説明

オートフォーカス機構及びこれを備えた光学式処理装置

【課題】近赤外領域のレーザを使用した場合であっても誤検出を防止することのできるオートフォーカス機構及びこれを備えた光学処理装置を提供する。
【解決手段】光源10と、試料を光軸に沿って移動させる試料台移動部3と、試料を移動させて対物レンズの焦点合わせを行う自動焦点合わせ手段と、を備えるオートフォーカス機構において、自動焦点合わせ手段は、試料の表面からの反射光を受光する受光素子と、試料の移動時に、受光素子がそれぞれ出力する出力値に基づいて所定の演算により判定値を算出する判定値算出プログラム61aと、算出された判定値が所定の閾値に達した位置を、レーザ焦点位置として検出する焦点位置検出プログラム61bと、を備え、判定値算出プログラム61aにより算出される判定値の閾値を設定変更する閾値設定プログラム61cを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートフォーカス機構及びこれを備えた光学式処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オートフォーカス機構を備えた顕微鏡やレーザ加工装置などの光学式処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
オートフォーカス機構においては、焦点位置検出原理の1つとして、例えば、ダブルピンホール方式が知られている。
ダブルピンホール方式は、例えば、図9に示すように、レーザダイオード(LD)201から出射されたレーザ光が対物レンズ202を介して試料Sに照射され、試料S表面で反射された反射光が対物レンズ202及び結像レンズ203を介して戻ってきてビームスプリッタ204で分岐され、受光素子A及び受光素子Bに照射される構成である。
【0003】
ここで、図9(b)に示すように、受光素子A及び受光素子Bの出力が等しいときの対物レンズ202と試料Sとの位置を「レーザ焦点位置」という。
また、図9(a)に示すように、受光素子Aの出力が受光素子Bの出力より大きい場合、対物レンズ202と試料Sの間の距離が、レーザ焦点位置より遠くに離れている。
また、図9(c)に示すように、受光素子Aの出力が受光素子Bの出力より小さい場合、対物レンズ202と試料Sの間の距離が、レーザ焦点位置より近くなっている。
【0004】
このとき、受光素子A及び受光素子Bの電圧は、下記式により「S信号」として合成され、このS信号の電圧値を基にレーザ焦点位置の検出が行われている。
S信号電圧=(A信号電圧−B信号電圧)/(A信号電圧+B信号電圧)×ゲイン
なお、S信号電圧とはS信号の電圧値であり、A信号電圧とは受光素子Aの出力電圧値であり、B信号電圧とは受光素子Bの出力電圧値ある。
具体的に、各信号電圧(A信号電圧、B信号電圧、S信号電圧)は、図10の関係を示す。図10において、縦軸は電圧値、横軸は対物レンズ202と試料Sの距離である。
ここで、図10のS信号において、「レーザ焦点位置」での電圧値(図中×印)を「ゼロクロス電圧」と称する。測定中、S信号の電圧値が「ゼロクロス電圧」になったときに、レーザ焦点位置と判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−317428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなオートフォーカス機構を備えた光学式処理装置において、例えば画像を観察する場合などには、照明光を使用しているので可視光領域のレーザを使用すると照明光との分離が困難になるため、近赤外領域(680nm)以上の波長のレーザ光源が使用されている。
ここで、図11に、青色フィルタ(B)及び緑色フィルタ(G)にオートフォーカスを実施した場合のS信号の検出波形を示し、図12に、赤色フィルタ(R)にオートフォーカスを実施した場合のS信号の検出波形を示す。
図12では、図11と比較してゼロクロス電圧の位置がずれているのがわかる。
これは、図13に示すように、赤色フィルタ(R)では近赤外領域のレーザが試料を透過してしまい、裏面で反射した信号と表面で反射した信号(図12における破線)が検出されて両者が合算されてしまったため、本来のゼロクロス電圧の位置付近が平坦な波形となってしまったためである。
このように、オートフォーカス機構を備えた光学式処理装置において、近赤外領域の波長のレーザ光源を使用した場合、レーザ光源の波長を透過する試料を使用してオートフォーカスを実施すると、上記のような誤検出が発生し、ゼロクロス電圧の位置がずれるために、画像がぼけてしまうという問題があった。
【0007】
本発明の課題は、近赤外領域のレーザを使用した場合であっても誤検出を防止することのできるオートフォーカス機構及びこれを備えた光学式処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、
請求項1に記載の発明は、
試料に対物レンズを介してレーザ光を照射する光源と、
前記試料もしくは前記対物レンズの少なくとも一方を前記対物レンズの光軸に沿って移動させる移動手段と、
前記試料もしくは前記対物レンズの少なくとも一方を、前記移動手段により移動させて前記対物レンズの焦点合わせを行う自動焦点合わせ手段と、
を備えるオートフォーカス機構において、
前記自動焦点合わせ手段は、
前記試料の表面から反射された光をピンホール方式又はナイフエッジ方式による光導入機構を介して受光する一対の受光素子と、
前記移動手段による前記試料もしくは前記対物レンズの少なくとも一方の移動時に、前記一対の受光素子がそれぞれ出力する出力値に基づいて所定の演算により判定値を算出する判定値算出手段と、
前記判定値算出手段により算出された判定値が所定の閾値に達した位置を、レーザ焦点位置として検出する焦点位置検出手段と、を備え、
前記判定値算出手段により算出される判定値の閾値を設定変更する閾値設定手段を備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、
請求項1記載のオートフォーカス機構を備える光学式処理装置であって、
前記試料の表面の観察像を結像するカメラ部及び/又は前記試料の表面をレーザ加工するためのレーザ加工光源部と、
前記試料の表面で反射された反射光を前記前記カメラ部に導くための観察光学系及び/又は前記レーザ加工光源部により照射されたレーザ光を前記試料の表面に導くための加工光学系と、
前記閾値設定手段により前記閾値が設定変更された場合、オートフォーカスを行った際の前記カメラ部及び/又は前記レーザ加工光源部の焦点位置を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光学式処理装置において、
前記調整手段は、
前記カメラ部及び/又は前記レーザ加工光源部を光軸に沿って移動させる移動機構を備え、
前記移動機構により前記カメラ部及び/又は前記レーザ加工光源部の設置位置を調整することで、前記カメラ部及び/又は前記レーザ加工光源部の焦点位置を前記焦点位置検出手段で検出された位置に一致させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の光学式処理装置において、
前記調整手段は、
前記観察光学系及び/又は加工光学系の焦点調節用レンズを移動させる移動機構を備え、
前記移動機構により前記観察光学系及び/又は加工光学系の焦点調節用レンズの設置位置を調整することで、前記カメラ部及び/又は前記レーザ加工光源部の焦点位置を前記焦点位置検出手段で検出された位置に一致させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の光学式処理装置において、
前記調整手段は、
前記焦点位置検出手段で検出されるレーザ焦点位置と前記カメラ部及び/又は前記レーザ加工光源部の焦点位置との変位差を予め記憶する記憶部を備え、
オートフォーカスを行った際に、前記記憶部に記憶された前記変位差分、前記移動手段により前記試料もしくは対物レンズの少なくとも一方を前記対物レンズの光軸に沿って移動させることで、前記カメラ部及び/又は前記レーザ加工光源部の焦点位置を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、オートフォーカス機構は、一対の受光素子がそれぞれ出力する出力値に基づいて所定の演算により判定値を算出する判定値算出手段と、判定値算出手段により算出された判定値が所定の閾値に達した位置をレーザ焦点位置として検出する焦点位置検出手段と、等を備える自動焦点合わせ手段と、判定値算出手段により算出される判定値の閾値を設定変更する閾値設定手段と、を備えている。
このため、判定値の変化率に基づいて好適な閾値が設定されることとなり、近赤外領域の波長のレーザを使用した光学式処理装置において、カラーフィルタを観察・加工した場合でも、オートフォーカスにより画像がぼけるなどの誤検出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の光学式処理装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1の光学式処理装置の本体部の構成を示す模式図である。
【図3】S信号曲線を示す図である。
【図4】S信号曲線の閾値の設定変更を説明するための図である。
【図5】ゼロクロス電圧発生回路を示す図である。
【図6】図1の光学式処理装置のレーザ焦点位置検出処理を示すフローチャートである。
【図7】変形例1の光学式処理装置の本体部の構成を示す模式図である。
【図8】変形例2の光学式処理装置の本体部の構成を示す模式図である。
【図9】焦点位置検出原理であるダブルピンホール方式を説明するための図である。
【図10】A信号電圧、B信号電圧、S信号電圧の関係を説明するための図である。
【図11】青色フィルタ及び緑色フィルタでオートフォーカスを実施した場合のS信号電圧の検出波形を示す。
【図12】赤色フィルタでオートフォーカスを実施した場合のS信号電圧の検出波形を示す。
【図13】誤検出が起こることを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照しつつ、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明において、図2における左右方向をX方向とし、前後方向をY方向とし、上下方向をZ方向とする。
【0016】
光学式処理装置100は、オートフォーカス機構を用いて試料Sの表面の観察や加工などを行う装置である。なお、本実施形態においては、光学式処理装置100として、ピンホール方式の光導入機構を備えた構成を例示する。
具体的に、光学式処理装置100は、図1、2に示すように、本体部1、試料台2、試料台移動部3、操作部4と、モニタ5、制御部6、等を備えている。
【0017】
本体部1は、図1、2に示すように、レーザ光源10、検出部30、CCDカメラ40、レーザ加工光源部50、集光光学系20A、観察光学系20B、及び加工光学系20C、等を備えている。
【0018】
レーザ光源10は、例えば、近赤外領域(680nm)の波長のレーザ光を発生する光源であり、集光光学系20Aに向けて光を出射する。
【0019】
集光光学系20Aは、レーザ光源10からの光を試料Sの表面に導入する。
集光光学系20Aは、第1ハーフミラー21、第2ハーフミラー22、コリメータレンズ23、及び対物レンズ24を備えて構成されている。
【0020】
第1ハーフミラー21は、レーザ光源10のZ方向下方に配置され、レーザ光源10より出射されてZ方向下向きに進む光をX方向左向きに反射させる。
第2ハーフミラー22は、第1ハーフミラー21のX方向左側に配置され、第1ハーフミラー21に反射されてX方向左向きに進む光を反射してZ方向下向きに向かわせる。
コリメータレンズ23は、第2ハーフミラー22のZ方向下方に配置され、第2ハーフミラー22からのレーザ光を平行光として、対物レンズ24に照射させる。
対物レンズ24は、試料Sに対向して備えられ、コリメータレンズ23から照射された平行光を収束させて試料Sの表面において合焦させる。このとき、対物レンズ24に対する試料S表面のZ方向の位置は、レーザ焦点位置となっている。
【0021】
また、集光光学系20Aは、光導入機構として、試料Sの表面で反射された光を検出部30に導入する。
具体的に、試料Sの表面にて反射された光は、対物レンズ24、コリメータレンズ23、第2ハーフミラー22、及び第1ハーフミラー21を順に透過して、第1ハーフミラー21のX方向右側に配置されたビームスプリッタ25に入射し、当該ビームスプリッタ25により2つに分岐されて検出部30の2つの受光素子31,32にて受光されるようになっている。
【0022】
検出部30は、試料Sの表面からの反射光をピンホール方式による光導入機構(集光光学系20A)を介して受光する。検出部30は、2つの受光素子31,32と、受光素子31,32のそれぞれに備えられたピンホール(図示省略)と、を備え、ビームスプリッタ25により2つに分岐された光をそれぞれ受光し、その光の光量を検出する。
【0023】
また、試料Sの表面にて反射された光は、図2に示すように、CCDカメラ40にも入射されるようになっている。即ち、試料Sの表面にて反射され、対物レンズ24、コリメータレンズ23を透過してきた光の一部は、第2ハーフミラー22も透過してCCDカメラ40に向かうようになっている。
【0024】
CCDカメラ40は、試料Sの表面からの反射光に基づいて試料Sの表面の画像を撮像し、画像データを取得して制御部6に出力する。CCDカメラ40には、観察光学系20Bを介して試料Sの表面からの反射光が到達するようになっている。
【0025】
観察光学系20Bは、CCDカメラ40に試料Sの表面からの反射光を導入する。
観察光学系20Bは、対物レンズ24、コリメータレンズ23、第2ハーフミラー22、チューブレンズ26、第3ハーフミラー27、及び反射ミラー28を備えて構成されている。
【0026】
対物レンズ24、コリメータレンズ23、及び第2ハーフミラー22は、試料Sの表面で反射された反射光を透過させる。
チューブレンズ26は、第2ハーフミラー22のZ方向上方に配置され、第2ハーフミラー22から出射してZ方向上向きに進む光を結像させて、第3ハーフミラー27に対して出射する。
第3ハーフミラー27は、チューブレンズ26のZ方向上方に配置され、チューブレンズ26からの光をX方向左側に反射させる。
反射ミラー28は、第3ハーフミラー27のX方向左側に配置され、第3ハーフミラー27からの光をZ方向上方に反射させてCCDカメラ40に向かわせる。
【0027】
レーザ加工光源部50は、加工用のレーザ光を試料Sの表面に対して出射するものである。例えば、レーザ加工光源部50は、液晶ワークの欠陥ヵ所を検出しリペアを行うためにレーザ光を照射する。
レーザ加工光源部50は、例えば、紫外域、可視域、赤外域にわたる広範な波長域を有するレーザ光を出射可能に構成され、修正に適した波長のレーザ光を、波長フィルタ等を介して選択して使用するようになっている。
【0028】
加工光学系20Cは、レーザ加工光源部50により照射されたレーザ光を試料Sの表面に導入する。加工光学系20Cは、第3ハーフミラー27、チューブレンズ26、第2ハーフミラー22、コリメータレンズ23、及び対物レンズ24を備えて構成されている。
従って、レーザ加工光源部50から出射したレーザ光は、第3ハーフミラー27、チューブレンズ26、第2ハーフミラー22、コリメータレンズ23、及び対物レンズ24を順に透過して試料Sの表面に到達する。
【0029】
試料台2は、対物レンズ24の下方に位置し、その上面に試料Sを載置するようになっている。試料台2は、試料台移動部3により垂直方向(Z方向)に移動可能である。
また、試料台2は、XY駆動機構(図示省略)を備え、水平方向(XY方向)にも移動可能である。
【0030】
試料台移動部3は、試料台2をZ方向に移動可能に支持している。
具体的に、試料台移動部3は、制御部6が出力する制御信号に応じて試料台2をZ方向に移動させると共に、試料台2のZ方向における位置(位置座標)を制御部6に出力する。即ち、試料台移動部3により、試料台2と対物レンズ24との間の相対距離を変化させることで、対物レンズ24に対する試料S表面の位置を、レーザ焦点位置に合わせることが可能となっている。
このように、試料台移動部3は、試料台2を対物レンズ24の光軸に沿って移動させる移動手段として機能している。
なお、対物レンズ24を当該対物レンズ24の光軸に沿って移動可能な構成としても良い。
【0031】
操作部4は、キーボードやマウス等により構成されており、観察などを行う際のユーザによる入力操作を実行させる。操作部4により所定の入力操作がなされると、その入力操作に応じた所定の操作信号が制御部6に出力される。
具体的に、操作部4は、試料Sの種類に応じて、ユーザがモード変更を指定する際に利用される。モード変更とは、レーザ焦点位置を最適な位置に自動で決定するモードへの変更である。例えば、赤色フィルタや透明なフィルムのような、レーザ光源の波長を透過する試料(S信号の検出波形に平坦部が現れる試料(図3(B)参照))などの観察等を行う場合に、ユーザは、モード変更を行う。
【0032】
モニタ5は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置により構成されており、CCDカメラ40が撮像した試料Sの表面の画像や、S信号の検出波形等を表示することができるようになっている。
【0033】
制御部6は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)61、RAM(Random Access Memory)62、記憶部63、等を備えて構成され、記憶部63に記憶された所定のプログラムが実行されることにより、所定の動作を行うための動作制御等を行う機能を有する。
【0034】
CPU61は、記憶部63に格納された処理プログラム等を読み出して、RAM62に展開して実行することにより、光学式処理装置100全体の制御を行う。
【0035】
RAM62は、CPU61により実行された処理プログラム等を、RAM62内のプログラム格納領域に展開するとともに、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果等をデータ格納領域に格納する。
【0036】
記憶部63は、例えば、プログラムやデータ等を記憶する記録媒体(図示省略)を有しており、この記録媒体は、半導体メモリ等で構成されている。また、記憶部63は、CPU61が光学式処理装置100全体を制御する機能を実現させるための各種データ、各種処理プログラム、これらプログラムの実行により処理されたデータ等を記憶する。
【0037】
より具体的には、記憶部63は、例えば、判定値算出プログラム63a、焦点位置検出プログラム63b、閾値設定プログラム63c、調整プログラム63d、変位差記憶部63e、等を格納している。
【0038】
判定値算出プログラム63aは、例えば、CPU61に、試料台移動部3による試料Sの移動時に、一対の受光素子31,32がそれぞれ出力する出力値に基づいて所定の演算により判定値を算出する機能を実現させるプログラムである。
具体的には、CPU61は、試料台移動部3により試料Sの位置が移動している際、即ち、対物レンズ24と試料Sとの相対距離が変化している際、受光素子31,32がそれぞれ出力する電圧の出力値を合成し、その合成値を判定値として算出する。
この合成値(判定値)は、S信号として、例えば図3(A)(B)に示すようなグラフとして算出される。なお、図3(A)は、通常得られるS信号であり、図3(B)は、平坦部が現れた場合のS信号を示した一例である。また、図3(A)(B)において、縦軸は電圧であり、横軸は対物レンズ24と試料Sとの距離である。
CPU61は、かかる判定値算出プログラム63aを実行することで、判定値算出手段として機能する。
【0039】
焦点位置検出プログラム63bは、例えば、CPU61に、判定値算出プログラム63aの実行により算出された判定値が所定の閾値に達した位置を、レーザ焦点位置として検出する機能を実現させるプログラムである。
具体的には、CPU61は、判定値算出プログラム63aの実行により判定値が算出されると、その判定値の大きさ(電圧の大きさ)が所定の閾値に達したか否かを随時判断しており、当該所定の閾値に達した時点での、対物レンズ24と試料Sとの位置を、レーザ焦点位置として検出する。
例えば、図3(A)の例では、CPU61は、縦軸の値(電圧)が所定の閾値である500[mV]に達した場合に、その時点の位置である±0[mm]をレーザ焦点位置として検出する。
また、図3(B)の例では、モード変更の指定が行われていない場合、CPU61は、縦軸の値(電圧)が所定の閾値である500[mV]に達した場合に、その時点の位置である−0.4[mm]をレーザ焦点位置として検出する。
CPU61は、かかる焦点位置検出プログラム63bを実行することで、焦点位置検出手段として機能する。
【0040】
閾値設定プログラム63cは、例えば、CPU61に、判定値算出プログラム63aの実行により算出される判定値の閾値を設定変更する機能を実現させるプログラムである。
具体的には、ユーザが操作部4によってモード変更を指示した場合、CPU61は、閾値設定プログラム63cを実行し、判定値算出プログラム63aにより算出されたS信号の変化率に基づいて閾値を設定変更する。
より具体的には、例えば、S信号の検出波形に平坦部が現れる試料(図3(B)参照)の測定を行う場合、ユーザは、モード変更を指示する操作を行う。そして、モード変更を指示する操作が行われると、CPU61は、例えば、図4に示すように、S信号の波形の平坦部が終了した後の一点Pを閾値として設定変更する。
従って、図4の例では、CPU61は、上記焦点位置検出プログラム63bを実行し、縦軸の値(電圧)が所定の閾値である600[mV]に達した場合に、その時点の位置である0.1[mm]をレーザ焦点位置として検出する。
【0041】
ここで、図5に、ゼロクロス電圧発生回路9を示す。
ゼロクロス電圧発生回路9は、DAC(デジタル−アナログ変換回路)91と、コンパレータ92と、等から構成されている。
ユーザにより、モード変更が指定された場合、上記閾値設定プログラム63cによって新たな閾値が設定変更され、新たな閾値を指示する指示信号がDAC91を介してコンパレータに入力される。コンパレータ92にはS信号が入力されており、コンパレータ92は、S信号の値が指定された新たな閾値に達すると、ゼロクロス電圧として出力を切り替える。
CPU61は、かかる閾値設定プログラム63cを実行することで、閾値設定手段として機能する。
【0042】
調整プログラム63dは、例えば、CPU61に、閾値設定プログラム63cの実行により閾値が設定変更された場合、オートフォーカスを行った際のCCDカメラ40及びレーザ加工光源部50の焦点位置を調整する機能を実現させるプログラムである。
なお、この調整プログラム63dは、ユーザによりモード変更が指定された場合にCPU61により実行される。
ユーザによりモード変更が指定された場合、CPU61は、測定前のキャリブレーションによって、判定値算出プログラム63aを実行し判定値を算出し、閾値を変更してCCDカメラ40及びレーザ加工光源部50の焦点位置のズレ量(変位差)を求めて、変位差記憶部63eに記憶しておく。
そして、測定時において、CPU61は、変位差記憶部63eに記憶された変位差分、試料台移動部3により試料Sを対物レンズ24の光軸に沿って移動させることで、CCDカメラ40及びレーザ加工光源部50の焦点位置を調整する。
従って、判定値の閾値を変更した場合にも、調整プログラム63dの実行により、CCDカメラ40やレーザ加工光源部50の焦点位置が補正されることとなる。
CPU61は、かかる調整プログラム63dを実行することで、調整手段として機能する。
【0043】
変位差記憶部63eは、記憶部として、上記したように、キャリブレーション時に求められた変位差を記憶する。すなわち、モード変更が指定された場合には、変位差記憶部63eには、焦点位置検出プログラム63bの実行により検出されるレーザ焦点位置とCCDカメラ40及びレーザ加工光源部50の焦点位置との変位差が、測定前のキャリブレーション段階で記憶される。
【0044】
なお、本実施形態においては、一対の受光素子31,32、判定値算出プログラム63a、及び焦点位置検出プログラム63bにより、対物レンズ24の焦点合わせを行う自動焦点合わせ手段が構成されている。
また、本実施形態においては、レーザ光源10、試料台移動部3、自動焦点合わせ手段、及び閾値設定プログラム63cによりオートフォーカス機構が構成されている。
【0045】
次に、図6を用いて、本発明の光学式処理装置100のオートフォーカス処理について説明する。
なお、ここでは、ユーザによりモード変更操作が指定されていることとする。
また、下記のステップS1及びステップS2は、キャリブレーション時の処理であり、ステップS3以降は、測定時の処理である。
【0046】
まず、ステップS1において、CPU61は、受光素子31,32がそれぞれ出力する電圧の出力値を合成し、その合成値を判定値として算出する。
次いで、ステップS2において、CPU61は、ステップS1にて算出した判定値から、CCDカメラ40及びレーザ加工光源部50の焦点位置のズレ量(変位差)を求めて、変位差記憶部63eに記憶する。
【0047】
次いで、ステップS3において、CPU61は、ユーザによりモード変更操作がなされているか否かを判断し、モード変更操作がなされていない場合(ステップS3:NO)、続くステップS4において、予め設定された閾値に達した位置にて、レーザ焦点位置の検出を行い、本処理を終了する。
一方、モード変更操作がなされている場合(ステップS3:YES)、続くステップS5において、CPU61は、上記ステップS2において記憶した変位差を用いて、CCDカメラ40及び/又はレーザ加工光源部50の焦点位置の調整を行う。
次いで、ステップS6において、CPU61は、閾値を設定変更する。
次いで、ステップS7において、CPU61は、判定値が所定の閾値に達した位置を、レーザ焦点位置として検出し、本処理を終了する。
【0048】
以上のように、本実施形態の光学式処理装置100によれば、判定値の変化率に基づいて好適な閾値が設定されることとなり、近赤外領域の波長のレーザを使用した光学式処理装置100において、カラーフィルタなどの試料Sを観察や加工をした場合でも、オートフォーカスにより画像がぼけるなどの誤検出を防止することができる。
【0049】
また、本実施形態の光学式処理装置100によれば、変位差を予め記憶する変位差記憶部63eを備え、オートフォーカスを行った際に、変位差記憶部63eに記憶された変位差分、試料台移動部3により試料Sを対物レンズ24の光軸に沿って移動させることで、CCDカメラ40及びレーザ加工光源部50の焦点位置を調整する構成である。
このため、閾値を変更した場合にも、CCDカメラ40やレーザ加工光源部50の焦点位置を補正することができる。
【0050】
なお、上記実施形態においては、閾値が設定変更された場合、調整プログラム63dによって、オートフォーカスを行った際のCCDカメラ40及び/又はレーザ加工光源部50の焦点位置を調整する構成について説明しているが、これ以外にも、例えば下記の変形例1、2により当該焦点位置を調整することも可能である。
【0051】
(変形例1)
変形例1では、図7に示すように、調整手段としてCCDカメラ40及び/又はレーザ加工光源部50を光軸に沿って移動させる移動機構41、51を備えている。
即ち、CCDカメラ40とレーザ加工光源部50とは、この移動機構41、51により高さ調整(設置位置の調整)が可能となっており、CCDカメラ40やレーザ加工光源部50の高さ調整を行うことによって、当該CCDカメラ40やレーザ加工光源部50の焦点位置を焦点位置検出プログラム63bの実行により検出された位置に一致させることができる。
【0052】
(変形例2)
変形例2では、図8に示すように、調整手段として観察光学系20B及び/又は加工光学系20Cの焦点調節用レンズであるチューブレンズ26を移動させる移動機構261を備えている。
即ち、チューブレンズ26は、この移動機構261によりそれぞれZ方向の位置調整(設置位置の調整)が可能となっており、チューブレンズ26の位置調製を行うことによって、CCDカメラ40やレーザ加工光源部50の焦点位置を焦点位置検出プログラム63bの実行により検出された位置に一致させることができる。
ことができる。
【0053】
また、上記実施形態、及び変形例1、2においては、試料Sの表面から反射された光をピンホール方式による光導入機構を介して一対の受光素子31,32に導入する構成を例示して説明しているが、ナイフエッジ方式の光導入機構により光が導入されることとしてしても良い。
ナイフエッジ方式では、一対の受光素子として、2分割フォトダイオードが配され、その手前の光路にナイフエッジが配置されている。
【0054】
なお、上記実施形態においては、チューブレンズ26は、第2ハーフミラー22と第3ハーフミラー27との間に配置されているが、観察光学系20Bと加工光学系20Cとで別々にチューブレンズを備える構成とすることもできる。即ち、第3ハーフミラー27と反射ミラー28との間、及び第3ハーフミラー27とレーザ加工光源部50との間に、チューブレンズを備えることとしても良い。
【0055】
また、上記実施形態においては、光学式処理装置として、CCDカメラ40及びレーザ加工光源部50の両者を備えた構成を例示して説明したが、何れか一方のみを備えた構成であっても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 本体部
2 試料台
3 試料台移動部(移動手段)
4 操作部
5 モニタ
6 制御部
63 記憶部
63a 判定値算出プログラム(判定値算出手段)
63b 焦点位置検出プログラム(焦点位置検出手段)
63c 閾値設定プログラム(閾値設定手段)
63d 調整プログラム(調整手段)
63e 変位差記憶部(記憶部)
10 レーザ光源
20A 集光光学系
20B 観察光学系
20C 加工光学系
21 第1ハーフミラー
22 第2ハーフミラー
23 コリメータレンズ
24 対物レンズ
25 ビームスプリッタ
26 チューブレンズ(焦点調節用レンズ)
261 移動機構
27 第3ハーフミラー
28 反射ミラー
30 検出部
31,32 受光素子
40 CCDカメラ(カメラ部)
50 レーザ加工光源部
41、51 移動機構
100 光学式処理装置
S 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対物レンズを介してレーザ光を照射する光源と、
前記試料もしくは前記対物レンズの少なくとも一方を前記対物レンズの光軸に沿って移動させる移動手段と、
前記試料もしくは前記対物レンズの少なくとも一方を、前記移動手段により移動させて前記対物レンズの焦点合わせを行う自動焦点合わせ手段と、
を備えるオートフォーカス機構において、
前記自動焦点合わせ手段は、
前記試料の表面から反射された光をピンホール方式又はナイフエッジ方式による光導入機構を介して受光する一対の受光素子と、
前記移動手段による前記試料もしくは前記対物レンズの少なくとも一方の移動時に、前記一対の受光素子がそれぞれ出力する出力値に基づいて所定の演算により判定値を算出する判定値算出手段と、
前記判定値算出手段により算出された判定値が所定の閾値に達した位置を、レーザ焦点位置として検出する焦点位置検出手段と、を備え、
前記判定値算出手段により算出される判定値の閾値を設定変更する閾値設定手段を備えることを特徴とするオートフォーカス機構。
【請求項2】
請求項1記載のオートフォーカス機構を備える光学式処理装置であって、
前記試料の表面の観察像を結像するカメラ部及び/又は前記試料の表面をレーザ加工するためのレーザ加工光源部と、
前記試料の表面で反射された反射光を前記前記カメラ部に導くための観察光学系及び/又は前記レーザ加工光源部により照射されたレーザ光を前記試料の表面に導くための加工光学系と、
前記閾値設定手段により前記閾値が設定変更された場合、オートフォーカスを行った際の前記カメラ部及び/又は前記レーザ加工光源部の焦点位置を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする光学式処理装置。
【請求項3】
前記調整手段は、
前記カメラ部及び/又は前記レーザ加工光源部を光軸に沿って移動させる移動機構を備え、
前記移動機構により前記カメラ部及び/又は前記レーザ加工光源部の設置位置を調整することで、前記カメラ部及び/又は前記レーザ加工光源部の焦点位置を前記焦点位置検出手段で検出された位置に一致させることを特徴とする請求項2に記載の光学式処理装置。
【請求項4】
前記調整手段は、
前記観察光学系及び/又は加工光学系の焦点調節用レンズを移動させる移動機構を備え、
前記移動機構により前記観察光学系及び/又は加工光学系の焦点調節用レンズの設置位置を調整することで、前記カメラ部及び/又は前記レーザ加工光源部の焦点位置を前記焦点位置検出手段で検出された位置に一致させることを特徴とする請求項2に記載の光学式処理装置。
【請求項5】
前記調整手段は、
前記焦点位置検出手段で検出されるレーザ焦点位置と前記カメラ部及び/又は前記レーザ加工光源部の焦点位置との変位差を予め記憶する記憶部を備え、
オートフォーカスを行った際に、前記記憶部に記憶された前記変位差分、前記移動手段により前記試料もしくは対物レンズの少なくとも一方を前記対物レンズの光軸に沿って移動させることで、前記カメラ部及び/又は前記レーザ加工光源部の焦点位置を調整することを特徴とする請求項2に記載の光学式処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−257661(P2011−257661A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133537(P2010−133537)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】