましい。
【0039】
機械的粉砕法によって、チタン化合物(a)、マグネシウム化合物(b)および一般式(I)で表される内部電子供与体を互いに接触させるときの温度は、通常−50℃〜200℃であり、好ましくは−20℃〜150℃であり、より好ましくは−20℃〜130℃の範囲であり、特に好ましくは−20℃〜120℃の範囲である。
【0040】
機械的粉砕法によって、チタン化合物(a)、マグネシウム化合物(b)および一般式(I)で表される内部電子供与体を互いに接触させる時間は、通常10分〜12時間であり、好ましくは30分〜10時間であり、特に好ましくは1時間〜8時間の範囲である。所定の接触時間これらを接触させてもよく、所定の接触時間に満たない時間これらを接触させて前駆体を形成させ、該前駆体を洗浄した後、さらに所定の時間の残りの時間、前駆体を維持してオレフィン重合用固体触媒成分を形成してもよい。
【0041】
本発明において、チタン化合物(a)、マグネシウム化合物(b)および一般式(I)で表される内部電子供与体を接触させる温度は、通常−50℃〜200℃であり、好ましくは0℃〜170℃であり、特に好ましくは50℃〜150℃の範囲である。
【0042】
本発明において、チタン化合物(a)、マグネシウム化合物(b)および一般式(I)、(II)で表される内部電子供与体を接触させる時間は、通常10分〜12時間であり、好ましくは30分〜10時間であり、特に好ましくは30分〜8時間である。
チタン化合物(a)、マグネシウム化合物(b)および一般式(I)、(II)で表される内部電子供与体を接触させて得られるオレフィン重合用固体触媒成分、またはオレフィン重合用固体触媒成分が形成される工程の途中で形成される前駆体は、不要物を除去するために、溶媒によって洗浄することが好ましい。溶媒は、前駆体あるいはオレフィン重合用固体触媒成分に対して不活性であることが好ましく、溶媒としてペンタン、ヘキサン、ヘプタン、およびオクタンのような脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエンおよびキシレンのような芳香族炭化水素;シクロヘキサンおよびシクロペンタンのような脂環式炭化水素;ならびに1,2−ジクロルエタンおよびモノクロルベンゼンのようなハロゲン化炭化水素を例示することができる。中でも、芳香族炭化水素またはハロゲン化炭化水素が特に好ましい。洗浄に使用する溶媒の量は一段階の接触につき、オレフィン重合用固体触媒成分または前駆体1gあたり通常0.1ミリリットル〜1000ミリリットルである。好ましくは1gあたり1ミリリットル〜100ミリリットルである。洗浄は、一段階の接触につき通常、1〜5回行われる。洗浄の温度は通常−50〜150℃、好ましくは0〜140℃、さらに好ましくは60〜135℃である。洗浄の時間は、好ましくは1〜120分であり、さらに好ましくは2〜60分である。
【0043】
本発明のオレフィン重合用固体触媒成分(A)と、有機アルミニウム化合物(B)とを公知の方法によって接触させることによって、オレフィン重合用固体触媒が製造される。また、本発明のオレフィン重合用固体触媒成分(A)と、有機アルミニウム化合物(B)と、外部電子供与体(C)とを接触させることによって、オレフィン重合用固体触媒を製造することもできる。
【0044】
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物(B)として、特開平10−212319号公報に記載された化合物を例示することができる。中でも、好ましくは、トリアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物、または、アルキルアルモキサンであり、さらに好ましくはトリエチルアルミニウム、トリiso−ブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロリドとの混合物またはテトラエチルジアルモキサンである。
【0045】
本発明で任意に用いられる外部電子供与体(C)として、特許第2950168号公報、特開2006−96936号公報、特開2009−173870号公報、および特開2010−168545号公報に記載された化合物を例示することができる。中でも、好ましくは酸素含有化合物または窒素含有化合物である。酸素含有化合物として、アルコキシケイ素、エーテル、エステル、およびケトンを例示することができる。中でも、好ましくはアルコキシケイ素またはエーテルである。
【0046】
外部電子供与体(C)としてのアルコキシケイ素は、下式(iv)〜(vi)のいずれかで表される化合物が好ましい。
9hSi(OR104-h・・・(iv)
Si(OR113(NR1213)・・・(v)
Si(OR113(NR14)・・・(vi)
[式中、R9は炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基、または水素原子であり;R10は炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基であり;hは0≦h<4を満たす整数である。R9およびR10の一方または両方が複数存在する場合、複数のR9およびR10は互いに同じであっても異なってもよい。R11は、炭素原子数1〜6のハイドロカルビル基であり;R12およびR13は水素原子または炭素原子数1〜12のハイドロカルビル基であり;NR14は、炭素原子数5〜20の環状アミノ基である。]
【0047】
上式(iv)におけるR9およびR10のハイドロカルビル基としては、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基等が挙げられ、R9およびR10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、およびn−オクチル基のような直鎖状アルキル基;iso−プロピル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、および2−エチルヘキシル基のような分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、およびシクロオクチル基のような環状アルキル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基である。R9およびR10のアラルキル基としては、ベンジル基、およびフェネチル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数7〜20のアラルキル基である。R9およびR10のアリール基としては、フェニル基、トリル基、およびキシリル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数6〜20のアリール基である。R9およびR10のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基、および5−ヘキセニル基のような直鎖状アルケニル基;iso−ブテニル基、および5−メチル−3−ペンテニル基のような分岐状アルケニル基;2−シクロヘキセニル基、および3−シクロヘキセニル基のような環状アルケニル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数2〜10のアルケニル基である。
【0048】
上式(iv)で表されるアルコキシケイ素の具体例としては、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、ジiso−プロピルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0049】
上式(v)および(vi)におけるR11のハイドロカルビル基としては、アルキル基、アルケニル基等が挙げられ、R11のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、およびn−ヘキシル基のような直鎖状アルキル基;iso−プロピル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ペンチル基、およびネオペンチル基のような分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、およびシクロヘキシル基のような環状アルキル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数1〜6の直鎖状アルキル基である。R11のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、3−ブテニル、および5−ヘキセニル基のような直鎖状アルケニル基;iso−ブテニル基、および5−メチル−3−ペンテニル基のような分岐状アルケニル基;2−シクロヘキセニル基、および3−シクロヘキセニル基のような環状アルケニル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数2〜6の直鎖状アルケニル基であり、特に好ましくはメチル基およびエチル基である。
【0050】
上式(v)におけるR12およびR13のハイドロカルビル基としては、アルキル基、アルケニル基等が挙げられ、R12およびR13のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、およびn−ヘキシル基のような直鎖状アルキル基;iso−プロピル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ペンチル基、およびネオペンチル基のような分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、およびシクロヘキシル基のような環状アルキル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数1〜6の直鎖状アルキル基である。R12およびR13のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基、および5−ヘキセニル基のような直鎖状アルケニル基;iso−ブテニル基、および5−メチル−3−ペンテニル基のような分岐状アルケニル基;2−シクロヘキセニル基、および3−シクロヘキセニル基のような環状アルケニル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数2〜6の直鎖状アルケニル基であり、特に好ましくはメチル基およびエチル基である。
【0051】
上式(v)で表されるアルコキシケイ素の具体例としては、ジメチルアミノトリメトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシラン、ジ−n−プロピルアミノトリメトキシシラン、ジメチルアミノトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジ−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、メチルエチルアミノトリエトキシシラン、メチル−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、tert−ブチルアミノトリエトキシシラン、ジiso−プロピルアミノトリエトキシシラン、メチルiso−プロピルアミノトリエトキシシランが挙げられる。
【0052】
上式(vi)におけるNR14の環状アミノ基としては、パーヒドロキノリノ基、パーヒドロイソキノリノ基、1,2,3,4−テトラヒドロキノリノ基、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリノ基、オクタメチレンイミノ基が挙げられる。
【0053】
上式(vi)で表されるアルコキシケイ素の具体例としては、パーヒドロキノリノトリエトキシシラン、パーヒドロイソキノリノトリエトキシシラン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリノトリエトキシシラン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリノトリエトキシシラン、オクタメチレンイミノトリエトキシシランが挙げられる。
【0054】
外部電子供与体(C)のエーテルとして、好ましくは環状エーテル化合物である。環状エーテル化合物とは、環構造内に少なくとも一つの−C−O−C−結合を有する複素環式化合物であり、更に好ましくは環構造内に少なくとも一つの−C−O−C−O−C−結合を有する環状エーテル化合物であり、特に好ましくは1,3−ジオキソラン、又は1,3−ジオキサンである。
【0055】
外部電子供与体(C)は、それぞれ単独で用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
オレフィン重合用固体触媒成分(A)と、有機アルミニウム化合物(B)と、任意に外部電子供与体(C)とを接触させる方法は、オレフィン重合用固体触媒が生成される限り、特に限定されない。接触は溶媒の存在下または不在下で行われる。これらの接触混合物を重合槽に供給してもよいし、各成分を別々に重合槽に供給して重合槽中で接触させてもよいし、任意の二成分の接触混合物と残りの成分とを別々に重合槽に供給してこれらを重合槽中で接触させてもよい。
【0057】
本発明のオレフィン重合体の製造方法で用いられるオレフィンとして、エチレンおよび炭素原子数3以上のα−オレフィンを例示することができる。α−オレフィンとして、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、および1−デセンのような直鎖状モノオレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、および4−メチル−1−ペンテンのような分岐鎖状モノオレフィン;ビニルシクロヘキサンのような環状モノオレフィン;ならびに、これらの2種以上の組合せを例示することができる。中でも、好ましくはエチレンもしくはプロピレンの単独重合、または、エチレンもしくはプロピレンを主成分とする複数種のオレフィンの共重合である。上記の複数種のオレフィンの組合せは、2種類またはそれ以上の種類のオレフィンの組合せを含んでいてもよく、共役ジエンや非共役ジエンのような多不飽和結合を有する化合物とオレフィンとの組合せを含んでいてもよい。
【0058】
本発明のオレフィン重合体の製造方法で製造されるオレフィン重合体は、好ましくはエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、1−ブテン単独重合体、1−ペンテン単独重合体、1−ヘキセン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体、または、これらを多段重合して得られる重合体である。
【0059】
本発明にかかるオレフィン重合用固体触媒を形成する方法は、以下の工程からなる方法が好ましい場合がある:
(i)オレフィン重合用固体触媒成分(A)及び有機アルミニウム化合物(B)の存在下、少量のオレフィン(本来の重合(通常、本重合と言われる)で使用されるオレフィンと同一または異なる)を重合させ(生成されるオレフィン重合体の分子量を調節するために水素のような連鎖移動剤を用いてもよいし、外部電子供与体(C)を用いてもよい)、該オレフィンの重合体で表面が覆われた触媒成分を生成させる工程(該重合は通常、予備重合と言われ、したがって該触媒成分は通常、予備重合触媒成分と言われる)
(ii)予備重合触媒成分と、有機アルミニウム化合物(B)および外部電子供与体(C)とを接触させる工程。
【0060】
予備重合は好ましくは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン及びトルエンのような不活性炭化水素を溶媒とするスラリー重合である。
【0061】
上記工程(i)で用いられる有機アルミニウム化合物(B)の量は、工程(i)で用いられる固体触媒成分(A)中のチタン原子1mol当たり、通常0.5mol〜700mol、好ましくは0.8mol〜500mol、特に好ましくは1mol〜200molである。
予備重合されるオレフィンの量は、工程(i)で用いられるオレフィン重合用固体触媒成分(A)1g当たり通常0.01g〜1000g、好ましくは0.05g〜500g、特に好ましくは0.1g〜200gである。
【0062】
上記工程(i)のスラリー重合におけるオレフィン重合用固体触媒成分(A)のスラリー濃度は、好ましくは1〜500g−オレフィン重合用固体触媒成分/リットル−溶媒、特に好ましくは3〜300g−オレフィン重合用固体触媒成分/リットル−溶媒である。
予備重合の温度は、好ましくは−20℃〜100℃、特に好ましくは0℃〜80℃である。予備重合における気相部のオレフィンの分圧は、好ましくは0.01MPa〜2MPa、特に好ましくは0.1MPa〜1MPaであるが、予備重合の圧力や温度において液状であるオレフィンについては、この限りではない。予備重合の時間は、好ましくは2分間から15時間である
【0063】
予備重合における、オレフィン重合用固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)及びオレフィンを重合槽へ供給する方法として、以下の方法(1)および(2)を例示することができる:
(1)オレフィン重合用固体触媒成分(A)と有機アルミニウム化合物(B)とを供給した後、オレフィンを供給する方法
(2)オレフィン重合用固体触媒成分(A)とオレフィンとを供給した後、有機アルミニウム化合物(B)を供給する方法。
【0064】
予備重合における、オレフィンを重合槽へ供給する方法として、以下の方法(1)および(2)を例示することができる:
(1)重合槽内の圧力を所定の圧力に維持するようにオレフィンを重合槽へ順次供給する方法
(2)オレフィンの所定量の全量を一括して重合槽へ供給する方法。
予備重合で用いられる外部電子供与体(C)の量は、オレフィン重合用固体触媒成分(A)中に含まれるチタン原子1molに対して、通常0.01mol〜400mol、好ましくは0.02mol〜200mol、特に好ましくは、0.03mol〜100molであり、有機アルミニウム化合物(B)1molに対して、通常0.003mol〜5mol、好ましくは0.005mol〜3mol、特に好ましくは0.01mol〜2molである。
【0065】
予備重合における、外部電子供与体(C)を重合槽へ供給する方法として、以下の方法(1)および(2)を例示することができる:
(1)外部電子供与体(C)を単独で重合槽へ供給する方法
(2)外部電子供与体(C)と有機アルミニウム化合物(B)との接触物を重合槽へ供給する方法。
【0066】
本重合時の有機アルミニウム化合物(B)の使用量は、オレフィン重合用固体触媒成分(A)中のチタン原子1molあたり、通常1mol〜1000mol、特に好ましくは5mol〜600molである。
【0067】
本重合で外部電子供与体(C)を使用する場合の外部電子供与体(C)の使用量は、オレフィン重合用固体触媒成分(A)中に含まれるチタン原子1molあたり、通常0.1mol〜2000mol、好ましくは0.3mol〜1000mol、特に好ましくは0.5mol〜800molであり、有機アルミニウム化合物(B)1molあたり、通常0.001mol〜5mol、好ましくは0.005mol〜3mol、特に好ましくは0.01mol〜1molである。
【0068】
本重合の温度は、通常−30℃〜300℃、好ましくは20℃〜180℃である。重合圧力は特に制限されず、工業的かつ経済的であるという点で、一般に常圧〜10MPa、好ましくは200kPa〜5MPa程度である。重合はバッチ式または連続式であり、重合方法としてプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンのような不活性炭化水素を溶媒とするスラリー重合法または溶液重合法や、重合温度において液状であるオレフィンを媒体とするバルク重合法や、気相重合法を例示することができる。
【0069】
本重合で得られる重合体の分子量を調節するために、連鎖移動剤(例えば、水素や、ジメチル亜鉛およびジエチル亜鉛のようなアルキル亜鉛)を用いてもよい。
【0070】
本発明によれば、α−オレフィンを重合した場合に立体規則性の高い重合体を与えるオレフィン重合用固体触媒、および該オレフィン重合用固体触媒を製造するためのオレフィン重合用固体触媒成分を得ることができる。また、該オレフィン重合用固体触媒を用いてオレフィンを重合することにより、立体規則性の高いオレフィン重合体を得ることができる。本発明のオレフィン重合用固体触媒成分はアイソタクチック立体規則性α−オレフィン重合体用触媒として特に好適である。
アイソタクチック立体規則性の尺度としては、アイソタクチック・ペンタッド分率が用いられることがある。α−オレフィンがプロピレンの場合、ここでいうアイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules、1973年、6号,925ページ〜926ページに発表されている方法、すなわち13C−NMRを使用して測定される結晶性ポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。ただし、NMR吸収ピークの帰属に関しては、その後発刊されたMacromolecules、1975年、8号、687ページ〜689ページに基づいて行うものである。アイソタクチック・ペンタッド分率は「mmmm」と略記することがある。理論的なmmmmの上限値は1.000である。本発明のオレフィン重合用固体触媒は、mmmmが0.900以上(より好ましくは0.940以上、さらに好ましくは0.950以上)のアイソタクチック立体規則性α−オレフィン重合体を製造する固体触媒として好ましい。
【0071】
以下、実施例および比較例によって本発明を更に詳細に説明する。
【0072】
[触媒の分析]
固体触媒成分の組成分析は次のように実施した。
チタン原子含有量は、固体サンプル約20mgを2規定の希硫酸約30mlで分解、これに過剰となる3重量%過酸化水素水3mlを加え、得られた液状サンプルの410nmの特性吸収を日立製ダブルビーム分光光度計U−2001型を用いて測定し、別途作成しておいた検量線に基づき求めた。アルコキシ基含有量は、固体サンプル約2gを水100mlで分解後、得られた液状サンプル中のアルコキシ基に対応するアルコール量を、ガスクロマトグラフィー内部標準法を用いて求め、アルコキシ基含有量に換算した。内部電子供与体の含量は、固体触媒成分約300mgをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解後、溶液中の内部電子供与体量をガスクロマトグラフィー内部標準法で求めた。
【0073】
[ポリマーの分析]
(1)キシレン可溶成分量(CXS:単位=重量%)
オレフィン重合体の20℃キシレン可溶成分量(以下CXSと略す)は以下のように測定した。1gの重合体を200mlの沸騰したキシレンに溶解させたのち、50℃まで徐冷し、次いで氷水に浸し撹拌しながら20℃まで冷却し、20℃で3時間放置したのち、析出した重合体を濾別した。濾液中に残存した重合体の重量百分率をCXSとした。
(2)極限粘度([η]:単位:dl/g)
オレフィン重合体の極限粘度(以下[η]と略す)はテトラリン溶媒、135℃で測定した。
(3)アイソタクチック・ペンタッド分率([mmmm])
10mmΦの試験管中で約200mgの重合体を3mlのオルソジクロロベンゼンに均一に溶解させて試料を調整し、その試料を13C−NMRスペクトルで測定した。13C−NMRスペクトルでの測定条件を以下に示す。
測定温度:135℃;
パルス繰り返し時間:10秒;
パルス幅:45°;
積算回数:2500回;
測定結果から、上述の方法に従ってアイソタクチック・ペンタッド分率を計算した。
【0074】
[実施例1]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分(A)の合成
工程(1−1A):撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた200mlのフラスコを窒素で置換した後、該フラスコに、ジエトキシマグネシウム5.11g、トルエン40.9mlを加えた。次いで、室温で四塩化チタン10.2ml(2ml/g−マグネシウム化合物)、3−エトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド1.53ml(0.3ml/g−マグネシウム化合物)をフラスコ内に投入した。その後、フラスコ内の温度を110℃へ昇温し、同温度で3時間、フラスコ内に投入した成分を撹拌した。次いで、攪拌した混合物を固液分離し、固体を得た。該固体を100℃にてトルエン51mlで3回洗浄した。
工程(1−1B):洗浄後の固体にトルエン40.9mlを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン10.2ml(2ml/g−マグネシウム化合物)を投入して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を100℃にてトルエン51mlで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン51mlで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分(A)を得た。該オレフィン重合用固体触媒成分の分析結果は表1に示す。
【0075】
(2)プロピレンの重合
内容積3リットルの撹拌機付きオートクレーブを十分乾燥した後、その内部を真空にした。トリエチルアルミニウム(有機アルミニウム化合物)2.63mmol、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン(外部電子供与体)0.26mmol、および実施例1(1)で合成したオレフィン重合用固体触媒成分(A) 1.59mgをオートクレーブに加えた。次いで、プロピレン780gと水素0.2MPaをオートクレーブに加えた。オートクレーブの温度を80℃に昇温し、80℃で1時間プロピレンを重合した。重合反応終了後、未反応モノマーをパージし、105gのプロピレン重合体を得た。触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は66,300g−PP/g−固体触媒成分であった。この重合体について、CXS:1.2wt%、[η]:1.05dl/g、[mmmm]=0.976であった。得られた結果を表1に示す。
【0076】
[比較例1]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分(A)の合成
工程(1−1A):3−エトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライドの代わりに3−エトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸エチルを用いた以外は[実施例1](1)と同様に行った。
工程(1−1B):[実施例1](1)と同様に行い、オレフィン重合用固体触媒成分(A)を得た。該オレフィン重合用固体触媒成分の分析結果は表1に示す。
【0077】
(2)プロピレンの重合
固体触媒成分として、上記[比較例1](1)で合成したオレフィン重合用固体触媒成分(A) 5.79mgを使用した以外は[実施例1](2)と同様に行い、311gのプロピレン重合体を得た。触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は53,700g−PP/g−固体触媒成分であった。この重合体について、CXS:1.1wt%、[η]:1.09dl/g、[mmmm]=0.973であった。得られた結果を表1に示す。
【0078】
[実施例2]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分(A)の合成
工程(1−1A):撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた200mlのフラスコを窒素で置換した後、該フラスコに、ジエトキシマグネシウム5.17g、トルエン41.4mlを加えた。次いで、室温で四塩化チタン10.3ml(2ml/g−マグネシウム化合物)、3−エトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸クロライド1.55ml(0.3ml/g−マグネシウム化合物)をフラスコ内に投入した。その後、フラスコ内の温度を110℃へ昇温し、同温度で3時間、フラスコ内に投入した成分を撹拌した。次いで、攪拌した混合物を固液分離し、固体を得た。該固体を100℃にてトルエン52mlで3回洗浄した。
工程(1−1B):洗浄後の固体にトルエン41.4mlを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン10.3ml(2ml/g−マグネシウム化合物)、3−エトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸エチル0.26ml(0.05ml/g−マグネシウム化合物)を投入して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を100℃にてトルエン52mlで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン52mlで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分(A)を得た。該オレフィン重合用固体触媒成分の分析結果は表1に示す。
【0079】
(2)プロピレンの重合
固体触媒成分として、上記[実施例2](1)で合成したオレフィン重合用固体触媒成分(A) 4.70mgを使用した以外は[実施例1](2)と同様に行い、244gのプロピレン重合体を得た。触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は51,900g−PP/g−固体触媒成分であった。この重合体について、CXS:0.9wt%、[η]:1.04dl/g、[mmmm]=0.977であった。得られた結果を表1に示す。
【0080】
[実施例3]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分(A)の合成
工程(1−1A):[実施例2](1)と同様に行った。
工程(1−1B):3−エトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸エチルの添加量を0.10ml/g−マグネシウム化合物とした以外は[実施例2](1)と同様に行った。該オレフィン重合用固体触媒成分の分析結果は表1に示す。
【0081】
(2)プロピレンの重合
固体触媒成分として、上記[実施例3](1)で合成したオレフィン重合用固体触媒成分(A) 4.28mgを使用した以外は[実施例1](2)と同様に行い、197gのプロピレン重合体を得た。触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は46,000g−PP/g−固体触媒成分であった。この重合体について、CXS:0.8wt%、[η]:1.15dl/g、[mmmm]=0.979であった。得られた結果を表1に示す。
【0082】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン重合用固体触媒成分(A)の製造方法であって、チタン化合物(a)、マグネシウム化合物(b)および以下の式(I)で表される内部電子供与体を互いに接触させる工程を含む方法。



(I)

[R1は炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基であり;R2〜R5は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子および炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基から選ばれる。ただし、R2〜R5から選ばれる少なくとも1つは炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基であり;R6はハロゲン原子である。]
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、R2およびR3が水素原子である方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、マグネシウム化合物(b)がハロゲン化マグネシウム(b−1)である方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の方法において、マグネシウム化合物(b)がジアルコキシマグネシウム(b−2)である方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法において、式(I)におけるR4が炭素原子数1〜20のアルキル基、または炭素原子数6〜20のアリール基である方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、R4が炭素原子数3〜20の分岐状アルキルもしくは環状アルキル基、または炭素原子数6〜20のアリール基である方法。
【請求項7】
オレフィン重合用固体触媒の製造方法であって、請求項1〜6のいずれかに記載の方法によって製造されるオレフィン重合用固体触媒成分(A)と、有機アルミニウム化合物(B)とを接触させる工程を含む方法。
【請求項8】
オレフィン重合用固体触媒の製造方法であって、請求項1〜6のいずれかに記載の方法によって製造されるオレフィン重合用固体触媒成分(A)と、有機アルミニウム化合物(B)と、外部電子供与体(C)とを接触させる工程を含む方法。
【請求項9】
オレフィン重合体の製造方法であって、請求項7または8に記載の方法によって製造されるオレフィン重合用固体触媒の存在下にオレフィンを重合させる工程を含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、オレフィンが炭素原子数3〜20のα−オレフィンである方法。

【公開番号】特開2011−246699(P2011−246699A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96031(P2011−96031)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】