説明

カビおよび酵母による腐敗を防ぐための組成物並びにその使用およびそれに関連する製品

本発明は、カビおよび酵母による腐敗を防ぐための組成物であって、唯一の抗カビ剤としての、カプリル酸、桂皮酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、酒石酸およびフマル酸、並びにそれらの塩からなる群より選択される有機酸から選択される少なくとも1種類の化合物と、植物または果実抽出物、植物または果実抽出物の油相、およびそのような抽出物またはその油相に由来する単一物質から選択される少なくとも1種類の化合物とを含む組成物に関する。本発明は、さらに、カビおよび酵母の増殖から食品または飼料を保護するためのそのようなまたは類似の組成物の使用、並びにそのような組成物を含有する食品または飼料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カビおよび酵母による腐敗を防ぐための組成物並びにその使用およびそれに関連する製品に関する。
【背景技術】
【0002】
工業生産された食品および飼料(feed)は、菌類および細菌類などの微生物の増殖による劣化から保護しなければならない。ウェットタイプの製品は通常、食品または飼料が調理され、微生物を殺すためのさらなる殺菌と調理のために缶または容器内に入れられるレトルト加工を経験し、一方でドライタイプの製品は、その低い含水率および水分活性のために、微生物の増殖により本質的に危うくされないのに対して、具体的に、約10から40質量%の含水率および0.60から0.90、特に0.65から0.85の範囲の水分活性を有する中間の水分のペットフード製品などの中間の水分の食品および飼料に関しては、本質的に問題がある。これらの水分レベルでは、製品の腐敗は主に、カビおよび酵母により生じる腐敗に関連し、これらの微生物は、官能特性に関して製品を劣化させ、またはある場合には、毒素を生成する傾向にある。
【0003】
したがって、そのような製品には特別な抗カビ組成物が通常添加される。従来技術ではたいてい、ソルビン酸、特にソルビン酸塩、または安息香酸、特に安息香酸塩に基づく抗カビ組成物が使用される。しかしながら、そのような製品の賞味期限を改善するための他の殺菌剤が従来技術から公知である。
【0004】
例えば、特許文献1には、微生物により腐りやすい製品の品質の改善および/または安定化のための方法であって、製品の表面および/または環境を、ベンジルアルコールおよび少なくとも1種類の微生物活性GRAS(一般に安全と認められる)香料添加剤を含む殺菌組成物により処理し、このGRAS香料添加剤が、特定のアルコール、アルデヒド、フェノール、酢酸塩、酸類、アリシン、テルペン、アセタール、ポリフェノールおよび精油から選択される方法が記載されている。しかしながら、これらの組成物は、ベンジルアルコールの存在を強制的に要求し、製品への添加剤として使用されない。
【0005】
抗菌組成物のための有機酸およびジオールの混合物が、特許文献2に記載されている。
【0006】
特許文献3には、少なくとも1種類の天然防腐剤系のペットフード製品のための防腐剤系であって、いくつかの特別な有機酸の内の1つであるかもしれない、キレート剤を必要に応じてさらに含む防腐剤系が開示されている。特許文献3の実施例は、酸化による脂肪の分解を遅らせる、これらの天然防腐剤系の効果を示している。この従来技術の文献には、微生物の増殖に対する効果は、議論も教示もされていない。
【0007】
特許文献4には、少なくとも1種類の唾液分泌促進剤、特に、有機酸、および少なくとも1種類の冷却剤、並びに必要に応じての、植物抽出物であるかもしれない、刺激剤(tingling agent)を含む食品が開示されている。この食品は、口と精神のリフレッシュさを向上させるためのものである。
【0008】
特許文献5には、抗菌ナイシンと、シソ科の植物または好ましくはローズマリー、セージ、オレガノ、マジョラム、ミント、バルサム、キダチハッカ(savoury)およびタイムから選択される植物からの抽出物とを含む組成物が開示されている。
【0009】
特許文献6は、カビの増殖を防ぐための、カプロン酸またはカプリル酸を含む動物用食餌組成物に関する。
【0010】
特許文献7は、抗菌剤としてのカプロン酸およびカプリル酸などの中鎖脂肪酸に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第762837B1号明細書
【特許文献2】欧州特許第785714B1号明細書
【特許文献3】国際公開第2008/007245A2号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2009/063005号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2005/018333号パンフレット
【特許文献6】米国特許第3658548号明細書
【特許文献7】国際公開第01/97799号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、食品または飼料、特に、以下に限られないが、中間の水分のペットフード製品をカビおよび酵母の増殖から効果的に保護するための組成物であって、特に低濃度で効果的であり、加えて、美味しさにプラスの影響があるであろう組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、唯一の抗カビ剤としての(a)群からの少なくとも1種類の化合物および(b)群からの少なくとも1種類の化合物を含む、カビおよび酵母による腐敗を防ぐための組成物により解決される:
(a) カプリル酸、桂皮酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、酒石酸およびフマル酸、並びにそれらの塩からなる群より選択される有機酸;
(b) 植物または果実抽出物、植物または果実抽出物の油相、およびそのような抽出物またはその油相に由来する単一物質。
【0014】
ある実施の形態において、(b)群からの植物または果実抽出物は、シナモン抽出物、特に、桂皮またはシナモンリーフの抽出物、タイム抽出物、オレガノ抽出物、マジョラム抽出物、レモングラス抽出物、カッシア抽出物、ゼラニウム抽出物、グレープフルーツ種子抽出物、クランベリー抽出物およびビルベリー抽出物から選択される。
【0015】
さらに別の実施の形態において、(b)群からの油相は、シナモン油、レモングラス油、タイム油、レモンミルラ油、オレガノ油、ティーツリー油および丁子油から選択される。
【0016】
(b)群からの単一物質は、シナモンアルデヒド、バニリンおよびそれらの機能的に同等な誘導体からなる群より選択されることが好ましい。
【0017】
好ましい実施の形態において、(a)群からの有機酸は、カプリル酸、桂皮酸、プロピオン酸またはそれらの1種類以上の塩である。
【0018】
さらに、(a)群からの成分および(b)群からの成分は、20:80から98.5:1.5、好ましくは70:30から98.5:1.5の質量比で存在するであろう。
【0019】
本発明はまた、食品または飼料をカビおよび酵母の増殖から保護するための、唯一の抗カビ剤としての(a’)群の少なくとも1種類の化合物および請求項1から4に定義された(b)群の少なくとも1種類の化合物、または請求項1から4に定義された(b)群からの少なくとも2種類の化合物の組合せを含む組成物の使用であって、(a’)群が、必要に応じてヒドロキシまたはオキソ置換された、3から10の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状の一価または多価有機酸を含むものである使用に関する。
【0020】
好ましい使用は、ペットフード製品、人の食品、菓子製品におけるカビおよび酵母の増殖からの保護のため、またはそのような目的のための食品または飼料のパッケージの一部としてである。
【0021】
(a’)群からの有機酸は、カプリル酸、桂皮酸、レブリン酸、リンゴ酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、酒石酸、アスコルビン酸、フマル酸、クエン酸、およびそれらの塩から選択されることが好ましい。
【0022】
さらに、(a’)群からの成分および(b)群からの成分は、20:80から98.5:1.5、好ましくは70:30から98.5:1.5の質量比で存在するであろう。
【0023】
その上、本発明は、本発明の組成物の含有量が、食品または飼料の乾燥質量で0.01%から2.5%、好ましくは0.1%から1.2%、最も好ましくは0.25%から0.9%である食品または飼料に関する。
【0024】
前記食品はペットフード製品であることが好ましく、10から40質量%の含水率および0.60から0.90の範囲の水分活性を有するペットフード製品が最も好ましい。
【0025】
ペットフード製品が0.65から0.85の水分活性を有することが最も好ましい。
【0026】
人の食品とペットフードの調製に植物または果実の成分または抽出物を使用することが、数多く、例えば、健康上の利益、風味、味覚、芳香、テキスチャー効果および色の効果で知られているが、本発明は、特に食品または飼料中の特定のカビおよび酵母の増殖を防ぐことによって、貯蔵性を改善するために、特に1種類以上の有機酸と組み合わされたときに、それらの植物または果実の成分または抽出物のいくつかの追加の利点があるという意外な発見に基づくものである。
【0027】
本発明に関して、「中間の水分のペットフード」は、10から40質量%の含水率および0.60から0.90の範囲の水分活性を有するペットフード製品と定義される。
【0028】
今、意外なことに、特定の植物または果実抽出物およびそれに由来する生成物または成分が、特に1種類以上の有機酸と組み合わされたときに、約2.5質量%までのレベルで加えられると、食品または飼料中のカビおよび酵母に対して特に保護効果を提供するのが示されたことが分かった。詳しくは、具体的に先に示された抽出物、油およびそれに由来する成分が、2種類以上が使用された場合、または1種類以上が上述した有機酸1種類以上と共に使用された場合、相乗効果を示した。これらの相乗効果の利点として、以下が挙げられるが、それには限られない:
(1) カビ/酵母の増殖を防ぐためのより低濃度の抽出物の用法、
(2) 幅広い範囲のカビ種および酵母種に対する保護を最大にする、
(3) そうでなかったら必要とされたであろうレベルよりも著しく低いレベルの各個別の成分での抽出物の組合せによる、所有者の知覚へのプラスの影響、
(4) そうでなかったら必要とされたであろうレベルよりも著しく低いレベルの各個別の成分を含むことによって、植物または果実抽出物の風味の不快臭を最少にする、
(5) 美味しさに通常はマイナスの影響がない、
(6) 消化性に通常はマイナスの影響がない。
【0029】
現在、以下の組成物が、最強の相乗抗カビ効果を示すことが示されている:
(i) リンゴ酸および/またはカプリル酸+シナモンアルデヒド、
(ii) リンゴ酸および/またはカプリル酸+シナモンアルデヒドおよびオレガノ油、
(iii) リンゴ酸および/またはカプリル酸+グレープフルーツ種子抽出物、
(iv) リンゴ酸および/またはカプリル酸+シナモン抽出物およびタイム油、
(v) リンゴ酸および/またはカプリル酸+タイム油およびオレガノ油、
(vi) リンゴ酸および/またはカプリル酸および/またはクエン酸+シナモン油およびバニリン、
(vii) リンゴ酸およびプロピオン酸+バニリンおよび/またはシナモン油、
(viii) シナモンアルデヒド+グレープフルーツ種子抽出物および/またはバニリン。
【0030】
(a)または(a’)群の成分および(b)群の成分の好ましい比は、95:5から70:30の範囲にある。これらの好ましい組合せは、食品または飼料の乾燥質量で、0.1%から1.2%の好ましい量、より好ましくは0.25%から0.9%の量で食品または飼料に添加される。
【0031】
(a)群または(a’)群からの純粋な有機酸または純粋な有機酸の混合物を使用する代わりに、発酵の結果としてそのような有機酸を含有する製品を使用してもよい。現在考えられている実例は、培養されたデキストロースおよびマルトデキストリンの組成物であるMicroGARD(登録商標)200などの発酵デキストロース粉末である。酵母およびカビに対するそのような製品の特定の効力は既に知られているが、重ねて、本発明による組成物を形成するための(b)群の少なくとも1種類の化合物との組合せは、強力な相乗効果を示した。
【0032】
前記抽出物は、液体、固体、樹脂状または一部が揮発性の形態で提供されてもよい。それらは、分留、蒸留、結晶化、分離または他の様式で精製されてもよい。この組成物は、レシピ基質(recipe matrix)および/または製品に施される被覆で適用されてもよい。レシピ基質および/または被覆中の組成物の適切な分布を促進させるために、例えば、レシチンなどの適切な乳化剤を使用してもよい。この組成物をレシピ基質および/または被覆に適用するプロセスには、腐敗に対する保護に関する効能に影響があるであろう。
【0033】
(b)群の成分の内のいくつかは、酸化に対して敏感であるかもしれないので、製品の賞味期限中ずっと抗カビ組成物の安定性を改善するために、例えば、トコフェロールなどの酸化防止剤を加えてもよい。
【0034】
組成物中および/または製品中にある量の塩化ナトリウム(NaCl)が存在することが、全体の抗カビ性能にとって有益であり得ることにも気付いた。完成製品中の塩化ナトリウムの好ましい範囲は、1.0質量%と2.0質量%の間である。
【0035】
これらの抽出物のいくつかを含ませると、抗カビ効果以外に、食品または飼料における追加の利点が得られるであろう。例えば、前記組成物は、抗菌効果、静菌効果、制真菌効果、心地よい芳香、風味、色またはテキスチャーもしくは健康上の利益を提供するであろう。
【0036】
好ましいけれども、本発明は、中間の水分のペットフード製品のための抗カビカクテル(cocktail)の使用だけに関するものではない。むしろ、それは、冷凍ペットフード系、人の菓子系、人の食品、もしくは食品または飼料のためのパッケージにおける抗カビ系の一部として使用しても差し支えない。
【0037】
その成分の比率における組成物の典型的濃度は、選択された特定の成分に応じて、様々である。当業者は、例えば、その実施例に記載されているようなものに基づいて、それぞれの量および比を容易に決定できるであろうが、特定の成分の完成製品中の含有量の好ましい範囲を下記に挙げる:
シナモン油 0.05〜0.5質量%
シナモンアルデヒド 0.005〜0.04質量%
グレープフルーツ種子油 0.01〜0.05質量%
バニリン 0.01〜0.1質量%
カプリル酸/カプリル酸ナトリウム 0.01〜0.60質量%
桂皮酸 0.005〜0.04質量%
リンゴ酸 0.1〜1.0質量%
【0038】
抗カビカクテルが製品の美味しさにマイナスの影響を有する場合、従来技術から公知のように、旨味剤/風味成分またはマスキング系を添加してもよい。
【実施例】
【0039】
接種に使用した菌株カクテル:
ジゴサッカロマイセス・バイリイ(Zygosaccharomyces bailii)
サッカロミセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)
ジゴサッカロマイセス・ルキシ(Zygosaccharomyces rouxii)
アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)
ペニシリウム・オーランティ オグリセウム(Penicillium aurantiogriseum)
ワレミア・セビ(Wallemia sebi)
ユーロチウム・レペンス(Eurotium repens)
ユーロチウム・ヘルバリオラム(Eurotium herbariorum)
【0040】
方法
試験前に、酵母を72時間に亘り25℃で麦芽エキス培養液(MEB、Oxoid、CM0057)中において増殖させた。アスペルギルス・ニガーおよびペニシリウム・オーランティ オグリセウムを、1週間に亘り25℃で麦芽エキス寒天(MEA、Lab M、Lab37)の予め注がれた培養皿および寒天斜面上で増殖させた。ユーロチウム・レペンスを、1週間に亘り25℃でポテトデキストロース寒天(PDA、Oxoid、CM0139)の予め注がれた培養皿および寒天斜面上で増殖させた。ワレミア・セビおよびユーロチウム・ヘルバリオラムを、1週間に亘り25℃で麦芽汁寒天(WA、Oxoid、CM0247)の予め注がれた培養皿および寒天斜面上で増殖させた。
【0041】
試験の日に、滅菌蒸留水を加え、表面増殖を水中にこすり取ることによって、寒天プレートおよび斜面の表面からカビを収穫した。希釈液中の酵母およびカビのレベルを、血球計算板を使用して、顕微鏡によって決定した。
【0042】
酵母およびカビを希釈し、カクテルとして一緒に混合して、1グラム当たり約107のコロニー形成単位(cfu)のレベルを達成した。このカクテル0.1mlを培養液に添加することにより、105cfu/mlの最終レベルが達成されるであろう。
【0043】
培養液の調製
個々の培養液の調製は、以下のとおりであった:
Aw0.75での培養液
1リットルのMEBを1440gのグリセロールに加えた。pHを6.31に調節し、培養液を10mlの量で分配した。最初の研究は、高圧蒸気殺菌法の前にpHを6.0に調節した場合、結果としてのpHは5.9であったことを示した。したがって、高圧蒸気殺菌法後に6.0の所望のpHにできるだけ近づけるために、培養液を調節した。
【0044】
高圧蒸気殺菌法後、pHは6.1、Awは0.71と測定された。0.5mlの滅菌水の添加により、Awが0.75に上昇することが立証された。したがって、0.1mlの接種材料が接種されるので、培養液に0.4mlの滅菌蒸留水を加え、それゆえ、合計で0.5mlとなった。
【0045】
Aw0.85での培養液
1リットルのMEBを700gのグリセロールに加えた。pHを6.32に調節し、培養液を10mlの量で分配した。
【0046】
高圧蒸気殺菌法後、pHは6.31、Awは0.82と測定された。0.3mlの滅菌水の添加により、Awが0.85に上昇することが立証された。したがって、0.1mlの接種材料が接種されるので、培養液に0.2mlの滅菌蒸留水を加え、それゆえ、合計で0.3mlとなった。
【0047】
培養液に加えるために使用される抗カビカクテルの組成が表1に示されている。
【0048】
表2は、培養液モデル系中の抗カビカクテルの増殖結果を示しており、ここで、NGは、25℃での90日後の目に見える増殖がないことを示し、NTは「試験せず」の意味を有する。
【表1】

【表2】

【0049】
この試験結果は、0.75の水分活性および0.85の水分活性の両方について、それぞれの組成物の高い抗カビ効果を明らかに示している。
【0050】
ペットフード製品への予備試験を行った。ペットフード製品に適用した様々な抗カビカクテルの総濃度が表3から分かる。
【表3】

【0051】
安定性試験および給餌試験において、本発明による抗カビカクテルを適用したペットフード製品が、消化性にマイナスの影響がまったくなく、優れた貯蔵安定性並びに非常に良好なペットにとっての美味しさを示すことが実証された。
【0052】
さらに別の試験を行って、本発明の抗カビカクテルの相乗活性を立証した。これらの試験は、最小発育阻止濃度(MIC)の判定に基づく。
【0053】
試験について、ベースとしてYG培養液を含む細胞培養プレートを使用した。試験サンプルに、アスペルギルス・ニガーDSMZ737のコロイド懸濁液を接種し、30℃で3日間に亘り培養した。目標の胞子数は約105胞子/mlであった。最小発育阻止濃度(MIC)として、空洞中に菌糸体の目に見える増殖のない活性成分の濃度を定義した。その上、結果は、顕微鏡により、YGCプレート上の培地において確認した。
【0054】
異なる混合物を溶解させるために、以下の培地の内の1つを必要に応じて使用した:蒸留水;蒸留水+0.5%のTween80;蒸留水+0.4%のレシチン。
【0055】
第1群の試験において、シナモンアルデヒド、タイム油およびリンゴ酸またはカプリル酸の混合物を試験した。シナモンアルデヒドのみのMICは200ppm、タイム油のみのMICは400ppm、カプリル酸のみのMICは200ppmであると決定され、リンゴ酸のみについては、この物質は阻害特性を全く示さないので、MICはない。
【0056】
100ppmのシナモンアルデヒドと200ppmのタイム油の混合物、および50ppmのシナモンアルデヒドと300ppmのタイム油の混合物は、全く阻害を示さなかった。しかしながら、2250ppmのリンゴ酸および/または600ppmのカプリル酸を加えた場合、これの混合物は試験条件下で明白な阻害を示し、抗カビカクテルの相乗効果を示した。
【0057】
第2群の試験において、マヨラナ油、タイム油およびリンゴ酸またはカプリル酸の混合物を試験した。マヨラナ油のMICは400ppmと決定された。
【0058】
300ppmのタイム油と100ppmのマヨラナ油の混合物、各200ppmのタイム油とマヨラナ油の混合物、および100ppmのタイム油と300ppmのマヨラナ油の混合物は、全く阻害効果は示さなかった。2250ppmのリンゴ酸および/または600ppmのカプリル酸を加えた場合、これの混合物は試験条件下で明白な阻害を示し、よってこの場合、相乗効果が示された。
【0059】
先に説明および特許請求の範囲に開示された特徴、別々と、その任意の組合せの両方で、本発明を様々な形態で実現するための素材である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
唯一の抗カビ剤としての(a)群からの少なくとも1種類の化合物および(b)群からの少なくとも1種類の化合物を含む、カビおよび酵母による腐敗を防ぐための組成物:
(a) カプリル酸、桂皮酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、酒石酸およびフマル酸、並びにそれらの塩からなる群より選択される有機酸;
(b) 植物または果実抽出物、植物または果実抽出物の油相、およびそのような抽出物またはその油相に由来する単一物質。
【請求項2】
(b)群からの前記植物または果実抽出物が、シナモン抽出物、タイム抽出物、オレガノ抽出物、マジョラム抽出物、レモングラス抽出物、カッシア抽出物、ゼラニウム抽出物、グレープフルーツ種子抽出物、クランベリー抽出物およびビルベリー抽出物から選択されることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(b)群からの前記油相が、シナモン油、レモングラス油、タイム油、レモンミルラ油、オレガノ油、ティーツリー油および丁子油からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項4】
(b)群からの前記単一物質が、シナモンアルデヒド、バニリンおよびそれらの機能的に同等な誘導体からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項5】
(a)群からの前記有機酸が、カプリル酸、桂皮酸、プロピオン酸またはそれらの1種類以上の塩であることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
(a)群からの前記成分および(b)群からの前記成分が、20:80から98.5:1.5の質量比で存在することを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
食品または飼料をカビおよび酵母の増殖から保護するための、唯一の抗カビ剤としての(a’)群の少なくとも1種類の化合物および請求項1から4いずれか1項に定義された(b)群の少なくとも1種類の化合物、または請求項1から4いずれか1項に定義された(b)群からの少なくとも2種類の化合物の組合せを含む組成物の使用であって、(a’)群が、必要に応じてヒドロキシまたはオキソ置換された、3から10の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状の一価または多価有機酸を含むものである使用。
【請求項8】
ペットフード製品、人の食品、菓子製品におけるカビおよび酵母の増殖からの保護のため、またはそのような目的のための食品または飼料のパッケージの一部としての請求項7記載の使用。
【請求項9】
(a’)群からの前記有機酸が、カプリル酸、桂皮酸、レブリン酸、リンゴ酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、酒石酸、アスコルビン酸、フマル酸、クエン酸、およびそれらの塩から選択されることを特徴とする請求項7または8記載の使用。
【請求項10】
(a’)群からの前記成分および(b)群からの前記成分が、20:80から98.5:1.5の質量比で存在することを特徴とする請求項7から9いずれか1項記載の使用。
【請求項11】
食品または飼料の乾燥質量で0.01%から2.5%の含有量で、請求項1から6いずれか1項記載の、または請求項7から10いずれか1項に定義された組成物を含む食品または飼料。
【請求項12】
ペットフード製品であることを特徴とする請求項11記載の食品。
【請求項13】
10から40質量%の含水率および0.60から0.90の範囲の水分活性を有することを特徴とする請求項12記載のペットフード製品。
【請求項14】
0.65から0.85の水分活性を有することを特徴とする請求項13記載のペットフード製品。

【公表番号】特表2013−503911(P2013−503911A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528255(P2012−528255)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005415
【国際公開番号】WO2011/029554
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(390037914)マース インコーポレーテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【Fターム(参考)】