説明

カメラ用ズームユニット及びカメラ

【課題】 解決しようとする問題点は、ズームユニットにはアクチュエーターを少なくとも2つ必要とするため、ズームカメラの小型化が難しく、コストも高くなってしまったという点である。
【解決手段】 カメラ用ズームユニットにおいて、倍率を変えるレンズ群と焦点位置調整用のレンズ群とを備え、1つのアクチュエーターで該倍率を変えるレンズ群と該焦点位置調整用のレンズ群とを同時に動かすと共に、液晶レンズもしくは液体レンズを設け、焦点位置を液晶レンズもしくは液体レンズで微調整した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラモジュール及びカメラに関し、特にズーム機能を持つカメラモジュールの小型化技術に関する。

【背景技術】
【0002】
カメラのズームを行うには倍率を変えるレンズ群と焦点を調節するためのレンズ群の最低2つのレンズ群を動かさなければならない。
また通常、無限遠を撮影する場合と近距離を撮影する場合では焦点の位置が異なるため、倍率変更用レンズ群と焦点調整用レンズ群とを独立に動かす必要がある。
【0003】
図3は被写体への距離とレンズ群の位置を説明する図である。
図3(a)はズーム倍率2倍で被写体が無限遠にある時、図3(b)はズーム倍率が同じく2倍で被写体が30cmの距離にある時の、固定レンズ群10,倍率変動用レンズ群12,焦点位置を調整する合焦用レンズ群14と受光IC16との位置関係を示している。なお18は筐体を示している。
図3(a)、(b)に示すように、同じ倍率でも焦点位置を受光IC16の受光部に合わせるには、被写体の位置によって合焦用レンズの位置をaからbに移動させる必要がある。
なお以下の図において、同様の部材には同様の番号を付している。
【0004】
図4は倍率を変えた時の各レンズ群の位置を示した図である。
図4において、22は倍率を1倍、2倍、3倍としたときの固定レンズ群10の位置、24は倍率変動用レンズ群12の位置、26,28は合焦用レンズ群14の位置を示したものである。倍率を変えた時倍率変動用レンズ群12の位置はレンズ位置24に示すように一義的に決まるが、焦点を受光IC16の受光部の位置20に合わせるためには合焦用レンズ群14の位置は被写体までの距離によって変動してしまう。例えば被写体が無限遠にある場合は合焦用レンズ群14は28に示した位置を取る必要があるし、被写体が10cmの距離にある場合は合焦用レンズ群14は26に示した位置を取る必要がある。
この結果ズーム機能を持つズームユニットとしては、倍率を変えるレンズ群の位置を動かすアクチュエーターと焦点位置を調節するレンズ群の位置を動かすアクチュエーターとの2つのアクチュエーターが必要であった。
【0005】
図5は従来のズームユニットを示す概略図である。
図5において、固定レンズ群10,倍率変動用レンズ群12,合焦用レンズ群14と受光IC16とがレンズ鏡筒18の光軸L上に置かれており、倍率変動用レンズ群12を固定している部材30が第1のアクチュエータ34によって、合焦用レンズ群14を固定している部材32が第2のアクチュエータ36によって動かされ、ズームユニットとしての機能を果たしていた。
【0006】
アクチュエーターに関しては、高速に焦点を合わせる目的で2つのアクチュエーターを使うという提案がある。
この内容は、粗調用の第1のアクチュエーターと、微調用の第2のアクチュエーターと、合焦状態を判定する合焦状態判定手段とを備え、前記合焦状態判定手段にて被合焦部材が合焦位置を通過した事を判定されるまでの期間、前記合焦位置の方向へ前記第1のアクチュエーターによる駆動により前記被合焦部材を素早く移動させ、合焦位置を通過した事が判定されることにより前記第1のアクチュエーターによる駆動を停止すると共に該第1のアクチュエーターによる駆動方向とは逆方向へ、前記第2のアクチュエーターによる駆動により、前記被合焦部材をゆっくり移動させ、その後は前記合焦状態判定手段の出力に基づいて前記第2のアクチュエーターの駆動方向とその駆動終了を決定するというものである(例えば特許文献1参照)。
【0007】
この提案には合焦レンズ用のアクチュエーターに関する記載しかないが、ズーム機能のためには倍率変動用レンズ群の為のアクチュエーターも必要であり、とすると少なくとも3つのアクチュエーターを必要とすることになってしまう。
少なくとも3つのアクチュエーターを使うことになればズームユニットの大型化は避けられずかつコストが大幅に上昇してしまうという問題があった。
【0008】
また、ビューファインダー系と撮像系のピント合わせレンズ群を共通の1つのアクチュエーターで移動させ、ビューファインダー系と撮像系の倍率調整用レンズ群を共通の1つのアクチュエーターで移動させるという提案もある(例えば特許文献2参照)。
この提案によればビューファインダー系と撮像系の双方を有するカメラにとってはアクチュエーターを減らすことが出来有益であるが、ズームユニットの小型化という観点から見るとビューファインダー系と撮像系の2つのレンズ群を設けることは考えられず、異なる分野の問題である。
また、この提案にもあるようにアクチュエーターの数は減少させたいが、ピント合わせ用と倍率調整用には別々のアクチュエーターが必要というのが従来の技術であった。
【0009】
このようにズームユニットはアクチュエーターを少なくとも2つ必要とするため、ズームカメラの小型化が難しく、コストも高くなってしまうという問題があった。
またアクチュエーターは精密な動き、位置関係が要求されるため組み立て性が問題となっていた。
【0010】
一方近来注目すべき技術が開発されている。
それは液晶レンズ、液体レンズと呼ばれるもので、平板状基板同士を対向配設してなる液晶セルを利用し、これにレンズ機能をもたせた液晶レンズが提案されている(例えば特許文献3参照)。
また、焦点距離を高速で調節可能な、入射光の透過率の高い回折型液晶レンズ及び多焦点回折型液晶レンズが提案されている(例えば特許文献4参照)。
さらに、ロイヤル フィリップスエレクトロニクス社からは2004/3/3付けで小型で焦点距離の変更が可能な液体レンズが発表されている。
本発明はこの焦点距離を高速で調節可能な液晶レンズもしくは液体レンズを利用してズームユニットの小型化を計ろうとするものである。
【0011】
【特許文献1】特開2003−241074
【特許文献2】特開平6−300958
【特許文献3】特開平6−130351
【特許文献4】特開平2002−357804 NHK
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする問題点は、ズームユニットにはアクチュエーターを少なくとも2つ必要とするため、ズームカメラの小型化が難しく、コストも高くなってしまったという点である。
そこで本発明の目的は小型で安価なズームユニット及びカメラを実現することである。

【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のカメラ用ズームユニットは、倍率を変えるレンズ群と焦点位置調整用のレンズ群とを備え、1つのアクチュエーターで該倍率を変えるレンズ群と該焦点位置調整用のレンズ群を同時に動かすと共に、液晶レンズもしくは液体レンズを設け、焦点位置を該液晶レンズもしくは液体レンズで微調整することを特徴とする。
【0014】
また、本発明のカメラは、上記ズームユニットを備えたことを特徴とする。

【発明の効果】
【0015】
1つのアクチュエーターでカメラ用ズームユニット作成することが可能となり、小型化、安価化、組み立て性の改善が可能となった。

【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
カメラ用ズームユニットにおいて、倍率を変えるレンズ群と焦点位置調整用のレンズ群とを備え、1つのアクチュエーターで該倍率を変えるレンズ群と該焦点位置調整用のレンズ群を同時に動かすと共に、液晶レンズもしくは液体レンズを設け、焦点位置を該液晶レンズもしくは液体レンズで微調整した。

【実施例】
【0017】
図1は本発明による各レンズ群の位置を倍率毎に示した図である。
図1においては固定レンズ群10、倍率変動用レンズ群12、合焦用レンズ群14に加へ、固定レンズ群10の前方に液晶レンズもしくは液体レンズ40を設けている。なおこの液晶レンズもしくは液体レンズ40を置く位置は固定レンズ群10の前方に限定されるものではなく各レンズ群10,12,14の中間、受光部の位置20の前面等いろいろな選択肢がある。
図1において、52は倍率を1倍、2倍、3倍としたときの固定レンズ群10の位置、54は倍率変動用レンズ群12の位置を示したもので、これらは図4の関係とほぼ同一である。
50は液晶レンズもしくは液体レンズ40の位置、56は合焦用レンズ群14の位置を示したもので、本発明においては倍率を変えた時も液晶レンズもしくは液体レンズ40の位置は一定とし、合焦用レンズ群14の位置は一義的に決めている。合焦用レンズ群14の位置を一義的に決めた場合は被写体との距離によって焦点を結ぶ位置が若干異なってしまう。本発明のズームユニットにおいてはこの若干の位置の差を合焦用レンズ群14を駆動させることなく、液晶レンズもしくは液体レンズを使用して焦点位置をICの受光面に合わせている。
【0018】
液晶レンズもしくは液体レンズが調整できる焦点位置の範囲は比較的小さい。しかし各倍率で、接写から無限遠までの焦点位置調整を行うくらいの調整は可能である。
そこで、大まかな焦点位置まで合焦用用レンズ群を利用して焦点位置を合わせ、微調整のみを液晶レンズで行う。その際に、倍率変動用レンズ群と合焦用群は1つのアクチュエーターで一定の比率を保つことにより、倍率を変えながら大まかな焦点位置を合わせつつ変化させる。このように一定の比率を保つことはカムを利用して行う。該比率はレンズの特性によって異なるが、カムによって該比率を保つことは従来技術で実現可能である。
【0019】
図2は本発明によるズームユニットを示す概略図である。
図2において、液晶レンズもしくは液体レンズ40,固定レンズ群10,倍率変動用レンズ群12,合焦用レンズ群14と受光IC16とがレンズ鏡筒18の光軸L上に置かれている。倍率変動用レンズ群12を固定している部材43と合焦用レンズ群14を固定している部材42はカム機構45によって位置関係が一定の比率に保たれた状態で1つのアクチュエータ44によって、倍率を変えながら大まかな焦点位置を合わせつつ、動かされる。この状態では1つの距離の被写体にしか焦点位置があっていないため液晶レンズもしくは液体レンズ駆動部46が液晶レンズもしくは液体レンズ40を高速に制御して焦点位置の微調整を行い、ズームユニットとしての機能を果たしている。
なお、受光IC16、液晶レンズもしくは液体レンズ駆動部46を鏡筒内に設けるか鏡筒の外部に設けるかは設計上の問題である。
【0020】
以上説明したように本発明のカメラ用ズームユニットにおいては、液晶レンズもしくは液体レンズを用いることにより、従来のズームユニットが2つ必要としていたアクチュエーターを1つに削減するという顕著な効果を生じている。
アクチュエーター1つでズームユニットが構成可能となったため、ズームユニットの小型化、安価化、さらには組み立て性の改善が可能となった。
また、上記ズームユニットを用いたカメラも小型化、安価化が可能となった。

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による各レンズ群の位置を倍率毎に示した図である。
【図2】本発明によるズームユニットを示す概略図である。
【図3】被写体への距離とレンズ群の位置を説明する図である。
【図4】倍率を変えた時の各レンズ群の位置を示した図である。
【図5】従来のズームユニットを示す概略図である。
【符号の説明】
【0022】
10 固定レンズ群
12 倍率変動用レンズ群
14 焦点位置調整用(合焦用)のレンズ群
44 アクチュエーター
40 液晶レンズもしくは液体レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ用ズームユニットにおいて、
倍率を変えるレンズ群と焦点位置調整用のレンズ群とを備え、1つのアクチュエーターで該倍率を変えるレンズ群と該焦点位置調整用のレンズ群を同時に動かすと共に、
液晶レンズもしくは液体レンズを設け、焦点位置を該液晶レンズもしくは液体レンズで微調整することを特徴とするカメラ用ズームユニット。
【請求項2】
請求項1記載のズームユニットを備えたカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−201639(P2006−201639A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14920(P2005−14920)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】