説明

カバー用ロック

【課題】特に比較的少数の構成部材で以て廉価で確実な、信頼性のあるロックを、このロックにより位置固定しようとする全ての連結構成部材のために提供する。
【解決手段】ロック(1)が2つのロックエレメント、即ちロックフック(27)とロックピン(28)とを有しており、これらのロックエレメントが異なるロック機能を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動ルーフを備えた車両、特にカブリオレ式車両のカバー用ロックであって、
‐カバーが開放位置と閉鎖位置との間で運動可能であり、更にカバーが可動ルーフのための収容室を閉鎖し且つ閉鎖状態においてカバーに緊張フレームが位置決めされており、
‐緊張フレームとカバーとが、ロックを介して閉鎖状態において車両ボデーに対して位置固定されてロックされていると共に、緊張フレームが閉鎖フレームで以て前記収容室に突入し且つロックにより保持されるようになっており、
‐ロックがカバーの下位に配置されており且つカバーの旋回時に連動されるようになっており、
‐ロックが、該ロックを操作するためのレバーシステムと液圧シリンダとを有している形式のものに関する。
【0002】
更に本発明は、カバー用ロックを備えていることを特徴とする、可動ルーフを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0003】
カブリオレ式車両の可動ルーフの場合、ルーフは閉じられた位置から開かれた位置に運動可能であり、この場合、ルーフの開放状態において折り畳まれたルーフは、車両リアの収容室に収納される。この収容室は、一般にカバーによって閉鎖されており、このカバーは、ルーフ開閉時に所定の開放位置に旋回され、これにより、可動ルーフは収容室に収納可能であるか、又は収容室から外に運動可能である。
【0004】
開放位置において可動ルーフは収容室に収納されており、この場合、カバーは次いで再び閉じられる。このカバーは、旋回ジョイントによって車両のボデー又は別の構成部材に取り付けられていてよい。この場合、カバーの旋回は、1旋回軸を中心として又はレバー伝動装置によって、室内に配置されたカム軌道に沿って行われる。また旋回操作部及び駆動装置は、ボデーとカバーの両方に取り付けられていてもよい。別の慣用の構成では、操作部の駆動装置及び操作部自体が互いに分離されて位置決めされていてよく、結合部材を介して互いに結合されている。
【0005】
ルーフの開放又は閉鎖状態において、カバーはその都度その閉鎖された終端位置に位置しているので、カバーは適当な機構によって、例えば強い走行風又は外部からの介入等による不都合な操作に対してロック可能となっていなければならない。このロックは、ルーフの開放状態でも閉鎖状態でも作用し且つ例えばボデー又はルーフを収容する収容室の壁に取り付けられていてよい。更に、このようなロックは複数のロックユニットを有していてよいことが公知であり、この場合、これらのロックのうちの少なくとも1つがカバーのロックに使用され且つ少なくとも1つの別のロックが、収容室に収納されたルーフの位置固定に使用される。また一般に、同一構成形式の複数のロックが、カバー及び収納されたルーフをロックするために使用される。これにより、ルーフの完全に収容された状態及びカバーの閉じられた状態において、収納されたルーフとカバーの同時ロックが行われる。
【0006】
カバーはその外縁部に沿ってシールを有していてよく、このシールは汚れ及び/又は水の侵入を防ぐ。このことが確実に保証されるようにするためには、カバーがロックを介してシールに押し付けられてよい。付加的なロック及び操作機構を省くことができるようにするためには、このようなロックにおいてしばしば、例えば緊張フレーム又はホルダフレーム等の別の構成部材が一緒にロック終端位置に位置決めされてロックされる。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19912887号明細書には、車両、特に旋回可能且つ収納可能な車両ルーフ構造を備えた車両のためのロック装置が記載されている。この公知のロック装置は1ロックエレメントから成っており、このロックエレメントはフック状に形成されており且つ駆動装置、有利には液圧シリンダを介して駆動される。この場合、ロックエレメントは2つのレバーを介してボデーに支承されており、これによりロックエレメントはロック過程に際してフックに係合する旋回運動以外に、付加的に長手方向運動を行い、これによりロックしようとする構成要素がロックエレメントの方向に引っ張られる。ロックしようとする構成要素とは、例えば可動の車両ルーフ構造及び収納されるルーフの収容室を閉鎖する閉鎖カバーのことである。ロックしようとする前記両構成要素は、それぞれ閉鎖開口を有しており、これらの閉鎖開口はロックエレメントを介して予負荷された閉鎖位置に係止され得る。
【0008】
米国特許第5301987号明細書から公知のカブリオレ式車両では、可動ルーフと、この可動ルーフのための収容室をカバーするためのソフトトップコンパートメントカバーとが、1つの共通のロック装置によって一緒にロックされ得る。ルーフの閉鎖状態では、後部ルーフ領域の下面から少なくとも1つの閉鎖アイレットが、閉じられたソフトトップコンパートメントカバーの開口を通ってルーフの収容室に突入している。閉鎖アイレットは、長手方向ガイドにわたってシフト可能にソフトトップコンパートメントカバーの下面に支承された楔形のロックスライダによって、ソフトトップコンパートメントカバーの方向に緊締され且つロックされる。楔形のスライダは、ロッドを介して操作装置に結合されており、この場合、この操作装置もやはりソフトトップコンパートメントカバーの下面に取り付けられている。操作装置は、主としてラックとして形成された2つのリニアスライダから構成されており、この場合、両リニアスライダ間には、スライダに係合する中間ピニオンが配置されている。このピニオンの駆動装置を介してリニアスライダは、そのラック歯列で以て、車両側面毎に1つのロックスライダが開閉可能であるようにシフトされる。これにより、可動ルーフがソフトトップコンパートメントカバーに対して位置決めされ且つロックされる。
【0009】
ドイツ連邦共和国特許第4120474号明細書に記載された、ソフトトップフレームを備えた車両のための沈降可能な折畳み式ソフトトップは、ソフトトップの下側の終端部にソフトトップボウを有している。折り畳まれて収納されるソフトトップを格納するためのソフトトップコンパートメントには、旋回可能なソフトトップコンパートメントカバーが対応配置されており、このソフトトップコンパートメントカバーはロック手段を介して車両ボデーにロックされ得る。ソフトトップボウは、載置された位置でソフトトップコンパートメントカバーに結合されていてよく、この場合、ソフトトップボウとソフトトップコンパートメントカバーとの間のロック装置は単一のロックによって形成され、このロックはセーフティロックとして形成されている。このロックは、ソフトトップコンパートメントカバーとソフトトップボウとの間の移行ゾーンの中央領域に配置されており且つソフトトップコンパートメントカバーの下面に固定されており、これにより、ソフトトップの閉鎖状態においてソフトトップボウはソフトトップコンパートメントカバーに係止され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19912887号明細書
【特許文献2】米国特許第5301987号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許第4120474号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、冒頭で述べた形式のカバーのための、若しくは該カバーの装備された車両のためのロックを改良して、特に比較的少数の構成部材で以て廉価で確実な、信頼性のあるロックを、このロックにより位置固定しようとする全ての連結構成部材のために提供することである
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために本発明では、ロックが2つのロックエレメント、即ちロックフックとロックピンとを有しており、これらのロックエレメントが異なるロック機能を有しているようにした。
【発明の効果】
【0013】
本発明の有利な構成は従属請求項に記載されている。
【0014】
本発明は全般的に、カバーがロックによって、該カバーの閉鎖位置において少なくとも1つの隣接した構成部材に対して相対的にロック可能であるという思想に基づくものである。前記カバーは、例えば可動ルーフのための収容室のソフトトップコンパートメントカバーであってよく、この場合、カバーの縁部域にはルーフの閉鎖状態において緊張フレームが載置されている。この緊張フレームの下面には、少なくとも1つの閉鎖フレームが位置しており、この閉鎖フレームは、カバーの開口を通って可動ルーフの収容室に突入している。緊張フレームの閉鎖フレームの領域において、カバーの下位にはロックが位置しており、このロックは旋回可能なフックと、ロックピンと、レバーシステムとから構成されている。ロック全体は、例えばホルダを介してカバーの下位のライニングに取り付けられているので、ロック全体がカバーの旋回時に、レバーシステム及び駆動エレメントと連動する。レバーシステムを介してロックフックは緊張フレームの下位の閉鎖フレームに係合することができ、この場合、ロックフックの形状は、閉鎖フレームへの係合中に、この閉鎖フレームを収容室の方向に引っ張ることができる。同時にレバーシステムを介して、ロックピンと、前記ロックフックのレバー機構と同じレバー機構とから成る別のロックシステムが作動して、ロックピンはカバーの縁部域付近に延在するクロスメンバの収容孔に係合する。
【0015】
ロックフック及びロックピンを作動させるためのレバーシステムは、ロック開放状態においてレバー領域がインナストッパを形成するように構成されており、このインナストッパは、ロックフックとロックピンとが常に最適な開放位置に位置決めされ得るということを保証する。ロック閉鎖状態において、ロックフックは閉鎖フレームに係合しており且つロックピンはクロスメンバの収容孔に係合しており、この場合、このロック位置の終端位置において、レバーシステムの接触面を越えた更なる旋回が防止される。前記終端位置は、いわゆる「死点ロック」を介してインナロックを形成しているので、例えば外部で作用する力によるロックフック又はロックピンの不本意な移動が行われる恐れはない。つまり、前記ロックはその閉鎖位置でインナロック機構を有している。
【0016】
もちろん、ロックが例えばボデー側のホルダ又は構成部材に取り付けられていることもあり得る。
【0017】
本発明では、ロックは可動ルーフ部分としての緊張フレームとカバーとの間で係止可能であり、この場合、ロックシステム自体はロックピンを介して構造体、つまりクロスメンバに係止され得る。この分離は、閉鎖フレームに対するロックフックの結合を介して、カバーと緊張フレームとの間の連続的な予負荷を可能にする。これにより、これらの両構成部材(緊張フレーム及びカバー)間において環状のシールが永続的に同一の圧着圧力を得て、延いては水及び汚れの侵入が確実に防止されるということが保証され得る。緊張フレーム、カバー及びロックから成るシステム全体は、クロスメンバに係合するロックピンを介して位置固定される。
【0018】
この構成が有利なのは、生じ得る製作誤差と予負荷とが、互いに無関係に調節され得るからである。つまり、緊張フレームとカバーとの間をシールするための予負荷は、クロスメンバに対するカバーのロックによって影響を及ぼされないままであるのに対して、クロスメンバに対するロックは変更可能である。別の利点は、ロック機能の分割によって、より簡単且つ確実な操作が可能になるという点にある。緊張フレームとカバーとの間、並びにカバーとクロスメンバとの間に生じる緊張/力は回避され、さもなければこの緊張/力は、1つのロックエレメントだけを使用した場合に、結果的に緊張フレームの異なる係止力及び圧着圧力を生ぜしめかねない。この場合、緊張フレームとカバーとの間のシールが損傷するか、若しくはフレキシブルなソフトトップクロスの異なる緊張がもたらされる恐れがある。更に、前記ロックの分割によって、温度(冬の行き、夏の強い日差し)による影響が相殺される。特に有利であると判ったのは、レバーシステムを介して両ロック(ロックフック、ロックピン)が1つの駆動エレメント、即ち液圧シリンダのみを介して駆動され得るということである。別の駆動手段としては、電気駆動装置又はケーブル装置が選択肢としてある。個々のロックの相互の微調整は、カバーが大面積によって形成され且つ高い速度領域で動かされる車両において特に重要である。高速において、大きなカバーの場合は高い負圧が作用し、この負圧はカバーを持ち上げる恐れがあるので、不密性及び著しい風切り音が予想される。これらの欠点は、前記の両ロックの使用によって回避される。更に、ロックフック及びロックピン並びにレバーシステムから成る装置は、互いに入れ子式に係合する、平行に配置された構成部材によって、特に省スペース型の構造体として構成されている。
【0019】
更に、ロックフックはその支承部において調節可能に配置されていてよいということが考えられ、その結果、ロックフックを介してソフトトップクロスの緊張の微調整が可能になる。カバーの下位にロックを配置することは、容易な接近性、個々のロックの簡単且つ容易な調節及び駆動装置を備えたロック全体の組込みを提供するものであり、この場合、前記駆動装置はカバーの下位のライニングに取り付けられている。
【0020】
別の有利な変化形では、ロックを介してレバーシステムにより別のロックエレメントが駆動され得るので、リヤ領域に収納された可動ルーフの収納位置での係止が、同じロックを介して可能になる。また、ライニングの開口の上位にサービス開口としてアクセス部が設けられているということも考えられ、これにより、保守整備作業を簡単に行うことができる。ロックは、より簡単な組込みのために組立て済みユニットとして完全に全ての構成部材を備えてライニングに組み込まれて調節されることができ、これにより、カバーの下位にライニングを組み込む時には別の調節手段が与えられている。有利には、ライニングの収容室に面した側に、収納されるルーフのためのショックアブソーバ又はスペーサが取り付けられていて良い。このようにして、収納されるルーフを位置固定するための専用のロックを省くことができる。更に、単独のセンサのみの使用によって、両ロックの監視を行うことが可能である。ロック開閉時の同時進行は、極めて迅速な操作時間を可能にする。
【0021】
上で述べ且つ以下で更に説明する構成は、記載された各組合わせにおいてのみならず、別の組合わせにおいても、又は単独でも、本発明の枠から逸脱することなく使用可能であると理解される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ロックの斜視図を、カバー及び該カバーの周辺構成部材の断面図と共に示したものである。
【図2】レバーシステムを備えたロックを開放状態で示した側面図である。
【図3】レバーシステムを備えたロックを閉鎖状態で示した側面図である。
【図4】閉鎖されたロックを前方位置から見た斜視図である。
【図5】開放されたロックを、ロックエレメントを操作するためのカップリングアームと共に示した側方斜視図である。
【図6】閉鎖されたロックを、ロックエレメントを操作するためのカップリングアームと共に示した側方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0024】
図1には、ロック1の斜視図が、カバー及び該カバーの周辺構成部材の断面図と共に示されている。カバー2は閉鎖状態にあるので、可動ルーフのための収容室は、カバー2によって閉鎖されている。走行方向6とは逆方向の、カバー2の後部領域では、緊張フレーム3が、カバー2のほぼ後縁部の領域に載置されている。緊張フレーム3は、ほぼ三角形の中空成形体であり、有利には軽金属から製作されており且つ走行方向6とは逆方向を向いた端部にシール用の収容部11を有している。更に、緊張フレーム3の下面には、少なくとも1つのU字形の閉鎖フレーム30が取り付けられており、この閉鎖フレーム30は、カバー2の閉鎖状態ではこのカバ−2又はカバー2とボデーとの間の分離部に設けられた開口を通って、可動ルーフの収容室に突入している。緊張フレーム3に設けられた収容部11に挿入されたシールは、緊張フレーム3の閉鎖状態において、汚れ又は水が、ボデーとカバー2との間の分離部に流入することを防止する。前記シールは、有利には緊張フレーム3の閉鎖状態で変形し延いては緊張フレーム3、ボデー及び/又はカバー2との間に永続的な予負荷を生ぜしめる成形体シールとして形成されている。更に、緊張フレーム3内に設けられたこのシール装置によって、緊張フレーム3とカバー2若しくはボデーとの接触が避けられ、これにより、緊張フレーム3、カバー2及び/又はボデー間のがたつきノイズが防止される。
【0025】
カバー2の開口を通って突出している閉鎖フレーム30は、カバー2の下位でロックフック27によって閉鎖位置に保持される。この場合、U字形の閉鎖フレーム30はロックフック27を介して前記収容室の方向に引っ張られ、しかも、カバー2も緊張フレーム3のシールの予負荷以外で、収容室の方向に引っ張られる。この場合、カバー2の後部領域は、ボデーに結合されたクロスメンバ4のシール10にぶつかる。この場合もシールの課題は、汚れ及び水の侵入を防ぐことである。シール10は、中空の成形体シール10として形成されており且つカバー2の下面との接触時にやや押しつぶされる。この場合も、シール10にとって不可欠な予負荷が生ぜしめられ、この予負荷はボデー及び周辺構成部材に対して生じる可能性のある、カバー2のがたつきノイズを防止することが望ましい。走行方向6とは逆方向を向いた、カバー2の後部領域には、カバー2の下面から収容室の方向に向いたライニング5が位置しており、このライニング5は、有利には1枚の変形された薄板から製作されている。ライニング5とカバー2との間に形成された空間は、ロック1の収容部及びロック1の駆動部に使用され、この駆動部は、本実施形態では液圧シリンダ15として形成されている。もちろん、液圧シリンダ15を比較可能なリニア駆動装置で代替することも可能である。駆動装置としては、中間配置された伝動装置を備えた複数の電動モータも考えられる。
【0026】
図2の側面図にはロック1が、このロック1を操作するレバーシステム20と一緒に開放状態で示されている。ロック1は、主として2つのロックエレメント、即ち旋回可能なロックフック27と、直線的に摺動可能なロックピン28とから成っている。図1において既に説明したように、カバー2の閉鎖状態では、緊張フレーム3の下面に固定されたU字形の閉鎖フレーム30が、カバー2の開口を通って可動ルーフの収容室に侵入している。この終端位置において、閉鎖フレーム30はロックフック27のキャッチ範囲内に突入しており且つロック閉鎖時にロックフック27により係合される。この場合、ロックフック27のフック形状は、当該ロックフック27が引き続き閉鎖すると、閉鎖フレーム30が可動ルーフの収容室の方向に引き続き引っ張られるように形成されている。このようにして緊張フレーム3は、そのU字形の閉鎖フレーム30で以て互いにその位置に位置固定されてロックされる。カバー2に対してロックされた緊張フレーム3を、カバーの閉鎖状態においてボデーに対して位置固定できるようにするためには、ロック1に直線的に摺動可能なロックピン28が設けられている。このロックピン28は閉鎖時に、車両のリヤ領域に延在するクロスメンバ4の収容孔12に係合し、延いてはロックフック27を介してカバー2に係止される緊張フレーム3の、ボデーに対するロックを形成する。
【0027】
図2に示した開放状態OFSTにおいて、ロックフック27は旋回軸45を中心として走行方向6に旋回されている。旋回軸45はライニング5に対するロックフック27の支承部を成しており、この場合、旋回軸45はホルダ29の軸受け孔によって形成される。ホルダ29は、適当な固定手段によりその下面でもってライニング5に取り付けられている。
【0028】
ロックフック27の旋回運動に同期して、直線的に摺動可能なロックピン28が対応する収容孔12に押し込まれる。この場合、ロックピン28はガイド(図示せず)内で直線的に摺動可能にガイドされる。両ロックエレメント、即ちロックフック27とロックピン28とは、カップリングアーム25,26を介してレバーシステム20に結合されている。このレバーシステム20は、レバー21,22,23の選択に基づいて、ロックフック27及びロックピン28に相応した駆動伝達部が形成されるように構成されている。レバーシステム20は液圧シリンダ15を介して駆動され、この液圧シリンダ15は旋回軸54で以て旋回運動可能にライニング5に支承されている。
【0029】
レバーシステム20には、後部レバー22が旋回軸50を中心として旋回可能に支承されており、この場合、後部レバー22は少なくとも1つの結合アーム23を介して前部レバー21と作用結合状態にある。結合アーム23は、旋回軸49を介して後部レバー22に可動に支承されており且つ旋回軸48を介して前部レバー21と可動に結合されている。前部レバー21は旋回軸47を中心として運動され、この旋回軸47はホルダ29を通って形成される。前部レバー21は、後部レバー22の方向を向いた前部カム35を有しており、この前部カム35は前部カム軌道36で以て、後部レバー22の後部カム34の後部カム軌道41に接触している。両カム34,35は、ロックの開放状態においてレバーシステム20のインナストッパを形成しており、これにより、ロックフック27及びロックピン28の更なる開放が制限される。前部レバー21と後部レバー22とは一平面内に配置されており且つ面状に平行に配置された結合アーム23を介して両側にレバー21,22が結合される。前部レバー21の旋回軸47上には更に制御レバー24が位置決めされている。この制御レバー24は、互いに間隔を置いてずらされた、別の2つの旋回軸51,53を有している。旋回軸53にはカップリングアーム25が旋回可能に支承されており、このカップリングアーム25は、レバーシステムの開閉運動をロックフック27に伝達するために役立つ。カップリングアーム25は、ロックフック27のフック開口の下位で旋回軸46によりロックフック27に結合されている。制御レバー24の旋回軸51を介してカップリングアーム26が駆動され、このカップリングアーム26は閉鎖運動をロックピン28に伝達する。後部レバー22は旋回軸50で以て旋回可能に所定のホルダ(図示せず)に可動に支承されている。後部レバー22の、後部カム34とは反対側の端部には、液圧シリンダ15のピストンロッド60が枢着式に取り付けられている。
【0030】
図3の側面図には、レバーシステム20を備えたロック1が閉鎖状態で示されている。この場合、ロックエレメント27,28は閉鎖状態Schstにあり、ロックフック27はU字形の閉鎖フレーム30に係合しており、ロックピン28は収容孔12に押し込まれている。ロックフック27及びロックピン28の閉鎖運動は、レバーシステム20の運動学によって生ぜしめられる。この場合、ピストンロッド60が液圧シリンダ15から進出され、しかも後部レバー22が反時計回りの方向で旋回運動を行う。結合アーム23を介して、後部レバー22の旋回運動は前部レバー21に伝達され、この前部レバー21もやはり旋回軸47を中心として、反時計回りの方向に旋回運動を行う。開放状態Ofstにおいて重なり合って位置するカム34,35は、後部レバー22の後部接触面42が前部レバー21の前部接触面37と接触し、延いては両レバー21,22のロック形成が生ぜしめられるように、互いに離反運動される。このようにして、ロックフック27の更なる旋回並びにロックピン28の更なる摺動が防止される。レバーシステム20のこの運動過程に際して、結合線VBL Iは、後部レバー22の旋回軸50を越えて間隔55だけ移動する。この間隔55は、旋回軸50を通る平行な直線VBL IIによって形成される。結合線VBL Iによる旋回軸50の横断に基づき、レバーシステム20のロックが生ぜしめられる。このロックは、両結合線VBL I,VBL IIの間隔55を以て、結合線VBL Iが旋回軸50を越えて上方に押圧される基準となる。レバーシステム20のレバー21,22,23の申し分のない旋回は、結合線VBL IIが閉鎖過程中に旋回軸50を横断しないでいる限りは保証されている。旋回軸50を横断するためには、レバーシステム20が上方に押圧(スナップ)される。このロックはいわゆる「死点超過ロック」(Uebertotpunktverriegelung)を成している。この場合、外部からの作用によって、例えばロックフック27又はロックピン28を介してレバーシステム内に旋回運動が生ぜしめられるということは不可能である。
【0031】
レバーシステム20が再び開放され得るようにするためには、結合線VBL Iが再び旋回軸50を越えて戻し運動されねばならない。この旋回軸50の横断から、レバーシステム20は再び容易に運動され得る。レバーシステム20の死点ロックの位置では、当該レバーシステム20の運動は液圧シリンダ15を介して、そのピストンロッド60によってしか行うことができない。これは又、液圧シリンダ15及びピストンロッド60の中心線が旋回軸49の上位で延びており、延いては後部レバー22の旋回運動用の短いレバーアームが前記中心線33と旋回軸49との間で作用することができることによってのみ可能でもある。
【0032】
図4には、走行方向6でロック1の前方に位置するポジションから閉鎖されたロック1を見た斜視図が示されている。この斜視図では、制御レバー24がほぼ垂直な位置に旋回されており、しかも、カップリングアーム26はロックピン28を、その係止位置に押しずらしている。レバーシステム20全体は、複数の平らな構成部材から構成されており且つ旋回軸46,47,48,49,50,51,52,53を介して互いに結合されている。この構成形式は、ロックエレメント27,28を備えたレバーシステム20の特に省スペース型の配置形式を可能にしており、これにより、収容室内若しくはカバー2の下位にはロック1を収容するための小さな構成空間しか必要とされない。
【0033】
更に、前記の平らな構成部材(レバー/アーム21,22,23,24,25,26,65)は、一枚の薄板から簡単且つ廉価に切り抜かれるか、若しくは打ち抜かれる。レバーシステム20若しくはロックエレメント27,28に発生する力が、できるだけ対称的にレバーシステム20に導入されるようにするためには、カップリングアーム25とカップリングアーム26とが、それぞれ制御レバー24の片側に取り付けられている。この制御レバー24は、前部レバー21と一緒に旋回軸47において相対回動不能に支承されている。ここでも対称的な力案内のために、制御レバー24はレバーシステム20の片側に位置決めされているのに対して、ピストンロッド60を備えた液圧シリンダ15の駆動ユニットは、レバーシステム20の反対側に取り付けられている。
【0034】
ロック1の別の構成が、開放されたロック1の側方斜視図として、ロックエレメント27,28を操作するためのカップリングアーム66,67と一緒に図5に示されている。この場合、上で説明した図1〜図4に示したレバーシステム20と同じレバーシステム20が使用され、しかも、液圧シリンダ15はそのピストンロッド60で以て、走行方向6とは逆方向で、背後から後部レバー22に作用するように配置されている。液圧シリンダ15を支承するためにはホルダ70が役立ち、このホルダ70は同時に後部レバー22及び前部レバー21用のホルダ70としても役立つ。このホルダ70は、例えばライニング5又はボデー部分に取り付けられていてよい。この配置形式は、レバーシステム20が構成空間の制限に基づきロックエレメント27,28から比較的遠く離れて配置されている場合に有利である。この実施形態では制御レバー24の代わりに、図5及び図6に対応して制御レバー65が前部レバー21と一緒に旋回軸47において相対回動不能に支承されている。ロック1の開放状態Ofstでは、ロックフック27とロックピン28とはその係合位置から動かされており、この場合、制御レバー65は可動ルーフの収容室の方向を指している。やはり平らな構成部材として薄板から製作された制御レバー65の自由端部には、ホルダ70に面した側にカップリングアームII67が位置しており、このカップリングアームII67は、制御レバー65とロックフック27との間の伝達部材として働く。制御レバー65の反対側には、ロックピン28を操作するためのカップリングアームI66が配置されている。両カップリングアームI,II66,67は、ロック1の開放状態Ofstでは互いに接近して位置決めされている。両カップリングアーム1,1166,67が互いに平行に配置されていることも可能である。
【0035】
図6には、閉鎖されたロック1を側方から見た斜視図が、ロックエレメント27,28を操作するためのカップリングアームI,II66,67と一緒に示されている。この場合、レバーシステム20は、図3において説明したようにブロック状になるように死点ロック位置に運動されている。前部レバー21は反時計回り方向で旋回されており、この場合、制御レバー65は前部レバー21と同じ旋回角度で運動される。この状態で制御レバー65はロックエレメント27,28の方向を示すように旋回されており、しかも制御レバー65とカップリングアームI66とは、伸びた状態でほぼ相対して位置している。ロックフック27の旋回によってカップリングアームII67はやや上向きの位置へ運動され、この場合、このカップリングアームII67の制御レバー65とは反対の側の端部は、旋回軸68を中心として旋回可能に取り付けられている。ロックフック27の所望の閉鎖運動に対応して、旋回軸68はロックフック27のそれぞれ異なる位置に位置決めされていてよい。ロック1の開放状態Ofstでは、旋回軸68(ロックフック27に対するカップリングアームII67)と、旋回軸69(ロックピン28に対するカップリングアームとが、ほぼ1本の垂直方向軸線上で互いに重なり合うように配置されている。制御レバー65、カップリングアームI,II66,67の長さ寸法及びロックフック27におけるカップリングアームII67の結合部の伝達比に基づき、閉鎖状態Schstにおいても旋回軸68,69はほぼ平行に相上下して位置決めされている。
【0036】
極端に狭いスペース状況では、レバーシステム20は液圧シリンダ15と共に、ロックエレメント27,28から大きく離れて位置決めされていてよい。レバーシステム20とロックエレメント27,28との間の伝達に関しては、複数のカップリングアームが別のレバー伝動装置として相前後して配置されていることが考えられる。また、閉鎖運動若しくは開放運動を伝達するためには、カップリングアームI,II66,67の代わりにボーデンケーブルを使用することも可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 ロック、 2 カバー、 3 緊張フレーム、 4 クロスメンバ、 5 ライニング、 6 走行方向、 10 シール、 11 収容部、 12 収容孔、 15 液圧シリンダ、 20 レバーシステム、 21 前部レバー、 22 後部レバー、 23 結合アーム、 24 制御レバー、 25,26,66,67 カップリングアーム、 27 ロックフック、 28 ロックピン、 29,70 ホルダ、 30 閉鎖フレーム、 33 中心線、 34,35 カム、 36,41 カム軌道、 37,42 接触面、 45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,68,69 旋回軸、 55 間隔、 60 ピストンロッド、 65 制御レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動ルーフを備えた車両のカバー(2)用ロック(1)であって、
‐カバー(2)が開放位置と閉鎖位置との間で運動可能であり、更にカバー(2)が可動ルーフのための収容室を閉鎖し且つ閉鎖状態においてカバー(2)に緊張フレーム(3)が位置決めされており、
‐緊張フレーム(3)とカバー(2)とが、ロック(1)を介して閉鎖状態において車両ボデーに対して位置固定されてロックされていると共に、緊張フレーム(3)が閉鎖フレーム(30)で以て前記収容室に突入し且つロック(1)により保持されるようになっており、
‐ロック(1)がカバー(2)の下位に配置されており且つカバー(2)の旋回時に連動されるようになっており、
‐ロック(1)が、該ロック(1)を操作するためのレバーシステム(20)と液圧シリンダ(15)とを有している形式のものにおいて、
ロック(1)が2つのロックエレメント、即ちロックフック(27)とロックピン(28)とを有しており、これらのロックエレメントが異なるロック機能を有していることを特徴とする、カバー用ロック。
【請求項2】
前記異なるロック機能において、ロックフック(27)が緊張フレーム(3)をカバー(2)に対してロックし且つロックピン(28)がロック(1)、緊張フレーム(3)及びカバー(2)を車両に固定されたクロスメンバ(4)にロックする、請求項1記載のカバー用ロック。
【請求項3】
ロックフック(27)とロックピン(28)とがカップリングアーム(25,26)によって、レバーシステム(20)に相対回動不能に結合された制御レバー(24)を介して開放位置(Ofst)と閉鎖位置(Schst)との間で運動される、請求項1又は2記載のカバー用ロック。
【請求項4】
レバーシステム(20)が、それぞれ開放位置(Ofst)と閉鎖位置(Schst)とにおいて2つのレバー(21,22)の相互ストッパを有しており、これによりロックフック(27)及びロックピン(28)の終端位置が制限される、請求項1から3までのいずれか1項記載のカバー用ロック。
【請求項5】
レバーシステム(20)のレバー(21,22,23,24,65)及びカップリングアーム(25,26,66,67)が薄板から切り抜かれており且つこれらのレバー(21,22,23,24,65)とカップリングアーム(25,26,66,67)とが、レバーシステム(20)として互いに隣接して重ねられて配置されている、請求項4記載のカバー用ロック。
【請求項6】
カップリングアーム(66,67)が、それぞれ長い伝達アームとして形成されている、請求項4又は5記載のカバー用ロック。
【請求項7】
カップリングアーム(25,26,66,67)の代わりにボーデンケーブルが使用される、請求項4から6までのいずれか1項記載のカバー用ロック。
【請求項8】
レバーシステム(20)の閉鎖位置(Schst)において、前部レバー(21)及び後部レバー(22)の旋回軸(48,49)の結合線VBL Iが、旋回軸(50)を越えてレバーシステム(20)をロックするための死点位置に運動される、請求項1から7までのいずれか1項記載のカバー用ロック。
【請求項9】
ロック(1)と、液圧シリンダ(15)を備えたレバーシステム(20)とが、ライニング(5)の内側に組み込まれており、ライニング(5)がカバー(2)の下面に固定されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のカバー用ロック。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載のカバー(2)用ロック(1)を備えていることを特徴とする、可動ルーフを備えた車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−168269(P2011−168269A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31223(P2011−31223)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(506292985)マグナ カー トップ システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (31)
【氏名又は名称原語表記】Magna Car Top Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Stuttgarter Strasse 59, D−74321 Bietigheim−Bissingen, Germany
【Fターム(参考)】