説明

カバー付き電池配線モジュール

【課題】単電池群に取り付けられた際に形が変わり得る電池配線モジュールにカバーを確実に取り付ける技術の提供。
【解決手段】カバー付き電池配線モジュール30は、正負一対の電極端子を含む複数の単電池21同士が並んだ単電池群2に取り付けられ、対極同士の電極端子間に架け渡される複数のバスバーと、前記バスバーが、各々の端部を電極端子上に重ね合わせられるようにそれぞれ露出させた状態で保持されると共にバスバーの端部と電極端子との位置ずれに応じて伸縮変形可能な絶縁性の容器状の樹脂プロテクタとを有する電池配線モジュール3と、樹脂プロテクタの容器状の口を覆う板状のカバー4と、カバー4を樹脂プロテクタに取り付けつつ樹脂プロテクタの変形に応じてカバー4の取付位置を調整する第1調整手段5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー付き電池配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車等における車両用の電池モジュールは、複数個の単電池が並べられた単電池群を備えている。単電池群を構成する各単電池は、それぞれ正極側の電極端子と、負極側の電極端子とを有している。
【0003】
単電池群において、隣り合った単電池同士が有する対極同士の電極端子間は、金属製のバスバーによって電気的に接続されている。バスバーは、単電池群に複数個所ある前記電極端子間にそれぞれ取り付けられる。このようにバスバーを利用して、単電池群を構成する各単電池は、互いに電気的に直列接続されている。
【0004】
前記バスバーを、単電池群の各電極端子間にそれぞれ一個ずつ取り付けると、取付作業に時間がかかってしまう。そのため、特許文献1等に示されるように、複数本のバスバーを、単電池群の各電極端子間に纏めて位置決めできる電池配線モジュールが利用されている。この種の電池配線モジュールは、複数本のバスバーが樹脂等からなる絶縁性の基材で保持されたものからなり、単電池群上に載せられた状態で固定される。
【0005】
ところで、電極端子の取付誤差等によって、電極端子の位置とバスバーの位置とが互いにずれてしまい、バスバーを電極端子に取り付けることができず、問題となることがある。
【0006】
このような位置ずれが生じた場合に、前記バスバーの位置を調整できる調整手段を備えた電池配線モジュールが知られている(特許文献2参照)。前記調整手段は、前記バスバーを保持する基材に設けられているため、前記調整手段によって前記バスバーの位置が調整されると、前記基材全体の形(つまり、電池配線モジュール全体の形)が伸縮等して変化することになる。
【0007】
なお、電池配線モジュールには、前記バスバー等を覆うためのカバーが取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−8957号公報
【特許文献2】特開2000−149909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したような電池配線モジュールは、単電池群における各電極端子の取付誤差等に応じて、形状(形)が適宜、変わる。そのため、このような形状が変わり得る電池配線モジュールに、カバーを確実に取り付けられる技術が望まれている。
【0010】
本発明の目的は、単電池群に取り付けられた際に形が変わり得る電池配線モジュールに、カバーを確実に取り付ける技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るカバー付き電池配線モジュールは、正極及び負極からなる一対の電極端子を含む複数の単電池同士が並べられてなる単電池群に取り付けられる電池配線モジュールであって、前記単電池群に複数個所ある対極同士の前記電極端子間にそれぞれ電気的に接続するように架け渡されると共に、互いに並んで配線パターンをなす複数のバスバーと、前記配線パターンをなす複数の前記バスバーが、各々の端部を前記電極端子上に重ね合わせられるようにそれぞれ露出させた状態で保持されると共に前記バスバーの端部と前記電極端子との位置ずれに応じて伸縮変形可能な絶縁性の容器状の樹脂プロテクタと、を有する電池配線モジュールと、前記樹脂プロテクタの容器状の口を覆う板状のカバーと、前記カバーを前記樹脂プロテクタに取り付けると共に、前記樹脂プロテクタの変形に応じて前記カバーの取付位置を調整する第1調整手段と、を備える。
【0012】
前記カバー付き電池配線モジュールにおいて、前記第1調整手段が、前記樹脂プロテクタ又は前記カバーに設けられる突起状の係止部と、前記樹脂プロテクタ又は前記カバーに設けられる枠状の被係止部であって、前記係止部に引っ掛けられると共に、前記係止部と係合した状態で前記樹脂プロテクタの変形に応じて前記係止部に対して移動可能な被係止部と、を有してもよい。
【0013】
前記カバー付き電池配線モジュールにおいて、前記カバーは、複数のサブカバーと、隣り合った前記サブカバー同士を接続すると共に前記樹脂プロテクタの変形に応じて前記サブカバー同士の取付位置を調整する第2調整手段と、を有してもよい。
【0014】
前記カバー付き電池配線モジュールにおいて、前記第2調整手段が、隣り合った前記サブカバー同士のうち一方の前記サブカバーに設けられる突起状の係合部と、前記サブカバー同士のうち他方の前記サブカバーに設けられる被係合部であって、前記係合部が挿入されると共に前記樹脂プロテクタの変形に応じて前記係合部が移動可能な大きさの被係合孔と、この被係合孔の周りを囲むと共に前記係合部に対して外側から係合可能な被係合枠とを含む被係合部と、を有してもよい。
【0015】
前記カバー付き電池配線モジュールにおいて、前記第1調整手段の変位方向と、前記第2調整手段の変位方向とが直交してもよい。
【0016】
前記カバー付き電池配線モジュールにおいて、前記カバーと前記樹脂プロテクタとの間に、前記カバーの取付位置を規制する規制手段を備えてもよい。
【0017】
前記カバー付き電池配線モジュールにおいて、前記樹脂プロテクタは、複数の前記バスバーをそれぞれ収容する複数のバスバー収容部を含んでもよい。
【0018】
前記カバー付き電池配線モジュールにおいて、前記バスバー収容部は、前記バスバーの長手方向に沿って伸縮可能であってもよい。
【0019】
前記カバー付き電池配線モジュールにおいて、前記配線パターンは、一の方向に沿って並ぶ第1パターンと、前記一の方向と垂直な方向に沿って並ぶ第2パターンとからなってもよい。
【0020】
前記カバー付き電池配線モジュールにおいて、前記サブカバー同士が、同じ形状であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、単電池群に取り付けられた際に形が変わり得る電池配線モジュールに、カバーを確実に取り付ける技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1に係る電池モジュールの平面図
【図2】電池モジュールの正面図
【図3】カバーが取り外された状態の電池モジュールの平面図
【図4】単電池群の平面図
【図5】電池配線モジュールの平面図
【図6】第1バスバーの平面図
【図7】第2バスバーの平面図
【図8】樹脂プロテクタを構成する各連結ユニットの平面図
【図9】電池モジュールの側面図
【図10】第1調整手段の拡大図
【図11】図10のA−A’線における第1調整手段の拡大断面図
【図12】実施形態2に係る電池モジュールの平面図
【図13】電池モジュールの正面図
【図14】サブカバーの平面図
【図15】図12のB−B’線における第2調整手段の拡大断面図
【図16】図12のC−C’線における第2調整手段の拡大断面図
【図17】実施形態3に係る電池モジュールの平面図
【図18】図17のD−D’線における第2調整手段の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1を、図1ないし図10を参照しつつ説明する。図1は、実施形態1に係る電池モジュールの平面図であり、図2は、電池モジュールの正面図である。また、図3は、カバー4が取り外された状態の電池モジュール1の平面図である。図1及び図2に示される電池モジュール1は、電気自動車やハイブリッド車等の車両用の駆動源として利用される。電池モジュール1は、主として、単電池群2と、この単電池群2に取り付けられる電池配線モジュール3と、この電池配線モジュール3に取り付けられるカバー4とを備える。なお、図1における下側が、電池モジュール1の前側(正面側)に対応し、図1における上側が、電池モジュール1の後側(背面側)に対応する。また、図1における左側に、電池モジュール1の左側面が配され、図1における右側に、電池モジュール1の右側面が配されている。
【0024】
図4は、単電池群2の平面図である。図4に示されるように、単電池群2は、複数個の単電池21から構成される。単電池群2は、複数個の単電池21が、互いに積み重なるように並べられたものからなる。図4等に示されるように、本実施形態の電池モジュール1では、2つの単電池群2(2A,2B)が利用される。なお、必要に応じて、図4等の左側に示されるものを第1単電池群2Aと称し、右側に示されるものを第2単電池群2Bと称する。
【0025】
第1単電池群2A及び第2単電池群2Bは、共に4個の単電池21が並べられたものからなる。第1単電池群2A及び第2単電池群2Bは、互いに所定の間隔を置いて図4の左右方向に並べられている。単電池群2を構成している各単電池21は、それぞれ内部に発電要素(不図示)を備えている。単電池21は、前記発電要素を内部に含む扁平な直方体状の本体部21aと、この本体部21aの上面に設けられる2つの電極端子22(22A,22B)とを備えている。一方の電極端子22Aが正極であり、他方の電極端子22Bが負極である。
【0026】
各電極端子22A,22Bは、単電池21の上面において、それぞれ上方に向けて垂直に突出した形をなしている。電極端子22(22A,22B)は、角筒状のナットからなり、その中心に円形のネジ孔23が貫通形成されている。
【0027】
第1単電池群2Aを構成する各単電池21は、各々の電極端子22(22A,22B)が同じ方向(上方)を向くように並べられている。そして、第1単電池群2Aの各単電池21は、隣り合った単電池21同士において、隣接する電極端子22同士が互いに対極同士となるように並べられている。つまり各単電池21の積層方向(単電池群2の前後方向)において、各電極端子22が正負交互に並んでいる。
【0028】
第2単電池群2Bを構成する各単電池21も、各々の電極端子22(22A,22B)が同じ方向(上方)を向くように並べられている。そして、第2単電池群2Bの各単電池21は、隣り合った単電池21同士において隣接する電極端子22同士が、互いに対極同士となるように並べられている。つまり各単電池21の積層方向(単電池群2の前後方向)において、各電極端子22が正負交互に並んでいる。
【0029】
また、第1単電池群2Aの各単電池21と第2単電池群2Bの各単電池21との間においても、異なった単電池群2A,2B間で隣り合った単電池21同士において隣接する電極端子22同士が、互いに対極同士となっている。なお、第1単電池群2A及び第2単電池群2Bの各電極端子22(22A,22B)は、同一平面上に配されている。第1単電池群2A及び第2単電池群2Bは、各単電池21の下面側に配されている保持板(不図示)上に載置された状態で、それぞれ固定されている。
【0030】
図5は、電池配線モジュール3の平面図である。電池配線モジュール3は、第1単電池群2A及び第2単電池群2Bの各上面上に載せられる形で、単電池群2に取り付けられる。つまり、単電池群2は、電池配線モジュール3によって接続されている。このような電池配線モジュール3は、主として、複数本のバスバー31と、これらのバスバー31を収容する容器状の樹脂プロテクタ32とを備えている。
【0031】
バスバー31は、銅、銅合金、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属材料を所定形状に加工したものからなる。バスバー31は、概ね長尺状(帯状)をなしている。本実施形態の場合、バスバー31として、長さが異なる2種類のものが利用される。これらのうち、長い方を第1バスバー31Aと称し、短い方を第2バスバー31Bと称する。図6は、第1バスバー31Aの平面図である。図6に示されるように、第1バスバー31Aは、長手状の本体部131(131A)と、この本体部131(131A)の長手方向における両端部にそれぞれ設けられる固定用ボルトの軸部が挿通される通し孔38と、本体部131(131A)の各端部にそれぞれ通し孔38を挟むように設けられる切り欠き部39とを備えている。
【0032】
図7は、第2バスバー31Bの平面図である。図7に示されるように、第2バスバー31Bは、第1バスバー31Aよりも長さが短いものの、その基本的な構成は、第1バスバー31Aと同じである。具体的には、第2バスバー31Bは、長手状の本体部131(131B)と、この本体部131(131B)の長手方向における両端部にそれぞれ設けられる固定用ボルトの軸部が挿通される通し孔38と、本体部131(131B)の各端部にそれぞれ通し孔38を挟むように設けられる切り欠き部39とを備えている。
【0033】
各バスバー31は、単電池群2に複数個所ある対極同士の電極端子22A,22B間に、それぞれ電気的に接続するように架け渡される。そして、各バスバー31によって、単電池群2を構成する各単電池21が、互いに直列接続される。第1バスバー31Aは、第1単電池群2Aと第2単電池群2Bとの間において、隣り合った単電池21同士が有する対極同士の電極端子22A,22B間を、電気的に接続するために利用される。これに対して、第2バスバー31Bは、第1単電池群2A及び第2単電池群2Bのそれぞれにおいて、積層方向(前後方向)で隣り合った単電池21同士が有する対極同士の電極端子22A,22B間を、電気的に接続するために利用される。なお各バスバー31は、樹脂プロテクタ32に保持された状態で、利用される(図3及び図5参照)。
【0034】
バスバー31の端部は、電極端子22上に重ね合わせられた状態で、電極端子22に固定される。その際、バスバー31の端部にある通し孔38の位置と、電極端子22が有するネジ孔23の位置とが合せられる。そして、バスバー31の通し孔38及び電極端子22のネジ孔23に、それぞれ固定用ボルト(不図示)の軸部が挿入され、バスバー31及び電極端子22が互いに密着するように前記固定用ボルトがネジ孔23に螺着される。
【0035】
なお、バスバー31に設けられている通し孔38の形状は、上面から見て、所謂、長穴状となっており、電極端子22のネジ孔23よりも大きく設定されている。そして、通し孔38はバスバー31の長手方向に拡がった形をなしている。バスバー31は、このような長穴状の通し孔38を備えているため、電極端子22の位置が、本来あるべき位置からずれてしまっても、固定用ボルトを挿入できるように、その電極端子22のネジ孔23に、バスバー31の通し孔38を位置合わせできる。なお、このような電極端子22の位置ずれは、例えば、単電池21における電極端子22の取付誤差、単電池21の膨張等による変形、第1単電池群2A及び第2単電池群2Bにおける配置間隔の誤差等によって生じる。
【0036】
全体として容器状をなす樹脂プロテクタ32の内側において、複数本のバスバー31は、所定の配線パターンPを形成している(図5参照)。この配線パターンPは、複数本のバスバー31が、樹脂プロテクタ32内の所定位置にそれぞれ配されることによって形成される。配線パターンPをなす各バスバー31は、互いに平面状に並んでいる。また、複数本のバスバー31のうち第1バスバー31Aは第1パターンP1をなし、第2バスバー31Bは第2パターンP2をなしている。本実施形態の場合、第1パターンP1は、一個所でまとまっているが、第2パターンP2は、二個所に分かれている。
【0037】
第1パターンP1をなす各第1バスバー31Aは、図5の左右方向に沿って配されている。これに対して、第2パターンP2をなす各第2バスバー31Bは、図5の上下方向に沿って配されている。つまり、第1パターンP1をなす各第1バスバー31Aと、第2パターンP2をなす各第2バスバー31Bとは、互いに垂直な方向に沿って、それぞれ配されている。なお、図3に示されるように、電池配線モジュール3が単電池群2に取り付けられた際に、第1パターンP1をなす各第1バスバー31Aは、第1単電池群2A及び第2単電池群2Bの並び方向に沿って配される。これに対して、第2パターンP2をなす各第2バスバー31Bは、電池配線モジュール3が単電池群2に取り付けられた際に、第1単電池群2A及び第2単電池群2Bの各積層方向に沿って配される。
【0038】
樹脂プロテクタ32は、絶縁性を有する合成樹脂材料を、所定形状に加工したものからなる。図8は、樹脂プロテクタ32を構成する各連結ユニット32A,32B,32C,32Dの平面図である。本実施形態の樹脂プロテクタ32は、図8に示される4つの連結ユニット32A,32B,32C,32Dが、互いに組み合せられたものからなる。
【0039】
連結ユニット32Aは、連結ユニット32Bと組み合せられる。そして、これらの連結ユニット32A,32Bによって、第1バスバー31Aを収容するバスバー収容部33(33A)が2つ形成される。バスバー収容部33(33A)は、図8の左右方向に沿って延びた小型の容器状をなしており、その内側で第1バスバー31Aを保持する。また、バスバー収容部33(33A)は、第1バスバー31Aの長手方向に沿って伸縮可能に構成されている。
【0040】
バスバー収容部33(33A)は、第1バスバー31Aが載せられる長手状の底板部と、この底板部の周りを囲む角筒状の周壁部とを備えている。前記底板部及び前記周壁部は、それぞれ連結ユニット32A側と、連結ユニット32B側とに分かれている。前記底板部における長手方向の両端には、それぞれ開口部34が設けられている。この開口部34は、第1バスバー31Aの端部を、電極端子22と接触できるようにバスバー収容部33(33A)から露出させている。
【0041】
前記周壁部の内面側には、第1バスバー31Aがその厚み方向に浮き上がるのを規制する規制突起36が複数個設けられている。この規制突起36は、前記周壁部の内面から突出した形状をなしており、第1バスバー31Aをその上面側から底板部側に向かって押さえている。また、前記周壁部の内面側には、第1バスバー31Aの各切り欠き部39とそれぞれ係合する係合突起37が複数個設けられている。図5に示されるように、係合突起37は、前記周壁部の内面から突出した形状をなすと共に、第1バスバー31Aの長手方向に沿って延びた形状をなしている。また、係合突起37は、切り欠き部39よりも小さく設定されており、そして、係合突起37の前記長手方向における両端部分と切り欠き部39との間に、予め隙間が設けられている。
【0042】
バスバー収容部33(33A)の連結ユニット32A側は、その係合突起37が切り欠き部39内を移動できる範囲内において、第1バスバー31Aの長手方向に沿って左右方向に移動することができる。同様に、バスバー収容部33(33A)の連結ユニット32B側も、その係合突起37が切り欠き部39内を移動できる範囲内において、第1バスバー31Aの長手方向に沿って左右方向に移動することができる。このようにして、バスバー収容部33(33A)は、第1バスバー31Aの長手方向に沿って伸縮可能(所謂、スライド可能)となっている。
【0043】
また、連結ユニット32Cは、連結ユニット32Dと組み合せられる。そして、これらの連結ユニット32C,32Dによって、第1バスバー31Aを収容するバスバー収容部33(33A)が2つ形成される。これらの連結ユニット32C,32Dによって形成されるバスバー収容部33(33A)の基本的な構成は、上述した2つの連結ユニット32A,32Bによって形成されるバスバー収容部33(33A)と同様である。これらの連結ユニット32C,32Dによって形成されるバスバー収容部33(33A)も、第1バスバー31Aの長手方向に沿って伸縮可能(所謂、スライド可能)となっている。
【0044】
また、上述した連結ユニット32Aは、連結ユニット32Cとも組み合せられる。そして、これらの連結ユニット32A,32Cによって、第2バスバー31Bを収容するバスバー収容部33(33B)が1つ形成される。バスバー収容部33(33B)は、図8(図5)の上下方向に沿って延びた小型の容器状をなしており、その内側で第2バスバー31Aを保持する。また、バスバー収容部33(33B)は、第2バスバー31Bの長手方向に沿って伸縮可能に構成されている。
【0045】
バスバー収容部33(33B)は、第2バスバー31Bが載せられる長手状の底板部と、この底板部の周りを囲む角筒状の周壁部とを備えている。前記底板部及び前記周壁部は、それぞれ連結ユニット32A側と、連結ユニット32C側とに分かれている。前記底板部における長手方向の両端には、それぞれ開口部34が設けられている。この開口部34は、第2バスバー31Bの端部を、電極端子22と接触できるようにバスバー収容部33(33B)から露出させている。
【0046】
前記周壁部の内面側には、第2バスバー31Bがその厚み方向に浮き上がるのを規制する規制突起36が複数個設けられている。この規制突起36は、前記周壁部の内面から突出した形状をなしており、第2バスバー31Bをその上面側から底板部側に向かって押さえている。また、前記周壁部の内面側には、第2バスバー31Bの各切り欠き部39とそれぞれ係合する係合突起37が複数個設けられている。図5に示されるように、係合突起37は、前記周壁部の内面から突出した形状をなすと共に、第2バスバー31Bの長手方向に沿って延びた形状をなしている。また、係合突起37は、切り欠き部39よりも小さく設定されており、そして、係合突起37の前記長手方向における両端部分と切り欠き部39との間に、予め隙間が設けられている。
【0047】
バスバー収容部33(33B)の連結ユニット32A側は、その係合突起37が切り欠き部39内を移動できる範囲内において、第2バスバー31Bの長手方向に沿って図8(図5)の上下方向に移動することができる。同様に、バスバー収容部33(33B)の連結ユニット32C側も、その係合突起37が切り欠き部39内を移動できる範囲内において、第2バスバー31Bの長手方向に沿って図8(図5)の上下方向に移動することができる。このようにして、バスバー収容部33(33B)は、第2バスバー31Bの長手方向に沿って伸縮可能(所謂、スライド可能)となっている。
【0048】
また、連結ユニット32Bは、連結ユニット32Dとも組み合せられる。そして、これらの連結ユニット32B,32Dによって、第2バスバー31Bを収容するバスバー収容部33(33B)が1つ形成される。これらの連結ユニット32B,32Dによって形成されるバスバー収容部33(33B)の基本的な構成は、上述した連結ユニット32A,32Cによって形成されるバスバー収容部33(33B)と同様である。これらの連結ユニット32B,32Dによって形成されるバスバー収容部33(33B)も、第2バスバー31Bの長手方向に沿って伸縮可能(所謂、スライド可能)となっている。
【0049】
なお、連結ユニット32Cには、第2バスバー31Bを収容するバスバー収容部33(33C)が設けられている。このバスバー収容部33(33C)は、第2バスバー31Bの長手方向に沿って伸縮しないものの、バスバー収容部33(33B)と同様、底板部と、この底板部を取り囲む周壁部とを備えている。また、バスバー収容部33(33C)は、バスバー収容部33(33B)と同様、開口部34、係合突起37等を備えている。
【0050】
また、連結ユニット32Bと連結ユニット32Dとには、それぞれ開口部35が設けられている。これらの開口部35からは、電池配線モジュール3が単電池群2に載せられた際に、直列接続された各単電池21の端部に位置する電極端子22がそれぞれ露出される。連結ユニット32Bの開口部35からは、第2単電池群2Bの最も後方(図3及び図4の最も上側)にある単電池21の電極端子22(22B)が露出される(図3参照)。これに対して、連結ユニット32Dの開口部35からは、第2単電池群2Bの最も前方(図3及び図4の最も下側)にある単電池21の電極端子22(22A)が露出される(図3参照)。なお、これらの開口部35から露出した電極端子22には、それぞれ外部接続端子(不図示)が接続される。そして、これらの外部接続端子には、外部のインバータ等に繋がる電線端末が接続される。
【0051】
このような樹脂プロテクタ32は、電極端子22の取付誤差等によって生じるバスバー31の端部と電極端子22との位置ずれ等に応じて、左右方向(第1バスバー31Aの長手方向)及び前後方向(第2バスバー31Bの長手方向)に、それぞれある程度、伸長し、又は収縮して、変形(伸縮変形)することができる。
【0052】
また、樹脂プロテクタ32は、全体的に見て、1つの底板301と、この底板301を取り囲む扁平な角筒状の周壁302とを備えているとも言える。前記底板301は、上面から見て概ね矩形状であり、各連結ユニット32A,32B,32C,32Dが備える各バスバー収容部33の底板部と、それ以外の、各連結ユニット32A,32B,32C,32Dの底状の部分とから構成されている。前記周壁302は、上面から見て概ね矩形状であり、各連結ユニット32A,32B,32C,32Dにおいて外側に配されているバスバー収容部33の周壁部と、それ以外の各連結ユニット32A,32B,32C,32Dの壁状の部分とから構成されている。なお、周壁302の高さは、電池配線モジュール3が単電池群2に取り付けられる際に、工具を不要にバスバー31と接触させないこと等が考慮されて、適宜、設定される。本実施形態の場合、周壁302の高さは、全周に亘って同じになるように設定されている。
【0053】
なお、樹脂プロテクタ32内には、バスバー31以外に、各単電池21の電圧を検知するための複数個の電圧検知端子(不図示)が設けられている。各電圧検知端子は、各バスバー31上に重ねられており、そして各電圧検知端子には、電圧検知用電線(不図示)が圧着等によってそれぞれ接続されている。なお、これらの電圧検知用電線は、電池ECU(不図示)に接続されている。この電池ECUは、マイクロコンピュータ、素子等が搭載されたものであって、各単電池21の電圧、電流、温度等の検知や、各単電池21の放充電制御コントロール等を行うための機能を備えた周知の構成のものである。
【0054】
樹脂プロテクタ32の周壁302には、突起状の係止部51が複数個設けられている。この係止部51は、カバー4を樹脂プロテクタ32に取り付ける際に利用される。なお、係止部51に関する詳細な説明は、後述する。
【0055】
カバー4は、図1に示されるように、上面から見て左右方向に長い矩形状をなしている。カバー4は、工具等がバスバー31に接触して電池モジュール1が短絡すること等を防止するために、容器状の樹脂プロテクタ32の口(周壁302の上端部分が囲む部分)を覆うように、後述する第1調整手段5を利用して樹脂プロテクタ32に対して着脱可能に取り付けられる。カバー4は、樹脂プロテクタ32と同様、絶縁性の合成樹脂材料からなる。カバー4は、板状のカバー本体部41と、カバー本体部41の短辺側の端部に設けられる複数個の被係止部52とを備えている。なお、本明細書において、カバー4を備える電池配線モジュールを、特に、カバー付き電池配線モジュール30と称する。
【0056】
図9は、電池モジュール1の側面図であり、図10は、第1調整手段の拡大図である。図9に示されるように、カバー4は、電池配線モジュール3の樹脂プロテクタ32に対して、第1調整手段5を利用して取り付けられる。この第1調整手段5は、樹脂プロテクタ32側に設けられる突起状の係止部51と、カバー4側に設けられる枠状(環状)の被係止部52とからなり、カバー付き電池配線モジュール30の両側面にそれぞれ複数個(4個)設けられている。
【0057】
ここで、係止部51及び被係止部52からなる第1調整手段5について、説明する。係止部51は、周壁302の上端側の外面上において、外側に向かって突出した形をなしている。係止部51は、案内部51aと、この案内部51aの下端に設けられる接触部51bとを備える。案内部51aは、上側から下側に向かって傾斜しており、カバー4が樹脂プロテクタ32に取り付けられる際に、被係止部52を接触部51bまで案内する。接触部51bは、被係止部52と係合して被係止部52を上側から押え付ける。
【0058】
被係止部52は、全体として、カバー本体部41の短辺側の端部から下方に向かって延びた枠状をなしている。被係止部52は、2つの縦枠部52aと、これらの縦枠部52aの間で挟まれる横枠部52bとを備える。被係止部52の内側(つまり、縦枠部52a及び横枠部52bで囲まれた部分)には、開口部52cがあり、この開口部52c内に係止部51が挿入される。図10に示されるように、横枠部52bが係止部51の接触部51bと接触する。被係止部52の大きさ(開口部52cの大きさ)は、係止部51と縦枠部52aとの間に一定の大きさを有する隙間dが形成されるように設定される。そして、被係止部52は、係止部51に対して相対的に、樹脂プロテクタ32の短辺方向(電池モジュール1の前後方向、図10の左右方向)に移動することができる。
【0059】
図11は、図10のA−A’線における第1取付手段5の拡大断面図である。図11に示されるように、周壁302から外側に向かって突出した係止部51(接触部51b)の長さ(突出方向における長さ)は、被係止部52の横枠部52bの幅(図11の左右方向における幅)よりも長く設定されている。そして、横枠部52bから外側に向かって係止部51(接触部51b)がはみ出すと共に、横枠部52bと周壁302との間に隙間が存在している。したがって、被係止部52は、係止部51に沿って容器32の長手方向(電池モジュール1の左右方向、図11の左右方向、係止部51の突出方向)にもある程度、移動することができる。
【0060】
なお、本実施形態の場合、カバー4と樹脂プロテクタ32との間には、上記第1調整手段5の他に、規制手段6が設けられている。この規制手段6は、樹脂プロテクタ32の短辺側における周壁302に設けられる規制凸部61と、カバー本体部41の短辺側における端部に設けられると共に規制凸部61と嵌合する規制凹部62とからなる。この規制手段6によって、カバー4を樹脂プロテクタ32に取り付ける際に、カバー4の樹脂プロテクタ32に対する取付位置が、規制される。
【0061】
規制凸部61は、カバー本体部41における2つの短辺側の端部に、それぞれ1個ずつ設けられている。そして、規制凸部61は、各短辺側の端部において、それぞれ略中央に設けられている。規制凹部62は、樹脂プロテクタ32における2つの短辺側における周壁302に、規制凸部61と嵌合できるようにそれぞれ1個ずつ設けられる、なお、規制凸部61と規制凹部62との間には若干の隙間が設けられており、規制凸部61を備えたカバー4が、樹脂プロテクタ32の短辺方向に沿って移動できるように、構成されている。
【0062】
本実施形態の電池モジュール1は、単電池群2に電池配線モジュール3を取り付け、その後、電池配線モジュール3にカバー4を取り付けることによって、組み立てられる。ここで、先ず、単電池群2に電池配線モジュール3を取り付ける工程を説明する。
【0063】
図4に示されるように左右方向に並べられた2つの単電池群2A.2Bの上面上に、図5に示される電池配線モジュール3が載せられる。その際、電池配線モジュール3の各バスバー31の先端が、各単電池群2A,2Bの各電極端子22上にそれぞれ重ねられる。各バスバー31は、単電池群2に複数個所ある対極同士の電極端子22A,22B間に、それぞれ架け渡される。そして、バスバー31の端部に設けられている通し孔38と、電極端子22に設けられているネジ孔23との位置合わせが行われる(図3参照)。この位置合わせを行う際に、電池配線モジュール3は、電極端子22の取付誤差等に応じて、外観形状が変化する。電池配線モジュール3が変形して、樹脂プロテクタ32が短辺方向(電池モジュール1の前後方向)に伸長すると、隣り合った一部の係止部51同士の間隔が広くなる。これに対して、電池配線モジュール3が変形して、樹脂プロテクタ32が短辺方向(電池モジュール1の前後方向)に収縮すると、隣り合った一部の係止部51同士の間隔が狭くなる。
【0064】
上述したように、互いに位置合わせされた通し孔38とネジ孔23とには、固定用ボルト(不図示)の軸部が通される。その後、固定用ボルトをネジ孔23に螺着することによって、バスバー31が電極端子22に密着した状態で固定される。全てのバスバー31を、上述したように固定用ボルトを利用して電極端子22に固定することによって、単電池群2をなす単電池21同士が互いに直列接続されると共に、電池配線モジュール3自身が単電池群2に取り付けられる。
【0065】
次いで、電池配線モジュール3にカバー4を取り付ける工程を説明する。カバー4は、先ず、単電池群2に取り付けられた電池配線モジュール3を覆うように、電池配線モジュール3の上方に配される。そして、カバー本体部41が備えている規制凹部62が、電池配線モジュール3の容器32に設けられている規制凸部61に嵌合するように、カバー4が、樹脂プロテクタ32に対して近付けられる。
【0066】
カバー4が、上記のようにして樹脂プロテクタ32に近付けられると、カバー本体部41が備える各被係止部52の位置が、樹脂プロテクタ32が備える各係止部51の位置にそれぞれ合せられる。被係止部52は、その横枠部52bが係止部51の案内部51a上に沿って移動しながら、下方へ移動する。被係止部52は、案内部51a上を沿って下方へ移動する際、外側に向かって若干、拡がった状態となる。そして、被係止部52の横枠部52bが、係止部51の案内部51a及び接触部51bを通り過ぎると、被係止部52は弾性的に形が復元し、係止部51が被係止部52の開口部52c内に入り込んだ状態となる。係止部51が開口部52c内に入り込むと、係止部51の接触部51bが、被係止部52の横枠部52bと係合した状態となる。つまり、枠状の被係止部52は、突起状の係止部51に対して引っ掛けられた状態となる。
【0067】
なお、係止部51が被係止部52と係合した状態では、係止部51の接触部51b側の部分が、被係止部52の開口部52cよりも外側にはみ出した形となっており、カバー4が上方に移動して外れることが抑制されている。このようにして、各係止部51と各被係止部52とを、それぞれ互いに係合させることによって、カバー4が電池配線モジュール3に取り付けられる。
【0068】
ところで、被係止部52の開口部52cは、係止部51と比べて充分大きく設定されており、上述したように係止部51と被係止部52との間には隙間dが形成されている(図10参照)。そのため、被係止部52は、係止部51と係合した状態で、前後方向(樹脂プロテクタ32の短辺方向)にある程度、動かすことができる。つまり、電池配線モジュール3の樹脂プロテクタ32の形状がその短辺方向に変化して、隣り合った係止部51同士の間隔が変化しても、被係止部52は、樹脂プロテクタ32の短辺方向(樹脂プロテクタ32の変位方向)に沿って係止部51に対して相対的に移動しつつ係合することができる。つまり、第1調整手段5は、変形によって生じる樹脂プロテクタ32の寸法誤差(樹脂プロテクタ32の短辺方向における寸法誤差)を吸収できる。したがって、本実施形態のカバー4は、樹脂プロテクタ32の形状がその短辺方向に変化しても、樹脂プロテクタ32に確実に取り付けられる。
【0069】
また、図11に示されるように、被係止部52は、ある程度、係止部51の突出方向(樹脂プロテクタ32の長辺方向)にも移動できるように構成されている。そのため、電池配線モジュール3の樹脂プロテクタ32の形状がその長辺方向に変化しても、上述したような被係止部52を備えるカバー4は、樹脂プロテクタ32に確実に取り付けられる。
【0070】
また、カバー4が、電池配線モジュール3に取り付けられた後に、単電池群2をなす各単電池21が膨張等して変形し、更に樹脂プロテクタ32が変形した場合であっても、カバー4は、第1調整手段によって取付位置が調整されるため、樹脂プロテクタ32から外れることが抑制される。
【0071】
<実施形態2>
次いで、本発明の実施形態2を、図12ないし図16を参照しつつ説明する。図12は、実施形態2に係る電池モジュール1Aの平面図であり、図13は、電池モジュール1Aの正面図である。本実施形態の電池モジュール1Aは、実施形態1のものと異なった構成のカバー4Aを備えている。本実施形態のカバー4は、2つのサブカバー42A,43Aからなる。したがって、本実施形態では、主として、カバー4Aについて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態では、実施形態1と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0072】
カバー4Aは、上述したように、2つのサブカバー42A,43Aからなる。一方のサブカバー42Aは、第1単電池群2A側に配されており、他方のサブカバー43Aは、第2単電池群2B側に配されている。サブカバー42Aの端部とサブカバー43Aの端部とは、互いに重なり合っており、その重なり合った部分に、4個の第2調整手段7が設けられている。サブカバー42A.43A同士は、これらの第2調整手段7を介して互いに連結されている。なお、図12に示されるように、サブカバー42Aの端部が、サブカバー43Aの端部よりも上側に配されるように、サブカバー42A,43A同士が連結されている。
【0073】
図14は、サブカバー42A,43Aの平面図である。図14に示されるように、カバー4Aは、2つのサブカバー42A,43Aに分解される。これらのサブカバー42A,42Aは、何れも横長の矩形状をなしており、略同じ大きさである。一方のサブカバー42Aは、サブカバー本体部142Aと、係合部71と、被係止部52と、規制凹部62と、ヒンジ部44とを備えている。
【0074】
サブカバー本体部142Aは、矩形状をなした板状の部材からなる。サブカバー本体部142Aの一方の短辺側における端部には、4個の係合部71が設けられている。係合部71は、突起状であり、サブカバー本体部142Aから下方に向かって突出した形をなしている。これらの係合部71は、サブカバー本体部142Aの端部において、互いに間隔を置いて一列に並ぶように設けられている。また、サブカバー本体部142Aの他方の短辺側における端部には、4個の被係止部52と、1個の規制凹部62とがそれぞれ設けられている。そして、係合部71が設けられている短辺側の端部から内側に入ったサブカバー本体部142Aの部分に、折れ曲がり可能なヒンジ部44が設けられている。このヒンジ部44によって、サブカバー42Aの端部が、他方のサブカバー43Aの端部上に乗り上がり易くなっている。
【0075】
これに対して、他方のサブカバー43Aは、サブカバー本体部143Aと、被係合部72と、被係止部52と、規制凹部62とを備えている。サブカバー本体部143Aは、矩形状をなした板状の部材からなる。サブカバー本体部143Aの一方の短辺側における端部には、前記係合部71と係合できるように4個の被係合部72が設けられている。被係合部72は、サブカバー本体部143Aの端部が矩形状に切り抜かれた形をなしている。この被係合部72に、サブカバー42Aの係合部71が挿入される。また、サブカバー本体部143Aの他方の短辺側における端部には、4個の被係止部52と、1個の規制凹部とがそれぞれ設けられている。
【0076】
図15は、図12のB−B’線における第2調整手段7の拡大断面図であり、図16は、図12のC−C’線における第2調整手段7の拡大断面図である。図15及び図16に示されるように、サブカバー42Aが備える突起状の係合部71は、サブカバー43Aが備える孔状の被係合部72に対して挿入された状態で係合する。係合部71は、サブカバー本体部142Aから下方に向かって延びた胴体部71aと、この胴体部71aの先端に設けられる先端部71bとを有する。これに対して、被係合部72は、矩形状の被係合孔72aと、この被係合孔72aの周りを囲む被係合枠72bとを有する。
【0077】
係合部71の胴体部71aは、図16に示されるように、2枚の板が互いに間隔を保った状態でサブカバー本体部142Aの下面に下方に向かって立設されたような形をなしている。サブカバー42Aの短辺方向(図16における左右方向)における胴体部71aの幅は、前記短辺方向における被係合孔72aの大きさ(内径)よりも若干、小さく設定されている。また、図15に示されるように、サブカバー42Aの長辺方向(図15における左右方向)における胴体部71aの幅よりも、前記長辺方向における被係合孔72aの大きさ(内径)は、胴体部71aが被係合孔72a内を前記長辺方向に沿って移動できるように、ある程度、大きく設定されている。なお、係合部71の根元部分には、先端部分71b等の成型の都合上、溝45が設けられている。
【0078】
先端部71bは、胴体部71aをなす上述した2枚の壁状部分の先端に、それぞれ外側に向けて張り出した形で設けられている。先端部71bの前記短辺方向における幅は、胴体部71aの幅よりも大きく設定されていると共に、被係合孔72aの大きさ(内径)よりも大きく設定されている。そのため、被係合孔72a内に挿入された係合部71が浮上しようとすると、先端部71bが被係合枠72bに引っ掛かるため、係合部71が被係合部72から不用意に引き抜かれることが抑制されている。
【0079】
なお、係合部71を、被係合部72の被係合孔72b内に挿入する際、係合部71は、被係合部72の上方から押し込まれる。係合部71が被係合孔72b内に押し込まれる際、係合部71は弾性変形して、先端部71bの幅が被係合孔72aの大きさ(内径)よりも一旦、小さくなる。そして、先端部71bが被係合枠72bで囲まれた被係合孔72aを通過すると、係合部71は大きくなって復元する。
【0080】
第2調整手段7は、サブカバー42A,43同士の位置を、互いに近付くように、又は互いに離れるように調整できる。つまり、第2調整手段7は、変形によって生じる樹脂プロテクタ32の寸法誤差(樹脂プロテクタ32の長辺方向における寸法誤差)を吸収できる。そのため、樹脂プロテクタ32の形状に応じて、サブカバー42A,43同士の取付位置を、適宜、調整することができる。なお、図10に示されるように、第1調整手段5の係止部51は、その突出方向において、ある程度の長さを有しているため、サブカバー42A,43A同士の位置が、第1調整手段5によって妨げられることなく、互いに近付くように、又は互いに離れるように調整できる。
【0081】
したがって、本実施形態のカバー4Aは、電池配線モジュール3が備える樹脂プロテクタ32が、その長辺方向(長手方向)に伸長し又は収縮して、その形状が変化しても、上述したような第2調整手段7を備えることによって、前記樹脂プロテクタ32に確実に取り付けることができる。
【0082】
なお、本実施形態の場合、第2調整手段7は、樹脂プロテクタ32の長辺方向に沿って変位する。これに対して、第1調整手段5は、樹脂プロテクタ32の短辺方向に沿って変位する。このように、第2調整手段7の変位方向と、第1調整手段5の変位方向とを、互いに直交するように設定してもよい。本実施形態の電池配線モジュール3は、その長辺方向とその短辺方向とにそれぞれ伸縮変形する。そのため、このように互いに直交するように第2調整手段7及び第1調整手段5の変位方向を設定することによって、適宜、形状が変化し得る樹脂プロテクタ32に対して、カバー4Aを確実に取り付けることができる。
【0083】
また、本実施形態の場合、第2調整手段7の方が第1調整手段5よりも、対応できる樹脂プロテクタ32の変形量(変位量)が大きく設定されている。そのため、本実施形態のカバー4Aは、樹脂プロテクタ32の伸縮量(変形量)が、短辺方向よりも長辺方向の方が大きい場合、特に有効である。なお、本実施形態の場合も、カバー4Aを備えた電池配線モジュール3のことを、カバー付き電池配線モジュール30Aと称する。
【0084】
カバー4Aを電池配線モジュール3に取り付ける際、予めサブカバー42A,43A同士を繋ぎ合せてから、その後、1つのカバー4Aとして、電池配線モジュール3に取り付けてもよい。或いは、電池配線モジュール3にそれぞれサブカバー42A,43Aを取り付けながら、サブカバー42A,43A同士も電池配線モジュール3上で繋ぎ合せてもよい。
【0085】
<実施形態3>
次いで、本発明の実施液体3を、図17及び図18を参照しつつ説明する。図17は、実施形態3に係る電池モジュール1Bの平面図であり、図18は、図17のD−D’線における第2調整手段7の拡大断面図である。本実施形態の電池モジュール1Bは、実施形態2と同様、2つのサブカバー42B,42Bから構成されるカバー4Bを備える。ただし、本実施形態のカバー4Bは、実施形態2の場合とは異なって、1種類のサブカバー42Bのみを利用している。
【0086】
図17に示されるように、カバー4Bは、互いに同じ形状のサブカバー42B,42B同士が組み合わされたものからなる。サブカバー42Bは、サブカバー本体部142Bと、係合部71と、被係合部72と、被係止部52と、規制凹部62と、ヒンジ部44とを備えている。
【0087】
サブカバー本体部142Bは、矩形状をなした板状部材からなる。サブカバー本体部142Bの一方の短辺側における端部には、4個の係合部71が設けられている。また、係合部71よりも内側にあるサブカバー本体部142Bの部分に、4個の被係合部72が設けられている。また、サブカバー本体部142Bの他方の短辺側における端部には、4個の被係止部52と、1個の規制凹部62とがそれぞれ設けられている。そして、係合部71及び被係合部72が設けられている短辺側の端部から内側に入ったサブカバー本体部142Bの部分に、折れ曲がり可能なヒンジ部44が設けられている。このヒンジ部44によって、サブカバー42Bの端部が、他方のサブカバー42Bの端部上に乗り上がり易くなっている。
【0088】
図17及び図18に示されるように、本実施形態の場合、各図において左側に示されているサブカバー42Bの端部が、右側に示されているサブカバー42Bの端部の上側になった状態で、サブカバー42B,42B同士が第2調整手段7によって連結されている。図17に示されるように、第2調整手段7は、左側のサブカバー42Bが備える係合部71と、右側のサブカバー42Bが備える被係合部72とからなる。なお、本実施形態の場合、左側のサブカバー42Bが備える被係合部72と、右側のサブカバー42Bが備える係合部71は、サブカバー42B,42B同士の連結に利用されていない。
【0089】
このように同じ形状のサブカバー42B,42B同士を組み合せたものを、電池配線モジュール3を覆うカバー4Bとして利用してもよい。本実施形態のように、1種類のサブカバー42Bのみでカバー4Bを構成することができれば、サブカバー42B,42B同士を繋ぎ合せる際に、サブカバー42B,42B同士の組み合せを考慮する必要がない。つまり、何れのサブカバー42B,42B同士が選択されても、互いに繋ぎ合せることができるため、カバー4Bの組み立て作業の効率が向上する。また、本実施形態の場合、カバー4B(サブカバー42B)を製造する金型が1種類のみで良いため、カバー4B(サブカバー42B)の製造コストを抑えることもできる。
【0090】
なお、本実施形態の場合も、カバー4Bを備えた電池配線モジュール3をカバー付き電池配線モジュール30Bと称する。他の実施形態においては、図17及び図18に示される右側のサブカバー42Bの端部が、左側のサブバカー42Bの端部の上側になった状態で、サブカバー42B,42B同士が第2調整手段7によって連結されてもよい。この場合、右側のサブカバー42Bが備える係合部71と、左側のサブカバー43Bの被係合部72とが互いに係合して、第2調整手段を構成する。
【0091】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1では、第1調整手段5として、電池配線モジュール3に係止部51を設け、カバー4に被係止部52を設けていたが、他の実施形態においては反対に、電池配線モジュール3に被係止部52を設け、カバー4に係止部51を設けてもよい。
【0092】
(2)上記実施形態1では、複数のバスバー収容部33を備えると共に、各バスバー31の長手方向に沿って伸縮変形可能な樹脂プロテクタ32を利用していたが、他の実施形態においては、他の構成によって伸縮変形可能な樹脂プロテクタを利用してもよい。このような樹脂プロテクタに対しても、第1調整手段5を介してカバー4を取り付けてもよい。
【0093】
(3)上記実施形態2では、第2調整手段7は、突起状の係合部71と、この係合部71と係合する孔状の被係合部72とを備えるものであったが、他の実施形態においては、他の係合部と、この他の係合部と係合する他の被係合部とを備えるものであってもよい。
【0094】
(4)上記実施形態2では、カバー4Aが、2枚のサブカバー42A,43Aから構成されていたが、他の実施形態においては、例えば、3枚以上のサブカバーを組み合せたものを、1つのカバーとして利用してもよい。
【0095】
(5)上記実施形態2では、第2調整手段7における係合部71は、被係合部72からの離脱(引き抜き)を抑制するために、被係合部72の被係合孔72aよりも大きな先端部71bを備えていた。他の実施形態においては、少なくともサブカバー42A,43同士の取付位置が、樹脂プロテクタ32の変形に応じて、調整できるものであれば、前記先端部71bを係合部71に設ける必要はない。
【0096】
(6)上記実施形態2では、カバー4Aの取付位置は、樹脂プロテクタ32の長辺方向に沿って調整可能であったが、他の実施形態においては、例えば、樹脂プロテクタ32の短辺方向に沿ってカバー4Aの取付位置が調整される構成であってもよい。具体的には、1枚のカバーを、長辺方向に沿って2等分して得られるような形状のサブカバーを2つ用意し、これらのサブカバーの間に、第2調整手段を設ければよい。
【符号の説明】
【0097】
1,1A,1B…電池モジュール、2…単電池群、2A…第1単電池群、2B…第2単電池群、21…単電池、22…電極端子、23…ネジ孔、22A…正極、22B…負極、3…電池配線モジュール、30,30A,30B…カバー付き電池配線モジュール、31…バスバー、31A…第1バスバー、31B…第2バスバー、32…樹脂プロテクタ、32A,32B,32C,32D…連結ユニット、33…バスバー収容部、38…通し孔、39…切り欠き部、302…樹脂プロテクタの周壁、4,4A,4B…カバー、41…カバー本体部、4A,4B…サブカバー、5…第1調整手段、51…係止部、52…被係止部、6…規制手段、7…第2調整手段、71…係合部、72…被係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極からなる一対の電極端子を含む複数の単電池同士が並べられてなる単電池群に取り付けられる電池配線モジュールであって、前記単電池群に複数個所ある対極同士の前記電極端子間にそれぞれ電気的に接続するように架け渡されると共に、互いに並んで配線パターンをなす複数のバスバーと、前記配線パターンをなす複数の前記バスバーが、各々の端部を前記電極端子上に重ね合わせられるようにそれぞれ露出させた状態で保持されると共に前記バスバーの端部と前記電極端子との位置ずれに応じて伸縮変形可能な絶縁性の容器状の樹脂プロテクタと、を有する電池配線モジュールと、
前記樹脂プロテクタの容器状の口を覆う板状のカバーと、
前記カバーを前記樹脂プロテクタに取り付けると共に、前記樹脂プロテクタの変形に応じて前記カバーの取付位置を調整する第1調整手段と、を備えるカバー付き電池配線モジュール。
【請求項2】
前記第1調整手段が、前記樹脂プロテクタ又は前記カバーに設けられる突起状の係止部と、前記樹脂プロテクタ又は前記カバーに設けられる枠状の被係止部であって、前記係止部に引っ掛けられると共に、前記係止部と係合した状態で前記樹脂プロテクタの変形に応じて前記係止部に対して移動可能な被係止部と、を有する請求項1に記載のカバー付き電池配線モジュール。
【請求項3】
前記カバーは、複数のサブカバーと、隣り合った前記サブカバー同士を接続すると共に前記樹脂プロテクタの変形に応じて前記サブカバー同士の取付位置を調整する第2調整手段と、を有する請求項1又は請求項2に記載のカバー付き電池配線モジュール。
【請求項4】
前記第2調整手段が、隣り合った前記サブカバー同士のうち一方の前記サブカバーに設けられる突起状の係合部と、前記サブカバー同士のうち他方の前記サブカバーに設けられる被係合部であって、前記係合部が挿入されると共に前記樹脂プロテクタの変形に応じて前記係合部が移動可能な大きさの被係合孔と、この被係合孔の周りを囲むと共に前記係合部に対して外側から係合可能な被係合枠とを含む被係合部と、を有する請求項3に記載のカバー付き電池配線モジュール。
【請求項5】
前記第1調整手段の変位方向と、前記第2調整手段の変位方向とが直交する請求項3又は請求項4に記載のカバー付き電池配線モジュール。
【請求項6】
前記カバーと前記樹脂プロテクタとの間に、前記カバーの取付位置を規制する規制手段を備える請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のカバー付き電池配線モジュール。
【請求項7】
前記樹脂プロテクタは、複数の前記バスバーをそれぞれ収容する複数のバスバー収容部を含む請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のカバー付き電池配線モジュール。
【請求項8】
前記バスバー収容部は、前記バスバーの長手方向に沿って伸縮可能である請求項7に記載のカバー付き電池配線モジュール。
【請求項9】
前記配線パターンは、一の方向に沿って並ぶ第1パターンと、前記一の方向と垂直な方向に沿って並ぶ第2パターンとからなる請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のカバー付き電池配線モジュール。
【請求項10】
前記サブカバー同士が、同じ形状である請求項3ないし請求項9のいずれか1項に記載のカバー付き電池配線モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−37986(P2013−37986A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174837(P2011−174837)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】