説明

カラオケ装置

【課題】他の顧客に気付かれずに、歌唱者6のみが歌唱を支援するガイド音を聞くことができるカラオケ装置1を提供する。
【解決手段】カラオケ装置1は、歌唱者6の歌唱位置のみに対して、ガイド音(ガイドボーカル、ガイドメロディ、フレーズ、メトロノーム等)からなる指向性ビーム6aを放音する。例えば、ガイド音として、ガイドボーカルやガイドメロディが選択されると、カラオケ曲の歌唱旋律を歌唱者6に知らせることができる。また、ガイド音としてフレーズが選択されると、歌い出し時に、「いち、に、さん、ハイ」等の掛け声が入り、カラオケ曲の歌い出しを歌唱者6に知らせることができる。また、アカペラパートでは、ガイド音としてメトロノームが選択されると、カラオケ曲のテンポを歌唱者6に知らせることができる。このため、歌唱者6は、ガイド音に従って歌唱するだけで、ある程度上手に歌唱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
歌唱者の歌唱をサポートする機能を有するカラオケ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカラオケ装置は、カラオケボックス等の1室や、スナック店舗等の飲食店等に設置される場合が多い。
【0003】
従来のカラオケ装置は、ステレオスピーカを用いて、設置される場所内全体に伴奏音及び歌唱音声を拡声していた。この場合、歌唱者の歌唱音声、ガイドボーカル等は、店内の全てに聞こえるようになっていた。歌唱者以外の顧客にとって、歌唱が下手な歌唱者や練習中の歌唱者の歌唱音声は必ずしも聞きたいものではなく、場合によっては耳障りなものである。これを解決するために、例えば、歌唱者に向けた指向性スピーカを設置し、歌唱者には歌唱音声を聞かせ、歌唱者以外にはガイドボーカルを聞かせたりしていた(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−173137公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のカラオケ装置では、カラオケ曲とともに、ガイドボーカルを放音して、歌唱者の歌唱を支援していた。しかし、ガイドボーカルの他には、歌唱を支援する方法が無かった。例えば、歌い出しの指示等があると、歌唱者はより上手に歌唱することができる。従来のカラオケ装置では、このようなガイド音を出力するものが無く、また、仮にあったとしても、ガイドボーカルと同様に他の顧客にもガイド音が聞こえてしまうといった問題があった。
【0005】
そこで、この発明は、歌唱者の歌唱をサポートするために、歌唱者のみに種々のガイド音を放音するカラオケ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、歌唱音声を収音する第1のマイクと、該第1のマイクで収音した歌唱音声から音声信号を生成する第1の収音手段と、前記第1の収音手段により生成した音声信号を放音するとともに、歌唱者の歌唱位置に向けて、歌唱者の歌唱を支援するためのガイド音を放音する指向性ビームを生成する放音手段と、該放音手段により生成された指向性ビームを放音するスピーカアレイと、を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成では、カラオケ装置は、マイクで収音した収音音声を放音するとともに、歌唱者の歌唱位置に対して、歌唱者の歌唱をサポートするためのガイド音を含むガイド音ビームを生成して放音する。これにより、カラオケ装置は、歌唱者のみに対して、指向性を持たせてガイド音を放音することができる。このため、歌唱者は、他の顧客に気付かれずに、歌唱を支援するガイド音(歌い出しのタイミングやリズム等)を聞くことができる。また、歌唱者はガイド音に従って歌唱することで、ある程度上手に歌唱することができる。
【0008】
請求項2の発明は、前記放音手段は、前記第1の収音手段により収音した歌唱者の歌唱音声を逐次採点した採点結果に基づいて、前記ガイド音を生成することを特徴とする。
【0009】
この構成では、歌唱者の歌唱を逐次採点し、その採点結果に基づいてガイド音を生成して放音する。これにより、カラオケ装置は、現在までの歌唱内容に合わせて、適切なメッセージをガイド音として提供することができる。このため、音程がずれたり、歌唱が遅れたりするのをすぐ検知して、その旨をガイド音として提供することができる。
【0010】
請求項3の発明は、前記第1の収音手段により収音した歌唱者の歌唱音声を逐次採点した採点結果の履歴を記憶する履歴記憶手段を更に備え、前記放音手段は、該履歴記憶手段が記憶する採点結果の履歴に基づいて、前記ガイド音を生成することを特徴とする。
【0011】
この構成では、歌唱者の歌唱の採点結果を蓄積し、過去の採点結果に基づいて、ガイド音を生成して放音する。これにより、カラオケ装置は、歌唱者個人の癖に応じたメッセージをガイド音として提供することができる。また、カラオケ装置は、前回失敗した箇所や、失敗する頻度が多い箇所で適切なメッセージをガイド音として提供することができる。
【0012】
請求項4の発明は、音声を収音する第2のマイクと、該第2のマイクで収音した音声から前記ガイド音を生成する第2の収音手段と、を更に備えることを特徴とする。
【0013】
この構成では、歌唱音声の収音用とは別のマイクで収音した音声をガイド音として、歌唱者に放音する。これにより、カラオケ大会等で、カラオケ教室の先生が歌唱者に対して、歌い出しの指示をしたり、歌唱時の注意事項等を指導したりすることができる。歌唱者は、カラオケの先生のサポートを受けながら、歌唱することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、カラオケ装置は、歌唱者のみに、指向性を持たせて歌唱を支援するガイド音を放音することができる。これにより、歌唱者は、他の顧客に気付かれずに、歌唱を支援するガイド音を聞くことができる。また、歌唱者はガイド音に従って歌唱することで、ある程度上手に歌唱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態に係るカラオケ装置1について、図1を参照して説明する。図1は、カラオケ装置が設置された店内を説明する図である。
【0016】
図1に示すように、店内5には、カラオケ装置1(1A〜1D)が設置されている。カラオケ装置1は、マイク2aとスピーカアレイ3とモニタ4を有する。更に、店内5には、テーブル7(7a〜7d)が配置され、各テーブル7a〜7dには、それぞれ顧客が着席している。また、テーブル7aの顧客である歌唱者6は、カラオケ装置1を利用して歌唱する。
【0017】
この発明では、カラオケ装置1は、歌唱者6に対してのみガイド音(ガイドボーカル、ガイドメロディ、フレーズ、メトロノーム等)を聞かせる。これにより、歌唱者6はガイド音の助けを得ることができるので、ある程度上手に歌唱することができる。
【0018】
具体的には、歌唱者6が歌唱すると、カラオケ装置1は、ガイド音と歌唱音声と伴奏音とからなる指向性ビーム6aを生成して、歌唱者6に向けて放音し、歌唱音声と伴奏音とからなる指向性ビーム70a〜70dを生成して、テーブル7a〜7dに向けて放音する。この際、歌唱者6の歌唱位置は、モニタ4付近としてもよいし、任意の位置に移動してもよい。この場合には、公知の方法で歌唱位置を検出するとよい。
【0019】
[第1実施形態]
第1実施形態に係るカラオケ装置1Aの機能について、図2を参照して説明する。図2は、カラオケ装置の機能ブロック図である。カラオケ装置1Aは、操作部10、制御部11、記憶部12、カラオケ演奏部13、A/D変換部14(14−1〜14−3)、音声信号処理部15、D/A変換部16(16−1〜16−n)及びAMP17(17−1〜17−n)から構成される。なお、説明の簡単化のため、モニタ4に表示する映像についての説明を除き、スピーカアレイ3から放音される音についての説明のみを行う。なお、歌唱者6の歌唱位置(マイク位置)は、例えば、2つのスピーカからそれぞれ測定音を放音し、これらの測定音をマイクで収音するまでの時間を求め、三角法を用いて算出することができる。このような公知の方法で、歌唱者6の歌唱位置が検出されるものとして、以下に説明する。また、歌唱者6がモニタ4の前で移動せずに歌唱する場合は、ガイド音を含む指向性ビーム6aを固定してもよい。
【0020】
操作部10は、歌唱者6等からの操作入力に応じて、操作入力内容を制御部11へ出力する。具体的には、操作部10には、選曲されたカラオケ曲の曲番号等が入力される。
【0021】
制御部11は、操作部10で入力を受け付けると、記憶部12及びカラオケ演奏部13の制御を行う。具体的には、操作部10から入力されたカラオケ曲を演奏する順番になると、制御部11は、選曲されたカラオケ曲の伴奏音のデータとカラオケ曲に対応したガイド音のデータとを記憶部12から読み込み、カラオケ演奏部13へ出力する。
【0022】
更に、制御部11は、音声信号処理部15の制御を行う。具体的には、制御部11は、公知の方法で、マイク2aの位置(歌唱者6の位置)を定期的に検出し、マイク2aの位置情報を音声信号処理部15へ出力する。また、制御部11は、歌唱者6に向けて放音するガイド音を音声信号処理部15に指示する。この際、制御部11は、歌唱者6等の操作部10の操作入力により指定されたガイド音のみを放音するよう指示する。
【0023】
例えば、ガイド音として、ガイドボーカルやガイドメロディが選択されると、カラオケ曲の歌唱旋律を歌唱者6に知らせることができる。また、ガイド音としてフレーズが選択されると、歌い出し時に、「いち、に、さん、ハイ」等の掛け声が入り、カラオケ曲の歌い出しを歌唱者6に知らせることができる。これにより、歌唱者6は、歌い出しが早かったり遅れたりせずに、適切なタイミングで歌いだすことができる。また、アカペラパートでは、ガイド音としてメトロノームが選択されると、カラオケ曲のテンポを歌唱者6に知らせることができる。これにより、歌唱者6は、カラオケ曲のリズムを取ることができる。このため、歌唱者6は、ガイド音に従って歌唱するだけで、ある程度上手に歌唱することができる。
【0024】
記憶部12は、複数のカラオケ曲の伴奏音のデータと各カラオケ曲に対応したガイド音のデータとが記憶される。ガイド音は、ガイドボーカル、ガイドメロディ、フレーズ、メトロノーム等から構成される。なお、ガイド音は、カラオケ曲毎に保持するガイド音の種類が異なってもよく、例えば、ガイドボーカルのみから構成されてもよい。
【0025】
カラオケ演奏部13は、音源131とガイド音再生部132とから構成され、カラオケ曲の伴奏音を演奏するとともに、ガイド音を再生する。音源131は、制御部11から入力された伴奏音のデータに基づいた音色の楽音信号(オーディオ信号)を生成し、この伴奏音のオーディオ信号をA/D変換部14−2を介してビーム制御部152へ出力する。ガイド音再生部132は、制御部11から入力されたガイド音のデータを読み出して再生し、ガイド音のオーディオ信号をA/D変換部14−3を介してビーム制御部153へ出力する。また、A/D変換部14−2は、伴奏音のオーディオ信号をアナログ形式からデジタル形式に変換する。A/D変換部14−3は、ガイド音のオーディオ信号をアナログ形式からデジタル形式に変換する。
【0026】
A/D変換部14−1は、マイク2aにより収音された収音音声(歌唱者6の歌唱音声、スピーカアレイ3から放音された伴奏音とガイド音)をアナログ形式からデジタル形式に変換して収音信号を生成する。A/D変換部14−1は、生成した収音信号をビーム制御部151へ出力する。
【0027】
音声信号処理部15は、ビーム制御部151〜153及びミキサ154から構成される。音声信号処理部15は、収音信号、カラオケ曲の伴奏音のオーディオ信号、ガイド音のオーディオ信号が入力されると、それぞれに対して遅延処理やミキシング等を行い、スピーカアレイ3を構成する各スピーカSP1〜SPnの放音音声信号を生成する。
【0028】
具体的には、ビーム制御部151は、A/D変換部14−1から収音信号が入力されると、図1に示した歌唱者6及び各テーブル7a〜7dに対する指向性ビーム6a,70a〜70dを形成するように、収音信号に対して遅延制御等を行い、ミキサ154へ出力する。この際、歌唱者6の歌唱位置情報は、制御部11から入力される。また、ビーム制御部152は、A/D変換部14−2から伴奏音のオーディオ信号が入力されると、歌唱者6及びテーブル7a〜7dに対する指向性ビーム6a,70a〜70dを形成するように、伴奏音のオーディオ信号に対して遅延制御等を行い、ミキサ154へ出力する。更に、ビーム制御部153は、A/D変換部14−3からガイド音のオーディオ信号が入力されると、制御部11により指定されたガイド音を歌唱者6に対して放音するように、ガイド音のオーディオ信号に対して遅延制御等を行い、ミキサ154へ出力する。
【0029】
ミキサ154は、ビーム制御部151〜153から入力された各種信号に対して、これら信号を適切なバランスでミキシングして放音音声信号を生成する。ミキサ154は、放音音声信号を、D/A変換部16及びAMP17を介して各スピーカSP1〜SPnへ出力する。この際、D/A変換部16及びAMP17にて、D/A変換や増幅等が行われる。各スピーカSP1〜SPnは、放音音声信号が入力されると、指向性ビーム6a,70a〜70dを形成して放音する。
【0030】
次に、ガイド音の放音処理の流れについて図3を参照して説明する。図3は、第1実施形態に係る放音処理手順を示すフローチャートである。なお、説明の簡単化のため、テーブル7a〜7dに向けての放音についての説明は省略し、歌唱者6に向けての放音についてのみ説明する。
【0031】
図3に示すように、制御部11は、カラオケ演奏部13に、カラオケ曲の伴奏音とカラオケ曲に対応するガイド音を入力する(S101)とともに、マイク2aにて歌唱音声の収音を開始させる(S102)。そして、制御部11は、公知の方法で歌唱者6の歌唱位置を検出する(S103)。この歌唱位置は、音声信号処理部15へ入力される。
【0032】
音声信号処理部15は、ガイド音の入力の有無を調べる(S104)。音声信号処理部15は、ガイド音の入力がある場合(S104:Yes)、ガイド音とカラオケ曲の伴奏音と収音した歌唱音声とからなる放音音声信号を生成し(S105)、ガイド音の入力が無い場合(S104:No)は、カラオケ曲の伴奏音と収音した歌唱音声とからなる放音音声信号を生成する(S106)。この際、音声信号処理部15は、制御部11が検出した歌唱位置に指向性ビームの放音を行うように、遅延処理やミキシング等を行い、放音音声信号を生成する。音声信号処理部15は、放音音声信号を各スピーカSP1〜SPnに入力し、歌唱者6に向けて指向性ビーム6aを放音する(S107)。ステップS101〜S107の処理は、カラオケ曲が終了するまで繰り返し行われる。
【0033】
これにより、第1実施形態に係るカラオケ装置1Aは、歌唱者6の位置を追尾して、歌唱者6のみに対して、ガイド音を放音することができる。このため、歌唱者6は、ガイド音の助けを得ていることを他人に知られずに、ある程度上手に歌唱することができる。特に、歌唱者6は、ガイド音の助けを得ることで、カラオケ曲の歌い出だしのタイミングやカラオケ曲のリズムを正確に取ることができる。
【0034】
[第2実施形態]
第2実施形態に係るカラオケ装置1Bについて、図4〜6を参照して説明する。図4は、カラオケ装置の機能ブロック図である。図5は、第2実施形態に係る放音処理手順(歌唱中の採点結果に基づいたガイド音)を示すフローチャートである。図6は、第2実施形態に係る放音処理手順(歌唱履歴に基づいたガイド音)を示すフローチャートである。
【0035】
第2実施形態のカラオケ装置1Bは、制御部11に採点処理部111を備え、記憶部12に履歴DB121を備える点が第1実施形態と異なる。また、カラオケ装置1Bは、歌唱者6の歌唱中に、逐次歌唱を採点し、その採点結果に基づいて、随時ガイド音を発生したり、採点結果を履歴DB121に蓄積し、履歴DB121に蓄積された採点結果に基づいて、ガイド音を発生したりする。
【0036】
図4に示すように、採点処理部111は、制御部11内に備えられ、歌唱者6の歌唱音声とガイドメロディ等に基づいて採点する。具体的には、歌唱者6の歌唱音声は、マイク2aにて収音され、A/D変換部14−1を介して、音声信号処理部15へ入力される。この際、A/D変換部14−1は、歌唱音声をアナログ形式からデジタル形式に変換して、収音信号を生成する。収音信号は、音声信号処理部15にて、カラオケ演奏部13から入力されるガイドメロディとともに、採点処理部111へ入力される。採点処理部111では、ガイドメロディが指定する音量・音高(ピッチ)・タイミングと、歌唱音声の音量・ピッチ・タイミングとを比較し、その一致度を採点結果として記憶部12の履歴DB121へ登録する。具体的に例えば、採点結果は、上手く歌唱できなかった箇所と、上手く歌唱できなかった理由とから構成され、歌唱開始25秒に音程が外れた、歌唱開始30秒に歌唱時の出だしが遅れた等である。
【0037】
履歴DB121は、記憶部12内に備えられ、採点処理部111からカラオケ曲の採点結果が入力されると、採点結果を記憶する。例えば、記憶部12は、各歌唱者6の採点結果を半年分記憶する。また、操作部10にて歌唱者6固有のIDを入力することにより、歌唱者6を判別することができる。
【0038】
制御部11については、「歌唱中の採点結果に基づいてガイド音を発生する場合」と「履歴を参照してガイド音を発生する場合」とに場合分けして、以下に機能を説明する。なお、カラオケ装置1Bは、「歌唱中の採点結果に基づいてガイド音を発生する場合」と「履歴を参照してガイド音を発生する場合」とのどちらか一方の処理を行ってもよいし、両方の処理を一度に行ってもよい。
【0039】
「歌唱中の採点結果に基づいてガイド音を発生する場合」
制御部11は、採点処理部111にて、歌唱者6の歌唱中に、歌唱を逐次採点することにより、低得点の箇所(上手に歌唱できなかった箇所)が発生すると、その都度、適切なメッセージを生成して音声信号処理部15へ出力する。例えば、歌唱者6のリズムが崩れた場合は、リズムを取り戻させるために、「落ち着いて」等のメッセージを生成する。また、歌詞を間違えると、「歌詞をよく見て」等メッセージを生成して、音声信号処理部15へ出力する。更に、カラオケ曲の1番を歌唱中に低得点の箇所が発生すると、2番を歌唱する際に、適切なメッセージ(例えば、「抑揚を大きく」、「こぶしを利かせて」、「ゆっくりと」等)を生成して、音声信号処理部15へ出力する。音声信号処理部15は、メッセージに対して遅延処理やミキシング等し、各スピーカSP1〜SPnに対応する放音音声信号を生成する。この放音音声信号は、歌唱者6に向けて放音する指向性ビーム6aに対応する。
【0040】
「履歴を参照してガイド音を発生する場合」
制御部11は、カラオケ曲が選択されると、履歴DB121内に選択されたカラオケ曲の採点結果が記憶されているかどうかを確認する。採点結果が記憶されている場合は、採点結果に基づき、低得点の箇所に近づくとメッセージを生成して、音声信号処理部15へ出力する。例えば、よく音程を外す箇所では、「音程に気をつけて」等のメッセージを生成して、音声信号処理部15へ出力する。また、リズムを外しやすい箇所では、「リズムに気をつけて」等のメッセージを生成して、音声信号処理部15へ出力する。音声信号処理部15は、メッセージに対して遅延処理やミキシング等し、各スピーカSP1〜SPnに対応する放音音声信号を生成する。この放音音声信号は、歌唱者6に向けて放音する指向性ビーム6aに対応する。また、この際、採点結果は、前回の採点結果に基づいてメッセージを生成してもよいし、過去数回の採点結果に基づいてメッセージを生成してもよい。
【0041】
制御部11が音声信号処理部15へ出力するメッセージとして、例えば、以下のメッセージが生成される。音量が小さい場合は、音量を上げる旨のメッセージ「大声で」、「もっと大声で」等を生成し、音量が大きい場合は、音量を下げる旨のメッセージ「小声で」、「もっと小声で」等を生成する。また、音高(ピッチ)が高音の場合は、低音にする旨のメッセージ「低音で」を生成し、音高(ピッチ)が低音の場合は、高音にする旨のメッセージ「高音で」等を生成する。また、タイミングが早い場合は、遅くする旨のメッセージ「ゆっくり」、「もっとゆっくり」等を生成し、タイミングが遅い場合は、早くする旨のメッセージ「早く」、「もっと早く」等を生成する。
【0042】
次に、ガイド音の放音処理の流れについて図5,6を参照して説明する。図5は、歌唱中の採点結果に基づいてガイド音を発生する場合の処理の流れを示し、図3のステップS102とステップS103との間に、ステップS203〜S205の処理を追加したものである。図6は、履歴を参照してガイド音を発生する場合の処理の流れを示し、図5のステップS204,S205の処理を、ステップS224〜S226の処理に置き換えたものである。なお、説明の簡単化のため、テーブル7a〜7dに向けての放音についての説明は省略し、歌唱者6に向けての放音についてのみ説明する。また、「歌唱中の採点結果に基づいてガイド音を発生する場合」と「履歴を参照してガイド音を発生する場合」とに分けて説明する。更に、カラオケ曲に対応するガイド音の放音処理に関する説明は省略する。加えて、図3の動作と重複する処理については説明を省略する。
【0043】
「歌唱中の採点結果に基づいてガイド音を発生する場合」
図5に示すように、ステップS201,S202の処理に続いて、採点処理部111は、ステップS203にて、収音した歌唱音声の採点を行う。この際、制御部11の指示により、採点処理部111は、歌唱音声の採点結果を履歴DB121に記憶する。
【0044】
制御部11は、採点処理部111の採点結果が低得点かどうか調べる(S204)。低得点の場合(S204:Yes)は、ステップS205へ進む。低得点以外の場合(S204:No)は、ステップS206へ進み、以降の処理を行う。
【0045】
ステップS205にて、制御部11は、ガイド音を生成し、ビーム制御部153へ出力して、ステップS206へ進み、以降の処理を行う。この際、ガイド音は、採点結果に基づいて生成される。
【0046】
「履歴を参照してガイド音を発生する場合」
図6に示すように、ステップS221〜S223の処理に続いて、制御部11は、ステップS224にて、履歴DB121に歌唱履歴が存在するかどうか調べる。歌唱履歴が存在した場合(S224:Yes)は、ステップS225の処理を行う。歌唱履歴が存在しない場合(S224:No)は、ステップS227へ進む。
【0047】
ステップS225にて、カラオケ装置1Bは、履歴DB121を参照して、低得点の箇所に該当するかどうか調べる。低得点の箇所に該当する場合(S225:Yes)は、ステップS226へ進む。低得点の箇所に該当しない場合(S225:No)は、ステップS227へ進む。
【0048】
ステップS226にて、制御部11は、ガイド音を生成し、ビーム制御部153へ出力して、ステップS227へ進む。この際、ガイド音は、記憶部12の履歴DB121に格納された歌唱履歴に基づいて生成される。
【0049】
これにより、カラオケ装置1Bは、歌唱者6の現在の歌唱状況に応じて、適切なメッセージをガイド音として提供することができる。また、カラオケ装置1Bは、前回上手に歌唱できなかった箇所や、歌唱を失敗するケースが多い箇所になると、適切なメッセージをガイド音として提供することができる。このため、歌唱者6は、ガイド音に従って歌唱すると、普段より上手に歌唱することができる。
【0050】
なお、採点処理部111は、歌唱音声とガイドメロディの音量、音高(ピッチ)、タイミングと歌唱音声を比較して採点したが、これに限らず、公知の採点方法を用いればよい。
【0051】
また、第2実施形態のカラオケ装置1Bは、カラオケ演奏部13にガイド音再生部132を備えるが、ガイド音再生部132は備えなくてもよい。この場合、採点処理部111は、歌唱音声とカラオケ曲に基づいて採点すればよい。
【0052】
[第3実施形態]
第3実施形態に係るカラオケ装置1Cについて、図7,8を参照して説明する。図7は、カラオケ装置の機能ブロック図である。図8は、第3実施形態に係る放音処理手順を示すフローチャートである。第3実施形態のカラオケ装置1Cは、A/D変換部14−3に接続されるマイク2bを備える点が第1実施形態と異なる。カラオケ装置1Cは、マイク2bからの収音音声をガイド音声として歌唱者6に向けて放音する。
【0053】
図7に示すように、ビーム制御部153は、A/D変換部14−3を介して、マイク2bからガイド音声が入力されると、マイク2bからのガイド音声を歌唱者6に対して放音するよう遅延制御等を行う。この際、A/D変換部14−3は、ガイド音声をアナログ形式からデジタル形式に変換してガイド音声信号を生成する。更に、ビーム制御部153は、ガイド音再生部132から入力されたガイド音を、マイク2bのガイド音声とともに歌唱者6に向けて放音する。
【0054】
次に、ガイド音声の放音処理の流れについて図8を参照して説明する。図8は、図3のステップS103〜S106の処理を、ステップS303〜S307の処理に置き換えたものである。なお、説明の簡単化のため、テーブル7a〜7dに向けての放音についての説明は省略し、歌唱者6に向けての放音についてのみ説明する。また、説明の簡単化のため、カラオケ曲に対応するガイド音の放音処理に関する説明は省略する。また、図3の動作と重複する処理は説明を省略する。
【0055】
ステップS301,S302の処理に続いて、マイク2bは、ステップS303にて、ガイド音声を収音し、音声信号処理部15のビーム制御部153へ出力する。
【0056】
制御部11は、公知の方法で歌唱者6の歌唱位置を検出する(S304)。この歌唱位置は、音声信号処理部15へ入力される。
【0057】
音声信号処理部15は、ガイド音声の入力の有無を調べる(S305)。音声信号処理部15は、ガイド音声の入力がある場合(S305:Yes)は、ガイド音声とカラオケ曲の伴奏音と収音した歌唱音声とからなる放音音声信号を生成し(S307)、ガイド音声の入力が無い場合(S305:No)は、カラオケ曲の伴奏音と収音した歌唱音声とからなる放音音声信号を生成する(S306)。この際、制御部11が検出した歌唱位置に指向性ビームの放音を行うように、遅延処理やミキシング等を行い、放音音声信号を生成する。そして、ステップS308の処理を行う。
【0058】
これにより、カラオケ装置1Cは、マイク2bの収音音声をガイド音声として利用することができる。例えば、カラオケ教室やカラオケ大会等で、歌唱者6がマイク2aを用いて歌唱する際に、カラオケ教室の先生は、マイク2bを用いて、歌唱者6への歌い出しの指示や歌唱時の注意事項等を指導したりすることができる。このため、歌唱者6は、ある程度上手にカラオケを歌唱することができる。
【0059】
また、第3実施形態のカラオケ装置1Cは、カラオケ演奏部13にガイド音再生部132を備えるが、これに限らず、ガイド音再生部132を備えなくてもよい。この場合、歌唱者6に放音されるガイド音は、マイク2bから収音されたガイド音声のみとなる。
【0060】
以上のように、第1〜第3実施形態では、歌唱者6が一人で歌唱する場合について説明した。しかしながら、2人の歌唱者がデュエットする場合には、図9に示すカラオケ装置1Dのように、マイク2a,2a−1とそれぞれのマイク2a,2a−1に対応したA/D変換部14−1,14−4及びビーム制御部151,151−1を備えるように構成するとよい。カラオケ装置1Dは、公知の方法で、両方の歌唱者の歌唱位置を検知する。また、カラオケ装置1Dは、ビーム制御部153にて、歌唱者のそれぞれに対応するガイド音を含む指向性ビームを歌唱者毎に生成して、それぞれの歌唱位置にガイド音を放音する。この際、カラオケ装置1Dは、ビーム制御部153にて、両方の歌唱者にガイド音を放音してもよいし、一方の歌唱者のみにガイド音を放音してもよい。これにより、カラオケ装置1Dは、各歌唱者を追尾して、歌唱者の少なくとも一方に適切なガイド音を放音することができる。このため、歌唱者は、ガイド音を聞きながら、他の歌唱者とデュエットすることができる。
【0061】
なお、カラオケ装置1Dは、カラオケ装置1Aをデュエット用にしたものだが、カラオケ装置1B,1Cについてもカラオケ装置1Dのようにデュエット用にすることが可能である。また、第3実施形態では、カラオケ装置1Cは、スイッチ等を操作することにより、マイク2bのガイド音声の放音先を切り替える。例えば、両方の歌唱者にガイド音声を放音したり、指定した一方の歌唱者のみにガイド音声を放音したりする。また、カラオケ装置1Cに、各歌唱者に対応したマイクを設け、それぞれのマイクで収音した収音音声をガイド音声として、対応する歌唱者に放音する。
【0062】
なお、第1〜第3実施形態に係るカラオケ装置1A〜1Cは、歌唱者6の歌唱音声と伴奏音とからなる指向性ビーム70a〜70dを、店内5の各テーブル7a〜7dに向けてスピーカアレイ3から放音した。しかしながら、これに限らず、カラオケ装置1A〜1Cは、歌唱者6の歌唱音声とカラオケ曲の伴奏音を無指向でスピーカアレイ3から放音してもよい。また、歌唱者6のグループのみに歌唱を聞かせたい場合には、カラオケ装置1A〜1Cは、歌唱者6の歌唱音声とカラオケ曲の伴奏音とからなる指向性ビーム70aを生成して、歌唱者6のグループに向けてスピーカアレイ3から放音し、ガイドボーカルとカラオケ曲の伴奏音とからなる指向性ビーム70b〜70dを生成して、他のテーブル7b〜7dに向けてスピーカアレイ3から放音してもよい。また、以上の説明では、マイク位置を公知の方法で検出するとした。しかしながら、これに限らず、歌唱者6がモニタ4の前から移動しない場合には、ガイド音のビームの方向を固定してもよい。
【0063】
以上より、本発明に係るカラオケ装置1は、歌唱者6に対して、ガイド音を含む指向性ビーム6aを放音する。これにより、カラオケ装置1は、他の顧客に気付かれずに、歌唱を支援するガイド音を歌唱者6のみに対して放音することができる。このため、歌唱者6は、ガイド音のサポートを受けることで、他の顧客に気付かれずに、ある程度上手に歌唱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】カラオケ装置が設置された店内を説明する図である。
【図2】第1実施形態に係るカラオケ装置の機能ブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る放音処理手順を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態に係るカラオケ装置の機能ブロック図である。
【図5】第2実施形態に係る放音処理手順(歌唱中の採点結果に基づいたガイド音)を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態に係る放音処理手順(歌唱履歴に基づいたガイド音)を示すフローチャートである。
【図7】第3実施形態に係るカラオケ装置の機能ブロック図である。
【図8】第3実施形態に係る放音処理手順を示すフローチャートである。
【図9】デュエット用のカラオケ装置の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0065】
1−カラオケ装置,2a,2b,2a−1−マイク,3−スピーカアレイ,4−モニタ,5−店内,6−歌唱者,6a,70a〜70d−指向性ビーム,7(7a〜7d)−テーブル,10−操作部,11−制御部,12−記憶部,13−カラオケ演奏部,14(14−1〜14−4),15−音声信号処理部,16(16−1〜16−n)−D/A変換部,17(17−1〜17−n)−AMP,111−採点処理部,121−履歴DB,131−音源,132−ガイド音再生部,151,151−1,152,153−ビーム制御部,154−ミキサ,SP1〜SPn−スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歌唱音声を収音する第1のマイクと、
該第1のマイクで収音した歌唱音声から音声信号を生成する第1の収音手段と、
前記第1の収音手段により生成した音声信号を放音するとともに、歌唱者の歌唱位置に向けて、歌唱者の歌唱を支援するためのガイド音を放音する指向性ビームを生成する放音手段と、
該放音手段により生成された指向性ビームを放音するスピーカアレイと、を備えるカラオケ装置。
【請求項2】
前記放音手段は、前記第1の収音手段により収音した歌唱者の歌唱音声を逐次採点した採点結果に基づいて、前記ガイド音を生成する請求項1に記載のカラオケ装置。
【請求項3】
前記第1の収音手段により収音した歌唱者の歌唱音声を逐次採点した採点結果の履歴を記憶する履歴記憶手段を更に備え、
前記放音手段は、該履歴記憶手段が記憶する採点結果の履歴に基づいて、前記ガイド音を生成する請求項1又は請求項2に記載のカラオケ装置。
【請求項4】
音声を収音する第2のマイクと、
該第2のマイクで収音した音声から前記ガイド音を生成する第2の収音手段と、を更に備える請求項1〜請求項3のいずれかに記載のカラオケ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−209597(P2008−209597A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45335(P2007−45335)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】