説明

オレフィン重合用触媒、オレフィン重合用触媒成分およびその保存方法ならびにオレフィン重合体の製造方法

【課題】保存後においても活性の著しい低下を伴うことなく、溶剤可溶成分の少ないオレフィン重合体を、分子量分布を広げることなく与えることのできるオレフィン重合用触媒、オレフィン重合用触媒成分およびその保存方法ならびにそれを用いたプロピレン重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】非配位性イオン含有化合物が微粒子担体に化学結合により結合した助触媒成分、メタロセン化合物および特定の炭化水素化合物を組み合わせからなる触媒を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合用触媒、オレフィン重合用触媒成分およびその保存方法ならびにオレフィン重合体の製造方法に関する。特に、本発明は、保存後においても活性の著しい低下を伴うことなく、溶剤可溶成分の少ないオレフィン重合体を与えるオレフィン重合用触媒、その触媒成分、その触媒成分の保存方法ならびにオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非配位性イオン含有化合物がメタロセン触媒の助触媒成分として使用できることは知られており、例えば、特表平1−502036号公報などに、メチルアルミノキサンを使用せずに高い重合活性でオレフィン重合体を与えることが開示されている。このような触媒系の課題は、安定性に劣ることであり、触媒調製後の保存中に活性が低下するため、調製後は直ちに使用することが必要である。
【0003】
触媒調製後における活性低下を抑制する試みとして、特開平11−246614号公報には、メタロセン触媒に不活性な炭化水素化合物を添加することが提案されている。ここでは、メタロセン触媒の助触媒成分としてメチルアルミノキサンのみが具体的に開示されており、非配位性イオン含有化合物を使用した場合の効果については具体的に開示されていない。さらに、この公報に記載の方法において、助触媒成分として非配位性イオン含有化合物を使用した場合には、重合活性の低下を抑制することは困難である。
【0004】
また、WO96/34020号公報には、メタロセン化合物、非配位性イオン含有化合物およびメタロセン触媒に不活性な炭化水素化合物からなる触媒が開示されている。ここでは、触媒の安定性については記載されておらず、やはり触媒調製後の重合活性の低下を抑制することは困難であり、オレフィン重合体、ことにプロピレン重合体では、溶剤可溶成分の含有量が増加したり、分子量分布が広くなる場合があるという問題がある。
【0005】
このように、非配位性イオン含有化合物を助触媒とする系において、不活性な炭化水素を使用するのみでは重合活性の低下を抑制することはできず、この触媒系における前記課題は未だ解決されていないのが現状である。
【0006】
一方、WO96/41808号公報、特表平7−501573号公報などには、非配位性イオン含有化合物が、微粒子担体に化学結合より結合した助触媒成分、メタロセン化合物および有機アルミニウムからなるオレフィン重合触媒が提案されている。しかしながら、このような触媒あるいは触媒成分は、調製後の経時変化が大きく、保存中に重合活性が低下したり、保存後の触媒あるいは触媒成分を使用して製造したオレフィン重合体、ことにプロピレン重合体では、溶剤可溶成分の含有量が増加したり、分子量分布が広くなるという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特表平1−502036号公報
【特許文献2】特開平11−246614号公報
【特許文献3】WO96/34020号公報
【特許文献4】WO96/41808号公報
【特許文献5】特表平7−501573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、非配位性イオン含有化合物を助触媒成分とする触媒系において、保存後においても活性の著しい低下を伴うことなく、溶剤可溶成分の少ないオレフィン重合体を、分子量分布を広げることなく与えることのできるオレフィン重合用触媒、オレフィン重合用触媒成分およびその保存方法ならびにそれを用いたプロピレン重合体の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記状況に鑑み鋭意検討した結果、非配位性イオン含有化合物を助触媒成分とする触媒系において、特定の助触媒成分すなわち非配位性イオン含有化合物が微粒子担体に化学結合により結合した助触媒成分、および特定の炭化水素化合物を組み合わせることにより、上記課題の解決に有効なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の1]〜16]を提供する。
1)(A)非配位性イオン含有化合物が微粒子担体に化学結合により結合した助触媒成分、(B)チタン、ジルコニウムまたはハフニウムを有するメタロセン化合物、(C)有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機亜鉛化合物および有機マグネシウム化合物から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物および(D)炭化水素からなり、(A)が下記一般式(1)
【0011】
[M(R(R(R(R−L)・[M (1)
(式中、Mはホウ素またはアルミニウムであり、
、RおよびRは、それぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基であり、これらは互いに同一でも異なってもよく、
はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、
Lはシリル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ホスフィノ基およびこれらの1種以上を有するアルキル基もしくはアリール基の中から選ばれ、
a、bおよびcは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4であり、
[Mは、プロトン、カルベニウムイオン、トロピリウムイオン、フェロセニウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、オキソニウムイオン、シリリウムイオン、アルカリ金属イオンおよびホスホニウムイオンの中から選ばれる)
で示される非配位性イオン含有化合物(a−1)と微粒子状担体(a−2)を接触させて得られるものであり、(D)炭化水素が下記(I)〜(III)、
【0012】
(I)流動パラフィン、プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状水素添加ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリスチレン、石油樹脂および液状アタクティックポリプロピレンから選ばれる、30℃における動粘度が5.0mm/s以上の液体状炭化水素、
(II)黄色ワセリン、白色ワセリン、石油ワックス、ポリスチレン、ポリイソブチレン、水素添加ポリブタジエンおよびエチレン・プロピレン共重合体エラストマーから選ばれる、結晶性オレフィン重合体以外の固体状炭化水素、
(III)結晶性オレフィン重合体、
からなる群から選ばれる少なくとも1種であるオレフィン重合用触媒。
【0013】
2)(A)非配位性イオン含有化合物が微粒子担体に化学結合により結合した助触媒成分、(B)チタン、ジルコニウムまたはハフニウムを有するメタロセン化合物および(C)有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機亜鉛化合物および有機マグネシウム化合物から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物からなり、(D)炭化水素中で保存された触媒であって、(A)が下記一般式(1)
【0014】
[M(R(R(R(R−L)・[M (1)
(式中、Mはホウ素またはアルミニウムであり、
、RおよびRは、それぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基であり、これらは互いに同一でも異なってもよく、
はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、
Lはシリル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ホスフィノ基およびこれらの1種以上を有するアルキル基もしくはアリール基の中から選ばれ、
a、bおよびcは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4であり、
[Mは、プロトン、カルベニウムイオン、トロピリウムイオン、フェロセニウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、オキソニウムイオン、シリリウムイオン、アルカリ金属イオンおよびホスホニウムイオンの中から選ばれる)
で示される非配位性イオン含有化合物(a−1)と微粒子状担体(a−2)を接触させて得られるものであり、(D)炭化水素が下記(I)〜(III)、
【0015】
(I)流動パラフィン、プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状水素添加ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリスチレン、石油樹脂および液状アタクティックポリプロピレンから選ばれる、30℃における動粘度が5.0mm/s以上の液体状炭化水素、
(II)黄色ワセリン、白色ワセリン、石油ワックス、ポリスチレン、ポリイソブチレン、水素添加ポリブタジエンおよびエチレン・プロピレン共重合体エラストマーから選ばれる、結晶性オレフィン重合体以外の固体状炭化水素、
(III)結晶性オレフィン重合体、
からなる群から選ばれる少なくとも1種であるオレフィン重合用触媒。
【0016】
3)上記1)または2)に記載の触媒であって、保存安定性に優れたオレフィン重合用触媒。
4)(III)結晶性オレフィン重合体が下記(III−1)および(III−2)、
(III−1)前記(A)、(B)および(C)からなるオレフィン重合用触媒によりオレフィンの少なくとも1種が予備重合されたもの、
(III−2)ポリオレフィンワックス、
からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記1)〜3)のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒。
5)前記(III−1)がエチレンまたはプロピレンが予備重合されたものである、上記4)記載のオレフィン重合用触媒。
6)前記(III−1)がプロピレンが予備重合されたものであり、かつ融点が152.5℃以下である、上記5)記載のオレフィン重合用触媒。
【0017】
7)(B)メタロセン化合物に対する(C)有機金属化合物の使用量がモル比で10以上であるか、または(D)の使用量が(A)および(B)の合計100重量部に対して15重量部以上である、上記1)〜6)のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒。
8)上記1)〜7)のいずれかに記載のオレフィン重合触媒によりオレフィンの少なくとも1種を重合してオレフィン重合体を製造するオレフィン重合体の製造方法。
9)プロピレンを単独重合するかもしくはプロピレンと他のオレフィンの少なくとも1以上を共重合してプロピレン重合体を製造する、上記8)記載のオレフィン重合体の製造方法。
10)重量平均分子量が50,000以上であるプロピレン重合体を製造する、上記9)記載のオレフィン重合体の製造方法。
【0018】
11)(A)非配位性イオン含有化合物が微粒子担体に化学結合により結合した助触媒成分、(B)チタン、ジルコニウムまたはハフニウムを有するメタロセン化合物および(D)炭化水素からなり、(A)が下記一般式(1)
【0019】
[M(R(R(R(R−L)・[M (1)
(式中、Mはホウ素またはアルミニウムであり、
、RおよびRは、それぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基であり、これらは互いに同一でも異なってもよく、
はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、
Lはシリル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ホスフィノ基およびこれらの1種以上を有するアルキル基もしくはアリール基の中から選ばれ、
a、bおよびcは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4であり、
[Mは、プロトン、カルベニウムイオン、トロピリウムイオン、フェロセニウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、オキソニウムイオン、シリリウムイオン、アルカリ金属イオンおよびホスホニウムイオンの中から選ばれる)
【0020】
で示される非配位性イオン含有化合物(a−1)と微粒子状担体(a−2)を接触させて得られるものであり、(D)炭化水素が下記(I)〜(III)、
【0021】
(I)流動パラフィン、プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状水素添加ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリスチレン、石油樹脂および液状アタクティックポリプロピレンから選ばれる、30℃における動粘度が5.0mm/s以上の液体状炭化水素、
(II)黄色ワセリン、白色ワセリン、石油ワックス、ポリスチレン、ポリイソブチレン、水素添加ポリブタジエンおよびエチレン・プロピレン共重合体エラストマーから選ばれる、結晶性オレフィン重合体以外の固体状炭化水素、
(III)結晶性オレフィン重合体、
からなる群から選ばれる少なくとも1種であるオレフィン重合用触媒成分。
【0022】
12)(A)非配位性イオン含有化合物が微粒子担体に化学結合により結合した助触媒成分および(B)チタン、ジルコニウムまたはハフニウムを有するメタロセン化合物からなり、(D)炭化水素中で保存された触媒成分であって、(A)が下記一般式(1)
【0023】
[M(R(R(R(R−L)・[M (1)
(式中、Mはホウ素またはアルミニウムであり、
、RおよびRは、それぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基であり、これらは互いに同一でも異なってもよく、
はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、
Lはシリル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ホスフィノ基およびこれらの1種以上を有するアルキル基もしくはアリール基の中から選ばれ、
a、bおよびcは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4であり、
[Mは、プロトン、カルベニウムイオン、トロピリウムイオン、フェロセニウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、オキソニウムイオン、シリリウムイオン、アルカリ金属イオンおよびホスホニウムイオンの中から選ばれる)
で示される非配位性イオン含有化合物(a−1)と微粒子状担体(a−2)を接触させて得られるものであり、(D)炭化水素が下記(I)〜(III)、
【0024】
(I)流動パラフィン、プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状水素添加ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリスチレン、石油樹脂および液状アタクティックポリプロピレンから選ばれる、30℃における動粘度が5.0mm/s以上の液体状炭化水素、
(II)黄色ワセリン、白色ワセリン、石油ワックス、ポリスチレン、ポリイソブチレン、水素添加ポリブタジエンおよびエチレン・プロピレン共重合体エラストマーから選ばれる、結晶性オレフィン重合体以外の固体状炭化水素、
(III)結晶性オレフィン重合体、
からなる群から選ばれる少なくとも1種であるオレフィン重合用触媒成分。
【0025】
13)上記11)または12)に記載のオレフィン重合用触媒成分および(C)有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機亜鉛化合物および有機マグネシウム化合物から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物からなるオレフィン重合用触媒。
14)上記13)に記載のオレフィン重合用触媒によりオレフィンの少なくとも1種を重合してオレフィン重合体を製造するオレフィン重合体の製造方法。
15)プロピレンを単独重合するかもしくはプロピレンと他のオレフィンの少なくとも1種を共重合して、重量平均分子量が50,000以上であるプロピレン重合体を製造する、上記14)記載のオレフィン重合体の製造方法。
【0026】
16)(A)非配位性イオン含有化合物が微粒子担体に化学結合により結合した助触媒成分および(B)メタロセン化合物からなるオレフィン重合用触媒成分を、(D)炭化水素中で保存する方法であって、(A)が下記一般式(1)
【0027】
[M(R(R(R(R−L)・[M (1)
(式中、Mはホウ素またはアルミニウムであり、
、RおよびRは、それぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基であり、これらは互いに同一でも異なってもよく、
はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、
Lはシリル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ホスフィノ基およびこれらの1種以上を有するアルキル基もしくはアリール基の中から選ばれ、
a、bおよびcは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4であり、
[Mは、プロトン、カルベニウムイオン、トロピリウムイオン、フェロセニウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、オキソニウムイオン、シリリウムイオン、アルカリ金属イオンおよびホスホニウムイオンの中から選ばれる)
で示される非配位性イオン含有化合物(a−1)と微粒子状担体(a−2)を接触させて得られるものであり、(D)炭化水素が下記(I)〜(III)、
【0028】
(I)流動パラフィン、プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状水素添加ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリスチレン、石油樹脂および液状アタクティックポリプロピレンから選ばれる、30℃における動粘度が5.0mm/s以上の液体状炭化水素、
(II)黄色ワセリン、白色ワセリン、石油ワックス、ポリスチレン、ポリイソブチレン、水素添加ポリブタジエンおよびエチレン・プロピレン共重合体エラストマーから選ばれる、結晶性オレフィン重合体以外の固体状炭化水素、
(III−2)ポリオレフィンワックス、
からなる群から選ばれる少なくとも1種であるオレフィン重合用触媒成分の保存方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、保存後においても活性が低下することなく、溶剤可溶成分の少ないオレフィン重合体を、分子量分布を広げることなく与えることのできるオレフィン重合用触媒、オレフィン重合用触媒成分およびその保存方法ならびにそれを用いたプロピレン重合体の製造法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における(A)は、メタロセン触媒において助触媒として使用される非配位性イオン含有化合物が、微粒子担体上に化学結合により結合したものである。化学結合としては共有結合、イオン結合、配位結合等が例示される。このイオン性化合物が微粒子担体上に化学結合により結合することで、ファウリングや重合体粒子の互着が著しく抑制され、特に塊状重合において大きな効果が見られる。さらには、触媒の保存安定性が向上し、保存後の触媒を使用した場合でも、分子量分布や溶剤可溶成分の増大、重合活性の低下を抑制することが可能となる。
【0031】
これらは、例えば、特表平7−501573号公報、特開平8−143617号公報、WO96/40796号公報、WO96/41808号公報、WO97/19959号公報、特開2000−212225号公報などに記載されており、(1)担体となる化合物と、この担体と反応性を有する非配位性イオン含有化合物を接触させて調製する方法、(2)担体を形成しうる官能基を有する非配位性イオン含有化合物、および必要に応じて担体の前駆体から担体を形成させることで調製する方法、(3)非配位性イオン含有化合物の前駆体を担体と反応させることで、担体上に非配位性イオン含有化合物を生成させる方法などである。
【0032】
(1)の具体例としては、ハロゲン化シリル基や酸無水物基あるいは酸塩化物基を有する非配位性イオン含有化合物と、シリカやアルミナ等の水酸基を有する担体を接触させる方法が例示できる。また水酸基やフェノキシ基を有する非配位性イオン含有化合物と、クロロシランや有機アルミニウムで処理されたシリカもしくはアルミナなどの担体を接触させる方法も例示される。さらにはアルコキシ基やアルコキシシリル基あるいはアミノ基等の電子供与性基を有する非配位性イオン含有化合物と、塩化マグネシウムやアルミナ等の電子受容性担体を接触させる方法も例示される。
【0033】
(2)の具体例としては、ビニル基等の重合性基を有する非配位性イオン含有化合物を単独重合あるいは共重合することにより担体を形成させる方法が例示される。またアルコキシシリル基等の縮合性基を有する非配位性イオン含有化合物を単独あるいは他のアルコキシシランなどともに縮合させることで担体を形成させる方法も例示される。
(3)の具体例としては、トリアリールボラン等の非配位性イオン含有化合物前駆体をメタル化されたポリスチレン等の担体と反応させ、非配位性イオン含有化合物を生成させる方法などが例示される。
【0034】
なお上記化学結合の有無は、例えばジクロロメタン等の非配位性イオン含有化合物や担体に対して不活性な極性溶媒による室温での洗浄後において、非配位性イオン含有化合物あるいは該化合物に含有されるホウ素原子等が微粒子担体上に残存するか否かを測定することにより検出可能である。
【0035】
具体的には、(A)は、下記一般式(1)で示される非配位性イオン含有化合物(a−1)と微粒子状担体(a−2)を接触させて得られるものであってよい。
[M(R(R(R(R−L)・[M (1)
上式中、Mはホウ素またはアルミニウムであり、好ましくはホウ素である。
、RおよびRは、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基であり、これらは互いに同一でも異なってもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0036】
アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基等が挙げられる。
ハロゲン化アリール基の具体例としては、4−フルオロフェニル基等のフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基等のジフルオロフェニル基、2,4,5−トリフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基等のトリフルオロフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基等のテトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,4−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等のビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,3,5−トリス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)フェニル基等のトリス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,3,5,6−テトラキス(トリフルオロメチル)フェニル基等のテトラキス(トリフルオロメチル)フェニル基、ペンタキス(トリフルオロメチル)フェニル基等およびこれらのフッ素原子を塩素原子、臭素原子等、他のハロゲン原子に置き換えたものなどが挙げられる。
【0037】
これらのハロゲン化アリール基の中でも、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基などのフルオロフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等のビス(トリフルオロメチル)フェニル基が好ましく、さらにはテトラフルオロフェニル基およびペンタフルオロフェニル基が好ましく、特にペンタフルオロフェニル基が好ましい。
【0038】
前記イオン性化合物(a−1)において、Rはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)−p−フェニレン基等のビス(トリフルオロメチル)フェニレン基、4−フルオロ−m−フェニレン基、2−フルオロ−p−フェニレン基等のフルオロフェニレン基、4,5−ジフルオロ−m−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−p−フェニレン基等のジフルオロフェニレン基、2,4,5−トリフルオロ−m−フェニレン基、2,4,6−トリフルオロ−m−フェニレン基、4,5,6−トリフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5−トリフルオロ−p−フェニレン基、2,3,6−トリフルオロ−p−フェニレン基等のトリフルオロフェニレン基、3,4,5,6−テトラフルオロ−o−フェニレン基、2,4,5,6−テトラフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−p−フェニレン基等のテトラフルオロフェニレン基、オキシフェニレン基やオキシテトラフルオロフェニレン基等のオキシアリーレン基、イミノフェニレン基等のイミノアリーレン基などが挙げられる。
【0039】
これらのうち好ましいものは、2,4,5−トリフルオロ−m−フェニレン基、2,4,6−トリフルオロ−m−フェニレン基、4,5,6−トリフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5−トリフルオロ−p−フェニレン基、2,3,6−トリフルオロ−p−フェニレン基、3,4,5,6−テトラフルオロ−o−フェニレン基、2,4,5,6−テトラフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−p−フェニレン基であり、特に好ましいのは、2,4,5,6−テトラフルオロ−m−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−p−フェニレン基である。
【0040】
また、Rの例としては−Ar−R−で表されるものも挙げられ、式中Arはo−、m−またはp−フェニレン基、o−、m−またはp−テトラフルオロフェニレン基等のアリーレン基であり、Rは炭素数1〜20の置換もしくは未置換の炭化水素基である。より具体的には、−CCH−、−CCHCH−、−CCH−などが例示される。
【0041】
イオン性化合物(a−1)中のLは、シリル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ホスフィノ基、およびこれらの1以上を有するアルキル基もしくはアリール基の中から選ばれ、好ましくはシリル基または水酸基である。シリル基としては、下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【0042】
−〔Si(Z)−Z−〕SiZ (2)
一般式(2)において、Z、Z、Z、ZおよびZはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アミド基、炭素数1〜20の炭化水素基の中から選ばれ、Z、ZおよびZのうちの少なくとも1つはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アミド基である。Zは酸素原子、イミノ基、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアリーレン基、炭素数1〜20のオキサアルキレン基のいずれかである。nは0または1〜10の整数である。
【0043】
上記シリル基の具体例としては、トリクロロシリル基等のトリハロゲノシリル基、メチルジクロロシリル基、エチルジクロロシリル基等のアルキルジハロゲノシリル基、ジメチルクロロシリル基、ジエチルクロロシリル基等のジアルキルハロゲノシリル基、フェニルジクロロシリル基、p−トリルジクロロシリル基等のアリールジハロゲノシリル基、ジフェニルクロロシリル基等のジアリールハロゲノシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基、メチルジメトキシシリル基等のアルキルジアルコキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基等のジアルキルアルコキシシリル基、フェニルジメトキシシリル基、トリルジメトキシシリル基等のアリールジアルコキシシリル基、ジフェニルメトキシシリル基、ジトリルメトキシシリル基、ジフェニルエトキシシリル基等のジアリールアルコキシシリル基などのアルコキシ基含有シリル基、トリアセトキシシリル基等のトリアシルオキシシリル基、メチルジアセトキシシリル基等のアルキルジアシルオキシシリル基、ジメチルアセトキシシリル基等のジアルキルアシルオキシシリル基、フェニルジアセトキシシリル基等のアリールジアシルオキシシリル基、ジフェニルアセトキシシリル基等のジアリールアシルオキシシリル基やジメチルヒドロキシシリル基等のアルキルヒドロキシシリル基、アリールオキシ基含有シリル基等が挙げられる。
【0044】
これらのうち好ましいものは、トリクロロシリル基、メチルジクロロシリル基、ジメチルクロロシリル基、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基、トリアセトキシシリル基、メチルジアセトキシシリル基、ジメチルアセトキシシリル基、トリヒドロキシシリル基、メチルジヒドロキシシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基であり、特に好ましいのはトリクロロシリル基、メチルジクロロシリル基、ジメチルクロロシリル基である。
【0045】
シリル基を有するアルキル基としては、(トリクロロシリル)メチル基、(メチルジクロロシリル)メチル基、(ジメチルクロロシリル)メチル基、(トリメトキシシリル)メチル基、(メチルジメトキシシリル)メチル基、(ジメチルメトキシシリル)メチル基、(トリエトキシシリル)メチル基、(メチルジエトキシシリル)メチル基、(ジメチルエトキシシリル)メチル基などのシリルメチル基や、(トリクロロシリル)エチル基、(メチルジクロロシリル)エチル基、(ジメチルクロロシリル)エチル基、(トリメトキシシリル)エチル基、(メチルジメトキシシリル)エチル基、(ジメチルメトキシシリル)エチル基、(トリエトキシシリル)エチル基、(メチルジエトキシシリル)エチル基、(ジメチルエトキシシリル)エチル基などのシリルエチル基などが例示される。
【0046】
シリル基を有するアリール基の例としては、(トリクロロシリル)フェニル基、(メチルジクロロシリル)フェニル基、(ジメチルクロロシリル)フェニル基、(トリメトキシシリル)フェニル基、(メチルジメトキシシリル)フェニル基、(ジメチルメトキシシリル)フェニル基、(トリエトキシシリル)フェニル基、(メチルジエトキシシリル)フェニル基、(ジメチルエトキシシリル)フェニル基などのシリルフェニル基や、(トリクロロシリル)エチル基、(メチルジクロロシリル)エチル基、(ジメチルクロロシリル)エチル基、(トリメトキシシリル)エチル基、(メチルジメトキシシリル)エチル基、(ジメチルメトキシシリル)エチル基、(トリエトキシシリル)エチル基、(メチルジエトキシシリル)エチル基、(ジメチルエトキシシリル)エチル基などのシリルエチル基などが例示される。
【0047】
アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、アニリノ基、メチルアニリノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリノ基等である。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、トリフルオロエチル基、エチレン−1,2−ジオキシ基などである。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基などが例示される。
【0048】
また、前記イオン性化合物(a−1)において、a、bおよびcは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4である。これらのうちでも好ましいのはd=1の化合物である。
【0049】
前記イオン性化合物(a−1)において、[Mは、プロトン、カルベニウムイオン、トロピリウムイオン、フェロセニウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、オキソニウムイオン、シリリウムイオン、アルカリ金属イオンおよびホスホニウムイオンの中から選ばれる。
【0050】
[Mの具体例としては、プロトン、トリフェニルカルベニウムイオン、トリ(p−トリル)カルベニウムイオンなどのトリアリールカルベニウムイオンやトリメチルカルベニウムイオン等のカルベニウムイオン、トロピリウムイオン、フェロセニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、トリ−n−ブチルアンモニウムイオン、N,N−ジメチルアニリニウムイオン等のアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、4−メチル−ピリジニウムイオン、2−シアノピリジニウムイオン、4−シアノピリジニウムイオン等のピリジニウムイオン、トリメチルオキソニウムイオン、トリエチルオキソニウムイオン等のオキソニウムイオン、トリメチルシリリウムイオン、トリエチルシリリウムイオン等のシリリウムイオン、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0051】
これらのうち特に好ましいものは、プロトン、トリフェニルカルベニウムイオン、トリ−(p−トリル)カルベニウムイオン等のトリアリールカルベニウムイオン、N,N−ジメチルアニリニウムイオン、N,N−ジエチルアニリニウムイオン等のジアルキルアニリニウムイオン、トリ−n−ブチルアンモニウムイオン等のトリアルキルアンモニウムイオン、トリメチルオキソニウムイオンやトリエチルオキソニウムイオン等のトリアルキルオキソニウムイオン、トリメチルシリリウムイオン、トリエチルシリリウムイオン等のシリリウムイオンである。これらのうち最も好ましいものはジアルキルアニリニウムイオンである。
【0052】
本発明で好適に使用できる前記イオン性化合物(a−1)の具体例としては、ハロゲン化シリル基を有するものを例示すると、
N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(クロロジメチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
【0053】
N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(メチルジクロロシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
N,N−ジメチルアニリニウム(4−トリクロロシリル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(クロロジエチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
【0054】
N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(エチルジクロロシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリ−n−ブチルアンモニウム〔4−(クロロジメチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリ−n−ブチルアンモニウム〔4−(メチルジクロロシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
【0055】
トリ−n−ブチルアンモニウム(4−トリクロロシリル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリ−n−ブチルアンモニウム〔4−(クロロジエチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリ−n−ブチルアンモニウム〔4−(エチルジクロロシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリフェニルカルベニウム〔4−(クロロジメチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
【0056】
トリフェニルカルベニウム〔4−(メチルジクロロシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリフェニルカルベニウム(4−トリクロロシリル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリフェニルカルベニウム〔4−(クロロジエチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリフェニルカルベニウム〔4−(エチルジクロロシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート
などがある。
【0057】
また、N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(クロロジメチルシリル)−フェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(メチルジクロロシリル)−フェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
N,N−ジメチルアニリニウム(4−トリクロロシリル−フェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
【0058】
N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(クロロジエチルシリル)−フェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(エチルジクロロシリル)−フェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリ−n−ブチルアンモニウム〔4−(クロロジメチルシリル)−フェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
【0059】
トリ−n−ブチルアンモニウム〔4−(メチルジクロロシリル)−フェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリ−n−ブチルアンモニウム−(4−トリクロロシリル−フェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリ−n−ブチルアンモニウム〔4−(クロロジエチルシリル)−フェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリ−n−ブチルアンモニウム〔4−(エチルジクロロシリル)−フェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
【0060】
トリフェニルカルベニウム〔4−(クロロジメチルシリル)−フェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリフェニルカルベニウム〔4−(メチルジクロロシリル)−フェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリフェニルカルベニウム(4−トリクロロシリル−フェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリフェニルカルベニウム〔4−(クロロジエチルシリル)−フェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
【0061】
トリフェニルカルベニウム〔4−(エチルジクロロシリル)−フェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート
などがある。
【0062】
さらには、N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(クロロジメチルシリル)−フェニル〕トリス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボラート、
N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(メチルジクロロシリル)−フェニル〕トリス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボラート、
N,N−ジメチルアニリニウム(4−トリクロロシリルフェニル)トリス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボラート、
【0063】
N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(クロロジエチルシリル)−フェニル〕トリス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボラート、
N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(エチルジクロロシリル)−フェニル〕トリス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボラート、
トリ−n−ブチルアンモニウム〔4−(クロロジメチルシリル)−フェニル〕トリス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボラート、
【0064】
トリ−n−ブチルアンモニウム〔4−(メチルジクロロシリル)−フェニル〕トリス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボラート、
トリ−n−ブチルアンモニウム(4−トリクロロシリルフェニル)トリス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボラート、
トリ−n−ブチルアンモニウム〔4−(クロロジエチルシリル)−フェニル〕トリス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボラート、
【0065】
トリ−n−ブチルアンモニウム〔4−(エチルジクロロシリル)−フェニル〕トリス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボラート、
トリフェニルカルベニウム〔4−(クロロジメチルシリル)−フェニル〕トリス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボラート、
トリフェニルカルベニウム〔4−(メチルジクロロシリル)−フェニル〕トリス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボラート、
【0066】
トリフェニルカルベニウム(4−トリクロロシリル−フェニル)トリス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボラート、
トリフェニルカルベニウム〔4−(クロロジエチルシリル)−フェニル〕トリス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボラート、
トリフェニルカルベニウム〔4−(エチルジクロロシリル)−フェニル〕トリス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボラート
なども例示される。
【0067】
本発明で好適に使用できる前記イオン性化合物(a−1)の具体例として、アルコキシシリル基を有するものを例示すると、
N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(メトキシジメチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(メチルジメトキシシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
【0068】
N,N−ジメチルアニリニウム(4−メトキシリル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(メトキシジエチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(エチルジメトキシシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリ−n−ブチルアンモニウム〔4−(エトキシジメチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリ−n−ブチルアンモニウム〔4−(メチルジエトキシシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリ−n−ブチルアンモニウム(4−トリエトキシシリル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリ−n−ブチルアンモニウム〔4−(エトキシジエチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
【0069】
トリ−n−ブチルアンモニウム〔4−(エチルジエトキシシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリフェニルカルベニウム〔4−(エトキシジメチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリフェニルカルベニウム〔4−(メチルジエトキシシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリフェニルカルベニウム(4−トリエトキシシリル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
【0070】
トリフェニルカルベニウム〔4−(エトキシジエチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリフェニルカルベニウム〔4−(エチルジエトキシシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート
などがある。
【0071】
本発明で好適に使用できる前記イオン性化合物(a−1)の具体例として、ハロゲン化シリル基およびアルコキシシリル基以外の基を有するものを例示すると、
N,N−ジメチルアニリニウム(4−ヒドロキシ−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
N,N−ジメチルアニリニウム(4−ヒドロキシフェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
【0072】
トリ−n−ブチルアンモニウム(4−ヒドロキシ−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、
トリ−n−ブチルアンモニウム(4−ヒドロキシフェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート
などがある。
【0073】
本発明のオレフィン重合用触媒に使用される微粒子担体としては、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属水酸化物、金属アルコキシド、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、珪酸塩や有機高分子化合物等が挙げられる。これらは必要に応じて単独で、あるいは複数を組み合わせて用いることができる。これらは有機アルミニウムや有機珪素化合物などで処理されていてもよい。
【0074】
上記金属酸化物としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、カルシア、酸化亜鉛等が挙げられる。上記金属ハロゲン化物としては、例えば、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。上記金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。上記金属アルコキシドとしては、例えば、マグネシウムエトキシド、マグネシウムメトキシド等が挙げられる。
【0075】
上記炭酸塩としては、例えば、炭酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等が挙げられる。上記硫酸塩としては、例えば、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。上記酢酸塩としては、例えば、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等が挙げられる。珪酸塩としては、例えば、雲母、タルク等の珪酸マグネシウムや珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等が挙げられる。これらのうち好ましいものは、シリカ、アルミナ、雲母やタルク等の珪酸マグネシウムや珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ナトリウムなどの珪酸塩である。
【0076】
上記有機高分子化合物としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体の部分あるいは完全鹸化物等のポリオレフィンおよびその変性物、ポリスチレン、水酸基等の官能基を有するポリスチレン、架橋ポリスチレン、水酸基等の官能基を有する架橋ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0077】
これらのうち(a−2)として好ましいものは、シリカ、アルミナ等の金属酸化物、塩化マグネシウム等の金属ハロゲン化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、珪酸アルミニウム等の珪酸塩や、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等の極性基を有する高分子化合物であり、最も好ましいものはシリカ、アルミナ等の金属酸化物、珪酸アルミニウム等の珪酸塩、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物などの水酸基を有するものである。
【0078】
前記(a−2)として最も好ましいものにおける水酸基含有量は、通常0.1mmol/g以上であり、好ましくは0.3mmol/g以上、より好ましくは0.5mmol/g以上、さらに好ましくは0.6mmol/g以上、よりさらに好ましくは0.7mmol/g以上、特に好ましくは0.8mmol/g以上、最も好ましくは0.9mmol/g以上である。水酸基含有量が上記範囲未満のものを使用すると、重合活性が低下することがある。
【0079】
これらの微粒子担体の平均粒子径は、特に制限はないが通常0.1〜2,000μmの範囲であり、好ましくは1〜1,000μm、より好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは15〜300μm、よりさらに好ましくは20〜200μm、特に好ましくは25〜120μm、最も好ましくは30〜80μmの範囲である。
【0080】
また、比表面積は、特に制限はないが、通常0.1〜2,000m/gの範囲であり、好ましくは10〜1,500m/g、より好ましくは100〜1,020m/g、さらに好ましくは200〜1,000m/g、よりさらに好ましくは300〜1,000m/g、特に好ましくは400〜900m/g、最も好ましくは500〜900m/gの範囲である。
【0081】
前記非配位性イオン含有化合物(a−1)と微粒子状担体(a−2)の接触は、任意の方法により行なうことが可能であり、有機溶剤の非存在下で直接接触させてもよいが、一般的には有機溶剤中で接触が行なわれる。ここで用いられる有機溶剤としては、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類やN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0082】
前記非配位性イオン含有化合物(a−1)と微粒子状担体(a−2)との接触は、使用する有機溶剤やその他の条件を考慮して任意の温度で可能であるが、通常−80℃〜300℃の範囲で行なわれる。好ましい接触温度の範囲は−50℃〜200℃であり、さらに好ましい範囲は0℃〜150℃である。
【0083】
また、前記非配位性イオン含有化合物(a−1)の微粒子状担体(a−2)に対する使用量は特に制限はないが、通常(a−2)100重量部に対し(a−1)が0.0001〜1,000,000重量部の範囲である。(a−1)の使用量を多くすると、触媒の重合活性は向上する傾向にあるが、重合活性と製造コストのバランスを考慮すると(a−1)の使用量は微粒子担体(a−2)100重量部に対し、好ましくは0.1〜10,000重量部の範囲であり、さらに好ましくは1〜1,000重量部の範囲である。
【0084】
なお、本発明における成分(A)は、非配位性イオン含有化合物の含有量が該(A)の1gあたり通常0.010〜0.50mmol/gの範囲であり、好ましくは0.030〜0.40mmol/g、より好ましくは0.050〜0.40mmol/g、さらに好ましくは0.055〜0.40mmol/g、よりさらに好ましくは0.060〜0.35mmol/g、特に好ましくは0.065〜0.35mmol/g、最も好ましくは0.070〜0.30mmol/gの範囲である。非配位性イオン含有化合物の含有量が上記より少ないと触媒あたりの重合活性が低下したり、上記を超えると該非配位性イオン含有化合物あたりの重合活性が低下したりする。
【0085】
また、本発明における成分(A)は、(a−2)として水酸基等の極性基を有するものを使用した場合は、上記微粒子担体に由来する水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等の極性基の含有量は、通常0.01〜5.0mmol/gの範囲であり、好ましくは0.05〜4.0mmol/g、より好ましくは0.20〜4.0mmol/g、さらに好ましくは0.40〜4.0mmol/g、よりさらに好ましくは0.51〜3.5mmol/g、特に好ましくは0.55〜3.0mmol/g、最も好ましくは0.60〜2.5mmol/g以下である。上記微粒子担体に由来する極性基の含有量が上記範囲において本発明の効果が顕著である。
【0086】
成分(A)における微粒子担体由来の極性基の含有量は、微粒子担体の加熱処理や化学処理により調節することが可能である。具体的には、これらの処理を行って極性基含有量を調節した微粒子担体を用いて成分(A)を調製する方法、成分(A)を調製した後に、これらの処理を施す方法がある。
【0087】
加熱処理は、常圧下もしくは減圧下において、微粒子担体または成分(A)を50℃以上、好ましくは100〜1,000℃、さらに好ましくは100〜800℃の温度範囲で加熱することにより行われる。
【0088】
化学処理は、微粒子担体に由来する極性基と反応可能な化合物と接触させることにより行われ、具体的には化学処理剤(a−3)としてアルキル化剤、アシル化剤、シリル化剤、スタニル化剤、ゲルミル化剤のうちの少なくとも1以上で処理する方法が例示される。この処理は、具体的には前記非配位性イオン含有化合物(a−1)と微粒子状担体(a−2)との接触後、あるいは接触と同時に化学処理剤(a−3)としてアルキル化剤、アシル化剤、シリル化剤、スタニル化剤、ゲルミル化剤のうちの少なくとも1以上と接触させることにより行われる。
【0089】
アルキル化剤の例としては、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化n−プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化n−ブチル、ヨウ化n−オクチル、臭化メチル、臭化エチル、臭化n−プロピル、臭化イソプロピル等のヨウ化または臭化アルキルや塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル、塩化ジフェニルメチル、臭化ジフェニルメチル、ヨウ化ジフェニルメチル、塩化トリフェニルメチル、臭化トリフェニルメチル、ヨウ化トリフェニルメチル等のα−アリール置換ハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0090】
また、アルキル化剤としては、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸n−プロピル、メタンスルホン酸イソプロピル、、メタンスルホン酸n−ブチル、メタンスルホン酸n−ヘキシル、メタンスルホン酸n−オクチル、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、トリフルオロメタンスルホン酸エチル、トリフルオロメタンスルホン酸n−プロピル、トリフルオロメタンスルホン酸イソプロピル、トリフルオロメタンスルホン酸n−ブチル、トリフルオロメタンスルホン酸n−ヘキシル、トリフルオロメタンスルホン酸n−オクチル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸n−プロピル、p−トルエンスルホン酸ベンジル等のスルホン酸アルキル、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボラート、トリエチルオキソニウムテトラフルオロボラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート、トリエチルオキソニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリエチルオキソニウムヘキサフルオロアンチモネート等のオキソニウム塩や、トリメチルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリエチルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のスルホニウム塩やジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェイト等のヨードニウム塩なども使用可能である。
【0091】
これらの中でも、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化n−プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化n−ブチル、ヨウ化n−オクチル等のヨウ化アルキル、塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル、塩化ジフェニルメチル、臭化ジフェニルメチル、ヨウ化ジフェニルメチル、塩化トリフェニルメチル、臭化トリフェニルメチル、ヨウ化トリフェニルメチル等のα−アリール置換ハロゲン化炭化水素、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボラート、トリエチルオキソニウムテトラフルオロボラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート、トリエチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリエチルオキソニウムヘキサフルオロアンチモネート等のオキソニウム塩が好ましい。
【0092】
アシル化剤としては、塩化アセチル、臭化アセチル、ヨウ化アセチル、塩化プロパノイル、塩化ピバロイル、塩化デカノイル、塩化ベンゾイル等のカルボン酸ハロゲン化物や、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水トリフルオロ酢酸、無水ピバリン酸、無水安息香酸、無水フタル酸等の酸無水物、N−アセチルイミダゾール、N−ミリストイルイミダゾール、N−パルミトイルイミダゾール等のN−アシルイミダゾール、N−アセトキシスクシンイミド、N−アセトキシフタルイミド等のN−アシルオキシイミド、4−ニトロフェニルアセテート、4−ニトロフェニルパルミテート、4−シアノフェニルアセテートなどが例示される。
【0093】
成分(A)の処理に使用可能なシリル化剤としては、例えば、下式(3)で表される化合物が挙げられる。
SiY (3)
上式中、Y、YおよびYはO、S、Nのいずれかを介してSi原子に結合する原子団およびハロゲンの中から選ばれ、互いに同一でもよく異なってもよい。k、l、m、p、qおよびrは0〜3の整数であり、1≦k+l+m≦3、1≦p+q+r≦3かつk+l+m+p+q+r=4である。
【0094】
、RおよびRは水素原子、炭素数1〜40の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基の中から選ばれ、これらは互いに同一でもよく異なってもよい。炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、フェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等のアルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アリール基などである。
【0095】
〜YはO、S、N原子のいずれかを介してSi原子に結合する原子団およびハロゲンの中から選ばれ、各々同一でもよくまた異なってもよい。ハロゲンとしてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが可能である。O原子を介してSi原子に結合する原子団としては水酸基やメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基等のアルコキシ基、およびアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基やトリメチルシリルオキシ基等のシリルオキシ基、メタンスルフォニルオキシ基、ベンゼンスルフォニルオキシ基、トリフルオロメタンスルフォニルオキシ基、p−トルエンスルフォニルオキシ基等のスルフォニルオキシ基などが挙げられる。S原子を介してSi原子に結合する原子団としてはメルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基等があげられる。N原子を介してSi原子に結合する原子団の例としてはN,N−ジメチルアミノ基、N−トリメチルシリルアミノ基等のアミノ基、アミド基、イミド基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基などが挙げられる。
【0096】
このようなシリル化剤の具体例を列挙すると、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリ−n−プロピルクロロシラン、トリ−i−プロピルクロロシラン、トリ−n−ブチルクロロシラン、トリ−i−ブチルクロロシラン、トリ−s−ブチルクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシラン、シクロヘキシルジメチルクロロシラン、ジシクロヘキシルメチルクロロシラン、トリシクロヘキシルクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、トリ−p−トリルクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、n−デシルジメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルエチルジクロロシラン、メチル−t−ブチルジクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、メチル−n−ヘキシルジクロロシラン、メチル−n−オクチルジクロロシラン、ジ−n−ヘキシルジクロロシラン、ジ−n−オクチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、t−ブチルトリクロロシランおよびこれらの塩素原子を臭素、フッ素またはヨウ素に置き換えた物等が例示される。
【0097】
また、アルコキシ基を含有するものとしては、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−1−プロピルメトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−i−ブチルメトキシシラン、トリ−s−ブチルメトキシシラン、t−ブチルジメチルメトキシシラン、シクロヘキシルジメチルシラン、ジシクロヘキシルメチルメトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、n−ヘキシルジメチルメトキシシラン、n−オクチルジメチルメトキシシラン、ジフェニルジメチルメトキシシラン、トリフェニルリメトキシシラン、トリ−p−トリルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルエチルメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、s−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランおよびこれらのメトキシ基をエトキシ基やプロポキシ基に置き換えた物などが例示される。
【0098】
アシルオキシ基を含有するものとしては、トリメチルアセトキシシラン、トリエチルアセトキシシラン、トリ−n−プロピルアセトキシシラン、トリ−i−プロピルアセトキシシラン、トリ−n−ブチルアセトキシシラン、トリ−i−ブチルアセトキシシラン、t−ブチルジメチルアセトキシシラン、シクロヘキシルジメチルシラン、ジシクロヘキシルメチルアセトキシシラン、トリシクロヘキシルアセトキシシラン、フェニルジメチルアセトキシシラン、ジフェニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、メチルエチルアセトキシシラン、ジエチルジアセトキシシラン、ジ−n−プロピルジアセトキシシラン、ジ−i−プロピルジアセトキシシラン、ジ−n−ブチルジアセトキシシラン、ジ−i−ブチルジアセトキシシラン、ジシクロヘキシルジアセトキシシラン、シクロヘキシルメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、n−プロピルトリアセトキシシラン、i−プロピルトリアセトキシシラン、n−ブチルトリアセトキシシラン、i−ブチルトリアセトキシシラン、s−ブチルトリアセトキシシラン、t−ブチルトリアセトキシシラン、シクロヘキシルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシランおよびこれらのアセトキシ基をベンゾイル基等の他のアシルオキシ基に置き換えたものなどが挙げられる。
【0099】
上記の他にも、トリメチルフェノキシシラン、フェニルジメチルフェノキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリメチルシリルメタンスルフォネート、トリメチルシリルトリフロオロメタンスルフォネート、トリメチルシリル−p−トルエンスルフォネートなどが挙げられる。
【0100】
式(3)で表されるシリル化剤のうち、N原子を介してSi原子に結合する原子団を有するもの例としては、ヘキサメチルジシラザン、N,N,−ビス(トリメチルシリル)ウレア、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、N−トリメチルシリルアセトアミド、N−メチル−N−トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド、N−トリメチルシリルイミダゾール、N−トリメチルシリルチアゾール、N−トリメチルシリルオキサゾールなどが挙げられる。また、これらの複数をシリル化剤として用いてもよい。
【0101】
これらのシリル化剤の中でも、Y〜Yのうちの少なくとも1つがハロゲンであるものが好ましく、特に好ましくはトリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリ−n−プロピルクロロシラン、トリ−i−プロピルクロロシラン、トリ−n−ブチルクロロシラン、トリ−i−ブチルクロロシラン、トリ−s−ブチルクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシラン、シクロヘキシルジメチルシラン、ジシクロヘキシルメチルクロロシラン、トリシクロヘキシルクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン等のトリアルキルハロゲノシランおよびこれらの混合物である。
【0102】
スタニル化剤、ゲルミル化剤としては、それぞれ、下式(4)および(5)の化合物が挙げられる。
SnY (4)
上式中、k、l、m、p、qおよびrは0〜3の整数であり、1≦k+l+m≦3、1≦p+q+r≦3かつk+l+m+p+q+r=4である。
GeY (5)
上式中、k、l、m、p、qおよびrは0〜3の整数であり、1≦k+l+m≦3、1≦p+q+r≦3かつk+l+m+p+q+r=4である。
ここで、R〜RおよびY〜Yは前述のシリル化剤について述べたものと同様である。
【0103】
スタニル化剤の具体例としては、トリメチルスズクロライド、トリフェニルスズクロライド、トリメチルスズアセテート、ジメチルスズジクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジメチルスズジアセテート、ジブチルスズジアセテート等が挙げられる。また、ゲルミル化剤としては、トリメチルゲルマニウムクロライド、トリフェニルゲルマニウムクロライド、ジメチルゲルマニウムジクロライド、ジブチルゲルマニウムジクロライド等が挙げられる。
【0104】
これらの使用量には特に制限はないが、通常成分(a−2)微粒子担体の100重量部に対して0.01重量部以上であり、好ましくは0.1重量部以上であり、より好ましくは1.0重量部〜2,000重量部、より好ましくは2.0〜1,000重量部、さらに好ましくは3.0〜800重量部、よりさらに好ましくは5.0〜700重量部特に好ましくは7.0〜600重量部、最も好ましくは10〜500重量部の範囲である。
【0105】
なお、本発明の触媒成分の製造において(a−1)と(a−3)は、同時に(a−2)と接触させてもよく、また逐次に接触させてもよい。(a−1)と(a−3)を逐次に接触させる場合は、(a−1)および(a−2)を接触させた後に(a−3)を接触させる方法、あるいは(a−2)および(a−3)を接触させた後に(a−1)を接触させる方法のいずれも可能である。これらのうち、(a−1)、(a−2)を同時に(a−3)と接触させる方法および、(a−2)に対し(a−1)を接触させた後に(a−3)を接触させる方法が好ましく、特に後者の方法が好ましい。
【0106】
また各接触段階において使用する有機溶剤や接触温度、接触時間などの条件が異なっていてもよい。さらに(a−1)と(a−3)を逐次に接触させる場合、(a−1)と(a−3)の一方を成分(a−2)と接触させた後、過剰の成分を有機溶剤洗浄や減圧乾燥などにより除去した上で、残りの成分との接触を行うことも可能である。このような有機洗浄は前記の有機溶剤を用いて、任意の方法で行うことが可能である。
【0107】
本発明において使用可能な(B)チタン、ジルコニウムまたはハフニウムを有するメタロセン化合物としては、公知のものが何ら制限無く使用可能であり、例えば、ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(1,2−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(1,2,3−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(1,2,4−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、(メチルシクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロライド、(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)(1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、(t−ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジメチルシランチタニウムジクロライド等が例示される。
【0108】
また、プロピレン重合体を製造する場合には、プロピレンを立体規則的に重合させるものが好ましく、より具体的に示すと、ビス(2,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライド、(メチルシクロペンタジエニル)(1−インデニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライド、(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)(1−インデニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライドなどがある。
【0109】
また、(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)〔4−t−ブチル−(1−インデニル)〕ジメチルシランジルコニウムジクロライド、(メチルシクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライド、(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス(1−インデニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス(2−メチル−1−インデニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス(2,4,7−トリメチル−1−インデニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス(2,4−ジメチル−1−インデニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス(2−エチル−1−インデニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス(2−i−プロピル−1−インデニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライドなども使用可能である。
【0110】
さらには、特開平6−184179号公報、特開平6−345809号公報などに記載のインデニル骨格にさらに環が縮合した構造を有するメタロセン化合物、すなわち、ビス(2−メチル−4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス(2−メチル−α−アセナフト−1−インデニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス(2−メチル−4,5−ベンゾ−1−インデニル)メチルフェニルシランジルコニウムジクロライド、ビス(2−メチル−α−アセナフト−1−インデニル)メチルフェニルシランジルコニウムジクロライド、1,2−ビス(2−メチル−4,5−ベンゾ−1−インデニル)エタンジルコニウムジクロライド、ビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライドなども使用可能である。
【0111】
特開平6−100579号公報、特開平9−176222号公報などに記載されている、インデニル骨格の4位にアリール基を有するメタロセン化合物、すなわち、ビス(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライド、(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス〔2−メチル−4−(1−ナフチル)−1−インデニル〕ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス〔2−メチル−4−(2−ナフチル)−1−インデニル〕ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス〔2−メチル−4−(9−アントラセニル)−1−インデニル〕ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス〔2−メチル−4−(9−フェナントリル)−1−インデニル〕ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス〔2−メチル−4−(3,5−ジ−i−プロピル−フェニル)−6−i−プロピル−1−インデニル〕ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス(2−メチル−4−フェニル−6−i−プロピル−1−インデニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライドなども使用可能である。
【0112】
また、特開平10−226712号公報および特開平10−279588号公報などに記載のアズレン骨格を有するメタロセン化合物、すなわち、ビス(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロ−1−アズレニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス(2−エチル−4−フェニル−4−ヒドロ−1−アズレニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス〔2−メチル−4−(クロロフェニル)−4−ヒドロ−1−アズレニル〕ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス〔2−メチル−4−(フルオロフェニル)−4−ヒドロ−1−アズレニル〕ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロ−1−アズレニル)(クロロメチル)メチルシランジルコニウムジクロライドなども使用可能である。
【0113】
また、ビス〔2−メチル−(η−1−インデニル)〕メチルフェニルシランジルコニウムジクロライド、1,2−ビス(η−1−インデニル)エタンジルコニウムジクロライド、1,2−ビス〔2−メチル−(η−1−インデニル)〕エタンジルコニウムジクロライド、1,2−ビス〔2,4−ジメチル−(η−1−インデニル)〕エタンジルコニウムジクロライド、1,2−ビス〔2,4,7−トリメチル−(η−1−インデニル)〕エタンジルコニウムジクロライド、1,2−ビス〔2−エチル−(η−1−インデニル)〕エタンジルコニウムジクロライド、1,2−ビス〔2−n−プロピル−(η−1−インデニル)〕エタンジルコニウムジクロライド、〔2−エチル−(η−1−インデニル)エタンジルコニウムジクロライド、〔2−メチル−(η−1−インデニル)]エタンジルコニウムジクロライド、1,2−ビス(η−9−フルオレニル)エタンジルコニウムジクロライド、2−(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)−2−(η−1−インデニル)プロパンジルコニウムジクロライド、2−(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)−2−〔4−t−ブチル−(η−1−インデニル)〕プロパンジルコニウムジクロライド、2−(3−メチルシクロペンタジエニル)−2−(η−9−フルオレニル)プロパンジルコニウムジクロライド、2−(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)−2−(η−9−フルオレニル)プロパンジルコニウムジクロライドなどが使用可能である。
【0114】
中でも、特開平6−100579号公報や特開平9−176222号公報などに記載されているインデニル骨格の4位にアリール基を有するもの、特開平6−184179号公報や特開平6−345809号公報などに記載されているインデニル骨格にさらに環が縮合した構造を有するメタロセン化合物、および特開平10−226712号公報や特開平10−279588号公報などに記載のアズレン骨格を有するメタロセン化合物が好ましく、特にビス〔2−メチル−4,5−ベンゾ(η−1−インデニル)〕ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス〔2−メチル−4−フェニル−(η−1−インデニル)〕ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス〔2−メチル−4−(1−ナフチル)−(η−1−インデニル)〕ジメチルシランジルコニウムジクロライド、ビス(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロ−1−アズレニル)ジメチルシランジルコニウムジクロライドが好ましい。
【0115】
なお、これらのメタロセン化合物のジルコニウムをチタンやハフニウムに代えたもの、塩素原子を他のハロゲンや水素原子、アミド基、アルコキシ基、メチル基やベンジル基などの炭化水素基に代えたものも何ら制限無く使用することができる。なかでも、(B)としては、ジルコニウム等の遷移金属に結合した配位子としてハロゲン、アルコキシド、アリールオキシド、アミドを1以上有するものが好ましく、特にハロゲンを1以上有するものが好ましく、塩素を1以上有するものがもっとも好ましい。
【0116】
前記(A)に対する(B)の使用量は、(B)中に含有されるジルコニウム等の遷移金属1モル対し、(A)中の非配位性イオン含有化合物が0.05〜100モルであることが好ましく、より好ましくは0.1〜50モル、さらに好ましくは0.3〜20モル、特に好ましくは0.5〜10モルの範囲である。
(C)有機金属化合物は、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機亜鉛化合物、および有機マグネシウム化合物の中から選ばれ、これらは複数を併用することも可能である。これらのうち好ましくは有機アルミニウム化合物である。
【0117】
有機アルミニウム化合物としては公知のものが使用可能であり、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−i−ブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、モノイソブチルアルミニウムジクロライド等のジアルキルアルミニウムハライドやアルキルアルミニウムジハライド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド等のジアルキルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシドもしくはアリールオキシド、トリイソプレニルアルミニウム等のアルケニルアルミニムなどが挙げられる。ことに本発明においてはトリエチルアルミニウムを用いた場合にも高い重合活性でオレフィン重合体を得ることが可能である。
【0118】
これらの中でもトリアルキルアルミニウムが好ましく、さらには炭素数1〜10のアルキルを有するものである。具体的には、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−i−プロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−i−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウム、トリ−i−ヘキシルアルミニウム、トリ−i−オクチルアルミニウムなどであり、特に好ましくはトリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウム、トリ−i−ヘキシルアルミニウム、トリ−i−オクチルアルミニウムであり、最も好ましくはトリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムである。これらは必要に応じて単独で、あるいは複数を組み合わせて用いることができる。
【0119】
有機リチウム化合物としては、フェニルリチウム等のアリールリチウムや、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、i−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等のアルキルリチウムなどが挙げられる。有機亜鉛化合物としてはジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛等であり、有機マグネシウムとしては、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−n−ヘキシルマグネシウム、n−ブチルエチルマグネシウム、メチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムブロマイド、n−プロピルマグネシウムブロマイド等のジアルキルマグネシウム、i−プロピルマグネシウムブロマイド、n−ブチルマグネシウムクロライド、i−ブチルマグネシウムクロライド、s−ブチルマグネシウムクロライド、t−ブチルマグネシウムクロライド、フェニルマグネシウムブロマイドやこれらの塩素原子や臭素原子を他のハロゲンに変えたものなどのアルキルマグネシウムハライド等である。
【0120】
本発明において(C)の使用量には特に制限はないが(B)中に含有されるジルコニウム等の遷移金属1モルに対し、一般には10〜100,000モルの範囲であり、通常20〜70,000モルの範囲、好ましくは、25〜50,000モル、より好ましくは50〜30,000モル、さらに好ましくは70〜30,000モル、よりさらに好ましくは100〜30,000モル、特に好ましくは150〜20,000モル、最も好ましくは200〜10,000モルの範囲である。
【0121】
本発明の成分(D)は、(I)30℃における動粘度が5.0mm/s以上の液体状炭化水素であって、流動パラフィン、プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状水素添加ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリスチレン、石油樹脂、液状アタクティックポリプロピレンから選ばれるもの、(II)結晶性オレフィン重合体以外の固体状炭化水素であって、黄色ワセリン、白色ワセリン、石油ワックス、ポリスチレン、ポリイソブチレン、水素添加ポリブタジエン、エチレン・プロピレン共重合体エラストマーから選ばれるもの、および(III)結晶性オレフィン重合体から選ばれる少なくとも1以上である。これらはいずれも単独の化合物であってもよく、複数の化合物を混合したものであってもよい。これらは化合物中における炭素および水素の含有量の合計が70重量%以上であり、好ましくは80重量%、より好ましくは90重量%、最も好ましくは95重量%以上である。
【0122】
本発明の成分(D)として上記のものを使用しない場合には、本発明の目的を達成することが困難となる。すなわち、触媒成分調製後の保存中に重合活性が低下したり、保存後の触媒成分あるいは触媒を使用して重合を行った場合には、得られる重合体の溶剤可溶成分が増大したり、分子量分布が広くなったりする。さらには、保存後の触媒を使用して重合を行った場合には、ファウリングの発生、嵩密度の低い重合体粒子の生成、粒子の互着による塊状重合体の生成などの問題が起こる。
【0123】
(D)として使用される(I)液体状炭化水素の動粘度は、好ましくは10.0mm/s以上であり、より好ましくは15.0mm/s以上、さらに好ましくは20.0mm/s以上、よりさらに好ましくは25.0mm/s以上、特に好ましくは30.0mm/s以上、最も好ましくは35.0mm/s以上である。なお、動粘度の測定はJIS K2283に記載の方法に準じて測定することが可能である。
【0124】
これらの重量平均分子量は通常200〜100,000の範囲であり、好ましくは200〜80,000の範囲、さらに好ましくは200〜50,000の範囲、よりさらに好ましくは240〜30,000の範囲、特に好ましくは270〜20,000の範囲、最も好ましくは300〜10,000の範囲である。
【0125】
これらの30℃における動粘度が5.0mm/s以上の液体状炭化水素の具体例としては、流動パラフィン、プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状水素添加ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリスチレン、石油樹脂、液状アタクティックポリプロピレンなどが例示され、これらは市販のものを使用することが可能である。
【0126】
前記成分(D)として使用される(II)結晶性オレフィン重合体以外の固体状炭化水素は、融点を持たない半固体状、ガラス状あるいはエラストマー状の炭化水素および結晶性を有する炭化水素であって結晶性オレフィン重合体以外のものから選ばれる1種以上であって、黄色ワセリン、白色ワセリン、石油ワックス、ポリスチレン、ポリイソブチレン、水素添加ポリブタジエン、エチレン・プロピレン共重合体エラストマーから選ばれる。
【0127】
これらのうち結晶性を有する炭化水素すなわち融点を有する化合物であることが好ましい。この固体状炭化水素の融点は好ましく150℃以下であり、より好ましくは30〜130℃の範囲、さらに好ましくは35〜100℃の範囲、よりさらに好ましくは35〜90℃の範囲、特に好ましくは40〜90℃の範囲、最も好ましくは40〜80℃の範囲である。
【0128】
(D)として使用される(II)結晶性オレフィン重合体以外の固体状炭化水素の重量平均分子量は通常250〜100,000の範囲であり、好ましくは250〜50,000の範囲、さらに好ましくは250〜30,000の範囲、よりさらに好ましくは270〜20,000の範囲、特に好ましくは300〜15,000の範囲、最も好ましくは300〜10,000の範囲である。
【0129】
(II)結晶性オレフィン重合体以外の固体状炭化水素の具体例としては、黄色ワセリン、白色ワセリン、ペトロラタム、マイクロクリスタリンワックスやパラフィンワックス等の石油ワックス、ポリスチレン、ポリイソブチレン、水素添加ポリブタジエン、エチレン・プロピレン共重合体エラストマーなどが例示される。
【0130】
前記成分(D)として使用される炭化水素(III)結晶性オレフィン重合体は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の直鎖状オレフィン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の分枝状オレフィン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン等の環状オレフィンなどのオレフィンから選ばれる1種以上の結晶性を有する重合体である。
【0131】
前記(III)は、好ましくは(III−1)前記(A)、(B)および(C)からなるオレフィン重合用触媒によりオレフィンの少なくとも1種が予備重合されたものである。
ここで使用されるオレフィンに制限はなく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の直鎖状オレフィン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の分岐状オレフィン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン等の環状オレフィンが使用可能である。これらのうち好ましいものはエチレン、プロピレン、1−ブテン等の直鎖状オレフィン、ビニルシクロヘキサン等の環状オレフィンであり、特にプロピレンを主成分として含むことが好ましい。
【0132】
(III−1)の重量平均分子量は通常5,000〜3,000,000の範囲であり、好ましくは10,000〜2,500,000の範囲、さらに好ましくは20,000〜2,000,000の範囲、よりさらに好ましくは30,000〜1,500,000の範囲、特に好ましくは50,000〜1,500,000の範囲、最も好ましくは100,000〜1,500,000の範囲である。また、(III−1)の示差走査型熱量計により測定した融点は通常250℃以下であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。
【0133】
(III−1)の具体例としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンなどが例示され、好ましくはポリエチレンおよびポリプロピレンであり、最も好ましくはポリプロピレンである。ポリプロピレンの場合には、その融点は一般に152.5℃以下であり、通常130〜152.0℃、好ましくは130.0〜151.5℃、より好ましくは135.0〜151.0℃、さらに好ましくは138.0〜150.5℃、よりさらに好ましくは140.0〜150.0℃、特に好ましくは140.0〜149.5℃、最も好ましくは140.0〜149.0℃である。また、(III−1)がポリプロピレンまたはポリエチレンである場合、重量平均分子量は好ましくは10,000〜1,500,000の範囲、さらに好ましくは20,000〜1,000,000の範囲、よりさらに好ましくは20,000〜500,000の範囲、特に好ましくは50,000〜400,000の範囲、最も好ましくは100,000〜300,000の範囲である。
【0134】
前記(III)の他の好ましい様態は、(III−2)ポリオレフィンワックスであり、前記オレフィンを重合あるいはオレフィン重合体を熱分解することにより得られる結晶性を有するワックスである。より具体的にはポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エチレン酢酸ビニル共重合体ワックス等が例示される。これらの融点は、通常40〜200℃の範囲であり、ポリエチレンワックスまたはエチレン酢酸ビニル共重合体ワックスの場合には好ましくは50〜140℃の範囲、さらに好ましくは60〜120℃の範囲、最も好ましくは70〜110℃の範囲である。またポリプロピレンワックスの場合には好ましくは120〜170℃の範囲、さらに好ましくは130〜165℃の範囲、最も好ましくは140〜160℃の範囲である。また、これらの重量平均分子量は通常300〜20,000の範囲であり、好ましくは500〜10,000の範囲、さらに好ましくは1,000〜8,000の範囲である。
【0135】
前記(A)に対する(D)の使用量は、通常(A)および(B)の合計100重量部に対して1〜1,000,000重量部の範囲である。(D)として(I)、(II)、または(III−2)を使用する場合、好ましくは(A)および(B)の合計100重量部に対して5〜8,000重量部、より好ましくは10〜6,000重量部、さらに好ましくは20〜5,000重量部、よりさらに好ましくは25〜5,000重量部、特に好ましくは30〜4,000重量部、もっとも好ましくは40〜3,000重量部の範囲である。また、(D)として(III−1)を使用する場合、(A)および(B)の合計100重量部に対して好ましくは1〜200,000重量部、より好ましくは5〜100,000重量部の範囲である。
【0136】
さらに、本発明のオレフィン重合用触媒によりオレフィンの単独重合体を製造する場合、(III−1)の使用量は(A)および(B)の合計100重量部に対して5〜5,000重量部、好ましくは10〜3,000重量部、より好ましくは20〜2,000重量部、さらに好ましくは40〜1,500重量部、よりさらに好ましくは60〜1,200重量部、特に好ましくは80〜1,000重量部、最も好ましくは100〜1,000重量部の範囲である。
【0137】
また、本発明のオレフィン重合用触媒によりオレフィンの共重合体を製造する場合には、(III−1)の含有量は、(A)および(B)の合計100重量部に対して5〜50,000重量部、好ましくは10〜30,000重量部、より好ましくは20〜20,000重量部、さらに好ましくは40〜15,000重量部、よりさらに好ましくは60〜10,000重量部、特に好ましくは80〜8,000重量部、最も好ましくは100〜5,000重量部の範囲である。これら(D)の使用量が上記範囲外では、得られるオレフィン重合体の溶剤可溶成分が増加したり、分子量分布が広がったりすることがある。
【0138】
本発明のオレフィン重合用触媒は前記(A)、(B)、(C)および(D)からなる。その調製方法に特に制限はなく、前記成分を任意の方法で接触させて調製する方法(第1の方法)、前記(A)、(B)および(C)からなるオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンを予備重合することにより(D)を生成させる方法(第2の方法)、あるいはこれらの方法を併用する方法(第3の方法)などが例示される。前記(D)として(I)、(II)あるいは(III−2)を用いる場合は第1の方法により調製され、また(D)として(III−1)を用いる場合は第2の方法により調製される。また、(D)として(I)、(II)もしくは(III−2)と(III−1)を併用する場合は第3の方法により調製される。
【0139】
前記第1の方法により本発明のオレフィン重合用触媒を調製する場合、接触の順序は任意であり、前記(A)、(B)、(C)および(D)の各触媒成分を同時に接触させる方法、前記触媒成分のうち3成分を予め接触させた後に残りの1成分を接触させる方法、前記触媒成分のうち2成分を予め接触させた後に他の2成分を同時に接触させる方法、前記触媒成分のうち2成分を予め接触させた後に他の2成分を逐次に接触させる方法が可能である。また接触の回数も任意であり、各成分を複数回接触させることも可能である。
【0140】
前記各成分の接触は任意の溶剤の存在下あるいは非存在下で行うことが可能であり、溶剤としてはプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類などを使用することができる。これらのうち好ましくは芳香族炭化水素およびハロゲン化炭化水素であり、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルムが好ましい。また、ここで使用する炭化水素溶剤は複数を併用することも可能である。さらに、各成分を逐次に接触させる場合は、各接触段階において異なる溶剤を使用することも可能である。
【0141】
接触温度は接触を行う成分の組み合わせにより異なるが通常−70〜200℃の範囲、好ましくは−50〜150℃の範囲、特に好ましくは−20〜120℃の範囲である。また、接触の時間は任意であり、通常0.5〜600分の範囲であり、好ましくは1〜300分の範囲、さらに好ましくは3〜120分の範囲である。なお、各成分を逐次に接触させる場合は、各接触段階において異なる温度および時間で接触を行うことも可能である。
【0142】
これらのうち好ましくは、(1)(A)、(B)および(C)を同時あるいは逐次に接触させた後に(D)と接触させる方法、(2)(A)、(B)および(D)を同時あるいは逐次に接触させた後に(C)と接触させる方法、(3)(A)および(B)、さらには必要に応じて(D)を接触させた後に(C)および(D)を接触させたものと接触させる方法である。
【0143】
前記(1)のより具体的な方法としては、(A)、(B)および(C)を、−20℃〜80℃の温度範囲においてヘキサン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロメタン等の溶剤中で接触させ、該溶剤の存在下あるいは該溶剤を除去した後に溶剤の非存在下で0℃〜120℃の温度範囲において(D)と接触させオレフィン重合用触媒を調製する方法が例示される。この触媒はその保存後においても、重合活性の著しい低下なく溶剤可溶成分の少ないオレフィン重合体を与えることが可能である。
【0144】
前記(2)のより具体的な例は、以下に示される方法が可能である。すなわち、(A)および(B)を−20℃〜120℃の温度範囲においてトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等の(B)の溶解性が高い溶剤中で接触させ、該溶剤を除去した後に0℃〜120℃の温度範囲において溶剤の非存在下で(D)と接触させオレフィン重合用触媒成分を調製する。ついで該触媒成分と(C)を0℃〜80℃の温度範囲において接触させ、オレフィン重合用触媒を得ることが可能である。(C)との接触は重合反応器外で行ってもよく、重合反応器内で行ってもよい。ここで、該触媒成分はその保存後に(C)と接触させて重合用触媒とした場合でも、重合活性の著しい低下がなく溶剤可溶成分の少ないオレフィン重合体を与えることが可能である。
【0145】
前記(3)のより具体的な方法としては、(A)および(B)をトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等の(B)の溶解性が高い溶剤中で接触させ、その後ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶剤中あるいは溶剤の非存在下において(C)および(D)を接触させたものと接触させ、オレフィン重合用触媒とする方法が例示される。なお、(A)および(B)の接触後は、接触に使用した溶剤を除去した後に、溶剤の非存在下で(C)および(D)と接触したものと接触させることが可能である。さらに(A)および(B)の接触は(D)の存在下においても可能である。
第2の方法により本発明のオレフィン重合用触媒を製造する場合、前記(A)、(B)および(C)からなる任意の触媒を使用することが可能である。また、該触媒の製造方法に制限はなく、各成分の使用量も任意である。
【0146】
また、第2の方法における予備重合の方法に特に制限はなく、公知の方法が採用可能である。具体的には任意の非重合性媒体中、あるいは該媒体の非存在下に液状または気体のオレフィンと接触させることにより行なわれるが、予備重合体の生成量を制御するために好ましくは非重合性媒体中で行われる。非重合性媒体としてはプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、軽油、灯油等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが使用可能である。これらのうち好ましくは脂肪族炭化水素および脂環式炭化水素である。予備重合を行う反応系内におけるこれら非重合性媒体の含有量は通常10重量%以上であり、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上、よりさらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上、最も好ましくは70重量%以上である。
【0147】
予備重合の温度は特に制限はなく、通常−80〜150℃の範囲であり、好ましくは−50〜100℃、より好ましくは−20〜80℃、さらに好ましくは−10〜60℃、よりさらに好ましくは−5〜50℃未満の範囲である。予備重合を行なった後はそのまま重合に使用してもよく、また洗浄や乾燥といった工程を経た後に使用することも可能である。またオレフィンの予備重合量は、重合温度、重合時間、オレフィン供給量などを変化させることにより前記(III−1)の使用量に記載した範囲となるように調節される。
【0148】
第3の方法により本発明のオレフィン重合用触媒を調製する場合、第1の方法と第2の方法の実施順序に制限はない。すなわち第1の方法により(I)、(II)および(III−2)の1以上を含有する触媒を調製した後、オレフィンを予備重合して(III−1)を生成させる方法、あるいは第2の方法により(III−1)を含有する触媒を調製した後、これに(I)、(II)および(III−2)の1以上を接触させる方法などである。第3の方法における第1および第2の方法は、各方法を単独で行う場合と同様にして行うことが可能である。また、第3の方法において行われる予備重合に特に制限はなく、予備重合の条件、予備重合量など任意であるが、好ましくは前記第2の方法に記載した範囲で行われる。
【0149】
次に、本発明のオレフィン重合用触媒成分について説明する。本発明のオレフィン重合用触媒成分は前記(A)、(B)および(D)からなる。該触媒成分は自然発火性の物質を含有せず、その取り扱いが容易である。なかでも(B)としては、遷移金属に結合した配位子としてハロゲン、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、ジエンを有するものが好ましく、ハロゲンを有するものが特に好ましく、塩素を有するものがもっとも好ましい。
【0150】
本発明のオレフィン重合用触媒成分の調製方法に特に制限はなく、前記成分を任意の方法で接触させて調製することが可能である。接触の順序は任意であり、前記(A)、(B)および(D)の各触媒成分を同時に接触させる方法、前記触媒成分のうち2成分を予め接触させた後に残りの1成分を接触させる方法のいずれも可能である。また、接触の回数も任意であり、各成分を複数回接触させることも可能である。
【0151】
前記各成分の接触は任意の溶剤の存在下あるいは非存在下で行うことが可能であり、本発明のオレフィン重合用触媒の調製に使用されるものと同様のものが使用可能である。なかでも好ましくは芳香族炭化水素およびハロゲン化炭化水素であり、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルムが好ましい。また、ここで使用する炭化水素溶剤は複数を併用することも可能である。さらに、各成分を逐次に接触させる場合は、各接触段階において異なる溶剤を使用することも可能である。
【0152】
接触温度は接触を行う成分の組み合わせにより異なるが、通常−70〜200℃の範囲、好ましくは−50〜150℃の範囲、特に好ましくは−20〜120℃の範囲である。また接触の時間は任意であり、通常0.5〜600分の範囲であり、好ましくは1〜300分の範囲、さらに好ましくは3〜120分の範囲である。なお各成分を逐次に接触させる場合は、各接触段階において異なる温度および時間で接触を行うことも可能である。
【0153】
これらのうち好ましくは、(A)、(B)および(D)を同時に接触させる方法、(A)および(B)を接触させた後に(D)と接触させる方法であり、特に好ましくは後者の方法である。
【0154】
本発明のオレフィン重合用触媒成分の保存方法は、前記オレフィン重合用触媒の保存方法と同様にして行われる。すなわち、前記(A)および(B)からなるオレフィン重合用触媒成分を、(D)炭化水素中で保存するにあたって、(D)炭化水素として特定のものを用いることを特徴とする。ここでいう保存とは、該触媒成分の調製直後からオレフィン重合用触媒の調製を開始するまでの間に存在する全ての工程および状態を含み、これらの工程あるいは状態を一定時間維持することである。具体的には(1)該触媒成分の調製後、重合用触媒の調製に使用するまでの調製装置あるいは貯蔵装置内での一時的な貯蔵、(2)調製装置から移送用容器への充填、(3)移送用容器等を用いた調製装置から貯蔵設備への移送、(4)移送用容器等を用いた貯蔵設備から重合用触媒調製設備もしくは重合設備までの移送、(5)移送用容器等を用いた調製装置から重合用触媒調製設備もしくは重合設備への移送、(6)移送用容器から重合用触媒調製設備もしくは重合設備への充填などである。
【0155】
オレフィン重合用触媒成分の保存を行う装置に特に制限はなく、通常窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性気体の雰囲気下、遮光した状態で保存される。また、保存温度に特に制限はなく、通常−50〜100℃の範囲であり、好ましくは−30℃〜70℃の範囲、さらに好ましくは−10〜50℃の範囲である。所定温度で保存するにあたっては、温度制御装置を有する容器もしくは設備中で保存する方法、触媒を充填した容器もしくは設備を所定温度の恒温槽中に保持する方法などが可能である。
【0156】
保存時間すなわち前記工程および状態を維持する時間は任意であり、通常1分以上であるが、一般的には10分以上、より一般的には1時間以上、さらに一般的には5時間以上、よりさらに一般的には10時間以上であり、最も一般的には1〜1000日の保存時間が採用される。さらに、保存時間は、好ましくは1〜100日、より好ましくは1〜200日、特に好ましくは1〜150日、最も好ましくは1〜100日である。
【0157】
本発明の保存方法において使用される各成分(A)、(B)および(D)は、前記本発明のオレフィン重合触媒において記載されたものと同様であり、これらの好ましい様態も前記本発明のオレフィン重合触媒において記載されたものと同様である。さらに、その使用量、調製条件なども前記本発明のオレフィン重合触媒において記載されたものと同様である。
【0158】
保存にあたってはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素など、本発明の(D)以外の化合物を併用して保存、すなわち、(D)以外の化合物を溶剤としたスラリー状態で保存することも可能である。また、溶剤による洗浄後、該溶剤を除去した後に保存、さらには乾燥した後に保存することも可能である。
【0159】
本発明のオレフィン重合用触媒は任意のオレフィン重合体の製造に適用可能である。具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン、ビニルシクロヘキサン等の重合体およびこれらの共重合体の製造であり、スチレン、ビニルトルエンといったビニル芳香族化合物やブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1、4−ヘキサジエンといった共役あるいは非共役ジエンなどの少量が共重合されたものの製造にも適用可能である。
【0160】
また、本発明のオレフィン重合用触媒は任意の重合方法に適用することが可能である。具体的には液体オレフィン中で行う塊状重合、不活性溶剤の存在下に液相中で行う溶液重合やスラリー重合、気相モノマー中で行う気相重合が挙げられる。これらのうち好ましくは塊状重合および気相重合であり、特に好ましくは塊状重合である。
【0161】
重合温度は生産性や製造するオレフィン重合体の分子量を考慮して任意であるが、通常0℃〜130℃の範囲であり、好ましくは20〜120℃の範囲であり、さらに好ましくは40℃〜100℃の範囲であり、特に好ましくは56〜95℃、最も好ましくは60〜90℃の範囲である。圧力は液相中の重合において常圧〜7.0MPa、気相中では常圧〜5.0MPaの範囲が一般的であり、得ようとするオレフィン重合体の性質や、生産性などを考慮して適当な範囲を選択できる。また重合時には、水素の導入や温度、圧力の選定など任意の手段により分子量を調節することが可能である。
【0162】
特に、本発明のオレフィン重合用触媒はプロピレン重合体の製造、ことにプロピレン共重合体の製造に適しており、該触媒、さらには前記保存方法により保存された触媒によりプロピレンの共重合体を製造した場合においても、溶剤可溶成分の少ない重合体を、分子量分布を広げることがなく高い重合活性で与えることが可能である。
【0163】
なお、本発明の触媒に対しては、さらに付加的な予備重合を行うことが可能である。この付加的な予備重合の方法に制限はないが、好ましくはオレフィン及び前記触媒を連続的もしくは間欠的に予備重合を行う反応器に供給することで、連続的に予備重合が行われる。この付加的な予備重合には、好ましくは塊状重合が採用され、反応系における非重合性媒体の含有量は好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下、よりさらに好ましくは70重量%以下、特に好ましくは60重量%以下、最も好ましくは50重量%以下である。付加的な予備重合を施された触媒は、好ましくは単離されることなく、オレフィンの重合を行う反応器に供給される。
【0164】
付加的な予備重合の温度は、特に制限はないが、通常−20〜80℃の範囲であり、好ましくは−10〜70℃、より好ましくは−10〜50℃、さらに好ましくは0〜40℃、よりさらに好ましくは0〜30℃の範囲である。
【0165】
前記付加的な予備重合により、オレフィンは(A)および(B)の合計100重量部に対して、100〜500、000重量部、好ましくは200〜200、000重量部、より好ましくは500〜100、000重量部、さらに好ましくは1、000〜50、000重量部、よりさらに好ましくは1、500〜30、000重量部、特に好ましくは2、000〜20、000重量部、最も好ましくは2、500〜20、000重量部の範囲となるように重合される。該予備重合量は、重合温度、重合時間、オレフィン供給量などを変化させることにより前記範囲となるように調節される。
【0166】
本発明において製造されるプロピレン重合体の重量平均分子量は、通常50,000以上であり、好ましくは100,000以上、より好ましくは110,000〜2,000,000の範囲、さらに好ましくは120,000〜1,500,000の範囲、最も好ましくは130,000〜1,000,000の範囲である。重量平均分子量が50,000未満のプロピレン重合体を製造した場合にはその溶剤可溶性成分が増大したり、分子量分布が広くなるなどの問題が起こることがある。
また、本発明において製造されるプロピレン重合体は、通常、その融点Tmとプロピレン含量Fpが下記式(6)の関係を満たし、好ましくは下記式(7)を満たし、特に好ましくは下記式(8)を満たす。
【0167】
140<Tm+5.5(100−Fp)<165 (6)
145<Tm+5.5(100−Fp)<160 (7)
147<Tm+5.5(100−Fp)<157 (8)
上記式(6)を満たさないプロピレン重合体を製造した場合には、その溶剤可溶性成分が増大したり、分子量分布が広くなるなどの問題が起こることがある。
【実施例】
【0168】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
成分(A)の水酸基含有量の測定
所定量の成分(A)を採取後、ヘキサン中で過剰のメチルリチウムと反応させ、発生するメタンガスの量を測定することにより求めた。なお非配位性イオン含有化合物からもメタンガスが発生する場合は、その発生量を成分(A)中のホウ素含有量から見積もり、これを減じた値を水酸基含有量とした。
【0169】
キシレン可溶分Xsの測定
オレフィン重合体約2gを正確に秤量し(これをW(g)とする)、これを窒素気流下で250mlの沸騰キシレンに溶解させた。その後、この溶液を25℃まで冷却し30分間放置し、生成した沈殿を速やかに濾過した。得られた濾液の100mlを採取して恒量を求めたアルミ容器に入れ、これを窒素気流下で加熱することによりキシレンを蒸発させた。蒸発残分の重量を求め(これをm(g)とする)、下式(9)よりオレフィン重合体のキシレン可溶部Xsを求めた。
【0170】
Xs(重量%)=m×250/W (9)
メルトフローレートの測定
JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定した。
融点Tmの測定
PERKIN−ELMER社製の示差走査型熱量計DCS7を用いた。まず230℃まで昇温後5分間保持し、ついで20℃/分で−30℃まで冷却後5分間保持した。その後、再度20℃/分で昇温したときの融解ピークを融点とした。
【0171】
重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)の測定
1)検量線の作製
0.1重量%のBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)を含む1,2,4−トリクロロベンゼン10mlに、分子量の異なる3種の標準ポリスチレン試料(昭和電工(株)社製)をそれぞれ2mg入れ、室温、暗所で1時間溶解し、その後GPC測定によりピークトップの溶出時間の測定を行なった。この測定を繰り返し、計12点(分子量580から850万)の分子量とピークトップの溶出時間より、3次式近似で検量線を作製した。
【0172】
2)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の測定
試験管に0.1重量%のBHTを含む5mlの1,2,4−トリクロロベンゼンを取り、これにポリプロピレン(試料)約2.5mgを投入した。この試験管に栓をした後、160℃の恒温槽で2時間かけて試料を溶解させた。得られた溶液を焼結フィルターで濾過した後、濾液をWaters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置150Cを用いて測定し、得られたクロマトグラムからMwおよびMnを求め、これら分子量の比(Mw/Mn)を算出た。なおGPCのその他の測定条件は以下のとおりである。
【0173】
・検出器:示差屈折率計
・カラム:昭和電工(株)製Shodex HT−G(1本)および昭和電工(株)製Shodex HT−806M(2本)を直列に接続したもの
・カラム温度:140℃
・溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン(BHT0.1重量%を含む。)
・サンプル注入量:0.5ml
・溶媒流量:1ml/分
・装置内でのサンプル注入待ち時間:30分(ポリスチレンは5分)
【0174】
実施例および比較例において以下の成分を使用した。
(a−1)非配位性イオン含有化合物
N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(クロロジメチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(CMSB)
N,N−ジメチルアニリニウム(4−トリクロロシリル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(TCSB)
N,N−ジメチルアニリニウム(4−トリメトキシシリル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(TMSB)
(a−2)微粒子担体
シリカ(窒素気流下110℃で5時間乾燥したもの、水酸基含量4.4mmol/g)
塩化マグネシウム
【0175】
(B)メタロセン化合物
ビス〔2−メチル−4−フェニル−(η−1−インデニル)〕ジメチルシランジルコニウムジクロライド(MPIZ)
ビス〔2−メチル−4−(1−ナフチル)−(η−1−インデニル)〕ジメチルシランジルコニウムジクロライド(MNIZ)
ビス〔2−メチル−4,5−ベンゾ−(η−1−インデニル)〕ジメチルシランジルコニウムジクロライド(MBIZ)
1,2−ビス(η−1−インデニル)エタンハフニウムジクロライド(EBIH)
ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド(CPZ)
【0176】
(C)有機アルミニウム
トリ−n−オクチルアルミニウム(TNOA)
トリ−n−ヘキシルアルミニウム(TNHA)
トリ−n−ブチルアルミニウム(TNBA)
【0177】
(D)炭化水素
(D−1)白色ワセリン(JIS K2235に準じて測定した融点が42℃、60℃で攪拌しながら、窒素を毎分500mlで6時間通気したもの)
(D−2)流動パラフィン1(商品名ダフニーオイルCP15N、出光興産(株)製、30℃における動粘度30.9mm/s、60℃で攪拌しながら、窒素を毎分500mlで6時間通気したもの)
(D−3)流動パラフィン(商品名ダフニーオイルCP15N出光興産(株)製、30℃における動粘度30.9mm/s)と白色ワセリン(JIS K2235に準じて測定した融点が42℃)を重量比で7対3の割合で混合したもの(混合物を60℃で攪拌しながら、窒素を毎分500mlで6時間通気したもの)
【0178】
(D−4)パラフィンワックス(商品名パラフィンワックス150、日本精蝋(株)製、融点66℃、70℃で攪拌しながら、窒素を毎分500mlで6時間通気したもの)
(D−5)マイクロクリスタリンワックス(商品名マイクロクリスタリンワックスHi−Mic−1080、日本精蝋(株)製、融点83℃、90℃で攪拌しながら、窒素を毎分300mlで6時間通気したもの)
(D−6)流動パラフィン2(商品名ダフニーオイルCP68N、出光興産(株)製、30℃における動粘度114mm/s、60℃で攪拌しながら、窒素を毎分500mlで6時間通気したもの)
【0179】
実施例1
1)非配位性イオン含有化合物が微粒子担体上に化学結合により結合した助触媒成分(A)の調製
ジクロロメタン6mlにイオン性化合物(a−1)としてCMSB0.3gを溶解させた溶液と、ジクロロメタン30mlに微粒子担体(a−2)として0.5gのシリカ(窒素気流下110℃で5時間乾燥したもの)を加えたスラリーを混合し、撹拌下2時間還流させた。次いで、(a−3)としてトリメチルクロロシラン3mlを添加し、撹拌下さらに2時間還流させた。その後、上澄みを除去し30mlのジクロロメタンで3回洗浄することで助触媒成分を得た。ホウ素含有量より求めた非配位性イオン含有化合物は0.12mmol/gであった。また水酸基含有量は1.9mmol/gであった。
【0180】
2)オレフィン重合用触媒成分の調製
窒素気流下の30mlフラスコに前記成分(A)を100mg採取後、(B)MPIZの5.0mmol/Lのジクロロメタン溶液を1ml加え、室温で1時間撹拌した。その後、窒素気流下でジクロロメタンを溜去し、淡黄色の触媒成分を得た。
次に、上記触媒成分を窒素気流下の30mlフラスコに20mg採取した。このフラスコに(D−1)を溶融状態で0.2g加えて混合し、オレフィン重合用触媒成分を調製した。
【0181】
3)オレフィン重合用触媒の調製
上記2)で調製したオレフィン重合用触媒成分を室温で8日間保存した後、(C)0.5mol/LのTNOAヘキサン溶液を2.0ml加え、40℃で30分撹拌しオレフィン重合用触媒を調製した。(B)メタロセン化合物に対する(C)有機金属化合物の使用量はモル比で1000であった。
【0182】
4)プロピレンの重合
6.0リットルのオートクレーブに0.5mol/LのTNOAヘキサン溶液2ml、およびプロピレン8molを加え70℃に昇温した後、上記重合用触媒をオートクレーブ中に圧入した。30分間重合を行った後、未反応のプロピレンを除去し、プロピレン重合体を得た。その結果を表1に示す。
【0183】
実施例2、3
実施例1においてオレフィン重合用触媒成分の使用量をそれぞれ40mgおよび100mgとし、(D)に表1記載のものを使用した以外は同様に行った。(B)メタロセン化合物に対する(C)有機金属化合物の使用量はモル比でそれぞれ500および200であった。その結果を表1に示す。
【0184】
実施例4〜8
実施例1において(B)、(C)および(D)として表1記載の成分を使用した以外は同様に行った。その結果を表1に示す。
【0185】
実施例9
下記に従いプロピレンエチレン共重合体を製造した以外は実施例1と同様に行った。
プロピレンとエチレンの共重合
6.0リットルのオートクレーブに0.5mol/LのTNOAヘキサン溶液2ml、およびプロピレン32molを加え65℃に昇温した後、実施例1で調製した重合用触媒をオートクレーブ中に圧入し、付加的な予備重合を開始した。重合開始1分後、エチレンをその分圧が0.25MPaとなるまで導入し、70℃でプロピレンとエチレンを共重合した。エチレン導入から15分後、メタノールを圧入することで重合を停止させた。未反応のプロピレンを除去し、プロピレン重合体を得た。その結果を表1に示す。
【0186】
実施例10、11
(B)MPIZの使用量を半分とし、(D)として表1記載の成分を用いた以外は実施例9と同様に行った。その結果を表1に示す。(B)メタロセン化合物に対する(C)有機金属化合物の使用量はモル比で500であった。
【0187】
実施例12〜23
(B)、(C)および(D)として表1記載の成分を使用し、表1記載のエチレン分圧でプロピレンエチレン共重合体を製造した以外は実施例9と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0188】
実施例24
1)非配位性イオン含有化合物が微粒子担体上に化学結合により結合した助触媒成分(A)の調製
実施例1において、CMSBの代わりにTCSBを用いた以外は同様に行った。ホウ素含有量より求めた非配位性イオン含有化合物は0.20mmol/gであった。また水酸基含有量は1.6mmol/gであった。
上記で調製した(A)と、(B)、(C)および(D)として表1記載の成分を用い、表1記載のエチレン分圧でプロピレンエチレン共重合体を製造した以外は実施例9と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0189】
実施例25
1)非配位性イオン含有化合物が微粒子担体上に化学結合により結合した助触媒成分(A)の調製
実施例1においてCMSBの使用量を0.2gとした以外は同様に行った。ホウ素含有量より求めた非配位性イオン含有化合物は0.08mmol/gであった。また水酸基含有量は2.2mmol/gであった。
2)オレフィン重合用触媒成分の調製
窒素気流下の30mlフラスコに上記1)で調製した成分(A)を100mg採取後、(B)MPIZの5.0mmol/L−ジクロロメタン溶液を1ml加え、室温で1時間撹拌した。その後、窒素気流下でジクロロメタンを溜去し、淡黄色の触媒成分を得た。
【0190】
3)オレフィン重合用触媒の調製
窒素気流下の30mlフラスコに上記1)で調製したオレフィン重合用触媒成分を20mg採取後、(C)0.5mol/L−TNOAのヘキサン溶液を0.2ml加え、室温で10分撹拌した。次に窒素気流下でヘキサンを溜去し、赤色の重合用触媒を得た。この重合用触媒に、(D−1)を0.2g加えて混合し、オレフィン重合用触媒を調製した。このオレフィン重合用触媒成分を室温で8日間保存した後、さらに(C)0.5mol/L−TNOAのヘキサン溶液を1.8ml加え、40℃で10分撹拌した。このオレフィン重合用触媒を下記プロピレンの重合に使用した。(B)メタロセン化合物に対する(C)有機金属化合物の使用量はモル比で1,000であった。
4)プロピレンの重合
上記2)で調製したオレフィン重合用触媒を用いて実施例1と同様にプロピレンの重合を行った。その結果を表2に示した。
【0191】
実施例26〜32
表2記載の成分を使用した以外は実施例25と同様に行った。その結果を表2に示す。
実施例33〜40
表2記載の成分を使用して、実施例25と同様に調製したオレフィン重合用触媒を8日間保存したものを用い、表2記載のエチレン分圧でプロピレンとエチレンを共重合した以外は実施例9と同様に行った。その結果を表2に示す。
【0192】
実施例41
1)非配位性イオン含有化合物が微粒子担体上に化学結合により結合した助触媒成分(A)の調製
実施例1においてトリメチルクロロシランの変わりにフェニルジメチルクロロシランを用いた以外は同様に行った。ホウ素含有量より求めた非配位性イオン含有化合物は0.10mmol/gであった。また水酸基含有量は2.6mmol/gであった。
【0193】
2)オレフィン重合用触媒成分の調製
窒素気流下の30mlフラスコに上記1)で調製した成分(A)を100mg採取後、(B)MPIZの5.0mmol/L−ジクロロメタン溶液を1ml加え、室温で1時間撹拌した。その後、窒素気流下でジクロロメタンを溜去し、淡黄色の触媒成分を得た。
窒素置換した30mlのフラスコに(D−1)を0.2g採取し、次いでこのフラスコにTNOAを0.27mmol加え、50℃で10分間攪拌した。この混合物に上記触媒成分の全量を加えて混合することで、オレフィン重合用触媒成分を調製した。
【0194】
3)プロピレンの重合
上記2)で調製したオレフィン重合用触媒成分80mg(白色ワセリンおよびTNOAを含む重量)を室温で8日間保存した後、(C)0.5mol/L−TNOAのヘキサン溶液を1.0ml加え攪拌しながら50℃で5分間加熱した。(B)メタロセン化合物に対する(C)有機金属化合物の使用量はモル比で540であった。この重合用触媒を用いて実施例1と同様にプロピレンの重合を行った。その結果を表2に示す。
【0195】
実施例42
1)オレフィン重合用触媒の調製
窒素気流下の30mlフラスコに実施例1記載の(A)を100mg採取後、(B)MPIZの5.0mmol/L−ジクロロメタン溶液を1mlおよび(C)0.5mol/L−TNOAのヘキサン溶液を1.0ml加え、室温で30分撹拌した。次に窒素気流下でジクロロメタンおよびヘキサンを溜去し、淡緑色の重合用触媒を得た。その後、この重合用触媒を窒素気流下の30mlフラスコに30mg採取し、(D−1)を0.3g加えて混合することで、オレフィン重合用触媒成分を調製した。
2)プロピレンの重合
上記1)で調製したオレフィン重合用触媒成分の全量を室温で8日間保存した後、実施例1と同様にプロピレンの重合を行った。その結果を表2に示す。
【0196】
実施例43
成分(A)として下記に従って調製したものおよび(B)メタロセン化合物としてMBIZを用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
1)非配位性イオン含有化合物が微粒子担体上に化学結合により結合した助触媒成分(A)の調製
テトラヒドロフラン70mlに1.8gの塩化マグネシウムを加え、この混合物を3時間還流した。得られた無色透明の溶液にイオン性化合物(a−1)としてN,N−ジメチルアニリニウム(4−トリメトキシシリル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラートの0.17モル/L−ジクロロメタン溶液5.0mlを加え3時間還流した。その後、テトラヒドロフランを溜去し、析出した固体を150℃で4時間減圧乾燥した。その後80mlのジクロロメタンで3回洗浄し助触媒成分を得た。
【0197】
実施例44〜46
助触媒成分(A)の調製においてトリメチルクロロシランを使用しなかった以外は、それぞれ実施例9、実施例25および実施例42と同様に行った。成分(A)のホウ素含有量より求めた非配位性イオン含有化合物は0.15mmol/gであった。また水酸基含有量は4.3mmol/gであった。その結果を表2に示す。
【0198】
実施例47〜49
オレフィン重合用触媒成分を室温で30日間保存した以外はそれぞれ実施例9、実施例25および実施例42と同様に行った。その結果を表2および表3に示す。
【0199】
実施例50〜52
オレフィン重合用触媒成分を保存せずに使用した以外はそれぞれ実施例9、実施例25および実施例42と同様に行った。その結果を表3に示す。
【0200】
実施例53〜55
オレフィン重合用触媒成分を5℃で30日間保存した以外はそれぞれ実施例9、実施例25および実施例42と同様に行った。その結果を表3に示す。
【0201】
実施例56
(B)メタロセン化合物および(C)有機アルミニウムとして、それぞれCPZおよびTNBAを用いた以外は実施例1と同様に行い、オレフィン重合用触媒を調製した。
1)エチレンの重合
1.5Lのオートクレーブに600mlのイソブタンおよび0.2mol/lのn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液を0.5ml加え70℃に昇温した。ついでエチレンをその分圧が1.0MPaとなるようにオートクレーブに導入した。上記オレフィン重合用触媒をオートクレーブ中に圧入し、エチレンをその分圧が1.0MPaとなるように連続的に供給しながら30分間重合を行った。その結果を表3に示す。
【0202】
実施例57
1)オレフィン重合用触媒の調製
窒素気流下、30mlのフラスコに実施例1で調製した助触媒成分(A)を30mg採取した。このフラスコに(B)MPIZおよび(C)TNOAを溶解したヘキサン(それぞれ0.5ミリモル/Lおよび0.5モル/Lの濃度)を2.0ml加え、30℃で10分攪拌することでオレフィン重合用触媒を得た。
2)プロピレンの予備重合
100mlのフラスコをプロピレンガスで置換した後、上記1)で調製したオレフィン重合用触媒の全量を加え室温で2時間撹拌し、プロピレンの予備重合を行った。助触媒成分(A)1gあたり10gのプロピレンが予備重合された。この予備重合された触媒を室温で7日間保存した後、実施例1と同様にプロピレンの重合を行った。その結果を表4に示す。
【0203】
実施例58〜63
表1記載の成分を使用して、表1記載のエチレン分圧で実施例9と同様にプロピレンとエチレンを共重合した以外は実施例57と同様に行った。その結果を表4に示す。
【0204】
実施例64〜65
プロピレンの代わりにエチレンを用いて予備重合を行った以外はそれぞれ実施例57および実施例59と同様に行った。その結果を表4に示す。
【0205】
実施例66〜67
助触媒成分(A)の調製においてトリメチルクロロシランを使用しなかった以外は、それぞれ実施例57および実施例59と同様に行った。成分(A)のホウ素含有量より求めた非配位性イオン含有化合物は0.15mmol/gであった。また水酸基含有量は4.3mmol/gであった。その結果を表4に示す。
【0206】
実施例68〜69
オレフィン重合用触媒を室温で30日間保存した以外はそれぞれ実施例57および実施例59と同様に行った。その結果を表4に示す。
【0207】
実施例70〜72
オレフィン重合用触媒を保存せずに使用した以外はそれぞれ実施例57、実施例59および実施例60と同様に行った。その結果を表4に示す。
【0208】
実施例73〜75
オレフィン重合用触媒を5℃で30日間保存した以外はそれぞれ実施例57、実施例59および実施例60と同様に行った。その結果を表4に示す。
【0209】
実施例76〜80
予備重合量を表記載の値とした以外は、それぞれ実施例57、実施例59、実施例60、実施例62および実施例63と同様に行った。その結果を表4に示す。
【0210】
比較例1、2
実施例9において(D)として、それぞれヘキサン(30℃における動粘度0.5mm/s)、および灯油(30℃における動粘度2.4mm/s)を使用し、オレフィン重合用触媒成分の保存を室温で1日とした以外は同様に行った。その結果を表5に示す。
【0211】
比較例3、4
比較例1および2においてオレフィン重合用触媒成分の保存を室温で7日とした以外は同様に行った。その結果を表5に示す。
【0212】
比較例5、6
実施例33において(D)として、それぞれヘキサンおよび灯油を使用し、オレフィン重合用触媒の保存を室温で1日とした以外は同様に行った。その結果を表5に示す。
【0213】
比較例7、8
比較例5、6においてオレフィン重合用触媒の保存を室温で7日とした以外は同様に行った。その結果を表5に示す。
【0214】
実施例81
実施例1において重合時に水素を640ml添加した以外は同様に行った。その結果を表5に示す。
【0215】
比較例9、10
実施例1において重合時に水素をそれぞれ1300mlおよび1000ml添加した以外は同様に行った。その結果を表5に示す。
【0216】
比較例11
実施例1においてMPIZの変わりにビス[2−メチル−4−フェニル−(η−1−インデニル)]ジメチルシランジルコニウムジメチルを用い(MPIZM)、(C)を使用しなかった以外は同様に行い、少量の重合体を得た。その結果を表5に示す。
【0217】
比較例12
実施例1において(C)を使用しなかった以外は同様に行ったが、重合体は得られなかった。
【0218】
比較例13
1)重合用触媒の調製
50mlのフラスコにシリカ(窒素気流下110℃で5時間乾燥したもの)0.5gおよびヘキサン10mlを加えた。この混合物にトリメチルクロロシラン3mlを添加し、撹拌下さらに2時間還流させた。その後、上澄みを除去し、10mlのヘキサンで3回洗浄した。次に、このフラスコにN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートのジクロロメタン溶液(0.5ミリモル/ml)6ml、MPIZのジクロロメタン溶液(0.5ミリモル/ml)6mlおよび0.5モル/Lのトリイソブチルアルミニウム/ヘキサン溶液を1ml加え、室温で10分攪拌した。その後、窒素気流下でジクロロメタンを溜去した。得られた固体に(D−2)を1.0g加えて攪拌し、重合触媒を得た。
この触媒を室温で7日保存した後に、実施例1と同様にプロピレンの重合を行った。その結果を表5に示す。
【0219】
実施例82
1)助触媒成分(A)の調製
5リットルのフラスコに(a−2)シリカ200gを採り、窒素気流下120℃で6時間乾燥した。室温まで冷却後、ジクロロメタン1.2リットルを加え、攪拌しながら(a−1)N,N−ジメチルアニリニウム〔4−(メチルジクロロシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート55gを500mlのジクロロメタンに溶解させた溶液を2時間かけて滴下した。2時間還流後、(a−3)としてトリメチルクロロシラン76mlを加え、さらに2時間還流した。混合物を室温まで冷却して静置し、上澄み液を除去した。その後2.5リットルのジクロロメタンで5回洗浄した。ホウ素含有量より求めた非配位性イオン含量は0.14mmol/gであった。
【0220】
2)オレフィン重合用触媒の調製
乾燥して窒素置換した3リットルのフラスコに、(B)MNIZを0.72g採取した。このフラスコに(C)として0.5mol/LのTNOAヘキサン溶液1.0リットルおよびヘキサン0.7リットルを加えて攪拌し、MNIZを溶解させた。この混合物に上記で調製した助触媒成分(A)30gを添加し、30℃でさらに30分攪拌することでオレフィン重合用触媒を調製した。
3)プロピレンの予備重合
上記2)のフラスコに、50リットルのプロピレンを充填したテドラーバッグを取り付けた。攪拌しながらフラスコ内の窒素をテドラーバッグ中のプロピレンガスで置換することで予備重合を開始した。その後、室温で2時間攪拌することで予備重合を行った。助触媒成分(A)および(B)の合計1gあたり1.8gのプロピレンが予備重合された。
【0221】
4)プロピレンの重合
150リットルのループ型重合反応器(第1の重合反応器)にプロピレンおよび水素をそれぞれ60kg/時間および4.0g/時間の速度で供給した。次いで前記3)で調製したオレフィン重合用触媒、および0.5mol/L−TNOAのヘキサン溶液を20kg/時間のヘキサンにより第1の重合反応器に供給(それぞれ助触媒成分(A)として0.2g/時間、および0.1mol/時間の供給速度に相当)し、25℃で付加的な予備重合を行った。第1の重合反応器を排出された反応混合物は70℃に設定された290リットルの第2のループ型流通式重合反応器に連続的に供給された。第2の重合反応器にはプロピレンを50kg/時間、エチレンを3.0kg/時間、水素を4.5g/時間の速度で連続的に供給しながら連続的に重合を行った。MFRが5.1g/10分のプロピレン共重合体が31kg/時間の速度で製造された。助触媒成分(A)1gあたりのプロピレン共重合体生成量は150,000gであった。得られたプロピレン共重合体のエチレン含量は3.9重量%、キシレン可溶分は0.4重量%、分子量分布Mw/Mnは2.8であった。
【0222】
実施例83
実施例82において予備重合触媒1g(助触媒成分(A)として)あたりに、さらに(D−3)5.0gを加えた以外は同様に実施した。助触媒成分(A)1gあたりのプロピレン共重合体生成量は140、000gであった。得られたプロピレン共重合体のエチレン含量は3.9重量%、キシレン可溶分は0.5重量%、分子量分布Mw/Mnは2.9であった。
【0223】
【表1】

【0224】
【表2】

【0225】
【表3】

【0226】
【表4】

【0227】
【表5】

【0228】
【表6】

【0229】
【表7】

【0230】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0231】
本発明は、保存後においても活性が低下することなく、溶剤可溶成分の少ないオレフィン重合体を、分子量分布を広げることなく与えることのできるオレフィン重合用触媒の利用を可能とするので、産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】本発明に係る触媒系を示すフローチャート図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)非配位性イオン含有化合物が微粒子担体に化学結合により結合した助触媒成分、(B)チタン、ジルコニウムまたはハフニウムを有するメタロセン化合物、(C)有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機亜鉛化合物および有機マグネシウム化合物から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物および(D)炭化水素からなり、(A)が下記一般式(1)
[M(R(R(R(R−L)・[M (1)
(式中、Mはホウ素またはアルミニウムであり、
、RおよびRは、それぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基であり、これらは互いに同一でも異なってもよく、
はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、
Lはシリル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ホスフィノ基およびこれらの1種以上を有するアルキル基もしくはアリール基の中から選ばれ、
a、bおよびcは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4であり、
[Mは、プロトン、カルベニウムイオン、トロピリウムイオン、フェロセニウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、オキソニウムイオン、シリリウムイオン、アルカリ金属イオンおよびホスホニウムイオンの中から選ばれる)
で示される非配位性イオン含有化合物(a−1)と微粒子状担体(a−2)を接触させて得られるものであり、(D)炭化水素が下記(I)〜(III)、
(I)流動パラフィン、プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状水素添加ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリスチレン、石油樹脂および液状アタクティックポリプロピレンから選ばれる、30℃における動粘度が5.0mm/s以上の液体状炭化水素、
(II)黄色ワセリン、白色ワセリン、石油ワックス、ポリスチレン、ポリイソブチレン、水素添加ポリブタジエンおよびエチレン・プロピレン共重合体エラストマーから選ばれる、結晶性オレフィン重合体以外の固体状炭化水素、
(III)結晶性オレフィン重合体、
からなる群から選ばれる少なくとも1種であるオレフィン重合用触媒。
【請求項2】
(A)非配位性イオン含有化合物が微粒子担体に化学結合により結合した助触媒成分、(B)チタン、ジルコニウムまたはハフニウムを有するメタロセン化合物および(C)有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機亜鉛化合物および有機マグネシウム化合物から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物からなり、(D)炭化水素中で保存された触媒であって、(A)が下記一般式(1)
[M(R(R(R(R−L)・[M (1)
(式中、Mはホウ素またはアルミニウムであり、
、RおよびRは、それぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基であり、これらは互いに同一でも異なってもよく、
はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、
Lはシリル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ホスフィノ基およびこれらの1種以上を有するアルキル基もしくはアリール基の中から選ばれ、
a、bおよびcは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4であり、
[Mは、プロトン、カルベニウムイオン、トロピリウムイオン、フェロセニウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、オキソニウムイオン、シリリウムイオン、アルカリ金属イオンおよびホスホニウムイオンの中から選ばれる)
で示される非配位性イオン含有化合物(a−1)と微粒子状担体(a−2)を接触させて得られるものであり、(D)炭化水素が下記(I)〜(III)、
(I)流動パラフィン、プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状水素添加ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリスチレン、石油樹脂および液状アタクティックポリプロピレンから選ばれる、30℃における動粘度が5.0mm/s以上の液体状炭化水素、
(II)黄色ワセリン、白色ワセリン、石油ワックス、ポリスチレン、ポリイソブチレン、水素添加ポリブタジエンおよびエチレン・プロピレン共重合体エラストマーから選ばれる、結晶性オレフィン重合体以外の固体状炭化水素、
(III)結晶性オレフィン重合体、
からなる群から選ばれる少なくとも1種であるオレフィン重合用触媒。
【請求項3】
請求項1または2に記載の触媒であって、保存安定性に優れたオレフィン重合用触媒。
【請求項4】
(III)結晶性オレフィン重合体が下記(III−1)および(III−2)、
(III−1)前記(A)、(B)および(C)からなるオレフィン重合用触媒によりオレフィンの少なくとも1種が予備重合されたもの、
(III−2)ポリオレフィンワックス、
からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項5】
前記(III−1)がエチレンまたはプロピレンが予備重合されたものである、請求項4記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項6】
前記(III−1)がプロピレンが予備重合されたものであり、かつ融点が152.5℃以下である、請求項5記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項7】
(B)メタロセン化合物に対する(C)有機金属化合物の使用量がモル比で10以上であるか、または(D)の使用量が(A)および(B)の合計100重量部に対して15重量部以上である、請求項1〜6のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のオレフィン重合触媒によりオレフィンの少なくとも1種を重合してオレフィン重合体を製造するオレフィン重合体の製造方法。
【請求項9】
プロピレンを単独重合するかもしくはプロピレンと他のオレフィンの少なくとも1以上を共重合してプロピレン重合体を製造する、請求項8記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項10】
重量平均分子量が50,000以上であるプロピレン重合体を製造する、請求項9記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項11】
(A)非配位性イオン含有化合物が微粒子担体に化学結合により結合した助触媒成分、(B)チタン、ジルコニウムまたはハフニウムを有するメタロセン化合物および(D)炭化水素からなり、(A)が下記一般式(1)
[M(R(R(R(R−L)・[M (1)
(式中、Mはホウ素またはアルミニウムであり、
、RおよびRは、それぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基であり、これらは互いに同一でも異なってもよく、
はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、
Lはシリル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ホスフィノ基およびこれらの1種以上を有するアルキル基もしくはアリール基の中から選ばれ、
a、bおよびcは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4であり、
[Mは、プロトン、カルベニウムイオン、トロピリウムイオン、フェロセニウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、オキソニウムイオン、シリリウムイオン、アルカリ金属イオンおよびホスホニウムイオンの中から選ばれる)
で示される非配位性イオン含有化合物(a−1)と微粒子状担体(a−2)を接触させて得られるものであり、(D)炭化水素が下記(I)〜(III)、
(I)流動パラフィン、プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状水素添加ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリスチレン、石油樹脂および液状アタクティックポリプロピレンから選ばれる、30℃における動粘度が5.0mm/s以上の液体状炭化水素、
(II)黄色ワセリン、白色ワセリン、石油ワックス、ポリスチレン、ポリイソブチレン、水素添加ポリブタジエンおよびエチレン・プロピレン共重合体エラストマーから選ばれる、結晶性オレフィン重合体以外の固体状炭化水素、
(III)結晶性オレフィン重合体、
からなる群から選ばれる少なくとも1種であるオレフィン重合用触媒成分。
【請求項12】
(A)非配位性イオン含有化合物が微粒子担体に化学結合により結合した助触媒成分および(B)チタン、ジルコニウムまたはハフニウムを有するメタロセン化合物からなり、(D)炭化水素中で保存された触媒成分であって、(A)が下記一般式(1)
[M(R(R(R(R−L)・[M (1)
(式中、Mはホウ素またはアルミニウムであり、
、RおよびRは、それぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基であり、これらは互いに同一でも異なってもよく、
はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、
Lはシリル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ホスフィノ基およびこれらの1種以上を有するアルキル基もしくはアリール基の中から選ばれ、
a、bおよびcは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4であり、
[Mは、プロトン、カルベニウムイオン、トロピリウムイオン、フェロセニウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、オキソニウムイオン、シリリウムイオン、アルカリ金属イオンおよびホスホニウムイオンの中から選ばれる)
で示される非配位性イオン含有化合物(a−1)と微粒子状担体(a−2)を接触させて得られるものであり、(D)炭化水素が下記(I)〜(III)、
(I)流動パラフィン、プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状水素添加ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリスチレン、石油樹脂および液状アタクティックポリプロピレンから選ばれる、30℃における動粘度が5.0mm/s以上の液体状炭化水素、
(II)黄色ワセリン、白色ワセリン、石油ワックス、ポリスチレン、ポリイソブチレン、水素添加ポリブタジエンおよびエチレン・プロピレン共重合体エラストマーから選ばれる、結晶性オレフィン重合体以外の固体状炭化水素、
(III)結晶性オレフィン重合体、
からなる群から選ばれる少なくとも1種であるオレフィン重合用触媒成分。
【請求項13】
請求項11または12に記載のオレフィン重合用触媒成分および(C)有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機亜鉛化合物および有機マグネシウム化合物から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物からなるオレフィン重合用触媒。
【請求項14】
請求項13に記載のオレフィン重合用触媒によりオレフィンの少なくとも1種を重合してオレフィン重合体を製造するオレフィン重合体の製造方法。
【請求項15】
プロピレンを単独重合するかもしくはプロピレンと他のオレフィンの少なくとも1種を共重合して、重量平均分子量が50,000以上であるプロピレン重合体を製造する、請求項14記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項16】
(A)非配位性イオン含有化合物が微粒子担体に化学結合により結合した助触媒成分および(B)メタロセン化合物からなるオレフィン重合用触媒成分を、(D)炭化水素中で保存する方法であって、(A)が下記一般式(1)
[M(R(R(R(R−L)・[M (1)
(式中、Mはホウ素またはアルミニウムであり、
、RおよびRは、それぞれ、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基であり、これらは互いに同一でも異なってもよく、
はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、
Lはシリル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ホスフィノ基およびこれらの1種以上を有するアルキル基もしくはアリール基の中から選ばれ、
a、bおよびcは0または1〜3の整数、dは1〜4の整数であり、かつa+b+c+d=4であり、
[Mは、プロトン、カルベニウムイオン、トロピリウムイオン、フェロセニウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、オキソニウムイオン、シリリウムイオン、アルカリ金属イオンおよびホスホニウムイオンの中から選ばれる)
で示される非配位性イオン含有化合物(a−1)と微粒子状担体(a−2)を接触させて得られるものであり、(D)炭化水素が下記(I)〜(III)、
(I)流動パラフィン、プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状水素添加ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリスチレン、石油樹脂および液状アタクティックポリプロピレンから選ばれる、30℃における動粘度が5.0mm/s以上の液体状炭化水素、
(II)黄色ワセリン、白色ワセリン、石油ワックス、ポリスチレン、ポリイソブチレン、水素添加ポリブタジエンおよびエチレン・プロピレン共重合体エラストマーから選ばれる、結晶性オレフィン重合体以外の固体状炭化水素、
(III−2)ポリオレフィンワックス、
からなる群から選ばれる少なくとも1種であるオレフィン重合用触媒成分の保存方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−186718(P2007−186718A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106497(P2007−106497)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【分割の表示】特願2002−552025(P2002−552025)の分割
【原出願日】平成13年12月19日(2001.12.19)
【出願人】(597021842)サンアロマー株式会社 (27)
【Fターム(参考)】