説明

オーディオ装置

【課題】本発明は、オーディオ装置において、スピーカの劣化を防止することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、音声入力端子4と、この音声入力端子4に接続されたPWM変調器7と、このPWM変調器7の出力側に接続された増幅器8と、この増幅器8の出力側に接続されたLCフィルタ9と、このLCフィルタ9の出力側に接続された音声出力端子10とを備え、前記LCフィルタ9にフィルタ電流検出器12、あるいは、スピーカ電流検出器を接続し、これらのフィルタ電流検出器、あるいは、スピーカ電流検出器に制御器13を接続し、この制御器13により前記増幅器8を制御する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のオーディオ装置は、以下のような構成となっていた。
【0003】
すなわち、音声入力端子と、この音声入力端子に接続されたPWM変調器と、このPWM変調器の出力側に接続された増幅器と、この増幅器の出力側に接続されたLCフィルタと、このLCフィルタの出力側に接続された音声出力端子とを備え、音声入力端子から供給されるオーディオ信号を、先ずPWM変調器でPWM変調し、次にそれを増幅器で増幅し、その後、高周波成分をLCフィルタで減衰させ、その状態で音声出力端子からスピーカにオーディオ信号を供給する構成となっていた。
【0004】
上記構成において、たとえば下記特許文献1では音声出力端子に接続されるスピーカのインピーダンスが小さくなると、このスピーカに過大な電流が流れ、劣化してしまうので、このようにインピーダンスが小さなスピーカが音声出力端子に接続される場合には、音声出力端子に供給される電流を小さくするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−218668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例においては、音声出力端子にインピーダンスの小さなスピーカが接続されると、このスピーカに過大な電流が供給され、それによってスピーカが劣化することが記載されている。
【0007】
しかしながら、本発明者の検討によれば、たとえば長期使用によってもスピーカが劣化する状況が発生すると言うことを見出した。つまり、LCフィルタの特にコンデンサ素子は、長期使用に基づいてその容量値が小さくなり、その結果として高周波成分を減衰させることができなくなり、この高周波成分がスピーカに供給される結果として、スピーカが劣化するということを見出したものである。
【0008】
そこで本発明は、スピーカの劣化を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために本発明は、音声入力端子と、この音声入力端子に接続されたPWM変調器と、このPWM変調器の出力側に接続された増幅器と、この増幅器の出力側に接続されたLCフィルタと、このLCフィルタの出力側に接続された音声出力端子とを備え、前記LCフィルタにフィルタ電流検出器、あるいは、スピーカ電流検出器を接続し、これらのフィルタ電流検出器、あるいは、スピーカ電流検出器に制御器を接続し、この制御器により前記増幅器を制御する構成とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明は、音声入力端子と、この音声入力端子に接続されたPWM変調
器と、このPWM変調器の出力側に接続された増幅器と、この増幅器の出力側に接続されたLCフィルタと、このLCフィルタの出力側に接続された音声出力端子とを備え、前記LCフィルタにフィルタ電流検出器、あるいは、スピーカ電流検出器を接続し、これらのフィルタ電流検出器、あるいは、スピーカ電流検出器に制御器を接続し、この制御器により前記増幅器を制御する構成としたので、スピーカの劣化を防止することができる。
【0011】
すなわち、本発明においては、前記LCフィルタにフィルタ電流検出器、あるいは、スピーカ電流検出器を接続し、これらのフィルタ電流検出器、あるいは、スピーカ電流検出器に制御器を接続し、この制御器により前記増幅器を制御する構成としたので、LCフィルタの特にコンデンサ素子が劣化することによるフィルタ電流(除去すべき電流)、あるいは、スピーカ電流(スピーカに供給されてしまう電流)を検出することができる。このため、これらのフィルタ電流、あるいは、スピーカ電流をもとに制御器で増幅器を制御することで、スピーカへの過大な電流を供給するのを防止でき、その結果としてスピーカの劣化を防止することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態におけるオーディオ装置を搭載した自動車を示す平面図
【図2】同オーディオ装置の制御ブロック図
【図3】同オーディオ装置の動作フローチャート
【図4】同オーディオ装置の動作を示す特性図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を用いて説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1において、1は自動車で、その車内2内の前方にはオーディオ装置3が設置されている。このオーディオ装置3は、図2に示す如く、その音声入力端子4に音声信号処理装置5が接続され、この音声信号処理装置5の出力側にセレクタ6が接続されいる。
【0015】
また、セレクタ6の出力側には、PWM変調器7が接続され、このPWM変調器7の出力側には増幅器8が接続され、この増幅器8の出力側にはLCフィルタ9が接続されている。
【0016】
このLCフィルタ9の出力側は、音声出力端子10となっており、この音声出力端子10にスピーカ11が接続されるようになっている。
【0017】
また、LCフィルタ9には、フィルタ電流検出器12が接続され、このフィルタ電流検出器12には制御器13が接続され、この制御器13と、増幅器8も接続されている。
【0018】
さらに、音声入力端子4と、PWM変調器7の間に介在させたセレクタ6と制御器13とは、信号発生器14を介して接続されている。
【0019】
また、制御器13には、ディスプレイ出力端子15を設け、このディスプレイ出力端子15にはディスプレイ16が接続されるようになっている。
【0020】
さらに、LCフィルタ9のインダクタンスLの温度検出を行う温度センサ17と制御器13が接続されている。
また、増幅器8と制御器13は、電圧検出器18を介して接続されている。
【0021】
以上の構成において、自動車1のエンジンを起動すると(図3のS1)、オーディオ装置3は、LCフィルタ9の診断処理を実行することとなる(図3のS2)。
【0022】
すなわち、制御器13は、信号発生器14から、可聴帯域外で、しかもLCフィルタ9で減衰される高周波信号を、セレクタ6に向けて出力させる。
【0023】
このとき、セレクタ6は、音声信号処理装置5側から、この信号発生器14側に切り替わっており、よってこの高周波信号が、PWM変調器でPWM変調され、次に増幅器8で増幅され、その後、LCフィルタ9で減衰され、一部が音声出力端子10を介して、スピーカ11に出力される(LCフィルタ9の診断処理実行後には、セレクタ6は音声入力端子4側に切り替わる)。
【0024】
しかしながら、音声出力端子10を介して、スピーカ11に出力された信号は、可聴帯域外であるので、このときに、スピーカ11からの音声出力は人間の耳には聴こえない。
【0025】
これに対して、LCフィルタ9で減衰された信号は、フィルタ電流検出器12側に流れるので、LCフィルタ9の機能が適切なら、具体的には、このLCフィルタ9のコンデンサ素子(C)が劣化していなければ、このフィルタ電流検出器12側には、LCフィルタ9が正常動作をしていると判別するのに十分に大きな電流が流れることになる。
【0026】
本実施形態では、このフィルタ電流検出器12に流れる電流の大きさを制御器13で判定することで、LCフィルタ9の機能が適切か否かを判別するものであるが、この判別に先立ち、次のような動作を実行する。
【0027】
すなわち、制御器13はLCフィルタ9のインダクタンス素子(L)近傍の温度を、例えば1秒間隔の3回以上、温度センサ17で測定する(図3のS4)。
【0028】
つまり、図4に示すように、LCフィルタ9のインダクタンス素子(L)は、その温度が高くなると、インダクタンス値が小さくなるので、このインダクタンス素子(L)の温度を測定することで、フィルタ特性の変化が分かり、LCフィルタ9に流れる電流値を推定することが出来るのである。
【0029】
そして、事前の測定により、温度により影響を受けるLCフィルタ9に流れる電流値、フィルタ電流検出器12に流れる電流値は、制御器13に接続されたメモリ(図示せず)に記録されている。
【0030】
また、増幅器8に印加される電圧も電圧検出器18によって、1秒間隔の3回以上、測定される(図3のS5)。
【0031】
すなわち、増幅器8の動作状態によっても、上述したLCフィルタ9に流れる電流値は影響を受けるので、この増幅器8への印加電圧状態を検出し、それを上記制御器13に接続されたメモリ(図示せず)に記録される。
【0032】
つまり、LCフィルタ9の温度環境や、増幅器8の電圧印加環境を制御器13に知らせることで、上述したフィルタ電流検出器12に流れる電流値から、上述したLCフィルタ9の機能が適切か否かを判別するようにするのである。
【0033】
そのために、上述した温度センサ17による測定(図3のS4)、電圧検出器18による測定(図3のS5)が行われた後に、上述したフィルタ電流検出器12に流れる電流を測定する(図3のS6)。
【0034】
制御器13は、事前に測定したLCフィルタ9のインダクタンス素子(L)近傍の温度と、増幅器8に印加されている電圧から、フィルタ電流検出器12に流れる電流値に対する閾値を補正する(図3のS7)。
【0035】
そして、このフィルタ電流検出器12に流れる電流値と、上記補正済み閾値とを比較し(図3のS8)、この結果が、フィルタ電流検出器12に流れる電流値が、上記補正済み閾値より大きいと、LCフィルタ9は劣化していないとして診断を終了する(図3のS9)。
【0036】
これに対してフィルタ電流検出器12に流れる電流値が、上記補正済み閾値より小さいと、 制御器13はその程度に応じて次の二つの対応を行う(図3のS10)。
【0037】
つまり、フィルタ電流検出器12に流れる電流値が、上記補正済み閾値に対してそれほど小さくなければ(程度の基準は制御器13が設定済み)、制御器13は、ディスプレイ出力端子15を介してディスプレイ16に、LCフィルタ9の寿命が近づいたので、交換を薦める表示を行う(図3のS11)。
【0038】
LCフィルタ9の寿命とは、特にそのコンデンサ素子(C)の劣化を指し、図5のごとくコンデンサ素子(C)が劣化すれば、高周波成分を通過させる(減衰させる)機能が低下する。つまり、図2において、増幅器8を介して供給される高周波信号のうち、高周波部分を通過させる(減衰させる)機能が低下するので、その反対にスピーカ11側に流れる電流が大きくなってしまい、それが原因でスピーカ11が劣化してしまう。
【0039】
したがって、上述のごとく、フィルタ電流検出器12に流れる電流値が、上記補正済み閾値に対してそれほど小さくない状態でも、ディスプレイ出力端子15を介してディスプレイ16に、LCフィルタ9の寿命が近づいたので、交換を進める表示を行うい、これによってスピーカ11の劣化を防止する。
【0040】
また、フィルタ電流検出器12に流れる電流値が、上記補正済み閾値に対して極めて小さくなっていると、制御器13は、増幅器8を停止するとともに、ディスプレイ出力端子15を介してディスプレイ16に、LCフィルタ9の寿命なので、交換を行うことを表示する(図3のS12)。
【0041】
なお、上記実施形態においては、LCフィルタ9によって減衰された電流をフィルタ電流検出器12によって検出し、それによってLCフィルタ9の劣化診断を行ったが、スピーカに流れる電流を検出することによって、LCフィルタ9の劣化診断を行うことも出来る。
【0042】
すなわち、LCフィルタ9が劣化すれば、上述のごとく、このLCフィルタ9による電流減衰量が少なくなり、逆にスピーカ11に流れる電流量が増加するので、スピーカに流れる電流を検出するスピーカ電流検出器を設けることによって、LCフィルタ9の劣化診断を、制御器13によって行うことも出来る。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明においては、LCフィルタにフィルタ電流検出器、あるいは、スピーカ電流検出器を接続し、これらのフィルタ電流検出器、あるいは、スピーカ電流検出器に制御器を接続し、この制御器により前記増幅器を制御する構成としたので、LCフィルタの特にコンデンサが劣化することによるフィルタ電流(除去すべき電流)、あるいは、スピーカ電流(スピーカに供給されてしまう電流)を検出することができる。このため
、これらのフィルタ電流、あるいは、スピーカ電流をもとに制御器で増幅器を制御することで、スピーカへの過大な電流を供給するのを防止でき、その結果としてスピーカの劣化を防止することができるのである。
【0044】
したがって、家庭用や車載用のオーディオ装置としての活用が期待される。
【符号の説明】
【0045】
1 自動車
2 車内
3 オーディオ装置
4 音声入力端子
5 音声信号処理装置
6 セレクタ
7 PWM変調器
8 増幅器
9 LCフィルタ
10 音声出力端子
11 スピーカ
12 フィルタ電流検出器
13 制御器
14 信号発生器
15 ディスプレイ出力端子
16 ディスプレイ
17 温度センサ
18 電圧検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声入力端子と、この音声入力端子に接続されたPWM変調器と、このPWM変調器の出力側に接続された増幅器と、この増幅器の出力側に接続されたLCフィルタと、このLCフィルタの出力側に接続された音声出力端子とを備え、
前記LCフィルタにフィルタ電流検出器、あるいは、スピーカ電流検出器を接続し、これらのフィルタ電流検出器、あるいは、スピーカ電流検出器に制御器を接続し、この制御器により前記増幅器を制御する構成としたオーディオ装置。
【請求項2】
音声入力端子と、PWM変調器の間にセレクタを介在させ、このセレクタと制御器とを信号発生器を介して接続した請求項1に記載のオーディオ装置。
【請求項3】
制御器には、ディスプレイ出力端子を設けた請求項1、または、2に記載のオーディオ装置。
【請求項4】
LCフィルタの温度検出を行う温度センサと制御器を接続した請求項1から3のいずれか一つに記載のオーディオ装置。
【請求項5】
増幅器と制御器を電圧検出器を介して接続した請求項1から4のいずれか一つに記載のオーディオ装置。
【請求項6】
ディスプレイ出力端子に、ディスプレイを接続するとともに、制御器によってこのディスプレイに、LCフィルタの劣化情報を表示させる構成とした請求項3から5のいずれか一つに記載のオーディオ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−115685(P2013−115685A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261415(P2011−261415)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】