説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】二つの電磁アクチュエータのボビン部を一つの固定子枠に一体成形することにより、地板に対する取付け作業の容易性と、装置のコンパクト化を可能にしたカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】シャッタ羽根12を回転させる回転子3と、絞り羽根11を回転させる回転子4は、各々、回転子取付軸1d,1eに回転可能に取り付けられている。固定子枠5は、中間構成体部5aと、その両側に形成されたボビン部5b,5cと、さらにその両側に形成された板状部5d,5eとからなっていて、板状部5d,5eの孔5d−1,5e−1を固定子枠取付軸1b,1cに嵌合させ、熱カシメによって地板1に固定されている。また、ヨーク8,9は2部品からなっていて、それらを、中間構成体部5aの取付孔5a−2の中で接触させ、各々、U字形となるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、別々の電磁アクチュエータによって2種類の羽根を個別に往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ用の羽根駆動装置としては、レンズシャッタ装置,フォーカルプレンシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置が知られているが、それらのうち、レンズシャッタ装置(以下、単に、シャッタ装置という),絞り装置,フィルタ装置の場合には、単独でユニット化されることもあるが、それらのうちの二つを一つのユニットとして構成されることがある。そして、そのようにユニット化した場合には、二つの装置の羽根は、別々の電磁アクチュエータによって往復作動させられるのが普通であるが、それらの羽根は、同じ羽根室に配置されることもあるし、別々の羽根室に配置されることもある。
【0003】
また、電磁アクチュエータの構成としては、種々のタイプのものが知られているが、装置全体を偏平に構成するのに有利なものとして、下記の特許文献1に記載されている電磁アクチュエータが知られている。この電磁アクチュエータは、ヨークが、基部と二つの脚部とで略U字形に形成されていて、それらの脚部の先端を磁極部として、永久磁石を有する回転子の周面に対向させるように構成したものであるが、従来のように、一方の脚部を、コイルを巻回した単独のボビン部材に貫通させるのではなく、地板との間にアクチュエータ室を構成するための固定子枠にボビン部を一体成形し、一方の脚部を、そのボビン部に貫通させた状態にして、固定子枠と一緒に地板に取り付けられるようにしたことが特徴的な構成になっている。本発明は、このような構成をした二つの電磁アクチュエータによって、種類の異なる羽根を別々に往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置に関するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2004−32873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されている電磁アクチュエータは、固定子枠を地板に取り付けるに際し、ボビン部の両側に形成されている二つの板状部を、二つのネジによって固定している。また、最近では、ネジを用いず、熱カシメといわれている方法で固定するのが一般的になってきているが、この場合でも、二つの板状部で地板に取り付けている。そのため、上記したように、地板に対して二つの電磁アクチュエータを取り付ける場合には、二つの固定子枠が必要になるし、地板に対して4箇所での取付け作業が必要になるので、コスト面での改善が望まれている。また、二つの電磁アクチュエータを近接させて配置したい場合、地板への取付け箇所が問題になって、固定子枠の形状や配置に苦慮しなければならないという問題点もある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、二つの電磁アクチュエータによって2種類の羽根を個別に往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置において、二つの電磁アクチュエータのボビン部を一つの固定子枠に一体成形すると共に、地板に対する取付け箇所を2箇所にしたことによって、二つの電磁アクチュエータの低コスト化とコンパクト化を可能にしたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、各々が撮影光路用の開口部を有していて相互に固定されており両者の間に構成した少なくとも一つの羽根室に第1羽根と第2羽根とを配置している地板及びカバー板と、永久磁石を有していて前記地板の羽根室外の面に回転可能に取り付けられており前記羽根室内に貫通させた出力ピンによって前記第1羽根を往復作動させる第1回転子と、永久磁石を有していて前記地板の羽根室外の面に回転可能に取り付けられており前記羽根室内に貫通させた出力ピンによって前記第2羽根を往復作動させる第2回転子と、中間構成体部を間にした一方の側に第1コイルを巻回した筒形状の第1ボビン部を有し他方の側に第2コイルを巻回した筒形状の第2ボビン部を有していてさらに該第1ボビン部の先には第1板状部を有し該第2ボビン部の先には第2板状部を有しており該二つの板状部で前記地板の羽根室外の面に固定されている固定子枠と、基部と二つの脚部とからなる略U字形をしていて一方の脚部を前記第1ボビン部に貫通させており二つの脚部の先端を磁極部とし前記第1板状部側で前記第1回転子の周面に対向させている第1ヨークと、基部と二つの脚部とからなる略U字形をしていて一方の脚部を前記第2ボビン部に貫通させており二つの脚部の先端を磁極部とし前記第2板状部側で前記第2回転子の周面に対向させている第2ヨークと、を備えているようにする。
【0008】
その場合、前記第1ボビン部と前記第2ボビン部とは、両者の筒形状の中心線が略直線になるように形成されており、前記第1ヨークと前記第2ヨークとは、いずれも、前記一方の脚部だけと、前記基部及び他方の脚部との2部品に分離されていて、前記一方の脚部と前記基部とは、前記中間構成体部の内部において、接触状態を維持されているようにすると、装置全体がコンパクトになる。
【0009】
また、前記第1ボビン部と前記第2ボビン部とは、両者の筒形状の中心線が略平行になるように形成されており、前記第1ヨークは、前記一方の脚部を、前記中間構成体部側から前記第1ボビン部に貫通させ、前記第2ヨークは、前記一方の脚部を、前記中間構成体部側から前記第2ボビン部に貫通させているようにしてもよい。
【0010】
また、前記中間構成体部と前記二つの板状部には、各々一つずつの端子ピンが立設されていて、前記第1コイルの両端は、前記第1板状部に立設されている端子ピンと前記中間構成体部に立設されている端子ピンに巻き付けられ、前記第2コイルの両端は、前記第2板状部に立設されている端子ピンと前記中間構成体部に立設されている前記端子ピンに巻き付けられるようにすると、端子ピンの数を従来より減らすことが出来るし、電気的に接続されるフレキシブルプリント配線板も簡単なものになる。
【0011】
更に、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、前記第1羽根が、1枚のシャッタ羽根であって、前記第2羽根が、1枚の絞り羽根又は1枚のフィルタ羽根であるようにしてもよいし、前記第1羽根が、同時に相反する方向へ往復作動させられる2枚のシャッタ羽根であって、前記第2羽根が、1枚の絞り羽根又は1枚のフィルタ羽根であるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、二つの電磁アクチュエータによって2種類の羽根を個別に往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置において、二つの電磁アクチュエータのボビン部を一つの固定子枠に一体成形するようにして、地板に対する取付け箇所を2箇所にしたので、地板に対する取付け作業が容易になると共に、二つの電磁アクチュエータを近接して配置するのに有利になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明する。本発明のカメラ用羽根駆動装置は、上記したように、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置のうちの二つの装置をユニット化したカメラ用羽根駆動装置であるが、各実施例は、1枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置と、1枚の絞り羽根を備えた絞り装置とを一つのユニットとして構成したものである。そのため、その他の態様については、実施例の説明中で適宜説明することにする。尚、図面は、図1〜図5が、実施例1を説明するためのものであり、図6〜図8が、実施例2を説明するためのものである。
【実施例1】
【0014】
本実施例は、上記したように、1枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置と、1枚の絞り羽根を備えた絞り装置とを一つのユニットとして構成したカメラ用羽根駆動装置である。そして、説明に用いる図面は、図1が、撮影待機状態を示した正面図であり、図2が、フレキシブルプリント配線板を取り付ける前の状態で示した正面図である。また、図3は、本実施例の分解斜視図である。更に、図4は、図1の背面図であり、図5は、撮影終了直後の状態を示した背面図である。尚、図4は、カバー板2の一部を破断して示してあり、図5は、カバー板2を取り付ける前の状態で示してある。
【0015】
そこで先ず、本実施例の構成を主に図3を用いて説明する。地板1は、合成樹脂製であって平面外形形状は長方形であり、光軸を中心にして円形をした撮影光路用の開口部1aを有している。地板1の背面側には、地板1よりも薄く且つ平面外形形状の略同じカバー板2が、後述する手段によって取り付けられ、両者の間に羽根室を構成している。そして、このカバー板2にも、光軸を中心にして円形をした撮影光路用の開口部2aが形成されているが、上記の開口部1aの方が直径が小さいので、本実施例の場合には、地板1の開口部1aが、露光開口を規制している。
【0016】
羽根室とは反対側になる地板1の面には、一方の短辺側に寄せて二つの電磁アクチュエータが取り付けられている。先ず、図3に示されているように、地板1には、二つの固定子枠取付軸1b,1cと、二つの回転子取付軸1d,1eと、一つのFPC取付軸1fとが立設されている。そして、回転子取付軸1d,1eには、回転子3,4が回転可能に取り付けられている。
【0017】
回転子3,4は、全く同じ構成をしており、円筒形をした永久磁石製の本体部3a,4aと、それらの本体部3a,4aに一体成形されていて径方向に張り出している合成樹脂製の腕部3b,4bと、それらの腕部3b,4bの先端に形成された出力ピン3c,4cとからなっている。そして、本体部3a,4aは、径方向へ2極に着磁されており、出力ピン3c,4cを、図3では分かりにくいので図5に明記してあるように、地板1に形成された円弧状の逃げ孔1g,1hから羽根室内に挿入している。尚、本実施例では、腕部3b,4bを合成樹脂製にしているが、本体部3a,4aと共に永久磁石製とすることも知られている。
【0018】
固定子枠5は、合成樹脂製であって、中間構成体部5aの両側には筒形状をしたボビン部5b,5cが、それらの中心線が略一つの直線上にあるように形成されており、さらにその両側に板状部5d,5eが形成されている。そして、中間構成体部5aと二つの板状部5d,5eには端子ピン5a−1,5d−1,5e−1が立設されていて、中間構成体部5aには、図3において、右下方から左上方に貫通した取付孔5a−2が形成されているが、この取付孔5a−2の中では、地板1に設けられた間座部1xによって、後述するヨーク8,9が接触し合わないようになっている。また、二つの板状部5d,5eには、それぞれ取付孔5d−2,5e−2が形成されている。
【0019】
ボビン部5bにはコイル6か巻回されていて、一端を端子ピン5a−1に巻き付け、他端を端子ピン5d−1に巻き付けており、また、ボビン部5cにはコイル7か巻回されていて、一端を端子ピン5a−1に巻き付け、他端を端子ピン5e−1に巻き付けている。即ち、端子ピン5a−1は、両方のコイル6,7の端子ピンを兼ねていることになる。
【0020】
本実施例のヨーク8,9は、いずれも2部品からなっている。先ず、ヨーク8は、基部8aと脚部8bとからなる第1部品と、脚部8cだけの第2部品とからなっていて、図3の左上方から、取付孔5a−2に基部8aを挿入し、また、板状部5dの裏側からボビン部5bに脚部8cを挿入して、取付孔5a−2内で、基部8aの挿入端と脚部8cの挿入端とを重ね合わせることによって、略U字形をしたヨーク8が構成されるようになっている。
【0021】
他方、ヨーク9は、基部9aと脚部9bとからなる第1部品と、脚部9cだけの第2部品とからなっていて、図3の左上方から、取付孔5a−2に基部9aを挿入し、また、板状部5eの裏側からボビン部5cに脚部9cを挿入して、取付孔5a−2内で、基部9aの挿入端と脚部9cの挿入端とを重ね合わせることによって、略U字形をしたヨーク9が構成されるようになっている。
【0022】
このようにして、コイル6,7を巻回し、ヨーク8,9を取り付けた固定子枠5は、取付孔5d−2,5e−2を、固定子枠取付軸1b,1cに嵌合させた後、熱カシメといわれている加工方法によって地板1に固定されている。即ち、取付孔5d−2,5e−2を、固定子枠取付軸1b,1cに嵌合させた後、取付孔5d−2,5e−2から突き出ている固定子枠取付軸1b,1cの先端を熱溶解させ、図1に示されているようなフランジ状に変形させることによって、固定されるようにしている。
【0023】
そして、固定子枠5の地板1への取付状態においては、板状部5d,5eが、回転子取付軸1d,1eからの回転子3,4の抜け止めの役目をしており、ヨーク8は、二つの脚部8b,8cの先端を磁極部として回転子3の本体部3aの周面に対向させ、ヨーク9は、二つの脚部9b,9cの先端を磁極部として回転子4の本体部4aの周面に対向させているようになる。
【0024】
尚、本実施例では、固定子枠5を、熱カシメで固定子枠取付軸1b,1cに固定しているが、このような固定方法に限定されることなく、特許文献1に記載されているように、二つのネジによって固定するようにしても差し支えない。いずれにしても、本実施例では、二つの電磁アクチュエータを備えているにもかかわらず、一つの固定子枠5だけで済んでおり、固定箇所も2箇所でよいので、コスト面で有利である上に、二つの電磁アクチュエータがコンパクトにまとまっているという特徴がある。そして、このことは、下記の実施例2の場合も同じである。
【0025】
このようにして固定子枠5が地板1に取り付けられた後、フレキシブルプリント配線板10が取り付けられる。本実施例のフレキシブルプリント配線板10は、ランドに形成された三つの孔10a,10b,10cと、取付孔10dとを有しており、それらの三つの孔10a,10b,10cを上記の三つの端子ピン5a−1,5d−1,5e−1に嵌合させ、半田付けしている。また、取付孔10dを、地板1のFPC取付軸1fに嵌合させた後、熱カシメによって抜け方向へ移動しないようにされており、それによって、フレキシブルプリント配線板10の接続端子側を持っても、半田付け箇所に無理な力が掛からないようにしている。このように、本実施例では、端子ピンが三つになっているため、フレキシブルプリント配線板10も簡単なものになっており、半田付け作業も簡単になるという利点があるが、このことは、下記の実施例2の場合も同じである。
【0026】
図4及び図5に示されているように、地板1の羽根室側の面には、二つの羽根取付軸1i,1jと、一つの位置決めピン1kと、四つのストッパ1m,1n,1p,1qとが立設されている。また、地板1の左右の端よりも内側に、カバー板2の受け部1r,1sが、上下に長く、しかも羽根室側の面より高く形成されていて、それらの受け部1r,1sには合計四つのカバー板取付軸1t,1u,1v,1wが立設されている。
【0027】
そして、カバー板2は、図3に示されている孔2bを、位置決めピン1kに嵌合させながら、四隅に設けられている取付孔をカバー板取付軸1t,1u,1v,1wに嵌合させ、その後、熱カシメを行なうことによって、カバー板取付軸1t,1u,1v,1wに取り付けられているが、図3に示されているカバー板2には、それらの四つの取付孔のうち、カバー板取付軸1t,1u,1wに嵌合させる三つの取付孔2c,2d,2eが示されている。
【0028】
また、上記の二つの羽根取付軸1i,1jは、それらの先端を、カバー板2に形成された孔に挿入しているが、図3に示されているカバー板2には、羽根取付軸1jに嵌合させる孔2fが示されている。更に、上記の四つのストッパ1m,1n,1p,1qのうち、二つのストッパ1p,1qは、カバー板2に形成された孔に挿入しているが、図3に示されているカバー板2には、それらの孔2g,2hが示されている。
【0029】
地板1とカバー板2との間に構成されている羽根室には、1枚の絞り羽根11と1枚のシャッタ羽根12とが、常にそれらの一部が重なっているようにして配置されている。そして、それらのうち、地板1側に配置されている絞り羽根11は、長孔11aと、開口部1aの直径よりも小さな絞り開口用の開口部11bとを有していて、上記の羽根取付軸1iに回転可能に取り付けられている。また、上記の回転子4の出力ピン4cは、絞り羽根11の長孔11aに嵌合していて、先端を、上記の逃げ孔1hと同じ形状に形成されたカバー板2の逃げ孔2i(図4参照)に挿入している。
【0030】
また、羽根室内においてカバー板2側に配置されているシャッタ羽根12は、長孔12aを有していて、上記の羽根取付軸1jに回転可能に取り付けられているが、図3においては、羽根取付軸1jに嵌合させる孔12bも示されている。そして、上記の回転子3の出力ピン3cは、シャッタ羽根12の長孔12aに嵌合していて、先端を、上記の逃げ孔1gと同じ形状に形成されたカバー板2の逃げ孔2j(図3,図4参照)に挿入している。
【0031】
次に、本実施例の作動を説明する。図4は、撮影待機状態を示したものである。この状態では、カメラの電源スイッチはオンになっているが、コイル6,7には通電されていない。しかしながら、周知のように、このときには、回転子3,4の本体部3a,4aと、ヨーク8,9の磁極部との間に、本体部3a,4aの磁力が働いていて、回転子3は、反時計方向へ回転するように付勢され、回転子4は、時計方向へ回転するように付勢されている。
【0032】
そのため、シャッタ羽根12は、時計方向へ回転するように付勢され、絞り羽根11は、反時計方向へ回転するように付勢されているが、夫々、ストッパ1n,1mによってそれらの回転を阻止されていることによって、この状態が維持されている。従って、この状態では、図示していない固体撮像素子に被写体光が当たっており、撮影者は、モニターによって被写体像を観察することが可能になっている。
【0033】
撮影に際してレリーズボタンが押されると、その初期段階において、先ず、測光回路によって被写体光が測定され、その結果により、被写体光を減光しないで撮影すると判断された場合には、シャッタ羽根12だけを作動させるが、被写体光を減光して撮影すると判断された場合には、最初に、絞り羽根11を作動させておいてから、シャッタ羽根12を作動させることになる。そのため、後者の場合の作動を理解することができれば、必然的に前者の作動を理解することが可能になるので、以下においては、後者の場合についての作動だけを説明する。
【0034】
測光回路の測定結果によって、被写体光を減光して撮影すると判断された場合は、最初に、コイル7に対して電流が供給される。それにより、回転子4は反時計方向へ回転させられ、出力ピン4cによって絞り羽根11を時計方向へ回転させる。そして、絞り羽根11は、その開口部11bの中心が開口部1aの中心位置までくると、ストッパ1pに当接して停止させられる。
【0035】
その状態になると、固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出されて、撮影が開始され、新たな電荷が固体撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、コイル6にも電流が供給される。そのため、回転子3が時計方向へ回転させられ、その出力ピン3cによって、シャッタ羽根12を反時計方向へ回転させ、開口部1aの閉じ作動を行なわせる。その後、開口部1aを完全に閉鎖すると、シャッタ羽根12は、その直後に、ストッパ1qに当接して停止する。図5は、そのときの状態を示したものであり、この状態で、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送される。
【0036】
このようにして、撮影が終了すると、今度はコイル6,7に対して、先ほどとは逆方向の電流が供給されるため、図5の状態から、回転子3は反時計方向へ回転させられ、回転子4は時計方向へ回転させられる。そのため、シャッタ羽根12は、出力ピン3cによって時計方向へ回転させられ、絞り羽根11は、出力ピン4cによって反時計方向へ回転させられ、共に開口部1aから退いていく。そして、開口部1aを全開にすると、シャッタ羽根12はストッパ1nに当接して停止し、絞り羽根11はストッパ1mに当接して停止する。その後、コイル6,7に対する通電を断つと、図4に示された撮影待機状態に復帰したことになる。
【0037】
尚、本実施例では、絞り羽根11とシャッタ羽根12とを、地板1とカバー板2との間に構成されている一つの羽根室に配置しているが、本発明は、周知のように、地板1とカバー板2との間を中間板で仕切って二つの羽根室を構成し、一方の羽根室に絞り羽根11を配置し、他方の羽根室にシャッタ羽根12を配置するようにしても構わない。また、本実施例においては、1枚のシャッタ羽根12を備えているが、周知のように、一つの電磁アクチュエータによって、同時に相反する方向へ回転させられる2枚のシャッタ羽根を備えるようにしてもよい。
【0038】
また、本実施例のカメラ用羽根駆動装置は、シャッタ装置と絞り装置とをユニット化したものであるが、本実施例の絞り羽根11を周知のフィルタ羽根(例えば、本実施例の絞り羽根11に、開口部11bを覆うようにしてNDフィルタシートを取り付けたものなど)に代えれば、シャッタ羽根とフィルタ装置とをユニット化したカメラ用羽根駆動装置になる。また、そのような構成のフィルタ装置と、本実施例のような絞り装置とをユニット化することも可能である。このほか、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、絞り開口(本実施例における開口部11b)の大きさの異なる絞り羽根を備えた二つの絞り装置をユニット化してもよいし、NDフィルタシートの濃度の異なる二つのフィルタ装置をユニット化してもよい。
【0039】
更に、本実施例においては、地板1の開口部1aが露光開口を規制するようにしているが、例えば、特開2007−272022号公報などで周知のように、地板の開口部を大きくし、地板の羽根室側の面に密着して配置された薄い口径規制板(又は口径板)の開口部で、露光開口を規制するようにしたカメラ用羽根駆動装置が知られている。本発明は、そのような構成のカメラ用羽根駆動装置にも適用することが可能である。そして、ここで述べたすべてのことは、下記の実施例2の場合にも言えることである。
【実施例2】
【0040】
次に、図6〜図8を用いて実施例2を説明する。本実施例も、上記の実施例1の場合と同様に、1枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置と、1枚の絞り羽根を備えた絞り装置とを一つのユニットとして構成したカメラ用羽根駆動装置である。そして、図6は、撮影待機状態を示した正面図であり、図7は、フレキシブルプリント配線板を取り付ける前の状態を図6と同様にして示した正面図である。また、図8は、図6の背面図であるが、羽根室内を明示するために、上記の図5の場合と同様に、実施例1におけるカバー板2に相当するカバー板を取り付けていない状態で示してある。
【0041】
本実施例が、上記の実施例1と異なるのは、主に、実施例1における固定子枠5とヨーク8,9の構成であり、それに伴って、実施例1における地板1,カバー板2,シャッタ羽根12の形状が部分的に異なっているだけである。そのため、図面においては、固定子枠とヨークには、実施例1の場合と異なる符合を用いているが、その他の部材と部位には、同じ符号を用いている。そして、以下の構成説明では、実施例1の構成との相違点だけを説明することにする。
【0042】
図6及び図7から分かるように、本実施例の地板1は、平面外形形状が長方形ではなく、実施例1の場合よりも、左下方部が左方に突き出た形状をしている。後述するように、それに伴って、図示していないカバー板の形状も異なり、地板1との間に構成される羽根室のスペースも広くなっている。そして、本実施例の場合も、地板1の開口部1aが露光開口を規制している。
【0043】
図7から分かるように、本実施例における固定子枠取付軸1bは、実施例1の場合よりも大きく左に寄って立設されており、固定子枠取付軸1cは、実施例1の場合よりも若干右へ寄って立設されている。また、実施例1におけるFPC取付軸1fは立設されていない。
【0044】
図8から分かるように、二つの回転子取付軸1d,1eは、回転子取付軸1eの立設位置は同じであるが、回転子取付軸1dの方は、右方領域に移動している。また、回転子3,4自体の構成は実施例1の場合と同じであるが、回転子取付軸1dの位置が移動したことによって、地板1に立設されている羽根取付軸1jの位置と、地板1に形成されている逃げ孔1gの形成位置も右方へ移動している。それに伴い、受け部1sの形状が異なり、カバー板取付軸1wの位置も移動されているので、図示していないカバー板の形状も異なっていることになる。また、シャッタ羽根12の形状も長くなり、ストッパ1n,1qの形状や立設位置も変っている。尚、実施例1における位置決めピン1kは立設されていない。
【0045】
図7に示されているように、本実施例の固定子枠15は、中間構成体部15aと、その両側のボビン部15b,15cと、さらにその両側の板状部15d,15eとからなっている。しかしながら、本実施例のボビン部15b,15cは、それらの筒形状の中心線が、実施例1のように略同一直線上にあるように形成されておらず、平行になるように形成されている。そのため、本実施例の固定子枠15は、全体としてジグザグ状をしている。
【0046】
また、実施例1においては、中間構成体部5aに、取付孔5a−2が、図2における左右方向の貫通孔として形成されていたが、本実施例の中間構成体部15aには、そのような取付孔は形成されていない。そのため、図7では分からないが、ボビン部15bの中空部の上端は、中間構成体部15aの地板1側で開放状態になっており、部品単体では、図7の上方から目視できるようになっている。また、同様に、ボビン部15cの場合には、中空部を、図7の下方から目視できるようになっている。従って、本実施例のヨーク18,19は、いずれも、1部品で略U字形に製作されており、ヨーク18は、一方の脚部を、図7の上方からボビン部15bに挿入し、ヨーク19も、一方の脚部を、図7の下方からボビン部15cに挿入している。
【0047】
また、本実施例の場合にも、中間構成体部15aに端子ピン15a−1が立設され、二つの板状部15d,15eにも、端子ピン15d−1,15e−1が立設されている。そして、ボビン部15bにはコイル6が巻回されていて、一端を端子ピン15a−1に巻き付け、他端を端子ピン15d−1に巻き付けており、また、ボビン部15cにはコイル7か巻回されていて、一端を端子ピン15a−1に巻き付け、他端を端子ピン15e−1に巻き付けている。
【0048】
更に、本実施例のフレキシブルプリント配線板10は、固定子枠15の形状に合わせた形状をしており、実施例1の場合のように、ランドに形成された三つの孔10a,10b,10cを有しているものの、それらの形成位置は、端子ピン15a−1,15d−1,15e−1の形成位置に準じて異なっている。そして、本実施例の場合には、実施例1における取付孔10dを有していない代わりに、明示していないが、地板1の固定子枠取付軸1b,1cに対応するところに、夫々取付孔を有している。
【0049】
このようにして、コイル6,7を巻回し、ヨーク18,19を取り付けた本実施例の固定子枠15と、フレキシブルプリント配線板10は、次のようにして地板1に固定されている。先ず、板状部15d,15eに形成されている取付孔15d−2,15e−2を、固定子枠取付軸1b,1cに嵌合させる。次に、フレキシブルプリント配線板10に形成されている上記の取付孔を固定子枠取付軸1b,1cに嵌合させ、且つ孔10a,10b,10cを端子ピン15a−1,15d−1,15e−1に嵌合させておき、半田付けによって、コイル6,7をランドに接続する。そして最後に、固定子枠取付軸1b,1cの先端を熱カシメし、固定子枠15とフレキシブルプリント配線板10を地板1に固定する。
【0050】
以上のように、本実施例は、ヨーク18,19を、各々2部品で構成しなくてもよく、且つ固定子枠15への取り付けも簡単であるという特徴を有している。尚、本実施例の作動は、実施例1の作動に準じて行なわれるので、その説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】撮影待機状態を示した実施例1の正面図である。
【図2】フレキシブルプリント配線板を取り付ける前の状態を図1と同様にして示した正面図である。
【図3】実施例1の分解斜視図である。
【図4】図1の背面図である。
【図5】撮影終了直後の状態を示した背面図である。
【図6】撮影待機状態を図1と同様にして示した実施例2の正面図である。
【図7】フレキシブルプリント配線板を取り付ける前の状態を図1と同様にして示した正面図である。
【図8】図6の背面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 地板
1a,12a,11b 開口部
1b,1c 固定子枠取付軸
1d,1e 回転子取付軸
1f FPC取付軸
1g,1h,2i,2j 逃げ孔
1i,1j 羽根取付軸
1k 位置決めピン
1m,1n,1おp,1q ストッパ
1r,1s 受け部
1t,1u,1v,1w カバー板取付軸
1x 間座部
2 カバー板
2b,2f,2g,2h,10a,10b,10c,12b 孔
2c,2d,2e,5a−2,5d−2,5e−2,10d,15d−2,15e−2 取付孔
3,4 回転子
3a,4a 本体部
3b,4b 腕部
3c,4c 出力ピン
5,15 固定子枠
5a,15a 中間構成体部
5a−1,5d−1,5e−1,15a−1,15d−1,15e−1 端子ピン
5b,5c,15b,15c ボビン部
5d,5e,15d,15e 板状部
6,7 コイル
8,9,18,19 ヨーク
8a,9a 基部
8b,8c,9b,9c 脚部
10 フレキシブルプリント配線板
11 絞り羽根
11a,12a 長孔
12 シャッタ羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が撮影光路用の開口部を有していて相互に固定されており両者の間に構成した少なくとも一つの羽根室に第1羽根と第2羽根とを配置している地板及びカバー板と、永久磁石を有していて前記地板の羽根室外の面に回転可能に取り付けられており前記羽根室内に貫通させた出力ピンによって前記第1羽根を往復作動させる第1回転子と、永久磁石を有していて前記地板の羽根室外の面に回転可能に取り付けられており前記羽根室内に貫通させた出力ピンによって前記第2羽根を往復作動させる第2回転子と、中間構成体部を間にした一方の側に第1コイルを巻回した筒形状の第1ボビン部を有し他方の側に第2コイルを巻回した筒形状の第2ボビン部を有していてさらに該第1ボビン部の先には第1板状部を有し該第2ボビン部の先には第2板状部を有しており該二つの板状部で前記地板の羽根室外の面に固定されている固定子枠と、基部と二つの脚部とからなる略U字形をしていて一方の脚部を前記第1ボビン部に貫通させており二つの脚部の先端を磁極部とし前記第1板状部側で前記第1回転子の周面に対向させている第1ヨークと、基部と二つの脚部とからなる略U字形をしていて一方の脚部を前記第2ボビン部に貫通させており二つの脚部の先端を磁極部とし前記第2板状部側で前記第2回転子の周面に対向させている第2ヨークと、を備えていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記第1ボビン部と前記第2ボビン部とは、両者の筒形状の中心線が略直線になるように形成されており、前記第1ヨークと前記第2ヨークとは、いずれも、前記一方の脚部だけと、前記基部及び他方の脚部との2部品に分離されていて、前記一方の脚部と前記基部とは、前記中間構成体部の内部において、接触状態を維持されているようにしたことを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記第1ボビン部と前記第2ボビン部とは、両者の筒形状の中心線が略平行になるように形成されており、前記第1ヨークは、前記一方の脚部を、前記中間構成体部側から前記第1ボビン部に貫通させ、前記第2ヨークは、前記一方の脚部を、前記中間構成体部側から前記第2ボビン部に貫通させているようにしたことを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記中間構成体部と前記二つの板状部には、各々端子ピンが立設されていて、前記第1コイルの両端は、前記第1板状部に立設されている端子ピンと前記中間構成体部に立設されている端子ピンに巻き付けられ、前記第2コイルの両端は、前記第2板状部に立設されている端子ピンと前記中間構成体部に立設されている前記端子ピンに巻き付けられるようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
前記第1羽根が、1枚のシャッタ羽根であって、前記第2羽根が、1枚の絞り羽根又は1枚のフィルタ羽根であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項6】
前記第1羽根が、同時に相反する方向へ往復作動させられる2枚のシャッタ羽根であって、前記第2羽根が、1枚の絞り羽根又は1枚のフィルタ羽根であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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