説明

カメラ

【課題】電子的に手ブレ補正処理を施す場合の画質の劣化を防ぐ。
【解決手段】カメラは、被写体の移動に伴い被写体の像に発生するブレとカメラ本体に加わるブレとの少なくとも一方の有無を判定するブレ判定手段と、ブレ判定手段によりブレ無しが判定された場合、適正露出に対応するシャッタ秒時を適正シャッタ秒時として設定し、ブレ有りが判定された場合、適正シャッタ秒時よりも短いシャッタ秒時を設定するシャッタ秒時設定手段と、シャッタ秒時設定手段により設定されたシャッタ秒時で被写体の像を撮像し、画像データを生成する撮像手段と、ブレ有りが判定された場合に、撮像手段により生成された画像データの明るさを高める処理の程度をブレ無しが判定された場合よりも高くして処理を施す画像処理手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子的にブレ補正処理を行うカメラが知られている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/023765号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、画像を取得する際に撮像感度を高感度に設定しているため、高感度の設定に伴うノイズや撮像素子の入力信号と出力信号との間のリニアリティの悪化などの要因により画質が劣化するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明によるカメラは、被写体の移動に伴い被写体の像に発生するブレとカメラ本体に加わるブレとの少なくとも一方の有無を判定するブレ判定手段と、ブレ判定手段によりブレ無しが判定された場合、適正露出に対応するシャッタ秒時を適正シャッタ秒時として設定し、ブレ有りが判定された場合、適正シャッタ秒時よりも短いシャッタ秒時を設定するシャッタ秒時設定手段と、シャッタ秒時設定手段により設定されたシャッタ秒時で被写体の像を撮像し、画像データを生成する撮像手段と、ブレ有りが判定された場合に、撮像手段により生成された画像データの明るさを高める処理の程度をブレ無しが判定された場合よりも高くして処理を施す画像処理手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、画像のブレを軽減しつつ画質劣化を低減した画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施の形態によるデジタルカメラ1の構成を示す図
【図2】操作ボタン群14の構成を示す図
【図3】プログラム線図の一例を説明する図
【図4】画像処理に用いる変換テーブルの一例を示す図
【図5】実施の形態によるデジタルカメラの動作を説明するフローチャート
【図6】実施の形態によるデジタルカメラの動作を説明するフローチャート
【図7】実施の形態によるデジタルカメラの動作を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の一実施の形態であるデジタルカメラ1の構成を示す図である。デジタルカメラ1は、制御部11、撮像部12、操作部14、画像処理部15、液晶モニタ16、バッファメモリ17、メモリカード18、閃光装置19などから構成される。
【0009】
制御部11は、マイクロプロセッサおよびその周辺回路から構成され、不図示のROMに格納された制御プログラムを実行することにより、デジタルカメラ1の各種の制御を行う。また、制御部11は、測光部111、露出値算出部112、シャッタ速度設定部113および感度設定部114を機能的に含む。撮像部12は、CCDなどからなる撮像素子21、増幅回路22、AD変換回路23などから構成される。
【0010】
撮像素子21は、複数の画素から構成され、不図示の撮影光学系を介して被写体からの光束を受光し、光電変換をして各画素に対応する撮像信号を出力する。増幅回路22は、撮像素子21から出力される撮像信号を所定の増幅率で増幅してAD変換回路23に出力する。AD変換回路23は、撮像信号をAD変換しデジタルデータを出力する。制御部11は、撮像部12から出力される各画素に対応するデジタルデータをまとめて1つの画像の画像データとしていったんバッファメモリ17に格納する。
【0011】
バッファメモリ17に格納された画像データは、画像処理部15において各種の画像処理が行われ、液晶モニタ16に表示されたり、メモリカード18に格納されたりする。メモリカード18は、不揮発性のフラッシュメモリなどから構成され、デジタルカメラ1に対して着脱可能である。
【0012】
測光部111は、撮像部12から入力した画像データを用いて被写体の輝度値を算出する。露出値算出部112は、測光部111により算出された被写体の輝度値に基づいて、後述する各種のプログラム線図を参照して、シャッタ秒時(シャッタ速度)、撮像感度(ISO感度)および絞り値を設定する。そして、制御部11は、不図示の絞りを設定した絞り値にする。シャッタ速度設定部113は、設定したシャッタ速度に応じた時間だけ電荷を蓄積するように撮像素子21を駆動させる。また、感度設定部114は、設定された撮像感度に基づいて、増幅回路22の増幅率を調整することにより撮像部12の感度、すなわちデジタルカメラ1の撮影感度を調整する。
【0013】
操作部14は、図2に示すように、ブレ補正ボタン31、シャッターレリーズボタン32、撮影・再生モード切り替えスイッチ33、電源スイッチ34、不図示の選択ボタンや決定ボタンなど各種の操作ボタンや操作スイッチから構成され、撮影者により操作される。操作部14は、撮影者による上記の各操作ボタンや操作スイッチの操作に応じた操作信号を制御部11へ出力する。画像処理部15は、ASIC等により構成されている。画像処理部15は、撮像部12によって撮像された画像データを、たとえば輝度と色差とにより表される画像データ(YCbCr画像データ)に変換して、補間、圧縮、ホワイトバランスなどの各種の画像処理を行う。また、画像処理部15は、後述する電子ブレ補正処理も行う。閃光装置19は、設定条件に従い、必要に応じて閃光発光し被写体を照明する。
【0014】
本実施の形態のデジタルカメラ1は、被写体を撮像し、生成した画像データをメモリカード18に記録する撮影モードと、メモリカード18に記録された画像データを読み出して液晶モニタ16に再生する再生モードとを有する。撮影者は、電源スイッチ34の操作によりデジタルカメラ1の電源をオンオフし、撮影・再生モード切り替えスイッチ33の操作により、撮影モードと再生モードとを適宜切り替える。また、撮影モードが設定されると、液晶モニタ16には、所定の周期(たとえば1/30s)ごとに撮像部12により逐次生成された画像データに対応する画像が、表示用のスルー画として逐次表示される。なお、制御部11は、スルー画に対応する画像データ(スルー画データ)のメモリカード18への記録は行わない。
【0015】
また、液晶モニタ16には、デジタルカメラ1の各種設定のためのメニュー画面が表示される。メニュー画面上から設定可能な内容として、電子手ブレ補正処理のオン/オフの設定や撮像感度の設定等がある。撮影者は、メニュー画面を確認しながら操作部14に含まれる選択ボタンや決定ボタンを操作することにより設定操作を行う。
【0016】
本実施の形態のデジタルカメラ1の撮影モードは、通常撮影モードとブレ補正撮影モードとを含む。撮影モード時にブレ補正ボタン31が操作されるとブレ補正撮影モードに遷移する。また、通常撮影モードでは、所定の条件を満たす場合に電子手ブレ補正処理を実行する。
【0017】
本実施の形態におけるブレとは、デジタルカメラ1を撮影者が手で保持して撮影するときにデジタルカメラ1に生じる振動、すなわち手ブレ、また、被写体が動くことにより生じる被写体ブレが含まれる。ただし、被写体ブレは手ブレより遅いシャッタ速度で生じるため、手ブレ対策が取られれば被写体ブレ対策も取られていることになる。なお、ブレにより撮像した画像がボケる現象もブレという概念に含められる。
【0018】
−撮影モード−
デジタルカメラ1は、電源スイッチ34により電源がオンされ、撮影・再生モード切り替えスイッチ33の操作により撮影モードが選択されているときに、ブレ補正ボタン31が操作(押下)されると、ブレ補正撮影モードに遷移する。ブレ補正撮影モードの状態でブレ補正ボタン31が操作されると、元の通常撮影モードへ遷移する。ブレ補正ボタン31は、撮影モードのときは、通常撮影モードとブレ補正撮影モードとを切り替えるモード切替ボタンとなる。
【0019】
ブレ補正ボタン31は、撮影モードのとき、通常撮影モードとブレ補正撮影モードとを切り替えるために設けられた専用ボタンであり、撮影者の一発(ワンタッチ)操作で通常撮影モードとブレ補正撮影モードの切り替えを行うことができる。すなわち、ブレ補正ボタン31は、撮影者の1回の操作で即座にブレ補正撮影モードに移行するための操作部材である。なお、ブレ補正ボタン31は、他の形式のスイッチであってもよい。例えば、スライド式のスイッチであってもよい。すなわち、撮影者の1回の操作で通常の撮影モードとブレ補正撮影モードの切り替えを行うことが指示できるようなスイッチであればどのような形式でもよい。
【0020】
以下、撮影モード時に、制御部11と画像処理部15とにより行われる電子手ブレ補正処理について説明する。
−プログラム線図の選択−
本実施の形態においては、制御部11は、通常プログラム線図とブレ補正用プログラム線図とを備えるものとする。通常プログラム線図は、ブレ無しが判定されている場合(通常撮影モード時)に、制御部11により選択される。ブレ補正用プログラム線図は、ブレ有りが判定されている場合(ブレ補正撮影モード時)に、制御部11により選択される。また、ブレ補正用プログラム線図は、後述する第1プログラム線図および第2プログラム線図を含む。第1プログラム線図はスルー画データを逐次生成する際に制御部11により選択され、第2プログラム線図は本撮影時に制御部11により選択される。
【0021】
図3は、通常プログラム線図、第1プログラム線図、および第2プログラム線図を示す。図3(a)は被写体の輝度値とシャッタ速度との関係を示す。図3(a)の実線で示す線図1は通常プログラム線図、一点鎖線で示す線図2は第1プログラム線図、破線で示す線図3は第2プログラム線図を表す。図3(b)は被写体の輝度と感度との関係を示す。図3(b)の実線で示す線図4は通常プログラム線図、一点鎖線で示す線図5は第1および第2プログラム線図を表す。縦軸の輝度は、図上部方向が明るい輝度、図下部方向が暗い輝度を示す。図3(a)の横軸のシャッタ速度は、図右方向が高速、図左方向が低速を示す。図3(b)の横軸の感度は、図右方向が高感度、図左方向が低感度を示す。
【0022】
図3に示すように、第1プログラム線図では、通常プログラム線図よりも高輝度から感度アップ(高感度化)を行い、高速シャッタを実現している。すなわち、高感度化重視の撮影条件を設定している。デジタルカメラ1の撮像感度アップは、撮像部12の増幅回路22の増幅率を上げることにより実現される。
【0023】
図3において、通常プログラム線図では、被写体の輝度が輝度値B4より大きく輝度値B7以下の場合には、輝度値B7から輝度値B4まで下がるにつれ、シャッタ速度をT4に維持しながら輝度値に応じて撮像感度をS1からS2まで上げる。次に、被写体の輝度が輝度値B3より大きく輝度値B4以下の場合には、輝度値B4から輝度値B3まで下がるにつれて、撮像感度をS2に維持しながら輝度値に応じてシャッタ速度をT4からT3まで低速にする。次に、被写体の輝度が輝度値B2より大きく輝度値B3以下の場合には、輝度値B3から輝度値B2まで下がるにつれて、シャッタ速度をT3に維持しながら輝度値に応じて撮像感度をS2からS3まで上げる。次に、被写体の輝度が輝度値B1より大きく輝度値B2以下の場合には、輝度値B2から輝度値B1まで下がるにつれて、撮像感度をS3に維持しながら輝度値に応じてシャッタ速度をT3からT1まで低速にする。輝度値B1以下では、シャッタ速度をT1に維持しながら輝度値に応じて撮像感度をS3から上げる。
【0024】
第1プログラム線図では、被写体の輝度が輝度値B6より大きく輝度値B7より高い輝度値B8以下の場合には、輝度値B8から輝度値B6まで下がるにつれ、シャッタ速度をT4より高速であるT6に維持しながら輝度値に応じて撮像感度をS1からS2まで上げる。被写体の輝度が輝度値B5より大きく輝度値B6以下の場合には、輝度値B6から輝度値B5まで下がるにつれて、撮像感度をS2に維持しながら輝度値に応じてシャッタ速度をT6からT5へ低速にする。被写体の輝度が輝度値B4より大きく輝度値B5以下の場合には、輝度値B5から輝度値B4まで下がるにつれて、シャッタ速度をT5に維持しながら撮像感度をS2からS3まで上げる。被写体の輝度が輝度値B1より大きく輝度値B4以下の場合には、輝度値B4から輝度値B1まで下がるにつれて、撮像感度をS3に維持したまま輝度値に応じてシャッタ速度をT5からT1まで低速にする。輝度値B1以下では、通常プログラム線図と同様に、シャッタ速度をT1に維持しながら輝度値に応じて撮像感度をS3から上げる。
【0025】
第2プログラム線図では、被写体の輝度が輝度値B4より大きく輝度値B8以下の場合には、輝度とシャッタ速度との関係は、第1プログラム線図と同様である。輝度値B4では、撮像感度はS3のままシャッタ速度をT6へ高速にする。被写体の輝度が輝度値B1より大きく輝度値B4以下の場合には、輝度値B4から輝度値B1まで下がるにつれて、撮像感度をS3に維持しながら輝度値に応じてシャッタ速度をT6からT2へ低速にする。輝度値B1では、撮像感度はS3のままシャッタ速度をT1へ低速にする。輝度値B1以下では、通常プログラム線図および第1プログラム線図と同様に、シャッタ速度をT1に維持しながら輝度値に応じて撮像感度をS3から上げる。なお、撮像感度S3は例えばISO800に対応する。
【0026】
上述したように、第1プログラム線図および第2プログラム線図(すなわちブレ補正用プログラム線図)は、被写体の輝度値B8以下では、通常プログラム線図より右側に位置する。すなわち、ブレ補正撮影モードの場合には、通常撮影モードの場合に比べて高感度化が図られ高速シャッタ(短いシャッタ秒時)が実現されている。その結果、ブレ補正用プログラム線図が選択されると被写体ブレや手ブレを低減することができる。
【0027】
さらに図3(a)に示すように、第2プログラム線図は、被写体の輝度値B4以下では、第1プログラム線図より右側に位置するので、撮像感度は維持された状態でさらに高速シャッタが実現されている。その結果、第2プログラム線図が選択された場合は、第1プログラム線図が選択された場合よりも、さらに被写体ブレや手ブレを低減することができる。しかしながら、適正露出で生成される場合と比べて暗い画像データが生成されるので、画像処理部15は、この画像データの明るさを高める処理として、後述する階調補正等の画像処理(暗部補正処理)を施して適正露出となるように補正する。
【0028】
なお、手ブレは撮影者の技量によるところが大きいが、シャッタ速度T6は一般に手ブレが確実に起こらないとされるシャッタ速度である。手ブレが確実に起こらないとされるシャッタ速度は、一般に、1/焦点距離(mm、35mm判換算)秒で表される。例えば、焦点距離105mm(35mm判換算)の撮影レンズが搭載されているデジタルカメラであると、手ブレが確実に起こらないとされるシャッタ速度T6は、1/105秒や1/125秒とされる。本実施の形態では、シャッタ速度T6は、例えば1/125秒とする。
【0029】
シャッタ速度T4は、一般に手ブレが起きるといわれるシャッタ速度である。これより低速のシャッタ速度では手ブレが生じる可能性が大となる。本実施の形態では、シャッタ速度T4は、例えば1/30秒とする。シャッタ速度T1は一般に被写体ブレがおきるというシャッタ速度である。これより低速のシャッタ速度では被写体ブレが生じる可能性が大となる。本実施の形態では、シャッタ速度T1は、例えば1/2秒とする。
【0030】
ブレ補正撮影モードでは、手ブレが確実に起こらないとされるシャッタ速度T6の時点で撮像感度アップを開始し、通常撮影モードより手ブレ対策を確実に図るようになされている。なお、ブレ補正撮影モードおよび通常撮影モードでは、輝度値B1以下の場合、シャッタ速度をT1に維持しながら、撮像感度をS3から上げている。これにより、ブレ補正撮影モードにおいても通常撮影モードにおいても、撮像感度を上げることにより被写体ブレの低減が図られている。
【0031】
−電子手ブレ補正−
電子手ブレ補正は、撮像(撮影)時のブレ情報と被写体の明るさに関する情報とに基づいて行われる。以下、詳細に説明する。
画像処理部15は、逐次入力された複数のスルー画データに基づいて、公知の技術を用いて、被写体のエッジ成分等を示す特徴点を検出する。そして、画像処理部15は、対応する特徴点間の動きベクトルを算出して、動きベクトルをバッファメモリ17に格納する。画像処理部15は、逐次生成されたスルー画データを入力するごとに上記の動きベクトルの算出を行い、算出した動きベクトルをバッファメモリ17に格納する。画像処理部15により算出された動きベクトルがバッファメモリ17に記録されると、制御部11は、前フレームのスルー画データに基づいて算出された動きベクトルの量と、今回算出された動きベクトルの量との変化量が所定の閾値を超えるか否かを判定する。動きベクトルの変化量が所定の閾値を超えている場合、制御部11は、上述した手ブレおよび被写体ブレの少なくとも一方が発生しているものと判定する。そして、制御部11は、ブレ情報として、ブレの有無を示すブレフラグiを1に設定する。なお、上記の閾値は、デジタルカメラ1が三脚などに固定され手ブレがほとんど生じていないような値であり、予め試験や実験等に基づいて決定される。この閾値は、制御部11内の所定の記憶領域に記録されているものとする。
【0032】
制御部11は、ブレ有りと判定したとき、すなわちブレフラグiを1に設定した場合に、上述したブレ補正用プログラム線図を選択する。このとき、制御部11は、スルー画データを生成するために第1プログラム線図を選択し、本撮影にて画像データを生成するために第2プログラム線図を選択する。露出値算出部112は、測光部111により算出された被写体の輝度値に基づいて、選択された第1プログラム線図または第2プログラム線図を参照して、シャッタ速度、撮像感度および絞り値を決定する。そして、シャッタ速度設定部113は、選択されたプログラム線図に基づいて決定されたシャッタ速度で撮像素子21を駆動させる。また、感度設定部114は、増幅回路22の増幅率を、選択されたプログラム線図に基づいて決定された撮像感度となるように設定する。なお、ブレ無しと判定した場合、すなわちブレフラグiが0の場合は、制御部11は通常プログラム線図を選択する。
【0033】
制御部11が第1プログラム線図を選択することにより、スルー画データ取得時には、被写体の輝度が輝度値B2以上輝度値B8以下の場合、シャッタ速度を高速に設定し、高速のシャッタ速度に対して適正露出となるように高い撮像感度を設定できる。換言すると、シャッタ速度設定部113は、被写体の輝度が輝度値B2以上輝度値B8以下の場合、適正露出に対応するシャッタ秒時(シャッタ速度)よりも短いシャッタ秒時(高速のシャッタ速度)を設定する。そして、制御部11は、被写体の輝度値がB2以上の場合には感度設定部114が撮像部12に高い撮像感度を設定させることを許可し、被写体の輝度値がB2未満の場合には感度設定部114が撮像部12に高い撮像感度を設定させることを禁止する。
【0034】
制御部11が第2プログラム線図を選択することにより、本撮影用の画像データを生成する際に被写体の輝度が輝度値B1より大きく輝度値B4以下の場合には、撮像感度をスルー画データ取得時の場合と同一としたまま、シャッタ速度をスルー画データ取得時よりも高速に設定できる。換言すると、シャッタ速度設定部113は、スルー画データ取得時に感度設定部114により設定される高い撮像感度に基づく適正露出に対応する適正なシャッタ秒時(シャッタ速度)よりも短いシャッタ秒時(高速のシャッタ速度)を設定する。また、被写体の輝度値がB1以下の場合には、制御部11は、感度設定部114が撮像部12に高い撮像感度を設定させることを許可する。
【0035】
制御部11は、選択したブレ補正用プログラム線図と測光部111により算出された被写体の輝度値とに基づいて、撮像部12により生成された画像データの輝度値を変換するための変換テーブルを選択する。そして、制御部11は、画像処理部15に指示して、選択した変換テーブルに基づいて画像データに画像処理を施させる。
【0036】
図4は、画像処理部15が、入力された画像データの輝度値を変換する際に使用する変換テーブルの特性を示す図である。図4(a)の線図Aは、次の(1)、(2)および(3)のいずれかの場合に制御部11により選択される変換テーブルである(以下、通常変換テーブルとぶ)。
(1)通常プログラム線図が選択された場合
(2)ブレ補正用プログラム線図が選択されかつ被写体の輝度値がB4を超える場合
(3)ブレ補正用プログラム線図が選択されかつ被写体の輝度値がB1以下の場合
【0037】
図4(a)の線図Bは、ブレ補正用プログラム線図が選択され、かつ被写体の輝度値がB4以下の場合に、制御部11により選択される変換テーブルである(以下、暗部補正用変換テーブル)。なお、図4においては、横軸は画像処理部15への画像データの入力輝度値、縦軸は画像処理部15からの画像データの出力輝度値を示す。図4(a)に示すように、入力輝度値Yinに対して、線図Aを用いた場合は出力輝度値Yout1となり、線図Bを用いた場合は出力輝度値Yout1よりも大きな出力輝度値Yout2を得ることができる。すなわち、暗部補正用変換テーブルでは、画像データの入力輝度値に対応する出力輝度値が、通常変換テーブルにおける出力輝度値よりも大きな値となるようにカーブ形状が設定されている。換言すると、暗部補正用変換テーブルによる画像データの明るさを高める処理の程度は、通常変換テーブルによる変換よりも高い。
【0038】
上記の暗部補正用変換テーブルのカーブ形状は、制御部11により第2プログラム線図が選択された際にシャッタ速度設定部113により設定される高速のシャッタ速度と、第1プログラム線図が選択された際に設定される適正露出に対応するシャッタ速度との差に基づいて決定される。すなわち、上記のカーブ形状は、第2プログラム線図に基づいて生成された適正露出よりも暗い画像データを、適正露出で生成された画像データと等価な明るさとなるように入力輝度値を変換して、明るさを高めるように決定される。なお、通常変換テーブルおよび暗部補正用変換テーブルは、画像処理部15内の所定の記憶領域内に記録されているものとする。
【0039】
本実施の形態においては、画像処理部15が、高速に設定されたシャッタ速度で生成された画像データに変換テーブルに基づいて画像処理を施すことにより、電子手ブレ補正処理を行っている。また、暗部補正用変換テーブルが上記の特性を有することにより、画像処理部15は、第2プログラム線図が選択された際に生成された画像データのうち、特に暗部領域に対応する画像データの明るさを高めることができる。換言すると、被写体の輝度値がB1〜B4の場合、制御部11は、画像処理部15が画像データに明るさを高める処理を施すことを許可する。また、被写体の輝度値がB1未満またはB4を超える場合は、制御部11は、画像処理部15が画像データに明るさを高める処理を施すことを禁止する。
【0040】
通常撮影モードでは、所定の条件を満たすときに電子手ブレ補正機能を有効にする。ブレ補正撮影モードでは、無条件に電子手ブレ補正機能を有効にする。電子手ブレ補正機能が有効の場合、制御部11は、液晶モニタ16のスルー画上に電子手ブレ補正アイコンを表示させる。これにより、撮影者にとって、電子手ブレ補正機能が有効になっていることが分かる。
【0041】
(通常撮影モード)
通常撮影モードでは、制御部11は、次の条件(1)〜(6)を全て満たした時、電子手ブレ補正機能を有効にする。
(1)電子手ブレ補正の設定が「自動」
(2)単写
(3)閃光装置19の設定がオフまたはスローシンクロ
(4)ISO感度の設定が「自動」で、被写体の輝度値がB4以下
(5)シャッタ速度が上記T1〜T4
(6)ブレフラグiが1
【0042】
以上の条件は、暗い所で人などを撮影するため、手ブレが生じる可能性が大の場合である。シャッタ速度をT1〜T4としているのは、被写体ブレが生じるシャッタ速度から手ブレが生じるシャッタ速度までの間において電子手ブレ補正処理を行うためである。言い換えれば、被写体ブレは生じないが手ブレが生じる可能性があるシャッタ速度の場合に、電子手ブレ補正処理を行う。また、シャッタ速度T1より低速の場合、手ブレが大となり被写体ブレも入り込み、電子手ブレ補正が有効に働かない。そのため、シャッタ速度をT1〜T4という条件を設けることにより、無駄な電子手ブレ補正処理の実行を防止することができる。
【0043】
閃光装置19の設定がオフまたはスローシンクロとしているのは、閃光装置19がオンに設定されている場合は、通常、シャッタ速度T1より低速にならず、電子手ブレ補正処理の必要性がないためである。なお、単写を条件としているのは、電子手ブレ補正処理には時間がかかるため、連写での電子手ブレ補正処理はできないためである。
【0044】
通常撮影モードが設定されると、制御部11は、上述したように、スルー画データに基づいて、ブレの有無を判定する。シャッターレリーズボタン32が半押し操作された際に、制御部11は、ブレ有無に基づいて、すなわちブレフラグiに基づいて、上述したプログラム線図の選択および変換テーブルの選択を行う。そして、選択したプログラム線図に基づいて、シャッタ速度設定部113は撮像素子21のシャッタ速度を設定し、感度設定部114は撮像部12の撮像感度を設定する。
【0045】
シャッターレリーズボタン32の全押し操作に応じて、制御部11は、設定したシャッタ速度および撮像感度にて撮像部12に画像データを生成させる。画像処理部15は、シャッターレリーズボタン32の全押し操作に応じて撮像部12により生成された画像データに対して、上述した変換テーブルを用いて画像処理を施す。その後、制御部11は、生成した画像データに対してJPEG変換等の圧縮処理を施し、Exifファイル対応(ヘッダ処理)を行って、画像ファイルを生成する。このとき、制御部11は、画像ファイルのファイル名を、たとえば「DSCN.0001.jpg」のように設定する。また、制御部11は、ヘッダ内の所定の領域に、上記の電子手ブレ補正処理の有無を示す情報を記録する。そして、制御部11は、生成した画像ファイルをメモリカード18に記録する。
【0046】
また、電子手ブレ補正機能が有効になっていても、動きベクトルの値が所定の閾値より小さいとき、すなわちブレフラグiが0のとき、画像処理部15は電子手ブレ補正処理を行わない。この閾値は、上述したように、デジタルカメラ1が三脚などに固定され手ブレがほとんど生じていないような値である。これにより、手ブレが実際に生じていないのに電子手ブレ補正処理を実行してしまうことを防止できる。
【0047】
なお、ブレの有無の代わりに、シャッタ速度、焦点距離などの情報から補正実行の可否を判定するようにしてもよい。また、閃光装置19の設定がオンで撮像された画像の場合は、ブレ発生確率が減少するため、閃光装置19の設定から補正実行の可否を判定してもよい。
【0048】
電子手ブレ補正処理中には、処理中を示すために砂時計のアイコンを液晶モニタ16に回転表示させるとともに、「手ぶれ補正実行中」のメッセージを表示する。ただし、処理時間が1秒以内の場合(処理対象画像が小さい)には処理中メッセージを表示しない。
【0049】
処理中メッセージの表示時には、ブレ補正ボタン31およびシャッターレリーズボタン32の操作にて電子手ブレ補正処理のキャンセル可能とする。その他のボタンについては無効とする。電子手ブレ補正処理がキャンセルされた場合には処理前の画像データをメモリカード18に記録する。その場合、制御部11は、画像ファイルのヘッダ内に電子手ブレ補正処理が行われていないことを示す情報を記録する。
【0050】
(ブレ補正撮影モード)
次に、ブレ補正撮影モードにおける処理について説明する。ブレ補正撮影モードでは、電子手ブレ補正機能は自動的に有効になる。ブレ補正撮影モードから他の撮影モードに移行した場合は、電子手ブレ補正機能は無効になる。ただし、通常撮影モードで上記の条件を満足する場合は有効となる。
【0051】
ブレ補正撮影モードにおいて電子手ブレ補正処理を行うときにも、上記通常撮影モードで説明したように、制御部11は、ブレフラグiの値に基づいて、電子手ブレ補正処理を実際に行うかどうかを決定する。すなわち、ブレの量(動きベクトルの変化量)が所定の閾値を超える場合のみ電子手ブレ補正処理を行う。また、電子手ブレ補正処理を行った後、メモリカード18に記録する処理も上記通常撮影モードでの説明と同様である。従って、これらの説明は上記の通常撮影モードでの説明を参照することとしその説明を省略する。
【0052】
−制御プログラム−
図5〜図7は、制御部11が実行する制御プログラムのフローチャートを示す図である。図5〜図7の制御プログラムは、不図示のROMに格納され、電源スイッチ34のオンによりデジタルカメラ1の電源がオンされると開始する。
【0053】
ステップS101では、撮影モードが継続されているか否かを判定する。撮影モードが設定されたままの状態であればステップS101が肯定判定されてステップS102へ進む。撮影モードが終了された場合には、ステップS101が否定判定されて処理を終了する。ステップS102では、撮像部12により生成された、スルー画データがバッファメモリ17に格納されているか否かを判定する。スルー画データがバッファメモリ17に格納されている場合には、ステップS102が肯定判定されてステップS103へ進む。スルー画データがバッファメモリ17に格納されていない場合には、ステップS102が否定判定されてステップS101へ戻る。
【0054】
ステップS103においては、画像処理部15に、スルー画データを用いて特徴点を検出させてステップS104へ進む。ステップS104では、画像処理部15に、検出した特徴点に基づいて動きベクトルを算出させ、算出した動きベクトルをバッファメモリ17に格納させてステップS105へ進む。
【0055】
ステップS105においては、前フレームのスルー画データを用いて算出された動きベクトル(前回の動きベクトル)がバッファメモリ17に格納されているか否かを判定する。前回の動きベクトルがバッファメモリ17に格納されている場合には、ステップS105が肯定判定されてステップS106へ進み、前回の動きベクトルがバッファメモリ17に格納されていない場合には、ステップS105が否定判定されてステップS101へ戻る。
【0056】
ステップS106では、ステップS104で算出された動きベクトルと前回の動きベクトルとを用いて、ブレ判定処理を行ってステップS107へ進む。ステップS107では、ステップS106におけるブレ判定処理の結果に基づいて、ブレの有無を判定する。ブレが有りと判定した場合には、ステップS107が肯定判定されてステップS108へ進む。ブレ無しと判定した場合には、ステップS107が否定判定されてステップS109へ進む。
【0057】
ステップS108では、ブレフラグiを1に設定してステップS110へ進む。ステップS109では、ブレフラグiを0に設定してステップS110へ進む。ステップS110においては、シャッターレリーズボタン32が半押し操作されたか否かを判定する。操作部14から、シャッターレリーズボタン32の半押し操作に応じた操作信号を入力した場合には、ステップS110が肯定判定されてステップS111へ進む。操作部14から、シャッターレリーズボタン32の半押し操作に応じた操作信号を入力しない場合には、ステップS110が否定判定されてステップS101へ戻る。
【0058】
ステップS111では、ブレフラグiが0に設定されているか否かを判定する。ブレフラグiが0に設定されている場合には、ステップS111が肯定判定されて、図6のステップS112へ進む。ブレフラグiが1に設定されている場合には、ステップS111が否定判定されて、後述する図7のステップS120へ進む。図6のステップS112では、通常プログラム線図を選択してステップS113へ進む。
【0059】
ステップS113では、通常変換テーブルを選択してステップS114へ進む。ステップS114では、図示しない焦点調節部に対し焦点状態の調節を行わせてステップS115へ進む。ステップS115では、シャッターレリーズボタン32が全押し操作されたか否かを判定する。操作部14から、シャッターレリーズボタン32の全押し操作に応じた操作信号を入力した場合には、ステップS115が肯定判定されてステップS116へ進む。操作部14から、シャッターレリーズボタン32の全押し操作に応じた操作信号を入力しない場合には、ステップS115が否定判定されてステップS119へ進む。
【0060】
ステップS116では、撮影処理を行ってステップS117へ進む。すなわち、通常プログラム線図に基づいて設定されたシャッタ速度、撮像感度にて撮像部12に画像データを生成させる。そして、画像処理部15に、通常変換テーブルを用いて生成された画像データに対して画像処理を施させる。ステップS117では、ステップS116で生成した画像データに対応する画像を液晶モニタ16に表示させてステップS118へ進む。ステップS118では、ステップS116で生成した画像データに基づいて画像ファイルを生成し、メモリカード108に記録してステップS101へ戻る。なお、画像ファイルのヘッダ部には電子手ブレ補正処理が行われていないことを示す情報を記録する。
【0061】
ステップS115が否定判定されるとステップS119へ進み、シャッターレリーズボタン32の半押し操作が解除されたか否かを判定する。シャッターレリーズボタン32の半押し操作が解除された場合、すなわち操作部14からシャッターレリーズボタン32の半押し操作に応じた操作信号を入力しない場合には、ステップS119が肯定判定されて図5のステップS101へ戻る。シャッターレリーズボタン32の半押し操作が解除されていない場合、すなわち操作部14からシャッターレリーズボタン32の半押し操作に応じた操作信号を入力している場合には、ステップS119が否定判定されてステップS115へ戻る。
【0062】
図5のステップS111が否定判定されると図7のステップS120へ進み、ブレ補正用プログラム線図を選択してステップS121へ進む。すなわち、スルー画用に第1プログラム線図を選択し、本撮影用に第2プログラム線図を選択する。ステップS121では、被写体の輝度値がB4以下か否かを判定する。被写体の輝度値がB4以下の場合には、ステップS121が肯定判定されてステップS122へ進む。被写体の輝度値がB4を超える場合には、ステップS121が否定判定されてステップS123へ進む。ステップS122では、暗部補正用変換テーブルを選択してステップS124へ進む。ステップS123では、通常変換テーブルを選択してステップS124へ進む。ステップS124(焦点調節)およびステップS125(全押し判定)の各処理は、図6のステップ114(焦点調節)およびステップS115(全押し判定)と同様である。
【0063】
ステップS126では、撮影処理を行ってステップS127へ進む。すなわち、第2プログラム線図に基づいてシャッタ速度、撮像感度および絞り値が制御された状態で撮像部12に画像データを生成させる。そして、画像処理部15に、通常変換テーブルとブレ補正用変換テーブルとの一方を用いて、生成された画像データに対して画像処理を施させる。すなわち、画像処理部15は、被写体の輝度値がB4以下の場合にはブレ補正用変換テーブルを用い、被写体の輝度値がB4を超える場合は通常変換テーブルを用いて画像データに画像処理を施す。ステップS127(プレビュー表示)からステップS129(半押し解除判定)までの各処理は、図6のステップ117(プレビュー表示)からステップS119(半押し解除判定)までの各処理と同様である。なお、ステップS128において、画像ファイルをメモリカード108に記録する際には、画像ファイルのヘッダ部に電子手ブレ補正処理が行われたことを示す情報を記録する。
【0064】
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)制御部11は、被写体の移動に伴い被写体の像に発生する被写体ブレとデジタルかカメラ1本体に加わるブレとの少なくとも一方の有無を判定する。そして、ブレ無しを判定した場合、シャッタ速度設定部113は、適正露出に対応するシャッタ速度を設定し、ブレ有りを判定した場合、適正露出に対応するシャッタ速度よりも高速となるシャッタ速度を設定するようにした。撮像部12は、シャッタ速度設定部113により設定されたシャッタ速度で被写体の像を撮像し、画像データを生成する。画像処理部15は、ブレ有りが判定された場合に、撮像部12により生成された画像データの明るさを高める処理の程度をブレ無しが判定された場合よりも高くして画像処理を施すようにした。その結果、撮像部12の撮像感度を高めることなく高速なシャッタ速度で撮影できるので、電子手ブレ補正処理の効果を向上できる。さらに、撮像感度を高めていないので、撮像素子21の入力光量と出力信号との間に生じるリニアリティの悪化や、画像データのS/N比の悪化を抑制し、画質の劣化を防ぐことができる。なお、撮像部12の撮像感度を高めないので、増幅回路22の増幅率の制限に達してしまい、これ以上撮像感度を高めることができないような場合に特に有用である。
【0065】
(2)感度設定部114は、ブレ有りが判定された場合には、ブレ無しが判定された場合に撮像部12が撮像するときの撮像感度よりも高い撮像感度を設定する。そして、測光部111で算出された被写体の輝度値がB2より低い場合は、制御部11は感度設定部114に高い撮像感度を設定することを禁止するようにした。この場合、撮像感度を高くすると増幅回路22の増幅率が高くなりノイズ等による画質への悪影響が顕著になるので、高い撮像感度の設定を禁止して画質の劣化を抑制できる。また、測光部111で算出された被写体の輝度値がB2より高い場合は、制御部11は、感度設定部114にブレ無しが判定された場合よりも高い撮像感度を設定することを許可するようにした。そして、シャッタ速度設定部113は、シャッタ速度を、設定された高い撮像感度に基づく適正露出に対応するシャッタ速度よりも高速に設定するようにした。したがって、被写体の輝度値がB2より高い場合には、高い撮像感度に対応する適正露出に対応するシャッタ速度よりも高速にシャッタ速度を設定できるので、電子手ブレ補正処理の効果を向上させて画質の劣化を抑制できる。
【0066】
(3)測光部111により算出された被写体の輝度値がB2よりも大きいB4より低い場合は、制御部11は、画像処理部15が画像データに明るさを高める処理を施すことを許可するようにした。そして、測光部111により算出された被写体の輝度値がB4より高い場合は、制御部11は、画像処理部15が画像データに明るさを高める処理を施すことを禁止するようにした。被写体の輝度値がB2〜B4の場合、適正露出に対応するシャッタ速度よりも高速のシャッタ速度が設定されるので、適正露出で生成された画像データよりも暗い画像データが生成されることになる。このような画像データに対して暗部の明度を高める処理を行うことにより、適正露出で生成された画像データの明るさと等価な明るさを有する画像データを生成することができる。
【0067】
(4)測光部111により算出された被写体の輝度値がB2よりも小さいB1より低い場合は、制御部11は、感度設定部114が高い撮像感度を設定することを許可し、かつ、画像処理部15が画像データに明るさを高める処理を施すことを禁止するようにした。被写体の輝度値がB1より低い場合は、シャッタ速度を高速に設定すると十分な露光量が確保できず、画像処理部15による画像処理によって画像データの暗部領域の明るさを高めても、被写体が再現できない可能性が高い。したがって、暗い被写体を撮影する際に撮像感度を高く設定することにより被写体像を再現するとともに、被写体ブレの発生を抑制できる。また、電子手ブレ補正処理の効果が見込めない場合には画像処理部15による明るさを高める処理を禁止するので、処理負荷を軽減できる。
【0068】
(5)撮像部12により逐次生成されたスルー画データに対応する画像を表示用画像として逐次液晶モニタ16に表示する。そして、制御部11は、画像処理部15がスルー画データに明るさを高める処理を施すことを禁止するようにした。したがって、スルー画データを生成する際には、処理に時間を要する電子手ブレ補正処理を行わないので、フレームレートを確保できる。
【0069】
(6)撮像部12によりスルー画データが生成される際に、制御部11は、ブレ有りを判定すると以下の指示を行うようにした。すなわち、制御部11は、シャッタ速度設定部113に適正露出に対応するシャッタ速度よりも高速なシャッタ速度を設定させ、かつ、高速に設定されたシャッタ速度に対応して適正露出となるように、感度設定部114に高い撮像感度を設定させる。また、撮像部12によりメモリカード18に記録する画像データが生成される場合には、制御部11は、ブレ有りを判定すると以下の指示を行うようにした。すなわち、制御部11は、シャッタ速度設定部113にスルー画データ生成時に高速に設定したシャッタ速度よりも、シャッタ速度をさらに高速に設定させ、かつ、感度設定部114に、スルー画データ生成時に設定されたシャッタ速度に対応して適正露出となる撮像感度を設定する。したがって、スルー画データを生成する際には、フレームレートを維持しつつブレを抑制できる。さらに、本撮影ではスルー画を表示する場合よりも高速にシャッタ速度が設定されるので、スルー画の場合よりも電子手ブレ補正処理の効果が向上された高画質の画像を得ることができる。また、スルー画を表示する場合と本撮影を行う場合とで撮像感度が同一に設定されるので、スルー画表示から本撮影に移行した際に、撮像部12の撮像感度が変化することにより本撮影に用いる測光値に悪影響が及ぶことを防止できる。
【0070】
(7)画像処理部15は、適正露出に対応するシャッタ速度(適正シャッタ秒時)と、適正露出に対応するシャッタ速度よりも高速に設定されたシャッタ速度(短いシャッタ秒時)との差に基づいて、画像データの明るさを高める程度を決定するようにした。したがって、第2プログラム線図に基づいて生成された適正露出よりも暗い画像データを、適正露出で生成された画像データと等価な明るさとなるように明るさを高めることができる。
【0071】
―変形例―
(1)ブレ補正用プログラム線図として、制御部11は、被写体の輝度値がB4〜B8の場合は、図3の線図1および線図4を選択し、被写体の輝度値がB4以下の場合に線図3および線図5を選択するようにしてもよい。この場合、被写体の輝度値が高輝度の場合はブレの発生する可能性が低いので、高い撮像感度を設定することなく画像データを生成して、画質の劣化を防ぐことができる。
【0072】
(2)動きベクトルに基づいてブレの有無を判定するものに限定されない。たとえばジャイロセンサ等の角速度センサを備える場合は、角速度センサが検出したデジタルカメラ1の物理的なゆれ量(手ブレ量)を示す検出信号に基づいて、制御部11がブレの有無を判定すればよい。
【0073】
(3)撮像部12の増幅回路22の増幅率を上昇させて撮像感度を高めるものに限定されない。撮像素子21が有する増幅回路の増幅率を上昇させることにより撮像感度を高めてもよい。または、画像処理部15が入力したデジタルの画像データに対して所定のゲインを乗算することにより撮像感度を高めるデジタルゲイン処理を行ってもよい。
【0074】
(4)明るさを高める処理として、画像処理部15は、暗部補正用変換テーブルを用いたが、暗部の明るさを高めるものに代えて、画像データ全体の明るさを高めるようにしてもよい。この場合、画像処理部15は、図4(b)の線図Cに示すように、画像データの入力輝度値を一律に所定量高めるような変換テーブルを用いてもよい。
【0075】
(5)画像処理部15が、輝度色差空間で表される画像データの輝度成分に対して明るさを高める処理を施すもの限定されない。輝度色差空間以外の色空間(たとえばHSI空間等)で表される画像データにおいて、明るさに相当する成分に対して処理を施せばよい。
【0076】
また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。説明に用いた実施の形態および変形例は、それぞれを適宜組合わせて構成しても構わない。
【符号の説明】
【0077】
1・・・デジタルカメラ、 11・・・制御部、 12・・・撮像部、
15・・・画像処理部、16・・・液晶モニタ、 21・・・撮像素子、
113・・・シャッタ速度設定部、114・・・感度設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の移動に伴い前記被写体の像に発生するブレとカメラ本体に加わるブレとの少なくとも一方の有無を判定するブレ判定手段と、
前記ブレ判定手段により前記ブレ無しが判定された場合、適正露出に対応するシャッタ秒時を適正シャッタ秒時として設定し、前記ブレ有りが判定された場合、前記適正シャッタ秒時よりも短いシャッタ秒時を設定するシャッタ秒時設定手段と、
前記シャッタ秒時設定手段により設定された前記シャッタ秒時で前記被写体の像を撮像し、画像データを生成する撮像手段と、
前記ブレ有りが判定された場合に、前記撮像手段により生成された前記画像データの明るさを高める処理の程度を前記ブレ無しが判定された場合よりも高くして処理を施す画像処理手段とを備えることを特徴とするカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラにおいて、
前記ブレ有りが判定された場合には、前記ブレ無しが判定された場合に前記撮像手段が撮像するときの撮像感度を高い撮像感度に設定する感度設定手段と、
前記被写体の輝度が所定の閾値よりも低い場合は、前記感度設定手段が前記高い感度を設定することを許可し、かつ、前記画像処理手段が前記画像データに明るさを高める処理を施すことを禁止する第1制御手段とをさらに備えることを特徴とするカメラ。
【請求項3】
請求項1に記載のカメラにおいて、
前記ブレ有りが判定された場合には、前記ブレ無しが判定された場合に前記撮像手段が撮像するときの撮像感度よりも高い撮像感度を設定する感度設定手段と、
前記被写体の輝度が第1の閾値より低い場合は、前記感度設定手段が前記高い撮像感度を設定することを禁止し、前記被写体の輝度が前記第1の閾値より高い場合は、前記感度設定手段が前記高い撮像感度を設定することを許可する第2制御手段とをさらに備え、
前記シャッタ秒時設定手段は、前記短いシャッタ秒時を、前記感度設定手段により設定された前記高い撮像感度に基づく適正露出に対応する適正シャッタ秒時よりも短く設定することを特徴とするカメラ。
【請求項4】
請求項3に記載のカメラにおいて、
前記第2制御手段は、前記被写体の輝度が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値より低い場合は、前記画像処理手段が前記画像データに前記明るさを高める処理を施すことを許可し、前記被写体の輝度が前記第2の閾値より高い場合は、前記画像処理手段が前記画像データに前記明るさを高める処理を施すことを禁止することを特徴とするカメラ。
【請求項5】
請求項3または4に記載のカメラにおいて、
前記第2制御手段は、前記被写体の輝度が前記第1の閾値よりも小さい第3の閾値より低い場合は、前記感度設定手段が前記高い撮像感度を設定することを許可し、かつ、前記画像処理手段が前記画像データに前記明るさを高める処理を施すことを禁止することを特徴とするカメラ。
【請求項6】
請求項1に記載のカメラにおいて、
前記撮像手段により逐次生成された前記画像データを記憶媒体への記録を伴うことなく表示用画像として逐次表示する表示手段と、
前記画像処理手段が前記表示用画像の画像データに前記明るさを高める処理を施すことを禁止する第3制御手段とをさらに備えることを特徴とするカメラ。
【請求項7】
請求項6に記載のカメラにおいて、
前記第3制御手段は、前記撮像手段が前記表示用画像の画像データを生成する場合に、前記ブレ有りが判定されているときには、前記シャッタ秒時設定手段が前記適正シャッタ秒時よりも短い第1シャッタ秒時を設定すること、かつ、前記感度設定手段が前記第1シャッタ秒時に対応して適正露出となるように前記高い撮像感度を設定することを指示し、
前記撮像手段が前記記憶媒体に記録する画像データを取得する場合に、前記ブレ有りが判定されているときには、前記シャッタ秒時設定手段が前記第1シャッタ秒時よりも短い第2シャッタ秒時を設定すること、かつ、前記感度設定手段が第1シャッタ秒時に対応して適正露出となる前記高い撮像感度を設定することを指示することを特徴とするカメラ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のカメラにおいて、
前記画像処理手段は、前記適正シャッタ秒時と前記短いシャッタ秒時との差に基づいて、前記画像データの明るさを高める程度を決定することを特徴とするカメラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−35813(P2011−35813A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182347(P2009−182347)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】