説明

オレフィン重合用触媒及びそれを用いたオレフィンの重合方法

【課題】オレフィン重合用メタロセン触媒の調製において、環境負荷が大きい芳香族溶媒を用いる必要がなく、代わりに飽和脂肪族炭化水素溶媒を用いても均一な触媒溶液となるような高活性のオレフィン重合用触媒成分を含有してなる、良好な重合性能を有するオレフィン重合用触媒、及びそれを用いたオレフィンの重合方法を提供する。
【解決手段】下記の成分(A)、(B)、(C)及び(D)からなるオレフィン重合用触媒などを提供した。
成分(A):メタロセン錯体
成分(B):有機アルミニウム化合物
成分(C):イオン性有機ホウ素化合物と下記一般式(1)で表されるアミン化合物を接触させて得られる化合物
N(R) ・・・(1)
成分(D):下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される不飽和炭化水素化合物
C=CR ・・・(2)
C≡CR ・・・(3)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合用触媒及びそれを用いたオレフィンの重合方法に関し、更に詳しくは、オレフィン重合用メタロセン触媒の調製において、環境負荷が大きい芳香族溶媒を用いる必要がなく、代わりに飽和脂肪族炭化水素溶媒を用いても均一な触媒溶液となるような高活性のオレフィン重合用触媒成分を含有してなる、良好な重合性能を有するオレフィン重合用触媒、及びそれを用いたオレフィンの重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン重合用触媒成分として、メタロセン錯体化合物などの遷移金属錯体とN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキスペンタフルオロフェニルボレートに代表される特定のイオン性有機ホウ素化合物とを組み合わせたメタロセン触媒を使用することについては、既に数多くの報告がある。ここで用いられるイオン性有機ホウ素化合物は、炭化水素溶媒に対する溶解度が低く、通常は、トルエン等の芳香族溶媒に溶解させて使用されている。このため、触媒成分を溶解させるために使用した溶媒が、重合により得られたオレフィンポリマー中に残存する可能性があった。しかも、トルエン等の芳香族溶媒は、臭気や毒性等の観点から、近年では、芳香族系以外の脂肪族炭化水素溶媒等への切り替えが要望されている。
【0003】
この課題を克服するために、種々の観点から研究がなされ、数多くの試みが提案されている。
例えば、イオン性有機ホウ素化合物の溶解度を向上させるための試みとしては、次の(a)〜(c)に挙げるイオン性ホウ素化合物に嵩高い置換基を導入する技術があり、また、それ以外の試みとしては、(d)に挙げる触媒調整技術や、(e)に挙げる重合活性の向上を中心とした触媒性能の改良技術がある。
(a):イオン性有機ホウ素化合物のアニオン分子側に嵩高い置換基を入れる技術(例えば、特許文献1〜4参照。)
(b):イオン性ホウ素化合物のカチオン分子側に嵩高い置換基を入れる技術(例えば、特許文献5、6参照。)
(c):イオン性有機ホウ素化合物自体の構造を改良する技術(例えば、特許文献7参照。)
(d):触媒調整時に特定量のα−オレフィンを共存させて、イオン性有機ホウ素化合物の溶解度を改善する技術(例えば、特許文献8、9参照。)
(e):シングルサイト触媒系に電子供与性化合物やルイス塩基化合物を添加して、触媒性能を改善する技術(例えば、特許文献10〜14参照。)
【0004】
しかしながら、これらの技術は、いずれも何らかの問題点があって十分に満足のいくものではなく、例えば、(a)〜(c)の技術においては、イオン性有機ホウ素化合物が複雑となるので、工業的に有利なものではないという問題点があった。
また、(d)の技術の場合には、脂肪族系溶媒でも溶解可能な程度にまでは、溶解度が改善されていないという問題点があり、(e)の技術の場合には、いまだ十分に所望とする目的を達成したものとはいえず、しかも、特許文献10〜14には、電子供与性化合物やルイス塩基化合物は、シングルサイト触媒へ添加する一成分として記載されているのみであって、イオン性有機ホウ素化合物の溶解度に対する改良効果については、何ら記載されていない。
【0005】
こうした状況下に、臭気や毒性等の環境面の観点から、オレフィン重合用メタロセン触媒の調製において、環境負荷が大きい芳香族溶媒を用いる必要がなく、代わりに飽和脂肪族炭化水素溶媒を用いても均一な触媒溶液となるような高活性のオレフィン重合用触媒成分を含有してなる、良好な重合性能を有するオレフィン重合用触媒、及びそれを用いたオレフィンの重合方法の早期開発が強く望まれている。
【特許文献1】特表2002−505353号公報
【特許文献2】国際公開WO 03/051892号公報
【特許文献3】米国公開2004/0254065号公報
【特許文献4】米国特許第5502017号公報
【特許文献5】特表2000−507157号公報
【特許文献6】特表2003−512515号公報
【特許文献7】特表2004−513193号公報
【特許文献8】特表2001−525002号公報
【特許文献9】特表2001−514271号公報
【特許文献10】特開平7−90009号公報
【特許文献11】特開平7−157509号公報
【特許文献12】特開平9−291107号公報
【特許文献13】特開平11−152306号公報
【特許文献14】特開2000−281707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、オレフィン重合用メタロセン触媒の調製において、環境負荷が大きい芳香族溶媒を用いる必要がなく、代わりに飽和脂肪族炭化水素溶媒を用いても均一な触媒溶液となるような高活性のオレフィン重合用触媒成分を含有してなる、良好な重合性能を有するオレフィン重合用触媒、及びそれを用いたオレフィンの重合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、オレフィン重合用メタロセン触媒の調製において、イオン性有機ホウ素化合物に特定構造のアミン化合物を混合することにより、脂肪族炭化水素溶媒にも可溶となり、さらに特定の不飽和炭化水素化合物を共存させることにより、良好なオレフィン重合活性を有するオレフィン重合用触媒が製造可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の成分(A)、(B)、(C)及び(D)からなるオレフィン重合用触媒が提供される。
成分(A):メタロセン錯体
成分(B):有機アルミニウム化合物
成分(C):イオン性有機ホウ素化合物(x)と下記一般式(1)で表されるアミン化合物(y)を接触させて得られる化合物
N(R) ・・・(1)
(式中、R、R、Rは、それぞれ同一でも異なっていても良く、水素、又は炭素数1〜40の、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ハロゲン化アルキル基含有炭化水素基、アルコキシ基含有炭化水素基、フェノキシ基含有炭化水素基、シリル基含有炭化水素基、シロキシ基含有炭化水素基若しくはアミノ基含有炭化水素基を示す。但し、R、R及びRに含まれる炭素数の合計は、10〜100である。)
成分(D):下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される不飽和炭化水素化合物
C=CR ・・・(2)
C≡CR ・・・(3)
(式中、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ同一でも異なっていても良く、また、異なるそれぞれが炭化水素基で結合し環状構造を形成していても良く、それぞれが、水素若しくはハロゲン、又は炭素数1〜40の、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ハロゲン化アルキル基含有炭化水素基、アルコキシ基含有炭化水素基、フェノキシ基含有炭化水素基、シリル基、シリル基含有炭化水素基、シロキシ基含有炭化水素基若しくはアミノ基含有炭化水素基を示す。)
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、イオン性有機ホウ素化合物(x)は、下記一般式(4)で表されることを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
[A][B(R10111213)]n ・・・・(4)
(式中、Aはアルキル置換アンモニウム、アリール置換ホスホニウム又はカルボカチオン、フェロセニウムカチオン若しくは価数+1〜+4の金属カチオンであり、R10〜R13はそれぞれ同一でも異なっていても良く、炭素数1〜14のハロゲン化アリール基又はハロゲン化アルキル基を含む炭化水素基、nは1〜4の整数を示す。)
【0010】
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、成分(C)は、イオン性有機ホウ素化合物(x)とアミン化合物(y)のうち少なくとも一方を、予め炭化水素溶媒で希釈してから接触させて得られることを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
【0011】
本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、成分(C)は、ノルマルヘプタンに対する飽和溶解度が、0.1mmol/Lより大きいことを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
【0012】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、成分(D)は、R、R、R、又はRのうち少なくとも1つがシリル基、あるいは少なくとも2つが炭化水素基である不飽和炭化水素化合物であることを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
【0013】
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、成分(D)は、R、又はRの少なくとも1つが3級炭化水素基、あるいは3個のアルキル基で置換されたシリル基である不飽和炭化水素化合物であることを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
【0014】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、成分(D)の含有割合は、成分(A)1モルに対して0.5〜300モルであることを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
【0015】
さらに、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明に係るオレフィン重合用触媒を用いることを特徴とするオレフィンの重合方法が提供される。
【0016】
さらにまた、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、オレフィン重合用触媒を脂肪族炭化水素溶媒に溶解させて用いることを特徴とするオレフィンの重合方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、脂肪族炭化水素溶媒に対して可溶であって、かつ保存しても安定である、良好なオレフィン重合活性を有するオレフィン重合用触媒が得られる。そして、このオレフィン重合用触媒を用いれば、トルエン等に代表される芳香族系溶媒を用いることなく、メタロセン触媒の均一溶液が得られるので、重合プロセス内への芳香族系溶媒の混入を回避でき、その結果、芳香族溶媒フリーのポリオレフィンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、メタロセン錯体[以下、成分(A)ともいう]、有機アルミニウム化合物[以下、成分(B)ともいう]、イオン性有機ホウ素化合物と特定のアミン化合物を接触させて得られる化合物[以下、成分(C)ともいう]及び特定の不飽和炭化水素化合物[以下、成分(D)ともいう]からなるオレフィン重合用触媒、およびその触媒を用いたオレフィンの重合方法である。以下、本発明について、項目毎に詳細に説明する。
【0019】
1.メタロセン錯体[成分(A)]
メタロセン錯体化合物は、例えば特開昭58−19309号、同59−95292号、同59−23011号、同60−35006号、同60−35007号、同60−35008号、同60−35009号、同61−130314号、特開平3−163088号公報等で公知である。これらメタロセン錯体化合物は、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートにより、活性化が可能であり、よく知られている。
本発明は、助触媒性能を有することが公知であるイオン性有機ホウ素化合物の溶解性を改良したものであるので、オレフィン重合用触媒として公知である全てのメタロセン錯体化合物に対して適用できる。
【0020】
本発明では、広くメタロセン錯体化合物に適用できるが、好ましくは、メタロセン錯体化合物[成分(A)]は、共役五員環配位子を有する周期表第4〜6族の遷移金属化合物であり、下記一般式(5)、(6)、(7)又は(8)で表される化合物である。
【0021】
【化1】

【0022】
(式中、A及びA’は、同一又は異なる共役五員環構造を有する配位子を、Qは、2つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結合性基を、Mは、周期表第4〜6族の遷移金属原子を、Zは、Mと結合している窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子又はイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基を、Q’は、共役五員環配位子の任意の位置とZを架橋する結合性基を、そしてX及びYは、Mと結合した水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を、それぞれ示す。)
【0023】
A及びA’は、共役五員環配位子であり、これらは、同一化合物内において同一でも異なっていてもよいことは前記したとおりである。この共役五員環配位子の典型例としては、共役炭素五員環配位子、すなわちシクロペンタジエニル基を挙げることができる。このシクロペンタジエニル基は、水素原子を4個有するものであってもよく、また、その誘導体、すなわちその水素原子のいくつかが置換基で置換されているものであってもよい。
【0024】
この置換基の一つの具体例は、炭素数1〜20、好ましくは1〜12の炭化水素基であるが、この炭化水素基は、一価の基としてシクロペンタジエニル基と結合していてもよく、また、これが複数存在するときにそのうちの2個がそれぞれ他端(ω−端)で結合してシクロペンタジエニル基の一部とともに環を形成していてもよい。後者の代表例として、2個の置換基がそれぞれのω−端で結合して当該シクロペンタジエニル基中の隣接した2個の炭素原子を共有して縮合六員環を形成しているもの、すなわちインデニル基が挙げられる。また、縮合六員環がシクロペンタジエニル基の共役位置に2個結合したフルオレニル基、及び縮合七員環を形成しているアズレニル基が挙げられる。
従って、共役五員環配位子の典型例は、置換又は非置換のシクロペンタジエニル基、インデニル基又はフルオレニル基、アズレニル基ということができる。
【0025】
これらシクロペンタジエニル基の置換基としては、前記の炭素数1〜20、好ましくは1〜12の炭化水素基の他に、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素)、アルコキシ基(例えばC〜C12のもの)、ケイ素含有炭化水素基(例えばケイ素原子を−Si(R14)(R15)(R16)の形で含む炭素数1〜24程度の基)、リン含有炭化水素基(例えば、リン原子を−P(R14)(R15)の形で含む炭素数1〜18程度の基)、窒素含有炭化水素基(例えば、窒素原子を−N(R14)(R15)の形で含む炭素数1〜18程度の基)あるいはホウ素含有炭化水素基(例えば、ホウ素原子を−B(R14)(R15)の形で含む炭素数1〜18程度の基)である。これらの置換基が複数ある場合、それぞれの置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0026】
Qは、二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基を、Q’は共役五員環配位子の任意の位置とZ基を架橋する結合性基を表す。
詳しくは、Q及びQ’は、次の(イ)〜(ハ)に示す置換基であるが、その中でも、好ましいものは、アルキレン基及びシリレン基である。
【0027】
(イ):メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、フェニルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキシレン基等の炭素数1〜20のアルキレン基、
(ロ):シリレン基、ジメチルシリレン基、フェニルメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基等のシリレン基、
(ハ):ゲルマニウム、リン、窒素、ホウ素あるいはアルミニウムを含む炭化水素基、具体的には(CHGe基、(CGe基、(CH)P基、(C)P基、(C)N基、(C)N基、(CH)B基、(C)B基、(C)B基、(C)Al基、(CHO)Al基等
【0028】
Zは、Mと結合している窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子又はイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基である。Zとして好ましいものの具体例としては、酸素(−O−)、イオウ(−S−)、炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜20、好ましくは1〜12のチオアルコキシ基、炭素数1〜40、好ましくは1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜40、好ましくは1〜18の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜40、好ましくは1〜18のリン含有炭化水素基、水素原子、塩素、臭素、炭素数1〜20の炭化水素基である。
【0029】
X及びYは、各々水素、ハロゲン原子、炭素数1〜20、好ましくは1〜10の炭化水素基、炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜20、好ましくは1〜12のリン含有炭化水素基(具体的には、例えばジフェニルホスフィン基)、あるいは炭素数1〜20、好ましくは1〜12のケイ素含有炭化水素基(具体的には、例えばトリメチルシリル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基)である。XとYとは同一であっても異なってもよい。これらのうちハロゲン原子、炭化水素基(特に炭素数1〜8のもの)及びアミノ基が好ましい。
【0030】
従って、本発明によるオレフィン重合用触媒において、成分(A)として好ましい一般式(5)、(6)、(7)又は(8)で表される化合物のうち、特に好ましいものは、下記内容のそれぞれの置換基を有するものである。
A、A’=シクロペンタジエニル、n−ブチル−シクロペンタジエニル、ジメチル−シクロペンタジエニル、ジエチル−シクロペンタジエニル、エチル−n−ブチル−シクロペンタジエニル、エチル−メチル−シクロペンタジエニル、n−ブチル−メチル−シクロペンタジエニル、インデニル、2−メチル−インデニル、2−メチル−4−フェニルインデニル、テトラヒドロインデニル、2−メチル−テトラヒドロインデニル、2−メチル−ベンゾインデニル、4−ヒドロアズレニル、2,4−ジメチルヘキサヒドロアズレニル、2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル、2−メチル−4−フェニル−ヘキサヒドロアズレニル(上記において、置換基の位置としては、1位及び又は3位が好ましい。)、
Q、Q’=エチレン、ジメチルシリレン、イソプロピリデン、
Z=t−ブチルアミド、フェニルアミド、シクロヘキシルアミド、
X、Y=塩素原子、メチル、ジエチルアミノ。
【0031】
以下、Mがジルコニウム原子の場合について、具体的に好ましい化合物を例示(ジルコニウムは、Zrと略記、以下同じ)する。
(イ)一般式(5)で表される化合物、すなわち結合性基Qを有せず、共役五員環配位子を2個有するジルコニウム化合物:
(1)ビス(シクロペンタジエニル)Zrジクロリド、
(2)ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)Zrジクロリド、
(3)ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)Zrジクロリド、
(4)ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)Zrジクロリド、
(5)ビス(エチル−n−ブチルシクロペンタジエニル)Zrジクロリド、
【0032】
(6)(シクロペンタジエニル)(n−ブチルシクロペンタジエニル)Zrジクロリド、
(7)ビス(インデニル)Zrジクロリド、
(8)ビス(テトラヒドロインデニル)Zrジクロリド、
(9)ビス(2−メチルインデニル)Zrジクロリド、
(10)ビス(2−メチルテトラヒドロインデニル)Zrジクロリド、
【0033】
(11)ビス(フルオレニル)Zrジクロリド、
(12)ビス(シクロペンタジエニル)Zrモノクロリドモノハイドライド、
(13)ビス(シクロペンタジエニル)メチルZrモノクロリド、
(14)ビス(シクロペンタジエニル)エチルZrモノクロリド、
(15)ビス(シクロペンタジエニル)フェニルZrモノクロリド、
【0034】
(16)ビス(シクロペンタジエニル)Zrジメチル、
(17)ビス(シクロペンタジエニル)Zrジフェニル、
(18)ビス(シクロペンタジエニル)Zrジネオペンチル、
(19)ビス(シクロペンタジエニル)Zrジハイドライド、
(20)(シクロペンタジエニル)(インデニル)Zrジクロリド、
【0035】
(21)(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)Zrジクロリド、
(22)(シクロペンタジエニル)(アズレニル)Zrジクロリド等、
が好ましく例示される。
【0036】
(ロ)一般式(6)で表される化合物、すなわち結合性基Q、例えば、
(ロ−1)Q=アルキレン基のジルコニウム化合物:
(1)メチレンビス(インデニル)Zrジクロリド、
(2)エチレンビス(インデニル)Zrジクロリド、
(3)エチレンビス(インデニル)Zrモノメトキシドモノクロリド、
(4)エチレンビス(インデニル)Zrジエトキシド、
(5)エチレンビス(インデニル)Zrジメチル、
【0037】
(6)エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)Zrジクロリド、
(7)エチレンビス(2−エチルインデニル)Zrジクロリド、
(8)エチレンビス(2,4−ジメチルインデニル)Zrジクロリド、
(9)エチレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルシクロペンタジエニル)Zrジクロリド、
(10)エチレンビス(4−インデニル)Zrジクロリド、
【0038】
(11)エチレンビス(4−フェニルインデニル)Zrジクロリド、
(12)イソプロピリデンビス(インデニル)Zrジクロリド、
(13)イソプロピリデン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルペンタジエニル)Zrジクロリド、
(14)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)Zrジクロリド、
(15)イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)Zrジクロリド、
【0039】
(16)イソプロピリデン(2−メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)Zrジクロリド、
(17)イソプロピリデン(2,5−ジメチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)Zrジクロリド、
(18)エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)Zrジクロリド、
(19)ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジエチルシクロペンタジエニル)Zrジクロリド、
(20)シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)Zrジクロリド、
【0040】
(21)ジメチルメチレンビス[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]Zrジクロリド、
(22)トリメチレンビス[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]Zrジクロリド、
が好ましく例示される。
【0041】
(ロ−2)Q=シリレン基の化合物:
(1)ジメチルシリレンビス(インデニル)Zrジクロリド、
(2)ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)Zrジクロリド、
(3)ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチルインデニル)Zrジクロリド、
(4)ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)Zrジクロリド、
(5)ジメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルシクロペンタジエニル)Zrジクロリド、
【0042】
(6)ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)Zrジクロリド、
(7)ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)Zrジクロリド、
(8)ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,4−ジメチル−5,6,7−トリヒドロ
−4−シラインデニル)Zrジクロリド、
(9)ジメチルシリレンビス[4−(2−フェニルインデニル)]Zrジクロリド、
(10)ジメチルシリレンビス[4−(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)]Zrジクロリド、
【0043】
(11)フェニルメチルシリレンビス(インデニル)Zrジクロリド、
(12)フェニルメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)Zrジクロリド、
(13)フェニルメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3’,5’−ジメチルシクロペンタジエニル)Zrジクロリド、
(14)テトラメチルジシリレンビス(インデニル)Zrジクロリド、
(15)テトラメチルジシリレン(3−メチルシクロペンタジエニル)(インデニル)Zrジクロリド、
【0044】
(16)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)Zrジクロリド、
(17)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)Zrジクロリド、
(18)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)Zrジクロリド、
(19)ジメチルシリレン(2,5−ジメチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)Zrジクロリド、
(20)ジエチルシリレン(2−メチルシクロペンタジエニル)(2’,7’−ジ−t−ブチルフルオレニル)Zrジクロリド、
【0045】
(21)ジメチルシリレン(ジエチルシクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)Zrジクロリド、
(22)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)]Zrジクロリド、
(23)ジメチルシリレンビス[2−i−プロピル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]Zrジクロリド、
(24)ジメチルシリレンビス[2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]Zrジクロリド、
(25)ジメチルシリレンビス[2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]Zrジクロリド、
【0046】
(26)ジメチルシリレンビス[2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル]Zrジクロリド、
(27)ジメチルシリレンビス[2−メチル−4−(2’,6’−ジメチル−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}Zrジクロリド、
(28)ジメチルシリレンビス[2−メチル−4−(1−ナフチル)−4H−アズレニル]Zrジクロリド、
(29)ジメチルシリレンビス[2−i−プロピル−4−(1−ナフチル)−4H−アズレニル]Zrジクロリド、
(30)ジメチルシリレンビス[2−エチル−4−(2−ナフチル)−4H−アズレニル]Zrジクロリド、
【0047】
(31)ジメチルシリレンビス[2−i−プロピル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−アズレニル]Zrジクロリド、
(32)ジメチルシリレンビス[2−エチル−4−(9−アントリル)−4H−アズレニル]Zrジクロリド、
(33)ジメチルシリレン[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル][2−メチル−4−(4−ビフェニリル)インデニル]Zrジクロリド、
(34)ジメチルシリレンビス[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−5,6,7,8−テトラヒドロアズレニル]Zrジクロリド等、
が好ましく例示される。
【0048】
(ロ−3)Q=ゲルマニウム、リン、窒素、ホウ素あるいはアルミニウムを含む炭化水素基の化合物:
(1)ジメチルゲルミレンビス(インデニル)Zrジクロリド、
(2)ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)Zrジクロリド、
(3)メチルアルミニウムビス(インデニル)Zrジクロリド、
(4)フェニルアルミニウムビス(インデニル)Zrジクロリド、
(5)フェニルホスフィノビス(インデニル)Zrジクロリド、
【0049】
(6)エチルホラノビス(インデニル)Zrジクロリド、
(7)フェニルアミノビス(インデニル)Zrジクロリド、
(8)フェニルアミノ(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)Zrジクロリド、
(9)ジメチルゲルミレンビス[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]Zrジクロリド、
が好ましく例示される。
【0050】
(ハ)一般式(7)で表される化合物、すなわち結合性基Q’を有せず、共役五員環配位子を1個有するジルコニウム化合物:
(1)ペンタメチルシクロペンタジエニル−ビス(フェニル)アミドZrジクロリド、
(2)インデニル−ビス(フェニル)アミドZrジクロリド、
(3)ペンタメチルシクロペンタジエニル−ビス(トリメチルシリル)アミドZrジクロリド、
(4)ペンタメチルシクロペンタジエニルフェノキシZrジクロリド、
(5)シクロペンタジエニルZrトリクロリド、
【0051】
(6)ペンタメチルシクロペンタジエニルZrトリクロリド、
(7)シクロペンタジエニルZrベンジルジクロリド、
(8)シクロペンタジエニルZrジクロロハイドライド
(9)シクロペンタジエニルZrトリエトキシド等、
が好ましく例示される。
【0052】
(ニ)一般式(8)で表される化合物、すなわち結合性基Q’で架橋した共役五員環配位子を一個有するジルコニウム化合物:
(1)ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)フェニルアミドZrジクロリド、
(2)ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)−t−ブチルアミドZrジクロリド、
(3)ジメチルシリレン(インデニル)シクロヘキシルアミドZrジクロリド、
(4)ジメチルシリレン(テトラヒドロインデニル)デシルアミドZrジクロリド、
(5)ジメチルシリレン(テトラヒドロインデニル)(トリメチルシリルアミド)Zrジクロリド、
(6)ジメチルゲルミレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(フェニル)アミドZrジクロリド等、
が好ましく例示される。
【0053】
以下、例示は省略するが、Mがハフニウム、チタニウム、クロミウム等周期律表第4〜6族の遷移金属である場合も、同様に好ましいメタロセン錯体化合物として挙げられる。特に好ましいのは、Mがチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムの場合である。
【0054】
2.有機アルミニウム化合物[成分(B)]
有機アルミニウム化合物としては、通常オレフィン重合に使われる公知のものが広く使用できる。
有機アルミニウムは、下記一般式(9)〜(12)で示される。
【0055】
【化2】

【0056】
(式(9)中、R17は、炭素数1〜20の炭化水素基、Xは、水素、ハロゲン、アルコキシ基、フェノキシ基、シロキシ基あるいはアミノ基、iは、0≦i<3の数を示す。但し、Xが水素の場合は、iは0<i<3である。また、一般式(10)、(11)及び(12)中、R18、R19、R20、R21、R22は、水素原子又は炭素数1〜20、好ましくは1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。また、pは0〜40、好ましくは2〜30の整数を示す。一般式(10)中、R23は、水素、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基、ハロゲン、アルコキシ基、フェノキシ基、シロキシ基あるいはアミノ基を示す。)
【0057】
一般式(9)の具体例は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、又はジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム、又はジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシド等のアルコキシ基含有アルキルアルミニウム、又はジメチルアルミニウムフェノキシド等のフェノキシ基含有アルミニウム、又は、ジメチルアルミニウムトリメチルシロキシド、ジメチルアルミニウムトリフェニルシロキシド等のシロキシ基含有アルミニウム、又は(ジエチルアミノ)ジエチルアルミニウム、ジ(ジエチルアミノ)エチルアルミニウム等のアミノ基含有アルキルアルミニウム、又はジエチルアルミニウムハライドなどのハライド含有アルキルアルミニウムである。
【0058】
これらのうち、特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。さらに好ましくは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムである。
【0059】
一般式(10)線状のアルミノキサン、一般式(11)環状のアルミノキサン、および一般式(12)ボロン酸アルミニウム化合物中のR18、R19、R20、R21、R22の好ましい具体例としては、それぞれ、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基,イソブチル基、ノルマルヘキシル基等のアルキル基が挙げられる。さらに好ましくは、メチル基、エチル基、イソブチル基である。
【0060】
一般式(12)ボロン酸アルミニウム化合物中のR23の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基,イソブチル基、ノルマルヘキシル基、フェニル基等のアルキル基、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基、クロロ基、ブロム基、フルオロ基等のハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基が挙げられるが、好ましくは、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、フルオロ基である。
【0061】
これらの有機アルミニウム化合物の中で、一般式(9)で示される化合物が、成分(C)の反応性を阻害しないという点で好ましい。また、異なる種類の有機アルミニウム化合物を成分(B)として同時に使用することも出来るが、その場合も、一般式(9)で示される化合物を組み合わせることが好ましい。
【0062】
3.成分(C)
成分(C)として用いられる化合物は、イオン性有機ホウ素化合物(x)と後述のアミン化合物(y)を接触させて得られる。
【0063】
(3−1)イオン性有機ホウ素化合物(x)
本発明で用いられるイオン性有機ホウ素化合物(x)は、前述したメタロセン錯体化合物[成分(A)]をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物である。このようなイオン性化合物としては、金属カチオン、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオンなどの陽イオンと、テトラフェニルボレート[B(C]、テトラキス(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート[B(C]、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[B(C]等の陰イオンがイオン対を形成している化合物が挙げられる。
【0064】
有機ホウ素化合物には、イオン対の一部として有機ホウ素化合物が存在しているイオン性化合物も含む。
有機ホウ素化合物の具体例としては、下記一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
[A][B(R10111213)]n・・・(4)
(式中、Aは、アルキル置換アンモニウム、アリール置換ホスホニウム、又はカルボカチオン、フェロセニウムカチオン若しくは価数+1〜+4の金属カチオンであり、R10〜R13は、それぞれ同一でも異なっていても良く、炭素数1〜14のハロゲン化アリール基又はハロゲン化アルキル基を含む炭化水素基を示し、nは、1〜4の整数を示す。)
【0065】
一般式(4)のR10〜R13炭化水素基としては、ペンタフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基が挙げられる。
また、Aとしては、トリアルキル置換アンモニウム、N,N−ジアルキルアニリニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアリールホスホニウム、トリフェニルカルボニウム、フェロセニウム、アルキル置換フェロセニウム、銀イオン、リチウムイオン、ナトリウムイオンなどが挙げられる。
【0066】
好ましいイオン性有機ホウ素化合物として、陰イオン側がテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[B(C]であって、その例示される化合物は、以下のとおりである。
(1)トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
(2)トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
(3)トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
(4)N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
(5)N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
【0067】
(6)ジヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
(7)トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
(8)トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
(9)トリ(3,5−ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
(10)トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
【0068】
(11)フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
(12)1,1’―ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
(13)銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
(14)リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
(15)ナトリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
【0069】
なお、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[B(C]は、テトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート[B(CHF]、テトラキス(2,4,6−トリフルオロフェニル)ボレート[B(C]、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート[B((CF]に、変更することができる。
【0070】
これらの化合物の中で、さらに好ましい組み合わせは、アンモニウム及びトリフェニルカルボニウムとテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが組み合わされたイオン対であり、最も好ましいのは、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0071】
(3−2)アミン化合物(y)
本発明で用いられるアミン化合物(y)は、下記一般式(1)で表される化合物である。
N(R)・・・(1)
(式中、R,R,Rは、それぞれ同一でも異なっていても良く、水素、又は炭素数1〜40の炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ハロゲン化アルキル基含有炭化水素基、アルコキシ基含有炭化水素基、フェノキシ基含有炭化水素基、シリル基含有炭化水素基、シロキシ基含有炭化水素基若しくはアミノ基含有炭化水素基を示し、R,R,Rに含まれる炭素数の合計が10〜100である。)
【0072】
炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状などいずれの形態の炭化水素基も用いることができる。分岐を有する場合、分岐鎖側の炭素数は、1〜20であり、好ましくは1〜10である。また、炭化水素基の末端又は内部に、二重結合及び三重結合のような不飽和炭化水素結合を有していてもよい。
【0073】
また、炭化水素基に含有される分岐や不飽和結合の位置は、特に限定されるものではないが、アミン化合物の反応性への影響を少なくする必要があるため、窒素に結合した炭素を1位とした場合、2位以降の炭素上に導入されていることが好ましく、さらには4位以降の炭素上に導入されていることが好ましい。
【0074】
直鎖状の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ステアリル基、n−オクタデシル基などが挙げられる。また、分岐状の炭化水素基としては、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、2−エチルヘキシル基、2−エチルデシル基などが挙げられる。さらに、不飽和炭化水素結合を有する炭化水素基としては、アリル基、2−ブテニル基、4−オクテニル基、4−デセニル基、オレイル基、エチニル基、4−オクチニル基などが挙げられる。環状の炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、2,6−ジメチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基、2−シクロヘキセニル基、2−シクロオクテニル基などが挙げられる。
【0075】
不飽和結合を含有する炭化水素基及び分岐を有する炭化水素基は、脂肪族溶媒に対する溶解度を向上させる効果がある。しかしながら、重合活性への影響が少ないという観点からは、直鎖の飽和炭化水素基が好ましい。
【0076】
アミン化合物(y)としては、R、R、Rのうち水素を2つ有する1級アミン化合物、R、R、Rのうち水素を1つ有する2級アミン化合物、R、R、Rに水素を含まない3級アミン化合物のいずれも使用可能である。
【0077】
1級アミン及び2級アミンを用いる場合、アミン化合物に含まれる炭素数の合計は、10〜100個、好ましくは15〜80個、さらに好ましくは18〜60個である。3級アミンを用いる場合、アミン化合物に含まれる炭素数の合計は、好ましくは25〜80個、さらに好ましくは30〜60個である。1級アミン及び2級アミン化合物の方が好ましく、さらに好ましいのは、2級アミン化合物である。
【0078】
1級アミン化合物や2級アミン化合物は、3級アミン化合物に比べ、イオン性有機ホウ素化合物の溶解促進効果が大きい。この理由は、明確でないが、窒素−水素結合部位の方が、窒素−炭素結合部位よりも立体障害が小さく、イオン性有機ホウ素化合物に対する窒素部位の配位力が向上していることが考えられる。このことにより、イオン性有機ホウ素化合物を溶解しやすい状態に変化させているものと考えられる。
【0079】
1級アミン化合物の好ましい具体例としては、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−ヘキシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、2−エチルデシルアミン等が挙げられる。
また、2級アミン化合物の具体例としては、N−エチル−n−オクチルアミン、N−メチル−n−デシルアミン、N−メチル−n−ドデシルアミン、N−メチル−n−オクタデシルアミン、ジ−n−ドデシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、N−イソブチル−デシルアミン、ジ(1,2−ジメチルプロピル)アミン、N−アリル−n−ドデシルアミン等が挙げられる。
さらに、3級アミン化合物の具体例としては、N,N−ジーデシル−n−ヘキシルアミン、N,N−ジ(n−デシル)−2−ヘキシルアミン、N,N−ジ−ドデシル−エチルアミン、N,N−ジ(n−オクタデシル)―メチルアミン、トリドデシルアミン、トリオクタデシルアミン、N−アリル−ジ(n−ドデシル)アミン等が挙げられる。
【0080】
炭化水素基に含有されても良い置換基としては、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、シリル基、シロキシ基、アミノ基が挙げられる。ハロゲンの具体例としては、塩素、臭素、フッ素が挙げられる。好ましくは、フッ素である。ハロゲンをフッ素としたハロゲン化アルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基、1,2−ジフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基などが挙げられる。ハロゲン部位が、塩素でも臭素でも使用できるが、フッ素化アルキル基が好ましい。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基などが挙げられる。フェノキシ基の具体例としては、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、2,4−ジメチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェノキシ基などが挙げられる。シリル基の具体例としては、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、ジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる。シロキシ基の具体例としては、トリメチルシロキシ基、t−ブチル−ジメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基などが挙げられる。アミノ基の具体例としては、N,N−ジメチルアミノ基、N−メチル−N−アリルアミノ基、N,N−ジアリルアミノ基、N−メチル−N−イソプロピルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基などが挙げられる。これらの中で、炭化水素基に含有されても良い置換基として好ましいのは、フッ素、フッ素化アルキル基、シリル基、アミノ基であり、さらに好ましくは、フッ素、フッ素化アルキル基、シリル基である。しかしながら、最も好ましいのは、これらの置換基を含有しない炭化水素基である。
【0081】
本発明においては、特に炭素数が多い置換基を有しているアミン化合物(y)が、イオン対からなる化合物であるために極性に乏しい脂肪族溶媒に対してはほとんど溶解しないイオン性有機ホウ素化合物(x)に対し、或いは後述する特定構造の不飽和炭化水素化合物[成分(D)]に対して、効果的である。この理由としては、いまだ十分には解明されていないが、現在のところ、本発明者らは、以下に述べるような作用機構に基づいて、アミン化合物による特有の作用効果が生じているものと推定している。
【0082】
先ず、アミン化合物は、ルイス塩基性を有するため、イオン性有機ホウ素化合物のカチオン部位に対して相互作用を有すると考えられる。このような相互作用は、一般的には溶媒の極性が低いほど強くなる。これは、溶媒和によるイオン対解離の促進作用が無いためである。イオン性有機ホウ素化合物と相互作用を持ったアミン化合物は、そのまま配位子として存在するか、イオン性有機ホウ素化合物のカチオン部位から置換基などを引き抜き、新たなカチオン成分として存在することが考えられる。このような相互作用又は化学変化の結果、イオン性有機ホウ素化合物の電子的な分極が中和され、炭化水素溶媒に対する溶解度が向上したものと考察される。
【0083】
また、本発明では、長鎖の炭化水素基を有するアミン化合物を使用している。この長鎖の炭化水素基は、脂肪族炭化水素溶媒に対する溶解度向上に寄与する。これらの効果の結果として、炭化水素溶媒に対する溶解度を向上させることができたものと考えている。
本発明において性能が優れるアミン化合物は、必ずしも、炭素数が多いだけではないことから、単純に存在していれば良いというものではなく、イオン性有機ホウ素化合物と相互作用した後の状態が重要であると考えられる。
【0084】
本発明の重合触媒においては、特定構造の不飽和炭化水素化合物[成分(D)]が必須成分として含まれている。不飽和炭化水素化合物は、一般的にメタロセン錯体から生成する重合活性種に対して配位する。また、不飽和化合物の種類によりメタロセン錯体の活性種への配位力が変化する。この重合活性種に対する不飽和化合物の配位は、その強さにより重合活性へも影響を与えるが、種々の被毒物から重合活性種を保護する効果も期待される。
【0085】
本発明においては、特定構造の不飽和炭化水素化合物を用いることにより、重合活性が向上する効果が得られている。これは、ホウ素化合物の脂肪族炭化水素溶媒への溶解度促進のために添加する長鎖の炭化水素基を有するアミン化合物の影響から、重合活性種を保護することによるものと考えられる。このため、本発明で用いられる不飽和炭化水素化合物[成分(D)]は、重合活性へはあまり実質的な影響が無い範囲で、重合活性種の保護を実現するため、特定構造を有する化合物を用いる必要がある。
【0086】
4.成分(C)の調製
成分(C)は、イオン性有機ホウ素化合物(x)とアミン化合物(y)を接触させて調製されるが、イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物との接触は、任意の方法で行うことができる。しかし、混合による急激な反応を抑制するという観点から、通常は、少なくとも一方を有機溶媒でスラリー状又は均一溶液状に希釈して用いられる。
スラリー状で希釈する場合、安定したフィードが可能な範囲であれば任意の濃度に希釈することが可能であるが、通常は0.01g/L〜1000g/L、好ましくは、0.1g/L〜100g/Lの範囲で希釈したものが使用される。有機溶媒での希釈により、均一溶液として使用する場合についても、安定したフィードが可能であれば任意の濃度で希釈することが可能であるが、通常は、0.01g/L〜飽和溶液、好ましくは0.1g/L〜飽和溶液で用いられる。
【0087】
希釈に用いる有機溶媒は、不活性炭化水素溶媒が用いられる。不活性炭化水素溶媒として、イソブタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒及びベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒が使用可能であるが、環境への負荷の観点から、脂肪族炭化水素溶媒を用いることが好ましく、さらに好ましくは、飽和脂肪族炭化水素である。具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が用いられる。
【0088】
イオン性有機ホウ素化合物又はその希釈物と、アミン化合物又はその希釈物を混合する場合、反応器中で接触させる方法や配管中で接触させる方法など、任意の方法をとりうるが、好ましくは、撹拌翼等の混合設備が設置してある反応器中で行われる。
【0089】
上記接触時には、アミン化合物(y)は、イオン性有機ホウ素化合物(x)1モルに対して0.1モル〜100モル、好ましくは0.5モル〜20モル、さらに好ましくは0.7モル〜5モルの範囲で使用される。
アミン化合物(y)が0.1モル未満であると、イオン性有機ホウ素化合物(x)の、特に脂肪族溶媒への溶解量が不足する問題が発生し、一方、100モルを越えると、過剰に存在するアミン化合物(y)により、触媒の活性種を被毒し、重合活性が低下するという問題が発生する。
【0090】
接触させるときの温度は、化合物が分解しない範囲で任意の温度で実施可能であるが、通常、−50℃〜200℃、好ましくは−20℃〜150℃、さらに好ましくは−10℃〜100℃の範囲で行われる。
【0091】
イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触物は、保存して使用することができる。保存は、水分が100重量ppm以下に保たれた雰囲気下であれば、長期にわたり可能であるが、好ましくは、水分は10重量ppm以下の雰囲気である。保存は、化合物が反応しない限り、空気、窒素、アルゴンなどの種々の気体雰囲気下で行うことができるが、オレフィン重合触媒として用いる場合は、他の成分への影響が少ない、窒素及びアルゴン雰囲気下で保存することが好ましい。
また、保存に適した温度は、−50℃〜100℃、好ましくは、−20℃〜50℃である。保存期間は、通常、接触直後〜1年、好ましくは、接触後30分〜3ヶ月、さらに好ましくは、接触後1時間〜1ヶ月程度である。
【0092】
上述の方法により得られる成分(C)は、主に、炭化水素溶媒へ溶解させて使用される。中でも、ヘキサンやヘプタン等の飽和炭化水素溶媒が用いられる。従って、これらの溶媒に対する溶解度が一定濃度以上あることが重要である。成分(C)のノルマルヘプタンに対する飽和溶解度は、ホウ素原子を基準にして0.1mmol/L以上であり、好ましくは,1.0mmol/L以上であり、さらに好ましくは、2mmol/L以上である。
【0093】
5.不飽和炭化水素化合物(成分(D))
本発明における不飽和炭化水素化合物(成分(D))は、一般式(2)又は(3)で表される化合物である。
C=CR ・・・(2)
C≡CR ・・・(3)
式中、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ同一でも異なっていても良く、また、異なるそれぞれが炭化水素基で結合し環状構造を形成していても良く、それぞれが、水素若しくはハロゲン、又は炭素数1〜40の、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ハロゲン化アルキル基含有炭化水素基、アルコキシ基含有炭化水素基、フェノキシ基含有炭化水素基、シリル基、シリル基含有炭化水素基、シロキシ基含有炭化水素基若しくはアミノ基含有炭化水素基を示す。
【0094】
炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状などいずれの形態の炭化水素基も用いることができる。分岐を有する場合、分岐鎖側の炭素数は1〜20であり、好ましくは、1〜10である。また、炭化水素基の末端または内部に、二重結合及び三重結合のような不飽和炭化水素結合を有していてもよい。
【0095】
直鎖状の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ステアリル基、n−オクタデシル基などが挙げられる。分岐状の炭化水素基としては、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、2−エチルヘキシル基、2−エチルデシル基などが挙げられる。不飽和炭化水素結合を有する炭化水素基としては、アリル基、2−ブテニル基、4−オクテニル基、4−デセニル基、オレイル基、エチニル基、4−オクチニル基などが挙げられる。環状の炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、2,6−ジメチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基、2−シクロヘキセニル基、2−シクロオクテニル基などが挙げられる。
【0096】
炭化水素基に含有されても良い置換基としては、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、シリル基、シロキシ基、アミノ基が挙げられる。ハロゲンの具体例としては、塩素、臭素、フッ素が挙げられる。好ましくは、フッ素である。ハロゲンをフッ素としたハロゲン化アルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基、1,2−ジフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基などが挙げられる。ハロゲン部位が、塩素でも臭素でも使用出来るが、フッ素化アルキル基が好ましい。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基などが挙げられる。フェノキシ基の具体例としては、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、2,4−ジメチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェノキシ基などが挙げられる。シリル基の具体例としては、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、ジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる。シロキシ基の具体例としては、トリメチルシロキシ基、t−ブチル−ジメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基などが挙げられる。アミノ基の具体例としては、N,N−ジメチルアミノ基、N−メチル−N−アリルアミノ基、N,N−ジアリルアミノ基、N−メチル−N−イソプロピルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基などが挙げられる。これらの中で、炭化水素基に含有されても良い置換基として好ましいのは、フッ素、フッ素化アルキル基、シリル基、アミノ基であり、さらに好ましくは、フッ素、フッ素化アルキル基、シリル基である。
【0097】
異なるR間で環状構造を形成する化合物としては、シクロヘキセン、シクロオクテン等のシクロアルケン化合物及びその誘導体、ノルボルネン化合物及びその誘導体などが挙げられる。
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、フッ素が好ましい。
シリル基としては、ケイ素上の置換基としては任意の置換基を有していても良いが、水素または炭素数1〜40の炭化水素基が好ましい。さらに好ましくは、ケイ素上の全ての置換基が炭化水素基である。
【0098】
一般式(2)の化合物の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1−オクテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1ペンテン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ペンテン、2,3−ジメチル−2−ペンテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、4−メチル−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロヘキサジエン、1−メチル−1,4−シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、メチリデンシクロペンタン、メチリデンシクロヘキサン、エチリデンシクロヘキサン、ビシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−フルオロ−1−ペンテン、1−フルオロ−2−ペンテン、2−フルオロ−3−メチル−2−ブテン、2−フルオロ−2−ブテン、アリルプロピルエーテル、アリルブチルエーテル、2,5−ジヒドロフラン、アリルフェニルエーテル、トリメチルビニルシラン、ジメチルブチルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、3−(トリメチルシリル)−1−ブテン、3−(トリフェニルシリル)−1−ブテン、5−(N,N−ジメチルアミノ)−1−ヘキセン、5−(N,N−ジフェニルアミノ)−1−ヘキセンなどが例示される。
【0099】
これらの中で好ましいのは、R、R、R、Rのうち少なくとも1つがシリル基であるか、少なくとも2つが炭化水素基である化合物である。
【0100】
一般式(3)の化合物の具体例としては、アセチレン、1−ヘキシン、3−ヘキシン、2,2’,4,4’−テトラメチル−3−ヘキシン、エチニルベンゼン、ビス(フェニル)アセチレン、エチニルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、ビス(トリフェニルシリル)アセチレン、1−エチニル−4−フルオロベンセン、1−エチニルナフタレン、1−エチニル−4−メトキシベンゼン、1−エチニル−4−フェノキシベンゼン、1−エチニル−4−トリメチルシリルベンゼン、2−エチニルピリジンなどが例示される。
【0101】
これらの中で好ましいのは、R、Rが3級炭化水素基または3つの炭化水素基で置換されたシリル基である。
【0102】
6.重合触媒の調製と各成分の使用割合
成分(A)と成分(B)の使用量は、成分(A)1モルに対し、成分(B)が0.1〜10000モル、好ましくは1〜1000、さらに好ましくは10〜500である。
【0103】
また、成分(A)と成分(C)の使用量は、成分(A)1モルに対し、成分(C)が0.1〜100モル、好ましくは0.5〜10モル、さらに好ましくは0.5〜2モルの範囲である。
【0104】
成分(A)と成分(D)の使用量は、成分(A)1モルに対し、成分(D)が0.5〜300モル、好ましくは、1〜200モル、さらに好ましくは1〜100モルの範囲である。
【0105】
触媒の各成分の接触は、任意の順序で実施することができる。各成分の接触は、滞留時間が短いプロセス中の配管での接触でも、滞留時間が任意にとれる容器中での接触でも良い。各触媒成分は、そのまま用いてもよいし、溶媒に希釈して用いても良い。
【0106】
各成分を混合する方法としては、例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を溶媒中で同時に添加する方法や、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を任意の順番で添加する方法などが挙げられる。これらの中で、溶媒に成分(B)を添加した後、他の触媒成分を添加する方法が好ましい。成分(A)と成分(C)の反応により、重合活性種が形成されるが、生成した活性種は、変質しやすい性質の化合物もある。その活性種の変質を抑制するために、成分(A)と成分(C)が接触する前に、成分(A)と成分(B)及び成分(D)を接触させておくことが好ましい。さらに好ましくは成分(A)と成分(C)が接触する前に、成分(A)及び成分(C)のそれぞれに対して成分(B)を接触させる方法が挙げられる。このように、成分(B)を分割して使用する場合、それぞれの成分(B)は異なっていても良い。
【0107】
触媒成分の希釈は、炭化水素溶媒が用いられ、好ましくは、脂肪族炭化水素溶媒が用いられ、さらに好ましくは飽和炭化水素溶媒が用いられる。具体的には、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が用いられる。
各成分の接触は、任意の温度で行うことが可能であるが、通常は0℃から溶媒の沸点の間で行われる。
各成分は、混合後、触媒性能が低下しない限り、任意の時間、接触させておいても良いが、通常は、30分〜1ヶ月、好ましくは1時間から15日、さらに好ましくは、1時間〜10日の間で使用する。
【0108】
7.オレフィンの重合方法
本発明のオレフィン重合触媒は、前述の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を配合することによって調製されるが、オレフィン重合用(本重合)として使用する前に必要に応じて、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレン等のオレフィンを予備的に少量重合する予備重合処理を施してもよい。これらの中で、ポリマーとして析出しないという観点から、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテンが好ましい。予備重合方法は、公知の方法を使用できる。
【0109】
重合に用いられるオレフィンとしては、α−オレフィン、環状オレフィン、ジエン、トリエン及びスチレン類似体が包含され、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロアルカン、スチレンあるいはこれらの誘導体等が挙げられる。また、重合は単独重合の他通常公知のランダム共重合やブロック共重合にも好適に適用できる。
【0110】
また、重合は、単独重合の他、通常公知のランダム共重合やブロック共重合などの重合方法に適用できる。
本発明においては、重合反応は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン等の不活性炭化水素溶媒存在下に行うスラリー重合及び溶液重合、液化α−オレフィン等の溶媒の存在下に行うバルク重合、α−オレフィンの臨界条件下で行う高圧イオン重合、あるいは実質的に溶媒や単量体の液相が存在しない状態で気相重合により行うことができるが、生成するポリマーが粒子化する必要がないことから溶液重合、高圧イオン重合へ適用することが好ましい。
【0111】
重合温度、重合圧力等の条件は、特に限定されないが、重合温度は、一般に、−50〜350℃、好ましくは0〜300℃であり、また、重合圧力は、通常、常圧〜約200MPa、好ましくは常圧〜150MPa、さらに好ましくは常圧〜130MPaの範囲である。また、重合系内に分子量調節剤として水素を存在させてもよい。
【実施例】
【0112】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
触媒成分の取扱いは、全て、窒素雰囲気下で行った。また、特に断りのない限り、実施例では、ヘプタン、トルエン、エチレン、1−ヘキセンは、モレキュラ−シ−ブ(MS)が充填されたカラムを通し水分を除去したものを用いた。
不飽和炭化水素結合含有化合物は、窒素バブリング及びMSによる脱水を行ったものを用いた。
【0113】
[実施例1]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
窒素置換したフラスコに、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(「PNBF4」と略す)のヘプタン希釈液(0.6μmol/ml)を14.3mlを添加した。次いで、ジ−n−ドデシルアミンのヘプタン溶液(5.7μmol/ml)を1.5ml添加し、室温で5時間撹拌した。N,N−ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートのヘプタン希釈液(0.6μmol/ml)は、白色のスラリー状態であったが、ジ−n−ドデシルアミンのヘプタン溶液を添加することにより、無色透明な均一溶液が得られた。
(2)エチレン重合評価
誘導撹拌機付きの内容積2Lのオートクレーブにトルエン1000ml、1−ヘキセン20ml、トリイソブチルアルミニウム(「TIBA」と略す)のヘプタン溶液(0.1mmol/ml)6ml、及び実施例1−1で調製した成分(C)のヘプタン溶液を全量添加した。一方、破裂板側には、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7―テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド(「SIZ」と略す)のトルエン溶液(2.0μmol/ml)2.9ml、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.1mmol/ml)1ml及び成分(D)として、トリメチルビニルシランのヘプタン溶液(0.1mmol/ml)1mlを添加した。その後、オートクレーブを85℃に昇温し、破裂板をエチレン圧で破損させた後、オートクレーブ内のエチレン分圧が0.1MPaとなるように制御して、85℃で30分間重合を行った。その結果、54gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、20800gポリマーであった。
【0114】
[実施例2]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1−1と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1−2において、成分(D)として、トリメチルビニルシランのヘプタン溶液(0.1mmol/ml)を7ml添加した以外は、実施例1−2と同様に行なった。その結果、41gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、15800gポリマーであった。
【0115】
[実施例3]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(D)として、トリメチルビニルシランの代わりに2−メチル−1−ペンテンのヘプタン溶液(0.1mmol/ml)を1.2ml添加した以外は、実施例1−2と同様に行なった。その結果、49gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、18800gポリマーであった。
【0116】
[実施例4]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(D)として、トリメチルビニルシランの代わりに2−メチル−1−ペンテンのヘプタン溶液(0.1mmol/ml)を8ml添加した以外は、実施例1−2と同様に行なった。その結果、47gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、18100gポリマーであった。
【0117】
[実施例5]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(D)として、トリメチルビニルシランの代わりに1,5−ヘキサジエンのヘプタン溶液(0.1mmol/ml)を1.2ml添加した以外は、実施例1−2と同様に行なった。その結果、50gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、19200gポリマーであった。
【0118】
[実施例6]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(D)として、トリメチルビニルシランの代わりに1,5−ヘキサジエンのヘプタン溶液(0.1mmol/ml)を8ml添加した以外は、実施例1−2と同様に行なった。その結果、47gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、18100gポリマーであった。
【0119】
[実施例7]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(D)として、トリメチルビニルシランの代わりに1−ヘキセンのヘプタン溶液(0.1mmol/ml)を1.2ml添加した以外は、実施例1−2と同様に行なった。その結果、49gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、18800gポリマーであった。
【0120】
[実施例8]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(D)として、トリメチルビニルシランの代わりに1−ヘキセンのヘプタン溶液(0.1mmol/ml)を8ml添加した以外は、実施例1−2と同様に行なった。その結果、39gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、15000gポリマーであった。
【0121】
[実施例9]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(D)として、トリメチルビニルシランの代わりにシクロオクテンのヘプタン溶液(0.1mmol/ml)を1ml添加した以外は、実施例1−2と同様に行なった。その結果、37gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、14200gポリマーであった。
【0122】
[実施例10]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(D)として、トリメチルビニルシランの代わりにシクロオクテンのヘプタン溶液(0.1mmol/ml)を8ml添加した以外は、実施例1の(2)と同様に行なった。その結果、38gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、14600gポリマーであった。
【0123】
[実施例11]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(D)として、トリメチルビニルシランの代わりに2−ノルボルネンのヘプタン溶液(0.1mmol/ml)を1ml添加した以外は、実施例1の(2)と同様に行なった。その結果、52gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、20000gポリマーであった。
【0124】
[実施例12]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(D)として、トリメチルビニルシランの代わりにビス(トリメチルシリル)アセチレンのヘプタン溶液(0.1mmol/ml)を0.6ml添加した以外は、実施例1の(2)と同様に行なった。その結果、41gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、15800gポリマーであった。
【0125】
[実施例13]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
窒素置換したフラスコに、トリフェニルカルボニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートのヘプタン希釈液(0.6μmol/ml)を14.3mlを添加した。次いで、成分(D)として、ジ−n−ドデシルアミンのヘプタン溶液(5.7μmol/ml)を1.5ml添加し、室温で5時間撹拌した。トリフェニルカルボニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートのヘプタン希釈液(0.6μmol/ml)は、黄色のスラリー状態であったが、ジ−n−ドデシルアミンのヘプタン溶液を添加することにより、黄色透明な均一溶液が得られた。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、実施例1の(1)で製造した成分(C)の代わりに実施例13の(1)で製造した成分(C)のヘプタン溶液を全量添加した以外は、実施例1の(2)と同様に行なった。その結果、50gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当たりの活性は、18900gポリマーであった。
【0126】
[実施例14]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
窒素置換したフラスコに、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートのヘプタン希釈液(0.6μmol/ml)を14.3mlを添加した。次いで、ステアリルアミンのヘプタン溶液(5.7μmol/ml)を1.5ml添加し、室温で5時間撹拌した。N,N−ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートのヘプタン希釈液(0.6μmol/ml)は、白色のスラリー状態であったが、ステアリルアミンのヘプタン溶液を添加することにより、無色透明な均一溶液が得られた。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、実施例1の(1)で製造した成分(C)の代わりに実施例14の(1)で製造した成分(C)のヘプタン溶液を全量添加した以外は、実施例1の(2)と同様に行なった。その結果、36gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当たりの活性は、13600gポリマーであった。
【0127】
[実施例15]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(A)として、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液の代わりに、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド(「BCH」と略す)のトルエン溶液(2.0μmol/ml)2.9ml用いた以外は、実施例1の(2)と同様に行なった。その結果、30gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当たりの活性は、10500gポリマーであった。
【0128】
[実施例16]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(A)として、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液の代わりに、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド(「EIZ」と略す)のトルエン溶液(2.0μmol/ml)2.9ml用いた以外は、実施例1の(2)と同様に行なった。その結果、48gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当たりの活性は、19800gポリマーであった。
【0129】
[実施例17]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(A)として、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液の代わりに、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(「CZ」と略す)のトルエン溶液(2.0μmol/ml)2.9ml用いた以外は、実施例1の(2)と同様に行なった。その結果、36gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当たりの活性は、21300gポリマーであった。
【0130】
[実施例18]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(B)としてTIBAのヘプタン溶液(0.1mmol/ml)の代わりに、トリエチルアルミニウム(「TEA」と略す)のヘプタン溶液(0.1mmol/ml)を用いた以外は同様に行った。その結果、35gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当たりの活性は、13300gポリマーであった。
【0131】
[実施例19]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(B)としてTIBAのヘプタン溶液(0.1mmol/ml)の代わりに、トリオクチルアルミニウム(「TNOA」と略す)のヘプタン溶液(0.1mmol/ml)を用いた以外は同様に行った。その結果、39gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当たりの活性は、14800gポリマーであった。
【0132】
[実施例20]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(D)として、トリメチルビニルシランのヘプタン溶液(0.01mmol/ml)を0.7ml添加した以外は、実施例1の(2)と同様に行なった。その結果、33gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、12500gポリマーであった。
【0133】
[実施例21]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(D)として、トリメチルビニルシランのヘプタン溶液(1.0mmol/ml)を1.7ml添加した以外は、実施例1の(2)と同様に行なった。その結果、37gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、14000gポリマーであった。
【0134】
[実施例22]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(D)として、トリメチルビニルシランのヘプタン溶液(0.1mmol/ml)を4ml添加した以外は、実施例1の(2)と同様に行なった。その結果、45gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、17000gポリマーであった。
【0135】
[比較例1]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、トリメチルビニルシランを添加しない以外は、実施例1−2と同様に行なった。その結果、30gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、11500gポリマーであった。
【0136】
[比較例2]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
窒素置換したフラスコに、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートのヘプタン希釈液(0.6μmol/ml)を14.3mlを添加した。次いで、ステアリルアミンのヘプタン溶液(5.7μmol/ml)を1.5ml添加し、室温で5時間撹拌した。N,N−ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートのヘプタン希釈液(0.6μmol/ml)は、白色のスラリー状態であったが、ステアリルアミンのヘプタン溶液を添加することにより、無色透明な均一溶液が得られた。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、実施例1の(1)で製造した成分(C)の代わりに、比較例2の(1)で製造した成分(C)のヘプタン溶液を全量添加し、また、トリメチルビニルシランを添加しない以外は、実施例1の(2)と同様に行なった。その結果、20gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、7600gポリマーであった。
【0137】
[比較例3]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(D)として、トリメチルビニルシランの代わりに2−ノルボルネンのヘプタン溶液(0.1mmol/ml)を20ml添加した以外は、実施例1−2と同様に行なった。その結果、20gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、7700gポリマーであった。
【0138】
[比較例4]
(1)成分(C)の製造(イオン性有機ホウ素化合物とアミン化合物の接触)
実施例1の(1)と同様に行なった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(D)として、トリメチルビニルシランのヘプタン溶液(0.01mmol/ml)を0.2ml添加した以外は、実施例1の(2)と同様に行なった。その結果、21gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当りの活性は、7950gポリマーであった。
【0139】
[比較例5]
(1)イオン性有機ホウ素化合物の希釈液の調製
実施例1の(1)において、ジ−n−ドデシルアミンのヘプタン溶液(5.7μmol/ml)を1.5ml添加する代わりに、ヘプタンのみを1.5ml添加した以外は同様に行い、PNBF4希釈液の調製を行った。希釈液は白色スラリー状態のままであり、見た目にほとんど変化は見られなかった。
PNBF4のヘプタンスラリーの上澄み液を抜出し、窒素フロー下で溶媒を除去し、残存する化合物の重量を測定する方法で測定した結果、ヘプタンに対するPNBF4の飽和溶解度は、0.02mmol/L以下であった。
(2)エチレン重合評価
実施例1の(2)において、成分(C)として、比較例5の(1)で調製した白色スラリー状の希釈液を用いた以外は、実施例1の(2)と同様に行った。その結果、15gのポリマーを得た。メタロセン錯体1g当たりに活性は、5780gポリマーであった。
【0140】
上記の実施例1〜22、比較例1〜5の評価結果などを表1に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
表1に示されるように、本発明の実施例1〜22におけるオレフィン重合用触媒は、脂肪族炭化水素溶媒にも可溶であり、無色透明な均一溶液が得られることが判り、また、それを用いて、良好なオレフィン重合活性を有するオレフィン重合用触媒を製造できることも、明らかである。一方、特定の不飽和炭化水素化合物が用いられていない比較例1〜4では、無色透明な均一溶液が得られているものの、メタロセン錯体1g当りの活性が低いことが、また、成分(C)にアミン化合物が用いられていない比較例5では、脂肪族炭化水素溶媒に対し十分な濃度のイオン性有機ホウ素化合物の溶解量が得られないことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明のオレフィン重合用触媒は、トルエン等に代表される芳香族系溶媒を用いることなく、メタロセン触媒の均一溶液が得られ、重合プロセス内への芳香族系溶媒の混入を回避でき、芳香族溶媒フリーのポリオレフィンを高収量で得ることができる。
また、ポリエチレン系樹脂ばかりでなく、メタロセン触媒を用いる種々のポリオレフィンなどの重合に用いることができ、産業上の有用性は極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)、(B)、(C)及び(D)からなるオレフィン重合用触媒。
成分(A):メタロセン錯体
成分(B):有機アルミニウム化合物
成分(C):イオン性有機ホウ素化合物(x)と下記一般式(1)で表されるアミン化合物(y)を接触させて得られる化合物
N(R) ・・・(1)
(式中、R、R、Rは、それぞれ同一でも異なっていても良く、水素、又は炭素数1〜40の、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ハロゲン化アルキル基含有炭化水素基、アルコキシ基含有炭化水素基、フェノキシ基含有炭化水素基、シリル基含有炭化水素基、シロキシ基含有炭化水素基若しくはアミノ基含有炭化水素基を示す。但し、R、R及びRに含まれる炭素数の合計は、10〜100である。)
成分(D):下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される不飽和炭化水素化合物
C=CR ・・・(2)
C≡CR ・・・(3)
(式中、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ同一でも異なっていても良く、また、異なるそれぞれが炭化水素基で結合し環状構造を形成していても良く、それぞれが、水素若しくはハロゲン、又は炭素数1〜40の、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ハロゲン化アルキル基含有炭化水素基、アルコキシ基含有炭化水素基、フェノキシ基含有炭化水素基、シリル基、シリル基含有炭化水素基、シロキシ基含有炭化水素基若しくはアミノ基含有炭化水素基を示す。)
【請求項2】
イオン性有機ホウ素化合物(x)は、下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒。
[A][B(R10111213)]n ・・・・(4)
(式中、Aはアルキル置換アンモニウム、アリール置換ホスホニウム又はカルボカチオン、フェロセニウムカチオン若しくは価数+1〜+4の金属カチオンであり、R10〜R13はそれぞれ同一でも異なっていても良く、炭素数1〜14のハロゲン化アリール基又はハロゲン化アルキル基を含む炭化水素基、nは1〜4の整数を示す。)
【請求項3】
成分(C)は、イオン性有機ホウ素化合物(x)とアミン化合物(y)のうち少なくとも一方を、予め炭化水素溶媒で希釈してから接触させて得られることを特徴とする請求項1又は2に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項4】
成分(C)は、ノルマルヘプタンに対する飽和溶解度が、0.1mmol/Lより大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項5】
成分(D)は、R、R、R、又はRのうち少なくとも1つがシリル基、あるいは少なくとも2つが炭化水素基である不飽和炭化水素化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項6】
成分(D)は、R、又はRの少なくとも1つが3級炭化水素基、あるいは3個のアルキル基で置換されたシリル基である不飽和炭化水素化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項7】
成分(D)の含有割合は、成分(A)1モルに対して0.5〜300モルであることを特徴とする請求項1〜6に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項8】
請求項1〜7に記載のオレフィン重合用触媒を用いることを特徴とするオレフィンの重合方法。
【請求項9】
オレフィン重合用触媒を脂肪族炭化水素溶媒に溶解させて用いることを特徴とする請求項8に記載のオレフィンの重合方法。

【公開番号】特開2009−126902(P2009−126902A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301437(P2007−301437)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】