オートクライン成長因子受容体および方法
本発明の態様は、癌を含む疾患を診断及び治療するための方法のための方法及び組成物を提供する。一つの態様において腫瘍形成性の診断は、腫瘍形成性が疑われている組織サンプル中でPCDGF受容体発現のレベルを測定することによって達成される。他の態様において、腫瘍形成性の細胞が抗PCDGF療法に反応するであろうかどうかの判断は、腫瘍形成性が疑われている組織サンプル中に測定されるレベルのPCDGF受容体があるかどうかを判断することによって行われる。更に他の態様において、PCDGFの増殖又は過剰発現に関連している疾患を有している被験者を治療する方法は、PCDGF受容体又はその断片を、PCDGFの生物学的な活性を阻害するのに有効な量で患者に投与することを含む。本発明は、単離されたPCDGF受容体核酸分子、及びPCDGF受容体核酸分子によりコードされる蛋白質も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年の10月13日に出願された米国出願番号60/617,683の優先権を主張し、その中の開示は参照として本願明細書の援用される。
【0002】
本発明は細胞生物学、生理学および医学に関連し、88kDaの糖蛋白質成長因子(”GP88”)、およびGP88の発現と生物学的な活性に影響を及ぼす組成物および方法に関係する。本発明は、癌を含む疾患の診断と治療に有用なキット製品、組成物、および方法にも関連する。
【背景技術】
【0003】
多細胞生物における増殖と分化は、高度に制御された過程の対象である。癌細胞を区別する特徴はこの過程における制御の欠如であり、増殖と分化は制御を脱して制御されない成長をする結果となる。著しい研究の努力が、正常細胞と癌細胞の間のこの差をより理解することに向けられている。研究の焦点となっている一つの分野が成長因子であり、より特異的には、オートクライン成長刺激である。
【0004】
成長因子は、成長、分化、移動、および遺伝子発現に関するメッセージを細胞へ運ぶポリペプチドである。典型的には、成長因子は一つの細胞において作られて、他の細胞へ作用して増殖を刺激する。しかし、一定の悪性の細胞は、培養において、オートクライン成長機構へのより大きな、又は完全な依存を示す。このオートクライン挙動が観察される悪性細胞は、他の細胞による成長因子の産生の制御を回避し、それによってそれらの成長は脱制御される。
【0005】
オートクライン成長制御の研究は、細胞成長の機構の理解を進め、癌の診断と治療の重要な進歩へ導く。このために多くの成長因子が研究され、それにはインスリン様成長因子(”IGF1”と”IGF2”)、ガストリン放出ペプチド(”GRP”)、トランスフォーミング成長因子アルファとベータ(”TGF-a”と”TGF-b”)、および上皮成長因子(”EGF”)が含まれる。
【0006】
本発明は近年発見された成長因子に向けられたものである。この成長因子は腫瘍形成性が高い”PC細胞”の培養培地中に最初に見出され、それは、脂質生成性細胞株1246由来の奇形腫から単離されたインスリン依存性の変異体である。このPC細胞由来の成長因子(”PCDGF”または”GP88”)は88kDaの糖蛋白質オートクライン成長因子であり、正常細胞においては厳密に制御された方法で発現し、腫瘍形成性の細胞において過剰に発現し、制御されない。PCDGF発現又は活性の阻害は、腫瘍形成性細胞の成長を抑制する。PCDGFは68kDaの蛋白質コアと20kDaの糖部分から成る。PCDGFは二重システインリッチポリペプチドの新たなファミリーに属し、腫瘍形成性が高いマウス奇形腫由来のPC細胞株の培地から新たに単離された。PCDGFは、肝臓、腎臓、乳房、骨、骨髄、精巣、前立腺、脳、卵巣、皮膚、および肺を含む、いくつかのマウスとヒトの腫瘍中に過剰発現していることが見られている。
【0007】
必用とされるのは、PCDGFの受容体に使用するための方法および組成物であって、PCDGFの生物学的な活性に干渉し、癌のような疾患を診断および治療するためのものである。
【発明の開示】
【0008】
(概要)
本発明の態様は、癌を含む疾患を診断および治療する方法のための方法および組成物を提供する。一つの態様において腫瘍形成性の診断は、例えば腫瘍形成性であると疑われている組織サンプルにおいて、PCDGF受容体発現のレベルを測定することにより達成される。他の態様において、例えば腫瘍形成性であると疑われている組織サンプルにおいて、測定されるレベルのPCDGFがあるかどうかを判断することにより、腫瘍形成性の細胞が抗PCDGF療法に反応性であるかどうかの判断がなされる。「組織」という用語は、ヒト又は動物中の任意の組織又は体液を言い、これらに限定されるものではないが、乳房、前立腺、血液、血清、脳脊髄液、肝臓、腎臓、乳房、頭部及び頚部、咽頭、胸腺、脾臓、胃、結腸、結腸直腸、子宮、子宮頸管、骨、骨髄、精巣、脳、神経組織、卵巣、皮膚及び肺を含む。
【0009】
他の態様において、PCDGFの増大又は過剰発現と関連した疾患を有する被験者を治療する方法は、PCDGF受容体又はその断片を、PCDGFの生物学的活性を阻害するのに有効な量を患者に投与することを含む。本発明の態様は、配列番号1を有する単離された核酸分子及びその断片;配列番号2を有する単離された核酸分子及びその断片;配列番号1を有する核酸分子によりコードされる単離された蛋白質;及び配列番号2を有する核酸分子によりコードされる単離された蛋白質も含む。
【0010】
添付された図は組み込まれて本願明細書の一部を構成するが、説明と共に本発明の態様を描くものであって、本発明の本質を説明するのに役立つ。
【0011】
(詳細な説明)
以下本発明の好適な態様を下記の実施例と共に詳細に参照することにより、本発明の本質を説明するのに役立つであろう。
【0012】
PCDGFは、繊維芽細胞、PC細胞、及び哺乳動物の上皮細胞を含む、多くの細胞株の成長モジュレーターである。腫瘍形成性が高いPC細胞と親の1246株におけるPCDGFの発現を比較すると、非腫瘍形成性の細胞においてPCDGF発現は非常に低く、腫瘍形成性が高い細胞では過剰発現していることが示された。同じ結果がヒトの乳癌において観察され、非腫瘍形成性の哺乳動物の上皮細胞においてはPCDGF発現が非常に低く、乳癌細胞においては増加した。
【0013】
PCDGFアンタゴニスト(例えば、抗PCDGF抗体、アンチセンス核酸、抑制性小RNA(siRNA))はPCDGFの活性と腫瘍形成性細胞の成長を阻害するか又は干渉する。細胞を抗PCDGF中和抗体で処理することにより、又は細胞をアンチセンスPCDGF cDNAでトランスフェクトすることにより、奇形腫由来の細胞と乳癌細胞の両者においてPCDGFの活性は抑制された。奇形腫細胞又は乳癌細胞において細胞をPCDGFアンタゴニストで処理すると、細胞増殖とインビボの腫瘍形成性が完全に抑制された。
【0014】
125I-PCDGFのミンク肺上皮細胞株CCL64への結合をスキャッチャード解析すると、2つのクラスの細胞表層受容体が存在していることが判った。4.3+/-1.5×10-11MのKdを有し560+/-170サイト/細胞の高親和性のクラス、及び3.9+/-1.9×10-9MのKdを有し17,000+/-5900サイト/細胞の低い親和性のクラスである。架橋研究及びオートラジオグラフィー解析により、190-195kDaの分子量を有する一つの主要な架橋されたバンドが存在することが明らかになり、それは主要バンドの約110kDaの結合していない受容体に関する分子量に相当する。PCDGF受容体は受容体のチロシンキナーゼファミリーに属する。PCDGFが細胞表層へ結合すると、PCDGF受容体はチロシン残基のリン酸化により活性化され、IRS-1、SHC、及びGrb2を含むいくつかのシグナル分子のリン酸化を引き起こし、MAPキナーゼERK-2の活性化へ至る。
【0015】
本発明の好適な態様は、PCDGF受容体をコードする単離された核酸分子を含む。「受容体」という用語は、リガンド結合又はリガンド結合の結果物を調節するコレセプターを含む。この相互作用は、数多くの可能な効果を有する多成分複合体を形成する結果となるかもしれない。受容体/コレセプター複合体はリガンド結合を安定化又は促進するかもしれず、あるいはシグナリング及び/又はリガンド結合に対する機能的反応を開始又は促進するかもしれない。1つの態様においてPCDGF受容体をコードする核酸分子は、図1(配列番号1)に示される核酸配列、及び/又は図2(配列番号2)に示される核酸配列、及びそれらの断片からなる。本発明の他の好適な態様には、PCDGF受容体核酸分子(例えば、配列番号1及び配列番号2)によってコードされる蛋白質を含む。他の態様において、PCDGF受容体をコードする核酸分子は、図1(配列番号1)に示される核酸配列、及び/又は図2(配列番号2)に示される核酸配列、及びそれらの断片から本質的に構成される。「から本質的に構成される」という用語は、図1(配列番号1)に示されている核酸、及び/又は図2(配列番号2)に示されている核酸、及び請求された発明の基本的及び新規な特性に著しく影響しない付加的な成分(例えば担体、緩衝液、化学的な一部分、及びトキシン)を言う。
【0016】
PCDGF受容体核酸分子及び/又はPCDGF受容体蛋白質のレベルの上昇は、種々の癌(例えば、奇形腫、神経芽細胞腫、グリア芽腫、星状細胞腫、肉腫、及び、とりわけ、乳房、前立腺、血液、脳脊髄液、肝臓、腎臓、乳房、頭部及び頚部、咽頭、胸腺、脾臓、胃、結腸、結腸直腸、子宮、子宮頸管、骨、骨髄、精巣、脳、神経組織、卵巣、皮膚及び肺の癌)の開始、進展、進行と関連している。腫瘍形成性の増加は、PCDGF受容体発現の増加及び/又はPCDGF感受性の増加と関連している。腫瘍組織におけるPCDGF受容体の発現レベルは、周囲の正常組織と比較してより高い。
【0017】
従って、PCDGF受容体の発現レベルの増加を、腫瘍及び癌(例えば、奇形腫、神経芽細胞腫、グリア芽腫、星状細胞腫、肉腫、及び乳房、前立腺、血液、脳脊髄液、肝臓、腎臓、乳房、頭部及び頚部、咽頭、胸腺、脾臓、胃、結腸、結腸直腸、子宮、子宮頸管、骨、骨髄、精巣、脳、神経組織、卵巣、皮膚及び肺の癌)を検出する診断上のアプローチとして使用できる。ヒト腫瘍の生検において、正常な対応する組織におけるPCDGF受容体のレベルと比較したときに、PCDGF受容体発現が変化(例えば増加)していることは、解析された組織生検の腫瘍形成性又は悪性の状態を示す。PCDGF受容体の発現の増加は、例えば、mRNAレベルで又は蛋白質レベルで測定できる。例えば、PCDGF受容体のmRNA発現は、ノザンブロット解析、RNAseプロテクションアッセイ、又はRT-PCRのいずれかによって測定できる。PCDGF受容体の蛋白質の発現は、例えば、抗PCDGF抗体を用いて、ELISA、EIA、又はRIAによって定量できる。組織抽出物におけるPCDGF受容体の発現レベルを対応する正常組織と比較し、特定の癌の腫瘍形成性の程度を予測するために、又はこの特定の癌が抗PCDGF療法に反応するかどうかを判断するために使用することができる。一つの態様において、PCDGF受容体の発現が約10倍増加している細胞は腫瘍形成性が高い。本発明の他の態様において、PCDGF受容体のレベルが10倍増加している乳腺細胞は腫瘍形成性が高く、抗エストロゲン療法の抗腫瘍効果に耐性を有する。
【0018】
「治療的診断法(テラノスティック)」という用語は、疾患を診断するのに診断テストを使用し、正しい治療方法を選択し、治療に対する患者の反応をモニターすることをいう。PCDGF受容体のレベルを測定することは、腫瘍及び癌(例えば、奇形腫、神経芽細胞腫、グリア芽腫、星状細胞腫、肉腫、及び乳房、前立腺、血液、脳脊髄液、肝臓、腎臓、乳房、頭部及び頚部、咽頭、胸腺、脾臓、胃、結腸、結腸直腸、子宮、子宮頸管、骨、骨髄、精巣、脳、神経組織、卵巣、皮膚及び肺の癌)の検出、治療、及びモニターに関連したテラノスティックのために使用することができる。例えば、正常組織と比較して、生検又は組織サンプルにおいてPCDGF受容体のレベルが上昇していることは、腫瘍形成性及び/又は腫瘍あるいは癌の存在を示唆する。PCDGFアンタゴニスト(例えば、PCDGF抗体、PCDGF受容体、PCDGFアンチセンス、及びPCDGF siRNA)及び/又は他の抗癌剤を腫瘍の治療のために使用できる。腫瘍又は癌の腫瘍形成性は、PCDGF受容体のレベルを定期的に測定することによりモニターできる。本発明の1態様において、血液中のPCDGF受容体のレベルは、患者の腫瘍又は癌の腫瘍形成性を示す。
【0019】
他の好適な態様において、本発明はPCDGF受容体を産生できる細胞及び細胞株(例えば、V’1-P、2F6、AG-BC-1又はO4EM)に向けられている。これらの細胞株の単離及びクローニングを、以下において述べる。PCDGF受容体を産生する細胞株を、PCDGF受容体核酸及び蛋白質を産生するのに、さらにPCDGF受容体抗体、アンチセンス分子及びsiRNAを開発するのに使用できる。
【0020】
他の好適な態様において、PCDGF受容体核酸及び蛋白質を用いて、PCDGFの生物学的な活性を阻害できる。例えばPCDGF受容体蛋白質を患者に投与し、PCDGFと癌細胞表層の内在性PCDGF受容体の相互作用に干渉したり又は妨害したりすることができる。この態様において、投与されたPCDGF受容体はPCDGFの生物学的な活性に対抗し、腫瘍細胞の成長を阻害したり又は干渉したりするのに使用できる。他の態様において、PCDGF受容体の生物学的に活性な断片(例えば、PCDGFに結合する能力を保持している断片)を、腫瘍細胞の成長を阻害したり又は干渉したりするのに使用できる。
【0021】
PCDGF受容体及びその断片を用いて、PCDGFの増大又は過剰発現に関連した疾患を治療することができ、その疾患には癌、HIV及び他のウイルス感染、自己免疫疾患、及び炎症が含まれるが、それらに限定されるものではない。PCDGF及びその断片を用いて、治療を必用とする患者へPCDGF受容体及び/又は断片を投与することにより、癌又は腫瘍の発生又は再発を防ぐことができる。PCDGF受容体及び断片を、患者に投与するための医薬組成物中に含めることができる。
【0022】
PCDGF受容体に対するアンタゴニスト(抗体、アンチセンス、siRNA、及び小分子)を用いて、PCDGFの活性、及びPCDGFの増大及び過剰発現に関連する疾患を防止又は抑制することができる。「PCDGF受容体アンタゴニスト」という用語は、PCDGF受容体又はPCDGF受容体の性質を維持しているPCDGF受容体の任意の類似物質又は誘導体と結合し、干渉し、又はその活性を阻害することができる任意の分子(例えば、蛋白質、抗体、ペプチド、小分子、核酸、アンチセンス、又はsiRNA)を言う。
【0023】
一つの態様において、PCDGF受容体アンタゴニストには、PCDGF受容体を標的とするか、又は選択的に結合することができる分子が含まれ、例えばトキシン又は他の化合物又は分子を運搬して、細胞を殺すか又は細胞成長を阻害する。例えば、PCDGF受容体抗体をトキシン又は化学療法剤と結合させることができ、抗体がPCDGF受容体に結合した後にそれが腫瘍細胞へ運搬される。PCDGF受容体アンタゴニストには、PCDGF受容体の活性を制御する分子の生物学的活性を調節する分子(例えば、ペプチド、小分子、アンチセンス分子、及びsiRNA)が含まれる。PCDGFアンタゴニストは、例えばADCC(抗体依存的な細胞毒性)を介して免疫反応を補強する抗体であってもよい。
【0024】
PCDGF受容体アンタゴニストには、免疫特異的にPCDGF受容体と結合し、PCDGFが受容体へ結合するのを防ぐ抗体も含まれる。そのような抗PCDGF受容体抗体にはハイブリドーマ細胞株から産生された抗体も含まれ、そのような細胞株には6G8ハイブリドーマ細胞株(ATCCアクセッション番号PTA-5263)及び5A8ハイブリドーマ細胞株(ATCCアクセッション番号PTA-5594)が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0025】
本願明細書において抗体という用語は、PCDGF受容体と免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を言う。言い換えれば、免疫特異的な抗体は、その抗体標的に対して特異的である(例えば、他の抗原と非特異的に結合又は連結しない)。好ましくは、そのような抗体は他の抗原と交差反応しない。これらの特異的な抗体には、ヒト及びヒト以外のポリクローナル抗体、ヒト及びヒト以外の物クローナル抗体(mAbs)、キメラ抗体、抗イディオタイプ抗体(抗-IdAb)、中和抗体、非中和抗体、及びヒト化抗体及びそれら断片が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0026】
種々の送達システムが知られており、本発明の医薬組成物を投与するのに使用でる。例えば、リポソームへのカプセル封入、微粒子、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現できる組み換え細胞、受容体を介したエンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu, 1987, J. Biol. Chem., 262: 4429-4432を見よ)である。導入の方法には、皮内、筋肉内、腹膜内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外,及び経口の経路が含まれるが、それらに限定されるものではない。化合物を任意の都合が良い経路、例えば、輸液又はボーラス注射により、上皮又は皮膚と粘膜の(mucocutaneous)ライニング(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜等)を介した吸収により投与することができ、他の生物学的に活性な薬剤と共に投与することができる。投与は全身的又は局所的に行うことができる。好適な態様において、本発明の医薬組成物を、任意の適切な経路により冒された組織内に導入することは望ましい。例えば吸入器又はネブライザーを使用することにより、及びエアゾール化剤と共に製剤とすることにより、肺への投与も採用することができる。
【0027】
特定の態様において、本発明の医薬組成物を、治療が必要な範囲へ局所的に投与することは望ましい。これは例えば、手術の間の局所的な注入により、例えば手術後の創傷包帯と併せた局所的な適用により、注射により、カテーテルの手段により、座薬の手段により、インプラントの手段により達成することができるが、それらに限定されるものではなく、前記のインプラントは多孔性、非多孔性、又はゲル状の材料のものであり、例えばシラスティックな膜などの膜、又は繊維を含んでいる。一つの態様において投与は、疾患組織の部位(又は先の部位)における直接的な注射によってもよい。
【0028】
他の態様において、この医薬組成物はベヒクル中で、特にリポソーム中で運搬される(例えば、Langer, 1990 Science 249: 1527-1533; Treat et al., Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp.353-365 (1989); Lopez-Berestein, 同書, pp.317-327; 同書を全般的に見よ)。
【0029】
他の態様において、その医薬組成物は制御された放出システム中で運搬できる。一つの態様において、ポンプを使用することができる(上記のLanger; Sefton, 1987 CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14: 201; Buchwald et al., 1980 Surgery 88:507; 及びSaudek et al., 1989 N.Engl. J. Med. 321: 574を見よ)。他の態様において、重合体の材料を使用できる(Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley, New York (1984); Ranger and Peppas, 1983 J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23: 61; Levy et al., 1989 Science 228: 190; During et al., 1989 Ann. Neurol. 25: 351; Howard et al., 1989, J. Neurosurg 71: 105も見よ)。更なる他の態様において、制御された放出システムをその組成物の標的(例えば乳腺組織)の近傍に置くことができ、それによって全身の用量の一部分しか必用としない(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, 上記, vol.2, pp.115-138 (1984))。他の制御された放出システムがLangerの総説において議論されている(1990, Science 249: 1527-1533)。
【0030】
本発明の医薬組成物は更に、薬学的に許容可能な担体を含む。特定の態様において、「薬学的に許容可能な」という用語は、連邦又は州政府の監督官庁によって認可されたこと、あるいは米国薬局方に掲載されたこと、あるいは動物、特にヒトに使用されるものであると一般的に認識された他の薬物類を意味する。「担体」という用語は、それと共に医薬組成物が投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はベヒクルを言う。そのような医薬担体は、水や油などの無菌の液体でもよく、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油など、石油、動物、植物又は合成由来のものを含む。その医薬組成物が静脈内投与されるときには、水は好適な担体である。水溶性担体として、特に注射用溶液として、生理食塩水及び水溶性デキストロース及びグリセロール溶液を使用することができる。適切な医薬賦形剤には、澱粉、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。この組成物は、もし望むならば、少量の湿潤剤又は乳化剤、又はpH緩衝剤も含むこともできる。これらの組成物は溶液、懸濁液、乳液、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、徐放性製剤などの型をとってもよい。本組成物はトリグリセライドなどの伝統的な結合剤及び担体と共に、座薬として製剤してもよい。経口製剤には、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、糖類ナトリウム塩、セルロース、炭酸マグネシウムなどの、標準的な担体を含めることができる。適切な医薬担体の例は、E.W.Martin による”Remington’s Pharmaceutical Sciences”に述べられている。その製剤は投与の様式に適応しているべきである。
【0031】
好適な態様において本組成物は、ヒトへの静脈内投与に適した医薬組成物としてのルーチンな手段に従って製剤される。典型的には、静脈内投与のための組成物は無菌で等張の水性緩衝液の溶液である。必用な場合には、本組成物は可溶化剤と、注射の部位の苦痛を緩和するためにリグノカインなどの局所麻酔薬も含む。通常は、分離した又は混合された単位投与形態のいずれかで成分が供給され、その投与形態は例えば、乾燥した凍結乾燥粉末、又はアンプル又はサケット(sachette)などの密封された容器中の水を含まない濃縮物の形態であって、活性薬剤の品質を表す。本組成物が輸液によって投与されるべき場合には、無菌の医薬グレードの水又は生理食塩水を含んでいる輸液ボトルと共に販売される。本組成物が注射によって投与される場合には、注射用無菌水又は生理食塩水のアンプルが提供され、それによって投与前に成分が混合される。
【0032】
本発明の医薬組成物は、中性又は塩の形で製剤される。薬学的に許容可能な塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等から得られたものなど、遊離のアミノ基と形成するもの、及び、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等から得られたものなど、遊離のカルボキシル基と形成するものが含まれる。
【0033】
特定の疾患又は状態の治療に有効であるであろう本発明の医薬組成物の量は、その病気又は状態の性質に依存するであろうし、標準的な臨床的な技術によって判断される。加えて、最適な容量範囲を同定する助けとして、必要に応じてインビトロアッセイを採用してもよい。本製剤において採用されるべき正確な用量も、投与経路と疾患又は病気の重篤度に依存するであろうし、医師の判断と各患者の状況に従って決定されるべきである。しかし、静脈注射に適した用量範囲は通常、体重1キログラムあたり活性化合物が約20-500マイクログラムである。鼻腔内投与に適した用量範囲は通常、体重1キログラムあたり約0.01 pgから1 mgである。インビトロ又は動物モデル試験システムから得られた用量反応曲線から、有効な用量を推定することができる。座薬は通常、活性成分を重量で0.5%から10%の範囲で;経口製剤は好ましくは10%から95%の活性成分を含むことができる。
【0034】
特定の問題又は状況に本発明の教示を適用することは、本願明細書中に含まれる教示に照らして当業者の能力の範囲内であろうことを理解するべきである。本発明を以下の非限定的な実施例により、更に十分に説明する。
【実施例】
【0035】
例えばcDNAライブラリーから得た推定上のPCDGF受容体の核酸を含んでいる核酸クローンによって、PCDGF受容体を発現していない細胞をトランスフェクトすることにより、PCDGF受容体を単離し、同定することができる。得られたトランスフェクトされた細胞を、PCDGFに結合するか、あるいはPCDGF受容体に対する抗体に結合する能力の獲得によってスクリ−ニングできる。我々は、チャイニーズハムスターの卵巣細胞株であるCHOが、PCDGFに結合したり、反応したりしないことを示した。そこで、発現クローニングの戦略における受容細胞としてCHO細胞を使用することができる。
【0036】
図1は6G8発現クローン化細胞から単離されたPCDGFの配列を示す。図2はPCDGFと結合する細胞から単離されたPCDGF受容体のcDNA配列を示す。PCDGF受容体発現細胞株とハイブリダイズするmRNAのサイズを試験するためにノザンブロット解析を行なった。
【0037】
図3に示されるように、ノザンブロット解析は、3C3由来のmRNAとハイブリダイゼーションはなかったことを示しており、それに対して、いくつかの種のmRNAは2F6 mRNAとハイブリダイズし、いくつかのメッセージ又はいくつかの転写開始部位のいずれかを示している。2F6細胞(6G8と結合する細胞株)からmRNAが抽出された。3C3は発現クローニングシステムから単離された細胞株であるが、6G8又はPCDGFとは結合しない。ネガティブコントロールとして3C3を使用した。図4に見られるように、ラベルされたAGGP88-1プローブとハイブリダイズするmRNAの大きさを検討するために、ノザンブロット解析を行った。全ての細胞株において、約1kBの大きさを有する1つのハイブリダイゼーションバンドが観察された。全ての種で保存されているので、これは全ての細胞株において見られる内在性リボゾーマル蛋白質RPL 7a mRNAに相当する。約4kBの大きさを有する第二のバンドはV1-P細胞中でのみ観察され、それよりAG-GP88-1 cDNAが単離された。このバンドは、PCDGF受容体mRNAに相当する。
【0038】
AG-BC1細胞由来のcDNAライブラリーが、細胞の選択のためにネオマイシン耐性遺伝子を含んでいるpLXSNレトロウイルスベクターへ構築された(図5)。一度ライブラリーが構築されたら、PCDGFへ結合する能力の獲得に関してPCDGF受容体抗体6G8を使用し、クローン化された細胞株をスクリーニングした。PCDGFと結合する細胞株の能力に基づいて細胞株も単離した(図6)。図7に示されるように、6G8と結合する能力を有する20個の細胞株クローンのうち、4つがPCDGFとも結合することができた。
【0039】
我々はPCDGF受容体を過剰発現している乳癌細胞株を開発し、これらの細胞から、PCDGF/PCDGF受容体cDNAの起源として使用することができるcDNAライブラリーを確立した。乳癌レトロウイルスcDNAライブラリーを、元来O4EMと呼ばれていた乳癌細胞株由来のmRNAを用いて構築し、今はPCDGF/PCDGF受容体(以下PCDGF-Rと名付ける)を過剰発現しているAG-BC1と改名されている。乳癌MCF-7細胞と比べた時に、AG-BC1はPCDGF/PCDGF結合の10倍の増加を示し、これらの細胞はPCDGF-Rが過剰発現していることを示唆している。
【0040】
ビオチン化6G8に次いでストレプトアビジン-HRPにより細胞の染色を行い、次いで図8に示すように化学的な検出を行なった。CHO細胞はPCDGFに結合せず、それを発現もせず、ネガティブコントロールとして用いた。MCF-7及びBC細胞は、PCDGFを発現して結合するポシティブコントロールである。2F6細胞はスクリーニングの手順の間に同定されたポシティブコントロ−ルであり、PCDGF受容体を産生する。
【0041】
図9に見られるように、6G8の選択により発現クローニングされた2F6細胞は、6G8抗体と結合し、刺激されたMAPキナーゼ活性により示唆されるように、PCDGFと反応する。細胞株1B4(発現クローニングされたCHO細胞)は、それがビオチン化されたPCDGFと結合する能力により選択された。細胞溶解物を調製する前に、細胞をPCDGF(200 ng/ml)、1%FBS、又はベヒクルのみ(コントロールC)で10分間処理し、ERK1/2ホスホ特異的な抗体によるウエスタンブロット解析を用いて、ERK1/2 MAPキナーゼのリン酸化を試験した。図9は2F6と1B4細胞の両者において、PCDGF/PCDGFの添加はErk1/2のリン酸化の増加をもたらすことを示している。PCDGFに結合しない元来のCHO細胞は、PCDGFに応じたp-Erk1/2の増加を全く示さなかった。ポシティブコントロールのMCF-7細胞は、PCDGFと血清の両者に応じてリン酸化の増加を示した。
【0042】
図10は、ビオチン化されたPCDGFが、発現クローニングされた細胞4B4、V-1Pへ結合することを示す。ストレプトアビジンHRPが、細胞表層PCDGF受容体へ結合したビオチン化されたPCDGF/PCDGFへ結合し、次いて化学染色を行うことにより結合は可視化された。PCDGF結合細胞は青く見える。ネガティブコントロールはCHO細胞である。図10は、CHO細胞(ネガティブコントロール)、BC(PCDGF受容体を発現している)、4A8(PCDGF結合について陰性)、4B4(PCDGF結合について陽性)、4A6(PCDGF結合について陽性)、及びV-1P(PCDGF結合について陽性)を含む、種々の細胞株へのPCDGFへの結合を示す。
【0043】
図11は、2F6からのゲノムDNAの単離を示す。6G8選択細胞2F6のゲノムDNA中に含まれているcDNAインサートは、cDNAにフランキングしているレトロウイルスのpLXSNプライマーを用いて、ゲノミックPCRにより単離された。CHO細胞はネガティブコントロールとして働き、6G8又はPCDGFと結合しなかった。3C3はネガティブコントロールであり、PCRの手順において、6G8が結合しないCHO由来のクローンである。
【0044】
図12は、PCDGF選択細胞V-1PゲノムDNA中に含まれたcDNAインサートの単離を示す図であり、レトロウイルスのpLXSNプライマーを用いて、フランキングcDNAを増幅している。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、6G8発現クローニングされた細胞から単離されたPCDGF受容体の配列を示す。
【図2】図2は、PCDGFと結合する細胞から単離されたPCDGF受容体のcDNA配列を示す。
【図3】図3は、3C3由来のmRNAとハイブリダイゼーションしないことを示すノザンブロット解析の結果である。
【図4】図4は、C3Hマウス癌組織と周囲の正常組織における、インビボのGP88発現レベルを示す。
【図5】図5は、細胞の選択のためにネオマイシン耐性遺伝子を含んでいるpLXSNレトロウイルスベクターへ構築されたAG-BC1細胞由来のcDNAを示す。
【図6】図6は、PCDGF受容体の発現クローニングの例示となる工程の説明である。
【図7】図7は、PCDGFと結合する能力の獲得のために、PCDGF受容体抗体6G8を用いてスクリーニングされた細胞株の能力を表すチャートである。
【図8】図8は、ビオチン化6G8による細胞の免疫組織化学染色を示す。
【図9】図9は、リン酸化されたErk1/2(p44/42)のウエスタンブロット解析の結果を示す。この結果は、6G8選択により発現クローニングされた2F6細胞は6G8抗体と結合し、MAPキナーゼ活性の刺激で示されるようにPCDGFと反応する。
【図10】図10は、発現クローニングされた細胞である4B4、V-1Pへの、ビオチン化PCDGFの結合を示す。
【図11】図11は、2F6からのゲノムDNAの単離を示す。
【図12】図12は、レトロウイルスのpLXSNプライマーを用いてPCDGF選択細胞V-1PのゲノムDNA中に含まれるcDNAインサートを単離し、フランキングcDNAを増幅することを示す。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年の10月13日に出願された米国出願番号60/617,683の優先権を主張し、その中の開示は参照として本願明細書の援用される。
【0002】
本発明は細胞生物学、生理学および医学に関連し、88kDaの糖蛋白質成長因子(”GP88”)、およびGP88の発現と生物学的な活性に影響を及ぼす組成物および方法に関係する。本発明は、癌を含む疾患の診断と治療に有用なキット製品、組成物、および方法にも関連する。
【背景技術】
【0003】
多細胞生物における増殖と分化は、高度に制御された過程の対象である。癌細胞を区別する特徴はこの過程における制御の欠如であり、増殖と分化は制御を脱して制御されない成長をする結果となる。著しい研究の努力が、正常細胞と癌細胞の間のこの差をより理解することに向けられている。研究の焦点となっている一つの分野が成長因子であり、より特異的には、オートクライン成長刺激である。
【0004】
成長因子は、成長、分化、移動、および遺伝子発現に関するメッセージを細胞へ運ぶポリペプチドである。典型的には、成長因子は一つの細胞において作られて、他の細胞へ作用して増殖を刺激する。しかし、一定の悪性の細胞は、培養において、オートクライン成長機構へのより大きな、又は完全な依存を示す。このオートクライン挙動が観察される悪性細胞は、他の細胞による成長因子の産生の制御を回避し、それによってそれらの成長は脱制御される。
【0005】
オートクライン成長制御の研究は、細胞成長の機構の理解を進め、癌の診断と治療の重要な進歩へ導く。このために多くの成長因子が研究され、それにはインスリン様成長因子(”IGF1”と”IGF2”)、ガストリン放出ペプチド(”GRP”)、トランスフォーミング成長因子アルファとベータ(”TGF-a”と”TGF-b”)、および上皮成長因子(”EGF”)が含まれる。
【0006】
本発明は近年発見された成長因子に向けられたものである。この成長因子は腫瘍形成性が高い”PC細胞”の培養培地中に最初に見出され、それは、脂質生成性細胞株1246由来の奇形腫から単離されたインスリン依存性の変異体である。このPC細胞由来の成長因子(”PCDGF”または”GP88”)は88kDaの糖蛋白質オートクライン成長因子であり、正常細胞においては厳密に制御された方法で発現し、腫瘍形成性の細胞において過剰に発現し、制御されない。PCDGF発現又は活性の阻害は、腫瘍形成性細胞の成長を抑制する。PCDGFは68kDaの蛋白質コアと20kDaの糖部分から成る。PCDGFは二重システインリッチポリペプチドの新たなファミリーに属し、腫瘍形成性が高いマウス奇形腫由来のPC細胞株の培地から新たに単離された。PCDGFは、肝臓、腎臓、乳房、骨、骨髄、精巣、前立腺、脳、卵巣、皮膚、および肺を含む、いくつかのマウスとヒトの腫瘍中に過剰発現していることが見られている。
【0007】
必用とされるのは、PCDGFの受容体に使用するための方法および組成物であって、PCDGFの生物学的な活性に干渉し、癌のような疾患を診断および治療するためのものである。
【発明の開示】
【0008】
(概要)
本発明の態様は、癌を含む疾患を診断および治療する方法のための方法および組成物を提供する。一つの態様において腫瘍形成性の診断は、例えば腫瘍形成性であると疑われている組織サンプルにおいて、PCDGF受容体発現のレベルを測定することにより達成される。他の態様において、例えば腫瘍形成性であると疑われている組織サンプルにおいて、測定されるレベルのPCDGFがあるかどうかを判断することにより、腫瘍形成性の細胞が抗PCDGF療法に反応性であるかどうかの判断がなされる。「組織」という用語は、ヒト又は動物中の任意の組織又は体液を言い、これらに限定されるものではないが、乳房、前立腺、血液、血清、脳脊髄液、肝臓、腎臓、乳房、頭部及び頚部、咽頭、胸腺、脾臓、胃、結腸、結腸直腸、子宮、子宮頸管、骨、骨髄、精巣、脳、神経組織、卵巣、皮膚及び肺を含む。
【0009】
他の態様において、PCDGFの増大又は過剰発現と関連した疾患を有する被験者を治療する方法は、PCDGF受容体又はその断片を、PCDGFの生物学的活性を阻害するのに有効な量を患者に投与することを含む。本発明の態様は、配列番号1を有する単離された核酸分子及びその断片;配列番号2を有する単離された核酸分子及びその断片;配列番号1を有する核酸分子によりコードされる単離された蛋白質;及び配列番号2を有する核酸分子によりコードされる単離された蛋白質も含む。
【0010】
添付された図は組み込まれて本願明細書の一部を構成するが、説明と共に本発明の態様を描くものであって、本発明の本質を説明するのに役立つ。
【0011】
(詳細な説明)
以下本発明の好適な態様を下記の実施例と共に詳細に参照することにより、本発明の本質を説明するのに役立つであろう。
【0012】
PCDGFは、繊維芽細胞、PC細胞、及び哺乳動物の上皮細胞を含む、多くの細胞株の成長モジュレーターである。腫瘍形成性が高いPC細胞と親の1246株におけるPCDGFの発現を比較すると、非腫瘍形成性の細胞においてPCDGF発現は非常に低く、腫瘍形成性が高い細胞では過剰発現していることが示された。同じ結果がヒトの乳癌において観察され、非腫瘍形成性の哺乳動物の上皮細胞においてはPCDGF発現が非常に低く、乳癌細胞においては増加した。
【0013】
PCDGFアンタゴニスト(例えば、抗PCDGF抗体、アンチセンス核酸、抑制性小RNA(siRNA))はPCDGFの活性と腫瘍形成性細胞の成長を阻害するか又は干渉する。細胞を抗PCDGF中和抗体で処理することにより、又は細胞をアンチセンスPCDGF cDNAでトランスフェクトすることにより、奇形腫由来の細胞と乳癌細胞の両者においてPCDGFの活性は抑制された。奇形腫細胞又は乳癌細胞において細胞をPCDGFアンタゴニストで処理すると、細胞増殖とインビボの腫瘍形成性が完全に抑制された。
【0014】
125I-PCDGFのミンク肺上皮細胞株CCL64への結合をスキャッチャード解析すると、2つのクラスの細胞表層受容体が存在していることが判った。4.3+/-1.5×10-11MのKdを有し560+/-170サイト/細胞の高親和性のクラス、及び3.9+/-1.9×10-9MのKdを有し17,000+/-5900サイト/細胞の低い親和性のクラスである。架橋研究及びオートラジオグラフィー解析により、190-195kDaの分子量を有する一つの主要な架橋されたバンドが存在することが明らかになり、それは主要バンドの約110kDaの結合していない受容体に関する分子量に相当する。PCDGF受容体は受容体のチロシンキナーゼファミリーに属する。PCDGFが細胞表層へ結合すると、PCDGF受容体はチロシン残基のリン酸化により活性化され、IRS-1、SHC、及びGrb2を含むいくつかのシグナル分子のリン酸化を引き起こし、MAPキナーゼERK-2の活性化へ至る。
【0015】
本発明の好適な態様は、PCDGF受容体をコードする単離された核酸分子を含む。「受容体」という用語は、リガンド結合又はリガンド結合の結果物を調節するコレセプターを含む。この相互作用は、数多くの可能な効果を有する多成分複合体を形成する結果となるかもしれない。受容体/コレセプター複合体はリガンド結合を安定化又は促進するかもしれず、あるいはシグナリング及び/又はリガンド結合に対する機能的反応を開始又は促進するかもしれない。1つの態様においてPCDGF受容体をコードする核酸分子は、図1(配列番号1)に示される核酸配列、及び/又は図2(配列番号2)に示される核酸配列、及びそれらの断片からなる。本発明の他の好適な態様には、PCDGF受容体核酸分子(例えば、配列番号1及び配列番号2)によってコードされる蛋白質を含む。他の態様において、PCDGF受容体をコードする核酸分子は、図1(配列番号1)に示される核酸配列、及び/又は図2(配列番号2)に示される核酸配列、及びそれらの断片から本質的に構成される。「から本質的に構成される」という用語は、図1(配列番号1)に示されている核酸、及び/又は図2(配列番号2)に示されている核酸、及び請求された発明の基本的及び新規な特性に著しく影響しない付加的な成分(例えば担体、緩衝液、化学的な一部分、及びトキシン)を言う。
【0016】
PCDGF受容体核酸分子及び/又はPCDGF受容体蛋白質のレベルの上昇は、種々の癌(例えば、奇形腫、神経芽細胞腫、グリア芽腫、星状細胞腫、肉腫、及び、とりわけ、乳房、前立腺、血液、脳脊髄液、肝臓、腎臓、乳房、頭部及び頚部、咽頭、胸腺、脾臓、胃、結腸、結腸直腸、子宮、子宮頸管、骨、骨髄、精巣、脳、神経組織、卵巣、皮膚及び肺の癌)の開始、進展、進行と関連している。腫瘍形成性の増加は、PCDGF受容体発現の増加及び/又はPCDGF感受性の増加と関連している。腫瘍組織におけるPCDGF受容体の発現レベルは、周囲の正常組織と比較してより高い。
【0017】
従って、PCDGF受容体の発現レベルの増加を、腫瘍及び癌(例えば、奇形腫、神経芽細胞腫、グリア芽腫、星状細胞腫、肉腫、及び乳房、前立腺、血液、脳脊髄液、肝臓、腎臓、乳房、頭部及び頚部、咽頭、胸腺、脾臓、胃、結腸、結腸直腸、子宮、子宮頸管、骨、骨髄、精巣、脳、神経組織、卵巣、皮膚及び肺の癌)を検出する診断上のアプローチとして使用できる。ヒト腫瘍の生検において、正常な対応する組織におけるPCDGF受容体のレベルと比較したときに、PCDGF受容体発現が変化(例えば増加)していることは、解析された組織生検の腫瘍形成性又は悪性の状態を示す。PCDGF受容体の発現の増加は、例えば、mRNAレベルで又は蛋白質レベルで測定できる。例えば、PCDGF受容体のmRNA発現は、ノザンブロット解析、RNAseプロテクションアッセイ、又はRT-PCRのいずれかによって測定できる。PCDGF受容体の蛋白質の発現は、例えば、抗PCDGF抗体を用いて、ELISA、EIA、又はRIAによって定量できる。組織抽出物におけるPCDGF受容体の発現レベルを対応する正常組織と比較し、特定の癌の腫瘍形成性の程度を予測するために、又はこの特定の癌が抗PCDGF療法に反応するかどうかを判断するために使用することができる。一つの態様において、PCDGF受容体の発現が約10倍増加している細胞は腫瘍形成性が高い。本発明の他の態様において、PCDGF受容体のレベルが10倍増加している乳腺細胞は腫瘍形成性が高く、抗エストロゲン療法の抗腫瘍効果に耐性を有する。
【0018】
「治療的診断法(テラノスティック)」という用語は、疾患を診断するのに診断テストを使用し、正しい治療方法を選択し、治療に対する患者の反応をモニターすることをいう。PCDGF受容体のレベルを測定することは、腫瘍及び癌(例えば、奇形腫、神経芽細胞腫、グリア芽腫、星状細胞腫、肉腫、及び乳房、前立腺、血液、脳脊髄液、肝臓、腎臓、乳房、頭部及び頚部、咽頭、胸腺、脾臓、胃、結腸、結腸直腸、子宮、子宮頸管、骨、骨髄、精巣、脳、神経組織、卵巣、皮膚及び肺の癌)の検出、治療、及びモニターに関連したテラノスティックのために使用することができる。例えば、正常組織と比較して、生検又は組織サンプルにおいてPCDGF受容体のレベルが上昇していることは、腫瘍形成性及び/又は腫瘍あるいは癌の存在を示唆する。PCDGFアンタゴニスト(例えば、PCDGF抗体、PCDGF受容体、PCDGFアンチセンス、及びPCDGF siRNA)及び/又は他の抗癌剤を腫瘍の治療のために使用できる。腫瘍又は癌の腫瘍形成性は、PCDGF受容体のレベルを定期的に測定することによりモニターできる。本発明の1態様において、血液中のPCDGF受容体のレベルは、患者の腫瘍又は癌の腫瘍形成性を示す。
【0019】
他の好適な態様において、本発明はPCDGF受容体を産生できる細胞及び細胞株(例えば、V’1-P、2F6、AG-BC-1又はO4EM)に向けられている。これらの細胞株の単離及びクローニングを、以下において述べる。PCDGF受容体を産生する細胞株を、PCDGF受容体核酸及び蛋白質を産生するのに、さらにPCDGF受容体抗体、アンチセンス分子及びsiRNAを開発するのに使用できる。
【0020】
他の好適な態様において、PCDGF受容体核酸及び蛋白質を用いて、PCDGFの生物学的な活性を阻害できる。例えばPCDGF受容体蛋白質を患者に投与し、PCDGFと癌細胞表層の内在性PCDGF受容体の相互作用に干渉したり又は妨害したりすることができる。この態様において、投与されたPCDGF受容体はPCDGFの生物学的な活性に対抗し、腫瘍細胞の成長を阻害したり又は干渉したりするのに使用できる。他の態様において、PCDGF受容体の生物学的に活性な断片(例えば、PCDGFに結合する能力を保持している断片)を、腫瘍細胞の成長を阻害したり又は干渉したりするのに使用できる。
【0021】
PCDGF受容体及びその断片を用いて、PCDGFの増大又は過剰発現に関連した疾患を治療することができ、その疾患には癌、HIV及び他のウイルス感染、自己免疫疾患、及び炎症が含まれるが、それらに限定されるものではない。PCDGF及びその断片を用いて、治療を必用とする患者へPCDGF受容体及び/又は断片を投与することにより、癌又は腫瘍の発生又は再発を防ぐことができる。PCDGF受容体及び断片を、患者に投与するための医薬組成物中に含めることができる。
【0022】
PCDGF受容体に対するアンタゴニスト(抗体、アンチセンス、siRNA、及び小分子)を用いて、PCDGFの活性、及びPCDGFの増大及び過剰発現に関連する疾患を防止又は抑制することができる。「PCDGF受容体アンタゴニスト」という用語は、PCDGF受容体又はPCDGF受容体の性質を維持しているPCDGF受容体の任意の類似物質又は誘導体と結合し、干渉し、又はその活性を阻害することができる任意の分子(例えば、蛋白質、抗体、ペプチド、小分子、核酸、アンチセンス、又はsiRNA)を言う。
【0023】
一つの態様において、PCDGF受容体アンタゴニストには、PCDGF受容体を標的とするか、又は選択的に結合することができる分子が含まれ、例えばトキシン又は他の化合物又は分子を運搬して、細胞を殺すか又は細胞成長を阻害する。例えば、PCDGF受容体抗体をトキシン又は化学療法剤と結合させることができ、抗体がPCDGF受容体に結合した後にそれが腫瘍細胞へ運搬される。PCDGF受容体アンタゴニストには、PCDGF受容体の活性を制御する分子の生物学的活性を調節する分子(例えば、ペプチド、小分子、アンチセンス分子、及びsiRNA)が含まれる。PCDGFアンタゴニストは、例えばADCC(抗体依存的な細胞毒性)を介して免疫反応を補強する抗体であってもよい。
【0024】
PCDGF受容体アンタゴニストには、免疫特異的にPCDGF受容体と結合し、PCDGFが受容体へ結合するのを防ぐ抗体も含まれる。そのような抗PCDGF受容体抗体にはハイブリドーマ細胞株から産生された抗体も含まれ、そのような細胞株には6G8ハイブリドーマ細胞株(ATCCアクセッション番号PTA-5263)及び5A8ハイブリドーマ細胞株(ATCCアクセッション番号PTA-5594)が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0025】
本願明細書において抗体という用語は、PCDGF受容体と免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を言う。言い換えれば、免疫特異的な抗体は、その抗体標的に対して特異的である(例えば、他の抗原と非特異的に結合又は連結しない)。好ましくは、そのような抗体は他の抗原と交差反応しない。これらの特異的な抗体には、ヒト及びヒト以外のポリクローナル抗体、ヒト及びヒト以外の物クローナル抗体(mAbs)、キメラ抗体、抗イディオタイプ抗体(抗-IdAb)、中和抗体、非中和抗体、及びヒト化抗体及びそれら断片が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0026】
種々の送達システムが知られており、本発明の医薬組成物を投与するのに使用でる。例えば、リポソームへのカプセル封入、微粒子、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現できる組み換え細胞、受容体を介したエンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu, 1987, J. Biol. Chem., 262: 4429-4432を見よ)である。導入の方法には、皮内、筋肉内、腹膜内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外,及び経口の経路が含まれるが、それらに限定されるものではない。化合物を任意の都合が良い経路、例えば、輸液又はボーラス注射により、上皮又は皮膚と粘膜の(mucocutaneous)ライニング(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜等)を介した吸収により投与することができ、他の生物学的に活性な薬剤と共に投与することができる。投与は全身的又は局所的に行うことができる。好適な態様において、本発明の医薬組成物を、任意の適切な経路により冒された組織内に導入することは望ましい。例えば吸入器又はネブライザーを使用することにより、及びエアゾール化剤と共に製剤とすることにより、肺への投与も採用することができる。
【0027】
特定の態様において、本発明の医薬組成物を、治療が必要な範囲へ局所的に投与することは望ましい。これは例えば、手術の間の局所的な注入により、例えば手術後の創傷包帯と併せた局所的な適用により、注射により、カテーテルの手段により、座薬の手段により、インプラントの手段により達成することができるが、それらに限定されるものではなく、前記のインプラントは多孔性、非多孔性、又はゲル状の材料のものであり、例えばシラスティックな膜などの膜、又は繊維を含んでいる。一つの態様において投与は、疾患組織の部位(又は先の部位)における直接的な注射によってもよい。
【0028】
他の態様において、この医薬組成物はベヒクル中で、特にリポソーム中で運搬される(例えば、Langer, 1990 Science 249: 1527-1533; Treat et al., Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp.353-365 (1989); Lopez-Berestein, 同書, pp.317-327; 同書を全般的に見よ)。
【0029】
他の態様において、その医薬組成物は制御された放出システム中で運搬できる。一つの態様において、ポンプを使用することができる(上記のLanger; Sefton, 1987 CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14: 201; Buchwald et al., 1980 Surgery 88:507; 及びSaudek et al., 1989 N.Engl. J. Med. 321: 574を見よ)。他の態様において、重合体の材料を使用できる(Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley, New York (1984); Ranger and Peppas, 1983 J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23: 61; Levy et al., 1989 Science 228: 190; During et al., 1989 Ann. Neurol. 25: 351; Howard et al., 1989, J. Neurosurg 71: 105も見よ)。更なる他の態様において、制御された放出システムをその組成物の標的(例えば乳腺組織)の近傍に置くことができ、それによって全身の用量の一部分しか必用としない(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, 上記, vol.2, pp.115-138 (1984))。他の制御された放出システムがLangerの総説において議論されている(1990, Science 249: 1527-1533)。
【0030】
本発明の医薬組成物は更に、薬学的に許容可能な担体を含む。特定の態様において、「薬学的に許容可能な」という用語は、連邦又は州政府の監督官庁によって認可されたこと、あるいは米国薬局方に掲載されたこと、あるいは動物、特にヒトに使用されるものであると一般的に認識された他の薬物類を意味する。「担体」という用語は、それと共に医薬組成物が投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はベヒクルを言う。そのような医薬担体は、水や油などの無菌の液体でもよく、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油など、石油、動物、植物又は合成由来のものを含む。その医薬組成物が静脈内投与されるときには、水は好適な担体である。水溶性担体として、特に注射用溶液として、生理食塩水及び水溶性デキストロース及びグリセロール溶液を使用することができる。適切な医薬賦形剤には、澱粉、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。この組成物は、もし望むならば、少量の湿潤剤又は乳化剤、又はpH緩衝剤も含むこともできる。これらの組成物は溶液、懸濁液、乳液、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、徐放性製剤などの型をとってもよい。本組成物はトリグリセライドなどの伝統的な結合剤及び担体と共に、座薬として製剤してもよい。経口製剤には、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、糖類ナトリウム塩、セルロース、炭酸マグネシウムなどの、標準的な担体を含めることができる。適切な医薬担体の例は、E.W.Martin による”Remington’s Pharmaceutical Sciences”に述べられている。その製剤は投与の様式に適応しているべきである。
【0031】
好適な態様において本組成物は、ヒトへの静脈内投与に適した医薬組成物としてのルーチンな手段に従って製剤される。典型的には、静脈内投与のための組成物は無菌で等張の水性緩衝液の溶液である。必用な場合には、本組成物は可溶化剤と、注射の部位の苦痛を緩和するためにリグノカインなどの局所麻酔薬も含む。通常は、分離した又は混合された単位投与形態のいずれかで成分が供給され、その投与形態は例えば、乾燥した凍結乾燥粉末、又はアンプル又はサケット(sachette)などの密封された容器中の水を含まない濃縮物の形態であって、活性薬剤の品質を表す。本組成物が輸液によって投与されるべき場合には、無菌の医薬グレードの水又は生理食塩水を含んでいる輸液ボトルと共に販売される。本組成物が注射によって投与される場合には、注射用無菌水又は生理食塩水のアンプルが提供され、それによって投与前に成分が混合される。
【0032】
本発明の医薬組成物は、中性又は塩の形で製剤される。薬学的に許容可能な塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等から得られたものなど、遊離のアミノ基と形成するもの、及び、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等から得られたものなど、遊離のカルボキシル基と形成するものが含まれる。
【0033】
特定の疾患又は状態の治療に有効であるであろう本発明の医薬組成物の量は、その病気又は状態の性質に依存するであろうし、標準的な臨床的な技術によって判断される。加えて、最適な容量範囲を同定する助けとして、必要に応じてインビトロアッセイを採用してもよい。本製剤において採用されるべき正確な用量も、投与経路と疾患又は病気の重篤度に依存するであろうし、医師の判断と各患者の状況に従って決定されるべきである。しかし、静脈注射に適した用量範囲は通常、体重1キログラムあたり活性化合物が約20-500マイクログラムである。鼻腔内投与に適した用量範囲は通常、体重1キログラムあたり約0.01 pgから1 mgである。インビトロ又は動物モデル試験システムから得られた用量反応曲線から、有効な用量を推定することができる。座薬は通常、活性成分を重量で0.5%から10%の範囲で;経口製剤は好ましくは10%から95%の活性成分を含むことができる。
【0034】
特定の問題又は状況に本発明の教示を適用することは、本願明細書中に含まれる教示に照らして当業者の能力の範囲内であろうことを理解するべきである。本発明を以下の非限定的な実施例により、更に十分に説明する。
【実施例】
【0035】
例えばcDNAライブラリーから得た推定上のPCDGF受容体の核酸を含んでいる核酸クローンによって、PCDGF受容体を発現していない細胞をトランスフェクトすることにより、PCDGF受容体を単離し、同定することができる。得られたトランスフェクトされた細胞を、PCDGFに結合するか、あるいはPCDGF受容体に対する抗体に結合する能力の獲得によってスクリ−ニングできる。我々は、チャイニーズハムスターの卵巣細胞株であるCHOが、PCDGFに結合したり、反応したりしないことを示した。そこで、発現クローニングの戦略における受容細胞としてCHO細胞を使用することができる。
【0036】
図1は6G8発現クローン化細胞から単離されたPCDGFの配列を示す。図2はPCDGFと結合する細胞から単離されたPCDGF受容体のcDNA配列を示す。PCDGF受容体発現細胞株とハイブリダイズするmRNAのサイズを試験するためにノザンブロット解析を行なった。
【0037】
図3に示されるように、ノザンブロット解析は、3C3由来のmRNAとハイブリダイゼーションはなかったことを示しており、それに対して、いくつかの種のmRNAは2F6 mRNAとハイブリダイズし、いくつかのメッセージ又はいくつかの転写開始部位のいずれかを示している。2F6細胞(6G8と結合する細胞株)からmRNAが抽出された。3C3は発現クローニングシステムから単離された細胞株であるが、6G8又はPCDGFとは結合しない。ネガティブコントロールとして3C3を使用した。図4に見られるように、ラベルされたAGGP88-1プローブとハイブリダイズするmRNAの大きさを検討するために、ノザンブロット解析を行った。全ての細胞株において、約1kBの大きさを有する1つのハイブリダイゼーションバンドが観察された。全ての種で保存されているので、これは全ての細胞株において見られる内在性リボゾーマル蛋白質RPL 7a mRNAに相当する。約4kBの大きさを有する第二のバンドはV1-P細胞中でのみ観察され、それよりAG-GP88-1 cDNAが単離された。このバンドは、PCDGF受容体mRNAに相当する。
【0038】
AG-BC1細胞由来のcDNAライブラリーが、細胞の選択のためにネオマイシン耐性遺伝子を含んでいるpLXSNレトロウイルスベクターへ構築された(図5)。一度ライブラリーが構築されたら、PCDGFへ結合する能力の獲得に関してPCDGF受容体抗体6G8を使用し、クローン化された細胞株をスクリーニングした。PCDGFと結合する細胞株の能力に基づいて細胞株も単離した(図6)。図7に示されるように、6G8と結合する能力を有する20個の細胞株クローンのうち、4つがPCDGFとも結合することができた。
【0039】
我々はPCDGF受容体を過剰発現している乳癌細胞株を開発し、これらの細胞から、PCDGF/PCDGF受容体cDNAの起源として使用することができるcDNAライブラリーを確立した。乳癌レトロウイルスcDNAライブラリーを、元来O4EMと呼ばれていた乳癌細胞株由来のmRNAを用いて構築し、今はPCDGF/PCDGF受容体(以下PCDGF-Rと名付ける)を過剰発現しているAG-BC1と改名されている。乳癌MCF-7細胞と比べた時に、AG-BC1はPCDGF/PCDGF結合の10倍の増加を示し、これらの細胞はPCDGF-Rが過剰発現していることを示唆している。
【0040】
ビオチン化6G8に次いでストレプトアビジン-HRPにより細胞の染色を行い、次いで図8に示すように化学的な検出を行なった。CHO細胞はPCDGFに結合せず、それを発現もせず、ネガティブコントロールとして用いた。MCF-7及びBC細胞は、PCDGFを発現して結合するポシティブコントロールである。2F6細胞はスクリーニングの手順の間に同定されたポシティブコントロ−ルであり、PCDGF受容体を産生する。
【0041】
図9に見られるように、6G8の選択により発現クローニングされた2F6細胞は、6G8抗体と結合し、刺激されたMAPキナーゼ活性により示唆されるように、PCDGFと反応する。細胞株1B4(発現クローニングされたCHO細胞)は、それがビオチン化されたPCDGFと結合する能力により選択された。細胞溶解物を調製する前に、細胞をPCDGF(200 ng/ml)、1%FBS、又はベヒクルのみ(コントロールC)で10分間処理し、ERK1/2ホスホ特異的な抗体によるウエスタンブロット解析を用いて、ERK1/2 MAPキナーゼのリン酸化を試験した。図9は2F6と1B4細胞の両者において、PCDGF/PCDGFの添加はErk1/2のリン酸化の増加をもたらすことを示している。PCDGFに結合しない元来のCHO細胞は、PCDGFに応じたp-Erk1/2の増加を全く示さなかった。ポシティブコントロールのMCF-7細胞は、PCDGFと血清の両者に応じてリン酸化の増加を示した。
【0042】
図10は、ビオチン化されたPCDGFが、発現クローニングされた細胞4B4、V-1Pへ結合することを示す。ストレプトアビジンHRPが、細胞表層PCDGF受容体へ結合したビオチン化されたPCDGF/PCDGFへ結合し、次いて化学染色を行うことにより結合は可視化された。PCDGF結合細胞は青く見える。ネガティブコントロールはCHO細胞である。図10は、CHO細胞(ネガティブコントロール)、BC(PCDGF受容体を発現している)、4A8(PCDGF結合について陰性)、4B4(PCDGF結合について陽性)、4A6(PCDGF結合について陽性)、及びV-1P(PCDGF結合について陽性)を含む、種々の細胞株へのPCDGFへの結合を示す。
【0043】
図11は、2F6からのゲノムDNAの単離を示す。6G8選択細胞2F6のゲノムDNA中に含まれているcDNAインサートは、cDNAにフランキングしているレトロウイルスのpLXSNプライマーを用いて、ゲノミックPCRにより単離された。CHO細胞はネガティブコントロールとして働き、6G8又はPCDGFと結合しなかった。3C3はネガティブコントロールであり、PCRの手順において、6G8が結合しないCHO由来のクローンである。
【0044】
図12は、PCDGF選択細胞V-1PゲノムDNA中に含まれたcDNAインサートの単離を示す図であり、レトロウイルスのpLXSNプライマーを用いて、フランキングcDNAを増幅している。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、6G8発現クローニングされた細胞から単離されたPCDGF受容体の配列を示す。
【図2】図2は、PCDGFと結合する細胞から単離されたPCDGF受容体のcDNA配列を示す。
【図3】図3は、3C3由来のmRNAとハイブリダイゼーションしないことを示すノザンブロット解析の結果である。
【図4】図4は、C3Hマウス癌組織と周囲の正常組織における、インビボのGP88発現レベルを示す。
【図5】図5は、細胞の選択のためにネオマイシン耐性遺伝子を含んでいるpLXSNレトロウイルスベクターへ構築されたAG-BC1細胞由来のcDNAを示す。
【図6】図6は、PCDGF受容体の発現クローニングの例示となる工程の説明である。
【図7】図7は、PCDGFと結合する能力の獲得のために、PCDGF受容体抗体6G8を用いてスクリーニングされた細胞株の能力を表すチャートである。
【図8】図8は、ビオチン化6G8による細胞の免疫組織化学染色を示す。
【図9】図9は、リン酸化されたErk1/2(p44/42)のウエスタンブロット解析の結果を示す。この結果は、6G8選択により発現クローニングされた2F6細胞は6G8抗体と結合し、MAPキナーゼ活性の刺激で示されるようにPCDGFと反応する。
【図10】図10は、発現クローニングされた細胞である4B4、V-1Pへの、ビオチン化PCDGFの結合を示す。
【図11】図11は、2F6からのゲノムDNAの単離を示す。
【図12】図12は、レトロウイルスのpLXSNプライマーを用いてPCDGF選択細胞V-1PのゲノムDNA中に含まれるcDNAインサートを単離し、フランキングcDNAを増幅することを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍形成性であると疑われる組織サンプルにおけるPCDGF受容体発現のレベルを測定することを含む方法であって、PCDGF受容体の存在は腫瘍形成性を示す、腫瘍形成性を診断する方法。
【請求項2】
腫瘍形成性であると疑われる該組織サンプル中に測定されるレベルのPCDGF受容体があるかどうかを判断することにより、腫瘍形成性細胞が抗PCDGF療法に感受性を有するであろうかどうかを判断することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
PCDGF受容体発現のレベルを測定する工程が、本質的に配列番号1及びその断片から構成される単離された核酸分子のレベルを測定することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
PCDGF受容体発現のレベルを測定する工程が、本質的に配列番号2及びその断片から構成される単離された核酸分子のレベルを測定することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
PCDGF受容体又はその断片を、PCDGFの生物学的な活性を阻害するのに有効な量を患者に投与することを含む、PCDGFの増大又は過剰発現に関連した疾患を有している被験者を治療する方法。
【請求項6】
PCDGF受容体又はその断片を投与する工程が、配列番号1又はその断片を含む単離された核酸分子によってコードされる蛋白質を投与することを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
PCDGF受容体又はその断片を投与する工程が、本質的に配列番号1又はその断片から構成される単離された核酸分子によってコードされる蛋白質を投与することを含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
PCDGF受容体又はその断片を投与する工程が、配列番号2又はその断片を含む単離された核酸分子によってコードされる蛋白質を投与することを含む、請求項5記載の方法。
【請求項9】
PCDGF受容体又はその断片を投与する工程が、本質的に配列番号1又はその断片から構成される単離された核酸分子によってコードされる蛋白質を投与することを含む、請求項5記載の方法。
【請求項10】
PCDGF受容体アンタゴニストを、PCDGFの生物学的な活性を阻害又は干渉するのに有効な量で患者に投与することを含む、PCDGFの増大又は過剰発現が関連している疾患を有している被験者の治療方法。
【請求項11】
PCDGF受容体アンタゴニストが、抗PCDGF受容体抗体、抗PCDGF受容体ペプチド、抗PCDGF受容体アンチセンス核酸分子、及び抗PCDGF受容体阻害性小RNA分子(siRNA)からなる群から選択された、請求項10記載の方法。
【請求項12】
PCDGF受容体抗体が、ATCCアクセッション番号PTA-5263及びATCCアクセッション番号PTA-5594からなる群から選択されたハイブリドーマ細胞株から産生された、請求項11記載の方法。
【請求項13】
本質的に配列番号1およびその断片から構成される単離された核酸分子。
【請求項14】
本質的に配列番号2およびその断片から構成される単離された核酸分子。
【請求項15】
請求項13記載の核酸分子によりコードされる単離された蛋白質。
【請求項16】
請求項14記載の核酸分子によりコードされる単離された蛋白質。
【請求項17】
配列番号1およびその断片を含む単離された核酸分子。
【請求項18】
配列番号2およびその断片を含む単離された核酸分子。
【請求項19】
請求項17記載の核酸分子によりコードされる単離された蛋白質。
【請求項20】
請求項20記載の核酸分子によりコードされる単離された蛋白質。
【請求項1】
腫瘍形成性であると疑われる組織サンプルにおけるPCDGF受容体発現のレベルを測定することを含む方法であって、PCDGF受容体の存在は腫瘍形成性を示す、腫瘍形成性を診断する方法。
【請求項2】
腫瘍形成性であると疑われる該組織サンプル中に測定されるレベルのPCDGF受容体があるかどうかを判断することにより、腫瘍形成性細胞が抗PCDGF療法に感受性を有するであろうかどうかを判断することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
PCDGF受容体発現のレベルを測定する工程が、本質的に配列番号1及びその断片から構成される単離された核酸分子のレベルを測定することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
PCDGF受容体発現のレベルを測定する工程が、本質的に配列番号2及びその断片から構成される単離された核酸分子のレベルを測定することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
PCDGF受容体又はその断片を、PCDGFの生物学的な活性を阻害するのに有効な量を患者に投与することを含む、PCDGFの増大又は過剰発現に関連した疾患を有している被験者を治療する方法。
【請求項6】
PCDGF受容体又はその断片を投与する工程が、配列番号1又はその断片を含む単離された核酸分子によってコードされる蛋白質を投与することを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
PCDGF受容体又はその断片を投与する工程が、本質的に配列番号1又はその断片から構成される単離された核酸分子によってコードされる蛋白質を投与することを含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
PCDGF受容体又はその断片を投与する工程が、配列番号2又はその断片を含む単離された核酸分子によってコードされる蛋白質を投与することを含む、請求項5記載の方法。
【請求項9】
PCDGF受容体又はその断片を投与する工程が、本質的に配列番号1又はその断片から構成される単離された核酸分子によってコードされる蛋白質を投与することを含む、請求項5記載の方法。
【請求項10】
PCDGF受容体アンタゴニストを、PCDGFの生物学的な活性を阻害又は干渉するのに有効な量で患者に投与することを含む、PCDGFの増大又は過剰発現が関連している疾患を有している被験者の治療方法。
【請求項11】
PCDGF受容体アンタゴニストが、抗PCDGF受容体抗体、抗PCDGF受容体ペプチド、抗PCDGF受容体アンチセンス核酸分子、及び抗PCDGF受容体阻害性小RNA分子(siRNA)からなる群から選択された、請求項10記載の方法。
【請求項12】
PCDGF受容体抗体が、ATCCアクセッション番号PTA-5263及びATCCアクセッション番号PTA-5594からなる群から選択されたハイブリドーマ細胞株から産生された、請求項11記載の方法。
【請求項13】
本質的に配列番号1およびその断片から構成される単離された核酸分子。
【請求項14】
本質的に配列番号2およびその断片から構成される単離された核酸分子。
【請求項15】
請求項13記載の核酸分子によりコードされる単離された蛋白質。
【請求項16】
請求項14記載の核酸分子によりコードされる単離された蛋白質。
【請求項17】
配列番号1およびその断片を含む単離された核酸分子。
【請求項18】
配列番号2およびその断片を含む単離された核酸分子。
【請求項19】
請求項17記載の核酸分子によりコードされる単離された蛋白質。
【請求項20】
請求項20記載の核酸分子によりコードされる単離された蛋白質。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2008−515459(P2008−515459A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536895(P2007−536895)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/036876
【国際公開番号】WO2006/044566
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(505161220)エイアンドジー ファーマスーティカル インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/036876
【国際公開番号】WO2006/044566
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(505161220)エイアンドジー ファーマスーティカル インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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