カテコールアミン受容体の調節
本発明は、カテコールアミン受容体、ならびに幹細胞の発達および機能におけるそれらの役割に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテコールアミンの受容体ならびに幹細胞の発達および機能におけるそれらの役割に関する。
【背景技術】
【0002】
骨髄移植(BMT)または造血幹細胞移植(HSCT)は、造血幹細胞(HSC)の移植を伴う、造血学および腫瘍学の分野における医学的処置である。BMTおよびHSCTは、血液または骨髄の病気またはある種のがんに苦しむ患者の治療においてもっともよく行われる。BMTまたはHSCT移植の目的は、不全なまたは病気の細胞系統と取って代わる成熟血液細胞に分化するであろう健康な幹細胞集団を患者に提供することである。
【0003】
造血幹細胞は骨髄の微環境内における稀少な細胞集団である。造血幹細胞は、生涯にわたって、TおよびBリンパ球といった免疫系の主な構成成分を含むすべての成熟血液細胞系統の連続的な産生を活発に維持しており、その間、未分化の幹細胞および前駆細胞の小さなプールを保持している(Mayani, 2003)。
【0004】
骨髄移植(BMT)の場合、HSCはドナーの大きな骨、一般的には骨盤から、骨の中央に届く長い針を介し摘出される。その技術は骨髄採取と呼ばれ、充分な量の原料を得るために文字通り何百回もの針の挿入が必要であるため、全身麻酔下で行われる。
【0005】
末梢血幹細胞(PBSC)は、現在、HSCTのための幹細胞の最も一般的な供給源である。PBSCは血液からアフェレーシスとして知られている工程を介して集められる。末梢幹細胞の収率は、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)の毎日の皮下注射によって高められる。
【0006】
幹細胞のもう一つの供給源は、臍帯血である。臍帯血は、成人の血液において通常見られるよりも高い濃度のHSCを有している。しかしながら、臍帯から得られ得る少量の血液(一般的には約50ml)は、この供給源を成人への移植にはあまり適さないものとしている。エクスビボでの臍帯血ユニットの拡大を用いたより新しい技術または異なるドナーからの2つの臍帯血ユニットの使用が、成人における臍帯血移植を可能にせしめるために検討されている。
【0007】
開発中の、または実験的および臨床的移植術において、幹細胞は、順番に循環系の中に放出される未熟および成熟骨髄性およびリンパ性血液細胞とともに自己を再増殖しながら、血液循環を通じて遊走し、骨髄(BM)にホーミングする。幹細胞の機能および免疫系の発達に極めて重要である造血幹細胞のホーミングおよび再増殖の過程はあまりよく解明されていない。
【0008】
造血幹細胞のホーミングおよび再増殖の過程を研究するために、いくつかのグループがヒト幹細胞の照射ベージュ、ヌード、Xid(X染色体に関連した免疫不全)、SCIDおよび非肥満性の糖尿病性SCID(NOD/SCID)マウスなどの免疫不全マウスへの生着(engraftment)(移植組織または細胞のホストの体内への組み込み)、ならびに羊の胎児への胎内移植を含むインビボモデルを確立してきており、結果として骨髄性およびリンパ性細胞の両方の多系統生着に成功している(McCune ら、1988、Nolta ら、1994、Lapidot ら、1992、Larochelle ら、1996、Civin ら、1996)。
【0009】
本発明者らは、経静脈的に移植されたSCIDまたはNOD/SCIDマウスの骨髄を高いレベルの骨髄性およびリンパ性両方の細胞とともに永続的に再増殖する能力に基づく初期ヒトSCID再増殖細胞(SRCs)のための機能的なインビボアッセイを開発してきた(Lapidotら、1992、Larochelleら、1996)。速度論的実験は、移植された細胞のほんの少量のフラクションのみが生着し、そしてこれらの細胞が多大な増殖および分化によってマウス骨髄を再増殖していることを示した。さらに、初期ヒト細胞はまた、第二のマウスレシピエントに生着するための能力を維持している(Cashman ら、1997)。CD34細胞表面抗原の発現に富んだ細胞集団およびCD38細胞表面抗原の発現に富んだ細胞集団の移植により、SRCの表現型がCD34+CD38-であることが明らかとなった(Larochelle ら、1996)。他の研究では未成熟のヒトCD34-細胞およびより分化したCD34+CD38+細胞が幾分か限定された生着の潜在能力を有していることが示唆されているので、その他の再増殖細胞も存在しているかもしれない(Zanjani ら、1998、Conneally ら、1997)。
【0010】
免疫不全の移植マウスにおけるヒト幹細胞のホーミングならびにそれらのその後の増殖および分化は、宿主の骨髄によって発現されているケモカイン、ストローマ細胞由来因子1(SDF−1)とドナーのホーミング細胞上で発現されているそのレセプターCXCR4との間の相互作用に依存していることが見出された。未成熟ヒトCD34+細胞を抗CXCR4中和抗体で前処理することによるSDF−1/CXCR4相互作用の干渉は、CD34+細胞のインビボでのホーミングおよび再増殖を遮断した。一方、未処理の細胞は数時間以内にレシピエントマウスのBM中にホーミングすることができた[Peled ら、1999(a)]。
【0011】
サイトカイン刺激による幹細胞の細胞表面上におけるCXCR4発現の増加は、ホーミングおよび生着の向上によって明らかにされるように、これらの細胞のSDF−1への応答を増強することが見出された。細胞表面にCXCR4を発現していない未成熟ヒトCD34+細胞は、内在CXCR4を含んでおり、移植後にインビボでオシレート(oscillate)し得る。この細胞表面CXCR4の上方調節の阻止は、低いレベルのヒトCD34+CXCR4-細胞生着を遮断する。これゆえ、再増殖能のあるヒト幹細胞の表現型はCD34+CD38-/低
CXCR4+細胞として定義される(Kollet ら、2002)。
【0012】
SDF−1(CXCL12とも呼ばれる)は骨髄性のストローマ細胞および内皮細胞を含む多くのタイプの細胞によって産生され、そして上述したように未成熟および成熟造血細胞に対する強力な化学誘引物質であり、定常状態における白血球輸送の恒常性を制御している。SDF−1は、幹細胞および前駆細胞のための生存因子としてはたらき、未成熟B細胞および巨核球の成長に関与している(McGrath ら、1999; Nagasawa ら、1996)。SDF−1は進化を通じて高度に保全されている。例えば、ヒトおよびマウスのSDF−1は交差反応性であり、そして1つのアミノ酸のみ異なっている。
【0013】
骨髄から循環系への幹細胞の放出および移動は臨床的移植に対して誘導される。G−CSFなどのサイトカインを用いた多重刺激が循環系からヒト幹細胞を補充(recruit)するために用いられる。G−CSF投与後、BM内でのSDF−1/CXCR4相互作用が移動過程に関与していることが判明した(Petit ら、2002)。
【0014】
好中球エラスターゼなどのタンパク質分解酵素は、G−CSF投与の間、骨髄中でSDF−1を分解することが判明した。同時に、骨髄内の造血細胞上のCXCR4の発現レベルは、それらの移動以前に増加していることが見出された。CXCR4またはSDF−1に対する中和抗体は、ヒトおよびマウスの幹細胞の移動を減少させ、細胞放出におけるSDF−1/CXCR4シグナル伝達を示している(Petit ら、2002)。
【0015】
したがって、幹細胞のホーミングおよび放出/移動は類似の機序を利用しており、かつ両方のプロセスにおいて、SDF−1/CXCR4相互作用が主要な役割を担っている。
【0016】
SDF−1はまた、白血病性細胞の遊走においても重要な役割を担っている。正常細胞および白血病性の細胞は遊走において類似の機序を共有しているが、SDF−1シグナル経路と同様にホーミングパターンにおいても異なることが、悪性のヒトPre−B ALL細胞(前駆B細胞型急性リンパ芽球性白血病)を正常な未成熟CD34+細胞と比較した場合に判明した(Spiegel ら、2004)。別の悪性疾患である急性骨髄性白血病(AML)においては、高レベルの細胞内CXCR4およびSDF−1が、表面上にCXCR4を発現していない細胞を含めたすべての白血病性細胞において見つかっている。CXCR4は、免疫不全マウスのBMへのこれらの細胞のホーミングに不可欠であり、これは、これらの細胞におけるCXCR4の動的調節を証明している(Tavor ら、2005)。
【0017】
血管内の内皮細胞の細胞表面におけるSDF−1の発現は、循環系からの骨髄への経内皮遊走の成功のために不可欠な段階である、せん断流下における細胞停止を誘導するために極めて重要であることが見出された。加えて、SDF−1は、遊走性のヒト幹細胞および前駆細胞上のCD44、LFA−1、VLA−4およびVLA−5などの主要な接着性分子を、ホーミングおよび経内皮遊走の多段階過程の一環として、活性化した(Peled ら、2000)。SDF−1は、細胞骨格を変化させ、かつ表面上のCD44発現を再配置させることによって、BMニッチの細胞外マトリックスへの幹細胞の接着および固定(anchorage)を媒介していると考えられている(Avigdor ら、2004)。
【0018】
SDF−1のCXCR4への結合によって誘発される、SDF−1刺激およびシグナル伝達経路後の細胞の運動性および遊走を誘導する機序は知られていない。MAPKでなく、PI3Kの活性化が、高濃縮未成熟CD34+細胞の運動性に必要であることが判明している。異型のPKCゼータアイソフォームは遊走の過程に不可欠であることが見出された。さらに、SDF−1によるPKCゼータの活性化はPI3K依存性であることが判明した(Petit ら、2005)。
【0019】
遊走および接着におけるその役割とは別に、SDF−1はまた、正常なヒトCD34+細胞および白血病性細胞を含む様々な細胞の増殖および生存に関与している(Lee ら、2002; Nishii ら、1999 および Tavor ら、2005)。
【0020】
カテコールアミンはアミノ酸であるタイロシンに由来する。カテコールアミンは2個の水酸基を有するベンゼン環、中間のエチル鎖および末端のアミノ基を有する(Lehninger, Principles of Biochemistry)。
【0021】
エピネフリン(アドレナリン)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)およびドーパミンなどのカテコールアミンは、カテコールまたは1,2−ジヒドロキシベンゼンの誘導体とみなされるかもしれず、そして、神経伝達物質として機能する(Lehninger, Principles of Biochemistry)。
【0022】
血液中の高レベルのエピネフリンは、心理学的な反応または環境的なストレッサーから誘発され得るストレスに関連している。エピネフリンは、心拍、血圧および血糖レベルの増加などの一般的な生理的な変化を引き起こす(Lehninger, Principles of Biochemistry)。
【0023】
トルカポン(主要なCOMT−阻害剤)などのいくつかの薬物は、全てのカテコールアミンのレベルを上昇させる(Wikipedia)。
【0024】
アドレナリン作用性受容体(またはアドレナリン受容体)は、カテコールアミンの標的であるG−タンパク質結合受容体の種類の1つである。アドレナリン作用性受容体は、それらの内因性のリガンド、カテコールアミン、アドレナリンおよびノルアドレナリンに特異的に結合し、これらによって活性化される(Wikipedia)。
【0025】
α−アドレナリン作用性受容体はノルエピネフリンおよびエピネフリンに結合するが、ノルエピネフリンがより高い親和性を有する。フェニレフリンはαレセプターの選択的なアゴニストである(Wikipedia)。
【0026】
ドーパミンは、様々な器官における3つの主要なカテコールアミンの神経伝達物質の1つである。ドーパミン受容体は、心臓血管、腎臓、ホルモン、中枢神経系および眼の機能の鍵となるレギュレーターとして広く確立されている。脳においては、ドーパミン作用性系統の不全はパーキンソン病および精神分裂病を引き起こす(Lim ら、2005、Foley ら、2004、およびGoldman ら、2004)。ドーパミン受容体のサブタイプはG−タンパク質結合受容体のファミリーに属し、そして7つの膜貫通領域の特徴的な構造を共有している。5つのドーパミン受容体のサブタイプは、配列およびシグナル伝達における類似性に関連して2つのファミリーに分類され得る。D1様のドーパミン受容体はドーパミンD1およびD5受容体を含む。それらはGsタンパク質によって媒介されるアデニル酸シクラーゼの活性化によって特徴付けられ、その結果として、より高濃度の二次メッセンジャー環化アデノシン−3,5−一リン酸(cAMP)を生じる。D1様のドーパミン受容体の遺伝子はイントロンを欠く。D2様の受容体グループは、Gi/0タンパク質にカップリングしてアデニル酸シクラーゼを阻害し得るドーパミンD2、D3およびD4受容体からなる。ドーパミンD2様受容体の遺伝子中には、イントロンが見られる(Sibley ら、1992)。
【0027】
7つの膜貫通領域を有する異なる受容体、ニューロキニン−1および2の造血における役割が近年報告されている。この研究は、p53が、NK2受容体のリガンドの1つである神経伝達物質ニューロキニン−Aの前駆細胞における抗増殖効果を部分的に調節することを開示している。この効果はサイトカインGM−CSFによって反転され得る(Vishalakumar ら、2005)。
【0028】
免疫系と神経系との間のクロストークがこれまでに示唆されており、そして神経−免疫相互作用は神経および免疫系の相互調節を可能にせしめる。研究報告はドーパミンが神経−免疫相互作用の重要な媒介物質の1つであることを示している(Basu ら、2000)。Ilaniら(2004年)は、脳が免疫活性化されたT細胞に作用および調節する経路を提案している。Leviteら(2001年)およびBesser(2005年)はドーパミンがその特異的な受容体を介してT細胞を直接的に活性化できることを示し、そして、中枢神経系でのおよび、おそらくは末梢系での、インテグリン媒介性のT細胞のトラフィッキングおよび流出におけるドーパミンの考えられ得る役割について示唆している。
【発明の概要】
【0029】
ある局面において、本発明は、幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、任意には、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせた、カテコールアミン受容体アゴニストの使用に関する。
【0030】
本発明のある実施態様では、医薬は、造血幹細胞移植(HSCT)および/または造血前駆細胞移植を改良または促進するためのものである。
【0031】
本発明のさらなる実施態様では、医薬は、成熟血液細胞系統の再増殖を改良または促進するためのものである。
【0032】
本発明のさらなる実施態様では、医薬は、幹細胞および/または前駆細胞へのエクスビボでの移植前の投与のためのものであり、その結果、幹細胞ならびに/または前駆細胞の遊走、生着能および/もしくは増殖を増大させる。
【0033】
本発明のさらなる実施態様では、移植に使用される幹細胞および/または前駆細胞は、G−CSF処置されたドナー由来である。
【0034】
本発明のさらなる実施態様では、医薬は、GM−CSFおよび/もしくはG−CSFのような骨髄性サイトカイン、またはカテコールアミン受容体をエンコードする発現ベクターなどの、幹細胞または前駆細胞中のカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物を含む。
【0035】
本発明の別の実施態様では、医薬は、健康なドナーまたはがん治療を受けている患者へのインビボでの投与のためのものであり、その結果、骨髄およびその他の組織部位からの血液への幹細胞または前駆細胞の移動を増大させ、そして移植のための血液からの幹細胞および/または前駆細胞の採取を容易にする。
【0036】
本発明は、骨髄およびその他の組織部位からの血液への幹細胞および/または前駆細胞の移動を改良または促進するため、ならびに健康なドナーまたはがん治療を受けている患者の血液からの幹細胞および/もしくは前駆細胞の採取を容易にするための医薬の製造における、任意には骨髄性サイトカインと組み合わせた、カテコールアミン受容体アゴニストの使用を提供する。
【0037】
加えて、本発明は、成熟血液細胞系統の再増殖のための造血幹細胞移植(HSCT)および/または造血前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、骨髄性サイトカインと組み合わせたカテコールアミン受容体アゴニストの使用を提供するものであって、該医薬は、幹細胞および/または前駆細胞へのエクスビボでの移植前の投与のためのものであり、その結果、幹細胞ならびに/または前駆細胞の生着能および/もしくは増殖を増大させる。
【0038】
また、本発明は、成熟血液細胞系統の再増殖のための造血幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、骨髄性サイトカインを除く、造血幹細胞または前駆細胞中のカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物の使用を提供する。
【0039】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物は、前記神経伝達物質であるカテコールアミン受容体をエンコードする発現ベクターまたは内因性のカテコールアミン受容体の発現レベルを誘導することのできるベクターである。
【0040】
ある局面では、本発明は、造血細胞の産生を増大させるための医薬の製造における、任意には、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストで刺激された造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団の使用を提供する。
【0041】
本発明のある実施態様では、刺激された細胞は、任意には、カテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストをインビボで投与された個体から採取される。
【0042】
本発明の別の実施態様では、細胞の刺激はエクスビボで行われる。
【0043】
本発明のさらなる実施態様では、細胞は、骨髄性サイトカインGM−CSFおよび/またはG−CSFなどの、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で刺激される。
【0044】
本発明のさらなる実施態様では、幹細胞または前駆細胞は、G−CSF処置されたドナー由来である。
【0045】
本発明はまた、造血幹細胞移植(HSCT)または前駆細胞移植治療のための医薬の製造における、任意には、骨髄性サイトカインと組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストを投与された個体の血液から採取された造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団の使用に関する。
【0046】
加えて、本発明は、成熟血液細胞系統の再増殖のための造血幹細胞移植(HSCT)もしくは造血前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、GM−CSFおよび/もしくはG−CSF、およびカテコールアミン受容体アゴニストでエクスビボにて刺激された造血幹細胞ならびに/または前駆細胞を含む細胞集団の使用に関する。
【0047】
また、本発明は、移植治療、組織再生および/または体細胞治療のための医薬の製造における、カテコールアミン受容体アゴニスト、および幹細胞および/もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物でエクスビボにて刺激された幹細胞ならびに/または前駆細胞を含む細胞集団の使用に関する。
【0048】
本発明のある実施様態では、幹細胞および/または前駆細胞は、組換え
DNAを内包する。
【0049】
本発明のさらなる実施態様では、幹細胞および/または前駆細胞は、CD34+幹細胞および/または前駆細胞である。
【0050】
本発明の別のさらなる実施態様では、医薬は、体細胞治療のためのものである。
【0051】
本発明の別のさらなる実施態様では、医薬は、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、脂肪肉腫、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、悪性胚細胞性腫瘍から選択されるがん;無巨核球性血小板減少症(AMT)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、先天性血球減少症、エヴァンズ症候群、ファンコーニ貧血、コストマン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミアから選択される血液障害;副腎脳白質ジストロフィ、不全リンパ球症候群、先天性角化不全症、家族性血球貧食性リンパ組織球症、ゴーシェ病、ギュンター病、ハンター症候群、ハーラー症候群、遺伝性神経セロイドリポフスチノーシス、クラッベ病、ランゲルハンス細胞組織球症、レッシュ−ナイハン症候群、白血球接着不全、大理石骨病などの遺伝性代謝障害;アデノシンデアミナーゼ欠損症(ADAまたはSCID−ADA)、重症複合型免疫不全(SCID)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)、高IgM免疫不全症候群(HIM)から選択される免疫疾患;アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(ルー・ゲーリグ病としても通常知られている)から選択される神経系疾患;筋ジストロフィ;多発性硬化症;関節炎;脊髄損傷;脳損傷;脳卒中;心臓病;肝臓および網膜の疾患;糖尿病;ならびに化学療法もしくは放射線治療の副作用から選択される疾患、障害または症状の治療のためのものである。
【0052】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、ドーパミンまたは、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムなどのドーパミン受容体アゴニストである。
【0053】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、例えば、エピネフリンまたはノルエピネフリンといった、ベータアドレナリン作用性のアゴニストなどのアドレナリン作用性のアゴニストである。
【0054】
別の局面では、本発明は、異常な特性を有している幹細胞および/もしくは前駆細胞集団の成長、発達、生着ならびに/または再増殖の能力を減少させるための医薬の製造における、カテコールアミン受容体のアンタゴニストの使用に関する。
【0055】
本発明のある実施態様では、医薬は、急性骨髄性白血病などの白血病の治療のためのものである。
【0056】
本発明のさらなる実施態様では、アンタゴニストは、例えば、クロザピン、フルペンチキソール、ピモジド、レモキシプリド、ルペンチキソール(lupenthixol)、ドンペリドン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ジプラシドン、ロキサピン、チオリダジン、メトクロプラミド、クロルプロチキセンおよびドロペリドールなどのドーパミン受容体アンタゴニストである。
【0057】
本発明のさらなる実施態様では、アンタゴニストは、アドレナリン作用性の受容体アンタゴニストである。
【0058】
別の局面では、本発明は、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物を用いてエクスビボで刺激された幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む移植治療に適した幹細胞ならびに/または前駆細胞を含む細胞集団を提供する。
【0059】
本発明のある実施様態では、細胞集団は、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で刺激された幹細胞および/または前駆細胞を含む。
【0060】
本発明のさらなる実施態様では、カテコールアミンは、ドーパミンであり、また、アゴニストは、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムといったドーパミン受容体アゴニストである。
【0061】
本発明の別のさらなる実施態様では、カテコールアミンは、ノルエピネフリン、エピネフリンであり、また、アゴニストは、ベータアドレナリン作用性の受容体アゴニストのようなアドレナリン作用性の受容体アゴニストである。
【0062】
別の局面では、本発明は、カテコールアミン受容体アゴニストならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物に関する。
【0063】
別のさらなる局面では、本発明は、ドーパミンまたはドーパミン受容体アゴニストならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物に関する。
【0064】
さらに別の局面では、本発明は、アドレナリン作用性の受容体アゴニストならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物に関する。
【0065】
さらに別の局面では、本発明は、ノルエピネフリンまたはエピネフリンならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物に関する。
【0066】
さらに別の局面では、本発明は、薬学的に許容され得る担体、ならびに、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節を誘導することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物で刺激された造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団を含む医薬組成物に関する。
【0067】
本発明のある実施態様では、造血幹細胞および/または前駆細胞は、G−CSF処置された個体由来である。
【0068】
本発明のある実施態様では、医薬組成物は、G−CSFおよび/もしくはGM−CSFのような骨髄性サイトカインといった、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節を誘導することのできる薬物で刺激された造血幹細胞ならびに/または前駆細胞を含む。
【0069】
本発明は、薬学的に許容され得る担体、ならびに、カテコールアミン受容体アゴニストおよびG−CSFもしくはGM−CSFで刺激された造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団を含む医薬組成物を提供する。
【0070】
本発明のある実施態様では、幹細胞は、インビボでG−CSFまたはGM−CSFで刺激される。
【0071】
本発明のある実施態様では、幹細胞は、インビトロでG−CSFまたはGM−CSFで刺激される。
【0072】
本発明のある実施態様では、幹細胞は、インビボでカテコールアミン受容体アゴニストで刺激される。
【0073】
本発明のある実施態様では、幹細胞は、インビトロでカテコールアミン受容体アゴニストで刺激される。
【0074】
本発明はまた、薬学的に許容され得る担体、ならびに、任意には、骨髄性サイトカインと組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストでインビボにて刺激された幹細胞および/または前駆細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0075】
加えて、本発明は、薬学的に許容され得る担体、ならびに、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストでエクスビボにて刺激された幹細胞および/または前駆細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0076】
本発明のある実施態様では、幹細胞および/または前駆細胞は、組換え
DNAを内包する。
【0077】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、例えば、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムなどのドーパミン受容体アゴニストである。
【0078】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、エピネフリンおよびノルエピネフリンのような、ベータアドレナリン作用性のアゴニストなどのアドレナリン作用性のアゴニストである。
【0079】
本発明はまた、幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植において使用するための、改良された、またはより優れた細胞組成物の製造方法であって、造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団を提供すること、ならびに、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物およびカテコールアミン受容体アゴニストで細胞集団を刺激することを含む方法に関する。
【0080】
また、本発明は、細胞集団中の造血幹細胞および/もしくは前駆細胞の遊走、生着、再増殖の能力ならびに/または増殖を増大させるための方法であって、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストで細胞集団を刺激することを含む方法に関する。
【0081】
本発明のある実施態様では、集団中の幹細胞および/または前駆細胞は、G−CSFもしくはGM−CSF処置されたドナー由来である。
【0082】
本発明のある実施様態では、方法は、骨髄性サイトカインG−CSFおよび/またはGM−CSFのような、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物で細胞を刺激することを含む。
【0083】
加えて、本発明は、幹細胞移植(SCT)ならびに/もしくは前駆細胞移植において使用するための、改良された、またはより優れた細胞組成物の製造方法であって、造血幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む細胞集団を、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物、およびG−CSFおよび/もしくはGM−CSFで刺激することを含む方法に関する。
【0084】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物ならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFでの刺激は、エクスビボにて行われる。
【0085】
本発明の別の実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物での刺激はエクスビボにて行われ、そして、G−CSFおよび/またはGM−CSFでの刺激はインビボにて行われる。
【0086】
本発明の別のさらなる実施態様では、幹細胞および/または前駆細胞は、組換え
DNAを含む幹細胞である。
【0087】
本発明は、造血幹細胞を含む細胞集団を提供すること、幹細胞におけるカテコールアミン神経伝達物質受容体の発現レベルを上方調節すること、および、カテコールアミン受容体アゴニストへ細胞を暴露することを含む、臨床的移植のための長期培養起始細胞の製造方法を提供する。
【0088】
本発明のある実施態様では、幹細胞は、G−CSFまたはGM−CSF処置されたドナー由来である。
【0089】
本発明のある実施態様では、細胞におけるカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節は、GM−CSFおよび/またはG−CSFなどの骨髄性サイトカインへ細胞を暴露することによって行われる。
【0090】
本発明はまた、幹細胞および/もしくは前駆細胞を提供すること、細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で細胞を刺激すること、および、表面において増大されたレベルの受容体を発現している細胞を選別することを含む、移植における使用のための、改良された、もしくはより優れた造血幹細胞ならびに/または前駆細胞組成物の製造方法を提供する。
【0091】
本発明のある実施態様では、細胞は、CD34+細胞である。
【0092】
本発明のさらなる実施態様では、細胞は、CD34+/CD38−/低
細胞である。
【0093】
本発明のさらなる実施態様では、カテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物は、GM−CSFまたはG−CSFである。
【0094】
本発明の別のさらなる実施態様では、カテコールアミン神経伝達物質受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物は、カテコールアミン神経伝達物質受容体をエンコードする発現ベクターまたは内因性の受容体の発現レベルを上方調節することのできるベクターである。
【0095】
本発明の別のさらなる実施態様では、選別された細胞は、未刺激の細胞における受容体のレベルと比較して、細胞表面において2〜4倍高いレベルのカテコールアミン神経伝達物質受容体を提示している。
【0096】
本発明は、造血幹細胞を含む細胞集団を提供すること、幹細胞におけるカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節を誘導するためにGM−CSFおよび/またはG−CSFで細胞集団を刺激すること、ならびに、カテコールアミン受容体アゴニストと細胞集団を接触させることを含む、臨床的移植のための長期培養起始細胞の製造方法を提供する。
【0097】
ある局面では、本発明は、GM−CSFおよび/またはG−CSFで、ならびに、カテコールアミン受容体アゴニストで刺激された造血幹細胞を含む、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ移植することを含む、骨髄の再増殖を促進するための方法を提供する。
【0098】
別の局面では、本発明は、カテコールアミン受容体アゴニストで、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で刺激された幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ投与することを含む、幹細胞移植(SCT)ならびに/または前駆細胞移植治療を改良または促進するための方法を提供する。
【0099】
本発明のある実施態様では、幹細胞または前駆細胞は、造血幹細胞および/または前駆細胞である。
【0100】
本発明の別の実施態様では、集団中の幹細胞および/または前駆細胞は、G−CSFまたはGM−CSF処置された被験個体由来である。
【0101】
本発明の別の実施態様では、前記方法は、例えば、GM−CSFおよび/もしくはG−CSFといった、骨髄性サイトカインのような、幹細胞または前駆細胞におけるカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で細胞を刺激することを含む。
【0102】
本発明の別の実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストでの刺激は、エクスビボで行われる。
【0103】
本発明の別の実施態様では、骨髄性サイトカインでの刺激は、インビボで行われる。
【0104】
本発明の別の実施態様では、集団中の幹細胞または前駆細胞は、組換え
DNAを含む細胞である。
【0105】
本発明の別の実施態様では、必要とする患者は、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、脂肪肉腫、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、悪性胚細胞性腫瘍から選択されるがん;無巨核球性血小板減少症(AMT)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、先天性血球減少症、エヴァンズ症候群、ファンコーニ貧血、コストマン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミアから選択される血液障害;副腎脳白質ジストロフィ、不全リンパ球症候群、先天性角化不全症、家族性血球貧食性リンパ組織球症、ゴーシェ病、ギュンター病、ハンター症候群、ハーラー症候群、遺伝性神経セロイドリポフスチノーシス、クラッベ病、ランゲルハンス細胞組織球症、レッシュ−ナイハン症候群、白血球接着不全、大理石骨病などの遺伝性代謝障害;アデノシンデアミナーゼ欠損症(ADAまたはSCID−ADA)、重症複合型免疫不全(SCID)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)、高IgM免疫不全症候群(HIM)から選択される免疫疾患;アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(ルー・ゲーリグ病としても通常知られている)から選択される神経系疾患;筋ジストロフィ;多発性硬化症;関節炎;脊髄損傷;脳損傷;脳卒中;心臓病;肝臓および網膜の疾患;糖尿病;ならびに化学療法もしくは放射線治療の副作用から選択される疾患、障害または症状を患っている。
【0106】
本発明は、GM−CSFもしくはG−CSFで、および、カテコールアミン受容体アゴニストで刺激された造血幹細胞ならびに/または造血前駆細胞を含む、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ投与することを含む、幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療の方法に関する。
【0107】
本発明のある実施態様では、GM−CSFまたはG−CSFでの刺激は、インビボで行われる。
【0108】
本発明は、治療的に有効量の、幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む細胞集団ならびにカテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物を、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物とともに、必要とする患者へ投与することを含む、幹細胞移植(SCT)ならびに/または前駆細胞移植治療を改良または促進する方法に関する。
【0109】
本発明のある実施態様では、前記方法は、造血幹細胞移植(HSCT)または前駆細胞移植治療を改良または促進するためのものである。
【0110】
本発明のある実施態様では、前記方法は、GM−CSFおよびG−CSFのような骨髄性サイトカインなどの、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物の投与を含む。
【0111】
本発明のある実施態様では、幹細胞および/または前駆細胞は、組換え
DNAを含む。
【0112】
本発明のある実施態様では、必要とする患者は、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、脂肪肉腫、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、悪性胚細胞性腫瘍から選択されるがん;無巨核球性血小板減少症(AMT)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、先天性血球減少症、エヴァンズ症候群、ファンコーニ貧血、コストマン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミアから選択される血液障害;副腎脳白質ジストロフィ、不全リンパ球症候群、先天性角化不全症、家族性血球貧食性リンパ組織球症、ゴーシェ病、ギュンター病、ハンター症候群、ハーラー症候群、遺伝性神経セロイドリポフスチノーシス、クラッベ病、ランゲルハンス細胞組織球症、レッシュ−ナイハン症候群、白血球接着不全、大理石骨病などの遺伝性代謝障害;アデノシンデアミナーゼ欠損症(ADAまたはSCID−ADA)、重症複合型免疫不全(SCID)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)、高IgM免疫不全症候群(HIM)から選択される免疫疾患;アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(ルー・ゲーリグ病としても通常知られている)から選択される神経系疾患;筋ジストロフィ;多発性硬化症;関節炎;脊髄損傷;脳損傷;脳卒中;心臓病;肝臓および網膜の疾患;糖尿病;ならびに化学療法もしくは放射線治療の副作用から選択される疾患、障害または症状を患っている。
【0113】
ある局面では、本発明は、治療的に有効量のカテコールアミン受容体アゴニストならびに造血幹細胞および/もしくは前駆細胞を、必要とする患者へ投与することを含む、造血幹細胞移植(HSCT)および/または造血前駆細胞移植、ならびに、少なくとも1つの血液細胞系統の再形成を、改良または促進するための方法に関する。
【0114】
別の局面では、本発明は、骨髄性サイトカインを除く、任意には、カテコールアミン受容体アゴニストと組み合わせた、治療的に有効量の幹細胞および/または前駆細胞ならびに幹細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物を、必要とする患者へ投与することを含む、幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療を改良または促進するための方法に関する。
【0115】
別のさらなる局面では、本発明は、請求項40〜43のいずれかに記載の、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ移植することを含む、組織置換、生着、再生および/または再増殖治療のための方法に関する。
【0116】
本発明のある実施態様では、組織は、造血の、骨の、軟骨の、心性のまたは神経の組織である。
【0117】
別のさらなる局面では、本発明は、治療的に有効量のカテコールアミン受容体アゴニストを、必要とする患者へ投与することを含む、骨髄の質量を増大させる方法に関する。
【0118】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、例えば、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムなどのドーパミン受容体アゴニストである。
【0119】
別のさらなる局面では、本発明は、治療的に有効量のカテコールアミン受容体アゴニストを被験個体へ投与することを含む、骨髄およびその他の組織部位から被験個体の血液への幹細胞または前駆細胞の移動を促進するための方法に関する。
【0120】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、例えば、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムなどのドーパミン受容体アゴニストである。
【0121】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、アドレナリン作用性のアゴニストである。
【0122】
本発明のある実施態様では、アドレナリン作用性のアゴニストは、エピネフリンまたはノルエピネフリンである。
【0123】
別の局面では、本発明は、異常な特性を掲示している、幹細胞および/もしくは前駆細胞の集団の生着、再増殖の能力ならびに/または増殖を、必要とする患者において減少させるための方法であって、細胞集団を治療的に有効量のカテコールアミン神経伝達物質のアンタゴニストに暴露することを含む方法に関する。
【0124】
本発明のある実施態様では、前記暴露は、エクスビボで行われる。
【0125】
本発明のある実施態様では、前記暴露は、インビボで行われる。
【0126】
別のさらなる局面では、本発明は、治療的に有効量のカテコールアミン神経伝達物質のアンタゴニストを、必要とする患者へ投与することを含む、白血病を治療するための方法に関する。
【0127】
本発明のある実施態様では、アンタゴニストは、クロザピン、フルペンチキソール、ピモジド、レモキシプリド、ルペンチキソール、ドンペリドン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ジプラシドン、ロキサピン、チオリダジン、メトクロプラミド、クロルプロチキセンおよびドロペリドールなどのドーパミン受容体アンタゴニストである。
【0128】
本発明のある実施態様では、アンタゴニストは、アドレナリン作用性の受容体アンタゴニストである。
【0129】
本発明は、G−CSFまたはGM−CSFを含む第1要素;少なくとも1つのカテコールアミン受容体アゴニストを含む第2要素;および少なくとも1つのカテコールアミン受容体アゴニストの投与の開始前の、G−CSFまたはGM−CSFの投与に関する説明書を含む第3要素を含むキットを提供する。
【0130】
本発明は、治療的に有効量の少なくとも1つのカテコールアミン受容体アゴニスト、および少なくとも1つの骨髄性サイトカインで造血幹細胞を刺激することを含む、初期造血幹細胞の増殖ならびに/または遊走を促進するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1A】顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)処置個体の骨髄サンプルからのCD34+細胞における増大されたドーパミン受容体を示す。G−CSF処置または未処置の個体の骨髄(BM)からのCD34+細胞を、ドーパミン3またはドーパミン5受容体について染色した。二次抗体(Abs)で染色された細胞は、対照としてのみ用いられた。少なくとも3回の独立した実験からの平均蛍光強度が示されている。
【図1B】顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)処置個体の骨髄サンプルからのCD34+細胞における増大されたドーパミン受容体を示す。G−CSF処置または未処置の個体の骨髄(BM)からのCD34+細胞を、ドーパミン3またはドーパミン5受容体について染色した。二次抗体(Abs)で染色された細胞は、対照としてのみ用いられた。フローサイトメトリー分析を示している。
【図1C】顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)処置個体の骨髄サンプルからのCD34+細胞における増大されたドーパミン受容体を示す。G−CSF処置または未処置の個体の骨髄(BM)からのCD34+細胞を、ドーパミン3またはドーパミン5受容体について染色した。二次抗体(Abs)で染色された細胞は、対照としてのみ用いられた。ヒト幹細胞を前もって生着させられた、NOD/SCIDキメラマウスが、未処置のまま(健常ヒトBM)、または、300μg/kg/日のG−CSFの皮下注射で5日間処置された(G−CSFで処置されたBM)。キメラなマウスのBMから回収されたヒト細胞は、間接的に、坑ヒトドーパミン受容体3または5抗体で、および、ヒト特異的坑CD34−APC CD38−PEモノクローナル抗体で、示されるように免疫ラベルされた。フローサイトメトリー分析からのデータは、未処置のマウスからのCD34+/CD38高BM細胞と比較したドーパミン受容体の平均蛍光強度の、対照に対する割合で表されている。
【図2】ドーパミン受容体の発現が、より成熟したCD34+/CD38高細胞に比べて、初期のCD34+/CD38-/低細胞において高いことを示している。動員されたヒト末梢血(MPB)CD34+細胞を、表面上のドーパミン受容体3および5(上部および下部のパネル)について染色し、またヒト特異的坑CD34−APC CD38−PEで染色した。ヒストグラムプロットは、CD34+/CD38高(R1)およびCD34+/CD38-/低(R2)細胞集団におけるドーパミン受容体発現のレベルを示している。
【図3】CD34+/CD38-/低細胞におけるドーパミン受容体発現のレベルが、インビトロでのGM−CSFでの処置によって増加することを示している。RPMI(対照)または顆粒球コロニー刺激因子(GM−CSF)を添加したRPMIでの3日間の培養に続けて、MPB由来の細胞、健常ヒトBMまたは臍帯血(CB)を、ヒト特異的坑CD34−APC、CD38−PEで染色し、またドーパミン受容体5(下部パネル)または3(上部パネル)について染色した。
【図4A】ドーパミンアゴニストが、クローン化可能前駆細胞の含量およびCD34+細胞の生着能力を増大することを示している。CB CD34+細胞(1×103細胞/mlの濃度で)が、エリスロポエチン(Epo)、幹細胞因子(SCF)およびインターロイキン−3(IL−3)のサイトカインを添加した、半固体培養液に播種された。GM−CSF、G−CSF、およびアゴニストSKFまたは7−OH−DPATが、示されるように添加された。14日後、形態学的基準にしたがって、コロニーが記録された。データは、対照の未処置細胞(GM CSFでは処置されているが、アゴニストでは処置されていない)と比較した、処置された細胞における半固体培養液中のコロニーの頻度を示している。
【図4B】ドーパミンアゴニストが、クローン化可能前駆細胞の含量およびCD34+細胞の生着能力を増大することを示している。放射線照射されたNOD/SCIDマウスは、1〜3×105MPBヒトCD34+細胞を注射された。示されている場合には、注射に先立って、CD34+細胞は、1μM SKF、100ng/ml 7−OH−DPAT、または、ドーパミンアンタゴニスト クロザピンと2〜4日間インキュベートされた。ヒトCD34+細胞の生着を測定するために、マウスは、移植後、5週間で犠牲にされ、そして、骨髄細胞が抽出され、そしてヒトCD45マーカーでラベルされた。
【図4C】ドーパミンアゴニストが、クローン化可能前駆細胞の含量およびCD34+細胞の生着能力を増大することを示している。放射線照射されたNOD/SCIDマウスに注射されたCB CD34+細胞の生着のレベルの結果を示している。示されている場合には、細胞は、注射に先立って、1μM 7−OH−DPATと(GM−CSFとともに、またはなしで)、2〜4日間インキュベートされた。*はp<0.05であることを示している。
【図4D】ドーパミンアゴニストが、クローン化可能前駆細胞の含量およびCD34+細胞の生着能力を増大することを示している。マウスにおけるヒト細胞の二次移植の生着を示している。二次移植のためのヒト細胞は、異種移植されたキメラマウスのBMから抽出される。キメラマウスは、ドーパミンアゴニストで処置されたCBヒト細胞または未処置のCBヒト細胞を用いた、マウスの一次移植により作出された。したがって、二次移植のためには、放射照射されたNOD/SCIDマウスが、ドーパミンアゴニスト7−OH−DPATで処置されたヒトCB CD34+細胞で、または、未処置のヒトCB CD34+細胞で作出された、キメラマウスのBMから抽出された、等しい量のヒトCD45+細胞を、注射された。二次移植の後の生着のレベルが、対照からの生着に対する%として表されている。
【図5】ドーパミンアゴニストがBM細胞質量を変化させることを示している。マウスは、ドーパミンアゴニスト7−OH−DPAT(3mg/kg)、アンタゴニスト フルペンチキソール(Flu、1.5mg/kg)の5回の毎日の腹腔内注射で、処置されるか、未処置で残された(対照)。動物は、犠牲死され、そして、対照または処置されたマウスのBMから細胞が洗い流された。結果は、4本の骨(それぞれのマウスの2本の大腿骨+2本の脛骨)における白血球数(WBC)の数を示している。何匹かのマウスの平均が示されている。
【図6A】ドーパミンアゴニストが、CB CD34+細胞の細胞極性を増大させること、そして、ドーパミンが化学走化性能を有することを示している。CB CD34+細胞は、ヒアルロン酸(HA)被覆カバースリップ上に、未処置(対照)で、またはSFKもしくは7−OH−DPATの存在下で、植え付けられた。カバースリップを洗浄した後、接着細胞が固定され、透過され、そして間接的に坑ヒトドーパミン受容体5でまたは重合したアクチンを検出するためにTritcファロイジンでラベルされた。3回の独立した実験からの伸長した、および高度に極性化した形態を有する細胞の数の定量を示している。*は対照に対して、p<0.05であることを示している。
【図6B】ドーパミンアゴニストが、CB CD34+細胞の細胞極性を増大させること、そして、ドーパミンが化学走化性能を有することを示している。CB CD34+細胞は、ヒアルロン酸(HA)被覆カバースリップ上に、未処置(対照)で、またはSFKもしくは7−OH−DPATの存在下で、植え付けられた。カバースリップを洗浄した後、接着細胞が固定され、透過され、そして間接的に坑ヒトドーパミン受容体5でまたは重合したアクチンを検出するためにTritcファロイジンでラベルされた。極性化された細胞におけるドーパミン受容体の大量の集積を示す(白色矢印)代表的な写真を示している。
【図6C】ドーパミンアゴニストが、CB CD34+細胞の細胞極性を増大させること、そして、ドーパミンが化学走化性能を有することを示している。CB CD34+細胞は、ヒアルロン酸(HA)被覆カバースリップ上に、未処置(対照)で、またはSFKもしくは7−OH−DPATの存在下で、植え付けられた。カバースリップを洗浄した後、接着細胞が固定され、透過され、そして間接的に坑ヒトドーパミン受容体5でまたは重合したアクチンを検出するためにTritcファロイジンでラベルされた。ヒト臍帯血CD34+細胞(GM−CSFで2日間、終夜で前処置された)の、下部のチャンバーに入れられた10nMドーパミンへの、トランスウェル遊走の結果を示している。
【図6D】ドーパミンアゴニストが、CB CD34+細胞の細胞極性を増大させること、そして、ドーパミンが化学走化性能を有することを示している。CB CD34+細胞は、ヒアルロン酸(HA)被覆カバースリップ上に、未処置(対照)で、またはSFKもしくは7−OH−DPATの存在下で、植え付けられた。カバースリップを洗浄した後、接着細胞が固定され、透過され、そして間接的に坑ヒトドーパミン受容体5でまたは重合したアクチンを検出するためにTritcファロイジンでラベルされた。G−CSFおよびドーパミン受容体アゴニストSKFもしくは7−OH−DPATで、またはG−CSFだけで(対照)処置されたマウスから得られた骨髄単核細胞の自発的な遊走。*は、p<0.05であることを示している。
【図7A】ヒトCD34+細胞が、β2アドレナリン作用性の受容体を発現していること、および、受容体が、ノルエピネフリンまたはエピネフリンでの刺激に応答して、造血幹細胞のコロニー形成、遊走および生着を増大させていることを示している。ヒト臍帯血CD34+細胞が、表面においてβ2アドレナリン作用性の受容体を発現していること、および、動員された末梢血(MPB)CD34+細胞が、より高いレベルのこれらの受容体を発現していることを示している。
【図7B】ヒトCD34+細胞が、β2アドレナリン作用性の受容体を発現していること、および、受容体が、ノルエピネフリンまたはエピネフリンでの刺激に応答して、造血幹細胞のコロニー形成、遊走および生着を増大させていることを示している。CD34+細胞の、1もしくは10nMのノルエピネフリン(左パネル)または10nMのエピネフリン(右パネル)での刺激の、臍帯血CD34+細胞における(対照の未処置の細胞に比べた)コロニー形成への効果を示している。
【図7C】ヒトCD34+細胞が、β2アドレナリン作用性の受容体を発現していること、および、受容体が、ノルエピネフリンまたはエピネフリンでの刺激に応答して、造血幹細胞のコロニー形成、遊走および生着を増大させていることを示している。ヒトCB CD34+細胞(1〜2日間、GM−CSFで終夜で前処置された)の、トランスウェルの下部のチャンバーに入れられた1もしくは10nMのノルエピネフリンに対する遊走(左パネル)、または、ヒトMPB CD34+細胞の、トランスウェルの下部のチャンバーに入れられた10nMのノルエピネフリンに対する遊走(右パネル)。
【図7D】ヒトCD34+細胞が、β2アドレナリン作用性の受容体を発現していること、および、受容体が、ノルエピネフリンまたはエピネフリンでの刺激に応答して、造血幹細胞のコロニー形成、遊走および生着を増大させていることを示している。臍帯血CD34+細胞を注射されたNOD/SCIDマウスの生着。細胞は、注射に先立って、ノルエピネフリンとともに、またはなしで、2日間、GM−CSFで処置された。数字は生着のレベルを示している。
【図7E】ヒトCD34+細胞が、β2アドレナリン作用性の受容体を発現していること、および、受容体が、ノルエピネフリンまたはエピネフリンでの刺激に応答して、造血幹細胞のコロニー形成、遊走および生着を増大させていることを示している。臍帯血CD34+細胞を注射されたNOD/SCIDマウスの生着。細胞は、注射に先立って、エピネフリンもしくはノルエピネフリンとともに、またはなしで、2日間、GM−CSFで処置された。
【発明を実施するための形態】
【0132】
本発明に基づいて、ドーパミン受容体などのカテコールアミン受容体ならびにエピネフリンおよびノルエピネフリンのβ2アドレナリン作用性の受容体の活性が、ヒト造血幹細胞/前駆細胞の発達、増殖、遊走および生着能力において中心的な役割を担っていることが見出された。したがって、本発明のある側面は、カテコールアミン受容体アゴニストもしくはアンタゴニスト、ならびに/または、幹細胞および/もしくは前駆細胞の増殖、発達、遊走および/もしくは生着能力を変えるためのカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節もしくは下方調節を誘導することのできる薬物の使用に関する。
【0133】
ドーパミン受容体は、心臓血管系、腎臓系、ホルモン系、中枢神経系および眼の機能、免疫細胞応答を含む多くの生物学的過程の重要なレギュレーターとして広く確立されているが、現在のところ、幹細胞または造血におけるそれらの役割は知られていない。Kielら(2005)による最近の文献は、ネズミの幹細胞が、他の多くの遺伝子とともにドーパミン受容体を発現していることをジーンアレイアプローチによって分析したことが開示されているのみである。しかしながら、この文献はこれらの細胞におけるドーパミン受容体の役割については何ら触れていない。
【0134】
本発明者らは、本明細書中で、ヒトCD34+幹細胞に富んだ細胞集団が、機能的ドーパミン3およびドーパミン5受容体を発現すること、ならびに、移植により適している(下記参照)より初期の細胞である、CD34+/CD38-/低
細胞の部分集団が、より分化の進んだ細胞である、CD34+/CD38高
細胞の部分集合に比べて、より高いレベルのこれらの受容体を発現していることを明らかにしている。さらに、本発明者らは、以下のことを明らかにしている:ドーパミン受容体アゴニストで刺激されたCD34+細胞が、増大されたコロニー形成ユニット(CFU−M)を寒天培養に産生する(分化増殖能力を獲得した造血前駆細胞の定量化のために一般的に用いられるインビトロアッセイ、下記参照)ので、ドーパミン受容体の活性が、幹細胞の増殖および発達において中心的な役割を担っていること、ドーパミン受容体アゴニストに暴露された幹細胞は、暴露されなかった細胞よりも、NOD/SCIDレシピエントマウスの骨髄(BM)により良く生着するので、ドーパミン受容体の活性が、幹細胞の生着に役割を担っていること;臍帯血(CB)のCD34+細胞のドーパミン受容体アゴニストへの暴露が、ヒアルロン酸への吸着の間に細胞の極性化および拡散を誘導したので、ドーパミン受容体の活性が、幹細胞の運動性において役割を担っていること;ならびに、インビボでのドーパミン受容体アゴニストの投与が、BM細胞性の増大を引き起こす一方、ドーパミン受容体アンタゴニストの投与が骨髄細胞性の減少を引き起こし、したがって、クローン化の能力の減少を引き起こすので、ドーパミン受容体活性は、定常状態下でBM中の細胞の数の恒常性に役割を担っている。
【0135】
本発明に基づいて、ドーパミン受容体アゴニストと組み合わせた、GM−CSFおよびG−CSFなどの、ドーパミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物で、造血幹細胞を刺激することが、クローン化可能前駆細胞の含量ならびに造血幹細胞の生着を増大させることが明らかとなった。したがって、ドーパミン受容体活性の幹細胞に及ぼす効果は、細胞においてドーパミン受容体の発現を上方調節することを必要とするかもしれず、そして、したがって、細胞においてドーパミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物と組み合わせた、ドーパミン受容体アゴニストでの細胞の刺激を必要とするかもしれない。
【0136】
ヒト造血幹細胞および前駆細胞上でのドーパミン受容体の機能は今までに全く報告されていないので、本発明者らの発見は、新規のかつ特徴付けられていない現象を明らかにするものである。本発明者らは、本明細書中で、ヒト造血幹細胞および前駆細胞が、ドーパミン受容体を発現し、そしてドーパミン受容体アゴニスト/アンタゴニストによって誘導される刺激に応答すること、そして、従来、神経系において発現されることが詳しく調べられ、そして知られてきた、これらの受容体が、遊走、自己更新、生着および発達を含むが、これらに限定はされない、幹細胞の機能に不可欠であることを示した。
【0137】
本発明者らは、本発明によって、β2アドレナリン作用性の受容体などのもう1つのカテコールアミン神経伝達物質の受容体の活性が、造血幹細胞の活性、機能および拡張(expansion)を調節できることを明らかにした。例えば、本発明者らは以下のことを明らかにした:CD34+細胞はβ2アドレナリン作用性の受容体を発現し、そして動員された末梢血CD34+細胞はより高いレベルの受容体を発現すること;エピネフリンおよびノルエピネフリンは、臍帯血CD34+細胞によってコロニー形成を増大させること;ノルエピネフリンは、臍帯血の動員された末梢血CD34+細胞の遊走を媒介する化学誘引物質としての可能性を有していること;ならびにノルエピネフリンは、造血幹細胞の生着を増大させること。
【0138】
要するに、本発明者らの発見は、造血幹細胞/前駆細胞などのヒト幹細胞/前駆細胞の調節、機能および拡張における、ドーパミン受容体およびβ2アドレナリン作用性の受容体などの、カテコールアミン神経伝達物質の受容体の新規な役割を明示している。特に、インビトロおよびインビボでの本発明者らの発見は、カテコールアミン神経伝達物質が、移植治療において重要である、造血前駆細胞の増殖および遊走を直接的に調節していることを明らかにしている。
【0139】
したがって、ある局面では、本発明は、幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療を改良または促進するための、カテコールアミン受容体アゴニストの使用に関する。任意には、カテコールアミン受容体アゴニストは、幹細胞および/または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物とともに使用されてもよい。したがって、幹細胞および/または前駆細胞移植を促進するための、カテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物ならびにカテコールアミン受容体アゴニストを含む組み合わせ治療の使用がまた、本出願において考慮される。
【0140】
本明細書で使用される、用語「受容体アゴニスト」は、例えば、リガンドの受容体への結合を補助することによって、および/または受容体と相互作用することによって、受容体の活性を増大させる分子として定義される。
【0141】
アゴニスト薬は、受容体を活性化して所望の応答を引き起こす。いくつかのアゴニストは、活性化された受容体の割合を増大させる。
【0142】
アゴニスト分子の構造類似体は、しばしば、アゴニスト特性を有する。
【0143】
ある組織中で部分的なアゴニストとして作用する薬物は、別の組織中で完全なアゴニストとして作用するかもしれない。
【0144】
ドーパミン受容体アゴニストの例は、ドーパミンならびにドーパミン類似体;例えば、SKF81297およびフェノルドパムなどを含むが、これらに限定されるものではない。ドーパミン受容体アゴニストのその他の例は、プラミペキソール、ロピニロール、7−OH−DPAT、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、リスリドおよびフェノルドパムを含むが、これらに限定されるものではない(Wishart DS ら、2006)。
【0145】
本発明にしたがって使用することのできるアルファアドレナリン作用性の受容体アゴニストの例は、非限定的に、レボノルデフリン、エピネフリンおよびノルエピネフリンを含む。本発明にしたがって使用することのできるベータアドレナリン作用性の受容体アゴニストの例は、非限定的に、イソプロテレノール、メタプロテレノール、テルブタリンを含む。
【0146】
カテコールアミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物の例は、GM−CSF、G−CSFおよびIL−3などの骨髄性サイトカイン;エストロゲン(Lee ら、1999);ならびに該カテコールアミン受容体をエンコードする発現ベクター;ならびに内因性のカテコールアミン受容体の発現を誘導することのできる内因性遺伝子活性化ベクター(EGA)を含むが、これらに限定はされない。
【0147】
本発明らは、本発明にしたがって、改良された幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植が、少なくとも1つのカテコールアミン受容体アゴニストで、および/もしくは少なくとも1つのカテコールアミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物で刺激された幹細胞もしくは前駆細胞からなる、改良されたもしくはより優れた幹細胞または前駆細胞の集団を、移植のために使用することによって実現されることを明らかにしている。改良された幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植はまた、幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団、およびカテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物を、任意にはカテコールアミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物と組み合わせて、移植のために使用することによって実現されるかもしれない。
【0148】
本発明のいくつかの移植の手順においては、幹細胞および/または前駆細胞は、カテコールアミン受容体アゴニストで、および/またはカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物で、移植前に、エクスビボで刺激されてもよい。
【0149】
本発明の移植された幹細胞および/または前駆細胞は、例えば、骨髄(化学療法または放射線治療の副作用のため)などの細胞が死滅した損傷の領域へ遊走し、そして、損傷した組織の細胞へと分化するであろう。
【0150】
本発明における使用のための幹細胞は、幹細胞治療において、今日使用されているいかなる起源の幹細胞でもよく、また、将来使用されるであろう幹細胞であり、そして、非限定的には、成体幹細胞、胚性幹細胞、臍帯血幹細胞、造血幹細胞、末梢血幹細胞、間葉幹細胞、多能性幹細胞、神経幹細胞、間質細胞、前駆細胞ならびに他の全てのタイプの幹細胞およびそれらの前駆細胞を含む。
【0151】
幹細胞移植治療は、臓器移植の過程と類似しているが、治療は、機能不全な細胞を健康な細胞と置き換えるための、全体の臓器ではなく幹細胞の身体への移植のみからなり、したがって、拒絶反応を排除もしくは軽減し、または高価かつ危険性のある免疫抑制剤治療の必要性を排除もしくは軽減する。幹細胞移植治療は、幅広い領域のヒトの疾患、障害または症状のための治療法を見出すために適用されるものである。幹細胞は、多くの報告によって示されているように、様々な組織を再生する可能性を有している。ヒト胚性幹細胞は、いくつかの臨床上の場面に使用されるかもしれない。成体幹細胞は、胚性幹細胞により提示される倫理的な問題および安全に関する事柄を回避し得る。幹細胞移植治療は、(http://ora.ra.cwru.edu/stemcellcenter/research/research.htm に記載されているように)多くの病的症状において組織の再生を可能にする。例えば、幹細胞移植治療は、筋骨格の、心臓血管の、造血の、および神経の障害/損傷を治療するために使用され得る。間葉幹細胞(MSC)移植が、骨組織および軟骨の再生のため、造血幹細胞(HSC)が、心筋の再生のためまたは造血の再生のため、神経幹細胞(NSC)が、神経のまたは神経膠の代償療法のために使用されてもよい。
【0152】
幹細胞は、多能性でありかつ自己更新するための、増殖するためのおよび多種多様な表現型系統へ分化するための能力を有している。胚性幹細胞は、3つの原始細胞層:中胚葉、内胚葉および外胚葉の全てから生まれる細胞を作り出すことができる。胚性幹細胞は、子宮壁に着床する前の段階における胚盤胞の内部細胞塊から取り出される。
【0153】
成体幹細胞は、分化した組織中に見出される未分化の細胞である。成体幹細胞は、自己を更新することができ、そして、それらが起源としている組織の全ての分化した細胞タイプを生じるために分化される。成体幹細胞は、長期間の自己更新をすることができ、すなわち、長い期間にわたって自己の同一なコピーを作製することができ、そして、特徴的な形態および分化した機能を有する成熟細胞タイプを作り出すことができる。成体幹細胞は多くはないので、成体幹細胞が移植のための充分な量の組織の原料として使用されることができるように、インビトロで増殖するためのそれらの能力を増加させるようにこれらの細胞を操作することが好ましい。本発明者らは、本明細書中で、単離された成体ヒト造血幹細胞および前駆細胞のドーパミン受容体アゴニストでの治療が、コロニー形成を促進すること、ならびに、したがって、ドーパミン受容体アゴニストが、成体ヒト造血幹細胞および前駆細胞の増殖または拡張するための能力を増大させるために使用されてもよいことを明らかにしている。
【0154】
本発明における使用のための成体幹細胞は、骨髄、末梢血、歯隋、脊髄、血管、骨格筋、皮膚および消化器系の上皮、角膜、網膜、肝臓ならびに膵臓から単離されてもよい。成体幹細胞は、クローン化可能である。用語「クローン化可能」とは、一連の遺伝的に同一な細胞を生成する能力を有しており、そしてその後、適切に分化した細胞タイプを作り出すことを意味している。成体幹細胞の、一連の遺伝的に同一な細胞を生成し、そしてその後、適切に分化した細胞タイプを作り出す能力は、下記の実施例に示されるように、例えば、CFU−Mアッセイを用いることによりインビトロで、また、例えば、候補の幹細胞が、骨髄などの特別な組織を再増殖することができることを示すことによってインビボで、明示され得る。
【0155】
骨髄は、造血幹細胞および間質(または間葉)細胞の2つの幹細胞集団、骨組織、軟骨、脂肪、繊維性結合組織および血液細胞形成を支える網様ネットワークを生成する混合された細胞集団を含む。もし望むのであれば、造血幹細胞(HSCs)および骨髄性間質細胞は、特異的表面マーカー団を用いて分離および単離されてもよい。両方の幹細胞の集団を分離および単離するための別の方法は、細胞の接着特性に基づいた分画である。例えば、間質細胞は成長物質に接着するが、一方、造血細胞は接着しない。
【0156】
造血幹細胞は、未分化の幹細胞および前駆細胞の小さなプールを保持した上で、全ての成熟血液細胞系統の継続的な産生を維持し得る幹細胞として定義される(Mayani, 2003)。3つの主な血液細胞の系統は、リンパ系統、即ちB細胞およびT細胞、骨髄系統、即ち単球、顆粒球および巨核球、ならびに赤血球系統、即ち赤血球細胞を含む。ある種の造血幹細胞は、脳細胞を含む他の細胞タイプへ分化することができ、したがって、多くの異なる組織を再生するために使用され得る(下記の柔軟性を参照)。
【0157】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、造血幹細胞移植(HSCT)および/もしくは前駆細胞移植治療を改良または促進するために使用される。造血幹細胞の原料は、骨髄、胎児の肝臓、末梢血および臍帯血である。
【0158】
本発明の移植手順のために用いられる幹細胞は、自己由来、同系または同種異系であってもよい。自己由来の幹細胞またはHLA一致同胞またはHLA不一致ドナーからの幹細胞が、移植のために使用され得る。
【0159】
本発明のある実施態様では、臍帯血、骨髄またはMPB細胞由来のヒトCD34+(約1×103細胞/mlから1×1〜3×105細胞/ml)が、エクスビボにて、カテコールアミン受容体アゴニストで、およびドーパミン受容体を上方調節することのできる薬物で、2、3または4日間刺激され、そしてその後、移植される。
【0160】
本発明のさらなる実施態様では、薬物は、GM−CSF(例えば、約5ng/mlで)および/またはG−CSF(例えば、約100ng/mlで)である。本発明の別のさらなる実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、ドーパミン(例えば、約10nMで)、および/またはSKF(例えば、約1μ
Mで)、および/または7−OH−DAPT(例えば、約100nMまたは1μ
Mで)、および/またはノルエピネフリン(例えば、約1〜10μ
Mおよび1〜10nMで)、および/またはエピネフリン(例えば、約1μ
mおよび10nMで)である。カテコールアミン受容体アゴニストの濃度は、0.1nMから10μM、または1nMから1μM、または1〜10μM、100nMから1μMまたは1から10nMの範囲であってもよい。GM−CSFまたはG−CSFの濃度は、1ng/mlから500ng/mlの範囲であり得る。
【0161】
長期造血幹細胞(HSC)または長期複製HSCsは、自己更新することのできる細胞である。造血幹細胞が長期複製HSCsであるかどうかは、例えば、ヒト造血幹細胞をマウスに移植し、それらをマウスの骨髄に生着させてキメラな移植マウスを作出することによって、調べられ得る。その結果、次には別の、致死量の放射線を照射されたマウスへ移植され(2次移植)、そして、その造血系を数ヵ月にわたって修復し得る、キメラな移植マウスの骨髄からのヒト細胞が、長期造血幹細胞(HSC)または長期複製HSCsとして定義され得る。全ての異なるタイプの血液細胞を直ちに再生することができるが、通常の条件下では長期にわたる自己更新はできない骨髄細胞は、短期前駆(progenitor)細胞または前駆(precursor)細胞と呼ばれる。
【0162】
下記の事項は、前駆(progenitor)細胞または前駆(precursor)細胞の特性のいくつかである:それらは、同じ組織タイプの完全に分化した細胞への前駆体である、比較的未成熟な細胞である;それらは、増殖することができるが、1以上の細胞タイプへ分化するためには限られた能力しか有さない。以下の前駆細胞系統は、造血幹細胞由来である:(1)赤芽球バースト形成細胞(BFU−E);(2)顆粒球−マクロファージコロニー形成細胞(CFU−GM);ならびに(3)巨核球系幹細胞(CFU−Mk)、また、CFU−E、CFU−G、CFU−MおよびCFU−GEMM。
【0163】
胎児もしくは成人の組織中の前駆(progenitor)細胞または前駆(precursor)細胞は、分割し分化細胞を作り出す、部分的に分化されている細胞である。前駆(progenitor)細胞または前駆(precursor)細胞は、通常、特別な細胞発達過程にしたがって分化するように「分化増殖能力を獲得した」とみなされる。概して、前駆(progenitor)細胞または前駆(precursor)細胞は、それらの完全な分化状態を達成する前の幹細胞の中間の細胞タイプである。
【0164】
成体組織における幹細胞は、それらが通常属している組織とは別のタイプの、特化した細胞タイプを生成し得る。したがって、本発明の幹細胞移植の方法においては、ある組織由来の幹細胞を、別の組織の分化した細胞タイプを生成するために使用してもよい。「変則的な分化」または「分化転換」とも呼ばれる、用語「柔軟性(plasticity)」とは、ある成体組織由来の幹細胞が、別の組織の分化した細胞タイプを生成し得ることを意味している。柔軟性の結果として分化した細胞タイプは、通常、分化した細胞の形態的特徴を有しており、そしてそれらの特徴的な表面マーカーを掲示していると報告されている。例えば、血液幹細胞(中胚葉由来)は、骨格筋(同様に、中胚葉由来)およびニューロン(外胚葉由来)の両方を生成することができるかもしれず、そして、骨髄幹細胞(中胚葉由来)は、骨格筋、心筋または肝臓などの別の中胚葉由来の組織へと分化するかもしれないことが報告されている。したがって、本発明によれば、任意には、細胞におけるドーパミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物と組み合わせて、ドーパミン受容体アゴニストで刺激された造血幹細胞は、骨格筋、ニューロン、心筋および肝臓を生成するために使用してもよい。
【0165】
カテコールアミン受容体は、損傷した脳などの、非造血性の損傷した組織を修復するための機能を有し得る。ドーパミン作用性の活性は、外傷性脳損傷の直後に上方調節されること(Walter ら、2004)、BMを離れて、虚血性の脳など(Stumm ら、2002)の損傷部位に遊走するための幹細胞の能力は、活性な遊走性の機序を必要とすることが見出されており、そしてNan ら(2005)は、最近、ヒト臍帯血細胞の注入が、出血性の脳損傷のラットにおける神経欠損を改善することを報告している。したがって、遊走している幹細胞によって発現されているカテコールアミン受容体は、細胞の運動性、増殖および発達の調節ならびに、これらの系によって伝達されるシグナルに応答した、脳またはCNS損傷の部位への転移に関係しているのかもしれない。
【0166】
したがって、ある局面では、本発明は、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物で、および、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物で刺激された幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む、細胞集団または細胞グループに、ならびに、組織再生、組織の再増殖および/もしくは体細胞治療のための幹細胞移植(SCT)もしくは前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、該細胞集団の使用に関する。細胞が、カテコールアミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物で、および、カテコールアミン受容体アゴニストで、刺激される場合、それらは、移植に先立ち、薬物およびアゴニストで、同時に刺激されてもよく、また、始めに薬物で、そしてその後、アゴニストで刺激されてもよい。本発明者らは、本発明によって、インビボで骨髄性サイトカインG−CSFで刺激された幹細胞が、より高いレベルのカテコールアミン受容体を提示することを明らかにしたので、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物での細胞の刺激は、インビボで行うことができる。この手順は、造血細胞の血液への移動として知られており、そして、通常、5回の連続したG−CSFの注射によって行われる(Petit ら、2002)。代わりに、本発明者らが下記の実施例中で示すように、幹細胞は、GM−CSFまたはG−CSFのような骨髄性サイトカインなどの薬物で、エクスビボにて刺激することができる。刺激の前に、幹細胞/前駆細胞は、加熱不活性化されたFCSを、ならびに、Epo、SCF、IL−3およびTpoなどの1またはそれ以上のサイトカインを添加した培地中に保存することができる。
【0167】
幹細胞治療によって治療され得る疾患、障害または症状の例は、http://www.pregnancy-info.net/StemCell/treated_disease.htmlに記載されており、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、脂肪肉腫、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、悪性胚細胞性腫瘍などのがん;無巨核球性血小板減少症(AMT)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、先天性血球減少症、エヴァンズ症候群、ファンコーニ貧血、コストマン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミアなどの血液障害;副腎脳白質ジストロフィ、不全リンパ球症候群、先天性角化不全症、家族性血球貧食性リンパ組織球症、ゴーシェ病、ギュンター病、ハンター症候群、ハーラー症候群、遺伝性神経セロイドリポフスチノーシス、クラッベ病、ランゲルハンス細胞組織球症、レッシュ−ナイハン症候群、白血球接着不全、大理石骨病などの遺伝性代謝障害;および、アデノシンデアミナーゼ欠損症(ADAまたはSCID−ADA)、重症複合型免疫不全(SCID)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)、高IgM免疫不全症候群(HIM)などの免疫疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(ルー・ゲーリグ病としても通常知られている)などの神経系疾患;筋ジストロフィ;多発性硬化症;関節炎;脊髄損傷;脳損傷;脳卒中;心臓病;肝臓および網膜の疾患;糖尿病;ならびに骨髄抑制および末梢血血球現象などの化学療法もしくは放射線治療の副作用を緩和することを含むが、これらに限定されない。
【0168】
本発明は、移植、組織置換、組織生着、組織再生、組織再増殖および/もしくは細胞治療における使用に適した、改良されたもしくはより優れた幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団、ならびにこれらの細胞集団の製造方法を提供する。本発明は、カテコールアミン受容体アゴニストで、および、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体発現の上方調節を誘導することのできる薬物で、エクスビボにて刺激された幹細胞ならびに/または前駆細胞を含む改良された集団について記載している。
【0169】
本発明による、改良された幹細胞/前駆細胞の組成物の製造方法の1つは、幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団を、集団の幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物で、エクスビボまたはインビボにて刺激すること、および、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物でエクスビボにて刺激することを含む。薬物での細胞の刺激が、インビボにて、例えば、個体への薬物の注射によって行われる場合は、幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団は、哺乳動物の血液から採取され、そして、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物で、エクスビボにて刺激される。本発明のある実施態様では、前記方法は、造血幹細胞移植(HSCT)における使用のための、改良された細胞組成物を得ることを可能にし、造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞集団を、インビボおよび/もしくはエクスビボにて、G−CSFおよび/もしくはGM−CSFで、ならびに、エクスビボにて、ドーパミンもしくはおよびそのアゴニスト、エピネフリンおよび/もしくはノルエピネフリンなどのカテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物で、刺激することを含む。
【0170】
移植に適した、改良されたもしくはより優れた幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団は、例えば、以下の事柄を示す幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団である。マウスモデルにおいて調べた場合に、対照細胞集団に比べて、顕著により多くの生着、例えば、2倍多くの生着を示す;二次移植モデルにおいて調べた場合、生着の割合が、一次レシピエントにおける場合より、顕著により高い;および/またはコロニー形成アッセイにおいて調べた場合、対照細胞よりも顕著により多くのコロニー形成を示す。
【0171】
長期複製HSCsは、HSCに基づいた細胞治療を開発するにあたって、重要である。以下の、血液細胞のタンパク質マーカーのセットは、細胞が、長期HSCタイプである可能性の高まりと関連している:CD34+、Thy1+/低
、CD38低
/-、C−kit-/低
、lin-(系統マーカーに陰性)。
【0172】
本発明者らは、本発明にしたがって、つぎのことを見出した:CD34+/CD38-/低
細胞は、より分化した細胞であるCD34+/CD38高
細胞の部分集団に比べて、より高いレベルの両方のタイプのドーパミン受容体を発現する。したがって、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物での幹細胞集団の刺激は、おそらく集団におけるCD34+/CD38-/低
細胞に影響を及ぼすであろう。また、幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む、移植のための、改良されたまたはより優れた細胞集団は、幹細胞もしくは前駆細胞を含む細胞集団を、カテコールアミン受容体発現を上方調節することのできる薬物で刺激すること、ならびに、表面において、例えば、未処置の対照細胞におけるレベルよりも2〜4倍高いレベルであるような、増大されたレベルのカテコールアミン受容体を発現している細胞を、単離もしくは選別することを含む方法によって得られ得る。
【0173】
本発明者らは、本発明にしたがって、それらの表面において増大されたカテコールアミン受容体を掲示している、造血幹細胞および前駆細胞などの幹細胞ならびに/または前駆細胞が、移植に適していることを見出した。例えば、本発明者らは、造血幹細胞および前駆細胞のG−CSFおよびGM−CSFでの刺激が、初期のCD34+/CD38-/低
細胞上でのドーパミン受容体の高い発現を誘導することを見出した。また、インビボで、G−CSFで刺激された(集められた)CD34+細胞は、より高いレベルのβ2アドレナリン作用性の受容体を発現している。また、集められた造血幹細胞および前駆細胞のエピネフリンおよびノルエピネフリンでの刺激によって、これらの受容体の活性を誘導することが、結果として、造血幹細胞の増大された遊走および生着可能性、ならびに増殖、または造血幹細胞によるコロニー形成の増大を生じた。
【0174】
したがって、本発明のある実施態様では、移植のための、幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む改良された、またはより優れた細胞集団は、以下を含む方法によって得られる:幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団を、カテコールアミン受容体発現を上方調節することのできる薬物で(インビボもしくはエクスビボで)刺激すること;CD34+/CD38-/低
を発現している細胞を選別すること;表面上で高いレベルのカテコールアミン受容体を発現している細胞、例えば、対照細胞(薬物で処置されていない)におけるカテコールアミン受容体のレベルよりも2〜4倍高いレベルである、カテコールアミン受容体のレベルを発現している細胞を選別すること;ならびにカテコールアミン受容体アゴニストで細胞を刺激すること。該薬物は、GM−CSFまたはG−CSFであってもよく、該刺激は、2、3、4日間または5日間まで、もしくは、より短期間または長期間続いてもよい。GM−CSFまたはG−CSF処置された個体から集められた幹細胞および/または前駆細胞が、前記方法において使用され得る。前記細胞は、例えば、細胞中の特定のマーカーをラベルし、そして、蛍光活性化セルソーター(FACS)によって細胞を選別するなどの、周知の方法によって、選別または単離されてもよい。
【0175】
真の造血幹細胞の顕著な特徴は、全ての血液細胞系統を多数、長期再形成するためのそれらの能力である。多くの研究者らによって、移植および遺伝子治療の領域で、インビトロでヒト幹細胞の増殖および拡張を誘導するために適した条件を見出すために、多大な努力がなされてきた。成功した幹細胞の拡張のための要件は、長期再形成能力の付随的な損失無しに、効率的に真の幹細胞の増殖を促進することであろう。本発明者らが、本明細書中で、インビトロでの、幹細胞のドーパミン受容体アゴニストへの暴露が、結果として二次生着の速度の増加を生じることを明らかにしたので、増加された量の長期培養起始細胞(LTC−IC)を有する、改良された幹細胞集団が、幹細胞を含む細胞集団をカテコールアミン受容体アゴニストで刺激することを含む方法を用いることによって製造され得る。
【0176】
ある局面では、本発明は、細胞集団中の幹細胞もしくは前駆細胞の増殖、発達、遊走、生着および/または再増殖能力を増加させるための方法に関する。そのような方法の1つは、幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団を提供すること、ならびにカテコールアミン受容体アゴニストと、そして任意には、細胞においてカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物と、細胞集団を接触させることを含む。
【0177】
本発明者らは、本発明にしたがって、エクスビボにてカテコールアミン受容体アゴニストで刺激された幹細胞を含む細胞集団が、長期培養起始細胞を維持することを見いだした。これらの細胞は、全ての血液細胞系統を多数、長期再形成するための能力を有する、真の造血幹細胞である。
【0178】
したがって、本発明の別の目的は、カテコールアミン受容体アゴニストで幹細胞を含む細胞集団を刺激することを含む、臨床的移植のための長期培養起始細胞の製造方法を提供することである。この方法によって得られた長期培養起始細胞は、幹細胞移植、組織置換、生着、再増殖および/または細胞治療に適している。長期培養起始細胞を製造するための、本発明の方法の1つは、幹細胞を含む細胞集団を提供すること、幹細胞においてドーパミン受容体の発現を上方調節すること、および、ドーパミン受容体アゴニストに細胞を暴露することを含む。本発明のある実施態様では、臨床的移植のための長期培養起始細胞の製造方法は、造血幹細胞を含む細胞集団を提供すること、幹細胞におけるドーパミン受容体発現の上方調節を誘導するために、細胞集団をGM−CSFおよび/またはG−CSFで刺激すること、ならびにカテコールアミン受容体アゴニストと細胞集団を接触させることを含む。
【0179】
ある局面では、本発明は、幹細胞移植(SCT)治療の方法ならびに/または幹細胞の骨髄生着および/もしくは骨髄の再増殖を促進するための方法を提供する。幹細胞移植治療(SCT)を改良または促進するための方法の1つは、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物で、および、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物で刺激された、治療的に有効量の幹細胞を、必要とする患者へ投与/注射または移植することを含む。本発明のある実施態様では、細胞は、骨髄性サイトカイン(例えば、GM−CSFまたはG−CSF)処置された個体から得られ、そして、これらの細胞は、エクスビボにてカテコールアミン受容体アゴニストで刺激される。本発明のさらなる実施態様では、該方法は、造血幹細胞移植(HSCT)および少なくとも1つの血液細胞系統の再形成を改良または促進するためのものである。別のさらなる実施態様では、該方法は、エクスビボにて、GM−CSFまたはG−CSFで、および、カテコールアミン受容体アゴニストで刺激された造血幹細胞を含む、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ投与することを含む。さらなる方法は、投与に先立って、促進されたカテコールアミン受容体の発現により選別された、治療的に有効量の幹細胞を投与することを含む。
【0180】
本発明のある実施態様では、幹細胞は、G−CSF処置されたドナー由来である。他の実施態様では、幹細胞は、例えば、ラベルされた受容体に特異的な抗体で細胞を選別することにより、CD34+に富んでおり、CD34+/CD38−/低に富んでおり、および/またはカテコールアミン受容体に富んでいる。いくつかの実施態様では、本発明は、幹細胞移植、特に造血幹細胞移植(HSCT)のための、方法または組成物を使用することに関する。さらなる実施態様では、本発明は、造血の、骨の、軟骨の、心性のおよび神経の組織再生および/もしくは再形成のような、組織再生ならびに/または再形成治療のための方法または組成物の使用について記載している。
【0181】
本発明にしたがって、幹細胞もしくは前駆細胞を含む細胞集団を、本発明において記載されている物質(例えば、受容体アゴニスト、アンタゴニストおよび/または幹細胞もしくは前駆細胞において受容体の上方調節を誘導する薬物)を用いて、刺激すること、暴露することもしくは接触させることは、インビボおよび/またはエクスビボでの物質の投与によって行なってもよい。
【0182】
造血幹細胞(HSCs)のインビトロでの遺伝子操作は、体細胞遺伝子治療のための新たな分野を開く。体細胞遺伝子治療は、疾患を治療するための、体細胞への、遺伝子操作された遺伝子の送達として定義される。遺伝子治療の究極の目的は、インサイチュにて、欠陥遺伝子配列を置き換えることである。入手可能なベクターおよび標的としてHSCsを使用することで、体細胞遺伝子の導入は通常、結果としてトランス遺伝子の異所性発現となる。したがって、本発明にしたがって、幹細胞または前駆細胞は、治療用のポリペプチドをエンコードする組換えDNAを内包し、それにより、治療用のポリペプチドを発現している、幹細胞もしくは前駆細胞を含んでもよく、そして、体細胞遺伝子治療などの細胞治療において使用することができる。
【0183】
例えば、白人集団(population)において、最も一般的で、致命的な遺伝障害である、嚢胞性線維症(CF)は、CF膜コンダクタンス制御因子(CFTR)の突然変異によって引き起こされる。最近の報告(Wang ら、2005)は、間葉または骨髄間質幹細胞(MSCs)などの成人幹細胞が、気道上皮に分化する能力を有していること、および嚢胞性線維症(CF)患者からのMSCsが、CFTR遺伝子を修正する可能性があることを開示している。
【0184】
骨髄および他の部位からの循環系への幹細胞の放出および移動は、臨床的移植のための血液からの幹細胞採取のために、個体において誘導される。現在のところ、リンパ腫などの疾患を治療するための移植用に、循環系からヒト幹細胞を動員および採取するために使用される方法は、G−CSFおよびGM−CSFなどの骨髄性サイトカインでの多重刺激を伴う。しかしながら、1部の個体は、適切な量の幹細胞を移動できず、したがって、骨髄吸引を介して幹細胞を採取するために手術される必要がある。本発明者らは、本発明にしたがって、カテコールアミン受容体アゴニストが幹細胞の移動を増加させ、そしてカテコールアミンが化学誘引物質としてふるまうことを明らかにした。したがって、カテコールアミンアゴニストを循環系に注射することは、内部臓器(例えば、骨髄および脾臓)から循環系への幹細胞の化学走性を増加させ得る。したがって、本発明は、自己由来の細胞移植のために患者の循環系への、また、同種移植のための健康な個体の循環系への幹細胞の移動を促進するための医薬の製造における、カテコールアミン受容体アゴニストの使用を考慮している。
【0185】
幹細胞もしくは前駆細胞集団の成長、発達、遊走、生着または再増殖の減少は、例えば、病理または経過が、制御不能な成長などの異常な特性を示している幹細胞もしくは前駆細胞集団と関係している疾患、障害もしくは症状においてなど、ある種の状況において望まれ得る。例えば、急性骨髄性白血病(AML)は、未成熟な白血球の多さによって特徴付けられるタイプのがんであり、異常な造血に起因し、ゆくゆくは、骨髄および末梢血液中の白血球の減少を引き起こす。こういった幹細胞もしくは前駆細胞集団の成長、発達、遊走、生着または再増殖の減少は、カテコールアミン受容体アンタゴニストの使用によって達成され得る。
【0186】
本明細書中で使用されているように、用語「受容体アンタゴニスト」は、例えば、リガンドの受容体への結合を阻害する、または妨げることによって、受容体と相互作用することによって、受容体の活性を減少させる分子として定義される。
【0187】
アンタゴニストは、受容体の活性化を防ぐ。活性化を防ぐことは、多くの効果を有する。アンタゴニスト薬は、もしそれらが、細胞機能を通常は減少させる物質の作用を阻害するのであれば、細胞機能を増加させる。アンタゴニスト薬は、もしそれらが、細胞機能を通常は増加させる物質の作用を阻害するのであれば、細胞機能を減少させる。
【0188】
受容体アンタゴニストは、可逆または不可逆として分類することができる。可逆アンタゴニストは、容易にそれらの受容体から解離し;不可逆アンタゴニストは、安定で永続的またはほぼ永続的な化学結合をそれらの受容体と形成する(例えば、アルキル化など)。擬不可逆アンタゴニストは、それらの受容体からゆっくりと解離する。
【0189】
競合的拮抗作用においては、アンタゴニストの受容体への結合が、アゴニストの受容体への結合を妨げる。非競合的拮抗作用においては、アゴニストおよびアンタゴニストは同時に結合できるが、アンタゴニストの結合が、アゴニストの作用を減少させるかまたは妨げる。可逆的競合拮抗作用においては、アゴニストおよびアンタゴニストは、受容体と短期間続く結合を形成し、そして、アゴニスト、アンタゴニスト、および受容体の間で、定常状態に達する。このような拮抗作用は、アゴニストの濃度を増加させることによって、克服される。
【0190】
アゴニスト分子の構造類似体は、しばしば、アンタゴニスト特性を有する;このような薬物は、部分的な(弱い効果の)アゴニスト、またはアゴニスト−アンタゴニストと呼ばれる。
【0191】
ドーパミン受容体アンタゴニストの例は、クロザピン、フルペンチキソール、ピモジド、レモキシプリド、ルペンチキソール、ドンペリドン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ジプラシドン、ロキサピン、チオリダジン、メトクロプラミド、クロルプロチキセンおよびドロペリドールを含むが、これらに限定されるものではない(Wishart DS ら、2006)。
【0192】
本発明の実践において使用することのできるアドレナリン作用性の受容体アンタゴニストの例は、非限定的に、フェントラミン、フェントラミン塩酸塩、メシラート、トラゾリン、ヨヒンビン、ラウオルシン、ドキサゾシン、プラゾシン、テトラゾシン、およびトリマゾシン、ならびにラベタロール、アテノロール、メトプロロール、ベタキソロール、ビソプロロール、ナドロール、ピンドロール、マプロチリンおよびブレチリウムなどのベータブロッカーを含む。
【0193】
本発明はまた、本発明による、細胞または分子または薬物、および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。例えば、医薬組成物は、本発明による、幹細胞および/または前駆細胞および/またはカテコールアミン受容体アゴニストおよび/または受容体を誘導することのできる薬物、ならびに薬学的に許容され得る担体を含んでもよい。本発明のある実施態様では、医薬組成物は、カテコールアミン受容体アゴニスト、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の上方調節を誘導することのできる薬物、および薬学的に許容され得る担体を含む。さらなる実施態様では、医薬組成物は、カテコールアミン受容体アゴニスト、G−CSFおよび/またはGM−CSF、ならびに薬学的に許容され得る担体を含む。
【0194】
別のさらなる実施態様では、本発明は、カテコールアミン受容体アゴニストで、そして任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体発現の上方調節を誘導することのできる薬物で、刺激された幹細胞および/または前駆細胞集団、ならびに薬学的に許容され得る担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0195】
さらに別のさらなる実施態様では、本発明は、カテコールアミン受容体アゴニストで、およびG−CSFまたはGM−CSFで刺激された、CD34+造血幹細胞、ならびに、薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。
【0196】
本発明による医薬組成物は、その意図した目的を果たすために充分な量の、本発明による、細胞、アゴニスト/アンタゴニストおよび/または薬物を含む。加えて、医薬組成物は、それらを必要とする患者への投与のために、活性化合物の製剤への加工を促進し、薬学的に使用されることができ、かつその製剤を安定化できる、当業者にとって公知の賦形剤および補助剤を含む適切な薬学的に許容され得る担体を含んでもよい。
【0197】
本発明による、細胞、アゴニスト/アンタゴニストおよび/または薬物は、それらを必要とする患者に、様々な方法で投与してもよい。投与経路は、肝臓内、皮膚内、経皮的(例えば、徐放性製剤(slow release formulation))、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、硬膜外、局所的、および鼻腔内経路である。加えて、物質は、薬学的に許容され得る、界面活性剤、賦形剤、担体、希釈剤およびビヒクルなどの、生物学的に活性な薬物の他の成分とともに投与することができる。
【0198】
本発明者らは、本明細書中で、ドーパミン受容体アゴニストのi.p.注射が、骨髄中の細胞質量を増加させるのに適していることを示した。
【0199】
個体への、単回または複数回用量として投与される投薬量は、物質の薬物動態学的特性、投与経路、患者の症状および特徴(性別、年齢、体重、健康、大きさ)、症候の程度、併用治療、治療の頻度ならびに所望の効果を含む、様々な因子に依存して変わるであろう。設定された投薬量範囲の調整および制御は、明らかに当業者の能力の範囲内である。
【0200】
「薬学的に許容され得る」という定義は、活性成分の生物学的活性の効果を妨げず、そして、投与されるホストに対して毒性ではない、いかなる担体をも含むことを意図している。例えば、非経口投与では、本発明による物質は、生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミンおよびリンガー溶液などのビヒクル中に、注射のための単位投薬形態として製剤化してもよい。
【0201】
「治療的に有効量の」とは、投与された場合に、本発明による前記物質が、幹細胞移植、組織再生、組織再増殖、細胞治療および/もしくは体細胞遺伝子治療において、ならびに/または組織損傷の治療において、有益な薬効を誘導するほどの量のことである。個体への、単回または複数回用量として投与される投薬量は、投与経路、患者の症状および特徴(性別、年齢、体重、健康、大きさ)、症候の程度、併用治療、治療の頻度ならびに所望の効果を含む、様々な因子に依存して変化し得る。設定された投薬量範囲の調整および制御は、明らかに当業者の能力の範囲内である。
【0202】
本発明に関連する化合物は、それらの薬物動態学的特性に呼応した、いかなる経路による投与のために製造されてもよい。
【0203】
活性な成分はまた、滅菌溶媒中で経口的に投与されてもよい。使用されるビヒクルおよび濃度に依存して、薬物は、ビヒクルに懸濁または溶解され得る。
【0204】
用語「投薬量」は、用量の頻度および数の決定ならびに制御に関する。
【0205】
機関紙の論文または要約、刊行されたもしくは未刊行である米国または外国の特許出願、発行済み米国もしくは外国の特許または他のすべての参考文献を含む、本明細書中で引用された全ての引用文献は、引用文献中に示された全てのデータ、表、図および本文を含めて、本明細書中に参考文献として完全に組み入れられる。
【0206】
公知の方法段階、従来の方法段階、公知の方法もしくは従来の方法に対する参照は、いかにしても、本発明のいかなる局面、記載または実施態様が、関連技術分野において開示、教示、もしくは示唆されているという承認ではない。
【0207】
本発明は、本明細書で記載されるように、実例として提供されるが、本発明を制限する意図はない、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0208】
造血幹細胞上でのカテコールアミン受容体の発現、およびこれらの細胞の発達および機能におけるそれらの役割が評価された。
【0209】
材料および方法
(i)ヒト細胞および試薬
ヒト臍帯血(CB)、成体G−CSF、健常またはG−CSF処置ドナーからの、動員された末梢血(MPBL)およびBM、単核細胞は、ワイズマン インスティチュート オブ サイエンス(Weizmann Institute of Science)のヒト倫理委員会によって承認された手順にしたがったインフォームドコンセントの後、得られた。細胞表面タンパク質CD34は、研究においておよび移植において、ヒト造血幹細胞/前駆細胞の陽性選択のためのマーカーとしてしばしば使用される。CD34+細胞エンリッチメントは、以前記載されたように(Spiegel A ら、Blood 2004; 2900-7)、磁気ビーズ分離を用いて行われた。細胞は、10%加熱不活性化されたFCS、抗生物質およびグルタミンを添加した、RPMI 1640培地中で培養された。
【0210】
ヒトCB細胞は、インフォームドコンセントの後、月満ちての出産から得られた。血液のサンプルは、PBS中で1:1に希釈された。低密度MNCsは、Ficoll−Paque(ファルマシア バイオテック(Pharmacia Biotech)、ウプサラ、スウェーデン)上での標準的な分離の後、採取され、PBS中で洗浄された。ヒトCD34+細胞のエンリッチメントは、MACS細胞単離キットおよび自動MACSマグネティックセルソーター(ミルテニー バイオテック(Miltenyi Biotec)、ベルギッシュグラートバハ、ドイツ)を用いて、製造者の説明書にしたがって行われた。残りの動員された末梢血細胞、血漿ならびにBMは、G−CSF(10μg/kg)の毎日の注射の後の0、5および6日目の、同種移植のために動員が行われている健康なドナーから、インフォームドコンセントの後に得た(フィルグラスチム(Filgrastim)、ロッシュ、バーゼル、スイス)。
【0211】
BM細胞および血漿サンプルはまた、健康なドナーからも得られた。1回または5回のG−CSF注射の24時間後、BMが、インフォームドコンセントの後、吸引によって採取された。ヒトサンプルは、ワイズマン
インスティチュートのヒト実験および倫理委員会によって承認された手順にしたがって使用された。
【0212】
いくつかのアッセイでは、ドーパミンアゴニスト、D1受容体に選択的であるとUndieおよびFriedman(1992)によって記載された(+)−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ(1H)−3−ベンズアゼピン−7,8−ジオール塩酸塩(SKF−38393)、およびD3受容体を誘導するとしてLevesqueら(1992)およびDamsmaら(1993)によって記載されている7−ヒドロキシ−2−ジプロピルアミノテトラリン(7−OH−DPAT)(H8653);ならびにアンタゴニスト、2−[4−[3−[2−(トリフルオロメチル)チオキサンテン−9−イリデン]プロピル]ピペラジン−1−イル]エタノール(フルペンチキソール)(シグマ)。フルペンチキソールは、精神分裂病およびうつ病における使用のための、D1ならびにD2両方のドーパミン受容体の強力なアンタゴニストであり、クロザピンは、精神病のための標準的な薬物治療に適切に反応しない、重症の精神分裂病患者の管理のための、ドーパミンタイプ2受容体のアンタゴニストである。全ての薬物は、示された濃度で用いられた。
【0213】
(ii)マウス
NOD/LtSz PrKdcscid/PrKdcscid(NOD/SCID)マウスは交配され、ワイズマン
インスティチュートにおいて、滅菌マイクロアイソレーターケージ中で、孤立した環境(defined flora)条件のもと維持された。全ての実験は、ワイズマン
インスティチュートの動物管理委員会によって承認された。8〜10週齢のマウスが、亜致死量の放射線(375cGy、60Co線源から)を照射され、そして照射24時間後、示されるように(2×105細胞/マウス)ヒト細胞を移植された。
【0214】
(iii)細胞移植
細胞は、10%FCSが添加された、0.5mlのRPMI中で、NOD/SCIDの尾の静脈の中に注射された。
【0215】
(iv)細胞生着の評価
レシピエントマウスは、細胞の注射より24時間前に、セシウム線源からの亜致死量(350cGy)用量によって放射線照射された。MPBまたはCB CD34+細胞(2〜3×105/マウス)が、SKFまたは7−OH−DPATで2〜4日間処置され、NOD/SCIDマウス中にi.v.注射された。マウスは、ヒト細胞移植後5〜6週間後に、ヒト細胞生着評価を算定するために犠牲にされた。BM(シリンジによって洗い流された大腿骨、脛骨および骨盤の骨)、脾臓および末梢血細胞が採取され、単一細胞懸濁液に再懸濁された。WBCsは計数され、そして、いくつかの実験では、MNCsが、Ficol−Hypaque(ファルマシア バイオテック)上での標準的な分離によってサンプルから単離された。
【0216】
ヒト細胞生着は、フローサイトメトリー(FACSCalibur、BD)によってアッセイされた。細胞は、CD45−FITC、CD38−PEおよびCD34−APC(ベクトン ディッキンソン(Becton Dickinson))抗体を用いて、三重に染色された。ヒト血漿およびマウスIgGは、Fc受容体を阻害するために用いられた。ヒト白血球は、汎白血球マーカーであるCD45の発現によってゲートされ、この集団の中でCD34+/CD38-/低
初期細胞の割合が決定された。
【0217】
(v)移動
2〜4月齢のBALB/cマウス(ハーラン(Harlan)、ワイズマン
インスティチュート)における移動は、以下の通り行われた:マウスは、4日または5日間連続、G−CSF(フィルグラスチム、pH4.55の0.9%NaCl、5%ウシ胎仔血清(FCS)250l中、300g/kg)の皮下注射を毎日受け、遅くとも最後の注射から6時間後に犠牲死された。ドライアイスで窒息死させられたマウスからの末梢血は、ヘパリン添加チューブに心臓吸引によって採取された。末梢血中の白血球(WBC)の数が測定され、20μlの血液が前駆細胞コロニーアッセイのために、以下に記載されるように、播種された。コロニーは、植え付けから8日後または、示されている場合にはそれ以後に、記録された。
【0218】
ヒト細胞を生着されたNOD/SCIDマウスにおける移動は、以下のように行われた:マウスは、連続した5日間、G−CSF(フィルグラスチム、pH4.55の0.9%NaCl、5%ウシ胎仔血清(FCS)250ml中、300mg/kg)の皮下注射を毎日受け、最後の注射から4時間後に犠牲にされた。ドライアイスで窒息死させられたマウスからの末梢血は、ヘパリン添加チューブに心臓吸引によって採取された。末梢血中のWBCの数が測定された。
【0219】
(vi)フローサイトメトリー分析
ヒトおよびマウスの細胞の表現型が、免疫染色によって、続いて、CellQuestソフトウェアを用いたFACSCalibur(ベクトン ディッキンソン、サンノゼ、CA)上で、フローサイトメトリー分析によって行われた。単一細胞懸濁液は、0.01%のアジ化ナトリウムおよび1%FCSを含むPBS中に調製された。ヒト血漿およびマウスIgGは、ヒトおよびマウスFc受容体を阻害するために使用された。アイソタイプ一致型の対照抗体は、偽陽性細胞を排除するために用いられた。染色は、4℃で、30分間行われた。ヒト細胞の生着は、マウス抗ヒトCD45−Fitc、CD38−PEおよびCD34−APC(ベクトン ディッキンソン)を用いた染色によって試験された。ヒト白血球は、汎白血球マーカーであるCD45の発現によってゲートされ、この集団の中でCD34+/CD38−/低
初期細胞の割合が決定された。いくつかの実験では、CD34+/CD38−/低
上のドーパミン受容体発現が調べられ、細胞は、二次抗体、ヤギ抗ウサギ アレクサ(alexa)488(モレキュラー プローブ、ユージーン、OR)に続いて、マウス抗ヒトCD38−PE、CD34−APCおよびウサギ抗ヒトドーパミン受容体3または5(カルビオケム(Calbiochem)、ノッティンガム、UK)を用いて、三重に染色された。染色後、細胞はFACS緩衝溶液で洗浄され、蛍光活性化セルソーティング(FACSCaliburおよびCellQuestソフトウェア、ベクトン ディッキンソン)によって分析された。
【0220】
(vii)前駆細胞コロニー形成アッセイ(CFU)
ヒト前駆細胞のレベルを検出するために、半固体培養が、以前記載されたように行われた(Peled ら、1999)。端的に言えば、CD34+細胞(1×103細胞/ml)が、0.9%のメチルセルロース(シグマ)、30%FCS、5×10-5M 2ME、50ng/ml SCF、5ng/ml IL−3、5ng/ml GM−CSF(R&D)および2μ
/ml エリスロポエチン(オルトバイオテック(Orto Bio Tech)、ドンミルズ、カナダ)中に、ドーパミンアゴニスト/アンタゴニストとともに播種された。いくつかの実験では、細胞は、アゴニスト/アンタゴニストで、半固体培養液への播種に先立ち、4日間事前培養された。培養液は、5%CO2を含む加湿された雰囲気下、37℃で培養され、そして、14日後、形態学的基準にしたがって、骨髄性または赤血球のコロニーが計測された。初期ヒト細胞によるインビボでの生着のレベルが測定されるような実験においては、半固体培地
は、15%ヒト血漿および15%FCSを含む。
【0221】
(viii)化学走化性アッセイ
化学走化性実験は、以前記載されたように(1)、トランスウェル(6.5mm直径、5μm孔径;コーニング社、コーニング、NY)を用いてアッセイされた。終夜GM−CSF(5ng/ml)で処置された、または未処置の、CB CD34+細胞(通常、100μ
l中、50,000〜100,000細胞)が上部のチャンバーに入れられ、アスコルビン酸(シグマ)を添加され、およびドーパミン(10nM;シグマ)を添加または添加されていない培地
が、下部のチャンバーに入れられた。細胞の遊走が、FACSCalibur(ベクトン ディッキンソン)を用いて、数えられた。
【0222】
(ix)染色および組織化学
SKFまたは7−OH−DPATで処置されたまたは未処置の、CB CD34+に富んだ細胞(ウェル毎に1×105〜2×105細胞)が、37℃で2時間、HA−被覆カバースリップ上に播種された。サンプルは、記載されたように(Goichberg ら、2001)、顕微鏡観察のために処理された。端的には、接着細胞は、3%パラホルムアルデヒド(メルク、ダルムシュタット、ドイツ)で固定され、そして、もし示されていれば、0.5%のトリトンX−100(シグマ−アルドリッチ)中で透過させられた。サンプルは、間接的に、加湿されたチャンバー中、室温で、精製されたポリクローナルウサギ抗ヒトドーパミン5抗体(カルビオケム、ノッティンガム、UK)(MCAP89;セロテック(Serotec))を用いて免疫ラベルされた。使用された二次抗体は、ヤギ抗ウサギ アレクサ488共役体(モレキュラー プローブ、ユージーン、OR)。重合したアクチンを検出するためのPhalloidin−TRITCは、シグマ−アルドリッチから購入された。ラベル化に続いて、細胞は、エルバノール(Elvanol)(モビオール(Mowiol)4−88、ヘキスト、フランクフルト、ドイツ)上に取り付けられた。免疫蛍光イメージは、科学的グレードのCCDカメラを用いて得られ、DeltaVisionシステムによって、Resolve3Dソストウェア(アプライドプレシジョン、イサクア、WA)を用いて加工された。
【0223】
(x)統計的分析
顕著なレベルのデータが、対応のある2標本スチューデントのt分布検定(paired two-tail Student t test analysis)によって決定された。
【0224】
実施例1 ヒト造血幹細胞は、ドーパミン受容体をその表面上に発現する。
ドーパミン受容体タイプ3および5の発現は、異なる原料から得られた、CD34+に富んだ細胞の表面上で評価された。CD34+に富んだヒト細胞は、材料および方法の項で示されたように、次の原料から得られた:骨髄(BM)、動員された末梢血、および臍帯血。本発明者らは、フローサイトメトリー分析によって、全ての原料からのCD34+に富んだヒト細胞は、両方のタイプのドーパミン受容体をそれらの表面上に発現していることを見出した。興味深いことに、受容体の発現のレベルは、細胞の原料、および、被験個体がG−CSFで処置されたか、またはされていないか、に依存して変化した。例えば、G−CSFで処置された健康なドナーのBM由来の、CD34+に富んだ細胞上のドーパミン受容体の発現は、未処置の健康なヒトドナーの骨髄(BM)由来のCD34+に富んだ細胞よりも約2〜4倍高かった(図1A、1B)。さらに、本発明者らは、移植に、より適した稀な幹細胞集団を含む、より初期のCD34+細胞、CD34+/CD38-/低
、の部分集団(図2、R2)が、より分化した細胞、CD34+CD38高
細胞の部分集団(図1、R1)に比べて、より高いレベルの、両方のタイプのドーパミン受容体を発現していることを見出した。
【0225】
実施例2 G−CSFおよびGM−CSFなどの骨髄性サイトカインはヒトCD34+細胞表面上で、ドーパミン受容体のレベルを増大させる。
前の実施例で、本発明者らは、G−CSFで処置された個体由来の幹細胞が、それらの表面において、増大したレベルのドーパミン受容体を掲示していることを明らかにした。以下の実施例は、機能的なインビボの動物モデルにおいて、ヒト幹細胞の表面におけるドーパミン受容体のレベルがG−CSFへの幹細胞の暴露により増大することを実証するために行われた。このモデルは、G−CSFでのキメラNOD/SCIDマウスの処置によって誘導される、幹細胞の末梢血への移動を含む。キメラNOD/SCIDマウスは、臍帯血(CB)からのヒト造血単核細胞(MNCs)を用いた異種移植を受けたマウスからなる。以前にPetit(2002)によって公表されているように、造血幹細胞の末梢血(PB)への強力な移動が、5日の毎日のG−CSFの注射の後達成されるので、本発明者らは、この段階でBM細胞を採取した。次に、本発明者らは、Ficoll上でMNCを分離し、細胞を、ドーパミン受容体3&5(カルビオケムからの抗体)、CD34およびCD38発現[それぞれ、ヒト特異的抗CD34−APC(ファーミンゲン)およびCD38−PEモノクローナル抗体(ベクトン ディッキンソン)を用いて]に対して、図1Cに示すように染色した。フローサイトメトリーによって測定されるように、得られた結果は、G−CSFでの処置および移動は、CD34+/CD38-/低
細胞集団におけるドーパミン受容体発現のレベルの増大をともなっていることを示していた。したがって、G−CSFで処置された個体のヒト骨髄から採取されたCD34+細胞と同様に(前の実施例参照)、G−CSFで処置されたキメラマウスからのヒトCD34+/CD38-/低
細胞は(CD34+CD38高
に比べて)、それらの表面上で増大したドーパミン受容体の発現を掲示していた(図1C)。
【0226】
次に、造血幹細胞上のドーパミン受容体の発現における、骨髄性サイトカインの直接的な効果がインビトロで試験された。この目的のために、動員された末梢血、健常
ヒト骨髄または臍帯血が、RPMIまたはGM−CSF 5ng/mlを添加されたRPMIで3日間培養された。この培養に続いて、細胞は三重に染色された:CD34−APC(ファーミンゲン)、D38−PE(ベクトン ディッキンソン)、ウサギ抗ヒトドーパミン受容体3抗体およびウサギ抗ヒトドーパミン受容体5抗体(カルビオケム)。図3に示されている結果は、GM−CSFとの3日間の培養が、CD34+/CD38-/低
細胞における、ドーパミン受容体3および5の両方のタイプのレベルを上方調節することを明らかにしている。
【0227】
本明細書中で得られた結果は、造血幹細胞および前駆細胞の末梢血(PB)への移動を誘導する骨髄性サイトカインが、直接的に、ヒト造血幹細胞および前駆細胞、とりわけより初期のCD34+/CD38-/低細胞を含む集団の表面上のドーパミン受容体のレベルを増大させることを示している。
【0228】
実施例3 ドーパミンアゴニストは臍帯血CD34+細胞の、クローン化可能前駆細胞の含量を増大する。
GM−CSFおよびG−CSFは、骨髄の分化および幹細胞調節におけるその役割が知られている。これらのサイトカインを、ヒト前駆細胞の検出をより容易にするために、前駆細胞コロニー形成アッセイ(CFU)に添加することは、一般的な方法である。GM−CSFおよびG−CSFの幹細胞制御における役割という観点から、およびこれらのサイトカインが直接的に、比較的高いドーパミン受容体の発現を初期のCD34+/CD38-/低
細胞上に誘導するという本発明者の発見にもとづき、本発明者らは、ドーパミン受容体が幹細胞および前駆造血細胞の調節または機能に役割を担っているのかもしれないと仮定した。したがって、本発明者らは、ドーパミン受容体レベルの上方調節が、インビトロで前駆細胞の発達に影響を及ぼしているのかどうかを試験した。この目的のために、臍帯血CD34+細胞が、Epo(2μ
/ml;オルトバイオテック、ドンミルズ、カナダ)、SCF(50ng/ml;R&D)およびIL−3(5ng/ml R&D)およびGM−CSF(5ng/ml;R&D)またはG−CSF(100ng/ml;ロッシュ)を添加された、半固体培養液(1ml中、1×103細胞/ml)中に、ドーパミン受容体レベルを上方調節するために播種された。増大されたドーパミン受容体活性の効果を評価するために、半固体培養は、ドーパミンアゴニストSKF(1μM)または7−OH−DPAT(100nM)、または対照としての培地
を添加された。図4Aに示されているように、SKFは、CB CD34+ CFU−C形成を、GM−CSFの存在下でのみ増大させた。同様に、ドーパミンアゴニスト、7−OH−DPATは、GM−CSFの存在下、コロニー形成を増大したが、最も大きな増大は、G−CSFの存在下で観察された。培地に骨髄性サイトカインが添加されなかった場合、コロニー形成における増加は見られなかった。
【0229】
これらの結果は、ドーパミン受容体の活性は、幹細胞の調節および分化において有益な役割を有していることを明示している。
【0230】
実施例4 NOD/SCIDマウスの骨髄中の、CD34+に富んだヒト細胞の生着におけるドーパミンアゴニストの効果
本発明者らは、幹細胞の調節および分化(上記で明示したように)に加えて、ドーパミン受容体が、幹細胞機能において、生着や再増殖などの役割を担っていると仮定した。幹細胞の生着におけるドーパミン受容体の効果を評価するために、エクスビボにおいて、ドーパミンアゴニスト、SKFまたは7−OH−DPATで処置された、ヒトCD34+細胞に富んだ動員された末梢血(MPB)が、NOD/SCIDマウスに移植され、マウスBMにおけるヒト細胞の生着が測定された。端的には、1〜3×105MPB CD34+細胞が、2〜4日間、37℃で、10%FCS、ペニシリン、ストレプトマイシン、およびL−グルタミンを添加されたRPMI中で培養され、ドーパミン受容体アゴニスト(1μM)SKFまたは(100ng/ml)7−OH−DPATで処置、または処置されずに残された。培養後、細胞は、放射線照射されたNOD/SCIDマウスに注射された。マウスは、注射後5週間で犠牲にされ、BMが抽出され、BM細胞がヒトCD45マーカーでラベルされた。結果は、図4Bにまとめられており、注射に先立って、SKFまたは7−OH−DPATで処置されたヒト幹細胞は、対照細胞に比べてマウスBM中で2倍多い生着を示した。図4Cは、ドーパミンアゴニストが、細胞がGM−CSFおよびドーパミンアゴニストで一緒に処置された場合にのみ、生着を促進したことを示している。実際、生着において50%の減少が、細胞がドーパミン受容体アンタゴニスト、クロザピンで注射の前に前処置された場合に見られた(図4B)。
【0231】
真の造血幹細胞の顕著な特徴は、全ての血液細胞系統を多数、長期再形成するためのそれらの能力である。成功した幹細胞の拡張のための要件は、長期再形成能力の付随的な損失無しに、効率的に真の幹細胞の増殖を促進することであろう。長期培養起始細胞(LTC−IC)に対するドーパミンアゴニストの効果を試験するために、二次移植が行われた。LTC−ICは、より初期であり、自己更新を可能にする、幹細胞集団の部分集団である(Scadden D Nature 2003; 841-6)。二次移植の実験において(図4D)、一次移植(およびドーパミンアゴニストで処置されたCD34を初めに注射された)のキメラから得られたBM細胞が、NOD/SCIDレシピエントに注射された。(初期のレシピエントの生着割合にしたがって標準化された)等しい量のヒト細胞が、二次移植において注射された。予備実験で、本発明者らは、二次移植されたマウスの生着割合が、初期のレシピエントにおけるよりも高い(図4D)ので、ドーパミンアゴニストでの処置が、LTC−ICに対し有益な効果を有していることを見出した。したがって、造血幹細胞のドーパミン受容体アゴニストでの刺激が、改良された二次再形成能力によって明示されるように、長期培養起始細胞を誘導する。
【0232】
本発明者らの結果は、インビトロにおける、造血幹細胞または前駆細胞のドーパミンアゴニストでの刺激が、この細胞の再増殖の可能性を改良するかもしれないことを示唆している。
【0233】
実施例5 ドーパミンの喪失による骨髄細胞性の減少
本発明者らは、ドーパミンが骨髄中の細胞質量の恒常性に役割を有しているのかどうかを試験した。この目的のため、マウスは、ドーパミンアゴニスト、7−OH−DPAT(1.5mg/kg)またはアンタゴニスト、フルペンチキソール5(3mg/kg)の5日間の毎日のi.p.注射で注射されるか、または未処置で残され、骨髄細胞質量が測定された。5日目、最後の注射の4時間後、マウスは犠牲にされ、BM細胞がBMより(シリンジで)洗い流され、白血球数(WBC)が測定された。本発明者らは、ドーパミンアゴニスト7−OH−DPATでのマウスの処置が、BM細胞性において50%の増加を導く一方、ドーパミンアンタゴニスト、フルペンチキソールでの処置がBM細胞性において25%の減少を生じることを見出した(図5)。
【0234】
要するに、これらの結果は、ドーパミンが、BM中で造血増殖を調節していることを示唆している。
【0235】
実施例6 SKFおよび7−OH−DPATは、臍帯血CD34+細胞において、ヒアルロン酸への細胞の接着による極性化および拡散を誘導する。
ヒアルロン酸(HA)は、BM ECMの重要な成分であり、BM由来の間質細胞の培養によって産生されるグリコサミノグリカンの40%を占める。最近のデータは、HSCs/HPCsの接着および遊走特性における、マトリックスならびに細胞表面HAの両方の不可欠な役割を示している(Avigdor ら、2004)。造血細胞の発達および遊走は、密接に結びついている基本的な過程である。造血幹細胞の調節におけるドーパミン受容体に対する役割を確立した後(実施例3参照)、本発明者らは、次に、CD34+細胞の運動性におけるドーパミンアゴニストの可能な役割を詳しく調べた。化学走化性刺激に応答する細胞は、細胞骨格の再配列による形態学的な変化および細胞表面受容体の再分配を示す。本発明者らは、ドーパミンアゴニストSFKもしくは7−OH−DPATの存在下または非存在下における、ヒアルロン酸への接着による、臍帯血CD34+細胞の形態における変化を評価した。図6Aに示されるように、アゴニストSFKまたは7−OH−DPATの存在下、極性化した形態を掲示する細胞の割合は、対照の未処置のCB CD34+細胞に比べて、2倍以上となった。アゴニスト処置された多くの細胞は、促進された拡散、細胞伸長、および多重隆起によって明示されるように、形態学的変化を獲得した。本発明者らは、これらの細胞上で発現されているドーパミン受容体5を検出するために、免疫細胞化学的分析を行った。興味深いことに、膜ドーパミン受容体5の集積は、細胞上に「点(dots)」を形成することによって明示された。強度な点の形成は、受容体の集積を示しており、極性化された細胞において見られた(図6B)。アクチンの重合度における変化は、ドーパミン受容体アゴニストで処置された細胞内で検出され、このことは、これらの薬物の存在下での、細胞骨格の変化を示している。
【0236】
本明細書中で得られた結果は、ドーパミン受容体が、造血幹細胞の遊走に役割を担っていることを示している。
【0237】
本発明者らは、未成熟ヒトCD34+細胞(100μ
l中、50,000〜100,000細胞)のインビトロでの遊走の可能性に対する、ドーパミン(1nM〜1μ
M)の効果を試験した。本発明者らは、トランスウェルの下部のチャンバーに入れられたドーパミンが、CD34+に富んだ臍帯血細胞の遊走を、顕著に増加させることを見出した(図6C)。この効果は、細胞が骨髄性サイトカインGM−CSFで前処置されなかった場合には検出されなかった(データは示さない)。ドーパミンは酸化性が高いので、そのアゴニストは、特に、より長い培養期間を必要とする処置で使用された(図6D)。さらに、本発明者らはまた、G−CSFだけで処置されたマウスから得られた細胞に比べて、G−CSFおよびドーパミン受容体アゴニストSKFまたは7−OH−DPAT(SKFまたは7−OH−DPATは、G−CSFとともに、マウスに注射された)で処置されたマウスから得られたマウス骨髄単核細胞(100μ
l中、200,00細胞)のより高い自発的な遊走を明らかにした(図6D)。
【0238】
ドーパミンおよびドーパミンアゴニストは、増大された細胞極性と相関して、CD34+細胞の遊走を増大した。
【0239】
実施例7 エピネフリンおよびノルエピネフリン受容体の活性は、造血幹細胞の機能を調節する。
本発明者らは、CD34+細胞が、別のカテコールアミン神経伝達物質によって調節されるのかどうかを調べるための実験を行った。ベータ−2アドレナリン作用性の受容体に特異的かつラベルされた抗体を用いたフローサイトメトリー分析を行うことにより、本発明者らは、CD34+細胞が、ベータ−2アドレナリン作用性の受容体を発現していること、および、動員された末梢血CD34+細胞が、より高いレベルのこれらの受容体を発現していることを見出した(図7A)。
【0240】
次に、アドレナリン作用性の神経伝達物質エピネフリン(10nM)およびノルエピネフリン(1および10nM)の、ヒトCD34+細胞の増殖に対する効果が評価された。実験条件は、ドーパミンアゴニストを用いた場合に実施された条件と類似であった。コロニーアッセイのため、エピネフリンおよびノルエピネフリンがメチルセルロースに添加された。両方の神経伝達物質は、ヒト臍帯血CD34+細胞のクローン化の能力を増加させることを見出した(図7B)。生着アッセイのため、細胞は、2日間、GM−CSF 5ng/mlを添加されたRPMI中で培養された。両方の神経伝達物質は、NOD/SCIDマウス中で、ヒトCD34+細胞の生着の促進を増大させることが見出された(図7D〜7E)。
【0241】
本発明者らはまた、ヒトCD34+細胞の遊走能力が、ノルエピネフリンによって影響を受けることを見出した。例えば、下部のウェルに入れられたノルエピネフリンは、CD34+細胞の遊走を増加させ、このことは、ヒト造血幹細胞および前駆細胞の遊走が、カテコールアミン神経伝達物質によって媒介され得ることを示している(図7C)。
【0242】
本発明者らのインビトロおよびインビボでの発見は、カテコールアミン神経伝達物質が、造血前駆細胞の増殖および遊走を直接的に調節することを明らかにしている。
【0243】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテコールアミンの受容体ならびに幹細胞の発達および機能におけるそれらの役割に関する。
【背景技術】
【0002】
骨髄移植(BMT)または造血幹細胞移植(HSCT)は、造血幹細胞(HSC)の移植を伴う、造血学および腫瘍学の分野における医学的処置である。BMTおよびHSCTは、血液または骨髄の病気またはある種のがんに苦しむ患者の治療においてもっともよく行われる。BMTまたはHSCT移植の目的は、不全なまたは病気の細胞系統と取って代わる成熟血液細胞に分化するであろう健康な幹細胞集団を患者に提供することである。
【0003】
造血幹細胞は骨髄の微環境内における稀少な細胞集団である。造血幹細胞は、生涯にわたって、TおよびBリンパ球といった免疫系の主な構成成分を含むすべての成熟血液細胞系統の連続的な産生を活発に維持しており、その間、未分化の幹細胞および前駆細胞の小さなプールを保持している(Mayani, 2003)。
【0004】
骨髄移植(BMT)の場合、HSCはドナーの大きな骨、一般的には骨盤から、骨の中央に届く長い針を介し摘出される。その技術は骨髄採取と呼ばれ、充分な量の原料を得るために文字通り何百回もの針の挿入が必要であるため、全身麻酔下で行われる。
【0005】
末梢血幹細胞(PBSC)は、現在、HSCTのための幹細胞の最も一般的な供給源である。PBSCは血液からアフェレーシスとして知られている工程を介して集められる。末梢幹細胞の収率は、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)の毎日の皮下注射によって高められる。
【0006】
幹細胞のもう一つの供給源は、臍帯血である。臍帯血は、成人の血液において通常見られるよりも高い濃度のHSCを有している。しかしながら、臍帯から得られ得る少量の血液(一般的には約50ml)は、この供給源を成人への移植にはあまり適さないものとしている。エクスビボでの臍帯血ユニットの拡大を用いたより新しい技術または異なるドナーからの2つの臍帯血ユニットの使用が、成人における臍帯血移植を可能にせしめるために検討されている。
【0007】
開発中の、または実験的および臨床的移植術において、幹細胞は、順番に循環系の中に放出される未熟および成熟骨髄性およびリンパ性血液細胞とともに自己を再増殖しながら、血液循環を通じて遊走し、骨髄(BM)にホーミングする。幹細胞の機能および免疫系の発達に極めて重要である造血幹細胞のホーミングおよび再増殖の過程はあまりよく解明されていない。
【0008】
造血幹細胞のホーミングおよび再増殖の過程を研究するために、いくつかのグループがヒト幹細胞の照射ベージュ、ヌード、Xid(X染色体に関連した免疫不全)、SCIDおよび非肥満性の糖尿病性SCID(NOD/SCID)マウスなどの免疫不全マウスへの生着(engraftment)(移植組織または細胞のホストの体内への組み込み)、ならびに羊の胎児への胎内移植を含むインビボモデルを確立してきており、結果として骨髄性およびリンパ性細胞の両方の多系統生着に成功している(McCune ら、1988、Nolta ら、1994、Lapidot ら、1992、Larochelle ら、1996、Civin ら、1996)。
【0009】
本発明者らは、経静脈的に移植されたSCIDまたはNOD/SCIDマウスの骨髄を高いレベルの骨髄性およびリンパ性両方の細胞とともに永続的に再増殖する能力に基づく初期ヒトSCID再増殖細胞(SRCs)のための機能的なインビボアッセイを開発してきた(Lapidotら、1992、Larochelleら、1996)。速度論的実験は、移植された細胞のほんの少量のフラクションのみが生着し、そしてこれらの細胞が多大な増殖および分化によってマウス骨髄を再増殖していることを示した。さらに、初期ヒト細胞はまた、第二のマウスレシピエントに生着するための能力を維持している(Cashman ら、1997)。CD34細胞表面抗原の発現に富んだ細胞集団およびCD38細胞表面抗原の発現に富んだ細胞集団の移植により、SRCの表現型がCD34+CD38-であることが明らかとなった(Larochelle ら、1996)。他の研究では未成熟のヒトCD34-細胞およびより分化したCD34+CD38+細胞が幾分か限定された生着の潜在能力を有していることが示唆されているので、その他の再増殖細胞も存在しているかもしれない(Zanjani ら、1998、Conneally ら、1997)。
【0010】
免疫不全の移植マウスにおけるヒト幹細胞のホーミングならびにそれらのその後の増殖および分化は、宿主の骨髄によって発現されているケモカイン、ストローマ細胞由来因子1(SDF−1)とドナーのホーミング細胞上で発現されているそのレセプターCXCR4との間の相互作用に依存していることが見出された。未成熟ヒトCD34+細胞を抗CXCR4中和抗体で前処理することによるSDF−1/CXCR4相互作用の干渉は、CD34+細胞のインビボでのホーミングおよび再増殖を遮断した。一方、未処理の細胞は数時間以内にレシピエントマウスのBM中にホーミングすることができた[Peled ら、1999(a)]。
【0011】
サイトカイン刺激による幹細胞の細胞表面上におけるCXCR4発現の増加は、ホーミングおよび生着の向上によって明らかにされるように、これらの細胞のSDF−1への応答を増強することが見出された。細胞表面にCXCR4を発現していない未成熟ヒトCD34+細胞は、内在CXCR4を含んでおり、移植後にインビボでオシレート(oscillate)し得る。この細胞表面CXCR4の上方調節の阻止は、低いレベルのヒトCD34+CXCR4-細胞生着を遮断する。これゆえ、再増殖能のあるヒト幹細胞の表現型はCD34+CD38-/低
CXCR4+細胞として定義される(Kollet ら、2002)。
【0012】
SDF−1(CXCL12とも呼ばれる)は骨髄性のストローマ細胞および内皮細胞を含む多くのタイプの細胞によって産生され、そして上述したように未成熟および成熟造血細胞に対する強力な化学誘引物質であり、定常状態における白血球輸送の恒常性を制御している。SDF−1は、幹細胞および前駆細胞のための生存因子としてはたらき、未成熟B細胞および巨核球の成長に関与している(McGrath ら、1999; Nagasawa ら、1996)。SDF−1は進化を通じて高度に保全されている。例えば、ヒトおよびマウスのSDF−1は交差反応性であり、そして1つのアミノ酸のみ異なっている。
【0013】
骨髄から循環系への幹細胞の放出および移動は臨床的移植に対して誘導される。G−CSFなどのサイトカインを用いた多重刺激が循環系からヒト幹細胞を補充(recruit)するために用いられる。G−CSF投与後、BM内でのSDF−1/CXCR4相互作用が移動過程に関与していることが判明した(Petit ら、2002)。
【0014】
好中球エラスターゼなどのタンパク質分解酵素は、G−CSF投与の間、骨髄中でSDF−1を分解することが判明した。同時に、骨髄内の造血細胞上のCXCR4の発現レベルは、それらの移動以前に増加していることが見出された。CXCR4またはSDF−1に対する中和抗体は、ヒトおよびマウスの幹細胞の移動を減少させ、細胞放出におけるSDF−1/CXCR4シグナル伝達を示している(Petit ら、2002)。
【0015】
したがって、幹細胞のホーミングおよび放出/移動は類似の機序を利用しており、かつ両方のプロセスにおいて、SDF−1/CXCR4相互作用が主要な役割を担っている。
【0016】
SDF−1はまた、白血病性細胞の遊走においても重要な役割を担っている。正常細胞および白血病性の細胞は遊走において類似の機序を共有しているが、SDF−1シグナル経路と同様にホーミングパターンにおいても異なることが、悪性のヒトPre−B ALL細胞(前駆B細胞型急性リンパ芽球性白血病)を正常な未成熟CD34+細胞と比較した場合に判明した(Spiegel ら、2004)。別の悪性疾患である急性骨髄性白血病(AML)においては、高レベルの細胞内CXCR4およびSDF−1が、表面上にCXCR4を発現していない細胞を含めたすべての白血病性細胞において見つかっている。CXCR4は、免疫不全マウスのBMへのこれらの細胞のホーミングに不可欠であり、これは、これらの細胞におけるCXCR4の動的調節を証明している(Tavor ら、2005)。
【0017】
血管内の内皮細胞の細胞表面におけるSDF−1の発現は、循環系からの骨髄への経内皮遊走の成功のために不可欠な段階である、せん断流下における細胞停止を誘導するために極めて重要であることが見出された。加えて、SDF−1は、遊走性のヒト幹細胞および前駆細胞上のCD44、LFA−1、VLA−4およびVLA−5などの主要な接着性分子を、ホーミングおよび経内皮遊走の多段階過程の一環として、活性化した(Peled ら、2000)。SDF−1は、細胞骨格を変化させ、かつ表面上のCD44発現を再配置させることによって、BMニッチの細胞外マトリックスへの幹細胞の接着および固定(anchorage)を媒介していると考えられている(Avigdor ら、2004)。
【0018】
SDF−1のCXCR4への結合によって誘発される、SDF−1刺激およびシグナル伝達経路後の細胞の運動性および遊走を誘導する機序は知られていない。MAPKでなく、PI3Kの活性化が、高濃縮未成熟CD34+細胞の運動性に必要であることが判明している。異型のPKCゼータアイソフォームは遊走の過程に不可欠であることが見出された。さらに、SDF−1によるPKCゼータの活性化はPI3K依存性であることが判明した(Petit ら、2005)。
【0019】
遊走および接着におけるその役割とは別に、SDF−1はまた、正常なヒトCD34+細胞および白血病性細胞を含む様々な細胞の増殖および生存に関与している(Lee ら、2002; Nishii ら、1999 および Tavor ら、2005)。
【0020】
カテコールアミンはアミノ酸であるタイロシンに由来する。カテコールアミンは2個の水酸基を有するベンゼン環、中間のエチル鎖および末端のアミノ基を有する(Lehninger, Principles of Biochemistry)。
【0021】
エピネフリン(アドレナリン)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)およびドーパミンなどのカテコールアミンは、カテコールまたは1,2−ジヒドロキシベンゼンの誘導体とみなされるかもしれず、そして、神経伝達物質として機能する(Lehninger, Principles of Biochemistry)。
【0022】
血液中の高レベルのエピネフリンは、心理学的な反応または環境的なストレッサーから誘発され得るストレスに関連している。エピネフリンは、心拍、血圧および血糖レベルの増加などの一般的な生理的な変化を引き起こす(Lehninger, Principles of Biochemistry)。
【0023】
トルカポン(主要なCOMT−阻害剤)などのいくつかの薬物は、全てのカテコールアミンのレベルを上昇させる(Wikipedia)。
【0024】
アドレナリン作用性受容体(またはアドレナリン受容体)は、カテコールアミンの標的であるG−タンパク質結合受容体の種類の1つである。アドレナリン作用性受容体は、それらの内因性のリガンド、カテコールアミン、アドレナリンおよびノルアドレナリンに特異的に結合し、これらによって活性化される(Wikipedia)。
【0025】
α−アドレナリン作用性受容体はノルエピネフリンおよびエピネフリンに結合するが、ノルエピネフリンがより高い親和性を有する。フェニレフリンはαレセプターの選択的なアゴニストである(Wikipedia)。
【0026】
ドーパミンは、様々な器官における3つの主要なカテコールアミンの神経伝達物質の1つである。ドーパミン受容体は、心臓血管、腎臓、ホルモン、中枢神経系および眼の機能の鍵となるレギュレーターとして広く確立されている。脳においては、ドーパミン作用性系統の不全はパーキンソン病および精神分裂病を引き起こす(Lim ら、2005、Foley ら、2004、およびGoldman ら、2004)。ドーパミン受容体のサブタイプはG−タンパク質結合受容体のファミリーに属し、そして7つの膜貫通領域の特徴的な構造を共有している。5つのドーパミン受容体のサブタイプは、配列およびシグナル伝達における類似性に関連して2つのファミリーに分類され得る。D1様のドーパミン受容体はドーパミンD1およびD5受容体を含む。それらはGsタンパク質によって媒介されるアデニル酸シクラーゼの活性化によって特徴付けられ、その結果として、より高濃度の二次メッセンジャー環化アデノシン−3,5−一リン酸(cAMP)を生じる。D1様のドーパミン受容体の遺伝子はイントロンを欠く。D2様の受容体グループは、Gi/0タンパク質にカップリングしてアデニル酸シクラーゼを阻害し得るドーパミンD2、D3およびD4受容体からなる。ドーパミンD2様受容体の遺伝子中には、イントロンが見られる(Sibley ら、1992)。
【0027】
7つの膜貫通領域を有する異なる受容体、ニューロキニン−1および2の造血における役割が近年報告されている。この研究は、p53が、NK2受容体のリガンドの1つである神経伝達物質ニューロキニン−Aの前駆細胞における抗増殖効果を部分的に調節することを開示している。この効果はサイトカインGM−CSFによって反転され得る(Vishalakumar ら、2005)。
【0028】
免疫系と神経系との間のクロストークがこれまでに示唆されており、そして神経−免疫相互作用は神経および免疫系の相互調節を可能にせしめる。研究報告はドーパミンが神経−免疫相互作用の重要な媒介物質の1つであることを示している(Basu ら、2000)。Ilaniら(2004年)は、脳が免疫活性化されたT細胞に作用および調節する経路を提案している。Leviteら(2001年)およびBesser(2005年)はドーパミンがその特異的な受容体を介してT細胞を直接的に活性化できることを示し、そして、中枢神経系でのおよび、おそらくは末梢系での、インテグリン媒介性のT細胞のトラフィッキングおよび流出におけるドーパミンの考えられ得る役割について示唆している。
【発明の概要】
【0029】
ある局面において、本発明は、幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、任意には、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせた、カテコールアミン受容体アゴニストの使用に関する。
【0030】
本発明のある実施態様では、医薬は、造血幹細胞移植(HSCT)および/または造血前駆細胞移植を改良または促進するためのものである。
【0031】
本発明のさらなる実施態様では、医薬は、成熟血液細胞系統の再増殖を改良または促進するためのものである。
【0032】
本発明のさらなる実施態様では、医薬は、幹細胞および/または前駆細胞へのエクスビボでの移植前の投与のためのものであり、その結果、幹細胞ならびに/または前駆細胞の遊走、生着能および/もしくは増殖を増大させる。
【0033】
本発明のさらなる実施態様では、移植に使用される幹細胞および/または前駆細胞は、G−CSF処置されたドナー由来である。
【0034】
本発明のさらなる実施態様では、医薬は、GM−CSFおよび/もしくはG−CSFのような骨髄性サイトカイン、またはカテコールアミン受容体をエンコードする発現ベクターなどの、幹細胞または前駆細胞中のカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物を含む。
【0035】
本発明の別の実施態様では、医薬は、健康なドナーまたはがん治療を受けている患者へのインビボでの投与のためのものであり、その結果、骨髄およびその他の組織部位からの血液への幹細胞または前駆細胞の移動を増大させ、そして移植のための血液からの幹細胞および/または前駆細胞の採取を容易にする。
【0036】
本発明は、骨髄およびその他の組織部位からの血液への幹細胞および/または前駆細胞の移動を改良または促進するため、ならびに健康なドナーまたはがん治療を受けている患者の血液からの幹細胞および/もしくは前駆細胞の採取を容易にするための医薬の製造における、任意には骨髄性サイトカインと組み合わせた、カテコールアミン受容体アゴニストの使用を提供する。
【0037】
加えて、本発明は、成熟血液細胞系統の再増殖のための造血幹細胞移植(HSCT)および/または造血前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、骨髄性サイトカインと組み合わせたカテコールアミン受容体アゴニストの使用を提供するものであって、該医薬は、幹細胞および/または前駆細胞へのエクスビボでの移植前の投与のためのものであり、その結果、幹細胞ならびに/または前駆細胞の生着能および/もしくは増殖を増大させる。
【0038】
また、本発明は、成熟血液細胞系統の再増殖のための造血幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、骨髄性サイトカインを除く、造血幹細胞または前駆細胞中のカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物の使用を提供する。
【0039】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物は、前記神経伝達物質であるカテコールアミン受容体をエンコードする発現ベクターまたは内因性のカテコールアミン受容体の発現レベルを誘導することのできるベクターである。
【0040】
ある局面では、本発明は、造血細胞の産生を増大させるための医薬の製造における、任意には、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストで刺激された造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団の使用を提供する。
【0041】
本発明のある実施態様では、刺激された細胞は、任意には、カテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストをインビボで投与された個体から採取される。
【0042】
本発明の別の実施態様では、細胞の刺激はエクスビボで行われる。
【0043】
本発明のさらなる実施態様では、細胞は、骨髄性サイトカインGM−CSFおよび/またはG−CSFなどの、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で刺激される。
【0044】
本発明のさらなる実施態様では、幹細胞または前駆細胞は、G−CSF処置されたドナー由来である。
【0045】
本発明はまた、造血幹細胞移植(HSCT)または前駆細胞移植治療のための医薬の製造における、任意には、骨髄性サイトカインと組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストを投与された個体の血液から採取された造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団の使用に関する。
【0046】
加えて、本発明は、成熟血液細胞系統の再増殖のための造血幹細胞移植(HSCT)もしくは造血前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、GM−CSFおよび/もしくはG−CSF、およびカテコールアミン受容体アゴニストでエクスビボにて刺激された造血幹細胞ならびに/または前駆細胞を含む細胞集団の使用に関する。
【0047】
また、本発明は、移植治療、組織再生および/または体細胞治療のための医薬の製造における、カテコールアミン受容体アゴニスト、および幹細胞および/もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物でエクスビボにて刺激された幹細胞ならびに/または前駆細胞を含む細胞集団の使用に関する。
【0048】
本発明のある実施様態では、幹細胞および/または前駆細胞は、組換え
DNAを内包する。
【0049】
本発明のさらなる実施態様では、幹細胞および/または前駆細胞は、CD34+幹細胞および/または前駆細胞である。
【0050】
本発明の別のさらなる実施態様では、医薬は、体細胞治療のためのものである。
【0051】
本発明の別のさらなる実施態様では、医薬は、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、脂肪肉腫、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、悪性胚細胞性腫瘍から選択されるがん;無巨核球性血小板減少症(AMT)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、先天性血球減少症、エヴァンズ症候群、ファンコーニ貧血、コストマン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミアから選択される血液障害;副腎脳白質ジストロフィ、不全リンパ球症候群、先天性角化不全症、家族性血球貧食性リンパ組織球症、ゴーシェ病、ギュンター病、ハンター症候群、ハーラー症候群、遺伝性神経セロイドリポフスチノーシス、クラッベ病、ランゲルハンス細胞組織球症、レッシュ−ナイハン症候群、白血球接着不全、大理石骨病などの遺伝性代謝障害;アデノシンデアミナーゼ欠損症(ADAまたはSCID−ADA)、重症複合型免疫不全(SCID)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)、高IgM免疫不全症候群(HIM)から選択される免疫疾患;アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(ルー・ゲーリグ病としても通常知られている)から選択される神経系疾患;筋ジストロフィ;多発性硬化症;関節炎;脊髄損傷;脳損傷;脳卒中;心臓病;肝臓および網膜の疾患;糖尿病;ならびに化学療法もしくは放射線治療の副作用から選択される疾患、障害または症状の治療のためのものである。
【0052】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、ドーパミンまたは、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムなどのドーパミン受容体アゴニストである。
【0053】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、例えば、エピネフリンまたはノルエピネフリンといった、ベータアドレナリン作用性のアゴニストなどのアドレナリン作用性のアゴニストである。
【0054】
別の局面では、本発明は、異常な特性を有している幹細胞および/もしくは前駆細胞集団の成長、発達、生着ならびに/または再増殖の能力を減少させるための医薬の製造における、カテコールアミン受容体のアンタゴニストの使用に関する。
【0055】
本発明のある実施態様では、医薬は、急性骨髄性白血病などの白血病の治療のためのものである。
【0056】
本発明のさらなる実施態様では、アンタゴニストは、例えば、クロザピン、フルペンチキソール、ピモジド、レモキシプリド、ルペンチキソール(lupenthixol)、ドンペリドン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ジプラシドン、ロキサピン、チオリダジン、メトクロプラミド、クロルプロチキセンおよびドロペリドールなどのドーパミン受容体アンタゴニストである。
【0057】
本発明のさらなる実施態様では、アンタゴニストは、アドレナリン作用性の受容体アンタゴニストである。
【0058】
別の局面では、本発明は、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物を用いてエクスビボで刺激された幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む移植治療に適した幹細胞ならびに/または前駆細胞を含む細胞集団を提供する。
【0059】
本発明のある実施様態では、細胞集団は、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で刺激された幹細胞および/または前駆細胞を含む。
【0060】
本発明のさらなる実施態様では、カテコールアミンは、ドーパミンであり、また、アゴニストは、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムといったドーパミン受容体アゴニストである。
【0061】
本発明の別のさらなる実施態様では、カテコールアミンは、ノルエピネフリン、エピネフリンであり、また、アゴニストは、ベータアドレナリン作用性の受容体アゴニストのようなアドレナリン作用性の受容体アゴニストである。
【0062】
別の局面では、本発明は、カテコールアミン受容体アゴニストならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物に関する。
【0063】
別のさらなる局面では、本発明は、ドーパミンまたはドーパミン受容体アゴニストならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物に関する。
【0064】
さらに別の局面では、本発明は、アドレナリン作用性の受容体アゴニストならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物に関する。
【0065】
さらに別の局面では、本発明は、ノルエピネフリンまたはエピネフリンならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物に関する。
【0066】
さらに別の局面では、本発明は、薬学的に許容され得る担体、ならびに、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節を誘導することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物で刺激された造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団を含む医薬組成物に関する。
【0067】
本発明のある実施態様では、造血幹細胞および/または前駆細胞は、G−CSF処置された個体由来である。
【0068】
本発明のある実施態様では、医薬組成物は、G−CSFおよび/もしくはGM−CSFのような骨髄性サイトカインといった、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節を誘導することのできる薬物で刺激された造血幹細胞ならびに/または前駆細胞を含む。
【0069】
本発明は、薬学的に許容され得る担体、ならびに、カテコールアミン受容体アゴニストおよびG−CSFもしくはGM−CSFで刺激された造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団を含む医薬組成物を提供する。
【0070】
本発明のある実施態様では、幹細胞は、インビボでG−CSFまたはGM−CSFで刺激される。
【0071】
本発明のある実施態様では、幹細胞は、インビトロでG−CSFまたはGM−CSFで刺激される。
【0072】
本発明のある実施態様では、幹細胞は、インビボでカテコールアミン受容体アゴニストで刺激される。
【0073】
本発明のある実施態様では、幹細胞は、インビトロでカテコールアミン受容体アゴニストで刺激される。
【0074】
本発明はまた、薬学的に許容され得る担体、ならびに、任意には、骨髄性サイトカインと組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストでインビボにて刺激された幹細胞および/または前駆細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0075】
加えて、本発明は、薬学的に許容され得る担体、ならびに、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストでエクスビボにて刺激された幹細胞および/または前駆細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0076】
本発明のある実施態様では、幹細胞および/または前駆細胞は、組換え
DNAを内包する。
【0077】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、例えば、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムなどのドーパミン受容体アゴニストである。
【0078】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、エピネフリンおよびノルエピネフリンのような、ベータアドレナリン作用性のアゴニストなどのアドレナリン作用性のアゴニストである。
【0079】
本発明はまた、幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植において使用するための、改良された、またはより優れた細胞組成物の製造方法であって、造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団を提供すること、ならびに、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物およびカテコールアミン受容体アゴニストで細胞集団を刺激することを含む方法に関する。
【0080】
また、本発明は、細胞集団中の造血幹細胞および/もしくは前駆細胞の遊走、生着、再増殖の能力ならびに/または増殖を増大させるための方法であって、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストで細胞集団を刺激することを含む方法に関する。
【0081】
本発明のある実施態様では、集団中の幹細胞および/または前駆細胞は、G−CSFもしくはGM−CSF処置されたドナー由来である。
【0082】
本発明のある実施様態では、方法は、骨髄性サイトカインG−CSFおよび/またはGM−CSFのような、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物で細胞を刺激することを含む。
【0083】
加えて、本発明は、幹細胞移植(SCT)ならびに/もしくは前駆細胞移植において使用するための、改良された、またはより優れた細胞組成物の製造方法であって、造血幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む細胞集団を、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物、およびG−CSFおよび/もしくはGM−CSFで刺激することを含む方法に関する。
【0084】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物ならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFでの刺激は、エクスビボにて行われる。
【0085】
本発明の別の実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物での刺激はエクスビボにて行われ、そして、G−CSFおよび/またはGM−CSFでの刺激はインビボにて行われる。
【0086】
本発明の別のさらなる実施態様では、幹細胞および/または前駆細胞は、組換え
DNAを含む幹細胞である。
【0087】
本発明は、造血幹細胞を含む細胞集団を提供すること、幹細胞におけるカテコールアミン神経伝達物質受容体の発現レベルを上方調節すること、および、カテコールアミン受容体アゴニストへ細胞を暴露することを含む、臨床的移植のための長期培養起始細胞の製造方法を提供する。
【0088】
本発明のある実施態様では、幹細胞は、G−CSFまたはGM−CSF処置されたドナー由来である。
【0089】
本発明のある実施態様では、細胞におけるカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節は、GM−CSFおよび/またはG−CSFなどの骨髄性サイトカインへ細胞を暴露することによって行われる。
【0090】
本発明はまた、幹細胞および/もしくは前駆細胞を提供すること、細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で細胞を刺激すること、および、表面において増大されたレベルの受容体を発現している細胞を選別することを含む、移植における使用のための、改良された、もしくはより優れた造血幹細胞ならびに/または前駆細胞組成物の製造方法を提供する。
【0091】
本発明のある実施態様では、細胞は、CD34+細胞である。
【0092】
本発明のさらなる実施態様では、細胞は、CD34+/CD38−/低
細胞である。
【0093】
本発明のさらなる実施態様では、カテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物は、GM−CSFまたはG−CSFである。
【0094】
本発明の別のさらなる実施態様では、カテコールアミン神経伝達物質受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物は、カテコールアミン神経伝達物質受容体をエンコードする発現ベクターまたは内因性の受容体の発現レベルを上方調節することのできるベクターである。
【0095】
本発明の別のさらなる実施態様では、選別された細胞は、未刺激の細胞における受容体のレベルと比較して、細胞表面において2〜4倍高いレベルのカテコールアミン神経伝達物質受容体を提示している。
【0096】
本発明は、造血幹細胞を含む細胞集団を提供すること、幹細胞におけるカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節を誘導するためにGM−CSFおよび/またはG−CSFで細胞集団を刺激すること、ならびに、カテコールアミン受容体アゴニストと細胞集団を接触させることを含む、臨床的移植のための長期培養起始細胞の製造方法を提供する。
【0097】
ある局面では、本発明は、GM−CSFおよび/またはG−CSFで、ならびに、カテコールアミン受容体アゴニストで刺激された造血幹細胞を含む、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ移植することを含む、骨髄の再増殖を促進するための方法を提供する。
【0098】
別の局面では、本発明は、カテコールアミン受容体アゴニストで、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で刺激された幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ投与することを含む、幹細胞移植(SCT)ならびに/または前駆細胞移植治療を改良または促進するための方法を提供する。
【0099】
本発明のある実施態様では、幹細胞または前駆細胞は、造血幹細胞および/または前駆細胞である。
【0100】
本発明の別の実施態様では、集団中の幹細胞および/または前駆細胞は、G−CSFまたはGM−CSF処置された被験個体由来である。
【0101】
本発明の別の実施態様では、前記方法は、例えば、GM−CSFおよび/もしくはG−CSFといった、骨髄性サイトカインのような、幹細胞または前駆細胞におけるカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で細胞を刺激することを含む。
【0102】
本発明の別の実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストでの刺激は、エクスビボで行われる。
【0103】
本発明の別の実施態様では、骨髄性サイトカインでの刺激は、インビボで行われる。
【0104】
本発明の別の実施態様では、集団中の幹細胞または前駆細胞は、組換え
DNAを含む細胞である。
【0105】
本発明の別の実施態様では、必要とする患者は、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、脂肪肉腫、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、悪性胚細胞性腫瘍から選択されるがん;無巨核球性血小板減少症(AMT)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、先天性血球減少症、エヴァンズ症候群、ファンコーニ貧血、コストマン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミアから選択される血液障害;副腎脳白質ジストロフィ、不全リンパ球症候群、先天性角化不全症、家族性血球貧食性リンパ組織球症、ゴーシェ病、ギュンター病、ハンター症候群、ハーラー症候群、遺伝性神経セロイドリポフスチノーシス、クラッベ病、ランゲルハンス細胞組織球症、レッシュ−ナイハン症候群、白血球接着不全、大理石骨病などの遺伝性代謝障害;アデノシンデアミナーゼ欠損症(ADAまたはSCID−ADA)、重症複合型免疫不全(SCID)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)、高IgM免疫不全症候群(HIM)から選択される免疫疾患;アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(ルー・ゲーリグ病としても通常知られている)から選択される神経系疾患;筋ジストロフィ;多発性硬化症;関節炎;脊髄損傷;脳損傷;脳卒中;心臓病;肝臓および網膜の疾患;糖尿病;ならびに化学療法もしくは放射線治療の副作用から選択される疾患、障害または症状を患っている。
【0106】
本発明は、GM−CSFもしくはG−CSFで、および、カテコールアミン受容体アゴニストで刺激された造血幹細胞ならびに/または造血前駆細胞を含む、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ投与することを含む、幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療の方法に関する。
【0107】
本発明のある実施態様では、GM−CSFまたはG−CSFでの刺激は、インビボで行われる。
【0108】
本発明は、治療的に有効量の、幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む細胞集団ならびにカテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物を、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物とともに、必要とする患者へ投与することを含む、幹細胞移植(SCT)ならびに/または前駆細胞移植治療を改良または促進する方法に関する。
【0109】
本発明のある実施態様では、前記方法は、造血幹細胞移植(HSCT)または前駆細胞移植治療を改良または促進するためのものである。
【0110】
本発明のある実施態様では、前記方法は、GM−CSFおよびG−CSFのような骨髄性サイトカインなどの、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物の投与を含む。
【0111】
本発明のある実施態様では、幹細胞および/または前駆細胞は、組換え
DNAを含む。
【0112】
本発明のある実施態様では、必要とする患者は、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、脂肪肉腫、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、悪性胚細胞性腫瘍から選択されるがん;無巨核球性血小板減少症(AMT)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、先天性血球減少症、エヴァンズ症候群、ファンコーニ貧血、コストマン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミアから選択される血液障害;副腎脳白質ジストロフィ、不全リンパ球症候群、先天性角化不全症、家族性血球貧食性リンパ組織球症、ゴーシェ病、ギュンター病、ハンター症候群、ハーラー症候群、遺伝性神経セロイドリポフスチノーシス、クラッベ病、ランゲルハンス細胞組織球症、レッシュ−ナイハン症候群、白血球接着不全、大理石骨病などの遺伝性代謝障害;アデノシンデアミナーゼ欠損症(ADAまたはSCID−ADA)、重症複合型免疫不全(SCID)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)、高IgM免疫不全症候群(HIM)から選択される免疫疾患;アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(ルー・ゲーリグ病としても通常知られている)から選択される神経系疾患;筋ジストロフィ;多発性硬化症;関節炎;脊髄損傷;脳損傷;脳卒中;心臓病;肝臓および網膜の疾患;糖尿病;ならびに化学療法もしくは放射線治療の副作用から選択される疾患、障害または症状を患っている。
【0113】
ある局面では、本発明は、治療的に有効量のカテコールアミン受容体アゴニストならびに造血幹細胞および/もしくは前駆細胞を、必要とする患者へ投与することを含む、造血幹細胞移植(HSCT)および/または造血前駆細胞移植、ならびに、少なくとも1つの血液細胞系統の再形成を、改良または促進するための方法に関する。
【0114】
別の局面では、本発明は、骨髄性サイトカインを除く、任意には、カテコールアミン受容体アゴニストと組み合わせた、治療的に有効量の幹細胞および/または前駆細胞ならびに幹細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物を、必要とする患者へ投与することを含む、幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療を改良または促進するための方法に関する。
【0115】
別のさらなる局面では、本発明は、請求項40〜43のいずれかに記載の、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ移植することを含む、組織置換、生着、再生および/または再増殖治療のための方法に関する。
【0116】
本発明のある実施態様では、組織は、造血の、骨の、軟骨の、心性のまたは神経の組織である。
【0117】
別のさらなる局面では、本発明は、治療的に有効量のカテコールアミン受容体アゴニストを、必要とする患者へ投与することを含む、骨髄の質量を増大させる方法に関する。
【0118】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、例えば、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムなどのドーパミン受容体アゴニストである。
【0119】
別のさらなる局面では、本発明は、治療的に有効量のカテコールアミン受容体アゴニストを被験個体へ投与することを含む、骨髄およびその他の組織部位から被験個体の血液への幹細胞または前駆細胞の移動を促進するための方法に関する。
【0120】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、例えば、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムなどのドーパミン受容体アゴニストである。
【0121】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、アドレナリン作用性のアゴニストである。
【0122】
本発明のある実施態様では、アドレナリン作用性のアゴニストは、エピネフリンまたはノルエピネフリンである。
【0123】
別の局面では、本発明は、異常な特性を掲示している、幹細胞および/もしくは前駆細胞の集団の生着、再増殖の能力ならびに/または増殖を、必要とする患者において減少させるための方法であって、細胞集団を治療的に有効量のカテコールアミン神経伝達物質のアンタゴニストに暴露することを含む方法に関する。
【0124】
本発明のある実施態様では、前記暴露は、エクスビボで行われる。
【0125】
本発明のある実施態様では、前記暴露は、インビボで行われる。
【0126】
別のさらなる局面では、本発明は、治療的に有効量のカテコールアミン神経伝達物質のアンタゴニストを、必要とする患者へ投与することを含む、白血病を治療するための方法に関する。
【0127】
本発明のある実施態様では、アンタゴニストは、クロザピン、フルペンチキソール、ピモジド、レモキシプリド、ルペンチキソール、ドンペリドン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ジプラシドン、ロキサピン、チオリダジン、メトクロプラミド、クロルプロチキセンおよびドロペリドールなどのドーパミン受容体アンタゴニストである。
【0128】
本発明のある実施態様では、アンタゴニストは、アドレナリン作用性の受容体アンタゴニストである。
【0129】
本発明は、G−CSFまたはGM−CSFを含む第1要素;少なくとも1つのカテコールアミン受容体アゴニストを含む第2要素;および少なくとも1つのカテコールアミン受容体アゴニストの投与の開始前の、G−CSFまたはGM−CSFの投与に関する説明書を含む第3要素を含むキットを提供する。
【0130】
本発明は、治療的に有効量の少なくとも1つのカテコールアミン受容体アゴニスト、および少なくとも1つの骨髄性サイトカインで造血幹細胞を刺激することを含む、初期造血幹細胞の増殖ならびに/または遊走を促進するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1A】顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)処置個体の骨髄サンプルからのCD34+細胞における増大されたドーパミン受容体を示す。G−CSF処置または未処置の個体の骨髄(BM)からのCD34+細胞を、ドーパミン3またはドーパミン5受容体について染色した。二次抗体(Abs)で染色された細胞は、対照としてのみ用いられた。少なくとも3回の独立した実験からの平均蛍光強度が示されている。
【図1B】顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)処置個体の骨髄サンプルからのCD34+細胞における増大されたドーパミン受容体を示す。G−CSF処置または未処置の個体の骨髄(BM)からのCD34+細胞を、ドーパミン3またはドーパミン5受容体について染色した。二次抗体(Abs)で染色された細胞は、対照としてのみ用いられた。フローサイトメトリー分析を示している。
【図1C】顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)処置個体の骨髄サンプルからのCD34+細胞における増大されたドーパミン受容体を示す。G−CSF処置または未処置の個体の骨髄(BM)からのCD34+細胞を、ドーパミン3またはドーパミン5受容体について染色した。二次抗体(Abs)で染色された細胞は、対照としてのみ用いられた。ヒト幹細胞を前もって生着させられた、NOD/SCIDキメラマウスが、未処置のまま(健常ヒトBM)、または、300μg/kg/日のG−CSFの皮下注射で5日間処置された(G−CSFで処置されたBM)。キメラなマウスのBMから回収されたヒト細胞は、間接的に、坑ヒトドーパミン受容体3または5抗体で、および、ヒト特異的坑CD34−APC CD38−PEモノクローナル抗体で、示されるように免疫ラベルされた。フローサイトメトリー分析からのデータは、未処置のマウスからのCD34+/CD38高BM細胞と比較したドーパミン受容体の平均蛍光強度の、対照に対する割合で表されている。
【図2】ドーパミン受容体の発現が、より成熟したCD34+/CD38高細胞に比べて、初期のCD34+/CD38-/低細胞において高いことを示している。動員されたヒト末梢血(MPB)CD34+細胞を、表面上のドーパミン受容体3および5(上部および下部のパネル)について染色し、またヒト特異的坑CD34−APC CD38−PEで染色した。ヒストグラムプロットは、CD34+/CD38高(R1)およびCD34+/CD38-/低(R2)細胞集団におけるドーパミン受容体発現のレベルを示している。
【図3】CD34+/CD38-/低細胞におけるドーパミン受容体発現のレベルが、インビトロでのGM−CSFでの処置によって増加することを示している。RPMI(対照)または顆粒球コロニー刺激因子(GM−CSF)を添加したRPMIでの3日間の培養に続けて、MPB由来の細胞、健常ヒトBMまたは臍帯血(CB)を、ヒト特異的坑CD34−APC、CD38−PEで染色し、またドーパミン受容体5(下部パネル)または3(上部パネル)について染色した。
【図4A】ドーパミンアゴニストが、クローン化可能前駆細胞の含量およびCD34+細胞の生着能力を増大することを示している。CB CD34+細胞(1×103細胞/mlの濃度で)が、エリスロポエチン(Epo)、幹細胞因子(SCF)およびインターロイキン−3(IL−3)のサイトカインを添加した、半固体培養液に播種された。GM−CSF、G−CSF、およびアゴニストSKFまたは7−OH−DPATが、示されるように添加された。14日後、形態学的基準にしたがって、コロニーが記録された。データは、対照の未処置細胞(GM CSFでは処置されているが、アゴニストでは処置されていない)と比較した、処置された細胞における半固体培養液中のコロニーの頻度を示している。
【図4B】ドーパミンアゴニストが、クローン化可能前駆細胞の含量およびCD34+細胞の生着能力を増大することを示している。放射線照射されたNOD/SCIDマウスは、1〜3×105MPBヒトCD34+細胞を注射された。示されている場合には、注射に先立って、CD34+細胞は、1μM SKF、100ng/ml 7−OH−DPAT、または、ドーパミンアンタゴニスト クロザピンと2〜4日間インキュベートされた。ヒトCD34+細胞の生着を測定するために、マウスは、移植後、5週間で犠牲にされ、そして、骨髄細胞が抽出され、そしてヒトCD45マーカーでラベルされた。
【図4C】ドーパミンアゴニストが、クローン化可能前駆細胞の含量およびCD34+細胞の生着能力を増大することを示している。放射線照射されたNOD/SCIDマウスに注射されたCB CD34+細胞の生着のレベルの結果を示している。示されている場合には、細胞は、注射に先立って、1μM 7−OH−DPATと(GM−CSFとともに、またはなしで)、2〜4日間インキュベートされた。*はp<0.05であることを示している。
【図4D】ドーパミンアゴニストが、クローン化可能前駆細胞の含量およびCD34+細胞の生着能力を増大することを示している。マウスにおけるヒト細胞の二次移植の生着を示している。二次移植のためのヒト細胞は、異種移植されたキメラマウスのBMから抽出される。キメラマウスは、ドーパミンアゴニストで処置されたCBヒト細胞または未処置のCBヒト細胞を用いた、マウスの一次移植により作出された。したがって、二次移植のためには、放射照射されたNOD/SCIDマウスが、ドーパミンアゴニスト7−OH−DPATで処置されたヒトCB CD34+細胞で、または、未処置のヒトCB CD34+細胞で作出された、キメラマウスのBMから抽出された、等しい量のヒトCD45+細胞を、注射された。二次移植の後の生着のレベルが、対照からの生着に対する%として表されている。
【図5】ドーパミンアゴニストがBM細胞質量を変化させることを示している。マウスは、ドーパミンアゴニスト7−OH−DPAT(3mg/kg)、アンタゴニスト フルペンチキソール(Flu、1.5mg/kg)の5回の毎日の腹腔内注射で、処置されるか、未処置で残された(対照)。動物は、犠牲死され、そして、対照または処置されたマウスのBMから細胞が洗い流された。結果は、4本の骨(それぞれのマウスの2本の大腿骨+2本の脛骨)における白血球数(WBC)の数を示している。何匹かのマウスの平均が示されている。
【図6A】ドーパミンアゴニストが、CB CD34+細胞の細胞極性を増大させること、そして、ドーパミンが化学走化性能を有することを示している。CB CD34+細胞は、ヒアルロン酸(HA)被覆カバースリップ上に、未処置(対照)で、またはSFKもしくは7−OH−DPATの存在下で、植え付けられた。カバースリップを洗浄した後、接着細胞が固定され、透過され、そして間接的に坑ヒトドーパミン受容体5でまたは重合したアクチンを検出するためにTritcファロイジンでラベルされた。3回の独立した実験からの伸長した、および高度に極性化した形態を有する細胞の数の定量を示している。*は対照に対して、p<0.05であることを示している。
【図6B】ドーパミンアゴニストが、CB CD34+細胞の細胞極性を増大させること、そして、ドーパミンが化学走化性能を有することを示している。CB CD34+細胞は、ヒアルロン酸(HA)被覆カバースリップ上に、未処置(対照)で、またはSFKもしくは7−OH−DPATの存在下で、植え付けられた。カバースリップを洗浄した後、接着細胞が固定され、透過され、そして間接的に坑ヒトドーパミン受容体5でまたは重合したアクチンを検出するためにTritcファロイジンでラベルされた。極性化された細胞におけるドーパミン受容体の大量の集積を示す(白色矢印)代表的な写真を示している。
【図6C】ドーパミンアゴニストが、CB CD34+細胞の細胞極性を増大させること、そして、ドーパミンが化学走化性能を有することを示している。CB CD34+細胞は、ヒアルロン酸(HA)被覆カバースリップ上に、未処置(対照)で、またはSFKもしくは7−OH−DPATの存在下で、植え付けられた。カバースリップを洗浄した後、接着細胞が固定され、透過され、そして間接的に坑ヒトドーパミン受容体5でまたは重合したアクチンを検出するためにTritcファロイジンでラベルされた。ヒト臍帯血CD34+細胞(GM−CSFで2日間、終夜で前処置された)の、下部のチャンバーに入れられた10nMドーパミンへの、トランスウェル遊走の結果を示している。
【図6D】ドーパミンアゴニストが、CB CD34+細胞の細胞極性を増大させること、そして、ドーパミンが化学走化性能を有することを示している。CB CD34+細胞は、ヒアルロン酸(HA)被覆カバースリップ上に、未処置(対照)で、またはSFKもしくは7−OH−DPATの存在下で、植え付けられた。カバースリップを洗浄した後、接着細胞が固定され、透過され、そして間接的に坑ヒトドーパミン受容体5でまたは重合したアクチンを検出するためにTritcファロイジンでラベルされた。G−CSFおよびドーパミン受容体アゴニストSKFもしくは7−OH−DPATで、またはG−CSFだけで(対照)処置されたマウスから得られた骨髄単核細胞の自発的な遊走。*は、p<0.05であることを示している。
【図7A】ヒトCD34+細胞が、β2アドレナリン作用性の受容体を発現していること、および、受容体が、ノルエピネフリンまたはエピネフリンでの刺激に応答して、造血幹細胞のコロニー形成、遊走および生着を増大させていることを示している。ヒト臍帯血CD34+細胞が、表面においてβ2アドレナリン作用性の受容体を発現していること、および、動員された末梢血(MPB)CD34+細胞が、より高いレベルのこれらの受容体を発現していることを示している。
【図7B】ヒトCD34+細胞が、β2アドレナリン作用性の受容体を発現していること、および、受容体が、ノルエピネフリンまたはエピネフリンでの刺激に応答して、造血幹細胞のコロニー形成、遊走および生着を増大させていることを示している。CD34+細胞の、1もしくは10nMのノルエピネフリン(左パネル)または10nMのエピネフリン(右パネル)での刺激の、臍帯血CD34+細胞における(対照の未処置の細胞に比べた)コロニー形成への効果を示している。
【図7C】ヒトCD34+細胞が、β2アドレナリン作用性の受容体を発現していること、および、受容体が、ノルエピネフリンまたはエピネフリンでの刺激に応答して、造血幹細胞のコロニー形成、遊走および生着を増大させていることを示している。ヒトCB CD34+細胞(1〜2日間、GM−CSFで終夜で前処置された)の、トランスウェルの下部のチャンバーに入れられた1もしくは10nMのノルエピネフリンに対する遊走(左パネル)、または、ヒトMPB CD34+細胞の、トランスウェルの下部のチャンバーに入れられた10nMのノルエピネフリンに対する遊走(右パネル)。
【図7D】ヒトCD34+細胞が、β2アドレナリン作用性の受容体を発現していること、および、受容体が、ノルエピネフリンまたはエピネフリンでの刺激に応答して、造血幹細胞のコロニー形成、遊走および生着を増大させていることを示している。臍帯血CD34+細胞を注射されたNOD/SCIDマウスの生着。細胞は、注射に先立って、ノルエピネフリンとともに、またはなしで、2日間、GM−CSFで処置された。数字は生着のレベルを示している。
【図7E】ヒトCD34+細胞が、β2アドレナリン作用性の受容体を発現していること、および、受容体が、ノルエピネフリンまたはエピネフリンでの刺激に応答して、造血幹細胞のコロニー形成、遊走および生着を増大させていることを示している。臍帯血CD34+細胞を注射されたNOD/SCIDマウスの生着。細胞は、注射に先立って、エピネフリンもしくはノルエピネフリンとともに、またはなしで、2日間、GM−CSFで処置された。
【発明を実施するための形態】
【0132】
本発明に基づいて、ドーパミン受容体などのカテコールアミン受容体ならびにエピネフリンおよびノルエピネフリンのβ2アドレナリン作用性の受容体の活性が、ヒト造血幹細胞/前駆細胞の発達、増殖、遊走および生着能力において中心的な役割を担っていることが見出された。したがって、本発明のある側面は、カテコールアミン受容体アゴニストもしくはアンタゴニスト、ならびに/または、幹細胞および/もしくは前駆細胞の増殖、発達、遊走および/もしくは生着能力を変えるためのカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節もしくは下方調節を誘導することのできる薬物の使用に関する。
【0133】
ドーパミン受容体は、心臓血管系、腎臓系、ホルモン系、中枢神経系および眼の機能、免疫細胞応答を含む多くの生物学的過程の重要なレギュレーターとして広く確立されているが、現在のところ、幹細胞または造血におけるそれらの役割は知られていない。Kielら(2005)による最近の文献は、ネズミの幹細胞が、他の多くの遺伝子とともにドーパミン受容体を発現していることをジーンアレイアプローチによって分析したことが開示されているのみである。しかしながら、この文献はこれらの細胞におけるドーパミン受容体の役割については何ら触れていない。
【0134】
本発明者らは、本明細書中で、ヒトCD34+幹細胞に富んだ細胞集団が、機能的ドーパミン3およびドーパミン5受容体を発現すること、ならびに、移植により適している(下記参照)より初期の細胞である、CD34+/CD38-/低
細胞の部分集団が、より分化の進んだ細胞である、CD34+/CD38高
細胞の部分集合に比べて、より高いレベルのこれらの受容体を発現していることを明らかにしている。さらに、本発明者らは、以下のことを明らかにしている:ドーパミン受容体アゴニストで刺激されたCD34+細胞が、増大されたコロニー形成ユニット(CFU−M)を寒天培養に産生する(分化増殖能力を獲得した造血前駆細胞の定量化のために一般的に用いられるインビトロアッセイ、下記参照)ので、ドーパミン受容体の活性が、幹細胞の増殖および発達において中心的な役割を担っていること、ドーパミン受容体アゴニストに暴露された幹細胞は、暴露されなかった細胞よりも、NOD/SCIDレシピエントマウスの骨髄(BM)により良く生着するので、ドーパミン受容体の活性が、幹細胞の生着に役割を担っていること;臍帯血(CB)のCD34+細胞のドーパミン受容体アゴニストへの暴露が、ヒアルロン酸への吸着の間に細胞の極性化および拡散を誘導したので、ドーパミン受容体の活性が、幹細胞の運動性において役割を担っていること;ならびに、インビボでのドーパミン受容体アゴニストの投与が、BM細胞性の増大を引き起こす一方、ドーパミン受容体アンタゴニストの投与が骨髄細胞性の減少を引き起こし、したがって、クローン化の能力の減少を引き起こすので、ドーパミン受容体活性は、定常状態下でBM中の細胞の数の恒常性に役割を担っている。
【0135】
本発明に基づいて、ドーパミン受容体アゴニストと組み合わせた、GM−CSFおよびG−CSFなどの、ドーパミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物で、造血幹細胞を刺激することが、クローン化可能前駆細胞の含量ならびに造血幹細胞の生着を増大させることが明らかとなった。したがって、ドーパミン受容体活性の幹細胞に及ぼす効果は、細胞においてドーパミン受容体の発現を上方調節することを必要とするかもしれず、そして、したがって、細胞においてドーパミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物と組み合わせた、ドーパミン受容体アゴニストでの細胞の刺激を必要とするかもしれない。
【0136】
ヒト造血幹細胞および前駆細胞上でのドーパミン受容体の機能は今までに全く報告されていないので、本発明者らの発見は、新規のかつ特徴付けられていない現象を明らかにするものである。本発明者らは、本明細書中で、ヒト造血幹細胞および前駆細胞が、ドーパミン受容体を発現し、そしてドーパミン受容体アゴニスト/アンタゴニストによって誘導される刺激に応答すること、そして、従来、神経系において発現されることが詳しく調べられ、そして知られてきた、これらの受容体が、遊走、自己更新、生着および発達を含むが、これらに限定はされない、幹細胞の機能に不可欠であることを示した。
【0137】
本発明者らは、本発明によって、β2アドレナリン作用性の受容体などのもう1つのカテコールアミン神経伝達物質の受容体の活性が、造血幹細胞の活性、機能および拡張(expansion)を調節できることを明らかにした。例えば、本発明者らは以下のことを明らかにした:CD34+細胞はβ2アドレナリン作用性の受容体を発現し、そして動員された末梢血CD34+細胞はより高いレベルの受容体を発現すること;エピネフリンおよびノルエピネフリンは、臍帯血CD34+細胞によってコロニー形成を増大させること;ノルエピネフリンは、臍帯血の動員された末梢血CD34+細胞の遊走を媒介する化学誘引物質としての可能性を有していること;ならびにノルエピネフリンは、造血幹細胞の生着を増大させること。
【0138】
要するに、本発明者らの発見は、造血幹細胞/前駆細胞などのヒト幹細胞/前駆細胞の調節、機能および拡張における、ドーパミン受容体およびβ2アドレナリン作用性の受容体などの、カテコールアミン神経伝達物質の受容体の新規な役割を明示している。特に、インビトロおよびインビボでの本発明者らの発見は、カテコールアミン神経伝達物質が、移植治療において重要である、造血前駆細胞の増殖および遊走を直接的に調節していることを明らかにしている。
【0139】
したがって、ある局面では、本発明は、幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療を改良または促進するための、カテコールアミン受容体アゴニストの使用に関する。任意には、カテコールアミン受容体アゴニストは、幹細胞および/または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物とともに使用されてもよい。したがって、幹細胞および/または前駆細胞移植を促進するための、カテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物ならびにカテコールアミン受容体アゴニストを含む組み合わせ治療の使用がまた、本出願において考慮される。
【0140】
本明細書で使用される、用語「受容体アゴニスト」は、例えば、リガンドの受容体への結合を補助することによって、および/または受容体と相互作用することによって、受容体の活性を増大させる分子として定義される。
【0141】
アゴニスト薬は、受容体を活性化して所望の応答を引き起こす。いくつかのアゴニストは、活性化された受容体の割合を増大させる。
【0142】
アゴニスト分子の構造類似体は、しばしば、アゴニスト特性を有する。
【0143】
ある組織中で部分的なアゴニストとして作用する薬物は、別の組織中で完全なアゴニストとして作用するかもしれない。
【0144】
ドーパミン受容体アゴニストの例は、ドーパミンならびにドーパミン類似体;例えば、SKF81297およびフェノルドパムなどを含むが、これらに限定されるものではない。ドーパミン受容体アゴニストのその他の例は、プラミペキソール、ロピニロール、7−OH−DPAT、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、リスリドおよびフェノルドパムを含むが、これらに限定されるものではない(Wishart DS ら、2006)。
【0145】
本発明にしたがって使用することのできるアルファアドレナリン作用性の受容体アゴニストの例は、非限定的に、レボノルデフリン、エピネフリンおよびノルエピネフリンを含む。本発明にしたがって使用することのできるベータアドレナリン作用性の受容体アゴニストの例は、非限定的に、イソプロテレノール、メタプロテレノール、テルブタリンを含む。
【0146】
カテコールアミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物の例は、GM−CSF、G−CSFおよびIL−3などの骨髄性サイトカイン;エストロゲン(Lee ら、1999);ならびに該カテコールアミン受容体をエンコードする発現ベクター;ならびに内因性のカテコールアミン受容体の発現を誘導することのできる内因性遺伝子活性化ベクター(EGA)を含むが、これらに限定はされない。
【0147】
本発明らは、本発明にしたがって、改良された幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植が、少なくとも1つのカテコールアミン受容体アゴニストで、および/もしくは少なくとも1つのカテコールアミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物で刺激された幹細胞もしくは前駆細胞からなる、改良されたもしくはより優れた幹細胞または前駆細胞の集団を、移植のために使用することによって実現されることを明らかにしている。改良された幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植はまた、幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団、およびカテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物を、任意にはカテコールアミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物と組み合わせて、移植のために使用することによって実現されるかもしれない。
【0148】
本発明のいくつかの移植の手順においては、幹細胞および/または前駆細胞は、カテコールアミン受容体アゴニストで、および/またはカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物で、移植前に、エクスビボで刺激されてもよい。
【0149】
本発明の移植された幹細胞および/または前駆細胞は、例えば、骨髄(化学療法または放射線治療の副作用のため)などの細胞が死滅した損傷の領域へ遊走し、そして、損傷した組織の細胞へと分化するであろう。
【0150】
本発明における使用のための幹細胞は、幹細胞治療において、今日使用されているいかなる起源の幹細胞でもよく、また、将来使用されるであろう幹細胞であり、そして、非限定的には、成体幹細胞、胚性幹細胞、臍帯血幹細胞、造血幹細胞、末梢血幹細胞、間葉幹細胞、多能性幹細胞、神経幹細胞、間質細胞、前駆細胞ならびに他の全てのタイプの幹細胞およびそれらの前駆細胞を含む。
【0151】
幹細胞移植治療は、臓器移植の過程と類似しているが、治療は、機能不全な細胞を健康な細胞と置き換えるための、全体の臓器ではなく幹細胞の身体への移植のみからなり、したがって、拒絶反応を排除もしくは軽減し、または高価かつ危険性のある免疫抑制剤治療の必要性を排除もしくは軽減する。幹細胞移植治療は、幅広い領域のヒトの疾患、障害または症状のための治療法を見出すために適用されるものである。幹細胞は、多くの報告によって示されているように、様々な組織を再生する可能性を有している。ヒト胚性幹細胞は、いくつかの臨床上の場面に使用されるかもしれない。成体幹細胞は、胚性幹細胞により提示される倫理的な問題および安全に関する事柄を回避し得る。幹細胞移植治療は、(http://ora.ra.cwru.edu/stemcellcenter/research/research.htm に記載されているように)多くの病的症状において組織の再生を可能にする。例えば、幹細胞移植治療は、筋骨格の、心臓血管の、造血の、および神経の障害/損傷を治療するために使用され得る。間葉幹細胞(MSC)移植が、骨組織および軟骨の再生のため、造血幹細胞(HSC)が、心筋の再生のためまたは造血の再生のため、神経幹細胞(NSC)が、神経のまたは神経膠の代償療法のために使用されてもよい。
【0152】
幹細胞は、多能性でありかつ自己更新するための、増殖するためのおよび多種多様な表現型系統へ分化するための能力を有している。胚性幹細胞は、3つの原始細胞層:中胚葉、内胚葉および外胚葉の全てから生まれる細胞を作り出すことができる。胚性幹細胞は、子宮壁に着床する前の段階における胚盤胞の内部細胞塊から取り出される。
【0153】
成体幹細胞は、分化した組織中に見出される未分化の細胞である。成体幹細胞は、自己を更新することができ、そして、それらが起源としている組織の全ての分化した細胞タイプを生じるために分化される。成体幹細胞は、長期間の自己更新をすることができ、すなわち、長い期間にわたって自己の同一なコピーを作製することができ、そして、特徴的な形態および分化した機能を有する成熟細胞タイプを作り出すことができる。成体幹細胞は多くはないので、成体幹細胞が移植のための充分な量の組織の原料として使用されることができるように、インビトロで増殖するためのそれらの能力を増加させるようにこれらの細胞を操作することが好ましい。本発明者らは、本明細書中で、単離された成体ヒト造血幹細胞および前駆細胞のドーパミン受容体アゴニストでの治療が、コロニー形成を促進すること、ならびに、したがって、ドーパミン受容体アゴニストが、成体ヒト造血幹細胞および前駆細胞の増殖または拡張するための能力を増大させるために使用されてもよいことを明らかにしている。
【0154】
本発明における使用のための成体幹細胞は、骨髄、末梢血、歯隋、脊髄、血管、骨格筋、皮膚および消化器系の上皮、角膜、網膜、肝臓ならびに膵臓から単離されてもよい。成体幹細胞は、クローン化可能である。用語「クローン化可能」とは、一連の遺伝的に同一な細胞を生成する能力を有しており、そしてその後、適切に分化した細胞タイプを作り出すことを意味している。成体幹細胞の、一連の遺伝的に同一な細胞を生成し、そしてその後、適切に分化した細胞タイプを作り出す能力は、下記の実施例に示されるように、例えば、CFU−Mアッセイを用いることによりインビトロで、また、例えば、候補の幹細胞が、骨髄などの特別な組織を再増殖することができることを示すことによってインビボで、明示され得る。
【0155】
骨髄は、造血幹細胞および間質(または間葉)細胞の2つの幹細胞集団、骨組織、軟骨、脂肪、繊維性結合組織および血液細胞形成を支える網様ネットワークを生成する混合された細胞集団を含む。もし望むのであれば、造血幹細胞(HSCs)および骨髄性間質細胞は、特異的表面マーカー団を用いて分離および単離されてもよい。両方の幹細胞の集団を分離および単離するための別の方法は、細胞の接着特性に基づいた分画である。例えば、間質細胞は成長物質に接着するが、一方、造血細胞は接着しない。
【0156】
造血幹細胞は、未分化の幹細胞および前駆細胞の小さなプールを保持した上で、全ての成熟血液細胞系統の継続的な産生を維持し得る幹細胞として定義される(Mayani, 2003)。3つの主な血液細胞の系統は、リンパ系統、即ちB細胞およびT細胞、骨髄系統、即ち単球、顆粒球および巨核球、ならびに赤血球系統、即ち赤血球細胞を含む。ある種の造血幹細胞は、脳細胞を含む他の細胞タイプへ分化することができ、したがって、多くの異なる組織を再生するために使用され得る(下記の柔軟性を参照)。
【0157】
本発明のある実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、造血幹細胞移植(HSCT)および/もしくは前駆細胞移植治療を改良または促進するために使用される。造血幹細胞の原料は、骨髄、胎児の肝臓、末梢血および臍帯血である。
【0158】
本発明の移植手順のために用いられる幹細胞は、自己由来、同系または同種異系であってもよい。自己由来の幹細胞またはHLA一致同胞またはHLA不一致ドナーからの幹細胞が、移植のために使用され得る。
【0159】
本発明のある実施態様では、臍帯血、骨髄またはMPB細胞由来のヒトCD34+(約1×103細胞/mlから1×1〜3×105細胞/ml)が、エクスビボにて、カテコールアミン受容体アゴニストで、およびドーパミン受容体を上方調節することのできる薬物で、2、3または4日間刺激され、そしてその後、移植される。
【0160】
本発明のさらなる実施態様では、薬物は、GM−CSF(例えば、約5ng/mlで)および/またはG−CSF(例えば、約100ng/mlで)である。本発明の別のさらなる実施態様では、カテコールアミン受容体アゴニストは、ドーパミン(例えば、約10nMで)、および/またはSKF(例えば、約1μ
Mで)、および/または7−OH−DAPT(例えば、約100nMまたは1μ
Mで)、および/またはノルエピネフリン(例えば、約1〜10μ
Mおよび1〜10nMで)、および/またはエピネフリン(例えば、約1μ
mおよび10nMで)である。カテコールアミン受容体アゴニストの濃度は、0.1nMから10μM、または1nMから1μM、または1〜10μM、100nMから1μMまたは1から10nMの範囲であってもよい。GM−CSFまたはG−CSFの濃度は、1ng/mlから500ng/mlの範囲であり得る。
【0161】
長期造血幹細胞(HSC)または長期複製HSCsは、自己更新することのできる細胞である。造血幹細胞が長期複製HSCsであるかどうかは、例えば、ヒト造血幹細胞をマウスに移植し、それらをマウスの骨髄に生着させてキメラな移植マウスを作出することによって、調べられ得る。その結果、次には別の、致死量の放射線を照射されたマウスへ移植され(2次移植)、そして、その造血系を数ヵ月にわたって修復し得る、キメラな移植マウスの骨髄からのヒト細胞が、長期造血幹細胞(HSC)または長期複製HSCsとして定義され得る。全ての異なるタイプの血液細胞を直ちに再生することができるが、通常の条件下では長期にわたる自己更新はできない骨髄細胞は、短期前駆(progenitor)細胞または前駆(precursor)細胞と呼ばれる。
【0162】
下記の事項は、前駆(progenitor)細胞または前駆(precursor)細胞の特性のいくつかである:それらは、同じ組織タイプの完全に分化した細胞への前駆体である、比較的未成熟な細胞である;それらは、増殖することができるが、1以上の細胞タイプへ分化するためには限られた能力しか有さない。以下の前駆細胞系統は、造血幹細胞由来である:(1)赤芽球バースト形成細胞(BFU−E);(2)顆粒球−マクロファージコロニー形成細胞(CFU−GM);ならびに(3)巨核球系幹細胞(CFU−Mk)、また、CFU−E、CFU−G、CFU−MおよびCFU−GEMM。
【0163】
胎児もしくは成人の組織中の前駆(progenitor)細胞または前駆(precursor)細胞は、分割し分化細胞を作り出す、部分的に分化されている細胞である。前駆(progenitor)細胞または前駆(precursor)細胞は、通常、特別な細胞発達過程にしたがって分化するように「分化増殖能力を獲得した」とみなされる。概して、前駆(progenitor)細胞または前駆(precursor)細胞は、それらの完全な分化状態を達成する前の幹細胞の中間の細胞タイプである。
【0164】
成体組織における幹細胞は、それらが通常属している組織とは別のタイプの、特化した細胞タイプを生成し得る。したがって、本発明の幹細胞移植の方法においては、ある組織由来の幹細胞を、別の組織の分化した細胞タイプを生成するために使用してもよい。「変則的な分化」または「分化転換」とも呼ばれる、用語「柔軟性(plasticity)」とは、ある成体組織由来の幹細胞が、別の組織の分化した細胞タイプを生成し得ることを意味している。柔軟性の結果として分化した細胞タイプは、通常、分化した細胞の形態的特徴を有しており、そしてそれらの特徴的な表面マーカーを掲示していると報告されている。例えば、血液幹細胞(中胚葉由来)は、骨格筋(同様に、中胚葉由来)およびニューロン(外胚葉由来)の両方を生成することができるかもしれず、そして、骨髄幹細胞(中胚葉由来)は、骨格筋、心筋または肝臓などの別の中胚葉由来の組織へと分化するかもしれないことが報告されている。したがって、本発明によれば、任意には、細胞におけるドーパミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物と組み合わせて、ドーパミン受容体アゴニストで刺激された造血幹細胞は、骨格筋、ニューロン、心筋および肝臓を生成するために使用してもよい。
【0165】
カテコールアミン受容体は、損傷した脳などの、非造血性の損傷した組織を修復するための機能を有し得る。ドーパミン作用性の活性は、外傷性脳損傷の直後に上方調節されること(Walter ら、2004)、BMを離れて、虚血性の脳など(Stumm ら、2002)の損傷部位に遊走するための幹細胞の能力は、活性な遊走性の機序を必要とすることが見出されており、そしてNan ら(2005)は、最近、ヒト臍帯血細胞の注入が、出血性の脳損傷のラットにおける神経欠損を改善することを報告している。したがって、遊走している幹細胞によって発現されているカテコールアミン受容体は、細胞の運動性、増殖および発達の調節ならびに、これらの系によって伝達されるシグナルに応答した、脳またはCNS損傷の部位への転移に関係しているのかもしれない。
【0166】
したがって、ある局面では、本発明は、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物で、および、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物で刺激された幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む、細胞集団または細胞グループに、ならびに、組織再生、組織の再増殖および/もしくは体細胞治療のための幹細胞移植(SCT)もしくは前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、該細胞集団の使用に関する。細胞が、カテコールアミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物で、および、カテコールアミン受容体アゴニストで、刺激される場合、それらは、移植に先立ち、薬物およびアゴニストで、同時に刺激されてもよく、また、始めに薬物で、そしてその後、アゴニストで刺激されてもよい。本発明者らは、本発明によって、インビボで骨髄性サイトカインG−CSFで刺激された幹細胞が、より高いレベルのカテコールアミン受容体を提示することを明らかにしたので、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物での細胞の刺激は、インビボで行うことができる。この手順は、造血細胞の血液への移動として知られており、そして、通常、5回の連続したG−CSFの注射によって行われる(Petit ら、2002)。代わりに、本発明者らが下記の実施例中で示すように、幹細胞は、GM−CSFまたはG−CSFのような骨髄性サイトカインなどの薬物で、エクスビボにて刺激することができる。刺激の前に、幹細胞/前駆細胞は、加熱不活性化されたFCSを、ならびに、Epo、SCF、IL−3およびTpoなどの1またはそれ以上のサイトカインを添加した培地中に保存することができる。
【0167】
幹細胞治療によって治療され得る疾患、障害または症状の例は、http://www.pregnancy-info.net/StemCell/treated_disease.htmlに記載されており、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、脂肪肉腫、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、悪性胚細胞性腫瘍などのがん;無巨核球性血小板減少症(AMT)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、先天性血球減少症、エヴァンズ症候群、ファンコーニ貧血、コストマン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミアなどの血液障害;副腎脳白質ジストロフィ、不全リンパ球症候群、先天性角化不全症、家族性血球貧食性リンパ組織球症、ゴーシェ病、ギュンター病、ハンター症候群、ハーラー症候群、遺伝性神経セロイドリポフスチノーシス、クラッベ病、ランゲルハンス細胞組織球症、レッシュ−ナイハン症候群、白血球接着不全、大理石骨病などの遺伝性代謝障害;および、アデノシンデアミナーゼ欠損症(ADAまたはSCID−ADA)、重症複合型免疫不全(SCID)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)、高IgM免疫不全症候群(HIM)などの免疫疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(ルー・ゲーリグ病としても通常知られている)などの神経系疾患;筋ジストロフィ;多発性硬化症;関節炎;脊髄損傷;脳損傷;脳卒中;心臓病;肝臓および網膜の疾患;糖尿病;ならびに骨髄抑制および末梢血血球現象などの化学療法もしくは放射線治療の副作用を緩和することを含むが、これらに限定されない。
【0168】
本発明は、移植、組織置換、組織生着、組織再生、組織再増殖および/もしくは細胞治療における使用に適した、改良されたもしくはより優れた幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団、ならびにこれらの細胞集団の製造方法を提供する。本発明は、カテコールアミン受容体アゴニストで、および、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体発現の上方調節を誘導することのできる薬物で、エクスビボにて刺激された幹細胞ならびに/または前駆細胞を含む改良された集団について記載している。
【0169】
本発明による、改良された幹細胞/前駆細胞の組成物の製造方法の1つは、幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団を、集団の幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物で、エクスビボまたはインビボにて刺激すること、および、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物でエクスビボにて刺激することを含む。薬物での細胞の刺激が、インビボにて、例えば、個体への薬物の注射によって行われる場合は、幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団は、哺乳動物の血液から採取され、そして、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物で、エクスビボにて刺激される。本発明のある実施態様では、前記方法は、造血幹細胞移植(HSCT)における使用のための、改良された細胞組成物を得ることを可能にし、造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞集団を、インビボおよび/もしくはエクスビボにて、G−CSFおよび/もしくはGM−CSFで、ならびに、エクスビボにて、ドーパミンもしくはおよびそのアゴニスト、エピネフリンおよび/もしくはノルエピネフリンなどのカテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物で、刺激することを含む。
【0170】
移植に適した、改良されたもしくはより優れた幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団は、例えば、以下の事柄を示す幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団である。マウスモデルにおいて調べた場合に、対照細胞集団に比べて、顕著により多くの生着、例えば、2倍多くの生着を示す;二次移植モデルにおいて調べた場合、生着の割合が、一次レシピエントにおける場合より、顕著により高い;および/またはコロニー形成アッセイにおいて調べた場合、対照細胞よりも顕著により多くのコロニー形成を示す。
【0171】
長期複製HSCsは、HSCに基づいた細胞治療を開発するにあたって、重要である。以下の、血液細胞のタンパク質マーカーのセットは、細胞が、長期HSCタイプである可能性の高まりと関連している:CD34+、Thy1+/低
、CD38低
/-、C−kit-/低
、lin-(系統マーカーに陰性)。
【0172】
本発明者らは、本発明にしたがって、つぎのことを見出した:CD34+/CD38-/低
細胞は、より分化した細胞であるCD34+/CD38高
細胞の部分集団に比べて、より高いレベルの両方のタイプのドーパミン受容体を発現する。したがって、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物での幹細胞集団の刺激は、おそらく集団におけるCD34+/CD38-/低
細胞に影響を及ぼすであろう。また、幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む、移植のための、改良されたまたはより優れた細胞集団は、幹細胞もしくは前駆細胞を含む細胞集団を、カテコールアミン受容体発現を上方調節することのできる薬物で刺激すること、ならびに、表面において、例えば、未処置の対照細胞におけるレベルよりも2〜4倍高いレベルであるような、増大されたレベルのカテコールアミン受容体を発現している細胞を、単離もしくは選別することを含む方法によって得られ得る。
【0173】
本発明者らは、本発明にしたがって、それらの表面において増大されたカテコールアミン受容体を掲示している、造血幹細胞および前駆細胞などの幹細胞ならびに/または前駆細胞が、移植に適していることを見出した。例えば、本発明者らは、造血幹細胞および前駆細胞のG−CSFおよびGM−CSFでの刺激が、初期のCD34+/CD38-/低
細胞上でのドーパミン受容体の高い発現を誘導することを見出した。また、インビボで、G−CSFで刺激された(集められた)CD34+細胞は、より高いレベルのβ2アドレナリン作用性の受容体を発現している。また、集められた造血幹細胞および前駆細胞のエピネフリンおよびノルエピネフリンでの刺激によって、これらの受容体の活性を誘導することが、結果として、造血幹細胞の増大された遊走および生着可能性、ならびに増殖、または造血幹細胞によるコロニー形成の増大を生じた。
【0174】
したがって、本発明のある実施態様では、移植のための、幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む改良された、またはより優れた細胞集団は、以下を含む方法によって得られる:幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団を、カテコールアミン受容体発現を上方調節することのできる薬物で(インビボもしくはエクスビボで)刺激すること;CD34+/CD38-/低
を発現している細胞を選別すること;表面上で高いレベルのカテコールアミン受容体を発現している細胞、例えば、対照細胞(薬物で処置されていない)におけるカテコールアミン受容体のレベルよりも2〜4倍高いレベルである、カテコールアミン受容体のレベルを発現している細胞を選別すること;ならびにカテコールアミン受容体アゴニストで細胞を刺激すること。該薬物は、GM−CSFまたはG−CSFであってもよく、該刺激は、2、3、4日間または5日間まで、もしくは、より短期間または長期間続いてもよい。GM−CSFまたはG−CSF処置された個体から集められた幹細胞および/または前駆細胞が、前記方法において使用され得る。前記細胞は、例えば、細胞中の特定のマーカーをラベルし、そして、蛍光活性化セルソーター(FACS)によって細胞を選別するなどの、周知の方法によって、選別または単離されてもよい。
【0175】
真の造血幹細胞の顕著な特徴は、全ての血液細胞系統を多数、長期再形成するためのそれらの能力である。多くの研究者らによって、移植および遺伝子治療の領域で、インビトロでヒト幹細胞の増殖および拡張を誘導するために適した条件を見出すために、多大な努力がなされてきた。成功した幹細胞の拡張のための要件は、長期再形成能力の付随的な損失無しに、効率的に真の幹細胞の増殖を促進することであろう。本発明者らが、本明細書中で、インビトロでの、幹細胞のドーパミン受容体アゴニストへの暴露が、結果として二次生着の速度の増加を生じることを明らかにしたので、増加された量の長期培養起始細胞(LTC−IC)を有する、改良された幹細胞集団が、幹細胞を含む細胞集団をカテコールアミン受容体アゴニストで刺激することを含む方法を用いることによって製造され得る。
【0176】
ある局面では、本発明は、細胞集団中の幹細胞もしくは前駆細胞の増殖、発達、遊走、生着および/または再増殖能力を増加させるための方法に関する。そのような方法の1つは、幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団を提供すること、ならびにカテコールアミン受容体アゴニストと、そして任意には、細胞においてカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物と、細胞集団を接触させることを含む。
【0177】
本発明者らは、本発明にしたがって、エクスビボにてカテコールアミン受容体アゴニストで刺激された幹細胞を含む細胞集団が、長期培養起始細胞を維持することを見いだした。これらの細胞は、全ての血液細胞系統を多数、長期再形成するための能力を有する、真の造血幹細胞である。
【0178】
したがって、本発明の別の目的は、カテコールアミン受容体アゴニストで幹細胞を含む細胞集団を刺激することを含む、臨床的移植のための長期培養起始細胞の製造方法を提供することである。この方法によって得られた長期培養起始細胞は、幹細胞移植、組織置換、生着、再増殖および/または細胞治療に適している。長期培養起始細胞を製造するための、本発明の方法の1つは、幹細胞を含む細胞集団を提供すること、幹細胞においてドーパミン受容体の発現を上方調節すること、および、ドーパミン受容体アゴニストに細胞を暴露することを含む。本発明のある実施態様では、臨床的移植のための長期培養起始細胞の製造方法は、造血幹細胞を含む細胞集団を提供すること、幹細胞におけるドーパミン受容体発現の上方調節を誘導するために、細胞集団をGM−CSFおよび/またはG−CSFで刺激すること、ならびにカテコールアミン受容体アゴニストと細胞集団を接触させることを含む。
【0179】
ある局面では、本発明は、幹細胞移植(SCT)治療の方法ならびに/または幹細胞の骨髄生着および/もしくは骨髄の再増殖を促進するための方法を提供する。幹細胞移植治療(SCT)を改良または促進するための方法の1つは、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物で、および、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現を上方調節することのできる薬物で刺激された、治療的に有効量の幹細胞を、必要とする患者へ投与/注射または移植することを含む。本発明のある実施態様では、細胞は、骨髄性サイトカイン(例えば、GM−CSFまたはG−CSF)処置された個体から得られ、そして、これらの細胞は、エクスビボにてカテコールアミン受容体アゴニストで刺激される。本発明のさらなる実施態様では、該方法は、造血幹細胞移植(HSCT)および少なくとも1つの血液細胞系統の再形成を改良または促進するためのものである。別のさらなる実施態様では、該方法は、エクスビボにて、GM−CSFまたはG−CSFで、および、カテコールアミン受容体アゴニストで刺激された造血幹細胞を含む、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ投与することを含む。さらなる方法は、投与に先立って、促進されたカテコールアミン受容体の発現により選別された、治療的に有効量の幹細胞を投与することを含む。
【0180】
本発明のある実施態様では、幹細胞は、G−CSF処置されたドナー由来である。他の実施態様では、幹細胞は、例えば、ラベルされた受容体に特異的な抗体で細胞を選別することにより、CD34+に富んでおり、CD34+/CD38−/低に富んでおり、および/またはカテコールアミン受容体に富んでいる。いくつかの実施態様では、本発明は、幹細胞移植、特に造血幹細胞移植(HSCT)のための、方法または組成物を使用することに関する。さらなる実施態様では、本発明は、造血の、骨の、軟骨の、心性のおよび神経の組織再生および/もしくは再形成のような、組織再生ならびに/または再形成治療のための方法または組成物の使用について記載している。
【0181】
本発明にしたがって、幹細胞もしくは前駆細胞を含む細胞集団を、本発明において記載されている物質(例えば、受容体アゴニスト、アンタゴニストおよび/または幹細胞もしくは前駆細胞において受容体の上方調節を誘導する薬物)を用いて、刺激すること、暴露することもしくは接触させることは、インビボおよび/またはエクスビボでの物質の投与によって行なってもよい。
【0182】
造血幹細胞(HSCs)のインビトロでの遺伝子操作は、体細胞遺伝子治療のための新たな分野を開く。体細胞遺伝子治療は、疾患を治療するための、体細胞への、遺伝子操作された遺伝子の送達として定義される。遺伝子治療の究極の目的は、インサイチュにて、欠陥遺伝子配列を置き換えることである。入手可能なベクターおよび標的としてHSCsを使用することで、体細胞遺伝子の導入は通常、結果としてトランス遺伝子の異所性発現となる。したがって、本発明にしたがって、幹細胞または前駆細胞は、治療用のポリペプチドをエンコードする組換えDNAを内包し、それにより、治療用のポリペプチドを発現している、幹細胞もしくは前駆細胞を含んでもよく、そして、体細胞遺伝子治療などの細胞治療において使用することができる。
【0183】
例えば、白人集団(population)において、最も一般的で、致命的な遺伝障害である、嚢胞性線維症(CF)は、CF膜コンダクタンス制御因子(CFTR)の突然変異によって引き起こされる。最近の報告(Wang ら、2005)は、間葉または骨髄間質幹細胞(MSCs)などの成人幹細胞が、気道上皮に分化する能力を有していること、および嚢胞性線維症(CF)患者からのMSCsが、CFTR遺伝子を修正する可能性があることを開示している。
【0184】
骨髄および他の部位からの循環系への幹細胞の放出および移動は、臨床的移植のための血液からの幹細胞採取のために、個体において誘導される。現在のところ、リンパ腫などの疾患を治療するための移植用に、循環系からヒト幹細胞を動員および採取するために使用される方法は、G−CSFおよびGM−CSFなどの骨髄性サイトカインでの多重刺激を伴う。しかしながら、1部の個体は、適切な量の幹細胞を移動できず、したがって、骨髄吸引を介して幹細胞を採取するために手術される必要がある。本発明者らは、本発明にしたがって、カテコールアミン受容体アゴニストが幹細胞の移動を増加させ、そしてカテコールアミンが化学誘引物質としてふるまうことを明らかにした。したがって、カテコールアミンアゴニストを循環系に注射することは、内部臓器(例えば、骨髄および脾臓)から循環系への幹細胞の化学走性を増加させ得る。したがって、本発明は、自己由来の細胞移植のために患者の循環系への、また、同種移植のための健康な個体の循環系への幹細胞の移動を促進するための医薬の製造における、カテコールアミン受容体アゴニストの使用を考慮している。
【0185】
幹細胞もしくは前駆細胞集団の成長、発達、遊走、生着または再増殖の減少は、例えば、病理または経過が、制御不能な成長などの異常な特性を示している幹細胞もしくは前駆細胞集団と関係している疾患、障害もしくは症状においてなど、ある種の状況において望まれ得る。例えば、急性骨髄性白血病(AML)は、未成熟な白血球の多さによって特徴付けられるタイプのがんであり、異常な造血に起因し、ゆくゆくは、骨髄および末梢血液中の白血球の減少を引き起こす。こういった幹細胞もしくは前駆細胞集団の成長、発達、遊走、生着または再増殖の減少は、カテコールアミン受容体アンタゴニストの使用によって達成され得る。
【0186】
本明細書中で使用されているように、用語「受容体アンタゴニスト」は、例えば、リガンドの受容体への結合を阻害する、または妨げることによって、受容体と相互作用することによって、受容体の活性を減少させる分子として定義される。
【0187】
アンタゴニストは、受容体の活性化を防ぐ。活性化を防ぐことは、多くの効果を有する。アンタゴニスト薬は、もしそれらが、細胞機能を通常は減少させる物質の作用を阻害するのであれば、細胞機能を増加させる。アンタゴニスト薬は、もしそれらが、細胞機能を通常は増加させる物質の作用を阻害するのであれば、細胞機能を減少させる。
【0188】
受容体アンタゴニストは、可逆または不可逆として分類することができる。可逆アンタゴニストは、容易にそれらの受容体から解離し;不可逆アンタゴニストは、安定で永続的またはほぼ永続的な化学結合をそれらの受容体と形成する(例えば、アルキル化など)。擬不可逆アンタゴニストは、それらの受容体からゆっくりと解離する。
【0189】
競合的拮抗作用においては、アンタゴニストの受容体への結合が、アゴニストの受容体への結合を妨げる。非競合的拮抗作用においては、アゴニストおよびアンタゴニストは同時に結合できるが、アンタゴニストの結合が、アゴニストの作用を減少させるかまたは妨げる。可逆的競合拮抗作用においては、アゴニストおよびアンタゴニストは、受容体と短期間続く結合を形成し、そして、アゴニスト、アンタゴニスト、および受容体の間で、定常状態に達する。このような拮抗作用は、アゴニストの濃度を増加させることによって、克服される。
【0190】
アゴニスト分子の構造類似体は、しばしば、アンタゴニスト特性を有する;このような薬物は、部分的な(弱い効果の)アゴニスト、またはアゴニスト−アンタゴニストと呼ばれる。
【0191】
ドーパミン受容体アンタゴニストの例は、クロザピン、フルペンチキソール、ピモジド、レモキシプリド、ルペンチキソール、ドンペリドン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ジプラシドン、ロキサピン、チオリダジン、メトクロプラミド、クロルプロチキセンおよびドロペリドールを含むが、これらに限定されるものではない(Wishart DS ら、2006)。
【0192】
本発明の実践において使用することのできるアドレナリン作用性の受容体アンタゴニストの例は、非限定的に、フェントラミン、フェントラミン塩酸塩、メシラート、トラゾリン、ヨヒンビン、ラウオルシン、ドキサゾシン、プラゾシン、テトラゾシン、およびトリマゾシン、ならびにラベタロール、アテノロール、メトプロロール、ベタキソロール、ビソプロロール、ナドロール、ピンドロール、マプロチリンおよびブレチリウムなどのベータブロッカーを含む。
【0193】
本発明はまた、本発明による、細胞または分子または薬物、および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。例えば、医薬組成物は、本発明による、幹細胞および/または前駆細胞および/またはカテコールアミン受容体アゴニストおよび/または受容体を誘導することのできる薬物、ならびに薬学的に許容され得る担体を含んでもよい。本発明のある実施態様では、医薬組成物は、カテコールアミン受容体アゴニスト、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の上方調節を誘導することのできる薬物、および薬学的に許容され得る担体を含む。さらなる実施態様では、医薬組成物は、カテコールアミン受容体アゴニスト、G−CSFおよび/またはGM−CSF、ならびに薬学的に許容され得る担体を含む。
【0194】
別のさらなる実施態様では、本発明は、カテコールアミン受容体アゴニストで、そして任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体発現の上方調節を誘導することのできる薬物で、刺激された幹細胞および/または前駆細胞集団、ならびに薬学的に許容され得る担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0195】
さらに別のさらなる実施態様では、本発明は、カテコールアミン受容体アゴニストで、およびG−CSFまたはGM−CSFで刺激された、CD34+造血幹細胞、ならびに、薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。
【0196】
本発明による医薬組成物は、その意図した目的を果たすために充分な量の、本発明による、細胞、アゴニスト/アンタゴニストおよび/または薬物を含む。加えて、医薬組成物は、それらを必要とする患者への投与のために、活性化合物の製剤への加工を促進し、薬学的に使用されることができ、かつその製剤を安定化できる、当業者にとって公知の賦形剤および補助剤を含む適切な薬学的に許容され得る担体を含んでもよい。
【0197】
本発明による、細胞、アゴニスト/アンタゴニストおよび/または薬物は、それらを必要とする患者に、様々な方法で投与してもよい。投与経路は、肝臓内、皮膚内、経皮的(例えば、徐放性製剤(slow release formulation))、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、硬膜外、局所的、および鼻腔内経路である。加えて、物質は、薬学的に許容され得る、界面活性剤、賦形剤、担体、希釈剤およびビヒクルなどの、生物学的に活性な薬物の他の成分とともに投与することができる。
【0198】
本発明者らは、本明細書中で、ドーパミン受容体アゴニストのi.p.注射が、骨髄中の細胞質量を増加させるのに適していることを示した。
【0199】
個体への、単回または複数回用量として投与される投薬量は、物質の薬物動態学的特性、投与経路、患者の症状および特徴(性別、年齢、体重、健康、大きさ)、症候の程度、併用治療、治療の頻度ならびに所望の効果を含む、様々な因子に依存して変わるであろう。設定された投薬量範囲の調整および制御は、明らかに当業者の能力の範囲内である。
【0200】
「薬学的に許容され得る」という定義は、活性成分の生物学的活性の効果を妨げず、そして、投与されるホストに対して毒性ではない、いかなる担体をも含むことを意図している。例えば、非経口投与では、本発明による物質は、生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミンおよびリンガー溶液などのビヒクル中に、注射のための単位投薬形態として製剤化してもよい。
【0201】
「治療的に有効量の」とは、投与された場合に、本発明による前記物質が、幹細胞移植、組織再生、組織再増殖、細胞治療および/もしくは体細胞遺伝子治療において、ならびに/または組織損傷の治療において、有益な薬効を誘導するほどの量のことである。個体への、単回または複数回用量として投与される投薬量は、投与経路、患者の症状および特徴(性別、年齢、体重、健康、大きさ)、症候の程度、併用治療、治療の頻度ならびに所望の効果を含む、様々な因子に依存して変化し得る。設定された投薬量範囲の調整および制御は、明らかに当業者の能力の範囲内である。
【0202】
本発明に関連する化合物は、それらの薬物動態学的特性に呼応した、いかなる経路による投与のために製造されてもよい。
【0203】
活性な成分はまた、滅菌溶媒中で経口的に投与されてもよい。使用されるビヒクルおよび濃度に依存して、薬物は、ビヒクルに懸濁または溶解され得る。
【0204】
用語「投薬量」は、用量の頻度および数の決定ならびに制御に関する。
【0205】
機関紙の論文または要約、刊行されたもしくは未刊行である米国または外国の特許出願、発行済み米国もしくは外国の特許または他のすべての参考文献を含む、本明細書中で引用された全ての引用文献は、引用文献中に示された全てのデータ、表、図および本文を含めて、本明細書中に参考文献として完全に組み入れられる。
【0206】
公知の方法段階、従来の方法段階、公知の方法もしくは従来の方法に対する参照は、いかにしても、本発明のいかなる局面、記載または実施態様が、関連技術分野において開示、教示、もしくは示唆されているという承認ではない。
【0207】
本発明は、本明細書で記載されるように、実例として提供されるが、本発明を制限する意図はない、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0208】
造血幹細胞上でのカテコールアミン受容体の発現、およびこれらの細胞の発達および機能におけるそれらの役割が評価された。
【0209】
材料および方法
(i)ヒト細胞および試薬
ヒト臍帯血(CB)、成体G−CSF、健常またはG−CSF処置ドナーからの、動員された末梢血(MPBL)およびBM、単核細胞は、ワイズマン インスティチュート オブ サイエンス(Weizmann Institute of Science)のヒト倫理委員会によって承認された手順にしたがったインフォームドコンセントの後、得られた。細胞表面タンパク質CD34は、研究においておよび移植において、ヒト造血幹細胞/前駆細胞の陽性選択のためのマーカーとしてしばしば使用される。CD34+細胞エンリッチメントは、以前記載されたように(Spiegel A ら、Blood 2004; 2900-7)、磁気ビーズ分離を用いて行われた。細胞は、10%加熱不活性化されたFCS、抗生物質およびグルタミンを添加した、RPMI 1640培地中で培養された。
【0210】
ヒトCB細胞は、インフォームドコンセントの後、月満ちての出産から得られた。血液のサンプルは、PBS中で1:1に希釈された。低密度MNCsは、Ficoll−Paque(ファルマシア バイオテック(Pharmacia Biotech)、ウプサラ、スウェーデン)上での標準的な分離の後、採取され、PBS中で洗浄された。ヒトCD34+細胞のエンリッチメントは、MACS細胞単離キットおよび自動MACSマグネティックセルソーター(ミルテニー バイオテック(Miltenyi Biotec)、ベルギッシュグラートバハ、ドイツ)を用いて、製造者の説明書にしたがって行われた。残りの動員された末梢血細胞、血漿ならびにBMは、G−CSF(10μg/kg)の毎日の注射の後の0、5および6日目の、同種移植のために動員が行われている健康なドナーから、インフォームドコンセントの後に得た(フィルグラスチム(Filgrastim)、ロッシュ、バーゼル、スイス)。
【0211】
BM細胞および血漿サンプルはまた、健康なドナーからも得られた。1回または5回のG−CSF注射の24時間後、BMが、インフォームドコンセントの後、吸引によって採取された。ヒトサンプルは、ワイズマン
インスティチュートのヒト実験および倫理委員会によって承認された手順にしたがって使用された。
【0212】
いくつかのアッセイでは、ドーパミンアゴニスト、D1受容体に選択的であるとUndieおよびFriedman(1992)によって記載された(+)−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ(1H)−3−ベンズアゼピン−7,8−ジオール塩酸塩(SKF−38393)、およびD3受容体を誘導するとしてLevesqueら(1992)およびDamsmaら(1993)によって記載されている7−ヒドロキシ−2−ジプロピルアミノテトラリン(7−OH−DPAT)(H8653);ならびにアンタゴニスト、2−[4−[3−[2−(トリフルオロメチル)チオキサンテン−9−イリデン]プロピル]ピペラジン−1−イル]エタノール(フルペンチキソール)(シグマ)。フルペンチキソールは、精神分裂病およびうつ病における使用のための、D1ならびにD2両方のドーパミン受容体の強力なアンタゴニストであり、クロザピンは、精神病のための標準的な薬物治療に適切に反応しない、重症の精神分裂病患者の管理のための、ドーパミンタイプ2受容体のアンタゴニストである。全ての薬物は、示された濃度で用いられた。
【0213】
(ii)マウス
NOD/LtSz PrKdcscid/PrKdcscid(NOD/SCID)マウスは交配され、ワイズマン
インスティチュートにおいて、滅菌マイクロアイソレーターケージ中で、孤立した環境(defined flora)条件のもと維持された。全ての実験は、ワイズマン
インスティチュートの動物管理委員会によって承認された。8〜10週齢のマウスが、亜致死量の放射線(375cGy、60Co線源から)を照射され、そして照射24時間後、示されるように(2×105細胞/マウス)ヒト細胞を移植された。
【0214】
(iii)細胞移植
細胞は、10%FCSが添加された、0.5mlのRPMI中で、NOD/SCIDの尾の静脈の中に注射された。
【0215】
(iv)細胞生着の評価
レシピエントマウスは、細胞の注射より24時間前に、セシウム線源からの亜致死量(350cGy)用量によって放射線照射された。MPBまたはCB CD34+細胞(2〜3×105/マウス)が、SKFまたは7−OH−DPATで2〜4日間処置され、NOD/SCIDマウス中にi.v.注射された。マウスは、ヒト細胞移植後5〜6週間後に、ヒト細胞生着評価を算定するために犠牲にされた。BM(シリンジによって洗い流された大腿骨、脛骨および骨盤の骨)、脾臓および末梢血細胞が採取され、単一細胞懸濁液に再懸濁された。WBCsは計数され、そして、いくつかの実験では、MNCsが、Ficol−Hypaque(ファルマシア バイオテック)上での標準的な分離によってサンプルから単離された。
【0216】
ヒト細胞生着は、フローサイトメトリー(FACSCalibur、BD)によってアッセイされた。細胞は、CD45−FITC、CD38−PEおよびCD34−APC(ベクトン ディッキンソン(Becton Dickinson))抗体を用いて、三重に染色された。ヒト血漿およびマウスIgGは、Fc受容体を阻害するために用いられた。ヒト白血球は、汎白血球マーカーであるCD45の発現によってゲートされ、この集団の中でCD34+/CD38-/低
初期細胞の割合が決定された。
【0217】
(v)移動
2〜4月齢のBALB/cマウス(ハーラン(Harlan)、ワイズマン
インスティチュート)における移動は、以下の通り行われた:マウスは、4日または5日間連続、G−CSF(フィルグラスチム、pH4.55の0.9%NaCl、5%ウシ胎仔血清(FCS)250l中、300g/kg)の皮下注射を毎日受け、遅くとも最後の注射から6時間後に犠牲死された。ドライアイスで窒息死させられたマウスからの末梢血は、ヘパリン添加チューブに心臓吸引によって採取された。末梢血中の白血球(WBC)の数が測定され、20μlの血液が前駆細胞コロニーアッセイのために、以下に記載されるように、播種された。コロニーは、植え付けから8日後または、示されている場合にはそれ以後に、記録された。
【0218】
ヒト細胞を生着されたNOD/SCIDマウスにおける移動は、以下のように行われた:マウスは、連続した5日間、G−CSF(フィルグラスチム、pH4.55の0.9%NaCl、5%ウシ胎仔血清(FCS)250ml中、300mg/kg)の皮下注射を毎日受け、最後の注射から4時間後に犠牲にされた。ドライアイスで窒息死させられたマウスからの末梢血は、ヘパリン添加チューブに心臓吸引によって採取された。末梢血中のWBCの数が測定された。
【0219】
(vi)フローサイトメトリー分析
ヒトおよびマウスの細胞の表現型が、免疫染色によって、続いて、CellQuestソフトウェアを用いたFACSCalibur(ベクトン ディッキンソン、サンノゼ、CA)上で、フローサイトメトリー分析によって行われた。単一細胞懸濁液は、0.01%のアジ化ナトリウムおよび1%FCSを含むPBS中に調製された。ヒト血漿およびマウスIgGは、ヒトおよびマウスFc受容体を阻害するために使用された。アイソタイプ一致型の対照抗体は、偽陽性細胞を排除するために用いられた。染色は、4℃で、30分間行われた。ヒト細胞の生着は、マウス抗ヒトCD45−Fitc、CD38−PEおよびCD34−APC(ベクトン ディッキンソン)を用いた染色によって試験された。ヒト白血球は、汎白血球マーカーであるCD45の発現によってゲートされ、この集団の中でCD34+/CD38−/低
初期細胞の割合が決定された。いくつかの実験では、CD34+/CD38−/低
上のドーパミン受容体発現が調べられ、細胞は、二次抗体、ヤギ抗ウサギ アレクサ(alexa)488(モレキュラー プローブ、ユージーン、OR)に続いて、マウス抗ヒトCD38−PE、CD34−APCおよびウサギ抗ヒトドーパミン受容体3または5(カルビオケム(Calbiochem)、ノッティンガム、UK)を用いて、三重に染色された。染色後、細胞はFACS緩衝溶液で洗浄され、蛍光活性化セルソーティング(FACSCaliburおよびCellQuestソフトウェア、ベクトン ディッキンソン)によって分析された。
【0220】
(vii)前駆細胞コロニー形成アッセイ(CFU)
ヒト前駆細胞のレベルを検出するために、半固体培養が、以前記載されたように行われた(Peled ら、1999)。端的に言えば、CD34+細胞(1×103細胞/ml)が、0.9%のメチルセルロース(シグマ)、30%FCS、5×10-5M 2ME、50ng/ml SCF、5ng/ml IL−3、5ng/ml GM−CSF(R&D)および2μ
/ml エリスロポエチン(オルトバイオテック(Orto Bio Tech)、ドンミルズ、カナダ)中に、ドーパミンアゴニスト/アンタゴニストとともに播種された。いくつかの実験では、細胞は、アゴニスト/アンタゴニストで、半固体培養液への播種に先立ち、4日間事前培養された。培養液は、5%CO2を含む加湿された雰囲気下、37℃で培養され、そして、14日後、形態学的基準にしたがって、骨髄性または赤血球のコロニーが計測された。初期ヒト細胞によるインビボでの生着のレベルが測定されるような実験においては、半固体培地
は、15%ヒト血漿および15%FCSを含む。
【0221】
(viii)化学走化性アッセイ
化学走化性実験は、以前記載されたように(1)、トランスウェル(6.5mm直径、5μm孔径;コーニング社、コーニング、NY)を用いてアッセイされた。終夜GM−CSF(5ng/ml)で処置された、または未処置の、CB CD34+細胞(通常、100μ
l中、50,000〜100,000細胞)が上部のチャンバーに入れられ、アスコルビン酸(シグマ)を添加され、およびドーパミン(10nM;シグマ)を添加または添加されていない培地
が、下部のチャンバーに入れられた。細胞の遊走が、FACSCalibur(ベクトン ディッキンソン)を用いて、数えられた。
【0222】
(ix)染色および組織化学
SKFまたは7−OH−DPATで処置されたまたは未処置の、CB CD34+に富んだ細胞(ウェル毎に1×105〜2×105細胞)が、37℃で2時間、HA−被覆カバースリップ上に播種された。サンプルは、記載されたように(Goichberg ら、2001)、顕微鏡観察のために処理された。端的には、接着細胞は、3%パラホルムアルデヒド(メルク、ダルムシュタット、ドイツ)で固定され、そして、もし示されていれば、0.5%のトリトンX−100(シグマ−アルドリッチ)中で透過させられた。サンプルは、間接的に、加湿されたチャンバー中、室温で、精製されたポリクローナルウサギ抗ヒトドーパミン5抗体(カルビオケム、ノッティンガム、UK)(MCAP89;セロテック(Serotec))を用いて免疫ラベルされた。使用された二次抗体は、ヤギ抗ウサギ アレクサ488共役体(モレキュラー プローブ、ユージーン、OR)。重合したアクチンを検出するためのPhalloidin−TRITCは、シグマ−アルドリッチから購入された。ラベル化に続いて、細胞は、エルバノール(Elvanol)(モビオール(Mowiol)4−88、ヘキスト、フランクフルト、ドイツ)上に取り付けられた。免疫蛍光イメージは、科学的グレードのCCDカメラを用いて得られ、DeltaVisionシステムによって、Resolve3Dソストウェア(アプライドプレシジョン、イサクア、WA)を用いて加工された。
【0223】
(x)統計的分析
顕著なレベルのデータが、対応のある2標本スチューデントのt分布検定(paired two-tail Student t test analysis)によって決定された。
【0224】
実施例1 ヒト造血幹細胞は、ドーパミン受容体をその表面上に発現する。
ドーパミン受容体タイプ3および5の発現は、異なる原料から得られた、CD34+に富んだ細胞の表面上で評価された。CD34+に富んだヒト細胞は、材料および方法の項で示されたように、次の原料から得られた:骨髄(BM)、動員された末梢血、および臍帯血。本発明者らは、フローサイトメトリー分析によって、全ての原料からのCD34+に富んだヒト細胞は、両方のタイプのドーパミン受容体をそれらの表面上に発現していることを見出した。興味深いことに、受容体の発現のレベルは、細胞の原料、および、被験個体がG−CSFで処置されたか、またはされていないか、に依存して変化した。例えば、G−CSFで処置された健康なドナーのBM由来の、CD34+に富んだ細胞上のドーパミン受容体の発現は、未処置の健康なヒトドナーの骨髄(BM)由来のCD34+に富んだ細胞よりも約2〜4倍高かった(図1A、1B)。さらに、本発明者らは、移植に、より適した稀な幹細胞集団を含む、より初期のCD34+細胞、CD34+/CD38-/低
、の部分集団(図2、R2)が、より分化した細胞、CD34+CD38高
細胞の部分集団(図1、R1)に比べて、より高いレベルの、両方のタイプのドーパミン受容体を発現していることを見出した。
【0225】
実施例2 G−CSFおよびGM−CSFなどの骨髄性サイトカインはヒトCD34+細胞表面上で、ドーパミン受容体のレベルを増大させる。
前の実施例で、本発明者らは、G−CSFで処置された個体由来の幹細胞が、それらの表面において、増大したレベルのドーパミン受容体を掲示していることを明らかにした。以下の実施例は、機能的なインビボの動物モデルにおいて、ヒト幹細胞の表面におけるドーパミン受容体のレベルがG−CSFへの幹細胞の暴露により増大することを実証するために行われた。このモデルは、G−CSFでのキメラNOD/SCIDマウスの処置によって誘導される、幹細胞の末梢血への移動を含む。キメラNOD/SCIDマウスは、臍帯血(CB)からのヒト造血単核細胞(MNCs)を用いた異種移植を受けたマウスからなる。以前にPetit(2002)によって公表されているように、造血幹細胞の末梢血(PB)への強力な移動が、5日の毎日のG−CSFの注射の後達成されるので、本発明者らは、この段階でBM細胞を採取した。次に、本発明者らは、Ficoll上でMNCを分離し、細胞を、ドーパミン受容体3&5(カルビオケムからの抗体)、CD34およびCD38発現[それぞれ、ヒト特異的抗CD34−APC(ファーミンゲン)およびCD38−PEモノクローナル抗体(ベクトン ディッキンソン)を用いて]に対して、図1Cに示すように染色した。フローサイトメトリーによって測定されるように、得られた結果は、G−CSFでの処置および移動は、CD34+/CD38-/低
細胞集団におけるドーパミン受容体発現のレベルの増大をともなっていることを示していた。したがって、G−CSFで処置された個体のヒト骨髄から採取されたCD34+細胞と同様に(前の実施例参照)、G−CSFで処置されたキメラマウスからのヒトCD34+/CD38-/低
細胞は(CD34+CD38高
に比べて)、それらの表面上で増大したドーパミン受容体の発現を掲示していた(図1C)。
【0226】
次に、造血幹細胞上のドーパミン受容体の発現における、骨髄性サイトカインの直接的な効果がインビトロで試験された。この目的のために、動員された末梢血、健常
ヒト骨髄または臍帯血が、RPMIまたはGM−CSF 5ng/mlを添加されたRPMIで3日間培養された。この培養に続いて、細胞は三重に染色された:CD34−APC(ファーミンゲン)、D38−PE(ベクトン ディッキンソン)、ウサギ抗ヒトドーパミン受容体3抗体およびウサギ抗ヒトドーパミン受容体5抗体(カルビオケム)。図3に示されている結果は、GM−CSFとの3日間の培養が、CD34+/CD38-/低
細胞における、ドーパミン受容体3および5の両方のタイプのレベルを上方調節することを明らかにしている。
【0227】
本明細書中で得られた結果は、造血幹細胞および前駆細胞の末梢血(PB)への移動を誘導する骨髄性サイトカインが、直接的に、ヒト造血幹細胞および前駆細胞、とりわけより初期のCD34+/CD38-/低細胞を含む集団の表面上のドーパミン受容体のレベルを増大させることを示している。
【0228】
実施例3 ドーパミンアゴニストは臍帯血CD34+細胞の、クローン化可能前駆細胞の含量を増大する。
GM−CSFおよびG−CSFは、骨髄の分化および幹細胞調節におけるその役割が知られている。これらのサイトカインを、ヒト前駆細胞の検出をより容易にするために、前駆細胞コロニー形成アッセイ(CFU)に添加することは、一般的な方法である。GM−CSFおよびG−CSFの幹細胞制御における役割という観点から、およびこれらのサイトカインが直接的に、比較的高いドーパミン受容体の発現を初期のCD34+/CD38-/低
細胞上に誘導するという本発明者の発見にもとづき、本発明者らは、ドーパミン受容体が幹細胞および前駆造血細胞の調節または機能に役割を担っているのかもしれないと仮定した。したがって、本発明者らは、ドーパミン受容体レベルの上方調節が、インビトロで前駆細胞の発達に影響を及ぼしているのかどうかを試験した。この目的のために、臍帯血CD34+細胞が、Epo(2μ
/ml;オルトバイオテック、ドンミルズ、カナダ)、SCF(50ng/ml;R&D)およびIL−3(5ng/ml R&D)およびGM−CSF(5ng/ml;R&D)またはG−CSF(100ng/ml;ロッシュ)を添加された、半固体培養液(1ml中、1×103細胞/ml)中に、ドーパミン受容体レベルを上方調節するために播種された。増大されたドーパミン受容体活性の効果を評価するために、半固体培養は、ドーパミンアゴニストSKF(1μM)または7−OH−DPAT(100nM)、または対照としての培地
を添加された。図4Aに示されているように、SKFは、CB CD34+ CFU−C形成を、GM−CSFの存在下でのみ増大させた。同様に、ドーパミンアゴニスト、7−OH−DPATは、GM−CSFの存在下、コロニー形成を増大したが、最も大きな増大は、G−CSFの存在下で観察された。培地に骨髄性サイトカインが添加されなかった場合、コロニー形成における増加は見られなかった。
【0229】
これらの結果は、ドーパミン受容体の活性は、幹細胞の調節および分化において有益な役割を有していることを明示している。
【0230】
実施例4 NOD/SCIDマウスの骨髄中の、CD34+に富んだヒト細胞の生着におけるドーパミンアゴニストの効果
本発明者らは、幹細胞の調節および分化(上記で明示したように)に加えて、ドーパミン受容体が、幹細胞機能において、生着や再増殖などの役割を担っていると仮定した。幹細胞の生着におけるドーパミン受容体の効果を評価するために、エクスビボにおいて、ドーパミンアゴニスト、SKFまたは7−OH−DPATで処置された、ヒトCD34+細胞に富んだ動員された末梢血(MPB)が、NOD/SCIDマウスに移植され、マウスBMにおけるヒト細胞の生着が測定された。端的には、1〜3×105MPB CD34+細胞が、2〜4日間、37℃で、10%FCS、ペニシリン、ストレプトマイシン、およびL−グルタミンを添加されたRPMI中で培養され、ドーパミン受容体アゴニスト(1μM)SKFまたは(100ng/ml)7−OH−DPATで処置、または処置されずに残された。培養後、細胞は、放射線照射されたNOD/SCIDマウスに注射された。マウスは、注射後5週間で犠牲にされ、BMが抽出され、BM細胞がヒトCD45マーカーでラベルされた。結果は、図4Bにまとめられており、注射に先立って、SKFまたは7−OH−DPATで処置されたヒト幹細胞は、対照細胞に比べてマウスBM中で2倍多い生着を示した。図4Cは、ドーパミンアゴニストが、細胞がGM−CSFおよびドーパミンアゴニストで一緒に処置された場合にのみ、生着を促進したことを示している。実際、生着において50%の減少が、細胞がドーパミン受容体アンタゴニスト、クロザピンで注射の前に前処置された場合に見られた(図4B)。
【0231】
真の造血幹細胞の顕著な特徴は、全ての血液細胞系統を多数、長期再形成するためのそれらの能力である。成功した幹細胞の拡張のための要件は、長期再形成能力の付随的な損失無しに、効率的に真の幹細胞の増殖を促進することであろう。長期培養起始細胞(LTC−IC)に対するドーパミンアゴニストの効果を試験するために、二次移植が行われた。LTC−ICは、より初期であり、自己更新を可能にする、幹細胞集団の部分集団である(Scadden D Nature 2003; 841-6)。二次移植の実験において(図4D)、一次移植(およびドーパミンアゴニストで処置されたCD34を初めに注射された)のキメラから得られたBM細胞が、NOD/SCIDレシピエントに注射された。(初期のレシピエントの生着割合にしたがって標準化された)等しい量のヒト細胞が、二次移植において注射された。予備実験で、本発明者らは、二次移植されたマウスの生着割合が、初期のレシピエントにおけるよりも高い(図4D)ので、ドーパミンアゴニストでの処置が、LTC−ICに対し有益な効果を有していることを見出した。したがって、造血幹細胞のドーパミン受容体アゴニストでの刺激が、改良された二次再形成能力によって明示されるように、長期培養起始細胞を誘導する。
【0232】
本発明者らの結果は、インビトロにおける、造血幹細胞または前駆細胞のドーパミンアゴニストでの刺激が、この細胞の再増殖の可能性を改良するかもしれないことを示唆している。
【0233】
実施例5 ドーパミンの喪失による骨髄細胞性の減少
本発明者らは、ドーパミンが骨髄中の細胞質量の恒常性に役割を有しているのかどうかを試験した。この目的のため、マウスは、ドーパミンアゴニスト、7−OH−DPAT(1.5mg/kg)またはアンタゴニスト、フルペンチキソール5(3mg/kg)の5日間の毎日のi.p.注射で注射されるか、または未処置で残され、骨髄細胞質量が測定された。5日目、最後の注射の4時間後、マウスは犠牲にされ、BM細胞がBMより(シリンジで)洗い流され、白血球数(WBC)が測定された。本発明者らは、ドーパミンアゴニスト7−OH−DPATでのマウスの処置が、BM細胞性において50%の増加を導く一方、ドーパミンアンタゴニスト、フルペンチキソールでの処置がBM細胞性において25%の減少を生じることを見出した(図5)。
【0234】
要するに、これらの結果は、ドーパミンが、BM中で造血増殖を調節していることを示唆している。
【0235】
実施例6 SKFおよび7−OH−DPATは、臍帯血CD34+細胞において、ヒアルロン酸への細胞の接着による極性化および拡散を誘導する。
ヒアルロン酸(HA)は、BM ECMの重要な成分であり、BM由来の間質細胞の培養によって産生されるグリコサミノグリカンの40%を占める。最近のデータは、HSCs/HPCsの接着および遊走特性における、マトリックスならびに細胞表面HAの両方の不可欠な役割を示している(Avigdor ら、2004)。造血細胞の発達および遊走は、密接に結びついている基本的な過程である。造血幹細胞の調節におけるドーパミン受容体に対する役割を確立した後(実施例3参照)、本発明者らは、次に、CD34+細胞の運動性におけるドーパミンアゴニストの可能な役割を詳しく調べた。化学走化性刺激に応答する細胞は、細胞骨格の再配列による形態学的な変化および細胞表面受容体の再分配を示す。本発明者らは、ドーパミンアゴニストSFKもしくは7−OH−DPATの存在下または非存在下における、ヒアルロン酸への接着による、臍帯血CD34+細胞の形態における変化を評価した。図6Aに示されるように、アゴニストSFKまたは7−OH−DPATの存在下、極性化した形態を掲示する細胞の割合は、対照の未処置のCB CD34+細胞に比べて、2倍以上となった。アゴニスト処置された多くの細胞は、促進された拡散、細胞伸長、および多重隆起によって明示されるように、形態学的変化を獲得した。本発明者らは、これらの細胞上で発現されているドーパミン受容体5を検出するために、免疫細胞化学的分析を行った。興味深いことに、膜ドーパミン受容体5の集積は、細胞上に「点(dots)」を形成することによって明示された。強度な点の形成は、受容体の集積を示しており、極性化された細胞において見られた(図6B)。アクチンの重合度における変化は、ドーパミン受容体アゴニストで処置された細胞内で検出され、このことは、これらの薬物の存在下での、細胞骨格の変化を示している。
【0236】
本明細書中で得られた結果は、ドーパミン受容体が、造血幹細胞の遊走に役割を担っていることを示している。
【0237】
本発明者らは、未成熟ヒトCD34+細胞(100μ
l中、50,000〜100,000細胞)のインビトロでの遊走の可能性に対する、ドーパミン(1nM〜1μ
M)の効果を試験した。本発明者らは、トランスウェルの下部のチャンバーに入れられたドーパミンが、CD34+に富んだ臍帯血細胞の遊走を、顕著に増加させることを見出した(図6C)。この効果は、細胞が骨髄性サイトカインGM−CSFで前処置されなかった場合には検出されなかった(データは示さない)。ドーパミンは酸化性が高いので、そのアゴニストは、特に、より長い培養期間を必要とする処置で使用された(図6D)。さらに、本発明者らはまた、G−CSFだけで処置されたマウスから得られた細胞に比べて、G−CSFおよびドーパミン受容体アゴニストSKFまたは7−OH−DPAT(SKFまたは7−OH−DPATは、G−CSFとともに、マウスに注射された)で処置されたマウスから得られたマウス骨髄単核細胞(100μ
l中、200,00細胞)のより高い自発的な遊走を明らかにした(図6D)。
【0238】
ドーパミンおよびドーパミンアゴニストは、増大された細胞極性と相関して、CD34+細胞の遊走を増大した。
【0239】
実施例7 エピネフリンおよびノルエピネフリン受容体の活性は、造血幹細胞の機能を調節する。
本発明者らは、CD34+細胞が、別のカテコールアミン神経伝達物質によって調節されるのかどうかを調べるための実験を行った。ベータ−2アドレナリン作用性の受容体に特異的かつラベルされた抗体を用いたフローサイトメトリー分析を行うことにより、本発明者らは、CD34+細胞が、ベータ−2アドレナリン作用性の受容体を発現していること、および、動員された末梢血CD34+細胞が、より高いレベルのこれらの受容体を発現していることを見出した(図7A)。
【0240】
次に、アドレナリン作用性の神経伝達物質エピネフリン(10nM)およびノルエピネフリン(1および10nM)の、ヒトCD34+細胞の増殖に対する効果が評価された。実験条件は、ドーパミンアゴニストを用いた場合に実施された条件と類似であった。コロニーアッセイのため、エピネフリンおよびノルエピネフリンがメチルセルロースに添加された。両方の神経伝達物質は、ヒト臍帯血CD34+細胞のクローン化の能力を増加させることを見出した(図7B)。生着アッセイのため、細胞は、2日間、GM−CSF 5ng/mlを添加されたRPMI中で培養された。両方の神経伝達物質は、NOD/SCIDマウス中で、ヒトCD34+細胞の生着の促進を増大させることが見出された(図7D〜7E)。
【0241】
本発明者らはまた、ヒトCD34+細胞の遊走能力が、ノルエピネフリンによって影響を受けることを見出した。例えば、下部のウェルに入れられたノルエピネフリンは、CD34+細胞の遊走を増加させ、このことは、ヒト造血幹細胞および前駆細胞の遊走が、カテコールアミン神経伝達物質によって媒介され得ることを示している(図7C)。
【0242】
本発明者らのインビトロおよびインビボでの発見は、カテコールアミン神経伝達物質が、造血前駆細胞の増殖および遊走を直接的に調節することを明らかにしている。
【0243】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、任意には、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせた、カテコールアミン受容体アゴニストの使用。
【請求項2】
造血幹細胞移植(HSCT)および/または造血前駆細胞移植を改良または促進するための請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記造血幹細胞移植(HSCT)および/または造血前駆細胞移植細胞が、成熟血液細胞系統の再増殖のためのものである請求項2記載の使用。
【請求項4】
前記医薬が、幹細胞および/または前駆細胞へエクスビボで移植前に投与され、その結果、幹細胞ならびに/または前駆細胞の遊走、生着能および/もしくは増殖を増大させる請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記幹細胞および/または前駆細胞が、G−CSF処置されたドナー由来である請求項4記載の使用。
【請求項6】
幹細胞または前駆細胞中のカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物を含む請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記薬物が、骨髄性サイトカイン、またはカテコールアミン受容体をエンコードする発現ベクターである請求項6記載の使用。
【請求項8】
前記薬物が、骨髄性サイトカインである請求項7記載の使用。
【請求項9】
前記骨髄性サイトカインが、GM−CSFおよび/またはG−CSFである請求項8記載の使用。
【請求項10】
前記医薬が、健康なドナーまたはがん治療を受けている患者へのインビボでの投与のためのものであり、その結果、骨髄およびその他の組織部位から血液への幹細胞または前駆細胞の移動を増大させ、そして移植のための血液からの幹細胞および/または前駆細胞の採取を容易にする請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
骨髄およびその他の組織部位から血液への幹細胞および/または前駆細胞の移動を改良または促進するため、ならびに健康なドナーまたはがん治療を受けている患者の血液からの幹細胞および/または前駆細胞の採取を容易にするための医薬の製造における、任意には骨髄性サイトカインと組み合わせた、カテコールアミン受容体アゴニストの使用。
【請求項12】
成熟血液細胞系統の再増殖のための造血幹細胞移植(HSCT)および/または造血前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、骨髄性サイトカインと組み合わせたカテコールアミン受容体アゴニストの使用であって、該医薬が、幹細胞および/または前駆細胞へエクスビボで移植前に投与され、その結果、幹細胞ならびに/または前駆細胞の生着能および/もしくは増殖を増大させる使用。
【請求項13】
成熟血液細胞系統の再増殖のための造血幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、骨髄性サイトカインを除く、造血幹細胞または前駆細胞中のカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物の使用。
【請求項14】
カテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物が、前記神経伝達物質であるカテコールアミン受容体をエンコードする発現ベクターまたは内因性の受容体の発現レベルを誘導することのできるベクターである請求項13記載の使用。
【請求項15】
造血細胞の産生を増大させるための医薬の製造における、任意には、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストで刺激された造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団の使用。
【請求項16】
前記刺激された細胞が、任意には、カテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストをインビボで投与された個体から採取されている請求項15記載の使用。
【請求項17】
前記刺激がエクスビボで行われる請求項15記載の使用。
【請求項18】
幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で細胞を刺激することを含む請求項15〜17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
前記薬物が、骨髄性サイトカインである請求項18記載の使用。
【請求項20】
前記骨髄性サイトカインが、GM−CSFおよび/またはG−CSFである請求項19記載の使用。
【請求項21】
前記幹細胞または前駆細胞が、G−CSF処置されたドナー由来である請求項15〜20のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
造血幹細胞移植(HSCT)または前駆細胞移植治療のための医薬の製造における、任意には、骨髄性サイトカインと組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストを投与された個体の血液から採取された造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団の使用。
【請求項23】
成熟血液細胞系統の再増殖のための造血幹細胞移植(HSCT)もしくは造血前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、GM−CSFおよび/もしくはG−CSF、およびカテコールアミン受容体アゴニストでエクスビボにて刺激された造血幹細胞ならびに/または前駆細胞を含む細胞集団の使用。
【請求項24】
移植治療、組織再生および/または体細胞治療のための医薬の製造における、カテコールアミン受容体アゴニスト、および幹細胞および/もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物でエクスビボにて刺激された幹細胞ならびに/または前駆細胞を含む細胞集団の使用。
【請求項25】
前記幹細胞および/または前駆細胞が、組換えDNAを内包する請求項24記載の使用。
【請求項26】
前記幹細胞および/または前駆細胞が、CD34+幹細胞および/または前駆細胞である請求項24または25記載の使用。
【請求項27】
前記医薬が、体細胞治療のためのものである請求項24〜26のいずれかに記載の使用。
【請求項28】
急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、脂肪肉腫、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、悪性胚細胞性腫瘍から選択されるがん;無巨核球性血小板減少症(AMT)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、先天性血球減少症、エヴァンズ症候群、ファンコーニ貧血、コストマン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミアから選択される血液障害;副腎脳白質ジストロフィ、不全リンパ球症候群、先天性角化不全症、家族性血球貧食性リンパ組織球症、ゴーシェ病、ギュンター病、ハンター症候群、ハーラー症候群、遺伝性神経セロイドリポフスチノーシス、クラッベ病、ランゲルハンス細胞組織球症、レッシュ−ナイハン症候群、白血球接着不全、大理石骨病などの遺伝性代謝障害;アデノシンデアミナーゼ欠損症(ADAまたはSCID−ADA)、重症複合型免疫不全(SCID)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)、高IgM免疫不全症候群(HIM)から選択される免疫疾患;アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(ルー・ゲーリグ病としても通常知られている)から選択される神経系疾患;筋ジストロフィ;多発性硬化症;関節炎;脊髄損傷;脳損傷;脳卒中;心臓病;肝臓および網膜の疾患;糖尿病;ならびに化学療法もしくは放射線治療の副作用から選択される疾患、障害または症状の治療のためのものである請求項24〜27のいずれかに記載の使用。
【請求項29】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、ドーパミンまたはドーパミン受容体アゴニストである請求項1〜28のいずれかに記載の使用。
【請求項30】
前記ドーパミン受容体アゴニストが、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムから選択される請求項28記載の使用。
【請求項31】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、アドレナリン作用性のアゴニストである請求項1〜27のいずれかに記載の使用。
【請求項32】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、エピネフリンである請求項1〜27のいずれかに記載の使用。
【請求項33】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、ノルエピネフリンである請求項1〜27のいずれかに記載の使用。
【請求項34】
異常な特性を有している幹細胞および/もしくは前駆細胞集団の成長、発達、生着ならびに/または再増殖の能力を減少させるための医薬の製造における、カテコールアミン受容体のアンタゴニストの使用。
【請求項35】
白血病の治療のための請求項34記載の使用。
【請求項36】
前記白血病が、急性骨髄性白血病である請求項35記載の使用。
【請求項37】
前記アンタゴニストが、ドーパミン受容体アンタゴニストである請求項34〜36のいずれかに記載の使用。
【請求項38】
前記ドーパミン受容体アンタゴニストが、クロザピン、フルペンチキソール、ピモジド、レモキシプリド、ルペンチキソール、ドンペリドン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ジプラシドン、ロキサピン、チオリダジン、メトクロプラミド、クロルプロチキセンおよびドロペリドールから選択される請求項37記載の使用。
【請求項39】
前記アンタゴニストが、アドレナリン作用性の受容体アンタゴニストである請求項34〜36のいずれかに記載の使用。
【請求項40】
任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物を用いてエクスビボで刺激された幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む移植治療に適した幹細胞ならびに/または前駆細胞を含む細胞集団。
【請求項41】
幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で刺激された幹細胞および/または前駆細胞を含む請求項40記載の細胞集団。
【請求項42】
前記カテコールアミンが、ドーパミンであり、また、前記アゴニストが、ドーパミン受容体アゴニストである請求項40または41記載の細胞集団。
【請求項43】
前記ドーパミン受容体アゴニストが、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムである請求項42記載の細胞集団。
【請求項44】
前記カテコールアミンが、ノルエピネフリンであり、また、前記アゴニストが、アドレナリン作用性の受容体アゴニストである請求項40または41記載の細胞集団。
【請求項45】
前記カテコールアミンが、エピネフリンであり、また、前記アゴニストが、アドレナリン作用性の受容体アゴニストである請求項40または41記載の細胞集団。
【請求項46】
カテコールアミン受容体アゴニストならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項47】
ドーパミンまたはドーパミン受容体アゴニストならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項48】
アドレナリン作用性の受容体アゴニストならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項49】
ノルエピネフリンまたはエピネフリンならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項50】
薬学的に許容され得る担体、ならびに、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節を誘導することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物で刺激された造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団を含む医薬組成物。
【請求項51】
前記造血幹細胞および/または前駆細胞が、G−CSF処置された個体由来である請求項50記載の医薬組成物。
【請求項52】
幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節を誘導することのできる薬物で刺激された造血幹細胞ならびに/もしくは前駆細胞を含む請求項50または51記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記薬物が、骨髄性サイトカインである請求項52記載の医薬組成物。
【請求項54】
前記骨髄性サイトカインが、GM−CSFおよび/またはG−CSFである請求項53記載の医薬組成物。
【請求項55】
薬学的に許容され得る担体、ならびに、カテコールアミン受容体アゴニストおよびG−CSFもしくはGM−CSFで刺激された造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団を含む医薬組成物。
【請求項56】
前記幹細胞が、インビボにてG−CSFまたはGM−CSFで刺激される請求項55記載の医薬組成物。
【請求項57】
前記幹細胞が、インビトロにてG−CSFまたはGM−CSFで刺激される請求項55記載の医薬組成物。
【請求項58】
前記幹細胞が、インビボにてカテコールアミン受容体アゴニストで刺激される請求項55〜57のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項59】
前記幹細胞が、インビトロにてカテコールアミン受容体アゴニストで刺激される請求項55〜57のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項60】
薬学的に許容され得る担体、ならびに、任意には骨髄性サイトカインと組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストでインビボにて刺激された幹細胞および/または前駆細胞を含む医薬組成物。
【請求項61】
薬学的に許容され得る担体、ならびに、任意には幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストでエクスビボにて刺激された幹細胞および/または前駆細胞を含む医薬組成物。
【請求項62】
前記幹細胞および/または前駆細胞が、組換えDNAを内包する請求項50〜61のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項63】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、ドーパミン受容体アゴニストである請求項46〜62のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項64】
前記ドーパミン受容体アゴニストが、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムから選択される請求項63記載の医薬組成物。
【請求項65】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、アドレナリン作用性のアゴニストである請求項46〜62のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項66】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、エピネフリンである請求項46〜62のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項67】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、ノルエピネフリンである請求項46〜62のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項68】
幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植において使用するための、改良されたまたはより優れた細胞組成物の製造方法であって、造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団を提供すること、ならびに、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物およびカテコールアミン受容体アゴニストで細胞集団を刺激することを含む方法。
【請求項69】
細胞集団中の造血幹細胞および/もしくは前駆細胞の遊走、生着、再増殖の能力ならびに/または増殖を増大させるための方法であって、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストで細胞集団を刺激することを含む方法。
【請求項70】
集団中の前記幹細胞および/または前駆細胞が、G−CSFもしくはGM−CSF処置されたドナー由来である請求項69記載の方法。
【請求項71】
幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物で細胞を刺激することを含む請求項69または70記載の方法。
【請求項72】
前記薬物が、骨髄性サイトカインである請求項71記載の方法。
【請求項73】
前記骨髄性サイトカインが、G−CSFおよび/またはGM−CSFである請求項72記載の方法。
【請求項74】
幹細胞移植(SCT)ならびに/もしくは前駆細胞移植において使用するための、改良された、またはより優れた細胞組成物の製造方法であって、造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団を、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物、およびG−CSFおよび/またはGM−CSFで刺激することを含む方法。
【請求項75】
カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物ならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFでの刺激が、エクスビボにて行われる請求項74記載の方法。
【請求項76】
カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物での刺激が、エクスビボにて行われ、そして、G−CSFおよび/またはGM−CSFでの刺激はインビボにて行われる請求項74記載の方法。
【請求項77】
前記幹細胞および/または前駆細胞が、組換えDNAを含む幹細胞である請求項68〜76のいずれかに記載の方法。
【請求項78】
造血幹細胞を含む細胞集団を提供すること、幹細胞におけるカテコールアミン神経伝達物質受容体の発現レベルを上方調節すること、および、カテコールアミン受容体アゴニストへ細胞を暴露することを含む、臨床的移植のための長期培養起始細胞の製造方法。
【請求項79】
幹細胞が、G−CSFまたはGM−CSF処置されたドナー由来である請求項78記載の方法。
【請求項80】
細胞におけるカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節が、骨髄性サイトカインへ細胞を暴露することによって行われる請求項78または79記載の方法。
【請求項81】
前記骨髄性サイトカインが、GM−CSFおよび/またはG−CSFである請求項80記載の方法。
【請求項82】
幹細胞および/もしくは前駆細胞を提供すること、細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で細胞を刺激すること、および、表面において増大されたレベルの受容体を発現している細胞を選別することを含む、移植における使用のための、改良された、もしくはより優れた造血幹細胞ならびに/または前駆細胞組成物の製造方法。
【請求項83】
前記細胞が、CD34+細胞である請求項82記載の方法。
【請求項84】
前記細胞が、CD34+/CD38-/低細胞である請求項83記載の方法。
【請求項85】
カテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物が、GM−CSFまたはG−CSFである請求項82〜84のいずれかに記載の方法。
【請求項86】
カテコールアミン神経伝達物質受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物が、カテコールアミン神経伝達物質受容体をエンコードする発現ベクターまたは内因性の受容体の発現レベルを上方調節することのできるベクターである請求項82〜84のいずれかに記載の方法。
【請求項87】
選別された細胞が、未刺激の細胞における受容体のレベルと比較して、細胞表面において2〜4倍高いレベルのカテコールアミン神経伝達物質受容体を提示している請求項82〜86のいずれかに記載の方法。
【請求項88】
造血幹細胞を含む細胞集団を提供すること、幹細胞におけるカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節を誘導するためにGM−CSFおよび/またはG−CSFで細胞集団を刺激すること、ならびに、カテコールアミン受容体アゴニストと細胞集団を接触させることを含む、臨床的移植のための長期培養起始細胞の製造方法。
【請求項89】
GM−CSFおよび/またはG−CSFで、ならびに、カテコールアミン受容体アゴニストで刺激された造血幹細胞を含む、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ移植することを含む、骨髄の再増殖を促進するための方法。
【請求項90】
カテコールアミン受容体アゴニストで、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で刺激された幹細胞および/または前駆細胞を含む、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ投与することを含む、幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療を改良または促進するための方法。
【請求項91】
前記幹細胞または前駆細胞が、造血幹細胞および/または前駆細胞である請求項90記載の方法。
【請求項92】
集団中の前記幹細胞および/または前駆細胞が、G−CSFまたはGM−CSF処置された被験個体由来である請求項90または91記載の方法。
【請求項93】
幹細胞または前駆細胞におけるカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で細胞を刺激することを含む請求項90〜92のいずれかに記載の方法。
【請求項94】
前記薬物が、骨髄性サイトカインである請求項93記載の方法。
【請求項95】
前記骨髄性サイトカインが、GM−CSFおよび/またはG−CSFである請求項94記載の方法。
【請求項96】
カテコールアミン受容体アゴニストでの刺激が、エクスビボで行われる請求項90〜95のいずれかに記載の方法。
【請求項97】
骨髄性サイトカインでの刺激が、インビボで行われる請求項90〜95のいずれかに記載の方法。
【請求項98】
集団中の幹細胞または前駆細胞が、組換えDNAを含む細胞である請求項90〜97のいずれかに記載の方法。
【請求項99】
必要とする患者が、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、脂肪肉腫、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、悪性胚細胞性腫瘍から選択されるがん;無巨核球性血小板減少症(AMT)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、先天性血球減少症、エヴァンズ症候群、ファンコーニ貧血、コストマン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミアから選択される血液障害;副腎脳白質ジストロフィ、不全リンパ球症候群、先天性角化不全症、家族性血球貧食性リンパ組織球症、ゴーシェ病、ギュンター病、ハンター症候群、ハーラー症候群、遺伝性神経セロイドリポフスチノーシス、クラッベ病、ランゲルハンス細胞組織球症、レッシュ−ナイハン症候群、白血球接着不全、大理石骨病などの遺伝性代謝障害;アデノシンデアミナーゼ欠損症(ADAまたはSCID−ADA)、重症複合型免疫不全(SCID)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)、高IgM免疫不全症候群(HIM)から選択される免疫疾患;アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(ルー・ゲーリグ病としても通常知られている)から選択される神経系疾患;筋ジストロフィ;多発性硬化症;関節炎;脊髄損傷;脳損傷;脳卒中;心臓病;肝臓および網膜の疾患;糖尿病;ならびに化学療法もしくは放射線治療の副作用から選択される疾患、障害または症状を患っている請求項89〜98のいずれかに記載の方法。
【請求項100】
GM−CSFもしくはG−CSFで、およびカテコールアミン受容体アゴニストで刺激された造血幹細胞ならびに/または造血前駆細胞を含む、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ投与することを含む、幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療の方法。
【請求項101】
GM−CSFまたはG−CSFでの刺激が、インビボで行われる請求項100記載の方法。
【請求項102】
治療的に有効量の、幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む細胞集団ならびにカテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物を、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物とともに、必要とする患者へ投与することを含む、幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療を改良または促進する方法。
【請求項103】
造血幹細胞移植(HSCT)もしくは前駆細胞移植治療を改良または促進するための請求項102記載の方法。
【請求項104】
幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物の投与を含む請求項102または103記載の方法。
【請求項105】
前記薬物が、骨髄性サイトカインである請求項104記載の方法。
【請求項106】
前記骨髄性サイトカインが、GM−CSFおよび/またはG−CSFである請求項105記載の方法。
【請求項107】
前記幹細胞および/または前駆細胞が、組換えDNAを含む請求項100〜106のいずれかに記載の方法。
【請求項108】
必要とする患者が、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、脂肪肉腫、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、悪性胚細胞性腫瘍から選択されるがん;無巨核球性血小板減少症(AMT)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、先天性血球減少症、エヴァンズ症候群、ファンコーニ貧血、コストマン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミアから選択される血液障害;副腎脳白質ジストロフィ、不全リンパ球症候群、先天性角化不全症、家族性血球貧食性リンパ組織球症、ゴーシェ病、ギュンター病、ハンター症候群、ハーラー症候群、遺伝性神経セロイドリポフスチノーシス、クラッベ病、ランゲルハンス細胞組織球症、レッシュ−ナイハン症候群、白血球接着不全、大理石骨病などの遺伝性代謝障害;アデノシンデアミナーゼ欠損症(ADAまたはSCID−ADA)、重症複合型免疫不全(SCID)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)、高IgM免疫不全症候群(HIM)から選択される免疫疾患;アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(ルー・ゲーリグ病としても通常知られている)から選択される神経系疾患;筋ジストロフィ;多発性硬化症;関節炎;脊髄損傷;脳損傷;脳卒中;心臓病;肝臓および網膜の疾患;糖尿病;ならびに化学療法もしくは放射線治療の副作用から選択される疾患、障害または症状を患っている請求項100〜107のいずれかに記載の方法。
【請求項109】
治療的に有効量のカテコールアミン受容体アゴニストならびに造血幹細胞および/または前駆細胞を、必要とする患者へ投与することを含む、造血幹細胞移植(HSCT)および/もしくは造血前駆細胞移植、ならびに、少なくとも1つの血液細胞系統の再形成を、改良または促進するための方法。
【請求項110】
骨髄性サイトカインを除き、任意には、カテコールアミン受容体アゴニストと組み合わせた、治療的に有効量の幹細胞および/または前駆細胞ならびに幹細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物を、必要とする患者へ投与することを含む、幹細胞移植(SCT)および/もしくは前駆細胞移植治療を改良または促進するための方法。
【請求項111】
請求項40〜43のいずれかに記載の、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ移植することを含む、組織置換、生着、再生および/または再増殖治療のための方法。
【請求項112】
前記組織が、造血の、骨の、軟骨の、心性のまたは神経の組織である請求項111記載の方法。
【請求項113】
治療的に有効量のカテコールアミン受容体アゴニストを、必要とする患者へ投与することを含む、骨髄の質量を増大させる方法。
【請求項114】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、ドーパミン受容体アゴニストである請求項113記載の方法。
【請求項115】
前記ドーパミン受容体アゴニストが、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムから選択される請求項114記載の方法。
【請求項116】
治療的に有効量のカテコールアミン受容体アゴニストを被験個体へ投与することを含む、骨髄およびその他の組織部位から被験個体の血液への幹細胞または前駆細胞の移動を促進するための方法。
【請求項117】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、ドーパミン受容体アゴニストである請求項116記載の方法。
【請求項118】
前記ドーパミン受容体アゴニストが、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムから選択される請求項117記載の方法。
【請求項119】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、アドレナリン作用性のアゴニストである請求項116記載の方法。
【請求項120】
前記アゴニストが、エピネフリンである請求項119記載の方法。
【請求項121】
前記アゴニストが、ノルエピネフリンである請求項119記載の方法。
【請求項122】
異常な特性を掲示している幹細胞および/もしくは前駆細胞の集団の生着、再増殖の能力ならびに/または増殖を、必要とする患者において減少させるための方法であって、細胞集団を治療的に有効量のカテコールアミン神経伝達物質のアンタゴニストに暴露することを含む方法。
【請求項123】
前記暴露が、エクスビボで行われる請求項122記載の方法。
【請求項124】
前記暴露が、インビボで行われる請求項122記載の方法。
【請求項125】
治療的に有効量のカテコールアミン神経伝達物質のアンタゴニストを、必要とする患者へ投与することを含む、白血病を治療するための方法。
【請求項126】
前記アンタゴニストが、ドーパミン受容体アンタゴニストである請求項122〜125のいずれかに記載の方法。
【請求項127】
前記ドーパミン受容体アンタゴニストが、クロザピン、フルペンチキソール、ピモジド、レモキシプリド、ルペンチキソール、ドンペリドン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ジプラシドン、ロキサピン、チオリダジン、メトクロプラミド、クロルプロチキセンおよびドロペリドールから選択される請求項126記載の方法。
【請求項128】
前記アンタゴニストが、アドレナリン作用性の受容体アンタゴニストである請求項122〜125のいずれかに記載の方法。
【請求項129】
G−CSFまたはGM−CSFを含む第1要素;少なくとも1つのカテコールアミン受容体アゴニストを含む第2要素;および少なくとも1つのカテコールアミン受容体アゴニストの投与の開始前の、G−CSFまたはGM−CSFの投与に関する説明書を含む第3要素を含むキット。
【請求項130】
治療的に有効量の少なくとも1つのカテコールアミン受容体アゴニスト、および少なくとも1つの骨髄性サイトカインで造血幹細胞を刺激することを含む、初期造血幹細胞の増殖ならびに/または遊走を促進するための方法。
【請求項1】
幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、任意には、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせた、カテコールアミン受容体アゴニストの使用。
【請求項2】
造血幹細胞移植(HSCT)および/または造血前駆細胞移植を改良または促進するための請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記造血幹細胞移植(HSCT)および/または造血前駆細胞移植細胞が、成熟血液細胞系統の再増殖のためのものである請求項2記載の使用。
【請求項4】
前記医薬が、幹細胞および/または前駆細胞へエクスビボで移植前に投与され、その結果、幹細胞ならびに/または前駆細胞の遊走、生着能および/もしくは増殖を増大させる請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記幹細胞および/または前駆細胞が、G−CSF処置されたドナー由来である請求項4記載の使用。
【請求項6】
幹細胞または前駆細胞中のカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物を含む請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記薬物が、骨髄性サイトカイン、またはカテコールアミン受容体をエンコードする発現ベクターである請求項6記載の使用。
【請求項8】
前記薬物が、骨髄性サイトカインである請求項7記載の使用。
【請求項9】
前記骨髄性サイトカインが、GM−CSFおよび/またはG−CSFである請求項8記載の使用。
【請求項10】
前記医薬が、健康なドナーまたはがん治療を受けている患者へのインビボでの投与のためのものであり、その結果、骨髄およびその他の組織部位から血液への幹細胞または前駆細胞の移動を増大させ、そして移植のための血液からの幹細胞および/または前駆細胞の採取を容易にする請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
骨髄およびその他の組織部位から血液への幹細胞および/または前駆細胞の移動を改良または促進するため、ならびに健康なドナーまたはがん治療を受けている患者の血液からの幹細胞および/または前駆細胞の採取を容易にするための医薬の製造における、任意には骨髄性サイトカインと組み合わせた、カテコールアミン受容体アゴニストの使用。
【請求項12】
成熟血液細胞系統の再増殖のための造血幹細胞移植(HSCT)および/または造血前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、骨髄性サイトカインと組み合わせたカテコールアミン受容体アゴニストの使用であって、該医薬が、幹細胞および/または前駆細胞へエクスビボで移植前に投与され、その結果、幹細胞ならびに/または前駆細胞の生着能および/もしくは増殖を増大させる使用。
【請求項13】
成熟血液細胞系統の再増殖のための造血幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、骨髄性サイトカインを除く、造血幹細胞または前駆細胞中のカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物の使用。
【請求項14】
カテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物が、前記神経伝達物質であるカテコールアミン受容体をエンコードする発現ベクターまたは内因性の受容体の発現レベルを誘導することのできるベクターである請求項13記載の使用。
【請求項15】
造血細胞の産生を増大させるための医薬の製造における、任意には、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストで刺激された造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団の使用。
【請求項16】
前記刺激された細胞が、任意には、カテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストをインビボで投与された個体から採取されている請求項15記載の使用。
【請求項17】
前記刺激がエクスビボで行われる請求項15記載の使用。
【請求項18】
幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で細胞を刺激することを含む請求項15〜17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
前記薬物が、骨髄性サイトカインである請求項18記載の使用。
【請求項20】
前記骨髄性サイトカインが、GM−CSFおよび/またはG−CSFである請求項19記載の使用。
【請求項21】
前記幹細胞または前駆細胞が、G−CSF処置されたドナー由来である請求項15〜20のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
造血幹細胞移植(HSCT)または前駆細胞移植治療のための医薬の製造における、任意には、骨髄性サイトカインと組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストを投与された個体の血液から採取された造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団の使用。
【請求項23】
成熟血液細胞系統の再増殖のための造血幹細胞移植(HSCT)もしくは造血前駆細胞移植治療を改良または促進するための医薬の製造における、GM−CSFおよび/もしくはG−CSF、およびカテコールアミン受容体アゴニストでエクスビボにて刺激された造血幹細胞ならびに/または前駆細胞を含む細胞集団の使用。
【請求項24】
移植治療、組織再生および/または体細胞治療のための医薬の製造における、カテコールアミン受容体アゴニスト、および幹細胞および/もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物でエクスビボにて刺激された幹細胞ならびに/または前駆細胞を含む細胞集団の使用。
【請求項25】
前記幹細胞および/または前駆細胞が、組換えDNAを内包する請求項24記載の使用。
【請求項26】
前記幹細胞および/または前駆細胞が、CD34+幹細胞および/または前駆細胞である請求項24または25記載の使用。
【請求項27】
前記医薬が、体細胞治療のためのものである請求項24〜26のいずれかに記載の使用。
【請求項28】
急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、脂肪肉腫、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、悪性胚細胞性腫瘍から選択されるがん;無巨核球性血小板減少症(AMT)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、先天性血球減少症、エヴァンズ症候群、ファンコーニ貧血、コストマン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミアから選択される血液障害;副腎脳白質ジストロフィ、不全リンパ球症候群、先天性角化不全症、家族性血球貧食性リンパ組織球症、ゴーシェ病、ギュンター病、ハンター症候群、ハーラー症候群、遺伝性神経セロイドリポフスチノーシス、クラッベ病、ランゲルハンス細胞組織球症、レッシュ−ナイハン症候群、白血球接着不全、大理石骨病などの遺伝性代謝障害;アデノシンデアミナーゼ欠損症(ADAまたはSCID−ADA)、重症複合型免疫不全(SCID)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)、高IgM免疫不全症候群(HIM)から選択される免疫疾患;アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(ルー・ゲーリグ病としても通常知られている)から選択される神経系疾患;筋ジストロフィ;多発性硬化症;関節炎;脊髄損傷;脳損傷;脳卒中;心臓病;肝臓および網膜の疾患;糖尿病;ならびに化学療法もしくは放射線治療の副作用から選択される疾患、障害または症状の治療のためのものである請求項24〜27のいずれかに記載の使用。
【請求項29】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、ドーパミンまたはドーパミン受容体アゴニストである請求項1〜28のいずれかに記載の使用。
【請求項30】
前記ドーパミン受容体アゴニストが、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムから選択される請求項28記載の使用。
【請求項31】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、アドレナリン作用性のアゴニストである請求項1〜27のいずれかに記載の使用。
【請求項32】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、エピネフリンである請求項1〜27のいずれかに記載の使用。
【請求項33】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、ノルエピネフリンである請求項1〜27のいずれかに記載の使用。
【請求項34】
異常な特性を有している幹細胞および/もしくは前駆細胞集団の成長、発達、生着ならびに/または再増殖の能力を減少させるための医薬の製造における、カテコールアミン受容体のアンタゴニストの使用。
【請求項35】
白血病の治療のための請求項34記載の使用。
【請求項36】
前記白血病が、急性骨髄性白血病である請求項35記載の使用。
【請求項37】
前記アンタゴニストが、ドーパミン受容体アンタゴニストである請求項34〜36のいずれかに記載の使用。
【請求項38】
前記ドーパミン受容体アンタゴニストが、クロザピン、フルペンチキソール、ピモジド、レモキシプリド、ルペンチキソール、ドンペリドン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ジプラシドン、ロキサピン、チオリダジン、メトクロプラミド、クロルプロチキセンおよびドロペリドールから選択される請求項37記載の使用。
【請求項39】
前記アンタゴニストが、アドレナリン作用性の受容体アンタゴニストである請求項34〜36のいずれかに記載の使用。
【請求項40】
任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物を用いてエクスビボで刺激された幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む移植治療に適した幹細胞ならびに/または前駆細胞を含む細胞集団。
【請求項41】
幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で刺激された幹細胞および/または前駆細胞を含む請求項40記載の細胞集団。
【請求項42】
前記カテコールアミンが、ドーパミンであり、また、前記アゴニストが、ドーパミン受容体アゴニストである請求項40または41記載の細胞集団。
【請求項43】
前記ドーパミン受容体アゴニストが、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムである請求項42記載の細胞集団。
【請求項44】
前記カテコールアミンが、ノルエピネフリンであり、また、前記アゴニストが、アドレナリン作用性の受容体アゴニストである請求項40または41記載の細胞集団。
【請求項45】
前記カテコールアミンが、エピネフリンであり、また、前記アゴニストが、アドレナリン作用性の受容体アゴニストである請求項40または41記載の細胞集団。
【請求項46】
カテコールアミン受容体アゴニストならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項47】
ドーパミンまたはドーパミン受容体アゴニストならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項48】
アドレナリン作用性の受容体アゴニストならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項49】
ノルエピネフリンまたはエピネフリンならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFならびに薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項50】
薬学的に許容され得る担体、ならびに、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節を誘導することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物で刺激された造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団を含む医薬組成物。
【請求項51】
前記造血幹細胞および/または前駆細胞が、G−CSF処置された個体由来である請求項50記載の医薬組成物。
【請求項52】
幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節を誘導することのできる薬物で刺激された造血幹細胞ならびに/もしくは前駆細胞を含む請求項50または51記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記薬物が、骨髄性サイトカインである請求項52記載の医薬組成物。
【請求項54】
前記骨髄性サイトカインが、GM−CSFおよび/またはG−CSFである請求項53記載の医薬組成物。
【請求項55】
薬学的に許容され得る担体、ならびに、カテコールアミン受容体アゴニストおよびG−CSFもしくはGM−CSFで刺激された造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団を含む医薬組成物。
【請求項56】
前記幹細胞が、インビボにてG−CSFまたはGM−CSFで刺激される請求項55記載の医薬組成物。
【請求項57】
前記幹細胞が、インビトロにてG−CSFまたはGM−CSFで刺激される請求項55記載の医薬組成物。
【請求項58】
前記幹細胞が、インビボにてカテコールアミン受容体アゴニストで刺激される請求項55〜57のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項59】
前記幹細胞が、インビトロにてカテコールアミン受容体アゴニストで刺激される請求項55〜57のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項60】
薬学的に許容され得る担体、ならびに、任意には骨髄性サイトカインと組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストでインビボにて刺激された幹細胞および/または前駆細胞を含む医薬組成物。
【請求項61】
薬学的に許容され得る担体、ならびに、任意には幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストでエクスビボにて刺激された幹細胞および/または前駆細胞を含む医薬組成物。
【請求項62】
前記幹細胞および/または前駆細胞が、組換えDNAを内包する請求項50〜61のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項63】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、ドーパミン受容体アゴニストである請求項46〜62のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項64】
前記ドーパミン受容体アゴニストが、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムから選択される請求項63記載の医薬組成物。
【請求項65】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、アドレナリン作用性のアゴニストである請求項46〜62のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項66】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、エピネフリンである請求項46〜62のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項67】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、ノルエピネフリンである請求項46〜62のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項68】
幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植において使用するための、改良されたまたはより優れた細胞組成物の製造方法であって、造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団を提供すること、ならびに、幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物およびカテコールアミン受容体アゴニストで細胞集団を刺激することを含む方法。
【請求項69】
細胞集団中の造血幹細胞および/もしくは前駆細胞の遊走、生着、再増殖の能力ならびに/または増殖を増大させるための方法であって、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物と組み合わせて、カテコールアミン受容体アゴニストで細胞集団を刺激することを含む方法。
【請求項70】
集団中の前記幹細胞および/または前駆細胞が、G−CSFもしくはGM−CSF処置されたドナー由来である請求項69記載の方法。
【請求項71】
幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体を上方調節することのできる薬物で細胞を刺激することを含む請求項69または70記載の方法。
【請求項72】
前記薬物が、骨髄性サイトカインである請求項71記載の方法。
【請求項73】
前記骨髄性サイトカインが、G−CSFおよび/またはGM−CSFである請求項72記載の方法。
【請求項74】
幹細胞移植(SCT)ならびに/もしくは前駆細胞移植において使用するための、改良された、またはより優れた細胞組成物の製造方法であって、造血幹細胞および/または前駆細胞を含む細胞集団を、カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物、およびG−CSFおよび/またはGM−CSFで刺激することを含む方法。
【請求項75】
カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物ならびにG−CSFおよび/またはGM−CSFでの刺激が、エクスビボにて行われる請求項74記載の方法。
【請求項76】
カテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物での刺激が、エクスビボにて行われ、そして、G−CSFおよび/またはGM−CSFでの刺激はインビボにて行われる請求項74記載の方法。
【請求項77】
前記幹細胞および/または前駆細胞が、組換えDNAを含む幹細胞である請求項68〜76のいずれかに記載の方法。
【請求項78】
造血幹細胞を含む細胞集団を提供すること、幹細胞におけるカテコールアミン神経伝達物質受容体の発現レベルを上方調節すること、および、カテコールアミン受容体アゴニストへ細胞を暴露することを含む、臨床的移植のための長期培養起始細胞の製造方法。
【請求項79】
幹細胞が、G−CSFまたはGM−CSF処置されたドナー由来である請求項78記載の方法。
【請求項80】
細胞におけるカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節が、骨髄性サイトカインへ細胞を暴露することによって行われる請求項78または79記載の方法。
【請求項81】
前記骨髄性サイトカインが、GM−CSFおよび/またはG−CSFである請求項80記載の方法。
【請求項82】
幹細胞および/もしくは前駆細胞を提供すること、細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で細胞を刺激すること、および、表面において増大されたレベルの受容体を発現している細胞を選別することを含む、移植における使用のための、改良された、もしくはより優れた造血幹細胞ならびに/または前駆細胞組成物の製造方法。
【請求項83】
前記細胞が、CD34+細胞である請求項82記載の方法。
【請求項84】
前記細胞が、CD34+/CD38-/低細胞である請求項83記載の方法。
【請求項85】
カテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物が、GM−CSFまたはG−CSFである請求項82〜84のいずれかに記載の方法。
【請求項86】
カテコールアミン神経伝達物質受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物が、カテコールアミン神経伝達物質受容体をエンコードする発現ベクターまたは内因性の受容体の発現レベルを上方調節することのできるベクターである請求項82〜84のいずれかに記載の方法。
【請求項87】
選別された細胞が、未刺激の細胞における受容体のレベルと比較して、細胞表面において2〜4倍高いレベルのカテコールアミン神経伝達物質受容体を提示している請求項82〜86のいずれかに記載の方法。
【請求項88】
造血幹細胞を含む細胞集団を提供すること、幹細胞におけるカテコールアミン受容体の発現レベルの上方調節を誘導するためにGM−CSFおよび/またはG−CSFで細胞集団を刺激すること、ならびに、カテコールアミン受容体アゴニストと細胞集団を接触させることを含む、臨床的移植のための長期培養起始細胞の製造方法。
【請求項89】
GM−CSFおよび/またはG−CSFで、ならびに、カテコールアミン受容体アゴニストで刺激された造血幹細胞を含む、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ移植することを含む、骨髄の再増殖を促進するための方法。
【請求項90】
カテコールアミン受容体アゴニストで、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で刺激された幹細胞および/または前駆細胞を含む、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ投与することを含む、幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療を改良または促進するための方法。
【請求項91】
前記幹細胞または前駆細胞が、造血幹細胞および/または前駆細胞である請求項90記載の方法。
【請求項92】
集団中の前記幹細胞および/または前駆細胞が、G−CSFまたはGM−CSF処置された被験個体由来である請求項90または91記載の方法。
【請求項93】
幹細胞または前駆細胞におけるカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物で細胞を刺激することを含む請求項90〜92のいずれかに記載の方法。
【請求項94】
前記薬物が、骨髄性サイトカインである請求項93記載の方法。
【請求項95】
前記骨髄性サイトカインが、GM−CSFおよび/またはG−CSFである請求項94記載の方法。
【請求項96】
カテコールアミン受容体アゴニストでの刺激が、エクスビボで行われる請求項90〜95のいずれかに記載の方法。
【請求項97】
骨髄性サイトカインでの刺激が、インビボで行われる請求項90〜95のいずれかに記載の方法。
【請求項98】
集団中の幹細胞または前駆細胞が、組換えDNAを含む細胞である請求項90〜97のいずれかに記載の方法。
【請求項99】
必要とする患者が、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、脂肪肉腫、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、悪性胚細胞性腫瘍から選択されるがん;無巨核球性血小板減少症(AMT)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、先天性血球減少症、エヴァンズ症候群、ファンコーニ貧血、コストマン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミアから選択される血液障害;副腎脳白質ジストロフィ、不全リンパ球症候群、先天性角化不全症、家族性血球貧食性リンパ組織球症、ゴーシェ病、ギュンター病、ハンター症候群、ハーラー症候群、遺伝性神経セロイドリポフスチノーシス、クラッベ病、ランゲルハンス細胞組織球症、レッシュ−ナイハン症候群、白血球接着不全、大理石骨病などの遺伝性代謝障害;アデノシンデアミナーゼ欠損症(ADAまたはSCID−ADA)、重症複合型免疫不全(SCID)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)、高IgM免疫不全症候群(HIM)から選択される免疫疾患;アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(ルー・ゲーリグ病としても通常知られている)から選択される神経系疾患;筋ジストロフィ;多発性硬化症;関節炎;脊髄損傷;脳損傷;脳卒中;心臓病;肝臓および網膜の疾患;糖尿病;ならびに化学療法もしくは放射線治療の副作用から選択される疾患、障害または症状を患っている請求項89〜98のいずれかに記載の方法。
【請求項100】
GM−CSFもしくはG−CSFで、およびカテコールアミン受容体アゴニストで刺激された造血幹細胞ならびに/または造血前駆細胞を含む、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ投与することを含む、幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療の方法。
【請求項101】
GM−CSFまたはG−CSFでの刺激が、インビボで行われる請求項100記載の方法。
【請求項102】
治療的に有効量の、幹細胞および/もしくは前駆細胞を含む細胞集団ならびにカテコールアミン受容体アゴニストを含む組成物を、任意には、幹細胞もしくは前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物とともに、必要とする患者へ投与することを含む、幹細胞移植(SCT)および/または前駆細胞移植治療を改良または促進する方法。
【請求項103】
造血幹細胞移植(HSCT)もしくは前駆細胞移植治療を改良または促進するための請求項102記載の方法。
【請求項104】
幹細胞または前駆細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物の投与を含む請求項102または103記載の方法。
【請求項105】
前記薬物が、骨髄性サイトカインである請求項104記載の方法。
【請求項106】
前記骨髄性サイトカインが、GM−CSFおよび/またはG−CSFである請求項105記載の方法。
【請求項107】
前記幹細胞および/または前駆細胞が、組換えDNAを含む請求項100〜106のいずれかに記載の方法。
【請求項108】
必要とする患者が、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、脂肪肉腫、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、悪性胚細胞性腫瘍から選択されるがん;無巨核球性血小板減少症(AMT)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、先天性血球減少症、エヴァンズ症候群、ファンコーニ貧血、コストマン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミアから選択される血液障害;副腎脳白質ジストロフィ、不全リンパ球症候群、先天性角化不全症、家族性血球貧食性リンパ組織球症、ゴーシェ病、ギュンター病、ハンター症候群、ハーラー症候群、遺伝性神経セロイドリポフスチノーシス、クラッベ病、ランゲルハンス細胞組織球症、レッシュ−ナイハン症候群、白血球接着不全、大理石骨病などの遺伝性代謝障害;アデノシンデアミナーゼ欠損症(ADAまたはSCID−ADA)、重症複合型免疫不全(SCID)、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)、高IgM免疫不全症候群(HIM)から選択される免疫疾患;アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS(ルー・ゲーリグ病としても通常知られている)から選択される神経系疾患;筋ジストロフィ;多発性硬化症;関節炎;脊髄損傷;脳損傷;脳卒中;心臓病;肝臓および網膜の疾患;糖尿病;ならびに化学療法もしくは放射線治療の副作用から選択される疾患、障害または症状を患っている請求項100〜107のいずれかに記載の方法。
【請求項109】
治療的に有効量のカテコールアミン受容体アゴニストならびに造血幹細胞および/または前駆細胞を、必要とする患者へ投与することを含む、造血幹細胞移植(HSCT)および/もしくは造血前駆細胞移植、ならびに、少なくとも1つの血液細胞系統の再形成を、改良または促進するための方法。
【請求項110】
骨髄性サイトカインを除き、任意には、カテコールアミン受容体アゴニストと組み合わせた、治療的に有効量の幹細胞および/または前駆細胞ならびに幹細胞においてカテコールアミン受容体の発現レベルを上方調節することのできる薬物を、必要とする患者へ投与することを含む、幹細胞移植(SCT)および/もしくは前駆細胞移植治療を改良または促進するための方法。
【請求項111】
請求項40〜43のいずれかに記載の、治療的に有効量の細胞集団を、必要とする患者へ移植することを含む、組織置換、生着、再生および/または再増殖治療のための方法。
【請求項112】
前記組織が、造血の、骨の、軟骨の、心性のまたは神経の組織である請求項111記載の方法。
【請求項113】
治療的に有効量のカテコールアミン受容体アゴニストを、必要とする患者へ投与することを含む、骨髄の質量を増大させる方法。
【請求項114】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、ドーパミン受容体アゴニストである請求項113記載の方法。
【請求項115】
前記ドーパミン受容体アゴニストが、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムから選択される請求項114記載の方法。
【請求項116】
治療的に有効量のカテコールアミン受容体アゴニストを被験個体へ投与することを含む、骨髄およびその他の組織部位から被験個体の血液への幹細胞または前駆細胞の移動を促進するための方法。
【請求項117】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、ドーパミン受容体アゴニストである請求項116記載の方法。
【請求項118】
前記ドーパミン受容体アゴニストが、SKF81297、フェノルドパム、プラミペキソール、ロピニロール、アポモルヒネ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、7−OH−DPAT、リスリドおよびフェノルドパムから選択される請求項117記載の方法。
【請求項119】
前記カテコールアミン受容体アゴニストが、アドレナリン作用性のアゴニストである請求項116記載の方法。
【請求項120】
前記アゴニストが、エピネフリンである請求項119記載の方法。
【請求項121】
前記アゴニストが、ノルエピネフリンである請求項119記載の方法。
【請求項122】
異常な特性を掲示している幹細胞および/もしくは前駆細胞の集団の生着、再増殖の能力ならびに/または増殖を、必要とする患者において減少させるための方法であって、細胞集団を治療的に有効量のカテコールアミン神経伝達物質のアンタゴニストに暴露することを含む方法。
【請求項123】
前記暴露が、エクスビボで行われる請求項122記載の方法。
【請求項124】
前記暴露が、インビボで行われる請求項122記載の方法。
【請求項125】
治療的に有効量のカテコールアミン神経伝達物質のアンタゴニストを、必要とする患者へ投与することを含む、白血病を治療するための方法。
【請求項126】
前記アンタゴニストが、ドーパミン受容体アンタゴニストである請求項122〜125のいずれかに記載の方法。
【請求項127】
前記ドーパミン受容体アンタゴニストが、クロザピン、フルペンチキソール、ピモジド、レモキシプリド、ルペンチキソール、ドンペリドン、クロルプロマジン、ハロペリドール、ジプラシドン、ロキサピン、チオリダジン、メトクロプラミド、クロルプロチキセンおよびドロペリドールから選択される請求項126記載の方法。
【請求項128】
前記アンタゴニストが、アドレナリン作用性の受容体アンタゴニストである請求項122〜125のいずれかに記載の方法。
【請求項129】
G−CSFまたはGM−CSFを含む第1要素;少なくとも1つのカテコールアミン受容体アゴニストを含む第2要素;および少なくとも1つのカテコールアミン受容体アゴニストの投与の開始前の、G−CSFまたはGM−CSFの投与に関する説明書を含む第3要素を含むキット。
【請求項130】
治療的に有効量の少なくとも1つのカテコールアミン受容体アゴニスト、および少なくとも1つの骨髄性サイトカインで造血幹細胞を刺激することを含む、初期造血幹細胞の増殖ならびに/または遊走を促進するための方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【公表番号】特表2009−541303(P2009−541303A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516061(P2009−516061)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【国際出願番号】PCT/IL2007/000741
【国際公開番号】WO2007/148332
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(500018608)イエダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド (35)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【国際出願番号】PCT/IL2007/000741
【国際公開番号】WO2007/148332
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(500018608)イエダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド (35)
【Fターム(参考)】
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