説明

カチオン性親水性シロキサニルモノマー

本発明は、生体適合性を有する医療装置の製造に有用なポリマー組成物に関する。詳細には、本発明は、眼用装置の製造に有用な望ましい物理的特性を有するポリマー組成物を生成させるために、重合することができる一定のカチオン性モノマーに関する。上記特性は、水を用いて重合された医療装置を抽出することができることを含む。これにより、当業界に典型的である有機溶媒の使用が避けられる。上記ポリマー組成物には、重合されたカチオン性親水性シロキサニルモノマーが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
この出願は、2005年12月21日に出願された、35 USC 119(e)の米国仮出願No.60/752,437に基づく利益を主張する。
【0002】
分野
本発明は、生体適合性を有する医療装置の製造に有用なポリマー組成物に関する。詳細には、本発明は、眼用装置の製造に有用な望ましい物理的特性を有するポリマー組成物を製造するための、重合性の一定のカチオン性モノマーに関する。上記特性には、水を用いて重合された医療装置を抽出することができることが含まれる。これにより、当業界で典型的であるような有機溶媒の使用が避けられる。上記ポリマー組成物には、重合されたカチオン性親水性シロキサニルモノマーが含まれる。
【背景技術】
【0003】
生体医学装置を含む種々の製品は、有機ケイ素含有材料から形成される。生体医学装置、例えば、ソフトコンタクトレンズ向けに有用な有機ケイ素材料の一種は、ケイ素含有ヒドロゲル材料である。ヒドロゲルは、平衡状態にある水を含む水和された、架橋ポリマー系である。ヒドロゲルコンタクトレンズは、比較的高い酸素透過性、並びに望ましい生体適合性及び快適性を提供する。ヒドロゲル配合物中にケイ素含有材料を含有させることにより、一般的に、より高い酸素透過性が提供される。というのは、ケイ素系材料は、水よりも高い酸素透過性を有するからである。
【0004】
別の種類の有機ケイ素材料は、ハードコンタクトレンズ向けに有用である、硬質の、ガス透過性材料である。上記材料は、ケイ素又はフルオロケイ素コポリマーから形成されるのが一般的である。これらの材料は、酸素透過性を有し、そしてソフトコンタクトレンズ向けに用いられる材料よりも硬質である。コンタクトレンズを含む生体医学装置に有用な有機ケイ素含有材料は、次の米国特許に開示されている:米国特許第4,686,267号明細書(Ellisら);米国特許第5,034,461号明細書(Laiら);及び米国特許第5,070,215号明細書(Bamburyら)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、従来のシロキサン型モノマーは疎水性であり、そしてそれらを用いて製造したレンズには、親水性表面を提供するための追加の処理が要求されることが多い。特定の理論に結び付けられることを望まないが、本発明者は、荷電したシロキサン型モノマー、例えば、本明細書に開示される4級のシロキサン型モノマーが、親水性のシロキサン型モノマーを生ずると考えている。親水性の4級基が、極性水分子の電気陰性部分と相互作用すると考えられる。
【0006】
ソフトコンタクトレンズ材料は、親水性モノマー、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、及びそれらの組み合わせを重合し、そして架橋させることにより製造される。これらの親水性モノマーを重合することにより製造されたポリマーは、それら自体高い親水性を示し、そしてそれらのポリマーマトリックス内に大量の水を吸収することができる。それらが水を吸収することができるため、これらのポリマーは、「ヒドロゲル」と称されることが多い。これらのヒドロゲルは、光学的に透明であり、そして高濃度の水和の水のため、ソフトコンタクトレンズの製造するためのとくに有用な材料である。シロキサン型モノマーは、水並びに親水性溶媒内の可溶性に乏しいことが周知であるので、一般的なヒドロゲル技法を用いて共重合及び処理することが難しい。従って、上記材料(特に、ヒドロゲルレンズを製造するために用いられる希釈剤)内で改良された溶解性を有する新規なシロキサン型モノマーに関する必要性がある。さらに、先行技術で用いられている有機溶媒の代わりに、水の中で抽出することができる重合された医療装置を生ずるモノマーに関する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コンタクトレンズを含む生体医学装置等の製品に有用である、新規なカチオン性有機ケイ素含有モノマーを提供する。
【0008】
第一の態様では、本発明は、次の式(I):
【化1】

(式中、Lは同一又は異なることができ、そしてウレタン、カーボネート、カーバメート、カルボキシルウレイド、スルホニル、直鎖又は分岐鎖のC1〜C30のアルキル基、C1〜C30のフルオロアルキル基、C1〜C20のエステル基、アルキルエーテル、シクロアリルエーテル、シクロアルケニルエーテル、アリールエーテル、アリールアルキルエーテル、ポリエーテル含有基、ウレイド基、アミド基、アミン基、置換された又は置換されていないC1〜C30のアルコキシ基、置換された又は置換されていないC3〜C30のシクロアルキル基、置換された又は置換されていないC3〜C30のシクロアルキルアルキル基、置換された又は置換されていないC3〜C30のシクロアルケニル基、置換された又は置換されていないC5〜C30のアリール基、置換された又は置換されていないC5〜C30のアリールアルキル基、置換された又は置換されていないC5〜C30のヘテロアリール基、置換された又は置換されていないC3〜C30の複素環、置換された又は置換されていないC4〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換された又は置換されていないC6〜C30のヘテロアリールアルキル基、C5〜C30のフルオロアリール基、又はヒドロキシル置換されたアルキルエーテル及びそれらの組み合わせから成る群から選択される)
のモノマーに関する。
【0009】
-は、少なくとも一価(single)の荷電された対イオンである。一価の荷電された対イオンの例には、Cl-、Br-、I-、CF3CO2-、CH3CO2-、HCO3-、CH3SO4-、p−トルエンスルホネート、HSO4-、H2PO4-、NO3-、及びCH3CH(OH)CO2-からなる群が含まれる。二重の荷電された対イオンの例には、SO42-、CO32-及びHPO42-が含まれる。他の荷電された対イオンは、当業者に明らかであろう。残差量の対イオンが、水和された生成物の中に存在する場合があることを理解すべきである。従って、有毒な対イオンを用いることは、阻止されるべきである。同様に、一価の荷電された対イオンにおいて、対イオン及び4級シロキサニルの比は、1:1であることが理解されるべきである。より大きな負電荷の対イオンは、対イオンの総電荷に基づいた異なる比を生ずるであろう。
【0010】
R1及びR2は、それぞれ、独立して、水素、直鎖又は分岐鎖のC1〜C30のアルキル基、C1〜C30のフルオロアルキル基、C1〜C20のエステル基、アルキルエーテル、シクロアルキルエーテル、エーテル、シクロアルケニルエーテル、アリールエーテル、アリールアルキルエーテル、ポリエーテル含有基、ウレイド基、アミド基、アミン基、置換された又は置換されていないC1〜C30のアルコキシ基、置換された又は置換されていないC3〜C30のシクロアルキル基、置換された又は置換されていないC3〜C30のシクロアルキルアルキル基、置換された又は置換されていないC3〜C30のシクロアルケニル基、置換された又は置換されていないC5〜C30のアリール基、置換された又は置換されていないC5〜C30のアリールアルキル基、置換された又は置換されていないC5〜C30のヘテロアリール基、置換された又は置換されていないC3〜C30の複素環、置換された又は置換されていないC4〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換された又は置換されていないC6〜C30のヘテロアリールアルキル基、フッ素、C5〜C30のフルオロアリール基、あるいはヒドロキシル基である;Xは、独立して、直鎖又は分岐鎖のC1〜C30のアルキル基、C1〜C30のフルオロアルキル基、置換された又は置換されていないC5〜C30のアリールアルキル基、エーテル、ポリエーテル、スルフィド、あるいはアミノ含有基であり、そしてVは、独立して、重合性エチレン系不飽和有機基である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書で用いるためのウレタンの典型例には、例えば、カルボキシル基に結合した第二級アミン(さらなる基、例えば、アルキルに結合することができる)が含まれる。同様に、上記第二級アミンはまた、さらなる基、例えば、アルキルに結合することができる。
【0012】
本明細書で用いるためのカーボネートの典型例には、例えば、アルキルカーボネート、アリールカーボネート等が含まれる。
本明細書で用いるためのカーバメートの典型例には、例えば、アルキルカーバメート、アリールカーバメート等が含まれる。
本明細書で用いるためのカルボキシルウレイドの典型例には、例えば、アルキルカルボキシルウレイド、アリールカルボキシルウレイド等が含まれる。
本明細書で用いるためのスルホニルの典型例には、例えば、アルキルスルホニル、アリールスルホニル等が含まれる。
【0013】
本明細書で用いるためのアルキル基の典型例には、例えば、分子の残差に不飽和を有するか又は有しない1〜約18個の炭素原子の、炭素および水素原子を含む直鎖又は分岐鎖の炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、n−ブチル、n−ペンチル等が含まれる。
【0014】
本明細書で用いるためのフルオロアルキル基の典型例には、例えば、炭素原子に結合した1つまたは2つ以上のフッ素原子を有する上述の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、例えば、−CF3、−CF2CF3、−CH2CF3、−CH2CF2H、−CF2H等が含まれる。
本明細書で用いるためのエステル基の典型例には、例えば、1〜20個の炭素原子等を有するカルボン酸エステルが含まれる。
【0015】
本明細書で用いるためのエーテル又はポリエーテル含有基の典型例には、例えば、アルキルエーテル、シクロアルキルエーテル、シクロアルキルアルキルエーテル、シクロアルケニルエーテル、アリールエーテル、アリールアルキルエーテル(上記アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、アリール及びアリールアルキル基は、上述の通りである)、例えば、アルキレンオキシド、ポリ(アルキレンオキシド)、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(ブチレンオキシド)及びそれらの混合物若しくはコポリマー、エーテル又は一般式−R8OR9のポリエーテル基(式中、R8は、結合、上述のアルキル、シクロアルキル又はアリール基であり、そしてR9は、上述のアルキル、シクロアルキル又はアリール基、例えば、−CH2CH2OC65及び−CH2CH2OC25等である。
【0016】
本明細書で用いるためのアミド基の典型例には、例えば、一般式−R10(O)NR11R12のアミド基(式中、R10、R11及びR12は、独立して、C1〜C30の炭化水素であり、例えば、R10は、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基であることができ、そしてR11及びR12は、本明細書に規定されるようなアルキル基、アリール基、及びシクロアルキル基であることができる)が含まれる。
本明細書で用いるためのアミド基の典型例には、例えば、一般式−R13NR14R15のアミン(式中、R13は、C2〜C30のアルキレン、アリーレン又はシクロアルキレンであり、そしてR14及びR15は、独立して、C1〜C30の炭化水素、例えば、本明細書に規定されるようなアルキル基、アリール基又はシクロアルキル基等である)が含まれる。
【0017】
本明細書で用いるためのアミド基の典型例には、例えば、1つ若しくは2つ以上の置換基を有するウレイド又は未置換のウレイドが含まれる。上記ウレイド基は、1〜12個の炭素原子を有するウレイド基であることが好ましい。上記置換基の例には、アルキル基及びアリール基が含まれる。上記ウレイド基の例には、3−メチルウレイド、3,3−ジメチルウレイド及び3−フェニルウレイドが含まれる。
【0018】
本明細書で用いるためのアルコキシ基の典型例には、例えば、分子の残差に酸素結合を経由して結合されている上記アルキル基、すなわち、一般式−OR20(式中、R20は、上述のアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、アリール又はアリールアルキルである)、例えば、−OCH3、−OC25又は−OC65等が含まれる。
【0019】
本明細書で用いるためのシクロアルキル基の典型例には、例えば、約3〜約18個の炭素原子の、置換された又は置換されていない非芳香族の単環又は複数の環系、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、パーヒドロナフチル、アダマンチル及びノルボルニル基、架橋された環式基又はスピロ二環式基、例えば、スピロ−(4,4)−ノナ−2−イル等(所望により、1又は2以上のヘテロ原子、例えば、O及びN等を含む)が含まれる。
【0020】
本明細書で用いるためのシクロアルキルアルキル基の典型例には、例えば、上記アルキル基に直接結合し、次いで、安定な構造体を生成するアルキル基に由来する任意の炭素のところでモノマーの主要構造に結合される約3〜約18個の炭素原子を含む置換された又は置換されていない環式の環含有基、例えば、シクロプロピルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチル等が含まれ、上記環式の環は、所望により、1又は2以上のヘテロ原子、例えば、O及びN等を含むことができる。
【0021】
本明細書で用いるためのシクロアルケニル基の典型例には、例えば、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する、約3〜約18個の炭素原子を含む置換された又は置換されていない環式の環含有基、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル等が含まれ、上記環式の環は、所望により、1又は2以上のヘテロ原子、例えば、O及びN等を含むことができる。
【0022】
本明細書で用いるためのアリール基の典型例には、例えば、約5〜約25個の炭素原子を含む、置換された又は置換されていないモノ芳香族又はポリ芳香族基、例えば、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インデニル、ビフェニル等が含まれる(1又は2以上のヘテロ原子、例えば、O及びN等を含む)。
【0023】
本明細書で用いるためのアリールアルキル基の典型例には、例えば、上述のアルキル基に直接結合した、置換された又は置換されていない上述のアリール基、例えば、−CH265、−C2565等が含まれ、上記アリール基は、所望により、1又は2以上のヘテロ原子、例えば、O及びN等を含むことができる。
本明細書で用いるためのフルオロアリール基の典型例には、例えば、上記アリール基に結合した1つ又は2つ以上のフッ素原子を有する上述のアリール基が含まれる。
【0024】
本明細書で用いるための複素環基の典型例には、例えば、炭素原子と、1〜5個のヘテロ原子、例えば、窒素、リン、酸素、硫黄及びそれらの混合物とを含む、置換された又は置換されていない安定な3〜約15員の環基が含まれる。本明細書で用いるために好適な複素環基は、縮合された環系、架橋された環系、又はスピロ環系を含むことができる二環式又は三環式の環系であることができ、当該複素環基中の窒素、リン、炭素、酸素又は硫黄原子は、所望により、種々の酸化状態に酸化されうる。さらに、上記窒素原子は、所望により、四級化されることができる;そして上記環基は、部分的又は完全に飽和されていることができる(すなわち、ヘテロ芳香族又はヘテロアリール芳香族)。上記複素環基の例には、アゼチジニル、アクリジニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフルニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジオキソラニル、インドリジニル、ナフチリジニル、パーヒドロアゼピニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピリジル、プテリジニル、プリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラゾイル、イミダゾリル、テトラヒドロイソウイノリル(tetrahydroisouinolyl)、ピペリジニル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロリジニル、2−オキソアゼピニル、アゼピニル、ピロリル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキサゾリニル、オキサソリジニル、トリアゾリル、インダニル、イソオキサゾリル、イソオキサソリジニル、モルフォリニル、チアゾリル、チアゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、キヌクリジニル、イソチアゾリジニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、キノリル、イソキノリル、デカヒドロイソキノリル、ベンズイミダゾリル、チアジアゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、フリル、テトラヒドロフルチル、テトラヒドロピラニル、チエニル、ベンゾチエニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、ジオキサホスホラニル、オキサジアゾリル、クロマニル、イソクロマニル等及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本明細書で用いるためのヘテロアリール基の典型例には、例えば、置換された又は置換されていない上述の複素環基が含まれる。上記ヘテロアリール環基を、任意のヘテロ原子又は炭素原子のところで主要な構造に結合させ、安定な構造体を生成させることができる。
【0026】
本明細書で用いるためのヘテロアリールアルキル基の典型例には、例えば、上述のアルキル基に直接結合した、置換された又は置換されていない上述のヘテロアリール環基が含まれる。上記ヘテロアリールアルキル基を、上記アルキル基に由来する炭素原子のところで主要な構造に結合させ、安定な構造体を生成させることができる。
【0027】
本明細書で用いるためのヘテロシクロ基の典型例には、例えば、置換された又は置換されていない上述のヘテロ環式の環基が含まれる。上記ヘテロシクロ環基を、任意のヘテロ原子又は炭素原子のところで主要な構造に結合させ、安定な構造体を生成させることができる。
【0028】
本明細書で用いるためのヘテロシクロアルキル基の典型例には、例えば、上述のアルキル基に直接結合した置換された又は置換されていない上述のヘテロ環式の環基が含まれる。上記ヘテロシクロアルキル基を、上記アルキル基に由来する任意の炭素原子のところで主要な構造に結合させ、安定な構造体を生成させることができる。
【0029】
「重合性エチレン系不飽和有機基」の典型例には、例えば、(メタ)アクリレート含有基、(メタ)アクリルアミド含有基、ビニルカーボネート含有基、ビニルカーバメート含有基、スチレン含有基等が含まれる。
実施形態の一つでは、重合性エチレン系不飽和有機基を、次の一般式により表すことができる:
【化2】

(式中、R21は、水素、フッ素又はメチルであり;R22は、独立して、水素、フッ素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、又は−CO−Y−R24基であり、ここでYは、−O−、−S−又は−NH−であり、そしてR24は、1〜約10個の炭素原子を有する二価のアルキレン基である)。
【0030】
上記「置換されたアルキル」、「置換されたアルコキシ」、「置換されたシクロアルキル」、「置換されたシクロアルキルアルキル」、「置換されたシクロアルケニル」、「置換されたアリールアルキル」、「置換されたアリール」、「置換された複素環」、「置換されたヘテロアリール環」、「置換されたヘテロアリールアルキル」、「置換されたヘテロシクロアルキル環」、「置換された環式の環」及び「置換されたカルボン酸誘導体」における置換基は、同一又は異なることができ、そして1種又は2種以上の置換基、例えば、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、ニトロ、オキソ(=O)、チオ(=S)、置換された又は置換されていないアルキル、置換された又は置換されていないアルコキシ、置換された又は置換されていないアルケニル、置換された又は置換されていないアルキニル、置換された又は置換されていないアリール、置換された又は置換されていないアリールアルキル、置換された又は置換されていないシクロアルキル、置換された又は置換されていないシクロアルケニル、置換された又は置換されていないアミノ、置換された又は置換されていないアリール、置換された又は置換されていないヘテロアリール、置換されたヘテロシクロアルキル環、置換された又は置換されていないヘテロアリールアルキル、置換された又は置換されていない複素環、置換された又は置換されていないグアニジン、−COORx、−C(O)Rx、−C(S)Rx、−C(O)NRxRy、−C(O)ONRxRy、−NRxCONRyRz、−N(Rx)SORy、−N(Rx)SO2Ry、−(=N−N(Rx)Ry)、−NRxC(O)ORy、−NRxRy、−NRxC(O)Ry−、−NRxC(S)Ry、−NRxC(S)NRyRz、−SONRxRy−、−SO2NRxRy−、−ORx、−ORxC(O)NRyRz、−ORxC(O)ORy−、−OC(O)Rx、−OC(O)NRxRy、−RxNRyC(O)Rz、−RxORy、−RxC(O)ORy、−RxC(O)NRyRz、−RxC(O)Rx、−RxOC(O)Ry、−SRx、−SORx、−SO2Rx、−ONO2、(式中、上記基のそれぞれの中のRx、Ry及びRzは、同一又は異なることができ、そして水素原子、置換された又は置換されていないアルキル、置換された又は置換されていないアルコキシ、置換された又は置換されていないアルケニル、置換された又は置換されていないアルキニル、置換された又は置換されていないアリール、置換された又は置換されていないアリールアルキル、置換された又は置換されていないシクロアルキル、置換された又は置換されていないシクロアルケニル、置換された又は置換されていないアミノ、置換された又は置換されていないアリール、置換された又は置換されていないヘテロアリール、「置換されたヘテロシクロアルキル環」、置換された又は置換されていないヘテロアリールアルキル、あるいは置換された又は置換されていない複素環であることができる)を含むことができる。
【0031】
好ましい式(I)のモノマーは、次の式(II)に示される:
【化3】

(式中、各R1は同一であり、そして−OSi(CH33であり、R2はメチルであり、L1はアルキルアミドであり、L2は重合性ビニル基に結合した2又は3個の炭素原子を有するエステル又はアルキルアミドであり、R3はメチルであり、R4はHであり、そしてX-はBr-又はCl-である。
【0032】
さらに好ましい構造は、次の構造式:
【化4】

を有する。
【0033】
本明細書に開示される新規なカチオン性ケイ素含有モノマーを製造するための合成方法の概略的な描写は、下記:
【化5】

に与えられる。
【0034】
第二の態様では、本発明は、式(I)のモノマーを含むモノマー混合物を生成する装置から形成される製品を含む。好ましい実施形態によると、上記製品は、上述のモノマー及び少なくとも第二のモノマーを含む混合物の重合生成物である。本発明を、多種多様のポリマー材料(硬質又は軟質のどちらでも)に適用することができる。生体材料を含むすべてのポリマー材料は、本発明の範囲内であるものとして企図されるが、特に好ましいポリマー材料は、レンズ、例えば、コンタクトレンズ、有水晶体(phakic)及び無水晶体(aphakic)眼内レンズ並びに角膜インプラントである。好ましい製品は、光学的に透明であり、そしてコンタクトレンズとして有用である。
【0035】
本発明はまた、医療装置、例えば、心臓弁及び膜、外科用装置、血管代用品、子宮内器具、膜、横隔膜、外科用インプラント、血管、人工尿管、人工乳房組織及び身体の外側で体液と接触することが意図される膜、例えば、腎臓透析用膜及び心臓/肺装置等、カテーテル、マウスガード、義歯ライナー、眼用装置、及び特にコンタクトレンズを提供する。
【0036】
これらの材料を用いて製造された有用な製品には、疎水性の、場合によってはケイ素含有モノマーが要求される場合がある。好ましい組成物は、親水性及び疎水性モノマーの両方を有する。特に好ましいのは、ケイ素含有ヒドロゲルである。
【0037】
ケイ素含有ヒドロゲルは、少なくとも1種のケイ素含有モノマー及び少なくとも1種の親水性モノマーを含む混合物を重合することにより調製される。上記ケイ素含有モノマーは、架橋剤(架橋剤は、複数の重合性官能基を有するモノマーとして規定される)として作用することができ、又は別個の架橋剤を用いることができる。
【0038】
ケイ素含有コンタクトレンズ材料の先例が、米国特許第4,153,641号明細書(Deichertら、Bausch&Lomb Incorporatedに譲渡された)に開示されている。レンズは、重合された活性化された不飽和基に、二価の炭化水素基によりα,ω末端結合されたポリ(オルガノシロキサン)モノマーから製造される。種々の疎水性ケイ素含有プレポリマー、例えば、1,3−ビス(メタクリルオキシアルキル)ポリシロキサンが、公知の親水性モノマー、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を用いて共重合される。
【0039】
米国特許第5,358,995号明細書(Laiら)は、かさ高なポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリレートモノマー、及び少なくとも1種の親水性モノマーを用いて重合された、アクリル酸エステル−キャップ化ポリシロキサンプレポリマーを含むケイ素含有ヒドロゲルを記載している。Laiらの出願は、Bausch&Lomb Incorporatedに譲渡された(全体の公表を参照し、本明細書に組み入れる)。M2xとして公知である上記アクリル酸エステル−キャップ化ポリシロキサンプレポリマーは、2つのアクリル酸エステル末端基及び数「x」のジメチルシロキサン繰返し単位から成る。好ましいかさ高なポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、トリス−型(メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン)であり、そして親水性モノマーは、アクリル含有又はビニル含有のどちらかである。
【0040】
本発明と共に用いられうるケイ素含有モノマー混合物の他の例には、下記が含まれる:米国特許第5,070,215号明細書及び同5,610,252号明細書(Bamburyら)に開示されるビニルカーボネート及びビニルカーバメートモノマー混合物;米国特許第5,321,108号明細書;同5,387,662号明細書及び同5,539,016号明細書(Kunzlerら)に開示されるフルオロケイ素モノマー混合物;米国特許第5,374,662号明細書;同5,420,324号明細書及び同5,496,871号明細書(Laiら)に開示されるフマレートモノマー混合物及び米国特許第5,451,651号明細書;同5,648,515号明細書;同5,639,908号明細書及び同5,594,085号明細書(Laiら)に開示されるウレタンモノマー混合物(これら全ては、Bausch&Lomb Incorporatedに譲渡され、公表全体を参照し本明細書に組み入れる)。
【0041】
非ケイ素疎水性材料の例には、アルキルアクリレート及びメタクリレートが含まれる。
カチオン性ケイ素含有モノマーを、多種多様の親水性モノマーと共重合して、ケイ素ヒドロゲルレンズを製造することができる。好適な親水性モノマーには、不飽和カルボン酸、例えば、メタクリル酸及びアクリル酸;アクリル置換されたアルコール、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び2−ヒドロキシエチルアクリレート;ビニルラクタム、例えば、N−ビニルピロリドン(NVP)及び1−ビニルアゾナン−2−オン;及びアクリルアミド、例えば、メタクリルアミド及びN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)が含まれる。
【0042】
さらなる例は、米国特許第5,070,215号明細書に開示される親水性ビニルカーボネート又はビニルカーバメートモノマー、及び米国特許第4,910,277号明細書に開示される親水性オキサゾロンモノマーである。他の好適な親水性モノマーは、当業者に明らかであろう。
【0043】
疎水性架橋剤には、メタクリレート、例えば、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)及びアリルメタクリレート(AMA)が含まれるであろう。従来のケイ素ヒドロゲルモノマー混合物と対照的に、本発明の四級化されたケイ素モノマーを含むモノマー混合物は、比較的水溶性である。この特徴は、濁ったレンズを生ずる不適合性の相分離のリスクが少なく、重合された材料を水で抽出することができるので、従来のケイ素ヒドロゲルモノマー混合物よりも有利であることを提供する。しかし、所望の場合には、従来の有機抽出方法をまた用いることができる。さらに、上記抽出されたレンズは、酸素透過性(Dk)及び低い弾性率、望ましいコンタクトレンズを得るために重要であることが知られている特性の良好な組み合わせを実証する。さらに、本発明の四級化されたケイ素モノマーを用いて調製されたレンズは、表面処理なしでも湿潤性であり、モノマー混合物中に溶媒を要求せず(ただし、例えば、グリセロール等の溶媒は用いられうる)、抽出された重合された材料は、細胞毒性ではなく、そして表面は、滑らかなタッチである。本発明の四級化されたケイ素モノマーを含む重合されたモノマー混合物は望ましい引裂き強度を実証せず、強化剤(toughening agent)、例えば、TBE(4−t−ブチル−2−ヒドロキシシクロヘキシルメタクリレート)を、当該モノマー混合物に添加することができる。他の強化剤は当業者に周知であり、そしてまた必要に応じて用いられうる。
【0044】
本明細書に開示されるカチオン性ケイ素含有モノマーの優位性は、それらが比較的水溶性であり、そしてそれらのコモノマーに可溶性であることであるが、有機希釈剤を、初期のモノマー混合物に含ませることができる。本明細書において、用語「有機希釈剤」は、初期モノマー混合物中の成分の不相溶性を最小化し、そして当該初期混合物中の成分と実質的に反応しない有機化合物を包含する。さらに、上記有機希釈剤は、モノマー混合物の重合により生成される重合された生成物の相分離を最小化するようにはたらく。また、上記有機希釈剤は、比較的に不燃性であるのが一般的である。
【0045】
企図される有機希釈剤には、tert−ブタノール(TBA);ジオール、例えば、エチレングリコール及びポリオール、例えば、グリセロールが含まれる。好ましくは、上記有機希釈剤は、抽出溶媒中で十分に可溶性であり、抽出段階の際に、硬化した製品からその除去が促進される。他の好適な有機希釈剤は、当業者に明らかであろう。
【0046】
上記有機希釈剤は、所望の効果を提供する有効な量で含まれる。一般的に、上記希釈剤は、上記モノマー混合物の5〜60重量%において含まれ、そして10〜50重量%が特に好ましい。
本発明の方法に従って、少なくとも1種の親水性モノマー、少なくとも1種のカチオン性ケイ素含有モノマー及び所望による上記有機希釈剤を含む上記モノマー混合物を生成させ、そして、従来法、例えば、静的キャスティング又はスピンキャスティングにより硬化させる。
【0047】
レンズの形成は、米国特許第3,808,179号明細書(参照により本明細書に組み入れる)に開示される等の条件の下、開始剤を用い、ラジカル重合、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)及び過酸化物触媒によりなすことができる。当業界に周知であるように、モノマー混合物の重合の光開始をまた、本明細書に開示されるように、製品を形成する方法において用いることができる。モノマー重合の前に、着色剤等を添加することができる。
【0048】
続いて、十分な量の未反応のモノマー、そして存在する場合には、有機希釈剤を、硬化した製品から除去し、当該製品の生体適合性を向上させる。重合していないモノマーが、レンズの装着の際に眼に放出されると、炎症及び他の問題の原因と成りうる。本明細書に開示される新規な四級化されたシロキサンモノマーの特性のために、可燃性溶媒、例えば、イソプロピルアルコールを用いて抽出しなければならない他のモノマー混合物とは異なって、不燃性の溶媒、例えば、水を抽出法のために用いることができる。
【0049】
一度、本明細書に開示されるカチオン性ケイ素含有モノマーを含む重合された混合物から生成される生体材料が生成すると、次いでそれらを包装及び最終用途向けに調製するために抽出する。抽出は、重合された材料を、種々の時間、種々の溶媒、例えば、水、tert−ブタノール等にさらすことにより達成される。例えば、1回の抽出工程は、重合された材料を約3分間水に浸漬し、水を取り除き、次いで重合された材料を約3分間、別の水のアリコートに浸漬し、その水のアリコートを除去し、次いで水又は緩衝液中で重合された材料をオートクレーブする。
【0050】
未反応のモノマー及び任意の有機希釈剤の抽出に続いて、造形品、例えば、RGPレンズを、所望により、当業界に公知の種々の方法により機械加工する。当該機械加工段階には、レンズ表面を旋盤カットする(lathe cut)段階、レンズ端部を旋盤カットする段階、レンズ端部をバフがけする段階、又はレンズ端部若しくは表面を研磨する段階が含まれる。本発明の方法は、レンズ表面を旋盤カットする方法において特に有利である。というのは、レンズ表面の機械加工は、その表面が粘着性を有するか、又はゴム状である場合に特に難しいからである。
【0051】
一般的に、上記機械加工方法を、上記製品がモールド部分から離型する前に実施する。機械加工操作の後、上記レンズをモールド部分から取り出し、そして水和させることができる。あるいは、上記製品を、モールド部分から取り出した後に機械加工し、次いで水和することができる。
【実施例】
【0052】
全ての溶媒及び試薬は、アミノプロピル−末端化ポリ(ジメチルシロキサン)(Gelest、Inc.,Morrisville,PAから購入した)及び3−メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(Silar Laboratories,Scotia,NY)(両方ともさらに生成することなく用いた)を除いて、Sigma−Aldrich,Milwaukee,WIから購入し、そして購入したものも用い、そしてモノマー、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び1−ビニル−2−ピロリドンを、標準的な技法を用いて精製した。
【0053】
分析的測定
ESI−TOF MS:エレクトロスプレー(ESI)飛行時間(TOF)MS分析を、Applied Biosystems Mariner製機器により実施した。上記機器を、プラスイオンモードで操作した。上記機器を、リジン、アンギオテンシノーゲン、ブラジキニン(フラグメント 1−5)及びdes−Proブラジキニンを含む標準溶液を用いて質量較正した。この混合物により、147〜921m/zの7ポイントの較正が提供された。適用された電圧パラメータを、同一の標準溶液から得られた信号から最適化した。正確な質量測定のため、公称400DaのMn値を有するポリ(エチレングリコール)(PEG)を、関心のある試料に添加し、そして内部質量標準として用いた。関心のある試料質量の限界幅を確定する2種のPEGオリゴマーを用いて、質量スケールを較正した。イソプロパノール(IPA)中の2体積%の飽和NaClを添加して、IPA中の30μM溶液として、試料を調製した。試料を、ESI−TOF MS機器内に、35μL/分の速度で直接導入した。十分な分解出力(6000Rpm/ΔmFWHM)を、分析において達成し、各試料に関するモノアイソトピック質量を得た。各分析において、実験的なモノアイソトピック質量を、それぞれの元素組成から決定される理論上のモノアイソトピック質量と比較した。各分析において、上記モノアイソトピック質量の比較は、10ppmの誤差未満であった。荷電していない試料は、それらの元素組成に含まれるナトリウム(Na)原子を有していることに留意すべきである。このNa原子は、試料調製手順において添加された必要な荷電薬剤(charge agent)として生ずる。上記試料は、添加される荷電薬剤を必要としない場合がある。というのは、それらは、それらのそれぞれの構造に固有の四級窒素に由来する電荷を含むからである。
【0054】
GC:ガスクロマトグラフィーを、Hewlett Packard HP 6890 Series GC Systemを用いて実施した。純度を、第一のピークを組み込み、そして標準化されたクロマトグラフと比較することにより測定した。
【0055】
NMR:1H−NMR特性化を、当業界の標準技法を用いて、400MHz Varian分光計を用いて実施した。試料は、特に断りのない限り、クロロホルム−d(99.8原子%D)に溶解させた。化学シフトを、7.25ppmのところに、残差のクロロホルムピークを割り当てて決定した。ピーク面積及びプロトン比を、ベースライン分離ピークを組み込むことにより決定した。存在し、そして明確に区別できる場合には、分裂パターン(s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線、br=ブロード)及びカップリング定数(J/Hz)を報告した。
【0056】
機械的性質及び酸素透過性:弾性率及び伸び試験を、Instron(Model 4502)機器を用いて、ASTM D−1708aに従って実施した。そこでは、ヒドロゲルフィルム試料を、ホウ酸塩緩衝塩類溶液に浸漬した;適切なサイズのフィルム試料は、ゲージ長さ22mm及び幅4.75mmであり、そこでは、当該試料は、Instron機器のクランプを用いて試料のグリッピングに適合させるために犬の骨の形状を形成する端部と、200+50μmの厚さとをさらに有している。
【0057】
酸素透過性(Dkとも称される)を、下記の手順により測定した。他の方法及び/又は機器を、それらから得られる酸素透過性値が記載される方法と同等である限り用いることができる。シリコーンヒドロゲルの酸素透過性を、端部のところに中心の円形金カソードと、当該カソードから絶縁された銀アノードとを含むプローブを有するO2 Permeometer Model 201T機器(Createch、Albany,California USA)を用いて、ポーラログラフ法(ANSI Z80.20−1998)により測定した。測定は、150〜600μmの範囲にわたる3つの異なる中心厚さの、事前検査されたピンホールフリーの平坦なシリコーンヒドロゲルフィルム試料上のみで行われた。上記フィルム試料の中心厚さ測定を、Rehder ET−I電子厚さゲージを用いて測定することができる。一般的に、上記フィルム試料は、円形ディスクの形状を有する。測定は、35℃±0.2℃において平衡にさせた、循環するリン酸緩衝塩類溶液(PBS)を含む浴中に浸漬させたプローブ及びフィルム試料を用いて行った。
【0058】
PBS浴中に上記プローブ及びフィルム試料を浸漬する前に、上記フィルム試料を置き、そして平衡に達したPBSを用いて事前湿潤させたカソード上の中心に置き、気泡又は過剰量のPBSが当該カソード及びフィルム材料の間に存在しないように確保し、次いで、当該フィルム材料を、取り付けキャップと共にプローブに固定し、そして当該プローブのカソード部分を上記フィルム材料のみに接触させた。シリコーンヒドロゲルフィルムにおいて、上記プローブカソード及びフィルム試料の間に、例えば、円形ディスク形状を有するテフロン(登録商標)ポリマー膜を用いることが非常に有用である。そのような場合では、上記テフロン(登録商標)フィルムを、最初に、事前に湿潤させたカソード上に置き、次いで、上記フィルム試料を、テフロン(登録商標)膜上に置き、気泡又は過剰量のPBSが上記テフロン(登録商標)膜又はフィルム試料の真下に存在しないことを確保する。一度、測定が始まると、0.97以上の相関係数値(R2)を有するデータのみがDk値の計算に集められるべきである。
【0059】
厚さ当たり少なくとも2回のDkの測定と、集合R2値とを得る。公知の回帰分析を用いて、酸素透過性(Dk)が、少なくとも3つの厚さを有する上記フィルム試料から計算された。PBS以外の溶液を用いて水和させた任意のフィルム試料を、最初に精製水に浸漬させ、そして少なくとも24時間平衡させ、次いでPHBに浸漬させ、そして少なくとも12時間平衡させた。上記機器を規則的に清浄し、そしてRGP標準を用いて規則的に較正した。上限及び下限は、William J.Benjaminらの「The Oxygen Permeability of Reference Materials,Optom Vis Sci 7(12s):9:5(1997)」(公表により全体を本明細書に組み入れる)により確立された±8.8%のRepository値を計算することにより設定された。
材料名 Repository値 下限 上限
Fluoroperm 30 26.2 24 29
Menicon EX 62.4 56 66
Quantum II 92.9 85 101
【0060】
略称
NVP 1−ビニル−2−ピロリドン
TRIS 3−メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン
HEMA 2−ヒドロキシエチルメタクリレート
v−64 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)
EGDMA エチレングリコールジメタクリレート
他に特に言及がないか、又はその使用により明確になされない限り、例中に用いられる全ての数は、用語「約」により修飾されるべきであることと、重量%であるべきことが、考慮に入れられるべきである。
【0061】
例1
3−(クロロアセチルアミド)プロピルトリス(トリメチルシロキシシラン)の合成
ジクロロメタン(80mL)中のクロロアセチルクロリド(14.6mL、0.18mol)の溶液を、力強く撹拌された、ジクロロメタン(200mL)中の3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(50g、141ミリモル、Gelest,Inc.,Morrisville,PAから購入)と、NaOH(aq)(0.75M、245mL)の二相溶液に、室温において、液滴として添加した。室温における追加の1時間の後、有機相を分離し、そしてシリカゲル(15g)上で3時間、そして硫酸ナトリウム(15g)上でさらに0.5時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、無色の液体として生成物(42g、84%)を得た:1H NMR(CDCl3、400MHz)δ6.64(br、1H)、4.04(s、2H)、3.30−3.24(m、2H)、1.59−1.51(m、2H)、0.45−0.42(m、2H)、0.08(s、27H);GC:純度99.3%;ESI−TOF MSデータを、表1に要約し、そしてマススペクトルはまた、元素組成により予測されるように特有の塩素同位体分布パターンを具体的に説明する。
【0062】
【化6】

【0063】
例2
3−(ブロモアセチルアミド)プロピルトリス(トリメチルシロキシシラン)の合成
例1に記載されるのと実質的に同一の様式で、ブロモアセチルクロリドを3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランと反応させ、無色の液体として生成物を得た(44.4g、79%):1H NMR(CDCl3、400MHz)δ6.55(br、1H)、3.88(s、2H)、3.26(q、J=7Hz、2H)、1.59−1.51(m、2H)、0.045(m、2H)、0.09(s、27H);GC:純度93.2%;ESI−TOF MSデータを、表1に要約し、そしてマススペクトルはまた、元素組成により予測されるように特有の塩素同位体分布パターンを具体的に説明する。
【0064】
【化7】

【0065】
例3
カチオン性メタクリレートクロリドにより官能化されたトリス(トリメチルシロキシ)シランの合成
2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(4.13mL、24.5ミリモル)を、エチルアセテート(35mL)中の例1に由来する3−(クロロアセチルアミド)プロピルトリス(トリメチルシロキシシラン)(10.0g、23.2ミリモル)の溶液に添加し、そして当該溶液を、暗闇の中で撹拌しながら、窒素雰囲気下において60℃で加熱した。アリコートを定期的に取り出し、そして1H NMR積分により試薬の転換に関してモニターした。35時間後、上記溶液を冷却し、そして減圧下で揮散させ、高度に粘稠な液体としてカチオン性メタクリレートクロリドにより官能化されたトリス(トリメチルシロキシ)シラン(13.8g、100%)を得た:1HNMR(CDCl3、400MHz)δ9.24(br、1H)、6.12(s、1H)、5.66(s、1H)、4.76(s、2H)、4.66−4.64(m、2H)、4.16−4.14(m、2H)、3.46(s、6H)、3.20(q、J=7Hz、2H)、1.93(s、3H)、1.60−1.52(m、2H)、0.45−0.41(m、2H)、0.07(s、27H);ESI−TOF MSデータを表1に要約する。
【0066】
【化8】

【0067】
例4
カチオン性メタクリルアミドクロリドにより官能化されたトリス(トリメチルシロキシ)シランの合成
15時間の短い反応時間を用いた以外は、上記例に記載されるのと実質的に同一の手順を用いて、例1に由来する3−(クロロアセチルアミド)プロピルトリス(トリメチルシロキシシラン)(10.0g.23.2ミリモル)を、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド(4.43mL、24.5ミリモル)と反応させ、無色の固体として、カチオン性メタクリルアミドクロリドにより官能化されたトリス(トリメチルシロキシ)シラン(14.2g、100%)を得た:1H NMR(CDCl3、400MHz)δ9.06(t、J=6Hz、1H)、7.75(t、J=6Hz、1H)、5.85(s、1H)、5.31(s、1H)、4.40(s、2H)、3.69−3.73−3.69(m、2H)、3.45−3.38(m、2H)、3.32(s、6H)、3.18−3.13(m、2H)、2.21−2.13(m、2H)、1.93(s、3H)、1.56−1.48(m、2H)、0.42−0.37(m、2H)、0.04(s、27H);ESI−TOF MSデータを、表1に要約する。
【0068】
【化9】

【0069】
例5
カチオン性メタクリレートブロミドにより官能化されたトリス(トリメチルシロキシ)シランの合成
上記例に記載されるのと実質的に同一の手順に従って、例2に由来する3−(ブロモアセチルアミド)プロピルトリス(トリメチルシロキシシラン)(10.1g、21.3ミリモル)を、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(3.76mL、22.3ミリモル)と反応させ、無色の、高度に粘稠な液体として生成物を得た(13.9g、100%);1H NMR(CDCl3、400MHz)δ8.64(t、J=5Hz、1H)、6.10(s、1H)、5.63(s、1H)、4.72(s、2H)、4.64(br、2H)、4.20(br、2H)、3.49(s、6H)、3.20−3.15(m、2H)、1.91(s、3H)、1.58−1.50(m、2H)、0.41(t、J=8Hz)、0.05(s、27H);ESI−TOF MSデータを、表1に要約する。
【0070】
【化10】

【0071】
例6
カチオン性メタクリルアミドブロミドにより官能化されたトリス(トリメチルシロキシ)シランの合成
例5に記載されるのと実質的に同一の手順を用いて、例1に由来する3−(ブロモアセチルアミド)プロピルトリス(トリメチルシロキシシラン)(10.0g、21.1ミリモル)を、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド(4.02mL、22.2ミリモル)と反応させ、無色の高度に粘稠な液体として生成物を得た(14.1g、100%):1H NMR(CDCl3、400MHz)δ8.58(t、J=6Hz、1H)、7.42(t、J=6Hz、1H)、5.86(s、1H)、5.33(s、1H)、4.45(s、2H)、3.75(t、J=8Hz、2H)、3.43−3.41(m、2H)、3.35(s、6H)、3.20−3.15(m、2H)、2.23−2.13(m、2H)、1.95(s、3H)、1.57−1.49(m、2H)、0.41(t、J=8Hz、2H)、0.05(s、27H);ESI−TOF MSデータを、表1に要約する。
【0072】
【化11】

【0073】
【表1】

【0074】
例7〜10
カチオン性シロキサニルモノマーを含むフィルムの重合、加工及び特性
例3〜6に由来するカチオン性シロキサニルモノマーを含む液状モノマー溶液を、眼用材料に一般的である他の添加剤(希釈剤、開始剤等)と共に、種々の厚さのシラン化した(silanized)ガラスプレートにクランプし、そして窒素雰囲気下の下、100℃で2時間加熱して、ラジカル発生添加剤の熱分解を用いて重合させた。例2に列挙されるそれぞれの配合により、透明な、タックフリーの不溶性フィルムを得た。
【0075】
【表2】

【0076】
フィルムを、ガラスプレートから取り出し、そして最小の4時間の間、脱イオン化したH2O内で水和/抽出させ、そして新鮮な脱イオン化したH2Oに移動させ、そして121℃で30分間オートクレーブした。次いで冷却したフィルムを、表3に記載される眼用材料に重要な選択的な特性に関して分析した。機械試験を、上述のように、ASTM D−1708aに従って、ホウ酸緩衝塩類溶液内で実施した。Dk(又はバリア(barrer))単位で報告される酸素透過性を、上述のように、3つの異なる厚さを有する許容可能なフィルムを用いて、リン酸緩衝塩類溶液内で、35℃で測定した。
【0077】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(I)のモノマー:
【化1】

(式中、Lは、同一又は異なることができ、そしてウレタン、カーボネート、カーバメート、カルボキシルウレイド、スルホニル、直鎖又は分岐鎖のC1〜C30のアルキル基、C1〜C30のフルオロアルキル基、C1〜C20のエステル基、アルキルエーテル、シクロアルキルエーテル、シクロアルキルアルキルエーテル、シクロアルケニルエーテル、アリールエーテル、アリールアルキルエーテル、ポリエーテル含有基、ウレイド基、アミド基、アミン基、置換された又は置換されていないC1〜C30のアルコキシ基、置換された又は置換されていないC3〜C30のシクロアルキル基、置換された又は置換されていないC3〜C30のシクロアルキルアルキル基、置換された又は置換されていないC3〜C30のシクロアルケニル基、置換された又は置換されていないC5〜C30のアリール基、置換された又は置換されていないC5〜C30のアリールアルキル基、置換された又は置換されていないC5〜C30のヘテロアリール基、置換された又は置換されていないC3〜C30の複素環、置換された又は置換されていないC4〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換された又は置換されていないC6〜C30のヘテロアリールアルキル基、C5〜C30のフルオロアリール基、あるいはヒドロキシル置換されたアルキルエーテル及びそれらの組み合わせから成る群から選択され;X-は、少なくとも一価の荷電された対イオンであり;R1及びR2は、独立して、水素、直鎖又は分岐鎖のC1〜C30のアルキル基、C1〜C30のフルオロアルキル基、C1〜C20のエステル基、アルキルエーテル、シクロアルキルエーテル、シクロアルキルアルキルエーテル、シクロアルケニルエーテル、アリールエーテル、アリールアルキルエーテル、ポリエーテル含有基、ウレイド基、アミド基、アミン基、置換された又は置換されていないC1〜C30のアルコキシ基、置換された又は置換されていないC3〜C30のシクロアルキル基、置換された又は置換されていないC3〜C30のシクロアルキルアルキル基、置換された又は置換されていないC3〜C30のシクロアルケニル基、置換された又は置換されていないC5〜C30のアリール基、置換された又は置換されていないC5〜C30のアリールアルキル基、置換された又は置換されていないC5〜C30のヘテロアリール基、置換された又は置換されていないC3〜C30の複素環、置換された又は置換されていないC4〜C30のヘテロシクロアルキル基、置換された又は置換されていないC6〜C30のヘテロアリールアルキル基、フッ素、C5〜C30のフルオロアリール基、あるいはヒドロキシル基であり;Xは、独立して、直鎖又は分岐鎖のC1〜C30のアルキル基、C1〜C30のフルオロアルキル基、置換された又は置換されていないC5〜C30のアリールアルキル基、エーテル、ポリエーテル、スルフィド、又はアミノ含有基であり、そしてVは、独立して、重合性エチレン系不飽和有機基である)。
【請求項2】
-が、Cl-、Br-、I-、CF3CO2-、CH3CO2-、HCO3-、CH3SO4-、p−トルエンスルホネート、HSO4-、H2PO4-、NO3-、CH3CH(OH)CO2-、SO42−、CO32−、HPO42-及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載のモノマー。
【請求項3】
-が、少なくとも一価の荷電された対イオンであり、そしてCl-、Br-、I-、CF3CO2-、CH3CO2-、HCO3-、CH3SO4-、p−トルエンスルホネート、HSO4-,H2PO4-、NO3-、及びCH3CH(OH)CO2-から成る群から選択される、請求項1に記載のモノマー。
【請求項4】
次の式(II)を有するモノマー:
【化2】

(式中、各R1は同一であり且つ−OSi(CH33であり、R2はメチルであり、L1はアルキルアミドであり、L2は、重合性ビニル基に結合した、2又は3個の炭素原子を有するエステル又はアルキルアミドであり、R3はメチルであり、各R4はH又はメチル基であり、そしてX-はBr-又はCl-である)。
【請求項5】
次の式から成る群から選択されるモノマー。
【化3】

【請求項6】
請求項1に記載のモノマーを少なくとも一種と、第二のモノマーを少なくとも一種とを含む、重合された生体材料を製造するために有用なモノマー混合物。
【請求項7】
前記第二のモノマーに加えて、疎水性モノマー及び親水性モノマーをさらに含む、請求項6に記載のモノマー混合物。
【請求項8】
前記第二のモノマーが、不飽和カルボン酸;メタクリル酸、アクリル酸;イタコン酸;イタコン酸エステル;アクリル置換されたアルコール;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート;ビニルラクタム;N−ビニルピロリドン(NVP)、N−ビニルカプロラクトン;アクリルアミド;メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド;メタクリレート;エチレングリコールジメタクリレート、メチルメタクリレート、アリルメタクリレート;親水性ビニルカーボネート、親水性ビニルカーバメートモノマー;親水性オキサゾロンモノマー、3−メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、アリルメタクリレート(AMA)及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項6に記載のモノマー混合物。
【請求項9】
重合された請求項6に記載のモノマー混合物を含む生体医学装置。
【請求項10】
次の段階を含む生体医学装置の製造方法;
請求項1に記載のモノマーと、少なくとも第二のモノマーとを含むモノマー混合物を準備する段階;
重合された装置を提供するために、上記モノマー混合物を、重合条件にさらす段階;
重合された装置から重合されていないモノマーを抽出する段階:そして
重合された装置を包装し、そして殺菌する段階。
【請求項11】
前記抽出する段階が不燃性の溶媒を用いて実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抽出する段階が水を用いて実施される、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2009−521546(P2009−521546A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547296(P2008−547296)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/047192
【国際公開番号】WO2007/075320
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【Fターム(参考)】