オーバーキャップ及びオーバーキャップを装着した容器
【課題】 キャップ付き容器に対し同じ仕様の封入構造を採用しても、一目で封入物の区別が行い得るという識別性を付与し、キャップの開蓋操作時に開蓋により露出することになる領域に手を触れることなく開蓋し得るオーバーキャップを提供する
【解決手段】 頂壁部611と、下端開口の筒壁部612と、筒壁部の周方向各位置に内向き斜め上方に突出する爪部62とでオーバーキャップ6を構成する。バイアル3のゴム栓を封止するフリップキャップ5の上蓋52の上から被せ、上蓋の下端角部524に爪部を係合させて装着する。経口剤封入のバイアルにオーバーキャップを装着し、注射剤封入のバイアルは未装着とすることで、全体形状の違いにより一目で識別し得る。オーバーキャップをこじれば爪部で保持された上蓋も同時に除去されて開蓋される。
【解決手段】 頂壁部611と、下端開口の筒壁部612と、筒壁部の周方向各位置に内向き斜め上方に突出する爪部62とでオーバーキャップ6を構成する。バイアル3のゴム栓を封止するフリップキャップ5の上蓋52の上から被せ、上蓋の下端角部524に爪部を係合させて装着する。経口剤封入のバイアルにオーバーキャップを装着し、注射剤封入のバイアルは未装着とすることで、全体形状の違いにより一目で識別し得る。オーバーキャップをこじれば爪部で保持された上蓋も同時に除去されて開蓋される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ付き容器等の閉蓋状態のキャップに対し、その上からさらに被せて用いられるオーバーキャップあるいはかかるオーバーキャップを装着した容器に関する。特に、内部の収容物を口栓及びこの口栓の脱落防止等を図るためのフリップキャップにより封入し得るバイアルに対し、好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キャップ付き容器としては瓶容器の口部をゴム栓(口栓)及びフリップキャップにより密封状態に閉栓したバイアルが知られている(例えば特許文献1又は特許文献2参照)。かかるバイアルは、例えば凍結乾燥させた薬剤を無菌状態に収容し、用時にその薬剤に対し例えば蒸留水を液注して溶解させ、これをシリンジに吸引して注射する、という用途で用いられる。薬剤のバイアルへの封入は例えば次のような工程により行われる。まず、例えば薬液を口部からバイアルに入れてゴム栓を半封栓状態にし、これを凍結乾燥機内に入れて所定時間の凍結乾燥処理を経て固体粉末状等の凍結乾燥薬剤にし、口部をゴム栓で密封する。次に、例えば合成樹脂のキャップ本体がアルミニウム製等の帯環に対し係合手段等により組み付けられたフリップキャップを上記ゴム栓の上から被せ、帯環の裾部分を口部外周面に対し巻締めする。この状態で搬送や保管等が行われる。そして、使用時には、フリップキャップのキャップ本体を引き抜くことにより帯環から外し、露出したゴム栓の中央部上面に注射針を刺して蒸留水を内部に注入する。この注入した蒸留水により薬剤を溶解させ、この溶解液をシリンジに吸引して患者に注射等することにより薬剤が投与されることになる。
【0003】
【特許文献1】特開平7−165252号公報
【特許文献2】特開平8−299412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、経口用の薬剤(経口剤)や外用剤の中には用時まで無菌状態に維持・収容しておく必要のあるものがある。このため、バイアルは、上記の如き注射用の薬剤の他に、このような経口剤や外用剤を収容するために用いられる。この場合、かかる経口剤や外用剤が粉末又は薬液の状態のままに収容されるものであれば内部に入れて直ぐにゴム栓を打栓して密封し、薬液ではあるが凍結乾燥させるものであれば上記の如く凍結乾燥後にゴム栓で密封し、以後、上記の注射用薬剤(注射剤)の場合と同様に、フリップキャップが被せられて帯環が巻締めされて封入のための工程が行われることになる。つまり、注射剤であっても、注射剤以外の経口剤等であっても、共に同様の工程を経てバイアルに封入され、このバイアルに封入状態のままで医療機関等に提供されることになる。そして、医療機関ではフリップキャップのキャップ本体を外し、帯環による封入シールを剥がしてゴム栓を除去した上で、そのまま、あるいは、凍結乾燥薬剤であれば溶解後に、患者に対し経口投与等されることになる。
【0005】
このような状況下において、注射剤であっても、あるいは、経口剤等であっても、それが封入されているバイアルの全体形状や、密封構造も互いに同じであるため、例えば経口剤を注射用に誤使用したり、注射剤を経口用に誤使用したりというようなメディケーションエラーを招くおそれがある。このため、誤使用防止対策として、バイアルのラベルに「禁注射」という文字表示を入れて、医療現場で取り扱う医師や看護師の注意を喚起することが医薬品業界では採られている。しかしながら、医療現場においては、注射剤であるか経口剤であるかの別が一目で識別し得る対策が要請されている。
【0006】
又、注射剤あるいは経口剤の如何を問わず、使用時にフリップキャップのキャップ本体を手で引き抜く等して除去(開蓋)する必要があるが、その際に、キャップ本体を取れば露出することになるゴム栓上面に対し手がふれたり、そのゴム栓上面を手で擦ったりすることが多くなる。このため、医療現場での手間を増やすこと無しに、そのゴム栓上面に手が触れることを確実に回避し得る方策が求められている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、キャップ付き容器に対し同じ封入構造での封入でありながら一目で封入物を区別し得るという識別性を実現し得る手段、あるいは、かかる識別性に加え、手で触れることなく開蓋作業を行い得る手段としてのオーバーキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、オーバーキャップとして、容器の口部がキャップにより閉蓋されたキャップ付き容器のキャップの上から被せて外装させ得る内面形状と、上記キャップ付き容器のキャップの上から被せて外装させた装着状態では上記キャップ付き容器の口部側の外形を上記キャップよりも外方に膨出した形状に変換する外面形状とを備えてなるものとした(請求項1)。
【0009】
本発明の場合、キャップ付き容器に対しオーバーキャップを装着状態にすることにより、未装着状態のものに比して、口部側の外形がキャップよりも外方に膨出した形状となり、容器を含めた全体形状を大きく異なるものに変換させることが可能となる。このため、封入物の違い(例えば経口剤か注射剤かの違い)に応じてオーバーキャップを装着したり未装着にしたりすることで、封入物の違いを全体形状の違いに基づいて一目見るだけで識別し得るようにすることが可能となる。これにより、封入物の誤認に基づく誤使用の発生を防止することが可能になる。
【0010】
上記発明においては、上記装着状態で、キャップに対し、そのキャップを閉蓋状態に保持する保持力よりも大きい結合力で結合される構成を採用することができる(請求項2)。このようにすることにより、オーバーキャップの除去操作で同時にキャップをも除去して開蓋させることが可能になり、キャップの除去操作を手でする場合に発生するおそれがある口部側の汚染等の発生のおそれを確実に回避して清浄な衛生状態に維持させ得ることになる。
【0011】
かかる結合を実現する具体的な構成として、上記内面形状及び外面形状を有し、下端開口から上記キャップを受け入れる筒状本体と、上記キャップに対し結合するために溶着手段、接着手段、接合手段、螺合手段又は係合手段のいずれか1又は2以上の組み合わせにより構成された結合手段とを備え、上記筒状本体として、上記キャップよりも大きく外方に張り出してそのキャップの上面を覆う頂壁部と、この頂壁部の外周囲から下方に延びて上記キャップの外周面を覆った状態で下方の容器の外周側に向けて突出する筒壁部とを備えて構成することができる(請求項3)。このようにすることにより、請求項1又は請求項2の作用を確実に実現させ得る具体的構成が提供されることになる。
【0012】
さらに、結合手段としては、上記筒壁部から内向きにかつ斜め上方に向けて突出して上記キャップの周縁部の下端角部下面に係合する1又は2以上の爪部により構成することができる(請求項4)。このようにすることにより、合成樹脂成形により製造容易でしかもキャップとの結合も確実に行い得る結合手段を形成することが可能になる。
【0013】
この場合、上記爪部として、キャップ付き容器に対しそのキャップの上から被せることによりキャップの周縁部の外周面に押されて外方に弾性変形しながら相対移動し、周縁部の下端角部を乗り越えることにより弾性復元してその下面に係合するように構成することもできる(請求項5)。このようにすることにより、爪部自体の弾性変形に基づいて装着が容易かつ確実に可能となる。
【0014】
又、本発明のオーバーキャップにおいては、上記装着状態においてキャップから上方に延出されるように形成された延出部を上部側に一体に備えるようにすることができる(請求項6)。このようにすることにより、延出部を掴んで中心軸に交差する方向に引き抜き力を加える操作(かかる操作のことを本明細書では「こじる」という)等を行うことにより、キャップの開蓋操作をてこの原理に基づいて軽い操作力で確実に行い得るようになる。さらに、上記延出部の外表面に凹凸形状部を形成することにより(請求項7)、掴む操作を行う際の取り扱いがより容易になる上に、確実な操作も期待し得ることになる。
【0015】
さらに、本発明のオーバーキャップにおいて、上記容器の口部に対しその外周側に下向きに臨む下向き段部を備え、上記筒壁部に、上記装着状態で筒壁部から内向きにかつ斜め上方に向けて突出して上記口部の下向き段部に係合する1又は2以上の第2爪部を一体に形成するようにすることができる(請求項8)。このようにすることにより、筒壁部の下端と何らかの物との不用意な衝突に起因して筒壁部の下端から上向きへの外力が作用したとしても、第2爪部が下向き段部に係合しているためオーバーキャップの上向きの相対変位が阻止され、結合力又は結合手段に基づきキャップが開蓋されることを回避し得ると共に、オーバーキャップの脱落をも防止することが可能となる。
【0016】
又、オーバーキャップを装着した容器に係る第2の発明として、口部がキャップにより閉蓋された容器であって、そのキャップの上から請求項1〜8のいずれかに記載のオーバーキャップを被せて外装させてなるものとした(請求項9)。
【0017】
この第2の発明の場合、オーバーキャップの上述の作用が得られる容器を実現させ得ることになる。
【発明の効果】
【0018】
以上、説明したように、請求項1〜請求項8のいずれかに記載のオーバーキャップによれば、キャップ付き容器に対しオーバーキャップを装着状態にすることにより、未装着状態のものに比して、容器を含めた全体形状を大きく異なるものに変換させることができ、封入物の違いに応じてオーバーキャップを装着したり未装着にしたりすることで、封入物の違いを全体形状の違いに基づいて一目見るだけで識別することができる。これにより、封入物の誤認に基づく誤使用の発生を防止することができる。
【0019】
特に、請求項2によれば、オーバーキャップの除去操作で同時にキャップをも除去して開蓋させることができキャップの開蓋治具として機能させることができるようになる。しかも、キャップの除去操作を手でする場合に発生するおそれがある口部側の汚染等の発生のおそれを確実に回避して清浄な衛生状態に維持させることができるようになる。
【0020】
請求項3によれば、以上の効果を確実に実現させ得る具体的構成を提供することができる。
【0021】
請求項4によれば、結合手段として爪部による係合手段を採用することにより、合成樹脂成形により結合手段の製造が容易で、しかもキャップとの結合も確実に行うことができるようになる。
【0022】
請求項5によれば、爪部自体の弾性変形に基づいて装着操作を容易かつ確実に行うことができるようになる。
【0023】
請求項6によれば、延出部を掴んでこじる等の操作を行うことにより、キャップの開蓋操作をてこの原理に基づいて軽い操作力で確実に行うことができるようになる。又、請求項7によれば、上記延出部の外表面に凹凸形状部を形成することにより、掴む操作を行う際の取り扱いをより容易にすることができる上に、確実な操作も確保することができるようになる。
【0024】
さらに、請求項8によれば、筒壁部の下端と何らかの物との不用意な衝突に起因して筒壁部の下端から上向きへの外力が作用したとしても、第2爪部によってオーバーキャップの上向きへの相対変位を阻止することができ、結合力又は結合手段に基づきキャップが開蓋されることを確実に回避することができると共に、オーバーキャップの脱落をも防止することができるようになる。
【0025】
又、請求項9に記載のオーバーキャップを装着した容器によれば、以上の請求項1〜請求項8のいずれかのオーバーキャップによる効果を伴った容器を実現させることができるようになる
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
<第1実施形態>
図1〜図3は、本発明の第1実施形態に係るオーバーキャップ2をキャップ付き容器に装着した装着状態を示す。オーバーキャップ2の説明に入る前に、オーバーキャップ2を装着する対象であるキャップ付き容器として封入状態にあるバイアルについて先に説明する。なお、このキャップ付き容器としては、第1実施形態のみならず、以下の他の実施形態においても同じものを装着対象として用いるものである。
【0028】
図3に示すように、バイアル3は、底付きの本体部31から上端側の口部32にかけて先細形状になるように主としてガラス製により形成されたものである。口部32は上方に開口され、その開口端側から所定寸法範囲が他よりも厚肉に形成され、この厚肉部33の外周面下側にはその肉厚差に対応して下向き面を含む下向き段部34が形成されている。このバイアル3には開口状態の口部32から本体部31内に薬剤が入れられた後に、ゴム栓(中栓)4が打栓され、打栓されたゴム栓4の上からフリップキャップ5が被せられて閉蓋されている。フリップキャップ5は、例えばアルミニウム薄板製の帯封環51が合成樹脂製のキャップである上蓋52に対し係合等の手段により一体に組み付けられたものである。そして、上記帯封環51のスカート部511が巻締めされて上記厚肉部33の外周面から下向き段部34にかけて密着され、これにより、ゴム栓4の脱落を確実に阻止して密封状態に封印されて維持されることになる。この帯封環51はゴム栓4の上面の中央部領域が切り欠かれた状態になっており、上記の上蓋52を開蓋したときに注射針を差し込むためにゴム栓4の上面が露出するようになっている。そして、この露出するゴム栓4の上面を保護するために上蓋52が被せられるようになっている。
【0029】
上蓋52は、頂壁部521と、その外周囲から下向きに屈曲して垂下する周縁部522とからなり、頂壁部521の内下面中央位置には嵌め込み部523が形成されている。そして、上蓋52は、その嵌め込み部523内に対し帯封環51の内周縁512が嵌め込まれて係合状態にされて帯封環51と一体に組み付けられ、上蓋52をこじることにより開蓋操作することでその内周縁512との係合が外れて帯封環51と分離されるようになっている。なお、内周縁512を上蓋52と一体に樹脂成形し、上記の開蓋操作により帯封環51側の破断線(弱化線)に沿って内周縁512が破断されることにより、上蓋52と帯封環51とが互いに分離されるようにしてもよい。かかる上蓋52は、上記の内周縁512との係合以外は、帯封環51の特に外周面に対し互いの摩擦抵抗力に基づく保持力によりゴム栓4に対し閉蓋状態に維持されている。すなわち、上蓋52を閉蓋状態に保持する保持力は主として上記の摩擦抵抗力に基づくものであり、上記の内周縁512との係合はできるだけ僅かな操作力で外れるように設定されているため、その係合による上記の保持力としての寄与は僅かとされている。以上により、封入状態のバイアル3の外形は、図4に示すように本体部31の上側の口部(図3参照)にかけて細首部分があり、その上から下向き段部34(図3参照)及びこの外表面を覆う帯封環51のスカート部511により拡径され、さらに上蓋52の周縁部522の下端角部524により段状に拡径されるというように二段階の段部が形成されたものになっている。
【0030】
次に、図1〜図4を参照しつつ本実施形態のオーバーキャップ2について説明すると、オーバーキャップ2は下端が開口された筒状本体21と、フリップキャップ5との結合手段である第1爪部22,22,…と、装着状態の維持を補完するための第2爪部23,23,…とを備えたものである。筒状本体21は、頂壁部211と、頂壁部211の外周囲から下向きに延びる筒壁部212とから構成されたものである。筒壁部212は、封入状態のバイアル3の上蓋52の上から本体部31の上端側位置までの上下方向領域、要するに口部32側の本体部31よりも小径となっている領域を覆って、本体部31と略同径にし得る程度の長さ(高さ)と外径とを有しており、その上下方向所定位置においては所定数の第1爪部22,22,…と、第2爪部23,23,…とが周方向に等間隔で交互に配置されている。各爪部22,23が形成された部位には、各爪部22,23を囲み内外を貫通するように開口窓213,214が形成されている。なお、各開口窓213,214は、合成樹脂成形時の型抜きのために、上方に向けて開口幅が徐々に拡幅されかつ頂壁部211側に対し後述の各爪部213,214の内向き突出量よりも大きく切れ込むように形状設定されている。
【0031】
筒状本体21を構成する頂壁部211及び筒壁部212は、その下端開口をフリップキャップ5の上蓋52の上側から被せて上蓋52の頂壁部521を覆い得る内面形状と、フリップキャップ5の上から被せて装着状態(図1〜図3の各図に示す状態)にすることにより全体形状をバイアル3の本体部31とほぼ同様の円柱状に変更し得る外面形状とを備えている。例えば図4の下半部に示すような未装着状態のバイアル3が有するような口部側が先細状の全体形状を、オーバーキャップ2を装着することにより、図1に示すような略円柱状の全体形状に変換させ得るようになっている。又、付加的な構成としてより詳細には筒壁部212は下端開口に向けて極僅かに拡径するようにテーパ状に形成されており、上蓋52に上から被せていくと筒壁部212の内周面が僅かではあるが徐々に狭まってその内周面と上蓋52の周縁部522の外周面とが互いに接触し、その接触摩擦力で各第1爪部22以外にも上蓋52をオーバーキャップ2内に保持して結合させることになるようにされている。
【0032】
各第1爪部22は筒壁部212の所定の上側位置から内向きにかつ斜め上方に向けて突出して装着状態で上蓋52の周縁部522の下端角部524の下面に係合可能に形成されている。すなわち、各第1爪部22は上蓋52の周縁部522の下端角部524の外径位置よりも内側位置まで中心軸X側に突出されている。一方、各第2爪部23は筒壁部212の所定の下側位置から同様に内向きにかつ斜め上方に向けて突出して装着状態でバイアル3の口部32外周側の下向き段部34の下面(現実にはこの下面が帯封環51のスカート部511により覆われているためそのスカート部511の表面)に係合可能に形成されている。すなわち、各第2爪部23は少なくとも厚肉部33の外周面よりも内側位置(中心軸X側位置)まで突出されている。そして、各第1爪部22は、上蓋52を頂壁部211との間に挟み付けて保持する一方、オーバーキャップ2をこじって外せば上蓋52もオーバーキャップ2内に保持されたままオーバーキャップ2と共に外されることになるという関係になるように、上蓋52をオーバーキャップ2に結合させる役割を果たすようになっている。一方、各第2爪部23はオーバーキャップ2の筒壁部212の下端開口側が何らかのものと衝突してオーバーキャップ2に対し上向きの衝撃力が作用した場合に、その衝撃力を第2爪部23を介して下向き段部34に先に伝達させることにより、第1爪部22を介して上蓋52に上記衝撃力が直接に伝達されることを抑制するという役割を果たすようになっている。すなわち、このような役割をより確実にする上でも、装着状態においては、各第2爪部23が下向き段部34の下面側に当接して係合状態になってはいるものの、各第1爪部22は上蓋52の下端角部524の下面との間に微小寸法の上下方向隙間を隔てて係合可能状態になっていることが好ましい。
【0033】
爪部の数や配置に関しては、図例では、第1爪部22,22,…を3つ(図5も併せて参照)、第2爪部23,23,…を3つそれぞれ設け、周方向をこれらの合計数で等分割した各位置に交互配置で設け、かつ、第1爪部22と第2爪部23とが中心軸Xを挟んで直径方向の両側に位置するように設けているが、これは好ましい状態を示したものである。最低限は、それぞれ少なくとも1つあればよく、あるいは、第1爪部22と第2爪部23とをそれぞれ2つずつとしたり、それぞれ4つ以上としたりして上記と同様に交互配置にしたり設けるようにしてもよい。又、各爪部22,23は、その合成樹脂素材の特性に基づき、装着前の状態(図4に示す状態)から装着状態に被せる際に内外方向(中心軸Xに対し放射方向)に弾性変形して撓み得るように、その肉厚寸法や形状等が設定されている。
【0034】
以上のオーバーキャップ2は、ゴム栓4及びフリップキャップ5を用いて封入状態にされたバイアル3に対し、図4に示すように、下端開口を上蓋52に相対向させた状態から下に下ろして被せる。被せていく際に各爪部22,23の先端側が上蓋52の周縁部522の外周面に当たって押されることにより外方に弾性変形し、加えて第2爪部23の先端側は帯封環51の外周面によっても外方への弾性変形が継続される。そして、各第2爪部23は帯封環51のスカート部511に沿って下向き段部34まで至ることにより弾性復元して下向き段部34の下面に係合する一方、各第1爪部22は上蓋52の下端角部524を乗り越えることにより弾性復元してその下端角部524の下面に係合可能となって装着状態に至る。
【0035】
この装着状態においては、例えば配送時又は病院等の医療機関での移送時等におけるオーバーキャップ2の上蓋52からの脱落が確実に防止された状態となる。すなわち、上記の移送時にオーバーキャップ2の筒壁部212の下端開口縁が何かと衝突してその下端開口縁に対し下から上方に衝撃力が作用したとしても、その衝撃力は各第2爪部23を介してバイアル3の下向き段部34に伝達されて、オーバーキャップ2の上方への相対変位が阻止されることになる。このため、各第1爪部22を介して上蓋52に上向きの外力(開蓋方向の外力)が作用することはなく、上蓋52を確実に閉蓋状態に維持しつつオーバーキャップ2をその上蓋52に対し確実に結合された装着状態に保持することができる。
【0036】
又、上記の装着状態においては、バイアル3に対してオーバーキャップ2という付属品が付加されているのみならず、全体形状が略円柱状となるため(例えば図1参照)、オーバーキャップ2が未装着のバイアル3(例えば図4の下半部参照)と比べ、全体形状が全く異なり一見して両者の違いを認識することができ、この結果、装着状態のバイアル3であるか、未装着状態のバイアル3であるかの識別を一瞥しただけで確実に行い得るようになる。このため、注射剤が封入されたバイアル3についてはオーバーキャップ2を未装着のまま病院等の医療機関に提供する一方、経口剤が封入されたバイアル3についてはオーバーキャップを装着した状態で医療機関に提供するようにすることにより、医療機関等で患者に投与する医師・看護師や、患者本人等において、注射剤ではなくて経口剤封入のバイアル3であることを何ら特別な注意力を払うことなく一瞥しただけで識別することができるようになる。これにより、経口剤を注射剤として誤使用する、あるいは、注射剤を経口剤として誤使用する等の誤使用の発生を十分にかつ確実に阻止又は回避することができるようになる。
【0037】
そして、上記の医療機関等においてバイアル3内に封入された経口剤を患者に投与する場合、又は、患者本人が封入された経口剤を経口取得する場合には、オーバーキャップ2をこじることによりバイアル3側から外せば、そのオーバーキャップ2の除去に伴い同時に上蓋52が開蓋されてオーバーキャップ2内に保持された状態で上蓋52を除去することができるようになる。すなわち、例えばオーバーキャップ2を掴んで中心軸Xに交差する方向(図6に二点鎖線の矢印で示す方向)にこじると、別の言い方でいうとオーバーキャップ2を掴んで上記中心軸Xに対して僅かに折り曲げるようにして引き抜くと、第1爪部22の先端が上蓋52の下端角部524に突き当たってこじる操作力が下端角部524の下面に作用し、これにより、図6に示すように上蓋52が帯封環51の外周面から離れると共に、その内周縁512との係合も外されて開蓋されることになる。そして、図7に示すようにオーバーキャップ2を取り外すことにより、上蓋52はオーバーキャップ2内に保持された状態で帯封環51から完全に離されて開蓋状態となり、バイアル3の上面には図8にも示すようにゴム栓4の上面中央領域が露出した状態になる。このように、オーバーキャップ2は、上蓋52の開蓋操作のための治具としての役割・機能を発揮する上に、その開蓋操作がオーバーキャップ2を掴んでこじるという操作だけで行われるため帯封環51やゴム栓4の上記の露出部分に操作者の手が触れたり他の物が触れたりすることを確実に回避する機能を発揮することになる。これにより、帯封環51やゴム栓4の上記の露出部分を確実に清浄な衛生状態に維持した状態で上蓋52の開蓋操作を行うことができ、上蓋52の開蓋操作に伴う上記の露出部分等の汚染を確実に回避することができる。
【0038】
なお、バイアル3内の経口剤を使用する操作について、その一例を図8の例に基づいて説明する。この図8の例では帯封環51の内周縁512がプルリングを構成するように無端環状に形成され、その一部が外周部に対し容易に破断可能な弱化線513,513を介して連設されている。このため、内周縁512を引き起こした後、その内周縁512に例えば指をかけて下側に押し下げることにより帯封環51の周方向一部を弱化線513,513に沿って破断すれば、帯封環51が除去されるため、ゴム栓4を引き抜いて内部の経口剤を取り出したり、その経口剤を溶解処理したりすることができるようになる。
【0039】
<第2実施形態>
図9は本発明の第2実施形態に係るオーバーキャップ6をキャップ付き容器である封入状態のバイアル3に対し装着する前の状態を示し、図10はそのバイアル3に対し装着した状態(装着状態)を示す。このオーバーキャップ6は、第1実施形態のオーバーキャップ2から第2爪部23,23,…を省略する一方、開蓋操作のための延出部614を上部側に追加形成したものであり、これらの点が第1実施形態と主要な相違点となっている。なお、以下の説明において、第1実施形態と同様の構成要素については第1実施形態と同一符号を付して重複した詳細説明を省略する。
【0040】
オーバーキャップ6は、下端が開口された筒状本体61と、フリップキャップ5を構成する上蓋52との結合手段である爪部62,62,…とを備えたものである。筒状本体61は、頂壁部611と、頂壁部611の外周囲から下向きに延びる筒壁部612とから構成されたものである。筒壁部612は、封入状態のバイアル3の本体部31の上側の口部32(図3参照)側領域を覆い、かつ、上蓋52の頂壁部521から上方に所定寸法だけ延出し得る長さ(高さ)と、上記の本体部31の上側の口部32(図3参照)側領域を覆った状態でその領域を本体部31と少なくとも略同外径に変更し得る外径とを有している。要するに、頂壁部611と筒壁部612とから構成される筒状本体61は、その下端開口からフリップキャップ5の上蓋52に被せて上蓋52からバイアル3の本体部31の上側近傍までを覆い得る内面形状と、装着状態(図9の一点鎖線で示す状態又は図10参照)にすることによりバイアル3を含めた全体形状を一つの円柱状のものに変更し得る外面形状とを備えている。加えて、オーバーキャップ6の内面上部位置であって頂壁部611から所定寸法下方位置には内側に突出する段状の凸部613が形成されており、装着状態ではこの凸部613下面が上蓋52上面に当接して、凸部613から上側部分を上蓋52よりも上方に延出した状態にし得るようになっている。この上側部分が延出部614とされ、この延出部614の外周面には周方向に延びる凹溝615を形成することにより頂壁部611の外周縁が外周側に鍔状に突出する凸縁616となるようにしている。これら凹溝615と凸縁616とにより凹凸形状部が構成されている。
【0041】
そして、上記筒壁部612の上下方向所定位置においては所定数の爪部62,62,…が周方向に略等間隔で配置され、各爪部62が形成された部位には、各爪部62を囲み内外を貫通するように開口窓617が形成されている。各爪部62は、内向きにかつ斜め上方に向けて、上蓋52の周縁部522の下端角部524の外径位置よりも内側位置(中心軸X側位置)まで突出されており、第1実施形態の第1爪部22と同様に、装着状態においてその下端角部524の下面に係合可能に形成されている。そして、装着状態においては、各爪部62が上蓋52の下端角部524の下面に係合した状態で、上記凸部613が上蓋52の上面に当接し、上蓋52を凸部613と各爪部62とにより上下両側から挟み付けた状態になるようになっている(図10参照)。
【0042】
なお、図例のものでは4つの爪部62を周方向をほぼ4等分した各位置(図11参照)に配設しているが、第1実施形態の場合と同様に少なくとも1つ配設されていればよく、2つ以上配設することが好ましい。又、図11に示すように、各爪部62及び開口窓617を構成する各端縁は、分割型を用いた合成樹脂成形時の型抜きの便宜、すなわち、分割線Dを挟んで左右両側方に型抜きをする際の便宜として、左右両側方のそれぞれに対し少なくとも平行になるか、好ましくは僅かに拡開することになるか、のような方向に延びるように設定されている。
【0043】
以上のオーバーキャップ6は、ゴム栓4及びフリップキャップ5を用いて封入状態にされたバイアル3(図9参照)に対し、第1実施形態と同様に、下端開口を上蓋52に相対向させた状態から下に下ろして被せる。被せていく際に爪部62,62,…の先端側が上蓋52の周縁部522の外周面に当たって押されることにより外方に弾性変形し、上蓋52の下端角部524を乗り越えることにより弾性復元してその下端角部524の下面に係合可能となって装着状態に至る。
【0044】
この装着状態においては、第1実施形態の場合と同様に、バイアル3に対してオーバーキャップ6という付属品が付加されているか否かの違いのみならず、全体形状が先細形状であるか略円柱状であるかというように、オーバーキャップ6が未装着のものと装着されたものとの両者の違いを互いに全く異なる全体形状によって一見するだけで認識することができるようになる。この結果、経口剤封入のバイアル(オーバーキャップ6の装着状態のバイアル3)であるか、注射剤封入のバイアル(未装着状態のバイアル3)であるかの識別を、何ら特別な注意力を払うことなく一瞥しただけで識別することができるようになる。これにより、経口剤を注射剤として誤使用する、あるいは、注射剤を経口剤として誤使用する等の誤使用の発生を十分にかつ確実に阻止又は回避することができるようになる。
【0045】
そして、オーバーキャップ6が装着されたバイアル3の収容物(経口剤)を使用する場合には、オーバーキャップ6を第1実施形態と同様にこじることによりバイアル3側から外せば、そのオーバーキャップ6の除去に伴い同時に上蓋52が開蓋されてオーバーキャップ2内に保持された状態で上蓋52を除去することができるようになる。すなわち、オーバーキャップ6を掴んで中心軸Xに交差する方向にこじると、そのこじるための操作力が爪部62の先端から上蓋52の下端角部524の下面に対し開蓋方向の力として作用して、上蓋52が帯封環51の外周面から離れると共に、その内周縁512(図6参照)との係合も外されて開蓋されることになる。すなわち、オーバーキャップ6は、第1実施形態と同様に、上蓋52の開蓋操作のための治具としての役割・機能を発揮する上に、帯封環51やゴム栓4の露出部分に操作者の手が触れたり他の物が触れたりすることを確実に回避する機能を発揮することになり、これにより、帯封環51やゴム栓4の露出部分を確実に清浄な衛生状態に維持した状態で上蓋52の開蓋操作を行うことができ、上蓋52の開蓋操作に伴う上記の露出部分等の汚染を確実に回避することができるようになる。
【0046】
さらに、この開蓋操作に際し、操作者は延出部614を掴んで開蓋操作(上記のこじる操作)を行うことができるため、上蓋52よりも上方に延出された部位(延出部614)への操作力をてこの原理に基づき上記の下端角部524に伝達させることができ、比較的軽い操作力で容易に開蓋操作を行うことができるようになる。しかも、延出部614が凹溝615及び凸縁616という凹凸の外面形状を有しているため、操作力を加え易い上に、確実に掴み得るためその操作も確実に行い得ることになる。
【0047】
図12は第2実施形態の他の態様のオーバーキャップ6aを示す。このオーバーキャップ6aはその延出部614aを上記のオーバーキャップ6の延出部614よりもさらに上方に延出させたものである。すなわち、筒壁部612aの上下方向長さを図9のオーバーキャップ6の筒壁部612よりもさらに大きくし、その分、凹溝615aの上下方向幅をより大きく拡幅したものである。これら凹溝615aと凸縁616とにより凹凸形状部が構成されることになる。延出部614aの上下方向長さが、例えば上下方向の全体寸法の半分程度、あるいはほぼ半分からほぼ1/3もしくはほぼ1/4を占める程度に設定されている。この場合には、上記のてこの原理に基づく操作力軽減作用をより増大させることができる上に、掴み代の増大により操作の際の取り扱いも容易になる。さらに、未装着状態と装着状態との全体形状(特に全体高さ)の違いがより明白となって、上述の識別機能をより十分なものにすることができる。
【0048】
<第3実施形態>
図13及び図14は本発明の第3実施形態に係るオーバーキャップ7をキャップ付き容器である封入状態のバイアル3に対し装着した状態を示す。このオーバーキャップ7は、第1実施形態のオーバーキャップ2から第2爪部23,23,…を省略する一方、第2実施形態とは異なる形態の延出部714を上部側に追加形成したものである。なお、以下の説明において、第1実施形態と同様の構成要素については第1実施形態と同一符号を付して重複した詳細説明を省略する。
【0049】
オーバーキャップ7は、下端が開口された筒状本体71と、フリップキャップ5を構成する上蓋52との結合手段である爪部72,72,…とを備えたものであり、筒状本体71は、頂壁部711と、頂壁部711の外周囲から下向きに延びる筒壁部712とから構成されたものである。筒壁部712は、封入状態のバイアル3の本体部31の上側の口部32(図3参照)側領域を覆い、かつ、上蓋52の頂壁部521(図14参照)から上方に所定寸法だけ延出し得る長さ(高さ)と、上記の本体部31の上側の口部32(図3参照)側領域を覆った状態でその領域を本体部31と少なくとも略同外径に変更し得る外径とを有している。要するに、頂壁部711と筒壁部712とから構成される筒状本体71は、その下端開口からフリップキャップ5の上蓋52に被せて上蓋52からバイアル3の本体部31の上側近傍までを覆い得る内面形状と、装着状態にすることによりバイアル3を含めた全体形状を一つの円柱状のものに変更し得る外面形状とを備え、その基本形状は図12に示すオーバーキャップ6aの筒状本体61aとほぼ同様のものに設定されている。
【0050】
加えて、オーバーキャップ7は、その内面側に、頂壁部711下面から所定寸法下方位置までの範囲の内周面から中心軸Xに向けて所定量突出する2以上のリブ状の凸部713,713,…を一体に備え、装着状態では各凸部713下面が上蓋52上面に当接して、凸部713から上側部分が上蓋52よりも上方に延出して延出部714を構成するようにされている。又、オーバーキャップ7の外面側にはその上下方向全体に亘り凹凸形状の表面加工が施されている。すなわち、頂壁部711の外周縁が外周側に鍔状に突出されて凸縁715とされ、この凸縁715から筒壁部712の外面側にかけて上下方向に凹・凸が繰り返されるように凸条716,716,…が互いに平行に周方向に延びるように形成されている。これら凸縁715及び凸条716,716,…により凹凸形状部が構成されている。
【0051】
そして、上記筒壁部712の上下方向所定位置においては所定数の爪部72,72,…が第2実施形態の爪部62,62,…と同様構成にて形成され、各爪部72がオーバーキャップ7の装着状態において上蓋52の下端角部524の下面に係合可能とされている。そして、装着状態においては、各爪部72が上蓋52の下端角部524の下面に係合した状態で、上記各凸部713が上蓋52の上面に当接し、上蓋52を凸部713と各爪部72とにより上下両側から挟み付けた状態になるようになっている(図14参照)。
【0052】
以上のオーバーキャップ7は、第2実施形態の場合と同様にして、ゴム栓4及びフリップキャップ5を用いて封入状態にされたバイアル3に対し装着され、各爪部72が上蓋52の下端角部524の下面に係合する。この装着状態においては、未装着のバイアル3と比して、第1実施形態の場合又は第2実施形態の場合よりもさらに特異な全体形状の違いが実現され、経口剤封入のバイアル(オーバーキャップ7の装着状態のバイアル3)であるか、注射剤封入のバイアル(未装着状態のバイアル3)であるかの識別を、何ら特別な注意力を払うことなく一瞥しただけでより確実に識別することができるようになる。これにより、誤使用の発生を十分にかつ確実に阻止又は回避することができるようになる。
【0053】
又、本実施形態のオーバーキャップ7は、上蓋52の開蓋操作のための治具としての役割・機能を発揮する上で、筒壁部712の外表面に凸縁715や凸条716,716,…が形成されているため、手で掴む際に掴み易い上に、操作力も加え易いため、上蓋52の開蓋操作をより確実にかつ容易に行うことができるようになる。
【0054】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記第1〜第3実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記第1〜第3実施形態では、結合手段として爪部22,62,72による係合手段を採用しているが、これ以外の係合手段を採用してもよい。例えば頂壁部と筒壁部とで構成した筒状本体の筒壁部の内面から突出して上蓋52の下端角部の下面と凹凸嵌合により係合する突起を設けるようにしてもよい。突起としては、例えば断面形状が三角形又は下側にテーパ面を有する係止突起を突設するようにしてもよい。一例を図示すると、図15に示すように、オーバーキャップ8の頂壁部811と筒壁部812とで構成した筒状本体81の筒壁部812の内面から内側に突出する係止突起82,82,…を一体に形成すればよい。かかる係止突起82としては、フリップキャップ5を構成する上蓋52の下端角部524の下面に係合可能な上向きの当止面と、装着時の案内面となる下向きのテーパ面とを有するものを例示しており、筒壁部812の内周面に対し所定間隔を隔てて複数個設けたり、あるいは、周方向に連続して設けたりすればよい。なお、以上の場合、筒壁部812に対し下端開口側から上側に延びるスリットを周方向に複数本形成するようにしてもよい。
【0055】
又、結合手段として、筒壁部の内面を上蓋52の外周面に対し圧接させることにより密に接触させて接合し、その摩擦抵抗力によって上蓋52との間の結合力を構成するようにしてもよい。一例を図示すると、図16に示すように、オーバーキャップ9の頂壁部911と筒壁部912とで構成した筒状本体91の筒壁部912の内周面上部に圧接部913を形成すればよい。この圧接部913は、フリップキャップ5を構成する上蓋52の周縁部522に対し圧着気味に接触した状態になるように、上記周縁部522の外径よりも僅かに小さい内径を有するように形成されたものである。かかる圧接部913は、内周面全体により形成しても、周方向に対し断続的又は部分的に形成しても、いずれでもよいし、上述と同様に、筒壁部912に対し下端開口側から上側に延びるスリットを周方向に複数本形成するようにしてもよい。
【0056】
さらに、結合手段として、上蓋52の上から被せたオーバーキャップと、上蓋との間で接触する部位を形成し、この接触部位同士を溶着(例えば超音波溶着)又は接着させるようにして互いに結合させてもよい。あるいは、オーバーキャップの内周面(筒壁部の内周面)にネジ溝を形成し、このネジ溝と上蓋52の外周面との間で螺合させることにより、オーバーキャップと上蓋52とを互いに結合させるようにしてもよい。さらには、以上の各手段を組み合わせて結合手段を構成するようにしてもよい。
【0057】
上記の各実施形態では、帯封環51と上蓋52とが係合により一体に組み付けられたフリップキャップを例にしたが、これに限らず、オーバーキャップ2,6,6a,7を装着させる対象のキャップとしてはバイアル3の口部32を封止し得る蓋であればよい。
【0058】
上記の各実施形態では、延出部614,614a,714を筒壁部612,612a,712の一部として形成しているが、これに限らず、別に形成するようにしてもよい。この場合には、頂壁部の上面から延出部を上方に突出させて形成するようにすればよい。又、延出部614,614a,714の外表面に形成する凹凸形状部は各実施形態で例示のものに限定されることなく、それら以外の種々のものを採用するようにすればよい。要は、操作者が掴み易い凹凸形状部であればよく、特定のものに限定されることはない。又、識別性のより十分な担保のために、より目立つ意匠を施した凹凸形状を採用するようにしてもよい。
【0059】
上記の各実施形態では筒状本体として頂壁部211,611,711を含んで構成しているが、これに限らず、究極的には頂壁部を省略して筒壁部212,612,612a,712のみで筒状本体を構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態をバイアルに装着した状態の斜視図である。
【図2】図1のものの正面図である。
【図3】図2のものを図5のA−A線位置で部分的に切り欠いて示す部分断面説明図である。
【図4】図1のオーバーキャップとバイアルとを分離させて示す、オーバーキャップの未装着状態の分解斜視図である。
【図5】オーバーキャップ単体の平面図である。
【図6】オーバーキャップを用いた開蓋操作の初期段階を示す断面説明図である。
【図7】図6の段階から完全に除去した状態を示す断面説明図である。
【図8】経口剤を取り出す場合の開封作業を説明するための斜視図である。
【図9】第2実施形態のオーバーキャップを用いてバイアルに装着する前の状態の分解斜視図である。
【図10】図9のものを装着した状態の断面説明図である。
【図11】図10のB−B線におけるバイアル等を省略した断面説明図である。
【図12】第2実施形態の他の態様を示す装着状態の斜視図である。
【図13】第3実施形態のオーバーキャップをバイアルに装着した状態の斜視図である。
【図14】図13の装着状態のオーバーキャップ等の断面説明図である。
【図15】他の実施形態を示す部分断面説明図である。
【図16】図15とは異なる、他の実施形態を示す部分断面説明図である。
【符号の説明】
【0061】
2,6,6a,7,8,9 オーバーキャップ
3 バイアル(容器)
5 フリップキャップ(キャップを含むもの)
21,61,61a,71,81,91 筒状本体
22 第1爪部(係合手段;結合手段)
23 第2爪部
62,72 爪部(係合手段;結合手段)
32 口部
34 下向き段部
52 上蓋(キャップ)
82 係止突起(結合手段)
211,611,711,811,911 頂壁部
212,612,612a,712,812,912 筒壁部
522 上蓋の周縁部
524 上蓋の下端角部
614,614a,714 延出部
615,615a 凹溝(凹凸形状部)
616,715 凸縁(凹凸形状部)
716 凸条(凹凸形状部)
913 圧接部(結合手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ付き容器等の閉蓋状態のキャップに対し、その上からさらに被せて用いられるオーバーキャップあるいはかかるオーバーキャップを装着した容器に関する。特に、内部の収容物を口栓及びこの口栓の脱落防止等を図るためのフリップキャップにより封入し得るバイアルに対し、好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キャップ付き容器としては瓶容器の口部をゴム栓(口栓)及びフリップキャップにより密封状態に閉栓したバイアルが知られている(例えば特許文献1又は特許文献2参照)。かかるバイアルは、例えば凍結乾燥させた薬剤を無菌状態に収容し、用時にその薬剤に対し例えば蒸留水を液注して溶解させ、これをシリンジに吸引して注射する、という用途で用いられる。薬剤のバイアルへの封入は例えば次のような工程により行われる。まず、例えば薬液を口部からバイアルに入れてゴム栓を半封栓状態にし、これを凍結乾燥機内に入れて所定時間の凍結乾燥処理を経て固体粉末状等の凍結乾燥薬剤にし、口部をゴム栓で密封する。次に、例えば合成樹脂のキャップ本体がアルミニウム製等の帯環に対し係合手段等により組み付けられたフリップキャップを上記ゴム栓の上から被せ、帯環の裾部分を口部外周面に対し巻締めする。この状態で搬送や保管等が行われる。そして、使用時には、フリップキャップのキャップ本体を引き抜くことにより帯環から外し、露出したゴム栓の中央部上面に注射針を刺して蒸留水を内部に注入する。この注入した蒸留水により薬剤を溶解させ、この溶解液をシリンジに吸引して患者に注射等することにより薬剤が投与されることになる。
【0003】
【特許文献1】特開平7−165252号公報
【特許文献2】特開平8−299412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、経口用の薬剤(経口剤)や外用剤の中には用時まで無菌状態に維持・収容しておく必要のあるものがある。このため、バイアルは、上記の如き注射用の薬剤の他に、このような経口剤や外用剤を収容するために用いられる。この場合、かかる経口剤や外用剤が粉末又は薬液の状態のままに収容されるものであれば内部に入れて直ぐにゴム栓を打栓して密封し、薬液ではあるが凍結乾燥させるものであれば上記の如く凍結乾燥後にゴム栓で密封し、以後、上記の注射用薬剤(注射剤)の場合と同様に、フリップキャップが被せられて帯環が巻締めされて封入のための工程が行われることになる。つまり、注射剤であっても、注射剤以外の経口剤等であっても、共に同様の工程を経てバイアルに封入され、このバイアルに封入状態のままで医療機関等に提供されることになる。そして、医療機関ではフリップキャップのキャップ本体を外し、帯環による封入シールを剥がしてゴム栓を除去した上で、そのまま、あるいは、凍結乾燥薬剤であれば溶解後に、患者に対し経口投与等されることになる。
【0005】
このような状況下において、注射剤であっても、あるいは、経口剤等であっても、それが封入されているバイアルの全体形状や、密封構造も互いに同じであるため、例えば経口剤を注射用に誤使用したり、注射剤を経口用に誤使用したりというようなメディケーションエラーを招くおそれがある。このため、誤使用防止対策として、バイアルのラベルに「禁注射」という文字表示を入れて、医療現場で取り扱う医師や看護師の注意を喚起することが医薬品業界では採られている。しかしながら、医療現場においては、注射剤であるか経口剤であるかの別が一目で識別し得る対策が要請されている。
【0006】
又、注射剤あるいは経口剤の如何を問わず、使用時にフリップキャップのキャップ本体を手で引き抜く等して除去(開蓋)する必要があるが、その際に、キャップ本体を取れば露出することになるゴム栓上面に対し手がふれたり、そのゴム栓上面を手で擦ったりすることが多くなる。このため、医療現場での手間を増やすこと無しに、そのゴム栓上面に手が触れることを確実に回避し得る方策が求められている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、キャップ付き容器に対し同じ封入構造での封入でありながら一目で封入物を区別し得るという識別性を実現し得る手段、あるいは、かかる識別性に加え、手で触れることなく開蓋作業を行い得る手段としてのオーバーキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、オーバーキャップとして、容器の口部がキャップにより閉蓋されたキャップ付き容器のキャップの上から被せて外装させ得る内面形状と、上記キャップ付き容器のキャップの上から被せて外装させた装着状態では上記キャップ付き容器の口部側の外形を上記キャップよりも外方に膨出した形状に変換する外面形状とを備えてなるものとした(請求項1)。
【0009】
本発明の場合、キャップ付き容器に対しオーバーキャップを装着状態にすることにより、未装着状態のものに比して、口部側の外形がキャップよりも外方に膨出した形状となり、容器を含めた全体形状を大きく異なるものに変換させることが可能となる。このため、封入物の違い(例えば経口剤か注射剤かの違い)に応じてオーバーキャップを装着したり未装着にしたりすることで、封入物の違いを全体形状の違いに基づいて一目見るだけで識別し得るようにすることが可能となる。これにより、封入物の誤認に基づく誤使用の発生を防止することが可能になる。
【0010】
上記発明においては、上記装着状態で、キャップに対し、そのキャップを閉蓋状態に保持する保持力よりも大きい結合力で結合される構成を採用することができる(請求項2)。このようにすることにより、オーバーキャップの除去操作で同時にキャップをも除去して開蓋させることが可能になり、キャップの除去操作を手でする場合に発生するおそれがある口部側の汚染等の発生のおそれを確実に回避して清浄な衛生状態に維持させ得ることになる。
【0011】
かかる結合を実現する具体的な構成として、上記内面形状及び外面形状を有し、下端開口から上記キャップを受け入れる筒状本体と、上記キャップに対し結合するために溶着手段、接着手段、接合手段、螺合手段又は係合手段のいずれか1又は2以上の組み合わせにより構成された結合手段とを備え、上記筒状本体として、上記キャップよりも大きく外方に張り出してそのキャップの上面を覆う頂壁部と、この頂壁部の外周囲から下方に延びて上記キャップの外周面を覆った状態で下方の容器の外周側に向けて突出する筒壁部とを備えて構成することができる(請求項3)。このようにすることにより、請求項1又は請求項2の作用を確実に実現させ得る具体的構成が提供されることになる。
【0012】
さらに、結合手段としては、上記筒壁部から内向きにかつ斜め上方に向けて突出して上記キャップの周縁部の下端角部下面に係合する1又は2以上の爪部により構成することができる(請求項4)。このようにすることにより、合成樹脂成形により製造容易でしかもキャップとの結合も確実に行い得る結合手段を形成することが可能になる。
【0013】
この場合、上記爪部として、キャップ付き容器に対しそのキャップの上から被せることによりキャップの周縁部の外周面に押されて外方に弾性変形しながら相対移動し、周縁部の下端角部を乗り越えることにより弾性復元してその下面に係合するように構成することもできる(請求項5)。このようにすることにより、爪部自体の弾性変形に基づいて装着が容易かつ確実に可能となる。
【0014】
又、本発明のオーバーキャップにおいては、上記装着状態においてキャップから上方に延出されるように形成された延出部を上部側に一体に備えるようにすることができる(請求項6)。このようにすることにより、延出部を掴んで中心軸に交差する方向に引き抜き力を加える操作(かかる操作のことを本明細書では「こじる」という)等を行うことにより、キャップの開蓋操作をてこの原理に基づいて軽い操作力で確実に行い得るようになる。さらに、上記延出部の外表面に凹凸形状部を形成することにより(請求項7)、掴む操作を行う際の取り扱いがより容易になる上に、確実な操作も期待し得ることになる。
【0015】
さらに、本発明のオーバーキャップにおいて、上記容器の口部に対しその外周側に下向きに臨む下向き段部を備え、上記筒壁部に、上記装着状態で筒壁部から内向きにかつ斜め上方に向けて突出して上記口部の下向き段部に係合する1又は2以上の第2爪部を一体に形成するようにすることができる(請求項8)。このようにすることにより、筒壁部の下端と何らかの物との不用意な衝突に起因して筒壁部の下端から上向きへの外力が作用したとしても、第2爪部が下向き段部に係合しているためオーバーキャップの上向きの相対変位が阻止され、結合力又は結合手段に基づきキャップが開蓋されることを回避し得ると共に、オーバーキャップの脱落をも防止することが可能となる。
【0016】
又、オーバーキャップを装着した容器に係る第2の発明として、口部がキャップにより閉蓋された容器であって、そのキャップの上から請求項1〜8のいずれかに記載のオーバーキャップを被せて外装させてなるものとした(請求項9)。
【0017】
この第2の発明の場合、オーバーキャップの上述の作用が得られる容器を実現させ得ることになる。
【発明の効果】
【0018】
以上、説明したように、請求項1〜請求項8のいずれかに記載のオーバーキャップによれば、キャップ付き容器に対しオーバーキャップを装着状態にすることにより、未装着状態のものに比して、容器を含めた全体形状を大きく異なるものに変換させることができ、封入物の違いに応じてオーバーキャップを装着したり未装着にしたりすることで、封入物の違いを全体形状の違いに基づいて一目見るだけで識別することができる。これにより、封入物の誤認に基づく誤使用の発生を防止することができる。
【0019】
特に、請求項2によれば、オーバーキャップの除去操作で同時にキャップをも除去して開蓋させることができキャップの開蓋治具として機能させることができるようになる。しかも、キャップの除去操作を手でする場合に発生するおそれがある口部側の汚染等の発生のおそれを確実に回避して清浄な衛生状態に維持させることができるようになる。
【0020】
請求項3によれば、以上の効果を確実に実現させ得る具体的構成を提供することができる。
【0021】
請求項4によれば、結合手段として爪部による係合手段を採用することにより、合成樹脂成形により結合手段の製造が容易で、しかもキャップとの結合も確実に行うことができるようになる。
【0022】
請求項5によれば、爪部自体の弾性変形に基づいて装着操作を容易かつ確実に行うことができるようになる。
【0023】
請求項6によれば、延出部を掴んでこじる等の操作を行うことにより、キャップの開蓋操作をてこの原理に基づいて軽い操作力で確実に行うことができるようになる。又、請求項7によれば、上記延出部の外表面に凹凸形状部を形成することにより、掴む操作を行う際の取り扱いをより容易にすることができる上に、確実な操作も確保することができるようになる。
【0024】
さらに、請求項8によれば、筒壁部の下端と何らかの物との不用意な衝突に起因して筒壁部の下端から上向きへの外力が作用したとしても、第2爪部によってオーバーキャップの上向きへの相対変位を阻止することができ、結合力又は結合手段に基づきキャップが開蓋されることを確実に回避することができると共に、オーバーキャップの脱落をも防止することができるようになる。
【0025】
又、請求項9に記載のオーバーキャップを装着した容器によれば、以上の請求項1〜請求項8のいずれかのオーバーキャップによる効果を伴った容器を実現させることができるようになる
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
<第1実施形態>
図1〜図3は、本発明の第1実施形態に係るオーバーキャップ2をキャップ付き容器に装着した装着状態を示す。オーバーキャップ2の説明に入る前に、オーバーキャップ2を装着する対象であるキャップ付き容器として封入状態にあるバイアルについて先に説明する。なお、このキャップ付き容器としては、第1実施形態のみならず、以下の他の実施形態においても同じものを装着対象として用いるものである。
【0028】
図3に示すように、バイアル3は、底付きの本体部31から上端側の口部32にかけて先細形状になるように主としてガラス製により形成されたものである。口部32は上方に開口され、その開口端側から所定寸法範囲が他よりも厚肉に形成され、この厚肉部33の外周面下側にはその肉厚差に対応して下向き面を含む下向き段部34が形成されている。このバイアル3には開口状態の口部32から本体部31内に薬剤が入れられた後に、ゴム栓(中栓)4が打栓され、打栓されたゴム栓4の上からフリップキャップ5が被せられて閉蓋されている。フリップキャップ5は、例えばアルミニウム薄板製の帯封環51が合成樹脂製のキャップである上蓋52に対し係合等の手段により一体に組み付けられたものである。そして、上記帯封環51のスカート部511が巻締めされて上記厚肉部33の外周面から下向き段部34にかけて密着され、これにより、ゴム栓4の脱落を確実に阻止して密封状態に封印されて維持されることになる。この帯封環51はゴム栓4の上面の中央部領域が切り欠かれた状態になっており、上記の上蓋52を開蓋したときに注射針を差し込むためにゴム栓4の上面が露出するようになっている。そして、この露出するゴム栓4の上面を保護するために上蓋52が被せられるようになっている。
【0029】
上蓋52は、頂壁部521と、その外周囲から下向きに屈曲して垂下する周縁部522とからなり、頂壁部521の内下面中央位置には嵌め込み部523が形成されている。そして、上蓋52は、その嵌め込み部523内に対し帯封環51の内周縁512が嵌め込まれて係合状態にされて帯封環51と一体に組み付けられ、上蓋52をこじることにより開蓋操作することでその内周縁512との係合が外れて帯封環51と分離されるようになっている。なお、内周縁512を上蓋52と一体に樹脂成形し、上記の開蓋操作により帯封環51側の破断線(弱化線)に沿って内周縁512が破断されることにより、上蓋52と帯封環51とが互いに分離されるようにしてもよい。かかる上蓋52は、上記の内周縁512との係合以外は、帯封環51の特に外周面に対し互いの摩擦抵抗力に基づく保持力によりゴム栓4に対し閉蓋状態に維持されている。すなわち、上蓋52を閉蓋状態に保持する保持力は主として上記の摩擦抵抗力に基づくものであり、上記の内周縁512との係合はできるだけ僅かな操作力で外れるように設定されているため、その係合による上記の保持力としての寄与は僅かとされている。以上により、封入状態のバイアル3の外形は、図4に示すように本体部31の上側の口部(図3参照)にかけて細首部分があり、その上から下向き段部34(図3参照)及びこの外表面を覆う帯封環51のスカート部511により拡径され、さらに上蓋52の周縁部522の下端角部524により段状に拡径されるというように二段階の段部が形成されたものになっている。
【0030】
次に、図1〜図4を参照しつつ本実施形態のオーバーキャップ2について説明すると、オーバーキャップ2は下端が開口された筒状本体21と、フリップキャップ5との結合手段である第1爪部22,22,…と、装着状態の維持を補完するための第2爪部23,23,…とを備えたものである。筒状本体21は、頂壁部211と、頂壁部211の外周囲から下向きに延びる筒壁部212とから構成されたものである。筒壁部212は、封入状態のバイアル3の上蓋52の上から本体部31の上端側位置までの上下方向領域、要するに口部32側の本体部31よりも小径となっている領域を覆って、本体部31と略同径にし得る程度の長さ(高さ)と外径とを有しており、その上下方向所定位置においては所定数の第1爪部22,22,…と、第2爪部23,23,…とが周方向に等間隔で交互に配置されている。各爪部22,23が形成された部位には、各爪部22,23を囲み内外を貫通するように開口窓213,214が形成されている。なお、各開口窓213,214は、合成樹脂成形時の型抜きのために、上方に向けて開口幅が徐々に拡幅されかつ頂壁部211側に対し後述の各爪部213,214の内向き突出量よりも大きく切れ込むように形状設定されている。
【0031】
筒状本体21を構成する頂壁部211及び筒壁部212は、その下端開口をフリップキャップ5の上蓋52の上側から被せて上蓋52の頂壁部521を覆い得る内面形状と、フリップキャップ5の上から被せて装着状態(図1〜図3の各図に示す状態)にすることにより全体形状をバイアル3の本体部31とほぼ同様の円柱状に変更し得る外面形状とを備えている。例えば図4の下半部に示すような未装着状態のバイアル3が有するような口部側が先細状の全体形状を、オーバーキャップ2を装着することにより、図1に示すような略円柱状の全体形状に変換させ得るようになっている。又、付加的な構成としてより詳細には筒壁部212は下端開口に向けて極僅かに拡径するようにテーパ状に形成されており、上蓋52に上から被せていくと筒壁部212の内周面が僅かではあるが徐々に狭まってその内周面と上蓋52の周縁部522の外周面とが互いに接触し、その接触摩擦力で各第1爪部22以外にも上蓋52をオーバーキャップ2内に保持して結合させることになるようにされている。
【0032】
各第1爪部22は筒壁部212の所定の上側位置から内向きにかつ斜め上方に向けて突出して装着状態で上蓋52の周縁部522の下端角部524の下面に係合可能に形成されている。すなわち、各第1爪部22は上蓋52の周縁部522の下端角部524の外径位置よりも内側位置まで中心軸X側に突出されている。一方、各第2爪部23は筒壁部212の所定の下側位置から同様に内向きにかつ斜め上方に向けて突出して装着状態でバイアル3の口部32外周側の下向き段部34の下面(現実にはこの下面が帯封環51のスカート部511により覆われているためそのスカート部511の表面)に係合可能に形成されている。すなわち、各第2爪部23は少なくとも厚肉部33の外周面よりも内側位置(中心軸X側位置)まで突出されている。そして、各第1爪部22は、上蓋52を頂壁部211との間に挟み付けて保持する一方、オーバーキャップ2をこじって外せば上蓋52もオーバーキャップ2内に保持されたままオーバーキャップ2と共に外されることになるという関係になるように、上蓋52をオーバーキャップ2に結合させる役割を果たすようになっている。一方、各第2爪部23はオーバーキャップ2の筒壁部212の下端開口側が何らかのものと衝突してオーバーキャップ2に対し上向きの衝撃力が作用した場合に、その衝撃力を第2爪部23を介して下向き段部34に先に伝達させることにより、第1爪部22を介して上蓋52に上記衝撃力が直接に伝達されることを抑制するという役割を果たすようになっている。すなわち、このような役割をより確実にする上でも、装着状態においては、各第2爪部23が下向き段部34の下面側に当接して係合状態になってはいるものの、各第1爪部22は上蓋52の下端角部524の下面との間に微小寸法の上下方向隙間を隔てて係合可能状態になっていることが好ましい。
【0033】
爪部の数や配置に関しては、図例では、第1爪部22,22,…を3つ(図5も併せて参照)、第2爪部23,23,…を3つそれぞれ設け、周方向をこれらの合計数で等分割した各位置に交互配置で設け、かつ、第1爪部22と第2爪部23とが中心軸Xを挟んで直径方向の両側に位置するように設けているが、これは好ましい状態を示したものである。最低限は、それぞれ少なくとも1つあればよく、あるいは、第1爪部22と第2爪部23とをそれぞれ2つずつとしたり、それぞれ4つ以上としたりして上記と同様に交互配置にしたり設けるようにしてもよい。又、各爪部22,23は、その合成樹脂素材の特性に基づき、装着前の状態(図4に示す状態)から装着状態に被せる際に内外方向(中心軸Xに対し放射方向)に弾性変形して撓み得るように、その肉厚寸法や形状等が設定されている。
【0034】
以上のオーバーキャップ2は、ゴム栓4及びフリップキャップ5を用いて封入状態にされたバイアル3に対し、図4に示すように、下端開口を上蓋52に相対向させた状態から下に下ろして被せる。被せていく際に各爪部22,23の先端側が上蓋52の周縁部522の外周面に当たって押されることにより外方に弾性変形し、加えて第2爪部23の先端側は帯封環51の外周面によっても外方への弾性変形が継続される。そして、各第2爪部23は帯封環51のスカート部511に沿って下向き段部34まで至ることにより弾性復元して下向き段部34の下面に係合する一方、各第1爪部22は上蓋52の下端角部524を乗り越えることにより弾性復元してその下端角部524の下面に係合可能となって装着状態に至る。
【0035】
この装着状態においては、例えば配送時又は病院等の医療機関での移送時等におけるオーバーキャップ2の上蓋52からの脱落が確実に防止された状態となる。すなわち、上記の移送時にオーバーキャップ2の筒壁部212の下端開口縁が何かと衝突してその下端開口縁に対し下から上方に衝撃力が作用したとしても、その衝撃力は各第2爪部23を介してバイアル3の下向き段部34に伝達されて、オーバーキャップ2の上方への相対変位が阻止されることになる。このため、各第1爪部22を介して上蓋52に上向きの外力(開蓋方向の外力)が作用することはなく、上蓋52を確実に閉蓋状態に維持しつつオーバーキャップ2をその上蓋52に対し確実に結合された装着状態に保持することができる。
【0036】
又、上記の装着状態においては、バイアル3に対してオーバーキャップ2という付属品が付加されているのみならず、全体形状が略円柱状となるため(例えば図1参照)、オーバーキャップ2が未装着のバイアル3(例えば図4の下半部参照)と比べ、全体形状が全く異なり一見して両者の違いを認識することができ、この結果、装着状態のバイアル3であるか、未装着状態のバイアル3であるかの識別を一瞥しただけで確実に行い得るようになる。このため、注射剤が封入されたバイアル3についてはオーバーキャップ2を未装着のまま病院等の医療機関に提供する一方、経口剤が封入されたバイアル3についてはオーバーキャップを装着した状態で医療機関に提供するようにすることにより、医療機関等で患者に投与する医師・看護師や、患者本人等において、注射剤ではなくて経口剤封入のバイアル3であることを何ら特別な注意力を払うことなく一瞥しただけで識別することができるようになる。これにより、経口剤を注射剤として誤使用する、あるいは、注射剤を経口剤として誤使用する等の誤使用の発生を十分にかつ確実に阻止又は回避することができるようになる。
【0037】
そして、上記の医療機関等においてバイアル3内に封入された経口剤を患者に投与する場合、又は、患者本人が封入された経口剤を経口取得する場合には、オーバーキャップ2をこじることによりバイアル3側から外せば、そのオーバーキャップ2の除去に伴い同時に上蓋52が開蓋されてオーバーキャップ2内に保持された状態で上蓋52を除去することができるようになる。すなわち、例えばオーバーキャップ2を掴んで中心軸Xに交差する方向(図6に二点鎖線の矢印で示す方向)にこじると、別の言い方でいうとオーバーキャップ2を掴んで上記中心軸Xに対して僅かに折り曲げるようにして引き抜くと、第1爪部22の先端が上蓋52の下端角部524に突き当たってこじる操作力が下端角部524の下面に作用し、これにより、図6に示すように上蓋52が帯封環51の外周面から離れると共に、その内周縁512との係合も外されて開蓋されることになる。そして、図7に示すようにオーバーキャップ2を取り外すことにより、上蓋52はオーバーキャップ2内に保持された状態で帯封環51から完全に離されて開蓋状態となり、バイアル3の上面には図8にも示すようにゴム栓4の上面中央領域が露出した状態になる。このように、オーバーキャップ2は、上蓋52の開蓋操作のための治具としての役割・機能を発揮する上に、その開蓋操作がオーバーキャップ2を掴んでこじるという操作だけで行われるため帯封環51やゴム栓4の上記の露出部分に操作者の手が触れたり他の物が触れたりすることを確実に回避する機能を発揮することになる。これにより、帯封環51やゴム栓4の上記の露出部分を確実に清浄な衛生状態に維持した状態で上蓋52の開蓋操作を行うことができ、上蓋52の開蓋操作に伴う上記の露出部分等の汚染を確実に回避することができる。
【0038】
なお、バイアル3内の経口剤を使用する操作について、その一例を図8の例に基づいて説明する。この図8の例では帯封環51の内周縁512がプルリングを構成するように無端環状に形成され、その一部が外周部に対し容易に破断可能な弱化線513,513を介して連設されている。このため、内周縁512を引き起こした後、その内周縁512に例えば指をかけて下側に押し下げることにより帯封環51の周方向一部を弱化線513,513に沿って破断すれば、帯封環51が除去されるため、ゴム栓4を引き抜いて内部の経口剤を取り出したり、その経口剤を溶解処理したりすることができるようになる。
【0039】
<第2実施形態>
図9は本発明の第2実施形態に係るオーバーキャップ6をキャップ付き容器である封入状態のバイアル3に対し装着する前の状態を示し、図10はそのバイアル3に対し装着した状態(装着状態)を示す。このオーバーキャップ6は、第1実施形態のオーバーキャップ2から第2爪部23,23,…を省略する一方、開蓋操作のための延出部614を上部側に追加形成したものであり、これらの点が第1実施形態と主要な相違点となっている。なお、以下の説明において、第1実施形態と同様の構成要素については第1実施形態と同一符号を付して重複した詳細説明を省略する。
【0040】
オーバーキャップ6は、下端が開口された筒状本体61と、フリップキャップ5を構成する上蓋52との結合手段である爪部62,62,…とを備えたものである。筒状本体61は、頂壁部611と、頂壁部611の外周囲から下向きに延びる筒壁部612とから構成されたものである。筒壁部612は、封入状態のバイアル3の本体部31の上側の口部32(図3参照)側領域を覆い、かつ、上蓋52の頂壁部521から上方に所定寸法だけ延出し得る長さ(高さ)と、上記の本体部31の上側の口部32(図3参照)側領域を覆った状態でその領域を本体部31と少なくとも略同外径に変更し得る外径とを有している。要するに、頂壁部611と筒壁部612とから構成される筒状本体61は、その下端開口からフリップキャップ5の上蓋52に被せて上蓋52からバイアル3の本体部31の上側近傍までを覆い得る内面形状と、装着状態(図9の一点鎖線で示す状態又は図10参照)にすることによりバイアル3を含めた全体形状を一つの円柱状のものに変更し得る外面形状とを備えている。加えて、オーバーキャップ6の内面上部位置であって頂壁部611から所定寸法下方位置には内側に突出する段状の凸部613が形成されており、装着状態ではこの凸部613下面が上蓋52上面に当接して、凸部613から上側部分を上蓋52よりも上方に延出した状態にし得るようになっている。この上側部分が延出部614とされ、この延出部614の外周面には周方向に延びる凹溝615を形成することにより頂壁部611の外周縁が外周側に鍔状に突出する凸縁616となるようにしている。これら凹溝615と凸縁616とにより凹凸形状部が構成されている。
【0041】
そして、上記筒壁部612の上下方向所定位置においては所定数の爪部62,62,…が周方向に略等間隔で配置され、各爪部62が形成された部位には、各爪部62を囲み内外を貫通するように開口窓617が形成されている。各爪部62は、内向きにかつ斜め上方に向けて、上蓋52の周縁部522の下端角部524の外径位置よりも内側位置(中心軸X側位置)まで突出されており、第1実施形態の第1爪部22と同様に、装着状態においてその下端角部524の下面に係合可能に形成されている。そして、装着状態においては、各爪部62が上蓋52の下端角部524の下面に係合した状態で、上記凸部613が上蓋52の上面に当接し、上蓋52を凸部613と各爪部62とにより上下両側から挟み付けた状態になるようになっている(図10参照)。
【0042】
なお、図例のものでは4つの爪部62を周方向をほぼ4等分した各位置(図11参照)に配設しているが、第1実施形態の場合と同様に少なくとも1つ配設されていればよく、2つ以上配設することが好ましい。又、図11に示すように、各爪部62及び開口窓617を構成する各端縁は、分割型を用いた合成樹脂成形時の型抜きの便宜、すなわち、分割線Dを挟んで左右両側方に型抜きをする際の便宜として、左右両側方のそれぞれに対し少なくとも平行になるか、好ましくは僅かに拡開することになるか、のような方向に延びるように設定されている。
【0043】
以上のオーバーキャップ6は、ゴム栓4及びフリップキャップ5を用いて封入状態にされたバイアル3(図9参照)に対し、第1実施形態と同様に、下端開口を上蓋52に相対向させた状態から下に下ろして被せる。被せていく際に爪部62,62,…の先端側が上蓋52の周縁部522の外周面に当たって押されることにより外方に弾性変形し、上蓋52の下端角部524を乗り越えることにより弾性復元してその下端角部524の下面に係合可能となって装着状態に至る。
【0044】
この装着状態においては、第1実施形態の場合と同様に、バイアル3に対してオーバーキャップ6という付属品が付加されているか否かの違いのみならず、全体形状が先細形状であるか略円柱状であるかというように、オーバーキャップ6が未装着のものと装着されたものとの両者の違いを互いに全く異なる全体形状によって一見するだけで認識することができるようになる。この結果、経口剤封入のバイアル(オーバーキャップ6の装着状態のバイアル3)であるか、注射剤封入のバイアル(未装着状態のバイアル3)であるかの識別を、何ら特別な注意力を払うことなく一瞥しただけで識別することができるようになる。これにより、経口剤を注射剤として誤使用する、あるいは、注射剤を経口剤として誤使用する等の誤使用の発生を十分にかつ確実に阻止又は回避することができるようになる。
【0045】
そして、オーバーキャップ6が装着されたバイアル3の収容物(経口剤)を使用する場合には、オーバーキャップ6を第1実施形態と同様にこじることによりバイアル3側から外せば、そのオーバーキャップ6の除去に伴い同時に上蓋52が開蓋されてオーバーキャップ2内に保持された状態で上蓋52を除去することができるようになる。すなわち、オーバーキャップ6を掴んで中心軸Xに交差する方向にこじると、そのこじるための操作力が爪部62の先端から上蓋52の下端角部524の下面に対し開蓋方向の力として作用して、上蓋52が帯封環51の外周面から離れると共に、その内周縁512(図6参照)との係合も外されて開蓋されることになる。すなわち、オーバーキャップ6は、第1実施形態と同様に、上蓋52の開蓋操作のための治具としての役割・機能を発揮する上に、帯封環51やゴム栓4の露出部分に操作者の手が触れたり他の物が触れたりすることを確実に回避する機能を発揮することになり、これにより、帯封環51やゴム栓4の露出部分を確実に清浄な衛生状態に維持した状態で上蓋52の開蓋操作を行うことができ、上蓋52の開蓋操作に伴う上記の露出部分等の汚染を確実に回避することができるようになる。
【0046】
さらに、この開蓋操作に際し、操作者は延出部614を掴んで開蓋操作(上記のこじる操作)を行うことができるため、上蓋52よりも上方に延出された部位(延出部614)への操作力をてこの原理に基づき上記の下端角部524に伝達させることができ、比較的軽い操作力で容易に開蓋操作を行うことができるようになる。しかも、延出部614が凹溝615及び凸縁616という凹凸の外面形状を有しているため、操作力を加え易い上に、確実に掴み得るためその操作も確実に行い得ることになる。
【0047】
図12は第2実施形態の他の態様のオーバーキャップ6aを示す。このオーバーキャップ6aはその延出部614aを上記のオーバーキャップ6の延出部614よりもさらに上方に延出させたものである。すなわち、筒壁部612aの上下方向長さを図9のオーバーキャップ6の筒壁部612よりもさらに大きくし、その分、凹溝615aの上下方向幅をより大きく拡幅したものである。これら凹溝615aと凸縁616とにより凹凸形状部が構成されることになる。延出部614aの上下方向長さが、例えば上下方向の全体寸法の半分程度、あるいはほぼ半分からほぼ1/3もしくはほぼ1/4を占める程度に設定されている。この場合には、上記のてこの原理に基づく操作力軽減作用をより増大させることができる上に、掴み代の増大により操作の際の取り扱いも容易になる。さらに、未装着状態と装着状態との全体形状(特に全体高さ)の違いがより明白となって、上述の識別機能をより十分なものにすることができる。
【0048】
<第3実施形態>
図13及び図14は本発明の第3実施形態に係るオーバーキャップ7をキャップ付き容器である封入状態のバイアル3に対し装着した状態を示す。このオーバーキャップ7は、第1実施形態のオーバーキャップ2から第2爪部23,23,…を省略する一方、第2実施形態とは異なる形態の延出部714を上部側に追加形成したものである。なお、以下の説明において、第1実施形態と同様の構成要素については第1実施形態と同一符号を付して重複した詳細説明を省略する。
【0049】
オーバーキャップ7は、下端が開口された筒状本体71と、フリップキャップ5を構成する上蓋52との結合手段である爪部72,72,…とを備えたものであり、筒状本体71は、頂壁部711と、頂壁部711の外周囲から下向きに延びる筒壁部712とから構成されたものである。筒壁部712は、封入状態のバイアル3の本体部31の上側の口部32(図3参照)側領域を覆い、かつ、上蓋52の頂壁部521(図14参照)から上方に所定寸法だけ延出し得る長さ(高さ)と、上記の本体部31の上側の口部32(図3参照)側領域を覆った状態でその領域を本体部31と少なくとも略同外径に変更し得る外径とを有している。要するに、頂壁部711と筒壁部712とから構成される筒状本体71は、その下端開口からフリップキャップ5の上蓋52に被せて上蓋52からバイアル3の本体部31の上側近傍までを覆い得る内面形状と、装着状態にすることによりバイアル3を含めた全体形状を一つの円柱状のものに変更し得る外面形状とを備え、その基本形状は図12に示すオーバーキャップ6aの筒状本体61aとほぼ同様のものに設定されている。
【0050】
加えて、オーバーキャップ7は、その内面側に、頂壁部711下面から所定寸法下方位置までの範囲の内周面から中心軸Xに向けて所定量突出する2以上のリブ状の凸部713,713,…を一体に備え、装着状態では各凸部713下面が上蓋52上面に当接して、凸部713から上側部分が上蓋52よりも上方に延出して延出部714を構成するようにされている。又、オーバーキャップ7の外面側にはその上下方向全体に亘り凹凸形状の表面加工が施されている。すなわち、頂壁部711の外周縁が外周側に鍔状に突出されて凸縁715とされ、この凸縁715から筒壁部712の外面側にかけて上下方向に凹・凸が繰り返されるように凸条716,716,…が互いに平行に周方向に延びるように形成されている。これら凸縁715及び凸条716,716,…により凹凸形状部が構成されている。
【0051】
そして、上記筒壁部712の上下方向所定位置においては所定数の爪部72,72,…が第2実施形態の爪部62,62,…と同様構成にて形成され、各爪部72がオーバーキャップ7の装着状態において上蓋52の下端角部524の下面に係合可能とされている。そして、装着状態においては、各爪部72が上蓋52の下端角部524の下面に係合した状態で、上記各凸部713が上蓋52の上面に当接し、上蓋52を凸部713と各爪部72とにより上下両側から挟み付けた状態になるようになっている(図14参照)。
【0052】
以上のオーバーキャップ7は、第2実施形態の場合と同様にして、ゴム栓4及びフリップキャップ5を用いて封入状態にされたバイアル3に対し装着され、各爪部72が上蓋52の下端角部524の下面に係合する。この装着状態においては、未装着のバイアル3と比して、第1実施形態の場合又は第2実施形態の場合よりもさらに特異な全体形状の違いが実現され、経口剤封入のバイアル(オーバーキャップ7の装着状態のバイアル3)であるか、注射剤封入のバイアル(未装着状態のバイアル3)であるかの識別を、何ら特別な注意力を払うことなく一瞥しただけでより確実に識別することができるようになる。これにより、誤使用の発生を十分にかつ確実に阻止又は回避することができるようになる。
【0053】
又、本実施形態のオーバーキャップ7は、上蓋52の開蓋操作のための治具としての役割・機能を発揮する上で、筒壁部712の外表面に凸縁715や凸条716,716,…が形成されているため、手で掴む際に掴み易い上に、操作力も加え易いため、上蓋52の開蓋操作をより確実にかつ容易に行うことができるようになる。
【0054】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記第1〜第3実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記第1〜第3実施形態では、結合手段として爪部22,62,72による係合手段を採用しているが、これ以外の係合手段を採用してもよい。例えば頂壁部と筒壁部とで構成した筒状本体の筒壁部の内面から突出して上蓋52の下端角部の下面と凹凸嵌合により係合する突起を設けるようにしてもよい。突起としては、例えば断面形状が三角形又は下側にテーパ面を有する係止突起を突設するようにしてもよい。一例を図示すると、図15に示すように、オーバーキャップ8の頂壁部811と筒壁部812とで構成した筒状本体81の筒壁部812の内面から内側に突出する係止突起82,82,…を一体に形成すればよい。かかる係止突起82としては、フリップキャップ5を構成する上蓋52の下端角部524の下面に係合可能な上向きの当止面と、装着時の案内面となる下向きのテーパ面とを有するものを例示しており、筒壁部812の内周面に対し所定間隔を隔てて複数個設けたり、あるいは、周方向に連続して設けたりすればよい。なお、以上の場合、筒壁部812に対し下端開口側から上側に延びるスリットを周方向に複数本形成するようにしてもよい。
【0055】
又、結合手段として、筒壁部の内面を上蓋52の外周面に対し圧接させることにより密に接触させて接合し、その摩擦抵抗力によって上蓋52との間の結合力を構成するようにしてもよい。一例を図示すると、図16に示すように、オーバーキャップ9の頂壁部911と筒壁部912とで構成した筒状本体91の筒壁部912の内周面上部に圧接部913を形成すればよい。この圧接部913は、フリップキャップ5を構成する上蓋52の周縁部522に対し圧着気味に接触した状態になるように、上記周縁部522の外径よりも僅かに小さい内径を有するように形成されたものである。かかる圧接部913は、内周面全体により形成しても、周方向に対し断続的又は部分的に形成しても、いずれでもよいし、上述と同様に、筒壁部912に対し下端開口側から上側に延びるスリットを周方向に複数本形成するようにしてもよい。
【0056】
さらに、結合手段として、上蓋52の上から被せたオーバーキャップと、上蓋との間で接触する部位を形成し、この接触部位同士を溶着(例えば超音波溶着)又は接着させるようにして互いに結合させてもよい。あるいは、オーバーキャップの内周面(筒壁部の内周面)にネジ溝を形成し、このネジ溝と上蓋52の外周面との間で螺合させることにより、オーバーキャップと上蓋52とを互いに結合させるようにしてもよい。さらには、以上の各手段を組み合わせて結合手段を構成するようにしてもよい。
【0057】
上記の各実施形態では、帯封環51と上蓋52とが係合により一体に組み付けられたフリップキャップを例にしたが、これに限らず、オーバーキャップ2,6,6a,7を装着させる対象のキャップとしてはバイアル3の口部32を封止し得る蓋であればよい。
【0058】
上記の各実施形態では、延出部614,614a,714を筒壁部612,612a,712の一部として形成しているが、これに限らず、別に形成するようにしてもよい。この場合には、頂壁部の上面から延出部を上方に突出させて形成するようにすればよい。又、延出部614,614a,714の外表面に形成する凹凸形状部は各実施形態で例示のものに限定されることなく、それら以外の種々のものを採用するようにすればよい。要は、操作者が掴み易い凹凸形状部であればよく、特定のものに限定されることはない。又、識別性のより十分な担保のために、より目立つ意匠を施した凹凸形状を採用するようにしてもよい。
【0059】
上記の各実施形態では筒状本体として頂壁部211,611,711を含んで構成しているが、これに限らず、究極的には頂壁部を省略して筒壁部212,612,612a,712のみで筒状本体を構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態をバイアルに装着した状態の斜視図である。
【図2】図1のものの正面図である。
【図3】図2のものを図5のA−A線位置で部分的に切り欠いて示す部分断面説明図である。
【図4】図1のオーバーキャップとバイアルとを分離させて示す、オーバーキャップの未装着状態の分解斜視図である。
【図5】オーバーキャップ単体の平面図である。
【図6】オーバーキャップを用いた開蓋操作の初期段階を示す断面説明図である。
【図7】図6の段階から完全に除去した状態を示す断面説明図である。
【図8】経口剤を取り出す場合の開封作業を説明するための斜視図である。
【図9】第2実施形態のオーバーキャップを用いてバイアルに装着する前の状態の分解斜視図である。
【図10】図9のものを装着した状態の断面説明図である。
【図11】図10のB−B線におけるバイアル等を省略した断面説明図である。
【図12】第2実施形態の他の態様を示す装着状態の斜視図である。
【図13】第3実施形態のオーバーキャップをバイアルに装着した状態の斜視図である。
【図14】図13の装着状態のオーバーキャップ等の断面説明図である。
【図15】他の実施形態を示す部分断面説明図である。
【図16】図15とは異なる、他の実施形態を示す部分断面説明図である。
【符号の説明】
【0061】
2,6,6a,7,8,9 オーバーキャップ
3 バイアル(容器)
5 フリップキャップ(キャップを含むもの)
21,61,61a,71,81,91 筒状本体
22 第1爪部(係合手段;結合手段)
23 第2爪部
62,72 爪部(係合手段;結合手段)
32 口部
34 下向き段部
52 上蓋(キャップ)
82 係止突起(結合手段)
211,611,711,811,911 頂壁部
212,612,612a,712,812,912 筒壁部
522 上蓋の周縁部
524 上蓋の下端角部
614,614a,714 延出部
615,615a 凹溝(凹凸形状部)
616,715 凸縁(凹凸形状部)
716 凸条(凹凸形状部)
913 圧接部(結合手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部がキャップにより閉蓋されたキャップ付き容器のキャップの上から被せて外装させ得る内面形状と、上記キャップ付き容器のキャップの上から被せて外装させた装着状態では上記キャップ付き容器の口部側の外形を上記キャップよりも外方に膨出した形状に変換する外面形状とを備えてなる、オーバーキャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のオーバーキャップであって、
上記装着状態で、キャップに対し、そのキャップを閉蓋状態に保持する保持力よりも大きい結合力で結合されるように構成されている、オーバーキャップ。
【請求項3】
請求項2に記載のオーバーキャップであって、
上記内面形状及び外面形状を有し、下端開口から上記キャップを受け入れる筒状本体と、上記キャップに対し結合するために溶着手段、接着手段、接合手段、螺合手段又は係合手段のいずれか1又は2以上の組み合わせにより構成された結合手段とを備え、
上記筒状本体は、上記キャップよりも大きく外方に張り出してそのキャップの上面を覆う頂壁部と、この頂壁部の外周囲から下方に延びて上記キャップの外周面を覆った状態で下方の容器の外周側に向けて突出する筒壁部とを備えている、オーバーキャップ。
【請求項4】
請求項3に記載のオーバーキャップであって、
上記結合手段は、上記筒壁部から内向きにかつ斜め上方に向けて突出して上記キャップの周縁部の下端角部下面に係合する1又は2以上の爪部により構成されている、オーバーキャップ。
【請求項5】
請求項4に記載のオーバーキャップであって、
上記爪部は、キャップ付き容器に対しそのキャップの上から被せることによりキャップの周縁部の外周面に押されて外方に弾性変形しながら相対移動し、周縁部の下端角部を乗り越えることにより弾性復元してその下面に係合するように構成されている、オーバーキャップ。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載のオーバーキャップであって、
上記装着状態においてキャップ位置よりも上方に延出されるように形成された延出部を上部側に一体に備えている、オーバーキャップ。
【請求項7】
請求項6に記載のオーバーキャップであって、
上記延出部の外表面には凹凸形状部が形成されている、オーバーキャップ。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれかに記載のオーバーキャップであって、
上記容器の口部はその外周側に下向きに臨む下向き段部を備えており、
上記筒壁部には、上記装着状態で筒壁部から内向きにかつ斜め上方に向けて突出して上記口部の下向き段部に係合する1又は2以上の第2爪部が一体に形成されている、オーバーキャップ。
【請求項9】
口部がキャップにより閉蓋された容器であって、そのキャップの上から請求項1〜8のいずれかに記載のオーバーキャップが被せられて外装されてなる、オーバーキャップを装着した容器。
【請求項1】
容器の口部がキャップにより閉蓋されたキャップ付き容器のキャップの上から被せて外装させ得る内面形状と、上記キャップ付き容器のキャップの上から被せて外装させた装着状態では上記キャップ付き容器の口部側の外形を上記キャップよりも外方に膨出した形状に変換する外面形状とを備えてなる、オーバーキャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のオーバーキャップであって、
上記装着状態で、キャップに対し、そのキャップを閉蓋状態に保持する保持力よりも大きい結合力で結合されるように構成されている、オーバーキャップ。
【請求項3】
請求項2に記載のオーバーキャップであって、
上記内面形状及び外面形状を有し、下端開口から上記キャップを受け入れる筒状本体と、上記キャップに対し結合するために溶着手段、接着手段、接合手段、螺合手段又は係合手段のいずれか1又は2以上の組み合わせにより構成された結合手段とを備え、
上記筒状本体は、上記キャップよりも大きく外方に張り出してそのキャップの上面を覆う頂壁部と、この頂壁部の外周囲から下方に延びて上記キャップの外周面を覆った状態で下方の容器の外周側に向けて突出する筒壁部とを備えている、オーバーキャップ。
【請求項4】
請求項3に記載のオーバーキャップであって、
上記結合手段は、上記筒壁部から内向きにかつ斜め上方に向けて突出して上記キャップの周縁部の下端角部下面に係合する1又は2以上の爪部により構成されている、オーバーキャップ。
【請求項5】
請求項4に記載のオーバーキャップであって、
上記爪部は、キャップ付き容器に対しそのキャップの上から被せることによりキャップの周縁部の外周面に押されて外方に弾性変形しながら相対移動し、周縁部の下端角部を乗り越えることにより弾性復元してその下面に係合するように構成されている、オーバーキャップ。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載のオーバーキャップであって、
上記装着状態においてキャップ位置よりも上方に延出されるように形成された延出部を上部側に一体に備えている、オーバーキャップ。
【請求項7】
請求項6に記載のオーバーキャップであって、
上記延出部の外表面には凹凸形状部が形成されている、オーバーキャップ。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれかに記載のオーバーキャップであって、
上記容器の口部はその外周側に下向きに臨む下向き段部を備えており、
上記筒壁部には、上記装着状態で筒壁部から内向きにかつ斜め上方に向けて突出して上記口部の下向き段部に係合する1又は2以上の第2爪部が一体に形成されている、オーバーキャップ。
【請求項9】
口部がキャップにより閉蓋された容器であって、そのキャップの上から請求項1〜8のいずれかに記載のオーバーキャップが被せられて外装されてなる、オーバーキャップを装着した容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−222270(P2008−222270A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62676(P2007−62676)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【出願人】(000206185)大成化工株式会社 (83)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【出願人】(000206185)大成化工株式会社 (83)
【Fターム(参考)】
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