説明

カラーフィルタ、および当該カラーフィルタを備えた有機EL表示装置

【課題】表示装置に組み込まれた際に高い封止性能を発揮するカラーフィルタを提供する。
【解決手段】カラーフィルタ10は、カラーフィルタ用基材20と、カラーフィルタ用基材20に積層されたカラーフィルタ層11とを備えている。このうちカラーフィルタ用基材20は、内部にキャビティ21を形成するとともに、一側に天板23を有し、かつ他側に周縁枠体22を有している。カラーフィルタ層11は、天板23のうちキャビティ内面23aに積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカラーフィルタに係り、とりわけ、表示装置に組み込まれた際に高い封止性能を発揮するカラーフィルタに関する。また本発明は、当該カラーフィルタを備えた有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平面ディスプレイ等の分野において、陽極と陰極との間に有機発光層を挟持して構成された有機EL層を含む有機EL表示装置が提案されており、その応用研究が盛んに行われている。しかしながら、有機発光層は周囲に存在する水分および酸素の影響を受けやすく、このため有機EL表示装置内に水分および酸素が入り込むと、有機EL表示装置の発光性能が劣化するという問題がある。
【0003】
このような問題を解決するため、有機EL表示装置を封止するための様々な方法が提案されている。例えば特許文献1において、基板ガラスとカバーガラスの間を、熱により軟化する低融点ガラスフリットにより封止する方法が提案されている。また特許文献2において、基板ガラスとカバーガラスの間に硬化性樹脂を充填し、これによって基板ガラスとカバーガラスの間を封止する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−517446号公報
【特許文献2】特開2005−302401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法により基板ガラスとカバーガラスの間を封止する場合、低融点ガラスフリットのみに選択的にレーザーを照射し、これによって低融点ガラスフリットを加熱する。このとき、低融点ガラスフリットを軟化させるため、低融点ガラスフリットを一般に100度以上の温度にまで加熱する。このため、加熱に要する時間が長くなることが考えられる。さらに、低融点ガラスフリットを加熱する際に有機EL層もともに加熱され、これによって有機EL層の特性が劣化することが考えられる。
【0006】
また特許文献2に記載の方法により基板ガラスとカバーガラスの間を封止する場合、基板ガラスとカバーガラスの間隔に相当する厚さ、例えば数十μmの厚さの硬化性樹脂が外気に接する。この場合、外気中の水分および酸素が硬化性樹脂を透過して有機EL表示装置内に入り込み、これによって有機EL層の発光性能が劣化することが考えられる。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、表示装置に組み込まれた際に高い封止性能を発揮するカラーフィルタを提供することを目的とする。また本発明は、当該カラーフィルタを備えた有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるカラーフィルタは、カラーフィルタ用基材と、カラーフィルタ用基材に積層されたカラーフィルタ層とを備え、カラーフィルタ用基材は、一側に天板を有し、かつ他側に周縁枠体を有するとともに、これら天板と周縁枠体によって内部にキャビティを形成し、カラーフィルタ層は、天板のうちキャビティ内面に積層されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によるカラーフィルタにおいて、前記カラーフィルタ用基材の周縁枠体のうち他側に向う面に、周縁枠体全周に延びる溝を形成してもよい。
【0010】
本発明によるカラーフィルタにおいて、前記溝の幅は、好ましくは1μm以上であり、前記溝の深さは、好ましくは1μm以上かつ30μm以下である。
【0011】
本発明によるカラーフィルタにおいて、前記カラーフィルタ用基材の周縁枠体のうち他側に向う面に、周縁枠体全周にわたって額縁ブラックマトリクス層を形成してもよい。
【0012】
本発明によるカラーフィルタにおいて、前記額縁ブラックマトリクス層は、金属膜または遮光性樹脂から形成されていてもよい。
【0013】
本発明による有機EL表示装置は、上記記載のカラーフィルタと、当該カラーフィルタの他側に配置されて、このカラーフィルタを支持するガラス基板と、ガラス基板上に設けられるとともに、キャビティ内に配置され、陽極と、陰極と、陽極と陰極の間に設けられた有機発光層とを有する有機EL層とを備え、カラーフィルタ用基材の周縁枠体とガラス基板との間に、ガラス基板上にカラーフィルタを固定する接着剤が介在されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カラーフィルタは、カラーフィルタ用基材と、カラーフィルタ用基材に積層されたカラーフィルタ層とを備え、カラーフィルタ用基材は、一側に天板を有し、かつ他側に周縁枠体を有するとともに、これら天板と周縁枠体によって内部にキャビティを形成し、カラーフィルタ層は、天板のうちキャビティ内面に積層されている。このため、本発明によるカラーフィルタを用いて表示装置、例えば有機EL表示装置を構成する場合、有機EL層をキャビティ内に収納することができる。このことにより、カラーフィルタの周縁枠体によって、有機EL表示装置の側方から有機EL表示装置内に水分および酸素が入り込むのを防ぐことができる。
【0015】
また本発明によれば、有機EL表示装置は、上記記載のカラーフィルタと、当該カラーフィルタの他側に配置されて、このカラーフィルタを支持するガラス基板と、ガラス基板上に設けられるとともに、キャビティ内に配置され、陽極と、陰極と、陽極と陰極の間に設けられた有機発光層とを有する有機EL層とを備え、カラーフィルタ用基材の周縁枠体とガラス基板との間に、ガラス基板上にカラーフィルタを固定する接着剤が介在されている。このことにより、カラーフィルタの周縁枠体によって、有機EL表示装置の側方から有機EL表示装置内に水分および酸素が入り込むのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)は、本発明の第1の実施の形態におけるカラーフィルタを示す縦断面図、図1(b)は、本発明の第1の実施の形態におけるカラーフィルタを示す平面図。
【図2】図2は、図1に示すカラーフィルタのカラーフィルタ層を拡大して示す縦断面図。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態における有機EL表示装置を示す縦断面図。
【図4】図4(a)(b)(c)(d)は、本発明の第1の実施の形態において、有機EL表示装置を製造する工程を示す図。
【図5】図5は、第1の比較例としての有機EL表示装置を示す縦断面図。
【図6】図6は、第2の比較例としての有機EL表示装置を示す縦断面図。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態におけるカラーフィルタを示す縦断面図。
【図8】図8は、本発明の第2の実施の形態における有機EL表示装置を示す縦断面図。
【図9】図9(a)は、本発明の第2の実施の形態における有機EL表示装置を示す縦断面図、図9(b)は、本発明の第2の実施の形態における有機EL表示装置を示す平面図。
【図10】図10(a)(b)(c)(d)(e)は、本発明の第2の実施の形態において、カラーフィルタを製造する工程を示す図。
【図11】図11(a)(b)(c)(d)は、本発明の第2の実施の変形例を示す図。
【図12】図12(a)は、本発明の第3の実施の形態における有機EL表示装置を示す縦断面図、図12(b)は、本発明の第3の実施の形態における有機EL表示装置を示す平面図。
【図13】図13(a)(b)(c)(d)(e)は、本発明の第3の実施の形態において、カラーフィルタを製造する工程を示す図。
【図14】図14は、本発明の第4の実施の形態におけるカラーフィルタを示す縦断面図。
【図15】図15は、本発明の第4の実施の形態における有機EL表示装置を示す縦断面図。
【図16】図16は、本発明の第4の実施の形態の変形例におけるカラーフィルタを示す縦断面図。
【図17】図17は、本発明の第4の実施の形態の変形例における有機EL表示装置を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の実施の形態
以下、図1乃至図6を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。まず図3により、本実施の形態における有機EL表示装置40全体について説明する。
【0018】
有機EL表示装置
図3に示すように、有機EL表示装置40は、後述するキャビティ21が内部に形成されたカラーフィルタ10と、カラーフィルタ10を支持するガラス基板47と、ガラス基板47上に設けられるとともに、キャビティ21内に配置され、陽極41と、陰極43と、陽極41と陰極43の間に設けられた有機発光層42とを有する有機EL層44とを備えている。なお本実施の形態における有機EL表示装置40はいわゆるトップエミッション型であり、有機EL層14からの発光が図3に示す矢印の向きに取り出される。
【0019】
また、カラーフィルタ10の後述する周縁枠体22とガラス基板47との間に接着剤30が介在されており、これによってカラーフィルタ10とガラス基板47とが接着されている。
【0020】
本実施の形態におけるガラス基材47は、有機EL層44を支持するとともに、外気を遮断することができるものであれば特に限定されるものではないが、安定性、耐久性等が良好なことから、ガラスや透明ポリマーであることが好ましい。
【0021】
陽極41としては、効率良く正孔を注入できる材料であれば特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀または金およびそれらの合金等を使用することが好ましい。
【0022】
一方、陰極43は、電子を注入しやすく、かつ光透過性の良好な材料が用いられており、例えば酸化リチウム、炭酸セシウム等が用いられる。
【0023】
有機発光層42としては、所定の電圧を印加することにより発光する蛍光性有機物質を含有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、キノリノール錯体、オキサゾール錯体、各種レーザー色素、ポリパラフェニレンビニレン等が挙げられる。
【0024】
なお、陽極41から注入された正孔を有機発光層12に効率的に輸送するため、陽極41と有機発光層42との間に正孔輸送層(図示せず)を設けてもよい。正孔輸送層の構成材料として、例えばテトラフェニルベンジジンが挙げられる。さらに、陽極41と正孔輸送層との間に正孔注入層(図示せず)を設けてもよい。また、有機発光層42と陰極43との間に、電子注入層(図示せず)や電子輸送層(図示せず)を設けてもよい。
【0025】
また図3に示すように、ガラス基板47上に設けられた有機EL層44は、水分を遮蔽するバリア膜45により覆われている。このバリア膜45は、複数、例えば20の層を積層して形成されており、バリア膜45の各層の材料としては、珪素、アルミニウム、亜鉛またはスズの酸化物または酸窒化物等が挙げられる。しかしながら、後述するように、有機EL層44を覆うバリア膜45は必ずしも設けなくてもよい。
【0026】
さらに図3に示すように、キャビティ21に、有機EL表示装置40内の水蒸気を吸着する乾燥剤46が、有機EL層44からの発光を妨害しないよう配置されている。乾燥剤46の材料としては、バリウムまたはカルシウムの酸化物等が挙げられる。しかしながら、乾燥剤46は必ずしも設けなくてもよい。
【0027】
接着剤30としては、カラーフィルタ10の周縁枠体22とガラス基板47とを良好に接着させる機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等の一種単独または二種以上の組合わせからなる接着機能を有する樹脂等を使用することが好ましい。
【0028】
カラーフィルタ
次に、図1(a)(b)を参照してカラーフィルタ10について詳述する。図1(a)(b)に示すように、カラーフィルタ10は、カラーフィルタ用基材20と、カラーフィルタ用基材20に積層されたカラーフィルタ層11とを備えている。
【0029】
カラーフィルタ用基材
このうちカラーフィルタ用基材20は、図1(a)(b)に示すように、一側に天板23を有し、かつ他側に周縁枠体22を有するとともに、これら天板23と周縁枠体22によって内部にキャビティ21を形成している。本実施の形態において、キャビティ21の深さは、例えば14μmとなっている。
【0030】
カラーフィルタ用基材20の材料は、有機EL層44の発光を外部に取り出すことができ、かつ水分および酸素を効率的に遮断することができる限り特に限定されるものではない。ただし、キャビティ21を形成する際の加工性、接着剤30との接着性、および光透過性、安定性や耐久性等を考慮すると、ガラスやポリマー等を使用することが好ましい。
【0031】
カラーフィルタ層
次にカラーフィルタ層11について詳述する。カラーフィルタ層11は、有機EL層44からの光を補正し、または色純度を高めるものである。本実施の形態において、カラーフィルタ層11は、図1(a)に示すように、天板23のうちキャビティ内面23aに積層されている。
【0032】
本実施の形態において、カラーフィルタ層11は、図2に示すように、天板23に、画素に対応して規則的に配置された赤色着色層12a、青色着色層12bおよび緑色着色層12cからなる着色樹脂層12を有している。なおカラーフィルタ層11は、図2に示すように、各着色層12a、12b、12cを単位画素毎に区画するブラックマトリクス層13を有していてもよい。
【0033】
赤色着色層12a、青色着色層12bおよび緑色着色層12cは、各色の顔料や染料等の着色剤を感光性樹脂中に分散または溶解させて形成された層である。このうち赤色着色層12aに用いられる着色剤としては、例えば、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
青色着色層12bに用いられる着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
緑色着色層12cに用いられる着色剤としては、例えば、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料もしくはハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料等のフタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。これらの顔料もしくは染料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
ブラックマトリクス層13の材料としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック等の黒色着色剤を含有する樹脂組成物等が挙げられる。この樹脂組成物に用いられる樹脂としては、例えば、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する感光性樹脂を使用することができる。
【0035】
なお図2に示すように、カラーフィルタ層11には、各着色層12a、12b、12cおよびブラックマトリクス層13を保護するオーバーコート層14が設けられていてもよい。また図3に示すように、カラーフィルタ層11には、カラーフィルタ層11から放出される水分が有機EL層44に入り込むのを遮蔽するバリア膜15が設けられていてもよい。カラーフィルタ層11を覆うバリア膜15は、有機EL層44を覆うバリア膜45と同様に、複数、例えば20の層を積層して形成されており、バリア膜15の各層の材料としては、珪素、アルミニウム、亜鉛またはスズの酸化物または酸窒化物等が挙げられる。
【0036】
またブラックマトリクス層13上にスペーサー(図示せず)を適宜設けてもよい。この場合、ブラックマトリクス層13上に赤色着色層12a、青色着色層12bおよび緑色着色層12cを積層することによりスペーサーを形成してもよく、若しくは、その他の適切な材料によりスペーサーを形成してもよい。
【0037】
本実施の形態において、上述のように、カラーフィルタ層11は、天板23のうちキャビティ内面23aに積層されている。このため、カラーフィルタ層11が天板23のうち一側の面23bに積層される場合に比べて、有機EL層44からカラーフィルタ層11までの距離を短くすることができる。このことにより、有機EL層44のうち有機EL表示装置40の所定の単位画素に対応する領域から発光された光が、当該所定の単位画素に対応する着色層12a、12b、12c以外の着色層12a、12b、12cに入射されるという、いわゆる光の回り込みが発生するのを低減することができ、これによって有機EL表示装置40の効率を向上させることができる。
【0038】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、カラーフィルタ10および有機EL表示装置40の製造方法について説明する。
【0039】
カラーフィルタの製造方法
まず図4(a)(b)(c)を参照して、カラーフィルタ10を製造する方法について説明する。はじめに、図4(a)に示すように、カラーフィルタ用基材20を形成するための素材26を準備する。この素材26は、10cm×10cmの幅を有するガラスからなる。
【0040】
次に素材26を機械的に切削し、これによって図4(b)に示すように、一側に天板23を有し、かつ他側に周縁枠体22を有するとともに、これら天板23と周縁枠体22によって内部にキャビティ21を形成するカラーフィルタ用基材20を得る。この場合、キャビティ21の深さは14μmとなっている。
【0041】
その後、天板23のうちキャビティ内面23aに、フォトリソグラフィー法により、着色樹脂層12およびブラックマトリクス層13を有するカラーフィルタ層11を積層させる。これによって、図4(c)に示すようにカラーフィルタ10を得る。なお、着色樹脂層12を積層させるとき、各着色層12a、12b、12cを積層させてなるスペーサーを形成してもよい。若しくは、着色樹脂層12を積層させた後、その他の適切な材料によりスペーサーを形成してもよい。また、着色樹脂層12およびブラックマトリクス層13を積層させた後、着色樹脂層12およびブラックマトリクス層13を保護するオーバーコート層14を形成してもよい。
【0042】
有機EL表示装置の製造方法
上述のようにしてカラーフィルタ10を製造した後、有機EL層44が設けられたガラス基板47を準備する。次に、周縁枠体22のうち他側に向う面22aに接着剤30を塗布した後、ガラス基板47とカラーフィルタ10とを接着する。このようにして、図4(d)に示すように有機EL表示装置40を得ることができる。この場合、周縁枠体22の面22aとガラス基板47との間に介在する接着剤30の厚さは6μmとなっており、このため、天板23とガラス基板47の間のセルギャップは20μmとなっている。
【0043】
なお、ガラス基板47とカラーフィルタ10とを接着する前に、図3に示すように、有機EL層44をバリア膜45により覆ってもよく、カラーフィルタ層11をバリア膜15により覆ってもよい。また、キャビティ21に乾燥剤46を配置してもよい。
【0044】
このように本実施の形態によれば、カラーフィルタ10は、カラーフィルタ用基材20と、カラーフィルタ用基材20に積層されたカラーフィルタ層11とを備え、カラーフィルタ用基材20は、一側に天板23を有し、かつ他側に周縁枠体22を有するとともに、これら天板23と周縁枠体22によって内部にキャビティ21を形成し、カラーフィルタ層11は、天板23のうちキャビティ内面23aに積層されている。このため、このカラーフィルタ10を用いて有機EL表示装置40を構成する場合、有機EL層44をキャビティ21内に収納することができる。このことにより、カラーフィルタ10の周縁枠体22によって、有機EL表示装置40の側方から有機EL表示装置40内に水分および酸素が入り込むのを防ぐことができる。
【0045】
また本実施の形態によれば、有機EL表示装置40は、上述のカラーフィルタ10と、このカラーフィルタ10の他側に配置されて、カラーフィルタ10を支持するガラス基板47と、ガラス基板47上に設けられるとともに、キャビティ21内に配置され、陽極41と、陰極43と、陽極41と陰極43の間に設けられた有機発光層42とを有する有機EL層44とを備えている。またカラーフィルタ用基材20の周縁枠体22とガラス基板47との間には、ガラス基板47上にカラーフィルタ10を固定する接着剤30が介在されている。このことにより、カラーフィルタ10の周縁枠体22によって、有機EL表示装置40の側方から有機EL表示装置40内に水分および酸素が入り込むのを防ぐことができる。
【0046】
また本実施の形態によれば、上述のように、カラーフィルタ10の周縁枠体22によって、有機EL表示装置40の側方から有機EL表示装置40内に水分および酸素が入り込むのを防ぐことができる。このため、カラーフィルタ10が周縁枠体22を有さない場合に比べて、有機EL層44を覆うバリア膜45の厚さを薄くする、すなわちバリア膜45を形成する層の数を減らすことができる。このことにより、バリア膜45を形成する各層の間に光が到達した際に起こりうる光の屈折および界面反射の発生を抑制することができ、これによって有機EL表示装置40の効率を向上させることができる。また、水分および酸素に対する有機EL層44の耐性によっては、有機EL層44を覆うバリア膜45をなくすこともでき、これによって有機EL表示装置40の効率をさらに向上させることができる。同様の理由により、カラーフィルタ層11を覆うバリア膜15を形成する層の数を減らすことができ、これによって有機EL表示装置40の効率を向上させることができる。
【0047】
次に、本願発明の効果を比較例と比較して説明する。第1の比較例として、図5に、ガラス基板47とカラーフィルタ用ガラス基板51の間を、熱により軟化する低融点ガラスフリット52により封止した有機EL表示装置50を示す。この場合、はじめに、有機EL層44が設けられたガラス基板47の周縁に低融点ガラスフリット52をパターンニングし、次に、カラーフィルタ層11が設けられたカラーフィルタ用ガラス基板51を、ガラス基板47に張り合わせる。その後、低融点ガラスフリット52をスポットヒートにより100度以上の温度にまで加熱する。これによって低融点ガラスフリット52が軟化し、軟化した低融点ガラスフリット52がガラス基板47およびカラーフィルタ用ガラス基板51と密着させる。このようにして、ガラス基板47とカラーフィルタ用ガラス基板51の間が封止される。このときのセルギャップは20μmとなっている。
【0048】
第1の比較例において、低融点ガラスフリット52を軟化させる際、低融点ガラスフリット52を100度以上の温度にまで加熱する。このため、加熱に要する時間が長くなり、製造効率が悪くなることが考えられる。さらに、低融点ガラスフリット52を加熱する際に有機EL層44もともに加熱され、これによって有機EL層44の特性が劣化することが考えられる。
【0049】
次に、第2の比較例について図6を参照して説明する。図6に、ガラス基板47とカラーフィルタ用ガラス基板51の間に樹脂接着剤54を充填し、これによってガラス基板47とカラーフィルタ用ガラス基板51の間を封止した有機EL表示装置53を示す。この場合、はじめに、有機EL層44が設けられたガラス基板47上に樹脂接着剤54を塗布し、次に、カラーフィルタ層11が設けられたカラーフィルタ用ガラス基板51を、ガラス基板47に張り合わせる。これによって、ガラス基板47とカラーフィルタ用ガラス基板51の間が封止される。このときのセルギャップは20μmとなっている。
【0050】
第2の比較例においては、セルギャップに相当する厚さ、すなわち20μmの厚さの樹脂接着剤54が外気に接している。このため、外気中の水分および酸素が樹脂接着剤54を透過して有機EL表示装置53内に入り込み、これによって有機EL層44の発光性能が劣化することが考えられる。
【0051】
これに対して本願発明によれば、上述のように、カラーフィルタ10は、カラーフィルタ用基材20と、カラーフィルタ用基材20に積層されたカラーフィルタ層11とを備え、カラーフィルタ用基材20は、一側に天板23を有し、かつ他側に周縁枠体22を有するとともに、これら天板23と周縁枠体22によって内部にキャビティ21を形成し、カラーフィルタ層11は、天板23のうちキャビティ内面23aに積層されている。このため、当該カラーフィルタ10を備えた有機EL表示装置40において、有機EL層44をキャビティ21内に収納することができる。このことにより、カラーフィルタ10の周縁枠体22によって、有機EL表示装置40の側方から有機EL表示装置40内に水分および酸素が入り込むのを防ぐことができる。この場合、スポットヒートにより100度以上の温度にまで加熱する工程が不要なため、加熱のために長い時間を割くことはなく、また、有機EL層44の特性が熱により劣化することもない。また、カラーフィルタ10が周縁枠体22を有さない場合に比べて接着剤30の厚さを減らすことができ、このため、接着剤30を透過して有機EL表示装置53内に入り込む水分および酸素の量を減らすことができる。
【0052】
なお本実施の形態において、カラーフィルタ層11が、所定の領域に各々複数設けられた赤色着色層12a、青色着色層12bおよび緑色着色層12cからなる着色樹脂層12を有している例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、カラーフィルタ層11を有機EL層44の発光特性に応じて適宜設計することができる。例えば、有機EL層44の有機発光層42として青色発光の有機発光層が用いられる場合、カラーフィルタ層11は、青色光を緑色蛍光や赤色蛍光に変換する色変換蛍光体層(図示せず)を有していてもよい。
【0053】
また本実施の形態において、図1(a)に示すように、直方形の縦断面を有するキャビティ21がカラーフィルタ用基材20に形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、台形または逆台形の縦断面を有するキャビティ21をカラーフィルタ用基材20に形成してもよい。また、カラーフィルタ用基材20に形成されるキャビティ21の縦断面は、曲面を有していてもよい。
【0054】
第2の実施の形態
次に図7乃至図11を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。ここで図7は、本発明の第2の実施の形態におけるカラーフィルタを示す縦断面図であり、図8は、本発明の第2の実施の形態における有機EL表示装置を示す縦断面図である。図9(a)は、本発明の第2の実施の形態における有機EL表示装置を示す縦断面図であり、図9(b)は、本発明の第2の実施の形態における有機EL表示装置を示す平面図である。図10(a)(b)(c)(d)(e)は、本発明の第2の実施の形態において、カラーフィルタを製造する工程を示す図であり、図11(a)(b)(c)(d)は、本発明の第2の実施の変形例を示す図である。
【0055】
図7乃至図11に示す第2の実施の形態は、カラーフィルタ用基材の周縁枠体のうち他側に向う面に、周縁枠体全周に延びる溝を形成した点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と略同一である。図7乃至図11に示す第2の実施の形態において、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
カラーフィルタ用基材
図7に示すように、カラーフィルタ用基材20の周縁枠体22のうち他側に向う面22aには、周縁枠体22全周に延びる溝22bが形成されている。本実施の形態において、接着剤30は、図8に示すように、周縁枠体22とガラス基板47との間に介在されるとともに、溝22b内にも収納されている。
【0057】
次に図9(a)(b)を参照して、カラーフィルタ用基材20の構造について説明する。図1乃至図6に示す第1の実施の形態において述べたように、カラーフィルタ用基材20は天板23と周縁枠体22とを有し、これら天板23と周縁枠体22によって内部にキャビティ21が形成されている。また周縁枠体22のうち他側に向う面22aには、周縁枠体22全周に延びる溝22bが形成されている。
【0058】
図9(a)に示すように、周縁枠体22の高さをb、溝22bの深さをa、接着剤30の厚さをeとする。この場合、溝22bの深さaは、好ましくは1μm以上であり、さらに好ましくは1μm以上かつ30μm以下である。周縁枠体22の高さbは、溝22bの深さa以上かつ300μm以下であることが好ましい。接着剤30の厚さeは、好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは6μm以下である。
【0059】
また図9(a)に示すように、周縁枠体22の幅をd、溝22bの幅をcとする。この場合、溝22bの幅cは、1μm以上であることが好ましい。
【0060】
カラーフィルタ用基材20を上述の構造とすることにより、溝22b内の接着剤30と周縁枠体22内面との間の接着面積を増加させるとともに、溝22b内に所定量の接着剤30を確保することができる。このため、カラーフィルタ用基材20の周縁枠体22に溝22bが形成されていない場合に比べて、接着剤30のうち外気側およびキャビティ21側に露出している部分の厚さを薄くするとともに、カラーフィルタ用基材20とガラス基板47との間に介在される接着剤30の量を所定量確保することができる。このことにより、所望の接着性および弾性を接着剤30に持たせたまま、接着剤30を透過して有機EL表示装置40内に入り込む水分および酸素を低減することができる。また、カラーフィルタ用基材20とガラス基板47とがガラスフリットにより封止される場合に比べて、柔軟な封止を形成することができる。
【0061】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、カラーフィルタ10および有機EL表示装置40の製造方法について説明する。
【0062】
カラーフィルタの製造方法
まず図10(a)(b)(c)(d)を参照して、サンドブラストによりカラーフィルタ10のカラーフィルタ用基材20を製造する方法について説明する。はじめに、図10(a)に示すように、カラーフィルタ用基材20の素材26を準備する。この素材26は、10cm×10cmの幅を有するガラスからなる。
【0063】
次に、図10(b)に示すように、素材26にサンドブラストへの耐性を有する耐ブラストレジスト31を設ける。その後、カラーフィルタ用基材20のキャビティ21および溝22bに対応するパターンが形成されたマスク(図示ぜず)を耐ブラストレジスト31上に載せ、そして露光および現像を行う。これによって、図10(c)に示すように、キャビティ21に対応する開口部31a、および溝22bに対応する開口部31bが形成された耐ブラストレジスト31を得ることができる。なお図10(c)に示す耐ブラストレジスト31において、キャビティ21に対応する開口部31aの幅は2cmであり、溝22bに対応する開口部31bの幅は5μmである。
【0064】
次に、サンドブラストにより、素材26のうち耐ブラストレジスト31の開口部31a、31bに対応する部分を削り取る。これによって、図10(d)に示すように、キャビティ21および溝22bが形成される。その後、耐ブラストレジスト31を除去することにより、キャビティ21および溝22bが形成されたカラーフィルタ用基材20を得ることができる。この場合、得られるキャビティ21および溝22bの形状は略矩形である。なお図10(d)に示すカラーフィルタ用基材20において、キャビティ21の深さは50μmであり、溝22bの深さは5μmである。
【0065】
なお、キャビティ21の深さと溝22bの深さを異ならせるため、サンドブラストにより素材26を削り取る際、例えば、開口部31aに対応する部分における加工強度または加工時間と、開口部31bに対応する部分における加工強度または加工時間を異ならせてもよい。または、開口部31aに対応する部分と開口部31bに対応する部分とを同一強度で同一時間加工し、次に、開口部31bに対応する部分を耐ブラストレジスト31により覆い、その後、開口部31aに対応する部分をさらにサンドブラストにより加工してもよい。
【0066】
その後、カラーフィルタ用基材20の天板23のうちキャビティ内面23aに、フォトリソグラフィー法によりカラーフィルタ層11を積層する。これによって、図10(e)に示すようにカラーフィルタ10を得る。
【0067】
有機EL表示装置の製造方法
上述のようにしてカラーフィルタ10を製造した後、有機EL層44が設けられたガラス基板47を準備する。次に、周縁枠体22の溝22b内に接着剤30を充填し、そして周縁枠体22のうち他側に向う面22aに接着剤30を塗布した後、ガラス基板47とカラーフィルタ10とを接着する。このようにして、図8に示す有機EL表示装置40を得ることができる。この場合、周縁枠体22の面22aとガラス基板47との間に介在する接着剤30の厚さは3μmである。
【0068】
このように本実施の形態によれば、カラーフィルタ用基材20の周縁枠体22のうち他側に向う面22aには、周縁枠体22全周に延びて接着剤30を収納する接着剤30用の溝22bが形成されている。このため、溝22b内の接着剤30と周縁枠体22内面との間の接着面積を増加させるとともに、溝22b内に所定量の接着剤30を確保することができる。このため、カラーフィルタ用基材20の周縁枠体22に溝22bが形成されていない場合に比べて、ガラス基板47とキャップ基材20との間の強固な接着を保ちながら、接着剤30の厚さを薄くすることができる。このことにより、接着剤30を透過して有機EL表示装置40内に入り込む水分および酸素を低減することができる。
【0069】
また本実施の形態によれば、カラーフィルタ用基材20の周縁枠体22において、溝22bの深さaは、好ましくは1μm以上であり、さらに好ましくは1μm以上かつ30μm以下であり、例えば5μmである。また溝22bの幅は、好ましくは1μm以上であり、例えば5μmである。また、カラーフィルタ用基材20の周縁枠体22とガラス基板47との間に介在された接着剤30の厚さは、好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは6μm以下であり、例えば3μmである。このことにより、ガラス基板47とカラーフィルタ用基材20との間の強固な接着を保ちながら、接着剤30を透過して有機EL表示装置40内に入り込む水分および酸素を低減することができる。
【0070】
また本実施の形態によれば、はじめに素材26を準備し、次にサンドブラストにより、素材26にキャビティ21および接着剤30用の溝22bを形成する。これによって、接着剤30を収納する溝22bが周縁枠体22に形成されたカラーフィルタ用基材20を得ることができる。このカラーフィルタ用基材20を備えたカラーフィルタ10を有機EL表示装置40に用いることにより、接着剤30を透過して有機EL表示装置40内に入り込む水分および酸素を低減することができる。
【0071】
なお本実施の形態において、カラーフィルタ用基材20の周縁枠体22のうち他側に向う面22aに、略矩形の形状を有する接着剤30用の溝22bが形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図11(a)に示すように、周縁枠体22に、上方に向って先細となる先細状の形状を有する溝22bを形成してもよい。若しくは図11(c)に示すように、上部に丸みを帯びた形状を有する溝22bを形成してもよい。
【0072】
また本実施の形態において、カラーフィルタ用基材20の周縁枠体22のうち他側に向う面22aに、周縁枠体22全周に延びて接着剤30を収納する接着剤30用の溝22bが1重に形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図11(b)または図11(d)に示すように、周縁枠体22に、周縁枠体22全周に延びて接着剤30を収納する接着剤30用の溝22bを2重に形成してもよく、若しくは3重以上形成してもよい。
【0073】
第3の実施の形態
次に図12および図13を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。ここで図12(a)は、本発明の第3の実施の形態における有機EL表示装置を示す縦断面図であり、図12(b)は、本発明の第3の実施の形態における有機EL表示装置を示す平面図である。図13(a)(b)(c)(d)(e)は、本発明の第3の実施の形態において、カラーフィルタを製造する工程を示す図である。
【0074】
図12および図13に示す第3の実施の形態は、ウェットエッチングによりカラーフィルタ用基材にキャビティおよび接着剤用の溝を形成する点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図6に示す第1の実施の形態および図7乃至図11に示す第2の実施の形態と略同一である。図12および図13に示す第3の実施の形態において、図1乃至図6に示す第1の実施の形態および図7乃至図11に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0075】
カラーフィルタ用基材
図12(a)に示すように、カラーフィルタ用基材20は天板23と周縁枠体22とを有し、これら天板23と周縁枠体22によって内部にキャビティ21が形成されている。また周縁枠体22のうち他側に向う面22aには、周縁枠体22全周に延び、接着剤30を収納する溝22bが形成されている。図12(a)に示すように、本実施の形態におけるキャビティ21および溝22bは、上部に丸みを帯びた形状を有している。
【0076】
図12(a)に示すように、周縁枠体22の最大高さをb、溝22bの最大深さをa、接着剤30の厚さをeとする。この場合、溝22bの最大深さaは、好ましくは1μm以上であり、さらに好ましくは1μm以上かつ30μm以下である。周縁枠体22の最大高さbは、溝22bの最大深さa以上かつ300μm以下であることが好ましい。接着剤30の厚さeは、好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは6μm以下である。
【0077】
また図12(a)に示すように、周縁枠体22の最大幅をd、溝22bの最大幅をcとする。この場合、溝22bの最大幅cは、1μm以上であることが好ましい。
【0078】
カラーフィルタ用基材20を上述の構造とすることにより、溝22b内の接着剤30と周縁枠体22内面との間の接着面積を増加させるとともに、溝22b内に所定量の接着剤30を確保することができる。このため、カラーフィルタ用基材20の周縁枠体22に溝22bが形成されていない場合に比べて、接着剤30のうち外気側およびキャビティ21側に露出している部分の厚さを薄くするとともに、カラーフィルタ用基材20とガラス基板47との間に介在される接着剤30の量を所定量確保することができる。このことにより、所望の接着性および弾性を接着剤30に持たせたまま、接着剤30を透過して有機EL表示装置40内に入り込む水分および酸素を低減することができる。
【0079】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、カラーフィルタ用基材20の製造方法について説明する。
【0080】
カラーフィルタの製造方法
まず図13(a)(b)(c)(d)を参照して、フッ酸によるウェットエッチングによりカラーフィルタ10のカラーフィルタ用基材20を製造する方法について説明する。はじめに、図13(a)に示すように、カラーフィルタ用基材20の素材26を準備する。このキャップ基材用素材26は、10cm×10cmの幅を有するガラスからなる。
【0081】
次に、図13(b)に示すように、素材26にフッ酸への耐性を有する耐フッ酸レジスト32を設ける。その後、カラーフィルタ用基材20のキャビティ21および溝22bに対応するパターンが形成されたマスク(図示ぜず)を耐フッ酸レジスト32上に載せ、そして露光および現像を行う。これによって、図13(c)に示すように、キャビティ21に対応する開口部32a、および溝22bに対応する開口部32bが形成された耐フッ酸レジスト32を得ることができる。なお図13(c)に示す耐フッ酸レジスト32において、キャビティ21に対応する開口部32aの幅は2cmであり、溝22bに対応する開口部32bの幅は5μmである。
【0082】
次に、フッ酸によるウェットエッチングにより、素材26のうち耐フッ酸レジスト32の開口部32a、32bに対応する部分を溶解させる。これによって、図13(d)に示すようにキャビティ21および溝22bが形成される。その後、耐フッ酸レジスト32を除去することにより、キャビティ21および溝22bが形成されたカラーフィルタ用基材20を得ることができる。この場合、得られるキャビティ21および溝22bの形状は丸みを帯びている。なお図13(d)に示すカラーフィルタ用基材20において、キャビティ21の最大深さは50μmであり、溝22bの最大深さは5μmである。
【0083】
なお、キャビティ21の最大深さと溝22bの最大深さを異ならせるため、ウェットエッチングにより素材26を溶解させる際、例えば、開口部32aに対応する部分と開口部32bに対応する部分とを所定時間の間ウェットエッチングにより加工し、次に、開口部32bに対応する部分を耐フッ酸レジスト32により覆い、その後、開口部32aに対応する部分をさらにウェットエッチングにより加工してもよい。
【0084】
その後、カラーフィルタ用基材20の天板23のうちキャビティ内面23aに、フォトリソグラフィー法によりカラーフィルタ層11を積層する。これによって、図13(e)に示すようにカラーフィルタ10を得る。
【0085】
有機EL表示装置の製造方法
上述のようにしてカラーフィルタ10を製造した後、有機EL層44が設けられたガラス基板47を準備する。次に、周縁枠体22の溝22b内に接着剤30を充填し、そして周縁枠体22のうち他側に向う面22aに接着剤30を塗布した後、ガラス基板47とカラーフィルタ10とを接着する。このようにして有機EL表示装置40を得ることができる。この場合、周縁枠体22の面22aとガラス基板47との間に介在する接着剤30の厚さは3μmである。
【0086】
このように本実施の形態によれば、はじめに素材26を準備し、次にウェットエッチングにより、素材26にキャビティ21および接着剤30用の溝22bを形成する。これによって、接着剤30を収納する溝22bが周縁枠体22に形成されたカラーフィルタ用基材20を得ることができる。このカラーフィルタ用基材20を備えたカラーフィルタ10を有機EL表示装置40に用いることにより、接着剤30を透過して有機EL表示装置40内に入り込む水分および酸素を低減することができる。
【0087】
なお本実施の形態において、ウェットエッチングにより素材26にキャビティ21および接着剤30用の溝22bが形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、サンドブラストとウェットエッチングを適宜組み合わせて素材26にキャビティ21および接着剤30用の溝22bを形成してもよい。または、その他の加工方法により素材26にキャビティ21および接着剤30用の溝22bを形成してもよい。
【0088】
また上記各実施の形態において、機械切削、サンドブラスト、ウェットエッチングまたはその他の加工方法により素材26にキャビティ21が形成される例を示した。すなわち、カラーフィルタ用基材20において、天板23と周縁枠体22とが一体に形成されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、各々別体の天板23と周縁枠体22とによりカラーフィルタ用基材20を形成してもよい。例えば、天板23と周縁枠体22とを各々準備し、周縁枠体22を天板23の周縁に溶着させることにより、一側に天板23を有し、かつ他側に周縁枠体22を有するとともに、これら天板23と周縁枠体22によって内部にキャビティ21を形成するカラーフィルタ用基材20を構成してもよい。
【0089】
第4の実施の形態
次に図14乃至図17を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。ここで図14は、本発明の第4の実施の形態におけるカラーフィルタを示す縦断面図であり、図15は、本発明の第4の実施の形態における有機EL表示装置を示す縦断面図である。図16は、本発明の第4の実施の形態の変形例におけるカラーフィルタを示す縦断面図であり、図17は、本発明の第4の実施の形態の変形例における有機EL表示装置を示す縦断面図である。
【0090】
図14乃至図17に示す第4の実施の形態は、カラーフィルタ用基材の周縁枠体のうち他側に向う面に、周縁枠体全周にわたって額縁ブラックマトリクス層を形成した点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と略同一である。図14乃至図17に示す第4の実施の形態において、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0091】
カラーフィルタ
図14に示すように、カラーフィルタ用基材20の周縁枠体22のうち他側に向う面22aには、周縁枠体22全周にわたって額縁ブラックマトリクス層36が形成されている。この額縁ブラックマトリクス層36は、遮光性を有する金属膜36aから形成されている。この金属膜36aは、例えば蒸着により面22aに形成されており、その厚さは例えば0.19μmとなっている。
【0092】
有機EL表示装置
図15に示すように、周縁枠体22に額縁ブラックマトリクス層36が形成されたカラーフィルタ10と、有機EL層44が設けられたガラス基板47とが、接着剤30により接着される。本実施の形態において、有機EL層44の厚さは例えば5μmとなっており、接着剤30の厚さは例えば6μmとなっている。このとき、図15において矢印AおよびBで示すように、有機EL層44から出射される光が周縁枠体22に向って斜め方向に進む光を有する場合、当該斜め方向に進む光が額縁ブラックマトリクス層36により遮蔽される。このことにより、有機EL表示装置40の周縁に、非表示領域を構成するいわゆる額縁ブラックマトリクスを形成することができる。
【0093】
このように本実施の形態によれば、カラーフィルタ用基材20の周縁枠体22のうち他側に向う面22aには、周縁枠体22全周にわたって金属膜36aからなる額縁ブラックマトリクス層36が形成されている。このため、有機EL層44から出射される光のうち斜め方向に進む光を、額縁ブラックマトリクス層36により遮蔽することができる。このことにより、有機EL表示装置40の周縁に、非表示領域を構成するいわゆる額縁ブラックマトリクスを形成することができる。
【0094】
なお本実施の形態において、額縁ブラックマトリクス層36が、遮光性を有する金属膜36aから形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、額縁ブラックマトリクス層36を、遮光性樹脂36bから形成してもよい。例えば、液体状の遮光性樹脂材料を面22aに塗布することにより、遮光性樹脂36bからなる額縁ブラックマトリクス層36を形成することができる。この場合、遮光性樹脂36bの厚さは例えば1.2μmとなっている。または、その他の遮光性を有する材料を面22a上に設けることにより、額縁ブラックマトリクス層36を形成してもよい。
【0095】
また本実施の形態において、カラーフィルタ用基材20の周縁枠体22のうち他側に向う面22aに、周縁枠体22全周にわたって額縁ブラックマトリクス層36が形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図16および図17に示すように、周縁枠体22のうち他側に向う面22aに、周縁枠体22全周に延びる溝22bを形成するとともに、周縁枠体22のうち他側に向う面22aと、面22aに形成された溝22b内の面とに、周縁枠体22全周にわたって額縁ブラックマトリクス層36を形成してもよい。このことにより、有機EL表示装置40の周縁に、非表示領域を構成するいわゆる額縁ブラックマトリクスを形成するとともに、溝22b内の接着剤30と周縁枠体22内面との間の接着面積を増加させ、かつ溝22b内に所定量の接着剤30を確保することができる。
【0096】
また上記各実施の形態において、カラーフィルタ10を備えた有機EL表示装置40が得られる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、本実施の形態におけるカラーフィルタ10を、液晶表示装置またはその他の表示装置において用いてもよい。このことにより、側方から入り込む水分および酸素の量が低減された表示装置を提供することができる。
【0097】
また上記各実施の形態の有機EL表示装置40において二点鎖線で示すように、ガラス基板47のうちカラーフィルタ用基材20の周縁枠体22との当接面47aに、ガラス基板47全周に延びて接着剤30を収納する接着剤30用の収納溝47bを形成してもよい。これによって、ガラス基板47とカラーフィルタ用基材20との間の強固な接着を保ちながら、接着剤30の厚さを薄くするでき、このことにより、接着剤30を透過して有機EL表示装置40内に入り込む水分および酸素を低減することができる。
【符号の説明】
【0098】
10 カラーフィルタ
11 カラーフィルタ層
12 着色樹脂層
12a 赤色着色層
12b 青色着色層
12c 緑色着色層
13 ブラックマトリクス層
14 オーバーコート層
15 バリア膜
20 カラーフィルタ用基材
21 キャビティ
22 周縁枠体
22a 周縁枠体の他側の面
22b 溝
23 天板
23a 天板のキャビティ内面
23b 天板の一側の面
26 素材
30 接着剤
31 耐ブラストレジスト
31a 耐ブラストレジストの開口部
32 耐フッ酸レジスト
32a 耐フッ酸レジストの開口部
36 額縁ブラックマトリクス層
36a 金属膜
36b 遮光性樹脂
40 有機EL表示装置
41 陽極
42 有機発光層
43 陰極
44 有機EL層
45 有機EL層用のバリア膜
46 乾燥剤
47 ガラス基板
47a キャップ基材の周縁枠体との当接面
47b ガラス基板の収納溝
50 有機EL表示装置
51 カラーフィルタ用ガラス基板
52 低融点ガラスフリット
53 有機EL表示装置
54 樹脂接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーフィルタ用基材と、
カラーフィルタ用基材に積層されたカラーフィルタ層と、を備え、
カラーフィルタ用基材は、一側に天板を有し、かつ他側に周縁枠体を有するとともに、これら天板と周縁枠体によって内部にキャビティを形成し、
カラーフィルタ層は、天板のうちキャビティ内面に積層されていることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項2】
前記カラーフィルタ用基材の周縁枠体のうち他側に向う面に、周縁枠体全周に延びる溝を形成したことを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ。
【請求項3】
前記溝の幅は、1μm以上であり、
前記溝の深さは、1μm以上かつ30μm以下であることを特徴とする請求項2に記載のカラーフィルタ。
【請求項4】
前記カラーフィルタ用基材の周縁枠体のうち他側に向う面に、周縁枠体全周にわたって額縁ブラックマトリクス層を形成したことを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ。
【請求項5】
前記額縁ブラックマトリクス層は、金属膜または遮光性樹脂から形成されることを特徴とする請求項4に記載のカラーフィルタ。
【請求項6】
請求項1に記載のカラーフィルタと、
当該カラーフィルタの他側に配置されて、このカラーフィルタを支持するガラス基板と、
ガラス基板上に設けられるとともに、キャビティ内に配置され、陽極と、陰極と、陽極と陰極の間に設けられた有機発光層とを有する有機EL層と、を備え、
カラーフィルタ用基材の周縁枠体とガラス基板との間に、ガラス基板上にカラーフィルタを固定する接着剤が介在されたことを特徴とする有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−7909(P2011−7909A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149604(P2009−149604)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】