説明

オートカッター装置、プリンター装置およびオートカッター装置の制御方法

【課題】オートカッターエラーが発生した場合、容易且つ迅速にエラー復旧を行うことができるオートカッター装置、プリンター装置およびオートカッター装置の制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】用紙搬送経路に臨み、用紙を切断する用紙切断部150と、ペーパーフィードスイッチ83と、プリンター装置100の内部状態を判別し、当該内部状態に応じて処理を実行する制御部180と、を備え、制御部180は、内部状態が用紙切断部150のエラー発生状態の場合、ペーパーフィードスイッチ83の押下にしたがって用紙切断部150の初期化処理を含むエラー復旧処理を実行し、内部状態が通常状態の場合、用紙搬送処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラー復旧処理機能を備えたオートカッター装置、プリンター装置およびオートカッター装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンター装置で発生したエラーの要因に対応して、ホスト装置による要因解除処理を実行する印刷システムが知られている(例えば、特許文献1)。ホスト装置は、プリンター装置から送信されたエラー発生情報に基づいてプリンター装置の異常要因を判定し、判定した異常要因に対応するエラー復旧コマンドをプリンター装置に送信する。
【0003】
ところで、プリンター装置には長尺状の用紙(ロール紙)を切断するためのオートカッター機構を備えたものが多く存在する。オートカッター機構にエラーが発生した場合、上記特許文献1のように、ホスト装置からのエラー復旧コマンドを送信するか、ロール紙カバーの開閉によってエラー復旧を行うことが一般的である。ところが、オートカッター機構とロール紙カバーの構造や配置によっては、オートカッターエラーが発生した場合、カッター刃が突出したままの状態となってロール紙カバーを開けることができなくなることがある。このため、エラー復旧コマンドによるエラー解除方法しか対応できていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−18127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、オートカッターエラーが発生した場合は、カッター刃の状態確認および用紙カットに失敗した用紙の除去などプリンター装置側の作業が必要となる。また、カッター刃のカッター位置が適切ではない場合は、カッター刃を初期設定位置(ホームポジション)に戻す操作も必要である。このように従来は、オートカッターエラーが発生した場合、プリンター装置側の操作とホスト装置側の操作(エラー復旧コマンドの送信指示)の両方を行わなければならず、面倒であった。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑み、オートカッターエラーが発生した場合、容易且つ迅速にエラー復旧を行うことができるオートカッター装置、プリンター装置およびオートカッター装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のオートカッター装置は、用紙搬送経路に臨み、用紙を切断する用紙切断部と、オートカッター装置の内部状態を判別する内部状態判別部と、1の操作部と、1の操作部の操作にしたがい、内部状態に応じて処理を実行する処理実行部と、を備え、処理実行部は、内部状態が用紙切断部のエラー発生状態の場合、1の操作部の操作にしたがって用紙切断部の初期化処理を含むエラー復旧処理を実行し、内部状態が通常状態の場合、予め定められた所定の処理を実行することを特徴とする。
【0008】
本発明のオートカッター装置の制御方法は、用紙搬送経路に臨み、用紙を切断する用紙切断部と、1の操作部と、を備えたオートカッター装置の制御方法であって、オートカッター装置の内部状態を判別する内部状態判別ステップと、1の操作部の操作にしたがい、内部状態に応じて処理を実行する処理実行ステップと、を備え、処理実行部は、内部状態が用紙切断部のエラー発生状態の場合、1の操作部の操作にしたがって用紙切断部の初期化処理を含むエラー復旧処理を実行し、内部状態が通常状態の場合、予め定められた所定の処理を実行することを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、オートカッター装置の内部状態が用紙切断部のエラー発生状態の場合、1の操作部の操作にしたがってエラー復旧処理を実行するため、オートカッター装置側の操作だけで(ホスト装置側の操作を必要とすることなく)、エラー復旧を行うことができる。また、エラー復旧処理には、用紙切断部の初期化処理が含まれるため、初期化処理を行うための操作も不要となり、ユーザーの手間をさらに軽減できる。また、1の操作部は、内部状態が通常状態の場合、予め定められた所定の処理を実行するためのものであるため、本発明を実現するために専用の操作部を追加する必要がない。つまり、装置コストを大幅に増加させることなく、オートカッター装置にエラー復旧処理機能を搭載することができる。
なお、「通常状態」とは、エラー(用紙切断部のエラーの他、各種エラーを含む)が発生していない状態を指す。
【0010】
上記のオートカッター装置において、用紙切断部は、固定刃と、固定刃に対し切断動作する可動刃と、可動刃を駆動するカッターモーターと、を有し、用紙切断部の初期化処理は、カッターモーターの駆動を、切断動作時の駆動方向とは逆方向に駆動することにより、可動刃を初期設定位置に戻す処理であることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、用紙切断部のエラー(オートカッターエラー)が発生し、可動刃が突出したままの状態となってロール紙カバーを開けることができなくなった場合に、カッターモーターを逆回転させるといった簡単な制御により、可動刃を初期設定位置に戻すことができる。
【0012】
本発明のプリンター装置は、上記のオートカッター装置と、用紙搬送経路に臨み、用紙に印刷を行う印刷部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、オートカッターエラーが発生した場合、容易且つ迅速にエラー復旧を行うことができるプリンター装置を提供することができる。
なお、印刷部の印刷方式は、サーマルヘッド方式やインクジェット方式など、その種類を問わない。
【0014】
上記のプリンター装置において、エラーの種類ごとに、エラー復旧処理を記憶したテーブルをさらに備え、内部状態判別部は、エラーの種類を判別し、処理実行部は、テーブルを参照し、1の操作部の操作にしたがって、エラーの種類に応じたエラー復旧処理を実行することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、オートカッターエラーだけでなく、プリンター装置に発生する種々のエラーの種類に対応したエラー復旧処理を、プリンター装置側の操作だけで実行させることができる。
なお、エラーの種類とそれに対応するエラー復旧処理の一例としては、オートカッターエラー時における用紙切断部の初期化処理をはじめ、ロール紙カバーオープン時におけるロール紙カバーの閉蓋処理(自動開閉機能が搭載されている場合)、印刷ヘッド高音時におけるヘッド冷却処理(冷却ファンの駆動など)、などが考えられる。
【0016】
上記のプリンター装置において、内部状態判別部により内部状態がエラー発生状態と判別された場合、エラーの種類に応じて異なる表示を行うエラー表示部をさらに備えたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、エラー表示部の表示により、ユーザーが、プリンター装置にどのようなエラーが発生したのかを確認できる。
なお、エラー表示部は、LEDなど点灯/点滅によって情報を通知するものであっても良いし、液晶ディスプレイなど画像や文字で情報を通知するものであっても良い。
また、エラー表示部は、エラー要因が解消した場合、LEDを非表示としたり、液晶ディスプレイにその旨を表示したりすることが好ましい。例えば、オートカッターエラーが発生した場合であって1の操作部の操作によってオートカッターエラーが解消した場合は、LEDを非表示とし、用紙詰まりなどの要因により初期化処理が実行できずオートカッターエラーが解消できなかった場合は、LEDを表示状態のままとすることが好ましい。
【0018】
上記のプリンター装置において、処理実行部は、所定の処理として、用紙の所定量分の搬送を行うことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、1の操作部として、ペーパーフィード(用紙送り)スイッチを適用できる。これにより、エラーが発生していない状態(通常状態)で用紙排出口から用紙の先端が出ていない場合など、1の操作部を操作して用紙送りを行うことで用紙詰まりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】プリンター装置の斜視図を含む、印刷システムのシステム構成図である。
【図2】ロール紙カバーを開いた状態のプリンター装置の側面図である。
【図3】プリンター装置の内部構成を示す斜視図であり、カッターユニットカバーを開いた状態を示す図である。
【図4】プリンター装置の制御ブロック図である。
【図5】テーブルの一例を示す図である。
【図6】カッターユニットカバーを手前に引いた状態を示す斜視図と、カッターユニットカバーに形成された切り欠き部周りの拡大平面図である。
【図7】ペーパーフィードスイッチが押下されたときのプリンター装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照し、本発明のオートカッター装置、プリンター装置およびオートカッター装置の制御方法について説明する。本実施形態では、本発明のオートカッター装置を、ホスト装置から送信された印刷データに基づいて印刷を行うプリンター装置に適用した場合について説明する。
【0022】
図1は、印刷システムSYのシステム構成図である。同図に示すように、印刷システムSYは、プリンター装置100およびホスト装置200から成り、これらはケーブル300を介して接続されている。なお、接続形態は、有線接続に限らず、無線LAN通信や近距離無線通信などの無線接続であっても良い。
【0023】
ホスト装置200は、プリンター装置100に対し、各種コマンドおよび印刷データを送信する。また、プリンター装置100は、ホスト装置200に対し各種ステータスデータを送信する。なお、ホスト装置200としては、例えばPOS(Point Of Sales)端末を適用可能であり、プリンター装置100としては、会計レシートを発行するレシートプリンターを適用可能である。
【0024】
図1ないし図3に示すように、プリンター装置100は、長尺状の用紙(以下、「ロール紙11」とも称する)に対して印刷を行うものであり、金属製の本体フレーム15が樹脂製の本体ケース17によって覆われたプリンター本体13を備えている。プリンター本体13は、ロール紙11を収納する開口部20と、当該開口部20を開閉するロール紙カバー21と、前部に設けられたカッターカバー35と、を備えている。また、プリンター装置100の上面には紙排出口25が設けられ、印刷されたロール紙11の端部がこの紙排出口25から排出される。さらに、プリンター本体13の前面には、電源スイッチ81が設けられ、プリンター本体13の上面右部には、ロール紙カバー21を開くためのカバーオープンボタン82と、コントロールパネル84が設けられている。
【0025】
コントロールパネル84は、電源LED85、エラーLED86および用紙なしLED87の他、ペーパーフィードスイッチ(1の操作部,以下、「PF−スイッチ」と称する)83を含む。電源LED85は、電源ON/OFFを点灯/消灯で示す。また、エラーLED86は、エラー発生状態時(プリンター装置100が印刷できない状態のとき)に、エラーの種類を、点灯または点滅によって示す。また、用紙なしLED87は、ロール紙11が無くなったとき、または残量が少ないときに点灯する。さらに、PF−スイッチ83は、通常状態時において、その押下ごとにロール紙11を1行分ずつ送り出す。また、PF−スイッチ83を押下し続けることで、連続的に用紙送りを行うことも可能である。なお、プリンター装置100は、エラー発生状態時に当該PF−スイッチ83が操作されると、エラー種類に応じたエラー復旧処理を実行する。詳細については、後述する。
【0026】
ロール紙カバー21には、ロール紙11を搬送するための回転部材であるプラテンローラー19と、カバーフレーム23が設けられている。カバーフレーム23の後部両端部分にはそれぞれ軸受部27が形成され、軸受部27は支軸29を介して本体フレーム15に開閉自在に支持される。プリンター本体13の内部には、ロール紙11を収容可能なロール紙ホルダー31(ロール紙収納部)が設けられ、その前方には、サーマルヘッド33が設けられている。プラテンローラー19は、ロール紙カバー21が閉じた状態において、サーマルヘッド33に対向配置され、送出されるロール紙11を挟んだ状態とする。この状態でサーマルヘッド33を駆動することにより印刷が行われる。また、プラテンローラー19は、プラテンユニット37のプラテンホルダー39に設けられ、当該プラテンホルダー39は、解除レバー機構22を有している。解除レバー機構22は、係合爪と、これと連動可能な解除レバーとから成り、ロール紙カバー21を本体ケース17に対して閉止状態とするロック機構を構成する。また、プリンター装置100は、ロール紙カバー21の開閉を検出するカバーセンサー70と、ロール紙ホルダー31内の側壁に設けられた用紙センサー133(図4参照)を備えている。
【0027】
ロール紙カバー21は、紙排出口25の近傍に、ロール紙11を切断するためのカッターである固定刃41を備える。一方、プリンター本体13の前部には、可動刃43を内蔵したカッターユニット45が設けられている。固定刃41と可動刃43は、ロール紙カバー21が閉じた状態で対向し、ハサミ方式の切断機構を構成する。カッターユニット45の本体45bの底部42には、可動刃43が設けられ、当該可動刃43は、カッターユニット45の一方の端部に設けた支軸44を中心として、図3に示す矢印A方向またはその反対方向へ回動自在に取り付けられる。また、可動刃43は、支軸44に取り付けられたプッシュナットで係止されたコイルばね46によって、カッターユニット45の本体45bの底部42に押し付けられる。可動刃43のほぼ中央部には、可動刃43を駆動するための長孔48が設けられている。
【0028】
また、カッターユニット45のカバー45aの裏面には、可動刃43を駆動するための駆動手段50が設けられる。すなわち、カバー45aの裏面には、カッターモーター52が取り付けられると共に、カッターモーター52の回転軸には、ウォーム歯車51およびモーターノブ91が取り付けられている。モーターノブ91は、手動によりカッターモーター52を逆回転させるために用いられる(図6参照)。一方、ウォーム歯車51は、ウォームホイール53と噛み合い、このウォームホイール53には可動刃43の長孔48と係合するクランクピン55が設けられている。さらに、ウォームホイール53とカバー45aとの間にはウォームホイール53の回転角を検出するためのカッターセンサー57が設けられ、このカッターセンサー57は、リード線59を介して回路基板60に接続される。また、カッターモーター52もリード線54を介して回路基板60に接続される。これにより、カッターセンサー57にて検出されたウォームホイール53の回転角に基づいてカッターモーター52を回転させる。
【0029】
次に、図4を参照し、プリンター装置100の制御構成について説明する。プリンター装置100は、インターフェース部110、用紙搬送部120、検出部130、印刷部140、用紙切断部150、操作部160、表示部170および制御部180を備えている。
【0030】
インターフェース部110は、ホスト装置200に対し情報の入出力を行う。用紙搬送部120は、プラテンローラー19と不図示のローラー駆動モーターを有し、ロール紙11の搬送を行う。
【0031】
検出部130は、上述したカッターセンサー57(ウォームホイール53の回転角を検出するセンサー)、用紙センサー133(用紙なしまたは用紙残量が少なくなったことを検出するセンサー)、カバーセンサー70(ロール紙カバー21の開閉を検出するセンサー)の他、ヘッドセンサー131およびホームポジションセンサー132を有している。ヘッドセンサー131は、サーマルヘッド33の温度を検出するセンサーである。また、ホームポジションセンサー132は、可動刃43がホームポジション(初期設定位置)にあることを検出するセンサーである。プリンター装置100は、可動刃43による用紙切断後、ホームポジションに戻る時間を計測し、可動刃43が規定時間内にホームポジションに戻らない場合、「オートカッターエラー(用紙切断部150のエラー発生状態)」と判定する。要因としては、カッターユニット45の劣化、可動刃43の食い込み、用紙詰まり(紙ジャム)、可動刃43の可動領域への異物混入(虫ピン、クリップ等の混入)などが考えられる。
【0032】
印刷部140は、サーマルヘッド33を有し、当該サーマルヘッド33の複数の発熱素子に選択的にエネルギーを印加させることにより、ロール紙11に対する印刷を行う。用紙切断部150は、上述した固定刃41と、カッターユニット45に含まれる可動刃43およびカッターモーター52を有し、ハサミ方式によりロール紙11を切断する。
【0033】
操作部160は、上述したPF-スイッチ83を有する。PF-スイッチ83としては、ノンロック・プッシュスイッチなど各種スイッチ・ボタンを採用できる。また、エラーが発生していない通常状態においては、PF-スイッチ83の押下によって所定量分の紙送りが実行される。なお、所定量は、ホスト装置200から送信された改行量指定コマンドによって、その長さを可変できる。また、ホスト装置200から送信されたマクロ実行コマンドによる実行待ち状態時にPF-スイッチ83が押下された場合は、定義されているマクロを実行する。さらに、セルフテスト実行時は、一時停止、再開の機能となる。なお、セルフテストは、ロール紙カバー21を閉じた状態でPF-スイッチ83を押下しながら電源投入することで実行される。
【0034】
表示部170は、上述した電源LED85、エラーLED86および用紙なしLED87を有する。なお、エラーLED86は、電源ON直後または、リセット直後(オフライン状態)に点灯するが、数秒後に(プリンター装置100が印刷可能な状態となると)自動的に消灯する。また、通常状態時(オンライン中)は消灯する。また、用紙なしLED87は、セルフテスト継続待ち状態またはマクロ実行指示待ち状態のときに点滅する。
【0035】
制御部180は、CPU(Central Processing Unit)181、ROM(Read Only Memory)182、RAM(Random Access Memory)183およびタイマー184を有している。タイマー184は、用紙切断後、可動刃43がホームポジションに戻る時間を計測する。
【0036】
ROM182は、制御データの一部として、テーブルTを記憶している。図5に示すように、テーブルTは、エラーの種類ごとに、エラーLED86または用紙LED87の点灯/点滅パターンと、エラー復旧処理を記憶している。同図に示すエラー復旧処理は、いずれも、ロール紙カバー21が閉じた状態でPF-スイッチ83が押下された場合に実行される。また、同図に示すように、各LED86,87は、エラーの種類に応じて異なる点灯/点滅パターンが定義されている。
【0037】
また、エラー種類は、復帰可能エラーと復帰不可能エラーに大別される。同図に示す「オートカッターエラー」および「ヘッド高温エラー(ヘッドセンサー131により検出されるエラー)」は、復帰可能エラーの一種であり、各エラー種類に対応したエラー復旧処理を実行する。なお、特に図示しないが、用紙センサー133により検出される「用紙なしエラー」や、カバーセンサー70により検出される「ロール紙カバーオープンエラー」も、復帰可能エラーとして、エラー発生時に対応するエラー復旧処理を行っても良い。また、ブラックマーク付き用紙のブラックマーク位置の検出を行うプリンター装置の場合は、ブラックマーク検出エラーが発生した際に、復帰可能エラーとして、対応するエラー復旧処理を行っても良い。
【0038】
また、図5に示す「CPU実行エラー」は、CPU181が不正なアドレスを実行した場合のエラーであり、復帰不可能エラーの一種である。復帰不可能エラーの場合は、特段のエラー復旧処理を実行せず、ユーザー判断により基板ユニットの交換等が行われる。その他、特に図示しないが、RAM183の読み書きが正常に行えない場合に発生する「リード/ライトエラー」、電源電圧が高いまたは低い場合に発生する「高電圧/低電圧エラー」、内部回路の接続が正常でない場合に発生する「内部回路接続エラー」なども、復帰不可能エラーに含まれる。
【0039】
一方、CPU181は、「内部状態判別部」および「処理実行部」の主要部として機能する。「内部状態判別部」は、検出部130の検出結果に基づいて、プリンター装置100の内部状態を判別する。また、エラー発生状態においては、エラーの種類を判別する。一方、「処理実行部」は、PF-スイッチ83の操作にしたがい、内部状態に応じて処理を実行する。具体的には、内部状態が通常状態の場合、PF-スイッチ83の押下にしたがって紙送り処理(予め定められた所定の処理)を実行する。また、内部状態が「ヘッド高温エラー」発生状態の場合、図5のテーブルTに示すように、サーマルヘッド33のヘッド冷却処理を含むエラー復旧処理を実行する。なお、ヘッド冷却処理としては、冷却ファン(図示省略)の駆動による強制冷却を行っても良いし、所定時間、印刷不能状態とすることでサーマルヘッド33を自然冷却させても良い。
【0040】
また、「処理実行部」は、内部状態が「オートカッターエラー」発生状態の場合、PF-スイッチ83の操作にしたがって用紙切断部150の初期化処理を含むエラー復旧処理を実行する。「用紙切断部150の初期化処理」としては、カッターモーター52の駆動を、切断動作時(通常動作時)の駆動方向とは逆方向に駆動する処理がある。これにより、可動刃43は図3の矢印A方向と反対方向に回動して、ホームポジションに戻る。CPU181は、可動刃43がホームポジションに戻ったことをホームポジションセンサー132により検出すると、エラーLED86を消灯させる。このように、「オートカッターエラー」が発生した場合は、PF-スイッチ83を押下するだけで、用紙切断部150の初期化処理を含むエラー復旧処理が行われるため、可動刃43をホームポジションに戻す操作や、ホスト装置200からエラー復旧コマンドを送信するための操作などが不要となる。また、用紙詰まりが発生している場合でも、初期化処理により可動刃43がホームポジションに戻っているため、ロール紙カバー21が開かない状態となることがなく、用紙を取り除いてロール紙11をセットし、ロール紙カバー21を閉じることで、印刷可能状態とすることができる。
【0041】
但し、用紙詰まりの程度や異物混入などにより、PF-スイッチ83を押下しても、エラー解除が困難な場合も考えられる。この場合は、図6に示すように、カッターカバー35を手前に引いて、カッターユニット45のカバー45aに形成された切り欠き部92からモーターノブ91を操作する。切り欠き部92の左部には、コーションシール94が貼付されており、ユーザーは、当該コーションシール94の指示にしたがい、丸穴部93に三角印が見えるまでモーターノブ91を矢印B方向に回転させる。なお、矢印B方向にモーターノブ91が回転しない場合は、一旦逆方向に回し、モーターノブ91がゆるくなった状態でPF-スイッチ83の押下を行う。これを数回繰り返すことで、ほぼ確実にオートカッターエラーを解消できる。
【0042】
次に、図7のフローチャートを参照し、PF−スイッチ83が押下されたときのプリンター装置100の動作について説明する。プリンター装置100(CPU181)は、ユーザーによってPF-スイッチ83が押下されると(S01)、内部状態を判別し(S02)、通常状態と判定した場合は、プラテンローラー19を駆動して用紙搬送処理を実行する(S03)。また、内部状態が、オートカッターエラー発生状態と判定した場合は、用紙切断部150の初期化処理を含むエラー復旧処理を実行する(S04)。また、内部状態が、ヘッド高温エラー発生状態と判定した場合は、ヘッド冷却処理を含むエラー復旧処理を実行する(S05)。また、内部状態が、その他の復帰可能エラー発生状態と判定した場合(但し、エラー復旧処理が定義されているエラーに限る)は、そのエラーの種類に応じたエラー復旧処理を実行する(S06)。さらに、復帰不可能エラー発生状態と判定した場合は、特段のエラー復旧処理を実行せず、動作を終了する。
【0043】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、プリンター装置100に発生する種々のエラーの種類に対応したエラー復旧処理を、ホスト装置200の操作を必要とすることなく、プリンター装置100側の操作(PF-スイッチ83の押下)だけで容易に実行させることができる。これにより、ホスト装置200からエラー復旧のための機能を省略することができる。
【0044】
また、エラーの種類に対応したエラー復旧処理の一例として、オートカッターエラー発生状態の場合は、用紙切断部150の初期化処理を含むエラー復旧処理を実行するため、可動刃43をホームポジションに移動させる操作も含めて、ユーザーの手間を軽減できる。また、PF-スイッチ83は、内部状態が通常状態の場合、用紙搬送指示手段、マクロ実行指示手段、セルフテスト実行指示手段などとして機能させることができる。つまり、1の操作部に、多種多様な機能を割り当てることで、装置コストを抑えることができる。
【0045】
また、PF-スイッチ83の押下によってエラー復旧処理を実行させるため、電源OFFによる初期化と比べて、エラー復旧処理時間の短縮化を図ることができると共に、受信データの消失を防止できる。さらに、プリンター装置100が、何らかのシステムに組み込まれて用いられる場合、単独で電源スイッチ81のON/OFFを行うことができないことが想定されるが、そのような問題も解消できる。
【0046】
なお、上記の実施形態では、復帰不可能エラーが発生した場合、特段のエラー復旧処理を実行しないものとしたが、何らかの処理を定義しておいても良い。例えば、復帰不可能エラーが発生し、PF-スイッチ83が押下されたとき、電子メール、電子音の発生、無線通信等により、ユーザーに対してエラー発生を通知する、などが考えられる。
【0047】
また、上記の実施形態では、処理実行部による実行開始のトリガーを、PF-スイッチ83の押下としたが、その他のスイッチ/ボタンの押下をトリガーとしても良い。例えば、ロール紙カバー21を開閉するためのボタンが搭載されている場合は、その押下をトリガーとして、エラーの種類に応じたエラー復旧処理を実行させても良い。また、操作部160として、ディップスイッチやタッチパネルを採用するなど、操作子の形態も任意である。
【0048】
また、上記の実施形態では、プリンター装置100を、ホスト装置200と組み合わせて用いる形態を示したが、単体で動作可能なプリンター装置(印刷データ生成機能を有するプリンター装置)に、本発明を適用しても良い。また、プリンター装置100に限らず、オートカット機構を有する各種電子機器に、本発明を適用しても良い。
【0049】
また、上記の実施形態に示したプリンター装置100の各機能・各処理をプログラムとして提供することが可能である。また、そのプログラムを各種記録媒体(CD−ROM、フラッシュメモリー等)に格納して提供することも可能である。すなわち、コンピューターを、プリンター装置100の各構成要素として機能させるためのプログラム、およびそれを記録した記録媒体も、本発明の権利範囲に含まれるものである。その他、上述した実施例によらず、印刷システムSYのシステム構成や処理工程等について、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
11…ロール紙 13…プリンター本体 15…本体フレーム 17…本体ケース 19…プラテンローラー 20…開口部 21…ロール紙カバー 25…紙排出口 31…ロール紙ホルダー 33…サーマルヘッド 35…カッターカバー 41…固定刃 42…底部 43…可動刃 44…支軸 45…カッターユニット 45a…カッターユニットカバー 45b…カッターユニット本体 48…長孔 50…駆動手段 51…ウォーム歯車 52…カッターモーター 53…ウォームホイール 55…クランクピン 57…カッターセンサー 81…電源スイッチ 82…カバーオープンボタン 83…ペーパーフィードスイッチ 84…コントロールパネル 85…電源LED 86…エラーLED 87…用紙LED 91…モーターノブ 92…切り欠き部 93…丸穴部 94…コーションシール 100…プリンター装置 200…ホスト装置 SY…印刷システム T…テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙搬送経路に臨み、用紙を切断する用紙切断部と、
オートカッター装置の内部状態を判別する内部状態判別部と、
1の操作部と、
前記1の操作部の操作にしたがい、前記内部状態に応じて処理を実行する処理実行部と、を備え、
前記処理実行部は、前記内部状態が前記用紙切断部のエラー発生状態の場合、前記1の操作部の操作にしたがって前記用紙切断部の初期化処理を含むエラー復旧処理を実行し、前記内部状態が通常状態の場合、予め定められた所定の処理を実行することを特徴とするオートカッター装置。
【請求項2】
前記用紙切断部は、
固定刃と、前記固定刃に対し切断動作する可動刃と、前記可動刃を駆動するカッターモーターと、を有し、
前記用紙切断部の初期化処理は、前記カッターモーターの駆動を、切断動作時の駆動方向とは逆方向に駆動することにより、前記可動刃を初期設定位置に戻す処理であることを特徴とする請求項1に記載のオートカッター装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のオートカッター装置と、
前記用紙搬送経路に臨み、前記用紙に印刷を行う印刷部と、を備えたことを特徴とするプリンター装置。
【請求項4】
エラーの種類ごとに、エラー復旧処理を記憶したテーブルをさらに備え、
前記内部状態判別部は、前記エラーの種類を判別し、
前記処理実行部は、前記テーブルを参照し、前記1の操作部の操作にしたがって、前記エラーの種類に応じたエラー復旧処理を実行することを特徴とする請求項3に記載のプリンター装置。
【請求項5】
前記内部状態判別部により前記内部状態がエラー発生状態と判別された場合、前記エラーの種類に応じて異なる表示を行うエラー表示部をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載のプリンター装置。
【請求項6】
前記処理実行部は、前記所定の処理として、前記用紙の所定量分の搬送を行うことを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載のプリンター装置。
【請求項7】
用紙搬送経路に臨み、用紙を切断する用紙切断部と、1の操作部と、を備えたオートカッター装置の制御方法であって、
前記オートカッター装置の内部状態を判別する内部状態判別ステップと、
前記1の操作部の操作にしたがい、前記内部状態に応じて処理を実行する処理実行ステップと、を備え、
前記処理実行部は、前記内部状態が前記用紙切断部のエラー発生状態の場合、前記1の操作部の操作にしたがって前記用紙切断部の初期化処理を含むエラー復旧処理を実行し、前記内部状態が通常状態の場合、予め定められた所定の処理を実行することを特徴とするオートカッター装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−71227(P2013−71227A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213720(P2011−213720)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】