説明

カチオン硬化性組成物および硬化物

【課題】 大気中でも速やかに光硬化し、硬化膜の表面硬度、透明性に優れ、金属基材の腐食を低減でき、インクジェット方式での吐出性が良好な、貯蔵(保存)安定性に優れるカチオン硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 (A)(RSiX4−n(1)(式中、Rは炭素数が1〜20のアルキル基、Xは加水分解性基、nは0〜3の整数を表す。)で示される反応性有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解物100質量部に対して、(B)光および/または熱カチオン重合開始剤 0.05〜20質量部(C)[M+][X−](2)(式中、Mはアルカリ金属元素、アルカリ土類金属、遷移金属を表し、Xはハロゲン基、水酸基、スルフォン酸基を表す)で示される金属イオン性化合物 0.001〜0.4質量部からなることを特徴とするカチオン硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン硬化性組成物およびそのカチオン硬化性組成物から得られた硬化物に関する。具体的には、貯蔵(保存)安定性に優れ、硬化膜の表面硬度、透明性が良好で、金属基材の腐食が低減でき、しかも少ない光照射量で硬化可能で、インクジェットプリンタからの吐出性も良好であることから、基材への記録方法としてインクジェット方式を利用したインク、コーティング材に適用でき、さらに具体的にはエネルギー線硬化型インクジェットインクに好適であるカチオン硬化性組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、少量多品種印刷への要望の高まりと、簡便で安価に画像を作成でき、さらに設備の小型化も可能であるという装置上の特徴から、インクジェット記録方式が脚光を浴びており、その用途は、写真、印刷、マーキング、カラーフィルター等、様々な印刷分野に渡っている。インクの吐出方法としては静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、圧電結晶に電圧を印加して発生する結晶の歪みによって加圧する圧電方式、インキの加熱によって気泡を形成し、その圧力によって吐出する加熱方式などの方法が知られているが、特に圧電方式、加熱方式は、構造が簡単で取り扱いが容易であることから有用である。これらの方式に用いるインクとしては、記録後に紫外線や熱などのエネルギー線を照射することでインク成分を乾燥させるUVインクジェットインクや速乾性の有機溶剤を主体とした溶剤系インクジェットインクなどが挙げられる。これらのインクジェットインクは低粘度に調整することが比較的容易であるため、圧電方式や加熱方式に好適である。しかし、溶剤系インクジェットインクは揮発性の高い有機溶剤を用いることから環境や作業者への悪影響、プリントヘッド上でのインクの固化が問題であり、溶剤を用いないUVインクジェットインクへの期待が高まっている。(特許文献1〜3、非特許文献1、非特許文献2)
【0003】
近年UVインクジェットインクが多数報告されている。硬化方式には大きく分けてラジカル型とカチオン型があるが、その中でもカチオン硬化型のUVインクジェットインクは、ガラスや金属、フィルムといったラジカル型では接着不良を起こしやすい基材への印刷が可能であり、ラジカル型の問題点である酸素による硬化阻害やアクリルモノマー、オリゴマー由来の皮膚刺激性、臭気もないことから近年注目を浴びている。カチオン型UVインクジェットインクは例えば特許文献4〜7が挙げられる。特許文献4では低分子量のエポキシ樹脂とアルコール系、ケトン系などの溶剤を用い、印刷用ノズルの目詰まりを改善したUVインクジェットインクを提供している。しかし、アルコール系の溶剤を使用していることからエポキシ樹脂の硬化性が悪化し、乾燥したインクが徐々にノズル出口部分に溜まり、吐出性が悪化するという問題点がある。
【0004】
特許文献5ではインクジェット記録方式を利用した光ディスクのハードコート材料を提案している。しかし、ビスフェノールA型のエポキシを使用しており、発癌性など材料の安全性や貯蔵安定性が問題であり、硬化膜の透明性にも問題がある。
特許文献6では加水分解性シランおよび/またはその加水分解物、光酸発生剤、着色剤からなる、インク吐出性に優れたUVインクジェットインクを提供している。しかし、実際には溶剤を配合しており、硬化性に問題がある。また硬化膜の金属基材への腐食性も問題である。
特許文献7ではエポキシ、ビニルエーテル、オキセタンといったカチオン硬化型材料と光酸発生剤、着色剤、塩基性化合物からなる、貯蔵安定性に優れたUVインクジェットインクを提供している。しかし、実際に用いられる塩基性化合物は含窒素系、特にアニリン系誘導体であり、硬化性、硬化膜の透明性に問題があり、貯蔵安定性も不十分である。
【0005】
【特許文献1】特開2003−213183号公報
【特許文献2】特開2000−37943号公報
【特許文献3】特開2003−55463号公報
【特許文献4】特公平2−47510号公報
【特許文献5】特開平9−183928号公報
【特許文献6】特開2000−327980号公報
【特許文献7】特開2004−2668号公報
【非特許文献1】第12回 フュージョンUV技術セミナー(要旨集2005)
【非特許文献2】最新UV硬化実用便覧 pp371
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、大気中でも速やかに光硬化し、硬化膜の表面硬度、透明性に優れ、金属基材の腐食を低減でき、インクジェット方式での吐出性が良好な、貯蔵(保存)安定性に優れたカチオン硬化性組成物およびその硬化物、並びに該組成物からなるインクジェットインク、ハードコーティング材、およびそれらの硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の原料を組み合わせることにより、前記の課題を解決できることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の構成からなるものである。
1.発明の第1は、(A)下記一般式(1)で示される反応性有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解物100質量部に対して、
(RSiX4−n (1)
(式中、Rは炭素数が1〜20のアルキル基、Xは加水分解性基、nは0〜3の整数を表す。)
(B)光および/または熱カチオン重合開始剤 0.05〜20質量部
(C)下記一般式(2)で示される金属イオン性化合物 0.001〜0.4質量部
[M+][X−] (2)
(式中、Mはアルカリ金属元素、アルカリ土類金属、遷移金属を表し、Xはハロゲン基、水酸基、スルフォン酸基を表す)
からなることを特徴とするカチオン硬化性組成物である。
2.発明の第2は、(D)カチオン重合性化合物を、(A)反応性有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解物100質量部に対して、10〜500質量部配合してなることを特徴とする、1.記載のカチオン硬化性組成物である。
3.発明の第3は、(E)水を、0.05〜1質量%含有してなることを特徴とする、1.又は2.記載のカチオン硬化性組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物は、大気中でも速やかに光硬化し、硬化膜の表面硬度、透明性に優れ、金属基材の腐食を低減でき、インクジェット方式での吐出性が良好で、貯蔵(保存)安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、(A)上記一般式(1)で表される反応性有機ケイ素化合物は、一般式(1)の用件を満たす化合物であれば特に制限するものではない。具体的には、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメトキシジイソプロポキシシラン、ジエトキシジイソプロポキシシラン、ジエトキシジブトキシシラ
ンなどのテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エトルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシランなどのトリアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン類を単独でも2種以上組み合わせて使用しても良い。
また、既存の方法(例え特開昭60−18657号公報、特開2000−1648号公報、作花済夫著「ゾル−ゲル法の科学」pp.9)により(A)反応性有機ケイ素化合物を1種または2種以上を用いて、縮合反応を行うことで得られるか反応性有機ケイ素化合物の加水分解物を使用しても良い。
【0010】
本発明において、(C)金属イオン性化合物とは、上記一般式(2)の要件を満たす化合物であれば特に制限する物ではないが、カチオン硬化性組成物の安定性の向上、および金属基板に対する腐食性の低減、硬化膜の透明性の観点よりアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属の塩がであり、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属の水酸化物、ハロゲン化物、スルフォン酸化物が好ましく、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属の水酸化物がさらに好ましい。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セリウム、水酸化フランシウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化ベリリウム、水酸化マグシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ラジウムが挙げられる。
【0011】
本発明で使用する(B)光および/または熱カチオン重合開始剤とは、光や熱などのエネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を発生させることが可能な化合物であり、オニウム塩やスルフォン酸誘導体が挙げられるが、好ましいものとしてはエネルギー線照射によりルイス酸を発生させるオニウム塩である。
光カチオン重合開始剤は、具体的には、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩等が挙げられ、これらはカチオン部分がそれぞれ芳香族ジアゾニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族スルホニウムであり、アニオン部分がBF、PF、SbF、[BX(ただし、Xは少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基)等により構成されたオニウム塩である。具体的には四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のジフェニルヨードニウム塩、アセチルアセトンアルミニウム塩とオルトニトロベンジルシリルエーテル混合体、フェニルチオピリジウム塩、六フッ化リンアレン−鉄錯体等を挙げることができ、CD−1012(商品名:SARTOMER社製)、PCI−019、PCI−021(商品名:日本化薬社製)、オプトマーSP−150、オプトマーSP−170(商品名:旭電化社製)、UVI−6990(商品名:ダウケミカル社製)、CPI−100P、CPI−100A(商品名:サンアプロ社製)、TEPBI−S(商品名:日本触媒社製)、R HODORSIL PHOTOINITIATOR2074(商品名:Rhodia社製)等を用いることができ、これらは単独でも2種以上を組み合わせても使用することもでき、1種以上の熱カチオン重合開始剤と組み合わせて使用することもできる。これらのうちでもアニオン部位がPFが好ましく、さらに好ましくはアニオン部位がPFであるスルホニウム塩が安定性、硬化性、安全性の面で優れているので使用するのに好適である。
【0012】
スルフォン酸誘導体は、ジスルフォン類、ジスルフォニルジアゾメタン類、ジスルフォニルメタン類、イミドスルフォネート類、ベンゾインスルフォネート類、1−オキシ−2
−ヒドロキシ−3−プロピルアルコールのスルフォネート類、ピロガロールトリスルフォネート類、ベンジルスルフォネート類などを挙げることができる。さらに具体的には、ジフェニルジスルフォン、ジトシルジスルフォン、ビス(フェニルスルフォニル)ジアゾメタン、ビス(クロルフェニルスルフォニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルフォニル)メタン、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドメチルスルフォネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトシルスルフォネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメチルスルフォネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドカンファースルフォネート、コハク酸イミドフェニルスルフォネート、コハク酸イミドトシルスルフォネート、コハク酸イミドトリフルオロメチルスルフォネート、フタル酸イミドトリフルオロスルフォネート、ベンゾイントシラート、1,2−ジフェニル−2−ヒドロキシプロピルトシラート、ピロガロールメチルスルフォネート、2,6−ジニトロフェニルメチルトシラートなどを挙げることができる。
【0013】
熱カチオン重合開始剤は、具体的には、アデカオプトンCP−66、CP−77(商品名:以上旭電化工業社製)、サンエイドSI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−180L(商品名:以上三新化学社製)、CI−2920、CI−2921、CI−2946、CI−2639、CI−2624、CI−2064(商品名:以上日本曹達社製)、FC−520(商品名:3M社製)等を用いることができ、これらは単独でも2種以上組み合わせても使用するもでき、1種以上の光カチオン重合開始剤と組み合わせて使用することもできる。
【0014】
本発明で使用する(D)カチオン重合性化合物は、1分子中にカチオン反応性基を有していればよい。具体的にはエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、プロペニルエーテル、オキセタン化合物、オキソラン化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チオビニルエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和化合物、環状エーテル化合物、環状チオエーテル化合物、等を上げることができ、これらのカチオン反応性化合物は単独でも二種以上組み合わせて使用しても良い。
【0015】
これらのカチオン反応性化合物のうちビニルエーテル化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物が好ましい。ビニルエーテル化合物には、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ネオペンチルグリコールモノビニルエーテル、グリセロールジビニルエーテル、グリセロールモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジオールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールモノビニルエーテル等を挙げることができる。
【0016】
エポキシ化合物には例えば、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等を挙げることができる。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、
クレゾールノボラック型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジクリシジルエーテル、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加体のジクリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジクリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジ及び/又はトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ及び/又はテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘプタ及び/又はヘキサグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン・フェノール付加型グリシジルエーテル、メチレンビス(2,7−ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、1,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0017】
脂環エポキシ化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、プロピレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)等が挙げられる。本組成物に配合するエポキシ化合物としては、2官能以上の脂環式エポキシ化合物が、反応性の面で優れていることから使用するのに好適である。市販品としては、CYACURE UVR6110、CYACURE UVR6105、CYACURE UVR6128(以上ダウ・ケミカル日本社製)、セロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2082、セロキサイド2083、エポリードGT300シリーズ、エポリードGT400シリーズ(以上ダイセル化学工業社製)、アデカオプトマーKRM−2110、アデカオプトマーKRM−2199(以上旭電化工業社製)などが挙げられる。
【0018】
本発明に用いられる(D)カチオン重合性化合物はエポキシ化合物とビニルエーテル化合物を併用するのが好ましく、さらに好ましくは1分子中に2個以上の脂環式エポキシを含有する化合物とビニルエーテル化合物を併用するのが好ましい。エポキシ化合物とビニルエーテル化合物を併用することで、硬化性に優れ、硬度に優れた硬化膜を得ることができる。
【0019】
オキセタン環を有する化合物は、分子中にオキセタン環を少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されるものではない。オキセタン環を1個有する化合物の具体例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシロキシ)メチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オ
キセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0020】
オキセタン環を2個以上有する化合物の具体例としては、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、ビス〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、1,2−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕エタン、1,3−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールFビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、オキセタニルシルセスキオキサン、オキセタニルシリケート、フェノールノボラックオキセタン等が挙げられる。
これらのオキセタン環を有する化合物は、1種単独あるいは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0021】
本発明組成物中の(E)水の含有量の制御は、使用する(A)反応性有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解物、(B)光カチオンおよび/または熱カチオン開始剤、(C)金属イオン性化合物、(D)カチオン重合性化合物、または(F)フェノール化合物等に共存させて、本発明組成物の所定の濃度にしたり、単独で水を配合すること等により達成される。好ましくは、(C)金属イオン性化合物に水を添加したり、単独で水を添加すること等により本発明組成物の所定の水含有量に制御することができる。これは、(A)反応性有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解物に水を添加したものを使用すると該反応性有機ケイ素化合物の加水分解反応の異常進行や、(B)光カチオンおよび/または熱カチオン開始剤への過剰水の添加は、金属基材を用いた場合、腐食の原因となり、少なすぎると硬化性の低下を招く。また(D)カチオン重合性化合物への水の添加は重合性化合物の連鎖移動反応の増大し、高分子量化反応の疎外等好ましくない。また(F)フェノール化合物への水添加は粘着性を帯びるなど取り扱いが困難となる。水濃度の制御は、使用する各原料に不純物として極微量の水が含有する可能性のある場合はその使用原料の水濃度の管理をした上で、または必要に応じて脱水した上、最終的に水を所定濃度とすることが望ましい。また、ブロッキング等を発生させない他の水溶解性の添加剤に配合して水濃度を調整することができる。
【0022】
本発明で使用する(F)フェノール化合物は、1分子中にフェノール性芳香環を1つ以上もつ化合物であれば、特に限定されるものではないが、1分子中に3個以上のフェノール性芳香環を有するフェノール化合物が好ましい。フェノール性芳香環とは、フェノール性水酸基を有する芳香環のことである。フェノール系化合物としては、非特許文献(「新エポキシ樹脂」、垣内弘編、昭晃堂発行、1985年)(「総説エポキシ樹脂」、エポキシ樹脂技術協会編、エポキシ樹脂技術協会発行、2003年)に記載のフェノール系化合物、または同文献に記載のエポキシ樹脂の原料フェノール化合物などを挙げることができる。また、1分子中に3個以上のフェノール性芳香環を有する化合物は、特定個数のフェノール性芳香環を有する化合物単独でも、異なった個数のフェノール性芳香環を有する化合物の混合物でもよい。特定個数のフェノール性芳香環を有する化合物を単独で用いる場合、フェノール性芳香環の個数が1〜2であると、得られるカチオン硬化性組成物の硬化物のガラスクリーナー耐性、耐水性が不十分となるので使用には適さない。次に、1分子中に3個以上のフェノール性芳香環を有する化合物が、異なった個数のフェノール性芳香環を有する化合物の混合物である場合、フェノール性芳香環が1〜2である化合物の含有量は、全フェノール性芳香環を有する化合物の30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。フェノール性芳香環が1〜2である化合物の含有量が30質量%を越えると、得られるカチオン硬化性組成物の硬化物の硬度が不十分となる。以上より本カチオン硬化性組成物に使用し得る、1分子中に3個以上のフェノール性芳香環を有する化合物は、例えば下記一般式(3)〜(11)で示される種々の多核フェノール化合物、
【0023】
【化1】

【0024】
【化2】

【0025】
【化3】

【0026】
(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基およびアルコキシ基を示し、異なるベンゼン環のRは互いに同一でも異なっていてもよく、また各々のベンゼン環におけるp個のRは互いに同一でも異なっていてもよい。pは0〜4の整数であり、異なるベンゼン環のpは互いに同一でも異なってもよく、qは1〜3の整数であり、異なるベンゼン環のqは互いに同一でも異なってもよい。P+q≦5である。但し、Rの炭素数が4または5の場合、Rはベンゼン環上の水酸基に対しオルト位に位置することはない)、
【0027】
【化4】

(式中、Rは炭素数が1〜3であること以外は、上記一般式(3)と同じ。pおよびqは上記一般式(3)と同じ)、
【0028】
【化5】

(式中、Bは下記一般式(8)、(9)及び(10)で表される基から選ばれた1つの基でありRおよびpは上記一般式(3)と同じ)、
【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
【化8】

【0032】
および
【化9】

(式中、R、p、qは全て、上記一般式(3)のR、p、qに同じでxは0以上の整数を表す。x=0である化合物(e)は上記一般式(11)全体の30質量%以下)。
さらに、下記一般式(12)、(13)で示される種々の多核フェノール化合物、
【0033】
【化10】

(式中Rは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アリール基またはアラルキル基を示し、式中の複数のRはすべて互いに異なっていても同一でもよく、mは0〜3の整数、nは1以上の整数であり、n=0で表される化合物(g)は上記一般式(12)全体の30質量%以下)、
【0034】
【化11】

(式中nは1以上の整数を表し、n=0で表される化合物(h)は上記一般式(13)全体の30質量%以下)、
【0035】
および、鎖状ポリブタジエンとフェノールとのFriedel−Crafts反応付加物である3個以上のフェノール性芳香環を有する多核フェノール化合物等を挙げることができる。
これらのうち、(A)反応性有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解物や(C)カチオン重合性化合物との相溶性および反応性に優れる、前記一般式(12)で示される多核フェノール化合物(g)が好ましい。市販されているものとしては、例えば新規分子量分布集約型ノボラック樹脂:PAPS(製品名:旭有機材工業社製)が、モノマーがほとんどなく、ダイマーが20質量%未満で、3〜5核体が主成分であることから、本発明の多核体フェノール(g)として好適に用いられる。
【0036】
多核フェノール化合物(g)の合成に用いられるR置換フェノールの具体的な例としては、フェノール、p−クレゾール、m−クレゾール、p−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−プロピルフェノール、m−プロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、m−イソプロピルフェノール、p−t−ブチルフェノール、m−t−ブチルフェノール、p−sec−ブチルフェノール、m−sec−ブチルフェノール、p−t−アミルフェノール、m−t−アミルフェノール、p−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−(α−メチルベンジル)フェノール、m−(α−メチルベンジル)フェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−クロロフェノール、m−クロロフェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等が挙げられる。
【0037】
本発明のカチオン硬化性組成物には、さらに必要に応じて(メタ)アクリレートモノマー類やオリゴマー類およびビニル(メタ)アクリレート等のラジカル重合性化合物およびラジカル開始剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、ワックス類、酸化防止剤、非反応性ポリマー、微粒子無機フィラー、シランカップリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤等を添加することもできる。
本発明のカチオン硬化性組成物に、他の重合開始剤を本発明の(B)光および/または熱カチオン開始剤と併用することもできる。他の重合開始剤の具体的な例としては、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン等が挙げられる。
【0038】
この他、硬化性や硬化時の膜物性に悪影響を及ぼさない程度にカチオン重合性を示す他の化合物を添加することができる。これらの化合物としては、例えば前記以外の低分子量のエポキシ化合物を希釈剤として用いることでき、また環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物等が挙げられる。また従来用いられる、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールやトリエチレングリコール等のポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールと言ったジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等を用いることもできる。
本発明でカチオン硬化性組成物に光を照射する手段としては、所定の作業時間内で硬化させることができるものであれば特に制限はなく、例えば超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、パルスドキセノンランプ、無電極放電ランプ等が挙げられる。
【0039】
次に、本発明において用いられるカチオン硬化性組成物中の各成分の組成割合について説明する。なお、以下に示される部は全て質量部を表す。
カチオン硬化性組成物において(C)金属イオン性化合物は(A)反応性有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解物100部に対して0.001〜0.4質量部であり、好ましくは0.003〜0.3質量部であり、さらに好ましくは0.005〜0.25質量部である。(C)金属イオン性化合物が0.001質量部より少ないと貯蔵安定性が悪化し、金属基板への腐食性も低減できない。また0.4質量部を超えると、塩基性化合物がカチオン重合開始剤より発生する酸を捕捉してしまい硬化性が悪化する。また塩基性化合物の影響で反応性有機ケイ素化合物の縮重合が進行するため貯蔵安定性が悪化する。さらに硬化膜の透明性も悪化する。
【0040】
カチオン硬化性組成物において(B)光および/または熱カチオン重合開始剤は(A)反応性有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解物100部に対して0.05〜20部であり、好ましくは1〜10部である。(C)光および/または熱カチオン重合開始剤の量が0.05部より少ないと十分な硬化性が得られず、20部を超えると、基板に対する腐食性、硬化膜の透明性が劣化する。
カチオン硬化性組成物において(D)カチオン重合性化合物は(A)反応性有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解物100部に対して10部〜500部であり、好ましくは20部〜300部であり、さらに好ましくは20部〜200部である。(D)カチオン重合性化合物の量が10部より少ないと、十分な硬化性が得られず、得られる硬化物の透明性も不十分である。また500部を超えると、インクジェットプリンタからのインク吐出性が悪くなる。
【0041】
また、(D)カチオン重合性化合物において、エポキシ化合物とビニルエーテル化合物を併用する場合の含有量は、(A)反応性有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解物100部に対して、エポキシ化合物とビニルエーテル化合物の合計が10部〜500部の範囲であれば、特に制限されるものではないが、エポキシ化合物がビニルエーテル化合物よりも多く含有している方が好ましい。
カチオン硬化性組成物の(E)水含有量は、0.05〜1質量%であり、好ましくは0.1〜0.5質量%であり、さらに好ましくは0.1〜0.2質量%に制御することが望ましい。含有する(E)水が0.05質量%より少ないと、硬化性を早める効果が得られ
ず、1質量%を超えると硬化性および金属基材への腐食性が悪化し、硬化膜の硬度も低下する。
【0042】
カチオン硬化性組成物において(F)フェノール化合物は(A)反応性有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解物100部に対して0.1〜50部であり、好ましくは1部〜40部であり、さらに好ましくは1部〜30部である。(F)フェノール化合物が0.1部より少ないと、硬化性を早まる効果が得られず、50部を超えると、貯蔵安定性やインクジェットプリンタからの吐出性が悪化し、硬化膜の透明性も悪化する。
本発明のカチオン硬化性組成物において、必要に応じて(メタ)アクリレートモノマー類やオリゴマー類およびビニル(メタ)アクリレート等のラジカル重合性化合物および光ラジカル開始剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、ワックス類、酸化防止剤、非反応性ポリマー、微粒子無機フィラー、シランカップリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤等を添加することもできる。これらの配合量は(A)反応性有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解物100部に対して0.01〜10部であり、好ましくは0.1部〜5部である。
【0043】
本発明の組成物に着色剤を添加することにより、インクジェットインクとすることができる。インクジェットの印字方式では、インクの吐出安定性の観点から低粘度インクであり、長期貯蔵安定性に優れることが必須要綱となっている。本発明のカチオン硬化性組成物は低粘度であり、貯蔵安定性も良好なこととあいまって、適当な着色剤と混合することによりエネルギー線硬化性のインクジェットインクとしても好適に用いることが可能である。
【0044】
本発明において用いられる着色剤としては、有機顔料および/または無機顔料の種々のものが使用可能である。具体的には、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、リトボンおよび酸化アンチモン等の白色顔料、アニリンブラック、鉄黒、およびカーボンブラック等の黒色顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、ハンザイエロー(100、50、30等)、チタンイエロー、ベンジンイエロー、およびパーマネントイエロー等の黄色顔料、クロームバーミロオン、パーマネントオレンジ、バルカンファーストオレンジ、およびインダンスレンブリリアントオレンジ等の橙色顔料、酸化鉄、パーマネントブラウン、およびパラブラウン等の褐色顔料、ベンガラ、カドミウムレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、チオインジゴレッド、PVカーミン、モノライトフェーストレッド、およびキナクリドン系赤色顔料等の赤色顔料、コバルト紫、マンガン紫、ファーストバイレット、メチルバイオレットレーキ、インダンスレンブリリアントバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料、群青、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスレンブルーおよびインジゴ等の青色顔料、クロムグリーン、酸化クロム、エメラルドグリーン、ナフトールグリーン、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、およびポリクロルブロム銅フタロシアニン等の緑色顔料、その他各種蛍光顔料、金属紛顔料、体質顔料等が挙げられる。本発明の組成物中におけるこれらの顔料の含有量は1〜50質量%であり、好ましくは5〜25質量%である。
【0045】
上記顔料には必要に応じて顔料分散剤を用いてもよく、本発明で用いることができる顔料分散剤としては例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等の活性剤、あるいはスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれる2種以上の単量体から成るブロック共重合体、
ランダム共重合体およびこれらの塩が挙げられる。
【0046】
顔料の分散方法としては、例えばボールミル、ビーズミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各種分散機を用いることが出来る。また、顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離機やフィルターを用いてもよい。
顔料インク中の顔料粒子の平均粒径は、インク中での安定性、画像濃度、光沢感、耐光性等を考慮して選択するが、光沢向上、質感向上の観点からも粒径は適宜選択することが好ましい。
【実施例】
【0047】
本発明を実施例に基づいて説明する。実施例および比較例中の「部」は質量部を意味する。
なお、感光性組成物の光硬化性および硬化膜の物性評価は、以下の方法で行った。
<装置・塗膜形成方法>
光照射装置:400W高圧水銀灯(セン特殊光源社製)
塗工:12μm塗工用バーコーター
【0048】
<試薬>
実施例および比較例に用いる試薬については、特に断わりが無い限り、以下の化合物を用いた。
液状試薬についてはモレキュラーシーブ3Aなどにより脱水処理を行い、含有水分が0.05質量%未満であることを確認した。また、カチオン重合性化合物について、エポキシ化合物はセロキサイド2021P(ダイセル化学工業社製)、ビニルエーテル化合物(日本カーバード工業社製)は蒸留精製したものを用いた。光カチオン重合開始剤にはスルフォニウム塩型であるCPI−100P(約50質量%のプロピレンカーボネートを含有
サンアプロ社製)を用いた。フェノール化合物にはPAPS法により合成されたp−tert−Btフェノールノボラック樹脂(旭有機材化学工業社製)を用いた。
【0049】
<光硬化性および硬化の物性評価>
・タックフリー露光膜量(TFED):露光後被膜を指触観察し、表面が硬化しベタツキがなくなるのに必要な最小露光量を求めた。
・硬度:ガラス基板にカチオン硬化性組成物を厚さ12μmで塗布し、次いで露光量160mJ/cmで硬化させた。その後、室温23℃、湿度50質量%の雰囲気の下、一昼夜静置し、鉛筆硬度測定を行った。
・腐食性:Al基板にカチオン硬化性組成物を暑さ12μmで塗布し、次いで露光量160mj/cmで硬化させた。その後、100℃のオーブンに1ヶ月静置した後、硬化膜を剥ぎ取り、Al基板の表面を目視にて観察した。変化がなかった場合○、白化やしみが見られた場合×と表した。
・ノズル目詰まり:2〜15plのマルチサイズドットを720dpi×720dpi(dpiとは2.54cm当たりのドット数)の解像度で吐出できるインクヘッドを備えたインクジェットプリンタで60時間塗布試験中、インクの吐出性を目視にて観察した。問題なかった場合○、ややインクの吐出性が悪くなる場合△、インクが出なくなった場合×と表した。
・保存安定性:カチオン硬化性組成物を50℃のオーブンに1ヶ月静置した後、概観を観察した。変化がなかった場合○、沈殿の生成、増粘がみられた場合×と表した。
・透明性:カチオン硬化性組成物をガラス基板に塗布し、TFEDまで露光した。硬化膜を目視にて観察し、無色透明であれば○、白化や黄変がみられた場合×と表した。
【0050】
[実施例1]
反応性有機ケイ素化合物にテトラエトキシシラン100部、金属イオン性化合物に水酸化カリウムを0.006部、カチオン重合性化合物にトリエチレングリコールジビニルエーテル100部、光カチオン重合開始剤にCPI−100P4部を十分混合することによりカチオン硬化性組成物を得た。これをガラス基板に厚さ12μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、紫外線を照射することで硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0051】
[実施例2]
実施例1記載の水酸化カリウムを0.2部用いる以外は、実施例1と同様にカチオン硬化性組成物を調製し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1記載の水酸化カリウムの代わりに、水酸化リチウム0.006部用いる以外は、実施例1と同様にカチオン硬化性組成物を調製し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
[実施例4]
実施例1記載のトリエチレングリコールジビニルエーテルの代わりに、トリメチロールプロパントリビニルエーテル100部を用いる以外は、実施例1と同様にカチオン硬化性組成物を調製し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例1記載のトリエチレングリコールジビニルエーテルの代わりに、ヒドロキシブチルビニルエーテル25部を用いる以外は、実施例1と同様にカチオン硬化性組成物を調製し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
[実施例6]
既存の方法でテトラエトキシシランの縮重合反応を行った。反応終了後、脱アルコールし、モレキュラーシーブ3Aにより脱水を行った。本反応で得られたテトラエトキシシランの縮合物(重量平均分子量:400)100部、金属イオン性化合物に水酸化カリウムを0.006部、カチオン重合性化合物にトリエチレングリコールジビニルエーテル100部、光カチオン重合開始剤にCPI−100P4部を十分混合することによりカチオン硬化性組成物を得た。これをガラス基板に厚さ12μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、紫外線を照射することで硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
[実施例7]
反応性有機ケイ素化合物にテトラエトキシシランを100部、金属イオン性化合物に水酸化カリウムを0.006部、カチオン重合性化合物にトリエチレングリコールジビニルエーテル100部、光カチオン重合開始剤にCPI−100P4部、フェノール化合物としてp−tert−Btフェノールノボラック樹脂10部を十分混合することによりカチオン硬化性組成物を得た。これをガラス基板に厚さ12μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、紫外線を照射することで硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
[実施例8]
反応性有機ケイ素化合物にテトラエトキシシランを100部、金属イオン性化合物に水酸化カリウムを0.006部、カチオン重合性化合物に2官能の脂環式エポキシであるセロキサイド2021P100部、光カチオン重合開始剤にCPI−100P4部を十分混合することによりカチオン硬化性組成物を得た。これをガラス基板に厚さ12μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、紫外線を照射することで硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
[実施例9]
反応性有機ケイ素化合物にテトラエトキシシランを100部、金属イオン性化合物に水酸化カリウムを0.008部、カチオン重合性化合物にトリエチレングリコールジビニルエーテル50部、2官能の脂環式エポキシであるセロキサイド2021Pを100部、光カチオン重合開始剤にCPI−100P10部を十分混合することによりカチオン硬化性組成物を得た。含有水分は0.05質量%未満であった。これをガラス基板に厚さ12μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、紫外線を照射することで硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
[実施例10]
実施例8記載のトリエチレングリコールジビニルエーテルの代わりに、ヒドロキシブチルビニルエーテルHBVEを35部用いる以外は、実施例8と同様にカチオン硬化性組成物を調製し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例11]
実施例8記載のカチオン硬化性組成物に、さらに水濃度が0.52質量%となるように水を添加し、十分混合することでカチオン硬化性組成物を調整し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
[実施例12]
反応性有機ケイ素化合物にテトラエトキシシランを100部、金属イオン性化合物に水酸化カリウムを0.006部、カチオン重合性化合物にヒドロキシブチルビニルエーテル40部、二官能の脂環式エポキシであるセロキサイド2021Pを100部、光カチオン重合開始剤にCPI−100P4部、フェノール化合物としてp−tert−Btフェノールノボラック樹脂10部を十分混合することによりカチオン硬化性組成物を得た。これをガラス基板に厚さ12μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、紫外線を照射することで硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例13]
実施例11記載の水酸化カリウムの代わりに、水酸化リチウム0.006部用いる以外は、実施例11と同様にカチオン硬化性組成物を調製し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例14]
実施例11記載のp−tert−Btフェノールノボラック樹脂の代わりにジシクロペンタジエンフェノール樹脂であるDPP−6125(新日本石油化学社製)10部用いる以外は、実施例11と同様にカチオン硬化性組成物を調製し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例15]
カチオン硬化性組成物の含有水分が、0.52質量%となるように水酸化カリウム0.006部に水を添加し水溶液として調合した他は実施例11記載と同じ方法で十分混合することによりカチオン硬化性組成物を調整し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
[実施例16]
既存の方法でテトラエトキシシランの縮重合反応を行った。反応終了後、脱アルコールし、モレキュラーシーブ3Aにより脱水を行った。本反応で得られたテトラエトキシシランの縮合物(重量平均分子量:400)100部、金属イオン性化合物に水酸化カリウムを0.006部、カチオン重合性化合物にヒドロキシブチルビニルエーテル40部、二官能の脂環式エポキシであるセロキサイド2021Pを100部、光カチオン重合開始剤に
CPI−100P4部、フェノール化合物としてp−tert−Btフェノールノボラック樹脂10部を十分混合することによりカチオン硬化性組成物を得た。これをガラス基板に厚さ12μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、紫外線を照射することで硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
[比較例1]
反応性有機ケイ素化合物にテトラエトキシシランを100部、金属イオン性化合物にN,N−ジメチルアニリンを0.006部、カチオン重合性化合物にトリエチレングリコールジビニルエーテル100部、光カチオン重合開始剤にCPI−100P4部を十分混合することによりカチオン硬化性組成物を得た。これをガラス基板に厚さ12μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、紫外線を照射することで硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
[比較例2]
比較例1記載のN,N−ジメチルアニリンの変わりに、トリエチルアミンを0.006部用いる以外は、比較例1と同様にしてカチオン硬化性組成物を調製し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例3]
比較例1記載のN,N−ジメチルアニリンの変わりに、2−メチルイミダゾールを0.006部用いる以外は、比較例1と同様にしてカチオン硬化性組成物を調製し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
[比較例4]
比較例1記載のN,N−ジメチルアニリンの変わりに、プロピルアミンを0.006部用いる以外は、比較例1と同様にしてカチオン硬化性組成物を調製し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例5]
実施例1記載の水酸化カリウム0.006部の代わりに、水酸化カリウム0.612部を用いる以外は、実施例1と同様にしてカチオン硬化性組成物を調整し、硬化膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
[比較例6]
実施例1記載のカチオン硬化性組成物において、金属イオン性化合物を混合せずに、カチオン硬化性組成物を調整し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例7]
金属イオン性化合物に水酸化カリウムを0.006部、カチオン重合性化合物にトリエチレングリコールジビニルエーテル100部、光カチオン重合開始剤にCPI−100P4部を十分混合することによりカチオン硬化性組成物を得た。これをガラス基板に厚さ12μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、紫外線を照射することで硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
[比較例8]
実施例6記載のカチオン硬化性組成物において、金属イオン性組成物を混合せずに、カチオン硬化性組成物を調整し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例9]
実施例7記載の水酸化カリウムの代わりに、トリエチルアミン0.006部を用いる以外は、実施例7と同様にしてカチオン硬化性組成物を調整し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
[比較例10]
実施例7記載のカチオン硬化性組成物において、反応性有機ケイ素化合物を混合しない以外は、実施例7と同様にしてカチオン硬化性組成物を調整し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例11]
実施例8記載のカチオン硬化性組成物において、水酸化カリウムを0.72部用いる以外は、実施例8と同様にしてカチオン硬化性組成物を調整し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
[比較例12]
実施例8記載のカチオン硬化性組成物において、金属イオン性化合物を混合しない以外は、実施例8と同様にしてカチオン硬化性組成物を調整し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例13]
実施例8記載のカチオン硬化性組成物において、反応性有機ケイ素化合物を混合しない以外は、実施例8と同様にしてカチオン硬化性組成物を調整し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
[比較例14]
実施例8記載のカチオン硬化性組成物において、水酸化カリウムの代わりにトリエチルアミン0.008部用いる以外は、実施例8と同様にしてカチオン硬化性組成物を調整し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例15]
実施例11記載の水酸化カリウム0.006部の代わりに、水酸化カリウム0.75部を用いる以外は、実施例11と同様にしてカチオン硬化性組成物を調整し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
[比較例16]
実施例11記載のカチオン硬化性組成物において、金属イオン性化合物を混合しない以外は、実施例11と同様にしてカチオン硬化性組成物を調整し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例17]
実施例11記載のカチオン硬化性組成物において、反応性有機ケイ素化合物を混合しない以外は、実施例11と同様にしてカチオン硬化性組成物を調整し、硬化塗膜の性能評価を行った。結果を表1に示す。
実施例に示すように、本発明のカチオン硬化性組成物は、貯蔵安定性、硬化性に優れ、硬化膜の硬度、透明性も良好で、金属基材の腐食も少ない材料であり、インクジェットプリンタのノズル詰まりもない優れた材料であることが分かる。
【0071】
【表1】

【0072】
以下、本発明のカチオン硬化性組成物をエネルギー線硬化型インクジェットインクとし
て用いた場合について説明する。
[実施例15]
実施例1、6、8、10、11、14において該組成物中に、顔料として酸化チタン顔料CR−50(石原産業社製)5部、顔料分散剤として32000脂肪族変性系分散剤ソルスパーズ32000(ゼネカ社製)1.5部、光増感剤としてアントラセン系であるANTHRACURE UVS−1331(商品名:川崎化成工業社製)1部をビーズミルを用いて、4時間かけて分散させ、得られた組成物をメンブランフィルターで加圧ろ過することでエネルギー線硬化型インクジェットインクを得た。得られたインク粘度は、E型粘度計(25℃)で測定した結果、10〜20mPasと比較的低粘度であった。このインクをピエゾヘッドを有するインクジェットプリンタにてガラス、アルミニウム、OPPフィルム、PETの各基材上に印字を行い、その後紫外線照射装置(メタルハライドランプ1灯:出力120W)によりインクの硬化を行い、その光硬化性および硬化膜物性の評価を行った。評価の結果、該組成物は顔料分散性に優れ、インクジェットプリンタからのインク吐出性、硬化性が良好であり、得られた画像の硬化膜は硬度に優れ、金属への腐食も低減できることが分かった。本結果より、本発明のカチオン硬化性組成物は、エネルギー線硬化型インクジェットインクに好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、基材への記録方法としてインクジェット方式を利用したインク、コーティング材に適用でき、さらに具体的にはエネルギー線硬化型インクジェットインクに好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で示される反応性有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解物100質量部に対して、
(RSiX4−n (1)
(式中、Rは炭素数が1〜20のアルキル基、Xは加水分解性基、nは0〜3の整数を表す。)
(B)光および/または熱カチオン重合開始剤 0.05〜20質量部
(C)下記一般式(2)で示される金属イオン性化合物 0.001〜0.4質量部
[M+][X−] (2)
(式中、Mはアルカリ金属元素、アルカリ土類金属、遷移金属を表し、Xはハロゲン基、水酸基、スルフォン酸基を表す)
からなることを特徴とするカチオン硬化性組成物。
【請求項2】
(D)カチオン重合性化合物を、(A)反応性有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解物100質量部に対して、10〜500質量部配合してなることを特徴とする、請求項1記載のカチオン硬化性組成物。
【請求項3】
(E)水を、0.05〜1質量%含有してなることを特徴とする、請求項1又は2記載のカチオン硬化性組成物。
【請求項4】
(F)フェノール化合物を、(A)反応性有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解物100質量部に対して、0.1〜50質量部を配合してなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のカチオン硬化性組成物。
【請求項5】
(C)金属イオン性化合物が水酸化アルカリ金属である、請求項1〜4のいずれかに記載のカチオン硬化性組成物。
【請求項6】
(D)カチオン重合性化合物がビニルエーテル化合物である、請求項2〜5のいずれかに記載のカチオン硬化性組成物。
【請求項7】
(D)カチオン重合性化合物がエポキシ化合物である、請求項2〜5のいずれかに記載のカチオン硬化性組成物。
【請求項8】
(D)カチオン重合性化合物として、水酸基含有のビニルエーテル化合物と脂環式エポキシ化合物を併用することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のカチオン硬化性組成物。
【請求項9】
(B)光および/または熱カチオン重合開始剤が光カチオン重合開始剤である、請求項1〜8のいずれかに記載のカチオン硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のカチオン硬化性組成物にエネルギー線照射及び/又は加熱して得られる硬化物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載のカチオン硬化性組成物を用いたエネルギー線及び/又は熱硬化性インクジェットインク。
【請求項12】
ピエゾヘッドを備えたインクジェットプリンタに用いられることを特徴とする、請求項1〜9、11のいずれかに記載のカチオン硬化性組成物を用いたエネルギー線及び/又は熱硬化性インクジェットインク。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のエネルギー線及び/又は熱硬化性インクをエネルギー線照射及び/又は加熱して得られる、基材に描かれた画像。

【公開番号】特開2007−2131(P2007−2131A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185158(P2005−185158)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】