説明

カップホルダ

【課題】 小径カップやショート缶を浅い位置にて取り出し容易に保持することができるとともに、大径カップを深い位置にて安定状態で保持することができるカップホルダを提供する。
【解決手段】 小径カップC2を受けるためのカップ受け位置と、そこから側方へ退避する退避位置との間を移動な第1カップ受け部材13A、13Bを設ける。第1カップ受け部材13A,13Bをカップ受け位置に保持するとともに、大径カップC1の底部との係合により保持状態から解除されて、第1カップ受け部材13A,13Bの退避移動を許容する保持レバー15a,15bを設ける。第1カップ受け部材13A,13Bの直下位置には、第1カップ受け部材13A,13Bの退避位置への移動にともなって下降してきた大径カップC1を受けるための第2カップ受け部材17を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両において、ドアトリムや肘掛部等に設けられるカップホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のカップホルダとしては、例えば図7に示すような構成のものが提案されている。すなわち、この従来構成においては、ドアトリムや肘掛部等の上面のパネル21に、カップ受け凹部22が一体に形成されている。このカップ受け凹部22は、通常、汎用サイズのカップC1に適合した直径及び深さを有するように形成され、従って、汎用サイズのカップC1の外、小径カップC2及びショート缶C3のいずれも保持することができるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、この従来のカップホルダにおいては、カップ受け凹部22の形状が大径の汎用サイズのカップC1に合わせて設定されているため、小径カップC2やショート缶C3等を保持する場合に、カップ受け凹部22が深すぎて、その小径カップC2やショート缶C3が取り出しにくく、しかもカップ受け凹部22の径が大きすぎて、車両走行中には、小径カップC2やショート缶C3がさかんに動き、不快な異音がたえまなく発せられたりするという問題があった。
【0004】
また、ショート缶C3等の取り出しにくさに対処するため、図8に示すように、カップ受け凹部22の深さを、小径カップC2やショート缶C3に適合するように浅く設定したカップホルダも考えられる。しかしながら、このような構成のカップホルダにおいては、当然のことながら、大径カップC1を受けた場合に、カップ受け凹部22が浅すぎて、その大径カップC1を安定状態に保持することができない。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、小径カップやショート缶を浅い位置にて取り出し容易に保持することができるとともに、むやみに動くのを抑制でき、しかも大径カップを深い位置にて安定状態で保持することができるカップホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、小径カップを受けるためのカップ受け位置と、そこから側方へ退避する退避位置との間を移動可能な第1カップ受け部材と、その第1カップ受け部材をカップ受け位置に保持するとともに、大径カップの底部との係合により保持状態から解除されて、第1カップ受け部材の前記退避位置への移動を許容する保持手段と、第1カップ受け部材の直下位置に配置され、大径カップを受ける第2カップ受け部材とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第2カップ受け部材は、常には上方の退避位置に配置され、第1カップ受け部材の退避位置への移動にともなって下降してきた大径カップの底部と係合して、下方のカップ受け位置に配置されることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記第1カップ受け部材は、その一端部において上下方向に回動可能に支持され、前記保持手段は、カップ受け位置の第1カップ受け部材を保持するとともに、大径カップとの係合により側方へ回動される保持レバーよりなることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に記載の発明においては、請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載の発明において、第1カップ受け部材は対向して一組設けられ、それらはカップ受け位置において互いに重合されることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5に記載の発明においては、請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項に記載の発明において、第1カップ受け部材と第2カップ受け部材とは同一の支軸に支持されたことを特徴とするものである。
(作用)
請求項1に記載の発明においては、通常は保持手段により、第1カップ受け部材がカップ受け位置に保持されている。よって、この第1カップ受け部材により、小径カップやショート缶を浅い位置にて取り出し容易に保持することができる。また、大径カップを受ける場合には、保持手段が大径カップの底部との係合により保持状態から解除されて、第1カップ受け部材がカップ受け位置から退避位置に移動される。そして、この第1カップ受け部材の退避位置への移動にともなって大径カップが下降され、第1カップ受け部材の直下位置の第2カップ受け部材にて受け止められる。よって、大径カップを深い位置にて安定状態で保持することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明においては、大径カップを受ける場合に、第1カップ受け部材の退避位置への移動にともなって下降してきた大径カップの底部との係合により、第2カップ受け部材が上方の退避位置から下方のカップ受け位置に移動される。よって、大径カップを受ける場合以外のときには、第2カップ受け部材が上方位置にある。従って、この状態では、第2カップ受け部材の下方に広い空間を確保でき、この空間を収容空間等として有効に利用できる。
【0012】
請求項3に記載の発明においては、保持手段の構成が簡単であるとともに、第1カップ受け部材をカップ受け位置に解除可能な状態で確実に保持することができる。
請求項4に記載の発明においては、重合状態の第1カップ受け部材によりカップを安定して受けることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明においては、第1カップ受け部材と第2カップ受け部材とが同一軸上に支持されるため、構成が簡単である。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、この発明によれば、小径カップやショート缶を浅い位置にて取り出し容易に保持することができるとともに、大径カップを深い位置にて安定状態で保持することができ、しかも異音の発生等を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下に、この発明の第1実施形態を、図1及び図3に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、車両における肘掛部等の上面のパネル11には、カップ受け用の開口12が形成されている。この開口12の直径は、大径カップC1に適合するように大径状に形成されている。開口12に対応するようにパネル11の下部には、対向して設けられた一組の第1カップ受け部材13A,13Bがそれぞれそれらの外端部において支軸14により上下方向へ回動可能に支持されている。各第1カップ受け部材13A,13Bは、支軸14の部分に設けられた図示しない巻きバネ等のバネにより、小径カップC2及びショート缶C3を受けるための図1に示す中央上方のカップ受け位置に回動付勢されている。この状態では、両第1カップ受け部材13A,13Bは重合されるが、それらの上面、すなわちカップを受ける面はほぼ同一平面上に位置するように形成される。両第1カップ受け部材13A,13Bには、段差部18が形成され、図1に示す重合状態において、この段差部18が小径カップC2等の底部を受けるようになっている。そして、図3に示すように、大径カップC1を受ける場合には、両第1カップ受け部材13A,13Bが前記バネの付勢力に抗して、カップ受け位置から両側下方の退避位置に回動されるようになっている。
【0016】
前記各第1カップ受け部材13A,13Bにそれぞれ対応するように、パネル11の下部には保持手段としての一対の保持レバー15a,15bがそれぞれ支軸16により回動可能に支持されている。各保持レバー15a,15bの外側下部には、各第1カップ受け部材13A,13Bの端部に係合可能な係合部15c,15dがそれぞれ形成されている。各保持レバー15a,15bは、支軸16の部分に設けられた図示しない巻きバネ等のバネにより、係合部15c,15dにおいて両第1カップ受け部材13A,13Bの端部にそれぞれ係合して、それらの第1カップ受け部材13A,13Bを図1に示すカップ受け位置に保持するための保持位置に回動付勢されている。そして、図3に示すように、大径カップC1を受ける場合には、これらの保持レバー15a,15bが大径カップC1の底部との係合により前記バネの付勢力に抗して、保持位置から両側方の解除位置に回動されて、第1カップ受け部材13A,13Bの退避位置への回動を許容するようになっている。
【0017】
前記第1カップ受け部材13A,13Bの直下に位置するように、パネル11の下部には一対の第2カップ受け部材17が一方の第1カップ受け部材13Aと同一の支軸14を中心に回動可能に支持され、これらの第2カップ受け部材17は一方の第1カップ受け部材13Aの両側に位置している。この第2カップ受け部材17は、支軸14の部分に設けられた図示しない巻きバネ等のバネの付勢力により、図1に示すように、常には上方の退避位置に回動配置されている。そして、図3に示すように、大径カップC1を受ける場合には、第1カップ受け部材13A,13Bの退避位置への回動にともなって下降してきた大径カップC1の底部との係合により、第2カップ受け部材17がバネの付勢力に抗して下方のカップ受け位置に回動配置されるようになっている。ストッパ19は、第2カップ受け部材17を下方のカップ受け位置で保持するために、前記パネル11に設けられたものである。
【0018】
次に、前記のように構成されたカップホルダの動作を説明する。
さて、図1に示すように、通常では両第1カップ受け部材13A,13Bが中央上方のカップ受け位置に回動配置されて、保持レバー15a,15bの係合部15c,15dとの係合により、そのカップ受け位置に保持されている。また、第2カップ受け部材17が上方の退避位置に回動配置されている。この状態で、パネル11の開口12から小径カップC2またはショート缶C3を挿入すると、その底部がカップ受け位置の第1カップ受け部材13A,13Bに当接して受け止められる。この状態では、保持レバー15a,15bには両第1カップ受け部材13A,13Bの重量やショート缶C3等の重量が作用しているが、これらの重量は、保持レバー15a,15bの係合部15c,15dによって受け止められ、両第1カップ受け部材13A,13Bはカップ受け位置に安定維持される。しかも、この状態で、小径カップC2等は両第1カップ受け部材13A,13Bの段差部18によって移動が規制され、不快な異音を発生することはほとんどない。よって、小径カップC2やショート缶C3を浅い位置に保持することができて、それらを保持状態から容易に取り出すことができる。
【0019】
これに対して、図1に鎖線で示すように、パネル11の開口12から大径カップC1を挿入した場合には、両保持レバー15a,15bの内周面に大径カップC1の底部が係合して、両保持レバー15a,15b下方に押される。すると、図3に示すように、両保持レバー15a,15bが中央側の保持位置から両側方の解除位置に回動されて、両第1カップ受け部材13A,13Bがカップ受け位置に対する保持状態から解除される。これにより、両第1カップ受け部材13A,13Bが中央上方のカップ受け位置から両側下方の退避位置に回動される。
【0020】
この第1カップ受け部材13A,13Bの退避位置への回動にともなって大径カップC1が下降されるとともに、その大径カップC1の底部との係合により、第2カップ受け部材17が下方のカップ受け位置に回動され、ストッパ19によりその位置に保持される。よって、このカップ受け位置の第2カップ受け部材17により、大径カップC1を深い位置にて安定状態で保持することができる。
【0021】
以上のように、この実施形態においては、以下の効果を発揮する。
・ 大小いずれのカップであっても、かつむやみに動いたり、異音を発生したりすることなく、安定して保持できるとともに、カップ受け状態から簡単に取り出すことができる。
【0022】
・ 第1カップ受け部材13Aと第2カップ受け部材17とは支軸14を共用しているため、構成が簡単である。
・ 第1カップ受け部材13A,13B及び第2カップ受け部材17が図1に示す位置に配置された状態においては、それらが上方位置に配置されているため、第2カップ受け部材17の下方に広い空間が形成され、その空間を収容部等として有効に利用できる。
【0023】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
さて、この第2実施形態においては、図4及び図5に示すように、パネル11の開口12に対応して、1つの第1カップ受け部材13及び1つの保持レバー15が回動可能に配設されている。また、第1カップ受け部材13の下方で、第1カップ受け部材13と干渉しない位置には、第2カップ受け部材17が固定状態で配設されている。
【0024】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態の場合と同様に作用して、図4に示すように、小径カップC2やショート缶C3を浅い位置にて取り出し容易に保持することができるとともに、図5に示すように、大径カップC1を深い位置にて安定状態で保持することができる。また、この第2実施形態においては、部品点数を少なくして、構成を簡単にすることができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0025】
・ 図6に示すように、保持レバー15a,15bの支軸16を係合部15c,15dによる第1カップ受け部材13A,13Bを受ける位置と同一鉛直線L上あるいはその外側に位置するように構成すること。このようにすれば、第1カップ受け部材13A,13Bをカップ受け位置においていっそう安定支持できる。
【0026】
・ 前記第1実施形態において、第2カップ受け部材17を固定状態で配設すること。
・ 前記第2実施形態において、第2カップ受け部材17を退避位置とカップ受け位置との間で回動可能に配設すること。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態のカップホルダを示す要部断面図。
【図2】図1のカップホルダの平断面図。
【図3】図1のカップホルダの動作状態を示す要部断面図。
【図4】第2実施形態のカップホルダを示す要部断面図。
【図5】図4のカップホルダの動作状態を示す要部断面図。
【図6】変形例を示す要部断面図。
【図7】従来のカップホルダを示す要部断面図。
【図8】従来のカップホルダの別の構成を示す要部断面図。
【符号の説明】
【0028】
11…パネル、12…開口、13…第1カップ受け部材、13A…第1カップ受け部材、13B…第1カップ受け部材、15…保持手段としての保持レバー、15a…保持手段としての保持レバー、15b…保持手段としての保持レバー、17…第2カップ受け部材、C1…大径カップ、C2…小径カップ、C3…ショート缶。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小径カップを受けるためのカップ受け位置と、そこから側方へ退避する退避位置との間を移動可能な第1カップ受け部材と、
その第1カップ受け部材をカップ受け位置に保持するとともに、大径カップの底部により保持状態から解除されて、第1カップ受け部材の前記退避位置への移動を許容する保持手段と、
第1カップ受け部材の直下位置に配置され、大径カップを受ける第2カップ受け部材と
を備えたことを特徴とするカップホルダ。
【請求項2】
前記第2カップ受け部材は、常には上方の退避位置に配置され、第1カップ受け部材の退避位置への移動にともなって下降してきた大径カップの底部と係合して、下方のカップ受け位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載のカップホルダ。
【請求項3】
前記第1カップ受け部材は、その一端部において上下方向に回動可能に支持され、
前記保持手段は、カップ受け位置の第1カップ受け部材を保持するとともに、大径カップとの係合により側方へ回動される保持レバーよりなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカップホルダ。
【請求項4】
第1カップ受け部材は対向して一組設けられ、それらはカップ受け位置において互いに重合されることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載のカップホルダ。
【請求項5】
第1カップ受け部材と第2カップ受け部材とは同一の支軸に支持されたことを特徴とする請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項に記載のカップホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−123824(P2006−123824A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317205(P2004−317205)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】